(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】非球面ドームディスプレイおよび背面投影方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/62 20140101AFI20221027BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20221027BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20221027BHJP
G09F 19/12 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
G03B21/62
G03B21/14 Z
H04N5/74 C
G09F19/12 A
(21)【出願番号】P 2020519851
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2018065952
(87)【国際公開番号】W WO2018229253
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-25
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522254619
【氏名又は名称】トレアリティ・エス・フェー・エス・ベルジャム・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TREALITY SVS BELGIUM BV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・メールレール,ペーテル
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-271979(JP,A)
【文献】特開2015-143872(JP,A)
【文献】特開平11-084312(JP,A)
【文献】特開2011-128604(JP,A)
【文献】特開平05-197329(JP,A)
【文献】特表2016-519330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0053966(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0009862(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105093799(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/62
G03B 21/14
H04N 5/74
G09F 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非球面ドームディスプレイスクリーンを備える視覚システムであって、前記スクリーンの非球面形状は、好ましくは水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、前記回転軸を中心とした回転面を形成し、或る厚さを有するようなものであり、前記回転面は、平面曲線の回転軸を中心とした回転によって形成され、前記平面曲線上の各点は、角度および半径によって定義され、前記平面曲線は、前記角度の変化に伴って曲率半径が単調に増加または減少する少なくとも1つの区画を有
し、
【数1】
視覚システム。
【請求項2】
前記スクリーンの前記非球面形状は、それぞれ第1の曲率半径R1および第2の曲率半径R2を有する第1の弧および第2の弧を有し、前記第1の弧は前記スクリーンの上側部分にあり、前記第2の弧は前記スクリーンの下側部分にあり、R1<R2のようなものである、請求項
1に記載の視覚システム。
【請求項3】
前記スクリーンは、前記非球面ドームスクリーン内にいるユーザに画像を表示するように構成された少なくとも第1のプロジェクタ群によって囲まれ、前記第1のプロジェクタ群は、少なくとも180度の水平視野と、少なくとも20度下向きから60度上向きまでの範囲内の垂直視野とを有する合成画像を提供するように、水平面内で前記スクリーンの周縁の周りに配置されている少なくとも3つのプロジェクタを含む
、請求項
1または請求項2に記載の視覚システム。
【請求項4】
第2のプロジェクタ群(3)をさらに備え、前記第2のプロジェクタ群は、前記スクリーンの上側部分を照射するように構成された少なくとも1つのプロジェクタを含み、天頂である90度までの追加の垂直視野を提供する、請求項
3に記載の視覚システム。
【請求項5】
【数2】
請求項
1~
4のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項6】
【数3】
請求項
1~
4のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項7】
前記第1のプロジェクタ群が最大で9つのプロジェクタを含む、請求項
3~
6のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項8】
前記第2のプロジェクタ群が最大で4つのプロジェクタを含む、請求項
4~
7のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項9】
前記プロジェクタによって投影される光ビームを折り返すように、前記第1のプロジェクタ群および/または前記第2のプロジェクタ群に関連付けられたミラーをさらに備える、請求項
3~
8のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項10】
前記垂直視野は、2つのプロジェクタ層によって、最大で-50度下向きおよび全90度上向きである
、請求項
1~9のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項11】
前記第1のプロジェクタ群は、360度までの水平視野をカバーするように配置される、請求項
3~
10のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項12】
C
1は可能な限り小さいことが望ましいが、前記システムを設置する必要がある場所の空間的制約によって決定される、ゼロとは異なる値を有する、請求項
1~
11のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項13】
1つのプロジェクタ層を有し、各プロジェクタが40度~90度の水平視野をカバーし、4~9つのプロジェクタが全水平視野をカバーする、請求項
1~
12のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項14】
前記周縁周りにある1つの層が、各プロジェクタが40~90度の水平視野をカバーし、天頂領域上の1つのプロジェクタ層が、少なくとも、
0度~
15度の天頂角を有するスクリーン部分をカバーする、2つのプロジェクタ層を有する、請求項
13に記載の視覚システム。
【請求項15】
前記ドームの中心から見たときに、10分よりも良好な、幾何形状バットマッチ精度でバットマッチしたプロジェクタを有する、請求項
14に記載の視覚システム。
【請求項16】
重複するブレンド画像を提供するように構成されたプロジェクタを有する、請求項
1~
15のいずれか1項に記載の視覚システム。
【請求項17】
ドームスクリーン内にいるユーザに対する背面投影に使用するための非球面ドームスクリーンであって、
前記スクリーンの形状は、好ましくは水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、180度より大きい曲率角を有する前記回転軸を中心とした回転体を形成するようなものであり、前記回転体は最小曲率半径R1および最大曲率半径R2を有し、R2はR1とは異なり、前記非球面スクリーン形状は観察者の人間工学に最適化されており、
前記スクリーンは、第1の層および前記第1の層上の第2の拡散層を備え、前記第2の拡散層は、光吸収材料および光拡散粒子を含み、前記第2の拡散層は、
0.1~5となる、吸収係数
と厚さとの積の値を有するように適合さ
れ、
【数4】
非球面ドームスクリーン。
【請求項18】
前記第2の拡散層は合成樹脂層であり、前記光拡散粒子は樹脂材料に埋め込むことができる、請求項
17に記載の非球面ドームスクリーン。
【請求項19】
前記第2の拡散層が前記第1の層の内面上にある、請求項
17または
18に記載の非球面ドームスクリーン。
【請求項20】
前記第2の拡散層が複数の層を含む、請求項
17~
19のいずれか一項に記載の非球面ドームスクリーン。
【請求項21】
前記第2の拡散層は、拡散層と光吸収層との混合物を含む、請求項
17~
20のいずれか1項に記載の非球面ドームスクリーン。
【請求項22】
前記第2の拡散層は、交互になった拡散層と光吸収層とを含む、請求項
17~
21のいずれか1項に記載の非球面ドームスクリーン。
【請求項23】
前記第1の層が合成樹脂層であるか、またはガラスから作られている、請求項
17~
22のいずれか1項に記載の非球面ドームスクリーン。
【請求項24】
後方散乱のゲイン(Gr)が、角度>40度に対して値Gr<0.1を有する、請求項
17~
23のいずれか1項に記載の非球面ドームスクリーン。
【請求項25】
γ>7である間に、Grの値が<0.07であり得る、請求項
17~
23のいずれか1項に記載の非球面ドームスクリーン。
【請求項26】
非球面ドームスクリーンを含む視覚システムを操作する方法であって、前記スクリーンの非球面形状は、好ましくは水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、前記回転軸を中心とした回転面を形成し、或る厚さを有するようなものであり、前記回転面は、最小曲率半径R1および最大曲率半径R2を有し、R2はR1と異なり、前記非球面スクリーン形状は、観察者の人間工学に最適化されており、
前記ドームスクリーンの内部にいるユーザに対して前記スクリーン上に画像を表示するように、少なくとも第1のプロジェクタ群を構成し、
前記少なくとも第1のプロジェクタ群から画像を逆投影し、
前記少なくとも第1のプロジェクタ群は、少なくとも180度の水平視野と、少なくとも20度下向きから60度上向きまでの範囲内の垂直視野を有する合成画像を提供するように、水平面内で前記スクリーンの周縁の周りに配置されている少なくとも3つのプロジェクタを含
み、
【数5】
方法。
【請求項27】
前記非球面ドームディスプレイスクリーンは、水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、前記回転軸を中心とした回転面を形成し、或る厚さを有するような前記スクリーンの非球面形状を有し、前記回転面は、平面曲線の回転軸を中心とした回転によって形成され、前記平面曲線上の各点は、角度および半径によって定義され、前記平面曲線は、前記角度の変化に伴って曲率半径が単調に増加または減少する少なくとも1つの区画を有する、請求項2
6に記載の方法。
【請求項28】
【数6】
請求項2
6に記載の方法。
【請求項29】
【数7】
請求項2
6に記載の方法。
【請求項30】
【数8】
請求項2
6に記載の方法。
【請求項31】
前記スクリーンの前記非球面形状は、それぞれ第1の曲率半径R1および第2の曲率半径R2を有する第1の弧および第2の弧を有し、前記第1の弧は前記スクリーンの上側部分にあり、前記第2の弧は前記スクリーンの下側部分にあり、R1<R2のようなものである、請求項
26に記載の方法。
【請求項32】
前記スクリーン形状と前記形状の曲率半径の変動パラメータC
1およびC
2は、1.34より大きいアスペクト比を有するワイドスクリーンプロジェクタに適合するように最適化される、請求項
26に記載の方法。
【請求項33】
C
2の値は、前記システムの解像度要件と、任意選択的にプロジェクタ画像の短軸に沿った1つの方向における前記プロジェクタの解像度およびプロジェクタ間に必要なオーバーラップとの比較により決定されるyである、請求項
26~
32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記オーバーラップは、使用されているブレンディングまたはエッジング技術によって決定され、結果、両方が前記システムの前記第1の層に必要なプロジェクタの数を決定する、請求項
33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のプロジェクタ層によってカバーする必要がある前記システムの垂直視野が決定される、請求項
26~
34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ワイドスクリーンプロジェクタのアスペクト比および垂直視野に対する前記プロジェクタの開口角を考慮に入れて、前記アスペクト比および前記開口角が前記第1のプロジェクタ層の必要な垂直視野と一致するC
2の値が決定される、請求項
32に記載の方法。
【請求項37】
天頂が前記視覚システム内で使用されている場合、C
2は、前記システムの視野全体の要件をともに満たす値に達するまで
、第2のプロジェクタ層で同じ方法を使用して前記天頂においてさらに改良される、請求項
26~
36のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、水平方向および垂直方向に広い視野を有する非球面投影ディスプレイの分野に関し、このディスプレイは背面投影装置に使用するためのものである。
【背景技術】
【0002】
背景
没入型視覚システムは、パイロットもしくは運転者のための窓の外の画像を作成し、または、1人もしくは複数のユーザのための視覚的に包囲する仮想画像を作成するために、シミュレーション用途で広く使用されている。
【0003】
現在、大きい視野の没入型視覚表示システムを作成するために、4つの主な手法がある。
【0004】
大きい視野を有する没入型視覚表示システムを生成する第1の既知の技法は、複数のプロジェクタを用いて、球面の前面に投影することである。前面投影システムの利点は、フットプリントがコンパクトであることであるが、プロジェクタの配置が複雑であり、ワイドスクリーンプロジェクタが最適な方法で使用されないため、システムの解像度が低下することである。球面の内側から見ているパイロットは、パイロットがスクリーンを見る角度に関係なく、パイロットの眼とスクリーンとの間の距離がほぼ一定であるため、非常に優れた人間工学を体験する。
【0005】
第2の技法は、背面投影される球面に複数のプロジェクタを用いて投影することに存する。背面投影球面ディスプレイの利点は、プロジェクタが背面投影スクリーンの周囲に位置決めされ、それゆえ、より均一な方法でスクリーンを照射し、より均一でより高い解像度のディスプレイが得られることである。アスペクト比が1.34を超えるワイドスクリーンプロジェクタは、通常、球面スクリーンと最適に一致させることができず、ピクセルおよび輝度が大幅に損失する。プロジェクタは、スクリーンの表面上でハードエッジまたはソフトエッジにすることができる。球面内のパイロットは、パイロットがスクリーンを見る角度に関係なく、パイロットの眼とスクリーンとの間の距離がほぼ一定であるため、非常に優れた人間工学を得る。
【0006】
第3の方法は、例えば、背面投影ファセットドームを記載している米国特許第5,179,440号明細書に記載されているように、ファセットディスプレイ上に投影することによる。このとき、システムスクリーンは、各スクリーンファセットの背後にプロジェクタを有する、複数の平坦なまたは緩やかに湾曲したファセット背面投影スクリーンによって構成される。この手法の利点は、ワイドスクリーンプロジェクタであっても、プロジェクタの解像度を非常にうまく使用してスクリーン解像度を最適化することができること、および、フットプリントを小さく保つことができることである。欠点は、パイロットの眼とスクリーンとの間の距離が一定でなくなり、ファセットの端で一定ではない様態で変化し、パイロットがスクリーンを見る角度に応じて変わるため、パイロットの視覚的人間工学が大きく損なわれることである。
【0007】
第4の技法は、第2の技法と第3の技法とを組み合わせたものである。すなわち、部分的に背面投影連続面であり、部分的にファセット面であるハイブリッド背面投影ソリューションを作成することによる。ここでも、ワイドスクリーンプロジェクタを効率的に使用することができ、フットプリントをコンパクトに保つことができるが、パイロットの視覚的人間工学はファセットディスプレイと同じ理由で大きく損なわれる。
【0008】
米国特許第5,023,725号明細書は、十二面体画像化システムのための方法および装置を記載している。米国特許9,188,850号明細書は、高解像度プロジェクタのためのディスプレイシステムを提供する。国際公開第2012/040797号は、湾曲逆投影スクリーンを開示している。米国特許出願公開第20120218170号明細書は、広視野ディスプレイのための方法および装置を開示しており、米国特許出願公開第2007/0009862号明細書は、非球面投影面を使用するシミュレータを提供し、米国特許第9,110,358号明細書は、一定の垂直解像度のトロイダルディスプレイを生成するための方法、およびシステムを提案している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本明細書に記載のシステム、デバイス、および方法を含む実施形態は、ディスプレイ構造またはシステム内の好ましくは1人の観察者の人間工学に最適化することができる非球面投影ディスプレイ構造およびシステムならびに表示方法に関する。構造もしくはシステムまたは方法は、ワイドスクリーンプロジェクタとともに使用することが好ましい。本出願は、広い水平視野および垂直視野を有し、或る厚さの投影スクリーン表面を有する背面投影ディスプレイ構造を使用する視覚投影ディスプレイおよびディスプレイの操作方法を作成することを目的とする。
【0010】
本発明の一態様によれば、非球面ドームディスプレイスクリーンを含む視覚システムが提供され、スクリーンの非球面形状は、好ましくは水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、上記回転軸を中心とした回転面を形成し、或る厚さを有するようなものであり、上記回転面は、平面曲線の回転軸を中心とした回転によって形成され、平面曲線上の各点は、角度および半径によって定義され、平面曲線は、上記角度の変化に伴って曲率半径が単調に増加または減少する少なくとも1つの区画を有する。
【0011】
【0012】
スクリーンの非球面形状は、それぞれ第1の曲率半径R1および第2の曲率半径R2を有する第1の弧および第2の弧を有し、第1の弧はスクリーンの上側部分にあり、第2の弧はスクリーンの下側部分にあり、R1<R2のようなものである。
【0013】
スクリーンは、非球面ドームスクリーン内にいるユーザに画像を表示するように構成された少なくとも第1のプロジェクタ群によって囲むことができ、第1のプロジェクタ群は、少なくとも180度の水平視野と、少なくとも20度下向きから60度上向きまでの範囲内の垂直視野を有する合成画像を提供するように、水平面内でスクリーンの周縁の周りに配置されている少なくとも3つのプロジェクタを含む。
【0014】
第2のプロジェクタ群を提供することができ、第2のプロジェクタ群は、スクリーンの上側部分を照射するように構成された少なくとも1つのプロジェクタを含み、天頂である90度までの追加の垂直視野を提供する。
【0015】
【0016】
例えば、第1のプロジェクタ群は、最大9つのプロジェクタを含むことができる。第2のプロジェクタ群は、最大4つのプロジェクタを含むことができる。
【0017】
第1のプロジェクタ群および/または第2のプロジェクタ群に関連付けられたミラーを使用して、プロジェクタによって投影される光ビームを折り返すことができる。
【0018】
システムの垂直視野は、2つのプロジェクタ層を用いて最大-50度下向き、全90度の上向きとすることができる。
【0019】
第1のプロジェクタ群は、360度までの水平視野をカバーするように配置することができる。
【0020】
C1は可能な限り小さいことが望ましいが、システムを設置する必要がある場所の空間的制約によって決定される、ゼロとは異なる値を有することができる。
【0021】
水平視野全体をカバーするために、各プロジェクタが4~9つのプロジェクタを用いて40度~90度の水平視野をカバーする、1つのプロジェクタ層を提供することができる。
【0022】
周縁周りにある1つの層が、各プロジェクタが40~90度の水平視野をカバーし、天頂領域上の1つのプロジェクタ層が、少なくとも、75度~90度の天頂角を有するスクリーン部分をカバーすることができる、2つのプロジェクタ層が存在し得る。
【0023】
このシステムは、ドームの中心から見たときに、10分よりも良好な、幾何形状バットマッチ精度でバットマッチしたプロジェクタを有することができる。
【0024】
プロジェクタによって投影される画像は、重なり合ってブレンドすることができる。
スクリーンの形状は、好ましくは水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、180度より大きい曲率角を有する上記回転軸を中心とした回転体を形成するようなものとすることができ、上記回転体は最小曲率半径R1および最大曲率半径R2を有し、R2はR1とは異なり、非球面スクリーン形状は観察者の人間工学に最適化されており、
スクリーンは、第1の層および第1の層上の第2の拡散層を備え、第2の拡散層は、光吸収材料および光拡散粒子を含み、第2の拡散層は、吸収係数と、0.1~5の厚さとの積の値を有するように適合されている。
【0025】
第2の拡散層は合成樹脂層とすることができ、光拡散粒子は樹脂材料に埋め込むことができる。
【0026】
第2の拡散層は、第1の層の内面上にあることができる。
第2の拡散層は、複数の層を含むことができる。
【0027】
第2の拡散層は、拡散層と光吸収層との混合物を含むことができる。
第2の拡散層は、交互になった拡散層と光吸収層とを含むことができる。
【0028】
第1の層は、合成樹脂層とすることができ、または、ガラスから作られる。
後方散乱のゲイン(Gr)は、角度>40度についてGr<0.1の値を有することができる。例えば、γ>7である間、Grの値は<0.07であり得る。
【0029】
別の態様において、本発明は、ドームスクリーン内にいるユーザに対する背面投影に使用するための非球面ドームスクリーンであって、
スクリーンの形状は、好ましくは水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、180度より大きい曲率角を有する上記回転軸を中心とした回転体を形成するようなものであり、上記回転体は最小曲率半径R1および最大曲率半径R2を有し、R2はR1とは異なり、非球面スクリーン形状は観察者の人間工学に最適化されており、
スクリーンは、第1の層および第1の層上の第2の拡散層を備え、第2の拡散層は、光吸収材料および光拡散粒子を含み、第2の拡散層は、吸収係数と、0.1~5の厚さとの積の値を有するように適合されている、非球面ドームスクリーンを提供する。
【0030】
第2の拡散層は合成樹脂層とすることができ、光拡散粒子は樹脂材料に埋め込むことができる。
【0031】
第2の拡散層は、第1の層の内面上にあることができる。
第2の拡散層は、複数の層を含むことができる。
【0032】
第2の拡散層は、拡散層と光吸収層との混合物を含むことができる。
第2の拡散層は、交互になった拡散層と光吸収層とを含むことができる。
【0033】
第1の層は、合成樹脂層とすることができ、または、ガラスから作られる。
後方散乱のゲイン(Gr)は、角度>40度についてGr<0.1の値を有することができる。γ>7である間、Grの値は<0.07であり得る。
【0034】
本発明の別の態様において、非球面ドームスクリーンを含む視覚システムを操作する方法であって、スクリーンの形状は、好ましくは水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、上記回転軸を中心とした回転面を形成し、或る厚さを有するようなものであり、上記回転面は、最小曲率半径R1および最大曲率半径R2を有し、R2はR1と異なり、非球面スクリーン形状は、観察者の人間工学に最適化されており、
ドームスクリーンの内部にいるユーザに対してスクリーン上に画像を表示するように、少なくとも第1のプロジェクタ群を構成し、
少なくとも第1のプロジェクタ群から画像を逆投影し、少なくとも第1のプロジェクタ群は、少なくとも180度の水平視野と、少なくとも20度下向きから60度上向きまでの範囲内の垂直視野を有する合成画像を提供するように、水平面内でスクリーンの周縁の周りに配置されている少なくとも3つのプロジェクタを含む。
【0035】
非球面ドームディスプレイスクリーンは、好ましくは水平面に垂直な回転軸を含み、実質的に、上記回転軸を中心とした回転面を形成し、或る厚さを有するようなスクリーンの非球面形状を有し、上記回転面は、平面曲線の回転軸を中心とした回転によって形成され、平面曲線上の各点は、角度および半径によって定義され、平面曲線は、上記角度の変化に伴って曲率半径が単調に増加または減少する少なくとも1つの区画を有する。
【0036】
スクリーンの非球面形状は、好ましくは最小曲率半径R1および最大曲率半径R2を有し、R2はR1と異なり、スクリーンの非球面形状は、式∂R/∂Φ=C2±e(φ,θ)および∂R/∂θ=C1±e(φ,θ)を通じてスクリーン表面の曲率半径を積分することによって観察者の人間工学に最適化されており、C1およびC2は定数であり、e(φ,θ)は、絶対値がすべてのθ値およびφ値についてC1およびC2の両方よりも小さいこれらの定数に対する可変許容係数であり、θは水平面内のスクリーン点Pの角度であり、φは天頂角である。
【0037】
【0038】
スクリーンの非球面形状は、それぞれ第1の曲率半径R1および第2の曲率半径R2を有する第1の弧および第2の弧を有し、第1の弧はスクリーンの上側部分にあり、第2の弧はスクリーンの下側部分にあり、R1<R2のようなものである。
【0039】
スクリーン形状とその曲率半径の変動パラメータC1およびC2は、好ましくは、1.34より大きいアスペクト比を有するワイドスクリーンプロジェクタに適合するように最適化される。
【0040】
C2の値は、好ましくは、システムの解像度要件と、任意選択的にプロジェクタ画像の短軸に沿った1つの方向におけるプロジェクタの解像度およびプロジェクタ間に必要なオーバーラップとの比較により決定される。
【0041】
オーバーラップ要件は、使用されているブレンディングまたはエッジング技術によって決定されることが好ましく、それにより、両方がシステムの第1の層に必要なプロジェクタの数を決定することができる。
【0042】
第1のプロジェクタ層によってカバーする必要があるシステムの垂直視野が決定される。
【0043】
ワイドスクリーンプロジェクタのアスペクト比および垂直視野に対するプロジェクタの開口角を考慮に入れて、このアスペクト比および開口角が第1のプロジェクタ層の必要な垂直視野と一致するC2の値が決定される。
【0044】
天頂が視覚システム内で使用されている場合、C2は、システムの視野全体の要件をともに満たす値に達するまで、第2のプロジェクタ層で同じ方法を使用して天頂においてさらに改良される。
【0045】
本発明による実施形態の技術的効果および利点は、必要な変更を加えて、本発明による方法の対応する実施形態の技術的効果および利点に対応する。
【0046】
図面の簡単な説明
本発明の実施形態のこれらおよび他の技術的態様および利点を、ここで添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の一実施形態による、人間工学的没入型非球面逆投影スクリーン上の複数のプロジェクタを使用する、360度の水平視野および+90度~-45度の垂直視野を有する視覚システムを示す図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、人間工学的没入型非球面逆投影スクリーンの側面図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による、人間工学的没入型非球面逆投影スクリーンの上面図である。
【
図3】3つの異なる対応する天頂角における曲率半径R1、R2およびR3を示す、人間工学的な没入型非球面逆投影スクリーン(側面図)を有する本発明の実施形態の垂直断面図である。
【
図4】θがx軸を基準とした水平面内のスクリーン点Pの角度であり、φがz軸に対するスクリーン点Pの天頂角である、球面座標系を示す図である。
【
図5】本発明による任意の実施形態とともに使用するための二重層スクリーンによる光の前方散乱を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に従って得られる視角の関数としての輝度を示す図である。
【
図7】スクリーンの他の部分からの入射光がコントラストにどのように影響するかを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態において使用されるスクリーンの後方散乱光および表面反射を示している。
【
図9】本発明の一実施形態における垂直入射の後方散乱を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態において使用されるものとしてのスクリーンへのコリメートされたビームの入射光束を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態において使用されるものとしてのスクリーンへのコリメートされたビームの入射光束を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態によるコーティング上の透過ゲインの値を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態によるコーティング上の反射ゲインの値を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態に従ってコーティングを塗布するための噴霧パターンを示す図である。
【
図15】本発明の実施形態に従ってコーティングを塗布するための噴霧パターンを示す図である。
【
図16】本発明の実施形態によるコーティングを用いて得られる、着色添加剤の%とピークゲインとの間の関係を示す図である。
【
図21A】理想的なスクリーンを示す、バルク拡散によるシャープネス損失を示す図である。
【
図21B】現実的なスクリーンを示す、バルク拡散によるシャープネス損失を示す図である。
【
図22】周囲光によるコントラストの低下を示す図である。
【
図23】前方散乱光の後方反射によるコントラストの低下を示す図である。
【
図24】本発明の実施形態において使用される実質的に湾曲したスクリーンへの逆投影を示す図である。
【
図25A】HGAの小さい単一のプロジェクタによるRPスクリーンを示す、スクリーンの前にいる観察者にとっての輝度均一性を示す図である。
【
図25B】HGAの大きい単一のプロジェクタによるRPスクリーンを示す、スクリーンの前にいる観察者にとっての輝度均一性を示す図である。
【
図25C】HGAの小さい3つのプロジェクタによるRPスクリーンを示す、スクリーンの前にいる観察者にとっての輝度均一性を示す図である。
【
図25D】HGAの大きい3つのプロジェクタによるRPスクリーンを示す、スクリーンの前にいる観察者にとっての輝度均一性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
実施形態の詳細な説明
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は概略的なものに過ぎず、限定ではない。図面において、例示の目的でいくつかの要素のサイズは誇張されており、縮尺通りに描かれていない場合がある。本明細書および請求項において用語「備える(comprising)」が使用される場合、それは他の要素またはステップを排除するものではない。さらに、明細書および特許請求の範囲の第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順次的または時間的な順序を説明するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であること、および、本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示されている以外の順序で動作することが可能であることを理解されたい。
【0049】
本発明は、例えば
図1に示されるように、連続的な形状を有する背面投影非球面(または非球面)スクリーン1を対象とする。非球面スクリーン1は、好ましくは水平面に垂直な回転軸を有し、実質的に、上記回転軸を中心とした回転面を形成し、或る厚さを有する。スクリーン1に逆投影された画像を見るために、パイロットまたは運転者などの少なくとも1人の観察者が非球面(または非球面)スクリーン1の内部に配置される。
【0050】
複数の逆投影プロジェクタ4がスクリーン1の外面を取り囲んでいる。複数のプロジェクタは、ユーザがドーム、すなわち背面投影非球面スクリーンの内部に、かつ水平面内にいるときに、ユーザが、ユーザには完全に滑らかで連続した画像に見える、生成される画像によって囲まれるように、合成してスクリーン上で単一の画像になる複数の画像を生成するように構成される。
【0051】
本発明の実施形態では、2つのプロジェクタ層があり得る。本発明の実施形態による視覚システムは、スクリーン1の周縁を後方照射するための少なくとも第1のプロジェクタ層またはプロジェクタ群4を備える。本発明の好ましい実施形態は、スクリーン1の上側部分、例えば天頂を照射するための第2のプロジェクタ群3を含む。
【0052】
構造物5に取り付けられた第1のプロジェクタ層4は、水平視野をカバーするように水平面内でスクリーン1の周縁周りに配置され、各プロジェクタ4は、設置に必要なスペースを最小限に抑えながら、例えばプロジェクタとスクリーン間の距離など、投影距離、したがって画像のフットプリントを増大させるようにミラー2に任意選択的に結合することができる。この第1のプロジェクタ群の投影画像は、-45度~65度の垂直視野をカバーする。スクリーン1の形状が完全な回転面に近い場合、スクリーンの周縁に対する各プロジェクタおよび任意選択の各ミラーの位置は同一であり得、2つの連続したプロジェクタの間の距離および任意選択的にミラーの間の距離も同一であり得る。形状が完全な回転面ではないスクリーン1の場合、より複雑な構成が予想され得る。スクリーンの形状については、以下でさらに説明する。
【0053】
第2のプロジェクタ層は、非球面スクリーン1の天頂をカバーする画像を投影するように、任意選択的に複数のミラー3に結合することができる。第2プロジェクタ群のプロジェクタおよび任意選択のミラー5の数は、好ましくは少なくとも1、より好ましくは2である。しかしながら、例えば4つなどの3つ以上のプロジェクタを備えた構成は、本発明の範囲内である。第1のプロジェクタ層に関しては、プロジェクタの数を増やすと、得られる解像度が向上する。したがって、プロジェクタおよび任意選択のミラーの数の選択は、用途およびその用途の要件に依存する。第2のプロジェクタ層の視野は、65度~90度の範囲内に含まれる。
【0054】
本発明の実施形態では、プロジェクタは背面投影スクリーンに直接投影することができる。ただし、このようなシステムでは、プロジェクタとスクリーンとの間に必要なスペースが増える。
【0055】
図4は、本発明の実施形態によるスクリーン1の形状を記述するために使用される座標系を示す。球面座標系が使用される。点Pの座標は、固定原点からの点の半径方向距離ρ、固定天頂方向またはx軸から測定されるその極角φまたは天頂角、および、原点Oを通過し、天頂またはz軸に直交する水平軸x、yによって定義される参照平面上の、その平面上の固定基準方向から測定されるその直交投影の方位角θによって記述することができる。
【0056】
図2に示すように、スクリーン1の形状は様々な平面内で記述することができる。本発明の実施形態では、形状他は、例えば楕円体の場合のように、y,z平面、x,y平面、およびx,z平面内で異なり得る。
図2Aに示すように、スクリーン1の底面は、回転面を切り詰めて開口20を形成する平面とすることができる。この開口20により、ユーザはスクリーンに入ることができる。通常、船舶、自動車、飛行機などの輸送車両の床は透明ではないため、スクリーン1の床は不透明であり得る。
【0057】
本発明によるスクリーンの形状は、少なくとも1つの垂直面、すなわちx,z平面またはy,z平面において非球面である。上記平面において、スクリーンの形状は、原点に対して半径方向距離ρを有する平面曲線によって記述することができる。少なくとも1つの垂直面において形状が非球面であるための条件は、平面曲線が一定でない曲率半径を有すること、または言い換えれば、上記半径方向距離ρが一定でないことである。球体の場合、曲率半径は変化せず、一定のままである。本発明の実施形態は、角度が変化するにつれて増加する曲率半径を一部が有する表面を利用する。好ましくは、曲率半径は単調に増加または減少する。本発明の実施形態の1つの態様は、らせんの一部である表面を使用することである。
【0058】
平面曲線の曲率半径Rは、一般にR=|ds/dφ|=1/κの絶対値として定義され、ここで、sは曲線上の固定点からの弧の長さであり、φは曲線の方向における点での接線角度であり、κは曲率である。
【0059】
本発明によるスクリーン1の形状は、観察者の人間工学を改善するために最適化されていることが好ましい。これは、例えば、少なくとも天頂角Φに沿った曲率半径Rの変動を最適化することにより実現されている。本発明の実施形態は、角度Φが変化するにつれて増加する曲率半径を一部が有する表面を利用する。好ましくは、曲率半径は単調に増加または減少する。本発明の実施形態の1つの態様は、らせんの一部である表面を使用することである。曲率半径Rの変化は、方位角θに沿って最適化することもできる。本発明の実施形態は、角度Φが変化するにつれて増加する曲率半径を一部が有する表面を利用する。好ましくは、曲率半径は単調に増加または減少する。本発明の実施形態の1つの態様は、らせんの一部である表面を使用することである。
【0060】
図3は、本発明の一実施形態による平面曲線を示す。
図3はまた、曲率半径が平面曲線に沿って変化することを実証するために、平面曲線の3つの異なる位置の曲率半径も示している。上部において、回転楕円体形状を有するスクリーンに関して、周縁に沿っておよび天頂においてプロジェクタ4の数を減らすため、より高い弧での小さい曲率半径Rが好ましい。
【0061】
【0062】
許容値eまたはe(φ,θ)に関して、この許容値eまたはe(φ,θ)の絶対値が1度あたりR1の2%未満のままであることが重要である。C1を0%にすることは、表面が水平面内で球面であることを意味する。
【0063】
これらの定数およびこの許容値により、観察者は、観察者が曲率半径がθおよびΦの角度に沿って強い変化があるスクリーンを見るファセットシステムまたはハイブリッド背面投影システムなどの従来技術のシステムとは異なり、滑らかな変化を有する連続した表面を見る。
【0064】
C2の値を最適化して、ワイドスクリーンプロジェクタ(投影画像が長い寸法および短い寸法を有する)のアスペクト比に一致する形状を作成し、ワイドスクリーンプロジェクタのピクセルおよび輝度を可能な限り効率的に利用することができる。C2の値は、システムの解像度要件を確認し、これを(典型的にはプロジェクタ画像の短軸に沿った)1つの方向におけるプロジェクタの解像度およびプロジェクタ間に必要なオーバーラップと比較することにより決定される。このオーバーラップ要件は、使用されているブレンドまたはエッジング技術に依存する。これから、システムの第1の層に必要なプロジェクタの数を決定することができる。続いて、第1のプロジェクタ層によって(通常はプロジェクタの長軸に沿って)カバーされるように、システムの垂直視野が決定される。ワイドスクリーンプロジェクタのアスペクト比および垂直視野に対するプロジェクタの開口角を考慮に入れて、このアスペクト比および開口角が第1のプロジェクタ層の必要な垂直視野と一致するC2の値が決定される。天頂が視覚システム内で使用されている場合、C2は、システムの視野全体の要件をともに満たす値に達するまで、第2のプロジェクタ層で同じ方法を使用して天頂においてさらに改良され、C1は可能な限り小さいことが望ましいが、システムを設置する必要がある場所の空間的制約と一致するような、ゼロとは異なる値を有することができる。本発明の実施形態とともに使用されることが好ましいワイドスクリーンプロジェクタは、1.34を超えるアスペクト比を有し、アスペクト比は、長方形の投影画像の最長軸の幅と、長方形の投影画像の最短軸の幅との間の比として定義される。
【0065】
【0066】
回転面の形状は、平面曲線、またはρおよびφのプロファイル関数によって記述することができ、これにより、これは、これにより単調に増加または減少する曲率半径として数学的に表現することができる。このような曲線は、らせんの一部であり得る。表面は、上記平面曲線を回転軸またはz軸を中心として回転させることにより得られる。スクリーンはこの表面および或る厚さを有する。
【0067】
本発明の他の実施形態では、スクリーン1の形状は、対称中心で交差する3つの対になった垂直対称軸を有する楕円体であり得るか、または楕円体と回転体との混合物であり得る。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、
図2および
図3を参照して説明したように、スクリーンの形状は卵形であり、卵形の特徴は、平面曲線が半径および角度φの関数であることである。これは、数学的に、単調に増加または減少する曲率半径として表現することができる。このような曲線は、らせんの一部であり得る。
【0069】
周縁周りの第1のプロジェクタ層またはプロジェクタ群2は4つ~9つのプロジェクタを含むことができ、天頂上のプロジェクタ層またはプロジェクタ群3は1つ~4つのプロジェクタを含むことができる。プロジェクタの数は、用途に必要な解像度および輝度に依存する。プロジェクタによって投影される画像は重なり合っている場合があり、その場合、それらはブレンドされるか、または、ドームの中心から見て10分よりも高い精度でマッチングされ得る。したがって、合成画像は、ユーザには、単一の滑らかで連続した画像に見える。
【0070】
図2と
図3の描写では、天頂での曲率半径R1が約1mであり、C
1=0およびC
2=2%である曲線が描かれている。表面に沿った他のすべての曲率半径は、これらの値によって決まる。これにより、パイロットまたは運転者の射出瞳から優れたディスプレイ人間工学を維持しながら、半径が1.7mで13個の同一のプロジェクタを有する球面システムと同様の輝度および解像度の特性を有する8つのプロジェクタを備えたシステムを作成することが可能である。
【0071】
ミラーは任意の方向に向けることができ、それらの向きは純粋に、システムのフットプリントを可能な限り小さくするように決定されることに留意されたい。
【0072】
本発明の実施形態の一態様は、スクリーンが作られる材料である。実際、スクリーンは逆投影で動作するため、拡散スクリーンが好ましい。拡散フラット逆投影スクリーンが知られているが、これらは本発明に記載された形状にそれほど容易に適合されない。ドーム内で見ることに関する問題の1つは、スクリーンの一方の側からの光が他方の側に衝突することである。これは、スクリーンに投影される光が周囲光源からのみのものであり、シミュレータが配置されている筐体内の適切なシェーディングによって低減することができるフラットスクリーンとは異なる。しかし、本発明によるスクリーンでは、スクリーンの一方の側の画像自体が他方の側の画像の周囲光になる。これは、得られ得るコントラストに影響を与え、同じレベルのコントラストを達成する必要がある場合、フラットスクリーンに適した材料を球面スクリーンに適しないようにする。そのような問題は、球面湾曲逆投影スクリーンを開示する国際公開第2012/040797号パンフレットにおいて議論されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
背面投影(RP)スクリーンは、プロジェクタからの入射光を種々の方向に散乱させる(
図17)。光散乱は、前方散乱と後方散乱とに分割することができる。後方散乱光線はスクリーンの入射光と同じ側にあり、前方散乱光線は反対側にある。背面投影スクリーンの場合、前方向に散乱する光は、見られるときに有用な光である。後方散乱光は損失であり、最小限に抑える必要がある。光線の後方散乱パターンは、双方向反射率分布関数(BRDF)によって、前方散乱パターンは双方向透過率関数(BTDF)によって特徴づけることができる。これらの関数は、入射および出射光線の方向をパラメータとして含む。背面投影スクリーンは、多くの場合、より単純な関数であるスクリーンゲインによって特徴づけられる。スクリーンゲインは、スクリーンの輝度と、理想的なゼロ吸収ランベルトスクリーンの輝度との比によって定義される。理想的なゼロ吸収ランベルトスクリーンの輝度は、以下によって定義される。
【0074】
L=E/π
ここで、Eはスクリーンの裏面の照度であり、Lはスクリーンの前にいる観察者から見た輝度である。一般に、理想的なランベルトスクリーンの輝度は、スクリーン表面の照射のみに依存する。
【0075】
バルク拡散背面投影スクリーンは、バルク散乱(
図18)を利用して、入射光を種々の方向に散乱させる。これらのスクリーンは、しばしば、円対称である、すなわち、輝度は、観察方向と正反射方向との間の角度のみに依存する(
図19Aおよび
図19B)。
【0076】
【0077】
その場合、背面投影スクリーンのゲイン特性は、2つの2次元グラフによって表すことができる(
図20Aおよび
図20B)。ゼロ角でのゲインはピークゲインと呼ばれ、ゲインがピークゲインの半分になる角度はハーフゲイン角(=HGA)と呼ばれる。
【0078】
バルク拡散スクリーンの光学特性は重要である。RPスクリーンを実現する簡単な方法の1つは、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、粘土、チョークなどを透明なバルク材料、例えばポリエステル、ポリカーボネートまたはPMMAに添加することによる。この添加の重量パーセントは20%の範囲内である。これらの鉱物を添加することによって、空洞が導入され、材料が不透明に見えるようになる。このようなRPスクリーンの品質は非常に劣る。多くの光が後方散乱され、および/または、隣接するピクセルに到達し、したがって、シャープネスおよびコントラストが損なわれる(
図21Aおよび
図21B)。これは、ピクセルクロストークと呼ばれる。これに加えて、透過ゲインが低くなり、スクリーンが乳白色に見える。
【0079】
ピクセルクロストークの少ない明瞭なバルク拡散スクリーンを用いても、コントラストが低くなる可能性がある。スクリーンが周囲光の多い環境に置かれると、この周囲光がコントラストを損なう可能性がある。暗いピクセルを含む各ピクセルは、周囲光によって照射され、観察者の方向に部分的に光を後方散乱する(
図22)。したがって、暗いピクセルは、周囲光がない場合よりも明るく知覚される。すなわち、画像のコントラスト比が低下する。
【0080】
ランベルトスクリーンを想定すると、コントラスト比は次のように記述することができる。
【0081】
【0082】
この式から、コントラストを上げるには2つの方法があることが明らかである。まず、周囲照射を低減することにより、次に、透過/反射ゲイン特性に不均衡(gtrans>>grefl)を導入することによるものである。
【0083】
スクリーンが湾曲している場合、前方散乱光の一部は暗いピクセルになり、観察者の方向を含むすべての方向に後方散乱される(
図23)。したがって、この場合もコントラスト比は低下する。上記の式から、所与の周囲照射条件に対して、透過/反射ゲイン特性に不均衡(g
trans>>g
refl)を導入すると、コントラスト比が高くなることが明らかである。
【0084】
上記の論法は、非ランベルトスクリーンが考慮される場合にも当てはまる。
本発明の実施形態によれば、拡散コーティングの光学特性が最適化されている。コーティングを含むスクリーンは、実質的に湾曲した、例えば180度以上の曲率角を有する背面投影スクリーンに適している。湾曲はまた、例えば、船舶のブリッジの窓のシミュレータスクリーンと同様の、多角形の湾曲も含む。スクリーンの表示側は中空側であり、投影面は背面投影構成の凸面である(
図24)。実質的に湾曲しているとは、実質的に互いに反対側にある少なくとも2つのスクリーン法線を表示面に含むスクリーンを指す。言い換えれば、180度に近い角度を成す少なくとも2つのスクリーン法線が存在する。このようなスクリーンについて、反対方向においてスクリーンから入来する前方散乱光を受け取る領域が少なくとも1つある(
図23参照)。上記から、最終的に良好なコントラスト比を得るために、透過ゲイン特性と反射ゲイン特性の間に不均衡を作り出す必要があるということを導き出すことができる。
【0085】
バルク拡散スクリーンコーティングの第2の要件は、透過ハーフゲイン角であり、これは可能な限り大きくする必要がある(
図20を参照)。これは、観察者が複数いる用途と、観察者の頭部が動く用途の両方で必要である。HGAが非常に小さい場合、スクリーンは非常に指向性になる。これは、電子的または光学的補償がなければ(すなわち、スクリーンの背面の照度がスクリーン位置に依存しない)、スクリーンの輝度均一性が非常に悪いことを意味する(
図25A~
図25D参照)。電子的または光学的補償は輝度を均一にし得るが、これは1人の観察者にのみ当てはまる。
【0086】
これらの要件に加えて、例えば画像のシャープネスおよびスペックルなどの他の要件が存在する。
【0087】
本発明の実施形態によれば、コーティングの前方および後方散乱特性を決定するパラメータは、
拡散層内に含まれる光拡散粒子、これらの粒子を含む媒体、吸収染料、顔料または光吸収に使用される他の材料である。光拡散粒子は、その形状、サイズ、屈折率、および濃度によって特徴づけられる。粒子を含む媒体は、屈折率および厚さによって特徴づけられる。この媒体は時間的に非常に安定している必要があり、時間の経過に伴う変色は発生し得ない。顔料などの吸収体材料は、安定性、濃度によって特徴づけられ、色は中間でなければならない。
【0088】
拡散コーティングの光学パラメータに影響するすべてのパラメータを調整することにより、高解像度、高コントラスト比、高輝度、高ハーフゲイン角、スペックルフリー拡散コーティングをもたらすパラメータの組み合わせを見出すことができる。達成される非対称性は、0.25を超える前方散乱ピークゲイン、45度を超え、より好ましくは55度を超え、かつ80度または70度を下回る前方散乱ハーフゲイン角、および、15度より大きい角度では0.20未満であり、30度より大きい角度では0.10より小さい後方散乱ゲインによって特徴づけることができる。
【0089】
一実施形態では、本発明は、湾曲したスクリーン、特にドーム型スクリーンに関する。本発明によるドーム型スクリーンは、前述の非球面背面投影スクリーンである。例えば、
図4を参照して説明したように、本発明によるドーム内部の視界は、理論的に0≦θ≦2πおよび0≦φ≦πの視野を有することができる(球の中心に原点がある通常の球面座標(r,θ,φ))。ドームは、底部に開口20を提供するために、切り取られた(切り捨てられた)1つの区画を有することができる。これは、アクセスに使用され得るか、アクセスのために別個の開口25が設けられてもよい。この場合、視野は0≦θ≦2πおよび0≦φ<π(球の中心に原点がある通常の球面座標(r,θ,φ))になり得る。しかしながら、本発明の実施形態はまた、視野が0≦θ≦πおよび0≦φ<πであり得る湾曲スクリーンでの有利な使用をも見出す。ブリッジの窓からの眺めが制限され得、例えば屋根が垂直方向の視界を妨げるため、そのようなスクリーンは、例えば、船舶のブリッジシミュレータ内で使用することができる。もう1つの例は、観察者が正面のみを向くハーフドームスクリーンである。この場合、視野は0≦θ≦πおよび0≦φ<π(球の中心に原点がある通常の球面座標(r,θ,φ))になり得る。
【0090】
非球面スクリーンまたはドームは、安定した機械的構造を保証する機械的特性と寸法を備えた光学的に透明な構造を備えている。湾曲したスクリーン、例えばドームの1つの表面、通常は内面は、必要な拡散光学特性を備えた内層を有する。通常、高コントラスト比、高解像度(MTF値)、アーチファクトがない、大きい視野角などの特性の優れた均衡が必要である。複数のプロジェクタが非球面スクリーンの外部に配置され、これらのプロジェクタからの画像が内層上に形成される。MTFは変調伝達関数(Modulation Transfer Function)の略であり、光学システムが白黒画像をいかに良好に解像できるかを特徴づけるために使用される。これは、ドームの瞳制限特性にリンクされる。例えば、フライトシミュレーションに使用されるドームでは、パイロットが数キロメートルからシミュレートされた飛行機を見ることができる、すなわち、シミュレータが20/20の視力の実際の制限に一致する解像度を有するほどの解像度を有することが重要である。https://en.wikipedia.org/wiki/Optical_transfer_functionを参照されたい。
【0091】
理論によって制限されることなく、内層上での良好な画像形成には次の光学特性が好ましい:
理想的な投影スクリーンの場合、輝度は視野角に依存しない(ランベルトエミッタ:L(θ’)=定数=L0)。スクリーンのゲインgは、100%の反射率を有する理想的なランベルト反射標準の輝度に対するスクリーンの順方向の輝度として定義される。一部の用途では、観測ボリューム(観察者のアイボックス)が制限されているが、異なるプロジェクタからの画像のオーバーラップ領域においては良好なブレンディングも必要であるため、ランベルトエミッタを近似することが好ましい。
【0092】
輝度のレベルは、良好な視認性のために特定の最小レベルよりも高いことが好ましい。輝度レベルは、プロジェクタによって生成される光束、画像の面積、および内層の光学特性の関数である。
【0093】
良好な画像再現のために、非球面スクリーン内で見られる画像のコントラスト比は、或る最小レベルよりも高いことが好ましい。コントラスト比は、通常、市松模様を使用して測定される。スクリーンの照射された部分から散乱される光は、画像の暗い部分を照射し(クロストークおよび積分効果)、その結果、コントラスト比を低下させる。非球面スクリーンの内層は、画像の暗い部分を照射する散乱光の影響を最小限に抑える必要がある。内層の後方散乱特性により、コントラスト比に対するクロストークの影響が低減する。
【0094】
内層は、画像の解像度を保持することが最も好ましい。内層での光の散乱により、ピクセルの画像に対するぼかし効果が生じる可能性がある。これは、インパルス応答として表現することができ、または、MTF値がこの効果を定量化することができる。スクリーンによるMTF低減は最小限に抑える必要がある。
【0095】
内層は、スペックルノイズを生成しないことが好ましい。スペックルノイズは、表示画像に重ねられる粒状パターンであり、光の空間的および時間的コヒーレンスの結果である。表面粗さまたは散乱粒子によって散乱されるウェーブレットが、観測点において干渉し、粒状パターンを生成する可能性がある。
【0096】
前方散乱
光の前方散乱(
図5を参照)は、表面拡散、ホログラフィック拡散、またはバルク拡散によって発生する可能性がある。バルク拡散は、内層のバルクの中の散乱粒子(光拡散粒子とも呼ばれる)によって実現される。この場合、屈折率n1の散乱粒子は、屈折率n2を有する樹脂やガラスなどの材料内に分布している。粒子は、形状が球面であることが好ましいが、回転楕円体、ジャガイモ形、円筒形、楕円体、卵形などの他の形状をとることができる。バルク散乱の場合、散乱円錐角θ
sは、Δn=n1-n2、散乱球状粒子の平均直径d、散乱粒子の重量濃度c、および内層の厚さtに依存する。
【0097】
【0098】
バルク拡散器は、所望の輝度分布L(θ
v)を提供するように設計されている。実際の実現において、
図6は、本発明の一実施形態に従って得られる視角θ
vの関数としての輝度を示す。
【0099】
理想的なランベルトエミッタの輝度は、-π/2≦θv≦π/2で一定である。
重要な特性は、「ハーフゲイン角」と呼ばれる、輝度が最大輝度レベルの50%にある角度である。この実施形態では、ハーフゲイン角は約70度≒1.22radである。測定された0°輝度値は約74 cd/m2であった。この場合、理想的なランベルトエミッタの0°輝度は191 cd/m2である。この場合、0°でのスクリーンゲインg(「スクリーンピークゲイン」と呼ばれる)は0.38である。
【0100】
散乱粒子による拡散の重要な欠点は、通常、散乱円錐角を大きくすることによる画像のぼやけの増加である。
【0101】
後方散乱
ドーム内の画像の他の部分からの入射光(
図7)は、コントラスト比を低下させる。このコントラストの低下を最小限に抑えるには、反射および後方散乱を可能な限り減らす必要がある。これは、内層に対する重量濃度C
dyeを有する、染料または顔料または着色料がその例である暗色または黒色材料などの光吸収材料を内層に追加することによって実現される。内層はまた、屈折率n1の光散乱粒子も含む。光散乱粒子の屈折率は、樹脂の屈折率n2よりも小さく、n1<n2である。黒色染料は、反射係数ρ<1および光吸収係数α(単位m
-1)をもたらす。
【0102】
反射光には、樹脂内の拡散器からの後方散乱光と、コーティングの表面特性に依存する表面反射との2つの成分がある(
図8を参照)。
【0103】
本発明の一実施形態における垂直入射の測定されている後方散乱が、
図9に示されている。
【0104】
前方散乱と比較して、後方散乱はより正反射性である。より強い正反射は、実質的に高いコントラスト比をもたらす。
【0105】
後方散乱の散乱角は比較的小さくなっている。これは次のように説明される。
a)染料または内層の粒子などの光吸収剤における光の吸収αのため
b)後方反射の光の平均移動距離が、順方向の光の平均移動距離の2倍であり、内層のより薄い層(平均厚さδ<t)が、後方散乱に寄与し、その結果、より小さい散乱角を有する。
【0106】
解像度
本発明の実施形態によれば、光吸収材料は、スクリーンの内層内に存在し、例えば、その中に添加され、例えば、拡散器のぼかし効果を軽減し、高いMTF値の画像を実現するために、黒色染料または顔料などの暗色材料が内層に添加される。本発明によれば、顔料、着色料、または材料の固有の光吸収特性を使用して、これを達成することができる。一例は炭素粒子である。
【0107】
内層の吸収係数α。
黒色染料または顔料などの暗色材料の濃度=Cdye
(単純にするために1次元の場合の表記を考える)。
【0108】
吸収性染料を有しない内層のx=0を中心とした、および、x=0を中心として対称であるインパルス応答関数I(x)を仮定する。ここで、吸収係数αの暗色染料または顔料などの暗色材料を追加すると仮定する。|x|値が大きいほど、光は(平均して)内層を通じてより長い距離移動しなければならず、その結果、より強い吸収を受ける。したがって、吸収係数αを有する染料または顔料などの暗色材料を有する内層の点広がり関数はI(x)・exp(-α・f(x))である。
【0109】
f(x)=f(-x)、f(x)>0、かつdf(x)/dx>0。
これは、染料または顔料などの暗色材料を添加すると、MTFの劣化が大幅に減少することを説明している。
【0110】
スペックルノイズ
投影システムの光は単色ではなく、拡張光源によって生成されるが、スクリーン上に形成される画像はスペックルノイズを示す場合がある。van Cittert-Zernikeの定理により、コヒーレンス幅を計算することができる(M. BornおよびE. Wolf、Principles of Optics)。開口2θ’の投影レンズの場合、コヒーレンス領域の直径は以下によって与えられる。
【0111】
【0112】
小型の光変調器(対角線約1インチ)を有するプロジェクタは大きい倍率を必要とし、そのようなプロジェクタのF値は約2.5であるため、高度のコヒーレンスの領域は比較的大きい。これは、そのような領域からの光が散乱すると、受容側でスペックルノイズを干渉および生成する可能性があることを意味する。
【0113】
実施例
【0114】
【0115】
散乱円錐角が140°の拡散層には、直径が約0.59μmのコヒーレンス領域がある。
【0116】
眼の分解能は約1分=0.29・10-3radであり、視距離1.5mで直径約436μmの分解能セルを有する。この場合、眼の解像スポットにおける統計的に独立したコヒーレンス領域の数はおよそ500・103である。スペックルノイズは、この拡散器によって効果的に低減される(「Speckle-free rear-projection screen using two close screens in slow relative motion」(E.Rowson, A.Nafarrate, R.Norton, J.Goodman, J.Opt.Soc.Am.Vol.66, No.11, November 1976))。
【0117】
本発明の一態様によれば、散乱粒子(d,c,Δn,n1<n2)を有する着色内層(α,t)は、パラメータα、t、d、c、およびΔnの適切な選択のために、MTF劣化の少ない鮮明な画像を保持する。これは、フラットスクリーンおよび曲面スクリーンに適用可能である。ただし、曲面スクリーンには、フラットスクリーンとは異なるパラメータが必要である。
【0118】
本発明の一態様によれば、散乱粒子(d,c,Δn,n1<n2)を有する着色内層(吸収率αを有する)は、ランベルトエミッタ(ハーフゲイン角≧50度)を近似する前方散乱、および、α、d、c、Δnの適切な選択のための鏡面反射器を近似する後方散乱を実現することができる。
【0119】
本発明の一態様によれば、前方散乱がランベルトエミッタを近似し、後方散乱が鏡面反射器を近似する場合、特定の曲率を有するスクリーンの内部で>10:1のコントラスト比を実現することができる。
【0120】
本発明の一態様によれば、パラメータd、c、t、Δnを適切に選択することにより、低いスペックルノイズレベルを実現することができる。これは、フラットスクリーンおよび曲面スクリーンに適用可能である。
【0121】
本発明の一態様によれば、スクリーンMTFの良好な保持と組み合わせて、低いスペックルノイズレベルを実現することができる。これは、フラットスクリーンおよび湾曲スクリーンに適用可能である。
【0122】
本発明の一態様によれば、湾曲したスクリーンまたはドームの最適なα(吸収係数)は、平面構造のものと同じである必要はない。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、ドームに適したαの値は、560μmのコーティング厚さに対して1メートルあたり約1650であり、これは、それら2つの積α*d=0.924をもたらす。α*dは無次元定数である。吸収は積α*厚さdに依存するため、これら2つの積は、このようなコーティングの品質を評価するための有用なパラメータである。
【0124】
別の実施形態について、ドームに適したαの値は、560μmのコーティング厚に対して1メートルあたり約3000であり、これは、これら2つの積、α*d=1.64をもたらす。
【0125】
また別の実施形態について、ドームに適したαの値は、560μmのコーティング厚に対して1メートルあたり約4200であり、これは、これら2つの積、α*d=2.3をもたらす。
【0126】
α*dの値は、本発明に関して以下の表に記載されているコーティング組成物の範囲に有用であり、使用されるバインダ/ポリマー+添加剤の正確な性質とは多かれ少なかれ独立していると考えられる。例えば、適切な範囲は、α*dに対して0.8~1.2、α*dに対して0.5~1.5、または何らかの条件下でα*dに対して0.1~2である。より濃く着色された層は、コントラストおよび/または解像度に対してより良い結果を提供し、結果、他の適切な範囲はα*dに対して0.1~5、または例えば、α*dに対して0.5~5である。
【0127】
吸収αを得るために使用される材料が、例えば炭素などの特定の着色料または添加剤に限定されず、着色料の特定の濃度(例えば、ppm単位)にも限定されない本発明に有意な効果を有することは期待されない。
【0128】
本発明の一態様によれば、Gr(後方散乱のゲイン)は、大きい角度において主にαの関数である。本発明の一態様によれば、40度を超える角度に対してGr<0.1の場合に最適な結果が得られる。例えば、好ましい値はGr<0.07である。
【0129】
本発明の実施形態は、以下に示すように、スクリーンの内層コーティングの範囲パラメータを利用する。
【0130】
【0131】
粒子は、例えば、ポリオルガノシルセスキオキサンから作成されてもよく、粒子が埋め込まれる樹脂材料は、PMMAなどのアクリルポリマーであってもよい。光吸収顔料は炭素粒子であり得る。
【0132】
前方散乱(透過ゲイン)と後方散乱(反射ゲイン)との差。
前方散乱特性と後方散乱特性との間の差は、本発明の重要な態様である。
【0133】
前方散乱と後方散乱との間の差に対する有意義で実用的な尺度は、透過ゲインと反射ゲインとの差である。Δgt(φ)/ΔφおよびΔgr(φ)/Δφの比は、透過ゲインと反射ゲインとの間の差の良好な尺度である。
【0134】
gt(φ):送信ゲイン
gr(φ):受信ゲイン
φ:視角
【0135】
【0136】
本発明の実施形態による反射ゲインおよび透過ゲインの材料について測定された値が、
図12および
図13に示されている。
【0137】
測定値gt(φ)およびgr(φ)から、以下を計算することができる。
10度<φ<40度 Δφ=30度について|Δgt/Δφ|
6度<φ<15度 Δφ=10度について|Δgr/Δφ|
Δgt/Δφ≒-0.165rad-1
Δgr/Δφ≒-2.28rad-1
|Δgr/Δφ|/|Δgt/Δφ|>γ
この場合、γ≒14である。
【0138】
γは、輝度、コントラスト比、画像のシャープネスなどの特性間の必要な均衡を得るのに十分な大きさであることが好ましい。
【0139】
本発明の実施形態によれば、十分に大きい値はγ>7である。
高いCRを達成するための別の重要な条件は、大きいθに対する反射ゲインgr(θ)の値である。
【0140】
θ>40度についてgr(θ)<0.1
本発明の重要な態様は、本発明に記載された形状を有する背面投影ドームのためのコーティングである。本発明は、透明ドームの内部の高品質の背面投影スクリーンコーティングを提供する。平方根積分(=SQRI)の式に基づいて、ドームスクリーンコーティングの要件が一般的なフラットスクリーンコーティングの要件と異なることを計算することができる。平方根積分は、ディスプレイの画質に関する数値である。顕著な差のみを単位にして表される。この値が大きいほど、スクリーン品質が高くなる。コントラスト比に対する不要な光の影響が非常に重要である。フラットスクリーンの場合、この不要な光は或る一定のレベルの周囲光である。非球面スクリーンの場合、この望ましくない光は、本発明による非球面スクリーンの積分特性により、スクリーンコーティングにより反射される光である。コーティングを通って散乱した直後に観察者の眼に到達しないすべての投影光は、非球面スクリーン上で複数回反射した後、観察者の眼に到達する可能性がある。したがって、スクリーン上の暗いゾーンは明るいゾーンで照射される。すなわち、非球面スクリーンのコントラスト比が低下する。
【0141】
変調度に対する周囲光の影響
特定の空間周波数について、SQRIは、変調度の平方根を閾値変調によって除算した値に比例する。Contrast sensitivity of the human eye and its effects on image quality, P.G.J.Barten, Contrast Sensitivity of the human eye and its effects on image quality, ISBN 90-9012613-9,p157.一定の輝度レベルを想定した場合、閾値変調も一定であるため、変調度に対する周囲光の影響に集中することができる。変調度またはコントラスト変調Mは、輝度変動の振幅と輝度の平均値との比として定義される。
【0142】
【0143】
ここで、Aは、スクリーンで反射した後に観察者に見える周囲光の輝度である。
フラットスクリーンの場合、この周囲光の輝度Aは一定である。周囲光レベルが大きいほど、変調度の低下が大きくなり、SQRI値が小さくなる。周囲光の影響を減らすには、ディスプレイの光レベルを上げるのが理にかなっている。
【0144】
(曲面スクリーンの例として)非球面スクリーンの場合、この周囲光の輝度Aはドーム内の平均輝度に比例する。この場合、変調度の式は以下のとおりである。
【0145】
【0146】
ディスプレイの光レベルを上げても変調度には影響せず、βを下げることが必須である。
【0147】
変調度に対する顔料または染料などの吸収性材料の影響
スクリーンコーティングは、コーティングの吸収が吸収係数αおよび厚さdによって特徴づけられるように、少なくとも1つの層を含むと仮定する。
【0148】
層を1回通過する光はexp(-αd)によって減衰される。
【0149】
【0150】
現実的な背面投影の状況では、周囲光Aは平均ディスプレイ光<L>のほんの一部、例えば0.1である。したがって、良好な変調度を保持するために、吸収は必要ないか、または限られた吸収のみが必要である(式6)。
【0151】
本発明による非球面スクリーンについて、吸収を増加させることを除いて、変調度を保持する方法はない(式7)。
【0152】
ここで、本発明に従って、フラットスクリーンと非球面スクリーンの両方の場合で同じ変調度を目標とする。これにより、以下が与えられる。
【0153】
【0154】
ここで、A’は入射周囲光の輝度であり、β’は反射率の値であり、βの値よりわずかに大きい。理論的には、極限ではこれらは等しい場合がある。現実的な投影状況では、周囲光Aはスクリーンの平均輝度の一部であり、平均輝度の20%とする。これにより、反射率値について以下の式が得られる。
【0155】
【0156】
すなわち同様の画像品質の場合、非球面スクリーンコーティングの吸収係数は、フラットスクリーンコーティングの吸収係数よりもln(5)/d高くなければならない。すなわち、同様の画像品質を得るには、非球面スクリーンはフラットスクリーンよりもはるかに多く吸収する必要がある。コーティングの厚さを350マイクロメートルと仮定すると、最終的には、以下の差になる。
【0157】
【0158】
これは、フラットスクリーンと、同じコーティング厚の非球面スクリーンとのα*dの差が4600 x dであることを意味する。したがって、本発明の実施形態による非球面スクリーンコーティングは、逆投影フラットスクリーンの従来のコーティングと比較して、α*dの値が著しく異なる。
【0159】
吸収材料の添加
吸収材料を少なくとも1つの層に添加すると、重大な結果が生じる。コーティングは、厚さの変動に非常に敏感である可能性がある。これは、輝度の方程式(式4)の指数因子を見ると明らかである。許容可能な輝度均一性を実現するために、厚さの変化は細心の注意を払って制御する必要がある。このコーティングを適用する1つの可能なアプローチは、スプレー塗装である。局所的な明るさの変動が3%に制約されている場合、特定のコーティング構成では、局所的な厚さの変動は2.7%未満でなければならない場合がある。局所的な明るさの変動が5%に制約されている場合、特定のコーティング構成では、局所的な厚さの変動は4.5%未満でなければならない場合がある。
【0160】
好ましい実施形態によれば、コーティングは、噴霧によってドームの内側に塗布される。コーティングは、好ましくは水性懸濁液として塗布される。使用することができる噴霧の種類のうち、エアレス噴霧は、厚さの均一性が良好でないため、あまり好ましくない。コーティングは、厚さの許容値にとって重要であるため、良好な表面品質で塗布することが好ましい。非球面スクリーンの内側から透過して見たときの厚さの変化は、眼で簡単に見え、煩わしい。さらに、例えば>70μmなど、かなり厚い層を適用する必要がある。実験から、従来のエアスプレー法もあまり適していないことがわかっている。本発明の一実施形態によれば、エアアシスト法が好ましいか、回転ベルカップ法が好ましい。エアアシスト法は、エアレス噴霧技法と従来の噴霧技法との間にある方法である。エアアシスト噴霧では、通常、空気圧および2,100~21,000 kPaの流体圧を使用して、コーティングの霧化を実現する。この機器は、高い移送および塗布の増加を提供する。
【0161】
流体圧はエアレスポンプによって提供され、これは、エアスプレーガンによって可能なものよりもはるかに重い材料が噴霧されることを可能にする。圧縮空気がエアレスチップ(ノズル)からスプレーに導入されて、霧化の細かさが向上する。
【0162】
回転ベルカップ法では、塗装手段として回転式アトマイザを使用する。典型的なベルアプリケータは、バルブモジュール、ベルカップ、タービン、シェーピングエアシュラウド、および任意選択的に静電システムの4つまたは5つの主要な要素から構成されている。
【0163】
バルブモジュールは、塗料、溶剤、および圧縮空気のための通路、ならびに、塗料送達、溶剤による洗浄およびパージのための材料の流れを制御し、バルブ、タービン、およびシェーピングエアシュラウドへの圧縮空気を管理するためのバルブから構成されるマニホールドである。ベルカップは、タービンのシャフトに固定された円錐形または湾曲したディスクである。塗料はディスクの背面中央に注入され、遠心力によってカップの縁に押し出されることによって霧化される。カップの上のおよび縁から離れた塗料の流れは、塗料を霧状の液滴に分解する。
【0164】
タービンは、カップの直径、所望される霧化、塗料の物理的特性に応じて、10,000rpm~70,000rpmの範囲の速度でベルカップを回転させる高速、高精度のエアモータである。この用途の典型的なタービンは、空気軸受を使用する。この軸受では、流れる圧縮空気のクッションに回転シャフトが懸架され、摩擦抵抗はほとんどない。シェーピングエアシュラウドまたはシェーピングエアリングは、生成されるスプレーパターンのサイズを管理するために、カップ直径の外側でアトマイザの前面から空気が流出するための通路を備えた単なるリングである。より多くの空気がシュラウドを通されると、霧状の塗料はより小さいパターンにされる。
【0165】
静電システムは任意選択であり、内部または外部(または直接または間接充電)であり得、アプリケータまたはその周囲の空気に高電圧(DC 30,000~100,000ボルト)の電荷を供給する。これは、塗料を負に帯電させる効果があるが、一方でワークピース上に正電荷の領域が形成され、ペイントとワークピースとの間に静電引力が生じる。静電システムは、外部の(または間接的な)帯電アプリケータ上にのみ見え、ベルの周りに円形アレイで4つ~8つの一連の前向き電極として見える。
【0166】
厚さの許容値は非常に重要であり、非球面ドームの内側の形状は複雑であるため、カスタマイズされたスプレー経路を計算することは非常に重要である。これは、スプレー経路に何らかの重なりがある場合に適している。これは、スプレーヘッドの各パスが前のパスに当接することを意味する。長方形の基板の場合、経路は単純である(
図14を参照)。非球面基板の場合、経路はそれほど単純ではない。本発明の実施形態によれば、基板を静止状態に維持し、ロボットの制御下でスプレーヘッドが動き、またはドームが移動されて、スプレーヘッドが適切に静止状態に維持されるか、または、ドームが移動されて、スプレーヘッドにもある程度の移動が許可される。静的ドームの場合、例えば円形ビームまたは回転ベルからのスプレーパターンのように、実質的に円形のスプレーパターンを使用することが好ましい。経路はらせんと同様であり得る(
図15)。非球面基板の動的な動きの場合、これはその回転軸を中心に回転し得る。その場合、フラットビームスプレー技術を使用することも可能であり得る。
【0167】
すべてのスプレー技術について、複数の層(6~9など)が塗布される。1つの実施形態では、例えば交互になった拡散層と吸収層とを塗布することができるように、単一の塗料組成物を使用するのではなく、拡散層と吸収層との混合物(例えば10~13層)が使用される。
【0168】
図16は、本発明の実施形態によるコーティングを用いて得られる、着色添加剤の%とピークゲインとの間の関係を示す。着色材料の割合は、52%の固形物を含むスプレー用の液体塗料に基づいている。したがって、最終コーティングの吸収材料の割合を取得するには、このグラフのX軸上の値を0.52で除算する必要がある。
【0169】
本発明を、特定の実施形態を参照して上記に説明したが、これは本発明を限定するのではなく明確にするために行われた。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、開示された特徴の様々な修正および異なる組み合わせが可能であることを理解するであろう。