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特許7165703飛行システム、飛行経路決定方法、及び飛行経路決定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】飛行システム、飛行経路決定方法、及び飛行経路決定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20221027BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20221027BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20221027BHJP
   A01C 23/00 20060101ALI20221027BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221027BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20221027BHJP
【FI】
G08G5/00 A
A01G7/00 603
A01M7/00 H
A01C23/00 G
B64C39/02
B64F1/36
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020159946
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053235
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135518
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 隆
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 貴大
(72)【発明者】
【氏名】國分 寛史
(72)【発明者】
【氏名】李 顕一
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169995(JP,A)
【文献】特開2019-158635(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/00
A01G 7/00
A01M 7/00
A01C 23/00
B64C 39/02
B64F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人で飛行可能な航空機であって、飛行中に所定のタスクを実行する航空機と、
地中に予め埋め込まれ、土壌と植物のうち少なくとも何れか1つのセンシング対象の接触センシングを行う接触センサと、
前記接触センサが前記接触センシングを行うことにより得られた接触センシングデータに基づいて前記所定のタスクが実行されるエリアの候補となる候補エリアの組み合わせを特定し、当該特定された候補エリアの組み合わせと、予め用意された複数の飛行経路の候補のうちの少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かを判定し、前記特定された候補エリアの組み合わせと、前記少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かの判定の結果に基づいて、前記予め用意された複数の飛行経路の候補から1の飛行経路を選択することで、前記航空機が前記所定のタスクを実行するための飛行経路を決定する決定部と、
を含むことを特徴とする飛行システム。
【請求項2】
前記決定部は、前記候補エリアの組み合わせと、前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するまで、前記候補エリアを削減することを特徴とする請求項1に記載の飛行システム。
【請求項3】
前記決定部は、優先度が相対的に低い前記候補エリアを削減することを特徴とする請求項2に記載の飛行システム。
【請求項4】
前記候補エリアにおける過去の病害発症歴に基づいて前記優先度を設定する設定部を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の飛行システム。
【請求項5】
前記接触センシングデータにより示される値がどの程度閾値を超えてまたは下回っているかに応じて前記優先度が高まるように設定する設定部を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の飛行システム。
【請求項6】
基準となる位置から前記候補エリアまでの距離が長いほど低い前記優先度を設定する設定部を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の飛行システム。
【請求項7】
前記航空機に前記所定のタスクを実行させる制御部を更に含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の飛行システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記所定のタスクとして、前記航空機に空中から地表の非接触センシングを実行させることを特徴とする請求項7に記載の飛行システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記航空機の飛行高度を下げて前記非接触センシングを実行させ、当該非接触センシング後に前記航空機の飛行高度を上げて飛行させることを特徴とする請求項8に記載の飛行システム。
【請求項10】
前記非接触センシングの対象は、人が進入可能なエリアの地面から生えている植物であることを特徴とする請求項8または9に記載の飛行システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記所定のタスクとして、前記航空機に散布物の空中散布を実行させることを特徴とする請求項7に記載の飛行システム。
【請求項12】
1または複数のコンピュータにより実行される飛行経路決定方法であって、
地中に予め埋め込まれた接触センサにより行われる接触センシングであって、土壌と植物のうち少なくとも何れか1つのセンシング対象の接触センシングにより得られた接触センシングデータを取得するステップと、
前記接触センシングデータに基づいて所定のタスクが実行されるエリアの候補となる候補エリアの組み合わせを特定し、当該特定された候補エリアの組み合わせと、予め用意された複数の飛行経路の候補のうちの少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かを判定し、前記特定された候補エリアの組み合わせと、前記少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かの判定の結果に基づいて、前記予め用意された複数の飛行経路の候補から1の飛行経路を選択することで、無人で飛行可能な航空機が前記所定のタスクを実行するための飛行経路を決定するステップと、
を含むことを特徴とする飛行経路決定方法。
【請求項13】
地中に予め埋め込まれた接触センサにより行われる接触センシングであって、土壌と植物のうち少なくとも何れか1つのセンシング対象の接触センシングにより得られた接触センシングデータを取得する取得部と、
前記接触センシングデータに基づいて所定のタスクが実行されるエリアの候補となる候補エリアの組み合わせを特定し、当該特定された候補エリアの組み合わせと、予め用意された複数の飛行経路の候補のうちの少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かを判定し、前記特定された候補エリアの組み合わせと、前記少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かの判定の結果に基づいて、前記予め用意された複数の飛行経路の候補から1の飛行経路を選択することで、無人で飛行可能な航空機が前記所定のタスクを実行するための飛行経路を決定する決定部と、
を備えることを特徴とする飛行経路決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人で飛行可能な航空機が所定のタスクを実行するための飛行経路を決定するシステム等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌や土壌に植えられた植物の管理に無人で飛行可能な航空機を活用することが検討されている。例えば、特許文献1には、産業用無人ヘリコプタに搭載されたビデオカメラから圃場全体を撮影して画像と自然光の反射率を示すデータを取得し、一方で、その圃場の一部の土壌をサンプリングして熱水抽出性窒素を測定し、圃場全体の熱水抽出性窒素の分布マップを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-254711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような技術では、航空機のタスクとして対象となるエリア全体を撮影するため、エリアが広い場合には航空機の飛行時間が長時間となる場合があり、効率面で改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、より効率良く所定のタスクを航空機に実行させることが可能な飛行システム、飛行経路決定方法、及び飛行経路決定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、無人で飛行可能な航空機であって、飛行中に所定のタスクを実行する航空機と、地中に予め埋め込まれ、土壌と植物のうち少なくとも何れか1つのセンシング対象の接触センシングを行う接触センサと、前記接触センサが前記接触センシングを行うことにより得られた接触センシングデータに基づいて前記所定のタスクが実行されるエリアの候補となる候補エリアの組み合わせを特定し、当該特定された候補エリアの組み合わせと、予め用意された複数の飛行経路の候補のうちの少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かを判定し、前記特定された候補エリアの組み合わせと、前記少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かの判定の結果に基づいて、前記予め用意された複数の飛行経路の候補から1の飛行経路を選択することで、前記航空機が前記所定のタスクを実行するための飛行経路を決定する決定部と、を含むことを特徴とする。これにより、飛行経路を決定する際の処理量を低減し、決定された飛行経路に沿って、より効率良く所定のタスクを航空機に実行させることができる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の飛行システムにおいて、前記決定部は、前記候補エリアの組み合わせと、前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するまで、前記候補エリアを削減することを特徴とする。これにより、所定のタスクが実行される1または複数のエリアを効率良く特定することができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の飛行システムにおいて、前記決定部は、優先度が相対的に低い前記候補エリアを削減することを特徴とする。これにより、所定のタスクの実行をより必要とされる1または複数のエリアを特定することができる。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の飛行システムにおいて、前記候補エリアにおける過去の病害発症歴に基づいて前記優先度を設定する設定部を更に含むことを特徴とする。これにより、過去の病害発症歴の観点から所定のタスクの実行をより必要とされる1または複数のエリアを特定することができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の飛行システムにおいて、前記接触センシングデータにより示される値がどの程度閾値を超えてまたは下回っているかに応じて前記優先度が高まるように設定する設定部を更に含むことを特徴とする。これにより、接触センシングデータにより示される値の大きさの観点から所定のタスクの実行をより必要とされる1または複数のエリアを特定することができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の飛行システムにおいて、基準となる位置から前記候補エリアまでの距離が長いほど低い前記優先度を設定する設定部を更に含むことを特徴とする。これにより、航空機が所定のタスクを実行するための飛行により消費されるバッテリ消費量を抑えることができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の飛行システムにおいて、前記航空機に前記所定のタスクを実行させる制御部を更に含むことを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の飛行システムにおいて、前記制御部は、前記所定のタスクとして、前記航空機に空中から地表の非接触センシングを実行させることを特徴とする。
【0020】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の飛行システムにおいて、前記制御部は、前記航空機の飛行高度を下げて前記非接触センシングを実行させ、当該非接触センシング後に前記航空機の飛行高度を上げて飛行させることを特徴とする。これにより、非接触センシングの精度を高めることができる。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項またはに記載の飛行システムにおいて、前記非接触センシングの対象は、人が進入可能なエリアの地面から生えている植物であることを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項に記載の飛行システムにおいて、前記制御部は、前記所定のタスクとして、前記航空機に散布物の空中散布を実行させることを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の発明は、1または複数のコンピュータにより実行される飛行経路決定方法であって、地中に予め埋め込まれた接触センサにより行われる接触センシングであって、土壌と植物のうち少なくとも何れか1つのセンシング対象の接触センシングにより得られた接触センシングデータを取得するステップと、前記接触センシングデータに基づいて所定のタスクが実行されるエリアの候補となる候補エリアの組み合わせを特定し、当該特定された候補エリアの組み合わせと、予め用意された複数の飛行経路の候補のうちの少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かを判定し、前記特定された候補エリアの組み合わせと、前記少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かの判定の結果に基づいて、前記予め用意された複数の飛行経路の候補から1の飛行経路を選択することで、無人で飛行可能な航空機が前記所定のタスクを実行するための飛行経路を決定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0024】
請求項13に記載の発明は、地中に予め埋め込まれた接触センサにより行われる接触センシングであって、土壌と植物のうち少なくとも何れか1つのセンシング対象の接触センシングにより得られた接触センシングデータを取得する取得部と、前記接触センシングデータに基づいて所定のタスクが実行されるエリアの候補となる候補エリアの組み合わせを特定し、当該特定された候補エリアの組み合わせと、予め用意された複数の飛行経路の候補のうちの少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かを判定し、前記特定された候補エリアの組み合わせと、前記少なくとも1つの前記飛行経路の候補に対応するエリアの組み合わせとが一致するか否かの判定の結果に基づいて、前記予め用意された複数の飛行経路の候補から1の飛行経路を選択することで、無人で飛行可能な航空機が前記所定のタスクを実行するための飛行経路を決定する決定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、決定された飛行経路に沿って、より効率良く所定のタスクを航空機に実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】飛行システムSの概要構成例を示す図である。
図2】土壌センサユニット1の概要構成例を示す図である。
図3】ゴルフ場におけるグリーンG1~G18の地中に埋め込まれた土壌センサユニット1から電波が発信される様子を示す概念図である。
図4】UAV2の概要構成例を示す図である。
図5】制御部25における機能ブロック例を示す図である。
図6】管理サーバ3の概要構成例を示す図である。
図7】制御部33における機能ブロック例を示す図である。
図8】複数のセンシングエリアのそれぞれの接触センシングデータにより示される測定値と、センシングエリアにおけるタスク実行要否との関係の一例を示す図である。
図9】(A)は、候補エリアをグリーンとした場合における過去の病害発症歴の一例をグリーン別且つ年別に表した図であり、(B)は、(A)に示す病害発症歴に基づいてグリーン毎に設定された優先度を表した図である。
図10】(A)は、候補エリアをグリーンとした場合における過去の病害発症歴の一例をグリーン別且つ年別に表した図であり、(B)は、候補エリアをグリーンとした場合における重要度の一例をグリーン別に表した図であり、(C)は、(A)に示す病害発症歴と(B)に示す重要度とに基づいてグリーン毎に設定された優先度の一例を表した図である。
図11】実施例1における管理サーバ3の制御部33の処理の一例を示すフローチャートである。
図12】実施例2における管理サーバ3の制御部33の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
1.飛行システムSの構成
【0028】
先ず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る飛行システムSの構成について説明する。図1は、飛行システムSの概要構成例を示す図である。図1に示すように、飛行システムSは、土壌センサユニット1、無人航空機(以下、「UAV(Unmanned Aerial Vehicle)」と称する)2、及び管理サーバ3を含んで構成される。土壌センサユニット1は、地上に設置された中継局(リピータ)と通信可能になっている。中継局は、土壌センサユニット1から発信されたデータ(電波)を受信し、通信ネットワークNWを介して管理サーバ3へ転送可能になっている。UAV2は、管理サーバ3との間で通信ネットワークNWを介して互いに通信可能になっている。通信ネットワークNWは、例えば、インターネット、移動体通信ネットワーク及びその無線基地局等から構成される。
【0029】
なお、UAV2は、無人で飛行可能な航空機の一例であり、ドローン、またはマルチコプタとも呼ばれる。UAV2は、地上からオペレータによる遠隔操縦に従って飛行、または自律的に飛行することが可能になっている。また、UAV2は、GCS(Ground Control Station)により管理される。GCSは、例えば、アプリケーションとしてオペレータにより操作される操縦端末に搭載されてもよいし、管理サーバ3などのサーバにより構成されてもよい。
【0030】
1-1.土壌センサユニット1の構成及び機能
次に、図2を参照して、土壌センサユニット1の構成及び機能について説明する。図2は、土壌センサユニット1の概要構成例を示す図である。図2に示すように、土壌センサユニット1は、接触センサ11、及びデータ発信部12等を備え、所定のエリア(以下、「センシングエリア」という)の地中に予め埋め込まれる(つまり、土壌センサユニット1が予め配置された状態で飛行システムSが稼働する)。土壌センサユニット1は、複数のセンシングエリアのそれぞれの地中に予め埋め込まれてもよい。また、土壌センサユニット1は、1つのセンシングエリアに一定間隔または不定間隔で予め複数埋め込まれてもよい。センシングエリアは、ゴルフ場や球技場などの維持管理の要するエリアである。地面から生えている植物の手入れが特に重要となるエリア(例えば、人が進入可能なエリア)をセンシングエリアとするとよい。このようなセンシングエリアの例として、ゴルフ場におけるグリーンが挙げられる。この場合、例えば、ゴルフ場の18ホールのそれぞれのグリーンに土壌センサユニット1が予め埋め込まれる。
【0031】
接触センサ11は、センシングエリアにおける土壌と植物(例えば植物の根)のうち少なくとも何れか1つのセンシング対象の接触センシングを行う。ここで、接触センシングとは、例えば接触センサ11が接触しているセンシング対象の水分量(含水率)、温度、塩分濃度、電気伝導度、及び酸性度などのうち少なくとも何れか1つを測定することをいう。かかる接触センシングは、時系列で連続的に行われるとよく、当該接触センシングの時間間隔は、一定間隔であってもよいし、不定間隔であってもよい。なお、接触センサ11が接触しているセンシング対象の近接範囲(例えば、接触センサ11が接触していない数cm~数十cmの範囲)の水分量、温度、塩分濃度、電気伝導度、及び酸性度などのうち少なくとも何れか1つが測定されてもよい。接触センシング可能な範囲は、土壌センサユニット1が埋め込まれた地点及びその近接範囲である。そのため、1つの土壌センサユニット1により接触センシング可能な範囲は、基本的にセンシングエリアより狭い範囲となる。
【0032】
データ発信部12は、接触センサ11が接触センシングを行うことにより得られた接触センシングデータと、土壌センサユニット1のセンサIDとを変調し、接触センシングデータ及びセンサIDを搬送する電波を発信(例えば、920MHz帯域を利用)する。ここで、接触センシングデータは、上述したように測定された水分量、温度、塩分濃度、電気伝導度、及び酸性度などのうち少なくとも何れか1つを示す測定データである。センサIDは、土壌センサユニット1を識別可能な識別情報であり、土壌センサユニット1内に予め記憶される。なお、センサIDは、土壌センサユニット1の位置(緯度及び経度)を示す位置情報であってもよい。この場合、位置情報は、例えば地中に埋められる際などに予め測定され土壌センサユニット1内に予め記憶される。
【0033】
接触センシングデータ及びセンサIDを含む電波の発信は、時系列で連続的に行われるとよく、当該発信の時間間隔は、一定間隔であってもよいし、不定間隔であってもよい。図3は、ゴルフ場におけるグリーンG1~G18の地中に埋め込まれた土壌センサユニット1から電波が発信される様子を示す概念図である。図3の例では、グリーンG1~G18のそれぞれに埋め込まれた土壌センサユニット1から発信された接触センシングデータ等(電波)は、それぞれの土壌センサユニット1と通信可能範囲内にある中継局及び通信ネットワークNWを介して管理サーバ3へ送信される。なお、データ発信部12は、中継局を介さずに、移動体通信ネットワークの無線基地局と通信可能に構成されてもよい。
【0034】
1-2.UAV2の構成及び機能
次に、図4及び図5を参照して、UAV2の構成及び機能について説明する。図4は、UAV2の概要構成例を示す図である。図4に示すように、UAV2は、駆動部21、無線通信部22、センサ部23、測位部24、及び制御部25等を備える。なお、図示しないが、UAV2は、水平回転翼であるロータ(プロペラ)、及びUAV2の各部へ電力を供給するバッテリを備える。さらに、UAV2には、センシングエリアにおいて散布物を空中散布するための散布機構が備えられてもよい。散布物の例として、水、薬剤、肥料等が挙げられる。かかる散布物は、例えば散布機構に設けられたタンクに蓄えられる。駆動部21は、モータ及び回転軸等を備える。駆動部21は、制御部25から出力された制御信号に従って駆動するモータ及び回転軸等により複数のロータを回転させる。無線通信部22は、通信ネットワークNWを介して管理サーバ3との間で行われる通信の制御を担う。
【0035】
センサ部23は、UAV2の飛行制御のために必要な各種センサを備える。各種センサには、光学センサ、バッテリセンサ、3軸角速度センサ、3軸加速度センサ、及び地磁気センサ等が含まれる。センサ部23により検出された検出データは、制御部25へ出力される。光学センサは、例えばカメラ(RGBカメラや赤外線カメラ)により構成され、空中からセンシングエリアにおける地表の非接触センシングを行うためにも用いられる。ここで、非接触センシングとは、非接触センシング可能な範囲(例えばカメラの画角に収まる範囲)内の地表を撮像することにより地表の状態(状況)を観測することをいう。かかる非接触センシングは、例えばUAV2のセンシングエリアに到着したときに1回以上行われる。なお、非接触センシングの精度を高めるためには、時系列で連続的に行われるとよく、当該非接触センシングの時間間隔は、一定間隔であってもよいし、不定間隔であってもよい。
【0036】
バッテリセンサは、UAV2のバッテリ消費量とバッテリ残量との少なくとも何れか一方を監視するためのセンサである。バッテリ消費量とバッテリ残量との少なくとも何れか一方は、時間経過に伴い連続的に複数回検出される。バッテリ消費量とバッテリ残量との少なくとも何れか一方が検出される時間間隔は、一定間隔であってもよいし、不定間隔であってもよい。バッテリセンサにより検出されたバッテリ消費量とバッテリ残量との少なくとも何れか一方を示すバッテリ情報は、制御部25へ時系列で出力される。
【0037】
測位部24は、電波受信機及び高度センサ等を備える。測位部24は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)の衛星から発信された電波を電波受信機により受信し、当該電波に基づいてUAV2の水平方向の現在位置(緯度及び経度)を検出する。UAV2の現在位置は、飛行中のUAV2の飛行位置である。なお、UAV2の水平方向の現在位置は、光学センサにより撮像された画像や上記無線基地局から発信された電波に基づいて補正されてもよい。測位部24により検出された現在位置を示す位置情報は、制御部25へ出力される。さらに、測位部24は、気圧センサ等の高度センサによりUAV2の垂直方向の現在位置(高度)を検出してもよい。この場合、位置情報には、UAV2の高度を示す高度情報が含まれる。
【0038】
制御部25は、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び不揮発性メモリ等を備える。図5は、制御部25における機能ブロック例を示す図である。制御部25は、例えばROMまたは不揮発性メモリに記憶されたプログラム(プログラムコード群)に従って、図5に示すように、タスク制御部25a、及び飛行制御部25bとして機能する。なお、制御部25は、UAV2が所定のタスクを実行するために飛行を開始する前に、バッテリセンサからのバッテリ情報、及び機体IDを、無線通信部22に管理サーバ3(またはGCSを介して管理サーバ3)へ送信させるとよい。機体IDは、UAV2を識別可能な識別情報である。また、制御部25は、UAV2が飛行中、UAV2の位置情報、及び機体IDを、無線通信部22に管理サーバ3(またはGCSを介して管理サーバ3)へ逐次送信させる。
【0039】
タスク制御部25aは、UAV2が所定のタスクを実行するように制御する。例えば、タスク制御部25aは、所定のタスクとして、空中からセンシングエリアにおける地表の非接触センシングをセンサ部23に実行させる。或いは、タスク制御部25aは、所定のタスクとして、センシングエリアにおいて散布物の空中散布を散布機構に実行させてもよい。タスクとして非接触センシングが実行される場合、タスク制御部25aは、UAV2の飛行高度を下げて非接触センシングを実行させ、当該非接触センシング後にUAV2の飛行高度を上げて飛行させるように制御するとよい。これにより、非接触センシングの精度を高めることができる。そして、非接触センシングにより得られた非接触センシングデータは、無線通信部22により管理サーバ3へ送信される。ここで、非接触センシングデータは、センサ部23から出力された生の検出データであってもよいし、当該出力された生の検出データに基づいて解析処理されたデータであってもよい。かかる非接触センシングデータは、例えば、センシングエリアにおける地表のRGB画像、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)分布画像、及びサーマル画像(温度部分画像)などのうち少なくとも1つのマップ画像を構成するデータである。
【0040】
なお、NDVIとは、人が進入可能なセンシングエリアの地面から生えている植物の健康状態と、可視域から近赤外域の各波長の反射率との関係を示す値である。例えば、植物は可視域の電波を吸収する一方、近赤外域の電波を強く反射する特性を持つので、NDVI値が高いほど健康な状態であることを意味する。上記マップ画像における各画素値(例えば、RGB値、NDVI値、または温度に相当し、これらは測定値である)には、位置情報が対応付けられる。かかる位置情報(つまり、非接触センシングデータにおける位置情報)は、例えば、UAV2の水平方向の現在位置を示す位置情報、及びSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)処理(マップ生成と自己位置推定を同時に行う処理)により特定される。
【0041】
飛行制御部25bは、UAV2の飛行制御を実行する。飛行制御においては、センサ部23からの検出データ、測位部24からの位置情報、及び上記タスクを実行するための飛行経路を示す飛行経路情報等が用いられて、ロータの回転数の制御、UAV2の位置、姿勢及び進行方向の制御が行われる。ここで、飛行経路情報は、例えば管理サーバ3から取得される。飛行制御部25bは、飛行経路情報に示される飛行経路に沿ってUAV2をセンシングエリアへ遠隔操縦または自律的に飛行させることができる。なお、UAV2の自律的な飛行は、飛行制御部25bが飛行制御を行うことによる自律飛行に限定されるものではなく、当該UAV2の自律的な飛行には、例えば飛行システムS全体として飛行制御を行うことによる自律飛行も含まれる。
【0042】
1-3.管理サーバ3の構成及び機能
次に、図6及び図7を参照して、管理サーバ3の構成及び機能について説明する。図6は、管理サーバ3の概要構成例を示す図である。図6に示すように、管理サーバ3は、通信部31、記憶部32、及び制御部33等を備える。通信部31は、通信ネットワークNWを介して土壌センサユニット1の中継局、及びUAV2のそれぞれとの間で行われる通信の制御を担う。中継局から送信された接触センシングデータは通信部31により受信される。記憶部32は、例えば、ハードディスクドライブ等を備える。記憶部32には、センシングエリアデータベース(DB)32aが設けられる。
【0043】
センシングエリアデータベース32aには、エリア情報、センサID、及び接触センシングデータがセンシングエリア毎に対応付けられて格納される。ここで、エリア情報は、例えば、センシングエリアの名称、及びセンシングエリアの位置を示す位置情報が含まれる。センシングエリアが、例えばゴルフ場におけるグリーンである場合、センシングエリアの名称は、例えばホール名(例えば、1番ホール)で表される。エリア情報に対応付けられたセンサIDは、当該エリア情報により示されるセンシングエリアの地中に埋め込まれた土壌センサユニット1のセンサIDである。センシングエリアに複数の土壌センサユニット1が埋め込まれている場合、それぞれの土壌センサユニット1のセンサIDがエリア情報に対応付けられる。接触センシングデータには、上述したように、センシング対象の水分量、温度、塩分濃度、電気伝導度、及び酸性度などのうち少なくとも何れか1つの測定値を示す。
【0044】
なお、センシングエリアデータベース32aには、センシングエリア(例えば、グリーン)における過去の病害発症歴がエリア情報に対応付けられて格納されてもよい。病害発症歴には、病害名及び発生日時が含まれる。また、センシングエリアデータベース32aには、センシングエリアの管理者等による裁量(例えば、経験則)に基づいて決定された重要度がエリア情報に対応付けられて格納されてもよい。例えば、地形上、水はけが悪いセンシングエリアや、風通しが悪いセンシングエリアの重要度は高く決定される。病害発症歴及び重要度は、複数のセンシングエリアにおける各センシングエリアの優先度(例えば、タスクを実行させる優先順位)を設定するために用いられる。
【0045】
制御部33は、プロセッサであるCPU、ROM、RAM、及び不揮発性メモリ等を備える。図7は、制御部33における機能ブロック例を示す図である。制御部33は、例えばROMまたは不揮発性メモリに記憶されたプログラム(プログラムコード群)に従って、図7に示すように、センシングデータ取得部33a、飛行経路決定部33b(決定部の一例)、優先度設定部33c(設定部の一例)、及び航空機制御部33d等として機能する。
【0046】
センシングデータ取得部33aは、土壌センサユニット1から発信された接触センシングデータ及びセンサIDを、通信部31を介して取得し、センシングエリアデータベース32aにエリア情報に対応付けて格納する。
【0047】
飛行経路決定部33bは、センシングデータ取得部33aにより取得された接触センシングデータに基づいて、UAV2が所定のタスクを実行するための飛行経路を決定する。例えば、接触センシングデータにより示される測定値と閾値との比較結果に基づいてタスク実行条件を満たす測定値を提供(発信)した土壌センサユニット1の位置(或いは、その近傍範囲)を通る飛行経路が決定される。ここで、閾値は、センシング対象の水分量や温度等の種類に応じて予め設定される。タスク実行条件を満たすとは、例えば、測定値が閾値を超えること、または測定値が閾値を下回ることを意味する。なお、飛行経路の決定にあたり、公知の種々観点が考慮されてもよい。例えば、UAV2の移動距離、UAV2のバッテリ消費量、及びUAV2の飛行所要時間等のいくつかの観点のうち、少なくとも1つの観点において、より好ましい飛行経路が決定されてもよい。
【0048】
また、UAV2が飛行経路に沿って飛行する過程において、当該UAV2のバッテリに充電(例えば、空中充電等)されてもよいし、当該バッテリに充電されなくてもよい。後者の場合、1回の飛行で所定のタスクが実行されるため、UAV2の飛行キャパシティ(換言すると、UAV2のバッテリ残量)に応じた飛行経路が決定される必要がある。ここで、UAV2のバッテリ残量は、UAV2のバッテリ容量(つまり、フル充電の場合のバッテリ残量)からUAV2のバッテリ消費量を差し引いた量である。なお、ここでのバッテリ消費量は、現時点までに消費されたバッテリの消費量である。
【0049】
この場合、飛行経路決定部33bは、タスク実行条件を満たす測定値を提供した土壌センサユニット1を複数特定し、UAV2のバッテリ残量に基づいて、UAV2が所定のタスクを実行するための飛行経路を決定する。これにより、決定された飛行経路に沿って、UAV2の1回の飛行で、より効率良く所定のタスクをUAV2に実行させることができる。例えば、UAV2のバッテリ残量に応じた飛行経路となるように、複数の土壌センサユニット1から特定された1または複数の土壌センサユニット1の位置(或いは、その近傍範囲)を通る飛行経路が決定される。なお、UAV2のバッテリ消費量とバッテリ残量との少なくとも何れか一方を示すバッテリ情報は、当該UAV2から取得されてもよいし、所定のタスクを実行させる管理者側から取得されてもよい。
【0050】
また、飛行経路決定部33bは、先ず、センシングデータ取得部33aにより取得された接触センシングデータに基づいて、所定のタスクが実行されるセンシングエリア(つまり、所定のタスク実行を要するエリア)を1または複数特定し、次に、当該特定された1または複数のセンシングエリアに基づいて、UAV2が所定のタスクを実行するための飛行経路を決定してもよい。これにより、決定された飛行経路に沿って、1または複数のセンシングエリアにおいて、より効率良く所定のタスクをUAV2に実行させることができる。例えば、複数のセンシングエリアのそれぞれの接触センシングデータにより示される測定値と閾値との比較結果に基づいてタスク実行条件を満たすセンシングエリアが、所定のタスクが実行されるセンシングエリアとして1または複数特定され、続いて、当該特定されたセンシングエリアを通る飛行経路が決定される。ここで、特定されたセンシングエリアが複数である場合、飛行経路には、センシングエリアへ向かう順番も含まれる。
【0051】
図8は、複数のセンシングエリアのそれぞれの接触センシングデータにより示される測定値と、センシングエリアにおけるタスク実行要否との関係の一例を示す図である。図8に示す例では、水分量(測定値)が閾値(5%)を下回るセンシングエリアNo.2と、温度(測定値)が閾値(18°C)を超えるセンシングエリアNo.3とがタスク(例えば、非接触センシング)実行要として特定され、当該特定されたセンシングエリアNo.2及びNo.3を通る飛行経路が決定される。なお、複数種類の測定値(例えば、水分量と温度)の全てのタスク実行条件を満たすセンシングエリアがタスク実行要として決定されてもよい。
【0052】
また、飛行経路決定部33bは、センシングデータ取得部33aにより取得された接触センシングデータに基づいて、所定のタスクが実行されるセンシングエリアの候補となる候補エリアを複数特定してもよい。この場合、飛行経路決定部33bは、上記特定された複数の候補エリアにおいて所定のタスクを実行するための飛行経路をUAV2が飛行する場合におけるUAV2のバッテリ消費量と、UAV2のバッテリ残量との比較結果に基づいて、所定のタスクが実行される1または複数のセンシングエリアを特定する。なお、ここでのバッテリ消費量は、飛行経路を飛行するために推定される推定バッテリ消費量である。
【0053】
例えば、飛行経路決定部33bは、複数の候補エリアにおいて所定のタスクを実行するための飛行経路を飛行する場合におけるバッテリ消費量がバッテリ残量よりも小さくなるまで候補エリアを削減することにより、最終的にセンシングエリアを特定する。これにより、所定のタスクが実行される1または複数のセンシングエリアを効率良く特定することができる。ここで、優先度設定部33cにより設定された優先度が相対的に低い候補エリアが優先的に削減されるとよい。これにより、所定のタスクの実行をより必要とされるセンシングエリアを特定することができる。そして、飛行経路決定部33bは、最終的に特定された1または複数のセンシングエリアに基づいて、UAV2が所定のタスクを実行するための飛行経路を決定する。
【0054】
別の例として、飛行経路決定部33bは、センシングデータ取得部33aにより取得された接触センシングデータに基づいて、予め用意された複数の飛行経路の候補から1の飛行経路を選択することで、UAV2が所定のタスクを実行するための飛行経路を決定してもよい。この場合、飛行経路決定部33bは、センシングデータ取得部33aにより取得された接触センシングデータに基づいて、所定のタスクが実行されるセンシングエリアの候補となる候補エリアを1または複数特定し、当該特定された1または複数の候補エリアと、少なくとも1つの飛行経路の候補に対応する(つまり、構成する)1または複数のセンシングエリアとの比較結果に基づいて、上記1の飛行経路を選択する。これにより、飛行経路を決定する際の処理量を低減することができる。例えば、飛行経路決定部33bは、1または複数の候補エリアと、飛行経路の候補に対応する1または複数のセンシングエリアとが一致するまで候補エリアを削減することにより、最終的に1つの飛行経路を選択する。この場合も、優先度設定部33cにより設定された優先度が相対的に低い候補エリアが優先的に削減されるとよい。
【0055】
優先度設定部33cは、所定のタスクが実行されるセンシングエリアの候補となる各候補エリアの優先度を設定する。例えば、優先度設定部33cは、各候補エリアにおける過去の病害発症歴に基づいて、各候補エリアの優先度を設定する。これにより、過去の病害発症歴の観点から所定のタスクの実行をより必要とされるセンシングエリアを特定することができる。図9(A)は、候補エリアをグリーンとした場合における過去の病害発症歴の一例をグリーン別且つ年別に表した図であり、図9(B)は、図9(A)に示す病害発症歴に基づいてグリーン毎に設定された優先度を表した図である。図9(A)の例では、UAV2の飛行日(例えば、2020年6月1日)の前後x日(例えば、15日)の範囲の時期と同時期の過去の病害発症有無(例えば、黒丸が病害発症有を示す)をグリーン別且つ年別(2015年~2019年)に表している。ここで、図9(A)において、2019年の病害発症有を5点とし、2019年から1年遡る毎に1点減るようにした場合において、2015年から2019年までの点数がグリーン毎に集計されることで、図9(B)に示すように、それぞれのグリーンの優先順位付けがなされて優先度が設定される。なお、図9(B)の例では、優先度が“1”が最も優先度が高い。
【0056】
また、優先度設定部33cは、所定のタスクが実行されるセンシングエリアの候補となる各候補エリアにおける過去の病害発症歴に加えて、管理者等による裁量に基づいて決定された重要度に基づいて、各候補エリアの優先度を設定してもよい。図10(A)は、候補エリアをグリーンとした場合における過去の病害発症歴の一例をグリーン別且つ年別に表した図であり(図9(A)と同様)、図10(B)は、候補エリアをグリーンとした場合における重要度の一例をグリーン別に表した図であり、図10(C)は、図10(A)に示す病害発症歴と図10(B)に示す重要度とに基づいてグリーン毎に設定された優先度の一例を表した図である。ここで、図10(A)において、2019年の病害発症有を5点とし、2019年から1年遡る毎に1点減るようにし、図10(B)において、重要度「高」を3点とし、重要度「中」を2点とし、重要度「低」を1点とした場合において、2015年から2019年までの点数がグリーン毎に集計(過去の病害発症有の点数と、重要度に応じた点数との合計)されることで、図10(C)に示すように、それぞれのグリーンの優先順位付けがなされて優先度が設定される。
【0057】
また、優先度設定部33cは、センシングデータ取得部33aにより取得された接触センシングデータにより示される測定値に応じて変化する上記優先度を設定してもよい。つまり、接触センシングデータにより示される測定値が、どの程度閾値を超えて(または、下回って)いるかに応じて、候補エリアの優先度が高まるように設定される。例えば、温度が閾値を1度超える毎に優先度(スコア)が1高くなるように設定される。また、水分量が閾値を1%下回る毎に優先度(スコア)が1高くなるように設定される。これにより、測定値と閾値の差分が大きいセンシングエリアほど、詳細調査のための非接触センシングや水散布等のタスクを優先的に行うことができる。
【0058】
また、優先度設定部33cは、基準となる位置から候補エリアまでの距離が長いほど低い優先度を設定してもよい。ここで、基準となる位置とは、UAV2の飛行の始点(離陸地点)、または終点(着陸地点)の何れか(始点と終点が同一の場合もありうる)であってもよい。これにより、UAV2が所定のタスクを実行するための飛行により消費されるバッテリ消費量を抑えることができる。
【0059】
航空機制御部33dは、飛行経路決定部33bにより決定された飛行経路を示す飛行経路情報を含む制御情報を通信部31にUAV2へ送信させる。かかる制御情報には、UAV2に所定のタスクを実行させる制御指令が含まれてもよい。この場合、制御情報には、上記飛行経路情報に加えて、UAV2に非接触センシングを実行させる制御指令、またはUAV2に散布物の空中散布を実行させる制御指令が含まれる。
【0060】
2.飛行システムSの動作
次に、飛行システムSの動作について、実施例1と実施例2に分けて説明する。
【0061】
(実施例1)
先ず、図11を参照して、飛行システムSの動作の実施例1について説明する。図11は、実施例1における管理サーバ3の制御部33の処理の一例を示すフローチャートである。実施例1は、所定のタスクが実行されるセンシングエリアが特定される場合の実施例である。
【0062】
図11に示す処理が開始されると、制御部33は、タスク実行条件を判定するための閾値(例えば、水分量と温度の閾値)を設定する(ステップS1)。次いで、制御部33は、センシングエリアデータベース32aを参照し、複数のセンシングエリアのそれぞれの接触センシングデータにより示される測定値と、ステップS1で設定された閾値とを比較し、その比較結果に基づいてタスク実行条件を満たすセンシングエリアを、上述した候補エリアとして特定する(ステップS2)。ここでは、複数の候補エリアが特定されるものとする。
【0063】
次いで、制御部33は、ステップS2で特定された候補エリアを通る最適な飛行経路を算出する(ステップS3)。次いで、制御部33は、ステップS3で決定された飛行経路に基づいて、UAV2の飛行キャパシティを超えるか(つまり、1回の飛行で十分にタスクを実行することが可能か)否かを判定する(ステップS4)。例えば、決定された飛行経路をUAV2が飛行する場合におけるUAV2のバッテリ消費量(つまり、飛行経路を飛行するために推定される推定バッテリ消費量)と、UAV2のバッテリ残量とが比較され、その比較結果、当該バッテリ消費量が当該バッテリ残量を超える場合には、UAV2の飛行キャパシティを超えると判定される。
【0064】
そして、制御部33は、UAV2の飛行キャパシティを超えないと判定した場合(ステップS4:NO)、ステップS3で算出された飛行経路を決定し(ステップS5)、ステップS7へ進む。一方、制御部33は、UAV2の飛行キャパシティを超えると判定した場合(ステップS4:YES)、ステップS2で特定された候補エリアのうち、優先度が最も低い候補エリアを削除(つまり、削減)し(ステップS6)、ステップS3に戻る。
【0065】
なお、候補エリアの優先度は、優先度設定部33cにより、図11に示す処理の開始前に設定されてもよいし、ステップS6において設定されてもよい。或いは、ステップS6において、候補エリアの優先度が用いられなくてもよい。この場合、制御部33は、ステップS2で特定された候補エリアのうち、例えばランダムで1つ候補エリアを削除してもよい。
【0066】
ステップS3に戻ると、制御部33は、ステップS6で削除された候補エリアを除いてステップS2で特定された候補エリアを通る最適な飛行経路を算出し、続いて、ステップS4の処理を行う。こうして、飛行経路を飛行する場合におけるバッテリ消費量がバッテリ残量以下になるまで候補エリアが削減されることになる。
【0067】
ステップS7では、制御部33は、ステップS5で決定された飛行経路を示す飛行経路情報を含む制御情報を通信部31にUAV2へ送信させる。こうして送信された制御情報を受信したUAV2は、飛行経路情報に示される飛行経路に沿って飛行し、当該飛行経路上にあるセンシングエリアにおいて所定のタスクを実行する。例えば、タスクとして非接触センシングが実行される場合、UAV2は、飛行高度を下げて非接触センシングを実行し、当該非接触センシング後に飛行高度を上げて飛行する。
【0068】
なお、UAV2の非接触センシングにより得られた非接触センシングデータはUAV2から管理サーバ3に送信される。これにより、管理サーバ3は、非接触センシングデータに基づいて、土壌センサユニット1による接触センシングとは別の観点から、センシング対象の状態を推定することができる。例えば、非接触センシングデータから特定される植物(茎または葉)のRGB値、NDVI値、及び温度のうち少なくとも何れか1つから、当該植物のその時の状態として当該植物の良悪(土壌の良悪とも言える)が推定される。そして、当該推定された状態に基づいて、センシング対象へ施されるべき処置として、例えば散布物の空中散布が決定される。
【0069】
(実施例2)
次に、図12を参照して、飛行システムSの動作の実施例2について説明する。図12は、実施例2における管理サーバ3の制御部33の処理の一例を示すフローチャートである。実施例2は、実施例1と同様、所定のタスクが実行されるセンシングエリアが特定される場合の実施例である。ただし、実施例2は、複数の飛行経路の候補が予め用意される点で実施例1とは異なる。例えば、飛行キャパシティを超えないセンシングエリアの組み合わせが予め全て特定され、当該特定された組み合わせに応じた飛行経路の候補が用意される。
【0070】
ここで、センシングエリアの組み合わせには、風向き等が考慮されることで、センシングエリアへ向かう順序が含まれてもよい。例えば、風向きによっては、UAV2がセンシングエリアNo.1からセンシングエリアNo.2へ向かう場合には飛行キャパシティを超える一方、UAV2がセンシングエリアNo.2からセンシングエリアNo.1へ向かう場合には飛行キャパシティを超えない場合もある。また、センシングエリアの組み合わせは、当該センシングエリアが1つのみであってもよい。なお、飛行経路の候補は、コンピュータにより算出されてもよいし、人により経験的に特定されてもよい。
【0071】
図12に示す処理が開始されると、制御部33は、タスク実行条件を判定するための閾値(例えば、水分量と温度の閾値)を設定する(ステップS21)。次いで、制御部33は、センシングエリアデータベース32aを参照し、複数のセンシングエリアのそれぞれの接触センシングデータにより示される測定値と、ステップS21で設定された閾値とを比較し、その比較結果に基づいてタスク実行条件を満たすセンシングエリアを、上述した候補エリアとして特定する(ステップS22)。なお、ここでは、複数の候補エリアが特定されるものとする。
【0072】
次いで、制御部33は、ステップS22で特定された候補エリアの組み合わせを特定する(ステップS23)。ここで、センシングエリアの組み合わせには、センシングエリアへ向かう順序が含まれてもよい。例えば、特定された候補エリアの組み合わせとして、「No.2→No.3→No.4」が特定される。或いは、特定された候補エリアの複数の組み合わせとして、「No.2→No.3→No.4」、「No.3→No.2→No.4」、「No.4→No.3→No.2」・・・が特定されてもよい。
【0073】
次いで、制御部33は、ステップS23で特定された、候補エリアの組み合わせと、予め用意された少なくとも1つの飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせとを比較し、その比較結果に基づいて、当該候補エリアの組み合わせが、飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせと一致するか否かを判定する(ステップS24)。
【0074】
そして、制御部33は、候補エリアの組み合わせが、飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせと一致すると判定した場合(ステップS24:YES)、一致すると判定された飛行経路の候補を選択することで飛行経路を決定し(ステップS25)、ステップS27へ進む。一方、制御部33は、候補エリアの組み合わせが、飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせと一致しないと判定した場合(ステップS24:NO)、ステップS22で特定された候補エリアのうち、実施例1と同様に設定された優先度が最も低い候補エリアを削除、または、ランダムで候補エリアを1つ削除し(ステップS26)、ステップS24に戻る。
【0075】
なお、候補エリアの組み合わせが複数特定された場合において、ある組み合わせが飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせと一致しないと判定された場合(ステップS24:NO)、まだ判定されていない残りの組み合わせが飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせと一致するか否かが判定されてもよい。この場合、ステップS23で特定された全ての組み合わせが飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせと一致しないと判定された場合に限り、ステップS26に移行して候補エリアが削除され、ステップS24に戻る。
【0076】
ステップS24に戻ると、制御部33は、ステップS26で削除された候補エリアを除いてステップS23で特定された、候補エリアの組み合わせが、飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせの何れかと一致するか否かを判定する。こうして、候補エリアの組み合わせと、飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせとが一致するまで候補エリアを削減される。
【0077】
例えば、予め用意された飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせが、「No.4→No.2→No.3」、「No.2→No.4→No.3」、「No.3→No.4→No.2」、「No.4→No.2」、「No.2→No.4」、「No.4→No.3」、「No.3→No.4」、「No.2→No.3」、「No.3→No.2」、「No.4」、「No.2」、及び「No.3」とし、候補エリアの組み合わせが「No.2→No.3→No.4」であるとすると、一巡目のステップS24では一致しないと判定される(ただし、候補エリアの組み合わせが1つである場合を想定)。そのため、ステップS26において、候補エリアNo.2、No.3、及びNo.4のうち、何れかの候補エリアが削除されるが、仮に候補エリアNo.4が削除された場合、二巡目のステップS24では、飛行経路の候補に対応するセンシングエリアの組み合わせ「No.2→No.3」と一致すると判定される。
【0078】
なお、ステップS26において、候補エリアが削除されることで最終的に1つの候補エリアが残った場合にもなお、ステップS24で一致しないと判定されることが考えられる。この場合、所定のタスクが実行されるべきセンシングエリアがない(該当なし)として処理を終了するか、或いは、ステップS23に戻って閾値を設定し直すことで新たなセンシングエリアの組み合わせが特定され、ステップS24以降の処理が行われてもよい。ステップS27は、実施例1におけるステップS7と同様である。
【0079】
以上説明した実施例2は、特にUAV2のバッテリ容量があまり多くない場合に実施例1よりも有効である。実施例2では、飛行キャパシティを超えないセンシングエリアのN個の組み合わせ(つまり、N個の飛行経路の候補)を予め用意するための負担があるものの、飛行経路の算出及びバッテリ消費量の推定を行わなくてよい分、実施例1よりも、飛行経路を決定する際の処理量を低減することができる。
【0080】
以上説明したように、上記実施形態によれば、飛行システムSは、地中に予め埋め込まれた土壌センサユニット1の接触センシングにより得られた接触センシングデータを取得し、当該接触センシングデータに基づいてUAV2が所定のタスクを実行するための飛行経路を決定するように構成したので、決定された飛行経路に沿って、より効率良く所定のタスクをUAV2に実行させることができる。これにより、センシングエリアにおける土壌や植物の管理をより効率良く行うことができる。
【0081】
なお、上記実施形態は本発明の一実施形態であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態から種々構成等に変更を加えてもよく、その場合も本発明の技術的範囲に含まれる。上記実施形態においては、管理サーバ3が、土壌センサユニット1の接触センシングにより得られた接触センシングデータに基づいて所定のタスクを実行するための飛行経路を決定する場合を例にとって説明したが、UAV2の制御部25が上記接触センシングデータを取得し、当該接触センシングデータに基づいて所定のタスクを実行するための飛行経路を決定するように構成してもよい。また、上記実施形態においては、無人で飛行可能な航空機として無人航空機を例にとって説明したが、無人で飛行可能な航空機は、機内に操縦者(パイロット)が存在しなくても飛行することができる有人航空機に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 土壌センサユニット
2 UAV
3 管理サーバ
11 接触センサ
12 データ発信部
21 駆動部
22 無線通信部
23 センサ部
24 測位部
25 制御部
25a タスク制御部
25b 飛行制御部
31 通信部
32 記憶部
33 制御部
33a センシングデータ取得部
33b 飛行経路決定部
33c 優先度設定部
33d 航空機制御部
S 飛行システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12