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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】生体試料分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/76 20060101AFI20221027BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20221027BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G01N21/76
G01N21/78 C
G01N21/01 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019529826
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2018026789
(87)【国際公開番号】W WO2019013360
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2017138551
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】中川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】中山 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】有本 公彦
(72)【発明者】
【氏名】中井 陽子
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-183866(JP,A)
【文献】特開2008-268019(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析する生体試料分析装置であって、
前記試料を収容する複数の容器を保持するホルダと、
所定位置に固定された光検出器と、
前記ホルダを移動させ、前記ホルダに保持されている各容器を、前記光検出器による検出位置に順次位置づけるホルダ駆動機構と、
前記検出位置にある前記容器内の試料から出る光を前記光検出器に導く一方で、それ以外の前記容器内の試料から出る光が前記光検出器に導かれることを防止する遮光機構とを備え
当該遮光機構が、前記検出位置にある前記容器に対して進退移動するとともに、前記検出位置にある前記容器の下側部分を覆う可動側遮光部を備える生体試料分析装置。
【請求項2】
前記容器内に前記生体由来の物質と反応して光を生じさせる試薬を導入する分注機構をさらに備え、
前記分注機構は、前記検出位置にある前記容器内に前記試薬を導入する、請求項1記載の生体試料分析装置。
【請求項3】
前記遮光機構は、前記各容器に設けられ、前記各容器の上側部分を覆う容器側遮光部をさらに備え、
前記可動側遮光部は、前記検出位置にある前記容器内の試料から出る光を前記光検出器に導くリフレクタを有する、請求項1記載の生体試料分析装置。
【請求項4】
前記遮光機構は、前記容器の全周を覆うものである、請求項1記載の生体試料分析装置。
【請求項5】
前記遮光機構は、前記光検出器を移動させることなく、前記可動側遮光部を移動させることによって前記光検出器の遮光を行うものである、請求項記載の生体試料分析装置。
【請求項6】
前記可動側遮光部は、前記検出位置にある前記容器に対して昇降移動するリフレクタと、前記リフレクタ及び前記光検出器の間を進退移動する導光部材とを有し、
前記リフレクタが前記容器の下側部分を覆う上昇位置にある状態で、前記導光部材が前記リフレクタ及び前記光検出器の間に進入し、前記導光部材が前記リフレクタ及び前記光検出器の間から退避した退避位置にある状態で、前記リフレクタが前記容器の下側部分から離間する、請求項5記載の生体試料分析装置。
【請求項7】
前記リフレクタ及び前記導光部材の移動は、単一のモータと、当該モータの回転を直進移動に変換するラックピニオン機構と、当該ラックピニオン機構の直進移動により動作する複数のカム機構とにより構成される、請求項6記載の生体試料分析装置。
【請求項8】
前記リフレクタ及び導光部材の移動に連動して、前記光検出器への光の入射を遮断するシャッタ部材が前記光検出器への光の入射を遮断する遮断位置に移動する、請求項6記載の生体試料分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析する生体試料分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品製造プラントや食品プラント等の環境管理のために微生物モニタリングが行われている。この微生物モニタリングの一例として、微生物に含まれるATP(アデノシン三リン酸)に、発光試薬であるルシフェラーゼを添加し、その生物発光を測定して、得られた発光強度を菌数に換算する方法がある。
【0003】
そしてこのATP等の生体由来の物質により生じる光を分析する装置として、特許文献1に示すものが考えられている。この生体試料分析装置は、試料を収容した単一の容器を保持するホルダと、光検出器を収容した遮光ボックスとを備えており、前記ホルダを遮光ボックスに設置することによって、容器内の試料から出る光を検出するように構成されている。
【0004】
ところが、単一の容器を保持するホルダを用いる構成では、単一の容器の測定が終了する毎に、ホルダを遮光ボックスから取り外して別の容器を保持したホルダを取り付ける作業、又は、ホルダから容器を取り外して別の容器を取り付ける作業等が必要となってしまい、分析効率が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-268019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明者は、分析効率を向上させるために、複数の容器をホルダに保持させて、当該ホルダを回転させる等して各容器を光検出器による検出位置に順次移動させる構成を採用した生体試料分析装置の開発を進めている。
【0007】
しかしながら、例えばATP等の生体由来の物質に起因する生物発光は、光検出器による測定終了後においても減衰しながら継続している。そのため、光検出器による検出位置から別の位置に移動された測定終了後の容器からも光が出ることになってしまう。その結果、光検出器による検出位置に移動された容器からの光を検出する際に、測定終了後の容器から出る光が光検出器により検出されてノイズとなる恐れがあり、分析精度(検出限界)を向上させることが難しい。
【0008】
そこで本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析する生体試料分析装置において、分析効率及び分析精度(検出限界)の双方の向上を無理なく達成することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る生体試料分析装置は、試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析する生体試料分析装置であって、前記試料を収容する複数の容器を保持するホルダと、所定位置に固定された光検出器と、前記ホルダを移動させ、前記ホルダに保持されている各容器を、前記光検出器による検出位置に順次位置づけるホルダ駆動機構と、前記検出位置にある前記容器内の試料から出る光を前記光検出器に導く一方で、それ以外の前記容器内の試料から出る光が前記光検出器に導かれることを防止する遮光機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような生体試料分析装置であれば、複数の容器を保持するホルダを移動させて各容器を光検出器による検出位置に順次位置づけているので、1つの容器内の試料の測定終了後に容器をホルダから取り外して別の容器を取り付ける等の作業が不要となり、分析効率を向上させることができる。また、検出位置にある容器内の試料から出る光を光検出器に導く一方で、それ以外の容器内の試料から出る光が光検出器に導かれることを防止する遮光機構を有するので、測定終了後の容器内の試料から出る光による生じるノイズを低減して、分析精度(検出限界)を向上させることができる。このように本発明によれば、生体試料分析装置において、分析効率及び分析精度(検出限界)の双方の向上を無理なく達成することができる。
【0011】
容器内の試料に試薬を自動で導入することによって分析効率を向上させるためには、生体試料分析装置は、前記容器内に前記生体由来の物質と反応して光を生じさせる試薬を導入する分注機構をさらに備えることが望ましい。
このとき、試薬を容器内に導入すると、生体由来の物質と試薬とが接触した時点からそれらが反応して発光を開始する。このため、前記分注機構は、前記検出位置にある前記容器内に前記試薬を導入することによって、発光を開始した時点から光を漏れなく検出することができる。
【0012】
遮光機構の具体的な実施の態様としては、前記遮光機構は、前記各容器に設けられ、前記各容器の上側部分を覆う容器側遮光部と、前記検出位置にある前記容器に対して進退移動するとともに、前記検出位置にある前記容器の下側部分を覆う可動側遮光部とを備えることが考えられる。このように、遮光機構を容器側に固定された部材と、容器に対して可動する部材に分けて構成することによって、可動する部材によって容器全体を覆う必要がないので、可動する部材をコンパクトに構成することができるとともに、その構成を簡単にすることができる。
ここで、容器に対して可動側遮光部がスライドすることによって容器に静電気が発生してしまう恐れがある。本発明では、容器側遮光部と可動側遮光部とに分けることによって、それらの境界部分を容器の下側部分に位置させることができ、容器に対する可動側遮光部のスライド部分を小さくすることができる。これにより、容器に対して可動側遮光部がスライドしても、容器に静電気が発生しにくくすることができる。このように静電気の発生を抑制することによって、静電気の放電に伴う発光によるノイズを低減することができる。
【0013】
そして、前記可動側遮光部が、前記検出位置にある前記容器内の試料から出る光を前記光検出器に導くリフレクタを有するものであれば、試料から出る光を効率よく光検出器に導くことができる。また、リフレクタによって可動側遮光部の機能を発揮することができるので、装置構成を簡単にすることができる。
ここで、検出位置にある容器の下側に光検出器がある場合等には、リフレクタが下方に行くに連れて拡開した形状を有するものとなる。この構成であれば、容器側面に対する可動側遮光部(リフレクタ)の距離を大きくすることができ、静電気を一層発生させにくい構造とすることができる。
【0014】
測定が終了した容器から出る光を遮るだけでなく、その他の迷光も遮ることによりノイズをより一層低減するためには、前記遮光機構は、前記容器の全周を覆うものであることが望ましい。
【0015】
遮光機構の可動側遮光部とともに光検出器を移動させる構成では、光検出器を移動させる機構(例えばモータ)により生じる振動や電気信号により光検出器にノイズが乗ってしまう場合がある。そのため、前記遮光機構は、前記光検出器を移動させることなく、前記可動側遮光部を移動させることによって前記光検出器の遮光を行うものであることが望ましい。また、光検出器を移動させない構成とすることで、光検出部の光検出面を各測定において一定に保つことができ、測定再現性を向上させることができる。
【0016】
具体的な可動側遮光部の構成とともにその動作態様としては、前記可動側遮光部は、前記検出位置にある前記容器に対して昇降移動するリフレクタと、前記リフレクタ及び前記光検出器の間を進退移動する導光部材とを有し、前記リフレクタが前記容器の下側部分を覆う上昇位置にある状態で、前記導光部材が前記リフレクタ及び前記光検出器の間に進入し、前記導光部材が前記リフレクタ及び前記光検出器の間から退避した退避位置にある状態で、前記リフレクタが前記容器の下側部分から離間することが望ましい。
【0017】
前記リフレクタ及び前記導光部材の移動は、単一のモータと、当該モータの回転を直進移動に変換するラックピニオン機構と、当該ラックピニオン機構の直進移動により動作する複数のカム機構とにより構成されることが望ましい。
この構成であれば、リフレクタ及び導光部材の各位置がカム機構によって機械的に決まるため、測定再現性を向上させることができる。また、単一のモータにより駆動されるので、複数のモータを使用する場合に比べて、保守が容易になる。
【0018】
生体試料分析装置において開閉扉であるカバー体を開けると光検出器(例えばPMT)の光検出面が外部からの強い光を受けて劣化又は故障してしまう恐れがある。このため、光検出器の前方に光検出器を保護するためのシャッタ部材を設けることが望ましい。そして、このシャッタ部材は、前記リフレクタ及び導光部材の移動に連動して、前記光検出器への光の入射を遮断する遮断位置に移動することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した本発明によれば、複数の容器を保持するホルダを駆動するホルダ駆動機構及び検出位置にある容器以外の容器内の試料から出る光を遮光する遮光機構の両方を兼ね備えているので、試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析する生体試料分析装置において、分析効率及び分析精度(検出限界)の双方の向上を無理なく達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る生体試料分析装置の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態の生体試料分析装置の外観を示す斜視図である。
図3】同実施形態の装置本体の各部の配置を示す平面図である。
図4】同実施形態の複数の容器を保持したホルダを示す斜視図である。
図5】同実施形態の複数の容器を保持したホルダを示す平面図である。
図6】同実施形態の遮光機構を主として示す断面図である。
図7】同実施形態の遮光機構の可動側遮光部の各位置を示す模式図である。
図8】変形実施形態の可動側遮光部及びその駆動機構(第1状態)を示す模式図である。
図9】変形実施形態の可動側遮光部及びその駆動機構(第2状態)を示す模式図である。
図10】変形実施形態の可動側遮光部及びその駆動機構(第3状態)を示す模式図である。
【符号の説明】
【0021】
100・・・生体試料分析装置
det・・・検出位置
2 ・・・容器
3 ・・・ホルダ
4 ・・・光検出器
5 ・・・ホルダ駆動機構
6 ・・・分注機構
11 ・・・リフレクタ
13 ・・・遮光機構
131・・・容器側遮光部
132・・・可動側遮光部
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る生体試料分析装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
<装置構成>
本実施形態の生体試料分析装置100は、試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析することによって、その生体由来の物質の量を測定するものである。なお、以下では、生体由来の物質としてATP(アデノシン三リン酸)の量(amol(=10-18mol))をATPから生じる微弱な光を検出することによって測定するATP量測定装置について説明する。
【0024】
具体的にこの生体試料分析装置100は、図1に示すように、試料を収容する複数の容器2を保持するホルダ3と、所定位置に固定された光検出器4と、ホルダ3を移動させるホルダ駆動機構5と、ホルダ3に保持された容器2内にATPと反応して光を生じさせる発光試薬を分注などする分注機構6とを備えている。
【0025】
なお、本実施形態の生体試料分析装置100は、図2及び図3に示すように、例えばクリーンベンチ等の台上に載置される装置本体101と、当該装置本体101に設けられたカバー体102とを備えている。装置本体101には、ホルダ3、ホルダ駆動機構5及び分注機構6等のATP測定に必要な測定系機器類が設けられている。また、装置本体101は、前面に開口部101Hを有している。そして、カバー体102は、装置本体101の開口部101Hに対して開閉可能に設けられている。具体的には、開口部101Hの上側部分において水平方向の連結軸(不図示)により開閉可能とされており、カバー体102を上方向に持ち上げることによって、装置本体101の内部に利用者がアクセス可能となる。なお、カバー体102を閉じた状態では、カバー体102と開口部101Hとの間がシール部材(不図示)によりシールされることによって装置内部が暗室状態となる。
【0026】
その他、装置本体101には、検体が収容された複数の検体チューブFCを保持して温調する温調機構7と、各試薬を収容した試薬容器RC1、RC2がセットされる試薬セット部8と、分注機構6に用いられるピペットチップPTが設けられるピペットチップセット部9とが設けられている。
【0027】
温調機構7は、複数の検体チューブFCを例えばマトリックス状に収容して保持するものである。この温調機構7は、検体チューブFCを保持する金属製(例えばアルミ製)のホルダブロック71と、ホルダブロック71に設けられたヒータ等の熱源部72と、ホルダブロック71の温度を検出する熱電対等の温度センサ73とを備えている。この温度センサ73の検出温度に基づいて、熱源部であるヒータ72は、制御装置COMによってホルダブロック71の温度が所定温度となるように制御される。
【0028】
試薬セット部8は、検体に前処理を施すための前処理用試薬を収容した試薬容器RC1と、発光試薬を収容した試薬容器RC2とがセットされるものである。前処理用試薬としては、検体に含まれる生細胞(生菌)以外のATP(遊離ATP)を消去するATP消去液、及び、生細胞からATPを抽出するATP抽出液等である。
【0029】
ホルダ3は、装置本体101に対して回転可能に設けられるものであり、特に図4及び図5に示すように、複数の容器2を所定の回転中心に対して、同一円上に保持するものである。本実施形態のホルダ3は、サンプル測定用の複数の容器2の他に、ブランク測定用の容器2b及び標準液測定用の容器2sも保持している。また、ホルダ3において複数の容器2の内側には、分注機構6のピペットチップPTを廃棄するための廃棄チップ収容部である廃棄箱10が一体に設けられている。この廃棄箱10は、平面視において円弧状の開口10xを有している。さらにホルダ3は、装置本体101に対して着脱可能に構成されており、この着脱操作を容易にするために、保持用の複数(ここでは2つ)の保持孔3hが形成されている。この保持孔3hは、指を挿入して保持するための貫通孔であり、廃棄箱10の開口10xよりも内側に設けられている。このように開口10xよりも内側に保持孔3hが設けられているので、ホルダ3を保持した際に手が廃棄されたピペットチップPTに不用意に触れることを防止することができる。
【0030】
光検出器4は、図1に示すように、ホルダ3に保持された容器2内の試料から出る光を検出するものであり、本実施形態では例えば光電子増倍管(PMT)である。光検出器4は、ホルダ3に保持された容器2よりも下側に設けられている。そして、光検出器4の上方には、容器2内の試料から出る光を光検出器4に導くためのリフレクタ11を有する光学系12が設けられている。このリフレクタ11は、それらの上方に位置する容器2に対して進退移動可能に構成されている。リフレクタ11を容器2に近接させることで容器2内に試料から出る光を効率良く光検出器4に導くことができるとともに、リフレクタ11を容器2から退避させることで容器2の移動を邪魔しないようにできる。なお、本実施形態では、リフレクタ11を含むその他の光学系12及び光検出器4は容器2に対して進退移動可能に構成されている。
【0031】
ホルダ駆動機構5は、ホルダ3を移動させ、ホルダ3に保持されている各容器2を、光検出器4による検出位置Xdetに順次位置づけるものである。具体的にホルダ駆動機構5は、図1に示すように、ホルダ3が設置される設置台51と、当該設置台51に設置されたホルダ3を回転させるための回転軸52と、当該回転軸52を回転させるアクチュエータ53とを備えている。その他、ホルダ駆動機構5には、ホルダ3の回転位置を検出するための回転位置センサ(不図示)が設けられている。この回転位置センサの検出信号に基づいて、アクチュエータ53は、制御装置COMによって測定すべき容器2を検出位置Xdetに位置付けるように回転制御される。
【0032】
分注機構6は、図1図3に示すように、試料や各試薬を吸引又は吐出するためのノズル61と、ノズル61に接続された流路を介してノズル61の吸引又は吐出を駆動する例えばシリンジ等のポンプ機構62と、ノズル61を所定方向に移動させるノズル移動機構63とを備えている。
【0033】
ノズル61は、試料や各試薬に接触してそれらを保持するためのピペットチップPTを着脱可能に保持するチップホルダ611を備えている。このチップホルダ611は内部流路が形成されたものであり、その基端部に流路が接続されており、先端開口部にピペットチップPTが接続される。
【0034】
また、ノズル移動機構63は、ノズル61を水平方向(X軸方向及びY軸方向)に直線移動させるとともに、ノズル61を鉛直方向(Z軸方向)に直線移動させるものである。具体的にノズル移動機構63は、ノズル61を保持する可動部材631と、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にそれぞれ設けられたスライド機構632と、当該スライド機構632に沿って前記可動部材631を各方向に移動させるためのアクチュエータ633とを備えている。このアクチュエータ633及び前記ポンプ機構62が制御装置COMによって制御されることによってATP測定における各動作が実行される。
【0035】
然して、本実施形態の生体試料分析装置100は、図6に示すように、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光を光検出器4に導く一方で、それ以外の容器2(具体的には測定が終了した容器2)内の試料から出る光が光検出器4に導かれることを防止する遮光機構13を備えている。
【0036】
この遮光機構13は、各容器2に設けられ容器側遮光部131と、検出位置Xdetにある容器2に対して進退移動する可動側遮光部132とを備えている。
【0037】
容器側遮光部131は、光透過性を有さない部材からなり、各容器2の上側部分を覆うものである。具体的に容器側遮光部131は、各容器2の上側部分の全周を覆っている。本実施形態では、ホルダ3の容器保持部に円筒状の容器側遮光部131を設けておき、当該容器側遮光部131に容器2を収容することによって、ホルダ3に保持された容器2の上側部分の全周を容器側遮光部131が覆う構成としている。
【0038】
可動側遮光部132は、光透過性を有さない部材からなり、検出位置Xdetにある容器2において容器側遮光部131により覆われた上側部分を除いた下側部分を覆うものである。具体的に可動側遮光部132は、検出位置Xdetにある容器2の下側部分の全周を覆っている。この可動側遮光部132は、検出位置Xdetにある容器2の下側部分を覆う遮光位置Sと、当該容器2の下側部分から下方に離間した退避位置Tとの間で昇降移動する。なお、可動側遮光部132の昇降移動は例えばアクチュエータを用いた昇降装置14により行われる。この昇降装置14は、制御装置COMによってホルダ駆動機構5及び分注機構6の動作と連動して制御される。
【0039】
容器側遮光部131の下端部には全周に亘って第1段部131aが形成されており、また、可動側遮光部132の上端部には、前記第1段部131aに対応した第2段部132aが全周に亘って形成されている。そして、可動側遮光部132が遮光位置Sにある状態において、容器側遮光部131の第1段部131a及び可動側遮光部132の第2段部132aが係合して、検出位置Xdetにある容器2の上側部分及び下側部分の両方が覆われる。このように第1段部131a及び第2段部132aが係合することによって遮光をより確実にしている。また、段部131a、132aの何れか一方が溝形状とされたものであってもよい。
【0040】
なお、図7に示すように、分注機構6により発光試薬が容器2内の試料に導入される際には、可動側遮光部132は遮光位置Sにあり、発光の測定が終了して検出位置Xdetの容器2を切り替える際には、可動側遮光部132は退避位置Tにある。
【0041】
また、本実施形態の可動側遮光部132は、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光を光検出器4に導くリフレクタ11を構成するものであり、可動側遮光部132の内面が例えば鏡面加工されることによってリフレクタ11として機能する。具体的に可動側遮光部132の内面は、上端開口部から下方に行くに連れて徐々に拡開するように形成されたテーパ状をなすものであり、これにより、可動側遮光部132に形成されたリフレクタ11は、光検出器4側を向くものとされている。このリフレクタ11により、検出位置Xdetにある容器2の側壁から出る光を漏らすことなく光検出器4側に導くことができる。
【0042】
<分析方法>
次にこのように構成した生体試料分析装置100の動作とともに分析方法について説明する。
【0043】
例えば大容量(例えば50mlから200ml)の検体を所定量(例えば1μlから1000μl)に濃縮させて試料を生成する。この試料を収容した検体チューブFCを装置本体101の温調機構7にセットする。温調機構7のホルダブロック71は、温調機構本体72によって一定の温度に温調される。所定数の検体チューブFCをセットした状態でカバー体102を閉じ、測定を開始する。なお、この状態でホルダ3に保持された各容器2は空であるが、標準液測定用の容器2にはATP量が既知の標準液が収容されている。
【0044】
測定が開始されると制御装置COMは、分注機構6を制御して温調機構7に保持された検体チューブFCそれぞれに各前処理試薬を所定のシーケンスに従って分注する。これにより検体チューブFC内の試料に所定の前処理(ATP抽出)が行われる。その後、分注機構6は、各検体チューブFC内の前処理済み試料を、ホルダ3に保持された各容器2内にそれぞれ導入する。
【0045】
そして、制御装置COMは、ホルダ駆動機構5を制御して測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させる。測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させた後、制御装置COMは、昇降装置14を制御して遮光機構13の可動側遮光部132を遮光位置Sに移動させる。この状態とした後に、制御装置COMは、分注機構6を制御して発光試薬を検出位置Xdetにある容器2内に導入する。これにより、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光が光検出器4により検出される。光検出器4により得られた光強度信号は、制御装置COMにより演算処理が施されてATP量(amol)が算出される。なお、光検出器4により得られた光強度信号のうち、演算処理に用いられるのは、発光試薬を導入した時点から所定時間(例えば数秒間)までの積算信号である。
【0046】
1つの容器2の発光測定が終了した後に、制御装置COMは、昇降装置14を制御して遮光機構13の可動側遮光部132を退避位置Tに移動させ、その後、ホルダ駆動機構5を制御して次の測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させる。このようにして順次各容器2内の試料の発光測定が行われる。なお、各容器2の発光測定前に、ブランク測定及び標準液測定が実施されて、ゼロ点校正及びスパン校正が行われる。
【0047】
このようにして全ての試料について測定が終了した後に、カバー体102を開けて温調機構7に保持された検体チューブFCを交換するとともに、ホルダ3に保持された容器2を交換する。ここで、ホルダ3の保持された容器2を交換する場合には、ホルダ3の保持孔3hを持ってホルダ3を装置本体101から取り外す。このホルダ3には、使用済みの廃棄されたピペットチップPTがホルダ3の廃棄箱10に入っているので、ホルダ3を装置本体101から取り外すことによって廃棄されたピペットチップPTも同時に装置本体101から取り出すことができる。
【0048】
<本実施形態の効果>
このように構成された本実施形態に生体試料分析装置100によれば、複数の容器2を保持するホルダ3を移動させて各容器2を光検出器4による検出位置Xdetに順次位置づけているので、1つの容器2内の試料の測定終了後に容器2をホルダ3から取り外して別の容器2を取り付ける等の作業が不要となり、分析効率を向上させることができる。また、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光を光検出器4に導く一方で、それ以外の容器2内の試料から出る光が光検出器4に導かれることを防止する遮光機構13を有するので、測定終了後の容器2内の試料から出る光による生じるノイズを低減して、分析精度(検出限界)を向上させることができる。このように本実施形態によれば、生体試料分析装置100において、分析効率及び分析精度(検出限界)の双方の向上を無理なく達成することができる。
【0049】
分注機構6は、検出位置Xdetにある容器2内に試薬を導入するので、発光を開始した時点から光を漏れなく検出することができる。ここで、分注機構6により試薬が導入される前に、検出位置Xdetにある容器2以外の容器2内の試料から出る光が遮光機構13によって遮光されているので、発光を開始した時点から精度良く光を検出することができる。
【0050】
遮光機構13を容器2側に固定された容器側遮光部131と、容器2に対して可動する可動側遮光部132に分けて構成しているので、可動する部材によって容器2全体を覆う必要がない。その結果、遮光機構13の可動する部材をコンパクトに構成することができるとともに、その構成を簡単にすることができる。
【0051】
そして、可動側遮光部132が、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光を光検出器4に導くリフレクタ11を構成しているので、試料から出る光を効率よく光検出器4に導くことができる。
【0052】
遮光機構13が検出位置Xdetにある容器2の全周を覆っているので、検出位置Xdetにある容器2以外の容器2から出る光を可及的に遮るだけでなく、その他の迷光も遮ることによりノイズをより一層低減することができる。
【0053】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0054】
例えば、ホルダ3は複数の容器2を同一円上に保持するものであったが、例えばマトリックス状等のように所定方向に沿って保持するものであっても良い。この場合、ホルダ駆動機構5は、ホルダ3を水平方向(X軸方向及びY軸方向)に直線移動させる構成とすることが考えられる。
【0055】
また、遮光機構13の容器側遮光部131は、容器2と一体に形成されたものであっても良い。例えば容器2の上側部分を光透過性を有さない部材で形成することによって、容器側遮光部131を構成しても良い。また、容器2の上側部分に光透過性を有さないフィルムを巻き付ける等によって容器側遮光部131を構成しても良い。
【0056】
さらに、遮光機構13は、容器側遮光部131を有さないものであっても良い。この場合、遮光機構13の可動側遮光部132を、容器2におけるホルダ3の下側に露出した部分全体を覆う構成とすることが考えられる。この構成であれば、ホルダ3及び容器2の遮光部を設ける必要がないので、ホルダ3及び容器2の構成を簡単にすることができるとともに軽量化することができる。
【0057】
その上、カバー体102を開けると光検出器(例えばPMT)の光検出面が外部からの強い光を受けて劣化又は故障してしまう恐れがある。この場合には、光検出器の前方に光検出器を保護するためのシャッタ部材を設けることが望ましい。前記実施形態の構成を前提とした場合には、例えば退避位置Tにある可動側遮光部132の上端部開口を塞ぐようにシャッタ部材を設けることが考えられる。
【0058】
前記実施形態では光検出器4を昇降移動する構成であったが、光検出器4を移動させない構成とすることもできる。この場合、遮光機構13は、光検出器4を移動させることなく、可動側遮光部132を移動させることによって光検出器4の遮光を行う。
【0059】
具体的に遮光機構13の可動側遮光部132は、図8図10に示すように、検出位置Xdetにある容器2に対して昇降移動するリフレクタ15と、リフレクタ15及び光検出器4の間を進退移動する導光部材16とを有する。また、図8図10の例では、シャッタ部材17がリフレクタ15及び導光部材16の移動に連動して移動するように構成されている。
【0060】
リフレクタ15は、その内面が上端開口部から下方に行くに連れて徐々に拡開するように形成されたテーパ状をなすものである。また、導光部材16は、リフレクタ15の下端開口部に接続されるものであり、その内面が円筒状をなすものである。
【0061】
そして、リフレクタ15、導光部材16及びシャッタ部材17の移動は、単一のモータ18と、当該モータ18の回転を直進移動に変換するラックピニオン機構19と、当該ラックピニオン機構19の直進移動により動作する複数のカム機構20a、20bとにより構成される。
【0062】
ラックピニオン機構19は、モータの回転軸に設けられたピニオンギア191と、ピニオンギア191により直進移動するラックギア192とからなる。当該ラックギア192には導光部材16が固定されている。このラックギア192の移動によって導光部材16がリフレクタ及び光検出器の間を進退移動する。
【0063】
第1のカム機構20aは、導光部材16及びシャッタ部材17の間に介在して設けられている。第2のカム機構20bは、ラックピニオン機構19及びカム機構20bの間に介在して設けられている。
【0064】
第1のカム機構20aは、導光部材16に設けられたピンやベアリング等の従動部20a1と、当該従動部20a1がスライドするものであり、シャッタ部材17に設けられたガイド部20a2とからなる。シャッタ部材17は、カム機構20aにより回転軸17a周りに回転して、光検出器4への光の入射を遮断する遮断位置(図8参照)とその遮断位置から退避した退避位置(図9図10参照)との間で移動する。
【0065】
第2のカム機構20bは、ラックギア192に設けられたピンやベアリング等の従動部20b1と、当該従動部20b1がスライドするものであり、リフレクタ15が固定された支持部材21に設けられたガイド部20b2とからなる。このカム機構20bにおいて、ラックギア192が移動することによって、リフレクタ15が容器2の下側部分を覆う上昇位置(図9図10参照)と、容器2の下側部分から離間した下降位置(図8参照)との間で移動する。
【0066】
そして、上記のリフレクタ15が容器2の下側部分を覆う上昇位置にある状態で、導光部材16がリフレクタ15及び光検出器4の間に進入する(図10参照)。この状態においてリフレクタ15、導光部材16及び光検出器4が上下一列に並び、容器2内の試料から出る光が光検出器4により検出される。
【0067】
一方で、導光部材16がリフレクタ15及び光検出器4の間から退避した退避位置にある状態で、リフレクタ15が容器2の下側部分から離間する(図8参照)。このとき、リフレクタ15は、光検出器4の上面を覆うとともに、リフレクタ15の上部開口部がシャッタ部材17により閉塞される。
【0068】
なお、上記ではシャッタ部材17がリフレクタ15の上部開口部を閉塞する構成であったが、シャッタ部材17を導光部材16に設けるなどによって、リフレクタ15及び光検出器4の間に設ける構成としても良い。
【0069】
前記上記では、光検出器4を移動させない構成として、遮光機構を移動させる構成としているが、光検出器4及び遮光機構13を移動させることなく、ホルダ3を交渉移動させる構成としても良い。
【0070】
また、上記ではリフレクタ15及び光検出器4の間に導光部材16を設ける構成としているが、導光部材16を設けることなく、リフレクタ15の下端開口部に集光レンズを設けて光を集光して光検出器4に導く構成としても良い。
【0071】
また光検出器にシャッタ機構を設ける構成としても良い。
【0072】
遮光機構の構成は前記実施形態に限られず、検出位置にある容器を側方から挟み込むようにして遮光するものであってもよい。具体的には、容器の一方側の側方の上下全体を覆う第1側方遮光部と、容器の他方側の側方の上下全体を覆う第2側方遮光部とを備え、それら側方遮光部が検出位置にある容器に対して進退移動可能に構成されている。この構成によっても、検出位置にある容器内の試料から出る光を光検出器に導く一方で、それ以外の容器内の試料から出る光が光検出器に導かれることを防止することができる。
【0073】
さらに、ホルダ3が複数2の容器を保持する構成の場合において、互いに隣接する容器2を順次測定する構成では、前記遮光機構13の遮光性を高める等の対策が必要となる恐れがある。このため、ホルダ3に保持された複数の容器2を連続測定する場合には、互いに隣接する容器2を続けて連続することなく、互いに隣接しない容器2を順次測定するように構成することが考えられる。
この場合、ホルダ駆動機構5は、互いに隣接しない容器2を、光検出器4による検出位置Xdetに順次位置づける構成とする。例えば、図5に示すように番号1~24までの容器2を番号順に測定するのではなく、例えば、(1)1、4、7、・・・、(2)2、5、7、・・・、(3)3、8、9、・・・等のように互いに隣接しない容器2により構成される2つ以上のグループに分けて、各グループに含まれる容器2を検出位置Xdetに順次位置づけることが考えられる。
このように容器2を検出位置Xdetに順次位置づけることによって、直前に測定した容器2から距離を空けて隣接する容器2とは測定する時間を空けることで、遮光機構13の遮光性を高める等の対策を不要にすることができ、測定プロトコルにより明光を抑えることができる。
【0074】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、分析効率及び分析精度の双方の向上を無理なく達成することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10