(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】保護盤
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A01G13/00 E
(21)【出願番号】P 2019149881
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505091167
【氏名又は名称】北勢工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】北山 秀晴
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-140494(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1879342(KR,B1)
【文献】実開昭52-134550(JP,U)
【文献】実開昭53-079255(JP,U)
【文献】実開平04-038251(JP,U)
【文献】実開平06-072346(JP,U)
【文献】実開平05-034848(JP,U)
【文献】実開昭54-030041(JP,U)
【文献】特開2015-097517(JP,A)
【文献】実開昭58-155956(JP,U)
【文献】実開昭57-028644(JP,U)
【文献】特開2006-320272(JP,A)
【文献】特開2005-034091(JP,A)
【文献】特開平10-108559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体内に列状に設けられた複数の保護部材と、を備えた鋳鉄製の保護盤であって、
前記保護部材は、長尺状であり、その幅は隣り合う前記保護部材との間隔よりも広く、
前記保護部材の上面には、その長手方向に沿って平面視略正方形の凸状面及び凹状面が交互に設けられており、
隣り合う複数の前記保護部材の上面において、前記凸状面と前記凹状面とが互いに千鳥格子状になるよう配置されて
おり、
前記凸状面は、前記保護部材の長手方向に沿う複数の横溝部を有する横溝凸状面と、前記保護部材の幅方向に沿う複数の縦溝部を有する縦溝凸状面と、の2種により構成されることを特徴とする保護盤。
【請求項2】
前記横溝凸状面又は前記縦溝凸状面が特定のパターンで配置されることにより、複数の前記保護部材の上面に、模様、図形又は文字が表現されることを特徴とする請求項1に記載の保護盤。
【請求項3】
前記横溝部又は前記縦溝部は、幅1~6mm、深さ1~6mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保護盤。
【請求項4】
前記保護部材の幅が12~30mmであり、隣り合う前記保護部材との間隔が5~10mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の保護盤。
【請求項5】
前記枠体内に列状に、前記保護部材と直交するように設けられた複数の中桟部材を備え、
該中桟部材は、前記保護部材の下面から前記保護部材を支持することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の保護盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、街路樹等の樹木の根元周囲の地面を保護する保護盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、市街地等の舗装された歩道脇に植えられる街路樹等の樹木の根元周囲には、人や車両による踏圧から樹木の根を保護するための保護盤が配設されている。
【0003】
この種の保護盤としては、鋳鉄製のものや、枠体にタイルや化粧パネル等の覆板を被せたものが一般的に使用されている。鋳鉄製の保護盤としては、上下方向に貫通する多数の貫通孔を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、枠体に覆板を被せた保護盤としては、地面に敷設された金属製の分割座板に軽量化粧パネルを被着させたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-34091号公報
【文献】特開2006-320272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鋳鉄製の保護盤は、例えば、雨等で水に濡れた時には、その上が非常に滑り易くなって危険であり、人が安全に歩行するには必ずしも適していない。更に、鋳鉄製の保護盤は、化粧パネルのような覆板に比べて、造形が容易でないので、一般的には意匠性に乏しく、例えば、装飾が施されたタイルが敷設された歩道の美感に合わせ難い。そのため、鋳鉄製の保護盤は、歩道脇の樹木に対しては敬遠されることがある。
【0006】
一方、枠体に覆板を被せた保護盤は、覆板の加工、造形や容易なので、様々なデザインを採用することができ、意匠性には優れているが、鋳鉄製の保護盤に比べると、耐候性には劣り、長期間の屋外で使用されると経年劣化して見栄えが悪くなり易く、また、車両による踏圧に対する耐久性までは持ち合わせていない。そのため、枠体に覆板を被せた保護盤は、車道脇の樹木に対しては敬遠されることがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、車道脇に敷設されても十分な耐久性があり、且つ歩道脇に敷設されても、その上を人が安全に歩行することができ、意匠性にも優れた鋳鉄製の保護盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、枠体と、前記枠体内に列状に設けられた複数の保護部材と、を備えた鋳鉄製の保護盤であって、前記保護部材は、長尺状であり、その幅は隣り合う前記保護部材との間隔よりも広く、前記保護部材の上面には、その長手方向に沿って平面視略正方形の凸状面及び凹状面が交互に設けられており、隣り合う複数の前記保護部材の上面において、前記凸状面と前記凹状面とが互いに千鳥格子状になるよう配置されており、前記凸状面は、前記保護部材の長手方向に沿う複数の横溝部を有する横溝凸状面と、前記保護部材の幅方向に沿う複数の縦溝部を有する縦溝凸状面と、の2種により構成されることを特徴とする。
【0010】
上記保護盤において、前記横溝凸状面又は前記縦溝凸状面が特定のパターンで配置されることにより、複数の前記保護部材の上面に、模様、図形又は文字が表現されることが好ましい。
【0011】
上記保護盤において、前記横溝部又は前記縦溝部は、幅1~6mm、深さ1~6mmであることが好ましい。
【0012】
上記保護盤において、前記保護部材の幅が12~30mmであり、隣り合う前記保護部材との間隔が5~10mmであることが好ましい。
【0013】
上記保護盤において、前記枠体内に列状に、前記保護部材と直交するように設けられた複数の中桟部材を備え、該中桟部材は、前記保護部材の下面から前記保護部材を支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、枠体と複数の保護部材が鋳鉄により成形されているので、車道脇に敷設されても十分な耐久性を得ることができる。また、保護部材の上面に凸状面及び凹状面が形成されているので、凹凸が滑り止めになり、また水が貯まり難く、歩道脇に敷設されても、その上を人が安全に歩行することができる。また、凸状面及び凹状面が千鳥格子状に配置されているので、意匠性にも優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】(a)は
図1のA方向からの側面図、(b)は
図2のB方向からの側面図。
【
図7】(a)は
図6に示す部分の正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は底面図、(e)は右側面図、(f)は左側面図。
【
図8】上記実施形態の第1の変形例に係る保護盤の斜視図。
【
図9】上記実施形態の第2の変形例に係る保護盤の斜視図。
【
図10】上記実施形態の第3の変形例に係る保護盤の斜視図。
【
図11】上記実施形態の第4の変形例に係る保護盤の斜視図。
【
図12】上記実施形態の第5の変形例に係る保護盤の斜視図。
【
図13】上記実施形態の第6の変形例に係る保護盤の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る保護盤について、
図1乃至
図7を参照して説明する。保護盤は、市街地等の舗装された歩道脇に植えられる街路樹等の樹木の根元周囲に、人や車両による踏圧から樹木の根を保護するための保護盤が配設される。なお、以下の説明において、便宜上、
図3及び
図4に示す紙面左右方向を横方向、上下方向を縦方向と呼ぶが、実際に地面に敷設される保護盤では、いずれの方向が横であるか縦であるかは限定されない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の保護盤1は、鋳鉄製であり、枠体2と、枠体2内に列状に設けられた複数の保護部材3と、を備える。また、枠体2は、外枠21が平面視で矩形で外枠21と、中央に設けられ樹木(不図示)を囲う矩形の内枠22を有する。例えば、外枠21の一辺の寸法は1000~2500mm、内枠22の一辺の寸法は、400~1000mmである。
【0018】
図2に示すように、保護盤1は、主に4つの平面視L字形状の保護板10から構成されている。一の保護板10は、L字状の外枠21及び内枠22に加えて、隣り合う保護部材3と連接する2辺の連接枠23を有する。すなわち、枠体2は、外枠21、内枠22及び連接枠23よって構成される。
【0019】
連接枠23のうち内枠22の近傍には、隣り合う保護板10との連結用のボルト挿通用孔24が設けられている。一の保護板10のボルト挿通用孔24は、半筒形状に形成されており、2つの保護板10のボルト挿通用孔24が合わさって、1本のボルト26を挿通させる孔が形成される。ボルト挿通用孔24は、ボルト26の頭部及び座金が収容される座ぐり部と、ボルト26の軸部が挿通される筒部とを有する。
【0020】
保護板10の底面側には、連結具25が配置される(
図4、
図5(a)(b)も参照)。連結具25は、ボルト26のネジ部が螺合されるネジ孔と、平面視でネジ孔の両側端部に上方に突出した凸部と、を有する。両方の凸部が隣り合う保護板10の連接枠23に係合し、ボルト26が締結されることで、隣り合う保護板10が連結される。
【0021】
図3乃至
図5に示すように、保護部材3は、長尺状であり、その幅Wは隣り合う保護部材3との間隔Gよりも広くなっている。保護板10(保護盤1)は、枠体2内に列状に、保護部材3と直交するように設けられた複数の中桟部材4を備える(特に
図4参照)。中桟部材4は、保護部材3の下面から保護部材3を支持する。一の保護板10は、枠体2、保護部材3及び中桟部材4によって構成され、鋳鉄により一体成形される。
【0022】
示した構成例では、一の保護板10あたり、30本の保護部材3が列状に設けられており(
図3参照)、5本の中桟部材4が設けられている。なお、
図5(a)は、
図3のA方向からの側面であり、保護部材3の長さ方向を正面に描いている。また、
図5(b)は、
図3のB方向からの側面であり、保護部材3の幅方向を正面に描いている。
【0023】
図6及び
図7(a)乃至(f)は、
図3の一点鎖線で示した部分を拡大して示す。この拡大された部分は、並列に配された内枠22及び中桟部材4と、内枠22及び中桟部材4と直交するように配された4本の保護部材3と、を含む。内枠22は、保護板10の外郭を成す構造部材であるから、十分な強度を確保できるように、保護部材3に比べて高さ方向の厚みがある。一方、保護部材3は、内枠22に比べて厚みが薄いが、多数並列されると共に、中桟部材4で支持されるので、必要な強度を確保することができる。
【0024】
保護部材3の幅Wは12~30mmであり、隣り合う保護部材3同士の間隔Gは5~10mmであることが好ましい(特に
図7(c)参照)。このように、保護部材3の幅Wを、保護部材3同士の間隔Gより広くすることで、保護盤1の上面における保護部材3の面積を大きくなり、その上を人が安全に歩行することができる。また、間隔Gは10mm以下なので、例えば、間隔Gに女性用の靴のヒール部分が嵌ることも抑制することができる。
【0025】
また、保護部材3の上面には、その長手方向に沿って平面視略正方形の凸状面31及び凹状面32が交互に設けられている。また、隣り合う複数の保護部材3の上面において、凸状面31と凹状面32とが互いに千鳥格子状になるよう配置される。このような構成にすることで、凸状面31及び凹状面32が千鳥格子模様のように見え、保護部材3の上面が平坦である場合に比べて、意匠性を高めることができる。
【0026】
また、凸状面31と凹状面32は、保護部材3の上面には凹凸を形成し、その上を歩く人の滑り止めとして機能する。また、雨が降って濡れた場合でも、水は凹状面32に貯まり、間隔Gに排水され、凸状面31には水が貯まらないので、保護盤1の上を歩行する人が滑ることを抑制することができる。
【0027】
更に、凸状面31は、保護部材3の長手方向に沿う複数の横溝部33aを有する横溝凸状面31aと、保護部材3の幅方向に沿う複数の縦溝部33bを有する縦溝凸状面31bと、の2種により構成される。
図7(c)に示す構成例では、上2列の保護部材3の凸状面31は縦溝凸状面31bであり、下2列の保護部材3の凸状面31は横溝凸状面31aである。凸状面31を、横溝凸状面31a又は縦溝凸状面31bとすることで、保護盤1の上面に、より細かい凹凸が形成され、滑り止めの機能を向上させることができる。
【0028】
横溝凸状面31a及び縦溝凸状面31bは、図例の配置に限られず、例えば、横溝凸状面31a又は縦溝凸状面31bが複数列に亘って配置されていてもよく、同じ保護部材3においても、横溝凸状面31aが連続的に配置された部位、又は縦溝凸状面31bが連続的に配置された部位があってもよい。
【0029】
鋳鉄製の保護板10(保護盤1)は、一般的には黒色であるが、金属なので一定程度は、外光を反射する。横溝凸状面31a及び縦溝凸状面31bのうち、水平面は、外光を反射し易いので、相対的には白っぽく見える。一方、横溝部33a及縦溝部33bの鉛直面は、外光を反射し難く、相対的に黒っぽく見える。そのため、
図3で示したA方向からは、横溝部33aが形成された横溝凸状面31aは黒っぽく、縦溝部33bが形成された縦溝凸状面31bは白っぽく見える。一方、
図3で示したB方向からは、縦溝部33bが形成された縦溝凸状面31bは黒っぽく、横溝部33aが形成された横溝凸状面31aは白っぽく見える。すなわち、横溝凸状面31a又は縦溝凸状面31bが特定のパターンで配置されることにより、複数の保護部材3の上面に、模様、図形又は文字等を表現することができる。
【0030】
図3で示した構成例では、10×10マス単位で千鳥格子状に配置された凸状面31と凹状面32のうち、凸状面31が横溝凸状面31aである領域Y(
図3の実線領域)と、凸状面31が縦溝凸状面31bである領域T(
図3の破線領域)と、に分かれており、例えば、A方向からは領域Yが黒っぽく、領域Tが白っぽく見え、A方向からは領域Tが黒っぽく、領域Yが白っぽく見える。このようにして、保護盤1全体の上面に、凸状面31及び凹状面32による千鳥格子模様よりもマスの大きな千鳥格子模様が表現される。なお、本実施形態の保護盤1は、主として4つの保護板10で構成されたものであり、10×10マス単位の部材をブロック状に組み合わせて構成されるものではない。
【0031】
横溝部33a又は縦溝部33bは、幅1~6mm、深さ1~6mmであることが好ましい。横溝部33a又は縦溝部33bの深さを1mmとすることで、水平面と鉛直面との外光の反射が異なることで、濃淡を発生させ、模様等を表現できるようになる。なお、図例では、1つの凸状面31に対して2本の横溝部33a又は縦溝部33bが設けられた構成を示すが、横溝部33a又は縦溝部33bは3本以上であってもよく、その場合、幅や深さを小さくすっればよい。
【0032】
横溝凸状面31a及び縦溝凸状面31bの配置は、上記実施形態に限られず、様々なバリエーションを実現することができる。例えば、
図8に示す第1の変形例は、保護盤1全体の上面に、列状に並ぶ複数の六角形と、それらを結ぶ直線の模様を表現している。なお、図例では、模様の箇所を強調するため、縦溝凸状面31bのマスの箇所の一部を破線で示している。また、
図9に示す第2の変形例は、矩形の保護盤1に対して斜め方向に並ぶ縞模様を表現している。更に、
図10に示す第3の変形例は、保護盤1の両翼部に「BE
KOBE」の文字を表現している。
【0033】
このように、横溝凸状面31a及び縦溝凸状面31bの配置パターン次第で、鋳鉄製の保護板10自体に色彩を施さなくても、外光の反射によって、保護盤1の上面における見栄え上の色の濃淡をつけて、模様、図形又は文字等を表現することができ、保護盤1の意匠性を更に高めることができる。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態の保護盤1によれば、枠体2と複数の保護部材3が鋳鉄により一体成形されているので、車道脇に敷設されても十分な耐久性を得ることができる。また、保護部材3の上面に凸状面31及び凹状面32が形成されているので、凹凸が滑り止めになり、また水が貯まり難く、歩道脇に敷設されても、その上を人が安全に歩行することができる。また、凸状面31及び凹状面32が千鳥格子状に配置されているので、意匠性にも優れ、更に、凸状面31として横溝凸状面31a及び縦溝凸状面31bを配置して模様等を表現することで、意匠性を更に高めることができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。上記実施形態では、平面視で矩形の保護盤1を示したが、
図11に示す第4の変形例のように、外枠21及び内枠22が円形の保護盤1であってもよい。また、
図12に示す第5の変形例のように、2つの保護板10を連結させたコの字状の保護盤1であってもよい。また、
図13に示す第6の変形例のように、平面視で矩形の保護盤1が、例えば、側溝用の蓋として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 保護盤
2 枠体
3 保護部材
31 凸状面
31a 横溝凸状面
31b 縦溝凹状面
32 凹状面
33a 横溝部
33b 縦溝部
4 中桟部材
G 保護部材の間隔
W 保護部材の幅