(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】通信状態監視システム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/08 20090101AFI20221027BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20221027BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20221027BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W16/18 110
H04W4/44
(21)【出願番号】P 2019048808
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小辻 匡平
(72)【発明者】
【氏名】柴森 一浩
(72)【発明者】
【氏名】京増 司
(72)【発明者】
【氏名】水野谷 一
(72)【発明者】
【氏名】安田 美命
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-046727(JP,A)
【文献】特開2003-046423(JP,A)
【文献】特開2014-107721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場で稼動する作業機械に搭載された通信端末と通信可能なサーバを備えた通信状態監視システムにおいて、
前記サーバと通信可能な情報端末を備え、
前記通信端末は、前記通信端末による前記サーバとの通信実績を含む通信実績情報を取得するとともに、前記作業現場における前記作業機械の位置情報を取得し、取得した前記通信実績情報と前記位置情報とを紐付けした通信実績位置情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記通信端末との通信が不能である場合に、前記作業機械の位置情報を含む情報の入力を促す情報を前記情報端末に送信し、前記情報端末に入力された前記作業機械の位置情報を含む情報に基づいて、前記通信端末による通信が不能である原因を判定することを特徴とする通信状態監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の通信状態監視システムにおいて、
前記サーバは、前記通信実績位置情報に基づいて、前記作業現場における前記作業機械の位置と前記通信実績情報に含まれる電波強度とが対応して表示された地図を生成し、前記情報端末に送信することを特徴とする通信状態監視システム。
【請求項3】
請求項1記載の通信状態監視システムにおいて、
前記情報端末は、インターネット回線を介して前記サーバと通信することを特徴とする通信状態監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信状態監視システムおよびそれを用いた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業現場で稼動する油圧ショベルのような作業機械においては、作業機械の稼動状態や位置に係る種々の情報を管理サーバなどとの間で送受信することにより、作業効率や精度の向上を図るものがある。
【0003】
また、情報の送受信に用いられる通信端末の通信状態の監視に関する技術として、例えば、特許文献1には、車両に提供するサービスの内容を記述したサービス情報を、管理サーバから取得する命令取得処理手段と、前記命令取得処理手段によって取得されたサービス情報に含まれる第1の命令の実行時に、前記車両に搭載された複数の通信器の通信状態の変化の監視を指示する命令実行処理手段と、前記命令実行処理手段による指示に基づいて、前記複数の通信器の通信状態の変化を監視し、前記変化が発生すると、前記命令実行処理手段へ、前記変化が発生した通信器の通信状態を送る通信監視制御処理手段とを備え、前記命令実行処理手段は、前記通信監視制御処理手段から送られた通信状態を受け取ると、前記変化が発生した場合に前記複数の通信器に対して行う処理内容を含む第2の命令に従って、前記通信監視制御処理手段に対して、前記変化が発生した通信器に対する処理を指示し、前記通信監視制御処理手段は、この指示に従って、前記変化が発生した通信器を制御し、前記制御された通信器から出力された通知に応じて、前記サービスが、アプリケーションサーバによって提供されるようにした、車載通信機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、車両に搭載された複数の通信器の通信状態の変化を監視し、変化が発生すると、変化が発生した場合に複数の通信器に対して行う処理内容を含む指令に従って変化が発生した通信器を制御している。しかしながら、通信器が通信不能となった場合の原因を特定することについては考慮されておらず、適切な対応をとることが困難であった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、通信端末の通信状態を監視し、通信端末が通信不能となった場合の原因を特定することができる、通信状態監視システムおよびそれを用いた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、作業現場で稼動する作業機械に搭載された通信端末と通信可能なサーバとを備えた通信状態監視システムにおいて、前記サーバと通信可能な情報端末を備え、前記通信端末は、前記通信端末による前記サーバとの通信実績を含む通信実績情報を取得するとともに、前記作業現場における前記作業機械の位置情報を取得し、取得した前記通信実績情報と前記位置情報とを紐付けした通信実績位置情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記通信端末との通信が不能である場合に、前記作業機械の位置情報を含む情報の入力を促す情報を前記情報端末に送信し、前記情報端末に入力された前記作業機械の位置情報を含む情報に基づいて、前記通信端末による通信が不能である原因を判定するものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信端末の通信状態を監視し、通信端末が通信不能となった場合の原因を特定することができ、通信状態の変化に応じた適切な対応をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。
【
図2】通信状態監視システムを概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】通信端末の処理内容を示すフローチャートである。
【
図4】通信実績情報取得処理を示すフローチャートである。
【
図5】位置情報取得処理を示すフローチャートである。
【
図7】サーバの地域通信状態マップ作成処理の処理内容を示すフローチャートである。
【
図8】通信実績位置情報のデータ形式の一例を示す図である。
【
図10】サーバの通信状態判定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを示して説明するが、例えば、ダンプトラックやクレーンなどのように作業現場で稼動する他の作業機械にも本発明を適用することが可能である。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。また、
図2は、通信状態監視システムを概略的に示す機能ブロック図である。
【0012】
図1において、油圧ショベル100は、垂直方向にそれぞれ回動する複数のフロント部材(ブーム6A、アーム6B、バケット6C)を連結して構成された多関節型のフロント作業機6(作業機)と、車体を構成する上部旋回体3及び下部走行体2(走行装置)とを備えており、上部旋回体3は下部走行体2に対して旋回可能に設けられている。上部旋回体3は、基部となる旋回フレーム31上に各部材を配置して構成されており、上部旋回体3を構成する旋回フレーム31が下部走行体2に対して旋回可能となっている。また、フロント作業機6のブーム6Aの基端は上部旋回体3の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム6Bの一端はブーム6Aの基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム6Bの他端にはバケット6Cが垂直方向に回動可能に支持されている。
【0013】
下部走行体2は、左右一対のクローラフレーム11a(11b)にそれぞれ掛け回された一対のクローラ12a(12b)と、クローラ12a(12b)をそれぞれ駆動する走行油圧モータ13a(13b)(図示しない減速機構を含む)とを有しており、油圧ショベル100の走行装置を構成している。なお、
図1において、下部走行体2の各構成については、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方の構成については図中に括弧書きの符号のみを示して図示を省略する。
【0014】
フロント部材6A~6C、及び下部走行体2は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ16A、アームシリンダ16B、バケットシリンダ16C、及び左右の走行油圧モータ13a(13b)によりそれぞれ駆動される。また、上部旋回体3は油圧アクチュエータである旋回油圧モータ32により下部走行体2に対して旋回動作を行う。
【0015】
上部旋回体3を構成する旋回フレーム31上には、原動機であるエンジン33と、エンジン33によって駆動される油圧ポンプ34と、油圧ポンプ34から吐出されてブームシリンダ16A、アームシリンダ16B、バケットシリンダ16C、旋回油圧モータ32及び左右の走行油圧モータ13a,13bなどの油圧アクチュエータに供給される作動油の方向及び流量を制御するコントロールバルブ35とが配置されており、油圧回路システムが構成されている。各油圧アクチュエータ16A~16C,32,13a,13bの動作制御は、それぞれの操作に対応した操作装置(図示せず)の操作に基づいて生成される制御指令で電磁弁(図示せず)を駆動して駆動信号を生成し、この駆動信号でコントロールバルブ35を駆動制御することにより行われる。
【0016】
また、上部旋回体3を構成する旋回フレーム31上の前部であって、フロント作業機6のブーム6Aの基端の支持部の横側(本実施の形態では左側)には、オペレータが搭乗して油圧ショベル100の運転を行うための運転室4が配置されている。
【0017】
運転室4の内部には、オペレータが着座する座席や、フロント作業機6の駆動操作や下部走行体2の走行操作、上部旋回体3の旋回操作などを行う操作装置(図示せず)、エンジン33の始動や停止を指示するキースイッチ(図示せず)などが配置されている。操作装置は、各油圧アクチュエータ16A~16C,32,13a,13bの操作に対応した複数の操作レバーなどにより構成されている。
【0018】
図2において、通信状態監視システムは、作業現場で稼動する作業機械である油圧ショベル100に搭載された通信端末110と、通信端末110と通信網400(例えば、インターネット)を介して通信可能に設けられ、作業現場を管理するサーバ200と、サーバ200と通信網400を介してサーバと通信可能な情報端末300とを備えている。
【0019】
通信端末110は、通信実績情報取得部111、位置情報取得部112、情報結合部113、情報記憶部114、及び、通信モジュール115を備えている。
【0020】
図3~
図6は、通信端末の処理内容を示すフローチャートであり、
図4は
図3における通信実績情報取得処理を、
図5は位置情報取得処理を、
図6は情報結合処理をそれぞれ示すフローチャートである。
図3~
図6の処理は、予め定めた一定期間ごとに実行する場合を例示するが、例えば、情報結合部113からの要求があった場合のほか、通信実績情報や位置情報に変化があった場合に実行するようにしてもよい。
【0021】
図3に示すように、通信端末110における処理では、まず、通信実績情報取得処理を行う(ステップS100:
図4)。
【0022】
図4に示すように、通信実績情報取得処理では、まず、通信実績情報取得部111において、通信モジュール115から通信状態に関する情報である、電波強度、通信の進捗度、通信の成功/失敗フラグなどの通信実績、通信で接続されている通信キャリア名などの情報を含む通信実績情報を取得する(ステップS101)。
【0023】
続いて、通信実績情報を情報結合部113での処理が可能なデータ形式に変換し、情報結合部113に送信する(ステップS102)。位置情報が変換されるデータ形式としては、例えば、通信量の削減を考慮したバイナリ形式などが考えられる。
【0024】
続いて、通信端末110の動作停止を指示する指示信号を受信したかどうかを判定し(ステップS103)、判定結果がNOの場合には、ステップS101,S102の処理を繰り返す。また、ステップS103での判定結果がYESの場合には、通信実績情報取得処理(ステップS100)を終了する。
【0025】
ここで、通信端末110の動作停止を指示する指示信号とは、例えば、油圧ショベル100の運転室4に設けられたキースイッチがON状態からOFF状態に切り換えられたことを油圧ショベル100の図示しないコントローラで検出した場合に、コントローラから通信端末110に出力される。なお、キースイッチがOFF状態に切り換えられて動作停止が指示されるという条件に加えて、通信端末110の通信モジュール115による情報の送受信が終了しているという条件を判定に用いても良い。
【0026】
図3に戻り、通信実績情報取得処理(ステップS100)が終了すると、続いて、位置情報取得処理を行う(ステップS110:
図5)。
【0027】
図5に示すように、位置情報取得処理では、まず、位置情報取得部112において、位置情報取得装置10からの情報に基づいて作業現場における油圧ショベル100の位置情報を取得する(ステップS111)。位置情報取得装置10は、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)などである。なお、
図1においては、位置情報の演算機能を含むGPSアンテナを位置情報取得装置10として例示している。位置情報取得部112で取得される位置情報は、地球座標系における油圧ショベル100の位置座標や、その位置座標を作業現場に予め設定された作業現場座標系における位置座標に変換したものである。
【0028】
続いて、位置情報を情報結合部113での処理が可能なデータ形式に変換し、情報結合部113に送信する(ステップS102)。位置情報が変換されるデータ形式としては、例えば、通信量の削減を考慮したバイナリ形式などが考えられる。
【0029】
続いて、通信端末110の動作停止を指示する指示信号を受信したかどうかを判定し(ステップS113)、判定結果がNOの場合には、ステップS111,S112の処理を繰り返す。また、ステップS113での判定結果がYESの場合には、通信実績情報取得処理(ステップS110)を終了する。なお、通信端末110の動作停止を指示する指示信号は、ステップS100に示した通信実績情報取得処理と同様のものである。
【0030】
図3に戻り、位置情報取得処理(ステップS110)が終了すると、続いて、情報結合処理を行う(ステップS120:
図6)。
【0031】
図6に示すように、情報結合処理では、まず、情報結合部113において、通信実績情報取得部111から通信実績情報を取得するとともに(ステップS121)、位置情報取得部112から位置情報を取得し(ステップS122)、情報記憶部114に記憶されている通信実績位置情報600(後述)に前回の処理で追加された通信実績情報および位置情報とそれぞれ比較して異なっているかどうか、すなわち、変化しているかどうかを判定する(ステップS123)。
【0032】
図8は、通信実績位置情報のデータ形式の一例を示す図である。
【0033】
図8に示すように、通信実績位置情報600は、作業機械特定情報610、情報作成日時情報620、通信状況情報630、件数情報640、及び、ファイル終了情報650などから構成されている。
【0034】
作業機械特定情報610は、作業機械を個別に特定する情報であり、例えば、作業機械(本実施の形態では油圧ショベル100)のシリアル番号が考えられる。
【0035】
情報作成日時情報620は、通信実績位置情報600を作成した年月日時分秒を記録することが考えられる。
【0036】
通信状況情報630は、通信実績情報と位置情報とを合わせた情報631b~633bと、それぞれの情報が取得された日時を示すタイムスタンプ631a~633aとで構成されている。通信実績情報と位置情報とを合わせた情報が無い場合には「データ無し」が記録される。通信状況情報630には、後述する件数情報640で規定される件数を上限として情報631b~633bが付加可能であり、件数が上限に達した状態で新たに情報が付加される場合には、タイムスタンプ631a~633aの情報が最も古いものから削除される。なお、
図8においては、図示の簡単のため、通信実績情報の一部のみを図示している。また、電波強度を記号で例示しているが、電波強度として数値を用いても良い。
【0037】
件数情報640は、通信実績位置情報600に含まれる情報631b~633bの件数の上限を定める情報であり、例えば、Nは正の整数である。ただし、件数Nは固定長でなく可変長としてもよい。
【0038】
ファイル終了情報650は、通信実績位置情報600の情報の終端を示す情報である。
【0039】
図6に戻り、ステップS123での判定結果がNOの場合、すなわち、情報結合部113が新たに取得した通信実績情報および位置情報が、情報記憶部114に記憶されている通信実績位置情報600に前回の処理で追加された通信実績情報および位置情報から変化していない場合には、
図3のステップS100の処理に戻る(
図3の(A)参照)。
【0040】
また、ステップS123での判定結果がYESの場合、すなわち、情報結合部113が新たに取得した通信実績情報および位置情報が、情報記憶部114に記憶されている通信実績位置情報600に前回の処理で追加された通信実績情報および位置情報から変化している場合には、情報結合部113が今回の処理で新たに取得した通信実績情報および位置情報を通信実績位置情報600に追加し(ステップS124)、追加した通信実績情報および位置情報にタイムスタンプを付加して通信実績位置情報600を作成し(ステップS125)、作成した通信実績位置情報600を情報記憶部114に記憶させる(ステップS126)。
【0041】
続いて、通信端末110の動作停止を指示する指示信号を受信したかどうかを判定し(ステップS127)、判定結果がNOの場合には、ステップS121~S126の処理を繰り返す。また、ステップS127での判定結果がYESの場合には、情報結合処理(ステップS120)を終了する。なお、通信端末110の動作停止を指示する指示信号は、ステップS100に示した通信実績情報取得処理と同様のものである。
【0042】
図3に戻り、情報結合処理(ステップS120)が終了すると、続いて、通信モジュール115が通信可能かどうかを判定し(ステップS130)、判定結果がYESの場合には、作成した通信実績位置情報600を通信モジュール115を介してサーバ200へ送信する(ステップS140)。
【0043】
ここで、通信モジュール115が通信可能かどうかの判定は、例えば、通信モジュール115が基地局500と接続されてキャリア名を取得できるかどうかや、基地局500とのデータ通信の接続が完了したかどうか、或いは、サーバ200とハンドシェイクを行ってサーバ200との接続が完了したかどうかを判定することにより行う。
【0044】
通信端末110の通信モジュール115は、基地局500と移動体通信501を行うことで通信網400を介してサーバ200と通信することが可能である。基地局500では、移動体通信501を介して送受信される情報のデータ形式と通信網400上で用いられる情報のデータ形式とが整合するように相互変換を行う。
【0045】
また、ステップS140での処理が終了した場合、又は、ステップS130での判定結果がNOの場合には、通信端末110の動作停止を指示する指示信号を受信したかどうかを判定し(ステップS150)、判定結果がNOの場合には、ステップS100~S140の処理を繰り返す。また、ステップS150での判定結果がYESの場合には処理を終了する。なお、通信端末110の動作停止を指示する指示信号は、ステップS100に示した通信実績情報取得処理と同様のものである。
【0046】
サーバ200は、作業現場で稼動する複数の作業機械(本実施の形態では油圧ショベル100)から送信されてくる情報を管理するものであり、地域通信状態推定部201及び地域通信状態データ記憶部202を備えている。サーバ200は、情報端末300から指定された特定の作業機械、或いは、それに関連する作業機械の情報を情報端末300などに対して出力することができる。
【0047】
情報端末300は、作業現場の作業機械(本実施の形態では油圧ショベル100)から離れた事務所などに存在するPCや、サービス員や顧客に携帯されるスマートフォンやタブレットなどである。情報端末300は、移動体通信501とは異なる回線で通信網400に接続してサーバ200にアクセスし、サーバ200に種々の要求を出力することができるとともに、地域通信状態データ記憶部202に記憶された情報を閲覧することができる。
【0048】
図7は、サーバの地域通信状態マップ作成処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0049】
図7に示すように、地域通信状態マップ作成処理において、サーバ200は、まず、地域通信状態推定部201において、油圧ショベル100から通信網400を介して送信された通信実績位置情報600を地域通信状態推定部201での処理が可能なデータ形式に展開する(ステップS200)。通信実績位置情報600は、通信量の削減などを考慮したバイナリ形式などの形で油圧ショベル100から送信されるので、サーバ200で解析可能なテキスト形式や数値形式に展開する。
【0050】
続いて、展開された通信実績位置情報600から通信成功/失敗フラグを確認して通信が成功したかを判定し(ステップS210)、判定結果がYESの場合には、対応する位置情報に基づく特定の範囲を通信成功エリアとし(ステップS220)、判定結果がNOの場合には、対応する位置情報に基づく特定の範囲を通信失敗エリアとする(ステップS211)。通信実績位置情報600に、通信成功/失敗フラグと位置情報とが複数組含まれている場合には、それぞれについて判定を行う。
【0051】
なお、通信成功エリアおよび通信失敗エリアの決め方は特に限定されないが、例えば、位置情報で示される位置座標を中心とする予め定められた半径の円形としても良いし、位置情報で示される位置座標を中心とする予め定められた大きさの矩形としても良い。また、通信成功エリアおよび通信失敗エリアを示す円形の半径(矩形の場合は大きさ)は電波強度などに応じて変えるようにしても良く、さらには、通信周波数帯や通信キャリア通信キャリアに応じて変更度合いを変えてもよい。なお、同時に複数の通信キャリアを用いる有る場合には、通信周波数帯や通信キャリアごとに変更度合いを変えても良い。
【0052】
ステップS220,S221の処理が終了した場合、すなわち、通信成功エリアおよび通信失敗エリアが設定された場合には、各通信成功エリアおよび通信失敗エリアに対して対応する電波強度を付加情報として設定し(ステップS230)、これらの情報を含む地域通信状態マップを作成して地域通信状態データ記憶部202に記憶して(ステップS240)、処理を終了する。
【0053】
【0054】
図9において、地域通信状態マップ700には、通信成功エリア701、通信成功推定エリア702、通信失敗エリア703、及び、実績無しエリア704のほか、現在の油圧ショベル100の位置100Aが設定されている。
【0055】
通信成功エリア701は、通信可能なエリアであり、過去に通信が成功したエリアを示している。なお、通信成功工リアが複数存在する場合には地域通信状態マップ700上では重ね合わせて表示される。
【0056】
通信成功推定エリア702は、通信の実績はないが、作業現場の事前情報などから電波強度が十分に強く通信が成功することが推定されるエリアであり、通信可能なエリアであるといえる。
【0057】
通信失敗エリア703は、通信状態が悪いエリアであり、過去に通信が失敗した通信不能なエリアを示している。
【0058】
通信実績無しエリア704は過去に通信実績位置情報が作成されたことのない工リアである。
【0059】
図10は、サーバの通信状態判定処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0060】
通信状態判定処理は、サーバ200上において1日に1度実施されるようにしても良いし、情報端末300からの指示があった場合に実施してもよい。
【0061】
図10に示すように、通信状態判定処理において、サーバ200は、まず、予め定めた規定期間内(例えば、4日間)に、作業現場で稼動する各作業機械(例えば、油圧ショベル100)から通信実績位置情報を受信したかどうかを判定し(ステップS300)、判定結果がYESの場合には処理を終了する。
【0062】
また、判定結果がNOの場合、すなわち、規定期間内に作業現場で稼動する作業機械のうち特定の作業機械からの通信状態位置情報の受信が無かった場合には、情報端末300に対して該当する作業機械の状態、位置情報、稼動状況などをサーバ200に送信するよう要求する。この要求には、メールなどを用いたり、スマートフォンのプッシュ通知を用いたりしても良い。また、予め入力されている情報を参照することで作業機械の情報を取得してもよい。
【0063】
ステップS310において作業機械に関する情報を取得すると、続いて、地域通信状態マップ700を用いて作業機械の位置が通信可能なエリア(通信成功エリア、通信成功推定エリア)であるかどうかを判定し(ステップS320)、判定結果がNOの場合には、通信可能なエリアではない旨を情報端末300へ送信するとともに(ステップS321)、作業機械の移動(例えば、通信可能なエリアへの移動)を促す通知を情報端末300へ送信し(ステップS322)、処理を終了する。なお、なお、ステップS322において、作業機械の移動を促す通知と合わせて、地域通信状態マップ700を送信することにより、情報端末300において通信可能なエリアを視覚的に確認することができる。また、ステップS322においては、サービス員が作業機械の所在地まで出向いて稼働データ直接ダウンロードする旨を情報端末300ヘ送信するようにしてもよい。
【0064】
また、ステップS320での判定結果がYESの場合、すなわち、作業機械の位置が通信可能なエリアである場合には、情報端末300からの情報(稼動状況)に基づいて、予め定めた期間内に作業機械が稼動したかどうかを判定し(ステップS330)、判定結果がYESの場合には、通信端末110が不良である、すなわち、故障などの可能性がある旨を情報端末300へ送信し(ステップS340)、処理を終了する。
【0065】
また、ステップS330での判定結果がNOの場合、すなわち、予め定めた期間内に作業機械が稼動していない場合には、その作業車両が休車状態である旨を情報端末300へ送信し(ステップS331)、処理を終了する。
【0066】
以上のように構成した本実施の形態においては、作業機械(本実施の形態においては油圧ショベル100)に搭載される通信端末110からサーバ200に送信される通信実績位置情報に基づいて地域通信状態データを作成し、特定の作業機械からの通信がない場合において、その作業機械の状態、位置、稼働状況などを情報端末300に要求し、情報端末300からの情報に応じて、遠隔地(サーバ200の設置地域)において通信端末110が通信不能となった原因を特定することができる。遠隔地から通信不能の原因を特定することが可能となるので、通信状態の変化に応じた適切な対応をとることができ、サービスの迅速化や省力化を図ることができる。
【0067】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0068】
(1)上記の実施の形態では、作業現場で稼動する作業機械(例えば、油圧ショベル100)に搭載された通信端末110と通信可能なサーバ200とを備えた通信状態監視システムにおいて、前記サーバと通信可能な情報端末300を備え、前記通信端末は、前記通信端末による前記サーバとの通信実績を含む通信実績情報を取得するとともに、前記作業現場における前記作業機械の位置情報を取得し、取得した前記通信実績情報と前記位置情報とを紐付けした通信実績位置情報600を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記通信端末との通信が不能である場合に、前記作業機械の位置情報を含む情報の入力を促す情報を前記情報端末に送信し、前記情報端末に入力された前記作業機械の位置情報を含む情報に基づいて、前記通信端末による通信が不能である原因を判定するものとした。
【0069】
これにより、通信端末の通信状態を監視し、通信端末が通信不能となった場合の原因を特定することができ、通信状態の変化に応じた適切な対応をとることができる。
【0070】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の通信状態監視システムにおいて、前記サーバ200は、前記通信実績位置情報600に基づいて、前記作業現場における前記作業機械(例えば、油圧ショベル100)の位置と前記通信実績情報に含まれる電波強度とが対応して表示された地図(例えば、地域通信状態マップ700)を生成し、前記情報端末300に送信するものとした。
【0071】
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の通信状態監視システムにおいて、前記情報端末300は、インターネット回線(例えば、通信網400)を介して前記サーバ200と通信するものとした。
【0073】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0074】
2…下部走行体、3…上部旋回体、4…運転室、6…フロント作業機、6A…ブーム、6B…アーム、6C…バケット、10…位置情報取得装置、11a,11b…クローラフレーム、12a,12b…クローラ、13a,13b…走行油圧モータ、16A…ブームシリンダ、16B…アームシリンダ、16C…バケットシリンダ、31…旋回フレーム、32…旋回油圧モータ、34…油圧ポンプ、35…コントロールバルブ、100…油圧ショベル、110…通信端末、111…通信実績情報取得部、112…位置情報取得部、113…情報結合部、114…情報記憶部、115…通信モジュール、200…サーバ、201…地域通信状態推定部、202…地域通信状態データ記憶部、300…情報端末、400…通信網、500…基地局、501…移動体通信、600…通信実績位置情報、610…作業機械特定情報、620…情報作成日時情報、630…通信状況情報、631a~633a…タイムスタンプ、631b~633b…情報、640…件数情報、650…ファイル終了情報、700…地域通信状態マップ、701…通信成功エリア、702…通信成功推定エリア、703…通信失敗エリア、704…実績無しエリア