(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】積層体成形装置の校正部材、積層体成形装置及び積層体成形方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/90 20210101AFI20221027BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20221027BHJP
B22F 10/31 20210101ALI20221027BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20221027BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20221027BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20221027BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221027BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221027BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20221027BHJP
【FI】
B22F12/90
B22F10/28
B22F10/31
B22F10/85
B23K26/00 M
B23K26/342
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019038940
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 秀次
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 泰之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁
(72)【発明者】
【氏名】坪田 秀峰
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-133120(JP,A)
【文献】特表2012-522661(JP,A)
【文献】国際公開第2017/190863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90,
B33Y 10/00-99/00,
B29C 64/00-64/40,
B23K 26/34,26/342,
B23K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを粉末に照射して積層体を成形する積層体成形装置の校正部材であって、
前記積層体成形装置の前記光ビームが照射されるステージに取り付けられる基台部と、
前記基台部に設けられて前記光ビームを検出する検出装置が取り付けられ、互いに異なる位置に複数設けられる取付部と、を有し、
それぞれの前記取付部は、取り付けられる前記検出装置の検知方向が互いに異なるように、互いに異なる角度で設けられる、
積層体成形装置の校正部材。
【請求項2】
前記取付部は、開口が設けられ、前記開口の中心軸が、前記基台部の表面の中心側を向くように傾斜している、請求項1に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項3】
前記取付部は、前記基台部の一方の表面に設けられる開口であり、底面が前記基台部の表面の中心側に向けて傾斜している、請求項1又は請求項2に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項4】
前記基台部は、内側が開口する枠状の部材であり、前記取付部は、前記基台部の内側に設けられる輪状の部材である、請求項1又は請求項2に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項5】
それぞれの前記取付部は、取り付けられる前記検出装置の検知方向が、前記基台部の表面に交差し、かつ、前記基台部の表面の中心側を向くように、互いに異なる角度で設けられる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項6】
それぞれの前記取付部は、取り付けられる前記検出装置の検出素子の受光面が、前記光ビームに対して直交するように、互いに異なる角度で設けられる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項7】
前記取付部は、開口が設けられ、前記開口の中心軸が可変である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項8】
前記取付部に向けて照射される前記光ビームのうち、前記取付部に取付けられる前記検出装置の検出素子に入射する以外の光ビームを受光して、受光した前記光ビームから吸熱する吸熱部をさらに有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項9】
前記吸熱部は、前記取付部よりも、前記光ビームが照射される側と反対側に設けられる、請求項8に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項10】
前記吸熱部は、複数の前記取付部に接続されている、請求項9に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項11】
前記吸熱部は、それぞれの前記取付部に対応して、複数設けられる、請求項8又は請求項9に記載の積層体成形装置の校正部材。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の前記校正部材と、
前記校正部材が取り付けられる前記ステージと、
前記校正部材の前記取付部に取付けられる前記検出装置と、
前記光ビームを照射する照射部と、
前記粉末を供給する粉末供給部と、
を有する、
積層体成形装置。
【請求項13】
前記検出装置は、検出素子よりも前記光ビームが照射される側に設けられ、前記検出装置に向けて照射される前記光ビームが入射して、入射した前記光ビームの一部を前記検出素子に向けて出射するビームダンパ部を有する、請求項12に記載の積層体成形装置。
【請求項14】
前記積層体の成形を制御する制御部をさらに有し、
前記制御部は、
前記校正部材が前記ステージに取付けられた状態で、前記校正部材に取付けられた前記検出装置に前記光ビームを照射させる照射制御部と、
前記検出装置から前記光ビームの検出結果を取得し、取得した前記光ビームの検出結果に基づき、前記ステージ上の位置毎の前記光ビームの状態を検出する状態検出部と、
前記状態検出部が検出した前記光ビームの状態に基づき、前記光ビームの状態が正常であるかを判定する判定部と、
前記光ビームの状態が正常であると判定された場合に、前記照射部と前記粉末供給部とを制御して、前記積層体の成形を行う成形制御部と、
を有する、請求項12又は請求項13に記載の積層体成形装置。
【請求項15】
前記判定部による前記光ビームの状態の判定結果を表示する出力部を有する、請求項14に記載の積層体成形装置。
【請求項16】
前記出力部は、前記ステージ上の位置毎の前記光ビームの状態の判定結果と、前記照射部の出射口を覆う保護部の位置毎の前記光ビームの状態の判定結果と、の少なくとも1つを表示する、請求項15に記載の積層体成形装置。
【請求項17】
校正部材と、前記校正部材の取付部に取付けられた検出装置と、光ビームを照射する照射部と、粉末を供給する粉末供給部と、前記校正部材が取り付けられるステージと、を有する、積層体成形装置を用いた積層体成形方法であって、前記校正部材は、前記積層体成形装置の前記光ビームが照射されるステージに取り付けられる基台部と、前記基台部に設けられて前記光ビームを検出する検出装置が取り付けられ、互いに異なる位置に複数設けられる取付部と、を有し、それぞれの前記取付部は、取り付けられる前記検出装置の検知方向が互いに異なるように、互いに異なる角度で設けられており、
前記校正部材が前記ステージに取付けられた状態で、前記校正部材に取付けられた前記検出装置に前記光ビームを照射するステップと、
前記検出装置から前記光ビームの検出結果を取得し、取得した前記光ビームの検出結果に基づき、前記ステージ上の位置毎の前記光ビームの状態を検出するステップと、
前記光ビームの状態を検出するステップで検出した前記光ビームの状態に基づき、前記光ビームの状態が正常であるかを判定するステップと、
前記光ビームの状態が正常であると判定された場合に、前記照射部と前記粉末供給部とを制御して、積層体の成形を行うステップと、
を有する、積層体成形方法。
【請求項18】
前記光ビームの状態を検出するステップにおいて、前記光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度を算出し、
前記光ビームの状態が正常であるかを判定するステップにおいて、前記光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度に基づき、前記光ビームの状態が正常であるかを判定する、請求項17に記載の積層体成形方法。
【請求項19】
前記光ビームの状態が正常であるかを判定するステップにおいて、前記光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度のそれぞれを、基準データと比較することで、前記光ビームの状態が正常であるかを判定する、請求項18に記載の積層体成形方法。
【請求項20】
前記光ビームの状態が正常であるかを判定するステップにおいて、前記光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度のうち、前記光ビームの平均出力、強度分布、及び照射位置が条件を満たす場合に、前記光ビームの状態が正常であると判断する、請求項18又は請求項19に記載の積層体成形方法。
【請求項21】
前記光ビームの状態が正常でないと判断した場合、前記照射部に異常がある旨を通知するステップを有する、請求項17から請求項20のいずれか1項に記載の積層体成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体成形装置の校正部材、積層体成形装置及び積層体成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属粉末などの粉末を原料として三次元積層体を成形する積層体成形方法が実用化されている。例えば特許文献1には、金属粉末層に光ビームを照射して三次元積層体を製造する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、三次元積層体の品質は、粉末に照射される光ビームの状態に大きく影響を受ける。従って、積層体成形装置において、粉末に照射される光ビームの状態を予め把握して、照射する光ビームの特性を調整することが求められる。
【0005】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述した課題を解決するものであり、照射する光ビームの状態を適切に検出可能な積層体成形装置の校正部材、積層体成形装置及び積層体成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る積層体成形装置の校正部材は、光ビームを粉末に照射して積層体を成形する積層体成形装置の校正部材であって、前記積層体成形装置の前記光ビームが照射されるステージに取り付けられる基台部と、前記基台部に設けられて前記光ビームを検出する検出装置が取り付けられ、互いに異なる位置に複数設けられる取付部と、を有し、それぞれの前記取付部は、取り付けられる前記検出装置の検知方向が互いに異なるように、互いに異なる角度で設けられる。
【0007】
この校正部材によると、光ビームを適切に検出させることができる。
【0008】
前記取付部は、開口が設けられ、前記開口の中心軸が、前記基台部の表面の中心側を向くように傾斜していることが好ましい。この校正部材によると、それぞれの位置で、光ビームを適切に検出させることができる。
【0009】
前記取付部は、前記基台部の一方の表面に設けられる開口であり、底面が前記基台部の表面の中心側に向けて傾斜していることが好ましい。この校正部材によると、それぞれの位置で、光ビームを適切に検出させることができる。
【0010】
それぞれの前記取付部は、取り付けられる前記検出装置の検知方向が、前記基台部の表面に交差し、かつ、前記基台部の表面の中心側を向くように、互いに異なる角度で設けられることが好ましい。この校正部材によると、それぞれの位置で、光ビームを適切に検出させることができる。
【0011】
それぞれの前記取付部は、取り付けられる前記検出装置の検出素子の受光面が、前記光ビームに対して直交するように、互いに異なる角度で設けられることが好ましい。この校正部材によると、それぞれの位置で、光ビームを適切に検出させることができる。
【0012】
前記取付部は、開口が設けられ、前記開口の中心軸が可変であることが好ましい。この校正部材によると、検査の汎用性を高くすることができる。
【0013】
前記取付部に向けて照射される前記光ビームのうち、前記取付部に取付けられる前記検出装置の検出素子に入射する以外の光ビームを受光して、受光した前記光ビームから吸熱する吸熱部をさらに有することが好ましい。この校正部材によると、光ビームを適切に検出しつつ、光ビームの熱によって他の装置などがダメージを受けることを抑制できる。
【0014】
前記吸熱部は、前記取付部よりも、前記光ビームが照射される側と反対側に設けられることが好ましい。この校正部材によると、光ビームを適切に検出しつつ、光ビームの熱によって他の装置などがダメージを受けることを抑制できる。
【0015】
前記吸熱部は、複数の前記取付部に接続されていることが好ましい。この校正部材によると、光ビームを適切に検出しつつ、光ビームの熱によって他の装置などがダメージを受けることを抑制できる。
【0016】
前記吸熱部は、それぞれの前記取付部に対応して、複数設けられることが好ましい。この校正部材によると、光ビームを適切に検出しつつ、光ビームの熱によって他の装置などがダメージを受けることを抑制できる。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る積層体成形装置は、前記校正部材と、前記校正部材が取り付けられる前記ステージと、前記校正部材の前記取付部に取付けられる前記検出装置と、前記光ビームを照射する照射部と、前記粉末を供給する粉末供給部と、を有する。この積層体成形装置は、検出装置が取り付けられる校正部材を有するため、ステージ上のそれぞれの位置で、光ビームを適切に検出させることができる。
【0018】
前記検出装置は、検出素子よりも前記光ビームが照射される側に設けられ、前記検出装置に向けて照射される前記光ビームが入射して、入射した前記光ビームの一部を前記検出素子に向けて出射するビームダンパ部を有することが好ましい。この積層体成形装置によると、検出素子が強度の高い光ビームによりダメージを受けることを抑制できる。
【0019】
前記積層体の成形を制御する制御部をさらに有し、前記制御部は、前記校正部材が前記ステージに取付けられた状態で、前記校正部材に取付けられた前記検出装置に前記光ビームを照射させる照射制御部と、前記検出装置から前記光ビームの検出結果を取得し、取得した前記光ビームの検出結果に基づき、前記ステージ上の位置毎の前記光ビームの状態を検出する状態検出部と、前記状態検出部が検出した前記光ビームの状態に基づき、前記光ビームの状態が正常であるかを判定する判定部と、前記光ビームの状態が正常であると判定された場合に、前記照射部と前記粉末供給部とを制御して、前記積層体の成形を行わせる成形制御部と、を有することの好ましい。この積層体成形装置によると、状態異常の光ビームで積層体を成形することが抑制され、積層体の成形不良を抑制できる。
【0020】
前記判定部による前記光ビームの状態の判定結果を表示する出力部を有することが好ましい。この積層体成形装置によると、判定結果をユーザに適切に通知することができる。
【0021】
前記出力部は、前記ステージ上の位置毎の前記光ビームの状態の判定結果と、前記照射部の出射口を覆う保護部の位置毎の前記光ビームの状態の判定結果と、の少なくとも1つを表示することが好ましい。この積層体成形装置によると、ステージや保護部のどの位置が異常であるかを、ユーザに適切に通知することができる。
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る積層体成形方法は、校正部材と、前記校正部材の前記取付部に取付けられた検出装置と、前記光ビームを照射する照射部と、前記粉末を供給する粉末供給部と、前記校正部材が取り付けられる前記ステージと、を有する、積層体成形装置を用いた積層体成形方法であって、前記校正部材は、前記積層体成形装置の前記光ビームが照射されるステージに取り付けられる基台部と、前記基台部に設けられて前記光ビームを検出する検出装置が取り付けられ、互いに異なる位置に複数設けられる取付部と、を有し、それぞれの前記取付部は、取り付けられる前記検出装置の検知方向が互いに異なるように、互いに異なる角度で設けられており、前記校正部材が前記ステージに取付けられた状態で、前記校正部材に取付けられた前記検出装置に前記光ビームを照射するステップと、前記検出装置から前記光ビームの検出結果を取得し、取得した前記光ビームの検出結果に基づき、前記ステージ上の位置毎の前記光ビームの状態を検出するステップと、前記光ビームの状態を検出するステップで検出した前記光ビームの状態に基づき、前記光ビームの状態が正常であるかを判定するステップと、前記光ビームの状態が正常であると判定された場合に、前記照射部と前記粉末供給部とを制御して、前記積層体の成形を行うステップと、を有する。この積層体成形方法によると、状態異常の光ビームで積層体を成形することが抑制され、積層体の成形不良を抑制できる。
【0023】
前記光ビームの状態を検出するステップにおいて、前記光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度を算出し、前記光ビームの状態が正常であるかを判定するステップにおいて、前記光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度に基づき、前記光ビームの状態が正常であるかを判定することが好ましい。この積層体成形方法によると、状態異常を適切に検出することができるため、積層体の成形不良を抑制できる。
【0024】
前記光ビームの状態が正常であるかを判定するステップにおいて、前記光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度のそれぞれを、基準データと比較することで、前記光ビームの状態が正常であるかを判定することが好ましい。この積層体成形方法によると、状態異常を適切に検出することができるため、積層体の成形不良を抑制できる。
【0025】
前記光ビームの状態が正常であるかを判定するステップにおいて、前記光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度のうち、前記光ビームの平均出力、強度分布、及び照射位置が条件を満たす場合に、前記光ビームの状態が正常であると判断することが好ましい。この積層体成形方法によると、状態異常を適切に検出することができるため、積層体の成形不良を抑制できる。
【0026】
前記光ビームの状態が正常でないと判断した場合、前記照射部に異常がある旨を通知するステップを有することが好ましい。この積層体成形方法によると、判定結果をユーザに適切に通知することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、照射する光ビームの状態を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る積層体成形装置の模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る積層体成形装置の模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る校正部材の上面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る校正部材の断面図である。
【
図5】
図5は、検出装置を校正部材に取付けた場合を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る制御装置のブロック図である。
【
図7】
図7は、光ビームの画像の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る制御装置の制御フローを説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、光ビームの状態判定のフローを説明するフローチャートである。
【
図12】
図12は、本実施形態に係る校正部材の他の例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係る校正部材の他の例を示す上面図である。
【
図14】
図14は、本実施形態に係る校正部材の他の例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0030】
(積層体成形装置の全体構成)
図1は、本実施形態に係る積層体成形装置の模式図である。本実施形態に係る積層体成形装置1は、いわゆるパウダーベッド方式を用いて、粉末Pから立体造形物である積層体Mを成形する。粉末Pは、本実施形態では金属粉末であるが、金属粉末に限られず、例えば樹脂粉末であってもよい。
図1に示すように、積層体成形装置1は、成形室10と、粉末供給部12と、ブレード14と、照射部16と、制御装置18とを有する。積層体成形装置1は、制御装置18の制御により、粉末供給部12から成形室10のステージ32上に粉末Pを供給し、ステージ32上に供給された粉末Pに、照射部16から光ビームLを照射することで、粉末Pを溶融固化又は焼結させて、積層体Mを成形する。積層体Mとしては、例えば、ガスタービン、ターボチャージャ、飛昇体、及びロケットエンジンなどの部品が挙げられるが、それらに限られない。以下、ステージ32の表面32Aに沿った方向を、方向Xとし、ステージ32の表面32Aに沿った一方向であって方向Xに直交する方向を、方向Yとする。また、方向X及び方向Yに直交する方向を、方向Zとする。また、方向Zのうち、ステージ32から照射部16に向かう方向を、方向Z1とし、照射部16からステージ32に向かう方向、すなわち方向Z1の反対方向を、方向Z2とする。
【0031】
成形室10は、筐体30と、ステージ32と、移動機構34とを有する。筐体30は、上側、すなわち方向Z1側が開放された筐体である。ステージ32は、筐体30内に、筐体30に囲われるように配置される。ステージ32は、筐体30内で方向Z1及び方向Z2に移動可能に構成される。ステージ32の方向Z1側の表面32Aと、筐体30の内周面とで囲われる空間ARが、粉末Pが供給される空間となる。すなわち、空間ARは、ステージ32上の空間であるといえる。移動機構34は、ステージ32に接続される。移動機構34は、制御装置18の制御により、ステージ32を、方向Z1及び方向Z2に移動させる。
【0032】
粉末供給部12は、内部に粉末Pを貯留する機構である。粉末供給部12は、制御装置18により粉末Pの供給が制御され、制御装置18の制御により、供給口12Aから、ステージ32上の空間ARに粉末Pを供給する。ブレード14は、空間ARに供給された粉末Pを水平に掃き均す(スキージングする)スキージングブレードである。ブレード14は、制御装置18によって制御される。ここで、空間ARの方向Z1側の面を、面PLとする。面PLは、例えば筐体30の方向Z1側の端面30Aに沿った面である。空間ARに供給された粉末Pは、ブレード14にスキージングされることで面PLに沿うように掃き均され、方向Z1側の表面が面PLに沿った粉末層となる。
【0033】
なお、本実施形態では、粉末Pは、粉末供給部12及びブレード14により、方向Xに向けて空間ARに供給される。すなわち、リコータされる方向は、方向Xとなる。また、本実施形態では、図示しない気体供給部により、照射部16とステージ32上との間の空間に、不活性ガスが供給される。本実施形態では、気体供給部は、方向Yに向けて不活性ガスを供給する。すなわち、不活性ガスが供給される方向とリコータされる方向とは、方向Xと方向Yとで異なる方向となる。ただし、不活性ガスが供給される方向とリコータされる方向とは、方向Xと方向Yとに限られない。なお、不活性ガスが供給される方向とリコータされる方向とは、交差することが好ましいが、同一方向であってもよい。
【0034】
照射部16は、ステージ32上、すなわち空間ARに向けて光ビームLを照射する装置である。光ビームLは、本実施形態ではレーザ光であるが、レーザ光に限られず、例えば電子ビームであってもよい。照射部16は、筐体40と、光源部42と、走査部44と、レンズ46と、保護部48とを有する。筐体40は、内部に光源部42、走査部44及びレンズ46を収納する筐体である。光源部42は、光ビームLの照射源、ここでは光源である。光源部42は、制御装置18の制御により光ビームLを生成、照射する。走査部44は、光源部42から照射された光ビームLを受光し、受光した光ビームLの出射角度を調整可能に構成される機構である。走査部44は、光ビームLの出射角度を調整することで、ステージ32上における光ビームLの照射位置を調整する。走査部44は、制御装置18の制御により、光ビームLの照射位置を調整する。
図1の例では、走査部44は、ミラー44Aとミラー44Bとを備えたガルバノミラーである。ミラー44Aは、光源部42からの光ビームLを受光して、ミラー44Bに向けて反射する。ミラー44Aは、制御装置18の制御により、1軸方向回り、例えば方向Zに沿った軸回りに回転する。ミラー44Bは、ミラー44Aからの光ビームLを受光して、レンズ46に向けて反射する。ミラー44Bは、制御装置18の制御により、1軸方向回り、例えば方向Xに沿った軸回りに回転する。走査部44は、ミラー44A、44Bの回転により、ステージ32上での光ビームLの照射位置を、方向X及び方向Yに走査する。
【0035】
レンズ46は、ミラー44Bから出射された光ビームLを集光して、筐体40の出射口40Aに向けて出射する。出射口40Aは、筐体40に設けられる開口であり、光ビームLが出射される開口である。保護部48は、出射口40Aを覆う部材である。保護部48は、光ビームLが透過可能な材料で構成されており、本実施形態では、例えば透光性を有するガラスで構成される。走査部44から出射された光ビームLは、レンズ46及び保護部48を通って、ステージ32上に照射される。ステージ32上の空間ARには、粉末Pが供給されているため、光ビームLは、ステージ32上の粉末Pに照射される。粉末Pは、光ビームLが照射された位置において、溶融固化(溶融した後固化し)、又は、焼結される。なお、粉末Pは、面PLに沿うように供給されているため、面PLが、粉末Pに光ビームLが照射される照射面となる。制御装置18については後述する。
【0036】
積層体成形装置1は、このようにステージ32上の粉末Pに光ビームLを照射することで、粉末Pが固化又は焼結した固化層を形成する。その後、ステージ32を方向Z2側に移動させてステージ32上に空間ARを形成し、その空間ARに粉末Pを供給して光ビームLを照射することで、固化層の形成を繰り返す。積層体成形装置1は、このようにして固化層を積層させて、積層体Mを成形する。
【0037】
ここで、積層体Mの強度などの品質は、照射される光ビームLの状態に大きく影響を受ける。光ビームLの状態とは、例えば、光ビームLの出力(強度)や、強度分布や、ステージ32上での照射位置などである。例えば、光ビームLの強度が小さかったり、光ビームLのステージ上での照射位置が狙い位置から大きくずれていたりする場合、積層体Mの品質が低下する。また、光ビームLは、保護部48を通ってステージ32上に照射される。従って、保護部48の表面48Aにヒュームなどの異物が付着したり、保護部48が破損していたりするなど、保護部48に不具合がある場合にも、光ビームLの状態に影響を及ぼし、積層体Mの品質に影響を及ぼす。従って、本実施形態においては、積層体成形装置1に校正部材50と検出装置70とを取り付けて、光ビームLの状態を検出して、必要に応じて光ビームLの校正を促す。
【0038】
(校正部材及び検出装置の構成)
図2は、本実施形態に係る積層体成形装置の模式図である。
図2は、校正部材50と検出装置70とが取り付けられた場合の積層体成形装置1を模式的に示している。
図2に示すように、校正部材50は、ステージ32上に取付けられる。具体的には、校正部材50は、基台部60と、取付部62とを有する。基台部60は、ステージ32に取り付け可能に構成される部材である。基台部60は、本実施形態では板状の部材であり、表面60Aが方向Z1側を向き、表面60Aと反対側の面である背面60Bが方向Z2側を向くように、ステージ32に取付けられる。すなわち、基台部60は、背面60Bがステージ32の表面32Aに対向して接触するようにステージ32上に取付けられる。従って、校正部材50は、基台部60の表面60A及び背面60Bが、方向X及び方向Yに沿う。
【0039】
また、基台部60は、本実施形態では、表面60Aが、面PL(光ビームLの照射面)に沿うように、ステージ32上に取付けられる。例えば、積層体成形装置1は、基台部60の位置決めを行う位置決め部52を有していてよい。位置決め部52は、基台部60の方向Zにおける位置決めを行うよう構成される。例えば、位置決め部52は、筐体30に取付けられ、筐体30に取付けられた状態において面PLに沿う部材52Aを有する。例えば、ステージ32上に配置された校正部材50は、基台部60の表面60Aが部材52Aに接触した状態において、表面60Aが面PLに沿った適正な位置となる。この場合、校正部材50をステージ32上に置いた状態で移動機構34を駆動してステージ32を動かして、基台部60の表面60Aが部材52Aに接触させることで、校正部材50を適正な位置に取り付けることができる。ただし、校正部材50は、表面60Aが面PLに沿うように配置されることに限られず、光ビームLを適切に検出できる位置に配置されていればよい。
【0040】
図3は、本実施形態に係る校正部材の上面図である。
図3は、校正部材50を方向Z1から見た図である。取付部62は、基台部60に設けられて、光ビームLを検出する検出装置70が取り付け可能に構成される。取付部62は、本実施形態においては、基台部60の表面60Aに設けられる開口、すなわち取付穴部である。また、
図3に示すように、取付部62は、複数設けられ、それぞれの取付部62は、方向X及び方向Yにおいて、互いに異なる位置に設けられる。ここで、基台部60の方向Zに沿った中心軸を、中心軸Cとする。中心軸Cは、方向Zから見た場合の、基台部60の表面60Aの中心位置であるともいえる。この場合、取付部62は、中心軸Cに重畳する位置(表面60Aの中心位置)と、中心軸Cに重畳する位置とは異なる位置と、に設けられることが好ましい。
図3の例では、取付部62として、取付部62A、62B、62C、62D、62E、62F、62G、62H、62Iが設けられている。取付部62Aは、中心軸Cに重畳する位置に設けられる。取付部62Bは、取付部62Aの方向X側に設けられ、取付部62Cは、取付部62Aの方向Xと反対側に設けられる。取付部62D、62E、62Fは、それぞれ、取付部62C、62A、62Bの方向Y側に設けられる。取付部62G、62H、62Iは、それぞれ、取付部62C、62A、62Bの方向Yと反対側に設けられる。ただし、取付部62の数及び位置は、
図3の例に限られないが、少なくとも、中心軸Cに重畳する位置にある取付部62Aと、方向Zから見て基台部60の矩形状の表面60Aの四隅にある取付部62D、62F、62G、62Iとが、設けられていることが好ましい。
【0041】
図4は、本実施形態に係る校正部材の断面図である。
図4は、
図3の矢印IV-IVから見た断面図である。
図4に示すように、取付部62は、互いに異なる向きに傾斜するように開口している。言い換えれば、取付部62の中心軸を中心軸Aとすると、それぞれの取付部62の中心軸Aの向きは、互いに異なっており、言い換えれば、それぞれの取付部62の中心軸Aは、互いに異なる角度となっている。また、それぞれの取付部62の中心軸Aは、方向X及び方向Yとは異なる方向を向いており、言い換えれば、基台部60の表面60Aに対して交差している。さらに言えば、
図3及び
図4に示すように、それぞれの取付部62の中心軸AXは、基台部60の表面60Aの中心位置側(中心軸C側)を向くように、互いに異なる角度となっている。具体的には、取付部62の中心軸AXは、方向Z1側に向かうに従って、基台部60の表面60Aの中心位置側、すなわち放射方向内側に向かうように傾斜している。ただし、取付部62の中心軸Aのうち、中心軸Cに重畳する取付部62Aの中心軸Aは、中心軸Cに沿っている。なお、ここでの放射方向内側とは、方向Zから見た場合に中心軸C側に向かう方向である。また、取付部62は、底面62Sが、中心軸Aに直交している。底面62Sは、基台部60の表面60Aの中心位置側(中心軸C側)に向けて傾斜するように、互いに異なる角度となっている。
【0042】
また、
図4に示すように、校正部材50は、通路64と、吸熱部66とを有している。通路64は、基台部60の内部に設けられる開口であり、一方の端部が取付部62に連通している。また、通路64は、他方の端部が吸熱部66と連通している。吸熱部66は、光ビームLを冷却するための冷却媒体が設けられる。吸熱部66は、例えば、基台部60の内部に設けられる空間であり、内部に冷却媒体が設けられる。冷却媒体としては、例えば、水などが挙げられる。
図4に示すように、本実施形態においては、通路64と吸熱部66とは、取付部62毎に設けられており、言い換えれば、それぞれの取付部62に対応して、複数設けられる。すなわち、1つの取付部62に対し、通路64と吸熱部66とが、1つずつ設けられている。
【0043】
図5は、検出装置を校正部材に取付けた場合を示す模式図である。以上のように構成される校正部材50には、検出装置70が取り付けられる。検出装置70は、取付部62に取付けられる。検出装置70は、本実施形態の例では、全ての取付部62に1つずつ取付けられるが、一部の取付部62にのみ取付けられてもよい。検出装置70は、光ビームLを検出する装置であり、本実施形態では、光ビームLを撮像する撮像装置である。
図5に示すように、検出装置70は、筐体71と、ビームダンパ部72と、検出素子である撮像素子74とを有する。筐体71は、内部にビームダンパ部72と撮像素子74とを収納する。筐体71は、取付部62内に挿入されて、取付部62に取付けられる。撮像素子74は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサであり、照射された光ビームLを受光して、受光した光ビームLを電気信号に変換する。検出装置70は、撮像素子74が生成した電気信号に基づき、光ビームLの画像を生成する。光ビームLの画像は、例えば光ビームLの強度に応じて輝度が異なるため、検出装置70は、光ビームLの状態を検出しているといえる。
【0044】
上述のように、取付部62は、中心軸Aの向きが互いに異なっているため、それぞれの検出装置70は、向きが互いに異なるように、取付部62に取付けられる。言い換えれば、取付部62は、取り付けられる検出装置70の向きが互いに異なるように、互いに異なる角度で設けられている。さらに言えば、取付部62の中心軸Aは、基台部60の表面60Aの中心位置側(中心軸C側)を向いているため、検出装置70は、基台部60の表面60Aの中心位置側(中心軸C側)を向くように、取付部62に取付けられる。言い換えれば、取付部62は、取り付けられる検出装置70が、基台部60の表面60Aに交差し、かつ、表面60Aの中心側(中心軸C側)を向くように、互いに異なる角度で設けられる。なお、ここでの検出装置70の向きとは、撮像素子74の向きであり、例えば、撮像素子74が光ビームLを受光する受光面74Aの向きであると言える。また、検出装置70は、受光面74Aで光ビームLを受光して検知を行うため、検出装置70の向きとは、検出装置70の検知方向であると言い換えてもよい。すなわち、取付部62は、取り付けられる検出装置70の検知方向が互いに異なるように、互いに異なる角度で設けられているといえる。検知方向は、例えば、方向Z1側に向かう方向であって、受光面74Aに直交する方向である。
【0045】
ここで、光ビームLは、走査部44によって、照射角度、すなわち光ビームLの進行方向と基台部60の表面60A(ステージ32の表面32A)との間の角度を変化させながら、基台部60(ステージ32)上での照射位置が走査される。光ビームLは、基台部60の表面60A(ステージ32の表面32A)の所定位置、ここでは表面60A(表面32A)の中心位置においては、表面60A(表面32A)に直交するように照射される。すなわち、照射角度が90度となる。一方、光ビームLは、表面60A(表面32A)の所定位置以外の位置、ここでは中心位置以外の位置においては、表面60A(表面32A)に直交せず、照射角度が90度以外の角度となる。それに対し、取付部62は、取り付けられる検出装置70の受光面74Aが、取付部62に向けて照射される光ビームLの進行方向に対して直交するように、互いに異なる角度で開口している。すなわち、本実施形態では、取付部62の中心軸Aを表面60Aの中心位置側に向かせることで、全ての検出装置70の受光面74Aを、光ビームLの進行方向に対して直交させている。言い換えれば、撮像素子74の中心軸を中心軸A4とすると、取付部62は、それぞれの撮像素子74の中心軸A4が光ビームLの進行方向に沿うような角度で開口している。
【0046】
また、
図5に示すように、検出装置70は、撮像素子74の受光面74Aが、方向Zにおいて基台部60の表面60Aと同じ位置となるように、取付部62に取付けられることが好ましい。表面60Aは、方向Zにおいて、面PL、すなわち光ビームLの照射面と同じ位置にある。従って、検出装置70は、受光面74Aが、面PL、すなわち光ビームLの照射面と同じ位置となる。言い換えれば、取付部62は、それぞれの撮像素子74の受光面74Aが、光ビームLの進行方向において光ビームLの照射面と同じ位置となるように、検出装置70を取り付けている。なお、
図5の例では、受光面74Aの中心位置が、光ビームLの進行方向において光ビームLの照射面と同じ位置となっている。
【0047】
ビームダンパ部72は、取付部62に取付けられた検出装置70に照射される光ビームLのうち、一部の光ビームLのみを撮像素子74に出射する。すなわち、ビームダンパ部72は、光ビームLの強度を小さくして撮像素子74に到達させる。
図5の例では、ビームダンパ部72は、ミラー72A、72B、72Cを備える。ミラー72Aは、撮像素子74よりも光ビームLが照射される側、ここでは撮像素子74よりも方向Z1に設けられる。すなわち、ミラー72Aは、光ビームLの進行方向において、撮像素子74よりも上流側に設けられる。ミラー72Aは、例えば表面に部分反射コーティングが設けられており、受光した光ビームLのうちの一部を透過し、他を反射する。本実施形態では、ミラー72Aを透過した光ビームLである光ビームL2が、撮像素子74に出射される。従って、撮像素子74は、光ビームL2を受光して、光ビームL2を撮像する。
【0048】
一方、ミラー72Aに反射された光ビームLである光ビームL1は、ミラー72B、72Cでそれぞれ反射して、通路64を通って吸熱部66に入射する。光ビームL1は、吸熱部66の冷却媒体によって、吸熱される。すなわち、吸熱部66は、取付部62(検出装置70)に向けて照射される光ビームL、すなわちビームダンパ部72のミラー72Aに照射される光ビームLのうち、撮像素子74に入射する以外の光ビームL1を受光して、受光した光ビームL1から吸熱する。なお、
図5の例ではミラー72Aを透過した光ビームを、撮像素子74に入射させるが、ミラー72Aで反射した光ビームを、撮像素子74に入射させてもよい。
【0049】
ビームダンパ部72は、光ビームL2の強度を、光ビームLの強度に対し、例えば1%とすることが好ましい。ただし、光ビームL2は、このような強度となることに限られない。また、ビームダンパ部72は、上記で説明した構造に限られず任意の構造であってよく、例えば、照射部16から検出装置70に向けて照射される光ビームLを受光し、受光した光ビームLを光ビームL1と光ビームL2とに分離するものであればよい。また、ビームダンパ部72は、設けられていなくてもよい。
【0050】
(光ビームの状態判定)
次に、検出装置70を用いた光ビームLの状態判定の方法について説明する。本実施形態では、制御装置18の制御により、光ビームLの状態を判定して、判定結果に応じて、積層体Mの製造可否を判断する。従って、最初に、制御装置18の構成について説明する。
【0051】
図6は、本実施形態に係る制御装置のブロック図である。制御装置18は、例えばコンピュータであり、
図6に示すように、制御部80と、記憶部82と、出力部84とを有する。制御部80は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。記憶部82は、制御部80の演算内容やプログラムの情報などを記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。出力部84は、光ビームLの状態の検出結果などを出力する出力装置であり、本実施形態では、光ビームLの状態の検出結果などを表示する表示装置である。なお、制御装置18は、例えばユーザの入力を受け付ける、キーボードやタッチパネルなどの入力部を有していてもよい。
【0052】
制御部80は、状態判断部86と、成形制御部88と、成形物判断部90とを有する。状態判断部86と、成形制御部88と、成形物判断部90とは、制御部80が記憶部82に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出すことで実現されて、後述する処理を実行する。
【0053】
状態判断部86は、検出装置70が検出した光ビームLの検出結果に基づき、光ビームLの状態を検出して、光ビームLの状態を判定する。状態判断部86は、照射制御部92と、状態検出部94と、判定部96とを有する。なお、状態判断部86の処理の際には、校正部材50がステージ32に取付けられ、校正部材50のそれぞれの取付部62には、検出装置70が取り付けられる。
【0054】
照射制御部92は、校正部材50がステージ32に取付けられた状態で、照射部16を制御して、校正部材50に取付けられたそれぞれの検出装置70に向けて、光ビームLを照射させる。それぞれの検出装置70は、照射された光ビームLを検出する。すなわち、検出装置70は、撮像素子74によって光ビームLを撮像して、撮像素子74に照射された光ビームLの画像を生成する。言い換えれば、光ビームLの画像が、光ビームLの検出結果であるといえる。ただし、検出装置70は、光ビームLの画像を生成しなくてもよい。この場合は、撮像素子74が生成した、光ビームLの強度に応じて出力値が異なる電気信号が、光ビームLの検出結果となる。すなわち、検出装置70が検出した光ビームLの検出結果は、位置毎(撮像素子74の画素の座標毎)の光ビームLの強度の情報であるといえる。
【0055】
図7は、光ビームの画像の一例を示す図である。
図7に示すように、光ビームLの画像Bは、撮像素子74に照射された光ビームLの強度に応じて輝度が異なる画像となる。なお、
図7では、説明の便宜上、光ビームLの強度、すなわち輝度が離散的に変化している画像となっているが、実際の光ビームLの画像Bは、
図7の例に限られず、連続的に輝度が変化した画像であってよい。また、本実施形態では、検出装置70の撮像素子74は、光ビームL2を受光して光ビームL2を検出しているため、画像Bは光ビームL2の画像となる。この場合は、例えば状態判断部86が、光ビームL2の検出結果を、光ビームLの検出結果に補正すればよい。
【0056】
検出装置70は、このようにして光ビームLを検出する。検出装置70は、校正部材50において、すなわちステージ32上において、それぞれ異なる位置に設けられる。従って、それぞれの検出装置70は、ステージ32上の異なる位置に照射された光ビームLを検出する。
【0057】
図6に戻り、状態検出部94は、それぞれの検出装置70から、光ビームLの検出結果を取得する。すなわち、状態検出部94は、ステージ32上の異なる位置に照射された光ビームLの検出結果を取得する。状態検出部94は、光ビームLの検出結果として、ステージ32上の異なる位置に照射されたそれぞれの光ビームLの画像Bを取得する。検出装置70が画像Bを生成しない場合は、状態検出部94が、それぞれの撮像素子74が生成した電気信号を取得し、ステージ32上の異なる位置に照射された光ビームLの画像Bを生成してよい。
【0058】
状態検出部94は、検出装置70から取得した光ビームLの検出結果に基づき、光ビームLの状態を検出する。状態検出部94は、光ビームLの検出結果から、光ビームLの状態を算出する。本実施形態では、状態検出部94は、光ビームLの平均出力と、光ビームLの強度分布と、光ビームLの照射位置と、光ビームLによる散乱光の強度と、を算出する。光ビームLの平均出力とは、検出装置70に照射された光ビームLの強度の平均値である。状態検出部94は、例えば画像Bの画素毎の輝度に基づき、画素毎の光ビームLの輝度を算出し、画素毎の光ビームLの輝度を光ビームLの強度に換算した上で、それぞれを平均して、平均出力を算出する。また、光ビームLの強度分布とは、光ビームLの強度の分布を指し、例えば、状態検出部94は、光ビームLの強度が所定強度以上となるスポット径を算出する。光ビームLの照射位置とは、ステージ32上における光ビームLが照射された位置を指し、言い換えれば、ステージ32上において光ビームLが照射された箇所の、方向X及び方向Yにおける座標である。状態検出部94は、例えば光ビームLの中心位置を、光ビームLの照射位置として算出する。また、光ビームLの散乱光の強度とは、光ビームLが保護部48などで散乱されて生成される散乱光の強度を指す。なお、本実施形態では、光ビームLの状態として、光ビームLの平均出力と、光ビームLの強度分布と、光ビームLの照射位置と、光ビームLによる散乱光の強度との全てを算出するが、それらの一部のみを算出してもよい。また、状態検出部94は、光ビームLの状態として、別のパラメータを算出してもよい。また、状態検出部94は、光ビームLの状態として、複数種類のパラメータを算出するが、1つのパラメータのみを算出してよい。
【0059】
状態検出部94は、それぞれの検出装置70の検出結果毎に光ビームLの状態を検出することで、ステージ32上の位置毎の光ビームLの状態を検出する。
【0060】
判定部96は、状態検出部94が検出した光ビームLの状態に基づき、光ビームLの状態が正常であるかを判定する。判定部96は、状態検出部94から、光ビームLの状態の検出結果を取得する。判定部96は、取得した光ビームLの状態の検出結果を、予め設定した基準データと比較して、光ビームLの状態が正常であるかを判定する。本実施形態では、判定部96は、光ビームLの状態の検出結果が、予め設定した基準データの数値範囲内となる場合は、光ビームLの状態が正常であると判定する。一方、判定部96は、光ビームLの状態の検出結果が、基準データの数値範囲外となる場合は、光ビームLの状態が正常でない、すなわち異常があると判定する。
【0061】
本実施形態では、判定部96は、状態検出部94が検出した光ビームLの平均出力が、所定の出力範囲内であるかを判断する。所定の出力範囲とは、例えば、予め定めた管理値に対し、90%以上110%以下の範囲内である。また、判定部96は、光ビームLの強度が所定強度以上となるスポット径が、所定の径の範囲内であるかを判断する。所定の径の範囲とは、例えば、予め定めた径に対し、90%以上110%以下の範囲内である。また、判定部96は、状態検出部94が検出した光ビームLの照射位置と所定位置との距離が、所定距離範囲内であるかを判断する。所定距離範囲内とは、例えば、所定位置の座標に対し、0.1mmの距離となる範囲である。また、判定部96は、状態検出部94が検出した光ビームLによる散乱光の強度が所定強度範囲内であるかを判断する。所定強度範囲内とは、例えば、予め定めた強度に対する増加率が、20%以内となる範囲である。予め定めた強度は、例えば未使用の保護部48を使用した場合の散乱光の強度である。
【0062】
判定部96は、光ビームLの状態が複数種類検出される場合は、全ての光ビームLの状態が条件を満たす場合、すなわち全ての光ビームLの状態が基準データの数値範囲になる場合に、光ビームLの状態が正常であると判断する。言い換えれば、判定部96は、複数種類の光ビームLの状態のうち、少なくとも一部の種類の光ビームLの状態が条件を満たさない場合には、光ビームLの状態が正常でないと判定する。ただし、判定部96は、複数種類の光ビームLの状態のうちから重要なパラメータを設定しておき、重要なパラメータが条件を満たす場合には、光ビームLの状態が正常であると判定してよい。重要なパラメータは、例えば、光ビームLの平均出力と、光ビームLの強度分布と、光ビームLの照射位置とである。重要なパラメータとして平均出力、強度分布及び照射位置の3つが分かると、校正、清掃、発振器の修理及び交換のうち、必要な作業内容を把握することができる。それらに加えて、さらに散乱光の状態が分かると、保護部48の清掃や交換が必要かを、適切にダブルチェックすることができる。
【0063】
また、判定部96は、光ビームLの状態が条件を満たさない場合、すなわち光ビームLの状態が基準データの数値範囲にならない場合、照射部16に異常があると判断して、異常を解消して光ビームLの状態を正常に戻すために必要な作業内容を設定する。判定部96は、条件を満たさなかった光ビームLの状態の種類毎に、必要な作業内容を設定する。例えば、判定部96は、平均出力が条件を満たさない場合、光源部42に異常が生じていると判断して、光源部42の修理又は交換を、必要な作業内容として設定する。また、判定部96は、強度分布、すなわち光ビームLの強度が所定強度以上となるスポット径が条件を満たさない場合、保護部48に異常が生じていると判断して、保護部48の清掃又は交換を、必要な作業内容として設定する。また、判定部96は、強度分布が条件を満たさない場合、走査部44に異常が生じていると判断して、走査部44の校正を、必要な作業内容として設定してもよい。また、判定部96は、光ビームLの照射位置が条件を満たさない場合、走査部44に異常が生じていると判断して、走査部44の校正を、必要な作業内容として設定する。判定部96は、散乱光の強度が条件を満たさない場合、保護部48に異常が生じていると判断して、保護部48の清掃又は交換を、必要な作業内容として設定する。判定部96は、設定した必要な作業内容の情報を、出力部84に出力させて、ユーザに通知する。
【0064】
判定部96は、それぞれの検出装置70の検出結果毎にこのような判定を行うことで、ステージ32上の位置毎に、光ビームLの状態が正常であるかを判断する。
【0065】
また、判定部96は、判定結果を、出力部84に出力してよい。すなわち、判定部96は、光ビームLの状態の判定結果を、出力部84に表示させてよい。この場合、判定部96は、ステージ32上の位置毎の判定結果を、出力部84に表示させる。また、光ビームLの状態が複数種類ある場合、判定部96は、ステージ32上の位置毎の判定結果を、光ビームLの状態の種類毎に表示させてもよい。
【0066】
図8及び
図9は、判定結果の表示例を示す図である。
図8は、判定結果として、光ビームLの平均出力が条件を満たしているかを、ステージ32上の位置毎に示した画像S0の例を示している。画像S0は、複数の画像Sを含む。画像Sは、ステージ32上の位置に対応しており、ステージ32上の位置毎に、方向X及び方向Yに沿ったマトリクス状に、並んでいる。また、画像Sは、1つの検出装置70の検出結果から導出された光ビームLの平均出力の判定結果を示しており、画像Sのステージ32上の位置と、検出装置70の位置とが対応している。判定部96は、例えば、判定結果に応じて画像Sの表示内容を異ならせることで、ユーザがステージ32上のどの位置では光ビームLを正常に照射できないかを容易に通知できる。
図8の例では、最も方向X側であって最も方向Y側の画像S1と、画像S1の方向Yと反対側に隣接する画像S2とに対応する位置において、光ビームLの平均出力が条件を満たしていない。従って、画像S1、S2の表示内容、例えば色を、他の画像Sと異ならせている。
【0067】
また、判定部96は、光ビームLの進行方向に基づき、保護部48上の位置をステージ32上の位置に対応付けることが可能である。また、判定部96は、上述のように、光ビームLの状態に基づき、保護部48に異常が生じているかを判定可能である。従って、
図9に示すように、ステージ32上の位置の代わりに、保護部48上の位置毎に判定結果を示してもよい。
図9は、保護部48に異常が生じているかを、保護部48の位置毎に示した画像T0の例を示している。画像T0も、保護部48上の位置に対応した複数の画像Tを含んでおり、画像Tが保護部48の位置毎に並んでいる。
図9の例では、保護部48の、画像T1に対応する位置に異常が生じており、画像T1の表示内容(ここでは色)を、他の画像Tの表示内容と異ならせている。
図9の例では、画像T1に対応する位置において、保護部48の清掃が必要である旨が通知されていると言うこともできる。
【0068】
図6に戻り、成形制御部88は、判定部96によって光ビームLの状態が正常であると判定された場合に、照射部16と粉末供給部12とを制御して、積層体Mの成形を行わせる。成形制御部88は、ステージ32上の全ての位置において光ビームLの状態が正常と判断された場合に、積層体Mの成形を行わせる。ただし、成形制御部88は、ステージ32上の一部の位置において光ビームLの状態が正常でないと判断された場合、正常でないと判断された位置以外の領域のみを用いて、積層体Mの成形を行わせてもよい。すなわち、光ビームLの状態が正常でない領域を除いて、光ビームLの状態が正常な領域のみで成形を行うことでも、積層体Mの成形不良を抑制できる。
【0069】
また、成形物判断部90は、成形制御部88の制御によって成形された積層体Mの品質を判定する。成形された積層体Mは、例えば積層体成形装置1とは別の測定装置によって、強度や寸法などの品質が評価される。成形物判断部90は、他の装置による積層体Mの品質の評価結果を取得して、積層体Mの品質の評価結果に基づき、積層体成形装置1に異常があるかを判定する。積層体Mは、光ビームLに異常がないと判断された場合に製造されるため、積層体Mの製造が許可された時点で、照射部16には異常がないと考えられる。成形物判断部90は、それにも関わらず積層体Mの品質に異常がある場合、すなわち、光ビームLに異常がないと判断され、かつ積層体Mに異常がある場合には、積層体成形装置1の照射部16以外の装置に異常が発生していると判断して、照射部16以外のどの装置に異常が生じているかを判断する。例えば、成形物判断部90は、光ビームLに異常がないという判断結果と、積層体Mの品質の評価結果とに基づき、リコータ及び気体供給部の少なくとも一方に異常があるかを判定する。リコータは、粉末供給部12とブレード14とによって行われるため、リコータの異常とは、粉末供給部12又はブレード14の異常を指す。また、気体供給部は、上述のように、不活性ガスを供給する装置である。例えば、成形物判断部90は、光ビームLに異常がなく、かつ、リコータが行われる方向(ここでは方向X)に沿って、積層体Mに品質に閾値以上のばらつきが生じている場合、リコータに異常があると判定する。また、成形物判断部90は、光ビームLに異常がなく、かつ、不活性ガスが供給される方向(ここでは方向Y)に沿って、積層体Mに品質に閾値以上のばらつきが生じている場合、気体供給部に異常があると判定する。
【0070】
制御装置18は、以上のような構成になっている。次に、制御装置18による制御フローを説明する。
図10は、本実施形態に係る制御装置の制御フローを説明するフローチャートである。
図10に示すように、制御装置18は、校正部材50をステージ32に取付けた状態で、照射制御部92により、照射部16を制御して、校正部材50に取付けられたそれぞれの検出装置70に向けて、光ビームLを照射させる(ステップS10)。検出装置70は、照射された光ビームLを検出し、制御装置18は、状態検出部94により、検出装置70から光ビームLの検出結果を取得する(ステップS12)。そして、制御装置18は、状態検出部94により、光ビームLの検出結果から、光ビームLの状態を検出して、判定部96により、光ビームLの状態を判定する(ステップS14)。光ビームLの状態が正常と判定した場合(ステップS16;Yes)、制御装置18は、成形制御部88により、校正部材50をステージ32から取り外した状態で、照射部16と粉末供給部12とを制御して、積層体Mの成形を実行させる(ステップS18)。なお、光ビームLの状態が正常でないと判定した場合(ステップS16;No)、状態検出部94は、判定結果、ここでは照射部16に異常がある旨を、出力部84に通知させる(ステップS20)。
【0071】
ステップS18で積層体Mの成形が終了したら、制御装置18は、再度校正部材50を取り付けて、検出装置70に光ビームLを照射させることで、光ビームLの状態を再判定する(ステップS22)。ステップS22における再判定処理は、ステップS10からステップS16までの処理と同様である。再判定の結果、光ビームLの状態が正常でないと判定した場合(ステップS24;No)、ステップS20に進み、状態検出部94は、判定結果、ここでは照射部16に異常がある旨を、出力部84に通知させる。再判定の結果、光ビームLの状態が正常である場合(ステップS24;Yes)、例えば積層体成形装置1とは別の測定装置によって、強度や寸法などの品質が評価され、制御装置18は、成形物判断部90により、積層体Mの品質の評価結果を取得する(ステップS26)。成形物判断部90は、積層体Mの品質の評価結果に基づき、積層体Mの品質に問題がないかを判断し(ステップS28)、問題がない場合(ステップS28;Yes)、積層体Mが出荷可能であると判断する(ステップS30)。積層体Mの品質に問題がある場合(ステップS28;No)、成形物判断部90は、照射部16以外の積層体成形装置1の装置(例えば、粉末供給部12、ブレード14、気体供給部など)に異常があるかを判定し、照射部16以外の積層体成形装置1の装置に異常がある旨を、出力部84に通知させる(ステップS32)。
【0072】
また、次に、光ビームLの状態の判定、すなわちステップS16での判定のフローの一例をフローチャートで説明する。
図11は、光ビームの状態判定のフローを説明するフローチャートである。
図11のフローは、ステップS16での判定のフローの一例を示している。
図11に示すように、状態検出部94は、検出装置70から取得した光ビームLの検出結果から、光ビームLの状態として、ここでは光ビームLの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度を算出する(ステップS40)。判定部96は、状態検出部94が検出した光ビームLの状態のそれぞれを取得して、それらを、それぞれの基準データと比較して、光ビームLの状態に問題無いかを判断する(ステップS42)。そして、判定部96は、全てのパラメータ、ここでは光ビームLの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度の全てが問題無い場合(ステップS44;Yes)、すなわち全ての種類の光ビームLの状態が条件を満たす場合、積層体Mを成形可能と判断する(ステップS46)。一方、判定部96は、全てのパラメータのうち少なくとも一部に問題がある場合(ステップS44;No)、照射部16に異常がある旨を通知する(ステップS48)。ただし、上述のように、判定部96は、全てのパラメータのうち、重要なパラメータに問題がない場合には、重要なパラメータ以外のパラメータが正常でない場合にも、積層体Mを成形可能と判断してもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る校正部材50は、光ビームLを粉末Pに照射して積層体Mを成形する積層体成形装置1の校正部材である。校正部材50は、基台部60と取付部62とを有する。基台部60は、積層体成形装置1の光ビームLが照射されるステージ32に取り付けられる。取付部62は、基台部60に設けられて光ビームLを検出する検出装置70が取り付けられる。取付部62は、複数設けられ、それぞれの取付部62は、基台部60において互いに異なる位置に設けられる。また、それぞれの取付部62は、取り付けられる検出装置70の検知方向が互いに異なるように、互いに異なる角度で設けられる。
【0074】
ここで、積層体Mの品質は、照射される光ビームLの状態に大きく影響を受ける。本実施形態に係る校正部材50は、基台部60によってステージ32に取付けられ、光ビームLを検出する検出装置70が取り付け可能に構成される。従って、この校正部材50を積層体成形装置1に取付けると、光ビームLの状態を適切に検出することが可能となり、必要に応じて、光ビームLの特性を適切に校正させることができる。また、光ビームLは、ステージ32上での照射位置毎に、進行方向が異なる。従って、光ビームLは、ステージ32上での照射位置毎に、状態が異なる場合がある。例えば、光ビームLは、ステージ32上での照射位置毎に、保護部48上の異なる位置を通る。この場合、保護部48の一部の領域に異物が付着していたり、破損していたりすると、ある照射位置に照射される光ビームLの状態に問題がなくても、他の照射位置に照射される光ビームLの状態に問題があるおそれもある。このような場合、例えば1つの照射位置のみで光ビームLを検出しても、光ビームLの状態を適切に検出できなくなる可能性がある。それに対し、本実施形態に係る校正部材50は、検出装置70が取り付けられる取付部62が複数設けられるため、複数の照射位置での光ビームLの状態検出が可能となり、光ビームLの状態を適切に検出することができる。さらに、検出装置70は、光ビームLを適切に検出するためには、光ビームLが照射される照射角度を、例えば直角など所定角度に保つ必要がある場合があるが、光ビームLは、照射位置毎に光ビームLが照射される照射角度が異なる。従って、検出装置70は、照射角度が、設けられる位置毎に異なるため、光ビームLを適切に検出できなくなるおそれがある。それに対し、本実施形態に係る校正部材50は、位置毎に検出装置70の向きを異ならせるため、それぞれの位置において照射角度を適切に保つことが可能となり、それぞれの位置で、光ビームLを適切に検出させることができる。
【0075】
また、それぞれの取付部62は、取り付けられる検出装置70の検知方向が、基台部60の表面60Aに交差し、かつ、基台部60の表面60Aの中心側(中心軸C側)を向くように、互いに異なる角度で設けられる。積層体成形装置1は、通常、ステージ32の中心位置に照射される光ビームLの照射角度が直角となるように、アラインメントが設定される。それに対し、本実施形態に係る校正部材50は、それぞれの検出装置70が、ステージ32の中心と重なる基台部60の表面60Aの中心を向くように、取付部62が設けられている。従って、本実施形態に係る校正部材50によると、全ての検出装置70が、照射角度が直角となるように光ビームLを受光することが可能となり、それぞれの位置で、光ビームLを適切に検出させることができる。
【0076】
また、それぞれの取付部62は、取り付けられる検出装置70の撮像素子74(検出素子)の受光面74Aが、光ビームLに対して直交するように、互いに異なる角度で設けられる。従って、本実施形態に係る校正部材50によると、全ての検出装置70が、照射角度が直角となるように光ビームLを受光することが可能となり、それぞれの位置で、光ビームLを適切に検出させることができる。
【0077】
また、取付部62は、開口が設けられ、開口の中心軸Aが、基台部60の表面60Aの中心側(中心軸C側)を向くように傾斜している。本実施形態に係る校正部材50によると、開口の中心軸Aが中心側を向いているので、検出装置70を適切に取り付けることができ、それぞれの位置で、光ビームLを適切に検出させることができる。また、取付部62は、基台部60の表面60Aに設けられる開口であり、底面62Sが基台部60の表面60Aの中心側(中心軸C側)に向けて傾斜している。本実施形態に係る校正部材50によると、底面62Sが中心側に傾斜しているので、検出装置70を適切に取り付けることができ、それぞれの位置で、光ビームLを適切に検出させることができる。
【0078】
また、校正部材50は、吸熱部66を有する。吸熱部66は、取付部62に向けて照射される光ビームLのうち、取付部62に取付けられる検出装置70の撮像素子74(検出素子)に入射する以外の光ビームL1を受光して、受光した光ビームL1から吸熱する。この校正部材50は、吸熱部66を有するため、光ビームLを適切に検出しつつ、光ビームLの熱によって他の装置などがダメージを受けることを抑制できる。
【0079】
また、吸熱部66は、それぞれの取付部62に対応して、複数設けられる。この校正部材50は、取付部62のそれぞれに対応して設けられるため、それぞれの取付部62に向けて照射された光ビームLの熱を適切に吸収して、光ビームLの熱によって他の装置などがダメージを受けることを抑制できる。
【0080】
また、本実施形態に係る積層体成形装置1は、校正部材50と、校正部材50が取り付けられるステージ32と、校正部材50の取付部62に取付けられる検出装置70と、光ビームLを照射する照射部16と、粉末Pを供給する粉末供給部12と、を有する。この積層体成形装置1は、検出装置70が取り付けられる校正部材50を有するため、ステージ32上のそれぞれの位置で、光ビームLを適切に検出させることができる。
【0081】
また、検出装置70は、ビームダンパ部72を有する。ビームダンパ部72は、撮像素子74(検出素子)よりも光ビームLが照射される側(方向Z1側)に設けられ、検出装置70に向けて照射される光ビームLが入射して、入射した光ビームLの一部を撮像素子74に向けて出射する。この検出装置70は、ビームダンパ部72により、一部の光ビームLのみを撮像素子74に受光させるため、撮像素子74が強度の高い光ビームLによりダメージを受けることを抑制できる。
【0082】
また、積層体成形装置1は、積層体Mの成形を制御する制御部80をさらに有する。制御部80は、照射制御部92と、状態検出部94と、判定部96と、成形制御部88とを有する。照射制御部92は、校正部材50がステージ32に取付けられた状態で、校正部材50に取付けられた検出装置70に光ビームLを照射させる。状態検出部94は、検出装置70から光ビームLの検出結果を取得し、取得した光ビームLの検出結果に基づき、ステージ32上の位置毎の光ビームLの状態を検出する。判定部96は、状態検出部94が検出した光ビームLの状態に基づき、光ビームLの状態が正常であるかを判定する。成形制御部88は、光ビームLの状態が正常であると判定された場合に、照射部16と粉末供給部12とを制御して、積層体Mの成形を行わせる。この積層体成形装置1は、ステージ32上の位置毎に光ビームLの状態を検出して、その検出結果に基づき、成形可否の判断をする。従って、この積層体成形装置1によると、状態異常の光ビームLで積層体Mを成形することが抑制され、積層体Mの成形不良を抑制できる。また、積層体成形装置1は、ステージ32上の位置毎に光ビームLの状態を判断しているため、例えばステージ32上の一部の領域にのみ光ビームLの異常があった場合に、異常があった領域以外の領域のみで成形を行わせることも可能となる。
【0083】
また、積層体成形装置1は、出力部84を有する。出力部84は、判定部96による光ビームLの状態の判定結果を表示する。この積層体成形装置1によると、判定結果をユーザに適切に通知することができる。また、出力部84は、ステージ32上の位置毎の光ビームLの状態の判定結果と、照射部16の出射口40Aを覆う保護部48の位置毎の光ビームLの状態の判定結果と、の少なくとも1つを表示する。この積層体成形装置1によると、ステージ32や保護部48のどの位置が異常であるかを、ユーザに適切に通知することができる。
【0084】
また、本実施形態においては、光ビームLの状態を検出するステップS12において、光ビームLの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度を算出する。そして、光ビームの状態が正常であるかを判定するステップS14において、光ビームLの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度に基づき、光ビームLの状態が正常であるかを判定する。本実施形態によると、状態異常を適切に検出することができるため、積層体の成形不良を抑制できる。また、本実施形態においては、光ビームLの状態が正常であるかを判定するステップS14において、光ビームの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度のそれぞれを、基準データと比較することで、光ビームLの状態が正常であるかを判定する。本実施形態によると、状態異常を適切に検出することができるため、積層体の成形不良を抑制できる。また、光ビームの状態が正常であるかを判定するステップS14において、光ビームLの平均出力、強度分布、照射位置、及び散乱光の強度のうち、光ビームLの平均出力、強度分布、及び照射位置が条件を満たす場合に、光ビームLの状態が正常であると判断する。本実施形態によると、状態異常を適切に検出することができるため、積層体の成形不良を抑制できる。
【0085】
また、本実施形態においては、光ビームLの状態が正常でないと判断した場合、照射部に異常がある旨を通知するステップS20を有する。この積層体成形方法によると、判定結果をユーザに適切に通知することができる。
【0086】
次に、校正部材50の他の例について説明する。
図12は、本実施形態に係る校正部材の他の例を示す断面図である。
図12に示すように、他の例に係る校正部材50aは、複数の取付部62に共通した1つの吸熱部66aを有する点で、
図4に示した校正部材50と異なる。
図12に示すように、校正部材50aは、基台部60a内に、通路64aと、吸熱部66aとを有する。また、取付部62に取付けられる検出装置70aは、ビームダンパ部として、ミラー72A、72Bを有する。通路64aは、それぞれの取付部62に1つずつ設けられている。すなわち、通路64aの一方の端部は、取付部62に連通している。一方、吸熱部66aは、それぞれの通路64aの他方の端部に連通して設けられている。すなわち、吸熱部66aは、複数の取付部62のそれぞれに接続されている。に
図12の例では、吸熱部66aは、それぞれの取付部62よりも方向Z2側、すなわち、それぞれの取付部62よりも光ビームLが照射される側と反対側に設けられる。
【0087】
図12においては、それぞれの取付部62に入射した光ビームLは、一部が光ビームL2として、ミラー72Aを透過して撮像素子74に入射する。そして、それぞれの取付部62に入射した光ビームLは、他の一部が光ビームL2として、ミラー72Aで反射され、ミラー72B、通路64aを通って、吸熱部66aに入射する。吸熱部66aは、入射したそれぞれの光ビームLから吸熱する。
【0088】
このように、吸熱部66aは、取付部62及び検出装置70よりも、光ビームLが照射される側と反対側に設けられてもよい。そして、この場合において、吸熱部66aは、複数の取付部62に対応して1つのみ設けられていてもよい。このように吸熱部66aを設けることで、校正部材50の形状を簡易にすることができる。なお、吸熱部の位置及び数は、
図4及び
図12に示した例に限られず、任意である。さらに、校正部材50は、吸熱部を有さなくてもよい。この場合、例えば校正部材50の外部に吸熱部を設け、校正部材50に照射された光ビームLを外部の吸熱部に導くように構成されていればよい。
【0089】
図13は、本実施形態に係る校正部材の他の例を示す上面図である。
図13に示すように、他の例に係る校正部材50bは、表面が連続した板状部材でなく、取付部62b以外にも多数の開口を有する点で、
図3に示した校正部材50と異なる。
図13に示すように、校正部材50bは、基台部60bと、取付部62bと、接続部63とを有する。
図13に示すように、基台部60bは、内側が開口する枠状の部材である。取付部62bは、内側が開口する輪状の部材であり、内側の開口に検出装置70が取り付けられる。接続部63は、基台部60bの内周面と取付部62bの外周面とを接続し、また、取付部62bの外周面同士を接続する部材である。基台部60bの内側においては、取付部62bと接続部63とが設けられない箇所、すなわち基台部60bの内周面と取付部62bとの外周面との間は、部材が設けられない空間SPとなっており、光ビームLが通ることが可能となっている。このように、校正部材50bは、枠状の基台部60bの内側に輪状の取付部62bを設けた構造となることで、基台部60bのと取付部62bとの間に、光ビームLが通ることが可能な空間SPを設けて、例えば光ビームL1を吸熱部に導く際の通路構成を簡易にすることができる。
【0090】
図14は、本実施形態に係る校正部材の他の例を示す上面図である。
図14に示すように、他の例に係る校正部材50cは、複数の取付部62cを有する。取付部62cは、傾斜角度、すなわち中心軸Aの向きが可変な点で、
図3に示した校正部材50とは異なる。すなわち、
図3に示した校正部材50は、取付部62の向きが固定されているが、取付部62cの向きが可変となっている。このように取付部62cの向きを可変にすることで、例えば寸法が異なる積層体成形装置に取付けられる際にも、その寸法に合わせ、光ビームLを適切に受光できるように取付部62cの角度を調整することができる。また、校正部材50cは、取付部62c毎に異なる検出装置(センサ)を取り付けることもできるし、一部の取付部62cのみに検出装置を取り付けてもよい。
図14では、取付部62cのうち、取付部62c1、62c2に検出装置70を取り付け、取付部62c3に、別の検出装置70cを取り付けた例を示している。このように異なる検出装置を取り付け可能にしておくことで、検査の汎用性を高くすることができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0092】
1 積層体成形装置
12 粉末供給部
14 ブレード
16 照射部
18 制御装置
32 ステージ
50 校正部材
60 基台部
62 取付部
70 検出装置
74 撮像素子
80 制御部
86 状態判断部
88 成形制御部
92 照射制御部
94 状態検出部
96 判定部
AR 空間
L 光ビーム
M 積層体
P 粉末
SP 空間