(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】3次元印刷用光硬化性エラストマーインク組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20221027BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221027BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B29C64/112
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2019511465
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(86)【国際出願番号】 CN2017085099
(87)【国際公開番号】W WO2018040619
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2019-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201610806994.5
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519314847
【氏名又は名称】チューハイ セイルナー スリーディー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHUHAI SAILNER 3D TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】楊 前程
(72)【発明者】
【氏名】李 嘉
(72)【発明者】
【氏名】王 麗坤
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】河原 正
【審判官】石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113518(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145167(WO,A1)
【文献】特開2015-21044(JP,A)
【文献】特開2009-299057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質モノマ
ー10~75重量%、硬質モノマ
ー10~75重量%、架橋
剤5~20重量%、非反応性の軟質樹
脂5~20重量%、光開始
剤0.5~10重量%、着色
剤0~0.5重量%、
及び助
剤0.05~8重量%
を含有し、
前記軟質モノマーは、ガラス転移温度が25℃未満のホモポリマーを生成可能なモノマーであり、前記硬質モノマーは、ガラス転移温度が25℃以上のホモポリマーを生成可能なモノマーであり、前記非反応性の軟質樹脂は、分子構造中に放射線硬化性基を有せず、かつガラス転移温度が0℃未満の樹脂であり、
前記架橋剤は二官能基軟質モノマー及び二官能基軟質樹脂からなる群から選択される1種又は2種であり、
前記二官能基軟質モノマーは、分子構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ有し、かつガラス転移温度が0℃未満のホモポリマーを生成可能なモノマーであり、
前記二官能基軟質樹脂は、分子構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ有し、かつガラス転移温度が0℃未満のポリマーを生成可能な樹脂である
ことを特徴とする3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物。
【請求項2】
前記軟質モノマーは単官能基軟質モノマーであり、前記硬質モノマーは単官能基硬質モノマーである
ことを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記単官能基軟質モノマーは、分子構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有し、かつガラス転移温度が0℃未満のホモポリマーを生成可能なモノマーであり、
前記単官能基硬質モノマーは、分子構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有し、かつガラス転移温度が25℃より高いホモポリマーを生成可能なモノマーである
ことを特徴とする請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記単官能基軟質モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシル化(メタ)アクリレート、環状構造を有する(メタ)アクリレート、及びウレタン基を有する(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であり、
前記単官能基硬質モノマーは、シクロアルキル(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、及びベンゼン環構造を有する(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上である
ことを特徴とする請求項3に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記アルキル(メタ)アクリレートは、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリン酸アクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ドデシルメタクリレート、及びイソトリデシルメタクリレートからなる群から選択される1種以上であり、
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、及び4-ヒドロキシブチルアクリレートからなる群から選択される1種以上であり、
前記アルコキシル化(メタ)アクリレートは、2-メトキシ-2-アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレートからなる群から選択される1種以上であり、
前記環状構造を有する(メタ)アクリレートは、テトラヒドロフランアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキシペンチル-4-イル)アクリレート、アルコキシ化ノニルフェノールアクリレート、及びエチル化ノニルフェノールアクリレートからなる群から選択される1種以上であり、
前記ウレタン基を有する(メタ)アクリレートは、ウレタンアクリレート、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルアクリレート、及び脂肪族ウレタンアクリレートからなる群から選択される1種以上であり、
前記シクロアルキル(メタ)アクリレートは、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、及び3,3,5-トリメチルシクロヘキサンメタクリレートからなる群から選択される1種以上であり、
前記複素環式(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、3-エチル-3-エポキシプロピルメタクリレート、及びテトラヒドロフランメタクリレートなどからなる群から選択される1種以上であり、
前記ベンゼン環構造を有する(メタ)アクリレートは、2-フェノキシエチルメタクリレート、及び2-フェニルフェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される1種以上である
ことを特徴とする請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記二官能基軟質モノマーは、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(750)ジアクリレート、1,12-ドデシルジメタクリレート、(10)エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、(20)エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、(30)エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、及び(エトキシル化)1,6-ヘキサンジオールジアクリレートからなる群から選択される1種以上であり、
前記二官能基軟質樹脂は、ウレタンアクリレート及びポリブタジエン(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種又は2種である
ことを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記放射線硬化性基は、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、ビニル基、ビニルエーテル及びエポキシ基のうちの1種以上である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載のインク組成物。
【請求項8】
前記光開始剤はフリーラジカル光開始剤である
ことを特徴とする請求項7に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記助剤は、レベリング剤、消泡剤及び安定剤からなる群から選択される1種以上である
ことを特徴とする請求項8に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記助剤は、レベリング剤、消泡剤及び安定剤を含み、前記レベリング剤は前記インク組成物の全重量の0.01~3重量%であり、前記消泡剤は前記インク組成物の全重量の0.01~3重量%であり、前記安定剤は前記インク組成物の全重量の0.01~2重量%である
ことを特徴とする請求項9に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記着色剤は染料又は顔料から選択される
ことを特徴とする請求項1乃至6、8乃至10のいずれか1つに記載のインク組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1つに記載の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法であって、
前記光開始剤以外の成分を均一に混合させて第1混合物を得た後、前記第1混合物に前記光開始剤を添加して前記光開始剤を完全に溶解させて第2混合物を得るステップ1と、
前記第2混合物を濾過し、濾液を収集して前記光硬化性エラストマーインク組成物を得るステップ2と
を有する
ことを特徴とする調製方法。
【請求項13】
ステップ2において、前記第2混合物に対して微多孔膜にて段階的な濾過を行い、
1回の濾過で使用される微多孔膜の孔径は、その直後の1回の濾過で使用される微多孔膜の孔径よりも大きく、最終回の濾過で使用される微多孔膜の孔径は印刷ノズルの吐出孔の孔径よりも小さい
ことを特徴とする請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
ステップ2において、前記段階的な濾過は2段階の濾過であり、第1段階の濾過では孔径が0.45μmのガラス繊維膜を使用し、第2段階の濾過では孔径が0.22μmのポリプロピレン膜を使用する
ことを特徴とする請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
収集された濾液に対して脱気処理を行うステップをさらに有する
ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷技術に関し、特に3次元印刷用光硬化性エラストマーインク組成物及びその調製方法に関し、3D印刷の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー材料とは、それによって作られた物体が弱い応力の下で著しく変形するが、応力が除かれた場合にほぼ元の状態及びサイズに迅速に回復することができるポリマー材料をいう。従来のエラストマー材料の製造には、高温加硫が必要であるため、感熱部品とともに成形することが不可能であり、加硫処理にかかる時間が長く、通常は数十分間から数時間を要し、効率的な連続生産の可能性はない。
【0003】
科学技術の進歩に伴い、光硬化性エラストマー材料が徐々に開発されてきた。光硬化性エラストマー材料は、光硬化技術によってエラストマー材料の急速な硬化を実現して、温和な条件下でエラストマー物体を迅速に製造することができる。現在、光硬化性エラストマー材料は、製造方法によって主に混合型光硬化性エラストマー材料及び化学修飾重合性エラストマー材料に分類される。混合型光硬化性エラストマー材料の製造方法は、通常、従来のエラストマー材料を溶剤に溶解して、光硬化性モノマー及び樹脂と混合し、各成分の割合を調整することにより低粘度、速い硬化速度、高い透明性及び優れたエラストマー性能の光硬化性エラストマー材料を得ることができる。しかしながら、当該方法によって得られた光硬化性エラストマー材料には、溶剤を含み、温度が上昇すると溶剤が揮発し易いため、3D印刷分野には適さない。化学修飾重合性エラストマー材料の製造方法では、通常、従来のエラストマー材料を化学修飾し、従来のエラストマー材料の分子構造中に感光性アクリレート基またはエポキシ基を導入する。当該方法によって得られた光硬化性エラストマー材料は、感光性及び高いエラストマー性能を有するが、粘度がわりに高く、アクリル樹脂又はモノマーとの相溶性が悪く、透明性が低いため、3D印刷には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3D印刷に用いられる光硬化性エラストマー材料は、感光性を有し、硬化速度が速く、エラストマー性能が優れ、収縮率が小さく、又はほぼ収縮なしなどの特徴が要求されているため、3Dインクジェット印刷に用いられる際に、前述した性能に加えて、エラストマー材料は、低い粘度が要求されている。粘度が低いため、インクジェット印刷時に印刷がスムーズになり、ノズルが目詰まりしにくくなり、インクジェット印刷の前にエラストマー材料の温度を高く上昇させる必要がなく、エネルギーを節約するとともに、印刷ヘッドの寿命を延ばすことができる。
【0005】
上記の不具合に対して、本発明は3次元印刷用光硬化性エラストマーインク組成物及びその調製方法を提供する。本発明の光硬化性エラストマーインク組成物で印刷された3D物体は、エラストマー性能が優れ、3D物体の収縮率が小さく、層毎に印刷する際に、インク組成物の感光性が良く、光硬化速度が速い。また、本発明は、粘度が異なる光硬化性エラストマーインク組成物を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、軟質モノマーを10~75重量%、硬質モノマーを10~75重量%、架橋剤を5~20重量%、非反応性の軟質樹脂を5~20重量%、光開始剤を0.5~10重量%、着色剤を0~0.5重量%、助剤を0.05~8重量%含有し、前記軟質モノマーは、ガラス転移温度が25℃未満のホモポリマーを生成可能なモノマーであり、前記硬質モノマーは、ガラス転移温度が25℃以上のホモポリマーを生成可能なモノマーであり、前記非反応性の軟質樹脂は、分子構造中に放射線硬化性基を有せず、かつガラス転移温度が0℃未満の樹脂である。
【0007】
本発明に係る3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、光硬化性エラストマー材料とも呼ばれる。本発明に係る光硬化性エラストマーインク組成物で印刷された3D物体は、優れたエラストマー性能を有する。エラストマー材料のエラストマー性能はその伸縮性及び回復性に密に関連している。線状ポリマーでは、柔性が比較的に大きい分子セグメント(即ちソフトセグメント部分)は良好な伸縮性を有するが、剛性が比較的に大きい分子セグメント(即ちハードセグメント部分)は良好な回復性を有する。よって、本発明では、反応性が高い軟質モノマー及び硬質モノマーをインク組成物の主成分とし、材料のソフトセグメント及びハードセグメントの調合割合を調整することで、材料にできるだけ優れた伸縮性及び回復性を実現させる。また、架橋剤で「架橋する」ことで、材料の架橋密度を高めて、材料の回復性能を調節するとともに材料の機械的性質を改善することができる。さらに、材料の各種性能を確保しながら、非反応性の軟質樹脂を添加して、材料の収縮率を下げ、材料の印刷精度を高めることができる。これにより、本発明に係る3D印刷用光硬化性エラストマー材料は、速い硬化速度、低い収縮率、高い透明度、及び優れたエラストマー性能などの利点を達成することができる。なお、インク組成物の各成分の割合を調整することで、粘度が異なる光硬化性エラストマーインク組成物を調製することができる。
【0008】
本発明に係る光硬化性エラストマーインク組成物は、光硬化性エラストマーインク組成物の割合を調整することで光硬化性エラストマーインク組成物の粘度を変えることができるため、3Dインクジェット印刷技術だけでなく、光造形(SLA)技術にも適される。
【0009】
本発明に係る軟質モノマーと硬質モノマーとは、分子量にかかわらず、生成されたホモポリマーのガラス転移温度によって区別される。生成されたホモポリマーのガラス転移温度が25℃未満である場合には、該ホモポリマーが常温で粘性流動状態を示し、物性が柔らかいため、軟質モノマーと呼ばれる。一方で、生成されたホモポリマーのガラス転移温度が25℃以上である場合には、該ホモポリマーが常温で固体状態を示し、物性が硬いため、硬質モノマーと呼ばれる。
【0010】
さらに、本発明に係る軟質モノマーは、例えば、分子構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有し、かつガラス転移温度が0℃未満のホモポリマーを生成可能なモノマーのような、反応性が高い単官能基軟質モノマーが好ましい。単官能基軟質モノマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシル化(メタ)アクリレート、環状構造を有する(メタ)アクリレート、ウレタン基を有する(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0011】
具体的には、アルキル(メタ)アクリレートは、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリン酸アクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ドデシルメタクリレート、及びイソトリデシルメタクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、及び4-ヒドロキシブチルアクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよく、アルコキシル化(メタ)アクリレートは、2-メトキシ-2-アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよく、環状構造を有する(メタ)アクリレートは、テトラヒドロフランアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキシペンチル-4-イル)アクリレート、アルコキシ化ノニルフェノールアクリレート、及びエチル化ノニルフェノールアクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよく、ウレタン基を有する(メタ)アクリレートは、ウレタンアクリレート、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルアクリレート、及び脂肪族ウレタンアクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0012】
同様に、本発明に係る硬質モノマーとしては、例えば、分子構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有し、かつガラス転移温度が25℃より高いホモポリマーを生成可能なモノマーのような、反応性が高い単官能基硬質モノマーが好ましい。単官能基硬質モノマーは、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、及びベンゼン環構造を有する(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0013】
具体的には、シクロアルキル(メタ)アクリレートは、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、及び3,3,5-トリメチルシクロヘキサンメタクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよく、複素環式(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、3-エチル-3-エポキシプロピルメタクリレート、及びテトラヒドロフランメタクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよく、ベンゼン環構造を有する(メタ)アクリレートは、2-フェノキシエチルメタクリレート、及び2-フェニルフェノキシエチルアクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0014】
本発明に係る光硬化性エラストマーインク組成物、即ちエラストマー材料は、光硬化速度が速く、印刷された物体がエラストマー性能を有する。該エラストマー材料の架橋密度を一層高めて、エラストマー材料の回復性及び機械的性質を改善して、エラストマー材料を様々な3Dエラストマー物体の印刷に広く使用させるために、発明者は組成物における架橋剤について多くの研究をした。その結果、本発明の架橋剤が二官能基軟質モノマー及び二官能基軟質樹脂からなる群から選択される1種又は2種である場合に、エラストマー材料の架橋密度が著しく増えて、最終的に優れた回復性及び機械的性質が示されることは発見された。
【0015】
二官能基軟質モノマーは、分子構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ有し、かつガラス転移温度が0℃未満のホモポリマーを生成可能なモノマーである。具体的には、二官能基軟質モノマーは、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(750)ジアクリレート、1,12-ドデシルジメタクリレート、(10)エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、(20)エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、(30)エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、及び(エトキシル化)1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0016】
また、二官能基軟質樹脂は、分子構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ有し、かつガラス転移温度が0℃未満のポリマーを生成可能な樹脂である。二官能基軟質樹脂は、ウレタンアクリレート及びポリブタジエン(メタ)アクリレートなどからなる群から選択される1種又は2種であってもよい。具体的には、ウレタンアクリレートは、脂肪族ウレタンアクリレートであり、良好な可撓性及び伸張性を有し、現在、市販の製品が多くあり、例えば、長興材料工業股フン有限公司の6113、6217、6148T-85、615-100、6168、6152B-80、6148T-80など、サートマー社のCN9021NS、CN964、CN965NS、CN980NS、CN978NSなど、Rahn社の4256、4215、4217、4230など、SAPIENCE社的CKV-36A、CKV-301、CKV-619X、CKV-153100など、BOMAR社のBR-344、BR-345、BR-374、BR-3042などが挙げられる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートはポリブタジエンに(メタ)アクリレート基を導入したオリゴマーであり、UV光架橋によりエラストマー及びポリアクリレートの特性を兼備することができる。このようなオリゴマーは常温で液体状態であり、現在、市販の製品が多くあり、例えば、サートマー社のCN301、CN302、CN307、CN303、Ricaryl 3801など、大阪有機社のBAC15、BAC45など、BOMAR社のBR641、BR643などが挙げられる。
【0017】
さらに、本発明に使用される非反応性の軟質樹脂は、分子構造中に放射線硬化性基を有せず、かつガラス転移温度が0℃未満の樹脂である。放射線硬化性基は、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、ビニル基、ビニルエーテル、及びエポキシ基などからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0018】
本発明では、前記非反応性の軟質樹脂は、アクリル酸系との相溶性が良好で、かつ分子間力が強い非反応性の軟質樹脂が好ましい。アクリル酸系との良好な相溶性とは、主に、非反応性の軟質樹脂がアクリル酸系に完全に溶解でき、かつ溶液が澄んで透明であるということを指す。強い分子間力とは、主に、対応する非反応性の軟質樹脂がインク組成物に添加されて最終的にエラストマー材料で印刷された物体の機械的性質が良好で、収縮率が小さいということを指す。現在、市販の製品が多くあり、例えば、Rahn社のGENOMER*6043-M22、華峰社のPE-1302、PE-5556、PE-9956、PE-1280S、PE-2348など、旭川化学社のXCP1000M、XCP2000M、XCP3000M、XCP1000N、XCP2000N、XCP3000Nなどが挙げられる。
【0019】
さらに、前記光開始剤はフリーラジカル光開始剤である。具体的には、フリーラジカル光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンゾインα、α-ジメチルベンジルケタール、α,α-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルアセトン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-p-ヒドロキシエチルエーテルフェニルアセトン-1、[2-メチル1-(4-カルボキシフェニル)-2-モルホリノン-1]、[2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリニルフェニル)ブタノン-1]、ベンゾイルホルメート、2,4,6-トリメチルフェニルアシル-エトキシ-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルフェニルアシルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)フェニルホスフィンオキシド、及び4-p-トリルヒドラジルベンゾフェノンなどからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0020】
さらに、前記助剤は、レベリング剤、消泡剤和安定剤などからなる群から選択される1種以上である。
【0021】
具体的には、レベリング剤は、主にインクの流動性及び基材に対する濡れ性を向上させるとともに、インクの表面張力を調整して通常の印刷を可能にさせるために使用される。本発明に使用されるレベリング剤は、上記の性能要件を満たすものであれば、特に限定されない。現在、市販の製品が多くあり、例えば、BYK社のBYK333、BYK377、BYK1798、BYK-UV3530、BYK-UV3575、BYK-UV3535など、Tego社のTEGO wet 500、TEGO wet 270、TEGO Glide 450、TEGO RAD 2010、TEGO RAD 2011、TEGO RAD 2100、TEGO RAD 2200などが挙げられる。消泡剤の主な作用は、インク中の気泡を抑制したり、低減させたり、除去したりすることであり、本発明に使用される消泡剤は、上記の効果を奏するものであれば、特に限定されない。現在、市販の製品が多くあり、例えば、BYK社のBYK055、BYK088、BYK020、BYK025など、Tego社のTEGO Airex 920、TEGO Airex 921、TEGO Airex 986、TEGO Foamex 810、TEGO Foamex Nなど、EFKA社の Efka 7081、Efka7082などが挙げられる。安定剤は、インク組成物中における主な作用が、組成物中におけるフリーラジカルの重合を防止し、インク組成物の貯蔵安定性を高めることである。安定剤は、貯蔵安定性を高めるとともにインク組成物の硬化に影響しない製品が好ましい。具体的には、Rahn社のGENORAD*16、GENORAD*18、GENORAD*20、GENORAD*22など、BASF社のTinuvin234、Tinuvin770、Irganox245、CYTEC S100、CYTEC 130など、CIBA社のIrgastab UV10、Irgastab UV 22などであってもよい。
【0022】
なお、上記3種類の助剤を同時に使用する場合、レベリング剤は前記インク組成物の全重量の0.01~3重量%であり、消泡剤は前記インク組成物の全重量の0.01~3重量%であり、安定剤は前記インク組成物の全重量の0.01~2重量%である。
【0023】
また、本発明のインク組成物の成分として、着色剤を含んでもよいし、着色剤を含まなくてもよい。着色剤を含まない場合に、インク組成物は透明であり、印刷された製品が高い透明度を有する。着色剤を含む場合に、着色剤は、顔料又は染料であってもよく、本発明において顔料が好ましい。顔料は、具体的に、C.I.Pigment White 6、C.I.Pigment Red 3、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 9、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 13、C.I.Pigment Red 21、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 49:1、C.I.Pigment Red 58:1、C.I.Pigment Red 175;C.I.Pigment Yellow 63、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83;C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 10、C.I.Pigment Blue B、Phthalocyanine Blue BX、Phthalocyanine Blue BS、C.I.Pigment Blue 61:1などからなる群から選択される1種以上である。
【0024】
本発明は、前述したいずれか1つの3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法をさらに提供する。調製方法は、前記光開始剤以外の成分を均一に混合させて、第1混合物を得た後、前記第1混合物に前記光開始剤を添加して、前記光開始剤を完全に溶解させて、第2混合物を得るステップ1と、前記第2混合物を濾過し、濾液を収集して、前記光硬化性エラストマーインク組成物を得るステップ2とを有する。
【0025】
本発明に係る調製方法は、混合及び濾過のみによって完成でき、簡単で操作が容易であり、安定なインク組成物の形成だけでなく、インクの液化及び吐出にも有利となるため、使用がより便利であり、特に3D物体のインクジェット印刷に適される。
【0026】
なお、環境中の光によるインク組成物中の成分の重合を避けるために、本発明に係る光硬化性エラストマーインク組成物が、使用すべき光開始剤の誘発波長範囲外の環境で調製される必要があるということは理解できる。
【0027】
本発明に係る光硬化性エラストマーインク組成物を3Dインクジェット印刷に使用する場合に、ステップ2において段階的に濾過することにより上記第2混合物を少なくとも2回濾過し、1回の濾過で使用される微多孔膜の孔径は、その直後の1回の濾過で使用される微多孔膜の孔径よりも大きく、最終回の濾過で使用される微多孔膜の孔径はインクジェット印刷時の印刷ノズルの吐出孔の孔径よりも小さい。具体的には、本発明の実施の形態では、2段階の濾過を行う。第1段階の濾過では孔径が0.45μmのガラス繊維膜を使用し、第2段階の濾過では孔径が0.22μmのポリプロピレン膜(PP膜と略称する)を使用する。
【0028】
さらに、収集された濾液に対して脱気処理を行うステップを有する。脱気処理の時間は5時間以内に制御される。脱気処理は減圧脱気、常圧脱気及び加熱脱気のうちの1種である。脱気時間は1~3時間に制御されることが好ましい。濾液に対して脱気処理を行うことで、インク組成物の使用中の流動性を向上させるため、インク中の気泡の干渉による印刷断線が生じて3D物体の成形精度に影響することはない。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、良好な感光性を有し、光硬化速度が速く、印刷された物体のエラストマー性能が優れ、透明度が高く、収縮率が極めて低く、高精度の印刷が可能となる。また、その粘度が調整可能であり、インク組成物中の各成分の割合を調整することで、様々な粘度を有するインク組成物を得ることができ、低粘度のインクを必要とする3Dインクジェットプリンタにも、高粘度のインクを必要とするSLA3Dプリンタにも適される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施例の目的、技術方案及び利点を一層明確させるために、以下は本発明の実施例に基づいて本発明の実施例における技術方案について明確に完全に説明する。勿論、説明する実施例は本発明の実施例の全部でなく、一部である。本発明の実施例に基づき、当業者は創造的行為を行わずに得た他の実施例は、全て本発明の技術範囲に属する。
【0031】
実施例1
2-メトキシ-2-アクリレート 75g
2-フェノキシエチルメタクリレート 13.45g
トリエチレングリコールジメタクリレート 6g
XCP1000 5g
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド 0.5g
Tinuvin770(安定剤) 0.01g
BYK377(レベリング剤) 0.01g
TEGO Airex920(消泡剤) 0.03g
【0032】
調製方法:
(1)75gの2-メトキシ-2-アクリレート、13.45gの2-フェノキシエチルメタクリレート、6gのトリエチレングリコールジメタクリレート、5gのXCP1000、0.01gのTinuvin770、0.01gのBYK377及び0.03gのTEGO Airex920をそれぞれに計量して容器に入れて、容器を密封し、材料を均一に撹拌して、第1混合物を得る。
【0033】
(2)第1混合物に0.5gの2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドを入れて、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドが完全に溶解するまで撹拌して、第2混合物を得る。
【0034】
(3)0.45μmのガラス繊維膜で第2混合物に対して第1段階の濾過を行い、その後、第1段階の濾過が行われた後の濾液に対して0.22μmのPP膜で第2段階の濾過を行って、最終的な濾液を得る。
【0035】
(4)0.1MPaの真空度で1時間減圧濾過して、濾液における気泡を除去して、3D印刷に適される光硬化性エラストマーインク組成物を得る。
【0036】
本実施例1における光硬化性エラストマーインク組成物に対して性能試験を行った。
【0037】
1.粘度測定
DV-Iデジタル粘度計で、本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物の室温での粘度を測定した。
【0038】
2.破断伸度及び引張強度試験
本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物を3D光硬化インクジェットプリンタ又はSLA3Dプリンタに使用して、GB/T 528-2009に要求される仕様のサンプルを印刷し、GB/T1040-2006に従って、本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物の破断伸度及び引張強度を測定した。
【0039】
3.圧縮永久歪み試験
本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物を3D光硬化インクジェットプリンタ又はSLA3Dプリンタに使用して、GB/T 7759.1-2015に要求された仕様のサンプルを印刷して、GB/T 7759.1-2015に規定された方法に従って本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物の圧縮永久歪みを測定した。
【0040】
4.硬度試験
本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物を3D光硬化インクジェットプリンタ又はSLA3Dプリンタに使用して、GB/T531.1-2008に要求された仕様のサンプルを印刷して、GB/T531.1-2008に従って、本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物のショア硬さを測定した。
【0041】
5.透光率試験
本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物を3D光硬化インクジェットプリンタ又はSLA3Dプリンタに使用して、50mm×50mm×1mmのブロックを印刷して、GB/T 2410-2008に従って本発明の光硬化性エラストマーインク組成物の透光率を測定した。
【0042】
6.硬化時間試験
厚さが200μmのサンプルを本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物でコーディングして、サンプルに紫外光を照射した。サンプルに対する光照射開始時点を開始時点とし、サンプルの表面が完全に硬化した時点を反応完了時点とすると、両者の差は、サンプル表面を完全に硬化させるために必要な時間である。光照射強度は20mW/cm2であり、表面が完全に硬化したか否かについて、指で硬化フィルムの表面を触れた後に指紋が表面に残っていない場合には、表面が完全に硬化したと判断される。
【0043】
7.収縮率試験
本実施例の光硬化性エラストマーインク組成物を3D光硬化インクジェットプリンタ又はSLA3Dプリンタに使用して、成形物の精度を測定した。該精度試験は主に体積収縮率により反映される。試験方法は以下の通りである。
【0044】
比重瓶を使用して、水を標準物質とし、25℃で感光性樹脂の硬化前の密度ρ1及び感光性樹脂の完全硬化後の密度ρ2を測定し、下記の数式により体積収縮率を求めた。
【0045】
体積収縮率%=(ρ2-ρ1)/ρ2×100%
【0046】
上記の各試験の結果は表1に示されている。
【0047】
実施例2
イソデシルメタクリレート 10.6g
テトラヒドロフランメタクリレート 58g
CN965 NS 15g
XCP1000 13g
[2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノン-1]
1.5g
Irgastab UV 22(安定剤) 0.3g
TEGO Glide450(レベリング剤) 0.1g
Efka 7081(消泡剤) 1.5g
【0048】
調製方法:
本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法は、実施例1とほぼ同じであるが、常圧で3時間静置脱気することで脱気処理を行う点のみが異なる。
【0049】
実施例1と同様な試験方法にて、本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の性能試験を行った。試験の結果は表1に示されている。
【0050】
実施例3
n-オクチルメタクリレート 47.69g
イソボルニルアクリレート 30g
長興6113(8000-12000) 10g
XCP1000 10g
1-ヒドロキシ-シクロヘキシルベンゾフェノン 1g
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド 1g
GENORAD*22(安定剤) 0.1g
GENORAD*16(安定剤) 0.1g
TEGO Glide450(レベリング剤) 0.05g
TEGO wet 500(レベリング剤) 0.05g
BYK 088(消泡剤) 0.01g
【0051】
調製方法:
本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法は実施例1とほぼ同じであるが、加熱脱気によってインク組成物を40~60℃まで加熱して脱気処理を1時間行った点のみが異なる。
【0052】
実施例1と同様な試験方法にて、本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の性能試験を行った。試験の結果は表1に示されている。
【0053】
実施例4
(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキシペンチル-4-イル)アクリレート
20.45g
テトラヒドロフランメタクリレート 45g
BAC45 20g
6043-M22 8g
[2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノン-1] 3g
Tinuvin770(安定剤) 0.05g
BYK377(レベリング剤) 1g
TEGO wet 500(レベリング剤) 1g
BYK 088(消泡剤) 1g
Efka 7081(消泡剤) 0.5g
【0054】
調製方法:
本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法は実施例1とほぼ同じであるが、減圧脱気の時間が2時間にされた点のみが異なる。
【0055】
実施例1と同様な試験方法にて、本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の性能試験を行った。試験の結果は表1に示されている。
【0056】
実施例5
イソデシルメタクリレート 24g
4-ヒドロキシブチルアクリレート 21g
トリメチロールプロパンカルボキシアルデヒドアクリレート 15.9g
(20)エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート 15g
6043-M22 6g
1-ヒドロキシ-シクロヘキシルベンゾフェノン 4g
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド 6g
GENORAD*22(安定剤) 2g
BYK377(レベリング剤) 3g
BYK 088(消泡剤) 1.5g
Efka 7081(消泡剤) 1.5g
C.I.Pigment Blue 1(着色剤) 0.1g
【0057】
調製方法:
本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法は実施例1とほぼ同じであるが、加熱脱気によってインク組成物を40~50℃まで加熱して脱気処理を2時間行った点のみが異なる。
【0058】
実施例1と同様な試験方法にて、本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の性能試験を行った。試験の結果は表1に示されている。
【0059】
実施例6
2-メトキシ-2-アクリレート 50g
2-フェノキシエチルメタクリレート 22g
BR-374 8g
6043-M22 7g
1-ヒドロキシ-シクロヘキシルベンゾフェノン 4g
[2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノン-1] 4g
GENORAD*16(安定剤) 1g
TEGO Glide450(レベリング剤) 1.5g
BYK 088(消泡剤) 2g
C.I.Pigment Red 9(着色剤) 0.5g
【0060】
調製方法:
本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法は実施例1とほぼ同じであるが、常圧で2.5時間静置脱気することで脱気処理を行った点のみが異なる。
【0061】
実施例1と同様な試験方法にて、本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の性能試験を行った。試験の結果は表1に示されている。
【0062】
実施例7
4-ヒドロキシブチルアクリレート 21.7g
トリメチロールプロパンカルボキシアルデヒドアクリレート 40g
BR-3042 15g
6043-M22 15g
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド 2.5g
Irgastab UV 22(安定剤) 0.5g
TEGO wet 500(レベリング剤) 2.5g
TEGO Airex920(消泡剤) 0.5g
Efka 7081(消泡剤) 2g
C.I.Pigment Yellow 12(着色剤) 0.3g
【0063】
調製方法:
本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法は実施例1とほぼ同じであるが、加熱脱気によってインク組成物を40~50℃まで加熱して脱気処理を2.5時間行った点のみが異なる。
【0064】
実施例1と同様な試験方法にて、本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の性能試験を行った。試験の結果は表1に示されている。
【0065】
実施例8
2-メトキシ-2-アクリレート 15g
2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルアクリレート 15g
テトラヒドロフランメタクリレート 22.55g
BR-3042 19g
6043-M22 20g
1-ヒドロキシ-シクロヘキシルベンゾフェノン 2g
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド 4g
GENORAD*16(安定剤) 1.5g
TEGO Glide450(レベリング剤) 0.5g
TEGO Airex920(消泡剤) 0.4g
C.I.Pigment White 6(着色剤) 0.05g
【0066】
調製方法:
本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法は実施例1とほぼ同じであるが、常圧で2時間静置脱気することで脱気処理を行った点のみが異なる。
【0067】
実施例1と同様な試験方法にて、本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の性能試験を行った。試験の結果は表1に示されている。
【0068】
実施例9
n-オクチルアクリレート 11.36g
イソボルニルアクリレート 75g
CKV-619X 5g
XCP1000 6g
[2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノン-1]
2g
GENORAD*22(安定剤) 0.4g
BYK377(レベリング剤) 0.02g
BYK 088(消泡剤) 0.02g
C.I.Pigment Red 31(着色剤) 0.1g
C.I.Pigment Blue 10(着色剤) 0.1g
【0069】
調製方法:
本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の調製方法は実施例1とほぼ同じであるが、減圧脱気の時間が3時間にされた点のみが異なる。
【0070】
実施例1と同様な試験方法にて、本実施例の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の性能試験を行った。試験の結果は表1に示されている。
【0071】
【0072】
表1に示す結果に基づき、以下のことが分かる。
1.本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、破断伸度が390~978%であり(従来のアクリレートエラストマーよりも優れ、即ち、本発明のインク組成物は伸びられやすく、かつ破断されにくい)、引張強度が0.15~1.21MPaであり(従来のアクリレートエラストマーよりも低く、即ち、本発明のインク組成物は引っ張られやすい)、硬度が20~40ショアAである。このため、本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の伸縮性が優れていることは示されている。また、本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物の25℃での圧縮永久歪みが15%より低いため、本発明のインク組成物の圧縮永久歪みが低く、回復性が優れていることは示されている。よって、本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は良好な伸縮性及び回復性を有し、エラストマー性能が優れた製品を印刷することができる。
【0073】
2.本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、常温での粘度分布が広いため、低粘度のインクを必要とする3Dインクジェットプリンタにも、高粘度のインクを必要とするSLA3Dプリンタにも適される。
【0074】
3.本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、室温で適宜な粘度を有することができるため、耐高温の印刷ヘッドを必要とせず、印刷ヘッドの使用寿命を効果的に延ばすことができる。
【0075】
4.本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、感光性が良好であり、光照射強度が20mW/cm2である場合に照射硬化時間が2秒以下となるため、光硬化の速度が速い。
【0076】
5.本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、透光率が91%以上になるため、透明度が高い製品を印刷することができる。
【0077】
6.本発明の3D印刷用光硬化性エラストマーインク組成物は、収縮率が低いため、成形された3D物体は全体的に低い収縮率を有し、反り変形が生じない。
【0078】
なお、以上の各実施例は本発明の技術方案を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではない。前述した各実施例に基づいて本発明を詳しく説明したが、当業者であれば、前述した各実施例に記載の技術方案を修正し、又はそのうちの一部又は全部の技術的特徴を均等に置き換えることができるということが理解できる。これらの修正又は置き換えは、対応した技術方案の本質を本発明の各実施例の技術方案の範囲から離脱させるものではない。