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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】セラミック部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/628 20060101AFI20221027BHJP
   G04B 19/12 20060101ALI20221027BHJP
   G04B 37/18 20060101ALI20221027BHJP
   G04B 37/22 20060101ALI20221027BHJP
   C04B 35/488 20060101ALI20221027BHJP
   C04B 35/117 20060101ALI20221027BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20221027BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20221027BHJP
   A44C 5/02 20060101ALI20221027BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C04B35/628 420
G04B19/12 A
G04B37/18 A
G04B37/22 V
G04B37/22 H
C04B35/488 500
C04B35/117
C04B35/44
A44C5/00 E
A44C5/02 E
A44C27/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019556851
(86)(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2018059691
(87)【国際公開番号】W WO2018192885
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】17167229.8
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッカール, キリアク
(72)【発明者】
【氏名】ピュジョル, オリヴィエ
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/108416(WO,A1)
【文献】特開昭62-059571(JP,A)
【文献】特表2005-501176(JP,A)
【文献】特表2016-500363(JP,A)
【文献】特開平02-153068(JP,A)
【文献】特開昭58-031076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの添加元素または化合物を有する、バインダを含有するセラミック粉末の製造方法であって、
前記バインダを含有するセラミック粉末は物理蒸着(PVD)または原子層堆積(ALD)によって、バインダを含有するセラミック粉末に少なくとも一つの添加元素または化合物を堆積させる工程(E3)を含む、製造方法。
【請求項2】
前記堆積工程(E3)は、前記有機化合物を除いて、前記セラミック粉末の総量に対して、5重量%以下、または3重量%以下、または1重量%以下、または0.05重量%以下、または0.01重量%以下、前記少なくとも一つの添加元素または化合物を追加することを含む、
請求項1に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項3】
前記堆積工程(E3)は、前記有機化合物を除いて、総量が1ppm以上の、または10ppm以上の、前記少なくとも一つの添加元素または化合物を追加することを含む、
請求項1または2に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項4】
前記堆積工程(E3)は、前記有機化合物を除いて、重量の0.01%と5%の間、または重量の0.01%と3%の間、または重量の0.01%と1%の間の量の前記少なくとも一つの添加元素または化合物を、物理蒸着(PVD)によってバインダを含有するセラミック粉末に堆積することを含む、
請求項1に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項5】
前記堆積工程(E3)は、前記有機化合物を除いて、1ppm以上5重量%以下、または1ppm以上3重量%以下、または1ppm以上0.05重量%以下、または1ppm以上0.01%以下の量の前記少なくとも一つの添加元素または化合物を、原子層堆積(ALD)によってバインダを含有するセラミック粉末に堆積することを含む、
請求項1に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項6】
前記堆積工程(E3)は、金属、及びまたは合金、及びまたは酸化物、及びまたは窒化物、及びまたは炭化物から選択された追加元素または化合物を堆積することを含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項7】
前記添加元素または化合物は、
-白金、ロジウム、オスミウム、パラジウム、ルテニウムまたはイリジウムから選択された、高融解点を有する貴金属、または
-金、アルミニウム、銀、レニウム、チタニウム、タンタルまたはニオブから選択された、その他の金属、または
-アルミニウム、鉄、クロム、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケルまたは銅から選択された、遷移金属、または
-ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムまたはルテチウムから選択された、ランタニド、
の四つのリストの中から選択された金属であるまたは金属を含む、
請求項6に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項8】
前記添加化合物は合金であって、前記バインダを含有するセラミック粉末に直接前記合金を堆積することにより、または前記バインダを含有するセラミック粉末に前記合金のいくつかの元素を連続してまたは同時に堆積することを組み合わせることによって得られる、請求項1から7のいずれか一項に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項9】
前記添加化合物は一つ以上の金属の酸化物、炭化物または窒化物であって、前記バインダを含有するセラミック粉末の上に酸化物、炭化物または窒化物を直接堆積することにより得られ、または反応性雰囲気において金属を堆積する反応により、または堆積後に得られる、
請求項1から7のいずれか一項に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項10】
前記添加化合物は一つ以上の金属の酸化物、炭化物または窒化物であって、前記バインダを含有するセラミック粉末の上に酸化物、炭化物または窒化物を蒸着室内で、堆積中に反応性雰囲気において金属を堆積する反応により得られる
請求項1からのいずれか一項に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項11】
前記堆積工程(E3)は、いくつかの異なる添加元素または化合物の堆積を同時にまたは連続して行うことを含む
請求項1から10のいずれか一項に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項12】
前記堆積工程(E3)は、少なくも一つの添加元素または化合物を、1重量%から4重量%、または12重量%から25重量%の有機化合物を含む、バインダを含有するセラミック粉末に加えることを含む、
請求項1から11のいずれか一項に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項13】
-セラミック粉末を準備することを含む第一段階(P1)、その後
-任意に、原子層堆積(ALD)により前記セラミック粉末に少なくとも一つの添加元素または化合物を堆積することを含む、堆積ステップ(E1)、その後
-有機材料型のバインダを、前記少なくとも一つの添加元素または化合物を有する前記セラミック粉末に混合することを含む第二段階(P2)、その後
-前記バインダを含有するセラミック粉末の上に少なくとも一つの添加元素または化合物を堆積することを含む堆積工程(E3)
を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のバインダを含有するセラミック粉末の製造方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のバインダを含有するセラミック粉末を製造する段階を含む、セラミック部品の製造方法。
【請求項15】
少なくとも一つの添加元素または化合物を堆積することを含む前記堆積工程(E3)の後、前記製造方法は、
-前記少なくとも一つの添加元素または化合物を含む、バインダを含有するセラミック粉末を仮に成形する第三段階(P3)、その後
-仮に成形したセラミック部品の脱バインダの工程、その後前記セラミック部品を焼結する工程を含む、第四段階(P4)
を実行する
請求項14に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項16】
少なくとも一つの添加元素または化合物を、堆積させるステップ(E3)の前または後に、着色顔料、または燐光性の顔料を、前記結合されたまたはバインダを含まないセラミック粉末に加えることを含む工程を含む
請求項14または15に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項17】
- バインダを含有するセラミック粉末から当該セラミック部品を製造することにより、第一の色を有するセラミック部品を得ることを可能とする、着色顔料またはより一般的には少なくとも一つの追加または添加化合物を含むバインダを含有するセラミック粉末を提供する;
- 物理蒸着(PVD)及びまたは原子層堆積(ALD)によって、前記バインダを含有するセラミック粉末に、少なくとも一つの添加元素または化合物を堆積させる(E3);
- 第一の色とは異なる第二の色を有するセラミック部品を得るために、前記堆積させた添加元素または化合物を含む前記バインダを含有するセラミック粉末から前記セラミック部品を製造することを完成する、
各工程を含む、請求項14から16のいずれか一項に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項18】
- バインダを含有するセラミック粉末から当該セラミック部品を製造することにより、第一の特性を有するセラミック部品を得ることを可能とする、少なくとも一つの追加または添加化合物を含むバインダを含有するセラミック粉末を提供する;
- 物理蒸着(PVD)及びまたは原子層堆積(ALD)によって、前記バインダを含有するセラミック粉末に、少なくとも一つの添加元素または化合物を堆積させる(E3);
- 第一の特性とは異なる第二の特性を有するセラミック部品を得るために、前記堆積させた添加元素または化合物を含む前記バインダを含有するセラミック粉末から前記セラミック部品を製造することを完成する、
各工程を含み、
前記特性は、機械的、熱的、電気的および摩擦学的特性のうち少なくとも1つを含む、
請求項14から16のいずれか一項に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項19】
前記バインダを含有するセラミック粉末に、少なくとも一つの添加元素または化合物を堆積させる工程を繰り返し、前記セラミック部品の製造を完成した後に所望の第二の色に十分近くなるまで、前記量及びまたは前記添加化合物を変えて、少なくとも一つの添加化合物によっていくつかの異なる堆積を行うことを含む
請求項17に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項20】
所望の第二の色に近い第一の色を得ることを可能とする、少なくとも一つの化合物を含む、バインダを含有するセラミック粉末を選択する工程を含む、
請求項17または19に記載のセラミック部品の製造方法
【請求項21】
時計のベゼル、文字盤、インデックス、りゅうず、押しボタンまたはその他の時計ケース要素または時計ムーブメントの要素を製造することを可能とする、
請求項14から20のいずれか一項に記載のセラミック部品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック粉末およびセラミック部品の製造方法に関する。このようなセラミック粉末および部品は、時計製造および宝飾品に適用可能である。特にこのような部品は時計への適用が考慮され、特にベゼル等の装飾的な部品や、ムーブメント部品などの機能的部品に適用されうる。
【背景技術】
【0002】
宝飾品分野のように、時計製造分野においても、セラミック部品を特に装飾的な部品として使用することが知られている。しかしながら、これらセラミック部品の使用を制限する要因に、特定の色、特に特定の灰色の色合いを得るのが難しくもしくは不可能であること、および均一で、予測可能な、かつ再現性のある色を得ることが難しいことが挙げられる。さらに、特徴の色調を得るには初期部品から材料の全バッチを製造する必要があり、それには時間がかかる上複雑であった。
【0003】
別の制限要因も、特に当該セラミック部品の特定の機械的特性を得るために、既知のセラミック組成に組み合わせ可能な特定の成分を加えることによる効果をテストすることが難しいことから生じる。ここでもまた、各テストは複雑であり、初期組成から素材の全バッチを製造することを必要とする。
【0004】
通常のセラミック部品製造方法は、原料、つまり例えばジルコニア及びまたはアルミナを含むセラミック粉末、を準備する第一段階を有する。この第一段階において、原料は一般的にセラミック粉末の状態で準備され、そこにセラミック部品を強化するために別の酸化物を加え、または着色された材料を得るために顔料を加えることができる。顔料は一般的に、金属酸化物タイプまたは希土類酸化物タイプであり、液体流路を介して元となるセラミック粉末に加えられて混合され、顔料はそのためキャリア液を使って導入される。
【0005】
セラミック部品の製造方法の第二段階は、前記第一段階で得られたセラミック粉末にバインダを導入することを含む。このようなバインダは一般的に一つ以上の有機化合物からなる。バインダの特性や割合は第三段階において目的とされる工程に左右され、この段階の最後では一般的に、バインダを含有するセラミック粉末について言及される。
【0006】
第三段階はセラミック部品を成形することからなる。そのために、第一のアプローチは、粒子の凝集体を第二段階の最後に得られたバインダに押し付ける工程を有する。この工程において、第二段階ではバインダを含有するセラミック粉末を噴霧乾燥された押圧細粒の形で準備する。第二のアプローチは射出成形によって成形を行うことからなる。その場合、第二段階の結果準備されるのは、「供給材料」と呼ばれるバインダを含有するセラミック粉末である。第三のアプローチは型で鋳造することによる成形からなり、鋳込成形とも呼ばれる。その場合、第二段階の結果準備されるのは、スリップまたは「スラリー」とも呼ばれる、懸濁液中のバインダを含有するセラミック粉末である。第三段階の最後に、セラミック部品はその最終形状に近い形を有し、セラミック粉末とバインダの両方を含有する。例えばゲル鋳込、凍結鋳込または凝固鋳込技術などの他の技術も使用することができる。
【0007】
第四段階はセラミック部品を完成することを可能にする。この第四段階は、例えば熱処理を介してまたは溶剤を使用して、部品を脱バインダする、言い換えるなら部品からバインダを除去することを含む第一ステップを含む。第二ステップは、バインダ除去により発生する細孔を除去することにより、部品を圧縮化することを可能とする。この第二ステップは一般的に、焼結熱処理(高温での焼成)からなる。セラミック部品の最終色およびその最終的な機械的特性は、この第四段階の最後にのみ現れ、部品の様々な組成、および熱処理中に働く炉内の雰囲気によって起こる反応から生じる。これらの反応は複雑であり、しばしば予測不能である。
【0008】
上述した従来のセラミック部品製造方法は、いくつかの欠点を有することが発見された。特に、得られた最終的な色や特性は、第一段階において形成された粉末の微細構造等、特にセラミックの粒径、顔料の大きさ、それらのセラミックに対する反応性および焼結環境等、多数のパラメータに左右される。これらの特性はさらに、それ以外の製造段階に関連するその他全ての要因、例えば最終部品における細孔のサイズや数、粒界の構成、密度、顔料の割合および基質内におけるその分布、顔料同士または顔料とセラミック原料の組成または焼結中における雰囲気との組み合わせ、初期化合物の化学的純度及び固有のまたは外部からの汚染物質の存在可能性などに、左右される。このように、考慮されるべきパラメータの多様性は、製造を求められる特性の色を予想し再現することを難しくする。この所見は、着色顔料の量が少ない場合に、より強調される。そのため、この欠点を和らげるために、既存の方法は必然的に大量の顔料を使用する。さらに、特定の処理は、複雑な化学作用に基づいて処理ステップを加えることにより結果を向上させようと試みるが、当然、それにより製造方法がさらに複雑化するという欠点をもたらす。
【0009】
その上、セラミック部品の色を管理する難しさは、実際には、セラミック粉末の準備から始まって完成品の成形に至るまで、最適な方法を決定するために上述したパラメータのうちいくつかを変えて多数の完成サンプルを製造することを含む、多数の試験を必要とする。さらに、ほんのわずかでも色を変更することが求められると、多数のサンプルを再度準備することを含み、全ての処理を再度開始せねばならない。このため、実際には、装飾的な部品として使用されることがしばしば必要となるセラミック部品における制御された色の探求は、複雑で手のかかる開発工程を必要とする。
【0010】
最後に、多数のテストにもかかわらず、特定の色、特にCIE L*a*b色座標(83;0;0.6)やCIE L*a*b色座標(47;0.2;-0.2)等の特定の灰色を有するセラミック部品を得るのは現在まで不可能に見受けられた。一般的に、0に近いa*およびb*パラメータおよび96以下のL*パラメータによって定義される色、特に厳密な灰色、を得るのは不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、本発明の一つの目的は、特に時計のためのセラミック部品であって、従来の欠点を有しないものを製造する方法を提案することである。
【0012】
より詳細には、本発明の第一の目的は、向上した特性を有するセラミック、特に制御された色及びまたは特にいくつかの機械的、熱的、電気的および摩擦学的特性のうち、新しいまたは最適化された特性を与えられたセラミックを得ることを可能とする、セラミック粉末およびセラミック部品を製造する方法を提案することである。
【0013】
本発明の第二の目的は、色のついたセラミック部品を簡単に製造する方法を提案することである。
【0014】
本発明の第三の目的は、灰色のセラミックを提案することである。
【0015】
本発明の第四の目的は、結果として得られる最終セラミック部品の色を変更するために、すでに着色されたセラミック粉末を変更するための簡単な方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、特にジルコニア及びまたはアルミナ及びまたはアルミン酸ストロンチウムに基づく、特に時計または宝飾品の部品として、バインダを含有するセラミック粉末またはセラミック部品を製造する方法に基づいており、物理蒸着(PVD)及びまたは化学蒸着(CVD)及びまたは原子層堆積(ALD)によって、バインダを含有するセラミック粉末に少なくとも一つの添加元素または化合物を堆積させる工程を有する。
【0017】
本発明は、特許請求の範囲における記載により詳細に説明される。
本発明の目的、特徴及び有利点は、以下に記した添付した図面を参照して開示される特定の実施例の被制限的な記載によって詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る、時計用の着色されたセラミック部品の製造方法にかかる工程のフローチャートを模式的に示す。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る実施例1に基づいて得られたセラミック部品を示す。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る実施例2に基づいて得られたセラミック部品を示す。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る実施例3に基づいて得られたセラミック部品を示す。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る実施例4に基づいて得られたセラミック部品を示す。
図6図6は、本発明の一実施形態の7つの例示的な実施によって得られたセラミック部品の結果を示すテーブルである。
図7図7は、本発明の一実施形態によって得られた実施例4から7に係るセラミック部品の白金含有量の作用として生じる明るさの変化を示す。
図8図8は、本発明の一実施形態として得られた実施例4から7に係るセラミック部品の白金含有量の作用として生じる色度パラメータa*の変化を示す。
図9図9は、本発明の一実施形態として得られた実施例4から7に係るセラミック部品の白金含有量の作用として生じる色度パラメータb*の変化を示す。
図10図10は、本発明の一実施形態の例示的な実施によって得られたセラミック部品の結果を示すテーブルである。
図11図11は、本発明の一実施形態の三つの例示的な実施によって得られたセラミック部品の結果を示すテーブルである。
図12図12は、本発明の一実施形態の例示的な実施によって得られたセラミック部品の結果を示すテーブルである。
図13図13は、本発明の一実施形態に係る実施例1に基づいて得られたセラミック部品を示す。
図14図14は、本発明の一実施形態に係る実施例2に基づいて得られたセラミック部品を示す。
図15図15は、本発明の一実施形態に係る二つの先行する例示的な実施によって得られたセラミック部品の結果を示すテーブルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、セラミック部品または粉末は、特にジルコニア及びまたはアルミナ及びまたはアルミン酸ストロンチウムに基づく、例えば酸化イットリウム及びまたは酸化セリウム及びまたは酸化マグネシウム及びまたは酸化カルシウムで安定化されたジルコニアに基づく、少なくとも一つのセラミックを主に含む多結晶緻密材料から得られた部品または粉末を意味する。セラミック粉末は、特にジルコニア及びまたはアルミナ及びまたはアルミン酸ストロンチウムに基づく、セラミックの粉体を構成する、微粉固体の形態である粉末を意味する。説明を簡単にするため、セラミック粉末という用語は、セラミック粉体を主として含む粉末を一般的に意図して指すが、さらには、例えば一つ以上の顔料や、酸化イットリウム等のセラミックを強化する酸化物を添加要素として含むものも指す。同じく、セラミック部品は、例えばそのようなセラミック粉体を焼結することによって得られた部品を意味する。つまり、いずれの場合も、セラミック粉末または部品は、主としてセラミックタイプの部品、言い換えるならセラミックタイプの部品を少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも90重量%有するものである。例えば、セラミック粉末または部品は、ジルコニアを少なくとも50重量%含む。
【0020】
いずれの場合も、セラミック粉末は有機化合物を含まない。「バインダを含有するセラミック粉末」という総称は、セラミック粉末および、一般的に様々な比率で含まれる一つ以上の有機化合物からなるバインダからなる、加圧、射出成型、鋳造およびその他技術によって一部成形することを意図される、複合材料を意味する。
【0021】
(加圧)細粒とは、例えば冷温または高温一軸加圧成形、または冷温または高温静水圧加圧成形等の加圧工程によって成形することを意図される、バインダを含有するセラミック粉末の凝集体を意味する。細粒は一般的に、有機化合物を1重量%から4重量%含む。
【0022】
「供給材料」としても一般的に知られる「注入可能なセラミック粉末」は、高圧または低圧射出成形工程によって成形することを意図される、バインダを含有するセラミック粉末を意味する。注入可能なセラミック粉末は一般的に、有機化合物を12重量%から25重量%含む。
【0023】
「スラリー」とは、鋳込成形またはゲル鋳込により成形することを意図される、バインダを含有するセラミック粉末を意味する。スラリーは一般的に、有機化合物を1重量%から25重量%含む。
【0024】
本発明の一実施形態に係るセラミック部品の製造方法は、図1のフローチャートに模式的に示す段階およびステップを有する。
【0025】
本製造方法は、製造方法の一般的な段階P1からP4、つまりセラミック粉末の準備(P1)、バインダの追加(P2)、部品の成形(P3)および脱バインダ・焼結熱処理(P4)を有する。これらの段階の従来からの部分は従来から既知であるため、ここでは詳細に説明しない。当業者であれば、それらの変形例や等価物によるものも含む、実施の方法を知っているはずである。
【0026】
本発明の実施形態は、特にバインダを含有するセラミック粉末上に少なくとも一つの添加元素または化合物、例えば着色要素、を真空下で乾式に堆積させる工程E3を追加する点が、従来製造方法と特に異なる。
【0027】
第一実施形態の変形例によると、堆積工程E3は、PVDの略で知られる物理蒸着、及びまたはCVDの略で知られる化学蒸着からなる。
【0028】
第二実施形態の変形例によると、堆積工程E3は、ALDの略で知られる原子層堆積からなる。
【0029】
この堆積工程E3は、バインダを有するセラミック粉末に対して実施され、つまり製造方法の第二段階P2の後に行われる。工程は、有機化合物を含むセラミック粉末、例えば細粒または射出成形された供給材料に対して実施される。この工程は本製造方法の第三段階P3の前に実施される。説明を簡単にするため、本発明の堆積工程E3の実施により得られた添加元素または化合物を一つ以上含むバインダを含有するセラミック粉末は、これ以降もバインダを含有するセラミック粉末と呼ばれる。
【0030】
添加元素または化合物は様々であってよく、特に金属、及びまたは酸化物、及びまたは窒化物、及びまたは炭化物である。金属とは、純金属または合金を指すと理解される。つまり、有利には金属系化合物である。簡易化のため、この文書では以後、添加元素または添加化合物の語は、単一の要素および化合物または合金の区別なく使用される。
【0031】
新規に、本発明は、既存の方法と一緒に使用することのできなかった金属、例えば1200℃以上または1500℃以上の高い融解点を有する貴金属の使用を可能とする。そのため、本発明は添加元素として、白金、及びまたはロジウム、及びまたはオスミウム、及びまたはパラジウム、及びまたはルテニウム、及びまたはイリジウムを使用することを可能とする。変形例として、他の金属を使用することができ、上記のリストに金、アルミニウム、銀、レニウム、チタニウム、タンタルおよびニオブを追加することができる。加えて、以下にリストされる不完全dシェルによって特徴づけられる遷移金属によって、本発明の特定の堆積工程E3に添加することによって生じる前例のない有利な結果を得ることができる:鉄、クロム、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケルおよび銅。同様に、ランタニド(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu)によって、工程E3中にセラミック粉末をバインダでドープすることおよび有利な着色及びまたは特性を得ることが可能となる。上述した通り、添加化合物は上述のリストにある一つ以上の金属およびランタニドを含むかそれらからなる合金であってもよい。
【0032】
このように添加化合物は金属化合物または合金であってよく、バインダを含有するセラミック粉末に金属合金を直接堆積することによってまたはバインダを含有するセラミック粉末に連続してまたは同時に金属合金の複数の要素を堆積することによって得ることができる。
【0033】
同様に、添加化合物は一つ以上の金属の酸化物、炭化物または窒化物であって、酸化物、炭化物または窒化物をバインダを含有するセラミック粉末に直接堆積することによって、または金属堆積物と、例えばセラミック化合物の焼結工程の間の特に堆積室内のまたは堆積後の反応性雰囲気との間の反応によって、得られる。
【0034】
当然、いくつかの異なる添加元素または化合物を、同時にもしくは連続して、上述の一以上の堆積ステップE3によって、同じバインダを含有するセラミック粉末に堆積させることができる。利用可能な添加化合物の増加により、当然可能となるセラミックの着色や、他の特性、特に機械的または摩擦学的特性の可能性を増やすことができる。
【0035】
なお、当業者は、液体式によりセラミックに着色顔料を加えることに慣れている。当業者は乾式により、またはバインダを含有するセラミック粉末に直接堆積を行うことに慣れてはいない。このような乾式堆積を行う間は、次のパラメータを考慮する必要がある。
- 堆積物の粉末に対する均質性、
- 粒の形状および粒径の均質性、
- 工程の温度、
- 脱気のリスク、
- (絶縁)移動分割固体の静電的特性、
- 装置の材料の仕上げや特性;これは、装置に粉末が付着することを防ぐために、堆積物の特性と細粒のバインダの特性との組み合わせを正しく選択することが必要である。
【0036】
例えば、PVD堆積の際、堆積は有利に、バインダを含有するセラミック粉末に対して行われ、例えば加圧細粒(数十ミクロン単位の平均サイズ)、またはより大きなペレット(数ミリメートル単位の平均サイズ)形状の射出可能なセラミック粉末に対して行われる。このアプローチによってセラミック粉末および有機化合物を含む混合基質が得られ、その温度挙動は悪く、最高温度は45℃である。
【0037】
さらに、本発明の方法によるセラミック部品の新しいまたは向上した特性に関して、セラミックに非常に少ない量の添加化合物を加えただけで、非常に満足な結果を得ることが可能である。このように、セラミック部品の色が、既存の方法に比べて均質的及びまたは新しい基調を可能とする点で向上するだけでなく、さらには、添加する着色要素または化合物を非常に少量、特に従来の方法において使用された着色顔料の量に比べてはるかに少ない量使用するだけで、この向上した結果を得ることができる。
【0038】
たとえば、PVD堆積プロセスは、5%以下、または3%以下、または2%以下の添加元素または化合物の重量%含有量で使用される。有利には、この含有量は0.01%以上である。有利には、含有量は0.01%から5%の間、もしくは0.01%から3%の間である。なお、全ての重量における含有量は、(製造方法の第四段階を実施した後の)完成したセラミック部品、またはバインダ除去された、言い換えるならばバインダの重量を考慮しないセラミック粉末において測定される。ALD堆積プロセスは、さらに重量に対してもっと少ない含有量を得ることに使われ、5%以下の、または特に3%または2%以下の、または1%以下の、または0.05%以下の、または0.01%以下の含有量を可能とする。有利には、これらの含有量は1ppm以上である。有利には、これらの含有量は1ppmと0.01%の間、または1ppmと0.05%の間、または1ppmと5%の間である。本発明は、少量の化合物材料の添加量で、もしくは非常に少ない材料の量で、非常に有利な結果を得るという優位性を有し、毎回全てのバッチを準備することなく、基本バッチを反復的に変更することを追加的に可能とするものである。
【0039】
さらに、本発明のプロセスにより、添加化合物の均質的分布または良好な分散を得ることができ、さらにはその結果として均質な特性(例えば色)を有するセラミック部品を得ることができる点を強調しなければならない。なお、プロセスの第二段階P2の後に、例えば細粒上に直接、添加元素を堆積させることから、添加化合物は使用された堆積プロセスによって細粒の表面に分布され、このようにバインダを含有するセラミック粉末の上に均質的に分布される。この堆積の適合により、粉末上にコーティングとして分布され、金属コーティングの場合、粉末の静電はさらに減少する。よって、凝集はさらに減る。添加化合物は特に完成した焼結セラミック部品において均質的に分布される。
【0040】
さらに、バインダを有さないセラミック粉末に対してではなく、バインダを有する粉末にコーティングをすることから、市販の材料に処理を行う点、およびより大きなサイズの粒に対して処理を行うことから、堆積装置からの回収が容易であるという点が有利である。
【0041】
全ての先行するケースにおいて、第四段階の最後に得られた本体の分析によると、完成したセラミック部品において、添加化合物が均質的に分布していることがわかる。PVD堆積が加圧細粒に対して直接に行われた場合、セラミック部品の微細構造により、加圧細粒の微細構造を反映した上部構造により添付化合物の粒子が規則正しく分布する(後述する図2および3を参照のこと)。変形例として、添加化合物の微粒子の分布は、堆積後に摩砕ステップを加えることにより完全に均質化することができる(図4および5参照)。射出成形された供給材料に対して堆積を行う場合、原材料内の添加化合物の粒子分布の均質化は、特に射出成形スクリューによる溶融混合物の可塑化ステップの間に特に行われる。このように、いずれの場合も、セラミック部品は堆積において均質的に分布された添加元素を有し、そのため、この添加元素がセラミック部品に均質的に分布されることにより得られる特性を有することができる。
【0042】
最後に、本発明の実施形態の堆積工程E3は、下記の主たる有利点を有する:
- 構成の点から完全に制御された添加元素または化合物を追加することができ、その量は非常に少量であり、そのため添加化合物のマイクロメータリングを実行することが可能となる;
- 最終的にセラミック部品内に添加化合物の均質分布を得ることを可能とする;
- 添加化合物を多数加え、既存の方法に比べて添加することのできる化合物の数を増やすことができ、特定の特性を有するセラミック部品を提供する可能性を増やすことができる;
― 添加化合物を信頼性高く、再現性高く、クリーンに堆積することを可能とする。
【0043】
本発明を、従来の技術では製造することができなかった色調を有する、灰色のセラミック部品を製造することを可能とする各例に基づいて説明する。これらすべての例において、添加化合物は白金であり、加圧粉末の上にPVD堆積により堆積される。全ての得られた結果を、特に色の点から、図6のテーブルに要約する。
【0044】
実施例1は、細粒の状態のバインダを含有するセラミック粉末の使用に基づき、細粒は3モル%のイットリア安定化ジルコニア(TZ3Y)を含有し、0.25重量%のアルミナと、3重量%の有機バインダー(REF1)を有する。これら細粒50gは白金カソードを含むPVD室の振動ボウルに位置される。PVD室は排気され、その後白金はアルゴンプラズマでスパッタリングされる。誘導結合プラズマ(ICP)分析により、これら先にバインダ除去された細粒の白金含有量を分析することができる。この実施例によって得られたサンプルは、全体的には、2.26重量%の白金含有量を有する。ここで得られたコーティングされた細粒は、次に一軸プレスの円筒形型枠の中でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。焼結後、セラミックペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。図2は、得られたセラミックペレットの走査型電子顕微鏡による画像であり、粒界における白金粒子(明るい点)の分布を示す。この図により、古い加圧細粒の周りに、微細な上部構造において、白金粒子が規則正しく分布している様子をハイライトすることができる。部品のスケールにおいて、粒子の分布は均質的である。
【0045】
実施例2は、イットリア安定化ジルコニア(TZ3Y)を3モル%含んだ結合された加圧粉末から製造され、0.25重量%のアルミナと3重量%の有機バインダを細粒の形状で有する(参考例1)。これら細粒50gは白金カソードを含むPVD室の振動ボウルに位置される。PVD室は排気され、その後白金はアルゴンプラズマでスパッタリングされる。誘導結合プラズマ(ICP)分析により、これら先にバインダ除去された細粒の白金含有量を分析することができる。この実施例によって得られたサンプルは、全体的には、0.11重量%の白金含有量を有する。ここで得られたコーティングされた細粒は、次に一軸プレスの円筒形型枠の中でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。図3は、得られたセラミックペレットの走査型電子顕微鏡による画像であり、白金粒子(明るい点)の分布を示す。部品のスケールにおいて、粒子の分布は均質的である。白金の含有量が非常に少ないため、白金粒子はあまり見えない。
【0046】
実施例3では、実施例1を実施する際に得られた粉末の一部が取り出される。次に、脱バインダ工程と、その後の摩砕(混合、湿式粉砕)および結合処理が加えられる。この処理において、0.47gのPVA、0.71gのPEG20000および170mlのDI(脱イオン)水が、実施例1から得たバインダ除去された粉末39.4gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで1時間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。この実施例から得られるサンプルは、全体として、実施例1と同じ2.26重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。図4は、得られたセラミックペレットの走査型電子顕微鏡による画像であり、ジルコニア細粒の中に白金粒子(明るい点)が微細に均質的に分布していることがわかる。実施例1と3の研磨されたセラミックの色の違いは見た目にごくわずかであり(ΔE<1)、装置における測定誤差の範囲内である。そのため、人間の目には、これら二つの実施例における白金粒子の分布は、結果として得られる色の点から、同等であると考えられる。
【0047】
実施例4では、実施例2を実施する際に得られた粉末の一部が取り出される。次に、脱バインダ工程と、その後の摩砕および結合処理が加えられる。この処理において、0.46gのPVA、0.69gのPEG20000および166mlのDI(脱イオン)水が、実施例2から得たバインダ除去された粉末38.5gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで1時間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。この実施例から得られるサンプルは、全体として、実施例2と同じ0.11重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。図5は、得られたセラミックペレットの走査型電子顕微鏡による画像であり、ジルコニア細粒の中に白金粒子(明るい点)が微細に均質的に分布していることがわかる。白金の含有量が非常に少ないため、このスケールでは白金粒子はあまり見えない。実施例2と4の研磨されたセラミックの色の違いは見た目にごくわずかであり(ΔE<1)、装置における測定誤差の範囲内である。そのため、人間の目には、これら二つの実施例における白金粒子の分布は、結果として得られる色の点から、同等であると考えられる。
【0048】
実施例5では、実施例3を実施する際に得られた粉末のうち3.32gが取り出された後バインダ除去され、市販の粉末(3モル%の非結合イットリア安定化ジルコニア)96.68gと混合され、その後摩砕処理が行われる。次に、1.2gのPVA、1.8gのPEG20000および200mlのDI(脱イオン)水が、得られた粉末の100gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで70分間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。この実施例から得られるサンプルは、全体として、0.075重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。
【0049】
実施例6では、実施例3を実施する際に得られた粉末のうち2.21gが取り出された後バインダ除去され、市販の粉末(3モル%の非結合イットリア安定化ジルコニア)97.79gと混合され、その後摩砕処理が行われる。次に、1.2gのPVA、1.8gのPEG20000および200mlのDI(脱イオン)水が、得られた粉末の100gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで70分間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。この実施例から得られるサンプルは、全体として、0.05重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。
【0050】
実施例7では、実施例3を実施する際に得られた粉末のうち0.77gが取り出された後バインダ除去され、市販の粉末(3モル%の非結合イットリア安定化ジルコニア)99.23gと混合され、その後摩砕処理が行われる。次に、1.2gのPVA、1.8gのPEG20000および200mlのDI(脱イオン)水が、得られた粉末の100gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで70分間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。この実施例から得られるサンプルは、全体として、0.02重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。
【0051】
図6のテーブルは、上述した7つの実施例の結果を示す。これらすべての実施例で灰色のセラミックを得ることができる点は興味深い。このように、一般的に、二つのパラメータa*とb*が-1と1の間であることを特徴とする本発明の一実施形態により、有利に灰色のセラミックを製造することが可能となる。さらに、図7から9に簡単に示すように、白金含有量の作用として、色調が異なる点が興味深い。
【0052】
変形例として、本発明の一実施形態は、二つのパラメータa*とb*が-3と3の間であり、もしくは-2と2の間であり、もしくは-0.5と05の間であることを特徴とする、灰色のセラミックを製造することを可能とする。
【0053】
なお、白金を加えた後に摩砕を行うことにより、材料中に白金をよりよく分布させることが可能となり(図2から5参照)、これら実施例で得られたセラミックの色は大きく変更されない。摩砕に関連するサンプルの密度の非常に僅かな増加も見られた。しかしながら、この摩砕は任意である。
【0054】
当然、本発明は白金を添加化合物として含むセラミック部品の製造に限定されない。白金以外の添加化合物、例えばロジウム、パラジウムやその他の灰色の貴金属であって、セラミックの他の成分や焼結雰囲気と反応しないものを添加化合物として、灰色を得ることも可能である。さらに、本発明は灰色のセラミック部品の製造に限定されない。実際、添加化合物を変えることにより、多数の色を得ることが可能となる。このように、図10のテーブルに、本発明の一実施例に係るプロセスによって得られた様々な添加化合物を有するセラミック部品のいくつかの例を示す。より詳細には、PVD堆積によるさまざまな添加化合物の堆積テストが、3モル%のイットリア安定化ジルコニアに基づくセラミック射出成形供給材料に対して直接行われ、ここでアルミナ添付の有無は異なる。鉄Feの添加により、ほんのわずかに黄色いセラミックが得られることが分かった。クロムCrを純粋な安定化ジルコニアに添加することによっても、わずかに赤い色合いを有する黄色いセラミックが得られる。2重量%のアルミナを添加したジルコニアにクロムを堆積させることにより、より明るく、より赤い材料を得ることができる。バナジウムVを添加することにより、セラミックは黄色くなり、アルミニウムAlを添加することにより、基本の色は見た目上変化しない。
【0055】
任意に、製造方法は、バインダを有しないセラミック粉末に、例えば従来方法に基づく着色顔料またはその他の化合物の添加や、例えば塩析等の当業者に既知の他の技術に基づいて、別の化合物を添加する先行工程E1を有してもよい。実際、本発明は他の全ての既存プロセスと互換性を有し、また例えばそれらを向上させるために補足されてもよい。この工程E1は製造方法の適切なタイミングにいつでも実施することができる。
【0056】
変形例として、任意に、本製造方法は、特に原子層堆積ALDにより、バインダを含有するセラミック粉末に更なる添加元素または化合物を加える先行工程E1を有してもよい。特に、ALD堆積工程は、例えば金属の添加化合物を追加することにより、セラミック粉末の表面に導電性を与えることができる。これはバインダを含有するセラミック粉末が、特にPVD室内で続いて凝集作用を持ってしまうリスクを制限するという有利点を提供する。なぜならば、バインダを含有するセラミック粉末の粒子は静電的特性を有し、それにより互いにくっつき当然凝集体を形成するが、それは添加化合物との均質的なコーティングには不利である。なお、この第一の導電性要素が効果を発揮するには、粉末粒子の表面全体を覆う必要はない。堆積工程E3の間に、バインダを含む粉末にPVD堆積によって添加化合物を堆積することは、粒子の凝集作用を制限する導電性副層をALD堆積によって作成した第一薄膜によって容易となることが分かった。ALD堆積によって堆積された化合物は、PVD堆積によって堆積されたものと同じであってよい。変形例として、ALDとPVDによって堆積された二つの化合物は、それらの特性を組み合わせるために、異なる。
【0057】
変形例として、先行工程E1を通じた添加元素または化合物のALD堆積は、バインダを含まないセラミック粉末に対して行われてもよく、つまりプロセスの第二段階P2を実行する前に行われてよい。このように向上されたセラミック粉末は、第二段階P2の間に分散/湿式粉砕の連続した工程にさらされてもよく、有機化合物と結合するために、それはプロセスの第二段階P2の最後にそれらを例えば細粒状にするために噴霧乾燥する前に行われる。この第二段階P2により、前記添加元素または化合物を均質的に分布させることができる。
【0058】
上述した通り、セラミック部品を着色する従来の解決法は複雑で常に満足なものではない。さらに、従来技術による顔料を使用して先に着色されたセラミック部品の色調は、変更が必要となった場合、たとえそれがほんの僅かであっても、特に顔料が互いに焼結の間に反応を起こす傾向があるため、従来技術ではとても難しいと思われる。このように、従来技術によると、着色セラミックの色の強度(明るさ)及びまたは色調を変更するには時間と手間がかかる。実際、試みの度に、新しい化学組成を有するセラミック粉末の新しいバッチを作成し、その後射出成形した供給材料を製造し、完成した(焼結および研磨された)セラミック部品の作成を必要とする。
【0059】
本発明の方法によると、このような色や強度の変更は非常に容易となる。より一般的には、セラミック部品の特性に対する全ての変更を行うことが容易となる。
【0060】
このように、本発明の一実施形態は、特にジルコニア及びまたはアルミナ及びまたはアルミン酸ストロンチウムに基づいて、セラミック粉末またはセラミック部品を製造する方法に基づき、方法は以下の工程を有する:
- 着色顔料、またはより一般的にはセラミック部品に第一の色を与える、またはより一般的には第一の特性を授ける、少なくとも一つの追加または添加化合物を含む、バインダを含有するセラミック粉末を提供する;
- 物理蒸着PVD及びまたは化学蒸着CVD及びまたは原子層堆積ALDによって、前記バインダを含有するセラミック粉末に、少なくとも一つの、着色またはその他の、添加元素または化合物を堆積させるE3;
- 第一の色とは異なる第二の色を有する、またはより一般的には第一の特性とは異なる第二の特性を授けられた、セラミック部品を得るために、堆積された添加化合物を含む前記バインダを含有するセラミック粉末から前記セラミック部品を製造することを完成する。
【0061】
このような方法を利用することにより、市販のバインダを含有するセラミック粉末から得られた第一の特性を、本発明の一実施形態に係る添加化合物を追加することにより、第二の特性に容易に変更することができる。この本発明による実施形態は、制御と再現のために、容易に実施可能な工程E3を利用するため、セラミック粉末の準備段階において困難な調整作業を行うことを必要とせず、複数のテストを実施して試行錯誤によりセラミック部品の所望の最終特性を得ることができる。
【0062】
このように、セラミック部品の製造方法は、所望の結果に十分近いものとなるまで、添加化合物の含有量を変更したり、添加化合物そのものを変更したりしつつ、前記バインダを含有するセラミック粉末に少なくとも一つの添加化合物を堆積させる工程を繰り返し、セラミック部品の製造を完成させる。
【0063】
実際には、所望の第二の色に近い第一の色を得ることを可能とする着色顔料を含むバインダを含有するセラミック粉末を選択し、その後、所望の色に十分近づくまで追加の着色化合物を追加することによりその色を変更するという工程を実施することができる。同じアプローチを、先に述べた色以外のあらゆる特性を変更するために実施することができる。
【0064】
有利には、前記少なくとも一つの添加化合物は、バインダを含有するセラミック粉末にすでに含まれる追加化合物、例えば着色顔料、と反応しないものが選択される。
【0065】
バインダを含有するセラミック粉末に含まれる顔料は、金属酸化物、希土類酸化物、コバルトアルミン酸及びまたは燐光性の顔料のうちの一つ以上の要素を含んでもよい。
【0066】
次の三つの実施例、実施例8から10は、コバルトアルミン酸(青色顔料)を含むセラミック部品の場合における、当該原理の例である。結果は図11のテーブルに示す。
【0067】
実施例8において、セラミック部品は最初に、市販のセラミック粉末である、0.25重量%のアルミナを含むイットリア安定化ジルコニア(TZ3Y)3モル%に対して、従来の湿式方法によって3重量%の有機バインダと1重量%のCoAl顔料を加えた(参考例2)。結果として得られた懸濁液は噴霧乾燥によって乾燥され粒状にされた。細粒はその後プレスされ、サンプルが得られた。このサンプルはバインダ除去されて焼結され、次のCIE L*a*b*パラメータ(50.5;0.7;-19.4)によって特徴づけられる、青色を有するセラミック部品が得られた。
【0068】
本発明の実施形態によると、上述したバインダを含有するセラミック粉末(参考例2)はまずバインダ除去される;そのうち99gが取り出される。実施例1で得られた粉末も同様にバインダ除去される;そのうち1gが取り出される。取り出された二つのサンプルは混合される。その後、1.2gのPVA、1.8gのPEG20000および200mlのDI水が、この変更されたセラミック粉末100gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで70分間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。当業者に既知のサイクルにより、最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。この実施例8から得られるサンプルは、0.02重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。変更された色が記録される(図11参照)。
【0069】
実施例9において、最初に、3モル%のイットリア安定化ジルコニア(TZ3Y)粉末に、従来の湿式方法によって、3重量%の有機バインダと0.5重量%のCoAl顔料を加えたものを考慮する(参考例3)。結果として得られた懸濁液は噴霧乾燥によって乾燥され粒状にされる。細粒はその後プレスされ、サンプルが得られた。このサンプルはバインダ除去されて焼結される。CIE L*a*b*パラメータ(52.0;-1.9;-15.5)である、青色を有するセラミック部品が得られた。
【0070】
次に、上述したジルコニア系セラミック部品を製造するのに使用される細粒(参考例3)はバインダ除去される。実施例1で得られたバインダ除去された粉末1gを、ここに記載したバインダ除去されたセラミック粉末99gに加えた。その後、1.2gのPVA、1.8gのPEG20000および200mlのDI水が、この混合粉末100gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで70分間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。この実施例9から得られるサンプルは、0.02重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。セラミック部品はこのように変更された色を有する(図11に示すパラメータ参照)。
【0071】
実施例10において、最初に、従来の湿式方法によって加えられた、3重量%の有機バインダと0.5重量%のCoAl顔料を含む0.25重量%のアルミナを含む市販のイットリア安定化ジルコニア(TZ3Y)粉末3モル%からセラミック部品が作成される(参考例3)。結果として得られた懸濁液は噴霧乾燥によって乾燥され粒状にされる。細粒はその後プレスされ、サンプルを得る。このサンプルはバインダ除去されて焼結される。CIE L*a*b*パラメータ(52.0;-1.9;-15.5)である、青色を有するセラミック部品が得られた。
【0072】
この実施形態によると、先行するセラミック部品を製造するのに使用される細粒(参考例3)は最初にバインダ除去される。次に、実施例1で得られたバインダ除去されたセラミック粉末1.8gを、このバインダ除去されたセラミック粉末98.2gに加えた。その後、1.2gのPVA、1.8gのPEG20000および200mlのDI水が、この変更されるセラミック粉末100gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで70分間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。この実施例10から得られるサンプルは、0.036重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。セラミック部品はこのように変更された色を有する(図11に示すパラメータ参照)。
【0073】
上述の三つの実施例は、本発明の実施形態の使用に基づき、顔料を有するセラミック粉末から開始して、その色を最終的には変更して、容易に所望の色を得るものである。
【0074】
より一般的には、本発明の実施形態は、少なくとも一つの化合物を、バインダを含有するセラミック粉末に加えるための全ての他の技術と容易に互換性を有する。このように、本発明は他の技術、特に従来のアプローチと組み合わせてもよく、それにより新しい特性を有するあらゆるタイプのセラミックを得る。
【0075】
例として、実施例11において、セラミック粉末は最初に、イットリア安定化ジルコニア3モル%に対して、従来の湿式方法によって30重量%の発光顔料SrAl1425:Dy、Euと3重量%の有機バインダを加えた(参考例4)。結果として得られた懸濁液は噴霧乾燥によって乾燥され粒状にされる。細粒はその後プレスされ、空気中でバインダ除去され、1450℃で2時間特定の雰囲気中で焼結される。この従来の方法により、CIE L*a*b*パラメータ(94.0;-4.7;6.7)によって定義づけられる色を有するセラミック部品が得られた。
【0076】
本発明の実施例の変形例によると、上述で使用した混合セラミック粉末の細粒(参考4)はバインダ除去された。次に、実施例1で得られたバインダ除去された粉末1gがこの粉末99gに加えられる。その後、1.2gのPVA、1.8gのPEG20000および200mlのDI水が、この得られた粉末100gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで70分間摩損される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより特定の雰囲気中で焼結される。この実施例9から得られるサンプルは、0.02重量%の白金含有量を有する。焼結後、ペレットの各面は研削され、その後研磨される。この結果、図12のテーブルに正確な各特徴が示されるとおり、本発明と従来の方法を組み合わせることにより、着色された発光性のセラミック部品が得られる。変形例として、別の添加元素または化合物を追加することにより、このような燐光性のまたは発光性のセラミック部品に別の色を付けることができる。
【0077】
上述の実施例は着色セラミック部品を得るために添加化合物を使用することに基づいており、これらの実施例は、見た目に関連するという点から、本発明を説明するのにふさわしい。
【0078】
下記の例は、バインダを含まない粉末に対して、特別にALDプロセスを使用することにより、従来の技術による製造では不可能だった色調である灰色セラミック部品を製造することを可能とする。全ての得られた結果は、特に色の観点から、図15のテーブルに要約される。
【0079】
最初の実施例は、3モル%のイットリア安定化ジルコニア(TZ3YS)から構成される、バインダを取り除いたセラミック粉末の使用に基づく。この粉末10gをALD室の振動ボウルに入れ、排気した後、ALDプロセスによって白金の堆積を開始する。50回の堆積サイクルが実施される。
【0080】
このようにコーティングされたセラミック粉末はその後、摩砕(混合、湿式粉砕)を経た後、結合処理される。この処理において、0.6gのPVA、0.9gのPEG20000および116mlの脱イオン水が、前記白金コーティングされたセラミック粉末50.4gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで二時間摩損/研削される。懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。焼結後、セラミックペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。図13は、焼結セラミックペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)による画像であり、白金粒子(明るい点)の分布を示す。この図により、白金粒子が均質的に分布している様子を示すことができる。特に部品のスケールにおいて、これらの粒子の分布は均質的であると認識される。結果として得られた色は目視で均質的に見える。この色と組成は図15のテーブルにおいて、参考例1-ALD50の項目の下に記載される。
【0081】
実施例2は、イットリア安定化ジルコニア(TZ3YS)を3モル%含んだ、バインダを取り除かれたセラミック粉末の使用に基づく。この粉末10gがALD室の振動ボウルに位置され、その後排気が行われ、ALDプロセスによる白金の堆積が開始される。200回の堆積サイクルが実施される。このようにコーティングされたセラミック粉末はその後、摩砕(混合、湿式粉砕)を経た後、結合処理される。この処理において、0.6gのPVA、0.9gのPEG20000および120mlの脱イオン水が、前記白金コーティングされたセラミック粉末50.4gに対して加えられる。このように得られた懸濁液は、アトライタのジルコニアボウルに1kgのジルコニアビーズと共に入れられ、400rpmで2時間摩損/研削される。
【0082】
懸濁液はその後回収され、「噴霧乾燥機」を使って噴霧乾燥により乾燥され粒状にされる。このように得られた細粒はその後、一軸プレスの円筒形型枠内でプレスされる。結果として得られたペレットは600℃で18時間、空気中でバインダ除去される。最後に、ペレットは1450℃で2時間のホールドにより空気中で焼結される。焼結後、セラミックペレットの各面は研削され、その後研磨される。得られたセラミック部品は灰色である。図14は、焼結セラミックペレットの走査型電子顕微鏡(SEM)による画像であり、白金粒子(明るい点)の分布を示す。この図により、白金粒子が均質的に分布している様子を示すことができる。特に部品のスケールにおいて、これらの粒子の分布は均質的であると認識される。結果として得られた色は目視で均質的に見える。この色と組成は図15のテーブルにおいて、参考例2-ALD200の項目の下に記載される。
【0083】
図15のテーブルは、上述した二つの例の結果を示す。これらの例により、灰色のセラミックを得られる点が興味深い。このように、一般的に、本発明の一実施例によると、二つのパラメータa*とb*が-1と1の間であることを特徴とする、灰色のセラミックを有利に製造することができる。
【0084】
変形例として、本発明の一実施形態によると、二つのパラメータa*とb*が-3と3の間であり、または-2と2の間であり、または-0.5と0.5の間であることを特徴とする、灰色のセラミック部品を製造することができる。
【0085】
さらに、所望の美的外観を得ることができるため、時計や宝飾品部品にとって、セラミック部品の色は特に重要である。このように、本発明は、時計または宝飾品部品を製造する際に特に有利である。時計部品は特に、時計のベゼル、文字盤、インデックス、りゅうず、押しボタンまたはその他の時計ケース要素または時計ムーブメントの要素であってよい。本発明はまた、このような時計部品を有する時計、特に腕時計に関する。
【0086】
当然、本発明はセラミック部品の特定の色にも、所定の特性にも、限定されない。実際、本発明の概念は、セラミック部品の価値を高める性質を増やして容易化することであり、本発明は結果的に多数の新規セラミック部品を製造することを可能とする。
【0087】
特に、本発明の一実施形態に基づくセラミック部品は、セラミック部品に分布される極めて少量の添加化合物によって得られる、少なくとも一つの特別な特性を有する。極めて少量とは、完成されたセラミック化合物の総重量に対して5重量%以下、もしくは3重量%以下、もしくは1重量%以下、もしくは0.05重量%以下、もしくは0.01重量%以下である。さらに、この量は有利には、1ppm以上、または10ppm以上である。
【0088】
さらに、本発明はまた、当該セラミック部品製造方法を使用する、セラミック部品を製造する装置に関する。このため、当該製造装置は物理蒸着(PVD)または化学蒸着(CVD)または原子層堆積(ALD)を実施するための室を有する。
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図15