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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】標的免疫寛容
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20221027BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221027BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221027BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K47/68
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/42
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61P37/02
A61P37/06
A61P43/00 107
A61P43/00 105
A61P1/04
A61P29/00
A61P1/16
A61P3/10
A61P5/50
A61K39/395 D
A61K39/395 U
C12N15/13
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020500017
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018022675
(87)【国際公開番号】W WO2018170288
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/471,509
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519333273
【氏名又は名称】パンディオン・オペレーションズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン・エル・ヴィニー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・ヒギンソン-スコット
(72)【発明者】
【氏名】マイカー・ベンソン
(72)【発明者】
【氏名】アラン・クレイン
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0056521(US,A1)
【文献】国際公開第2005/067620(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/149201(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端に、以下の式を有する治療化合物であって、
鎖1:[VH1-CH1]-[CH2-CH3]-リンカーA-scFv;
鎖2:[VH1-CH1]-[CH2-CH3]-リンカーA-scFv;
鎖3:[VL1-CL];及び
鎖4:[VL1-CL]
式中、鎖1及び2は、互いに同一であり、鎖3及び4は、互いに同一であり;
式中、鎖1は、鎖2とホモ二量体を形成し、鎖3及び4は、鎖1及び鎖2の各VH1-CH1ドメインと会合して2つの機能性Fabユニットを形成し;
式中、CH2-CH3はFc領域を含み;
式中、各Fabユニットは、抗PD-1アゴニスト抗体であり、各scFvユニットは、MAdCAMに結合するscFVであり;
式中、各scFvユニットは、式5’-VL2-リンカーB-VH2-3’、または式5’-VH2-リンカーB-VL2-3’を有し;
式中、リンカーA及びリンカーBは、それぞれ独立して、ペプチドリンカーである
前記治療化合物。
【請求項2】
FabユニットがFabまたはscFabである、請求項1に記載の治療化合物。
【請求項3】
ペプチドリンカーが、グリシン、セリン、またはアラニンアミノ酸残基を含む、請求項1または2に記載の治療化合物。
【請求項4】
ペプチドリンカーがグリシン/セリンリンカーである、請求項1または2に記載の治療化合物。
【請求項5】
ポリペプチドを含む治療化合物であって、該ポリペプチドが、N末端からC末端に、以下の式を有するポリペプチドからなり、
鎖1:[VH1-CH1]-[CH2-CH3]-リンカーA-scFv;
鎖2:[VH1-CH1]-[CH2-CH3]-リンカーA-scFv;
鎖3:[VL1-CL];及び
鎖4:[VL1-CL]
式中、鎖1及び2は、互いに同一であり、鎖3及び4は、互いに同一であり;
式中、鎖1は、鎖2とホモ二量体を形成し、鎖3及び4は、鎖1及び鎖2の各VH1-CH1ドメインと会合して2つの機能性Fabユニットを形成し;
式中、CH2-CH3はFc領域を含み;
式中、各Fabユニットは、抗PD-1アゴニスト抗体であり、各scFvユニットは、MAdCAMに結合するscFVであり;
式中、各scFvユニットは、式5’-VL2-リンカーB-VH2-3’、または式5’-VH2-リンカーB-VL2-3’を有し;
式中、リンカーA及びリンカーBは、それぞれ独立して、ペプチドリンカーである
前記治療化合物。
【請求項6】
単一の活性治療化合物を含む組成物であって、該単一の活性治療化合物が請求項1~5のいずれか1項に記載の治療化合物である、組成物。
【請求項7】
自己免疫障害を処置するための請求項6に記載の組成物の使用。
【請求項8】
自己免疫障害が炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項7に記載の組成物の使用。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の治療化合物をコードする核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の治療化合物を発現させる方法であって、請求項10に記載の宿主細胞を培養して該治療化合物を発現させることを含む、方法。
【請求項13】
前記治療化合物を精製することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年3月15日に出願された米国仮特許出願第62/471,509号に対する優先権を主張し、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に提供する実施形態は、例えば、局所または標的免疫特権のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、移植組織の拒絶反応や自己免疫障害など、望ましくない免疫応答の例は、世界中の何百万人もの人々の主要な健康問題を構成している。臓器移植の長期転帰は、慢性拒絶反応、及び移植臓器の最終的な失敗を特徴とすることがしばしばある。20を超える自己免疫障害が知られており、身体の本質的に全ての臓器に影響を及ぼし、北米だけで5千万人を超える人々に影響を及ぼしている。両方のシナリオで病原性免疫応答と戦うために使用される広く活性な免疫抑制性医薬品は、深刻な副作用を有する。
【発明の概要】
【0004】
部位特異的免疫特権を提供する方法及び治療化合物を本明細書に開示する。本明細書に開示する実施形態は、参照によりこの節に組み込まれる。
【0005】
いくつかの実施形態では、本治療化合物は、
a)例えば、ドナー標的と優先的に結合し(レシピエント抗原への結合と比較して優先的)、ドナーからの移植組織、例えば、臓器に対する部位特異的免疫特権の提供に有用である、ドナー特異的標的化部分;または
b)例えば、対象標的組織と優先的に結合し(対象非標的組織と比較して優先的)、例えば、自己免疫障害において)望ましくない免疫攻撃を受けている対象組織に対する部位特異的免疫特権の提供に有用である、組織特異的標的化部分;から選択される
1)特異的標的化部分及び
(a)免疫細胞阻害分子結合/調節部分(ICIM結合/調節部分と本明細書で称する);
(b)免疫抑制性免疫細胞結合/調節部分(IIC結合/調節部分と本明細書で称する);または
(c)治療化合物の一部として、例えば、標的の近くに、標的の免疫系による攻撃を阻害するもしくは最小限に抑える物質を提供することにより、免疫抑制性局所微小環境を促進する、エフェクター結合/調節部分(SM結合/調節部分と本明細書で称する)から選択される、
2)エフェクター結合/調節部分を含む、操作多重特異性化合物、例えば、操作二重特異性分子、例えば、操作二重特異性抗体分子を含む。
【0006】
エフェクター結合/調節部分は、クラスa、b及びcのうちの複数に分類されることができる。例えば、下記に示すように、CTLA4結合分子は、カテゴリa及びbの両方に分類される。
【0007】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、ICIM結合/調節部分を含む。いくつかの実施形態では、ICIM結合/調節分子は、阻害分子、例えば、阻害性免疫チェックポイント分子と結合し、これを刺激する、またはそうでなければ、免疫細胞、例えば、細胞傷害性T細胞、B細胞、NK細胞、もしくは骨髄系細胞、例えば、好中球もしくはマクロファージの活性を阻害するもしくは低下させる。
【0008】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、
1)特異的標的化部分、例えば、ドナー特異的標的化部分(ドナー標的と結合し、ドナーからの移植組織、例えば、臓器に対する部位特異的免疫特権の提供に有用である)または組織特異的標的化部分(対象組織標的と結合し、例えば、自己免疫障害において、望ましくない免疫攻撃を受けている対象組織に対する部位特異的免疫特権の提供に有用である);及び
2)免疫細胞上のエフェクター分子、例えば、阻害性受容体、例えば、PD-1に結合するICIM結合/調節部分を含むエフェクター結合/調節部分を含む、操作多重特異性化合物、例えば、操作二重特異性分子、例えば、操作二重特異性抗体分子を含み、その標的への特異的標的化部分の結合、及び免疫細胞上のエフェクター分子へのICIM結合/調節部分の結合の際に、免疫細胞活性、例えば、免疫攻撃を開始する免疫細胞の能力が、例えば、免疫細胞上にあるエフェクター分子のクラスター形成に応じた阻害性シグナルを通して、下方制御される。いくつかの実施形態では、操作多重特異性化合物は、2を超える、例えば限定されないが3または4つの特定の分子と結合するように、追加の結合部分を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、ICIM結合/調節部分を含み、以下の特性の一方または両方を有する:(a)免疫細胞の下方制御のレベルは、治療化合物がその標的に結合しないときよりも、治療化合物がその標的に結合したときにより大きい;及び(b)治療化合物は、免疫細胞上の細胞表面阻害性受容体、例えば、PD-1と係合するとき、内因性リガンドに結合する細胞表面阻害性受容体の能力を阻害しない、または実質的に阻害しない。
【0010】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の下方制御のレベルは、治療化合物がその標的に結合しないときよりも、治療化合物がその標的に結合したときにより大きい。実施形態では、標的に結合した治療化合物による下方制御のレベルは、その標的に結合しなかったときに見られるものと同等かまたはそれより1.5倍、2倍、4倍、8倍または10倍大きい。実施形態では、治療化合物は、標的に結合しないとき、免疫細胞を下方制御しない、または著しく下方制御しない。ゆえに、阻害性受容体、例えば、PD-1の無差別なまたは望ましくないアゴニズムは、最小限に抑えられるまたは除去される。例えば、治療化合物が免疫細胞に結合したが、標的部分に結合しなかったとき、治療化合物による阻害性免疫チェックポイント分子の係合は、下方制御をもたらさない、または実質的な下方制御をもたらさない、例えば、治療化合物が結合する免疫細胞上の阻害性受容体が、クラスター形成しないまたは、免疫細胞の下方制御または実質的な阻害を与えるのに十分な阻害性シグナルをもたらすほど十分にクラスター形成しない。
【0011】
実施形態では、治療化合物は、免疫細胞上の細胞表面阻害性受容体、例えば、PD-1と結合するとき、内因性リガンドに結合する細胞表面阻害性受容体の能力を阻害しない、または実質的に阻害しない。いくつかの実施形態では、治療化合物は、PD-1上のPD-L1/2結合部位に結合することができる。ゆえに、阻害性受容体、例えば、PD-1の無差別なまたは望ましくないアンタゴニズムは、最小限に抑えられるまたは除去される。実施形態では、免疫細胞上の阻害性受容体、例えば、PD-1への治療化合物の結合は、天然リガンド、例えば、PD-L1に結合する阻害性受容体の能力を妨害しない、または実質的に妨害しない。実施形態では、免疫上の阻害性受容体、例えば、PD-1への治療化合物の結合は、天然リガンド、例えば、PD-L1の結合を、治療化合物の非存在時に見られるものの、50、40、30、20、10、または5%未満低下させる。
【0012】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、ICIM結合/調節部分を含み、治療有効量で対象に投与されたとき、許容不可能なレベルの全身免疫抑制をもたらさない、これはあるタイプの全免疫細胞、例えば、全T細胞における阻害性受容体の無差別なアゴニズムが生じる場合に起こり得る、または、許容不可能なレベルの全身免疫活性化をもたらさない、これは治療化合物がその天然リガンドとの阻害性受容体の相互作用を拮抗する場合に起こり得る。
【0013】
理論により束縛されることを望まないが、対象への投与の際、ICIM結合/調節部分を含む治療化合物が、4つの状態のうちのいずれか1つで存在することができると考えられている:i)未結合であり自由溶液中にある;ii)免疫細胞、例えば、T細胞の表面に発現される阻害性受容体にのみ、ICIM結合/調節部分を通して結合している;iii)標的移植片または対象組織の表面にのみ、標的化部分を通して結合している;及びiv)標的移植片または対象組織の表面に、標的化部分を通して、そしてさらに免疫細胞、例えば、T細胞により発現される阻害性受容体に、ICIM結合/調節部分を通して結合している。治療化合物が、標的移植片または対象組織にのみ標的化部分を通して結合しているとき(iii)、標的移植片または組織に作用しない、または実質的に作用しない。治療化合物が、標的移植片または組織に標的化部分を通して結合しており、免疫細胞、例えば、T細胞により発現される阻害性受容体に、ICIM結合/調節部分を通して結合しているとき(iv)、標的臓器または組織で免疫特権を作り出す。理論により束縛されることを望まないが、これは、例えば、複数の治療化合物分子を高密度及び結合価で固定することにより、標的移植片またはドナー組織がその表面上の治療化合物分子を多量体化することにより達成されると考えられる。治療化合物分子の多量体化により、治療化合物のICIM結合/調節部分が、免疫細胞、例えば、病原性T細胞の表面上に発現される阻害性受容体のクラスター形成を促進すること、及び免疫細胞を沈黙させるまたは下方制御する機能を果たす阻害性シグナルを伝達することが可能になる。例えば、T細胞の場合、PD-L1分子、または抗PD-1抗体を含むICIM結合/調節部分を含む治療化合物を使用することができる。標的への複数の治療化合物分子の結合は、治療化合物分子の多量体化をもたらし、これが今度は、PD-L1分子、または機能性抗PD-1抗体分子によって、T細胞上のPD-1のクラスター形成をもたらす。そのクラスター形成が、T細胞上のT細胞受容体に対する、標的MHCによる抗原提示の状況で生じる場合、負のシグナルが生成され、T細胞は不活性化されることになる。実施形態では、ICIM結合/調節部分、例えば、機能性抗体分子は、エフェクター分子と結合するが、その天然リガンド(複数可)とのエフェクター分子の相互作用を、阻害しない、または実質的に阻害しない。
【0014】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、IIC結合/調節部分を含み、これは免疫抑制免疫細胞、例えば、Treg、例えば、Foxp3+CD25+Tregと結合し、標的組織の近くに動員する。
【0015】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、SM結合/調節部分を含み、これはATPまたはAMPなどの免疫応答を調節する物質、例えば、可溶性分子を調節する、例えば、これと結合し、これを阻害する、隔離する、分解するまたはそうでなければ中和する。
【0016】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、免疫細胞上の標的に特異的である標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、標的は、本明細書に記載する通りである。いくつかの実施形態では、標的は、MAdCAMである。いくつかの実施形態では、標的化部分は、MAdCAMに結合する抗体である。
【0017】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、ドナー特異的標的化部分を含み、対象に移植されたドナー移植組織に対する部位特異的免疫特権を提供する。いくつかの実施形態では、治療化合物は、組織特異的標的化部分を含み、対象の組織、例えば、自己免疫障害において望ましくない免疫応答を被る組織に対する部位特異的免疫特権を提供する。
【0018】
標的化部分は、免疫系から保護されるべきドナー移植片または対象組織に対して特異的である。いくつかの実施形態では、エフェクター分子結合部分は、de novo 生成結合ドメイン、例えば、機能性抗体分子を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、免疫細胞、例えば、T細胞の表面上で発現される阻害性受容体を認識する天然リガンドに由来するアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、保護すべき移植片またはドナー組織に近い免疫細胞、例えば、T細胞を沈黙させるが、標的に近くない免疫細胞、例えば、T細胞は沈黙させない、これは治療化合物が機能するために標的移植片またはドナー組織の存在を必要とするためである。治療化合物が、免疫細胞、例えば、T細胞により発現される阻害性受容体にのみ結合するとき対照的であり、この場合、機能的帰結はない。
【0020】
本明細書に記載の方法及び治療化合物は、少なくとも一部には、部位特異的免疫特権を提供することに基づく。本明細書に記載の治療化合物及びそれの使用方法により、臨床設定、例えば、免疫応答の反転及び抑制が望まれる場合、例えば自己免疫疾患または組織、例えば、臓器、移植おける免疫抑制治療剤の非部位特異的全身投与の最小化、例えば、減少または除去が可能になる。異常な免疫系によって引き起こされる基礎となる病態生理が影響を受ける場合、臨床的に意味のある応答が可能だが、広範に作用する免疫抑制薬には、患者の全身性免疫系機能を低下させるという望ましくない効果がある。正常に機能する免疫システムの役割は、周囲の環境に存在する病原性及び日和見生物の絶え間ない攻撃に対抗し、健常個体からがん性細胞を絶えず除去することであるため、慢性免疫抑制を受けている患者は感染症やがんを発症するリスクが高くなる。本明細書に記載の方法及び治療化合物は、他の場所での正常な全身免疫系機能の阻害を最小限に抑えながら、病理部位での病原性免疫応答のみを選択的に標的とし、減弱、低下、または消滅させる治療法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、本明細書に提供するように提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、a)例えば、ドナー標的と優先的に結合する、ドナー特異的標的化部分またはb)、例えば、対象の標的組織と優先的に結合する、組織特異的標的化部分から選択されるi)特異的標的化部分、及び(a)免疫細胞阻害分子結合/調節部分(ICIM結合/調節部分);(b)免疫抑制性免疫細胞結合/調節部分(IIC結合/調節部分);または(c)治療化合物の一部として、例えば、標的の近くに、標的の免疫系による攻撃を阻害するもしくは最小限に抑える物質を提供することにより、免疫抑制性局所微小環境を促進する、エフェクター結合/調節部分(SM結合/調節部分)から選択される、ii)エフェクター結合/調節部分を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、ICIM結合/調節部分を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子を含むICIM結合/調節部分を含む。いくつかの実施形態では、阻害性免疫分子カウンターリガンド分子は、PD-L1分子を含む。いくつかの実施形態では、ICIMは、阻害性免疫分子カウンターリガンド分子が、PD-1、KIR2DL4、LILRB1、LILRB、またはCTLA-4から選択される同族阻害性免疫チェックポイント分子と結合するものである。いくつかの実施形態では、ICIMは、抗体である。いくつかの実施形態では、ICIMは、PD-1、KIR2DL4、LILRB1、LILRB、またはCTLA-4に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、ICIM結合/調節部分は、細胞表面阻害分子に対する機能性抗体分子を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、細胞表面阻害分子は、阻害性免疫チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子は、PD-1、KIR2DL4、LILRB1、LILRB2、CTLA-4から選択されるか、または表1から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、IIC結合/調節部分を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、本化合物は、N末端からC末端方向で式:
R1---リンカー領域A-R2またはR3-リンカー領域B-R4を有し、
式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分;特異的標的化部分を含む;または存在しない;ただし、エフェクター結合/調節部分及び特異的標的化部分が存在することを条件とする。
【0026】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患または状態を処置する方法を本明細書に提供し、該方法は、本明細書に提供する治療化合物のうちの1つまたは複数を投与することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の疾患または状態を処置する方法を本明細書に提供し、該方法は、本明細書に提供する治療化合物のうちの1つまたは複数を投与することを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患を有する対象を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に提供する治療化合物を該対象に投与して、炎症性腸疾患を処置することを含む。いくつかの実施形態では、該対象は、クローン病及びまたは潰瘍性大腸炎を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、自己免疫性肝炎を有する対象を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に提供する治療化合物を該対象に投与して、自己免疫性肝炎を処置することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、原発性硬化性胆管炎を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に提供する治療化合物を対象に投与して、原発性硬化性胆管炎を処置することを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、1型糖尿病を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に提供する治療化合物を対象に投与して、1型糖尿病を処置することを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、移植対象を処置する方法を提供し、該方法は、治療有効量の本明細書に提供する治療化合物を該対象に投与し、それにより移植(レシピエント)対象を処置することを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、移植されたドナー組織を有する対象においてGVHDを処置する方法を提供し、該方法は、治療有効量の本明細書に提供する治療化合物を該対象に投与することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、自己免疫障害を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象を処置する方法を提供し、該方法は、治療有効量の本明細書に提供する治療化合物を投与し、それにより該対象を処置することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】標的化scFvドメイン及びscFvまたは内因性リガンドに対応する配列のいずれかからなるエフェクタードメインを含有するタンデムscFv-Fcフォーマット(150kDa)の二重特異性治療化合物の図である。
図2】本明細書に開示する治療化合物に結合したT細胞の図である。状態1では、二重特異性のエフェクタードメインは、受容体のアゴニズムまたはアンタゴニズムをいずれも発生させずに、全身循環中にT細胞の阻害性受容体に結合する。状態2では、二重特異性の標的化ドメインが、標的臓器に結合して、標的臓器表面上で二重特異性多量体化をもたらす。標的臓器のT細胞認識の間、多量体化エフェクタードメインは、T細胞阻害分子と結合、クラスター形成し、これを通してシグナル伝達する。
図1】本明細書に提供する治療化合物の非限定的実施形態を図示する。
図2】本明細書に提供する治療化合物がどのように機能することができるかの非限定的例を図示する。
図3】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図3A】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図4】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図5】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図6】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図7】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図8】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図9】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図10】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図11】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図12】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図13】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図14】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図15】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図16】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図17】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する。
図18】本明細書に提供する治療化合物の非限定的例を図示する
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書で用いる場合、及び、別段の指定が無い限り、「約」という用語は、それが修飾する値の±5%を意味することを意図する。ゆえに、約100は、95から105を意味する。
【0037】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、複数の指示物を含む。
【0038】
本明細書で用いる場合、「約」という用語は、数値が近似値であり、小さな変動が本開示の実施形態の実施に有意な影響を及ぼさないだろうことを意味する。数値の制限が使用される場合、文脈によりそうでないと示されない限り、「約」は、数値が±10%変動することができ、本開示の実施形態の範囲内に留まることを意味する。
【0039】
本明細書で用いる場合、「動物」という用語は、ヒト及び非ヒト脊椎動物、例えば野生、飼育、家畜動物を含むがこれらに限定されない。
【0040】
本明細書で用いる場合、「接触させること」という用語は、in vitro系またはin vivo系で2つの要素を一緒にすることを意味する。例えば、治療化合物を個体または患者または細胞と「接触させること」は、個体または患者、例えばヒトへの該化合物の投与、ならびに、例えば、化合物を、標的を含有する細胞または精製調製物を含有する試料へと導入することを含む。
【0041】
本明細書で用いる場合、「含む(comprising)」(ならびに、含むの任意の形態、例えば「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprised)」)、「有する(having)」(ならびに、有するの任意の形態、例えば「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含む(including)」(ならびに、含むの任意の形態、例えば「含む(includes)」及び「含む(include)」)、または「含有する(containing)」(ならびに、含有するの任意の形態、例えば「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)という用語は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、明記されていない要素または方法工程を除外しない。「含む(comprising)」という用語を記載する任意の組成物または方法はさらに、明記された構成要素または要素を構成する、からなる、または本質的にからなる組成物も説明すると理解されるべきである。
【0042】
本明細書で用いる場合、「個体」、「対象」、または「患者」、という用語は、互換可能に使用され、任意の動物を意味し、哺乳類、例えばマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、例えばヒトを含む。
【0043】
本明細書で用いる場合、「阻害する」という用語は、結果、症状、または活性を阻害する化合物の非存在時の活性または結果と比較して、結果、症状、または活性が低下されることを指す。いくつかの実施形態では、結果、症状、または活性は、約、または、少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%阻害される。結果、症状、または活性は、完全に除去または消滅した場合も、阻害されることができる。
【0044】
本明細書で用いる場合、「それを必要とする」という語句は、対象が、特定の方法または処置に対する必要性を有すると同定されていることを意味する。いくつかの実施形態では、同定は、任意の手段の診断によることができる。本明細書に記載の方法及び処置のいずれにおいても、対象は、それを必要としている可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は、特定の疾患、障害、または状態が蔓延している環境にあるまたは環境に行く予定である。
【0045】
本明細書で用いる場合、「XからYまでの整数」という語句は、端点を含む任意の整数を意味する。例えば、「XからYまでの整数」という語句は、1、2、3、4、または5を意味する。
【0046】
本明細書で用いる場合、「哺乳類」という用語は、げっ歯類(すなわち、マウス、ラット、またはモルモット)、サル、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、またはヒトを意味する。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0047】
本明細書で用いる場合、「眼科的に許容され得る」という語句は、処置された眼もしくはその機能、または処置されている対象の全身健康状態に対して、持続的な有害作用がないことを意味する。しかしながら、軽度の刺激や「刺すような」感覚などの一過性の作用は、薬物の局所点眼投与では一般的であり、そのような一過性の作用の存在は、本明細書に定義する「眼科的に許容され得る」とされる問題において、組成、製剤、または成分(例えば、賦形剤)と矛盾しないと認識されるだろう。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、眼科的に許容され得るか、眼科投与に好適であることができる。
【0048】
特定の抗原、標的、またはエピトープ「と特異的に結合する」または「に特異的に結合する」または「に対して特異的」は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般的に結合活性を有さない同様の構造の分子である対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより、測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子との競合により決定することができる。
【0049】
特定の抗原、標的またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、少なくとも約10-4M、少なくとも約10-5M、少なくとも約10-6M、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、少なくとも約10-12M、またはより大きい抗原またはエピトープに対するKDを有する抗体により呈されることができ、ここでKDは、特定の抗体-標的相互作用の解離速度を指す。典型的には、抗原または標的と特異的に結合する抗体は、抗原またはエピトープに比べて、対照分子に対して、少なくとも、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5、000倍、10、000倍、またはそれ以上のKDを有するだろう。
【0050】
いくつかの実施形態では、特定の抗原、標的またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、対照に比べて、標的、抗原、またはエピトープに対して、少なくとも2倍、4倍、5倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍またはより大きい標的、抗原、またはエピトープに対するKAまたはKaを有する抗体により呈されることができ、ここでKAまたはKaは、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指す。
【0051】
本明細書で提供するように、本治療化合物及び組成物は、本明細書に提供する処置の方法において使用することができる。本明細書で用いる場合、「処置する」、「処置された」、または「処置すること」という用語は、治療的処置及び予防的手段の両方を意味し、その目的は、望ましくない生理学的状態、障害もしくは疾患を減速させる(軽減する)、または有益もしくは所望の臨床結果を得ることである。これらの実施形態の目的のために、有益または所望の臨床結果には、症状の緩和;状態、障害もしくは疾患の程度の減弱;状態、障害もしくは疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態;状態、障害もしくは疾患進行の発症を遅延するもしくはこれらを遅くする;検出可能もしくは検出不可能な状態、障害もしくは疾患状態の回復もしくは寛解(部分的もしくは全体的);患者によって認識される必要はないが、少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの回復;または状態、障害もしくは疾患の向上もしくは改善が含まれるが、これらに限定されない。処置には、過剰なレベルの副作用を伴わずに臨床的に有意な応答を引き出すことを含む。処置は、処置を受けない場合に予想される生存と比較して延長した生存も含む。ゆえに、「疼痛の処置」または「疼痛を処置すること」は、疼痛または本明細書に記載の他の状態に関連する主要な現象または二次的な症状のいずれかを緩和するまたは回復させる活動を意味する。
【0052】
標的化部分及びエフェクター結合/調節部分を、典型的には別々のドメインとして含む、治療化合物、例えば、治療タンパク質分子、例えば、融合タンパク質を本明細書に提供する。治療化合物を使用及び作成する方法も提供する。標的化部分は、治療化合物、ゆえに、エフェクター結合/調節部分を、免疫特権が所望される部位へと局在化させる役割を果たす。エフェクター結合/調節部分は、(a)免疫細胞阻害分子結合/調節部分(ICIM結合/調節部分):(b)免疫抑制性免疫細胞結合/調節部分(IIC結合/調節部分);または(c)可溶性分子結合/調節部分(SM結合/調節部分)のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、治療化合物は、(a)及び(b);(a)及び(c);(b)及び(c);または(a)、(b)、及び(c)を含む。
【0053】
本開示は、例えば、PD-1アゴニストとして作用することができる分子を提供する。いずれの特定の理論にも束縛されないが、PD-1のアゴニズムは、T細胞の活性化/シグナル伝達を阻害し、さまざまな機序によって達成されることができる。例えば、架橋は、アゴニズムにつながることができ、ビーズ結合、機能性PD-1アゴニストが記載されている(Akkaya.Ph.D.Thesis:Modulation of the PD-1 pathway by inhibitory antibody superagonists.Christ Church College,Oxford,UK,2012)、これは参照により本明細書に組み込まれる。重複しないエピトープと結合する2つのmAbとPD-1の架橋は、PD-1シグナル伝達を誘導する(Davis,US2011/0171220)、これは参照により本明細書に組み込まれる。別の例は、参照により本明細書に組み込まれるヤギ抗PD-1抗血清(例えば、AF1086、R&D Systems)の使用を通して例示され、これは可溶性の場合にアゴニストとして作用する(Said et al.,2010,Nat Med)、これは参照により本明細書に組み込まれる。本実施形態にて使用することができるPD-1アゴニストの非限定的な例としては、UCBクローン19もしくはクローン10、PD1AB-1、PD1AB-2、PD1AB-3、PD1AB-4及びPD1AB-5、PD1AB-6(Anaptys/Celgene)、PD1-17、PD1-28、PD1-33及びPD1-35(Collins et al,US2008/0311117A1 Antibodies against PD-1 and uses therefor、これは参照により組み込まれる)が挙げられるがこれらに限定されない、または二重特異性、一価抗PD-1/抗CD3(Ono)などであることができる。いくつかの実施形態では、PD-1アゴニスト抗体は、PD-L1のPD-1への結合を遮断する抗体であることができる。いくつかの実施形態では、PD-1アゴニスト抗体は、PD-L1のPD-1への結合を遮断しない抗体であることができる。
【0054】
PD-1アゴニズムは、任意の方法、例えば実施例に記載の方法により測定することができる。例えば、b-ガラクトシダーゼ「酵素ドナー」に融合したヒトPD-1ポリペプチド及び2)b-ガラクトシダーゼ「酵素アクセプター」に融合したSHP-2ポリペプチドを含む構築物を発現する、例えば安定的に発現する細胞を構築することができる。いずれの理論にも束縛されないが、PD-1が係合するとき、SHP-2が、PD-1に動員される。酵素アクセプター及び酵素ドナーは、アッセイすることができる完全に活性なb-ガラクトシダーゼ酵素を形成する。ただし、アッセイは、PD-1アゴニズムを直接的には示さず、PD-1シグナル伝達の活性化を示す。PD-1アゴニズムは、T細胞活性化の阻害を測定することにより測定することもできるが、これはいずれの理論にも束縛されないが、PD-1アゴニズムが、抗CD3誘導性T細胞活性化を阻害するからである。例えば、PD-1アゴニズムは、T細胞をPHA(ヒトT細胞に関して)またはConA(マウスT細胞に関して)で予め活性化して、それらにPD-1を発現させることにより測定することができる。細胞を次いで、PD-1アゴニズムアッセイのために、抗PD-1(またはPD-L1)の存在下で抗CD3を用いて再活性化することができる。抗CD3の存在下でPD-1アゴニストシグナルを受けるT細胞は、抗CD3刺激単独と比較して、活性化の低減を示すだろう。活性化は、増殖またはサイトカイン産生(IL-2、IFNg、IL-17)または他のマーカー、例えばCD69活性化マーカーにより読み出すことができる。ゆえに、PD-1アゴニズムは、サイトカイン産生または細胞増殖のいずれかにより測定することができる。他の方法を使用して、PD-1アゴニズムを測定することもできる。
【0055】
PD-1は、活性化T細胞及び他の免疫細胞上で発現されるIgスーパーファミリーメンバーである。PD-1に対する天然リガンドは、PD-L1及びPD-L2であると思われる。いずれの特定の理論にも束縛されないが、PD-L1またはPD-L2が活性化T細胞上のPD-1に結合するとき、阻害性シグナル伝達カスケードが開始され、活性化Tエフェクター細胞機能の減弱をもたらす。ゆえに、T細胞上のPD-1、及び別の細胞(例えば、腫瘍細胞)上のPD-L1/2とPD-1アンタゴニストとの間の相互作用の遮断は、チェックポイント阻害として知られており、T細胞を阻害から解放する。対照的に、PD-1アゴニスト抗体は、PD-1に結合し、阻害性シグナルを送り、T細胞の機能を減弱することができる。ゆえに、PD-1アゴニスト抗体は、本明細書に記載の様々な実施形態へとエフェクター分子結合/調節部分として組み込まれることができ、標的化部分と対合したときに、局在化組織特異的免疫調節を達成することができる。
【0056】
エフェクター分子結合/調節部分は、免疫抑制性シグナルまたは環境をさまざまな方法において提供することができる。いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、疾患病理を駆動する原因となる免疫細胞により発現される阻害性受容体と直接的に結合し、(本明細書に記載する適切な状態下で)阻害性受容体を活性化するICIM結合/調節部分を含む。別の実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、IIC結合/調節部分を含み、免疫抑制性免疫細胞と結合して蓄積させる。いくつかの実施形態では、蓄積した免疫抑制細胞は、免疫特権を促進する。別の実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、周囲の微小環境を操作して、免疫細胞、例えば、疾患病理を駆動する免疫細胞の機能を許容しにくくするSM結合/調節部分を含む。いくつかの実施形態では、SM結合/調節部分は、免疫攻撃または活性化を促進する実体を枯渇させる。
【0057】
標的化部分及びエフェクター結合/調節部分は、共有結合的にまたは非共有結合的に、直接的にまたはリンカー実体を通して、互いに、例えば、治療タンパク質分子中の同一タンパク質分子のメンバーとして、物理的に係留している。いくつかの実施形態では、標的化及びエフェクター部分は、治療タンパク質分子、例えば、融合タンパク質中に、典型的には別々のドメインとして提供される。いくつかの実施形態では、標的化部分、エフェクター結合/調節部分、または両方は、それぞれ単一ドメイン抗体分子、例えば、ラクダ抗体VHH分子またはヒト可溶性VHドメインを含む。それは、一本鎖フラグメント可変(scFv)またはFabドメインも含有し得る。いくつかの実施形態では、治療タンパク質分子、または治療タンパク質分子をコードする核酸、例えば、mRNAまたはDNAを、対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、標的化及びエフェクター分子結合/調節部分は、第三の実体、例えば、担体、例えば、ポリマー担体、デンドリマー、または粒子、例えば、ナノ粒子に連結している。治療化合物を使用して、全身的な免疫抑制機能を有さないまたは実質的に少なくしながら、免疫応答を組織でまたは組織内で選択した標的もしくは部位にて下方制御することができる。標的または部位は、ドナー組織または自家組織を含むことができる。
【0058】
移植されたドナー組織、例えば、同種移植組織、例えば、本明細書に記載の組織、例えば、同種移植肝臓、同種移植腎臓、同種移植心臓、同種移植膵臓、同種移植胸腺もしくは胸腺組織、同種移植皮膚、または同種移植肺に対して、本明細書に開示の治療化合物を用いて、部位特異的免疫特権を提供する方法を本明細書に提供する。実施形態では、処置は、ドナー移植組織の拒絶反応を最小限に抑える、ドナー移植組織に対する免疫エフェクター細胞が媒介する損傷を最小限に抑える、ドナー移植組織の許容を延長する、またはドナー移植組織の機能性寿命を延長する。
【0059】
本明細書に開示の治療化合物を用いて、ドナー免疫細胞、例えば、ドナーT細胞が、レシピエント組織の免疫攻撃を媒介する能力を最小限に抑えることによる、移植片対宿主病(GVHD)を阻害する方法も本明細書に提供する。
【0060】
本明細書に開示の治療化合物を投与して、例えば、免疫系の部位または組織特異的調節を提供することより、対象における自己免疫障害または応答を、処置する、例えば、治療的に処置するまたは予防的に処置する(または予防する)方法も本明細書に提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象組織に対する寛容、対象組織の拒絶反応の最小化、対象組織に対する免疫エフェクター細胞が媒介する損傷の最小化または対象組織の機能の延長を提供する。いくつかの実施形態では、治療化合物は、例えば、自己免疫攻撃下にある、またはそのリスクがある組織を標的とする、例えば、特異的に標的とする標的化部分を含む。非限定的な例示的な組織としては、膵臓、ミエリン、唾液腺、滑膜細胞、及び筋細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0061】
本明細書で用いる場合、治療的処置に関する「処置する」、「処置された」、または「処置すること」という用語は、望ましくない生理学的状態、障害もしくは疾患を減速させる(軽減する)、または有益なもしくは所望の臨床結果を得ることを目的とする。例えば、有益なまたは所望の臨床結果には、症状の緩和;状態、障害もしくは疾患の程度の減弱;状態、障害もしくは疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態;状態、障害もしくは疾患進行の発症を遅延するもしくはこれらを遅くする;検出可能もしくは検出不可能な状態、障害もしくは疾患状態の回復もしくは寛解(部分的もしくは総合的);患者によって認識される必要はないが、少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの回復;または状態、障害もしくは疾患の向上もしくは改善が含まれるが、これらに限定されない。処置には、過剰なレベルの副作用を伴わずに臨床的に有意な応答を引き出すことを含む。処置は、処置を受けない場合に予想される生存と比較して延長した生存も含む。ゆえに、「自己免疫疾患/障害の処置」は、自己免疫疾患/障害または本明細書に記載の他の状態に関連する任意の主要な現象または二次的な症状を緩和するまたは回復させる活動を意味する。種々の疾患または状態を本明細書に提供する。治療的処置は、発症前に疾患または状態を予防するまたは低下させるために予防的に投与することもできる。
【0062】
いくつかの実施形態では、治療化合物の投与は、障害が明らかになった後で開始される。いくつかの実施形態では、治療化合物の投与は、障害の発症、または完全な発症の前に開始する。いくつかの実施形態では、治療化合物の投与は、障害を有する対象、ハイリスク対象、障害のリクスまたは存在に関するバイオマーカーを有する対象、障害の家族歴または障害のリスクの他の兆候もしくは無症候性存在を有する対象において、障害の発症、または完全な発症の前に開始する。例えば、いくつかの実施形態では、膵島細胞損傷を有するが、まだ糖尿病ではない対象を処置する。
【0063】
理論により束縛されることを望まないが、標的化部分は、治療剤と結合し、免疫特権が所望される解剖的部位で選択的に発現される標的に治療剤を蓄積させるように機能すると考えられている。いくつかの実施形態では、例えば、ドナー組織移植の状況では、標的化部分は、ドナー組織に存在するが、レシピエントには存在しない、標的、例えば、対立遺伝子産物に結合する。自己免疫障害の処置に関しては、標的化部分は、免疫特権が所望される解剖学的部位、例えば、膵臓において優先的に発現される標的と結合する。GVHDの処置に関しては、標的化部分は、宿主組織を標的とし、宿主を移植された組織に由来する移植された免疫エフェクター細胞からの攻撃から保護する。
【0064】
再度、理論により束縛されることを望まないが、エフェクター結合/調節部分が、免疫抑制性シグナルを送達するまたはそうでなければ免疫特権環境を作り出す機能を果たすと考えられる。
【0065】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、これらの実施形態が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法及び材料を本実施形態の実施または試験に使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本書にて言及する全ての出版物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。さらに、材料、方法、及び例は例示のみであり、限定することを意図しない。見出し、小見出し、または(a)、(b)、(i)等の番号付きまたは文字付きの要素は、読みやすくするためだけに提示している。この文書で見出しまたは番号付きもしく文字付き要素を使用する場合、ステップもしくは要素をアルファベット順に実行する、またはステップもしくは要素が必ずしも互いに独立している必要はない。実施形態の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0066】
追加の定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本実施形態が関係する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本実施形態の説明及び請求において、以下の用語及び他に本出願を通して参照される用語は、定義が提供される場合、それがどのように定義されるかにしたがって使用されるだろう。
【0067】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0068】
抗体分子は、該用語を本明細書で使用する場合、ポリペプチド、例えば、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメントを指し、少なくとも1つの機能性免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む。抗体分子は、抗体(例えば、完全長抗体)及び抗体フラグメントを包含する。いくつかの実施形態では、抗体分子は、完全長抗体の抗原結合もしくは機能性フラグメント、または完全長免疫グロブリン鎖を含む。例えば、完全長抗体は、天然に生じるまたは正常な免疫グロブリン遺伝子フラグメント組み換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン(Ig)分子(例えば、IgG抗体)である。実施形態では、抗体分子は、免疫学的に活性な、免疫グロブリン分子の抗原結合部分、例えば抗体フラグメントを指す。抗体フラグメント、例えば、機能性フラグメントは、抗体の一部分、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab)2、可変フラグメント(Fv)、ドメイン抗体(dAb)、または一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む。機能性抗体フラグメントは、インタクト(例えば、完全長)抗体により認識されるものと同じ抗原に結合する。「抗体フラグメント」または「機能性フラグメント」という用語は、可変領域からなる単離されたフラグメント、例えば、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントまたは軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーにより連結された組み換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)も含む。いくつかの実施形態では、抗体フラグメントは、抗原結合活性を有さない抗体の部分、例えばFcフラグメントまたは単一アミノ酸残基を含まない。例示的な抗体分子は、完全長抗体及び抗体フラグメント、例えば、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖、Fab、Fab’、及びF(ab’)2フラグメント、ならびに一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む。
【0069】
「抗体分子」という用語は、ドメイン全体もしくはドメインの抗原結合フラグメント、または単一ドメイン、抗体も包含し、これは「sdAb」または「VHH」と称することもできる。ドメイン抗体は、スタンドアロンの、抗体フラグメントとして作用することができるVHまたはVLのいずれかを含む。加えて、ドメイン抗体は、重鎖のみ抗体(HCAb)を含む。ドメイン抗体は、その中にCDRループが移植されるベースとなる足場としてIgGのCH2ドメインも含む。それは一般的に、3つの相補性決定領域が離断する4つのフレームワーク領域から構成されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはタンパク質としても定義されることができる。これは、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4と表される。sdAbは、ラクダ、例えばリャマにおいて産生されることができるが、当該技術分野で周知の技術を使用して合成的に生成することもできる。sdAbまたはポリペプチドのアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら(参照により本明細書に組み込まれる、“Sequence of proteins of immunological interest,”US Public Health Services,NIH Bethesda,MD,Publication No.91)により付与されるVHドメインに関する一般的な番号付けに従う。この番号付けに従い、sdAbのFR1は、アミノ酸残基を位置1~30で含み、sdAbのCDR1は、アミノ酸残基を位置31~36で含み、sdAbのFR2は、アミノ酸を位置36~49で含み、sdAbのCDR2は、アミノ酸残基を位置50~65で含み、sdAbのFR3は、アミノ酸残基を位置66~94で含み、sdAbのCDR3は、アミノ酸残基を位置95~102で含み、sdAbのFR4は、アミノ酸残基を位置103~113で含む。ドメイン抗体は、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれるWO2004041862及びWO2016065323にも記載されている。ドメイン抗体は、本明細書に記載の標的化部分であることができる。
【0070】
抗体分子は、単一特異性(例えば、一価または二価)、二重特異性(例えば、二価、三価、四価、五価、または六価)、三重特異的(例えば、三価、四価、五価、六価)であることができる、またはより高次の特異性(例えば、四重特異的)及び/または六価を超えるより高次の結合価を有することができる。抗体分子は、軽鎖可変領域の機能性フラグメント及び重鎖可変領域の機能性フラグメントを含むことができる、または重鎖及び軽鎖は、単一のポリペプチドへと1つに融合され得る。
【0071】
多重特異性治療化合物、例えば、二重特異性抗体分子のフォーマットの例を、以下の非限定的な例に示す。抗体分子を用いて図示しているが、これらは、他の非抗体部分を特異的結合またはエフェクター部分として含む治療分子に関するプラットフォームとして使用することができる。いくつかの実施形態では、これらの非限定的な例は、対称または非対称Fcフォーマットのいずれかに基づく。
【0072】
例えば、図は、非限定的及び多様な対称ホモ二量体アプローチを図示する。いくつかの実施形態では、二量体形成面は、ヒトIgG1CH2-CH3ドメインを中心とし、これはCH2/CH2及びCH3/CH3の両方にわたる接触面を介して二量体化する。示す結果得られる二重特異性抗体は、2つの同一の結合ユニットを二量体の各側のN末端に有し、2つの同一のユニットを二量体の各側のC末端に有する4つの結合ユニットから構成される総合結合価を有する。いずれの場合でも、ホモ二量体のN末端にある結合ユニットは、ホモ二量体のC末端にあるそれとは異なる。このタイプの、分子のいずれかの末端にある阻害性T細胞受容体の両方の二価性及び組織係留抗原の二価性を使用することは、分子のいずれの端でも達成することができる。
【0073】
例えば、図3では、非限定的な実施形態を図示する。ホモ二量体のN末端は、別々のポリペプチドである、2つの同一の軽鎖から構成される2つの同一のFabドメインを含有し、VH/VL相互作用及びCH1とのCカッパまたはCラムダ相互作用を介して各重鎖のn末端VH-CH1ドメインと接触する。CH1とCカッパまたはCラムダとの間の天然のジスルフィド結合は、軽鎖及び重鎖間の共有結合アンカーを提供するように存在する。この設計のC末端には、2つの同一のscFvユニットがあり、ここでは(この例では)FcのCH3ドメインのC末端の後に、典型的にはセリン、グリシン、アラニン、及び/またはトレオニン残基から構成される(がこれらに限定されない)可動性、親水性リンカーが続き、その後、各scFvユニットのVHドメインが続き、その後にグリシン/セリンリッチリンカー、その後VLドメインが続く。これらのタンデムVH及びVLドメインは結合して、FcのC末端で付加した一本鎖フラグメント可変(scFv)を形成する。2つのこのようなユニットは、Fcを中心とするホモ二量体の特性のために、この分子のC末端に存在する。scFvのドメインの順序は、NからC末端の方向で、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHのいずれかで構成され得る。
【0074】
異なる端部上に異なる結合領域を有する分子の非限定的な例は、一方の端部がPD-1アゴニストであり、標的特異性を提供する抗体が抗MAdCAM-1抗体である場合である。これは、例えば、分子を異なる配向で図示する図3Aに示すように図示することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、MAdCAM抗体は、本明細書の他の箇所に記載するようなブロッキングまたは非ブロッキング抗体である。いずれの理論にも束縛されないが、MAdCAMは、その2つのIgスーパーファミリーI-setドメイン内の複数の残基を介してリンパ球上で発現されるインテグリンα4β7のヘッドピースと相互作用すると示されており、その相互作用に関する原子レベル構造基盤が記載されている(Viney JL et al.(1996).J Immunol.157,2488-2497;Yu Y et al(2013).J Biol Chem.288,6284-6294;Yu Y et al(2012).J Cell Biol.196,131-146,このそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。優れた構造的、機構的及び機能的に詳細に、ヒト(Chen J et al(2003).Nat Struct Biol.10,995-1001;de Chateau M et al(2001).Biochemistry.40,13972-13979)及びマウス(Day ES et al(2002).Cell Commun Adhes.9,205-219;Hoshino H et al(2011).J Histochem Cytochem.59,572-583)分子系の両方において示されており、MAdCAMとα4β7の相互作用はいずれも、インテグリンベータ7サブユニットI様ドメインに存在する3つのジカチオン結合部位に依存し、これらの金属結合部位は、Ca2+、Mn2+、及びMg2+を用いて配位することができる。細胞接着アッセイ、フローサイトメトリー、及び/またはフローチャンバーアッセイを、Mg2+またはMn2+を伴うまたは伴わない高レベルのCa2+の存在下で使用して、MAdCAM/α4β7相互作用は、低機能性親和性であると示され、リンパ球のローリング接着を可能とするが、一方で低Ca2+だが高Mg2+またはMn2+ではインテグリンが活性化され、MAdCAM/α4β7相互作用は、より高い機能性親和性であり、堅固なリンパ球接着を媒介する(Chen J et al(2003).Nat Struct Biol.10,995-1001)。多くのグループが、種々の細胞:細胞、細胞:膜調製物、及び/または細胞:タンパク質をベースとする接着/相互作用アッセイを使用して、FACS、細胞フローチャンバーに基づく計数、またはIHCに基づく読み取りを用いて、MAdCAMとα4β7の相互作用の際の抗MAdCAMまたは抗α4β7抗体の影響をモニターすることができ、それによりブロッキングまたは非ブロッキング抗体を同定することが可能であると示している(Nakache,M et al(1989).Nature.337,179-181;Streeter,PR et al(1988).Nature.331.41-46;Yang Y et al(1995).Scand J Immunol.42.235-247;Leung E et al(2004).Immunol Cell Biol.82.400-409;Pullen N et al(2009).B J Pharmacol.157.281-293;Soler D et al(2009).J Pharmacol Exp Ther.330.864-875;Qi J et al(2012).J Biol Chem.287.15749-15759)。
【0076】
これは、抗マウスMAdCAM抗体、例えばMECA-89(非ブロッキング)及びMECA-367(ブロッキング)の同定を用いてマウス系設定において例示されている)Nakache,M et al(1989).Nature.337,179-181;Streeter,PR et al(1988).Nature.331.41-46;Yang Y et al(1995).Scand J Immunol.42.235-247)。ヒト系では、ヒトα4β7とヒトMAdCAMの相互作用を遮断する抗体、例えば抗ヒトMAdCAM PF-00547659(Pullen N et al(2009).B J Pharmacol.157.281-293)及び抗ヒトα4β7ベドリズマブ(Soler D et al(2009).J Pharmacol Exp Ther.330.864-875)、ならびに相互作用を遮断しない抗体、例えば抗ヒトMAdCAMクローン17F5(Soler D et al(2009).J Pharmacol Exp Ther.330.864-875)、及び抗ヒトα4β7クローンJ19(Qi J et al(2012).J Biol Chem.287.15749-15759)が同定されている。ゆえに、抗体は、所望の効果に基づいてブロッキングまたは非ブロッキングのいずれかであることができる。いくつかの実施形態では、抗体は、非ブロッキングMAdCAM抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ブロッキングMAdCAM抗体である。抗体がブロッキングまたは非ブロッキングであるかどうかを実証する一非限定的な例は、実施例6に見出すことができるが、任意の方法を使用することができる。本明細書に記載される参考文献はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
別の例では、図4に図示するように、ホモ二量体のN末端は、2つの同一の軽鎖から構成される2つの同一のFabドメインを含有し、これらはVH/VL相互作用及びCH1とのCカッパまたはCラムダ相互作用を介して各重鎖のn末端VH-CH1ドメインと接面する別々のポリペプチドである。CH1とCカッパまたはCラムダとの間の天然ジスルフィド結合は、軽鎖及び重鎖間の共有結合アンカーを提供するように存在する。この設計のC末端には、2つの同一のVHユニットがあり(しかし、非抗体部分はここまたは4つの末端付着/融合点のいずれかでも置換され得る)、ここでは(この例では)FcのCH3ドメインのC末端の後に、典型的にはセリン、グリシン、アラニン、及び/またはトレオニン残基から構成される(がこれらに限定されない)可動性、親水性リンカーが続き、その後、可溶性の独立したVH3生殖細胞系列ファミリーをベースとするVHドメインが続く。2つのこのようなユニットは、Fcを中心とするホモ二量体の特性のために、この分子のC末端に存在する。
【0078】
別の非限定的な例では、図5に図示するように、ホモ二量体のN末端は、図3及び図4とは異なり、CカッパまたはCラムダのC末端及びVHのN末端間でリンカーを介してN末端で重鎖と物理的に連合した2つの同一の軽鎖から構成される2つの同一のFabドメインを含有する。リンカーは、36~80アミノ酸長であってよく、セリン、グリシン、アラニン及びトレオニン残基から構成されてよい。物理的に連合したn末端軽鎖は、各重鎖のn末端VH-CH1ドメインと、VH/VL相互作用及びCH1とのCカッパまたはCラムダ相互作用を介して接面する。CH1とCカッパまたはCラムダとの間の天然ジスルフィド結合は、軽鎖及び重鎖間のさらなる安定性を提供するように存在する。この設計のC末端では、2つの同一のFabユニットがあり、ここでは(この例では)FcのCH3ドメインのC末端の後に、典型的にセリン、グリシン、アラニン、及び/またはトレオニン残基から構成される(がこれらに限定されない)可動性、親水性リンカーが続き、その後、CH1ドメインが続き、C末端でVHドメインが続く。c末端CH1/VHドメインと対合するように設計されている軽鎖は、別々のポリペプチドとして発現され、記載するn末端VH/CH1ドメインに連合するN末端軽鎖とは異なる。C末端軽鎖は、VH/VL及びCH1とCカッパまたはCラムダとの間で接触面を形成する。天然ジスルフィドは、この軽鎖を重鎖に繋留する。再度、4つの付着/融合点のいずれかにある抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分と置換されることができる。
【0079】
二重特異性抗体は、以下の非限定的な例に示すように非対称であることもできる。非限定的な例は、図6図7、及び図8にも図示されており、これらは、非対称/ヘテロ二量体アプローチを図示する。再度、これらのフォーマットのいずれにおいても、4つの付着/融合点のいずれかにある抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分と置換されることができる。いくつかの実施形態では、二量体形成面は、ヒトIgG1 CH2-CH3ドメインを中心とし、これはCH2/CH2及びCH3/CH3の両方にわたる接触面を介して二量体化する。しかしながら、各重鎖のホモ二量体化の代わりにヘテロ二量体化を達成するために、突然変異が各CH3ドメインに導入される。ヘテロ二量体形成突然変異には、1つのCH3ドメインにおいてT366W突然変異(kabat)、ならびに他のCH3ドメインにおいてT366S、L368A、及びY407V(kabat)突然変異が含まれる。ヘテロ二量体形成面は、CH3/CH3接触面の反対側にあるS354及びY349などのシステイン残基への天然残基の突然変異を介してde novo ジスルフィド結合でさらに安定化され得る。示す結果得られる二重特異性抗体は、4つの結合ユニットから構成される総合結合価を有する。このアプローチでは、全体の分子は、一端のみで二重特異性を有し、他の末端で単一特異性を有する(全体で三重特異性)ように、またはいずれかの末端で二重特異性を有し、2または4の全体分子特異性を伴うように設計されることができる。下記の例示的な例では、C末端は、例えば、組織係留標的に対して二価単一特異性を提供し得る、2つの同一結合ドメインを含む。全3つの例示的な例のN末端で、両方の結合ドメインは、異なる認識エレメント/パラトープを含み、これは、同じエフェクター部分標的上の2つの異なるエピトープの認識を達成し得る、または例えばT細胞阻害性受容体及びCD3を認識し得る。いくつかの実施形態では、N末端結合部分は、例えば、他の単一ポリペプチドフォーマット、例えばscFv、一本鎖Fab、タンデムscFv、VHまたはVHHドメイン抗体構成などと交換され得る。他のタイプの認識エレメント、例えば線状または環状ペプチドも使用してよい。
【0080】
非対称分子の例を図6に図示する。図6を参照すると、分子のN末端は、VH/VL及びCカッパまたはCラムダ/CH1相互作用ならびに天然重鎖/軽鎖ジスルフィド結合から構成される共有結合係留を介して第一の重鎖と対をなす第一の軽鎖から構成される。このヘテロ二量体分子の反対側ではN末端は、CカッパまたはCラムダのC末端とVHのN末端間のリンカーを介して物理的に連合した第二の軽鎖及び第二の重鎖である。リンカーは、36~80アミノ酸長であってよく、セリン、グリシン、アラニン及びトレオニン残基から構成されてよい。物理的に連合したn末端軽鎖は、VH/VL相互作用及びCH1とのCカッパまたはCラムダ相互作用を介して各重鎖のn末端VH-CH1ドメインと接面する。CH1とCカッパまたはCラムダとの間の天然ジスルフィド結合は、軽鎖及び重鎖間にさらなる安定性を提供するように存在する。分子のC末端では、N末端グリシン/セリン/アラニン/トレオニンをベースとするリンカーを介して、重鎖1及び重鎖2両方のCH3ドメインのC末端に結合した2つの同一可溶性VH3生殖細胞系列ファミリーVHドメインがある。
【0081】
いくつかの実施形態では、非対称分子は、図7に図示して描写する通りであることができる。例えば、分子のN末端は、グリシン/セリン/アラニン/トレオニンをベースとするリンカーを介してヒトIgG1ヒンジ領域に連結した2つの異なるVH3生殖細胞系列(germlined)をベースとする可溶性VHドメインから構成される。第一の重鎖に連結したVHドメインは、第二の重鎖に連結したVHドメインとは異なる。各重鎖のC末端は、追加の可溶性VH3生殖細胞系列をベースとするVHドメインであり、これは2つの重鎖のそれぞれで同一である。重鎖は、FcモジュールのCH3境界面に存在する以前に記載したノブイントゥホール突然変異を介してヘテロ二量体化する。
【0082】
いくつかの実施形態では、非対称分子は、図8に図示する通りであることができる。この例は、図7に示す分子と類似しているが、両方のN末端Fabユニットが、軽鎖1及び軽鎖2が、CカッパまたはCラムダのC末端と各それぞれのVHのN末端との間のリンカーを介して重鎖1及び重鎖2と物理的に連合するように構成される点を除く。リンカーは各事例において、36~80アミノ酸長であってよく、セリン、グリシン、アラニン及びトレオニン残基から構成されてよい。物理的に連合したn末端軽鎖は、VH/VL相互作用及びCH1とのCカッパまたはCラムダ相互作用を介して、各重鎖のn末端VH-CH1ドメインと接面する。CH1とCカッパまたはCラムダとの間の天然ジスルフィド結合は、軽鎖及び重鎖間にさらなる安定性を提供するように存在する。
【0083】
二重特異性分子は、混合フォーマットを有することもできる。これを、例えば、図9図10、及び図11に図示する。
【0084】
例えば、図9に図示するように、図7の部分フォーマット選択と組み合わせて、それにより総合分子結合価が4であるが、特異性は2つの特異性に制限されている、ホモ二量体Fcをベースとするアプローチ(図3、4、及び5を参照されたい)を図示する。N末端は、2つの同一可溶性VH3生殖細胞系列をベースとするVHドメインから構成され、C末端は、N末端とは異なる特異性の2つの同一可溶性VH3生殖細胞系列(germlined)をベースとするVHドメインから構成される。それゆえ、各特異性は、2の結合価を有する。再度、このフォーマットでは、4つの付着/融合点のいずれかにある抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分と置換されることができる。
【0085】
図10は、別の例を図示する。この例では、分子は、4つのVH3生殖細胞系列をベースとする可溶性VHドメインから構成される。最初の2つのドメインは、同じ特異性を有し(例えば阻害性受容体)、N末端から3番目のドメインは、組織抗原に対する特異性を有し得、N末端から4番目のドメインは、ヒト血清アルブミン(HSA)に対する特異性を有し得、それによりIg Fcドメインの非存在下で分子の半減期を延長する。3つのグリシン、セリン、アラニン及び/またはトレオニンリッチリンカーは、ドメイン1及び2、ドメイン2及び3、ならびにドメイン3及び4の間に存在する。このフォーマットは、最大で四重特異性、しかし各場合で一価を伴うように、または各場合で二価を伴って二重特異性を有するように構成され得る。ドメインの順序は、変更することができる。再度、このフォーマットでは、抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分と置換されることができる。
【0086】
図11は、なおも別のアプローチを図示する。この例は、Fcホモ二量体をベースとし、2つの同一のFabユニット(二価単一特異性)を分子のN末端で有するという点で、図3及び4に類似している。この例は、各重鎖のC末端にタンデム-scFvが添付されているという点で異なる。ゆえに、各場合で、FcのCH3ドメインのC末端は、グリシン/セリン/アラニン/トレオニンをベースとするリンカーを介して、第一のVHドメインのN末端に連結しており、これはC末端を介して12~15アミノ酸グリシン/セリンリッチリンカーにより、第一のVLドメインのN末端に連結しており、これは、25~35アミノ酸グリシン/セリン/アラニン/トレオニンをベースとするリンカーを介してC末端で第二のVHドメインのN末端に連結し、これはC末端を介して12~15アミノ酸グリシン/セリンをベースとするリンカーで第二のVLドメインのN末端に連結している。このFcホモ二量体をベースとする分子では、それゆえ、2つの同一のタンデムscFvが分子のC末端にあり、例えば、単一の組織抗原に対して四価性または2つの異なる分子に二価性のいずれかを与える。このフォーマットは、ヘテロ二量体Fcコアで適用することもでき、FCのC末端での2つの異なるタンデム-scFvが可能となり、これは、図5、6、及び7のような一本鎖Fab構成の使用を介して、N末端での二価単一特異性またはN末端での一価二重特異性を保持しながらC末端での一価四重特異性を可能にする。この分子は、それゆえ、2、3、4、5、または6つの特異性を有するように構成されることができる。タンデム-scFvユニットにおけるscFvのドメイン順序は、NからC末端方向で、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHのいずれかで構成され得る。再度、このフォーマットでは、4つの付着/融合点のいずれかにある抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分と置換されることができる。
【0087】
二重特異性抗体は、例えば、組織浸透度を増加させる一方でより短い全身PKを有するように構築されることもできる。これらのタイプの抗体は、例えば、ヒトVH3をベースとするドメイン抗体フォーマットに基づくことができる。これらは、例えば、図12、13、及び14に図示される。図12、13、及び14は、それぞれ可溶性VH3生殖細胞系列ファミリーをベースとするVHドメインモジュールを含んだ。各ドメインは、おおよそ12.5kDaであり、全体の分子量は小さくあることが可能であり、いずれの特定の理論にも束縛されないが、これは、組織浸透の向上に有益であるはずである。これらの例では、VHドメインはいずれも、いずれの半減期延長標的、例えばFcRnまたはHSAを認識しない。図12に図示するように、分子は、第一のドメインのC末端及び第二のドメインのN末端間の可動性親水性グリシン/セリンをベースとするリンカーで接合された2つのVHドメインから構成される。この例では、第一のドメインは、T細胞共刺激性受容体を認識し得、第二のドメインは、組織係留抗原を認識し得る。図13に図示するように、分子は、親水性グリシン/セリンをベースとするリンカーのN-C末端連結を伴う3つのVHドメインから構成される。分子は、三重特異的であるが、各標的に関して一価であるように構成され得る。それは、二重特異性で、1つの標的に関して二価性を伴い、別の標的に関して一価性を伴ってよい。図14に図示するように、分子は、各ドメイン間にN-C末端グリシン/セリンリッチリンカーを伴う4つのVHドメインから構成される。この分子は、四重特異性、三重特異性、または二重特異性であるように構成されてよく、各場合において変動する抗原結合価を伴ってよい。再度、このフォーマットでは、抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分で置換されることができる。
【0088】
二重特異性抗体の他の実施形態を、図15及び16に図示する。図15及び16は、相互作用を共有結合的に繋留するc末端重鎖/軽鎖ジスルフィド結合を含む、ヒトIgG CH1/Cカッパ接触面の天然にヘテロ二量体形成するコアから構成される。このフォーマットは、半減期延長のためのFcまたは任意の部分を含有しない。図15に図示するように、分子は、定常カッパドメインのN末端で、scFvフラグメントが添付し、これは、N末端VHドメインがそのC末端でVLドメインのN末端に12~15アミノ酸グリシン/セリンをベースとするリンカーを介して連結してなり、これはそのC末端により定常カッパドメインのN末端へと天然VL-Cカッパエルボー(elbow)配列を介して連結する。CH1ドメインは、N末端で、scFvフラグメントが添付し、これはN末端VLドメインがそのC末端で12~15アミノ酸グリシン/セリンリンカーを介してVHドメインのN末端に連結してなり、これはそのC末端でCH1ドメインのN末端に天然VH-CH1エルボー配列を介して連結する。図16に図示するように、分子は、実施例13と同じN末端構成を有する。しかしながら、定常カッパ及びCH1ドメインのC末端は、scFvモジュールが添付しており、これは、VH-VLまたはVL-VH構成のいずれかの構成であってよく、同じ抗原に対して特異的かまたは2つの異なる抗原に対して特異的かのいずれかであってよい。VH/VLドメイン間リンカーは、12~15アミノ酸長であり、グリシン/セリン残基からなってよい。scFv結合サブユニットは、可溶性VHドメイン、またはペプチド認識エレメント、またさらにはタンデム-scFvエレメントと入れ替わってよい。このアプローチは、可変ラムダ及び/または定常ラムダドメインを使用するように構成されることもできる。再度、このフォーマットでは、付着/融合点のいずれかにある、抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分と置換されることができる。
【0089】
図17は、別の実施形態を図示する。図17は、タンデムscFvフォーマットを表し、これは、第一のN末端VLドメインがそのC末端で第一のVHドメインのN末端に12~15アミノ酸グリシン/セリンリッチリンカーで連結し、その後第一のVH C末端で25~30アミノ酸グリシン/セリン/アラニン/トレオニンをベースとするリンカーにより第二のVLドメインのN末端に連結してなる。第二のVLドメインは、C末端で第二のVHドメインのN末端に12~15アミノ酸グリシン/セリンリンカーにより連結する。各scFvは、異なる標的抗原、例えば共刺激性T細胞分子及び組織係留標的を認識する。再度、このフォーマットでは、抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分と置換されることができる。
【0090】
図18は、別の実施形態を図示する。図18は、F(ab’)2scFv融合体である。これは、2つのジスルフィド結合を介してヒトIgG CH1ドメインの天然ヒトIgG1ヒンジ領域c末端にて接合した2つの同一のFab構成要素からなる。ヒトIgG1 CH2及びCH3ドメインは存在しない。重鎖1及び2のC末端には、グリシン/セリン/アラニン/トレオニンリッチリンカーを介して、huIgG1ヒンジ領域のC末端へと連結された2つの同一のscFvフラグメントがある。示す構成では、VHは、各scFvユニットのN末端であり、12~15アミノ酸グリシン/セリンリッチリンカーを介してVLドメインのN末端に連結する。代替の構成は、N末端-VL-リンカー-VH-C末端であるだろう。この設計では、構築物は、二重特異性であり、リーチ標的に関して二価性である。再度、このフォーマットでは、4つの付着/融合点のいずれかにある抗体部分はいずれも、非抗体部分、例えば、抗体分子を含まないエフェクター結合/調節部分と置換されることができる。
【0091】
CD39分子は、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の一部として、ATPをAMPへとリン酸加水分解する、十分なCD39配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、CD39分子は、天然に生じるCD39、例えば、CD39分子が由来したCD39に等しい、またはその速度の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは95%でATPをAMPへとリン酸加水分解する。いくつかの実施形態では、CD39分子は、天然に生じるCD39と、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。
【0092】
任意の機能性アイソフォームを使用することができる(CD39または本明細書に考察する他のタンパク質を用いる)。例示的なCD39配列は、Genbankアクセッション番号NP_001767.3または以下の配列:
MEDTKESNVKTFCSKNILAILGFSSIIAVIALLAVGLTQNKALPENVKYGIVLDAGSSHT
SLYIYKWPAEKENDTGVVHQVEECRVKGPGISKFVQKVNEIGIYLTDCMERAREVIPRSQHQETPVYLGATAGMRLLRMESEELADRVLDVVERSLSNYPFDFQGARIITGQEEGAYGWITINYLLGKFSQKTRWFSIVPYETNNQETFGALDLGGASTQVTFVPQNQTIESPDNALQFRLYGKDYNVYTHSFLCYGKDQALWQKLAKDIQVASNEILRDPCFHPGYKKVVNVSDLYKTPCTKRFEMTLPFQQFEIQGIGNYQQCHQSILELFNTSYCPYSQCAFNGIFLPPLQGDFGAFSAFYFVMKFLNLTSEKVSQEKVTEMMKKFCAQPWEEIKTSYAGVKEKYLSEYCFSGTYILSLLLQGYHFTADSWEHIHFIGKIQGSDAGWTLGYMLNLTNMIPAEQPLSTPLSHSTYVFLMVLFSLVLFTVAIIGLLIFHKPSYFWKDMV(配列番号1)からの成熟形態を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、CD39分子は、ヒトまたはマウス血清において循環すると見出された可溶性触媒活性形態のCD39を含み、例えば、Metabolism of circulating ADP in the bloodstream is mediated via integrated actions of soluble adenylate kinase-1 and NTPDase1/CD39 activities,Yegutkin et al.FASEB J.2012Sep;26(9):3875-83を参照されたい。可溶性組み換えCD39フラグメントは、Inhibition of platelet function by recombinant soluble ecto-ADPase/CD39,Gayle,et al.,J Clin Invest.1998May1;101(9):1851-1859にも記載されている。
【0094】
CD73分子、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の一部として、細胞外AMPをアデノシンへと脱リン酸化する、十分なCD73配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、CD73分子は、天然に生じるCD73、例えば、CD73分子が由来するCD73と等しい、またはその速度の少なくとも、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは95%で細胞外AMPをアデノシンへと脱リン酸化する。いくつかの実施形態では、CD73分子は、天然に生じるCD73と、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。例示的なCD73配列は、GenBank AAH65937.1 5’-ヌクレオチダーゼ、エクト(CD73)[ホモサピエンス]または以下の配列、MCPRAARAPATLLLALGAVLWPAAGAWELTILHTNDVHSRLEQTSEDSSKCVNASRCMGGVARLFTKVQQIRRAEPNVLLLDAGDQYQGTIWFTVYKGAEVAHFMNALRYDAMALGNHEFDNGVEGLIEPLLKEAKFPILSANIKAKGPLASQISGLYLPYKVLPVGDEVVGIVGYTSKETPFLSNPGTNLVFEDEITALQPEVDKLKTLNVNKIIALGHSGFEMDKLIAQKVRGVDVVVGGHSNTFLYTGNPPSKEVPAGKYPFIVTSDDGRKVPVVQAYAFGKYLGYLKIEFDERGNVISSHGNPILLNSSIPEDPSIKADINKWRIKLDNYSTQELGKTIVYLDGSSQSCRFRECNMGNLICDAMINNNLRHADETFWNHVSMCILNGGGIRSPIDERNNGTITWENLAAVLPFGGTFDLVQLKGSTLKKAFEHSVHRYGQSTGEFLQVGGIHVVYDLSRKPGDRVVKLDVLCTKCRVPSYDPLKMDEVYKVILPNFLANGGDGFQMIKDELLRHDSGDQDINVVSTYISKMKVIYPAVEGRIKFSTGSHCHGSFSLIFLSLWAVIFVLYQ(配列番号2)からの成熟形態を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、CD73分子は、タンパク質切断または剪断応力によるGPIアンカーの加水分解により内皮細胞の膜から放出されることができるCD73の可溶性形態を含む、例えば、参考文献:Yegutkin G,Bodin P,Burnstock G.Effect of shear stress on the release of soluble ecto-enzymes ATPase and5’-nucleotidase along with endogenous ATP from vascular endothelial cells.Br J Pharmacol2000;129:921-6を参照されたい。CD73機能に関しては、Colgan et al.,Physiological roles for ecto-5’-nucleotidase(CD73)、Purinergic Signalling,June2006,2:351を参照されたい。
【0096】
細胞表面分子結合因子は、該用語を本明細書で使用する場合、例えば、特異的に、細胞、例えば、免疫抑制性免疫細胞、例えば、Treg上の細胞表面分子に結合する、分子、典型的にはポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、細胞表面結合因子は、細胞表面分子と特異的に結合できる、細胞表面分子の天然に生じるリガンドからの十分な配列を有する(細胞表面分子リガンド)。いくつかの実施形態では、細胞表面結合は、細胞表面分子と結合する、例えば、特異的に結合する抗体分子である。
【0097】
ドナー特異的標的化部分は、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の構成要素として、治療化合物を、レシピエントの組織とは対照的に、移植されたドナー組織へと優先的に局在化させる部分、例えば、抗体分子を指す。治療化合物の構成要素として、ドナー特異的標的化部分は、ドナーからの移植組織、例えば、臓器に対して部位特異的免疫特権を提供する。
【0098】
いくつかの実施形態では、ドナー特異的標的化部分は、それは、遺伝子座に存在する対立遺伝子の産物、例えば、ポリペプチド産物に結合し、この対立遺伝子は、(レシピエント)対象の遺伝子座には存在しない。いくつかの実施形態では、ドナー特異的標的化部分は、産物上のエピトープに結合し、このエピトープは、(レシピエント)対象には存在しない。
【0099】
いくつかの実施形態では、ドナー特異的標的化部分は、治療化合物の構成要素として、ドナー標的または抗原に優先的に結合する、例えば、ドナー抗原または組織に関してより大きい、例えば、対象抗原または組織に関するその親和性よりも、少なくとも2、4、5、10、50、100、500、1,000、5,000、または10,000倍大きいドナー標的に対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、ドナー特異的標的化部分は、対象に存在する遺伝子座の対立遺伝子(この対立遺伝子は、ドナー組織には存在しない)の産物に関するその親和性より、少なくとも2、4、5、10、50、100、500、1,000、5,000、または10,000倍大きい、ドナー組織に存在する遺伝子座の対立遺伝子(しかし対象には存在しない)の産物に対する結合親和性を有する。ドナー特異的部分が構成要素である治療化合物の親和性は、細胞懸濁液中で測定することができる、例えば、対立遺伝子を有する懸濁細胞に対する親和性を、対立遺伝子を有さない懸濁細胞に対するその親和性と比較する。いくつかの実施形態では、ドナー対立遺伝子細胞に対する結合親和性は、10nM未満である。いくつかの実施形態では、ドナー対立遺伝子細胞に対する結合親和性は、100pM、50pM、または10pM未満である。
【0100】
いくつかの実施形態では、ドナー対立遺伝子の産物に対する特異性は、ドナー特異的標的化部分が免疫下方制御エフェクターに連結するとき、i)移植された組織の免疫攻撃が、これは例えば、組織学的炎症反応、浸潤Tエフェクター細胞、もしくは臓器機能により、臨床設定にて測定される-例えば、腎臓のクレアチニンが、他の点では同様であるがドナー特異的標的化部分が免疫下方制御エフェクターに連結することを欠く移植において見られるだろうものと比較して、実質的に低下する;及び/またはii)移植された組織の外側またはそこから離れたレシピエントの免疫機能が、実質的に維持されるほどに十分である。いくつかの実施形態では、以下のうちの1つまたは複数が見られる:治療レベルの治療化合物で、末梢血リンパ球数が、実質的に影響を受けない、例えば、T細胞のレベルは、通常の25、50、75、85、90、もしくは95%以内である、B細胞のレベルは、通常の25、50、75、85、90、もしくは95%以内である、及び/または顆粒球(PMN)細胞のレベルは、通常の25、50、75、85、90、もしくは95%以内である、または単球のレベルは、通常の25、50、75、85、90、もしくは95%以内である;治療レベルの治療化合物で、非疾患関連抗原に対するPBMC(末梢血単核細胞)のex vivo増殖性機能は、実質的に通常であるまたは通常の70、80、もしくは90%以内である;治療レベルの治療化合物で、免疫抑制に関連する日和見感染及びがんの発生率またはリスクのリスクは、通常よりも実質的に増加しない;あるいは治療レベルの治療化合物で、免疫抑制に関連する日和見感染及びがんの発生率またはリスクのリスクは、標準治療、または非標的、免疫抑制を用いて見られるだろうものより実質的に少ない。いくつかの実施形態では、ドナー特異的標的化部分は、抗体分子、標的特異的結合ポリペプチド、または標的リガンド結合分子を含む。
【0101】
エフェクターは、該用語を本明細書で使用する場合、免疫応答を媒介する、実体、例えば、細胞または分子、例えば、可溶性または細胞表面分子を指す。
【0102】
エフェクターリガンド結合分子は、本明細書で用いる場合、エフェクター結合/調節分子として機能することができるほど十分な特異性を伴ってエフェクターと結合することができる、エフェクターの天然に生じるカウンターリガンドからの十分な配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、それは、エフェクターに、天然に生じるカウンターリガンドの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または95%の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、それは、エフェクターに対する天然に生じるカウンターリガンドと、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。
【0103】
エフェクター特異的結合ポリペプチドは、本明細書で用いる場合、エフェクター結合/調節部分として機能することができるほど十分な特異性を伴って結合することができるポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、特異的結合ポリペプチドは、エフェクターリガンド結合分子を含む。
【0104】
リスクが高いとは、本明細書で用いる場合、対象における障害のリスクを指し、ここで対象は、障害もしくは障害の症状の病歴、障害もしくは障害の症状に関連するバイオマーカー、または障害もしくは障害の症状の家族歴のうちの1つまたは複数を有する。
【0105】
エフェクターまたは阻害性免疫チェックポイント分子に対する機能性抗体分子は、該用語を本明細書で使用する場合、多量体化治療化合物のICIM結合/調節部分として存在するとき、エフェクターまたは阻害性免疫チェックポイント分子と結合する及び刺激することができる抗体分子を指す。いくつかの実施形態では、抗エフェクターまたは阻害性免疫チェックポイント分子抗体分子は、エフェクターまたは阻害性免疫チェックポイント分子に、単量体として結合する(または治療化合物が多量体化されていないときに結合する)とき、阻害性免疫チェックポイント分子に対する阻害性免疫チェックポイント分子分子の内因性カウンターリガンドを拮抗しない、実質的に拮抗しない、結合を防がない、または実質的な結合を防がない。いくつかの実施形態では、抗エフェクターまたは阻害性免疫チェックポイント分子抗体分子は、阻害性免疫チェックポイント分子に、単量体として結合する(または治療化合物が多量体化されていないときに結合する)とき、エフェクターまたは阻害分子を刺激しないまたは実質的に刺激しない。
【0106】
ICIM結合/調節部分は、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の一部として、細胞表面阻害分子、例えば、阻害性免疫チェックポイント分子、例えば、PD-1と結合及び刺激する、または、結合するもしくは細胞シグナル伝達を調節する、例えば、FCRL、例えば、FCRL1~6と結合する、または免疫機能を促進する分子と結合し、これを拮抗する、エフェクター結合/調節部分を指す。
【0107】
IIC結合/調節部分は、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の一部として、免疫抑制性免疫細胞と結合するエフェクター結合/調節部分を指す。いくつかの実施形態では、IIC結合/調節部分は、免疫抑制性免疫細胞の数または濃度を結合部位で増加させる。
【0108】
「阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子」は、該用語を本明細書で使用する場合、十分な阻害性免疫チェックポイント分子リガンド配列を有するポリペプチドを指し、例えば、PD-L1分子の場合は、多量体化治療化合物のICIM結合/調節部分として存在するとき、その同族阻害性免疫チェックポイント分子、例えば、再度PD-L1分子の場合は、PD-1と結合し、刺激することができる十分なPD-L1配列を有する。
【0109】
いくつかの実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子、例えば、PD-L1分子は、その同族リガンド、例えば、PD-1に、単量体として結合する(または治療化合物が多量体化されていないときに結合する)とき、阻害性免疫チェックポイント分子に対する内因性阻害性免疫チェックポイント分子リガンドを拮抗しないもしくは実質的に拮抗しない、または結合を防がない、もしくは実質的な結合を防がない。例えば、PD-L1分子の場合、PD-L1分子は、PD-1に対する内因性PD-L1の結合を拮抗しない。
【0110】
いくつかの実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子リガンドは、その同族阻害性免疫チェックポイント分子に、単量体として結合するとき、阻害性免疫チェックポイント分子を刺激または実質的に刺激しない。例として、例えば、PD-L1分子は、PD-1に結合するとき、PD-1を刺激または実質的に刺激しない。
【0111】
いくつかの実施形態では、阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子は、天然に生じる阻害性免疫チェックポイント分子リガンドと、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。
【0112】
例示的な阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子は、PD-L1分子を含み、これは阻害性免疫チェックポイント分子PD-1に結合し、実施形態では、天然に生じるPD-L1と、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する、例えば、PD-L1分子は、MRIFAVFIFMTYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET(配列番号3)の配列、またはその活性フラグメントを含む;いくつかの実施形態では、活性フラグメントは、PD-L1配列の残基19から290を含む;;HLA-G分子を含み、これは阻害性免疫チェックポイント分子KIR2DL4、LILRB1、及びLILRB2のいずれかに結合し、実施形態では、天然に生じるHLA-Gと、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。例示的なHLA-G配列は、例えば、GenBank P17693.1RecName:Full=HLAクラスI組織適合性抗原、アルファ鎖G;AltName:Full=HLA G抗原;AltName:Full=MHCクラスI抗原G;フラグ:前駆体での配列、または配列MVVMAPRTLFLLLSGALTLTETWAGSHSMRYFSAAVSRPGRGEPRFIAMGYVDDTQFVRFDSDSACPRMEPRAPWVEQEGPEYWEEETRNTKAHAQTDRMNLQTLRGYYNQSEASSHTLQWMIGCDLGSDGRLLRGYEQYAYDGKDYLALNEDLRSWTAADTAAQISKRKCEAANVAEQRRAYLEGTCVEWLHRYLENGKEMLQRADPPKTHVTHHPVFDYEATLRCWALGFYPAEIILTWQRDGEDQTQDVELVETRPAGDGTFQKWAAVVVPSGEEQRYTCHVQHEGLPEPLMLRWKQSSLPTIPIMGIVA(配列番号4)において見出される成熟形態を含む。
【0113】
阻害分子カウンターリガンド分子は、該用語を本明細書で使用する場合、多量体化治療化合物のICIM結合/調節部分として存在するとき、同族阻害分子と結合しこれを刺激することができる十分な阻害分子カウンターリガンド配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、阻害分子カウンターリガンド分子は、阻害分子に、単量体として結合する(または治療化合物が多量体化されていないときに結合する)とき、阻害分子に対する阻害分子の内因性カウンターリガンドを拮抗しないもしくは実質的に拮抗しない、または結合を防がない、もしくは実質的な結合を防がない。いくつかの実施形態では、阻害分子カウンターリガンド分子は、阻害分子に、単量体として結合する(または治療化合物が多量体化されていないときに結合する)とき、阻害分子を刺激しないまたは実質的に刺激しない。
【0114】
配列同一性、パーセンテージ同一性、及び関連する用語は、本明細書で使用する場合、2つの配列、例えば、2つの核酸配列または2つのアミノ酸もしくはポリペプチド配列の関連性を指す。アミノ酸配列の文脈において、「実質的に同一」という用語は、本明細書において、第一と第二のアミノ酸配列が共通の構造ドメイン及び/または共通の機能的活性を有することができるように、第二のアミノ酸配列における整列させたアミノ酸残基に対してi)同一である、またはii)その保存的置換である、十分なまたは最小限の数のアミノ酸残基を含有する第一のアミノ酸を指すために使用される。例えば、アミノ酸配列は、参照配列、例えば、本明細書に提供する配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する共通の構造ドメインを含有する。
【0115】
ヌクレオチド配列の文脈において、「実質的に同一」という用語は、本明細書において、第一と第二のヌクレオチド配列が共通の機能的活性を有するポリペプチドをコードするか、または共通の構造ポリペプチドドメインもしくは共通の機能的ポリペプチド活性をコードするように、第二の核酸配列における整列させたヌクレオチドに対して同一である十分なまたは最小限の数のヌクレオチドを含有する第一の核酸配列を指すために使用される。例えば、ヌクレオチド配列は、参照配列、例えば、本明細書に提供する配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有する。
【0116】
「機能的変種」という用語は、天然に生じる配列に対して実質的に同一のアミノ酸配列を有する、または実質的に同一のヌクレオチド配列によってコードされ、天然に生じる配列の1つまたは複数の活性を有することができるポリペプチドを指す。
【0117】
配列間の相同性または配列同一性(これらの用語は本明細書において互換可能に使用される)の計算は、以下のように実施する。
【0118】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(例えば、最適なアライメントのために第一及び第二のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、非相同配列を比較目的のために廃棄することができる)。好ましい実施形態では、比較目的のために整列させる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、及びさらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列における位置が、第二の配列における対応する位置で同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、分子はその位置で同一である(本明細書において使用されるアミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と同等である)。
【0119】
2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要がある、ギャップの数、及びそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、配列が共有する同一の位置の数の関数である。
【0120】
2つの配列間の配列の比較及びパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して実行することができる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれている、Needleman and Wunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444-453)のアルゴリズムを使用して、Blossum62行列またはPAM250行列のいずれか、及びギャップ加重16、14、12、10、8、6、または4、及びギャップ長加重1、2、3、4、5、または6を使用して決定される。なお別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMP行列、及びギャップ加重40、50、60、70、または80、及びギャップ長加重1、2、3、4、5、または6を使用して決定される。特に好ましい組のパラメータ(及びそれ以外であると明記されている場合を除き使用すべきであるパラメータ)は、Blossum62スコア行列、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5である。
【0121】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれているE.Meyers and W.Miller((1989)CABIOS,4:11-17)のアルゴリズムを使用して、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用して決定することができる。
【0122】
本明細書に記載の核酸及びタンパク質配列は、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するための公共のデータベースに対して検索を実行するための「クエリ配列」として使用することができる。そのような検索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実行することができる。BLASTヌクレオチド検索は、例えば本明細書に提供する任意の核酸配列に対して相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実行することができる。BLASTタンパク質検索は、本明細書に提供するタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実行することができる。比較目的のためのギャップを有するアライメントを得るために、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されるGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0123】
本明細書で用いる場合、「低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、または超高ストリンジェンシー条件でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件を説明する。ハイブリダイゼーション反応を実施するための指針は、参照により本明細書に組み込まれる、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見出され得る。水溶性方法及び非水溶性方法が、その参考文献に記述されており、いずれも使用することができる。本明細書において言及される特異的ハイブリダイゼーション条件は、以下のとおりである:1)6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃での低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件後に、0.2×SSC、0.1%SDS中、少なくとも50℃での2回の洗浄(洗浄温度は低ストリンジェンシー条件の場合、55℃に増加させることができる);2)6×SSC、約45℃での中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件後、0.2×SSC、0.1%SDS中、60℃での1回または複数回の洗浄;3)6×SSCで約45℃での高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件後、0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃での1回または複数回の洗浄;及び好ましくは4)超高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSで65℃の後に0.2×SSC、1%SDS中、65℃での1回または複数回の洗浄である。超高ストリンジェンシー条件(4)が、好ましい条件であり、別段の指定がない限り、使用すべき条件である。
【0124】
本実施形態の分子及び化合物は、その機能に実質的な効果を及ぼさない追加の保存的または非必須アミノ酸置換を有してもよいことが理解されたい。
【0125】
「アミノ酸」という用語は、アミノ官能性及び酸官能性の両方を含み、天然に生じるアミノ酸のポリマーに含まれることができる、天然または合成であるかによらない、全ての分子を包含すると意図される。例示的なアミノ酸には、天然に生じるアミノ酸;その類似体、誘導体、及び同属種;変種側鎖を有するアミノ酸類似体;ならびに前述のいずれかのいずれかの(any of any of)全ての立体異性体が含まれる。本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、D-またはL-光学異性体及びペプチド模倣体の両方を含む。
【0126】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に交換される置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。CD39分子、CD73分子、細胞表面分子結合因子、ドナー特異的標的化部分エフェクターリガンド結合分子、ICIM結合/調節部分IIC結合/調節部分、阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子、阻害分子カウンターリガンド分子、SM結合/調節部分、
【0127】
SM結合/調節部分は、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の一部として、例えば、標的の近くに、標的の免疫系による攻撃を阻害するまたは最小限に抑える物質を提供することにより、免疫抑制性局所微小環境を促進するエフェクター結合/調節部分を指す。いくつかの実施形態では、SM結合/調節部分は、標的の免疫系による攻撃を阻害するまたは最小限に抑える分子を含む、またはこれと結合する。いくつかの実施形態では、治療化合物は、免疫抑制機能を有する可溶性物質、例えば、内因性または外因性物質と結合し、蓄積させるSM結合/調節部分を含む。いくつかの実施形態では、治療化合物は、免疫攻撃を促進する物質、例えば、可溶性物質、典型的には及び内因性可溶性物質と結合し、これを阻害する、隔離する、分解するまたはそうでなければ中和するSM結合/調節部分を含む。いくつかの実施形態では、治療化合物は、免疫抑制物質、例えば、免疫抑制性であると知られているタンパク質のフラグメントを含むSM結合/調節部分を含む。例としては、ATPまたはAMPなどの免疫エフェクター細胞機能を促進させる構成要素を枯渇させる物質、例えば、CD39分子またはCD73分子と結合する、またはこれを含むエフェクター分子結合部分。
【0128】
特異的標的化部分は、該用語を本明細書で使用する場合、ドナー特異的標的化部分または組織特異的標的化部分を指す。
【0129】
対象は、該用語を本明細書で使用する場合、哺乳類対象、例えば、ヒト対象を指す。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト哺乳類、例えば、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギまたはブタである。
【0130】
標的リガンド結合分子は、本明細書で用いる場合、特異的標的化部分として機能できるほどに十分な特異性を伴って標的組織(例えば、ドナー組織または対象標的組織)上の標的リガンドと結合できる、標的リガンドの天然に生じるカウンターリガンドからの十分な配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、それは、標的組織または細胞に、天然に生じるカウンターリガンドの親和性の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または95%で結合する。いくつかの実施形態では、それは、標的リガンドに対する天然に生じるカウンターリガンドと、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。
【0131】
標的部位は、該用語を本明細書で使用する場合、標的化部分により結合される実体、例えば、エピトープを含有する部位を指す。いくつかの実施形態では、標的部位は、免疫特権が確立される部位である。
【0132】
組織特異的標的化部分は、該用語を本明細書で使用する場合、治療分子の構成要素として、治療分子を、対象の他の組織とは対照的に、標的組織に優先的に局在化させる部分、例えば、抗体分子を指す。治療化合物の構成要素として、組織特異的標的化部分は、自己免疫攻撃を受けているまたはそのリスクがある標的組織、例えば、臓器または組織に対して部位特異的免疫特権を提供する。いくつかの実施形態では、組織特異的標的化部分は、標的組織の外側には存在しない、または治療分子の治療濃度で許容不可能なレベルの免疫抑制が生じないまたは実質的に生じないほど十分に低いレベルで存在する、産物、例えば、ポリペプチド産物に結合する。いくつかの実施形態では、組織特異的標的化部分は、エピトープに結合し、このエピトープは、標的部位の外側に存在しない、または外側に実質的に存在しない。
【0133】
いくつかの実施形態では、組織特異的標的化部分は、治療化合物の構成要素として、標的組織または標的組織抗原に優先的に結合する、例えば、標的抗原または組織に対してより大きい、例えば、非標的組織または標的組織の外側に存在する抗原に対するその親和性より、少なくとも2、4、5、10、50、100、500、1,000、5,000、または10,000倍大きい、標的組織または抗原に対する結合親和性を有する。組織特異的部分が構成要素である治療化合物の親和性は、細胞懸濁液中で測定することができる、例えば、標的抗原を有する懸濁細胞に対する親和性を、標的抗原を有さない懸濁細胞に対するその親和性と比較する。いくつかの実施形態では、標的抗原を有する細胞に対する結合親和性は、10nM未満である。
【0134】
いくつかの実施形態では、標的抗原を有する細胞に対する結合親和性は、100pM、50pM、または10pM未満である。いくつかの実施形態では、標的抗原に対する特異性は、組織特異的標的化部分が免疫下方制御エフェクターに連結するとき、i)標的組織の免疫攻撃が、これは例えば、組織学的炎症反応、浸潤Tエフェクター細胞、もしくは臓器機能により、臨床設定にて測定される-例えば、腎臓のクレアチニンが、例えば、他の点では同様であるが組織特異的標的化部分が免疫下方制御エフェクターに連結することを欠く移植において見られるだろうものと比較して、実質的に低下する;及び/またはii)標的組織の外側またはそこから離れたレシピエントの免疫機能が、実質的に維持されるほどに十分である。
【0135】
いくつかの実施形態では、以下のうちの1つまたは複数が見られる:治療レベルの治療化合物で、末梢血リンパ球数が、実質的に影響を受けない、例えば、T細胞のレベルは、通常の25、50、75、85、90、もしくは95%以内である、B細胞のレベルは、通常の25、50、75、85、90、もしくは95%以内である、及び/または顆粒球(PMN)細胞のレベルは、通常の25、50、75、85、90、もしくは95%以内である、または単球のレベルは、通常の25、50、75、85、90、もしくは95%以内であるl;治療レベルの治療化合物で、非疾患関連抗原に対するPBMC(末梢血単核細胞)のex vivo増殖性機能は、実質的に通常であるまたは通常の70、80、もしくは90%以内である;治療レベルの治療化合物で、免疫抑制に関連する日和見感染及びがんの発生率またはリスクのリスクは、通常よりも実質的に増加しない;あるいは治療レベルの治療化合物で、免疫抑制に関連する日和見感染及びがんの発生率またはリスクのリスクは、標準治療、または非標的、免疫抑制を用いて見られるだろうものより実質的に少ない。いくつかの実施形態では、組織特異的標的化部分は、抗体分子を含む。いくつかの実施形態では、ドナー特異的標的化部分は、抗体分子、標的特異的結合ポリペプチド、または標的リガンド結合分子を含む。いくつかの実施形態では、組織特異的標的化部分は、標的組織上に排他的にまたは実質的に排他的に存在するまたは発現される、産物、または産物上の部位と結合する。
【0136】
ICIM結合/調節部分:阻害性受容体と結合するエフェクター結合/調節部分
本明細書に記載の方法及び化合物は、免疫細胞の表面上にある阻害性受容体と直接結合し、これを活性化して、例えば、免疫攻撃を媒介する免疫細胞の能力を低下させるもしくは排除する、または実質的に排除する、ICIM結合/調節部分を含むエフェクター結合/調節部分を有する治療化合物を提供する。ICIM結合/調節部分の標的化実体への結合は、免疫細胞応答の部位特異的または局所下方制御を促進する、例えば、標的化部分に対する結合部位を有する場所に実質的に限局する。ゆえに、正常な全身免疫機能は、実質的に保持される。いくつかの実施形態では、ICIM結合/調節部分は、阻害性免疫チェックポイント分子カウンターリガンド分子、例えば、阻害性免疫チェックポイント分子の天然リガンド(例えば、PD-L1またはHLA-G)、または天然リガンドのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、ICIM結合/調節部分は、機能性抗体分子、例えば、阻害性免疫チェックポイント分子と結合するscFv結合ドメインを含む機能性抗体分子を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、例えば、機能性抗体分子、または阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子を含むICIM結合/調節部分は、阻害性受容体と結合するが、阻害性受容体の天然リガンドの阻害性受容体への結合を防がない。実施形態では、標的化部分が、例えば、scFvドメインを含むICIM結合/調節部分に結合している、例えば、融合しており、溶液中での(例えば、血液またはリンパ中)(及びおそらくは単量体フォーマットで)阻害性受容体の結合の際に、治療分子が、i)免疫細胞上の阻害性受容体の刺激に失敗する、もしくは実質的に刺激に失敗する(例えば、完全な刺激分子で見られるレベルの30、20、15、10、または5%未満で刺激する);及び/またはii)免疫細胞上の阻害性受容体の拮抗に失敗する、もしくは実質的に拮抗に失敗する(例えば、完全拮抗分子で見られるレベルの30、20、15、10、または5%未満で拮抗する)ように構成されるフォーマットを使用する。候補分子は、標的が発現されていないin vitro細胞ベースアッセイにおいて、例えば、MLRベースアッセイ(混合リンパ球反応)を使用して、免疫応答を増加させるまたは低減させるその能力のいずれかにより刺激するまたは刺激しないその能力に関して評価されることができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、候補ICIM結合/調節部分は、全身免疫抑制及び全身免疫活性化を、低下、完全にまたは実質的に排除することができる。いくつかの実施形態では、治療化合物の標的化ドメインは、標的に結合したときに、免疫保護が望ましい組織の表面上で治療化合物をクラスター化するまたは多量体化する機能を果たすだろう。いくつかの実施形態では、ICIM結合/調節部分、例えば、scFvドメインを含むICIM結合/調節部分は、刺激性及び免疫抑制性シグナル、または実質的なレベルのかかるシグナルの局所免疫細胞への送達を可能にするために、クラスター化または多量体状態を必要とする。この種の治療剤は、例えば、全身性免疫系をかき乱すことなく、または実質的にかき乱すことなく、局所免疫抑制を提供することができる。つまり、免疫抑制は、全身及び特定の領域または組織タイプに局在化されない場合とは対照的に、抑制が必要とされる場所に局在化する。
【0139】
いくつかの実施形態では、標的、例えば、標的臓器、組織または細胞タイプへの結合の際、治療化合物は、標的、例えば、標的臓器、組織または細胞タイプをコーティングする。循環リンパ球が標的と結合し、破壊しようと試みるとき、この治療剤は、治療化合物が蓄積する部位のみで、または該部位でより大きい程度に、「オフ」シグナルを提供するだろう。
【0140】
候補治療化合物は、その標的と結合する、例えば、特異的に結合する能力を、例えば、ELISA、細胞ベースアッセイ、または表面プラズモン共鳴により評価することができる。より。この特性はそれが免疫特権の部位特異性及び局所性質を媒介するために、概して最大化されるべきである。候補治療化合物は、標的に結合したときに免疫細胞を下方制御する能力を、例えば、細胞ベース活性アッセイにより評価することができる。この特性は、免疫特権の部位特異性及び局所性質を媒介するために、概して最大化されるべきである。単量体(または非結合)形態の候補治療化合物により作用される下方制御のレベルは、例えば、細胞ベース活性アッセイにより、評価することができる。この特性は、免疫系の全身下方制御を媒介し得るために、概して最小限に抑えられるべきである。単量体(または非結合)形態の候補治療化合物により作用される細胞表面阻害分子、例えば、阻害性免疫チェックポイント分子のアンタゴニズムのレベルは、例えば、細胞ベース活性アッセイにより、評価することができる。この特性は、免疫系の全身の望ましくない活性化を媒介し得るために、概して最小限に抑えられるべきである。概して、特性は、十分に強力な位特異的免疫特権を、阻害性免疫チェックポイント分子の許容不可能なレベルの非部位特異的アゴニズムまたはアンタゴニズムを伴わずに、産生するように選択され、バランスをとるべきである。
【0141】
例示的な阻害性免疫チェックポイント分子
例示的な阻害分子(例えば、阻害性免疫チェックポイント分子)(そのカウンターリガンドも一緒である)を表1に見出すことができる。この表は、例示的なICIM結合部分が結合することができる分子を列挙する。

【表1】
【0142】
PD-L1/PD-1経路
プログラムされた細胞死タンパク質1(しばしばPD-1と称される)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞表面受容体である。PD-1は、T細胞及びB細胞、骨髄系細胞、樹状細胞、単球、T制御性細胞、iNK T細胞を含むがこれらに限定されない他の細胞タイプ上に発現される。PD-1は、2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2に結合し、阻害性免疫チェックポイント分子である。同族リガンド、PD-L1またはPD-L2との結合は、抗原負荷MCHとT細胞上のT細胞受容体との結合の状況において、T細胞の活性化及び機能を最小限に抑えるまたは予防する。PD-1の阻害性効果は、リンパ節の抗原特異的T細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)の促進及び制御性T細胞(抑制性T細胞)のアポトーシスの減少の両方を含むことができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、PD-1阻害を刺激するICIM結合/調節部分を含む。ICIM結合/調節部分は、例えば、PD-1のリガンドのフラグメント(例えば、PD-L1またはPD-L2のフラグメント)を含む阻害分子カウンターリガンド分子または別の部分、例えば、PD-1と結合するscFvドメインを含む、例えば、機能性抗体分子を含むことができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、対象に存在しない、実質的に低いレベルで存在するドナー抗原、例えば、表2からのドナー抗原と優先的に結合し、対象のドナー移植組織に局在化する標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、それは、他の組織と結合しない、または実質的に結合しない。いくつかの実施形態では、治療化合物は、HLA-A2に対して特異的であり、ドナー同種移植組織と特異的に結合するが、宿主組織と結合しない、または実質的に結合しない標的化部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療化合物は、例えば、PD-1のリガンドのフラグメント(例えば、PD-L1またはPD-L2のフラグメント)を含むICIM結合/調節部分、例えば、阻害分子カウンターリガンド分子、または別の部分、例えば、PD-1と結合するscFvドメインを含む、例えば、機能性抗体分子を含み、それにより治療化合物は、例えば、標的に結合したときに、PD-1を活性化する。治療化合物は、同種移植片を標的とし、同種移植片に局所免疫特権を提供する。
【0145】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、表3の抗原に優先的に結合し、対象、例えば、自己免疫障害、例えば、表3の自己免疫障害を有する対象の標的に局在化される標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、それは、他の組織と結合しない、または実質的に結合しない。いくつかの実施形態では、治療化合物は、例えば、PD-1のリガンドのフラグメント(例えば、PD-L1またはPD-L2のフラグメント)を含むICIM結合/調節部分、例えば、阻害分子カウンターリガンド分子、または別の部分、例えば、PD-1と結合するscFvドメインを含む、例えば、機能性抗体分子を含み、それにより治療化合物は、例えば、標的に結合したときに、PD-1を活性化する。治療化合物は、自己免疫攻撃の対象となる組織対象を標的とし、該組織に局所免疫特権を提供する。
【0146】
PD-L1及びPDL2、またはそれらに由来するポリペプチドは、候補ICIM結合部分を提供することができる。しかしながら、単量体形態では、例えば、治療化合物が血液またはリンパ内を循環しているとき、この分子は、PD-L1/PD-1経路を拮抗する望ましくない作用を有する可能性があり、標的、例えば、標的臓器の表面上でクラスター化または多量体化するときにのみ、PD-1経路を刺激し得る。いくつかの実施形態では、治療化合物は、機能性抗体分子、例えば、scFvドメインを含むICIM結合/調節部分を含み、これはPD-1経路に可溶性形態で挿入される、または実質的に挿入されるが、組織の表面上で(標的化部分により)多量体化するとき阻害性シグナルを刺激する及び駆動する。
【0147】
HLA-G:KIR2DL4/LILRB1/LILRB2経路
KIR2DL4、LILRB1、及びLILRB2は、T細胞、NK細胞、及び骨髄系細胞上に見出される阻害分子である。HLA-Gは、それぞれに対するカウンターリガンドである。
【0148】
KIR2DL4は、CD158D、G9P、KIR-103AS、KIR103、KIR103AS、KIR、KIR-2DL4、キラー細胞免疫グロブリン受容体、2つのIgドメイン及び長細胞質尾4としても知られている。LILRB1は、LILRB1、CD85J、ILT-2、ILT2、LIR-1、LIR1、MIR-7、MIR7、PIR-B、PIRB、白血球免疫グロブリン様受容体B1としても知られている。LILRB2は、CD85D、ILT-4、LIR-2、LIR2、MIR-10、MIR10、及びILT4としても知られている。
【0149】
HLA-G分子を含む治療化合物を使用して、阻害性シグナルを、KIR2DL4、LILRB1、及びLILRB2のいずれかを含む免疫細胞に、例えば、HLA-G分子を含む多量体化治療化合物分子を用いて提供する、ゆえに部位特異的免疫特権を提供することができ。
【0150】
刺激性抗KIR2DL4、抗LILRB1、または抗LILRB2抗体分子を含む治療化合物を使用して、阻害性シグナルを、KIR2DL4、LILRB1、及びLILRB2のいずれかを含む免疫細胞に提供することができる。
【0151】
HLA-Gは、多量体化したときにのみ、例えば、細胞の表面上に発現されるときまたはビーズの表面にコンジュゲートしたときにのみ、阻害性シグナルを送達する。実施形態では、治療化合物が溶液中で多量体化しない(または有意なレベルの阻害分子刺激化をもたらすほど十分に多量体化しない)HLA-G分子を含む治療化合物が提供される。溶液中での多量体化を最小限に抑えるHLA-G分子の使用により、免疫細胞の全身刺激化及び望ましくない免疫抑制が最小限に抑えられるだろう。
【0152】
理論により束縛されることを望まないが、HLA-Gは、多量体化しない限り、下方制御に有効ではないと考えられ、治療化合物の標的化部分を通した標的への結合は、ICIM結合実体を多量体化し、多量体化したICIM結合実体は、免疫細胞の表面上の阻害分子と結合し、これをクラスター化し、ゆえに、免疫細胞を下方制御する負のシグナルを媒介する。ゆえに、抗原提示細胞ならびに他の骨髄細胞、NK細胞及びT細胞を含む標的組織を損傷しようとする浸潤免疫細胞は下方制御される。
【0153】
HLA-G分子は単量体の形態が望ましい場合に拮抗作用を最小限に抑えるが、LIRLB1とLILRB2の重複性は、単量体の拮抗作用があっても全身への影響を最小限に抑えるだろう。
【0154】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、HLA-G分子、例えば、B2M不含アイソフォーム(例えば、HLA-G5)を含むICIM結合/調節部分を含む、Carosella et al.,Advances in Immunology,2015,127:33を参照されたい。B2M不含フォーマットでは、HLA-Gは、LILRB2と優先的に結合する。
【0155】
HLA-G分子の構築に好適な配列には、GenBank P17693.1RecName:Full=HLAクラスI組織適合性抗原、アルファ鎖G;AltName:Full=HLA G抗原;AltName:Full=MHCクラスI抗原G;フラグ:前駆体、またはMVVMAPRTLFLLLSGALTLTETWAGSHSMRYFSAAVSRPGRGEPRFIAMGYVDDTQFVRFDSDSACPRMEPRAPWVEQEGPEYWEEETRNTKAHAQTDRMNLQTLRGYYNQSEASSHTLQWMIGCDLGSDGRLLRGYEQYAYDGKDYLALNEDLRSWTAADTAAQISKRKCEAANVAEQRRAYLEGTCVEWLHRYLENGKEMLQRADPPKTHVTHHPVFDYEATLRCWALGFYPAEIILTWQRDGEDQTQDVELVETRPAGDGTFQKWAAVVVPSGEEQRYTCHVQHEGLPEPLMLRWKQSSLPTIPIMGIVAGLVVLAAVVTGAAVAAVLWRKKSSD(配列番号5)が含まれる。候補HLA-G分子を、例えば、“Synthetic HLA-G proteins for therapeutic use in transplantation”LeMaoult et al.,2013The FASEB Journal27:3643に記載のものと類似の方法により、方法及び化合物における使用に関する適合性について検査することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、対象に存在しない、実質的に低いレベルで存在するドナー抗原、例えば、表2からのドナー抗原と優先的に結合し、対象のドナー移植組織に局在化する標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、それは、他の組織と結合しない、または実質的に結合しない。いくつかの実施形態では、治療化合物は、HLA-A2に対して特異的であり、ドナー同種移植片と特異的に結合するが、宿主組織と結合せず、KIR2DL4、LILRB1、またはLILRB2と結合するHLA-G分子を含むICIM結合/調節部分と組み合わされる標的化部分を含むことができ、それにより治療化合物は、例えば、標的に結合したときに、KIR2DL4、LILRB1、またはLILRB2を活性化する。治療化合物は、同種移植片を標的とし、同種移植片に局所免疫特権を提供する。
【0157】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、組織特異的抗原、例えば、表3からの抗原と優先的に結合し、対象、例えば、自己免疫障害、例えば、表3からの自己免疫障害を有する対象の標的部位に局在化する、標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、それは、他の組織と結合しない、または実質的に結合しない。実施形態では、治療化合物は、KIR2DL4、LILRB1、またはLILRB2と結合するHLA-G分子を含むICIM結合/調節部分を含み、それにより治療化合物は、例えば、標的に結合したときに、KIR2DL4、LILRB1、またはLILRB2を活性化する。治療化合物は、自己免疫攻撃の対象となる組織を標的とし、該組織に局所免疫特権を提供する。
【0158】
LILRB1にも結合できる安定した可溶性のHLA-G-B2M融合タンパク質を操作することはおそらく可能である。例えば、HLA-Gの結晶構造は、HLA-G/B2M単量体を使用して決定された(Clements et al.2005PNAS102:3360)
【0159】
FCRLファミリー
FCRL1~6は、一般的に、B細胞活性化または機能を阻害する。これらの1型膜貫通糖タンパク質は、異なる組み合わせの5種の免疫グロブリン様ドメインから構成され、各タンパク質は、3~9ドメインからなり、FCRLタンパク質全部を通して保存される個々のドメインタイプはない。一般に、FCR発現は、リンパ球に限定され、Bリンパ球にて主に発現する。一般的に、FCRLは、B細胞の活性化を抑制するように機能する。
【0160】
ICIM結合/調節部分は、刺激性抗BCMA抗体分子を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療化合物は、抗FCRL抗体分子及び抗B細胞受容体(BCR)抗体分子を含む。理論により束縛されることを望まないが、両方の特異性の抗体分子を含む治療化合物は、FCRLをBCRに近接させ、BCRシグナル伝達を阻害すると考えられている。
【0161】
ブチロフィリン及びブチロフィリン様分子
エフェクター結合/調節部分は、ブチロフィリンのアゴニストまたはアンタゴニストを含むことができる。いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、刺激性のまたは機能性BTN1A1分子、BTN2A2分子、BTNL2分子、またはBTNL1分子。
【0162】
機能性BTNXi分子(ここでXi=1A1、2A2、L2またはL1)は、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の一部として、T細胞を阻害するのに十分なBTNXi配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、BTNXi分子は、天然に生じるブチロフィリンまたはブチロフィリン様分子と、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。
【0163】
いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、拮抗性BTNL8分子。
【0164】
拮抗性BTNL8分子は、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の一部として、それが休止T細胞によるサイトカインの活性化、増殖、または分泌を阻害するのに十分なBTNL8配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、BTNL8分子は、天然に生じるブチロフィリンと、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。
【0165】
IIC結合/調節部分:免疫抑制性T細胞を動員するエフェクター結合/調節部分
いくつかの実施形態では、治療化合物は、部位特異的免疫特権を提供する標的化部分により媒介される部位で、免疫抑制細胞、例えば、免疫抑制性T細胞と結合する、これを活性化する、または保持するエフェクター結合/調節部分、例えば、IIC結合/調節部分を含む。IIC結合/調節部分、例として、例えば、scFv結合ドメインを含む、抗体分子を含むIIC結合/調節部分は、免疫抑制細胞タイプ、例えば、Treg、例えば、Foxp3+CD25+Tregと結合する。臓器、組織または特異的細胞タイプ寛容は、標的臓器近位のTregの圧倒的な増加及び浸潤を伴う;実施形態では、本明細書に記載の方法及び化合物は、この生理学的状態を、人工的に再現し、模倣する。Tregの蓄積の際に、免疫抑制性微小環境が作り出され、これは免疫系から関心対象の臓器を保護するように機能する。
【0166】
TREG及びTGFB標的化分子としてのGARP結合因子
GARPは、活性化Tregの表面上に発現される潜在型TGF-ベータに対する膜タンパク質受容体である(Tran et al.2009PNAS106:13445及びWang et al.2009PNAS106:13439)。いくつかの実施形態では、治療化合物は、可溶性GARP及びGARP発現細胞、例えば活性化ヒトTregの一方または両方と結合するIIC結合実体、ならびに関心対象の標的組織に対して治療化合物を標的とする標的化部分を含む。GARP結合因子を含むIIC結合/調節部分は、例えば、抗GARP抗体分子、例えば、抗GARP scFvドメインを含むIIC結合/調節部分を含む。理論により束縛されることを望まないが、GARP結合因子を含む治療化合物は、GARP発現Tregの、治療化合物の標的化部分により標的とされる部位、例えば、移植片または臓器傷害の部位での蓄積に作用すると考えられている。再度、理論により束縛されることを望まないが、GARP結合因子を含む治療化合物は、可溶性GARPの臓器傷害の部位での蓄積に作用することもできると考えられ、これは、TGFB1、免疫抑制性サイトカインと、局所様式で結合し、これを活性化する機能を果たすだろう(Fridrich et al.2016 PLoS One11:e0153290;doi:10.1371/journal.pone.0153290及びHahn et al.2013 Blood15:1182)。ゆえに、GARP結合因子を含むエフェクター結合/調節部分は、IIC結合/調節部分またはSM結合/調節部分のいずれとしても作用することができる。
【0167】
TREG標的化及びTエフェクター細胞サイレンシング分子としてのCTLA4
いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、Tregの表面上に発現されるCTLA4と結合する、例えば、抗体分子、例えば、scFvドメインを含む。治療分子は、CTLA4+Tregを標的部位にて蓄積または保持し、局所免疫抑制の結果を伴う。
【0168】
Treg上でより高く発現するが、CTLA4は、活性化T細胞上でも発現する。エフェクター結合/調節部分、例えば、抗CTLA4抗体、または機能性抗CTLA4抗体を含む治療化合物は、CTLA4発現T細胞を下方制御することができる。ゆえに、CTLA4と結合するエフェクター結合/調節部分を含む治療化合物では、エフェクター部分は、ICIM結合/調節部分としても作用することができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、抗CTLA4結合因子は、単量体フォーマットでは拮抗も刺激もせず、標的への結合の際にクラスター化または多量体化するときにのみ刺激する。
【0170】
理論により束縛されることを望まないが、治療化合物の、標的化部分を介した、標的への結合が、治療化合物の多量体化に作用すると考えられる。メモリー及び活性化T細胞の場合では、治療化合物のエフェクター結合/調節部分により結合されたCTLA4は、クラスター形成し、CTLA4の結合による阻害性シグナルがメモリー及び活性化T細胞により発現される
【0171】
いくつかの実施形態では、抗CTLA4結合因子は、単量体フォーマットでは拮抗も刺激もせず、標的への結合の際にクラスター化または多量体化するときにのみ刺激する。
【0172】
GITR結合因子
GITR(CD357)は、Treg上に存在する細胞表面マーカーである。GITR-GITRL相互作用の遮断により、Treg機能は維持される。いくつかの実施形態では、治療化合物は、GITR発現Treg細胞と結合するIIC結合実体及び関心対象の標的組織に対して治療化合物を標的とする標的化部分を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、抗GITR抗体分子、例えば、GITRのGITRLへの結合を阻害する抗GITR抗体分子を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、抗GITR抗体分子、GITRのGITRLへの結合を阻害する抗GITR抗体分子、及びPD-1アゴニストまたは本明細書に記載の他のエフェクターを含む。
【0175】
理論により束縛されることを望まないが、GITR結合因子を含む治療化合物は、GITR発現Tregの、治療化合物の標的化部分により標的とされる部位、例えば、移植片または臓器傷害の部位での蓄積に作用すると考えられている。
【0176】
ブチロフィリン/ブチロフィリン様分子
エフェクター結合/調節部分は、刺激性のBTNL2分子を含むことができる。理論により束縛されることを望まないが、刺激性のBNL2分子は、Treg細胞を誘導すると考えられている。
【0177】
刺激性のBTNL2分子は、該用語を本明細書で使用する場合、治療化合物の一部として、Treg細胞を誘導するのに十分なBTNL2配列を有するポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、BTNL2分子は、天然に生じるブチロフィリンと、少なくとも60、70、80、90、95、99、もしくは100%配列同一性、または実質的な配列同一性を有する。
【0178】
いくつかの実施形態では、エフェクター結合/調節部分は、拮抗性BTNL8分子。
【0179】
SM結合/調節部分を含む治療化合物:局所微小環境の操作
治療化合物は、例えば、標的の近くに、標的の免疫系による攻撃を阻害するまたは最小限に抑える物質を提供することにより、免疫抑制性局所微小環境を促進するエフェクター結合/調節部分を含むことができ、これは本明細書ではSM結合/調節部分と称される。
【0180】
いくつかの実施形態では、SM結合/調節部分は、標的の免疫系による攻撃を阻害するまたは最小限に抑える分子を含む(本明細書ではSM結合/調節部分と称する)。いくつかの実施形態では、治療化合物は、免疫抑制機能を有する可溶性物質、例えば、内因性または外因性物質と結合し、これを蓄積させるSM結合/調節部分を含む。いくつかの実施形態では、治療化合物は、SM結合/調節部分、例えば、CD39分子もしくはCD73分子またはアルカリホスファターゼ分子を含み、これは、免疫攻撃を促進する可溶性物質、典型的には及び内因性可溶性物質、例えば、CD39分子もしくはアルカリホスファターゼ分子の場合はATP、またはCD73分子の場合はAMPと結合する、阻害する、隔離する、分解するまたはそうでなければ中和する。いくつかの実施形態では、治療化合物は、免疫抑制物質、例えば、免疫抑制性であるタンパク質のフラグメントを含むSM結合/調節部分を含む。
【0181】
ドナー組織
本明細書に記載の治療化合物及び方法は、対象へのドナー組織の移植と併せて使用することができ、ドナー移植組織の拒絶反応を最小限に抑える、ドナー移植組織に対する免疫エフェクター細胞が媒介する損傷を最小限に抑える、ドナー移植組織の許容を延長する、またはドナー移植組織の機能性寿命を延長することができる。組織は、異種移植または同種移植組織であることができる。移植された組織は、臓器、例えば、肝臓、腎臓、心臓、膵臓、胸腺、皮膚または肺の全部または一部を含むことができる。実施形態では、本明細書に記載の治療化合物は、全身免疫抑制の必要性を低下させる、または排除する。本明細書に記載の治療化合物及び方法は、GVHDを処置するためにも使用することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、エフェクター結合/調節部分として、PD-L1分子を含む治療化合物でコーティングされる。
【0182】
表2は、移植適応症に関する標的分子を提供する。標的分子は、標的化部分が結合する標的である。本明細書の他の部分で考察するように、いくつかの実施形態では、標的化部分は、ドナー組織上に存在し、対象(レシピエント)により発現されないまたは異なる(例えば、低下したまたは実質的に低下した)レベルで発現される対立遺伝子の産物と結合するように選択される。
【表2】
【0183】
自己免疫障害
本明細書に記載の治療化合物及び方法を使用して、望ましくない自己免疫応答、例えば、1型糖尿病、多発性硬化症、心筋炎、白斑、脱毛症、炎症性腸疾患(IBD、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、シェーグレン症候群、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、強皮症/全身性硬化症(SSc)または関節リウマチにおける自己免疫応答を有するまたはこれを有するリスクがある対象を処置することができる。いくつかの実施形態では、処置は、自己免疫攻撃を受けている、またはそのリスクがある対象組織の拒絶反応を最小限に抑える、該対象組織に対する免疫エフェクター細胞が媒介する損傷を最小限に抑える、該対象組織の寿命を延長する。表3は、いくつかの自己免疫適応症に関する標的分子及び臓器/細胞タイプを提供する。標的分子は、標的化部分が結合する標的である。
【表3】
【表4】
【0184】
本明細書に記載の化合物を用いて処置することができる自己免疫障害及び疾患の他の例としては、心筋炎、心筋梗塞後症候群症候群、心膜切開後症候群、亜急性細菌性心内膜炎、抗糸球体基底膜腎炎、間質性膀胱炎、ループス腎炎、膜性糸球体腎症、慢性腎臓疾患(「CKD」)、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、抗合成酵素症候群、円形脱毛症、自己免疫血管浮腫、自己免疫プロゲステロン皮膚炎、自己免疫蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、円板状エリテマトーデス、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、リニアIgA病(lad)、モルフェア、尋常性天疱瘡、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、ムッハ・ハーベルマン病、乾癬、全身強皮症、白斑、アジソン病、多腺性自己免疫症候群(APS)1型、多腺性自己免疫症候群(APS)2型、多腺性自己免疫症候群(APS)3型、自己免疫膵炎(AIP)、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、オード甲状腺炎、グレーブス病、自己免疫卵巣炎、子宮内膜症、自己免疫精巣炎、シェーグレン症候群、自己免疫腸疾患、小児脂肪便症、クローン病、顕微鏡的大腸炎、潰瘍性大腸炎、血小板低下症、有痛、脂肪症、成人発症スティル、病、強直性、脊椎炎、クレスト症候群、薬剤誘発性ループス、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、フェルティ症候群、IgG4関連疾患、若年性、関節炎、ライム病(慢性)、複合性結合織疾患(MCTD)、回帰性リウマチ、パリーロムベルグ症候群、パーソネイジ・ターナー症候群、乾癬性関節炎、反応性関節炎、再発性多発性軟骨炎、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュニッツラー症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、未分化型結合組織病(UCTD)、皮膚筋炎、筋線維痛、封入体筋炎、筋炎、重症筋無力症、神経性筋強直症、傍腫瘍性小脳変性症、多発性筋炎、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性運動性軸索型ニューロパチー、抗N-メチル-D-アスパラギン酸塩(抗NMDA)受容体脳炎、バロー同心円性硬化症、ビッカースタッフ脳炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギランバレー症候群、橋本脳症、特発性炎症性脱髄性疾患、ランバート・イートン型筋無力症候群、多発性硬化症、オシュトラン症候群、レンサ球菌感染性小児自己免疫神経精神障害(PANDAS)、進行性炎症性ニューロパチー、下肢静止不能症候群、スティッフパーソン症候群、シデナム舞踏病、横断性脊髄炎、自己免疫網膜症、自己免疫ぶどう膜炎、コーガン症候群、グレーブス眼症、中間部ぶどう膜炎、木質性結膜炎、モーレン潰瘍、視神経脊髄炎、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、強膜炎、スザック症候群、交感性眼炎、トロサ-ハント症候群、自己免疫内耳疾患(AIED)、メニエール病、ベーチェット病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、巨細胞性動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症(Granulmatosis)(GPA)、IgA血管炎(IgAV)、川崎病、白血球破砕性血管炎、ループス血管炎、リウマチ性血管炎、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、結節性多発動脈炎(PAN)、リウマチ性多発筋痛症、血管炎、原発性免疫不全、などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
本明細書に記載の化合物を用いて処置することができる潜在的な自己免疫障害及び疾患、ならびに自己免疫併存症の他の例としては、慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、好酸球性食道炎、胃炎(Gastirtis)、間質性肺疾患、POEMS症候群、レイノー現象、原発性免疫不全症、壊疽性膿皮症、無ガンマグロブリン血症、アニロイドーシス(anyloidosis)、筋萎縮性側索硬化症(Anyotrophic lateral sclerosis)、抗尿細管基底膜腎炎、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性末梢ニューロパチー、ブラウ症候群、キャッスルマン病、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患、慢性再発性多発性骨髄炎、補体成分2欠乏症、接触性皮膚炎、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病(Dego’deiase)、湿疹、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、胎児赤芽球症(Erythroblastosis fetalsis)、進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia ossificans progressive)、消化管類天疱瘡、低ガンマグロブリン血症、特発性巨細胞心筋炎、特発性肺線維症、IgA腎症、免疫制御性リポタンパク質、IPEX症候群、木質性結膜炎(Ligenous conjunctivitis)、マジード症候群、ナルコレプシー、ラスムッセン脳炎、統合失調症、血清病、脊椎関節症(Spondyloathropathy)、スウィート症候群、高安動脈炎、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
いくつかの実施形態では、自己免疫障害は、尋常性天疱瘡、天疱瘡を含まない。いくつかの実施形態では、自己免疫障害は、落葉状天疱瘡を含まない。いくつかの実施形態では、自己免疫障害は、水疱性類天疱瘡を含まない。いくつかの実施形態では、自己免疫障害は、グッドパスチャー疾患を含まない。いくつかの実施形態では、自己免疫障害は、乾癬を含まない。いくつかの実施形態では、自己免疫障害は、皮膚障害を含まない。いくつかの実施形態では、該障害は、新生物障害、例えば、がんを含まない。
【0187】
治療化合物
治療化合物は、エフェクター結合/調節部分と機能的に関連する特異的標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、特異的標的化部分及びエフェクター結合/調節部分は、互いに共有結合または非共有結合により連結している、例えば、一方を他方に共有結合または非共有結合的に直接連結している。他の実施形態では、特異的標的化部分及びエフェクター結合/調節部分は、例えば、共有結合的にまたは非共有結合的に、リンカー部分を通して連結している。例えば、融合ポリペプチドの場合、特異的標的化部分を含むポリペプチド配列及びポリペプチド配列は、互いに直接連結するかまたは1つもしくは複数のリンカー配列を通して連結することができる。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、ポリペプチドを含む。リンカーは、しかしながら、ポリペプチドに限られない。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、他の骨格、例えば、非ペプチドポリマー、例えば、PEGポリマーを含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、粒子、例えば、ナノ粒子、例えば、ポリマーナノ粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、分岐状分子、またはデンドリマーを含むことができる。しかしながら、実施形態では、標的結合の非存在下でクラスター形成をもたらす、エフェクター結合/調節部分がICIM結合/調節部分(エフェクター様PD-1と結合する)を含む構造は、それらが標的結合の非存在下でクラスター形成を引き起こす可能性があるために回避されるべきである。ゆえに、実施形態では、治療化合物は、例えば、ICIMのコピーが、標的結合の非存在下でのクラスター形成が最小限に抑えられるまたは実質的に排除される、もしくは排除されるほど十分に制限される、あるいは実質的な全身免疫抑制が生じないほど十分に最小限に抑えられる構造を有する。
【0188】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、エフェクター結合/調節部分に共有結合的にまたは非共有結合的にコンジュゲートした特異的標的化部分を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、治療分子は、エフェクター結合/調節部分に、例えば、直接的にまたは1つもしくは複数のアミノ酸残基を含む連結部分を通して、融合した特異的標的化部分を有して含む融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、治療分子は、エフェクター結合/調節部分に、非共有結合または共有結合、例えば、ペプチド結合以外の共有結合、例えば、スルフヒドリル結合により、連結した特異的標的化部分を含むポリペプチドを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、
1.a)標的特異的結合ポリペプチドを含む特異的標的化部分;
1.b)標的リガンド結合分子を含む特異的標的化部分;
1.c)抗体分子を含む特異的標的化部分;
1.d)一本鎖抗体分子、例えば、scFvドメインを含む特異的標的化部分;または
1.e)抗体分子の軽鎖もしくは重鎖可変領域の第一を含む特異的標的化部分、ここで他の可変領域は、第一と共有結合的にまたは非共有結合的に会合する;
及び
2.a)エフェクター特異的結合ポリペプチドを含むエフェクター結合/調節部分;
2.b)エフェクターリガンド結合分子を含むエフェクター結合/調節部分;
2.c)抗体分子を含むエフェクター結合/調節部分;
2.d)一本鎖抗体分子、例えば、scFvドメインを含むエフェクター結合/調節部分;または
2.e)抗体分子の軽鎖もしくは重鎖可変領域の第一を含むエフェクター結合/調節部分、ここで他の可変領域は、共有結合的にまたは非共有結合的に第一と会合している、
を含むポリペプチド、例えば、融合ポリペプチドを含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.a及び2.aを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.a及び2.bを含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.a及び2.cを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.a及び2.dを含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.a及び2.eを含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.b及び2.aを含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.b及び2.bを含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.b及び2.cを含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.b及び2.dを含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.b及び2.eを含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.c及び2.aを含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.c及び2.bを含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.c及び2.cを含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.c及び2.dを含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.c及び2.eを含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.d及び2.aを含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.d及び2.bを含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.d及び2.cを含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.d及び2.dを含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.d及び2.eを含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.e及び2.aを含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.e及び2.bを含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.e及び2.cを含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.e及び2.dを含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、1.e及び2.eを含む。
【0215】
本明細書に開示の治療化合物は、例えば、複数のエフェクター結合/調節及び特異的標的化部分を含むことができる。任意の好適なリンカーまたはプラットフォームを使用して、複数の部分を提示することができる。リンカーは、典型的には、1つまたは複数のエフェクター結合/調節及び標的化部分に連結または融合される。
【0216】
いくつかの実施形態では、2つ(またはそれ以上)のリンカーは、共有結合的にまたは非共有結合的に、のいずれかで会合して、例えば、ヘテロまたはホモ二量体治療化合物を形成する。例えば、リンカーは、Fc領域及び互いに会合する2つのFc領域を含むことができる。2つのリンカー領域を含む治療化合物のいくつかの実施形態では、リンカー領域は、例えば、2つの同一のFc領域として自己会合することができる。2つのリンカー領域を含む治療化合物のいくつかの実施形態では、リンカー領域は、自己会合できないまたは実質的な自己会合できない、例えば、2つのFc領域は、ノブアンドホール対のメンバーであることができる。
【0217】
治療化合物の非限定的例示的な構成は、以下(例えば、NからC末端の順番で)、
R1---リンカー領域A-R2
R3---リンカー領域B---R4を含み、
式中、
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分;特異的標的化部分を含む;または存在せず;
リンカー領域A及びリンカーBは、互いに会合することができる部分を含み、例えば、リンカーA及びリンカーBは、それぞれFc部分を含む、ただしエフェクター結合/調節部分及び特異的標的化部分が存在することを条件とする。
【0218】
いくつかの実施形態では、
R1は、エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分を含む、または存在しない;
R2は、特異的標的化部分を含む、または存在しない;
R3は、エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分を含む、または存在しない;
R4は、特異的標的化部分を含む、または存在しない;
リンカー領域A及びリンカーBは、互いに会合することができる部分を含み、例えば、リンカーA及びリンカーBは、それぞれFc部分を含む、ただしR1またはR3のうちの一方が存在する及びR2またはR4のうちの一方が存在することを条件とする。
【0219】
いくつかの実施形態では、
R1は、特異的標的化部分を含む、または存在しない;
R2は、エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分を含む、または存在しない;
R3は、特異的標的化部分を含む、または存在しない;
R4は、エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分を含む、または存在しない;
リンカー領域A及びリンカーBは、互いに会合することができる部分を含み、例えば、リンカーA及びリンカーBは、それぞれFc部分を含む、ただしR1またはR3のうちの一方が存在する及びR2またはR4のうちの一方が存在することを条件とする。
【0220】
非限定的な例には、限定されないが、以下を含む。
【表5】
【表6】
【0221】
いくつかの実施形態では、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、免疫細胞、例えば、T細胞もしくはB細胞上の阻害性受容体、例えば、PD-L1分子もしくは機能性抗PD-1抗体分子(PD-1のアゴニスト)を活性化するエフェクター結合調節部分;特異的標的化部分を含む;または存在しない;
ただし、エフェクター結合部分及び特異的標的化部分が存在することを条件とする。
【0222】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分)を含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、独立して、免疫細胞、例えば、T細胞またはB細胞上の阻害性受容体、例えば、PD-L1分子または機能性抗PD-1抗体分子(PD-1のアゴニスト)を活性化するエフェクター結合調節部分を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分)を含む。
【0225】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、独立して、機能性抗PD-1抗体分子(PD-1のアゴニスト)を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0226】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分)を含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、独立して、特異的標的化部分、例えば、抗組織抗原抗体を含み;
R2及びR4は、独立して、機能性抗PD-1抗体分子(PD-1のアゴニスト)、例えば、scFv分子を含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分)を含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、独立して、PD-L1分子(PD-1のアゴニスト)を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含み;
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分)を含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、独立して、特異的標的化部分、例えば、抗組織抗原抗体を含み;
R2及びR4は、独立して、PD-L1分子(PD-1のアゴニスト)を含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分)を含む。
【0232】
いくつかの実施形態では、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ATPもしくはAMPなどの免疫応答を調節する物質、例えば、可溶性分子を、調節する、例えば、これと結合し、これを阻害する、隔離する、分解するもしくはそうでなければ中和するSM結合/調節部分、例えば、CD39分子もしくはCD73分子;特異的標的化部分を含む;または存在しない;ただし、SM結合/調節部分及び特異的標的化部分が存在することを条件とする。
【0233】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0234】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、独立して、ATPもしくはAMPなどの免疫応答を調節する物質、例えば、可溶性分子を、調節する、例えば、これと結合し、これを阻害する、隔離する、分解するもしくはそうでなければ中和するSM結合/調節部分、例えば、CD39分子もしくはCD73分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0235】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、独立して、CD39分子またはCD73分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0237】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0238】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、それぞれ、CD39分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む;
【0239】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0240】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、それぞれ、CD73分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3のうちの一方は、CD39分子を含み、他方は、CD73分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0243】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、HLA-G分子;特異的標的化部分を含む;または存在しない;
ただし、HLA-G分子及び特異的標的化部分が存在することを条件とする。
【0245】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、それぞれ、HLG-A分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0248】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、それぞれ、刺激性抗LILRB1抗体分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0250】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、それぞれ、刺激性抗KIR2DL4抗体分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0251】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0252】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、それぞれ、刺激性抗LILRB2抗体分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0254】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、それぞれ、刺激性抗NKG2A抗体分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0255】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0256】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3のうちの一方が、拮抗性抗LILRB1抗体分子、刺激性抗KR2DL4抗体分子、及び刺激性抗NKG2A抗体分子から選択される第一の部分を含み、他方がこれらから選択される異なる部分を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0257】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0258】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3のうちの一方が、拮抗性抗LILRB1抗体分子を含み、他方が、刺激性抗KR2DL4抗体分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0259】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0260】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3のうちの一方が、拮抗性抗LILRB1抗体分子を含み、他方が、刺激性抗NKG2A抗体分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0261】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0262】
いくつかの実施形態では、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、B細胞上の阻害性受容体、例えば、抗FCRL抗体分子、例えば、刺激性抗FCRL抗体分子を活性化するエフェクター結合調節部分;特異的標的化部分を含む;または存在しない;
ただし、エフェクター結合部分及び特異的標的化部分が存在することを条件とする。
【0263】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0264】
実施形態では、抗FCRL分子は、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、またはFCRL6に指向する抗FCRL抗体分子、例えば、刺激性抗FCRL抗体分子を含む。
【0265】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、それぞれ、刺激性抗FCRL抗体分子を含み;
R2及びR4は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む。
【0266】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0267】
実施形態では、抗FCRL分子は、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、またはFCRL6に指向する抗FCRL抗体分子、例えば、刺激性抗FCRL抗体分子を含む。
【0268】
いくつかの実施形態では、
R1及びR3は、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対する抗体分子を含み;
R2及びR4は、それぞれ、抗FCRL抗体分子、例えば、刺激性抗FCRL抗体分子、例えば、scFv分子を含む。
【0269】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0270】
実施形態では、抗FCRL分子は、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、またはFCRL6に指向する抗FCRL抗体分子、例えば、刺激性抗FCRL抗体分子を含む。
【0271】
いくつかの実施形態では、
R1、R2、R3及びR4のうちの1つが、抗BCR抗体分子、例えば、拮抗性抗BCR抗体分子を含み、1つが抗FCRL抗体分子を含み、1つが特異的標的化部分を含む。
【0272】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0273】
いくつかの実施形態では、抗FCRL分子は、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、またはFCRL6に指向する抗FCRL抗体分子、例えば、刺激性抗FCRL抗体分子を含む。
【0274】
いくつかの実施形態では、
R1、R2、R3及びR4のうちの1つが、抗BCR抗体分子、例えば、拮抗性抗BCR抗体分子及び抗FCRL抗体分子を含む二重特異性抗体分子を含み、1つが特異的標的化部分を含む;
【0275】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0276】
実施形態では、抗FCRL分子は、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、またはFCRL6に指向する抗FCRL抗体分子、例えば、刺激性抗FCRL抗体分子を含む。
【0277】
いくつかの実施形態では、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、
i)T細胞活性、拡大、もしくは機能を最小化もしくは阻害する、エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、ICSM結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分(T細胞エフェクター結合/調節部分);
ii)B細胞活性、拡大、もしくは機能を最小化もしくは阻害するエフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、ICSM結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分(B細胞エフェクター結合/調節部分);
iii)特異的標的化部分を含む;または
iv)存在しない;
ただし、T細胞エフェクター結合/調節部分、B細胞エフェクター結合/調節部分、及び特異的標的化部分が存在することを条件とする。
【0278】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分)を含む。
【0279】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、刺激性抗PD-1抗体を含み、1つがHLA-G分子を含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、SM結合/調節部分、例えば、CD39分子またはCD73分子を含む。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、制御性免疫細胞、例えば、Treg細胞またはBreg細胞と結合し、これを活性化または維持する実体を含む。
【0281】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、刺激性抗PD-1抗体を含む、または1つがHLA-G分子を含む。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、刺激性抗PD-1抗体を含み、1つがHLA-G分子を含み、1つがCD39分子またはCD73分子を含む。
【0282】
リンカー領域
本明細書の他の箇所に考察するように、特異的標的化及びエフェクター結合/調節部分は、リンカー領域により連結されることができる。本明細書に記載の任意のリンカー領域を、リンカーとして使用することができる。例えば、リンカー領域A及びBは、Fc領域を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療化合物は、自己会合することができるリンカー領域を含む。いくつかの実施形態では、治療化合物は、自己会合を最小限に抑える部分を有するリンカー領域を含み、典型的にはリンカー領域A及びリンカー領域Bは、ヘテロ二量体である。リンカーは、グリシン/セリンリンカーも含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のGGGGS(配列番号6)の反復を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、または5反復を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGS(配列番号7)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)を含む。これらのリンカーは、本明細書に提供する治療化合物または組成物のいずれにおいても使用することができる。
【0283】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、ポリペプチドである治療化合物を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、N末端で、IgG Fc骨格のC末端上のscFvと融合したIgG1Fc骨格上のF(ab’)2から構成される抗体を含む。いくつかの実施形態では、IgG Fc骨格は、IgG1Fc骨格である。いくつかの実施形態では、IgG1骨格は、IgG4骨格、IgG2骨格、または他の同様のIgG骨格と置き換えられる。本段落に記載されるIgG骨格は、Fc領域が、本治療化合物の一部であると称される場合に本出願全体を通して使用することができる。ゆえに、いくつかの実施形態では、IgG1Fc骨格上のF(ab’)2から構成される抗体は、IgG1Fc上の抗MAdCAM抗体もしくは抗PD-1抗体または本明細書に提供する任意の他の標的化部分またはエフェクター結合/調節部分であることができる。いくつかの実施形態では、C末端に融合したscFVセグメントは、N末端領域が抗MAdCAM抗体である場合、抗PD-1抗体であり得る、またはN末端領域が抗PD-1抗体抗である場合、MAdCAM抗体であり得る。この非限定的な例では、N末端は、本明細書に提供されるもののいずれか1つなどの標的化部分であることができ、C末端は、本明細書に提供されるもののいずれかなどのエフェクター結合/調節部分であることができる。あるいは、いくつかの実施形態では、N末端は、本明細書に提供されるもののいずれか1つなどのエフェクター結合/調節部分であることができ、C末端は、本明細書に提供されるもののいずれかなどの標的化部分であることができる。
【0284】
いくつかの実施形態では、N末端は、本明細書に提供されるもののいずれか1つなどの標的化部分であることができ、C末端は、本明細書に提供されるもののいずれかなどのエフェクター結合/調節部分であることができる。
【0285】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、ホモ二量体形成する2つのポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのN末端は、ヒトIgG1Fcドメイン(例えば、CH2及び/またはCH3ドメイン)に融合しているエフェクター結合/調節部分を含む。いくつかの実施形態では、FcドメインのC末端は、標的化部分に融合している別のリンカーである。ゆえに、いくつかの実施形態では、分子は、R1-リンカーA-Fc領域-リンカーB-R2の式を使用して表すことができ、式中、R1は、エフェクター結合/調節部分であることができ、R2は、標的化部分であり、リンカーA及びリンカーBは、独立して、本明細書に提供するリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカー1及びリンカー2は、異なる。
【0286】
いくつかの実施形態では、分子は、R1-リンカーA-Fc領域-リンカーB-R2の式を使用して表すことができ、式中、R1は、標的化部分があることができ、R2は、エフェクター結合/調節部分であり、リンカーA及びリンカーBは、独立して、本明細書に提供するリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、異なる。リンカーは、本明細書に提供する非限定的な例から選出されることができる。いくつかの実施形態では、R1及びR2は、独立して、F(ab’)2及びscFV抗体ドメインから選択される。いくつかの実施形態では、R1及びR2は、異なる抗体ドメインである。いくつかの実施形態では、scFVは、VL-VHドメイン配向にある。
【0287】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、以下:
鎖1:nt-VH1-CH1-CH2-CH3-リンカーA-scFv[VL2-リンカーB-VH2]-ct
鎖2:nt-VH1-CH1-CH2-CH3-リンカーA-scFv[VL2-リンカーB-VH2]-ct
鎖3:nt-VL1-CL-ct
鎖4:nt-VL1-CL-ct、
を含む4本のポリペプチド鎖から構成され、
式中、鎖1及び2は、互いに同一であり、鎖3及び4は、互いに同一であり、
式中、鎖1は、鎖2とホモ二量体を形成し;鎖3及び4は、鎖1及び鎖2と会合する。つまり、各軽鎖が各重鎖と会合するとき、VL1はVH1と会合し、CLはCH1と会合して、2つの機能性Fabユニットを形成する。いずれの特定の理論にも束縛されないが、各scFvユニットは、VL2及びVH2が本明細書に提供するリンカー(例えば、GGGGSG(配列番号6)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)またはGGGGSGGGGS(配列番号7)でタンデムにて共有結合的に連結するために、本質的に機能性である。リンカーA及びリンカーBの配列は、互いに独立しており、同一または異なる場合があり、本出願を通して別様に記載されている。ゆえに、いくつかの実施形態では、リンカーAは、GGGGS(配列番号6)GGGGSGGGGS(配列番号7)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)、またはGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーBは、GGGGS(配列番号6)GGGGSGGGGS(配列番号7)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)、またはGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)を含む。scFvは、NT-VH2-VL2-CTまたはNT-VL2-VH2-CT配向に配置されてよい。NTまたはntは、タンパク質のN末端を表し、CTまたはctは、タンパク質のC末端を表す。CH1、CH2、及びCH3は、IgG Fc領域からのドメインであり、CLは、定常軽鎖を表し、これは、カッパまたはラムダファミリー軽鎖のいずれかであることができる。他の定義は、当該技術分野で通常使用される方法を表す。
【0288】
いくつかの実施形態では、VH1及びVL1ドメインは、エフェクター分子に由来し、VH2及びVL2ドメインは、標的化部分に由来する。いくつかの実施形態ではVH1及びVL1ドメインは、標的化部分に由来し、VH2及びVL2ドメインは、エフェクター結合/調節部分に由来する。
【0289】
いくつかの実施形態では、VH1及びVL1ドメインは、抗PD-1抗体に由来し、VH2及びVL2ドメインは、抗MAdCAM抗体に由来する。いくつかの実施形態では、VH1及びVL1ドメインは、抗MAdCAM抗体に由来し、VH2及びVL2ドメインは、抗PD-1抗体に由来する。
【0290】
いくつかの実施形態では、リンカーAは、1、2、3、4、または5GGGGS(配列番号6)反復を含む。いくつかの実施形態では、リンカーBは、1、2、3、4、または5GGGGS反復を含む。誤解を避けるために、リンカーA及びリンカーBの配列は、本出願全体を通して使用され、互いに独立している。それゆえ、いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、同一または異なる場合がある。いくつかの実施形態では、リンカーAは、GGGGS(配列番号6)GGGGSGGGGS(配列番号7)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)、またはGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーBは、GGGGS(配列番号6)GGGGSGGGGS(配列番号7)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)、またはGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)を含む。
【0291】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、軽鎖及び重鎖を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖及び重鎖は、N末端で標的化部分のVHドメインから開始し、ヒトIgG1のCH1ドメインが続き、これはヒトIgG1のFc領域(例えば、CH2-CH3)に融合する。いくつかの実施形態では、Fc領域のC末端は、本明細書に提供するリンカー、例えば限定されないが、GGGGS(配列番号6)、GGGGSGGGGS(配列番号7)またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号8)に融合している。次いで、リンカーは本明細書に提供するエフェクター部分のいずれか1つなどのエフェクター結合/調節部分に融合することができる。ポリペプチドは、ホモ二量体形成することができるが、それはなぜなら、重鎖ホモ二量体化を通して、2つのエフェクター部分、例えば2つの抗PD-1抗体を有する治療化合物がもたらされるからである。この配向では、標的化部分は、IgGフォーマットであり、それぞれが標的化部分の結合パートナーを認識する2つのFabアームがある、例えば、MAdCAMは、抗MAdCAM標的化部分により結合される。
【0292】
いくつかの実施形態では、治療化合物が、Fc部分を含む場合、Fcドメイン、(部分)は、Fc領域を「エフェクターレス」にする突然変異を有し、FcRと結合することができない。Fc領域をエフェクターレスにする突然変異は公知である。いくつかの実施形態では、Fc領域内の突然変異は、公知の番号付けシステムに従い、K322A、L235A、L236A、G237A、L235F、L236E、N297、P331S、またはその任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、Fc突然変異は、突然変異をL235及び/またはL236及び/またはG237にて含む。いくつかの実施形態では、Fc突然変異は、L235A及び/またはL236A突然変異を含み、これはと称される。いくつかの実施形態では、Fc突然変異は、L235A、L236A、及びG237A突然変異を含む。
【0293】
リンカー領域ポリペプチド、治療用ペプチド、及びポリペプチド(例えば、治療化合物)をコードする核酸、該核酸配列を含むベクター、及び該核酸またはベクターを含む細胞を本明細書に開示する。
【0294】
治療化合物は、複数の特異的標的化部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療化合物は、複数の1つの特異的標的化部分、ドナー特異的標的化部分の複数のコピーまたは複数の組織特異的標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、治療化合物は、第一の及び第二のドナー特異的標的化部分、例えば、第一のドナー標的に対して特異的な第一のドナー特異的標的化部分及び第二のドナー標的に対して特異的な第二のドナー特異的標的化部分を含み、例えば、第一の及び第二の標的は、同じドナー組織上で見出される。いくつかの実施形態では、治療化合物は、例えば、組織特異的標的のための第一の特異的標的化部分及び第二の標的のための第二の特異的標的化部分を含み、例えば、第一の及び第二の標的は、同じまたは異なる標的組織上で見出される、
【0295】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、それぞれがICIM結合/調節部分を含む複数のエフェクター結合/調節部分を含み、ICIM結合/調節部分の数は、(標的結合の非存在下で)免疫細胞上のICIM結合/調節部分のリガンドのクラスター形成が最小限に抑えられて、例えば、標的への治療化合物の結合の非存在下での免疫細胞の全身刺激を回避するように、十分に少ない。
【0296】
参照由来のポリペプチド、例えば、ヒトポリペプチド
いくつかの実施形態では、治療分子の構成要素は、参照分子に由来するまたはこれをベースとし、例えば、ヒトにおいて使用するための治療分子の場合、天然に生じるヒトポリペプチドに由来する。例えば、いくつかの実施形態では、CD39分子、CD73分子、細胞表面分子結合因子、ドナー特異的標的化部分、エフェクターリガンド結合分子、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子、阻害分子カウンターリガンド分子、SM結合/調節部分、特異的標的化部分、標的リガンド結合分子、または組織特異的標的化部分の全部または一部が、天然に生じるヒトポリペプチドをベースとするまたはこれに由来することができる。例えば、PD-L1分子は、ヒトPD-L1配列をベースとするまたはこれに由来することができる。
【0297】
いくつかの実施形態では、治療化合物構成要素、例えば、PD-L1分子は、
a)例えば、ヒトポリペプチドの天然に生じる形態の、活性部分の全部もしくは一部を含む;
b)例えば、データベース、例えば、2017年1月11日のGenBankデータベースに現れる配列を有するヒトポリペプチド、疾患状態と関連しないヒトポリペプチドの天然に生じる形態の、活性部分の全部もしくは一部を含む;
c)a)もしくはb)の配列から1、2、3、4、5、10、20、もしくは30個以下のアミノ酸残基で異なる配列を有するヒトポリペプチドを含む;
d)a)もしくはb)の配列から1、2、3、4、5 10、20、もしくは30%以下のそのアミノ酸残基で異なる配列を有するヒトポリペプチドを含む;
e)a)もしくはb)の配列から実質的に異ならない配列を有するヒトポリペプチドを含む;または
f)a)もしくはb)の配列を有するヒトポリペプチドから、生物学的活性、例えば、免疫応答を亢進もしくは阻害する能力において、実質的に異ならないc)、d)、もしくはe)の配列を有するヒトポリペプチドを含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、治療化合物は、複数のエフェクター結合/調節部分を含むことができる。例えば、治療化合物は、
(a)ICIM結合/調節部分;(b)IIC結合/調節部分;または(c)SM結合/調節部分から選択される2つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、治療化合物は、複数、例えば、2つの、ICIM結合/調節部分(これらは同一であるかまたは異なる);例として、PD-1を活性化するもしくは刺激する2つ;複数、例えば、2つの、IIC結合/調節部分;(これらは同一であるかまたは異なる);または複数、例えば、2つの、SM結合/調節部分(これらは同一であるかまたは異なる)を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療化合物は、ICIM結合/調節部分及びIIC結合/調節部分;ICIM結合/調節部分及びSM結合/調節部分;IIC結合/調節部分及びSM結合/調節部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療化合物は、複数の標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、標的化部分は、同一であるかまたは異なることができる。
【0299】
医薬組成物及びキット
別の態様では、本実施形態は、薬学的に許容され得る担体と共に製剤化された本明細書に記載の治療化合物を含む組成物、例えば、薬学的に許容され得る組成物を提供する。本明細書で用いる場合、「薬学的に許容され得る担体」には、生理的に適合性であるありとあらゆる溶媒、分散媒体、等張剤、及び吸収遅延剤などが含まれる。
【0300】
担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、直腸、局所、眼、局所性、脊髄、または表皮投与(例えば、注射または注入による)にとって好適であり得る。本明細書で用いる場合、「担体」という用語は、化合物と共に投与される、希釈剤、補助剤、または賦形剤を意味する。いくつかの実施形態では、薬学的担体は、液体、例えば水及び油であることもでき、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含む。薬学的担体は、食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素、等であることもできる。加えて、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、着色剤を使用することができる。担体は、本明細書に提供する治療化合物を含む医薬組成物において使用することができる。
【0301】
本明細書に提供する実施形態の組成物及び化合物は、多様な剤形であってよい。これらには、例えば、液体、半固体、及び固体投与剤形、例えば液体溶液(例えば、注射可能及び注入可能溶液)、分散剤または懸濁剤、リポソーム及び坐剤が含まれる。好ましい剤形は、意図される投与様式及び治療用途に依存する。典型的な組成物は、注射可能または注入可能溶液の剤形である。いくつかの実施形態では、投与様式は非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。いくつかの実施形態では、治療分子は、静脈内注入または注射により投与される。別の実施形態では、治療分子は、筋肉内または皮下注射により投与される。別の実施形態では、治療分子は、局所的に、例えば、注射により、または局所適用により標的部位に、投与される。
【0302】
本明細書で用いる場合、「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、通常、注射による、腸及び局所性投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外、及び胸骨内注射及び注入を含むがこれらに限定されない。
【0303】
治療組成物は典型的に、製造及び保存条件下で無菌かつ安定しているべきである。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散剤、リポソーム、または高い治療分子濃度にとって適した他の規則正しい構造に製剤化することができる。滅菌注射可能溶液は、活性化合物(すなわち、治療分子)を必要量で、上記で列挙した成分の1つまたは組み合せと共に適切な溶媒に組み入れた後、必要に応じて、濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散剤は、基本の分散媒体と、上記で列挙した成分からの必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を組み入れることによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌したその溶液から、活性成分に加えて任意の追加の望ましい成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要な粒子径を維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって維持することができる。注射可能組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらされ得る。
【0304】
当業者によって理解されるように、投与経路及び/または投与様式は、所望の結果に応じて変化するだろう。ある特定の実施形態では、活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達系を含む徐放性製剤などの、急速な放出に対して化合物を保護するだろう担体と共に調製され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生分解性で生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製する多くの方法が特許取得されているか、または一般的に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0305】
ある特定の実施形態では、抗体分子は、例えば不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に経口投与することができる。化合物(及び他の成分、望ましければ)はまた、硬または軟ゼラチンカプセルに封入してもよく、錠剤に圧縮してもよく、または対象の食事に直接組み入れてもよい。経口治療投与の場合、化合物を賦形剤に組み入れて、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェーハ等の剤形で使用してよい。化合物を非経口投与以外で投与するために、化合物を、その不活化を防止する材料でコーティングする必要があり得るか、またはその材料と共に同時投与する必要があり得る。治療組成物はまた、当技術分野で公知の医療用デバイスを用いて投与することができる。
【0306】
最適な望ましい応答(例えば、治療応答)を提供するために、投与レジメンを調整する。例えば、単回ボーラスを投与してよく、複数回の分割用量を経時的に投与してよく、または用量を、治療状況の緊急性に応じてそれに比例して低減もしくは増加させてよい。投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を単位投与剤形で製剤化することは特に有用である。本明細書で用いる単位投与剤形は、それぞれの単位が、必要な薬学的担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性化合物の既定量を含有する、処置される対象にとって単位用量として適した物理的に個別の単位を指す。本発明の単位投与剤形の仕様は、(a)活性化合物の独自の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためにそのような活性化合物を合成する技術分野における固有の制限、に左右され、直接依存する。
【0307】
治療化合物の治療または予防有効量の例示的な非制限的な範囲は、0.1~30mg/kg、より好ましくは1~25mg/kgである。治療化合物の投与量及び治療レジメンは、当業者が決定することができる。ある特定の実施形態では、治療化合物は、注射(例えば、皮下または静脈内)によって、約1~40mg/kg、例えば1~30mg/kg、例えば約5~25mg/kg、約10~20mg/kg、約1~5mg/kg、1~10mg/kg、5~15mg/kg、10~20mg/kg、15~25mg/kg、または約3mg/kgの用量で投与される。投与スケジュールは、例えば1週間に1回から2、3、または4週間毎に1回まで変化し得る。一実施形態では、治療化合物は、約10~20mg/kgの用量で2週間毎に1回投与される。治療化合物は、静脈内注入により、20mg/分を超える速度、例えば、20~40mg/分にて、典型的には40mg/分を超えるまたはこれに等しい速度で、約35~440mg/m2、典型的には約70~310mg/m2、及びより典型的には、約110~130mg/m2の用量に達するまで投与されることができる。実施形態では、約110~130mg/m2の注入速度は、約3mg/kgのレベルを達成する。他の実施形態では、治療化合物は、静脈内注入により、10mg/分未満、例えば、5mg/分未満またはこれに等しい速度にて、約1~100mg/m2、例えば、約5~50mg/m2、約7~25mg/m2、または、約10mg/m2の用量に達するまで投与されることができる。いくつかの実施形態では、治療化合物は、約30分間かけて注入される。投与量の値は、緩和される状態のタイプ及び重症度によって変化し得ることに留意されたい。任意の特定の対象に関して、特定の投与レジメンを、個体の必要性及び組成物を投与するまたは投与を管轄する人の専門的判断にしたがって、経時的に調整すべきであること、及び本明細書において設定した投与量の範囲は、例示的に過ぎず、特許請求される組成物の範囲または実践を限定しないと意図されることをさらに理解されたい。
【0308】
本医薬組成物は、治療分子の「治療有効量」または「予防有効量」を含み得る。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な投与量及び期間にて有効である量を指す。治療分子の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重などの要因、ならびに治療化合物が個体において所望の反応を誘発する能力にしたがって変動し得る。治療有効量はまた、治療分子の任意の毒性または有害な効果を、治療上有益な効果が上回る量でもある。「治療有効投与量」は、無処置対象と比較して、好ましくは、測定可能なパラメータ、例えば免疫攻撃を、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、及びなおもより好ましくは少なくとも80%阻害する。化合物の、測定可能なパラメータ、例えば免疫攻撃を阻害する能力は、移植拒絶反応または自己免疫障害における有効性を予測する動物モデル系において評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、化合物の、阻害する能力、in vitro阻害の能力を当業者に公知のアッセイによって調べることによって評価することができる。
【0309】
「予防有効量」は、所望の予防的結果を達成するために必要な投与量及び期間にて有効である量を指す。典型的には、予防用量が対象において疾患の前または疾患の初期で使用されることから、予防有効量は、治療有効量より低いだろう。
【0310】
さらに、本明細書に記載の治療化合物を含むキットも本実施形態の範囲内である。キットは、使用説明書;他の試薬、例えば標識、治療剤、あるいは治療分子を標識または他の治療剤、もしくは放射線保護組成物にキレート化またはそうでなければ結合するために有用な薬剤;投与のための治療分子を調製するためのデバイスまたは他の材料;薬学的に許容され得る担体;及び対象に投与するためのデバイスまたは他の材料を含む1つまたは複数の他の要素を含むことができる。
【0311】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供する実施形態は、以下を含むが、これらに限定されない。
1.治療化合物であって、
a)例えば、ドナー標的と優先的に結合する、ドナー特異的標的化部分;または
b)例えば、対象の標的組織と優先的に結合する、組織特異的標的化部分;から選択される
i)特異的標的化部分及び
(a)免疫細胞阻害分子結合/調節部分(ICIM結合/調節部分);
(b)免疫抑制性免疫細胞結合/調節部分(IIC結合/調節部分);または
(c)治療化合物の一部として、例えば、前記標的の近くに、前記標的の免疫系による攻撃を阻害するもしくは最小限に抑える物質を提供することにより、免疫抑制性局所微小環境を促進する、エフェクター結合/調節部分(SM結合/調節部分)から選択される、
ii)エフェクター結合/調節部分を含む、前記治療化合物。
【0312】
2.前記エフェクター結合/調節部分が、阻害性受容体と直接結合し、これを活性化する、実施形態1に記載の治療化合物。
【0313】
3.前記エフェクター結合/調節部分が、阻害性免疫チェックポイント分子である、実施形態2に記載の治療化合物。
【0314】
4.前記エフェクター結合/調節部分が、免疫細胞により発現される、実施形態1~3に記載の治療化合物。
【0315】
5.前記免疫細胞が、望ましくない免疫応答に寄与する、実施形態4に記載の治療化合物。
【0316】
6.前記免疫細胞が、疾患病理の原因となる、実施形態4または5に記載の治療化合物。
【0317】
7.前記治療化合物が標的に前記標的化部分を通して結合する時、前記治療化合物が標的に前記標的化部分を通して結合しない時よりも、前記治療分子の、前記エフェクター結合/調節が結合する前記分子を刺激する能力が、より大きく、例えば、2、5、10、100、500、または1,000倍大きい、実施形態1に記載の治療化合物。
【0318】
8.その同族リガンドに、単量体として結合する(または前記治療化合物が多量体化していないときに結合する)とき、例えば、阻害性免疫チェックポイント分子が、前記同族リガンドを刺激しないまたは実質的に刺激しない、実施形態(embodients)1~7に記載の治療化合物。
【0319】
9.前記治療化合物の治療有効量で、前記エフェクター結合/調節部分が結合する前記分子の有意な、全身刺激化が見られる、実施形態1~8に記載の治療化合物。
【0320】
10.前記治療化合物の治療有効量で、前記エフェクター結合/調節部分が結合する前記分子の前記刺激化が、実質的に前記標的化部分が結合する標的部位においてのみ生じる、実施形態1~9に記載の治療化合物。
【0321】
11.前記治療化合物のその同族リガンド、例えば、阻害性免疫チェックポイント分子への結合が、内因性カウンターリガンドの前記同族リガンド、例えば、阻害性免疫チェックポイント分子への結合を阻害しない、または実質的に阻害しない、実施形態1~9に記載の治療化合物。
【0322】
12.前記エフェクター結合/調節部分のその同族リガンドへの結合が、前記エフェクター結合/調節部分の前記同族リガンドへの内因性カウンターリガンドの結合を、60、50、40、30、20、10、または5%未満阻害する、実施形態1~11に記載の治療化合物。
【0323】
14.前記エフェクター結合/調節部分の前記同族リガンドへの結合が、前記エフェクター結合/調節分子の前記同族リガンドのアンタゴニズムを実質的にもたらさない、実施形態1~11に記載の治療化合物。
【0324】
15.前記エフェクター結合/調節部分が、ICIM結合/調節部分を含む、実施形態1に記載の治療化合物。
【0325】
16.前記エフェクター結合/調節部分が、阻害性免疫チェックポイント分子リガンド分子を含むICIM結合/調節部分を含む、実施形態15に記載の治療化合物。
【0326】
17.前記阻害性免疫分子カウンターリガンド分子が、PD-L1分子を含む、実施形態16に記載の治療化合物。
【0327】
18.前記ICIMが、前記阻害性免疫分子カウンターリガンド分子が、PD-1、KIR2DL4、LILRB1、LILRB、またはCTLA-4から選択される同族阻害性免疫チェックポイント分子と結合する、実施形態15に記載の治療化合物。
【0328】
19.前記ICIMが、抗体である、実施形態18に記載の治療化合物。
【0329】
20.前記ICIMが、PD-1、KIR2DL4、LILRB1、LILRB、またはCTLA-4に結合する抗体を含む、実施形態18に記載の治療化合物。
【0330】
21.前記抗体が、PD-1に結合する抗体である、実施形態20に記載の治療化合物。
【0331】
22.前記抗体が、PD-1に結合する抗体であり、PD-1アゴニストである、実施形態20に記載の治療化合物。
【0332】
23.前記抗体が、PD-1に結合する抗体であり、標的部位で係留するとき、PD-1アゴニストである、実施形態20に記載の治療化合物。
【0333】
24.前記阻害性免疫分子カウンターリガンド分子が、HLA-G分子を含む、実施形態16に記載の治療化合物。
【0334】
25.前記ICIMが、前記阻害性免疫分子カウンターリガンド分子が、PD-1、KIR2DL4、LILRB1、LILRB、またはCTLA-4から選択される同族阻害性免疫チェックポイント分子と結合する、実施形態15に記載の治療化合物。
【0335】
26.前記阻害性免疫分子カウンターリガンド分子が、表1から選択される同族阻害性免疫チェックポイント分子と結合する、実施形態15に記載の治療化合物。
【0336】
27.単量体として、その同族阻害性免疫チェックポイント分子に結合するとき、前記阻害性免疫チェックポイント分子を刺激しないまたは実質的に刺激しない、実施形態15に記載の治療化合物。
【0337】
28.前記阻害性免疫分子カウンターリガンドが、天然に生じる阻害性免疫チェックポイント分子リガンドと、少なくとも60、70、80、90、95、99、または100%相同性を有する、実施形態15に記載の治療化合物。
【0338】
29前記エフェクター結合/調節部分が、細胞表面阻害分子に対する機能性抗体分子を含むICIM結合/調節部分を含む、実施形態1に記載の治療化合物。
【0339】
30.前記細胞表面阻害分子が、阻害性免疫チェックポイント分子である、実施形態1に記載の治療化合物。
【0340】
31.前記阻害性免疫チェックポイント分子が、PD-1、KIR2DL4、LILRB1、LILRB2、CTLA-4から選択されるか、または表1から選択される、実施形態30に記載の化合物。
【0341】
32.前記治療化合物の治療有効量での全身免疫抑制のレベルが、(関連する場合)全身免疫抑制剤を用いた標準治療によりとく与えられるもの未満であるか、等モル量の遊離(治療化合物の構成要素としてではない)、エフェクター結合/調節分子により与えられるもの未満である、実施形態1~31のいずれかに記載の治療化合物。
【0342】
33.全身免疫活性化のレベルが、例えば、前記治療化合物の治療有効量で、等モル量の遊離(治療化合物の構成要素としてではない)、エフェクター結合/調節分子により与えられるもの未満である、実施形態1~32に記載の治療化合物。
【0343】
34.第二のエフェクター結合/調節部分をさらに含む、実施形態1~33のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0344】
35.前記第二のエフェクター結合/調節部分が、前記エフェクター結合/調節部分とは異なる標的と結合する、実施形態34に記載の治療化合物。
【0345】
36.前記第二のエフェクター結合/調節部分が、IIC結合/調節部分を含む、実施形態34または35に記載の治療化合物。
【0346】
前記第二のエフェクター結合/調節部分が、SM結合/調節部分を含む、実施形態34または35に記載の治療化合物。
【0347】
37.前記エフェクター結合/調節部分が、IIC結合/調節部分を含む、実施形態1に記載の治療化合物。
【0348】
38.前記エフェクター結合/調節部分が、IIC結合/調節部分を含み、これが免疫抑制性免疫細胞を前記標的部位で増加させる、動員するまたは蓄積させる、実施形態1に記載の治療化合物。
【0349】
39.前記エフェクター結合/調節部分が、免疫抑制性免疫細胞上の細胞表面分子と結合するまたは特異的に結合する細胞表面分子結合因子を含む、実施形態1に記載の治療化合物。
【0350】
40.前記エフェクター結合/調節部分が、免疫抑制性免疫細胞上の細胞表面分子と結合するまたは特異的に結合する細胞表面分子リガンド分子を含む、実施形態1に記載の治療化合物。
【0351】
41.前記エフェクター結合/調節部分が、免疫抑制性免疫細胞上の細胞表面分子と結合する抗体分子を含む、実施形態1に記載の治療化合物。
【0352】
42.前記免疫抑制性免疫細胞が、T制御性細胞、例えばFoxp3+CD25+T制御性細胞を含む、実施形態38~41のいずれかに記載の治療化合物。
【0353】
43.前記エフェクター結合/調節部分が、GARPと結合する、例えば、GARP発現免疫抑制細胞、例えば、Treg上のGARPと結合する抗体分子を含む、実施形態1~42のいずれかに記載の治療化合物。
【0354】
44.前記エフェクター結合/調節部分が、SM結合/調節部分を含む、実施形態1に記載の治療化合物。
【0355】
45.SM結合/調節部分が、免疫抑制性局所微小環境を促進する、実施形態44に記載の治療化合物。
【0356】
46.前記エフェクター分子結合部分が、例えば、免疫細胞機能を阻害する物質、例えば、免疫細胞の活性化または活性化免疫細胞の前記機能を阻害する物質の、局所濃度または量を増加させることにより、利用可能性を増加させる、実施形態44及び45のいずれかに記載の治療化合物。
【0357】
47.前記エフェクター分子結合部分が、免疫抑制機能を有する可溶性物質、例えば、内因性または外因性物質と結合し、これを蓄積させる、実施形態44~46のいずれかに記載の治療化合物。
【0358】
48.前記エフェクター分子結合部分が、例えば、免疫細胞機能を促進する物質、例えば、免疫細胞の活性化または活性化免疫細胞の前記機能を促進する物質の、局所濃度もしくは量を低減させる、またはこれを隔離することにより、利用可能性を低減させる、実施形態44~47のいずれかに記載の治療化合物。
【0359】
49.SM結合/調節部分が、例えば、前記標的の近くに、前記標的の免疫系による攻撃を阻害するまたは最小限に抑える物質を提供することにより、免疫抑制性局所微小環境を促進する、実施形態44~48のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0360】
50.前記SM結合/調節部分が、前記標的の免疫系による攻撃を阻害するまたは最小限に抑える分子を含む、実施形態44~49のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0361】
51.前記SM結合/調節部分が、免疫抑制機能を有する可溶性物質、例えば、内因性または外因性物質と結合する及び/またはこれを蓄積させる、実施形態44~50のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0362】
52.前記SM結合/調節部分が、免疫攻撃を促進させる物質、例えば、可溶性物質、典型的には及び内因性可溶性物質と結合する及び/またはこれを阻害する、隔離する、分解するまたはそうでなければ中和する、実施形態44~51のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0363】
53.前記エフェクター分子結合部分が、ATPまたはAMPの利用可能性を低減させる、実施形態44~52のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0364】
54.SM結合/調節部分が、免疫エフェクター細胞機能を促進する構成要素、例えば、ATPまたはAMPを枯渇させる物質、例えば、CD39またはCD73と結合する、またはこれを含む、実施形態44~53のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0365】
55.前記SM結合/調節部分が、CD39分子を含む、実施形態44~54のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0366】
56.前記SM結合/調節部分が、CD73分子を含む、実施形態44~54のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0367】
57.前記SM結合/調節部分が、抗CD39分子を含む、実施形態44~54のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0368】
58.前記SM結合/調節部分が、抗CD73抗体分子を含む、実施形態44~54のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0369】
59.前記エフェクター分子結合部分が、免疫抑制物質、例えば、フラグメント免疫抑制タンパク質を含む、実施形態44~54のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0370】
60.SM結合/調節部分が、アルカリホスファターゼ分子を含む、実施形態44~54のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0371】
61.前記化合物が、N末端からC末端方向で式:
R1―――リンカー領域A-R2またはR3-リンカー領域B-R4を有し、
式中、
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、もしくはSM結合/調節部分;特異的標的化部分を含む;または存在しない;ただし、エフェクター結合/調節部分及び特異的標的化部分が存在することを条件とする、実施形態1に記載の治療化合物。
【0372】
62.リンカー領域A及びリンカー領域BのそれぞれがFc領域を含む、実施形態61に記載の治療化合物。
【0373】
63.R1及びR2のうちの1つが抗PD-1抗体であり、R1及びR2のうちの1つが、抗MAdCAM抗体である、実施形態61に記載の治療化合物。
【0374】
64.R1のうちの1つが、抗PD-1抗体であり、1つのR2が、抗MAdCAM抗体である、実施形態61に記載の治療化合物。
【0375】
65.R1のうちの1つが、抗MAdCAM抗体であり、1つのR2が、抗PD-1抗体である、実施形態61に記載の治療化合物。
【0376】
66.R3及びR4のうちの1つが、抗PD-1抗体であり、R3及びR4のうちの1つが、抗MAdCAM抗体である、実施形態61に記載の治療化合物。
【0377】
67.R3のうちの1つが、抗PD-1抗体であり、1つのR4が、抗MAdCAM抗体である、実施形態61に記載の治療化合物。
【0378】
68.R3のうちの1つが、抗MAdCAM抗体であり、1つのR4が、抗PD-1抗体である、実施形態61に記載の治療化合物。
【0379】
69.前記リンカーが、存在しない、実施形態61~68のいずれかに記載の治療化合物。
【0380】
70.前記リンカーが、Fc領域である、実施形態61~68のいずれかに記載の治療化合物。
【0381】
71.前記リンカーが、グリシン/セリンリンカー、例えば1、2、3、4、または5反復のGGGGS(配列番号6)である、実施形態61~68のいずれかに記載の治療化合物。
【0382】
72.前記リンカーが、Fc領域及びグリシン/セリンリンカー、例えば1、2、3、4、または5反復のGGGGS(配列番号6)を含む、実施形態61~68のいずれかに記載の治療化合物。
【0383】
73.前記PD-1抗体が、PD-1アゴニストである、実施形態61~72のいずれかに記載の治療化合物。
【0384】
74.式中、
R1及びR3が、独立して、機能性抗PD-1抗体分子(PD-1のアゴニスト)を含み;R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態61に記載の治療化合物。
【0385】
75.式中、
R1及びR3が、独立して、特異的標的化部分、例えば、抗組織抗原抗体を含み;R2及びR4が、独立して、機能性抗PD-1抗体分子(PD-1のアゴニスト)を含む、実施形態73及び74のいずれかに記載の治療化合物。
【0386】
76.式中、
R1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立して:免疫応答を調節する物質、例えば、可溶性分子、例えば、ATPまたはAMPを、調節する、例えば、これと結合し、これを阻害する、隔離する、分解するもしくはそうでなければ中和するSM結合/調節部分、例えば、CD39分子もしくはCD73分子;特異的標的化部分を含む;または存在しない;ただし、SM結合/調節部分及び特異的標的化部分が存在することを条件とする、実施形態73及び74のいずれかに記載の治療化合物。
【0387】
77.式中、
R1及びR3が、独立して、CD39分子またはCD73分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態61に記載の治療化合物。
【0388】
78.式中、
R1及びR3が、それぞれCD39分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態77に記載の治療化合物。
【0389】
79.式中、
R1及びR3が、それぞれ、CD73分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態61または77に記載の治療化合物。
【0390】
80.式中、
R1及びR3のうちの一方が、CD39分子を含み、他方が、CD73分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態61に記載の治療化合物。
【0391】
81.式中、
R1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立して、HLA-G分子;特異的標的化部分を含む;または存在しない;
ただし、HLA-G分子及び特異的標的化部分が存在することを条件とする、実施形態61に記載の治療化合物。
【0392】
82.式中、
R1及びR3が、それぞれ、HLG-A分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態61または81に記載の治療化合物。
【0393】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0394】
83.式中、
R1及びR3が、それぞれ、刺激性抗LILRB1抗体分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態81及び82のいずれかに記載の治療化合物。
【0395】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0396】
84.式中、
R1及びR3が、それぞれ、刺激性抗KIR2DL4抗体分子を含み;及び
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態81及び82のいずれかに記載の治療化合物。
【0397】
いくつかの実施形態では、リンカーA及びリンカーBは、Fc部分(例えば、自己対合Fc部分、または自己対合しないもしくは実質的に自己対合しないFc部分)を含む。
【0398】
85.式中、
R1及びR3が、それぞれ、刺激性抗LILRB2抗体分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態81~84のいずれかに記載の治療化合物。
【0399】
86.式中、
R1及びR3が、それぞれ、刺激性抗NKG2A抗体分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態81~84のいずれかに記載の治療化合物。
【0400】
87.式中、
R1及びR3のうちの一方が、拮抗性抗LILRB1抗体分子、刺激性抗KR2DL4抗体分子、及び刺激性抗NKG2A抗体分子から選択される第一の部分を含み、他方がこれらから選択される異なる部分を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態81~84のいずれかに記載の治療化合物。
【0401】
88.式中、
R1及びR3のうちの一方が、拮抗性抗LILRB1抗体分子を含み、他方が、刺激性抗KR2DL4抗体分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態81~84のいずれかに記載の治療化合物。
【0402】
89.式中、
R1及びR3のうちの一方が、拮抗性抗LILRB1抗体分子を含み、他方が、刺激性抗NKG2A抗体分子を含み;
R2及びR4が、独立して、特異的標的化部分、例えば、組織抗原に対するscFv分子を含む、実施形態81~84のいずれかに記載の治療化合物。
【0403】
90.式中、
R1、R2、R3及びR4のうちの1つが、抗BCR抗体分子、例えば、拮抗性抗BCR抗体分子を含み、1つが抗FCRL抗体分子を含み、1つが特異的標的化部分を含む、実施形態81~84のいずれかに記載の治療化合物。
【0404】
91.抗FCRL分子が、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、またはFCRL6に指向する抗FCRL抗体分子、例えば、刺激性抗FCRL抗体分子を含む、実施形態90に記載の治療化合物。
【0405】
92.式中、
R1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立して:
i)エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、またはSM結合/調節部分、これはT細胞活性、拡大、または機能を最小限に抑えるまたは阻害する(T細胞エフェクター結合/調節部分);
ii)エフェクター結合/調節部分、例えば、ICIM結合/調節部分、IIC結合/調節部分、またはSM結合/調節部分、これはB細胞活性、拡大、または機能を最小限に抑えるまたは阻害する(B細胞エフェクター結合/調節部分);
iii)特異的標的化部分を含む;または
iv)存在しない;ただし、T細胞エフェクター結合/調節部分、B細胞エフェクター結合/調節部分、及び特異的標的化部分が存在することを条件とする、実施形態81~84のいずれかに記載の治療化合物。
【0406】
93.式中、
R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、刺激性抗PD-1抗体を含み、1つがHLA-G分子を含む、実施形態92に記載の治療化合物。
【0407】
94.式中、
R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、SM結合/調節部分、例えば、CD39分子またはCD73分子を含む、実施形態92~93に記載の治療化合物。
【0408】
95.式中、
R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、制御性免疫細胞、例えば、Treg細胞またはBreg細胞と結合する、これを活性化する、または維持する実体を含む、実施形態92~94のいずれかに記載の治療化合物。
【0409】
96.式中、
R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、刺激性抗PD-1抗体を含むかまたは1つがHLA-G分子を含む、実施形態92~95のいずれかに記載の治療化合物。
【0410】
97.式中、
R1、R2、R3、及びR4のうちの1つが、刺激性抗PD-1抗体を含み、1つがHLA-G分子を含み、1つがCD39分子またはCD73分子を含む、実施形態96に記載の治療化合物。
【0411】
98.前記エフェクター結合/調節部分が、ポリペプチドを含む、実施形態1~97のいずれかに記載の治療化合物。
【0412】
99.前記エフェクター結合/調節部分が、少なくとも5、10、20、30、40、50、150、200または250個のアミノ酸残基を有するポリペプチドを含む、実施形態1~98のいずれかに記載の治療化合物。
【0413】
100.前記エフェクター結合/調節部分が、5、10、15、20、または40Kdの分子量を有する、実施形態1~99のいずれかに記載の治療化合物。
【0414】
101.前記エフェクター結合/調節部分が、アポリポプロテイン(apolipoprotien)CIII、プロテインキナーゼA、Srcキナーゼ、またはベータ1インテグリンの発現の阻害剤を含まない、実施形態1~100のいずれかに記載の治療化合物。
【0415】
102.前記エフェクター結合/調節部分が、アポリポプロテイン(apolipoprotien)CIII、プロテインキナーゼA、Srcキナーゼ、またはベータ1インテグリンの前記活性の阻害剤を含まない、実施形態1~100のいずれかに記載の治療化合物。
【0416】
103.前記治療化合物が、肺、皮膚、膵臓、網膜、前立腺、卵巣、リンパ節、副腎、肝臓または腸組織から選択された組織を特異的に標識しない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0417】
104.前記治療化合物が、尿細管細胞、例えば、近位尿細管上皮細胞を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0418】
105.前記治療化合物が、TIE-2、APN、TEM4、TEM6、ICAM-1、ヌクレオリンP2Z受容体、Trk-A、FLJ10849、HSPA12B、APP、またはOX-45を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0419】
106.前記治療化合物が、管腔発現タンパク質を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0420】
107.前記ドナー標的が、心臓特異的標的を含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0421】
108.前記治療化合物が、肺組織を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0422】
109.前記治療化合物が、腎臓組織を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0423】
110.前記治療化合物が、膵臓肺組織を特異的にしない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0424】
111.前記治療化合物が、腸組織を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0425】
112.前記治療化合物が、前立腺組織を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0426】
113.前記治療化合物が、脳組織を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0427】
114.前記治療化合物が、CD71を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0428】
115.前記治療化合物が、CD90を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0429】
116.前記治療化合物が、MAdCAMを特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0430】
117.前記治療化合物が、アルブミンを特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0431】
118.前記治療化合物が、炭酸脱水酵素IVを特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0432】
119.前記治療化合物が、ZG16-pを特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0433】
120.前記治療化合物が、ジペプチジルペプチダーゼIVを特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0434】
121.前記治療化合物が、血管内皮細胞膜の前記管腔表面を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0435】
121.前記治療化合物が、心臓組織を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0436】
122.前記治療化合物が、腫瘍、固形腫瘍、または固形腫瘍の血管を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0437】
123.前記治療化合物が、皮膚組織を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0438】
124.前記治療化合物が、上皮組織を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0439】
125.前記治療化合物が、基底膜を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0440】
126.前記治療化合物が、Dsgポリペプチドを特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0441】
127.前記治療化合物が、Dsg1を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0442】
128.前記治療化合物が、Dsg3を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0443】
129.前記治療化合物が、BP180を特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0444】
130.前記治療化合物が、デスモグレインを特異的に標的としない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0445】
131.前記治療化合物が、補体調節因子、例えば、補体阻害剤、例えば限定されないが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許番号8,454,963号に記載のものを含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0446】
133.前記治療化合物が、イメージング剤を含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0447】
134.前記治療化合物が、放射性作用物質、放射性同位体、放射性薬剤、造影剤、ナノ粒子;酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、及び生物発光物質、例えば限定されないがその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許番号8,815,235号に記載のものの群から選択されるイメージング剤を含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0448】
135.前記治療化合物が、放射性核種、例えば限定されないが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許番号6,232,287号に記載のものを含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0449】
136.それが結合するドナー細胞によって内在化されていない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0450】
137.前記治療化合物が、前記特異的標的化部分により標的とされる前記細胞に入らない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0451】
138.前記治療化合物が、前記特異的標的化部分により標的とされる前記細胞を殺傷しない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0452】
139.前記治療化合物が、前記エフェクター結合/調節部分が結合する前記細胞に入らない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0453】
140.前記治療化合物が、前記エフェクター結合/調節部分が結合する前記細胞を殺傷しない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0454】
141.前記治療化合物が、自己抗原性ペプチドまたはポリペプチドを含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0455】
142.前記治療化合物が、自己抗原性ペプチドまたはポリペプチドを含まない、例えば、前記対象がそれに対して自己抗体を有するペプチドまたはポリペプチドを含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0456】
143.前記治療化合物が、自己免疫障害を有する哺乳類、例えば、ヒトに由来する抗体分子を含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0457】
144.前記治療化合物が、急性粘膜皮膚型尋常性天疱瘡(acute mucocutaneous PV)を有する哺乳類、例えば、ヒトに由来する抗体分子を含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0458】
145.前記前記治療化合物が、グッドパスチャー疾患を有する哺乳類、例えば、ヒトに由来する抗体分子を含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0459】
146.前記前記治療化合物が、尋常性天疱瘡を有する哺乳類、例えば、ヒトに由来する抗体分子を含まない、実施形態1~101のいずれかに記載の治療化合物。
【0460】
141.ドナー特異的標的化部分を含む、実施形態1~146のいずれかに記載の治療化合物。
【0461】
142.レシピエントの組織とは対照的に、移植されたドナー組織に優先的に局在化する、実施形態141のいずれかに記載の治療化合物。
【0462】
143.前記ドナー特異的標的化部分が、ドナーからの移植組織、例えば、臓器、に対して部位特異的免疫特権を提供する、実施形態141~142に記載の治療化合物。
【0463】
144.前記ドナー特異的標的化部分が、前記ドナーの遺伝子座に存在する対立遺伝子の産物、例えば、ポリペプチドに結合し、この対立遺伝子が前記レシピエントの遺伝子座に存在しない、実施形態141~143に記載の治療化合物。
【0464】
145.前記ドナー特異的標的化部分が、対象組織上に発現する遺伝子の対立遺伝子と比較して、ドナー組織、例えば、移植組織、例えば、臓器上に発現される遺伝子の対立遺伝子に優先的に結合する、実施形態141~144のいずれかに記載の治療化合物。
【0465】
146.前記ドナー特異的標的化部分が、ドナー組織、例えば、移植組織、例えば、臓器上で発現される遺伝子の対立遺伝子に対して結合親和性を有し、それが、対象組織上で発現される遺伝子の対立遺伝子に対するその親和性より、少なくとも2、4、5、10、50、100、500、1,000、5,000、または10,000倍大きい、実施形態141~145に記載の治療化合物。
【0466】
147.前記ドナー特異的標的化部分が、前記ドナーの遺伝子座に存在する対立遺伝子の前記産物、例えば、ポリペプチドに結合し、その対立遺伝子が前記レシピエントの遺伝子座に存在しない、実施形態141~146のいずれかに記載の治療化合物。
【0467】
148.前記結合が、例えば、前記治療化合物の臨床有効量で、望ましくない、実質的な、または臨床的に許容不可能な、全身免疫抑制が生じるほど十分に特異的である、実施形態141~147のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0468】
149.前記治療化合物が、前記標的部位で蓄積する、例えば、前記ドナー特異的標的化部分の結合が、前記治療化合物の前記標的部位での蓄積をもたらす、実施形態141~148のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0469】
150.前記ドナー特異的標的化部分が、表2から選択される遺伝子座、例えば、前記HLA遺伝子座、例えば、前記HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DQまたはHLA-DR遺伝子座の対立遺伝子の産物と結合し、その対立遺伝子が前記ドナーには存在するが、前記レシピエント。HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DQまたはHLA-DR遺伝子座。には存在しない、実施形態141~149のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0470】
151.前記ドナー特異的標的化部分が、HLA Aの対立遺伝子、HLA-Bの対立遺伝子、HLA-Cの対立遺伝子、HLA-DPの対立遺伝子、HLA-の対立遺伝子、またはHLA-の対立遺伝子と結合する、実施形態141~150のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0471】
152.前記治療化合物が、移植を有する、有することになる、または必要とする対象の処置に好適である、実施形態141~151のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0472】
153.前記移植が、臓器、例えば、肝臓、腎臓、心臓、膵臓、胸腺、皮膚または肺の全部または一部を含む、実施形態152に記載の治療化合物。
【0473】
154.前記ドナー特異的標的化部分が、抗体分子を含む、実施形態141~153のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0474】
155.前記ドナー特異的標的化部分が、標的特異的結合ポリペプチド、または標的リガンド結合分子を含む、実施形態141~153のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0475】
156.組織特異的標的化部分を含む、実施形態1~155のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0476】
157.前記組織特異的標的化部分が、MAdCAMに特異的に結合する分子である、実施形態156に記載の治療化合物。
【0477】
158.前記組織特異的標的化部分が、MAdCAMに特異的に結合する抗体である、実施形態156に記載の治療化合物。
【0478】
159.前記治療化合物が、自己免疫障害、例えば、本明細書に記載の自己免疫障害を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態、156~158のいずれか一項に記載の治療化合物。
【0479】
160.前記治療化合物が、前記標的部位で蓄積する、例えば、前記組織特異的標的化部分の結合が、前記治療化合物の前記標的部位での蓄積をもたらす、実施形態156~159のいずれかに記載の治療化合物。
【0480】
161.前記治療化合物は、対象の他の組織とは対照的に、標的組織に優先的に局在化する、実施形態156~160のいずれかに記載の治療化合物。
【0481】
162.前記治療化合物が、例えば、自己免疫障害において、望ましくない免疫攻撃を受けている、またはそのリスクがある、もしくはそのリスクが高い、例えば、対象標的組織に対して、部位特異的免疫特権を提供する、実施形態156~161のいずれかに記載の治療化合物。
【0482】
163.前記組織特異的標的化部分が、前記治療化合物の構成要素として、例えば、自己免疫障害において、望ましくない免疫攻撃を受けている対象標的組織と優先的に結合する、実施形態156~161のいずれかに記載の治療化合物。
【0483】
164.組織特異的標的化部分が、前記標的組織の外側に存在しない、または治療分子の治療濃度で、許容不可能なレベルの免疫抑制が存在しないもしくは実質的に存在しないほど十分に低いレベルで存在する、前記産物、例えば、ポリペプチドに結合する、実施形態156~163のいずれかに記載の治療化合物。
【0484】
165.前記組織特異的標的化部分が、非標的組織より標的組織においてより豊富である、産物、または産物上の部位と結合する、実施形態156~164のいずれかに記載の治療化合物。
【0485】
166.治療化合物が、標的組織上に実質的に排他的に存在するまたは発現される、産物、または産物上の部位と結合する、実施形態156~165のいずれかに記載の治療化合物。
【0486】
167前記特異的標的化部分が結合する、前記産物、または産物上の部位が、治療化合物の治療有効レベルで、前記対象が許容不可能なレベル、例えば、臨床的に有意なレベル、の全身免疫抑制を被らないほどに、前記標的組織に十分に限定されている、実施形態156~166のいずれかに記載の治療化合物。
【0487】
168.前記治療化合物が、標的組織または標的組織抗原に優先的に結合する、例えば、前記標的組織の外側に存在する非標的組織または抗原に対するその親和性よりも標的抗原または組織に対してより大きい、例えば、少なくとも2、4、5、10、50、100、500、1,000、5,000、または10,000倍大きい、前記標的組織または抗原に対する結合親和性を有する、実施形態156~167のいずれかに記載の治療化合物。
【0488】
169.前記組織特異的標的化部分が、予め選択した部位、例えば、自己免疫障害における望ましくない免疫応答の部位に存在する、産物、例えば、ポリペプチド産物、または産物上の部位に結合する、実施形態156~168のいずれかに記載の治療化合物。
【0489】
170.治療化合物が、1型糖尿病を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態156~169のいずれかに記載の治療化合物。
【0490】
171.前記標的組織が、膵臓組織、例えば、膵島もしくは膵臓ベータ細胞、腸組織(例えば、腸内皮細胞)、腎臓組織(例えば、腎臓上皮細胞)、または肝臓組織(例えば、肝臓上皮細胞)を含む、実施形態156~170のいずれかに記載の治療化合物。
【0491】
172.前記エフェクター結合/調節部分または標的化部分が、本明細書に記載のもの、例えば表3に列挙するもの、例えば、SEZ6L2、LRP11、DISP2、SLC30A8、FXYD2、TSPAN7、またはTMEM27から選択されるポリペプチドと結合する、実施形態156~171のいずれかに記載の治療化合物。
【0492】
173.治療化合物が、多発性硬化症を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態156~168のいずれかに記載の治療化合物。
【0493】
174.前記標的組織が、CNS組織、ミエリン鞘、または乏突起膠細胞のミエリン鞘を含む、実施形態173に記載の治療化合物。
【0494】
175.前記エフェクター結合/調節部分または標的化部分が、表3を含むがこれらに限定されない本明細書に記載のもの、例えば、MOG、PLP、またはMBPから選択されるポリペプチドと結合する、実施形態173~174のいずれかに記載の治療化合物。
【0495】
176.治療化合物が、心筋炎を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態156~168のいずれかに記載の治療化合物。
【0496】
177.前記標的組織が、心筋細胞、単球、マクロファージ、または骨髄系細胞を含む、実施形態176に記載の治療化合物。
【0497】
178.前記エフェクター結合/調節部分が、または前記標的化部分、表3から選択されるもの、例えば、SIRPA(CD172a)を含むがこれらに限定されない本明細書に記載のポリペプチドと結合する、実施形態176~177に記載の治療化合物。
【0498】
179.治療化合物が、炎症性腸疾患、自己免疫性肝炎(AIH);原発性硬化性胆管炎(PSC);原発性胆汁性肝硬変;(PBC);または移植を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態156~168のいずれかに記載の治療化合物。
【0499】
180.前記対象が、クローン病または潰瘍性大腸炎を有する、有するリスクがあるまたは有するリスクが高い、実施形態156~168のいずれかに記載の治療化合物。
【0500】
181.前記標的組織が、腸細胞、例えば、腸上皮細胞または肝臓細胞、例えば肝臓上皮細胞を含む、実施形態179または180に記載の治療化合物。
【0501】
182.前記エフェクター結合/調節部分が、表3から選択されるもの、例えば、PD-1を含むがこれに限定されない本明細書に記載のポリペプチドと結合する、実施形態179~181に記載の治療化合物。
【0502】
182.前記標的化部分が、MAdCAMを含むがこれに限定されない本明細書に記載のポリペプチドと結合する、実施形態179~181に記載の治療化合物。
【0503】
183.治療化合物が、関節リウマチを有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態156~168のいずれかに記載の治療化合物。
【0504】
184.前記標的組織が、心筋細胞、単球、マクロファージ、または骨髄系細胞を含む、実施形態183に記載の治療化合物。
【0505】
185.前記エフェクター結合/調節部分または標的化部分が、表3から選択されたポリペプチド、例えば、SIRPA(CD172a)と結合する、実施形態183または184に記載の治療化合物。
【0506】
186.前記組織特異的標的化部分が、抗体分子を含む、実施形態156~185のいずれかに記載の治療化合物。
【0507】
187.前記組織特異的標的化部分が、標的特異的結合ポリペプチド、または標的リガンド結合分子を含む、実施形態156~185のいずれかに記載の治療化合物。
【0508】
188.前記組織特異的標的化部分が、MAdCAMに結合する標的特異的結合ポリペプチドを含む、実施形態156~185のいずれかに記載の治療化合物。
【0509】
189.前記治療化合物が、免疫促進(pro-immune)応答を伝搬させる、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、または他の免疫細胞の細胞表面分子と結合する、実施形態1~188のいずれかに記載の治療化合物。
【0510】
190.前記治療化合物が、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、または他の免疫細胞の免疫促進応答を伝搬する能力を低下させる、実施形態1~189のいずれかに記載の治療化合物。
【0511】
191.前記特異的標的化部分が、哺乳類標的、例えば、哺乳類ポリペプチドを標的とし、前記エフェクター結合/調節部分が、哺乳類免疫構成要素、例えば、ヒト免疫細胞、例えば、哺乳類B細胞、T細胞、またはマクロファージと結合/これを調節する、実施形態1~190のいずれかに記載の治療化合物。
【0512】
192.前記特異的標的化部分が、ヒト標的、例えば、ヒトポリペプチドを標的とし、前記エフェクター結合/調節部分が、ヒト免疫構成要素、例えば、ヒト免疫細胞、例えば、ヒトB細胞、T細胞、またはマクロファージと結合/これを調節する、実施形態1~192のいずれかに記載の治療化合物。
【0513】
193.前記治療化合物が、ヒトにおける使用のために構成される、実施形態1~193のいずれかに記載の治療化合物。
【0514】
194.前記治療化合物が、非ヒト哺乳類における使用のために構成される、実施形態1~191のいずれかに記載の治療化合物。
【0515】
195.前記治療化合物、例えば、前記エフェクター結合/調節部分が、PD-1アゴニストを含む、実施形態1~194のいずれかに記載の治療化合物。
【0516】
196.炎症性腸疾患を有する対象を処置する方法であって、実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物を前記対象に投与して、前記炎症性腸疾患を処置することを含む、前記方法。
【0517】
197.炎症性腸疾患を有する前記対象が、クローン病を有する、実施形態196に記載の方法。
【0518】
198.炎症性腸疾患を有する前記対象が、潰瘍性大腸炎を有する、実施形態196に記載の方法。
【0519】
199.自己免疫性肝炎を有する対象を処置する方法であって、実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物を前記対象に投与して、前記自己免疫性肝炎を処置することを含む、前記方法。
【0520】
200.原発性硬化性胆管炎を処置する方法であって、実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物を前記対象に投与して、前記原発性硬化性胆管炎を処置することを含む、前記方法。
【0521】
201.1型糖尿病を処置する方法であって、実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物を投与し、それにより前記対象を処置して、前記1型糖尿病を処置することを含む、前記方法。
【0522】
202.移植対象を処置する方法であって、治療有効量の実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物を前記対象に投与し、それにより移植(レシピエント)対象を処置することを含む、前記方法。
【0523】
203.移植されたドナー組織を有する対象におけるGVHDを処置する方法であって、治療有効量の実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0524】
204.前記治療化合物が、前記対象に:前記移植を受ける前;GVHDの症状を発症する前;前記移植を受けた後もしくは移植と同時;またはGVHDの症状の発症後もしくは発症と同時に、投与される、実施形態203に記載の方法。
【0525】
205.自己免疫障害を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象を処置する方法であって、治療有効量の実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物を投与し、それにより前記対象を処置することを含む、前記方法。
【0526】
206.前記対象が、同種移植ドナー組織を受けている、受けることになっている、またはその必要がある、実施形態205に記載の方法。
【0527】
207.前記ドナー組織が、固形臓器、例えば、肝臓、腎臓、心臓、膵臓、胸腺、または肺を含む、実施形態205~206のいずれかに記載の方法。
【0528】
208.前記ドナー組織が、臓器、例えば、肝臓、腎臓、心臓、膵臓、胸腺、または肺の全部または一部を含む、実施形態205~206のいずれかに記載の方法。
【0529】
209.前記ドナー組織が、皮膚を含む、実施形態205~206のいずれかに記載の方法。
【0530】
210.前記ドナー組織が、皮膚を含まない、実施形態205~206のいずれかに記載の方法。
【0531】
211.前記ドナー組織が、遺伝子座遺伝子座の対立遺伝子の産物を提示または発現し、その対立遺伝子が前記対象に存在しないまたは発現されない、実施形態205~210のいずれかに記載の方法。
【0532】
212.前記ドナー組織が、表2から選択される遺伝子座、例えば、前記HLA遺伝子座、例えば、前記HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DQまたはHLA-DR遺伝子座の対立遺伝子の産物を提示または発現し、その対立遺伝子が前記対象において存在しないまたは発現されない、実施形態205~210のいずれかに記載の方法。
【0533】
213前記移植組織を前記対象へと導入することを含む、実施形態205~212のいずれかに記載の方法。
【0534】
214.前記対象を、免疫細胞不活性化に関して(例えば、免疫阻害性チェックポイント分子の望ましくない刺激化をモニターするために)、前記標的部位から離れた部位で、例えば、末梢循環またはリンパ系においてモニタリングすることを含む、実施形態196~213のいずれかに記載の方法。
【0535】
215.前記対象を、免疫細胞活性化に関して(例えば、免疫阻害性チェックポイント分子の望ましくない拮抗化をモニターするために)、前記標的部位から離れた部位で、例えば、末梢循環またはリンパ系においてモニタリングすることを含む、実施形態196~214のいずれかに記載の方法。
【0536】
216.モニタリングの結果に応じて、前記対象に関する処置過程を選択する、例えば、前記治療化合物の前記用量を増加させる、前記治療化合物の前記用量を低減させる、用量を変化させずに前記治療化合物を用いる処置を継続する、実施形態196~215のいずれかに記載の方法。
【0537】
217.実施形態1~195に記載の化合物を、前記レシピエントに投与することを含む、実施形態196~216のいずれかに記載の方法。
【0538】
218.投与することが、例えば、末梢循環系への全身投与を含む、実施形態196~216のいずれかに記載の方法。
【0539】
219.投与することが、例えば、前記標的組織、前記ドナー組織または前記標的組織もしくは前記ドナー組織が位置するもしくは位置することになる部位への局所投与を含む、実施形態196~216のいずれかに記載の方法。
【0540】
220.前記治療化合物を、前記レシピエントに、前記レシピエントへの前記ドナー組織の導入前に投与することを含む、実施形態219のいずれかに記載の方法。
【0541】
221.前記治療化合物を、前記レシピエントに、前記レシピエントへの前記ドナー組織の導入後に投与することを含む、実施形態219のいずれかに記載の方法。
【0542】
222.前記治療化合物を、前記レシピエントに、前記レシピエントへの前記ドナー組織の導入と同時に投与することを含む、実施形態213のいずれかに記載の方法。
【0543】
223.前記治療化合物を、前記ドナー組織と、前記レシピエントへの前記ドナー組織の導入前に接触させることを含む、実施形態213に記載の方法。
【0544】
224.前記治療化合物を前記対象に提供することを含み、前記移植組織が、治療化合物と、前記対象への導入前に接触している、実施形態213のいずれかに記載の方法。
【0545】
225.前記治療化合物を、前記ドナー組織と、前記レシピエントへの前記ドナー組織の導入後に、例えば、前記ドナー組織への局所投与により接触させることを含む、実施形態213のいずれかに記載の方法。
【0546】
226.本明細書に提供する治療化合物を、治療レベルが少なくとも1、5、10、14、または28日間、例えば、連続または非連続した日にわたって存在するように、投与することを含む、実施形態196~226のいずれかに記載の方法。
【0547】
227.前記対象が、非標的免疫抑制剤を受けない、実施形態196~226のいずれかに記載の方法。
【0548】
228.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記治療化合物の初回投与前少なくとも1、15、30、60、または90日間にわたって受けていない、実施形態196~226のいずれかに記載の方法。
【0549】
229.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記移植組織の導入前少なくとも1、15、30、60、または90日間にわたって受けていない、実施形態213のいずれかに記載の方法。
【0550】
230.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記治療化合物の初回投与後少なくとも1、15、30、60、90、または180日間にわたって受けない、実施形態196~229のいずれかに記載の方法。
【0551】
231.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記移植組織の導入後少なくとも1、15、30、60、90、または180日間にわたって受けない、実施形態196~229のいずれかに記載の方法。
【0552】
232.非標的免疫抑制剤を前記対象に投与することを含む、実施形態196~231のいずれかに記載の方法。
【0553】
233.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記治療化合物の初回投与の前少なくとも1、15、30、60、または90日間にわたって受ける、実施形態196~232のいずれかに記載の方法。
【0554】
234.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記移植組織の導入前少なくとも1、15、30、60、または90日間にわたって受ける、実施形態213に記載の方法。
【0555】
235.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記治療化合物の初回投与の後少なくとも1、15、30、60、90または180日間にわたって受ける、実施形態234に記載の方法。
【0556】
236.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記移植組織の導入後少なくとも1、15、30、60、90または180日間にわたって受ける、実施形態196~235のいずれかに記載の方法。
【0557】
237.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記治療化合物の初回投与の前に受けるが、1、15、30、60、90または180日間以下である、実施形態196~235のいずれかに記載の方法。
【0558】
238.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記移植組織の導入の前に受けるが、1、15、30、60、90または180日間以下である、実施形態213に記載の方法。
【0559】
239.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記治療化合物の初回投与後に受けるが、1、15、30、60、90または180日間以下である、実施形態196~238のいずれかに記載の方法。
【0560】
240.前記対象が、非標的免疫抑制剤を、前記移植組織の導入後に受けるが、1、15、30、60、90または180日間以下である、実施形態213に記載の方法。
【0561】
241.前記対象が、前記移植組織の拒絶反応についてモニターされる、実施形態213に記載の方法。
【0562】
242.非標的免疫抑制剤の投与量が選択される、または前記モニタリングに応答して、非標的免疫抑制剤の投与量が選択される、実施形態196~242のいずれかに記載の方法。
【0563】
243.前記投与量が、投与される、実施形態242に記載の方法。
【0564】
244.前記選択投与量が、ゼロである、すなわち、非標的免疫抑制剤が投与されない、実施形態243に記載の方法。
【0565】
245.前記選択投与量が、ゼロでない、すなわち、非標的免疫抑制剤が投与される、実施形態243に記載の方法。
【0566】
246.前記投与量が、治療化合物の投与が無い場合に投与され得るもの未満である、実施形態243に記載の方法。
【0567】
247.前記対象が、哺乳類、例えば、非ヒト哺乳類である、実施形態196~246のいずれかに記載の方法。
【0568】
248.前記対象が、ヒトである、実施形態196~246のいずれかに記載の方法。
【0569】
249.前記ドナー及び対象が、HLA遺伝子座、例えば、メジャーまたはマイナー遺伝子座にて、不一致である、実施形態213に記載の方法。
【0570】
250.前記対象が、哺乳類、例えば、非ヒト哺乳類である、実施形態249に記載の方法。
【0571】
251.前記対象が、ヒトである、実施形態249に記載の方法。
【0572】
252.自己免疫障害を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象を処置する方法であって、治療有効量の実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物を投与すること、それにより前記対象を処置することを含む、前記方法。
【0573】
253.前記治療化合物の供給が、前記自己免疫障害の症状の、発症前、または発症の同定前に開始される、実施形態252に記載の方法。
【0574】
254.前記治療化合物の供給が、前記自己免疫障害の症状の、発症後、または発症の同定後に開始される、実施形態252~253のいずれかに記載の方法。
【0575】
255.自己免疫障害が、1型糖尿病を含む、実施形態252~254に記載の方法。
【0576】
256.前記標的組織が、膵島もしくは膵臓ベータ細胞、腸組織(例えば、腸内皮細胞)、腎臓組織(例えば、腎臓上皮細胞)、または肝臓組織(例えば、肝臓上皮細胞)を含む、実施形態252~255のいずれかに記載の治療化合物。
【0577】
257.前記エフェクター結合/調節部分または標的化部分が、表3から選択されたポリペプチド、例えば、MAdCAM、SEZ6L2、LRP11、DISP2、SLC30A8、FXYD2、TSPAN7、またはTMEM27ポリペプチドと結合する、実施形態252~256のいずれかに記載の治療化合物。
【0578】
258.前記治療化合物の供給が、1型糖尿病の症状の、発症前、または発症の同定前に開始される、実施形態252~257のいずれかに記載の方法。
【0579】
259.前記治療化合物の供給が、前記対象が、予め選択した特徴または症状を有する前、または有すると同定される前に開始される、実施形態252~258のいずれかに記載の方法。
【0580】
260.前記治療化合物の供給が、1型糖尿病の症状の、発症後、または発症の同定後に開始される、実施形態252~259のいずれかに記載の方法。
【0581】
261.前記治療化合物の供給が、前記対象が、予め選択した特徴または症状を有する後、または有すると同定された後に開始される、実施形態252~260のいずれかに記載の方法。
【0582】
262,前記治療化合物が、実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物である、実施形態252~261のいずれかに記載の方法。
【0583】
263治療化合物が、多発性硬化症を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態252~257のいずれかに記載の方法。
【0584】
264.前記標的組織が、CNS組織、ミエリン鞘、または乏突起膠細胞のミエリン鞘を含む、実施形態263に記載の方法。
【0585】
265.前記エフェクター結合/調節部分または標的化部分が、表3から選択されたポリペプチド、例えば、MOG、PLP、またはMBPポリペプチドと結合する、実施形態263または264のいずれかに記載の方法。
【0586】
266.前記治療化合物の供給が、多発性硬化症の症状の、発症前、または発症の同定前に開始される、実施形態263~265のいずれかに記載の方法。
【0587】
267.前記治療化合物の供給が、前記対象予め選択した特徴または症状の前、または同定の前に開始される、実施形態263~265のいずれかに記載の方法。
【0588】
268.前記治療化合物の供給が、多発性硬化症の症状の、発症後、または発症の同定後に開始される、実施形態263~265のいずれかに記載の方法。
【0589】
269.前記治療化合物の供給が、対象が予め選択した特徴または症状を有する後、または有すると同定された後に開始される、実施形態263~265のいずれかに記載の方法。
【0590】
270.前記治療化合物が、実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物である、実施形態263~269のいずれかに記載の方法。
【0591】
271.前記治療化合物が、心筋炎を有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態252~257のいずれかに記載の方法。
【0592】
272.前記標的組織が、心筋細胞、単球、マクロファージ、または骨髄系細胞を含む、実施形態271に記載の方法。
【0593】
273.前記エフェクター結合/調節部分または標的化部分が、表3から選択されたポリペプチド、例えば、SIRPA(CD172a)ポリペプチドと結合する、実施形態271または272に記載の方法。
【0594】
274.前記治療化合物の供給が、心筋炎の症状の、発症前、または発症の同定前に開始される、実施形態271~273のいずれかに記載の方法。
【0595】
275.前記治療化合物の供給が、前記対象が、予め選択した特徴または症状を有する前、または有すると同定される前に開始される、実施形態271~273のいずれかに記載の方法。
【0596】
276.前記治療化合物の供給が、心筋炎の症状の、発症後、または発症の同定後に開始される、実施形態271~273のいずれかに記載の方法。
【0597】
277.前記治療化合物の供給が、前記対象が、予め選択した特徴または症状を有する後、または有すると同定された後に開始される、実施形態271~273のいずれかに記載の方法。
【0598】
278.前記治療化合物が、実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物である、実施形態271~277のいずれかに記載の方法。
【0599】
279.治療化合物が、関節リウマチを有する、または有するリスクがある、もしくは有するリスクが高い対象の処置に好適である、実施形態252~257のいずれかに記載の方法。
【0600】
280.前記標的組織が、心筋細胞、単球、マクロファージ、または骨髄系細胞を含む、実施形態279に記載の方法。
【0601】
281.前記エフェクター結合/調節部分または標的化部分が、表3から選択されたポリペプチド、例えば、SIRPA(CD172a)ポリペプチドと結合する、実施形態279または280に記載の方法。
【0602】
282.前記治療化合物の供給が、関節リウマチの症状の、発症前、または発症の同定前に開始される、実施形態279~281に記載の方法。
【0603】
283.前記治療化合物の供給が、前記対象が、予め選択した特徴または症状を有する前、または有すると同定される前に開始される、実施形態279~281に記載の方法。
【0604】
284.前記治療化合物の供給が、関節リウマチの症状の、発症後、または発症の同定後に開始される、実施形態279~281に記載の方法。
【0605】
285.前記治療化合物の供給が、前記対象が、予め選択した特徴または症状を有する後、または有すると同定された後に開始される、実施形態279~281に記載の方法。
【0606】
286.前記治療化合物が、実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物である、実施形態279~285に記載の方法。
【0607】
287.前記対象を、免疫細胞不活性化に関して(例えば、免疫阻害性チェックポイント分子の望ましくない刺激化をモニターするために)、前記標的部位から離れた部位で、例えば、末梢循環またはリンパ系で、モニタリングすることを含む、実施形態196~286のいずれかに記載の方法。
【0608】
288.前記対象を、免疫細胞活性化に関して(例えば、免疫阻害性チェックポイント分子の望ましくない拮抗化をモニターするために)、前記標的部位から離れた部位で、例えば、末梢循環またはリンパ系で、モニタリングすることを含む、実施形態196~287のいずれかに記載の方法。
【0609】
289.モニタリングの結果に応じて、前記対象の処置過程を選択する、例えば、前記治療化合物の前記用量を増加させる、前記治療化合物の前記用量を低減させる、用量を変化させずに前記治療化合物を用いる処置を継続する、実施形態196~288のいずれかに記載の方法。
【0610】
290.前記対象を、前記標的組織の自己免疫攻撃に関してモニターする、実施形態196~289のいずれかに記載の方法。
【0611】
291.前記モニタリングに応じて、前記治療化合物の投与量が選択される、実施形態290に記載の方法。
【0612】
292.前記投与量が、投与される、実施形態291に記載の方法。
【0613】
293.前記選択投与量が、ゼロである、すなわち、治療化合物の投与が中止される、実施形態290に記載の方法。
【0614】
294.前記選択投与量が、ゼロでない、実施形態290に記載の方法。
【0615】
295.前記選択投与量が、増加した投与量である、実施形態290に記載の方法。
【0616】
296.前記選択投与量が、低下した投与量である、実施形態290に記載の方法。
【0617】
297.投与することが、例えば、末梢循環系への全身投与を含む、実施形態196~296のいずれかに記載の方法。
【0618】
298.投与することが、例えば、前記標的組織への局所投与を含む、実施形態196~297のいずれかに記載の方法。
【0619】
299.本明細書に提供する治療化合物を、治療レベルが少なくとも1、5、10、14、または28日間、例えば、連続または非連続した日にわたって存在するように、投与することを含む、実施形態196~298のいずれかに記載の方法。
【0620】
300.前記対象が、哺乳類、例えば、非ヒト哺乳類である、実施形態196~299のいずれかに記載の方法。
【0621】
301.前記対象が、ヒトである、実施形態196~299のいずれかに記載の方法。
【0622】
302.実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物をコードする1つの核酸分子または複数の核酸分子。
【0623】
303.実施形態302に記載の核酸分子を含む1つのベクターまたは複数のベクター。
【0624】
304.実施形態302に記載の核酸分子または実施形態303に記載のベクターを含む細胞。
【0625】
305.治療化合物を作成する方法であって、実施形態304に記載の細胞を培養して前記治療化合物を作成することを含む、前記方法。
【0626】
306.実施形態1~195のいずれかに記載の治療化合物をコードする核酸配列の作成方法であって、
a)標的化部分をコードする配列を含むベクターを提供し、エフェクター結合/調節部分をコードする前記ベクター配列へと挿入して、治療化合物をコードする配列を形成すること;または
b)エフェクター結合/調節部分をコードする配列を含むベクターを提供し、標的化部分をコードする前記ベクター配列へと挿入して、治療化合物をコードする配列を形成すること、
それにより治療化合物をコードする配列を作成することを含む、前記方法。
【0627】
307.前記標的化部分が、対象の必要性に応じて選択される、実施形態306に記載の方法。
【0628】
308.前記エフェクター結合/調節部分が、対象の必要性に応じて選択される、実施形態306または307に記載の方法。
【0629】
309.前記治療化合物をコードする前記配列を発現させて、前記治療化合物を産生することをさらに含む、実施形態306または307のいずれかに記載の方法。
【0630】
310.前記配列、または前記配列から作成されたポリペプチドを、前記治療化合物を対象に投与するだろう別の実体に、例えば医療提供者に移入することをさらに含む、実施形態306~309のいずれかに記載の方法。
【0631】
311.対象を処置する方法であって、
実施形態306~310に限られないが、本明細書に提供するいずれかの方法により作成された、治療化合物、または治療化合物をコードする核酸を、獲得すること、例えば、別の実体から受けること;
前記治療化合物、または治療化合物をコードする核酸を、前記対象に投与すること、
それにより前記対象を処置することを含む、前記方法。
【0632】
312.前記治療化合物、または治療化合物をコードする核酸を、別の実体、例えば、前記治療化合物、または治療化合物をコードする核酸を作成するだろう前記実体に対して同定することをさらに含む、実施形態311に記載の方法。
【0633】
313.別の実体、例えば、前記治療化合物、または治療化合物をコードする核酸を作成した前記実体から、前記治療化合物、または治療化合物をコードする核酸を要求することをさらに含む、実施形態311または312に記載の方法。
【0634】
314.前記対象が、自己免疫障害を有し、前記治療化合物が、前記自己免疫障害の自己抗原性ペプチドまたはポリペプチド特徴を含まない、例えば、前記対象がそれに対して自己抗体を有するペプチドまたはポリペプチドを含まない、実施形態311~333のいずれかに記載の方法。
【0635】
以下の実施例は、本明細書に記載の化合物、組成物及び方法の例示であるが、限定しない。当業者に公知の他の好適な改変及び適応は、以下の実施形態の範囲内である。
【実施例
【0636】
実施例1:HLA標的PD-1刺激治療化合物。
HLA標的PD-1刺激治療薬の操作
HLA-A2に特異的な結合ドメインを、BB7.2ハイブリドーマ(ATCC)からのIg重鎖及び軽鎖の可変領域をクローニングし、一本鎖抗体(scFv)へと変換することにより得る。scFvの活性及び特異性を、他のHLA-A対立遺伝子を発現する細胞と比較して、HLA-A2発現細胞へのBB7.2の結合を評価することにより確認することができる。PD-1結合活性のために必要とされる最小PD-L1残基は、アミノ酸68~114に対応するPD-L1IgVドメインのアミノ酸3’及び5’の必要性を系統的に評価することにより同定される。発現構築物を設計し、タンパク質合成及び精製し、PD-1結合活性をBiacoreにより試験した。PD-L1IgVドメインによりPD-1結合に必要とされる最小限必須アミノ酸は、PD-L1-IgVと称される。BB7.2scFv及びPD-L1-IgV二重特異性分子を生成するために、ドメイン配置はVLBB7.2-VHBB7.2-PD-L1-IgV-IgG4Fcとして、二重特異性一本鎖抗体BB7.2×PD-L1-IgVをコードするDNAフラグメントを合成し、DHFR選択カセットを含有する発現ベクターへとクローニングした。
【0637】
発現ベクタープラスミドDNAを、293T細胞へと一過的にトランスエフェクトし、BB7.2×PD-L1-IgV二重特異性抗体を、上清から、プロテインA/Gカラムを使用して精製した。BB7.2×PD-L1-IgV二重特異性抗体の完全性を、ポリアクリルアミドゲルにより評価する。BB7.2 scFvドメインのHLA-A2への及びPD-L1-IgVドメインのPD-1への結合を、ELISA及び細胞ベースのFACSアッセイにより評価する。
【0638】
BB7.2×PD-L1-IgV二重特異性抗体のin vitro機能を、混合リンパ球反応(MLR)アッセイを使用して評価する。96ウェルプレートフォーマットで、HLA-A2+ドナーからの100,000個の被照射ヒトPBMCを、ウェル毎に分割し、アクチベーターとして使用した。次いで、HLA-A1-レスポンダーT細胞を、漸増量のBB7.2×PD-L1-IgV二重特異性抗体と一緒に加えた。レスポンダーT細胞の72時間にわたって増殖する能力を、BrdU取り込みによって評価し、IFNg及びIL2サイトカイン産生を、ELISAによって評価して、共培養上清において追加で評価した。BB7.2×PD-L1-IgV二重特異性抗体は、MLR反応を抑制すると見出され、これは、HLA-A2-レスポンダーT細胞増殖及びサイトカイン産生を阻害することにより実証された。
【0639】
BB7.2×PD-L1-IgV二重特異性抗体のin vivo機能を、皮膚同種移植寛容のマウスマウスモデルを使用して評価する。C57BL/6-Tg(HLA-A2.1)1Enge/J(Jackson Laboratories,Bar Harbor Maine)系統のマウスを、Balb/cJと交配させ、F1子孫がHLA-A2.1導入遺伝子を発現し、同種移植ドナーとして機能する。C57BL/6Jマウスを剃毛し、安楽死させたC57BL/6-Tg(HLA-A2.1)1Enge/J×Balb/cJ F1マウスから除去した皮膚を外科的に移植した。同時に、宿主マウスは、マウスIgG1FcまたはBB7.2のみもしくはPD-L1-IgVのみの対照を含有するように操作されたBB7.2×PD-L1-IgV二重特異性抗体の腹腔内注射を受け始める。皮膚同種移植拒絶または許容を、30日間にわたってモニターし、ここで宿主を安楽死させ、リンパ節及び同種移植片に存在するリンパ球集団を定量化した。
【0640】
実施例2:エフェクタードメインとしてのCD39及び/またはCD73は、関心対象の細胞タイプまたは組織を取り囲むプリン作動性ハローを作り出す
CD39及び/またはCD73の触媒活性フラグメントを標的化ドメインに融合させる。標的部位での結合及び蓄積の際に、CD39は、ATPをAMPへとリン酸加水分解する。標的部位での結合及び蓄積の際に、CD73は、細胞外AMPをアデノシンへと脱リン酸化する。本明細書での使用に好適なCD39の可溶性触媒活性形態は、ヒト及びマウス血液中を循環することが見出されている、例えば、Yegutkin et al.FASEB J.2012 Sep;26(9):3875-83を参照されたい。可溶性組み換えCD39フラグメントは、Inhibition of platelet function by recombinant soluble ecto-ADPase/CD39,Gayle,et al.,J Clin Invest.1998 May 1;101(9):1851-1859にも記載されている。好適なCD73分子は、せん断応力によるGPIアンカーのタンパク質分解切断または加水分解により内皮細胞の膜から脱落することができるCD73の可溶性形態を含む、例えば、参考文献:Yegutkin G,Bodin P,Burnstock G.Effect of shear stress on the release of soluble ecto-enzymes ATPase and5’-nucleotidase along with endogenous ATP from vascular endothelial cells.Br J Pharmacol 2000;129:921-6を参照されたい。
【0641】
ATPからAMPまたはAMPからアデノシンの局所触媒作用により、劇症Tエフェクター細胞機能に必要な局所エネルギー貯蔵が枯渇することになる。Treg機能は、エネルギー需要に関して酸化的リン酸化(必要とするATPが少ない)に依存しているため、ATP枯渇の影響を受けないはずであり、Tメモリー及び他のエフェクター細胞は、劇症機能に関して解糖作用(高いATP使用を必要とする)に依存しているため影響を受けるはずである。
【0642】
実施例3:抗体誘導性PD-1シグナル伝達の測定。
2つの構築物、1)b-ガラクトシダーゼに融合したヒトPD-1ポリペプチド、これは「酵素ドナー」と称することができる、及び2)b-ガラクトシダーゼに融合したSHP-2ポリペプチド、これは「酵素アクセプター」と称することができる、を安定して発現するJurkat細胞。PD-1抗体を、該細胞と接触させ、PD-1が結合すると、SHP-2がPD-1に動員される。酵素アクセプター及び酵素ドナーは、アッセイすることができる完全に活性なb-ガラクトシダーゼ酵素を形成する。このアッセイを使用して、PD-1シグナル伝達の活性化を示すことができる。
【0643】
実施例4:PD-1アゴニズムの測定。PD-1アゴニストは、T細胞活性化を阻害する。いずれの特定の理論にも束縛されないが、PD-1アゴニズムは、抗CD3誘導性T細胞活性化を阻害する。ヒトまたはマウス細胞は、PHA(ヒトT細胞に関して)またはConA(マウスT細胞に関して)を用いて、それらがPD-1を発現するように、前もって活性化される。次いで、PD-1アゴニズムアッセイのために、抗PD-1(またはPD-L1)の存在下で抗CD3を用いてT細胞を「再活性化」する。抗CD3の存在下でPD-1アゴニストシグナルを受けるT細胞は、抗CD3刺激単独と比較して活性化の低減を示すだろう。活性化は、増殖またはサイトカイン産生(IL-2、IFNg、IL-17)及び場合によっては他のマーカー、例えばCD69活性化マーカーにより読み出すことができる。
【0644】
実施例5.抗MAdCAM/マウスPD-L1融合タンパク質の発現及び機能は、分子構成により影響されない。
抗マウスMAdCAM抗体/マウスPD-L1分子を含む二重特異性融合分子を、2つの配向で発現させた。第一の配向は、マウスPD-L1をその重鎖のC末端で融合させた抗マウスMAdCAM IgGからなる。第二の配向は、Ig FcドメインのN末端で融合したマウスPD-L1と、c末端で融合した抗マウスMAdCAM scFvからなる。両方の分子は、哺乳類の発現系で十分に発現されることがわかった。また、分子がそれぞれの結合パートナーであるMAdCAMまたはPD-1に両方の配向で同時に結合できることもわかった。これらの結果は、PD-L1に融合した抗MAdCAM抗体からなる分子が、PD-L1がFcにNまたはC末端で融合する構成で発現され、適切な機能的結合活性を保持できることを実証する。
【0645】
簡潔には、ヒトIgG1FcドメインのN末端に融合したマウスPD-L1及びc末端に融合した抗MAdCAM scFv MECA-89を有する単一ポリペプチドをコードする単一遺伝子を含有するpTT5ベクターを、HEK293 Expi細胞にトランスフェクトした。あるいは、2つのプラスミドを等モル比で同時トランスフェクトした。第一のプラスミドはMECA-89の軽鎖をコードし、第二のプラスミドはc末端にマウスPD-L1が融合したMECA-89の完全長IgG1重鎖をコードした。5~7日後、該分子を発現する細胞培養上清を回収し、遠心分離及び0.22umろ過装置を通してろ過することにより清澄化した。二重特異性分子は、proAレジンで捕捉した。該レジンをPBS pH7.4で洗浄し、10分の1容量の1M Tris pH8.5を使用して中和しながら、100mMグリシンpH2.5を使用して捕捉分子を溶出した。タンパク質をPBS pH7.4に緩衝液交換し、Superdex 200 3.2/300でサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。Bis-Tris4~12%ゲルでの還元及び非還元SDS-PAGEによる1ugの精製物質の分析を実施した。
【0646】
配向に関係なく、両方のタンパク質は10mg/Lを超えて発現し、サイズ排除クロマトグラフィー及び還元/非還元SDS-PAGEで示されるように、精製後に95%を超えて単分散した。したがって、これは、FcドメインのN及びC末端に異なる免疫調節因子及び組織標的化部分を備えた二重機能二重特異性分子の産生及び活性を実証する。これは、PD-1アゴニスト及び結合パートナーがIg FcドメインのNまたはC末端で発現できることも具体的に実証する。
【0647】
実施例6.MAdCAMに係留したPD-1アゴニストプロトタイプを含む二重特異性分子は、MAdCAM及びPD-1と同時に結合することができる。
簡潔には、免疫吸着プレートを、マウスPD-1を用いて、PBS pH7.4中1ug/mLの濃度、75ul/ウェルでコーティングし、一晩4℃でインキュベートした。ウェルを、0.05%Tween-20を含有するPBS pH7.4(洗浄緩衝液)で3回洗浄し、次いで、200ul/ウェル1%BSAを含むPBS pH7.4(ブロック緩衝液)を用いて、2時間室温でブロックした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、N末端またはC末端のいずれかにPD-1アゴニストプロトタイプを含む2つの二重特異性分子を、1%BSA及び0.05%Tween-20含有PBS(アッセイ緩衝液)中1nM、10nM、及び100nMに希釈した。希釈した物質を、マウスPD-1でコーティングプレートに、75ul/ウェルで1時間にわたり室温で加えた。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、マウスMAdCAMを、プレートに75ul/ウェルで、アッセイ緩衝液中10nMの濃度にて1時間にわたり室温で加えた。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、ヤギビオチン化抗マウスMAdCAMポリクローナル抗体を、アッセイ緩衝液中0.5ug/mLに希釈し、これをプレートに75ul/ウェルで1時間にわたり室温で加えた。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、高感度ストレプトアビジンHRPをアッセイ緩衝液中に1:5000で希釈し、これをプレートに75ul/ウェルで15分間にわたり室温で加えた。洗浄緩衝液で3回洗浄し、洗浄緩衝液(tween-20を含まない)で1回洗浄した後、アッセイを、TMBを用いて展開し、1N HCLで停止させた。OD450nmを測定した。実験には、マウスPD-1の非存在下でプレート/ブロックに対する非特異的結合のための適切な対照、ならびにマウスPD-1及びマウスMAdCAM間で架橋を形成することができない、無MAdCAM対照、及び単一特異性対照を含んだ。
【0648】
結果は、1nM、10nM、及び100nMの濃度で、両方の二重特異性分子がマウスMAdCAM及びマウスPD-L1と同時に相互作用できる一方で、単一特異性対照は架橋シグナルを生成しなかったことを実証した。加えて、マウスPD-1がプレート表面に存在しない場合、試験したいずれの濃度でもMAdCAMへのいずれの化合物の結合もなく、試験化合物がプレート表面と非特異的に相互作用していないことが示された。ゆえに、これらの結果は、MAdCAMとPD-1の両方への結合を標的としている二重特異性分子が両方の分子にうまく結合できることを実証する。実験は、PD-1抗体の代替としてPD-L1を使用して行ったが、PD-1抗体も同様に機能すると予想される。
【0649】
実施例7.二重特異性PD-L1プロトタイプ分子は、PD-1アゴニストアッセイにおいてT細胞を阻害する。
PD-1アゴニスト抗体を模倣する二重特異性分子を試験して、PD-1アゴニズムがT細胞を阻害できることを実証した。簡潔には、7週齢の雌C57LB/6マウスを屠殺し、その脾細胞を単離した。脾細胞をConAに3日間曝露し、次いでPD-1型分子、これはこの例では抗ヒトIgGを使用してプレートに係留されたPD-L1二重特異性分子とした、の存在下または非存在下で抗CD3に曝露した。次いで、T細胞をPD-L1二重特異性分子に導入した。PD-1抗体を模倣するPD-L1は、T細胞アゴニストであり、T細胞活性化を阻害すると見出された。同じ実験を、MAdCAMコーティングプレートと相互作用することによりプレートに係留された抗MAdCAM抗体と融合したPD-L1二重特異性分子を使用して繰り返した。PD-1アゴニストの模倣体、PD-L1/抗MAdCAM抗体は、T細胞活性の効果的なアゴニストであることが見出された。これらの結果は、PD-1抗体/MAdCAM抗体融合タンパク質を模倣する二重特異性分子は、分子の端にてMAdCAM抗体成分を介して該分子が捕捉されると、初代マウスT細胞芽細胞へと機能的な阻害性シグナルを発することができることを実証する。
【0650】
実施例8:異なる組織係留を有する二重特異性PD-1プロトタイプ分子は、PD-1アゴニストアッセイにおいてT細胞を阻害することができる。PD-L1の融合分子をPD-1抗体の代替として使用し、クラスI H-2Kk抗体に連結させた。MHCクラスI H-2Kk係留PD-L1分子は、実施例6及び7に記載のデータと同様の機能的結合を有した。簡潔には、C57Bl/6マウスの脾細胞をコンカナバリンA(ConA)及びIL-2で3日間刺激した。プレートを、抗CD3(2C11)を用いて一晩4℃でコーティングし、洗浄した。プレートを、抗ヒトIgGを用いて3時間37℃でコーティングし、洗浄した。単一特異性抗H-2Kk(16-3-22)または二重特異性抗H-2Kk:mPD-L1を加えて、3時間37℃でインキュベートし、洗浄した。全ての試験品は、ヒトIgG1-Fc部分を含有した。PBS(Txなし)を加えて、アッセイのバックグラウンドを決定した。ConA芽球を2回洗浄し、プレートに加え、37℃でインキュベートした。24時間後に上清を除去した。IFNgレベルをMSDによって決定した。48時間後、細胞生存率/代謝をCell Titer-gloにより分析した。IgG Fcドメインを介して捕捉された場合、MHCクラスI係留PD-L1二重特異性は、マウスPD-1アゴニズムアッセイにおいてT細胞活性化を減弱させることができる。それゆえ、この実施例は、異なる二重特異性プロトタイプ分子が、分子が異なる組織係留を介して捕捉された場合、初代マウスT細胞芽細胞へと機能的な阻害シグナルを発することができることを実証する。この場合、MHCクラスI H-2Kkに対するマウス抗体である。したがって、このデータは、係留は、MAdCAMに対して特異的でなく、本明細書に提供する標的化部分として作用することができる他の分子で可能であるということを実証する。
【0651】
実施例9.PD-1アゴニストは、Jurkat細胞においてシグナル伝達を誘導することができる
ベータ-ガラクトシダーゼ酵素ドナーに融合したヒトPD-1とベータ-ガラクトシダーゼ酵素アクセプターに融合したSHP-2の両方を発現するJurkat細胞をプレートの試験条件に加え、2時間インキュベートした。アゴニストPD-1抗体は、シグナル伝達とSHP-2の動員、酵素の補完、及び活性ベータ-ガラクトシダーゼ酵素の形成を誘導する。ベータ-ガラクトシダーゼ基質を追加し、化学発光を標準的な発光プレートリーダーで測定することができる。アゴニズムは化学発光によって測定され、測定される化学発光が多いほどアゴニズムが大きいことを示す。
【0652】
PD-1/MAdCAM二重特異性分子のアゴニズムをこのアッセイにて測定した。Cl10(UCB)及びCC-90006(Celgene/Anaptys)をPD-1アゴニスト抗体として使用した。Ig捕捉アッセイフォーマットの機能性アッセイにおいて、どちらも活性でありPD-1アゴニズムを呈する。簡潔には、プレートを、抗ヒトIgGを用いて一晩4℃でコーティングし、洗浄した。抗破傷風毒素(TT)またはベンチマークアゴニスト抗PD-1モノクローナル抗体、C1.10またはCC-90006を加え、1時間37℃でインキュベートし、洗浄した。全ての試験品は、ヒトIgG1-Fcを含有した。培地(Txなし)を加えて、アッセイのバックグラウンドを決定した。プレートを3回洗浄した。b-ガラクトシダーゼ酵素ドナーに融合したヒトPD-1とb-ガラクトシダーゼ酵素アクセプターに融合したSHP-2の両方を発現するJurkat細胞を加え、2時間インキュベートした。アゴニストPD-1抗体は、シグナル伝達とSHP-2の動員、酵素の補完及び活性β-ガラクトシダーゼ酵素の形成を誘導する。B-ガラクトシダーゼ基質を加え、化学発光を標準的な発光プレートリーダーで測定した。2つのヒトPD-1アゴニスト抗体(Cl10及びCC-90006)は、改変Jurkatレポーターアッセイにおいて結合し、シグナル伝達(アゴニズムの代理)を誘導する。ゆえに、このアッセイは、機能性PD-1アゴニズムアッセイである。Cl10:MECA89(MECA89は既知のMAdCAM抗体である)は、MAdCAM抗体、MECA89[scFv]を、Cl10の重鎖のC末端に融合することによって作成された新しい二重特異性分子である。この融合タンパク質は、Cl10のみのタンパク質と同様に、IgG Fcドメインを介して捕捉された場合、機能アッセイにおいて活性であり、PD-1アゴニズムを呈することが見出された。しかしながら、MAdCAMタンパク質をキャプチャとして使用する機能性アッセイフォーマットでは、Cl10:MECA89のみが活性である(単一特異性構成要素はシグナルを発さない)。
【0653】
簡潔には、プレートを抗ヒトIgGまたは組み換えmMAdCAM-1のいずれかを用いて一晩4℃でコーティングし、洗浄した。単一特異性抗破傷風毒素(TT)、抗MAdCAM-1(MECA39)もしくはアゴニスト抗PD-1(Cl10)または二重特異性Cl10:MECA89を加え、1時間37℃でインキュベートし、洗浄した。全ての試験品は、ヒトIgG1-Fc部分を含有した。PBS(Txなし)を加えて、アッセイのバックグラウンドを決定した。プレートを2回洗浄した。b-ガラクトシダーゼ酵素ドナーに融合したヒトPD-1とb-ガラクトシダーゼ酵素アクセプターに融合したSHP-2の両方を発現するJurkat細胞を加え、2時間インキュベートした。アゴニストPD-1抗体は、シグナル伝達とSHP-2の動員、酵素の補完、及び活性b-ガラクトシダーゼ酵素の形成を誘導する。B-ガラクトシダーゼ基質を追加し、化学発光を標準的な発光プレートリーダーで測定した。結果:プレートが抗IgG Fcキャプチャでコーティングされている場合は、Cl10、及びMAdCAM係留Cl10二重特異性分子は両方とも、JurkatレポーターアッセイにおいてPD-1シグナル伝達を誘導することができるが、プレートが組み換えMAdCAMタンパク質でコーティングされている場合は、MAdCAM係留二重特異性分子のみが、該レポーターアッセイにおいてPD-1シグナル伝達を誘導することができる。これらの結果は、MAdCAMと係留し、PD-1アゴニスト抗体を含有する分子が、機能的であることを実証し、これは、PD-1アゴニストの代理としてPD-L1で示される結果と同様である。
【0654】
実施例10:PD-1アゴニスト抗体の生成
PD-1欠損マウスを、PD-1に対する免疫応答を生成する条件下でマウスPD-1を用いて、免疫化した。マウスPD-1と結合する54ハイブリドーマを生成し、同定した。実施例4及び6に記載の方法にしたがって、異なるハイブリドーマによって産生された抗体を、T細胞アゴニズムに関して分析した。54個のハイブリドーマのうち、少なくとも6個がPD-1アゴニストとして同定された。抗体はPD-1への結合についても試験され、PD-L1結合部位と同じ部位で結合することが見出された。
【0655】
簡潔には、PD-L1結合部位への結合を以下のアッセイを使用して決定した。免疫吸着プレートを、一晩75μLの組み換えマウスPD-L1-Fc(2μg/mL)を用いて1×PBS、pH7.4中でコーティングした。次いで、プレートを、1×PBSで3回洗浄し、2時間室温にて1%BSAを補充した1×PBSを用いてブロックした。組み換えマウスPD-1-Fc(1nM)を、100nMの示した抗マウスPD-1抗体と、1%BSA及び0.05%Tween20を補充した1×PBS(アッセイ緩衝液)中で、1時間室温で、振とうしながらインキュベートした。ブロッキング後、プレートを、0.05%Tween20PBSTを補充した1×PBSを用いて3回洗浄し、抗体-PD-1コンジュゲートを、プレート結合マウスPD-L1とインキュベートした。未結合PD-1をPBSTで洗い流した後、プレートを、75μLのビオチン化ポリクローナル抗PD-1抗体(0.5μg/mL)とアッセイ緩衝液中でインキュベートし、その後、1:5000ストレプトアビジンHRP、これもアッセイ緩衝液中に希釈されている、を用いて増幅した。プレートを、PBSTで3回洗浄し、その後1×PBSで3回洗浄してから、100μL TMBを加え、その後100μL 1M HClを加えて、展開を停止させた。450nmで吸光度を読み取り、抗体の非存在下でPD-1のPD-L1への結合に対して正規化した。結果は、活性抗体がPD-L1結合部位に結合することを示した。不活性な抗体は、PD-L1結合部位に結合しなかった。それゆえ、この実施例は、本明細書に記載の以前に同定されたPD-1アゴニスト抗体に加えて、アゴニストである抗PD-1抗体を産生する能力を実証する。
【0656】
実施例11:係留抗PD-1抗体は、PD-1アゴニストとして作用する。
ヒト抗体scFvファージライブラリーを、反復選択ラウンドにわたって、組み換えヒト、マウス、及びカニクイザルPD-1タンパク質に対してパンニングして、PD-1の3つの前述の種オルソログを全て認識する抗体クローンについて富化した。scFvクローンは、nt-VH-リンカー-VL-ctフォーマットで構成し、pIIIコートタンパク質を介してM13ファージ表面に融合させた。選択後、CHO細胞の細胞表面に発現したヒト、マウス、及びカニクイザルPD-1への結合について、クローンscFvをスクリーニングした。3つの細胞表面発現PD-1種オルソログ全てに対して交差反応性であることが判明したクローンを、標準的な分子生物学技術を使用して、各分子が合計4本のポリペプチド鎖(2本の重鎖、及び2本の軽鎖)から構成されたヒトIgG1フォーマットへと変換した。提供するように、2本の軽鎖は、互いに同一であり、2本の重鎖は互いに同一であった。
【0657】
2本の同一の重鎖は、ホモ二量体形成し、2本の同一の軽鎖は、各重鎖と対となって、インタクトヒトIgG1を形成する。Fcドメインは、FcyR相互作用を除去するために、L235A、L236A、及びG237A突然変異を含有する。変換されたヒトIgG1抗PD-1抗体をトランスフェクトし、HEK293Expi細胞において発現させ、プロテインAクロマトグラフィーにより精製した。タンパク質濃度は、ナノドロップ分光光度計を抗体特異的吸光係数と組み合わせて使用して決定した。抗体はPBS pH7.4中で製剤化した。
【0658】
次に、抗PD-1抗体を、アゴニスト活性について本明細書に記載のJurkatアッセイで試験した。簡潔には、組織培養プレートを抗IgGでコーティングするか、コーティングしないままとした。捕捉フォーマットについては、試験品または対照を抗IgGコーティングウェルに100nM、25nMまたは12.5nMで加え、3時間37℃でインキュベートした。プレートを洗浄し、Jurkat PD-1細胞を加えた。可溶性フォーマットについては、可溶性試験品または対照を、すでにJurkat PD1細胞を含有するウェルに100nM、25nMまたは12.5nMで加えた。発光をプレートリーダーで測定した。結果は、12のうち9のヒト/マウス交差反応性PD-1抗体が、抗PD-1抗体が抗IgGを介して捕捉されたが、可溶性フォーマットではない場合に、Jurkatアッセイにおいて用量依存性活性を示したことを実証した。このデータは、抗PD-1抗体が、標的化部分によりその標的に係留するとき、アゴニストとして作用することができることを実証する。
【0659】
結論として、いずれの特定の理論にも束縛されないが、本明細書に提示するデータは、PD-1アゴニスト/MAdCAM二重特異性分子が、MAdCAMとPD-1の両方に結合し、さらにT細胞活性を刺激することができることを実証する。ゆえに、本分子を使用して、本明細書に提供する様々な状態を処置し、局所的及び/または組織特異的免疫調節ならびにT細胞応答の下方制御を提供することができる。
【0660】
本明細書において引用したありとあらゆる特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。様々な実施形態が、特定の態様を参照して開示されているが、これらの実施形態の他の態様及び変形が、本実施形態の真の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような全ての態様及び同等の変形を含むと解釈されることを意図している。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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【配列表】
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