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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20221027BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20221027BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20221027BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20221027BHJP
   B01D 53/40 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B01J20/26 A
B01J20/20 E
B01J20/28 A
B01D53/04
B01D53/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019552726
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2018040064
(87)【国際公開番号】W WO2019093173
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2017217558
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】坂口 恵子
(72)【発明者】
【氏名】中澤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴美子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 潤
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/167172(WO,A1)
【文献】特表2007-526961(JP,A)
【文献】特表平11-507289(JP,A)
【文献】特開2013-104030(JP,A)
【文献】特公平06-053873(JP,B2)
【文献】特開2015-134318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00- 23/34
B01D 53/04
B01D 53/40
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム基材と前記アルミニウム基材の表面に吸着層とを備えたフィルタであって、
前記吸着層は、活性炭、マンガン酸化物、及びpHが3.0~6.5であるアクリル樹脂のみからなり、
前記活性炭のBET比表面積は1500~3000m /gであることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記アルミニウム基材の表面に前記アクリル樹脂を介して前記活性炭及び前記マンガン酸化物が担持されている請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記アルミニウム基材がハニカム構造体である請求項1又は2に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中の酸性ガスを高効率で除去することができ、かつ、耐水性に優れたフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の有害ガス(酸性ガス、オゾン、揮発性有機化合物(VOC)等)を除去する方法として、活性炭の吸着作用を利用した酸性ガス除去方法が知られている。例えば、本出願人は、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物、活性炭およびマンガン酸化物の混合物を有機繊維材料からなるシート基材に担持した酸性ガス吸着・除去フィルタを提案している(特許文献1)。また、本出願人は、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物、活性炭およびマンガン酸化物の混合物をバインダー樹脂(ポリビニルピロリドン)でシート基材に担持した酸性ガス吸着・除去フィルタを提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-74309号公報
【文献】特開2015-134318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように基材として有機繊維材料からなるシートを用いたフィルタでは十分な強度が得られない場合がある。フィルタの強度を高めるために、特許文献1のフィルタにおいて、有機繊維材料からなるシートに代えてアルミニウム基材をシートとすることが考えられるが、アルミニウム基材を用いると耐水性が低下してしまう。一方、特許文献2においても、シート基材をアルミニウム基材とした場合、フィルタの耐水性が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、基材をアルミニウム基材とした場合であっても、前記アルミニウム基材の表面に活性炭、マンガン酸化物、及びpHが3.0~6.5であるアクリル樹脂が含まれた吸着層を備えることによって、前記課題を解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわちアルミニウム基材と前記アルミニウム基材の表面に吸着層とを備えたフィルタであって、前記吸着層には、活性炭、マンガン酸化物、及びpHが3.0~6.5であるアクリル樹脂が含まれていることを特徴とする。
【0007】
前記アルミニウム基材の表面に前記アクリル樹脂を介して前記活性炭及び前記マンガン酸化物が担持されていることが好ましい。
【0008】
前記吸着層には、さらにアルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩、及び炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物が含まれていることが好ましい。
【0009】
前記アルミニウム基材がハニカム構造体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィルタを用いることによって、大気中の酸性ガスを高効率で除去することができる。また、本発明のフィルタは耐水性に優れているため、様々な用途で用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフィルタは、アルミニウム基材と前記アルミニウム基材の表面に吸着層とを備えることを特徴とする。本発明のフィルタを用いることによって、大気中の酸性ガスを高効率で除去することができる。酸性ガスとしては、一酸化窒素、二酸化窒素などの窒素酸化物;二酸化硫黄などの硫黄酸化物;塩化水素、フッ化水素などのハロゲン化水素;硫化水素などが挙げられる。
【0012】
<アルミニウム基材>
アルミニウム基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。アルミニウム基材の形状は特に限定されず、板状のものでもハニカム構造体でもよいが、ハニカム構造体とすることが好ましい。すなわち、本発明のフィルタはハニカムフィルタであることが好ましい。なお、本明細書では、ハニカムフィルタは、ハニカム構造体であるアルミニウム基材の表面に吸着層を備えたフィルタのことを指す。ハニカムフィルタのセル数については、特に制限されず、例えば50~1500セル/インチ2とすることができる。
【0013】
アルミニウム基材の厚みは0.005~0.5mmであることが好ましく、0.01~0.1mmであることがより好ましい。アルミニウム基材の厚みが前記範囲内であることによって、ハニカムフィルタとして用いる場合であっても十分な強度を有し、圧力損失が生じにくくなる。
【0014】
<吸着層>
吸着層には、活性炭、マンガン酸化物、及びpHが3.0~6.5であるアクリル樹脂(以下、低pHアクリル樹脂という)が含まれている。アルミニウム基材の表面にアクリル樹脂を介して活性炭及びマンガン酸化物が担持されていることが好ましい。また、吸着層には、さらにアルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩、および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物(以下、アルカリ金属化合物という)が含まれていることが好ましい。
【0015】
(活性炭)
活性炭は、炭素材料を炭化または不融化した後、賦活することによって得られる。前記炭素材料として、例えば、黒鉛、鉱物系材料(褐炭、瀝青炭などの石炭系、石油または、石油ピッチなど)、植物系材料(木質、果実殻(ヤシ殻など)など)、高分子系材料(ポリアクリルニトリル、フェノール系材料、セルロースなど)などが挙げられ、中でもヤシ殻であることが好ましい。ヤシ殻を原料とする活性炭(ヤシ殻活性炭)は細孔を有しており、ヤシ殻活性炭の細孔は、シリカなどの細孔を有する一般的な無機原料と比較して小さい細孔の比率が多く、かつ、Na、Si、K、Ca、Fe等からなる灰分(不純物)も少ない。つまり、ヤシ殻活性炭は細孔が小さいために吸着した酸性ガス成分と細孔壁との間に分子間力が働き、吸着した酸性ガス成分を脱離させにくい。
【0016】
炭素材料の炭化方法、不融化方法、賦活方法については、特に限定されず、公知の加工方法を用いることができる。例えば、賦活方法として、炭化または不融化処理を施した炭素原料を水や二酸化炭素などの賦活ガス中で、500~1000℃程度で熱処理するガス賦活法や炭化または不融化処理を施した炭素原料をリン酸、塩化亜鉛、水酸化カリウムなどの賦活剤と混合し、300~800℃程度で熱処理する化学賦活法などを用いることができる。
【0017】
活性炭のBET比表面積は、500~3000m2/gであることが好ましく、1000~2500m2/gであることがより好ましく、1500~2000m2/gであることがさらに好ましい。活性炭のBET比表面積が前記範囲内であることによって、十分な酸性ガス除去性能が発現可能となる。
【0018】
活性炭の平均粒子径は1~50μmであることが好ましく、2~30μmであることがより好ましく、5~15μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、スラリーにおいて活性炭粒子が凝集しにくく、かつ、外力による活性炭の脱落が生じにくい。なお、活性炭の平均粒子径とは重量中位径を指す。
【0019】
吸着層中の活性炭の含有率は、5~35質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがより好ましい。活性炭の含有率が前記範囲内であることによって、十分な酸性ガス除去性能が発現可能となる。
【0020】
(マンガン酸化物)
マンガン酸化物としては、特に限定されず、酸化マンガン(II)(MnO)、三酸化二マンガン(III)(Mn23)、酸化マンガン(IV)(二酸化マンガン、MnO2)、酸化マンガン(II,III)(四酸化三マンガン、Mn34)等を用いることができるが、二酸化マンガンが好ましい。
【0021】
本発明で用いられるマンガン酸化物のBET比表面積は、50~400m2/gが好ましく、100~300m2/gがより好ましい。マンガン酸化物のBET比表面積が前記範囲内であることによって、十分な酸性ガス除去性能が発現可能となる。
【0022】
吸着層中のマンガン酸化物の含有率は50~85質量%であることがより好ましく、60~75質量%であることがさらに好ましい。マンガン酸化物の含有率が前記範囲内であることによって、十分な酸性ガス除去性能が発現可能となる。
【0023】
(低pHアクリル樹脂)
吸着層にpHが3.0~6.5である低pHアクリル樹脂を用いることによって、高い酸性ガス除去性能と高い耐水性とを両立することができる。pHが3.0未満であると、酸性ガス除去性能が低下してしまう。また、pHが6.5を超えると、アルミニウム基材との親和性が低くなり、耐水性が低下してしまう。
【0024】
pHの調整は、アクリル樹脂が有するカルボキシル基などの酸性基を中和剤により中和することにより行うことができる。中和剤としては、酸性基を中和できるものであれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられる。これらの中和剤を必要に応じて適宜用いることによって、アクリル樹脂のpHが3.0~6.5となるように調整することができる。なお、本明細書では、アクリル樹脂のpHとは、アクリル樹脂エマルジョンのpHのことである。また、特許文献1で用いられているシリコーンアクリル樹脂のpHは8以上である。
【0025】
吸着層中における低pHアクリル樹脂の固形分(以下、低pHアクリル樹脂(固形分)という)の含有率は3~20質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。低pHアクリル樹脂の含有率が前記範囲内であることによって、フィルタの耐水性を維持しつつ、十分な酸性ガス除去性能を発現することができる。
【0026】
(アルカリ金属化合物)
アルカリ金属化合物は、アルカリ金属を含む水酸化物、炭酸塩、および炭酸水素塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物であればよく、アルカリ金属を含む水酸化物としては、例えばNaOH、KOHなどが挙げられ、アルカリ金属を含む炭酸塩としては、例えばNa2CO3、K2CO3などが挙げられ、アルカリ金属を含む炭酸水素塩としては、例えばNaHCO3、KHCO3などが挙げられる。吸着層にアルカリ金属化合物が含まれることにより、酸性ガス除去性能をより一層高めることができる。アルカリ金属化合物は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。中でもアルカリ金属を含む炭酸塩であることが好ましく、K2CO3であることがより好ましい。
【0027】
活性炭100質量部に対してアルカリ金属化合物の含有量は30質量部以下であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましく、3~25質量部であることがさらに好ましく、5~15質量部であることが特に好ましい。アルカリ金属化合物の含有量が前記範囲内であることによって、十分な酸性ガス除去性能が発現可能となる。なお、2種以上のアルカリ金属化合物が用いられている場合、「アルカリ金属化合物の含有量」は全てのアルカリ金属化合物の合計含有量のことを指す。
【0028】
マンガン酸化物100質量部に対してアルカリ金属化合物の含有量は10質量部以下であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましく、2~4質量部であることがさらに好ましく、2~3質量部であることが特に好ましい。アルカリ金属化合物の含有量が前記範囲内であることによって、十分な酸性ガス除去性能が発現可能となる。
【0029】
(その他)
吸着層は、活性炭、マンガン酸化物、低pHアクリル樹脂、及びアルカリ金属化合物のみで構成されていることが好ましいが、前記以外のものが含まれていてもよく、例えば、ジルコニウム、銅、コバルト、銀、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物などを含有してもよい。また、難燃性を付与するために、吸着層には、必要に応じて水酸化アルミニウム、メラミン等の非水溶性難燃剤を添加することもできる。前記非水溶性難燃剤はスラリー中においても粒子形状を保っており、表面被覆等による酸性ガス除去性能の低下を起こしにくいためである。また、水への浸漬時に溶出しないことから、フィルタが水に浸漬した場合であっても難燃性を維持することができる。
【0030】
活性炭、マンガン酸化物、及び低pHアクリル樹脂(固形分)の合計含有量が、吸着層全体の90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましい。また、活性炭、マンガン酸化物、低pHアクリル樹脂(固形分)、及びアルカリ金属化合物の合計含有量が、吸着層全体の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。
【0031】
(ハニカムフィルタに添着する吸着層の量)
アルミニウム基材がハニカム構造体である場合、ハニカムフィルタに添着する吸着層の量(以下、添着量という)は、50~200g/Lであることが好ましく、より好ましくは100~150g/Lである。添着量が前記範囲内であることによって、ハニカムフィルタのセルに目詰まりが生じることなく、十分な酸性ガス除去性能が発現可能となる。
【0032】
<製造方法>
本発明のフィルタの製造方法については特に限定されない。例えば、活性炭、マンガン酸化物、低pHアクリル樹脂等が含まれたスラリーを作製し、そのスラリーにアルミニウム基材を浸漬し、その後乾燥させることにより、アルミニウム基材表面に吸着層を備えたフィルタを作製することができる。前記スラリーの固形分比率は、10~50%、好ましくは25~50%である。固形分比率が10%未満であるとアルミニウム基材表面に活性炭、マンガン酸化物、低pHアクリル樹脂等が十分に担持されないおそれがある。また、固形分比率が50%を超えると増粘してスラリーの流動性が低下して含浸できなくなるおそれがある。乾燥温度は、通常60~200℃、好ましくは100~150℃である。乾燥温度が200℃を超えると、スラリーが劣化するおそれがある。また、乾燥温度が60℃未満であると、乾燥時間が長くなるため、コストが高くなり、好ましくない。
【0033】
ハニカムフィルタの製造方法としては、例えば、アルミニウム基材をハニカム構造体とした後に吸着層をアルミニウム基材表面に添着させ、ハニカムフィルタとする方法が挙げられる。ハニカム構造体の断面は、気体の流通が可能であれば特に限定されず、ハニカム構造体の断面としては、例えば、六角形、四角形、正弦波形、ロール形が挙げられ、強度の観点からハニカム構造体の断面が六角形であることが好ましい。また、中空多角柱、中空円柱等の中空柱体が連続して形成されたハニカム構造体であってもよい。
【0034】
本発明に係るフィルタは、屋内、乗り物内、壁紙、家具、内装材、樹脂成形体、電気機器等で、酸性ガスを低減する目的で広く用いることができる。特に大気中に含有される酸性ガスの除去目的で用いることが好ましく、例えば、粒状物を通気性の箱、袋、網等の容器に充填し、静置もしくは通気させて用いることが好ましい。また、除去速度が速く、一旦除去した酸性ガスが脱離する問題が少ないため、通風状態で用いることがより好ましく、具体的には、自動車・鉄道車両等の車室内の空気を清浄化するためのエアフィルタ、健康住宅・ペット対応マンション、高齢者入所施設、病院・オフィス等で使用される空気清浄機用フィルタ、エアコン用フィルタ、OA機器の吸気・排気フィルタ、ビル空調用フィルタ、産業用クリーンルーム用フィルタ等に用いることができる。
【0035】
本願は、2017年11月10日に出願された日本国特許出願第2017-217558号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年11月10日に出願された日本国特許出願第2017-217558号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0036】
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明に包含される。
【0037】
まず、実施例で用いた測定・評価方法について、以下説明する。
【0038】
(アルミニウム基材との親和性)
アルミニウム基材上にスラリーの液滴を滴下し、アルミニウム基材と前記液滴との接触角を測定した。スラリーについては後述する。
【0039】
(耐水性評価方法)
サンプル(ハニカムフィルタ)をイオン交換水中に24時間浸漬した後、水中から引き上げて、浸漬処理前後の質量変化より吸着層からの脱落量[mg]を算出し、この吸着層の脱落量[mg]をサンプルの体積[cc]で割ることにより、サンプル1cc当たりの吸着層の脱落量[mg/cc]を算出した。
【0040】
(二酸化硫黄除去性能)
サンプル(ハニカムフィルタ)を直径26mm、高さ20mmにカットし、内径26mmのガラスカラム内にカットしたサンプルをセットし、二酸化硫黄ガス100ppmを含む温度25℃、相対湿度50%の空気を流量2.0L/minで流通した。ガラスカラム内の温度は25℃一定とした。ガラスカラムの入口、出口濃度を光音響ガスモニター1312(INNOVA社製)により、測定開始から1時間経過時までの二酸化硫黄ガスの濃度変化を連続的に測定した。そして、二酸化硫黄ガスの濃度変化を数値積分することにより1時間の二酸化硫黄ガス除去量[mg]を算出した。この二酸化硫黄ガス除去量[mg]をカットしたサンプルの体積[cc]で割ることにより、サンプル1cc当たりの二酸化硫黄ガス除去量[mg/cc]を算出した。
【0041】
(アクリル樹脂のpH)
堀場製作所社製pHメーターでアクリル樹脂エマルジョンのpHを測定した。
【0042】
〔実施例1〕
ヤシ殻活性炭350g(BET比表面積:1800m2/g、粒径:13μm)、二酸化マンガン1300g(BET比表面積:200m2/g)、及びpHが3であるアクリル樹脂エマルジョン325g(アクリル樹脂の固形分:30質量%)を2300gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させ、スラリーを調製した。引き続いて、厚さ0.015mmのアルミニウム箔を基材としたハニカム構造体(断面:六角形、850セル/インチ2)を前記スラリーに浸漬し、前記スラリーがハニカム構造体内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカム構造体を引き上げた。エアーブローでハニカム構造体から余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内で120℃3時間乾燥させることでハニカム構造体の表面に吸着層を備えたハニカムフィルタを得た。吸着層を備える前のハニカムフィルタの質量及び吸着層を備えた後のハニカムフィルタの質量からハニカムフィルタにおける吸着層の添着量を算出した結果、130g/Lであった。
【0043】
〔実施例2〕
pHが6であるアクリル樹脂エマルジョンを用いた以外は、実施例1と同様の方法にてハニカムフィルタを得た。ハニカムフィルタにおける吸着層の添着量は130g/Lであった。
【0044】
参考例3〕
pHが6であるアクリル樹脂エマルジョンを用いたこと及びイオン交換水中にさらに炭酸カリウム40gを添加したこと以外は、実施例1と同様の方法にてハニカムフィルタを得た。ハニカムフィルタにおける吸着層の添着量は133g/Lであった。
【0045】
〔比較例1〕
pHが2であるアクリル樹脂エマルジョンを用いた以外は、実施例1と同様の方法にてハニカムフィルタを得た。ハニカムフィルタにおける吸着層の添着量は130g/Lであった。
【0046】
〔比較例2〕
pHが10であるアクリル樹脂エマルジョンを用いた以外は、実施例1と同様の方法にてハニカムフィルタを得た。ハニカムフィルタにおける吸着層の添着量は130g/Lであった。
【0047】
〔比較例3〕
pHが10であるアクリル樹脂エマルジョンを用いたこと及びイオン交換水中にさらに炭酸カリウム40gを添加したこと以外は、実施例1と同様の方法にてハニカムフィルタを得た。ハニカムフィルタにおける吸着層の添着量は133g/Lであった。
【0048】
実施例、参考例及び比較例の構成及び各種物性を表1に示す。実施例1~のフィルタは、アルミニウム基材と吸着層作製用のスラリーとの親和性が高く、耐水性に優れており、かつ、二酸化硫黄ガスを高効率で除去することができた。また、実施例1~のフィルタでは、アルミニウム基材の表面にアクリル樹脂を介してヤシ殻活性炭及び二酸化マンガンが担持されていた。一方、比較例1のフィルタは、アクリル樹脂のpHが低すぎるため、二酸化硫黄ガスの除去が不十分であった。比較例2及び3のフィルタは、アクリル樹脂のpHが高すぎるため、アルミニウム基材と吸着層作製用のスラリーとの親和性が低く、耐水性が不十分であった。
【0049】
【表1】