(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株、最適化されたベクター、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/61 20060101AFI20221027BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221027BHJP
C12N 9/90 20060101ALI20221027BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20221027BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221027BHJP
C12P 19/02 20060101ALI20221027BHJP
C12P 19/24 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C12N15/61
C12N1/21 ZNA
C12N9/90
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12P19/02
C12P19/24
(21)【出願番号】P 2020524539
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2018080328
(87)【国際公開番号】W WO2019086708
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】CNCM CNCM I-5251
【微生物の受託番号】CNCM CNCM I-5252
【微生物の受託番号】CNCM CNCM I-5253
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン モブルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー ユシェット
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア ボルクマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ギド モイラー
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528925(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104894047(CN,A)
【文献】Bioresources and Bioprocessing, 2017.01.28,Vol.4, No.9, p.1-7
【文献】Appl Microbiol Biotechnol, 2013, Vol.97, p.7805-7819
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/61
C12N 1/21
C12N 9/90
C12N 15/31
C12N 15/63
C12P 19/02
C12P 19/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラニンラセマーゼalrA遺伝子が不活性化され、
-胞子形成
yqfD遺伝子の不活性化、及び/又は
-エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットの不活性化
から選択される少なくとも1つのさらなる遺伝子不活性化を有する、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株。
【請求項2】
-受託番号CNCM I-5251で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された菌株;
-受託番号CNCM I-5252で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された菌株;及び
-受託番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された菌株;
から選択される、請求項1に記載の遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株。
【請求項3】
D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列、及び配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項4】
D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列が、配列番号3、配列番号4の核酸配列、又は配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13をコードする核酸から選択される、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
配列番号15又は配列番号16を含むか又はそれからなる、請求項3又は4に記載の核酸を含む組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の核酸、又は請求項5に記載の組換え発現ベクターを含む、組換え宿主細胞。
【請求項7】
前記宿主細胞が、請求項1又は2に定義され
た遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である、請求項6に記載の組換え宿主細胞。
【請求項8】
前記宿主細胞が、
-配列番号14を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5251で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株;
-配列番号15を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5251で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株;
-配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5251で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株;
-配列番号14を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5252で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株;
-配列番号15を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5252で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株;
-配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5252で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株;
-配列番号14を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株;
-配列番号15を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株;
-配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株
から選択される、請求項6又は7に記載の組換え宿主細胞。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞を培養するこ
とを含む
、D-プシコース3-エピメラーゼを産生する方法。
【請求項10】
以下のステップ:
-請求項6~8のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞を、少なくとも60g/
Lの糖濃度を含む適切な培地で培養するステップ
;
を含む、請求項9に記載のD-プシコース3-エピメラーゼの産生方法。
【請求項11】
前記組換え宿主細胞が、配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、受託番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である、請求項9又は10に記載のD-プシコース3-エピメラーゼの産生方法。
【請求項12】
-(a)請求項6~8のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞を培養するステップ;
-(b)得られた培養物から産生したD-プシコース3-エピメラーゼを回収するステップ;
及び
-(c)ステップ(b)で取得したD-プシコース3-エピメラーゼをD-プシコース3-エピメラーゼ活性に適した条件でD-フルクトースと接触させるステップ
;
を含む、D-プシコースの産生方法。
【請求項13】
バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の変異誘発又は遺伝子形質転換を含む、請求項1又は2のいずれか一項に記載の遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得する方法。
【請求項14】
以下のステップ:
-(a)請求項13に記載の遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得するステップ;
-(b)ステップ(a)で取得した前記遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列、及び配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列を含む核酸分子を含むベクターで形質転換するステップ
を含む、請求項6~8に記載の組換え宿主細胞を取得する方法。
【請求項15】
以下のステップ:
-(a
)バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のアラニンラセマーゼalrA遺伝子を欠失させるステップ;
-(b)ステップ(a)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株のエリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセット
を欠失させるステップ
-(c)ステップ(b)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の胞子形成
yqfD遺伝子
を欠失させるステップ
-(d)ステップ(c)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、配列番号16を含むか又はそれからなるベクターで形質転換するステップ
を含む、請求項14に記載の組換え宿主細胞を取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にD-プシコース3-エピメラーゼを産生するための、最適化されたベクターで形質転換された、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株に関する。
【背景技術】
【0002】
D-プシコースは、D-アルロースとも呼ばれ、フルクトースの希少糖エピマーである。これは自然界に見られるが、食用キノコ、ジャックフルーツ、小麦、及びズイナ(Itea)属植物などに非常に低濃度で見られる。
【0003】
フルクトースとは反対に、ヒトにおけるプシコースの代謝は、一部は吸収されてエネルギーに代謝され、一部は変化せずに尿及び糞便中に排泄される。
【0004】
D-プシコースは、ノンカロリーの性質、スクロースと同等の甘味、血糖反応の低下に対するプラスの効果、抗肥満効果などを有する。そして、これは糖尿病又は肥満などの生活習慣病の予防に特に有用である。
【0005】
D-プシコースは化学的に合成することが非常に困難である。したがって、D-プシコース3-エピメラーゼという酵素を使用したエピマー化によるD-フルクトースとD-プシコースの間の転換は、D-プシコース産生の魅力的な方法と考えられてきた。
【0006】
その目的で、弱酸安定性、熱安定性であり、より高い触媒効率及び基質D-フルクトースの代謝回転を有する、D-プシコース3-エピメラーゼの改善されたバリアントが提供されている(PCT/EP2014/068628)。この国際出願はまた、D-プシコース3-エピメラーゼの前記改善されたバリアントをコードする核酸を有する宿主細胞(エシェリキア・コリ(Escherichia coli)又はバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)など)を開示している。
【0007】
別の戦略は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)に中に、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)からのD-プシコース-3-エピメラーゼをクローニング及び発現させることであった(Cloning,Expression,and Characterization of a D-psicose-3-epimerase from Clostridium cellulolyticum H10,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2011,59,7785-7792,Wanmeng Fu et al.)。
【0008】
バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)におけるクロストリジウム・シンデンス(Clostridium scindens)(ATCC 35704)からのD-プシコース-3-エピメラーゼのクローニング及び発現も開示されている。D-プシコース-3-エピメラーゼをコードする遺伝子を発現するプラスミドで形質転換されたバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の組換え株の選択は、D-アラニン欠損選択マーカー(CN104894047)に基づく。
【0009】
しかしながら、本発明の発明者らは、特にバチルス・サブティリス(Bacillus
subtilis)の菌株における酵素発現系の活性が低いために、これらの戦略は産
業上の利用には適切ではなかったと考える。
【0010】
したがって、D-プシコース-3-エピメラーゼの産生を改善する必要性、及びD-プシコースの産生を改善する必要性が依然として存在する。方法は、産業上の利用に適しており、費用対効果の高いものでなければならない。方法は、安全及び環境規制にも準拠していなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、産業上の利用に適しており、費用対効果が高く、安全及び環境規制に準拠した、D-プシコース-3-エピメラーゼの産生を改善する方法、及びD-プシコースの産生を改善する方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、D-プシコース-3-エピメラーゼ産生及びD-プシコース産生を改善するために、(i)バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の最適化された株を開発するだけでなく、(ii)より高いD-プシコース-3-エピメラーゼ発現のために最適化されたベクターを開発することも必要であったことを示す発明者らの予想外の結果に依拠するものである。
【0013】
本発明はまた、より高いD-プシコース-3-エピメラーゼ発現のために最適化された発酵培地と比較した、本発明者らの予想外の結果にも依拠するものである。
【0014】
したがって、本発明の目的は、最適化されたバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列を含む最適化された核酸分子、最適化された組換え発現ベクター、最適化された組換え宿主細胞、及びD-プシコース3-エピメラーゼの産生方法及びD-プシコースの産生方法におけるそれらの使用である。最適化された組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得する方法、及び最適化された発酵培地も、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、第1の態様では、本発明は、アラニンラセマーゼalrA遺伝子が不活性化され、胞子形成yfqD遺伝子の不活性化、及び/又はエリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットの不活性化から選択される少なくとも1つのさらなる遺伝子不活性化を有する、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株に関する。
【0016】
本発明による「バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株」という用語は、バチルス(Bacillus)属及びサブティリス(subtilis)種に属する細菌の任意の株を意味する。これらの生物の細胞は幅が1μm未満で、胞子嚢は肥大しておらず、胞子は楕円体である。バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)は、Biochemical Test and Identification of Bacillus subtilis,Aryal S.2016.http://www.microbiologyinfo.com/biochemical-test-andidentification-of-bacillus-subtilis/に記載される方法などの、いくつかの方法によって同定できる。本発明の実施形態では、「バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株」は、単離及び/又は精製される。
【0017】
本発明による「アラニンラセマーゼalrA遺伝子」という用語は、L-アラニンから
D-アラニンへの化学反応を触媒する酵素D-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子を意味する。「alrA」遺伝子は「dal」遺伝子とも呼ばれ、配列番号17で表される。配列番号17(1.17kbのDNA断片)は、alrA構造遺伝子全体(GenBankにおいて番号CAB12271.1で識別されるD-アラニンラセマーゼをコードする)及びその発現の制御シグナルを含有する。細菌の大部分において、D-アラニンは細胞壁を形成するためのグリカンサブユニット(ペプチドグリカンから構成される)の重要な構成要素である。アラニンは通常、L-立体異性体として自然界に存在し、細胞の成長に不可欠な細胞質のD-アラニンラセマーゼ(alrA)によるD-アラニンへの変換を行う。酵素の不足は、ペプチドグリカン生合成の初期ステップの失敗により、急速な細胞溶解を引き起こす。本発明によれば、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株は、D-アラニンラセマーゼ遺伝子が挿入されているベクターで形質転換されることが意図されている。したがって、alrA遺伝子が欠失している(バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)が「D-アラニン欠損」であることを意味する)、及び前記ベクターでの形質転換に成功した、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株は、D-アラニンの補充なしで増殖することができる。この戦略の主な利点は、抗生物質を含まない複合培地で組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の直接選択を提供することである。さらに、D-アラニンラセマーゼは細胞壁代謝に関与しているため、活性化の喪失は、細胞溶解を引き起こし、ベクターを失ったバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(細胞)集団の蓄積を防止する。本発明において、用語「alrA遺伝子」、「dal遺伝子」、「アラニンラセマーゼ遺伝子」、アラニンラセマーゼalrA遺伝子及び「D-アラニンラセマーゼ遺伝子」は、他の用語の代わりに使用することができる。
【0018】
本発明による「胞子形成yfqD遺伝子」という用語は、内生胞子成熟のステージIVの間に作用する遺伝子を意味する。この遺伝子の正確な機能は知られていないが、その不活性化/欠失は、完全な胞子形成の中断につながる。この「yfqD遺伝子」は、配列番号18によって表される。バチルス(Bacillus)属細菌は、休眠状態に入るための、特化された、非常に耐性があり、非生殖的な構造である、内生胞子を産生することが知られている。細菌の内生胞子は、好ましい条件が現れると、細胞が生細胞を回復するために必要な全ての物質を保持する。内生胞子は菌株の完璧な播種因子であり、環境及び健康汚染の深刻なリスクである。特に産業上の使用を目的としたバチルス(Bacillus)株では、内生胞子形成経路が中断された菌株を有することが重要である。したがって、胞子形成yfqD遺伝子が欠失したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株は、安全及び環境規制に準拠している。菌株が胞子形成不全であるかどうかを判断するために、菌株に熱処理を適用することができる。菌株が明色の胞子を産生できる場合、菌株は胞子形成不全ではなく、菌株が明色の胞子を産生できない場合、菌株は胞子形成不全である。
【0019】
「エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセット」という用語は、EmR遺伝子及びcomK遺伝子を含有するカセットを意味する。驚くべきことに、一部のバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株がエリスロマイシンに耐性であることが実際に本発明者らによって見出された。本発明のバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株では、EmR-comK遺伝子カセットは不活性化され、特に除去される。そして、「エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットの欠失」とは、「エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットの除去」を意味する。上記カセットは、配列番号19で表される。株がエリスロマイシンに耐性又は感受性であるかどうかを判断ために、次の試験を適用することができる。菌株を高濃度のエリスロマイシン(例えば、5μg/mL)と接触させ、菌株がまだ培養できる場合、菌株はエリスロマイシンに耐性であり、菌株が培養できない場合、菌株はエリスロマイシン
に感受性である。したがって、エリスロマイシン耐性遺伝子が欠失しているバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株は、安全及び環境規制に準拠している。
【0020】
したがって、一実施形態では、本発明は、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株に関し、ここで、配列番号17で表されるアラニンラセマーゼalrA遺伝子、又は配列番号17と少なくとも80%の同一性を有する配列は不活性化されており、配列番号18で表される胞子形成yfqD遺伝子、又は配列番号18と少なくとも80%の同一性を有する配列の不活性化、及び/又は配列番号19で表されるエリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセット、又は配列番号19と少なくとも80%の同一性を有する配列の不活性化から選択される少なくとも1つのさらなる遺伝子不活性化を有する。2つの配列(A)と(B)の間の同一性の割合は、アライメントされた同一のアミノ酸残基の総数を、配列(A)と(B)の間の最長の配列に含有される残基の総数で割ることによって取得できる。配列の前記アライメントは、例えばNeedleman Wunschのグローバルアライメントのためのアルゴリズムを使用して、周知の方法によって実行することができる。「少なくとも80%の同一性」という用語は、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100%、特に90%、好ましくは95%、さらにより好ましくは99%の配列番号17、配列番号18及び配列番号19との同一性を意味する。
【0021】
本発明による「不活性化された」及び「遺伝子不活性化」という用語は、遺伝子が1つ又はいくつかの変異によって欠失又は不活性化されることを意味する。変異誘発は、部位特異的及び/又は無作為であり得る。変異誘発は、1つ又はいくつかのヌクレオチドの挿入、欠失、置換であり得る。好ましい実施形態では、「不活性化された」及び「遺伝子不活性化」は、遺伝子が欠失していることを意味する。別の好ましい実施形態では、これは遺伝子座が欠失していることを意味する。好ましい実施形態では、遺伝子(単数又は複数)はノックアウトされる。遺伝子の欠失は、当業者に知られている任意の技術によって達成することができ、例えば、Cre-Loxシステム、他の部位特異的リコンビナーゼシステム(例えば、FLP、Dre)、又はMazFベースのシステム(すなわち、MazFカセットの使用による)などの類似の方法によって、遺伝子をノックアウトすることができる。
【0022】
一実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株は、アラニンラセマーゼalrA遺伝子及び胞子形成yfqD遺伝子が、特に遺伝子の欠失により、不活性化された株である。そのようなバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株は、受託番号CNCM I-5252で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された菌株である。この菌株は、本発明の実施例においてBsR4と呼ばれる。
【0023】
別の実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株は、アラニンラセマーゼalrA遺伝子及びエリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットが、特に遺伝子の欠失により、不活性化された株である。そのようなバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株は、受託番号CNCM I-5251で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された菌株である。この菌株は、本発明の実施例においてBsR3と呼ばれる。
【0024】
別の好ましい実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus
subtilis)株は、アラニンラセマーゼalrA遺伝子、エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセット、及び胞子形成yfqD遺伝子が、特に遺伝子の欠失により、不活性化された株である。そのような菌株の一例は、受託番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された菌株である。この菌株は、本発明の実施例においてBsR5と呼ばれる。
【0025】
上記の株BsR3、BsR4及びBsR5は、Institut Pasteur,25,28 rue du Docteur Roux,75724 Paris Cedex 15,Franceにある、パスツール研究所のNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託されている。
【0026】
第2の態様では、本発明は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の変異誘発又は遺伝子形質転換を含む、上記のような遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得する方法に関する。特に、そのような方法は、株BsR3、BsR4及びBsR5を取得することを可能にする。
【0027】
本発明による「遺伝子形質転換」とは、特に遺伝子の欠失を意味する。
【0028】
したがって、一実施形態では、本発明は、D-アラニン欠損(alrA-)且つエリスロマイシン感受性且つ/又は胞子形成不全であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、好ましくはD-アラニン欠損(alrA-)且つエリスロマイシン感受性且つ胞子形成不全であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を取得する方法に関する。
【0029】
一実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株、特に株BsR4を取得する前記方法は、以下のステップ:
-(a)D-アラニン欠損バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(alrA-)を提供するために、好ましくはCre/Loxシステムによって、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のアラニンラセマーゼalrA遺伝子が欠失されるステップ;
-(b)胞子形成不全、且つD-アラニン欠損(alrA-)バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を提供するために、好ましくはMazFベースのシステムを使用することによって、胞子形成yfqD遺伝子が欠失されるステップ
を含む。
【0030】
この実施形態において、ステップ(b)は、好ましくは、ステップ(a)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株に対して実施される。一実施形態では、ステップ(b)で取得した菌株は、エリスロマイシン感受性又はエリスロマイシン耐性、好ましくはエリスロマイシン耐性である。
【0031】
胞子形成不全、且つD-アラニン欠損(alrA-)であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)は、例えば、実施例3.2.aに記載されているように取得することができる。
【0032】
別の実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株、特に株BsR3を取得する前記方法は、以下のステップ:
-(a)D-アラニン欠損バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(alrA-)を提供するために、好ましくはCre/Loxシステムによって、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のアラニンラセマーゼa
lrA遺伝子が欠失されるステップ;
-(b)エリスロマイシン感受性且つD-アラニン欠損バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(alrA-)を提供するために、好ましくはMazFベースのシステムを使用することによって、エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットが除去/欠失されるステップ
を含む。
【0033】
この実施形態において、ステップ(b)は、好ましくは、ステップ(a)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株に対して実施される。一実施形態では、ステップ(b)で取得した菌株は、胞子形成不全又は胞子形成効率がよく、好ましくは胞子形成不全である。
【0034】
エリスロマイシン感受性、且つD-アラニン欠損(alrA-)であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)は、例えば、実施例3.1に記載されているように取得することができる。
【0035】
好ましい別の実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株、特に株BsR5を取得する前記方法は、以下のステップ:
-(a)D-アラニン欠損バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(alrA-)を提供するために、好ましくはCre/Loxシステムによって、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のアラニンラセマーゼalrA遺伝子が欠失されるステップ;
-(b)エリスロマイシン感受性且つD-アラニン欠損バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(alrA-)を提供するために、好ましくはMazFベースのシステムを使用することによって、エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットが除去/欠失されるステップ;
-(c)エリスロマイシン感受性、胞子形成不全、且つD-アラニン欠損(alrA-)バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を提供するために、好ましくはMazFベースのシステムを使用することによって、胞子形成yfqD遺伝子が欠失されるステップ
を含む。
【0036】
エリスロマイシン感受性、胞子形成不全、且つD-アラニン欠損(alrA-)であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)は、例えば、実施例3.2.bに記載されているように取得することができる。
【0037】
この実施形態において、ステップ(b)は、好ましくは、ステップ(a)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株に対して実施され、ステップ(c)は、好ましくは、ステップ(b)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株に対して実施される。別の実施形態では、胞子形成yfqD遺伝子の欠失は、エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットの欠失の前に実施することができる。
【0038】
第3の態様では、本発明は、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列、及び配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列を含む、単離された核酸分子に関する。
【0039】
配列番号1及び配列番号2は、D-プシコース3-エピメラーゼ発現のために最適化された5’非翻訳領域(5’UTR)の配列に対応している。そのような配列は、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列の上流にある。好ましい実施形態では、配
列番号1又は配列番号2は、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列のATGコドンの直接上流にある。この実施形態では、配列番号1又は配列番号2の最後の塩基の後に、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列のATGコドンの最初の塩基が続く。配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列は、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。本発明による「作動可能に連結された」という用語は、配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列が、これらの配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列がD-プシコース3-エピメラーゼの発現を制御することを可能にするような方法で、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする配列に結合又は連結されていることを意味する。配列番号1又は配列番号2は、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列とは反対に、非コード配列である。より正確には、配列番号1又は配列番号2は、最適化されたリボソーム結合部位である。
【0040】
本発明による「D-プシコース3-エピメラーゼ」又は「DPEase」という用語は、そのD-プシコースが最適な基質であるケトース3-エピメラーゼを指す。これは、D-フルクトースをD-プシコースに改変する能力を有する酵素を指す。
【0041】
好ましい実施形態では、本発明は、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列、及び配列番号2を含むか又はそれからなる配列を含む、単離された核酸分子に関する。
【0042】
一実施形態では、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列は、配列番号3、配列番号4の核酸配列、又は配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13をコードする核酸から選択され、好ましくは、配列番号4である。配列番号5~配列番号13は、PCT/EP2014/068628に開示される最適化されたバリアント、すなわち211位にセリン残基を有する最適化されたバリアントをコードする核酸に対応する。
【0043】
本発明による「核酸」という用語は、DNA又はRNAであってよい。「DNA」という用語は、cDNA、gDNA又は人工的に合成されたDNAを含む。DNAは一本鎖であっても二本鎖であってもよい。好ましい実施形態では、本発明の核酸はDNAである。遺伝子コードの縮重の結果として、多数のヌクレオチド配列が所定のタンパク質をコードし得ることが理解されよう。一実施形態では、前記核酸分子は人工的である。
【0044】
本発明によれば、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸は、エピソーム配列として宿主細胞に存在することができるか、又はその染色体に組み込むことができる。D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸は、宿主細胞中に1つのコピー又はいくつかのコピーで存在することもできる。
【0045】
本発明はまた、上記のような核酸分子の発現カセットに関する。その実施形態では、この発現カセットは、D-プシコース3-エピメラーゼの発現に必要な全ての要素、特に宿主細胞における転写及び翻訳に必要な全ての要素を含む。
【0046】
第4の態様では、本発明は、上記のような核酸分子、又は上記のような核酸分子の発現カセットを含む、組換え発現ベクターに関する。別の実施形態では、前記組換え発現ベクターは、配列番号14、配列番号15又は配列番号16を含むか又はそれからなる。
【0047】
「組換え発現ベクター」という用語は、その発現に必要/不可欠な要素を含む、すなわち、宿主細胞においてD-プシコース3-エピメラーゼを発現することを可能にするベクターを意味する。好ましくは、ベクターは、自己複製可能なベクターである。特に、ベク
ター又は発現カセットはまた、プロモーター配列(例えば、プロモーターP43)、ターミネーター配列及び任意選択によりエンハンサーを含む。
【0048】
本発明による「ベクター」は、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルス、YAC、BAC、等であり得る。好ましい実施形態では、ベクターはプラスミドである。好ましい実施形態では、ベクターは、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする配列を宿主細胞の染色体に組み込むのに適した組み込みベクターである。より好ましくは、本発明の組換え発現ベクターは、配列番号16を含むか又はそれからなる。
【0049】
第5の態様では、本発明は、上記のような核酸、又は上記のような組換え発現ベクターを含む組換え宿主細胞に関する。
【0050】
本発明による「宿主細胞」という用語は、原核生物又は真核生物の宿主細胞であり得る。特定の実施形態では、宿主細胞は、GRAS(一般に安全と認められている)株、より好ましくはバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、上記で定義されるような遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。
【0051】
一実施形態では、細胞は非ヒト及び非胚性である。
【0052】
一実施形態では、宿主細胞は、D-プシコース3-エピメラーゼが宿主細胞によって発現されるような条件下で培養される。好ましい実施形態では、D-プシコース3-エピメラーゼは培養培地から回収される。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号16を含む又はそれからなる組換え発現ベクターを含む組換え宿主細胞に関する。
【0054】
一実施形態では、宿主細胞は、配列番号14を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5251で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR1と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR3と呼ばれる菌株を指す。
【0055】
別の実施形態では、宿主細胞は、配列番号15を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5251で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR2と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR3と呼ばれる菌株を指す。
【0056】
別の実施形態では、宿主細胞は、配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5251で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR3と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR3と呼ばれる菌株を指す。
【0057】
別の実施形態では、宿主細胞は、配列番号14を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5252で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR1と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR4と呼ばれる菌株を指す。
【0058】
別の実施形態では、宿主細胞は、配列番号15を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5252で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR2と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR4と呼ばれる菌株を指す。
【0059】
別の実施形態では、宿主細胞は、配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5252で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR3と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR4と呼ばれる菌株を指す。
【0060】
別の実施形態では、宿主細胞は、配列番号14を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR1と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR5と呼ばれる菌株を指す。
【0061】
別の実施形態では、宿主細胞は、配列番号15を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR2と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR5と呼ばれる菌株を指す。
【0062】
別の好ましい実施形態では、宿主細胞は、配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株である。これは、pR3と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR5と呼ばれる菌株を指す。
【0063】
「遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株であり、核酸を含む宿主細胞」という用語は、前記遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株が、核酸又は核酸を含むベクターで形質転換されていることを意味する。本明細書中で使用される場合、「形質転換された」という用語は、「安定して形質転換された」を意味し得、ヌクレオチド配列が人の介入によって導入された細胞を指す。「形質転換する」又は「形質転換すること」又は「形質転換された」という用語は、「改変」又は「改変すること」又は「改変された」という意味によって理解することもできるが、使用されるベクターに応じて、「トランスフェクション」又は「トランスフェクトすること」又は「トランスフェクトされた」及び「形質導入」又は「形質導入すること」又は「形質導入された」をも意味する。
【0064】
第6の態様では、本発明は、上記のように、D-プシコース3-エピメラーゼを発現する組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を取得する方法に関し、以下のステップ:
-(a)アラニンラセマーゼalrA遺伝子が不活性化され、胞子形成yfqD遺伝子の不活性化、及び/又はエリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットの不活性化から選択される少なくとも1つのさらなる遺伝子不活性化を有する、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得するステップ;
-(b)ステップ(a)で取得した前記遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列、及び配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列を含む核酸分子を含むベクターで形質転換するステップ
を含む。
【0065】
一実施形態では、上記のように、D-プシコース3-エピメラーゼを発現する組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を取得する方法は、以下のステップ:
-(a)アラニンラセマーゼalrA遺伝子及び胞子形成yfqD遺伝子が不活性化された、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得するステップ;
-(b)ステップ(a)で取得した前記遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列、及び配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列を含む核酸分子を含むベクターで形質転換するステップ
を含む。
【0066】
一実施形態では、上記のように、D-プシコース3-エピメラーゼを発現する組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を取得する方法は、以下のステップ:
-(a)アラニンラセマーゼalrA遺伝子及びエリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットが不活性化された、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得するステップ;
-(b)ステップ(a)で取得した前記遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列、及び配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列を含む核酸分子を含むベクターで形質転換するステップ
を含む。
【0067】
好ましい一実施形態では、上記のように、D-プシコース3-エピメラーゼを発現する組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を取得する方法は、以下のステップ:
-(a)アラニンラセマーゼalrA遺伝子、エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセット、及び胞子形成yfqD遺伝子が不活性化された、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得するステップ;
-(b)ステップ(a)で取得した前記遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、D-プシコース3-エピメラーゼをコードする核酸配列、及び配列番号1又は配列番号2を含むか又はそれからなる配列を含む核酸分子を含むベクターで形質転換するステップ
を含む。
【0068】
好ましい一実施形態では、上記のように、D-プシコース3-エピメラーゼを発現する組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を取得する方法は、以下のステップ:
-(a)アラニンラセマーゼalrA遺伝子、エリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセット、及び胞子形成yfqD遺伝子が不活性化された、遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株を取得するステップ;
-(b)ステップ(a)で取得した前記遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、配列番号16を含むか又はそれからなるベクターで形質
転換するステップ
を含む。
【0069】
好ましい一実施形態では、上記のように、D-プシコース3-エピメラーゼを発現する組換えバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を取得する方法は、以下のステップ:
-(a)D-アラニン欠損バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(alrA-)を提供するために、好ましくはCre/Loxシステムによって、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のアラニンラセマーゼalrA遺伝子を欠失させるステップ;
-(b)エリスロマイシン感受性且つD-アラニン欠損バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)(alrA-)を提供するために、好ましくはMazFベースのシステムを使用することによって、ステップ(a)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株のエリスロマイシン耐性EmR-comK遺伝子カセットを欠失させるステップ;
-(c)エリスロマイシン感受性、胞子形成不全、且つD-アラニン欠損(alrA-)バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を提供するために、好ましくはMazFベースのシステムを使用することによって、ステップ(b)で取得したバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の胞子形成yfqD遺伝子を欠失させるステップ;
-(d)ステップ(c)で取得した前記遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)を、配列番号16を含むか又はそれからなるベクターで形質転換するステップ
を含む。
【0070】
第7の態様では、本発明は、特に発酵プロセスによって、D-プシコース3-エピメラーゼを産生する方法に関し、これは、上記のような組換え宿主細胞を培養すること、及び任意選択により得られた培養物から産生したD-プシコース3-エピメラーゼを回収することを含む。
【0071】
本発明はまた、本発明によるD-プシコース3-エピメラーゼを産生するための、上記のような核酸、発現カセット、発現ベクター、又は宿主細胞の使用に関する。
【0072】
一実施形態では、そのようなD-プシコース3-エピメラーゼの産生方法は、以下のステップ:
-上記のような組換え宿主細胞を、少なくとも60g/L、特に60g/Lの糖濃度を含む適切な培地で培養するステップ;
-及び任意選択により得られた培養物から産生したD-プシコース3-エピメラーゼを回収するステップ
を含む。
【0073】
一実施形態では、適切な培養培地は、適切な発酵培地である。
【0074】
好ましい実施形態では、糖はグルコースである。本発明の発明者らはまた、驚くべきことに、約60g/Lのグルコース濃度の使用が、本発明によるD-プシコース3-エピメラーゼの産生のために最適化された濃度であることを見出した。この量は特に20Lのバッチに適合し、必要に応じて他のバッチに適合する。適切な培地の他の成分は、当業者にとって明らかであろう。例えば、適切な培地は、酵母、KH2PO4、MgSO4、2H2O、MnSO4、H2O、等も含み得る。有利には、培養培地は、炭素源(グルコースなど)、窒素源(酵母、酵母エキス(単数又は複数)又はアミノ酸など)、塩(硫酸アン
モニウムなど)、微量栄養素(鉄及びマグネシウム塩など)、及び必要に応じて有機ビタミンを含有する。温度、pHなどの他の特定の培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に使用されるものであってよく、当業者にとって明らかであろう。例えば、温度は30℃を超えていてもよく(特に36.5~37.5℃)、pHは約6であってもよい。
【0075】
好ましい実施形態では、培養はバッチ培養で行われる。
【0076】
好ましい一実施形態では、D-プシコース3-エピメラーゼの産生方法において使用される宿主細胞は、配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of
Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株(すなわち、pR3と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR5と呼ばれる菌株)である。
【0077】
第8の態様では、本発明は、D-プシコースを産生するための、本発明に従って取得したD-プシコース3-エピメラーゼの使用に関する。
【0078】
一実施形態では、本発明は、
-(a)上記で定義されるような組換え宿主細胞を培養するステップ;
-(b)得られた培養物から産生したD-プシコース3-エピメラーゼを回収するステップ;
-(c)ステップ(b)で取得したD-プシコース3-エピメラーゼをD-プシコース3-エピメラーゼ活性に適した条件でD-フルクトースと接触させるステップ;及び
-(d)任意選択により、産生したD-プシコースを回収するステップ
を含む、D-プシコースを産生するための方法に関する。
【0079】
好ましい一実施形態では、D-プシコースの産生方法において使用される組換え宿主細胞は、配列番号16を含むか又はそれからなる核酸を含む、番号CNCM I-5253で2017年10月18日にNational Collection of Microorganisms Culturesに寄託された遺伝子改変バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株(すなわち、pR3と呼ばれるプラスミドで形質転換されたBsR5と呼ばれる菌株)である。
【0080】
D-プシコースを産生するための適切な条件は、当業者によって定義され得る。
【0081】
以下の表1は、本発明で使用される配列について言及する。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】alrA構造遺伝子の欠損の戦略の実施例を表す。
【
図2】ベクター/プラスミドpR1とも呼ばれるプラスミドpUB-P43-DPEase-alrAの構築を表す。
【
図3】ベクター/プラスミドpR1/pR2/pR3の概要を表す。pR2/pR3の翻訳効率に関して改変された配列領域は、黒色の四角で略示される。
【
図4】β-ガラクトシダーゼゲノム遺伝子座(ganA1/ganA2;野生型産物:2.1Kb)のPCR分析を表す。DNAは、BsRの3つの独立したコロニー、バチルス・サブティリス(B.subtilis)1A751及びタイプ168株としての2つの収集株、M1遺伝子定規100bp;M2、遺伝子定規1Kbラダーから適用した。
【
図5】MazFカセットを使用したカセットEmR-ComK除去の系統図を表す。Xは、乗換事象を示す。
【
図6】gan遺伝子座特異的プライマーを用いたBsRクローンにおけるEmR-ComKカセットのPCR分析を表す。1:BsR原株、2-5:Em感受性クローン、M:遺伝子定規1kbラダー。
【
図7】
図7Aは特異的yqfD領域プライマーを使用したD-アラニン栄養要求性yqfD(BsR4)変異候補クローンのPCR分析を表す。
図7Bは分析プライマーの欠損及び位置の前後の胞子形成遺伝子座yqfDの遺伝的構成を表す。1-5 BsR4.#1-5(1.7kb産物は、yqfDの欠損を示す);6:yqfD野生型に予想されるBsR原株);M:G遺伝子定規1kbラダー。
【
図8】LB+D-アラニン補充におけるΔyqfD(BsR4)の表現型分析を表す。
図8AはBsR4株を表し、
図8BはBsR株を表す。各図とも、左側が熱処理前、右側が熱処理後である。
【
図9】D-アラニン原栄養性の喪失を介したBsR5変異候補の表現型スクリーニングを表す。組み込まれた変異誘発カセットの切除に成功したクローンは、もはやLB上では成長せず(
図9B)、D-アラニンを補充した培地に厳密に依存する(
図9A)。
【
図10】適用された菌株プラットフォーム派生と遺伝的事象の概略図を表す。
【
図11】ワーキングセルバンクの調製の概要を表す。
【
図12】D-プシコース3-エピメラーゼ及びその安定化ステップを提供する菌株培養の概要を表す。
【発明を実施するための形態】
【0094】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態及び側面を実証及びさらに例示するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0095】
実施例1:クロストリジウム・セルロリティカムH10(Clostridium cellulolyticum H10)株からD-プシコースエピメラーゼを産生する組換え型バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の構築
細菌の大部分において、D-アラニンは細胞壁を形成するためのグリカンサブユニット(ペプチドグリカン)の重要な構成要素である。
【0096】
アラニンは通常、L-立体異性体として自然界に存在し、細胞の成長に不可欠な細胞質のD-アラニンラセマーゼ(alrA)によるD-アラニンへの変換を行う。
【0097】
酵素の不足は、ペプチドグリカン生合成の初期ステップの失敗により、急速な細胞溶解を引き起こす。
【0098】
alrA構造遺伝子全体(GenBank、番号CAB12271.1)及びその発現の制御シグナルは、1.17kbDNA断片(配列番号17)内に含有されていた。
【0099】
1.BsRと呼ばれるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)宿主の構築
PCRによる抗生物質耐性マーカーカセットと隣接する相同性領域の融合は、Shevchuk et al.(Nikolai A.Shevchuk et al.Nucleic Acids Research,2004(32):e19)に記載されている。簡潔には、次のように行われた。
【0100】
lox71-spc-lox66カセットは、P1/P2プライマー対を使用してベクターp7S6から増幅された。2つの追加のプライマー対(P3/P4及びP5/P6)を使用して、D-アラニンラセマーゼ領域に隣接する約900bpのDNA断片を増幅し、そのフロントエンド及びバックエンドを削除した。
【0101】
増幅されたマーカーカセットの5’及び3’末端に相補的な32ヌクレオチド(nt)の伸長が、フロント及びバック隣接領域のリバース及びフォワードプライマーの5’末端にそれぞれ追加された。最後に、2つの隣接する相同性領域及びlox71-spc-lox66カセットをPCRで融合した。
【0102】
PCR産物をバチルス・サブティリス(B.subtilis)宿主に直接、形質転換した(PCR産物は2つの隣接する相同性断片のためにバチルス・サブティリス(B.subtilis)染色体と組み換えられている)。
【0103】
形質転換体クローンは、スペクチノマイシン(Spc)(100μg/mL)及びD-アラニン(200μg/mL)の両方で濃縮されたLB寒天上で選択された。
【0104】
表現型を提供する陽性クローン[alrA-;SpcR]は、さらなる変更のために選択された。
【0105】
次に、抗生物質耐性遺伝子スペクチノマイシン(Spc)は、Cre/Loxシステムにより欠損させた。
【0106】
最後に、アラニンラセマーゼalrA遺伝子が削除されたバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)宿主[alrA
-]が取得される(
図1)。このバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)は、BsRと呼ばれる。
【0107】
2.組換えプラスミド及び抗生物質を含まないバチルス・サブティリス(B.subtilis)DPEaseプロデューサーの構築
バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)内因性プロモーターP43は、周知の菌株であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)168染色体からプライマー対P7/P8を使用して増幅された。遺伝子座タグYP_002505284を含むタンパク質をコードするクロストリジウム・セルロリティカムH10(Clostridium cellulolyticum H10)(ATCC35319)のD-プシコース3-エピメラーゼ遺伝子(GenBank no CP001348.1)(配列II)は、1)5’及び3’末端のNdeI及びXhoI制限部位の統合(さらなる遺伝子クローニングステップのため)、及び2)NdeI制限部位を中和するためのヌクレオチド置換T558C(配列番号4)により新規に合成された。
【0108】
P43プロモーター及びD-プシコース3-エピメラーゼ遺伝子は、P7及びP10プライマーを使用したSOE-PCR(スプライシングオーバーラップ伸長PCR)を介して発現カセットとして融合された。次に、PCRで生成されたp43-DPEaseカセットをpMD-19Tベクターにクローニングした。
【0109】
発現を改善するために、pUB110プラスミドを元のHpaIIプロモーターと共に使用した。
【0110】
プラスミド抗生物質耐性遺伝子フリーは、シンプルクローニング(Chun You et al.Appl.Environ.Microbiol.2012,78(5):1593-1595)と呼ばれる方法を参照して構築された。これは、制限及びライゲーション酵素を必要としない配列非依存性の方法である。
【0111】
プロトコルは3つのステップで構成される。
(1)直鎖状DNA(P43-DPEase発現カセット及び直鎖状pUB110ベクター骨格の適切なゾーン(Mob遺伝子領域外の断片))は、それぞれプライマーP11/P12及びP13/P14(P11/P12は、P13/P14の40-50bpの重複する末端を含有する)を用いたPCRにより別々に増幅された。
(2)これらのDNAテンプレート(標的遺伝子及び対応するベクター)に基づいて、プライマーなしでPOE-PCR(延長したオーバーラップ伸長PCR)によりDNA多量体が生成され、
(3)POE-PCR産物(pUB-P43-DPEase)は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)コンピテント細胞に形質転換された。ヒット形質転換体は、50μg/mLカナマイシンを添加することによりLB寒天上で回収された。同じ方法を使用して、カナマイシン(Km)及びブレオマイシン(Blm)の抗生物質耐性遺伝子領域の置換するためにD-アラニンラセマーゼ遺伝子を挿入した。
【0112】
D-アラニンラセマーゼ遺伝子及びベクター骨格は、それぞれP15/P16及びP17/P18プライマーを用いたPCRにより増幅された。
【0113】
DNA多量体は、D-アラニン代謝産物の生合成が不全であるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)[alrA-]コンピテント細胞内で形質転換された。
【0114】
最後に、プラスミドpUB-P43-DPEase-alrA(配列番号14)(
図2)を、D-アラニンを添加せずにLB寒天上で選択した。
【0115】
この戦略の主な利点は、抗生物質を含まない複合培地でプラスミドの直接選択を提供することである。
【0116】
D-アラニンラセマーゼが細胞壁代謝に関与するため、活性化の喪失は、細胞溶解を引き起こし、プラスミドを失った細胞集団の蓄積を防止する。
【0117】
実施例2:より高いDPEase発現のためのプラスミド最適化
実験的戦略は、上記で取得したDPEase発現宿主(BsR)としてのバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の発現の可能性及び本質的制限を明らかにすることを目的としている。
【0118】
翻訳効率(pR2、pR3)によって親プラスミドpUB-P43-DPEase-alrA(pR1)標的に導入された改変。
【0119】
これは、pR2/pR3の場合、ある特定の時点で、ある既定の細胞で遺伝子発現が「オン」の場合、この時点でより多くのタンパク質が伝達されると予想されるべきであることを意味する。
【0120】
1.リボソーム結合部位(pR2)のプラスミド最適化
最適化されたDPEase発現構築物を生成するためのテンプレートとして、プラスミドpUB-P43-DPEase-alrA(又はpR1)を標準LB培地で一晩培養して分離し、プラスミドフリー株を次のステップのために保持した。
【0121】
これらのプラスミド調製物は、バリアントリボソーム結合部位及び隣接領域のPCRを介した挿入のテンプレートとして機能した(
図3)。変異誘発PCRが成功した後、新しいプラスミドをバチルス・サブティリス(B.subtilis)alrA欠損プラスミドフリー株(BsR)に戻した。
【0122】
形質転換に成功したクローンを標準LB培地で培養し、一次活性スクリーニングフェーズ(Protocol#1)を通過させた。
【0123】
次に、電気泳動及びリボソーム結合部位のゾーン変化の配列検証のために、プラスミドDNAを一晩培養して調製した。
【0124】
下流のDPEaseオープンリーディングフレームとの併用で最もよく機能するpR2クローンで識別された上流の配列を以下に示す。
【0125】
pR1(1)及びpR2(2)のDPEase上流の5’非翻訳領域のヌクレオチド配列。以下の表1において、DPEase遺伝子のATGコドンに下線が付され、RBS改変領域は斜体太字で示される。
【0126】
【0127】
配列番号15のプラスミドpR2は、配列番号1又は配列番号39の最適化された配列を含有する。
【0128】
プロトコル#1:DPEase活性の酵素的検出
DPEaseスクリーニングサンプルの分析は、メガザイム(Megazymes)のフルクトース/グルコースアッセイキット(K-FRUGL)を適用して行った。
【0129】
初期評価では、プシコースはいかなるシグナルも生じさせないことが明らかになり、したがって、反応におけるフルクトース含有量の減少を追跡することにより、DPEase活性を測定できる。簡潔には、サンプルは反応前に新たに1:1000に希釈した。
【0130】
較正用グルコース/フルクトース標準とフルクトース/PBSミックスは常に含まれて
いた。糖は、0-100mg/Lの線形範囲で検出できた。
【0131】
100μLのサンプルをアッセイプレート(96ウェルMTP、平底)に移した。
【0132】
90μLの反応混合物1+2(1&2の各溶液10μL、+70μLミリQ(mQ)水)を添加し、室温(RT)で数分間インキュベートした。
【0133】
20μL反応混合物3(2μL溶液3+18μLmQ水)を添加し、5分後に、OD340を「ブランク」として読み取り、20μL反応混合物4(2μL溶液4+18μLmQ水)を添加し、5分後にOD340を残留フルクトースとして読み取った。
【0134】
残留フルクトースは、較正基準を使用し計算され、未処理のフルクトースサンプルと比較して変換されたプシコースを推定した。
【0135】
2.カスタマイズされた翻訳開始(pR3)によるベクターの確立
図3に示した以前のpR2バリアントは、翻訳開始領域(スペーサー)をさらに最適化するための親プラスミドとして機能した。
【0136】
この目的のために、DPEaseオープンリーディングフレームの上流の近位4ヌクレオチドは、PCR変異誘発を介して無作為化された。
【0137】
結果として得られたプラスミドバリアントをバチルス・サブティリス(B.subtilis)alrA欠損プラスミドフリー株(BsR)に戻し、標準的なLB寒天プレートで培養した。
【0138】
可能な4ヌクレオチドの全ての組み合わせをカバーするために、2000クローンを超える変異体バンクを無作為に選び、96ディープウェルプレートで培養した(DWP及び一次活性スクリーニングフェーズ(Protocol#1)でDPEase発現を評価した)。
【0139】
pR3プラスミドを内包した最良のクローンが配列決定された(下記)。
【0140】
pR1(1)及びpR2(2)とpR3(3)のDPEase上流の5’非翻訳領域のヌクレオチド配列を以下の表2に示す。DPEase遺伝子のATGコドンに下線が付され、RBS改変領域が斜体太字で示され、翻訳開始領域は四角で囲まれている。
【0141】
【0142】
配列番号16のプラスミドpR3は、配列番号2又は配列番号40の最適化された配列を含有する。
【0143】
3.発現スクリーニングと酵素アッセイ
二次活性スクリーニングフェーズは、より代表的なDPEaseの産生のために行われた。再評価のために、より大きな容量で培養するために最良クローンを選択した。
【0144】
したがって、以前にpR1及びpR2とpR3プラスミドで形質転換されたBsR株を振盪フラスコで培養した(表3)。
【0145】
最終点(16時間)にサンプルを採取し、6000gで15分間遠心分離することにより細胞を収集し、上清を廃棄した。
【0146】
凍結乾燥により調製したクロストリジウム・セルロリティカム(C.cellulolyticum)DPEaseを内包した細胞ペレットを真空凍結乾燥し、粉砕して酵素粉末として直接使用した。
【0147】
次に、生成された各酵素粉末のDPEase活性を行った(以下に記載された方法に従う)。
【0148】
【0149】
インキュベーション時間は、プレートでは一晩、最初の種培養では16時間、2番目の種培養では最大Abs600nm、産生は16時間であった。
【0150】
方法:DPEase酵素アッセイの説明
全細胞反応を使用して生成されたD-プシコースの量を決定することにより、DPEa
se活性を測定した。
【0151】
1ミリリットルの反応混合物には、50mM Tris-HCl、pH7、5にD-フルクトース(80g/L)及び200μLの酵素溶液が含有されていた。細胞は、Tris-HClに溶解されていた。
【0152】
反応を60℃で正確に10分間インキュベートし、100℃で正確に10分間煮沸することにより終了した。混合物中に生成されたD-プシコースは、寸法250x4mm、#125―0094及び屈折率検出器(waters 410)のアミネックスHPX-87Ca2+カラム(Biorad製)を取り付けたWaters Alliance HPLCで検出された。
【0153】
カラムを85℃で流速0.3ml/minで、純水で溶出した。DPEase活性の1単位は、1分あたり1μmolのD-プシコースの産生を触媒する酵素の量として定義された。
【0154】
4.DPEaseのパフォーマンス結果
最高のDPEase酵素パフォーマンスを次の表4にまとめた。
【0155】
【0156】
構築されたpUB-P43-DPEase-alrAベクター(pR1)を内包するD-アラニンラセマーゼ欠損の初期株(BsR)は、約10.57のDPEase酵素活性を示した。
【0157】
2ステップのプラスミド最適化では、RBS領域の変更(pR2)及び翻訳開始スペーサーの最適化(pR3)で、それぞれ約26.85U/mLと38.85U/mLと高めのDPEase活性が示された。プラスミドpR3は最も有望なプラスミドである。
【0158】
実施例3:DPEase酵素発現増強のためのバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)BsRの改善
プラスミドの最適化と並行して、特に規制と安全の目的のために、株BsR自体が最適化された。
【0159】
BsRの抗生物質感受性は、エリスロマイシンを5μg/mLで添加したときに菌株が増殖できることを示した。この知見は、この菌株がエリスロマイシン耐性(EmR)であることを明確に示している。この耐性は除去されなければならない。バチルス(Baci
llus)属細菌は、休眠状態に入るための、特化された、非常に耐性があり、非生殖的な構造である、内生胞子を産生することが知られている。
【0160】
細菌の内生胞子は、好ましい条件が現れると、細胞が生細胞を回復するために必要な全ての物質を保持する。
【0161】
内生胞子は菌株の完璧な播種因子であり、環境及び健康汚染の深刻なリスクである。内生胞子形成BsRの産業的用途では、内生胞子形成経路を中断することが重要である。
【0162】
1.EmR-comKカセットの除去:BsR3の生成
分子生物学ツールによって酵素産生株を開発することを目指して、バチルス・サブティリス(bacillus subtilis)BsRは、いくつかのプラスミドでの遺伝子発現の誘導因子として使用される可能性が高い異なる抗生物質(テトラサイクリン、エリスロマイシン、カナマイシン)と糖(キシロース及びマンニトール)の適用性について試験された。
【0163】
驚くべきことに、BsRは高コピープラスミド(5μg/mL)の選択圧に適用される濃度でもエリスロマイシンで培養でき、菌株はバチルス・サブティリス(bacillus subtilis)(野生型)と比較してキシロースでの培養が明らかに遅れていた。
【0164】
バチルス・サブティリス(B.subtilis)β-ガラクトシダーゼ遺伝子lacA(ganAとも呼ばれる)は、異種発現カセットの統合部位として、及び/又はプロモーター誘導効率をテストするレポーター遺伝子として機能できるため、X-gal寒天プレートでその機能を試験した。
【0165】
X―gal(5-ブロモ―4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(C14H15BrClNO6))は、β-ガラクトシダーゼに対するラクトース感受性の類似体(酵素は、D-ラクトースのβ-グリコシド結合を切断する)は切断され、ガラクトース及び5-ブロモ―4-クロロ-3-ヒドロキシインドールは放出される。
【0166】
後者は、自発的に二量体化し、5,5’-ジブロモ-4,4’-ジクロロ―インディゴ(不溶性青色)に酸化される。
【0167】
確かに、発色性基質X-galを含有する寒天で細胞を成長させることによりネイティブlacA遺伝子は青色のコロニーを持ち、lacA遺伝子が活性であることを示す。BsR株では、X-galプレート上に青いコロニーは見られなかった。
【0168】
したがって、lacAPCR分析は、バチルス・サブティリス(B.subtilis)株(野生型)と比較して行われた。
【0169】
野生型lacA遺伝子が存在する場合は、2.1kbの産物を提供する必要がある。PCR分析により、約5kbのより大きな増幅バンドが明らかに示され、lacA遺伝子座に挿入断片が含有されていることが示された(
図4)。
【0170】
この増幅された断片を増幅し破壊して、EmR遺伝子及びキシロース誘導プロモーターPxylAによって制御されたcomK遺伝子を含有するカセットの存在を明らかにした。
【0171】
EmR-comKカセット(6.2kbのPCR断片)を削除するために、カウンター
セレクションマーカーとして大腸菌(Escherichia coli)毒素遺伝子MazFを使用した。
【0172】
MazF遺伝子は、イソプロピル-β-d-チオガラクトピラノシド(IPTG)-誘導性発現系の制御下に置かれ、alrA遺伝子と関連し、3つの標的配列が隣接するMazFカセットを形成した。
【0173】
送達ベクター及び染色体間の二重乗換事象により、標的とされたEmR-comKカセットの前にMazFカセットが統合され、D-アラニンラセマーゼを含むIPTG感受性株が生成された。2つのganA配列間の別の単一乗換事象により、MazFカセットの切除が引き起こされた(
図5)。
【0174】
次に、成功した変異体の望ましい表現型に関して、クローンを評価した。a)エリスロマイシン選択で増殖しない。b)D-アラニンの欠乏した培地では増殖しない。
【0175】
後者のクローンは、2.3kBの増幅断片を使用して、目的のEmR-comKカセット除去遺伝子型についてPCR分析を介し正常に確認された(
図6)。
【0176】
これらのエリスロマイシン感受性(Ems)及びD-アラニン栄養要求性クローンを、その後DPEase発現プラスミドpR3で形質転換した。
【0177】
外部のD-アラニン補充なしで、得られたクローンは、LB上で増殖することができた。
【0178】
2.胞子の不活性化:BsR4及びBsR5の生成
以前に、エリスロマイシン感受性及び胞子形成不全(二重変異体EmSSpo-)のBsR5株バージョンを生成するために、内生胞子の不活性化の影響が株BsR(EmR-comKカセットを含有する)で評価され、BsR4、EmR spo-遺伝子型という名の単一変異体をもたらした。
【0179】
胞子代謝カスケードを破壊するための戦略は、胞子形成を中断するために、内生胞子成熟のステージIV(胞子形成プロセス後期の一つ)の間に作用するyqfD必須遺伝子を削除することである。
【0180】
a-単一変異株BsR4の生成
胞子形成遺伝子yqfDを削除するためのD-アラニンラセマーゼ選択可能な変異誘発カセットの確立が生成され、DPEaseに内包したプラスミドがないBsRに導入された。
【0181】
alrAカセットは、EmR-ComKカセットの除去に使用されたものと同様に、ydfD遺伝子欠損に特異的配列を使用して行われた。
【0182】
形質転換体は、D-アラニンを含まない培地で増殖する能力により首尾よく選択された。
【0183】
これらの候補は、変異誘発カセットとyqfD胞子形成遺伝子(ΔyqfD)のないクローンを導くIPTG誘導カウンター選択に適用された。
【0184】
単一の変異体は、D-アラニン栄養要求性及びyqfD遺伝子座のPCR分析により同定された(
図7)。
【0185】
BsR4株の胞子形成表現型を評価するために、変異体クローンをLB+D-アラニン培地で一晩培養させた。
【0186】
次に、培養物は、胞子形成寒天プレート(D-アラニン補充)にスポットし、大きなコロニーを形成した。
【0187】
胞子形成プレートを37℃で3日間インキュベートし、顕微鏡で評価した。BsR原株は位相差顕微鏡下で明色の(phase-bright)胞子を生成したが、ΔyqfD変異体クローンは胞子形成の欠陥を示す位相差顕微鏡下で明色の胞子を生成しなかった(変異体が生成する胞子は明色でなく暗色であり、これは、成熟に進むことができないことを示す)。
【0188】
変異クローンが成熟した(生存可能な)内生胞子を生成できなかったことを確認するために、LB+D-アラニンで一晩培養を37℃で行った。
【0189】
翌日、2x0.5mLを無菌チューブに無菌サンプリングした。
【0190】
最初のチューブは、2番目のチューブが80℃で30分間インキュベートされたときに、LB+D-アラニン培地に直接スポットされた。
【0191】
熱処理は、栄養細胞を殺すことを目的とし、成熟内生胞子だけが生き延びることができる。
【0192】
熱処理後、ブロスを前述のプレートにスポットした(前の未熱処理スポットのすぐ隣)。
【0193】
次に、プレートを37℃で一晩インキュベートして増殖させた。予想通り、BsR野生型クローンのみが熱処理に生き延びた。
【0194】
BsR4クローンの熱処理後、細胞細片のみがスポットに見えた(
図8)。
【0195】
b-二重変異株BsR5の生成
単一変異株BsR4を生成するためにすでに首尾よく適用されている胞子形成遺伝子座yqfDを標的とする変異誘発カセットは、エリスロマイシン感受性株BsR3に導入された。
【0196】
ゲノム統合が成功した後、ゲノムから変異誘発カセットが切除されたクローンを同定するための変異スクリーニングが開始され、yqfD遺伝子の完全な削除が行われた。
【0197】
BsR4株について行われたように、クローンは、成熟した内生胞子を産生することができないために選択された。一晩培養した後、熱処理の前後でサンプルはLB+D-アラニンプレートにスポットされ、その後さらに一晩37℃でインキュベートされた。
【0198】
D-アラニン原栄養性の喪失につき、熱処理後に成長しなかったヒット候補を採取し、LB培地プレートにスポットし、37℃で一晩インキュベートした。
【0199】
【0200】
最後に、産業株プラットフォームであるBsR5は、環境と安全性の規制を尊重するた
めに、エリスロマイシン感受性及び胞子形成ネガティブの二重変異体として取得された(
図10)。
【0201】
3.DPEase酵素産生のパフォーマンスの結果
取得した全ての菌株(BsR3、BsR4及びBsR5)は、ヒットプラスミドpR3で形質転換された。それらは以下のプロトコル(
図11及び12)に関して培養された。
【0202】
ワーキングセルバンク構築:
ワーキングセルバンクとは、2mLのNalgene(登録商標)バイアルに入った-80℃の凍結ストックを指す。
【0203】
このプロセスは、37℃、16時間のLB培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl5g/L、pH7.5、10Nソーダで調整)でのペトリ皿培養を含有する。5又は10mLの液体LB+0.1mMマンガン(MnCl2、4H2O [13446-34-9])培地で細胞懸濁液を調製し、≒10O.D.600nmの調製物を取得する。50mLの液体LB+0.1mMマンガンを含有する2つの側面バッフルを備えた500mLの振とうフラスコを121℃で21分間滅菌する。後者の培地は、新鮮な中間懸濁液を0.1O.D.600nmに接種される。培養物を37℃、250rpm(軌道=5cm)でインキュベートし、増殖をO.D.600nm測定で毎時間監視する。培養がO.D.600nmMAX/2に達すると、手順が1ステップ進む。次に、最終培養の正確な量を測定し、同量の凍結保護物質(30%v/v)グリセロール[56-81-5])をゆっくりと添加し、よく均質化するまで混合する。その後、後者の懸濁液を1.8mLずつ2mLバイアルに等分する。新たに満たされたバイアルは、-80℃の冷凍庫に迅速に保管され、さらに使用するためにワーキングセルバンクを意図している。
【0204】
DPEase酵素産生のための菌株培養
種培養として、バッフルなし300mLの振とうフラスコにマンガンを添加した30mLのLB培地で満たし、121℃で20分間加熱滅菌した。ワーキングセルバンクチューブ1.8mLを接種に使用した。培養物を37℃、250rpm(軌道=5cm)で4時間インキュベートした。
【0205】
産生培養として、0.9mLの以前の種培養を使用して、滅菌した3つの側面バッフル付300mL振とうフラスコ及び50mLの改良LB-ROQ培地(デキストロース一水和物15g/L、酵母エキス15/L、NaCl[7647-14-5]8g/L、K2HPO4[7758-11-4]7g/L、KH2PO4[7778-77-0]1.3g/L、MgSO4・7H2O[10034-99-8]50mg/L、MnSO4・H2O[10034-96-5]0.4mg/L、及びMnCl2・4H2O[13446-34-9]19mg/L)に接種した。pHは中性に近い必要がある。培養物を37℃、250rpm(軌道=5cm)で16時間インキュベートした。DPEase酵素の評価は、実施例2で詳細に行われた。
【0206】
最高のDPEase酵素のパフォーマンスを以下の表5にまとめ、性能の平均値及び実行した試行回数を示す。
【0207】
【0208】
プラスミドpR3(puB-P43-DPEase-alrAベクター)で形質転換した場合、異なる構築株プラットフォーム、BsR3(単一変異体EmS)、BsR4(単一変異体ΔyqfD)及びBsR5(二重変異体EmS、ΔyqfD)による連続DPEase酵素の産生パフォーマンスを徐々に向上させることにつながった。
【0209】
中間的な単一変異株(BsR3及びBsR4)は、遺伝子組み換えの影響を追跡するために、DPEase産生について評価された。これらの2つの菌株では、パフォーマンスは影響を受けなかった。
【0210】
プラスミドpR3で形質転換された最終株BsR5は、環境及び安全性が最適化されており、酵素DPEase発現の向上につながった。
【0211】
この菌株は、エリスロマイシン耐性手段及び内生胞子完全成熟加工装置を産生する代わりにDPEaseを発現する資源を節約する可能性がある。
【0212】
実施例4:DPEase酵素発現増強のための発酵培地の最適化
材料及び方法
プラスミドpR3で形質転換されたBsR5株で使用された株。
【0213】
1.1バイオマスの産生
バイオマスの産生は前培養ステップから始まる。グルコース(15g/L)、酵母エキス(15g/L)、及びNaCl(15g/L)をpHが調整されていない脱塩水(QS
1L)に溶解する。培地をバッフル付き三角フラスコ(2000mL)に入れ、次に三角フラスコを121℃で20分間オートクレーブし、次に1つのクライオチューブを滅菌条件で接種し、37℃で4時間、110RPMでインキュベートする。
【0214】
前培養は、0.5Lの培地を含有する2L三角フラスコで行われる。光学密度が0.5から1、又はDCW(乾燥細胞重量)が0.07から0.18g/Lとなるよう、三角フラスコを37℃で3時間、110RPMでインキュベートする。
【0215】
産生ステップは、グルコース、酵母エキス及び塩をベースとする混合培地で行われる「バッチ」タイプの発酵で構成されている。培地はマイクロエアレーションされているため、pO2の管理は特殊であり、OUR(酸素消費量)は約7mmol/l/hに維持されている。これを行うために、攪拌及びエアレーションは弱く固定されている(200RPMで9L/min。これにより、産生の3/4の間、pO2がゼロとなる。発酵中、培地
の添加(フィード)はない。pH6の調整は、アンモニア20%(w/w)で設定される。
【0216】
1.2バイオマスの調製-粉砕
グルコースが完全に消費されたときにバイオマスが収集される。この時点で、酵素活性は最大になる。次にバイオマスを遠心分離し(10000g/5分)、50mM PBS緩衝液pH8で洗浄する。次に、細胞をボールミルで粉砕する(30分/2gビーズ/1g洗浄済みマスト)。取得した混合物を、細片を除去するために、0.45μmフィルターを通し濾過する。取得した溶液は4℃で7日間安定である。
【0217】
1.3活性の測定
酵素分析は以下の条件下で行われる:800μlの基質(50mM PBS pH8中フルクトース400g/L)を55℃で5分間プレインキュベートする。反応を開始するために必要な量の酵素溶液を加える。全体を55°で10分間インキュベートする。次に、100℃で10分間通過させることにより反応を停止させる。生成されたプシコースの測定は、プシコースの%面積の測定によるHPLC(Ca2+カラム、65℃、H2O 0.3ml/min、及び屈折率検出)によって行われる。活性は、酵素1mlあたり及び反応1分あたり(U/ml)の形成されたプシコースのμmolで表される。
【0218】
いくつかの発酵培地を試験し、それらの組成を以下の表6に詳述する。
【0219】
【0220】
【0221】
したがって、60g/Lを含む発酵培地(「F2 160919」と呼ばれる培地)は、約139.9U/mLのDPEase活性をもたらすが、15g/Lを含む発酵培地(
「F1 160811」と呼ばれる培地)は、約40.0U/mLのDPEase活性をもたらす。
【0222】
これらの結果は、少なくとも60g/Lの糖、特にグルコースを含む発酵培地を使用することの関心を証明している。
【0223】
実施例5:5’UTRのいくつかの変異ヌクレオチド配列の比較
DPEase遺伝子のATGコドンの上流にある5’非翻訳領域のヌクレオチド配列に変異が導入されている。
【0224】
標準手順書(SOP)に従って試験されたDPEase活性の結果を、以下の表7に詳述する。
【0225】
【0226】
クローンII6及びII7は、SOPに従って分析した後、最高のDPEase活性を提供する。ただし、最適な発酵条件(実施例4を参照)でのアッセイでは、I7クローンの変異が最高のDPEase活性をもたらすことが示された。
【0227】
したがって、I7クローンの変異は、プラスミドpR3に存在する変異である。
【受託番号】
【0228】
CNCM I-5251
【0229】
CNCM I-5252
【0230】
CNCM I-5253
【配列表】