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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】X線診断装置及び医療情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221027BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20221027BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 331E
A61B6/02 351M
A61B6/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019035451
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137797
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹元 久人
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇一郎
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061268(JP,A)
【文献】特開2017-086413(JP,A)
【文献】特表2014-525308(JP,A)
【文献】特開2013-085652(JP,A)
【文献】特開2013-233413(JP,A)
【文献】特開2011-045449(JP,A)
【文献】特開2010-240253(JP,A)
【文献】米国特許第5771895(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B6/00-6/14、34/00-90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源とX線検出器とを支持するアームと、
前記X線源と前記X線検出器とを用いて、被検体を少なくとも2つの異なる方向から撮影した複数の画像から血管の3次元的な走行方向を特定する特定部と、
前記血管における対象部位の周りの軌道を、前記血管の走行方向に基づいて算出する算出部と、
算出された前記軌道に沿って前記対象部位の周りを撮影するように、前記X線源と前記X線検出器とを前記アームで回転させるアーム制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記血管の走行方向に直交し、前記対象部位を含む平面内において、前記軌道を算出する、
請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記対象部位は、前記血管の狭窄部を拡張するステントが留置された部位である、
請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記血管に造影剤を注入して撮影された第1の画像と、カテーテルに装着されたデバイスを前記血管に挿入して撮影された第2の画像であって、前記第1の画像とは異なる方向から撮影された前記第2の画像と、から前記血管の3次元的走行方向を特定する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記血管の走行方向に沿った所定の範囲を複数の領域に分割し、複数の分割領域に対して複数の予備的軌道を夫々算出し、ユーザの指定に応じて、前記複数の予備的軌道の中から、前記軌道を選択する、
請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記デバイスは、前記血管の内側を撮影する血管内超音波撮影デバイスであり、
前記算出部は、前記血管内超音波撮影デバイスで撮影された画像から得られる狭窄情報と、前記第2の画像に描出された前記血管内超音波撮影デバイスの位置との関連付けにより、前記対象部位を推定し、推定した前記対象部位の位置に基づいて前記軌道を算出する、
請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記第2の画像は、前記カテーテルの先端、及び、前記デバイスの近傍の少なくとも1箇所に設けられたマーカが更に撮影された画像であり、
前記算出部は、前記第2の画像に描出された前記マーカの位置に基づいて前記対象部位を推定し、推定した前記対象部位の位置に基づいて前記軌道を算出する、
請求項4に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記特定部は、カテーテルに装着されたデバイスを前記血管に挿入して撮影された第1の画像と、前記デバイスを前記第1の画像とは異なる方向から撮影した第2の画像と、から前記血管の3次元的走行方向を特定する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の画像の夫々は、前記カテーテルの先端、及び、前記デバイスの近傍の少なくとも1箇所に設けられたマーカが撮影された画像であり、
前記算出部は、前記第1及び第2の画像に描出された前記マーカの夫々の位置に基づいて前記対象部位を推定し、推定した前記対象部位の位置に基づいて前記軌道を算出する、
請求項8に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の画像の夫々は、前記カテーテルの先端、及び、前記デバイスの近傍の少なくとも1箇所に設けられたマーカが撮影された画像であり、
前記算出部は、前記第1及び第2の画像に描出された前記マーカの夫々の位置をユーザが参照することにより、前記ユーザが指定した前記対象部位の位置に基づいて前記軌道を算出する、
請求項8に記載のX線診断装置。
【請求項11】
被検体を撮影して収集した3次元画像における血管の対象部位の指定を受け付けると共に、前記対象部位の位置と、前記対象部位に該当する前記血管の走行方向とから、前記血管の走行方向に直交し、前記対象部位を含む平面内において、前記対象部位の周りの軌道を算出する、算出部と、
X線源とX線検出器とを支持するアームと、
前記X線源と前記X線検出器とを用いて被検体を撮影したX線画像に合致するように、前記3次元画像を位置合わせすると共に、前記3次元画像に対して算出された前記軌道を、前記X線源と前記X線検出器に対する軌道に変換する軌道変換部と、
変換された前記軌道に沿って前記対象部位の周りを撮影するように、前記X線源と前記X線検出器とを前記アームで回転させるアーム制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項12】
アームに支持されたX線源とX線検出器とによって、少なくとも2つの異なる方向から被検体を撮影した複数の画像から、血管の3次元的な走行方向を特定する特定部と、
前記血管の走行方向に直交する平面であって、前記血管の対象部位を含む平面内において、前記対象部位の周りの軌道を算出する算出部と、
算出された前記軌道に沿って前記対象部位の周りを撮影するように、前記X線源と前記X線検出器とを前記アームで回転させる制御データを出力する出力部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項13】
被検体を撮影して収集した3次元画像における血管の対象部位の指定を受け付けると共に、前記対象部位の位置と、前記対象部位に該当する前記血管の走行方向とから、前記血管の走行方向に直交する平面であって、前記対象部位を含む平面内において、前記対象部位の周りの軌道を算出する、算出部と、
アームに支持されたX線源とX線検出器とを用いて被検体を撮影したX線画像に合致するように、前記3次元画像を位置合わせすると共に、前記3次元画像に対して算出された前記軌道を、前記X線源と前記X線検出器に対する軌道に変換する軌道変換部と、
変換された前記軌道に沿って前記対象部位の周りを撮影するように、前記X線源と前記X線検出器とを前記アームで回転させる制御データを出力する出力部と、
を備える医用情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置及び医療情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置の中に、脳血管や心臓、冠動脈等の循環器系を撮影する循環器系X線診断装置がある。循環器系X線診断装置は、X線アンギオグラフィ装置とも呼ばれる。循環器系X線診断装置では、X線源とX線検出器の対を、例えばCアームと呼ばれる保持装置の両端部に保持し、被検体の関心領域に対するX線照射方向を任意に変えながらで撮影することができる。
【0003】
循環器系の治療では、カテーテルと呼ばれる細い管を、足の付け根、手首、ひじ等にある動脈から挿入する、PCI(Percutaneous Coronary Intervention)、或は、経皮的冠動脈形成術、と呼ばれる治療が知られている。PCIのひとつにステント治療がある。
【0004】
ステント治療では、ステントと呼ばれる金属でできた細い網目をもつ筒状のデバイスをバルーンの上に被せたカテーテルを、血管の狭窄部に誘導する。その後、バルーンを膨らませて血管を内側から押し広げ、ステントを血管壁に圧着したのち、バルーンをしぼませてカテーテルを引き抜く。押し広げられたステントによって、血管の狭窄部が拡張されることになる。
【0005】
ステント治療後、ステントが血管内に適正に留置されているか否かが確認される。例えば、ステントが血管の狭窄部に適正に留置され、ステントが適正に拡張されているか否かが確認される。
【0006】
従来、ステントの留置状態を確認するために、Cアームを手動で回転、移動させることにより、ステントの留置位置の周囲を撮影する等の方法が用いられていた。しかしながら、Cアームを、所望の方向及び所望の位置に手動で移動させて、所望の確認画像を得ることは困難な作業であった。
【0007】
また、IVUS(Intervascular Ultrasound)等の血管内超音波撮像デバイスを用いて、血管に留置されたステントの内側から撮影した画像によって、ステントの留置状態を確認する方法も考えられる。しかしながら、IVUSを用いた検査は、患者に更なる負担を強いることになり、また、検査時間も多くかかってしまう。
【0008】
そこで、ステントの留置状態等の、PCIの治療結果を、簡便に、かつ、確実に確認できるX線診断装置が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2014-525308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ステントの留置状態等の、PCIの治療結果を、簡便に、かつ、確実に確認できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態のX線診断装置は、X線源とX線検出器とを支持するアームと、前記X線源と前記X線検出器とを用いて、被検体を少なくとも2つの異なる方向から撮影した複数の画像から血管の3次元的な走行方向を特定する特定部と、前記血管の中の対象部位の周りの軌道を、前記血管の走行方向に基づいて算出する算出部と、算出された前記軌道に沿って前記対象部位の周りを撮影するように、前記X線源と前記X線検出器とを前記アームで回転させるアーム制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るX線診断装置の全体構成例を示す構成図。
図2】第1の実施形態のコンソールの構成例と機能例を示すブロック図。
図3】各実施形態のX線診断装置の撮影の対象である治療部位の一例を示す図。
図4】カテーテル治療の手順例を説明する図。
図5】各実施形態のX線診断装置によって実現される機能の概念を説明する図。
図6】第1の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
図7】第1の実施形態のX線診断装置の動作概念を説明する第1の図。
図8】第1の実施形態のX線診断装置の動作概念を説明する第2の図。
図9】第2の実施形態のコンソールの構成例と機能例を示すブロック図。
図10】第2の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
図11】第2の実施形態のX線診断装置の動作概念を説明する図。
図12】第3の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
図13】第3の実施形態のX線診断装置の動作概念を説明する図。
図14】第4及び第5の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
図15】第4及び第5の実施形態のX線診断装置の動作概念を説明する図。
図16】第6の実施形態のコンソールの構成例と機能例を示すブロック図。
図17】第6の実施形態のX線診断装置の動作例を示すフローチャート。
図18】第6の実施形態のX線診断装置の動作概念を説明する図。
図19】他の実施形態に係る医用情報処理装置の第1の構成例を示す図。
図20】他の実施形態に係る医用情報処理装置の第2の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の全体構成を示すブロック図である。X線診断装置1は、コンソール10、寝台20、及び、スキャナ30を備えて構成されている。
【0014】
スキャナ30は、X線源34、X線検出器36、Cアーム33、Cアーム駆動機構32等を有している。Cアーム33は、一方の端部にX線源34を保持し、他方の端部にX線源33を保持し、被検体を中心にX線源34とX線検出器36とを対向配置している。
【0015】
Cアーム33は、Cアーム駆動機構32によって支持されている。Cアーム駆動機構32は、コンソール10からの制御によって、Cアーム33の円弧方向に沿って、X線源34とX線検出器36とを一体的に円弧動させる。更に、Cアーム駆動機構32は、コンソール10からの制御によって、Cアーム33を図1の一点鎖線で示す回転軸周りに回転させ、X線源34とX線検出器36とを被検体の周りに一体的に回転させることができる。
【0016】
X線源34とX線検出器36を結ぶ線分の中点をアイソセンタとするとき、コンソール10からの制御により、X線源34とX線検出器36は、このアイソセンタを通る任意の傾きの平面上における円周軌道に沿って回転することができる。
【0017】
X線源34には、高電圧電力の供給を受けて、被検体の方向にX線を照射するX線管の他、複数枚の鉛羽で構成されるX線照射野絞りや、シリコンゴム等で形成されハレーションを防止するために所定量の照射X線を減衰させる補償フィルタ等が設けられている。
【0018】
X線検出器36は、平面検出器(FPD:flat panel detector)を備え、2次元平面上に配列された検出素子により、被検体を透過したX線を検出して電気信号に変換する。X線検出器36は、FPDに換えて、I.I.(image intensifier)及びTVを有する構成としてもよい。X線検出器36は、X線から変換されたアナログ電気信号を更にデジタル信号に変換し、コンソール10に出力する。
【0019】
寝台20は、被検体が載置される天板22、天板を支持する天板支持部21、及び、コンソールからの指示により、天板22を水平方向、及び、垂直方向に駆動する寝台駆動機構23を備えて構成される。
【0020】
コンソール10は、スキャナ30、及び、寝台20を制御すると共に、X線検出器36から出力される信号に基づいて、X線撮影画像(静止画)や、X線透視画像(ライブ画像)を生成する。
【0021】
図2は、コンソール10の細部構成例、及び、機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、コンソール10は、操作パネル11、記憶回路12、ディスプレイ13、外部通信I/F14、及び、処理回路15を有している。
【0022】
操作パネル11は、スキャナ30の各種の撮影条件の設定、Cアーム33や寝台20の駆動に関する指定等の各種情報やデータを入力するための入力デバイスを備えて構成される。操作パネル11は、各種情報やデータを入力するため、例えば、ジョイスティック、トラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、テンキー、タッチパネル等の入力デバイスを備えている。
【0023】
ディスプレイ13は、例えば、液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示デバイスとして構成され、X線透視画像やX線撮影画像等の画像の他、各種情報や各種データを表示する。
【0024】
外部通信I/F14は、各種の通信プロトコルに従ってX線診断装置1と他の機器とを接続する。この接続には、無線/有線の病院内LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークの各種の通信ネットワークを利用することができる。
【0025】
記憶回路12は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。記憶回路12は、画像や各種撮像条件に関するデータの他、プロセッサが実行する各種のソフトウェアプログラムを記憶する。
【0026】
処理回路15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、専用又は汎用のプロセッサを備える回路である。プロセッサは、記憶回路12に記憶した各種のプログラムを実行することによって、以下に説明する各種の機能を実現する。処理回路15は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路15は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組わせて、各種の機能を実現することもできる。
【0027】
また、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0028】
次に、処理回路15が実現する機能について説明する。図2に示すように、処理回路15は、第1画像生成機能101、第2画像生成機能102、アーム制御機能103、及び、医用情報処理機能104の各機能を実現する。医用情報処理機能104は、3次元画像生成機能110、円周軌道算出機能120、及び、治療部位受付/検出機能130の各機能を含んでいる。
【0029】
第1画像生成機能101は、被検体の血管、例えば、被検体の冠動脈に造影剤を注入して撮影した冠動脈造影画像を、第1の画像として生成する。第1の画像は、Cアーム33を被検体に対して第1の角度に設定して撮影される画像である。
【0030】
第2画像生成機能102は、被検体の血管、例えば、被検体の冠動脈にカテーテルに装着されたデバイスを挿入して撮影したデバイス画像を、第2の画像として撮影する。第2の画像は、Cアーム33を、第1の角度とは異なる第2の角度に設定して撮影される。第2の角度は、例えば、第1の角度と30度以上離れた角度に設定される。
【0031】
3次元画像生成機能110は、異なる角度で撮影された、第1の画像と第2の画像の少なくとも2つの画像から、3次元画像を生成する。また、3次元画像生成機能110は、生成した3次元画像から、デバイスが挿入された血管、例えば、デバイスが挿入された冠動脈を特定し、更に、この冠動脈の走行方向を特定する。
【0032】
治療部位受付/検出機能130は、3次元画像に対して指定される治療部位を受け付ける。或いは、治療部位受付/検出機能130は、3次元画像から治療部位を自動検出してもよい。
【0033】
円周軌道算出機能120は、血管の中の治療部位の周りの円周軌道を、血管の走行方向に基づいて算出する。
【0034】
アーム制御機能103は、算出された円周軌道に沿って治療部位の周りを撮影するように、X線源34とX線検出器36の対をCアーム33によって回転させる。
【0035】
図3は、以下に説明する実施形態のX線診断装置1の撮影の対象である治療部位の一例を示す図である。
【0036】
図3に示すように、右冠動脈や左冠動脈のような冠動脈が心臓を取り巻いている。心臓を取り巻く冠動脈の内壁に徐々に沈着したコレステロール(脂肪)などが血管の内腔を狭め、血管に流れる血液量が減少して、十分な酸素や栄養素を心筋に供給できなくなると、胸痛や胸部圧迫感を招く。これが一般的な狭心症の症状である。また、急に冠動脈が完全に閉塞して血流が途絶えると、急性心筋梗塞に至る。
【0037】
冠動脈疾患の検査の1つとしてカテーテル検査がある。カテーテル検査では、手首、腕の血管や足の付け根の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、冠動脈を直接造影する。カテーテル検査により、冠動脈病変の部位、狭窄の程度が正確に診断できる。急性心筋梗塞などの場合はカテーテル検査に続いてカテーテル治療が行われる。
【0038】
図4は、カテーテル治療の手順を説明する図である。カテーテル治療では、図4の1段目に示すように、ガイドワイヤーを血管の狭窄部に進め、狭窄部の先まで通す。次に、図4の2段目に示すように、ガイドワイヤーを軸にして、バルーンにステントを被せたカテーテルを狭窄部に誘導する。次に、図4の3段目に示すように、バルーンを膨らませて、血管の狭窄部を内側から押し広げ、ステントを血管壁に圧着する。最後に、図4の4段目に示すように、バルーンをしぼませてカテーテルを引き抜く。狭窄部に留置された押し広げられたステントによって、血管の狭窄部が拡張され続けることになる。
【0039】
ステント治療後、ステントが血管内に適正に留置されているか否かが確認される。例えば、ステントが血管の狭窄部に適正に留置され、ステントが適正に拡張されているか否かが確認される。
【0040】
従来、ステントの留置状態を確認するために、Cアームを手動で回転、移動させることにより、ステントの留置位置の周囲を撮影する等の方法が用いられていた。しかしながら、Cアームを、所望の方向及び所望の位置に手動で移動させて、所望の確認画像を得ることは困難な作業であった。
【0041】
そこで、本実施形態に係るX線診断装置1では、ステントの留置状態を、簡便にかつ確実に確認する機能を実現する。図5は、X線診断装置1によって実現される機能の概念を説明する図である。
【0042】
図5に示すように、本実施形態に係るX線診断装置1では、冠動脈の治療部位の指定を受け付けて、或いは、治療部位を検出して、血管の走行方向に直交し、治療部位を含む平面内において、治療部位を中心とする円周軌道を算出する。ここで、治療部位は、ステントが留置されている部位、或いは、ステントが留置されるべき部位である。
【0043】
X線源34とX線検出器36の対を、算出された円周軌道上をCアーム33によって回転させることにより、ステントが留置された部位をアイソセンタ(即ち、X線源34とX線検出器36を結ぶ線分の中央)に合致させた状態で、ステント留置部位の血管に直交する面内の円周軌道に沿って、ステントの留置状態を観察することが可能となる。
【0044】
図6は、第1の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートである。また、図7及び図8は、第1の実施形態のX線診断装置1の動作概念を説明する図である。ステント治療に先立って、通常、冠動脈に造影剤を注入した冠動脈造影画像が取得される。そこで、図6のステップST10では、図7、及び、図8の左上図に示すように、第1の方向から撮影した血管造影画像(例えば、冠動脈造影画像)が、第1画像として取得される。
【0045】
ステップST11では、図7、及び、図8の左下図に示すように、第2の方向から撮影した、血管内デバイスが描出された画像が第2画像として取得される。第2の方向は、第1の方向に対して所定の角度以上離れている必要があり、例えば、第1の方向に対して、30度以上離れているのが好ましい。
【0046】
第1の実施形態で取得する第2画像で撮影する血管内デバイスは、その種類は特に限定するものではなく、治療部位(即ち、ステントが留置されるべき狭窄部)まで到達するカテーテルであれば、カテーテルの先端部のデバイスの種類は問わない。例えば、カテーテルの先端に装着さえるデバイスは、ステント治療の前に狭窄部の検査を行うための血管内超音波撮影デバイス(IVUS:Intervascular Ultrasound)でもよいし、ステント治療に伴うバルーンやステントそのものであってもよい。
【0047】
血管内デバイスの撮影では、通常、造影剤は使用されない。したがって、第2画像では、図8の左下図に太い実線で例示すように、カテーテルの芯に挿入されているガイドワイヤーが主に描出されることになる。
【0048】
ステップST10の処理は、図2の第1画像生成機能101によって実現される処理であり、ステップST11の処理は、第2画像生成機能102によって実現される処理である。
【0049】
図8の右側の図は、図6のステップST12からステップST15までの処理の概念を説明する図である。ステップST12では、第1画像と第2画像とから、血管の3次元的走行方向を示す血管芯線画像を生成する。3以上の方向から撮影した3つ以上の画像から3次元の血管芯線画像を生成してもよい。
【0050】
2方向、或いは、3方向以上の方向から撮影した複数の2次元画像から3次元画像を生成する方法は、公知技術を利用することができる。例えば、2次元画像である第1画像、及び第2画像に対してセグメンテーションを行って、血管領域やガイドワイヤー領域を抽出し、その後、エピポーラ幾何を用いて、デバイスが挿入された血管(即ち、治療対象の血管)の、3次元芯線画像を生成することができる。3次元芯線画像は、血管の正確な形状の情報を提供する必要はなく、血管の芯線の走行方向を提供できればよい。ステップST12の処理は、図2の3次元画像生成機能110によって実現される処理である。
【0051】
ステップST13では、血管芯線画像を複数の領域に分割する。例えば、図8の右図に示すように、領域(1)、領域(2)、領域(3)、領域(4)、領域(5)等の複数領域に分割する。
【0052】
さらにステップST14では、分割した夫々の領域に対して、複数の予備的円周軌道を夫々算出する。ここで、予備的円周軌道は、分割領域の夫々の芯線に直交する平面内において、分割領域の中点を中心とする円周の軌道である。この円周軌道の直径は、例えば、X線源34とX線検出器36との間の距離である。ステップST13及びステップST14の処理は、図2の円周軌道算出機能120によって実現される処理である。
【0053】
図8の右図は、例えば、コンソール10のディスプレイ13に表示される。ユーザは、ディスプレイ13に表示された複数の領域の中から、所望の1つの領域を指定する。
【0054】
ステップST15では、ユーザによる領域の指定を受け付け、複数の予備的円周軌道の中から、ユーザによって指定された領域に対応する軌道を、実際の適用する円周軌道として選択する。ステップST15の処理は、図2の治療部位受付/検出機能130によって実現される処理である。
【0055】
そして、ステップST16では、選択された円周軌道に沿ってCアーム33を回転させ、ステント留置部位の周りを複数個所から撮影する。ステップST16の処理は、図2のアーム制御機能103によって実現される処理である。
【0056】
上述した第1の実施形態に係るX線診断装置1によれば、ステント留置部位の血管の芯線に直交する方向であって、ステント留置部位を中心とする円周軌道上の複数の位置から、ステント留置状態を、簡便に、かつ、確実に確認できるような画像を容易に撮影することできる。
【0057】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係るX線診断装置1の細部構成例、及び、機能構成例を示すブロック図である。また、図10は、第2の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートであり、図11は、第2の実施形態のX線診断装置1の動作概念を説明する図である。
【0058】
第2の実施形態のX線診断装置1は、第1の実施形態と、少なくとも以下の2点で相違している。第1の相違点は、第1の実施形態では、使用する血管内デバイスの種類は限定していないが、第2の実施形態では、使用する血管内デバイスを、血管内超音波撮影デバイス(IVUS)のように、血管の狭窄に関する情報を取得できるデバイスとしている。例えば、血管内超音波撮影デバイス(IVUS)は、カテーテルの先端に装着された超音波トランスデューサによって血管の内腔断層像をリアルタイムで提供することができる。血管の内腔断層像に基づいて、血管の狭窄の状況や、狭窄率等の狭窄に関する指標を得ることができる。
【0059】
第2の相違点は、血管内超音波撮影デバイスで得た狭窄に関する指標と、その指標が得られた血管内の位置とを関連付ける機能を有している点である。この機能は、Co-Registrationとも呼ばれる。血管内超音波撮影デバイスを血管内の所定の位置から引き戻しながら(プルバックしながら)撮影するとき、例えば、プルバック開始の位置と、終了の位置とを血管内超音波撮影デバイスの撮影画像(第2画像)において関連付け、さらに、プルバックしているときの超音波トランスデューサの位置と、血管内超音波撮影デバイスで撮影された超音波画像とを関連付ける。この結果、図11の右上図、及び、右下図に示すように、超音波画像から得られた狭窄率等の血管狭窄に関する指標値と、A、B,C、D、E等のデバイスを挿入した血管の位置とを関連付けることが可能となる。したがって、このような関連付けから、狭窄率が最も大きな部位が、ステントを留置すべき部位(即ち、治療部位)であると推定することができる。
【0060】
図9に示すブロック図では、上述した機能を、IVUS情報入力機能140と、狭窄部位検出機能142によって実現している。IVUS情報入力機能140は、図9中の血管内超音波撮影デバイス500から外部通信I/F14を介して、血管内超音波画像や、狭窄率など指標値を、狭窄に関する情報として入力する。狭窄部位検出機能142は、狭窄率など指標値とデバイスを挿入した血管の位置(A、B,C、D、E等)とを関連付けし、図11の右上図に例示するような図を、例えば、ディスプレイ13に表示させる。
【0061】
治療部位受付/検出機能130は、ディスプレイ13の表示を見たユーザからの指定、例えば、領域Bが、治療部位であるとの指定を受け付けてもよいし、狭窄部位検出機能142による関連付けの結果から、領域Bが治療部位であると自動的に検出してもよい。
【0062】
円周軌道算出機能120は、ユーザから指定された領域B、或いは、装置が自動的に検出した領域Bの周りの円周軌道を、第1の実施形態と同様に算出する。
【0063】
図10に示すフローチャートのうち、ステップST23、及び、ステップST24が、上述した第2の実施形態の機能に対応する処理である。ステップST20、21、22、及び、ステップST25、26の処理は第1の実施形態と同様である。
【0064】
なお、第2の実施形態の血管内デバイスとして、上述した血管内超音波撮影デバイスに換えて、カテーテルの先端に圧力トランスデューサが装着されたデバイスを用いることができる。圧力トランスデューサによって血管内の圧力を測定することにより、FFR(Fractional Flow Reserve)や、IFR(Instantaneous wave-Free Ratio)等の血管の狭窄に関する指標を得ることができる。
【0065】
第2の実施形態のX線診断装置1によれば、血管内超音波撮影デバイス等によって得られる超音波画像や、FFR、IFR等の血管の狭窄に関する指標から、血管内における狭窄部、即ち、治療部位をユーザに正確に提供することができる。また、ユーザからの位置の指定を受け付けることに換えて、治療部位の位置を装置が自動で検出することも可能である。
【0066】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートであり、図13は、第3の実施形態のX線診断装置1の動作概念を説明する図である。
【0067】
第3の実施形態のX線診断装置1では、血管内デバイスとして、マーカ付きのデバイスを用いて第2画像を取得している点が、第1の実施形態と相違する。マーカ付き血管内デバイスは、例えば、バルーンやステントの前端及び後端の少なくとも一方に相当する位置に、X線不透過性の物質(即ち、マーカ)を設けたデバイスである。
【0068】
マーカの無い血管内デバイスを撮影した第2画像では、ガイドワイヤーは描出できるものの、バルーンやステント部分は必ずしも良好に描出されない。これに対して、マーカ付きの血管内デバイスを撮影した第2画像では、マーカが良好に描出されるため、バルーンやステントの位置を容易に視認できる、或いは、容易に装置で自動検出することができる。マーカが所定の時間以上停止している位置は、ステントが留置された位置であると考えられる。つまり、マーカが所定の時間以上停止した位置が治療部位であると推定することができる。
【0069】
そこで、第3の実施形態では、図13の左下図、及び、右図に示したように、第2画像中に描出されたマーカを、3次元血管芯線画像にも引き継ぎ、3次元血管芯線画像におけるマーカ位置を検出するものとしている。そして、3次元血管芯線画像におけるマーカの検出位置が治療部位であると推定し、推定した治療部位の周りに、第1の実施形態と同様の円周軌道を算出するものとしている。
【0070】
図12に示すフローチャートのうち、ステップST33、及び、ステップST34が、上述した第3の実施形態の機能に対応する処理である。ステップST30、31、32、及び、ステップST35、36の処理は第1の実施形態と同様である。
【0071】
第3の実施形態のX線診断装置1によれば、血管内デバイスに設けられたマーカを検出することにより、3次元血管芯線画像における治療部位を簡便に検出することができる。
【0072】
(第4の実施形態)
図14は、第4の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートであり、図15は、第4の実施形態のX線診断装置1の動作概念を説明する図である。
【0073】
上述した第3の実施形態のX線診断装置1では、マーカ付きの血管内デバイスを用いて第2画像を取得している一方で、第1画像に関しては、第1、第2の実施形態と同様に、造影剤を用いた血管造影画像を用いている。これに対して、第4の実施形態のX線診断装置1では、図15の左上図、左下図に示すように、第1画像と第2画像の双方において、マーカ付き血管内デバイスが描出された画像を用いている。第1画像と第2画像の夫々には、マーカに加えて、太い実線で示したガイドワイヤーも描出されている。
【0074】
第1画像及び第2画像は、治療対象の冠動脈に挿入されたマーカ付き血管内デバイスを、異なる2方向から撮影した画像であり、マーカが所定の時間以上停止した状態で撮影した画像である。そして、マーカ付き血管内デバイスが描出された第1画像と第2画像の2つの画像から、図15の右図に示す、マーカが描出された3次元血管芯線画像が生成される。
【0075】
図14に示すフローチャートのうち、ステップST40が、第3の実施形態とは異なる処理であり、それ以外のステップST41~ステップST46の処理は、第3の実施形態のステップST31~36の処理と実質的には同じである。
【0076】
第3の実施形態と同様に、マーカが所定の時間以上停止した位置は、ステントが留置された位置であると考えることができる。したがって、第4の実施形態に係るX線診断装置1によれば、第3の実施形態と同様に、3次元血管芯線画像においてマーカ位置を検出することにより、3次元血管芯線画像における治療部位を簡便に検出することができる。
【0077】
(第5の実施形態)
上述した第4の実施形態では、3次元血管芯線画像から、装置が(具体的には、治療部位受付/検出機能130が)、マーカ位置を検出することで自動的に治療部位を検出するものとしていた。これに対して、第5の実施形態では、マーカが描出された3次元血管芯線画像をユーザが参照し、ユーザが手動で治療部位を指定するものとしている。
【0078】
具体的には、図14のステップST43において、ディスプレイ13に表示された3次元血管芯線画像に対して、ユーザがマーカ位置を指定する。その後、ステップST44では、指定されたマーカ位置に基づいて、3次元血管芯線画像中の治療部位の位置を特定する。
【0079】
第5の実施形態に係るX線診断装置1によれば、ユーザによる手動操作を一部に含むものの、第4の実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
【0080】
(第6の実施形態)
図16は、第6の実施形態に係るX線診断装置1の細部構成例、及び、機能構成例を示すブロック図である。また、図17は、第6の実施形態のX線診断装置1の動作例を示すフローチャートであり、図18は、第6の実施形態のX線診断装置1の動作概念を説明する図である。
【0081】
ここまで説明してきた第1~第5の実施形態では、X線診断装置1で撮影した複数の画像から生成した3次元血管芯線画像の治療部位に対して円周軌道を算出していた。これに対して、第6の実施形態のX線診断装置1では、X線診断装置1以外の他の医用画像診断装置、例えば、CT装置で収集した3次元画像の治療部位に対して円周軌道を算出するものとしている。以下、図17のフローチャートに基づいて第6の実施形態の動作例を説明する。
【0082】
まず、ステップST60で、他の医用画像診断装置、例えば、CT装置で収集した当該患者の3次元画像データを入力する。3次元画像データは、図16の3次元画像入力機能150により、外部通信I/F14を介して、例えばCT装置や、画像サーバから入力される。
【0083】
ステップST61では、入力した3次元画像データ中の治療部位を検出する。治療部位の検出は、本装置(X線診断装置1)が自動で検出してもよいし、入力した3次元画像をディスプレイ13に表示し、ユーザが指定する治療部位の位置を受け付けることによって、治療部位を検出してもよい。
【0084】
ステップST63では、検出した治療部位の周りの円周軌道を、3次元画像データに対して算出する。具体的には、検出した治療部位の位置と、治療部位に該当する血管の走行方向とから、血管の走行方向に直交し、治療部位を含む平面内において、治療部位の周りの円周軌道を算出する。ステップST61、63の処理は、図16の治療部位検出/円周軌道算出機能154によって行われる。なお。ステップST61、63の処理は、ステント治療の前に、例えば、ステント治療の計画段階等で行なわれる。
【0085】
図18の左上図は、他の医用画像診断装置で収集された当該患者の3次元画像データと、この3次元画像データに対して検出された治療部位、及び、この治療部位の周りに算出された円周軌道を例示する図である。
【0086】
ステップST64以降の処理は、ステント治療の実行段階で行われる処理である。まず、ステップST64では、本装置(X線診断装置1)を用いて、第1の方向から被検体に造影剤を注入して撮影した血管造影画像を、第1画像として取得する。同様に、ステップST65では、第2の方向から撮影した血管造影画像を、第2画像として取得する。ステップST64、65の処理は、図16の第1画像生成機能101、及び、第2画像生成機能102によって行われる。図18の左下図は、第1画像、及び、第2画像の2つの血管造影画像を例示する図である。
【0087】
次に、ステップST66では、ステップST64、65で取得した血管造影画像に合致するように、他の医用画像診断装置で取得した3次元画像データを、例えば、相関処理等を用いて位置合わせする。この位置合わせ処理は、図16の位置合わせ機能152によって行われる。なお、第1画像と第2画像のいずれか1つの血管造影画像を用いて、この血管造影画像に合致するように、他の医用画像診断装置で取得した3次元画像データを位置合わせしてもよい。図18の右図は、血管造影画像に合致するように位置合わせされた3次元画像を例示する図である。
【0088】
ステップST67では、位置合わせ処理によって算出された、座標変換データ等の位置合わせデータを用いて、3次元画像データに対して算出された円周軌道を、血管造影画像に対する円周軌道に変換する。ステップST67の処理は、図16の円周軌道変換機能156によって行われる。
【0089】
ステップST68の処理は、第1乃至第5の実施形態と実質的に同じであり、変換された円周軌道に沿ってCアーム33を回転させて、ステントの留置部位の周りを撮影する。
【0090】
第6の実施形態のX線診断装置1では、当該患者を他の医用画像診断装置で撮影した3次元画像データを用いることにより、ステント治療の計画段階において円周軌道を算出することができるため、ステント治療の実行段階の時間を短縮することができる。
【0091】
(他の実施形態)
第1乃至第6の実施形態では、生成した画像、或いは、取得した画像を処理して円周軌道を算出し、算出した円周軌道に基づいてCアームを制御しつつ撮影するまでの全ての機能を、X線診断装置1で実現している。これに対して、X線診断装置1で生成した画像を入力し、入力した画像を処理して円周軌道を算出するまでの処理を、X線診断装置1とは別体の装置、即ち、医用情報処理装置300で行うこともできる。
【0092】
図19、及び、図20は、このような機能を有する医用情報処理装置300の構成例と、係る機能を除いたX線診断装置1の構成例を示すブロック図である。
【0093】
図19は、主に、第1乃至第5の実施形態に対応するブロック図(図2又は図9)における、医用画像処理機能104に対応する機能を実現する医用情報処理装置300の構成例を示す図である。
【0094】
医用情報処理装置300は、例えば、ワークステーションのような計算機であり、操作パネル301、記憶回路302、ディスプレイ303、外部通信i/F304、及び、処理回路310を有している。また、処理回路310は、3次元画像生成機能311、円周軌道算出機能312、及び、治療部位受付/検出機能313の各機能を実現する。
【0095】
上述した各構成、及び、各機能は、同一名称の構成及び機能として既に説明済みであるため、更なる説明を省略する。
【0096】
一方、図20は、第6の実施形態に対応するブロック図(図16)における、医用画像処理機能104に対応する機能を実現する医用情報処理装置300の構成例を示す図である。図20に示す医用情報処理装置300も、ワークステーションのような計算機であり、操作パネル301、記憶回路302、ディスプレイ303、外部通信I/F304、及び、処理回路310を有しており、処理回路310は、3次元画像取得機能350、位置合せ機能352、及び、治療部位検出/円周軌道算出機能354の各機能を実現する。図20に示す各構成、及び、各機能も、同一名称の構成及び機能として既に説明済みであるため、更なる説明を省略する。
【0097】
以上説明してきたように、各実施形態のX線診断装置1は、ステントの留置状態等の、PCIの治療結果を、簡便に、かつ、確実に確認できるようにすることができる。
【0098】
なお、各実施形態の記載における3次元画像生成機能は、特許請求の範囲の記載における特定部の一例である。また、各実施形態の記載における円周軌道算出機能は、特許請求の範囲の記載における算出部の一例である。また、各実施形態の記載におけるアーム制御機能は、特許請求の範囲の記載におけるアーム制御部の一例である。また、各実施形態の記載における治療部位は、ステントが留置されている部位だけでなく、ステントが留置されるべき部位を含み、更には、ステントを留置するか否かの判定対象である血管の狭窄部位、又は、血管の狭窄が起こっている可能性のある診断対象部位を含む。各実施形態の記載における「治療部位」との用語は、特許請求の範囲における「対象部位」の一例である。たとえば、狭窄の程度を確認するために、狭窄部位の周りの軌道をアームが回転し、造影下で透視を実行することがあり、このような場合の狭窄部位は「対象部位」に含まれる。そして、狭窄の程度の確認の結果、ステント留置等の治療を行う場合と、治療を行わない場合がありえる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 X線診断装置
10 コンソール
11 操作パネル
12 記憶回路
13 ディスプレイ
15 処理回路
20 寝台
30 スキャナ
33 Cアーム
34 X線源
36 X線検出器
101 第1画像生成機能
102 第2画像生成機能
103 アーム制御機能
104 医用情報処理機能
110 3次元画像生成機能
120 円周軌道算出機能
130 治療部位受付/検出機能
140 IVUS情報入力機能
142 狭窄部位検出機能
150 3次元画像入力機能
152 位置合せ機能
154 治療部位検出/円周軌道算出機能
156 円周軌道変換機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20