(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】立体鉄心変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/08 20060101AFI20221027BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20221027BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01F27/08 153
H01F30/10 S
H01F30/12 A
H01F30/12 C
(21)【出願番号】P 2019097700
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安東 邦彦
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0300526(US,A1)
【文献】特表2015-503854(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073252(WO,A1)
【文献】実開昭60-013717(JP,U)
【文献】特開2018-037471(JP,A)
【文献】実開昭60-081629(JP,U)
【文献】特開平07-057940(JP,A)
【文献】特開2005-347481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0354386(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0179330(US,A1)
【文献】特表2003-522407(JP,A)
【文献】実開昭53-110416(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/08
H01F 30/12
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形枠形状の単相鉄心3個を上面から見た際に三角形状に配置し、2個の鉄心が合わさった3つの鉄心脚部を有する立体鉄心と、前記鉄心脚部のそれぞれに配置した3つのコイルを備える立体鉄心変圧器であって、
前記3つのコイルが隣り合って形成される通風路と、
前記立体鉄心の下側に取り付けた下部取付金具と、
冷却風を送る冷却ファンと、
を備え、
前記下部取付金具に設けた開口部を通して、前記冷却ファンからの冷却風を前記通風路へ送
り、
前記立体鉄心の、2個の鉄心が合わさった前記鉄心脚部の下部の角部の隙間を密封する風漏れ防止板を備えることを特徴とする立体鉄心変圧器。
【請求項2】
請求項1に記載の立体鉄心変圧器において、
前記冷却ファンは、前記立体鉄心の下方であって且つ平面中央に配置したことを特徴とする立体鉄心変圧器。
【請求項3】
請求項2に記載の立体鉄心変圧器において、
平面中央部に対して、前記コイルの下方から、コイル間で構成される前記通風路を通り、前記コイルの上方へ冷却風が流れることで、冷却効果を高めることを特徴とする立体鉄心変圧器。
【請求項4】
請求項3に記載の立体鉄心変圧器において、
前記下部取付金具は、平面中央の位置に冷却ファンを配置するスペースを有し、当該スペースに前記冷却ファンを配置したことを特徴とする立体鉄心変圧器。
【請求項5】
請求項2に記載の立体鉄心変圧器において、
前記冷却ファンを、前記下部取付金具に着脱可能に取り付けたことを特徴とする立体鉄心変圧器。
【請求項6】
請求項1に記載の立体鉄心変圧器において、
前記下部取付金具と前記コイルとの間にコイル支えを備えることを特徴とする立体鉄心変圧器。
【請求項7】
請求項1に記載の立体鉄心変圧器において、
前記冷却ファンから前記下部取付金具に設けた開口部に冷却風を送る導風ダクトを備え、
前記冷却ファンは、前記下部取付金具の側方であって、冷却風を前記導風ダクトへ送る位置に設けたことを特徴とする立体鉄心変圧器。
【請求項8】
請求項
1に記載の立体鉄心変圧器において、
前記風漏れ防止板は、前記下部取付金具と一体化したことを特徴とする立体鉄心変圧器。
【請求項9】
請求項1に記載の立体鉄心変圧器において、
冷却ファンの電源リード線の配線用の端子台を、前記下部取付金具の冷却ファン周辺部に配置したことを特徴とする立体鉄心変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体鉄心変圧器の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁鋼板を積層してなる略同一の円筒形状の3個の単位鉄心を、同一の軸Xを中心として対称に配置すると共に、各単位鉄心が、互いに他の2つの単位鉄心と一部が接するように配置して構成した変圧器鉄心が、開示されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の変圧器によれば、各単位鉄心に発生する磁束波形の歪がより小さくなることで、従来の三相3脚変圧器よりも鉄損が減少するようになり、変圧器の効率を向上させることができる。しかし、円筒形状の3個の単位鉄心が三角形の頂点位置に配置され、3個全てのコイルが隣り合う配置となっているため、熱源であるコイルが隣接し合う平面中央部に熱が籠もりやすいが、この点は考慮されていない。
【0005】
本発明は、簡単な構造で、立体鉄心変圧器の冷却効果を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本発明の「立体鉄心変圧器」の一例を挙げるならば、
矩形枠形状の単相鉄心3個を上面から見た際に三角形状に配置し、2個の鉄心が合わさった3つの鉄心脚部を有する立体鉄心と、前記鉄心脚部のそれぞれに配置した3つのコイルを備える立体鉄心変圧器であって、前記3つのコイルが隣り合って形成される通風路と、前記立体鉄心の下側に取り付けた下部取付金具と、冷却風を送る冷却ファンと、を備え、前記下部取付金具に設けた開口部を通して、前記冷却ファンからの冷却風を前記通風路へ送り、前記立体鉄心の、2個の鉄心が合わさった前記鉄心脚部の下部の角部の隙間を密封する風漏れ防止板を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却ファンにより、熱源が集中する平面中央部に対して、コイルの下方から、コイル間で構成される通風路を通り、コイルの上方へ送風することで、簡単な構造で、立体鉄心変圧器の冷却効果を高めることが可能となる。
【0008】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の立体鉄心変圧器の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の立体鉄心変圧器の鉄心を示す斜視図である。
【
図3】実施例1の立体鉄心変圧器を示す正面図である。
【
図4】実施例1の立体鉄心変圧器を示す下面図である。
【
図5】実施例2の立体鉄心変圧器を示す斜視図である。
【
図7】実施例3の立体鉄心変圧器の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素にはなるべく同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0011】
図1に立体鉄心変圧器の一例の斜視図を、
図2に、
図1の立体鉄心変圧器の立体鉄心の斜視図を示す。
【0012】
立体鉄心変圧器1は、立体鉄心11、コイル12、下部取付金具14、上部取付金具13により構成されている。
【0013】
立体鉄心11は、矩形枠形状の同一磁路長の単相鉄心3個により構成され、鉄心3個を上面から見た際に三角形状に配置し、2個の鉄心が合わさった鉄心脚部の断面形状は略円形である。3つの鉄心脚部にはそれぞれ円筒状のコイル12が配置されている。2個の鉄心が合わさった鉄心脚部の断面形状は略円形であることから、コイルは円筒状となる。立体鉄心11の下側には下部取付金具14が取り付けられ、上側には上部取付金具13が取り付けられている。コイル12は、下部取付金具14および上部取付金具13との間に配置したコイル支え15により上下方向に支えられている。また、上部取付金具13と下部取付金具14とは取付金具連結スタッド16により連結されている。
【0014】
図3に実施例1の立体鉄心変圧器の正面図を、
図4に下面図を示す。
【0015】
下部取付金具14は、平面中央の位置に冷却ファン21を配置するスペースを有し、コイル12の下方から、コイル間で構成される通風路17を通り、コイル12の上方へ冷却風を送るための円形状の開口部141を有する。変圧器鉄心11の下方であって、下部取付金具14の開口部141には、冷却ファン21が取り付けられている。なお、使用場所への変圧器の設置後においても冷却ファン21の取替作業が容易となるよう、下部取付金具14には冷却ファン21の取り出しスペースを確保した構造とする。そして、冷却ファン21は、下部取付金具14へ着脱可能に取り付けられている。変圧器の動作時に、冷却ファン21を回転させることで、コイル12の下方から、コイル間で構成される通風路17を通り、コイル12の上方へ冷却風31を送風する。
【0016】
立体鉄心変圧器においては、各脚のコイルが三角形の頂点位置に配置され、3個全てのコイルが隣り合う配置となっている。そのため、3脚の鉄心およびコイルの平面中央部に熱が籠もりやすい構造となっている。本実施例によれば、コイルの下方且つ平面中央に配置した冷却ファンにより、熱源が集中する平面中央部に対して、コイルの下方から、コイル間で構成される通風路を通り、コイルの上方へ冷却風を送風することで、簡単な構造で冷却効果を高めることができる。また、冷却ファンを下部取付金具へ着脱可能に取り付けているので、冷却ファンの点検、交換が容易である。
【実施例2】
【0017】
図5に、本発明の実施例2の立体鉄心変圧器の斜視図を、
図6に、
図5のA平面の断面斜視図を示す。
【0018】
実施例2の立体鉄心変圧器は、冷却ファン21を下部取付金具14の下部側方に配置し、冷却ファン21から下部取付金具14の開口部141へ向けて冷却風を導く導風ダクト41を設けたものである。冷却ファン21からの冷却風を、導風ダクト41により下部取付金具14の開口部141へ導く。そして、実施例1と同様に、コイル12の下方から、コイル間で構成される通風路17を通り、コイル12の上方へ冷却風31を送風する。
【0019】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、冷却ファン21を下部取付金具14の下部側方に配置したので、冷却ファン21の点検、交換が容易となる。
【実施例3】
【0020】
図7に、本発明の実施例3の立体鉄心変圧器の一部を示す。
図7(a)は立体鉄心変圧器の下部取付金具に立体鉄心を取り付けた斜視図、
図7(b)は下部取付金具と密封部材の斜視図である。
【0021】
図2に示すように、立体鉄心11は、単相鉄心を組み合わせた角部に隙間50があり、冷却ファンから冷却風を送風した際に、この隙間50から冷却風が漏れてしまう。本実施例では、
図7に示すように、角部の隙間50を塞ぐように、立体鉄心11のそれぞれの角部50に密封部材である風漏れ防止板51を取り付ける。風漏れ防止板51は下部取付金具14に一体化されているのが好ましい。
【0022】
本実施例によれば、冷却ファンから送風した空気が立体鉄心の隙間から漏れることなくコイル間の通風路に送風されるため、冷却効果を高めることができる。
【実施例4】
【0023】
図8に、本発明の実施例4の立体鉄心変圧器を示す。
図8は立体鉄心変圧器の正面図である。
【0024】
本実施例では、実施例1の内容に加えて、冷却ファン電源用のコイル側配線121を有し、冷却ファンの電源リード線22の接続用の端子台23を冷却ファン周辺部の下部取付金具14に有する。そして、端子台23により冷却ファン21の電源リード線22の接続を行う。
【0025】
本実施例によれば、冷却ファンの取り換え時での配線作業性を向上することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…立体鉄心変圧器
11…鉄心(立体鉄心)
12…コイル
121…冷却ファン電源用コイル側配線
13…上部取付金具
14…下部取付金具
141…下部取付金具開口部
15…コイル支え
16…取付金具連結スタッド
17…通風路
21…冷却ファン
22…冷却ファン電源リード線
23…端子台
31…冷却風
41…導風ダクト
50…鉄心の隙間
51…風漏れ防止版