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  • 特許-鉄道設備の不具合を検出する装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】鉄道設備の不具合を検出する装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/04 20060101AFI20221027BHJP
   G01N 21/89 20060101ALI20221027BHJP
   B61K 9/08 20060101ALI20221027BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B61L23/04
G01N21/89 Z
B61K9/08
B61K13/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020550670
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 IB2019057378
(87)【国際公開番号】W WO2020053699
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】102018000008445
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517369564
【氏名又は名称】メル・メック・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MER MEC S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ヴィート・ペルトーザ
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0200827(US,A1)
【文献】特開2004-168268(JP,A)
【文献】特開2015-010456(JP,A)
【文献】特開2014-034875(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107576666(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/04
G01N 21/89
G01N 29/14
B61K 9/08
B61K 13/00
B61K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道設備の不具合を検出する装置であって、該装置は、
- 一般的な鉄道車両に装着された少なくとも3つの診断モジュールと、
ここで3つの診断モジュールは、以下のものである、
- 第1モジュール(形状モジュール)は、鉄道の少なくとも形状の特徴を測定するように構成されている、
- 第2モジュール(加速度モジュール)は、鉄道車両における少なくともある点で、鉄道から車両へ伝送される横方向及び/又は垂直方向の加速度を測定するように構成されている、
- 第3モジュール(視覚モジュール)は、鉄道要素の画像を取得し、異常の存在を検証するためにそれらを分析するように構成されている、
- 鉄道車両の位置を検出する手段と、
- 診断モジュールによって検出されたデータを取得し、各モジュールによって実行された各検出に関して、不具合のない鉄道の標準状態に対する検出のズレを表す重大度指標を計算するように構成された電子手段と、
を備え、該電子手段は、
a) 各モジュールの各検出に関して、不具合のない標準状態に対する検出のズレの幅を示す最初の重大度指標(h1)を計算する、
b) 潜在的な不具合の種類を示すパラメータ(d1)をそれぞれの最初の重大度指標(h1)と関連付ける、
c) それぞれの最初の重大度指標(h1)及び潜在的な不具合の種類を示すパラメータ(d1)を、それらを取得した位置(xi)と関連付け、それにより、位置(xi)、種類のパラメータ(di)、及び最初の重大度指標(h1)によって特徴付けられる潜在的な不具合を定義する、
d) c)において定義されたそれぞれの潜在的な不具合に関して、種類を示すパラメータ(di)、最初の重大度指標(h1)、及び検出された他の潜在的不具合に対する相対的距離(xij)の関数として、それらの種類パラメータ及びそれらの最初の重大度指標の全体的な重大度指標(ht)を計算する、
e) 潜在的な不具合が保守作業を必要とするか否かを決定するために、全体的な重大度指標(ht)を臨界的しきい値と比較する、
ように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
全体的な重大度指標(ht)は、
- 最初の重大度指標(h1)、及び
- 全体的な重大度指標(ht)が計算される、潜在的な不具合の位置(xi)に近い距離において検出される各潜在的な不具合に関する貢献度、
の合計によって与えられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
全体的な重大度指標(ht)が計算される、潜在的な不具合からの距離において検出される各潜在的不具合に関する貢献度は、2つの不具合の相対距離(xij)と、2つの不具合の種類パラメータ(di,dj)との関数である項を、潜在的不具合の重大度指標(hj)に乗じた積によって与えられる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
2つの不具合の相対距離(xij)と、2つの不具合の種類パラメータ(di,dj)との関数である項は、2つの不具合の距離(xij)と、2つの不具合の種類パラメータの関数である増幅係数(aij)との比の負の指数として計算される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
臨界的しきい値は、種類パラメータに依存する、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
上記形状の特徴は、レールの離隔寸法、カント、アラインメント、長手方向レベル、軌道ねじれ、あるいはレールにおける形状測定から導出される他の任意のパラメータ、から選択される少なくとも一つのパラメータを備える、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項7】
視覚モジュールによって検出される視覚的な異常は、連結具の欠如あるいは異常、継目の異常、砕石の不十分な量、枕木用のねじ及び継目用の軌道ボルトの欠如あるいは緩み、枕木及びレールにおける割れ目の存在、あるいは設備を構成する要素の他の任意の形態異常、から選択される少なくとも一つの異常を備える、請求項1又は2に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道設備の不具合を検出するための装置及び方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
知られているように、鉄道設備は、軌道、あらゆる種類のポイント(分岐器)、バラスト、及び列車が通過する軌道の取り付け、固定、調整に必要とされる任意のものを備えている。また、鉄道設備の不具合は、走行の不安定さ、及び最悪の場合における脱線を引き起こす可能性があることから、列車の運行(circulating)に関して危険を意味することも知られている。
【0003】
不具合の重大度は、鉄道車両の脱線につながる可能性のある異常な垂直及び横方向の加速度を車両に引き起こす同不具合の能力に関連する。
鉄道車両へ異常な加速度を伝達可能な不具合は、例えば、軌道のねじれ、アラインメント(通り変位)、高低変位のようなパラメータ用に検出される軌道の形状の不具合である。他の不具合は、枕木の割れ、連結具の異常、継目(分離、絶縁継目を含む)の異常、バラスト用の不十分な砕石、枕木用のねじ及び継目用の軌道ボルトの欠如あるいは緩みである。
【0004】
したがって、不具合を検出しそれらの重大度を評価すること、つまりそれらが脱線を引き起こす可能性を評価することは、特に重要である。
鉄道設備の不具合を検出するために、鉄道車両に装着され、今述べた鉄道設備の不具合を検出可能にする、最先端の複数の測定及び制御システムが実現され、知られている。
【0005】
さらに、上で述べた不具合の原因は、様々になり得て、よって不具合を区別することは、一義的にその原因を区別するのに十分ではない。例として、形状の不具合は、バラストの降伏、絶縁(分離)継目の降伏、枕木の割れ、レールと枕木との間の連結具の劣化あるいは欠如、によって引き起こされる場合がある。
【0006】
不具合の原因を知ることだけが正しい保守作業を計画することを可能にすることは明らかである。したがって、不具合検出及び重大度評価に完全にリンクした別の問題は、それらの原因の区別であり、その結果、それらは適切な保守作業によって除去することができ、それらが再び発生することを防止可能である。
【0007】
すべての測定システムのように、鉄道診断システムもまた、誤認(エラー)よる誤判定に悩まされており、これは、重大な不具合が存在しない、あるいはそれほど重大ではないときに、代わりに重大な不具合が検出されることを意味する。最先端技術で既知なことによれば、不具合重大度指標は、診断システムによってモニターされた重要なパラメータ値と、1つ以上の重大度指標を定義可能な関連の重要なしきい値との間の比較機能として評価されるということが明記されている。
【0008】
しかしながら、この概念的に十分に単純なアプローチは、いくつかの制限を有する。まず、パラメータ値のしきい値との比較は、互いに接近した特定された複数の不具合の、また異なる種類の不具合の、相乗効果を考慮することを可能にしない。即ち、その値が関連のしきい値よりも下にあるパラメータによって特徴付けられる単一の不具合の存在が、車両走行安全性を保証したとしても、より多くの近くの不具合が共に存在することは、単一の不具合の重大度指標がしきい値よりも下に維持されても、列車走行用全体の重大度指標を危険なほどに増加可能にする。
【0009】
幾つかの場合では、この考察は、最先端技術で既知のシステムにおいて、まさに予防のしきい値を使用することにつながり、一方、他の場合では、より多くの不具合の相乗効果は単に考慮されず、したがって、列車運行に関して危険な状態を生成する。
【0010】
したがって、実際の不具合に対する誤判定の割合は、大抵高く、経済的に受け入れられない。これは、検出された不具合の有無を検証するために、作業者に更なる仕事を強いるからである。
さらに、最先端技術で既知の診断システムが、不具合の原因を自動的に決定することなく、不具合検出及び測定に制限されるのは、単一の不具合の個別化を目指すまさに上述のアプローチのためである。
【0011】
最先端技術で既知の装置の第1例は、DE19801311に記述されており、ここでは、車両の様々な部品に配置された複数の診断モジュールを備えた鉄道保守車両が記載されており、鉄道設備の不具合におけるそれらの影響を評価するために、鉄道設備の様々な特性が分析される。DE19801311は、各測定変数をそれぞれの既定のしきい値と比較することを提案している。さらにこれは、車両の中心に対する、各診断ツールによって実行された各パラメータの獲得位置を標準化し、その結果、キロメートル当たりの保守報告書が作成可能であることを示している。
【0012】
DE19801311に記載されたシステムにおいて、多くのセンサーを設けることは、種々の近い不具合間の因果関係を決定可能にする。即ち、例えば、架線における不具合は、車両の異常姿勢を生じる軌道の形状的不具合、及び架線を異常にすり減らすパンタグラフの形状的不具合によって発生可能である。よってDE19801311は、保守作業者が正しい保守作業を行なうのを助けるために、異なる種類の不具合間の因果関係を調査することを提案している。
【0013】
DE19801311では、その代わりに、多くの近い不具合が、また単一で考えた場合にはほどほどの程度でも、運行安全性に作用可能である相乗効果への言及は行っていない。実際、各不具合と比較されるべきしきい値は、予め決定されており、他の任意の種類の近い不具合の存在の有無に依存していない。
【0014】
別の例は、US2007/217670に記載されており、これは、列車が通過するときに軌道を記録するように構成された映像取得システムを設けた鉄道車両を記述している。この映像取得システムは、凹凸を検出し、不具合ベンチマークライブラリーに予め規定された不具合と各凹凸を比較するように構成された画像処理ソフトウェアを設けている。凹凸が安全しきい値に等しい又は超える場合には、画像は、不具合種類のコードが割り当てられる。そして、凹凸の画像は、軌道の専門家によって分析されるように送られる。
【0015】
また、この文献には、多数の取得装置が車両に搭載されるか否かに関わらず、種々の取得装置から得たデータが、各取得に由来する誤判定を除外するために、又はその状況において各不具合の重大度(つまり、他の不具合に多かれ少なかれ近い)を評価するために、使用されるという事実は開示されていない。
【0016】
さらに、別の例がEP33333043に記載されており、該文献では、検出方法が記載されている。該方法では、同じ不具合、例えばレールの頭部及び胴部における長さ、位置、並びにその点における通過頻度の不具合、の異なる特性に重みを割り当てることによって、計算された重大度指標が各不具合に関連付けられている。よって、この場合でも、重大度指標は、多くの接近した不具合の車両の運動における相乗効果を計算していない。
【発明の概要】
【0017】
技術的課題
特筆すべき点として、全ての引用された実施形態では、鉄道車両は、複数の診断ツールを設けているが、各不具合の重大度は、安全しきい値による比較によって単独で評価される。せいぜい、同じ箇所にて生じた多くの不具合間の因果関係が調査されるものである。
【0018】
しかしながら、このアプローチは、一連の制限を有している。即ち、第1に、各不具合に関して固定された安全しきい値が非常に大きい(高い)場合には、危険な可能性のある不具合が無視可能になり、一方、この問題を除去するために安全しきい値を低くした場合には、「誤判定」つまり不具合とだまされた異常が検出可能になる、第2に、各不具合に関して取得したパラメータと比較する既定の安全しきい値を同じ事実に固定することは、不具合の重大度を決定するときに、他の不具合(同じ種類のものか否かに関わらず)に対するその位置を評価することを不可能にすることにつながる。
【0019】
したがって、設備の不具合を検出可能にし、よって最先端技術で既知の実施形態を超える、鉄道車両に装着可能である装置、及びそのような装置によって検出されたデータを分析する方法を提供するという未解決の問題が残されている。
特に、車両に搭載された、鉄道設備の複数の診断装置によって検出されたデータの分析方法であって、連続した不具合に起因した運行安全性における相乗効果を評価するためと共に、誤判定検出を防止するために、取得したデータを使用する方法を提供するという問題は未解決である。
【0020】
発明の目標
本発明の目標は、鉄道車両に装着可能な装置で、鉄道設備における複数の異なる種類の起こり得る不具合と、それらの重大度指標とを同時かつ自動的に検出可能なように構成された装置を提供すること、並びに、そのような装置によって測定されたデータを分析する方法で、最先端技術で既知のシステムを使用することによって可能なものよりも、より正確な重大度指標の評価を得ることができる方法を提供すること、である。
【0021】
別の目標によれば、本発明の目的は、検出される誤判定の数を減じ、ほどほどの程度の(moderate)不具合の相乗効果を考慮する、の両方を可能にする装置及び方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明の別の目標は、検出された不具合をその原因と関連付けること、及びその結果として正しい保守作業を計画することを可能にするデータを分析する装置及び方法を提供することである。
【0023】
発明の簡単な記述
発明が一般的な鉄道車両に装着された少なくとも3つの診断モジュールを備えた、鉄道設備の不具合を検出する装置であることから、発明は前述の目標を実現する。3つの診断モジュールは、
- 軌道の少なくとも形状の(幾何学的な)特徴を測定するように構成された第1モジュール(形状モジュール)、
- 車両の少なくとも一箇所において、軌道から車両へ伝送される横及び/又は垂直の加速度を測定するように構成された第2モジュール(加速度モジュール)、
- 軌道要素の画像を得て、異常の存在を検証するためにそれらを分析するように構成された第3モジュール(視覚モジュール)、を備え、
これらのモジュールは、これらを装着した車両が検出を行う位置を通過したときに実行された各検出を関連付け、かつ不具合の無い標準状態に対する検出のズレを表す重大度指標を各検出に関して計算するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
(原文に記載無)
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
好ましい実施形態によれば、本発明によるシステムは、一般的な鉄道車両に装着された少なくとも3つの診断モジュールを備える。即ち、
- 第1モジュールで、形状(幾何学的)モジュールと呼ばれ、軌道の形状パラメータ(レールの離隔寸法、カント、アラインメント(通り変位)、長手方向(高低)レベル、軌道ねじれ、又は軌道の形状測定から導出される他の任意のパラメータ)を測定するために専用の第1モジュール、
- 第2モジュールで、加速度モジュールと呼ばれ、軌道から計測車両に伝送された横及び垂直の加速度を測定するために専用の第2モジュール、
- 第3モジュールで、視覚モジュールと呼ばれ、軌道要素の画像を得て、それらを自動的に分析し、目視による不具合、例えば連結具の欠如あるいは異常、継目の異常、砕石の不十分な量、枕木用の枕木ねじ及び継目用の軌道ボルトの欠如あるいは緩み、を検出する、第3モジュール、を備える。
【0026】
この3つのモジュールは、これらを装着した鉄道車両がそのような検出を行う位置を通過したときに実行された潜在的な(可能性のある)不具合の各検出を関連付けるように構成されている。この関連付けは、GPS信号及び/又は走行距離計によって実行することができる。
【0027】
3つのモジュールはまた、以下において再び重大度指標(hi)と呼ばれる、不具合のない標準状態に対する検出のズレを表す指標を各検出に関して計算するように構成されている。
【0028】
本発明による装置と共に適用可能な、鉄道設備の不具合を検出する診断方法は、以下のステップを備える。即ち、
a) 上述した3つの診断モジュールによって、形状の、加速度の、及び視覚のパラメータを同時に測定すること、
b) 可能性のある(潜在的な)不具合を検出するために、各潜在的な不具合を不具合の検出された位置と関連付けることによって、全ての検出に関して計算された重大度指標を評価すること、
c) 不具合種類に関する少なくとも既定の臨界的しきい値と上述の重大度指標とを比較すること、を備える。
【0029】
この方法は、さらに以下のものを備える点で特徴付けられる。即ち、
e)以下の別の分析
(i) 検出された不具合を検証すること、これにより誤判定であることを排除する、
(ii) 不具合の原因を決定すること、
(iii) たとえ重大度指標がステップd)のしきい値より低い場合でも、その不具合が他の不具合に近いことから、その不具合は危険であると考えられるか否かを検証すること。
【0030】
したがって、e)項目の分析の結果の機能として、既知のシステムに対してより効率的でより正確な方法において、設備の正常な状態に戻すように実行されるべき保守の種類を決定することが可能である。
【0031】
適用例
以下には、明瞭にする目的で上述した方法の幾つかの適用例を説明する。
分離(絶縁)継目の部分的な劣化は、荷重下でレールの局在的降伏を生じ、これは車両の異常な加速度を引き起こす。このような状態では、形状モジュールは、水平面(level)の不具合(レール高さと周囲の起伏面との隙間)を検出し、一方、加速度モジュールは、車両車軸で異常な垂直方向の加速度を検出する。視覚モジュールは、同じ計測区間で、継目の存在を認識して、その構造的剛性を減じた割れ目をそこに検出する。それらの3つの検出(形状の、加速度の、視覚の)の共存は、不具合を検証することを可能にし、よってそれが誤判定であることを排除する。
【0032】
この重複性は、つまり多くの物理的態様を測定するシステムの存在は、誤りの確率を減じる、不具合検出のクロスチェックを可能にし、それによって、危険状態の全体的評価、誤判定の低減、及び不具合を決定する原因の決定を可能にする。
【0033】
システムによって提供される情報に基づいて、保守作業者の視点から、継目は修理される、あるいは交換されるものであり、正しい保守作業は、より効率的でより経済的な方法における保守作業の計画を可能にし、それにより、検出された状態の悪化を回避することは明らかである。実際に、継目の異常な降伏は、車両から軌道に伝送される大きな加速度を引き起こし、このような加速度は、バラスト降伏を引き起こし、それによって、さらに継目の屈曲を増加させる。
【0034】
当該システムが同計測区間において砕石の欠如もさらに検出した場合には、保守作業者は、予めつまりその場所に物理的に行く前に、継目の置き換えに加えて、バラストもまた元の形態に戻すべきであることを確信するだろう。
【0035】
発明によるシステムで実行することができる、不具合の存在、種類、重大度、及び位置についての情報を提供する更なる分析は、単一の不具合重大度に加えて、それらの相互位置をも考慮した指標の定義付けである。それは、次のもので示される。即ち、
- d1、d2、…、d3、走行する鉄道車両によって検出された、それぞれ任意の異なる種類の一つである、連続する不具合の数n、
- x12、x13、x14、…、走行方向における、ある不具合と次の不具合との間の距離、
- h1、h2、…hn、分離されて考えられる各不具合の重大度指標。
【0036】
パラメータ「d」は、不具合の種類のコード化を含むことが明確にされるべきである。
本発明による方法は、多くの分離した不具合の相乗作用の分析を行なうために、他の不具合に対するその相対距離と共に、各不具合の種類及び重大度の関数として、検出された不具合の全体的(包括的)な重大度指標htの計算を提供する。
ht=F(di、hi、xij) (1)
【0037】
第1実施形態によれば、関数Fは、各パラメータの線形結合又は非線形結合であり、別の実施形態によれば、関数Fは、不具合相乗効果を効率的に組み合わせることを可能にするファジィー対数又は他の任意の数学的関数である。
【0038】
例示として、不具合d1は重大度指標h1と共に検出されたと仮定し、また別の不具合d2は、第1の不具合から距離x12で重大度指標h2と共に検出されたと仮定すると、2つの統合された不具合の合計の(全体的な)重大度指標を計算する、考えられる数学的関数は、以下のものである。即ち、
【0039】
括弧の項は、不具合d1に統合された不具合d2の貢献度を検討する減少指数関数である。2つの不具合が同じ軌道区間に存在する場合には、それらの間の距離x12は、0に等しく、よって括弧の項は、1に等しい。したがって、不具合d1に統合された不具合d2の効果は、組み合わされた重大度指標htの計算において十分に考慮される。一方、距離間が増加すると、増幅係数a12が小さいほど、指数関数は速く0に減少する。この係数は、2つの統合された不具合間の距離の相乗効果を定量化する。したがって、第2の不具合の相乗効果が距離により急速に消滅するとき、その係数は、より大きくなるであろう。
【0040】
単なる表示であって限定するものではない例示として、方法の実施形態を以下に記載している。1から5までの段階により、不具合の重大度指標(h1)を評価すると仮定する。即ち、
- 指標の値1は、行く行くはその発生をモニターすること以外に、具体的ないずれの作業も必要としない、ほどほどの不具合に相当する、
- 値2は、3か月内での保守作業の必要性に相当する、
- 値3は、一週間内での保守作業の必要性に相当する、
- 値4は、一日内での保守作業の必要性に相当する、
- 値5は、列車運行の停止及び不具合の即時の除去を必要とする非常に重大な不具合に相当する。
【0041】
その公称値が1435mmであるレールの離隔寸法を考える。上述した論理により、当該システムが、軌道における決められた箇所において、レール離隔値を1440mmに等しいと計測したとき、公称寸法に対する5mmのズレは、重大とは考えられないことから、システムは、h1=1に相当する重大度指標を有する不具合を生成する。この論理をより良く説明するために、もし同じ箇所において、1465mmに相当するレール離隔値が測定されれば、同じ不具合は、重大度指標のうちの4に等しい値が割り当てられるだろう。これは、24時間内に保守作業を要求するだろう。
【0042】
1に相当する重大度指標を有する不具合が発生した箇所に対して、距離x12=0.5mで、視覚システムが右側レールの内側及び外側両方の継手におけるボルトの欠如を検出したと仮定する。
単独で取得されたこの第2の不具合には、重大度指標h2=2が割り当てられ、これは、3か月内での保守作業を意味する。
しかしながら、2つの不具合間の接近した距離は、右側レールにおける2本のボルトの欠如のために、短時間内にレール離隔寸法が増す可能性を予測することができる。しかし、この不具合の発生は、たとえ技術的に予測可能でも、最先端技術で既知の、単独で不具合を考える検出システムによっては示されない。したがって、最先端技術で既知の任意のシステムのうちの1つの使用の場合には、保守作業は、3か月内に着手されるであろう。それにより、レールの離隔寸法の不具合を、運行に関してより大きな危険状態の方へ進めてしまうだろう。
【0043】
本発明によるシステムは、単独では重大と考えられない不具合の存在においてでさえ、代わりに、以前に説明したものによる、合計の重大度指標の計算を提供することによって、より切迫した保守作業の必要性を示す。
【0044】
実際に、不具合の種類d1=レールの離隔寸法の不具合、及び不具合種類d2=継手の欠如の組み合わされた存在に関する増幅比率a12=2を仮定することによって、合計の重大度指標の計算は、さらに報告された式(2)により取得されるだろう。それは、この場合、次の値を与えるだろう。即ち、
【0045】
計算された値htは、2.5よりも大きいので、3に切り上げられ、よって、上述した重大度スケールによって、一週間内における保守作業の必要性が決定される。
【0046】
したがって、単独で取り込むと3か月内に保守作業の必要性を示すであろう2つの近い不具合の存在は、本発明によるシステムによって、一週間内に保守作業を必要とする不具合として検出されるように観測される。
【0047】
ちょうど説明した例の場合では、これは、レール離隔寸法の不具合の発生を劇的に減じる。しかしながら、上述したものは、発明による方法の単に例であり、異なる数値が、発明の目的から外れることなく、増幅定数あるいは重大度指標に割り当てることができることは、明らかである。
図1