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特許7165755基板コーティング用真空蒸着設備及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】基板コーティング用真空蒸着設備及び方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
C23C14/24 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020569900
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 IB2019054860
(87)【国際公開番号】W WO2019239314
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/054419
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーチェ,セルジョ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,ブルノ
(72)【発明者】
【氏名】マルヌッフ,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】シルベルベール,エリック
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/047782(WO,A1)
【文献】特開2004-307877(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020311(WO,A1)
【文献】特開2015-209593(JP,A)
【文献】特開平07-003463(JP,A)
【文献】特開2004-079541(JP,A)
【文献】特開平09-143692(JP,A)
【文献】特開2008-150649(JP,A)
【文献】特開2007-039785(JP,A)
【文献】特開2000-096214(JP,A)
【文献】特開昭59-043874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する基板(S)上に、金属又は金属合金から形成されたコーティングを連続的に蒸着させるための真空蒸着設備(1)であって、設備が、
-金属又は金属合金の蒸気を供給するのに適した蒸発るつぼ(4)であって、蒸発管(7)を具備する蒸発るつぼ(4)と、
-基板(S)を所定の経路(P)に沿って走行させるのに適した蒸着チャンバ(2)と、
蒸気ジェットコータを介して蒸発管を蒸着チャンバに連結する蒸気ジェットコータ(3)と、を備え、
蒸気ジェットコータがさらに、
-蒸発管から横方向にかつ所定の経路の幅を横切って延在する再分配チャンバ(31)であって、再分配チャンバ内に位置決めされた、カートリッジの形態である少なくとも1つの再加熱手段を備える再分配チャンバと、
-蒸気出口オリフィス(32)と、を備え、
蒸気出口オリフィス(32)は、蒸気出口オリフィスと再分配チャンバとを連結する基部開口部(9)と、蒸着チャンバ内に蒸気を出すことができる上部開口部(10)と、基部開口部と上部開口部とを連結する2つの側面(11、12)と、を具備し、蒸気出口オリフィスの側面が、上部開口部の方向に向かって互いに収束する、真空蒸着設備(1)。
【請求項2】
蒸気出口オリフィスが、所与の経路の幅方向に垂直な平面に沿った断面が台形である、請求項1に記載の真空蒸着設備。
【請求項3】
蒸気出口オリフィスが、所与の経路の幅方向に垂直な平面に沿った断面が等脚台形である、請求項2に記載の真空蒸着設備。
【請求項4】
等脚台形の底角が60°より大きい値を有する、請求項3に記載の真空蒸着設備。
【請求項5】
蒸気出口オリフィス(32)の側面(11、12)が、上部開口部(10)の方向に向かって互いに指数関数的に収束する、請求項1に記載の真空蒸着設備。
【請求項6】
基部開口部(10)と各側面(11、12)との間の角度が、蒸気出口オリフィスの出口において60°を超える値を有する、請求項5に記載の真空蒸着設備。
【請求項7】
蒸気出口オリフィスの、基部開口部(9)の幅と上部開口部(10)の幅との比率が1.6~2.4に含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の真空蒸着設備。
【請求項8】
側面の長さと基部開口部の幅との比率が4~8に含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の真空蒸着設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば亜鉛及び亜鉛マグネシウム合金などの金属又は金属合金から形成されたコーティングを基板上に蒸着させるための真空蒸着設備に関し、前記設備は、より詳細には、鋼ストリップをコーティングすることが意図されているが、それに限定されるものではない。本発明はまた、その基板をコーティングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最終的に合金で構成される金属コーティングを、鋼ストリップなどの基板上に蒸着させるための様々な工程が知られている。これらの中でも、溶融コーティング、電着、並びに真空蒸発及びマグネトロンスパッタリングなどの様々な真空蒸着工程を挙げることができる。
【0003】
国際公開第97/47782号及び国際公開第2009/047333号によれば、500m/sを超える速度で推進される金属蒸気スプレーを基板と接触させて、鋼基板を連続的にコーティングする方法が知られている。それにもかかわらず、亜鉛蒸気が凝縮する傾向があり、それが金属コーティングの中や上に微小液滴のような欠陥をもたらすことが観察されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第97/47782号
【文献】国際公開第2009/047333号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、金属又は金属合金の蒸気の凝縮を防止する真空蒸着設備を提供することによって、先行技術の設備及び工程の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明の第1の主題は、走行する基板上に、金属又は金属合金から形成されたコーティングを連続的に蒸着させるための真空蒸着設備であって、設備は、金属又は金属合金の蒸気を供給するのに適した蒸発るつぼであって、蒸発管を具備する蒸発るつぼと、基板を所定の経路に沿って走行させるのに適した蒸着チャンバと、蒸発管を蒸着チャンバに連結する蒸気ジェットコータと、を備え、蒸気ジェットコータはさらに、
-蒸発管から横方向にかつ所定の経路の幅を横切って延在する再分配チャンバであって、再分配チャンバ内に位置決めされた少なくとも1つの再加熱手段を備える再分配チャンバと、
-蒸気出口オリフィスと、を備え、
蒸気出口オリフィスは、蒸気出口オリフィスと再分配チャンバとを連結する基部開口部と、蒸着チャンバ内に蒸気を出すことができる上部開口部と、基部開口部と上部開口部とを連結する2つの側面と、を具備し、蒸気出口オリフィスの側面が、上部開口部の方向に向かって互いに収束する。
【0007】
本発明による設備はまた、個別に又は組み合わせて考慮される、以下に列挙される任意の特徴を有すことができる。
【0008】
-蒸気出口オリフィスは、その長さに垂直な平面に沿った断面が台形である。
【0009】
-蒸気出口オリフィスは、その長さに垂直な平面に沿った断面が等脚台形である。
【0010】
-等脚台形の底角は60°より大きい値を有する。
【0011】
-蒸気出口オリフィスの側面は、上部開口部の方向に向かって互いに指数関数的に収束する。
【0012】
-基部開口部と各側面との間の角度は、蒸気出口オリフィスの出口において60°を超える値を有する。
【0013】
-蒸気出口オリフィスの基部開口部の幅と上部開口部の幅との比率は、1.6~2.4に含まれる。
【0014】
-側面の長さと基部開口部の幅との比率は、4~8に含まれる。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明でより詳細に説明される。
【0016】
本発明は、純粋に説明の目的のために提供されるものであり、いかなる方法でも制限を意図するものではない以下の説明を参照して読むことによって、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による設備の一実施形態の断面図である。
図2】本発明による蒸気ジェットコータの実施形態の断面図である。
図3】本発明を先行技術と比較した数値モデリングの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願で使用される用語「下方」、「真下」、「内側」、「内側(複数)」、「外側」、「外側(複数)」、「上流」、「下流」、…は、設備が真空蒸着ラインに設置されているときの、設備の異なる構成要素の位置及び方向を指すことに留意されたい。
【0019】
本発明の目的は、金属又は金属合金から形成されたコーティングを基板上に蒸着させることである。特に、この目的は、亜鉛又は亜鉛マグネシウムコーティングを得ることである。しかしながら、工程はこれらのコーティングに限定されず、好ましくは、浴温での蒸気圧の差が10%未満である単一金属又は金属合金をベースとするあらゆるコーティングを包含するものであり、それぞれの相対的な含有量の制御が容易になる。
【0020】
特定の指標を与えるために、個々に又は組み合わせて考慮すると、主要素としての亜鉛と、クロム、ニッケル、チタン、マンガン、マグネシウム、ケイ素及びアルミニウムなどの追加要素(複数可)でできたコーティングを挙げることができる。
【0021】
コーティング厚は、好ましくは0.1μm~20μmである。一方では、0.1μm未満では、基板の防食性が不十分になるおそれがある。他方では、特に、自動車又は建設分野で要求されるレベルの耐食性を得るために、20μmを超える必要はない。一般に、自動車用途には、厚さは10μmに制限される場合がある。
【0022】
図1を参照すると、本発明による設備1はまず、蒸着チャンバ2と、チャンバを通して基板を走行させるための手段とを備える。
【0023】
蒸着チャンバ2は、好ましくは10-8~10-3バールの圧力に保たれた密閉可能なボックスである。ボックスは、例えば鋼ストリップなどの基板Sが所定の経路Pに沿って走行方向に走行可能な、入口ロックと出口ロック(これらは図示せず)とを有する。
【0024】
基板Sは、前記基板の性質及び形状により、任意の好適な手段によって走行させることができる。特に、鋼ストリップを搬送可能な回転支持ローラ3を用いてもよい。
【0025】
蒸着チャンバ2内で、被覆されるべき基板Sの面の近傍に蒸気ジェットコータ3がある。このコータは、蒸発るつぼ4からの金属合金の蒸気を、走行する基板Sにスプレーするのに適している。
【0026】
蒸気ジェットコータ3は、蒸発るつぼ4に直接的又は間接的に取り付けられている。蒸発るつぼは、基板S上に蒸着される蒸気を発生させる金属又は金属合金の浴を収容するのに適しており、金属蒸気を蒸気ジェットコータに供給するのに適している。蒸発るつぼ4は、好ましくは蒸着チャンバ2内に配置される。
【0027】
蒸発るつぼ4は主に、ポット5、カバー6、及び一方の側がカバーに、他方の側が蒸気ジェットコータ3に接続された蒸発管7で構成される。好ましくは、蒸発器と噴射器との間に配置された弁が、金属蒸気の流れを制御する。これらの様々な部品は、例えばグラファイト製としてもよい。
【0028】
蒸発るつぼ4は加熱手段8を備えており、これにより金属蒸気を形成して蒸気ジェットコータ3に供給することを可能にする。蒸発るつぼ4は、有利には誘導加熱器を備え、この誘導加熱器は、金属合金浴の攪拌及び組成の均質化をより容易にする利点を有する。
【0029】
蒸気ジェットコータ3は、好ましくは音速蒸気ジェットコータ、すなわち音速の蒸気ジェットを発生させることができるコータである。この種のコータは通常、JVD(ジェット蒸着)装置とも呼ばれる。読者は、このタイプの装置の詳細な説明については、国際公開第97/47782号及び国際公開第2009/047333号を参照することができる。
【0030】
蒸気ジェットコータ3は、有利には、再分配チャンバ31を備え、この再分配チャンバ31は、コーティングされる基板の幅に近い長さの、狭い蒸気出口オリフィス32を備える。再分配チャンバは、金属蒸気を、基板幅に沿って均一に分布させることを可能にする。実際には、再分配チャンバは、蒸発管7から横方向に、経路Pの幅を横切って、つまり、設備運転時に基板幅を横切るように延在する。再分配チャンバは、好ましくは、基板のすべての点が、コーティング蒸着の均一性をさらに促進する蒸気ジェットコータから同じ距離にあるように、経路Pに平行に延在する。再分配チャンバは、好ましくは、経路Pを横切って長手方向に延在する管の形態である。このチャンバは、例えばグラファイト製としてもよい。
【0031】
再分配チャンバはさらに、少なくとも1つの再加熱手段33を備え、再加熱手段33は、再分配チャンバ内、つまり、再分配チャンバ31の側面によって区切られた空洞内に位置決めされる。これにより、再分配チャンバに入るときに膨張した後、蒸発管から出てくる蒸気を再加熱することができる。その結果、再分配チャンバ内での凝縮を防止することができる。再加熱手段は、好ましくは、再分配チャンバの長に沿って延在する。再加熱手段は、好ましくは、加熱カートリッジの形態である。再加熱手段の数及び位置は、蒸気の再加熱を最適化するように調整可能である。
【0032】
蒸気出口オリフィス32は、基本的に、好ましくは長さ方向及び幅方向に調節可能なスロットである。その幅を適応させることが可能であることで、蒸気ジェットを広い範囲の蒸発金属表面温度内に維持することを可能にし、その結果、蒸発速度を広い範囲内に維持することを可能にする。さらに、その長さがコーティングされるべき基板の幅に適合可能であることにより、蒸発された金属の損失を最小限にすることが可能となる。
【0033】
図2を参照すると、その長さに垂直な平面に沿った断面において、蒸気出口オリフィスは、蒸気出口オリフィスを再分配チャンバに連結するように再分配チャンバ31の壁に切り込まれた基部開口部9と、蒸着チャンバ内に蒸気を出すことができる上部開口部10と、基部開口部と上部開口部とを連結する2つの側面11、12と、を備える。上部開口部10は、好ましくは、金属又は金属合金の蒸気が基板上に、より均一に蒸着するように、経路Pと平行な平面内に配置される。
【0034】
本発明者らは、驚くべきことに、蒸気出口オリフィス32の側面11、12が上部開口部方向に互いに向かって収束していると、蒸気ジェットコータ3内及び蒸発管7内での金属又は金属合金の蒸気の凝縮のおそれが効率的に防止されることを見出した。いかなる科学的理論にも拘束されることなく、発明者らは、蒸気出口オリフィス32の出口におけるこの幅の制限は、蒸気出口オリフィス32の出口における音波衝撃を局所化して、その点よりも前の凝縮を防止する効果を有すると理解している。
【0035】
「向かって互いに収束する」とは、蒸気出口オリフィスの上部開口部の幅が基部開口部の幅よりも小さいことを意味する。これは、決して側面の形状を制限するものではない。側面の形状は、例えば、直線、曲線又は両方の組み合わせでもよい。
【0036】
本発明の第1の変形例によれば、蒸気出口オリフィス32の断面形状は、台形である。その場合、オリフィスの一般的な形状を考慮すると、これは、台形の短辺が、蒸気出口オリフィス32の出口に配置されることを意味する。このオリフィスの直線的な短縮は、蒸気ジェットを均一にかつ漸進的に加速するのに役立つ。工業的観点からは、この形状はまた、効率と製造の容易さとの良好な妥協点でもある。
【0037】
より好ましくは、蒸気出口オリフィス32の断面形状は、等脚台形、つまり、側面11、12が同じ長さで、底角が同じ角度の台形である。線対称性のおかげで、蒸気出口オリフィスを出る蒸気ジェットは、より均一である。
【0038】
好ましくは、底角は60°を超える値、より好ましくは80°を超える値である。これは、蒸気ジェットを基板上に集中させるのに役立つ。
【0039】
好ましくは、蒸気出口オリフィスの基部開口部9と上部開口部10との比率は、1.6~2.4に含まれる。これは、オリフィスの形状に起因する圧力損失を最小限に抑えつつ、音波衝撃を蒸気出口オリフィスの出口に効率的に位置決めすることを見出したものである。
【0040】
好ましくは、側面の長さと基部開口部の幅との比率は、4~8に含まれる。この比率のおかげで、蒸気ジェットの流束は、再分配チャンバ31と蒸気出口オリフィス32との接合部で乱された後、安定化する時間を有する。
【0041】
本発明の第2の変形例によれば、蒸気出口オリフィス32の側面11、12は、上部開口部10の方向に向かって互いに指数関数的に収束する。「指数関数的に収束する」ということは、各側面が断面において指数関数的な形状を有することを意味する。この形状は、再分配チャンバと蒸気出口オリフィスとの遷移を促進する。したがって、再分配チャンバと蒸気出口オリフィスとの接合部において、蒸気ジェットの流束が乱れにくくなる。
【0042】
好ましくは、2つの側面11、12は同じ指数関数的形状を有する。線対称性のおかげで、蒸気出口オリフィスを出る蒸気ジェットは、より均一である。
【0043】
好ましくは、基部開口部10と側面との角度は、蒸気出口オリフィスの出口において60°を超える値、より好ましくは80°を超える値を有する。これは、蒸気ジェットを基板上に集中させるのに役立つ。
【0044】
好ましくは、蒸気出口オリフィスの基部開口部9の幅と上部開口部10の幅との比率は、1.6~2.4に含まれる。これは、オリフィスの形状に起因する圧力損失を最小限に抑えつつ、音波衝撃を蒸気出口オリフィスの出口に効率的に位置決めすることを見出したものである。
【0045】
好ましくは、側面の長さと基部開口部の幅との比率は、4~8に含まれる。この比率のおかげで、蒸気ジェットの流束は、再分配チャンバと蒸気出口オリフィスとの接合部で乱された後、安定化する時間を有する。
【0046】
両方の変形例において、上部開口部10の幅は、工業用真空蒸着設備で必要とされる流量に応じて調整される。当業者は、流量を制御する他のパラメータにより、特に数値モデリングによって、この幅を調整する手段を知っているであろう。
【0047】
両方の変形例において、基部開口部9の幅及び上部開口部10の幅は、好ましくは、基板上の金属又は金属合金の蒸気の均一な蒸着を促進するように、蒸気出口オリフィス32の長さに沿って一定である。
【0048】
好ましくは、蒸気出口オリフィスの2つの側面11、12は、金属又は金属合金の蒸気がそれらの上で凝縮するリスクを制限するために加熱される。
【0049】
本発明による蒸気出口オリフィスを備える設備の効率を評価するために、数値モデリングを行った。
【0050】
このモデルは、狭い蒸気出口オリフィス32を設けた抽出チャンバ31を具備する蒸気ジェットコータ3に接続された蒸発管7を備える設備に適用した。特に、モデルは以下の値に基づいて適用した。
【0051】
-蒸発する金属:亜鉛
-蒸発管の入口での圧力:5869Pa
-蒸発管の入口での温度:953K
-側面の温度:1042K
-亜鉛の流量:170g/s
-蒸気弁は全開とした。
【0052】
図3a)は、長方形断面の蒸気出口オリフィス32を用いて得られた結果を示しており、基部開口部及び上部開口部は共に24mmであり、オリフィスの長さは1750mmである。
【0053】
図3b)は、断面が等脚台形の蒸気出口オリフィス32を用いて得られた結果を示しており、基部開口部は48mm、上部開口部が24mm、側面が100mmである。
【0054】
どちらの図も、灰色のレベルが凝縮のリスクを示す。灰色が濃いほど凝縮のリスクが高いことを示している。
【0055】
図3a)と図3b)とを比較すると明らかなように、亜鉛は、長方形出口オリフィスでは凝縮し、台形出口オリフィスでは凝縮しない。
【0056】
本発明による設備は、より詳細には、事前にコーティングされているか、又はむきだしであるかにかかわらず、金属ストリップの処理に適用されるが、これに限定されるものではない。当然のことながら、本発明による工程は、例えばアルミニウムストリップ、亜鉛ストリップ、銅ストリップ、ガラスストリップ又はセラミックストリップなどの任意のコーティングされた又はコーティングされていない基板に採用することができる。
図1
図2
図3