(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】電力供給システム及び集合住宅
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20221027BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J3/38 110
(21)【出願番号】P 2019023933
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【氏名又は名称】河合 隆慶
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直人
(72)【発明者】
【氏名】東 和明
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-192829(JP,A)
【文献】特開2013-243896(JP,A)
【文献】特開2014-239588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの住戸
部に電力網及び
蓄電池から電力を供給する電力供給システムであって、
前記電力網又は前記蓄電池の少なくとも一方からの電力を、前記各住戸部及び共用部負荷へ分電する分電盤と、
前記蓄電池と前記電力網との間の配線に前記分電盤への配線が接続される節点と、
前記蓄電池と前記節点との間に設けられるパワーコンディショナーであって、前記蓄電池からの電力を前記電力網へ逆潮流することが可能なパワーコンディショナーと、
前記パワーコンディショナーと前記電力網との間に設けられるブレーカであって、停電状態において、前記パワーコンディショナーから前記電力網への電力の逆潮流を遮断するブレーカと、
前記各住戸部に設けられており、前記
蓄電池から受電した電力を第1負荷に給電可能な第1給電部と、
前記各住戸部に設けられており、前記電力網から受電した電力を第2負荷に給電可能な第2給電部と
を備え、
前記第1給電部の定格電力は、前記第2給電部の定格電力よりも小さい、電力供給システム。
【請求項2】
前記第1給電部の定格電力は、前記第2給電部の定格電力を前記住戸部の数で割った値以下の値である、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記第1給電部は、前記電力網から受電した電力を前記第2負荷に給電している通常状態において、前記
蓄電池から受電した電力を前記第1負荷に給電可能である、請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記第1給電部は、前記第1負荷に、前記電力網から受電した電力をさらに給電可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記第1給電部は、前記第2給電部
と形状で区別される、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記第1給電部は、USBコンセントを含む、請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記第1給電部と前記第1負荷との間に接続されている第1スイッチは、前記第2給電部と前記第2負荷との間に接続されているスイッチ
と形状で区別される、請求項1から6のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記第1負荷は、LEDダウンライトを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記第1給電部は、出力する電力を、前記第1給電部の定格電力以下に制限する、請求項1から8のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項10】
前記蓄電池と共に、太陽電池又は燃料電池を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項11】
前記
蓄電池は、前記共用部負荷のうち、所定値未満の電力を消費する負荷に電力を供給する、請求項10に記載の電力供給システム。
【請求項12】
電力網及び
蓄電池から受電する少なくとも2つの住戸部を備える集合住宅であって、
前記電力網、又は前記蓄電池の少なくとも一方からの電力を、前記各住戸部及び共用部負荷へ分電する分電盤と、
前記蓄電池と、前記電力網との間の配線に前記分電盤への配線が接続される節点と、
前記蓄電池と前記節点との間に設けられるパワーコンディショナーであって、前記蓄電池からの電力を前記電力網へ逆潮流することが可能なパワーコンディショナーと、
前記パワーコンディショナーと前記電力網との間に設けられるブレーカであって、停電状態において、前記パワーコンディショナーから前記電力網への電力の逆潮流を遮断するブレーカと、
前記各住戸部に設けられており、前記
蓄電池から受電した電力を第1負荷に給電可能な第1給電部と、
前記各住戸部に設けられており、前記電力網から受電した電力を第2負荷に給電可能な第2給電部と
を備え、
前記第1給電部の定格電力は、前記第2給電部の定格電力よりも小さい、集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力供給システム及び集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅の共用部に太陽光発電装置等を含む分散型電源から電力を供給する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分散型電源からの電力が、共用部だけでなく住戸部にも供給されることが求められる。
【0005】
本開示の目的は、分散型電源からの電力を住戸部に容易に供給できる電力供給システム及び集合住宅を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る電力供給システムは、少なくとも2つの住戸部に電力網及び蓄電池から電力を供給する。前記電力供給システムは、分電盤と、節点と、パワーコンディショナーと、ブレーカと、第1給電部と、第2給電部とを備える。前記分電盤は、前記電力網又は前記蓄電池の少なくとも一方からの電力を、前記各住戸部及び共用部負荷へ分電する。前記節点は、前記蓄電池と前記電力網との間の配線に前記分電盤への配線が接続される。前記パワーコンディショナーは、前記蓄電池と前記節点との間に設けられ、前記蓄電池からの電力を前記電力網へ逆潮流することが可能である。前記ブレーカは、前記パワーコンディショナーと前記電力網との間に設けられるブレーカであって、停電状態において、前記パワーコンディショナーから前記電力網への電力の逆潮流を遮断する。前記第1給電部は、各住戸部に設けられている。前記第1給電部は、前記分散型電源から受電した電力を第1負荷に給電可能である。前記第2給電部は、各住戸部に設けられている。前記第2給電部は、前記電力網から受電した電力を第2負荷に給電可能である。前記第1給電部の定格電力は、前記第2給電部の定格電力よりも小さい。
【0007】
本開示の一実施形態に係る集合住宅は、電力網及び蓄電池から受電する少なくとも2つの住戸部を備える。前記集合住宅は、分電盤と、節点と、パワーコンディショナーと、ブレーカと、第1給電部と第2給電部とを備える。前記分電盤は、前記電力網又は前記蓄電池の少なくとも一方からの電力を、前記各住戸部及び共用部負荷へ分電する。前記節点は、前記蓄電池と前記電力網との間の配線に前記分電盤への配線が接続される。前記パワーコンディショナーは、前記蓄電池と前記節点との間に設けられ、前記蓄電池からの電力を前記電力網へ逆潮流することが可能である。前記ブレーカは、前記パワーコンディショナーと前記電力網との間に設けられるブレーカであって、停電状態において、前記パワーコンディショナーから前記電力網への電力の逆潮流を遮断する。前記第1給電部は、各住戸部に設けられている。前記第1給電部は、前記分散型電源から受電した電力を第1負荷に給電可能である。前記第2給電部は、各住戸部に設けられている。前記第2給電部は、前記電力網から受電した電力を第2負荷に給電可能である。前記第1給電部の定格電力は、前記第2給電部の定格電力よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係る電力供給システム及び集合住宅によれば、分散型電源からの電力が住戸部に容易に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る電力供給システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】電力供給システムから受電する集合住宅の構成例を示す図である。
【
図3】第1給電部及び第2給電部の例を示す図である。
【
図4】第1スイッチ及び第2スイッチの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示されるように、一実施形態に係る電力供給システム100は、集合住宅1に電力を供給する。集合住宅1は、共用部3と、複数の住戸部2とを備える。住戸部2は、住戸部2a及び2bを含むとする。住戸部2の数は、2戸に限られず、3戸以上であってよい。
【0011】
集合住宅1は、マンション、アパート、又はメゾネット等の種々の形態であってよい。集合住宅1は、管理主体によって管理されてよい。集合住宅1の管理主体は、集合住宅1のオーナー又は集合住宅1を管理する事業者等であってよい。集合住宅1の管理主体は、各住戸部2の居住者と個別に入居契約を結んでよい。
【0012】
共用部3は、例えば、集合住宅1の廊下又は階段等を含んでよい。共用部3は、共用部負荷34を備える。共用部負荷34は、共用部3に設けられている機器、例えば、外灯等の照明器具、浄化槽ブロア電源、火災報知機等の非常用設備及び空調機器等の他の機器を含んでよい。
【0013】
住戸部2は、居住者が生活する空間を含んでよい。住戸部2は、住戸部負荷2Lを備える。住戸部負荷2Lは、各住戸部2に設けられている電力負荷であり、例えば、各住戸部2で使用される照明器具、冷蔵庫、テレビ、又はエアコンディショナ等の電気機器であってよい。
【0014】
電力供給システム100は、共用部3に含まれる共用部取引メータ31と、各住戸部2に含まれる住戸部取引メータ32とを備える。電力供給システム100は、共用部取引メータ31及び住戸部取引メータ32を介して、電力網50に接続されている。電力網50は、電力事業者が供給する電力を配電している。共用部取引メータ31及び住戸部取引メータ32は、電力網50から受電する電力量を測定する。共用部取引メータ31及び住戸部取引メータ32は、検定付きの電力量計であってよい。検定付きの電力量計は、検定メータともいう。電力事業者は、共用部取引メータ31及び住戸部取引メータ32を管理し、共用部取引メータ31及び住戸部取引メータ32から測定結果を取得する。電力事業者は、共用部取引メータ31及び住戸部取引メータ32の測定結果に基づいて、集合住宅1の管理主体、及び、住戸部2の居住者に電気料金を課金する。
【0015】
共用部3を管理している集合住宅1の管理主体は、電力事業者との間で共用部3の受電契約を結ぶ。各住戸部2の入居者は、電力事業者との間で各住戸部2の受電契約を結ぶ。つまり、共用部3と各住戸部2とは、それぞれ個別に締結した受電契約に基づいて受電する。共用部3と各住戸部2とはそれぞれ、共用部取引メータ31及び各住戸部取引メータ32を介して、電力網50から受電する。
【0016】
電力供給システム100は、共用部3に含まれる共用部分電盤33をさらに備える。共用部分電盤33は、共用部3に含まれる共用部負荷34に接続されている。
【0017】
電力供給システム100は、第1給電部11と、第2給電部21とを備える。第1給電部11と第2給電部21とは、両方とも、各住戸部2に設置されている。第1給電部11は、共用部3に含まれる共用部分電盤33に接続されており、共用部分電盤33から受電する。第2給電部21は、住戸部取引メータ32を介して電力網50に接続されており、電力網50から受電する。第1給電部11及び第2給電部21はそれぞれ、第1負荷12及び第2負荷22に給電できる。第1負荷12及び第2負荷22は、住戸部負荷2Lに含まれるとする。
【0018】
電力供給システム100は、分散型電源60をさらに備える。分散型電源60は、共用部3に含まれる。分散型電源60は、パワーコンディショナ(以下、PCSとも称される)61と、太陽電池(以下、PVとも称される)62と、蓄電池(以下、BTとも称される)63とを備える。分散型電源60は、PV62およびBT63の少なくとも一方を有していればよい。
【0019】
PCS61は、インバータ又はコンバータ等を含んでよい。PCS61は、PV62及びBT63が出力する直流電力を、交流電力に変換したり、異なる電圧の直流電力に変換したりする。PCS61は、変換した交流電力又は直流電力を共用部分電盤33に出力してもよい。PCS61は、変換した交流電力を電力網50に逆潮流してもよい。PCS61は、PV62が出力する直流電力、又は、電力網50が供給する交流電力を、BT63に充電可能な直流電力に変換し、BT63に充電してもよい。
【0020】
PV62は、太陽電池に限られず、風力によって発電する電源等の他の再生可能エネルギーに基づく電源に置き換えられてもよい。PV62は、複数の種類の再生可能エネルギーに基づく電源を含む構成で置き換えられてもよい。PV62は、燃料電池等の他の電源に置き換えられてもよい。
【0021】
BT63は、PV62が出力する電力のうち、共用部分電盤33に接続される負荷で消費しきれない電力で充電されてもよい。BT63は、電力網50から受けた電力で充電されてもよい。
【0022】
PCS61、PV62、及びBT63それぞれの数は、1つに限られず、2つ以上あってもよい。例えば、PV62は、集合住宅1の屋根、集合住宅1の駐車場の屋根、又は、集合住宅1の敷地内等に分割して設けられてよい。
【0023】
共用部分電盤33は、電力網50及び分散型電源60の少なくとも一方から受電する。共用部分電盤33は、受電した電力を、共用部負荷34、及び、各住戸部2の第1給電部11に供給する。
【0024】
分散型電源60は、余剰電力を、共用部取引メータ31を介して電力網50に逆潮流してもよい。余剰電力は、分散型電源60が出力する電力のうち、共用部分電盤33に接続されている共用部負荷34及び第1負荷12で消費される電力を超える電力に相当する。共用部取引メータ31は、共用部負荷34及び第1負荷12に対して電力網50から供給される電力量を測定するとともに、分散型電源60から電力網50に逆潮流される電力量を測定する。電力事業者は、集合住宅1の管理主体に対して、共用部取引メータ31の測定結果に基づいて、共用部負荷34及び第1負荷12に供給された電力量に応じた電気料金を課金するとともに、電力網50に逆潮流された電力量に応じた売電料金を支払う。つまり、逆潮流された電力量に応じた売電料金が、共用部負荷34及び第1負荷12に供給された電力量に応じた電気料金よりも多い場合、電力事業者は集合住宅1の管理主体に対して料金を支払う。
【0025】
図2に示されるように、集合住宅1は、住戸部2a及び2bを備える。住戸部2aと住戸部2bとは、同じ構成を備えるとする。住戸部2aと住戸部2bとは、互いに区別されなくてもよい場合、住戸部2と称されるとする。
【0026】
住戸部2は、1つの部屋の中に、第1給電部11と第2給電部21とを備える。第1給電部11及び第2給電部21は、例えば、部屋の壁に設けられているコンセントを含んでもよいし、部屋の天井に設けられているシーリングローゼット又はソケットを含んでもよい。第1給電部11及び第2給電部21は、負荷と直接接続される配線の端子を含んでもよい。住戸部2の居住者は、第1給電部11及び第2給電部21のどちらに機器を接続してもよい。
【0027】
第1給電部11は、第1負荷12に給電可能に構成される。第1負荷12は、例えば、部屋の天井にシーリングローゼット又はソケットとして設けられている第1給電部11に接続されているLED(Light Emission Diode)ダウンライトを含んでもよい。第1負荷12は、例えば、スマートフォン又はタブレット等の、USB(Universal Serial Bus)端子を介して電力を受ける電子機器を含んでもよい。第1負荷12は、これらの例に限られず、種々の負荷を含んでよい。
【0028】
第2給電部21は、第2負荷22に給電可能に構成される。第2負荷22は、例えば、部屋の壁にコンセントとして設けられている第2給電部21に接続されている、エアコンディショナ22a、テレビ22b、IH(Induction Heating)ヒータ22c、又は冷蔵庫22d等を含んでもよい。第2負荷22は、例えば、部屋の天井にシーリングローゼットとして設けられている第2給電部21に接続されているシーリングライト22eを含んでもよい。第2負荷22は、これらの例に限られず、種々の負荷を含んでよい。
【0029】
電力網50が電力を供給している通常状態において、第1給電部11は、電力網50及び分散型電源60の少なくとも一方からの電力によって、第1負荷12に給電できる。つまり、第1給電部11は、通常状態においても分散型電源60から第1負荷12に給電可能に構成されている。第1給電部11は、住戸部2a及び2bの両方に設けられている。住戸部2aの第1給電部11と、住戸部2bの第1給電部11とは共に、共用部分電盤33を介して、電力網50及び分散型電源60の少なくとも一方から受電できる。通常状態において、第2給電部21は、電力網50からの電力によって、第2負荷22に給電できる。
【0030】
電力網50が電力を供給できない停電状態において、第1給電部11は、電力網50から受電できないものの分散型電源60から受電できる。住戸部2aの第1給電部11と、住戸部2bの第1給電部11とは共に、共用部分電盤33を介して、分散型電源60から受電できる。つまり、住戸部2aの第1給電部11と、住戸部2bの第1給電部11とは、両方とも、分散型電源60からの電力によって、第1負荷12に給電できる。電力供給システム100は、分散型電源60及び共用部分電盤33と、共用部取引メータ31とが分岐している節点との間に、ブレーカ35をさらに備えてもよい。停電状態において、電力供給システム100は、ブレーカ35によって、分散型電源60と共用部取引メータ31との間を遮断してもよい。このようにすることで、停電状態において、分散型電源60が電力網50に対して逆潮流することが防がれる。
【0031】
停電状態において、第2給電部21は、電力網50から受電できない。つまり、第2給電部21は、第2負荷22に給電できない。住戸部2が第1給電部11と第2給電部21とを両方とも備えることによって、住戸部2の居住者は、停電状態であっても、第1負荷12としての機器を使用できる。第1給電部11は、住戸部2の居住者にとって、停電時におけるバックアップ電源として機能する。第1給電部11がバックアップ電源として機能することによって、電力供給システム100は、家庭向けにFCP(Family Continuity Plan)又はLCP(Life Continuity Plan)対策サービスを提供できる。電力供給システム100は、企業向けにBCP(Business Continuity Plan)対策サービスを提供できる。
【0032】
停電状態において、第1給電部11は、分散型電源60のみから受電する。停電状態において第1給電部11が受電できる電力は、通常状態において第1給電部11が受電できる電力よりも減少する。例えば、分散型電源60が出力する電流は、PCS61の電流容量に基づいて制限されたり、PV62の発電容量に基づいて制限されたりする。分散型電源60が所定値の電流を出力する場合、電流の出力が継続する時間は、PV62の発電容量及びBT63の蓄電容量のうち少なくとも一方に基づいて制限される。
【0033】
第1給電部11及び第2給電部21はそれぞれ、定格電力を有する。定格電力は、電気配線の容量等によって決定される。例えば、日本工業規格(JIS)に含まれる2極コンセントに関する規格に基づけば、2極コンセントは、電流が15A(アンペア)以内且つ電圧が125V(ボルト)以内の単相交流電力を供給可能である。第1給電部11は、共用部分電盤33から、電圧が100Vの単相交流電力を受けるとする。第2給電部21は、住戸部取引メータ32を介して、電圧が100Vの単相交流電力を受けるとする。これらの場合、第1給電部11及び第2給電部21は、15A以下の電流を受けることができる。つまり、第1給電部11及び第2給電部21それぞれの定格電流は、15Aとなる。
【0034】
本実施形態に係る電力供給システム100において、第1給電部11の定格電力は、第2給電部21の定格電力よりも小さい値に設定される。第1給電部11の電圧と第2給電部21の電圧とが同じである場合、第1給電部11の定格電流は、第2給電部21の定格電流よりも小さい。このようにすることで、第1給電部11が第1負荷12に給電する電流が制限される。
【0035】
分散型電源60が供給する電力によって第1負荷12の消費電力が賄われるように、第1給電部11が第1負荷12に給電する電流が制限されてもよい。分散型電源60が供給する電力によって第1負荷12の消費電力が賄われることによって、電力網50から第1給電部11に供給される電力が減少しうる。
【0036】
停電状態において分散型電源60が第1給電部11を介して第1負荷12に給電する場合、第1給電部11が第1負荷12に給電する電流が制限されることによって、給電の継続時間が長くなる。このようにすることで、停電状態が継続する時間が長くなっても、第1負荷12に対する給電が継続される可能性が高まる。その結果、電力供給システム100が提供するFCP若しくはLCP又はBCP対策サービスの信頼性が高まる。
【0037】
第1給電部11の定格電力は、第2給電部21の定格電力を、集合住宅1が有する住戸部2の数で割った値以下の値に設定されてよい。言い換えれば、各住戸部2に設けられている第1給電部11の定格電力の和は、第2給電部21の定格電力以下に設定されてよい。第1給電部11の電圧と第2給電部21の電圧とが同じである場合、第1給電部11の定格電流は、第2給電部21の定格電流を、集合住宅1が有する住戸部2の数で割った値以下の値に設定されてよい。
【0038】
第1給電部11の定格電流が上述のように設定されることで、共用部分電盤33から各住戸部2の第1給電部11まで接続する各配線に流れる電流の和がJISの2極コンセントに関する規格の範囲内となる。この場合、共用部分電盤33から各住戸部2の第1給電部11までの配線が容易に設置されうる。例えば、共用部分電盤33から出た大元の1対の配線から、各住戸部2の第1給電部11に接続する配線が分岐されてよい。共用部分電盤33は、大元の1対の配線の電流を定格電流で遮断するために、1個のブレーカだけを必要とする。つまり、各住戸部2の第1給電部11に電流を接続する経路に設けられるブレーカの数が1個にできる。
【0039】
第1給電部11の定格電流が上述のように設定されることで、各住戸部2の第1給電部11が第1負荷12に給電する電流は、より小さい値に制限される。その結果、第1負荷12の消費電力が分散型電源60の電力で賄われる可能性がより一層高まる。
【0040】
本実施形態に係る電力供給システム100は、住戸部2に、第1給電部11と第2給電部21とを備える。第1給電部11は、分散型電源60から受電するとともに、共用部3を介して電力網50から受電する。第2給電部21は、共用部3を介さずに電力網50から受電する。
【0041】
比較例として、各住戸部2が共用部3を介さずに分散型電源60及び電力網50から受電するシステムが仮定される。つまり、比較例に係るシステムは、各住戸部2が第1給電部11を有しない点、及び、各住戸部2が共用部3を介さずに分散型電源60から受電する点で本実施形態に係る電力供給システム100と異なる。
【0042】
比較例に係るシステムは、各住戸部2が分散型電源60から受電するために、PCS61が各住戸部2に設けられる必要がある。この場合、PCS61の必要数が増加するとともに、PCS61の設置面積が増大する。一方、本実施形態に係る電力供給システム100によれば、PCS61は、共用部3だけに設けられればよい。これによって、PCS61の必要数が減らされるとともに、PCS61の設置面積が縮小される。つまり、第1給電部11は、容易に設置されうる。その結果、各住戸部2において分散型電源60から給電する構成が導入されやすくなる。
【0043】
比較例に係るシステムは、各住戸部2がBT63に蓄電されている電力を利用するために、BT63が各住戸部2に設けられる必要がある。BT63は、所定容量より大きい蓄電容量のものしか準備できないことがある。1台のBT63の蓄電容量が所定容量より大きい場合、消防法等の法令で定められている、1棟の集合住宅1に設置できるBT63の蓄電容量の合計の上限に基づいて、BT63が全ての住戸部2に設置できないことがある。この場合、BT63が設置される住戸部2と、BT63が設置されない住戸部2との間の公平性が損なわれる。一方、本実施形態に係る電力供給システム100によれば、BT63は、共用部3だけに設置され、蓄電している電力を全ての住戸部2に対して供給できる。その結果、各住戸部2の公平性が確保される。
【0044】
比較例に係るシステムは、各住戸部2が分散型電源60から受電するために、住戸部2の居住者の生活パターンによって、PV62が発電する電力の自家消費量が異なる。例えば、居住者が昼間に不在であることが多い住戸部2において、PV62が発電する電力の自家消費量が減少する。その結果、集合住宅1全体としての自家消費量が減少することがある。一方、本実施形態に係る電力供給システム100によれば、PV62が発電する電力が全ての住戸部2に供給される。各住戸部2の居住者の生活パターンが平準化されることによって、PV62が発電する電力が自家消費されやすくなる。その結果、集合住宅1全体としての自家消費量が増加する。
【0045】
以上説明してきたように、本実施形態に係る電力供給システム100及び集合住宅1は、各住戸部2に第1給電部11と第2給電部21とを備えることによって、分散型電源60の電力を各住戸部2で利用しやすくする。第1給電部11の定格電力が第2給電部21の定格電力より小さいことによって、第1負荷12の消費電力が分散型電源60の電力で賄われやすくなる。第1給電部11の定格電力が第2給電部21の定格電力を住戸部2の数で割った値より小さいことによって、工事が容易になるとともに、第1負荷12の消費電力が分散型電源60の電力でより一層賄われやすくなる。分散型電源60が太陽電池等の再生可能エネルギーに電源を利用している場合、第1給電部11から供給される電力は、火力発電等で発電された電力よりもクリーンなエネルギーになる。本実施形態に係る電力供給システム100及び集合住宅1は、停電時だけでなく、電力網50から受電した電力を第2負荷22に給電している通常状態であってもクリーンなエネルギーを効率よく第1給電部11を利用して自家消費可能にする構成を有する。本実施形態に係る電力供給システム100及び集合住宅1は、このような構成を有することによって、地球環境保護及び居住者の環境保護意識の向上に貢献できる。
【0046】
(他の実施形態)
第1給電部11は、出力する電力を制御する電源IC(Integrated Circuit)を備えてよい。電源ICは、負荷に供給する電力を、予め定められた電力容量以下に限定できる。例えば、電源ICは、第1負荷12に供給する電力を、第1給電部11の定格電力以下に限定できる。第1給電部11の出力電力が定格電力以下に制限されることによって、電力供給システム100の安定性、又は、信頼性が向上する。
【0047】
共用部負荷34は、種々の負荷を含んでよい。共用部負荷34は、例えば、所定値以上の電力を消費する屋外の水銀灯等の大電力負荷を含んでよい。共用部負荷34は、例えば、所定値未満の電力を消費する廊下のLEDダウンライト等の小電力負荷を含んでよい。分散型電源60は、共用部負荷34のうち小電力負荷に給電し、大電力負荷に給電しないように構成されてよい。分散型電源60は、停電時において、共用部負荷34のうちの一部の負荷に給電するものの、それ以外の負荷に給電しないように構成されてもよい。このようにすることで、停電時において、分散型電源60が給電する電力が制限される。給電電力の制限によって、分散型電源60が給電を継続できる時間が長くなる。その結果、電力供給システム100が提供するFCP若しくはLCP又はBCP対策サービスの信頼性が高まる。
【0048】
第1給電部11と第2給電部21とは、表示及び形状の少なくとも一方によって区別されてよい。第1給電部11と第2給電部21とが区別可能であることによって、住戸部2の居住者は、停電時に利用可能な第1給電部11を把握しやすくなる。その結果、居住者は、電力供給システム100が提供するFCP若しくはLCP又はBCP対策サービスを認知しやすくなる。
【0049】
第1給電部11及び第2給電部21は、例えば
図3に示されるタイプのコンセントであってよい。第1給電部11は、USBコンセントである。第2給電部21は、2極コンセントである。つまり、第1給電部11と第2給電部21とは、外形によって区別されてよい。第1給電部11に、例えば「停電時も使える」又は「BCP対応」という文字の表示が付されている一方で、第2給電部21に何も表示が付されていない。つまり、第1給電部11と第2給電部21とは、表示によって区別されてよい。第1給電部11と第2給電部21とを区別するための表示は、例示されている「停電時も使える」又は「BCP対応」という文字に限られず、他の文字を含んでよいし、図形又は色等を含んでもよい。
【0050】
第1給電部11及び第2給電部21は、例えば
図4に示される第1スイッチ13及び第2スイッチ23を介して、第1負荷12及び第2負荷22に接続されていてよい。第1スイッチ13に接続されている第1負荷12は、LEDダウンライトを含むとする。第2スイッチ23に接続されている第2負荷22は、シーリングライト22eを含むとする。第1スイッチ13は、オン状態に遷移することによって、第1給電部11から第1負荷12への給電経路を導通させ、第1負荷12としてのLEDダウンライトを点灯させる。第2スイッチ23は、オン状態に遷移することによって、第2給電部21から第2負荷22への給電経路を導通させ、第2負荷22としてのシーリングライト22eを点灯させる。
【0051】
第1給電部11と第2給電部21とは、それぞれに対応する第1スイッチ13と第2スイッチ23の表示及び形状の少なくとも一方によって区別されてもよい。第1スイッチ13に「BCP対応」又は「停電時も使える」という文字の表示が付されている一方で、第2スイッチ23に何も表示が付されていない。つまり、第1スイッチ13と第2スイッチ23とは、表示によって区別されてよい。第1スイッチ13と第2スイッチ23とを区別するための表示は、例示されている「BCP対応」又は「停電時も使える」という文字に限られず、他の文字を含んでよいし、図形又は色等を含んでもよい。
【0052】
第1スイッチ13及び第2スイッチ23はそれぞれ、表示部13a及び13bを有してよい。表示部13a及び23aは、スイッチの状態を表示してよい。例えば、表示部13a及び23aは、LEDを含んでよく、スイッチがオン状態であるときに緑色を表示し、スイッチがオフ状態であるときに赤色を表示してよい。停電時において、分散型電源60が第1スイッチ13に給電していれば、第1スイッチ13の表示部13aは、赤色又は緑色で点灯している。一方で、第2スイッチ23の表示部23aは、消灯している。停電時において、住戸部2の居住者は、第1スイッチ13の表示部13aが点灯していることによって、第1スイッチ13を第2スイッチ23と区別できる。その結果、居住者は、点灯している表示部13aを有する第1スイッチ13を操作し、第1負荷12を利用できる。
【0053】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0054】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0055】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1給電部は、第2給電部と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0056】
1 集合住宅
2(2a、2b) 住戸部
2L 住戸部負荷
3 共用部
11 第1給電部
12 第1負荷
13 第1スイッチ
13a 表示部
21 第2給電部
22 第2負荷
23 第2スイッチ
23a 表示部
31 共用部取引メータ
32 住戸部取引メータ
33 共用部分電盤
34 共用部負荷
35 ブレーカ
50 電力網
60 分散型電源
61 パワーコンディショナ(PCS)
62 太陽光発電(PV)
63 蓄電池(BT)
100 電力供給システム