(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】医療用台車
(51)【国際特許分類】
A61B 50/13 20160101AFI20221027BHJP
【FI】
A61B50/13
(21)【出願番号】P 2020563284
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050509
(87)【国際公開番号】W WO2020138032
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2018243425
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福野 智大
(72)【発明者】
【氏名】▲土▼井 航
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0127531(US,A1)
【文献】特開平05-293142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/35
A61B 50/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に医療器具を保持する多自由度マニピュレータアームを移動させるポジショナを保持するベースと、
前記ベースを保持する基台と、
前記基台を移動させる一対の前輪および一対の後輪を含む複数の車輪と、
前記基台に設けられ、空圧により伸長した際に接地する接地部を有する複数のスタビライザーと
、
前記一対の後輪の向きを変更するための操舵軸および当該操舵軸に設けられたハンドルを有すると共に前記基台の進行方向後ろ側に配置された操舵部と、
前記基台を収容する第1のケーシングと、
前記第1のケーシングの後方に接続され、前記第1のケーシングよりも狭い幅を有しており、前記操舵軸の一部を収容する第2のケーシングと、を備え、
前記一対の前輪は駆動輪であり、前記一対の前輪と前記一対の後輪との間に一対の補助輪が設けられ、前記一対の補助輪の間隔は前記一対の後輪の間隔よりも大き
く、
前記一対の後輪の間隔は前記一対の前輪の間隔よりも小さく、
前記一対の前輪および前記一対の補助輪は、前記基台に設けられて前記第1のケーシングの下方に配置され、前記一対の後輪は前記第2のケーシングの下方に配置される、医療用台車。
【請求項2】
前記スタビライザーの前記接地部は、前記車輪が当該車輪の接地面から浮かない状態で接地するように構成されている、請求項1に記載の医療用台車。
【請求項3】
前記複数のスタビライザーは、前記基台の前側部分に配された2つの前側スタビライザーと、前記基台の後側部分に配された2つの後側スタビライザーとを含む、請求項1又は2に記載の医療用台車。
【請求項4】
前記一対の前輪は進行方向と直交する方向である直交方向に互いに間隔を空けて配置された左前輪および右前輪を含み、前記後輪は前記直交方向に互いに間隔を空けて配置された左後輪および右後輪を含み、
前記2つの前側スタビライザーは前記直交方向において前記左前輪と前記右前輪との間に配置され、前記後側スタビライザーの一方は前記直交方向において前記左後輪の外側に配置され且つ前記後側スタビライザーの他方は前記直交方向において前記右後輪の外側に配置されている、請求項3に記載の医療用台車。
【請求項5】
前記ハンドルは前記医療用台車の移動量を調整する回転グリップを備える、請求項
1乃至4の何れか1項に記載の医療用台車。
【請求項6】
前記一対の前輪の各々に設けられたブレーキ装置と、緊急時に前記ブレーキ装置の制動を解除するためのブレーキ解除具と、をさらに備える、請求項1乃至
5の何れか1項に記載の医療用台車。
【請求項7】
前記複数のスタビライザーは、それぞれ、進退可能なピストンロッドを有するエアシリンダと、前記ピストンロッドの先端部に設けられた前記接地部と、を備える、請求項1乃至
6の何れか1項に記載の医療用台車。
【請求項8】
前記複数のエアシリンダは空気圧ロック式エアシリンダである、請求項
7に記載の医療用台車。
【請求項9】
前記複数のエアシリンダは前記ピストンロッドを縮める方向に付勢された付勢部材を備える、請求項
7又は
8に記載の医療用台車。
【請求項10】
前記複数のエアシリンダに圧縮空気を供給する圧縮空気供給源をさらに備える、請求項
7乃至
9の何れか1項に記載の医療用台車。
【請求項11】
前記圧縮空気供給源から前記複数のエアシリンダに圧縮空気を供給する状態と供給しない状態とに切り替え可能な電磁弁と、前記電磁弁と前記複数のエアシリンダとの間に配置されて圧縮空気を大気中に排出可能な手動弁と、をさらに備える、請求項
10に記載の医療用台車。
【請求項12】
前記ブレーキ解除具および前記手動弁の両方を作動させるための手動操作具をさらに備える、請求項
11に記載の医療用台車。
【請求項13】
前記複数のスタビライザーの接地動作および接地解除動作の指示を操作者から受け付ける入力装置をさらに備える、請求項1乃至
12の何れか1項に記載の医療用台車。
【請求項14】
前記一対の前輪の各々に対応して、サーボモータと、前記サーボモータの出力を減速させてトルクを増大させる減速機と、をさらに備える、請求項1乃至
13の何れか1項に記載の医療用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具を保持する多自由度マニピュレータアームを移動させるポジショナを移動させる医療用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1又は複数のマニピュレータアームを備え、操作者の操作に基づいて上記マニピュレータアームを動かすことで外科手術を行ったり、所定の作業を行ったりする医療用台車が知られている。このような医療用台車は手術や作業中に台車を固定するためのスタビライザーを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、位置決定ロボットアームを備え、キャスターで移動可能な台車を固定するため足を油圧ジャッキで移動させる神経外科用の多機能ロボット化プラットフォームが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数のスタビライザーアセンブリを備えた医療ロボットシステムが開示されている。スタビライザーアセンブリは、モータによって回転する送りねじと、当該送りねじの回転によって上下に移動するナットに取り付けられた安定脚とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-530268号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/0101118号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の台車においては、油圧回路に接続された油圧ジャッキによって足(スタビライザー)の移動を行っているため、油漏れのリスクを避けることができない。また、上記特許文献2の医療ロボットシステムにおいては、緊急時に安定脚による医療機器の固定を速やかに解除できないという問題がある。特に電源遮断時に複数の安定脚による固定を速やかに解除することは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、油漏れのリスクがなく、緊急時に速やかにスタビライザーによる固定を解除することが可能な医療用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療用台車は、先端部に医療器具を保持する多自由度マニピュレータアームを移動させるポジショナを保持するベースと、前記ベースを保持する基台と、前記基台を移動させる一対の前輪および一対の後輪を含む複数の車輪と、前記基台に設けられ、空圧により伸長した際に接地する接地部を有する複数のスタビライザーと、前記一対の後輪の向きを変更するための操舵軸および当該操舵軸に設けられたハンドルを有すると共に前記基台の進行方向後ろ側に配置された操舵部と、前記基台を収容する第1のケーシングと、前記第1のケーシングの後方に接続され、前記第1のケーシングよりも狭い幅を有しており、前記操舵軸の一部を収容する第2のケーシングと、を備え、前記一対の前輪は駆動輪であり、前記一対の前輪と前記一対の後輪との間に一対の補助輪が設けられ、前記一対の補助輪の間隔は前記一対の後輪の間隔よりも大きく、前記一対の後輪の間隔は前記一対の前輪の間隔よりも小さく、前記一対の前輪および前記一対の補助輪は、前記基台に設けられて前記第1のケーシングの下方に配置され、前記一対の後輪は前記第2のケーシングの下方に配置されるものである。
【0009】
本発明に従えば、スタビライザーは空圧により伸縮するものであるため、油圧により伸縮を行うスタビライザーのように油漏れのリスクがなく、手術現場で用いる上で好ましい。また、上記スタビライザーの伸長状態を保持する空圧を開放するだけで、緊急時に速やかに当該スタビライザーを収縮させることができ、接地部を室内フロア等の面から離すことができる。
【0010】
上記発明において、前記スタビライザーの前記接地部は、前記車輪が当該車輪の接地面から浮かない状態で接地するように構成されていることが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、スタビライザーの空気を抜く際、すなわちスタビライザーを収縮させる際に、車輪が接地していないことによる医療用台車への衝撃が生じることを防止することができる。
【0012】
上記発明において、前記複数のスタビライザーは、前記基台の前側部分に配された2つの前側スタビライザーと、前記基台の後側部分に配された2つの後側スタビライザーとを含んでもよい。
【0013】
上記構成に従えば、2つの前側スタビライザーが伸長し且つ2つの後側スタビライザーが伸長した状態で医療用台車を安定して支持することができる。
【0014】
上記発明において、前記一対の前輪は進行方向と直交する方向である直交方向に互いに間隔を空けて配置された左前輪および右前輪を含み、前記後輪は前記直交方向に互いに間隔を空けて配置された左後輪および右後輪を含み、前記2つの前側スタビライザーは前記直交方向において前記左前輪と前記右前輪との間に配置され、前記後側スタビライザーの一方は前記直交方向において前記左後輪の外側に配置され且つ前記後側スタビライザーの他方は前記直交方向において前記右後輪の外側に配置されていてもよい。
【0015】
上記構成に従えば、2つの前側スタビライザーを上記直交方向において左前輪と右前輪との間に配置することで、前側スタビライザーの一方を同方向において左前輪の外側に配置し且つ前側スタビライザーの他方を同方向において右前輪の外側に配置する場合に比べて、車輪の回転動作の邪魔にならない。
【0016】
また、後側スタビライザーの一方を上記直交方向において左後輪の外側に配置し且つ後側スタビライザーの他方を同方向において右後輪の外側に配置する構成を採用することで、左後輪と右後輪との間隔を小さく設計することができる。これにより、操作者により把持されるレバーを後輪の上方に設けた場合には、上記の通り後輪同士の間隔が小さいので、操作者は医療用台車の進行方向を小さい力で変更することができる。
【0018】
上記構成に従えば、一対の後輪の間隔は一対の前輪の間隔よりも小さく設定されているため、一対の後輪の向きをハンドルにより変更する際の操作性を向上することができる。
【0020】
前記ハンドルは前記医療用台車の移動量を調整する回転グリップを備えてもよい。また、医療用台車は、前記一対の前輪の各々に対応して、サーボモータと、前記サーボモータの出力を減速させてトルクを増大させる減速機と、をさらに備えてもよい。
【0021】
上記発明において、医療用台車は、前記一対の前輪の各々に設けられたブレーキ装置と、緊急時に前記ブレーキ装置の制動を解除するためのブレーキ解除具と、をさらに備えてもよい。
【0022】
上記構成に従えば、ブレーキ装置の制動の解除が必要な緊急時にブレーキ解除具により容易かつ迅速に上記解除を行うことができる。
【0023】
上記発明において、前記複数のスタビライザーは、それぞれ、進退可能なピストンロッドを有するエアシリンダと、前記ピストンロッドの先端部に設けられた前記接地部と、を備えてもよい。
【0024】
上記構成に従えば、エアシリンダによって容易にピストンロッドを伸長させて接地部を接地させることができる。
【0025】
上記発明において、前記複数のエアシリンダは空気圧ロック式エアシリンダであってもよい。
【0026】
上記構成に従えば、各エアシリンダにおける空気の給排をロックすることができる。これにより、各スタビライザーの伸長状態を保持(ロック)することが可能となる。
【0027】
上記発明において、前記複数のエアシリンダは前記ピストンロッドを縮める方向に付勢された付勢部材を備えてもよい。
【0028】
上記構成に従えば、各スタビライザーのエアシリンダ内の空気を開放する場合に、付勢部材による付勢力によってピストンロッドを収縮させることができ、もってスタビライザーの接地状態を解除することができる。
【0029】
上記発明において、前記複数のエアシリンダに圧縮空気を供給する圧縮空気供給源をさらに備えてもよい。
【0030】
上記構成に従えば、一つの圧縮空気供給源により複数のエアシリンダに圧縮空気を供給することができる。
【0031】
上記発明において、医療用台車は、前記圧縮空気供給源から前記複数のエアシリンダに圧縮空気を供給する状態と供給しない状態とに切り替え可能な電磁弁と、前記電磁弁と前記複数のエアシリンダとの間に配置されて圧縮空気を大気中に排出可能な手動弁と、をさらに備えてもよい。
【0032】
上記構成に従えば、電源遮断時等の非常時に手動弁により各スタビライザーのエアシリンダ内の空気を開放することができる。これにより、手動的方法によりスタビライザーを収縮させてその接地状態を解除することができる。これにより、電源遮断時においても医療用台車を移動し得る状態にすることができる。
【0033】
上記発明において、医療用台車は、前記ブレーキ解除具および前記手動弁の両方を作動させるための手動操作具をさらに備えてもよい。
【0034】
上記構成に従えば、電源遮断時等の非常時に、手動操作具によりブレーキ解除具および手動弁の両方を容易に作動させることができる。これにより、ブレーキ装置の制動を解除することができると共にスタビライザーの接地状態をも解除することができる。
【0035】
上記発明において、医療用台車は、前記複数のスタビライザーの接地動作および接地解除動作の指示を操作者から受け付ける入力装置をさらに備えてもよい。
【0036】
上記構成に従えば、操作者は入力装置を用いて、各スタビライザーの接地動作および接地解除動作を容易に指示することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、油漏れのリスクがなく、緊急時に速やかにスタビライザーによる固定を解除することが可能な医療用台車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療用台車が用いられる外科手術システムを示す図である。
【
図2】
図1の医療用マニピュレータのマニピュレータアームの構成を示す図である。
【
図3】
図1の医療用マニピュレータにおける制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る医療用台車を示す斜視図である。
【
図5】
図4のケーシングを取り外した状態の医療用台車を示す斜視図である。
【
図6】医療用台車における制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図10】(a)はブレーキ装置の制動を説明するための断面図であり、(b)はブレーキ装置の制動の解除を説明するための断面図である。
【
図12】スタビライザーの伸縮を実現する空圧回路の図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一実施形態に係る医療用台車について図面を参照して説明する。以下に説明する医療用台車は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の医療用台車70は、例えば、ロボット支援手術やロボット遠隔手術などのように、手術台202上の患者201に内視鏡外科手術を施す際に使用されるシステムである外科手術システム100において設けられるものである。最初に全体枠である外科手術システム100について説明し、その後、本実施形態の医療用台車70について説明する。
【0041】
外科手術システム100は、患者側システムである医療用マニピュレータ1と、この医療用マニピュレータ1を操るための指示装置2とを備えている。指示装置2は医療用マニピュレータ1から離れて配置され、医療用マニピュレータ1は指示装置2によって遠隔操作される。執刀医である操作者203は医療用マニピュレータ1に行わせる動作を指示装置2に入力し、指示装置2はその動作指令を医療用マニピュレータ1に送信する。医療用マニピュレータ1は、指示装置2から送信された動作指令を受け取り、この動作指令に基づいて医療用マニピュレータ1が具備する内視鏡アセンブリやインストゥルメントなどの長軸状の医療器具4を動作させる。
【0042】
指示装置2は、外科手術システム100と操作者203とのインターフェースを構成し、医療用マニピュレータ1を操作するための装置である。指示装置2は、手術室内に又は手術室外に配置されている。指示装置2は、操作者203が動作指令を入力するための操作用マニピュレータアーム51、操作ペダル52、タッチパネル53、内視鏡アセンブリで撮影された画像を表示するモニタ54、操作者203の顔の高さ位置にモニタ54を支持する支持アーム55、およびタッチパネル53が配されたバー56等を含む。操作者203は、モニタ54で患部を視認しながら、操作用マニピュレータアーム51および操作ペダル52を操作して指示装置2に動作指令を入力する。指示装置2に入力された動作指令は、有線又は無線により医療用マニピュレータ1のコントローラ600に伝達される。医療用マニピュレータ1はコントローラ600により動作制御される。なお、コントローラ600は例えばマイクロコントローラ等のコンピュータにより構成されている。医療用台車70内部には、コントローラ600および動作制御に用いられる制御プログラムおよび各種データが記憶される記憶部602が格納されている。また、医療用台車70には、主に施術前におけるポジショナ7、アームベース5および複数のアーム3の位置を移動させたり、姿勢を変更させたりするための操作を行うための入力装置106が設けられている。
【0043】
医療用マニピュレータ1は、外科手術システム100と患者とのインターフェースを構成する。医療用マニピュレータ1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。
【0044】
図1において、医療用マニピュレータ1は、ポジショナ7と、ポジショナ7の先端部に取り付けられた長尺状のアームベース5と、アームベース5にその基端部が着脱可能に取り付けられた複数(本実施形態では4本)の多自由度マニピュレータアーム(以下、単にアームと記載)3とを備えている。医療用マニピュレータ1は複数のアーム3が折り畳まれた収納姿勢をとるように構成されている。
【0045】
ポジショナ7は、垂直多関節形ロボットとして構成されており、手術室の所定位置に配置された医療用台車70のケーシング71上に配されたベース20に設けられており、アームベース5の位置を3次元的に移動させることができる。アーム3およびアームベース5は、図略の滅菌ドレープで覆われ、手術室内の滅菌野から遮蔽されている。
【0046】
ポジショナ7は、台車本体71に取り付けられるベース90と、ベース90から先端部に向けて順次連結された複数のポジショナリンク部を備えている。ポジショナ7は、一のポジショナリンク部が他の一のポジショナリンク部に対して回動するように順に連結されることにより複数の関節部を構成する。複数のポジショナリンク部は、第1リンク91~第6リンク96を含む。複数の関節部は、第1関節J71~第7関節J77を含む。なお、本実施の形態における複数の関節部は、回転軸を備えた回転関節により構成されているが、少なくとも一部の関節部が直動関節により構成されてもよい。
【0047】
より詳細には、ベース90の先端部に、捩り(ロール)関節である第1関節J71を介して第1リンク91の基端部が連結されている。第1リンク91の先端部に、曲げ(ピッチ)関節である第2関節J72を介して第2リンク92の基端部が連結されている。第2リンク92の先端部に、曲げ関節である第3関節J73を介して第3リンク93の基端部が連結されている。第3リンク93の先端部に、捩り関節である第4関節J74を介して第4リンク94の基端部が連結されている。第4リンク94の先端部に、曲げ関節である第5関節J75を介して第5リンク95の基端部が連結されている。第5リンク95の先端部に、捩り関節である第6関節J76を介して第6リンク96の基端部が連結されている。第6リンク96の先端部に、捩り関節である第7関節J77を介してアームベース5のポジショナ取り付け部5aが連結されている。これにより、ポジショナ7は、複数の自由度(7自由度)を有する多軸関節(7軸関節)アームとして構成される。
【0048】
複数のアーム3のうちアーム3Aの先端部には、医療器具4として、例えば取り替え用のインストゥルメント(例えば鉗子など)が保持される。アーム3Bの先端部には、医療器具4として、例えば鉗子などのインストゥルメントが保持される。また、アーム3Cの先端部には、医療器具4として、例えば内視鏡アセンブリが保持される。アーム3Dの先端部には、医療器具4として、例えば取り替え用の内視鏡アセンブリが保持される。
【0049】
医療用マニピュレータ1において、アームベース5は、複数のアーム3の拠点となるハブとしての機能を有している。本実施形態では、ポジショナ7およびアームベース5によって、複数のアーム3を移動可能に支持するマニピュレータアーム支持体Sが構成されている。
【0050】
医療用マニピュレータ1においては、ポジショナ7から医療器具4まで各要素が一連に繋がっている。以下、本明細書では、上記一連の要素において、ポジショナ7へ向かう側の端部を基端部といい、その反対側の端部を先端部という。
【0051】
図2に示すように、医療器具4がインストゥルメントである場合、当該医療器具4はその基端部に設けられた駆動ユニット65を有している。このインストゥルメントの先端部に設けられたエンドエフェクタは、動作する関節を有する器具(例えば、鉗子、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステープルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、および、クリップアプライヤー等)、ならびに、関節を有しない器具(例えば、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、および、吸引オリフィス等)を含む群より選択される。
【0052】
医療用マニピュレータ1を用いた施術においては、最初に、医療用台車70が助手や看護師等の医療従事者によって手術室の所定位置に移動される。この場合、所定位置に移動された医療用台車70は、後述の構成によって、予期せぬ位置に移動しないように停止される。詳細については後述する。
【0053】
次いで、医療従事者は、入力装置106に含まれるタッチパネルを操作することにより、アームベース5と手術台202又は患者201とが所定の位置関係となるように、ポジショナ7を動作させてアームベース5の位置決めを行う。続いて、コントローラ600は、患者201の体表に留置されたスリーブ(カニューレスリーブ)と医療器具4とが所定の初期位置関係となるように、各アーム3を動作させて医療器具4の位置決めを行う。なお、ポジショナ7の位置決め動作と各アーム3の位置決め動作とは同時に行われてもよい。そして、コントローラ600は、原則としてポジショナ7を静止させた状態で、指示装置2からの動作指令に応じて、各アーム3により医療器具4を動作させて適宜変位および姿勢変化させつつ施術を行う。
【0054】
次に、アーム3の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、アーム3は、アーム本体30と、アーム本体30の先端部に連結された並進ユニット35とを備え、基端部に対し先端部を3次元空間内で移動させることができるように構成されている。なお、本実施の形態では、医療用マニピュレータ1が具備する複数のアーム3はいずれも同様または類似の構成を有するが、複数のアーム3のうち少なくとも1本が他のアームと異なる構成を有してもよい。アーム3の先端部には、医療器具4を保持可能なホルダ36が設けられている。医療器具4は、基端部に設けられた駆動ユニット65と、先端部に設けられたエンドエフェクタ(処置具)66と、駆動ユニット65とエンドエフェクタ66との間を繋ぐ細長いシャフト67とを有している。駆動ユニット65、シャフト67、およびエンドエフェクタ66は長軸方向Dtに沿って配置される。ホルダ36は、サーボモータM39を内蔵しており、取り付けられた医療器具4の駆動ユニット65に設けられた回転体をサーボモータM39によって回転させるように構成されている。駆動ユニット65は回転体が回転することによりエンドエフェクタ66を動作させるように構成されている。
【0055】
アーム3はアームベース5に対し着脱可能に構成されている。アーム3は、洗浄処理および滅菌処理のための耐水性、耐熱性、および耐薬品性を備えている。アーム3の滅菌処理には様々な方法があるが、例えば、高圧蒸気滅菌法、EOG滅菌法、消毒薬による化学滅菌法などが選択的に用いられる。
【0056】
アーム本体30は、アームベース5に着脱可能に取り付けられるベース80と、ベース80から先端部に向けて順次連結された第1リンク81~第6リンク86とを含む。より詳細には、ベース80の先端部に、捩り関節J31を介して第1リンク81の基端部が連結されている。第1リンク81の先端部に、曲げ関節J32を介して第2リンク82の基端部が連結されている。第2リンク82の先端部に、捩り関節J33を介して第3リンク83の基端部が連結されている。第3リンク83の先端部に、曲げ関節J34を介して第4リンク84の基端部が連結されている。第4リンク84の先端部に、捩り関節J35を介して第5リンク85の基端部が連結されている。第5リンク85の先端部に、曲げ関節J36を介して第6リンク86の基端部が連結されている。第6リンク86の先端部に、曲げ関節J37を介して並進ユニット35の基端部が連結されている。これにより、アーム3は、複数の自由度(7自由度)を有する多軸関節(7軸関節)アームとして構成される。したがって、アーム3は、当該アーム3の先端部の位置を変化させることなく姿勢を変えることができるようになっている。
【0057】
アーム本体30の外殻は、主にステンレスなどの耐熱性および耐薬品性を有する部材で形成されている。また、リンク同士の連結部には、耐水性を備えるための図略のシールが設けられている。このシールは、高圧蒸気滅菌法に対応する耐熱性や、消毒薬に対する耐薬品性を備えている。なお、リンク同士の連結部において、連結される一方のリンクの端部の内側に他方のリンクの端部が挿入されており、これらのリンクの端部同士の間を埋めるようにシールが配置されることによって、シールが外観から隠蔽されている。これにより、シールとリンクとの間から水、薬液、蒸気の浸入が抑制されている。
【0058】
並進ユニット35は、その先端部に取り付けられたホルダ36を長軸方向Dtに並進移動させることにより、このホルダ36に取り付けられた医療器具4をシャフト67の延在方向に並進移動させる。
【0059】
並進ユニット35は、アーム本体30の第6リンク86の先端部に、曲げ関節J37を介して連結される基端側リンク61と、先端側リンク62と、基端側リンク61と先端側リンク62との間で連動して動く連結リンク63と、連動機構(図略)とを有する。曲げ関節J37は長軸方向Dtに直交する方向に延びている。また、並進ユニット35の先端部、すなわち先端側リンク62のホルダ36には医療器具4の駆動ユニット65に設けられた回転体を回転させるためのサーボモータM39が内蔵されている。並進ユニット35の駆動源は基端側リンク61に設けられている。連結リンク63は長軸方向Dtに沿って延びている。このような構成において、並進ユニット35は、連動機構により、基端側リンク61と連結リンク63との長軸方向Dtにおける相対位置が変化するとともに、連結リンク63と先端側リンク62との長軸方向Dtにおける相対位置が変化することにより、基端側リンク61に対して先端側リンク62に設けられたホルダ36に保持された医療器具4の長軸方向Dtに関する位置を変化させることができるようになっている。
【0060】
続いて、
図3に示すように、アーム3には、各関節J31~J37に対応して、駆動用のサーボモータM31~M37、サーボモータM31~M37の回転角を検出するエンコーダE31~E37、および、サーボモータM31~M37の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)が設けられる。なお、
図3では、関節J31~J37のうち、捩り関節J31と曲げ関節J37との制御系統が代表的に示され、その他の関節J33~J36の制御系統は省略されている。さらに、並進ユニット35には、並進動作のためのサーボモータM38と、医療器具4の駆動ユニット65に設けられた回転体を回転させるためのサーボモータM39と、サーボモータM38,M39の回転角を検出するエンコーダE38,E39と、サーボモータM38,M39の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)とが設けられる。
【0061】
また、
図3に示すように、ポジショナ7には、ポジショナ7の各関節J71~J77に対応して、駆動用のサーボモータM71~M77、サーボモータM71~M77の回転角を検出するエンコーダE71~E77、および、サーボモータM71~M77の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)が設けられる。なお、
図3においては、ポジショナ7の関節J71~J77のうち、関節J71,J77の制御系統が代表的に示され、その他の関節J72~J76の制御系統は省略されている。また、
図3に示すように、医療用台車70には、前輪40および41に対応して、駆動用のサーボモータM40aおよびM40bと、サーボモータM40aおよびM40bの回転角を検出するエンコーダE40aおよびE40bと、サーボモータM40aおよびM40bの出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)とが設けられる。
【0062】
コントローラ600は、動作指令に基づいて複数のアーム3の移動を制御するアーム制御部601と、ポジショナ7の移動および医療用台車70の前輪40,41の駆動を制御するポジショナ制御部603とを含む。アーム制御部601には、サーボ制御部C31~C37,C38,C39が電気的に接続されている。サーボ制御部C31~C37,C38,C39には、エンコーダE31~E37,E38,E39が電気的に接続されている。また、ポジショナ制御部603には、サーボ制御部C71~C79が電気的に接続されている。サーボ制御部C71~C79には、エンコーダE71~E77,E40a,E41aが電気的に接続されている。
【0063】
指示装置2に入力された動作指令に基づいて、アーム制御部601にアーム3の先端部の位置姿勢指令が入力される。アーム制御部601は、位置姿勢指令とエンコーダE31~E37,E38,E39で検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成して出力する。この位置指令値を取得したサーボ制御部C31~C37,C38,C39は、エンコーダE31~E37,E38,E39で検出された回転角および位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成して出力する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM31~M37,M38,M39へ供給する。このようにして、アーム3の先端部が、位置姿勢指令と対応する位置および姿勢に到達するように、各サーボモータM31~M37,M38,M39がサーボ制御される。
【0064】
コントローラ600には、アーム制御部601にデータを読み出し可能な記憶部602が設けられている。記憶部602には、指示装置2を介して入力された手術情報が予め記憶されている。
【0065】
ポジショナ制御部603は、入力装置106から入力された準備位置の設定等に関する動作指令とエンコーダE71~E77で検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成して出力する。この位置指令値を取得したサーボ制御部C71~C77は、エンコーダE71~E77で検出された回転角および位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成して出力する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM71~M77へ供給する。このようにして、ポジショナ7が、位置指令値と対応する位置・姿勢に到達するように、各サーボモータM71~M77がサーボ制御される。
【0066】
次に、本実施形態の医療用台車70について説明する。
図4に示すように、医療用台車70はケーシング71を備えている。また、
図5に示すように、医療用台車70は、上記のケーシング71内に少なくとも一部が設けられる基台(シャーシ)80を備えている。ケーシング71は、ケーシング構成部71aと、ケーシング構成部71bと、ケーシング構成部71cとを有している。ケーシング構成部71aの底面は、ケーシング構成部71b,71cの各底面よりも下側に位置している。なお、
図1のポジショナ7を保持するベース20は基台80に保持されている。なお、
図4においては、ポジショナ7から医療器具4にかけての各構成要素を省略して図示している。
【0067】
ケーシング構成部71bは、ケーシング構成部71aに接続されて当該ケーシング構成部71aの後側(医療用台車70の進行方向後側。以下同じ。)に配されている。ケーシング構成部71bは、進行方向と直交する方向の幅がケーシング構成部71aよりも短く形成されている。ケーシング構成部71bは、ケーシング構成部71aの、進行方向と直交する方向の中央部分に接続されている。ケーシング構成部71bの下方には、後述の右後輪43および左後輪44が設けられている。
【0068】
ケーシング構成部71bには、操舵軸46およびハンドル47を有する操舵部48が設けられている。操舵軸46は立設された状態で設けられている。操舵軸46は右後輪43および左後輪44の向きを変更するための部材である。操舵軸46には、略水平方向に延在するハンドル47が設けられている。医療従事者は、ハンドル47を把持して医療用台車70を所定位置まで移動させることができる。また、医療従事者はハンドル47により医療用台車70を操舵することができ、これにより右後輪43および左後輪44の向きを変えることができる。それにより、医療用台車70の進行方向を変更することができる。また、ハンドル47の近傍には、ユーザインターフェースである入力装置106が設けられている。入力装置106は例えばタッチパネルで構成される。
【0069】
また、ハンドル47には図略の回転グリップが設けられており、医療従事者は当該回転グリップを操作することで、医療用台車70を、その移動量を調整しながら移動させることができる。
【0070】
また、ケーシング構成部71cは、ケーシング構成部71aに接続されて当該ケーシング構成部71aの前側に配されている。ケーシング構成部71cは、進行方向と直交する方向の幅がケーシング構成部71aと同等に形成されている。ケーシング構成部71cは、その両側側面がケーシング構成部71aの両側側面とそれぞれ面一になるようケーシング構成部71aに接続されている。ケーシング構成部71cの下方には、後述の右前輪40および左前輪41が設けられている。
【0071】
図4および
図8に示すように、医療用台車70は、ケーシング71を移動させるための複数の車輪を備えている。詳しくは、医療用台車70は、進行方向と直交する方向に互いに間隔を空けて配置された右前輪40および左前輪41と、進行方向と直交する方向に互いに間隔を空けて配置された右後輪43および左後輪44とを有している。また、前後方向において、右前輪40および左前輪41と、右後輪43および左後輪44との間には、
図7および
図8に示すように、一対の補助輪110が設けられている。この一対の補助輪110の間隔は、右後輪43と左後輪44との間隔よりも大きくなるように設定されている。さらに、右前輪40の外側および左前輪41の外側には、ケーシング構成部71cの底面に支持された板状のカバー部材72がそれぞれ設けられている。以下、右前輪40、左前輪41、右後輪43および左後輪44を車輪と総称する場合がある。なお、図示は省略しているが、右前輪40の内側および左前輪41の内側にもケーシング構成部71cの底面に支持された板状のカバー部材がそれぞれ設けられている。
【0072】
右前輪40には図略の駆動軸を介して駆動用サーボモータM40aが接続されている。同様に、左前輪41には図略の駆動軸を介して駆動用サーボモータM41aが接続されている。これらの駆動用サーボモータM40a,M41aがポジショナ制御部603(
図3および
図6参照)によって制御されることで、右前輪40および左前輪41が回転駆動されるようになっている。また、右後輪43と左後輪44とは連結軸45を介して連結されている。右後輪43および左後輪44は医療従事者による操舵部48の操作に基づいて回転駆動される。それにより、医療用台車70が移動するようになっている。
【0073】
ここで、
図5に示すように、医療用台車70の基台80は骨組み状に構成されている。詳細には、基台80は、前後方向(進行方向)に延在し且つ前後方向に直交する方向(左右方向)に互いに間隔を空けて配置された一対の縦骨部材81と、左右方向に延在し且つ一方の縦骨部材81と他方の縦骨部材81とに接続された複数の横骨部材82とを含む。また、縦骨部材81および横骨部材82の組み合わせ構造は上下方向に一対設けられている。基台80は、さらに、上側の縦骨部材と下側の縦骨部材81とに接続された複数の上下骨部材83を含む。なお、
図5では、基台80の説明のために、ケーシング71の図示を省略している。
【0074】
基台80の上側に配置された2つの横骨部材82に亘って板状のベースプレート84が設けられている。ポジショナ7を保持するベース20はベースプレート84に取り付けられている。なお、ベースプレート84はケーシング構成部71aに覆われるように構成されている。
【0075】
前側に配置された一対の上下骨部材83には、平面視で例えばコ字状(略U字状)の骨部材87が接続されている。骨部材87の一方の端部には左方向に延在する骨部材85が接続され、骨部材87の他方の端部には右方向に延在する骨部材86が接続されている。これらの骨部材85,86には、伸縮可能に構成された空圧式の一対の前側スタビライザー11,12が設けられている。前側スタビライザー11と前側スタビライザー12とは、進行方向と直交する方向において互いに間隔を空けて配されている。また、前側スタビライザー11,12は、進行方向と直交する方向において右前輪40と左前輪41との間に配置されている。
【0076】
前側スタビライザー11は、エアシリンダ11aと、エアシリンダ11aに対して空圧により進退可能に設けられたピストンロッド11bと、ピストンロッド11bの先端側に設けられた例えば円板状の接地部11cとを有している。同様に、前側スタビライザー12は、エアシリンダ12aと、エアシリンダ12aに対して空圧により進退可能に設けられたピストンロッド12bと、ピストンロッド12bの先端側に設けられた例えば円板状の接地部12cとを有している。また、本実施形態において、前側スタビライザー11の接地部11cおよび前側スタビライザー12の接地部12cの少なくとも一部は、右前輪40および左前輪41の最前部よりも進行方向前側に配置されている。
【0077】
また、基台80の後側の左右の上下骨部材83には、伸縮可能に構成された空圧式の一対の後側スタビライザー13,14が設けられている。後側スタビライザー13と後側スタビライザー14とは、進行方向と直交する方向において互いに間隔を空けて配されている。また、後側スタビライザー13は上記直交方向において右後輪43の外側に配置され、後側スタビライザー14は上記直交方向において左後輪44の外側に配置されている。すなわち、後側スタビライザー13,14は、上記直交方向において当該後側スタビライザー13と後側スタビライザー14とによって右後輪43および左後輪44を挟むように配されている。なお、基台80の骨組み形状については
図5に示した形状に限定されるものではない。また、前側スタビライザー11,12および後側スタビライザー13,14については、基台80に設けられていればよく、それらの配置部位(基台80における配置部位)も
図5の態様に限定されるものではない。
【0078】
後側スタビライザー13,14は、前側スタビライザー11,12の構成と同様に、エアシリンダ13a,14a(
図12)と、エアシリンダ13a,14aに対して空圧により進退可能に設けられたピストンロッド13b,14b(
図12)と、ピストンロッド13b,14bの先端側に設けられた例えば円板状の接地部13c,14cとをそれぞれ有している。
【0079】
このような構成において、医療用台車70の移動時には、接地部11c,12c,13c,14cが接地面Gr(
図7参照)から浮いた状態となるように各ピストンロッド11b,12b,13b,14bが収縮するように構成されている。これにより、医療用台車70の移動の妨げにならないようになっている。
【0080】
これに対して、医療用台車70を所望位置に移動させた後、当該医療用台車70を所望位置から移動しないように止める際には、
図7に示すように、接地部11c,12c,13c,14cが接地面Grに接地するようにピストンロッド11b,12b,13b,14bが伸長するように構成されている。この場合、接地部11c,12c,13c,14cは、右前輪40、左前輪41、右後輪43および左後輪44が接地面Grから浮かない状態(つまり、各車輪が接地面Grに接地した状態)で接地面Grに接地するようになっている。
【0081】
次に、本実施形態の医療用台車70は、
図6に示すように、当該医療用台車70の制御系統の構成要素として、上述の操舵部48、入力装置106、駆動用サーボモータM40a,M41aおよびスタビライザー11,12,13,14の他に、ポジショナ制御部603と、ブレーキ装置26と、電磁弁130,131,132と、圧縮空気供給源125とを備えている。ブレーキ装置26は、右前輪40および左前輪41に対応して設けられ、右前輪40および左前輪41を制動しロックする。なお、電磁弁130,131,132および圧縮空気供給源125については後述する。
【0082】
ここで、上述の入力装置106は、
図9に示すように、タッチパネルディスプレイ101、非常停止スイッチ102、電源スイッチ103、トリガスイッチ104、およびジョイスティック105を備える。
【0083】
タッチパネルディスプレイ101はパネル状の表示器と接触式の入力器とを併せ備える。医療従事者はタッチパネルディスプレイ41に表示されるボタン等の標示を押圧すると、タッチパネルディスプレイ41は当該標示に対応した操作の入力を受け付ける。タッチパネルディスプレイ41が受け付けた操作の入力の情報はポジショナ制御部603に送信される。
【0084】
また、医療従事者はタッチパネルディスプレイ41に表示される所定のボタンを押圧することで、スタビライザー11,12,13,14の接地動作および接地解除動作の指示をポジショナ制御部603に与えることができる。この場合、入力装置106は、スタビライザー11,12,13,14の接地動作および接地解除動作の指示を医療従事者から受け付け、その指示をポジショナ制御部603に送信する。ポジショナ制御部603は、医療用台車70が停止した状態で接地部11c,12c,13c,14cが接地面Grに接地するようスタビライザー11,12,13,14の伸長動作を制御する。このように、本実施形態では、医療従事者は入力装置106を用いてスタビライザー11,12,13,14の伸縮動作(接地動作および接地解除動作)を指示することができる。
【0085】
非常停止スイッチ102の接点はノーマルクローズタイプが採用されている。非常停止スイッチ102が押圧されていないときは接点が閉じて安全状態を示す電流が流れ、非常停止スイッチ102が所定時間(例えば数秒)連続して押圧されることにより接点が開いて電流が遮断される。医療用マニピュレータ1の使用中に非常停止スイッチ102が押圧されることで、非常停止の指令がコントローラ600に送信される。コントローラ600は、非常停止の指令を取得して医療用マニピュレータ1の動作を停止させる。
【0086】
電源スイッチ103は、所定時間(例えば数秒)連続して押圧することによりオンとオフとを切り替えることができる。電源スイッチ103がオンに切り替われば、入力装置106に電力が供給されて入力装置106が起動する。また、電源スイッチ103がオフに切り替われば、入力装置106への電力の供給が停止されて入力装置106が停止する。
【0087】
トリガスイッチ104は、いわゆるデッドマンスイッチであり、医療従事者がトリガスイッチ104を押圧している間だけオンとなり、押圧力を除けばオフとなる。トリガスイッチ104がオンの間のみジョイスティック105の操作が有効となり、トリガスイッチ104がオフの間はジョイスティック105の操作が無効となる。コントローラ600は、トリガスイッチ104のオン/オフを検出する。なお、トリガスイッチ104は、3ポジションのイネーブルスイッチであってもよい。
【0088】
ジョイスティック105は、操作量および移動方向に関する操作情報の入力を受け付ける操作具である。本実施形態においてジョイスティック105は、前後左右の傾倒と、正逆回転との可能なノブ状又はレバー状を呈する。ジョイスティック105の傾倒方向が入力される移動方向に対応し、ジョイスティック105の回転方向が入力される回転方向に対応し、ジョイスティック105のゼロポジションからの傾倒時間および回転時間が入力される操作量に対応する。ジョイスティック105が受け付けた操作の入力の情報はコントローラ600に送信される。コントローラ600は、トリガスイッチ104がオンの間のみ、ジョイスティック105からの入力を受け付ける。入力装置106に設けられた各種の入力器は、受け付けた操作の入力を取得して、入力された操作に対応した情報をコントローラ600に送信する。コントローラ600は入力装置106から取得した情報に基づいて医療用マニピュレータ1を動作させる。
【0089】
図9に示すように、ハンドル47には、緊急時にブレーキ装置26の制動を解除するためのブレーキ解除具としての解除スイッチ47aが設けられている。医療従事者がこの解除スイッチ47aを押下すると、例えば無励磁作動型の電磁ブレーキであるブレーキ装置26に電流が流れ、当該ブレーキ装置26の制動が解除されるようになっている。なお、医療用台車70が停止状態において、ブレーキ装置26による制動は常時機能しており、医療従事者はハンドル47を操作する際に上記の解除スイッチ47aを押下してブレーキ装置26の制動を解除するようになっている。以下、ブレーキ装置26の制動および当該制動の解除を実現する構成について、一例を挙げて説明する。
【0090】
ブレーキ装置26は、上述のように例えば無励磁作動型の電磁ブレーキで構成されている。なお、ブレーキ装置26の構成については無励磁作動型の電磁ブレーキに限定されるものではなく、他のブレーキ装置を採用してもよい。無励磁作動型の電磁ブレーキは公知であるため、以下簡単に説明する。
図10(a),(b)に示すように、ブレーキ装置26は、ステータ26aと、コイル26bと、トルクスプリング26cと、アーマチュア26dと、駆動用サーボモータM40a,M41aの出力軸(前輪回転軸)に連結されたロータ26eと、プレート26fとを備えている。
【0091】
このような構成において、コイル26bに電流が供給されない状態では、
図10(a)に示すように、トルクスプリング26cによりアーマチュア26dが同図右方向に付勢されることで、ロータ26eがプレート26fとアーマチュア26dとにより挟持された状態となる。これにより、駆動用サーボモータM40a,M41aの出力軸は、回転不能に拘束される。この場合、ステータ26aとアーマチュア26dとの間には隙間SPが生じている。これに対して、コイル26bに電流が供給されると、
図10(b)に示すように、当該コイル26bに磁力が生じ、その磁力によりアーマチュア26dがトルクスプリング26cの付勢力に抗してステータ26a側に引き寄せられる。この場合、ステータ26aとアーマチュア26dとの上記隙間SPはなくなる。これによって、ロータ26eは、プレート26fとアーマチュア26dとにより挟持されなくなり、フリーの状態となる。これにより、ロータ26eは、その制動が解除されて回転動作を行うことが可能となる。医療従事者が上述の解除スイッチ47aを押下すると、コイル26bに電流が流れて、
図10(b)の説明の通りブレーキ装置26の制動を解除することができるようになっている。
【0092】
ここで、
図11に示すように、上述のケーシング構成部71aの後面(背面)には、手動操作具としての操作レバー111が設けられている。この操作レバー111は、電磁ブレーキであるブレーキ装置26の制動を解除するためのブレーキ解除具としてのワイヤー112およびレバー113(
図10参照)、ならびに後述の手動弁137の両方を作動させるためのものである。以下、詳しく説明する。
【0093】
操作レバー111は例えば時計回りおよび反時計回りに回動可能に構成されている。操作レバー111にはワイヤー112の一端が接続されている。このワイヤー112の他端は
図10のレバー113に接続されている。レバー113はブレーキ装置26のアーマチュア26dに取り付けられている。このような構成において、医療従事者が緊急時に操作レバー111を例えば時計回りに回動させると、この回動に伴ってワイヤー112が引っ張られ、これに伴い動作するレバー113を介してアーマチュア26dをステータ26a側に移動させることができる。これによって、医療従事者は、電源遮断時(緊急時)に、操作レバー111を用いてブレーキ装置26の制動を手動で解除することができる(
図10(b)の状態)。
【0094】
また、本実施形態では、操作レバー111を上記のように回動させることで、スタビライザー11,12,13,14の接地解除動作を手動で行うことができる。以下、詳しく説明する。
【0095】
図12はスタビライザー11,12,13,14の伸長および収縮を実現する空圧回路の図である。
図12に示すように、スタビライザー11,12,13,14は、それぞれ、進退可能なピストンロッド11b,12b,13b,14bを有するエアシリンダ11a,12a,13a,14aと、戻りばね122と、ピストンロッド11b,12b,13b,14bの先端部に設けられた接地部11c,12c,13c,14c(
図8参照)とを備えている。
【0096】
医療用台車70には、各エアシリンダ11a,12a,13a,14aに圧縮空気を供給する圧縮空気供給源125が設けられている。圧縮空気供給源125は例えば例えば電動エアブースタであり、電動シリンダ125aおよびサブタンク125bを有する。スタビライザー11のエアシリンダ11aと圧縮空気供給源125とは空気通路T1により接続され、スタビライザー12のエアシリンダ12aと圧縮空気供給源125とは空気通路T1から分岐した空気通路T2により接続されている。また、スタビライザー13のエアシリンダ13aと圧縮空気供給源125とは空気通路T1から分岐した空気通路T3により接続され、スタビライザー14のエアシリンダ14aと圧縮空気供給源125とは空気通路T3から分岐した空気通路T4により接続されている。
【0097】
空気通路T1のうち空気通路T3との各分岐点よりも上流側の部分には3位置型の電磁弁130が介挿されている。また、空気通路T1のうち、電磁弁130と空気通路T2の分岐点との間の部分にはレギュレータ135が介挿されている。同様に、空気通路T3のうち、空気通路T4の分岐点よりも上流側の部分にレギュレータ136が介挿されている。さらに、空気通路T1のうち、電磁弁130と空気通路T3の分岐点との間の部分には2位置型の手動弁137が介挿されている。なお、レギュレータ135はスタビライザー11のエアシリンダ11aとスタビライザー12のエアシリンダ12aに供給する空気の圧力を調整することができ、レギュレータ136はスタビライザー13のエアシリンダ13aとスタビライザー14のエアシリンダ14aに供給する空気の圧力を調整することができる。
【0098】
また、空気通路T1のうち、電磁弁130よりも上流側の部分から空気通路T5が分岐して設けられており、当該空気通路T5の他端はロックシリンダ123に接続されており、図略のピストンロッドを空気圧で駆動してスタビライザー11のピストンロッド11bをロックするように構成されている。空気通路T5には2位置型の電磁弁131が介挿されている。また、空気通路T5のうち電磁弁131の下流側の部分から空気通路T6が分岐しており、スタビライザー12のピストンロッド12bをロックするために当該空気通路T6の他端はロックシリンダ123に接続されている。さらに、電磁弁130とスタビライザー11のロックシリンダ123の他端とを接続する空気通路T9が設けられると共に、当該空気通路T9から分岐されてその他端がスタビライザー12のロックシリンダ123の他端に接続された空気通路T10が設けられている。同様に、空気通路T1のうち、電磁弁130よりも上流側の部分から空気通路T7が分岐して設けられており、スタビライザー13のピストンロッド13bをロックするために当該空気通路T7の他端はロックシリンダ123に接続されている。空気通路T7には2位置型の電磁弁132が介挿されている。また、空気通路T7のうち電磁弁132の下流側の部分から空気通路T8が分岐しており、スタビライザー14のピストンロッド14bをロックするために当該空気通路T8の他端はロックシリンダ123に接続されている。さらに、電磁弁132とスタビライザー13のロックシリンダ123の他端とを接続する空気通路T11が設けられると共に、当該空気通路T11から分岐されてその他端がスタビライザー14のロックシリンダ123の他端に接続された空気通路T12が設けられている。
【0099】
以上のような構成において、医療従事者が入力装置106を操作して接地動作を指示すると、電磁弁130の一方のソレノイドコイルへの通電により弁体が移動して供給側流路が開放される。それにより、圧縮空気供給源125からの圧縮空気が空気通路T1,T2,T3,T4に供給されるため、ピストンロッド11b,12b,13b,14bが伸長する。これによって、接地部11c,12c,13c,14cが接地し、その後電磁弁130の一方のソレノイドコイルが非通電状態にされる。このとき、電磁弁130の供給側流路が閉鎖されると共に、電磁弁131,132の各ソレノイドコイルへの通電により弁体が移動して供給側流路がそれぞれ開放されることで空気通路T5,T6,T7,T8に圧縮空気が供給される。これにより、スタビライザー11,12,13,14の各ロックシリンダ123が作動し、ピストンロッド11b,12b,13b,14bの伸長状態が保持(ロック)される。これによって、エアシリンダ11a,12a,13a,14aは空気圧ロック式エアシリンダとして構成されている。一方、医療従事者が入力装置106を操作して接地解除動作を指示すると、まず電磁弁131,132の各ソレノイドコイルが非通電状態にされて弁体が移動して排出側流路がそれぞれ開放される。これにより、各ロックシリンダ123の作動状態が解除されてピストンロッド11b,12b,13b,14bのロックが解除される。次いで、電磁弁130の他方のソレノイドコイルへの通電により弁体が移動して排出側流路が開放される。それにより、エアシリンダ11a,12a,13a,14a内の圧縮空気が排出されるため、ピストンロッド11b,12b,13b,14bが収縮する。これによって、接地部11c,12c,13c,14cの接地状態が解除される。その後、電磁弁130の他方のソレノイドコイルが非通電状態にされる。以上の方法により、各スタビライザーの接地部の接地動作および接地解除動作が行われる。
【0100】
ここで、医療従事者が電源遮断時に手動で各スタビライザーの接地解除動作を行う場合には、上述の通り操作レバー111を時計回りに回動させる。これにより、ピン等を介して操作レバー111に連結された手動弁137の弁体が移動することで、当該手動弁137の排出側流路を開放することができる。これによって、エアシリンダ11a,12a,13a,14a内の圧縮空気が排出されると共にピストンロッド11b,12b,13b,14bが戻りばね122により付勢されるため、ピストンロッド11b,12b,13b,14bが収縮する。これによって、接地部11c,12c,13c,14cの接地状態が解除される。このように、医療従事者は電源遮断時に手動で各スタビライザーの接地解除を行うことができる。
【0101】
以上説明したように、本実施形態の医療用台車70によれば、車輪の停止時に、スタビライザー11,12,13,14の伸長により接地部11c,12c,13c,14cが接地面Grに接地するように構成されているので、医療用台車70を停止位置に固定することができる。これによって、医療用台車70が予期せぬ位置に移動することを防ぐことが可能となる。特に、手術中に医療用台車70が予期せぬ位置に移動してしまうことが防止されるので、当該手術に対して悪影響を与えることがない点で有用である。また、スタビライザー11,12,13,14は空圧により伸縮するものであるため、油圧により伸縮を行うスタビライザーよりも衛生的であり、手術現場で用いる上で好ましい。
【0102】
また、本実施形態では、スタビライザー11,12,13,14の接地部11c,12c,13c,14cは、車輪が接地面Grから浮かない状態で接地面Grに接地するように構成されている。これにより、スタビライザー11,12,13,14の空気を抜く際、すなわちスタビライザー11,12,13,14を収縮させる際に、車輪が接地していないことによるケーシング71への衝撃が生じることを防ぐことができる。
【0103】
また、本実施形態では、前側スタビライザー11,12を進行方向と直交する方向において右前輪40と左前輪41との間に配置することで、前側スタビライザー11を同方向において右前輪40の外側に配置し且つ前側スタビライザー12を同方向において左前輪41の外側に配置する場合に比べて、右前輪40および左前輪41の回転動作の邪魔にならない。
【0104】
また、本実施形態では、後側スタビライザー13を進行方向と直交する方向において右後輪43の外側に配置し且つ後側スタビライザー14を同方向において左後輪44の外側に配置する構成を採用することで、右後輪43と左後輪44との間隔を小さく設計することができる。これにより、医療従事者は医療用台車70の進行方向を小さい力で変更することができる。
【0105】
さらに、本実施形態では、ブレーキ装置26により車輪が制動されて停止した状態で、スタビライザー11,12,13,14の接地部11c,12c,13c,14cが接地面Grに接地されるため、医療用台車70を確実に移動させないように止めることが可能となる。
【0106】
また、本実施形態では、右後輪43と左後輪44との間隔は右前輪40と左前輪41との間隔よりも小さく設定されているため、後輪43,44の向きをハンドル47により変更する際の操作性を向上することができる。
【0107】
また、本実施形態では、一対の補助輪110の間隔は右後輪43と左後輪44との間隔よりも大きいため、後輪43,44の向きを変更する際に補助輪110の存在により当該向きの変更を行い易くなる。
【0108】
また、本実施形態では、ブレーキ装置26の制動の解除が必要な緊急時に、ブレーキ解除具としてのワイヤー112およびレバー113によって容易かつ迅速に上記解除を行うことができる。
【0109】
また、本実施形態では、エアシリンダ11a,12a,13a,14aによって容易にピストンロッド11b,12b,13b,14bを伸長させて接地部11c,12c,13c,14cを接地させることができる。
【0110】
また、本実施形態では、エアシリンダ11a,12a,13a,14aは空気圧ロック式エアシリンダであるので、エアシリンダ11a,12a,13a,14aにおけるピストンロッド11b,12b,13b,14bが伸長した状態を、空気圧を用いてロックすることができる。これにより、各スタビライザー11,12,13,14の伸長状態を保持(ロック)することが可能となる。
【0111】
また、本実施形態では、各スタビライザー11,12,13,14のエアシリンダ11a,12a,13a,14a内の空気を開放する場合に、戻りばね122による付勢力によってピストンロッド11b,12b,13b,14bを収縮させることができ、それ故各スタビライザー11,12,13,14の接地状態を解除することができる。
【0112】
また、本実施形態では、一つの圧縮空気供給源125により4つのエアシリンダ11a,12a,13a,14aに圧縮空気を供給することができる。
【0113】
また、本実施形態では、電源遮断時等の非常時に、手動弁137により各スタビライザー11,12,13,14のエアシリンダ11a,12a,13a,14a内の空気を開放することができる。これにより、手動的方法によりスタビライザー11,12,13,14を収縮させてその接地状態を解除することができる。これにより、医療用台車70を移動し得る状態にすることができる。
【0114】
また、本実施形態では、電源遮断時等の非常時に、手動操作具としての操作レバー111によりブレーキ解除具(ワイヤー112およびレバー113)および手動弁137の両方を容易に作動させることができる。これにより、ブレーキ装置26の制動を解除することができると共にスタビライザー11,12,13,14の接地状態も解除することができる。
【0115】
さらに、本実施形態では、医療従事者は入力装置106を用いて、スタビライザー11,12,13,14の接地動作および接地解除動作を容易に指示することができる。
【0116】
(他の実施形態)
上記実施形態の他にも、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で次のような種々の変形も可能である。
【0117】
上記実施形態では、基台80の前側に2つのスタビライザーとしての前側スタビライザー11,12を設け、基台80の後側に2つのスタビライザーとしての後側スタビライザー13,14を設けるように構成したが、これに限定されるものではなく、基台80の前側に3つ以上のスタビライザーを設け、基台80の後側に3つ以上のスタビライザーを設けてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、後輪を2輪として構成したが、これに限定されるものではなく、後輪の幅を大きくする等して1輪として構成してもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、スタビライザー11の接地部11cおよびスタビライザー12の接地部12cの少なくとも一部を右前輪40および左前輪41の最前部よりも進行方向前側に配置することとしたが、これに限定されるものではなく、接地部11cおよび接地部12cの全部を進行方向において右前輪40および左前輪41の最前部と最後部との間に配置してもよいし、接地部11cおよび接地部12cの一部を同方向において右前輪40および左前輪41の最後部よりも進行方向後側に配置してもよい。
【0120】
さらに、上記実施形態では、エアシリンダとして空気圧ロック式エアシリンダを用いたが、これに限定されるものではなく、スプリングロック式エアシリンダやスプリング・空気圧併用ロック式エアシリンダを使用しても良い。
【符号の説明】
【0121】
1 医療用マニピュレータ
3 多自由度マニピュレータアーム
4 医療器具
7 ポジショナ
11,12 前側スタビライザー
11a,12a,13a,14a エアシリンダ
11b,12b,13b,14b ピストンロッド
11c,12c,13c,14c 接地部
13,14 後側スタビライザー
20 ベース
26 ブレーキ装置
40 右前輪
41 左前輪
43 右後輪
44 左後輪
46 操舵軸
47 ハンドル
47a 解除スイッチ
48 操舵部
70 医療用台車
80 基台
106 入力装置
110 補助輪
111 操作レバー(手動操作具)
112 ワイヤー(ブレーキ解除具)
113 レバー(ブレーキ解除具)
122 戻りばね(付勢部材)
125 圧縮空気供給源
130,131,132 電磁弁
137 手動弁
Gr 接地面