(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20221027BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20221027BHJP
G05G 1/62 20080401ALI20221027BHJP
G05G 1/01 20080401ALI20221027BHJP
【FI】
E02F9/16 H
G05G1/04 Z
G05G1/62
G05G1/01 Z
(21)【出願番号】P 2019175882
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】切田 勝之
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐斗
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116758(JP,A)
【文献】特開2001-026949(JP,A)
【文献】特開2011-106269(JP,A)
【文献】特開2014-136943(JP,A)
【文献】特開2005-068892(JP,A)
【文献】特開2001-213198(JP,A)
【文献】特開2003-253703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00- 9/28
G05G 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に搭載され、座席を有する運転室と、
前記運転室に配設されるモニタと、
前記運転室に配設され、前記機体を操作するための操作ユニットと、を備えた作業機械において、
前記操作ユニットは、
前記座席の側部に位置するアームレストと、
前記アームレストの前方に位置し、前記機体の作業を行うために操作する操作レバーと、
前記モニタに表示される映像にしたがって所定の操作をするために用いられる操作デバイスと、
前記機体の稼働を停止する停止スイッチと、を有し、
前記操作デバイスと前記操作レバーとは、前記アームレスト上の点から一定距離離間した位置で、前記点を中心とした円の軌跡上に位置してな
り、
前記操作レバーは、上端が前後方向に傾倒し、前記機体の前後方向における進行方向を操作する前後進レバーであり、
前記停止スイッチは、前記操作ユニットにおける前記円の軌跡より前記点から前方に離間する側、かつ、前記操作レバーの機体左右方向右側に位置してなることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記操作デバイスは、
前記停止スイッチの機体前後方向後側
、か
つ、前記操作レバーの機体左右方向右
側に位置してなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記アームレストは、機体上下方向における位置を調整可能に構成されてなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記操作ユニットは、機体前後方向における位置を調整可能に構成されてなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記モニタは、前記操作ユニットに表示面の向きを調整可能に取り付けられてなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記操作ユニットは、前記機体の稼働態様を操作する機体態様操作スイッチを有し、
前記機体態様操作スイッチは、前記操作ユニットにおける前記円の軌跡より前記点に近い側に位置する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械に係り、特に操作装置の操作性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば転圧機械等のオペレータが搭乗する作業機械の機体には、運転室が設けられている。この運転室には、機体の周囲を撮像した映像や機体の速度等の状態を表示する液晶パネル(モニタ)、走行操作や液晶パネルに表示される内容等の設定操作その他機体に関する各種操作を行うための操作装置が配設されている。また、操作装置を用いで各種操作を行うために、操作装置には、複数のボタンやレバー等が取り付けられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、作業中に高い頻度で用いられるモニタが、オペレータから視て操作レバーより離間した位置に配設されているため、オペレータは、モニタを操作する際、操作レバーを操作する姿勢から前傾姿勢にならなければないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作レバーの操作を行う姿勢を維持したままモニタに関する操作を行うことができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の作業機械は、機体に搭載され、座席を有する運転室と、前記運転室に配設されるモニタと、前記運転室に配設され、前記機体を操作するための操作ユニットと、を備えた作業機械において、前記操作ユニットは、前記座席の側部に位置するアームレストと、前記アームレストの前方に位置し、前記機体の作業を行うために操作する操作レバーと、前記モニタに表示される映像にしたがって所定の操作をするために用いられる操作デバイスと、前記機体の稼働を停止する停止スイッチと、を有し、前記操作デバイスと前記操作レバーとは、前記アームレスト上の点から一定距離離間した位置で、前記点を中心とした円の軌跡上に位置してなり、前記操作レバーは、上端が前後方向に傾倒し、前記機体の前後方向における進行方向を操作する前後進レバーであり、前記停止スイッチは、前記操作ユニットにおける前記円の軌跡より前記点から前方に離間する側、かつ、前記操作レバーの機体左右方向右側に位置してなることを特徴とする。
【0007】
これにより、オペレータが操作レバーを把持した際におけるアームレスト上の点を中心とし操作レバーを通過する正円の軌跡上に操作デバイスが位置するようにすることで、オペレータは、アームレスト上に置いた肘を軸にして前腕を揺動させるようにし、操作レバーと操作デバイスとを簡単に使い分けて操作することが可能とされる。
そして、操作レバーが前後進レバーである場合において、機体の稼働を停止する停止スイッチを正円の軌跡よりアームレスト上の点から前方に離間する側に前後進レバーが傾倒する方向とは異なる方向に位置させるようにすることで、オペレータが操作レバー及び操作デバイスを操作している際に誤って停止スイッチを押圧することを抑制することが可能とされる。
【0008】
その他の態様として、前記操作デバイスは、前記停止スイッチの機体前後方向後側、かつ、前記操作レバーの機体左右方向右側に位置してなるのが好ましい。
これにより、誤って停止スイッチを押圧することを抑制しつつ、操作レバーと操作デバイスとを良好に使い分けて操作することが可能とされる。
【0009】
その他の態様として、前記アームレストは、機体上下方向における位置を調整可能に構成されてなるのが好ましい。
これにより、アームレストを機体上下方向における位置を調整可能な構成にすることで、オペレータの肘の位置を調整することが可能とされる。
【0010】
その他の態様として、前記操作ユニットは、機体前後方向における位置を調整可能に構成されてなるのが好ましい。
これにより、操作ユニットを機体前後方向における位置を調整可能な構成にすることで、オペレータの前腕の長さ等に合わせた位置に操作レバーや操作デバイスを位置させることが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記モニタは、前記操作ユニットに表示面の向きを調整可能に取り付けられてなるのが好ましい。
これにより、操作ユニットに表示面の向きを調整可能となるようにモニタを取り付けるようにすることで、操作ユニットとモニタとを一体の装置に構成することができ、モニタの表示面の向きを調整してオペレータの視認性を向上させることが可能とされる。
【0013】
その他の態様として、前記操作ユニットは、前記機体の稼働態様を操作する機体態様操作スイッチを有し、前記機体態様操作スイッチは、前記操作ユニットにおける前記円の軌跡より前記点に近い側に位置するのが好ましい。
これにより、機体の稼働態様を操作する機体態様操作スイッチを上記円の軌跡より前記点に近い側に位置させるようにすることで、オペレータが操作レバー及び操作デバイスを操作している際に誤って機体態様操作スイッチを押圧することを抑制することが可能とされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の作業機械によれば、オペレータが操作レバーを把持した際におけるアームレスト上の点を中心とし操作レバーを通過する正円の軌跡上に操作デバイスが位置するようにしたので、オペレータは、アームレスト上に置いた肘を軸にして前腕を揺動させるようにし、操作レバーと操作デバイスとを簡単に使い分けて操作することができる。これにより、操作レバーの操作を行う姿勢を維持したままモニタに関する操作を行うことができる。
そして、操作レバーが前後進レバーである場合において、機体の稼働を停止する停止スイッチを正円の軌跡よりアームレスト上の点から前方に離間する側に前後進レバーが傾倒する方向とは異なる方向に位置させるようにすることで、オペレータが操作レバー及び操作デバイスを操作している際に誤って停止スイッチを押圧することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】転圧作業時にオペレータが操作ユニットを操作している際のオペレータの前腕の動きを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、機体1の概略側面図が示されている。機体1は、駆動輪3を駆動して走行することで、前輪ローラ5により未舗装路の凹凸面の均しや締固め作業(機体の作業)を行う所謂土工用振動ローラである。この機体1は、メインフレーム11、フロントフレーム13、回動軸15、駆動装置17及び運転室19を備えている。
【0017】
メインフレーム11は、機体1の主たる骨格を形成する骨格部材である。このメインフレーム11は、前側にフロントフレーム13が回動軸15を介して取り付けられ、後側上部に駆動装置17が搭載され、前側上部に運転室19が搭載されている。
フロントフレーム13は、前輪ローラ5の機体左右方向外側に位置し、機体前後方向に延びる、左右一対の骨格部材である。このフロントフレーム13は、前輪ローラ5を回動可能に支持している。したがって、機体1は、図示しないアーティキュレート機構により回動軸15を軸にしてメインフレーム11とフロントフレーム13とを相対的に回動させることで機体1の進行方向を変更及び調整することが可能である。
【0018】
駆動装置17は、駆動輪3を駆動させるための駆動力を生成する図示しないエンジンや該エンジンによって生成される駆動力の回転速度やトルクを調整するHST(Hydraulic Static Transmission)等を内部に搭載する装置である。運転室19は、例えばピラー19aや屋根19b、窓ガラス19c等によって覆われた、機体1を操作するオペレータが搭乗する建屋である。
【0019】
図2を参照すると、運転室19の内部の前方斜視図が示されている。また、
図3を参照すると、運転室19の内部の上視図が示されている。運転室19には、座席21、コンソールボックス23、ステアリングホイール25及び操作ユニット27が配設されている。座席21は、運転室19の機体前後方向中央及び左右方向中央に位置し、フロア19dに取り付けられた、運転室19に搭乗したオペレータが着座する席である。この座席21は、オペレータが任意でシート21aを機体前後方向や上下方向に移動させるようにしてシート21aの位置を調整することが可能である。
【0020】
コンソールボックス23は、オペレータが運転室19に持ち込んだ飲料等の荷物を収納することが可能な収納庫である。このコンソールボックス23は、座席21の機体左右方向左方及び前後方向後方に位置している。ステアリングホイール25は、オペレータが機体1の転舵操作を行うことが可能な転舵装置である。したがって、ステアリングホイール25は、オペレータが操作することで、回動軸15を軸にしてメインフレーム11とフロントフレーム13とを相対的に回動させることが可能である。
【0021】
操作ユニット27は、機体1の前後進操作、走行態様の設定等、各種操作が可能な、オペレータが機体1を操作する際に用いる操作装置である。この操作ユニット27は、座席21の機体左右方向右方に位置している。
【0022】
図4を参照すると、操作ユニット27の側面図が示されている。操作ユニット27は、台座31、本体33、液晶パネル35、アームレスト37及び操作システム39が配設されている。台座31は、下端部がフロア19dに固定されており、上側に位置する本体33を支持する台である。この台座31は、スライドレール31aを介して本体33を支持しており、オペレータがスライドレバー31bを操作することで本体33を機体前後方向に移動させることができる。
【0023】
本体33は、例えば操作ユニット27に用いられる電力を各電気機器に供給する配線を内部に有する筐体である。この本体33には、機体前後方向前側及び上下方向上方に液晶パネル35がオペレータに視認可能に配設されている。液晶パネル35は、例えば機体1の後端に配設された図示しないカメラが撮像する機体前後方向後方の映像を表示面36に表示することや転圧作業の作業管理情報等の機体1に関する情報を表示することが可能な表示装置である。
【0024】
この液晶パネル35は、本体33の前端部から上方に延びるアーム36の上端に、回動支持部材36aを介して取り付けられている。回動支持部材36aは、液晶パネル35の表示面36が臨む方向(
図3中の矢印A)を上下方向及び左右方向について調整可能となるように液晶パネル35をアーム36の上端に揺動可能に支持する支持部材である。
【0025】
したがって、オペレータは、液晶パネル35の表示面36が臨む方向を調整するよう液晶パネル35の姿勢を任意で調整することができる。これにより、オペレータは、液晶パネル35の座席21に着座した状態で液晶パネル35の表示面36に表示される情報を視認しやすい向きに調整することができる。
【0026】
操作ユニット27の機体左右方向で視て座席21側の側部には、アームレスト37が取り付けられている。このアームレスト37は、オペレータが右腕の肘を含む前腕を置く肘置きであり、支持部材37aの座席21側から調整ネジ37bによって本体33に締結されている。これにより、アームレスト37は、調整ネジ37bの締結力を緩めつつ上下方向に移動することにより、上面の高さ、すなわちオペレータが肘をアームレスト37に置いたときの肘の高さを調整することができる。
【0027】
図5を参照すると、操作ユニット27の上視図が示されている。操作ユニット27の本体33の上側には、緊急停止ボタン(停止スイッチ)41、スイッチパネル(機体態様操作スイッチ)43、前後進レバー(操作レバー)45及びモニタ操作デバイス(操作デバイス)47が配設されている。緊急停止ボタン41は、本体33の上側の機体前後方向前側の左右方向右側に位置するボタンである。この緊急停止ボタン41は、押圧することで機体1の図示しないエンジンを停止させ、機体1が稼働することを停止する緊急停止制御を実行することができる。また、緊急停止ボタン41は、
図5の紙面方向で視て時計回りに回動させることで緊急停止制御を解除することができる。
【0028】
スイッチパネル43は、オペレータが機体1の走行態様等の設定を変更する際に操作する複数のスイッチが機体前後方向に並んで配設されたパネルであり、アームレスト37の機体左右方向右側に位置している。この複数のスイッチには、例えば、機体前後方向前側から順に、振動振幅選択スイッチ43a、自動振動スイッチ43b、トラクションコントロールキャンセルスイッチ43c、ファン逆転スイッチ43d、ファン正転スイッチ43e及び後処理装置再生スイッチ43fが配設されている。
【0029】
振動振幅選択スイッチ43a、自動振動スイッチ43b及びトラクションコントロールキャンセルスイッチ43cは、前輪ローラ5の振動態様、駆動輪3の駆動態様をそれぞれ設定するスイッチであり、主に転圧作業中に設定を変更するときに使用される。
【0030】
ファン逆転スイッチ43d、ファン正転スイッチ43e及び後処理装置再生スイッチ43fは、図示しないエンジンに外気を送風するファンの回転態様やエンジンから排出される排ガスを浄化する図示しない後処理装置を稼働させる際に押圧するスイッチであり、転圧作業を開始する前や作業完了後に機体1のメンテナンスを目的として操作するスイッチである。
【0031】
すなわち、スイッチパネル43は、振動振幅選択スイッチ43a、自動振動スイッチ43b及びトラクションコントロールキャンセルスイッチ43cのように転圧作業中に操作されるスイッチが機体前後方向前側に配設され、ファン逆転スイッチ43d、ファン正転スイッチ43e及び後処理装置再生スイッチ43fのように転圧作業中に操作される可能性が少ないスイッチが機体前後方向後側に配設されている。
【0032】
また、
図4によると、スイッチパネル43に設けられた各スイッチの上端43topは、アームレスト37を最も下側に位置するまで下げた際の上面37lowより下方に位置する。なお、
図5中のbrには、機体1のオプション装置等を操作するために追加的に取り付けるスイッチを取り付けるための所謂サービスプラグが内接され、蓋によって覆われている。
【0033】
前後進レバー45は、アームレスト37の機体前後方向前方に配設されるレバーである。この前後進レバー45は、前後進レバー45の上端が前後方向に傾くように倒すことで機体1の前後方向における進行方向を操作することができる。また、前後進レバー45は、オペレータが把持した際の滑り止めとして例えばラバー等によって表面が覆われた把持部45aが形成されている。
【0034】
モニタ操作デバイス47は、液晶パネル35に表示される映像に従って各種操作(所定の操作)を行うための操作デバイスであり、緊急停止ボタン41の機体前後方向後側に位置している。このモニタ操作デバイス47は、前後進レバー45の機体前後方向後側からアームレスト37の前側までの範囲Sであって、前後進レバー45の機体左右方向右側に位置している。
【0035】
また、モニタ操作デバイス47には、ダイヤルボタン47a及び複数のクリックボタン47bが配設されている。ダイヤルボタン47aは、モニタ操作デバイス47の前後方向及び左右方向で視て中央に位置するボタンであり、例えば押圧することや上下方向を軸にして回転させることで液晶パネル35上の選択項目を選択(所定の操作)することができる。クリックボタン47bは、押圧することで、例えば所謂ショートカット画面やホーム画面等の予め設定された設定画像に移行する(所定の操作をする)ためのボタンである。
【0036】
図6を参照すると、転圧作業時にオペレータが操作ユニット27を操作している際のオペレータの前腕R1、R2の動きを説明する説明図が示されている。
機体1のような土工用振動ローラ等の転圧機械では、転圧作業として、機体1を複数回(例えば4回)同じレーンを往復することで地面を締め固める。すなわち、前後進レバー45は、操作ユニット27に設けられた各種操作機器のうち、最も多い頻度でオペレータによって操作される操作機器である。
【0037】
ここで、オペレータが前後進レバー45の把持部45aを把持するときにおけるオペレータの前腕R1の肘は、アームレスト37上の点P上に位置する。なお、説明の便宜上、オペレータの前腕R1の位置のことを単にR1ともいう。
【0038】
また、オペレータは、施行路面のうち、転圧作業が完了した範囲を確認することや、機体1を後進させる際に後方を確認するために、転圧作業中にモニタ操作デバイス47を操作することで、オペレータが所望する情報を液晶パネル35の表示面35aに表示させる。すなわち、モニタ操作デバイス47は、操作ユニット27に設けられた各種操作機器のうち、前後進レバー45の次に多い頻度でオペレータによって操作される操作機器である。
【0039】
ここで、オペレータがモニタ操作デバイス47を操作するときにおけるオペレータの前腕R2の肘は、前後進レバー45の把持部45aを把持するときと同様に、アームレスト37上の点P上に位置する。なお、説明の便宜上、オペレータの前腕R2の位置のことを単にR2ともいう。
【0040】
図5によると、前後進レバー45の把持部45aは、アームレスト37上の点Pから一定距離L(例えば230.95mm)離間した位置に配設されている。また、モニタ操作デバイス47の中央に位置するダイヤルボタン47aは、前後進レバー45の把持部45aと同様にアームレスト37上の点Pから一定距離L離間した位置に配設されている。換言すると、前後進レバー45の把持部45a及びモニタ操作デバイス47のダイヤルボタン47aは、アームレスト37上の点Pを中心とする半径が一定距離Lの円弧C(操作レバーを通過する正円の軌跡)上に位置している。
【0041】
これにより、オペレータは、前腕の肘を点P上に位置させたまま、前腕の位置をR1からR2及びR2からR1に移動させることで前後進レバー45及びモニタ操作デバイス47を簡単に使い分けて操作することができる。
【0042】
また、操作ユニット27の本体33がスライドレール31aを介して台座31に取り付けられているため、オペレータの身長等に合わせるように本体33の位置を調整することで、オペレータの前腕の肘が置かれる点Pの位置を任意で調整することができる。また、アームレスト37は、機体上下方向における高さを調整することが可能なため、オペレータの前腕の長さ等に合わせるようにアームレスト37の機体上下方向における高さを調整することで、オペレータの前腕の肘が置かれる点Pの上下方向の位置を任意で調整することができる。
【0043】
ところで、
図5に示すように、緊急停止ボタン41は、円弧Cより点Pから離間した位置に配設されている。したがって、例えばオペレータが機体1の周囲を視認しながら作業している際に誤って緊急停止ボタン41を押して緊急停止制御を実行することを抑制することができる。一方で、緊急停止ボタン41と点Pとの間に前後進レバー45のような上下方向上方に延びる操作装置等がないため、オペレータは、緊急時に円弧Cより機体前後方向前方に前腕を伸ばすようにすることで簡単に緊急停止ボタン41を押圧することができる。
【0044】
また、スイッチパネル43に設けられた各スイッチは、モニタ操作デバイス47より機体前後方向後方、すなわち円弧Cより点Pに近い位置に配設されている。またさらに、上記したように、スイッチパネル43に設けられた各スイッチの上端43topは、アームレスト37を最も下側に位置するまで下げた際の上端37lowより下方に位置する(
図4)。したがって、オペレータが前腕の位置をR1からR2及びR2からR1に移動させる際に過ってスイッチパネル43に設けられた各スイッチに前腕が接触することを抑制することができる。
【0045】
そして、スイッチパネル43に設けられた各スイッチのうち、振動振幅選択スイッチ43a、自動振動スイッチ43b及びトラクションコントロールキャンセルスイッチ43cのような転圧作業中に押圧する可能性があるスイッチについては、その他のスイッチと比較して機体前後方向前側、すなわち円弧C側に位置している。これにより、オペレータは、転圧作業中に前輪ローラ5の振動態様や駆動輪3の駆動態様等を変更する際に肘を座席21側に引きながら振動振幅選択スイッチ43a、自動振動スイッチ43b及びトラクションコントロールキャンセルスイッチ43cに触れるようにして簡単に操作することができる。
【0046】
一方で、スイッチパネル43に設けられた各スイッチのうち、ファン逆転スイッチ43d、ファン正転スイッチ43e及び後処理装置再生スイッチ43fのような転圧作業中に押圧する可能性が低いスイッチについては、その他のスイッチと比較して機体前後方向後側、すなわち点P側に位置している。これにより、オペレータが転圧作業中に誤ってファン逆転スイッチ43d、ファン正転スイッチ43e及び後処理装置再生スイッチ43fを押圧することを抑制することができる。
【0047】
以上説明したように、本発明に係る作業機械では、機体1に搭載され、オペレータが搭乗する運転室19と、運転室19に搭乗したオペレータが視認可能に配設される液晶パネル35と、機体1をオペレータが操作する際に用いる操作ユニット27と、を備えた作業機械において、操作ユニット27は、機体1に搭乗したオペレータが肘を置くアームレスト37と、アームレスト37の前方に位置し、機体1の作業である機体1を前後進することによる転圧作業を行うために操作する前後進レバー45と、液晶パネル35に表示される映像にしたがって各種操作をするために用いられるモニタ操作デバイス47と、を有し、モニタ操作デバイス47は、オペレータが前後進レバー45を把持した際における該オペレータの肘の位置に対応するアームレスト37上の点Pを中心とし前後進レバー45を通過する円弧C上に位置してなる。
従って、オペレータが前後進レバー45を把持した際におけるアームレスト37上の点を中心とし前後進レバー45を通過する円弧C上にモニタ操作デバイス47が位置するようにしたので、オペレータは、アームレスト37上に置いた肘を軸にして前腕を揺動させるようにし、前後進レバー45とモニタ操作デバイス47とを簡単に使い分けて操作することができる。
【0048】
特に、機体1のような転圧機械においては、オペレータは前後進操作をする際に機体1の周囲や転圧路面に視線を向けることが多いため、点Pを中心として前腕をR1からR2に移動させるようにして前後進レバー45とモニタ操作デバイス47とを使い分けることが可能なことにより、前後進レバー45及びモニタ操作デバイス47を使い分けるたびに視認することなく使い分けることができる。
【0049】
そして、モニタ操作デバイス47は、前後進レバー45の機体前後方向後側かつアームレスト37の機体前後方向前側の範囲Sであって、前後進レバー45の機体左右方向右側または左側に位置するようにしたので、前後進レバー45とモニタ操作デバイス47とを良好に使い分けて操作することができる。
【0050】
そして、アームレスト37は、機体上下方向における位置を調整可能に構成したので、オペレータの肘の位置に対応する位置である点Pを調整することができる。
【0051】
そして、操作ユニット27は、機体前後方向における位置を調整可能に構成したので、オペレータの前腕の長さ等に合わせた位置に前後進レバー45やモニタ操作デバイス47を位置させることができる。
【0052】
そして、液晶パネル35は、操作ユニット27に表示面36の向き(
図3中の矢印A)を調整可能に取り付けたので、操作ユニット27と液晶パネル35とを一体の装置に構成することができ、液晶パネル35の表示面36の向きを調整してオペレータの視認性を向上させることができる。
【0053】
そして、操作ユニット27は、機体1の稼働を停止する緊急停止ボタン41を有し、緊急停止ボタン41は、操作ユニット27における円弧Cより外側に位置するようにしたので、オペレータが前後進レバー45及びモニタ操作デバイス47を操作している際に誤って緊急停止ボタン41を押圧することを抑制することができる。
【0054】
そして、操作ユニット27は、機体1の稼働態様を操作するスイッチパネル43を有し、スイッチパネル43は、操作ユニット27における円弧Cより内側に位置するようにしたので、オペレータが前後進レバー45及びモニタ操作デバイス47を操作している際に誤ってスイッチパネル43を押圧することを抑制することができる。
【0055】
以上で本発明に係る作業機械の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、機体1として土工用振動ローラを用いて説明したが、タイヤローラ等の転圧車両や油圧ショベル、クレーン車等の作業機械であってもよい。
また、本実施形態では、前後進レバー45を用いて説明したが、例えば油圧ショベルにおけるフロントアタッチメントの操作をするために用いる操作レバーであってもよい。
【0056】
また、本実施形態では、緊急停止ボタン41を円弧Cより外側に位置するように配設し、スイッチパネル43を円弧Cより内側に位置するように配設したが、緊急停止ボタン41を円弧Cより内側に位置するように配設し、スイッチパネル43を円弧Cより外側に位置するように配設するようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、運転室19に座席21を配設するようにしたが、座席21を設けず、オペレータが立って作業をするようにしてもよい。この場合、オペレータは、立ったまま操作ユニット27のアームレスト37に肘を置いて作業を行うようにすればよい。
【0058】
また、本実施形態では、モニタ操作デバイス47が範囲Sにおける前後進レバー45の機体左右方向右側に位置しているが、前後進レバー45の機体左右方向左側に位置するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施形態の
図5、6における点Pの位置は一例であり、アームレスト37上の任意の位置に配置されるものとして円弧C(正円の軌跡)を想定し、該円弧C上に位置するように前後進レバー(操作レバー)45及びモニタ操作デバイス(操作デバイス)47を配設すればよい。
【0060】
また、本実施形態では、一定距離Lの例として230.95mmとし、この一定距離Lは前腕の長さに該当するとしている。この一定距離Lについて、一般社団法人人間生活工学研究センターにおける経済産業省委託で人間特性基盤整備事業が発表している、2006年度の人体寸法・形状データの報告書(PDFファイル)の30頁を参照すると、前腕長の3D算出値から算出した平均値は230.95mmであり、この標準偏差は16.00mmである。
【0061】
すなわち、オペレータの肘の位置に対応するアームレスト37上の点Pを中心とした前後進レバー(操作レバー)45を通過する円弧C(正円の軌跡)の半径である一定距離Lについては、±16.00mm程度の標準偏差を含むものとし、本発明が適用される作業機械の設計、生産及び販売の際における人体寸法・形状データを基に適宜変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 機体
19 運転室
27 操作ユニット
35 液晶パネル
35a 表示面
37 アームレスト
41 緊急停止ボタン(停止スイッチ)
43 スイッチパネル(機体態様操作スイッチ)
45 前後進レバー(操作レバー)
47 モニタ操作デバイス(操作デバイス)