(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】患者のニューロンを刺激してその病的同期活動を抑制するための治療装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20221027BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2020571598
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019066671
(87)【国際公開番号】W WO2019243634
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520398456
【氏名又は名称】グレタップ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Gretap AG
【住所又は居所原語表記】Baarerstrasse 55, Zug, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タス,ペーター アレクサンダー
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519400(JP,A)
【文献】特表2015-507957(JP,A)
【文献】特表2017-535364(JP,A)
【文献】特表2012-505674(JP,A)
【文献】特表2018-505735(JP,A)
【文献】国際公開第2017/114878(WO,A1)
【文献】特表2018-534076(JP,A)
【文献】特開2013-244101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/04-1/06
A61N 1/18-1/39
A61H 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療装置であって、
前記患者の身体に対する刺激を生成するための少なくとも3個の非侵襲的刺激ユニットと、
活動期間のシーケンス内で前記
非侵襲的刺激ユニットを選択的かつ断続的に作動させるための制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットが、前記活動期間のシーケンス全体にわたって、前記活動期間ごとに、それぞれの前記活動期間に同時に作動される前記
非侵襲的刺激ユニットの数nを様々に決定するように構成された治療装置。
【請求項2】
前記シーケンスの前記活動期間の少なくとも1つに、前記制御ユニットが、同時に作動される少なくとも3個の前記
非侵襲的刺激ユニットを決定するように構成された、請求項1に記載の治療装置。
【請求項3】
前記
非侵襲的刺激ユニットが、前記患者の身体の様々な部位に対する刺激を生成するように構成された、請求項1又は2に記載の治療装置。
【請求項4】
前記
非侵襲的刺激ユニットが、前記患者の体表面に刺激を生成するように構成された、請求項1~3のいずれかに記載の治療装置。
【請求項5】
前記
非侵襲的刺激ユニットが、触覚刺激及び/又は振動刺激及び/又は電気刺激を生成するように構成された、請求項1~4のいずれかに記載の治療装置。
【請求項6】
nが、1と前記治療装置に含まれる
非侵襲的刺激ユニットの総数との間の整数である、請求項1~5のいずれかに記載の治療装置。
【請求項7】
前記
治療装置が、3を超える数uの前記
非侵襲的刺激ユニットを含むとき、前記数nが、1とu-1の間の整数である、請求項1~6のいずれかに記載の治療装置。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記活動期間に、それぞれの前記活動期間に同時に作動される前記
非侵襲的刺激ユニットの前記数nを確率論的及び/又は決定論的に、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで決定するように構成された、請求項1~7のいずれかに記載の治療装置。
【請求項9】
前記制御ユニットが、前記活動期間のシーケンス全体にわたって、前記
治療装置の前記少なくとも3個の
非侵襲的刺激ユニットから、前記決定された数nの様々な
非侵襲的刺激ユニットを様々に選択するように構成された、請求項1~8のいずれかに記載の治療装置。
【請求項10】
前記制御ユニットは、第1の活動期間に個別に作動される単一の第1の
非侵襲的刺激ユニットと、第2の活動期間に個別に作動される単一の第2の
非侵襲的刺激ユニットを選択するように構成され
、
前記制御ユニットが、第3の活動期間に同時に作動される少なくとも2個の非侵襲的刺激ユニットを選択するように構成された、請求項1~9のいずれかに記載の治療装置。
【請求項11】
前記制御ユニットが、前記それぞれの活動期間の前記
非侵襲的刺激ユニットを、前記シーケンス内の前記活動期間に個別に作動される単一
非侵襲的刺激ユニット及び/又は前記シーケンス内の前記活動期間に同時に作動される
非侵襲的刺激ユニットの組み合わせの所定の確率又は所定の発生頻度に従って選択するように構成された、請求項1~
10のいずれかに記載の治療装置。
【請求項12】
前記所定の発生頻度が、前記シーケンス内に前記単一
非侵襲的刺激ユニットが個別に作動されかつ/又は前記シーケンス内で前記
非侵襲的刺激ユニットの特定の組み合わせが同時に作動されるのを防ぐように設定された、請求項
11に記載の治療装置。
【請求項13】
前記制御ユニットが、前記選択された
非侵襲的刺激ユニットのそれぞれに関して、前記それぞれの
非侵襲的刺激ユニットの所定組の動作モードから1つの動作モードを様々に選択するように構成され
、
前記それぞれの非侵襲的刺激ユニットの前記動作モードが、刺激持続時間、刺激強度、刺激周波数及び/又は刺激経時変化の点で、前記非侵襲的刺激ユニットによって生成される刺激の特徴が異なる、請求項1~
12のいずれかに記載の治療装置。
【請求項14】
前記制御ユニットが、連続した活動期間の間に休止期間を規定するように構成され
、
前記制御ユニットが、前記シーケンス全体にわたって各休止期間の持続時間を様々に決定するように構成された、請求項1~
13のいずれかに記載の治療装置。
【請求項15】
前記ニューロンに対する刺激作用を測定するためのセンサユニットを更に備え、前記制御ユニットが、前記
非侵襲的刺激ユニットによって生成された刺激及び/又は前記活動期間のシーケンスを、前記センサユニットによって測定された情報に従って適応させるように構成された、請求項1~
14のいずれかに記載の治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のニューロンを刺激してニューロンの病的同期活動を抑制するための治療装置及びそれぞれの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病などの幾つかの脳障害は、ニューロンの異常に強い同期活動(即ち、強く同期されたニューロン発射又はバースト)を特徴とする。パーキンソン病の他にも、この特徴は、例えば、本態性振戦、失調症、脳卒中後機能障害、てんかん、抑鬱症、偏頭痛、緊張性頭痛、強迫障害、過敏性大腸症候群、慢性疼痛症候群、骨盤痛、境界性人格障害における解離、及び外傷後ストレス障害にも当てはまりうる。
【0003】
例えば、L-DOPAによるパーキンソン病の薬物学的治療は、限られた治療効果を有することがあり、きわめて長期の副作用を引き起こしうる。パーキンソン病に対する高周波脳深部電気刺激法(DBS)は、パーキンソン病の進行期で医学上手に負えない患者に標準的なものである。しかしながら、DBSは、大きいリスクと関連する外科手術を必要とする。例えば、脳内のある特定の標的領域に深く電極を埋め込むと出血が起こりうる。更に、標準の連続高周波DBSは、副作用を引き起こしうる。
【0004】
更に、非侵襲的な振動触覚多チャンネル刺激治療は、パーキンソン病の兆候を打ち消すことが知られている。この非侵襲的手法の欠点は、使用される刺激の本質的に周期的な構造にある。実質として、一連の刺激の繰返し率などの特定の刺激パラメータが、異常活動ニューロンの優位周波数に適切に同調されない場合、刺激は効果がないことがある。特に、非侵襲的構成では、長期的な非侵襲的脳波聴力検査(EEG)記録の制限により、異常脳活動の周波数持性の確実な推定値を得るのは難しい。より重要なことには、幾つかの脳障害は、パーキンソン病での緩慢と硬直に関連した9Hz~35Hzに対して、様々な周波数(例えば、パーキンソン病震えと関連した約4Hz~5Hz)の異常な脳リズムを特徴とする。更に、複数の中央振動子(即ち、脳リズム)が、パーキンソン病の患者の様々な四肢の震えを引き起こす。長期的に埋め込まれた脳電極からのフィードバック信号がない場合、これまで使用された刺激パターンで最適な刺激結果を達成することが難しいことがある。
【0005】
異常にアップレギュレートされたシナプス結合がニューロンの異常な同期活動を引き起こしうることが分かった。しかしながら、繰り返し同時に起こるニューロン活動化によって、それらの相互シナプス結合の強さを高めうる。したがって、既知の非侵襲的な振動触覚多チャンネル刺激処理で生成された刺激が、ニューロンの病的同期活動と繰り返し同時に重なる場合、この治療はニューロンの病的同期活動を非意図的に強めうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的背景を考慮して、本発明の目的は、ニューロンの病的同期活動(即ち、患者の脳内)を頑強かつ効果的に抑制することを可能にする改善された非侵襲的治療装置及びそれぞれの方法を提案することである。
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する治療装置、請求項22の特徴を有する治療用グローブ、請求項23の特徴を有する治療用バンド、請求項24の特徴を有する治療用シートパッド、請求項25の特徴を有する治療用靴底、請求項26の特徴を有する治療システム、及び請求項27の特徴を有する治療方法によって解決される。好ましい実施形態は、図、明細書及び従属クレームから得られる。
【0008】
したがって、第1の態様では、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療装置が提案され、この治療装置は、患者の身体に対する刺激を生成するための少なくとも3個の非侵襲的刺激ユニットを含む。治療装置は、更に、活動期間のシーケンス内で刺激ユニットを選択的かつ断続的に作動させるための制御ユニットを含み、この制御ユニットは、前記活動期間のシーケンス全体にわたって、活動期間ごとに、前記それぞれの活動期間に同時に作動される刺激ユニットの数nを様々に決定するように構成される。
【0009】
更に他の態様によれば、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用グローブ、治療用バンド、治療用シートパッド及び治療用靴底が提案され、これらはそれぞれ、患者の身体に対する刺激を生成するための少なくとも3個の非侵襲的刺激ユニットと、活動期間のシーケンス内に前記刺激ユニットを選択的かつ断続的に作動させるための1つの制御ユニットとを含み、前記制御ユニットは、前記活動期間のシーケンス全体にわたって、活動期間ごとに、前記それぞれの活動期間に同時に作動される刺激ユニットの数nを様々に決定するように構成される。
【0010】
更に他の態様によれば、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療システムが提案され、前記治療システムは2つ以上の治療装置を含む。
【0011】
更に他の態様によれば、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療方法が提案される。前記方法は、患者の身体に対する刺激を生成するための少なくとも3個の非侵襲的刺激ユニットを提供するステップと、前記刺激ユニットを活動期間のシーケンスに従って選択的かつ断続的に作動させるステップとを含み、前記それぞれの活動期間に同時に作動される刺激ユニットの数nは、前記シーケンス全体にわたって様々に変化し、前記活動期間のうちの少なくとも1つの活動期間に、3個の刺激ユニットが同時に作動される。
【0012】
本開示は、添付図面と関連して検討されるときに以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療装置の概略図である。
【
図2】患者のニューロンの病的同期活動を抑制するために治療装置の非侵襲的刺激ユニットが作動される活動期間のシーケンスを概略的に示す図である。
【
図3】
図2に描かれたシーケンスを生成するために治療装置の制御ユニットによって使用される手順を示す流れ図である。
【
図4】第2の実施形態による治療装置の概略図である。
【
図5】治療用グローブの形の治療装置の概略図である。
【
図6】治療用首及び/又は肩バンドの形の治療装置の概略図である。
【
図7】治療用喉頭バンドの形の治療装置の概略図である。
【
図8】治療用フェースマスク又はバンドの形の治療装置の概略図である。
【
図9】治療用シートパッドの形の治療装置の概略図である。
【
図10】治療用腹巻の形の治療装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明が、添付図面を参照してより詳細に説明される。図では、類似要素が同一の参照数字によって示され、その繰り返し記述は冗長性を回避するために省略されうる。
【0015】
図1は、患者のニューロンを刺激してニューロンの病的同期活動を抑制する治療装置10を概略的に示す。
【0016】
治療装置10は、神経又は精神疾患、詳細にはパーキンソン病、本態性振戦、失調症などの治療に使用されうる。その目的のため、治療装置10は、てんかん、多発性硬化症の結果として振戦、及び他の病的振戦、うつ病、運動障害、小脳の疾病、強迫障害、トゥーレット症候群、脳卒中後機能障害、けいれん性麻痺、耳鳴り、睡眠障害、統合失調症、過敏性大腸症候群、嗜癖障害、人格障害、注意欠陥障害、注意欠陥活動過多症候群、ゲーム依存症、神経症、摂食障害、燃えつき症候群、線維筋痛症、偏頭痛、群発性頭痛、一般的頭痛、神経痛、歩行失調、チック障害又は高血圧などの他の神経又は精神疾患の治療、並びに他の疾患の治療にも使用されうる。
【0017】
前述の疾病は、特定経路で互いに接続された神経細胞群の生体電気通信の障害によって引き起こされうる。これにより、ニューロン集団は、連続した病的ニューロン活動及びそれと関連しうる高い病的接続(網状構造)を生成する。この点で、多数のニューロンが、同期活動ポテンシャルを形成し、これは、関連したニューロンが過度かつ同期的に発射又はバーストすることを意味する。更に、病的ニューロン集団は振動ニューロン活動を有し、これは、ニューロンが律動的に発射又はバーストすることを意味する。神経又は精神疾患の場合、関連ニューロン群の病的律動的活動の平均周波数は、ほぼ1Hz~30Hzの範囲でありうるが、この範囲外のこともある。これと対照的に、健康な人のニューロンは、質的に違う風に、例えば非相関式に発射又はバーストする。
【0018】
換言すると、前述の疾病はそれぞれ、病的同期ニューロン活動のある患者の脳又は脊髄内の少なくとも1つのニューロン集団によって特徴付けられうる。そのような病的同期活動を抑制するために、治療装置10は、罹患した神経集団を刺激して、その罹患した神経集団を非相関式、即ち非同期式に発射又はバーストさせるように構成される。
【0019】
具体的には、治療装置10は、非侵襲的治療装置である。これは、治療装置10が、意図した治療効果を達成するために非侵襲的処置を行うことを意味する。換言すると、動作状態で、治療装置10は、患者の身体に埋め込まれず、即ち、患者の身体内への介入処置と関連付けられない。
【0020】
患者の身体に作用するため、治療装置10は、4個の非侵襲的刺激ユニット12a~dを備え、各刺激ユニットが、患者の身体に対する刺激を生成するように構成される。換言すると、刺激ユニット12a~dは、患者の身体表面と接しているときに患者の身体に対する刺激を引き起こすように構成される。したがって、刺激ユニット12a~dは、患者に固定されるように意図される。そのため、治療装置10は、更に、刺激ユニット12a~dを患者の身体に取り外し可能に固定するための固定手段(図示せず)を備える。具体的には、固定手段は、刺激ユニット12a~dが患者の身体の様々な部位に固定されるように提供される。したがって、治療装置10が患者の身体に固定された状態で、刺激ユニット12a~dは、互いから離間される。このように、刺激ユニット12a~dは、患者の身体の様々な部位に刺激を生成するように構成される。
【0021】
示された実施形態は、4個の刺激ユニット12a~dを備えるが、3個の刺激ユニットを備えた治療装置でも満足な治療効果を達成できる。したがって、別の実施形態では、治療装置は、3個又は4個を超える刺激ユニットを備えうる。
【0022】
刺激ユニット12a~dによって生成される刺激は、一般に、患者の身体によって、即ちそれぞれの受容器によって知覚されうる刺激を指す。そのような刺激は、例えば光刺激、聴覚刺激、触覚刺激、振動刺激、電気刺激及び/又は温度刺激の様式を有しうる。これらの刺激は、刺激の様式に応じて患者の目、耳及び/又は皮膚内の受容器によって知覚されることがあり、その受容器から患者の脳又は脊髄内のニューロン活動を引き起こす患者の神経系に導かれる。
【0023】
したがって、病的同期活動に冒された神経集団を抑制するために、刺激ユニット12a~dは、患者の身体の受容器によって知覚されてその神経系に導かれるときに、冒された神経集団、即ち患者の脳内の活動を少なくとも部分的に引き起こす患者の身体に対する刺激を生成するように構成される。これを行うため、生成される刺激の様式及び特徴並びに意図される場所(刺激が患者の身体内に誘導される)がそれぞれ、以下により詳細に述べるように設定される。
【0024】
各刺激ユニット12a~dは、前述した刺激の様式の少なくとも1つを生成するように構成されうる。複数の刺激ユニット12a~d全体にわたって、刺激ユニット12a~dは、同じ様式又は異なる様式の刺激を生成するように構成されうる。
【0025】
図1に示された実施形態では、刺激ユニット12a~dはそれぞれ、振動及び/又は触覚刺激を生成するように構成される。そのような構成で、刺激ユニット12a~dは、患者の皮膚に機械的に作用するように構成された刺激要素(ロッドなど)を備えうる。刺激要素は、電気エネルギーを刺激要素の運動に変換する電気機械アクチュエータによって駆動されうる。例えば、電気機械アクチュエータは、電流の印加で形状を変化させる電気活性高分子で構成された等電流モータ、ボイスコイル、圧電型変換器又は変圧器の形で提供されうる。電気機械アクチュエータに電気エネルギーを提供するために、刺激ユニット12a~dは、エネルギー源(即ち、バッテリの形)を含むか、それに接続されうる。そのような構成によって、刺激ユニット12a~dは、様々又は可変の振動数と振幅の振動性刺激を生成するように可変に駆動されうる。したがって、刺激ユニット12a~dは、様々な動作モードで作動されてよく、それぞれの刺激ユニット12a~dが、様々な刺激(即ち、刺激持続時間、周波数、振幅などの点で)を生成する。
【0026】
一般に、人間の皮膚は、2つの大きなカテゴリ、即ち速順応単位(FA)及び遅順応単位(SA)に分類される刺激(即ち、触覚刺激又は振動刺激)を感知できる機械受容性求心性単位を有する。FA単位は、移動刺激並びに段階刺激の攻撃及び除去に応答する。これと対照的に、SA単位は、維持放電に応答する。更に、それらの受容野の特性に基づき、両方のカテゴリは、更に、2つの異なる型に分類される。RA(速順応)単位とも呼ばれ速順応型I(FA I)単位と、遅順応型I(SA I)単位は、皮膚の表面に小さいが明確に区切られた受容野を構成する。これと対照的に、PC(パチーニ小体)単位とも呼ばれる速順応型II(FA II)単位と遅順応型II(SA II)によって構成された受容野は、より幅広く不明瞭な境界を有する。
【0027】
典型的には、様々な型の機械的受容器の分布と密度は、人間の皮膚上の位置により異なる。例えば、人間の手の無毛皮膚に関して、FA I単位の密度は、指先の領域内で比較的高い。これと対照的に、指と手の甲の領域ではFA II単位の密度が比較的高い。
【0028】
4個の異なる型の人間の皮膚の機械的受容器は、質的に異なる刺激に対して最適に応答する。具体的には、SA I及びSA II機械的受容器にはそれぞれ縁端刺激と伸張刺激が最適である。SA I単位は、比較的不規則な維持放電を有することが多く、それに対して、SA II単位は、規則的に放電するが、触覚刺激がない状態で自発放電を示すことが多い。約30Hz~約60Hzの範囲の振動性垂直正弦波皮膚変位は、FA I単位には最適な刺激であるが、約100Hz~約300Hzの範囲の振動性刺激は、FA II単位に最適な刺激である。FA I及び、特にSA I単位は、顕著な縁輪郭感度を有し、したがって、その応答は、刺激接触器表面が受容野に完全には含まれないときの方が強い。したがって、FA I応答を強化するために、刺激要素の平坦で空間的に均一な接触器表面の代わりに、空間的に不均一な窪み断面を有する接触器表面を使用できる。
【0029】
示された実施形態では、刺激ユニット12a~dは、FA I、FA II、SA I及び/又はSA II単位の応答特性に適応された刺激を生成するように設計され構成されうる。この構成で、刺激ユニット12a~dはそれぞれ、FA I、FA II、SA I及びSA II単位の少なくとも1つに応答するように適応された刺激を生成するように構成されうる。例えば、治療装置10は、FA I、FA II、SA I及びSA II単位のうちの1つだけを標的とする刺激を生成するように構成された刺激ユニット12a~dを含みうる。換言すると、これらの刺激ユニット12a~dは、FA I、FA II、SA I及びSA II単位のうちの1つの応答特性に適応された刺激を生成する。代替又は追加として、治療装置10は、FA I、FA II、SA I及びSA II単位の2つ以上を標的とする刺激を生成するように構成された刺激ユニット12a~dを含みうる。例えば、そのような刺激ユニット12a~dは、FA I、FA II、SA I及びSA II単位の複数によって感知される刺激を生成するように構成されうる。代替又は追加として、そのような刺激ユニット12a~dは、様々な動作モードで作動されるように構成され、その様々な動作モードで、様々なFA I、FA II、SA I及びSA II単位の応答特性にそれぞれ適応された様々な刺激が生成される。
【0030】
具体的には、FA I型受容器を標的とする場合、刺激ユニット12a~dは、30Hz~60Hzの振動周波数(即ち、30Hz)と、0.25mmの頂点間振幅を有する振動性刺激を生成するように構成されうる。例えば、この刺激ユニット12a~dは、患者の指先に固定されるように意図されうる。更に、FA II型受容器を標的とする場合、刺激ユニット12a~dは、100Hz~300Hzの振動周波数(即ち、250Hz)と、2.0mmの頂点間振幅とを有する振動性刺激を生成するように構成されうる。例えば、この刺激ユニット12a~dは、患者の指又は手の甲に固定されるように意図されうる。更に、頂点間振幅が十分に大きい場合、FA I型受容器を標的とする低周波数振動がFA II型受容器を更に活動化し、その逆もあることが分かった。したがって、頂点間振幅を、例えば3.0mmの頂点間振幅に増やすことによって、前述した刺激ユニット12a~dがそれぞれ、FA I及びFA II型受容器の両方を刺激するように適応された振動性刺激を生成しうる。
【0031】
治療装置10は、更に、刺激ユニット12a~dを選択的かつ断続的に作動させるための制御ユニット14を備える。制御ユニット14は、接続線16を介して刺激ユニット12a~dのそれぞれに接続され、接続線16を介して、制御信号が、刺激ユニット12a~dを作動させるために制御ユニット14から刺激ユニット12a~dに導かれる。
【0032】
具体的には、制御ユニット14は、連続した活動期間T
A1,...,AiのシーケンスSで刺激ユニット12a~dを作動させるように構成され、文字「i」は、シーケンスS内の活動期間の総数を指す。
図2は、連続した活動期間T
A1,...,AiのシーケンスSを示し、このシーケンスSに従って、治療装置10の刺激ユニット12a~dは、患者のニューロンの病的同期活動を抑制するように作動される。シーケンスSは、制御ユニット14によって生成され、時間経過による刺激ユニット12a~dの活動を示す制御シーケンス又は制御パターンを形成する。したがって、シーケンスSは、治療装置10の刺激ユニット12a~dが選択的かつ断続的に作動される時間期間を示す。活動期間T
A1,...,AiのシーケンスSは、治療装置10によって行なわれる治療(例えば、毎日の治療)の持続時間に対応する持続時間を有しうる。例えば、シーケンスSは、120分の持続時間を有しうる。
【0033】
シーケンスSは、数iのタイムシフトされた重複しない活動期間TA1,...,Aiを含む。この文脈で、用語「活動期間」は、シーケンスS(患者の身体に対する刺激を生成するために刺激ユニット12a~dの少なくとも1つを作動させる期間)内の時間期間を指す。従って、活動期間TA1,...,Aiの持続時間は、刺激ユニット12a~dによって生成される単一刺激の長さに対応する。例えば、活動期間TA1,...,Aiは、25ミリ秒~3秒の持続時間(即ち、約125ミリ秒)を有しうる。代替実施形態で、シーケンス内の活動期間は、少なくとも部分的に重複しうる。
【0034】
図2に描かれたように、連続活動期間T
A1,...,Aiの間に休止期間T
R1,...,Riが予定される。用語「休止期間」は、刺激ユニット12a~dのどれも作動されないシーケンスS内の期間を指す。したがって、休止期間T
R1,...,Ri中、患者の身体は、治療装置10の刺激ユニット12a~dによって生成された刺激を受けない。
【0035】
図2に、それぞれの刺激ユニット12a~dの活動が、活動期間T
A1,...,Ai内に位置決めされた破線範囲によって示される。活動期間T
A1,...,Ai中、制御ユニット14は、
図2に活動期間T
A1、T
A5及びT
Aiによって描かれたように、単一刺激ユニット12を排他的に作動させうる。あるいは、
図2に活動期間T
A2、T
A3及びT
A4によって描かれたように、制御ユニット14は、活動期間T
A1,...,Ai中に複数(例えば、2個又は3個)の刺激ユニット12a~dを同時に作動させうる。本開示の分脈において、それぞれの活動期間T
A1,...,Ai中に同時に作動される刺激ユニット12a~dの数は「n
1,...,i」として示され、ここでnは1を超える整数である。nが1と等しい場合、これは、それぞれの活動期間T
A1,...,Ai中に単一刺激ユニット12a~dが個別に作動されることを意味する。これと対照的に、nが1を超える場合、これは、それぞれの活動期間T
A1,...,Ai中に2個以上(即ち、n)の刺激ユニット12a~dが同時に作動されることを意味する。
図2に描かれたシーケンスSにおいて、n
1、n
5及びn
iは1であり、n
2とn
3は2であり、n
4は3である。
【0036】
より具体的には、制御ユニット14は、活動期間TA1,...,AiのシーケンスS全体にわたって、活動期間TA1,...,Aiごとに、それぞれの活動期間に作動される刺激ユニット12a~dの数n1,...,iを様々に決定するように構成される。この文脈で、用語「様々に」は、数n1,...,iの値がシーケンスS全体にわたって異なるように、即ち非周期的に変化することを意味する。
【0037】
この場合も、この構成で、制御ユニット14は、数n1,...,iに1の値を決定でき、即ち、それぞれの活動期間TA1,...,Ai中に単一刺激ユニット12a~dだけが作動される。これと対照的に、制御ユニット14が、数n1,...,iに1を超える値を決定する場合、これは、即ち、活動期間TA1,...,Ai中に複数の刺激ユニット12a~dが同時に作動されることを意味する。
【0038】
具体的に言うと、刺激によって引き起こされるニューロン活動化の多様性を高めるために、制御ユニット14は、活動期間T
A1,...,Aiの少なくとも1つに関して、
図2に活動期間T
A4によって描かれたように、同時に作動される少なくとも3個の刺激ユニット12a~dを決定するように構成される。換言すると、制御ユニット14は、n
1,...,iの少なくとも1つに3以上の値を決定するように構成される。
【0039】
示された実施形態では、制御ユニット14は、数n1,...,iに関して、1から同時に作動される刺激ユニットの事前設定最大数までの値を決定できる。従って、数n1,...,iは、1から同時に作動される刺激ユニットの最大数までの整数である。最大数は、治療装置10に含まれる刺激ユニット12a~dの総数に対応しうる。治療装置10が3個を超える刺激ユニットを含む場合は、全ての刺激ユニットを同時に作動させることがあまり好ましくないことが分かった。したがって、同時に作動される刺激ユニットの最大数は、治療装置10に含まれる刺激ユニット12a~dの総数より小さい(即ち、1小さい)数に対応しうる。
【0040】
シーケンスS全体にわたって数n1,...,iを様々に決定するために、制御ユニット14は、活動期間TA1,...,Aiそれぞれに関して、刺激ユニット12a~dの数n1,...,iを確率論的及び/又は決定論的に、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで決定するように構成される。例えば、そのために、制御ユニット14は、指数分布プロセス及び/又はマルコフプロセス並びに/又は任意の他の適切な確率論的若しくは決定論的又は確率論と決定論の組み合わせプロセスを使用しうる。このように、シーケンスS内の規則性又は周期性を回避でき、それにより、患者のニューロンの病的同期活動の抑制が頑強かつ有効になる。
【0041】
更に他の発展形において、刺激ユニットの数n1,...,iを決定するプロセスは、数n1,...,iの値が等しい確率又は異なる確率で提供されるように行われうる。このように、数n1,...,iの個々の値での発生頻度がシーケンスS全体にわたって設定されうる。例えば、示されたシーケンスでは、数n1,...,iの値1には50%の確立が提供され、値2には33%の確立が提供され、値3には16%の確立が提供されうる。その結果として、i=6の活動期間を有するシーケンスSでは、3個の活動期間にはn1,...,iの値1が決定され、2つの活動期間にはn1,...,iの値2が決定され、1つの活動期間にはn1,...,iの値3が決定されうる。
【0042】
更に、制御ユニット14は、活動期間TA1,...,AiのシーケンスS全体にわたって、少なくとも3個の刺激ユニット12a~dを含む1組の刺激ユニットから所定数n1,...,iの様々な刺激ユニットを様々に選択するように構成され、選択された刺激ユニット12a~dが、それぞれの活動期間TA1,...,Ai中に個別又は同時に作動される。この文脈で、用語「様々に」は、選択された刺激ユニットが、シーケンスS全体にわたって異なるように(即ち、非周期的に)変化することを意味する。
【0043】
例えば、制御ユニット14が、それぞれの数n1,...,iが1である特定の活動期間TA1,...,Aiに決定された場合、制御ユニット14は、それぞれの活動期間TA1,...,Ai中に個々に作動される1組4個の刺激ユニット12a~dから単一の刺激ユニットを選択する。これと対照的に、制御ユニット14が、それぞれの数n1,...,iが2である特定の活動期間TA1,...,Aiに決定された場合、制御ユニット14は、それぞれの活動期間TA1,...,Ai中に同時に作動される1組4個の刺激ユニット12a~dから2個の異なる刺激ユニットを選択する。
【0044】
刺激で引き起こされるニューロン活動の多様性を更に高めるために、制御ユニット14は、更に、
図2に描かれたように、少なくとも第1及び第2の活動期間(例えば、T
A1とT
A5)に、数n
1,n
5を1の値に設定するように構成される。次に、制御ユニット14は、それぞれの活動期間T
A1,T
A5中に個別に作動される第1の活動期間T
A1に第1の刺激ユニット12aを選択し、第2の活動期間T
A5に第2の刺激ユニット12cを選択するように構成される。換言すると、制御ユニット14は、第1の活動期間に個別に作動される単一の第1の刺激ユニットを選択し、第2の活動期間に個別に作動される単一の第2の刺激ユニットを選択するように構成される。
【0045】
更に、制御ユニット14は、第3の活動期間(例えば、TA3)に、数n3を2の値に設定するように構成される。次に、制御ユニット14は、第3の活動期間TA3に関して、第3の活動期間TA3中に同時に作動される2個の刺激ユニット12a,12cを選択するように構成される。換言すると、制御ユニット14は、第3の活動期間に同時に作動される少なくとも2個の刺激ユニットを選択するように構成される。
【0046】
シーケンスS中に作動される刺激ユニット12a~dを様々に選択するために、制御ユニット14は、各活動期間TA1,...,Aiに、刺激ユニット12a~dの1組から所定数n1,...,iの刺激ユニットを確率論的及び/又は決定論的、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで選択するように構成されうる。例えば、そのために、制御ユニット14は、指数分布プロセス及び/又はマルコフプロセス並びに/又は任意の他の適切な確率論的若しくは決定論的又は確率論と決定論を組み合わせたプロセスを使用しうる。このように、シーケンスS内の規則性又は周期性を回避でき、それにより、患者のニューロンの病的同期活動の頑強で有効な抑制がもたらされる。
【0047】
更に他の発展形において、刺激ユニット12a~dは、制御ユニット14によって選択される等しい確率又は異なる確率が提供されうる。従って、制御ユニットは、個別の刺激ユニット12a~dの所定の確率により刺激ユニット12a~dを選択しうる。このように、作動される個別の刺激ユニット12a~dの発生頻度が、シーケンスS全体にわたって設定されうる。例えば、個別の刺激ユニット12a~dは、シーケンスS中により高い頻度で作動されるように、より高い相対的確率が提供されうる。
【0048】
追加又は代替として、制御ユニット14は、シーケンスS内の活動期間TA1,...,Ai中に個別又は排他的に作動される単一の刺激ユニット12a~d及び/又はシーケンスS内の活動期間TA1,...,Ai中に同時に作動される刺激ユニット12a~dの組み合わせに関して、所定の確率又は所定の発生頻度によりそれぞれの活動期間TA1,...,Aiの刺激ユニット12a~dを選択するように構成されうる。例えば、2個の刺激ユニット12a~dの組み合わせに関して、これらの2個の刺激ユニット12a~dがシーケンスS中に同時に作動されるのを回避するために、確率又は発生頻度が0として設定されうる。換言すると、所定の確率又は発生頻度は、シーケンスS中に単一の刺激ユニット12a~dが個別又は排他的に作動されかつ/又は刺激ユニット12a~dの特定の組み合わせが同時に作動されるのを防ぐように設定されうる。更に他の例では、特定の単一の刺激ユニット12a~dが個別に作動されかつ/又は特定の組み合わせの刺激ユニット12a~dが同時に作動される確率又は発生頻度は、シーケンスS中にそれらの刺激ユニットがより頻繁に作動されるように比較的高く設定されうる。更に、所定の確率又は発生頻度は、シーケンスS中に変化してもよい。
【0049】
前述されたように、刺激ユニット12a~dは、様々な動作モードで操作されてもよく、それぞれの刺激ユニット12a~dは、様々な刺激(即ち、刺激持続時間、周波数、振幅などの点で)を生成する。従って、制御ユニット14は、選択された刺激ユニット12a~dのそれぞれに関して、それぞれの刺激ユニット12a~dの所定の組の動作モードから1つの動作モードを様々に選択するように構成される。
【0050】
示された実施形態では、
図2に描かれたように、刺激ユニット12a~dはそれぞれ、「O1」と示された第1の動作モードと「O2」として示された第2の動作モードで作動されてもよく、それぞれの刺激ユニット12a~dの動作モードは、例えば、刺激持続時間、刺激強度、例えば振戦振幅、刺激周波数及び/又は刺激経時変化の点で、刺激ユニット12a~dによって生成される刺激の特徴が異なる。
図2で、異なる動作モードO1及びO2が、作動範囲の異なる網掛けによって示される。
【0051】
具体的には、動作モードを様々に選択するために、制御ユニット14は、選択された刺激ユニット12a~dごとに、それぞれの刺激ユニット12a~dの所定組の動作モードから1つの動作モードを確率論的及び/又は決定論的、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで選択するように構成される。そうするため、制御ユニット14は、指数分布プロセス及び/又はマルコフプロセス及び/又は任意の他の適切な確率論的若しくは決定論的又は確率論と決定的を組み合わせたプロセスを使用しうる。
【0052】
前述され
図2に描かれたように、連続した活動期間T
A1,...,Aiの間に休止期間T
R1,...,Riが予定される。これらの休止期間T
R1,...,Riは、制御ユニット14によって生成又は規定される。具体的には、制御ユニット14は、シーケンスS内の各休止期間T
R1,...,Riの持続時間を様々に決定するように構成される。この文脈で、用語「様々に」は、休止期間T
R1,...,Riの所定の持続時間が、シーケンスS全体にわたって様々に(即ち、非周期的に)変化することを意味する。制御ユニット14は、少なくとも1つの休止期間T
R1,...,RIに持続時間を0秒に設定して、その結果、2つの連続的に予定された活動期間T
A1,...,Aiが、シーケンス内で次々と続くように構成されうる。
【0053】
休止期間TR1,...,Riを様々に決定するために、制御ユニット14は、休止期間TR1,...,Riの持続時間を確率論的及び/又は決定論的、及び/又は確率論と決定論的の組み合わせで決定するように構成される。例えば、そのために、制御ユニット14は、指数分布プロセス及び/又はマルコフプロセス及び/又は任意の他の適切な確率論的若しくは決定論的又は確率論と決定的を組み合わせたプロセスを使用しうる。このように、病的同期及び振動ニューロン活動に固有の周期性を不利に妨げうるシーケンスS内の規則性又は周期性が回避されうる。
【0054】
取り扱い易くするため、以下では、活動期間TRxとその後の休止期間TRxの合計は作動サイクルTCxと呼ばれる。シーケンスにおける1組の作動サイクルTC1,...,Ci内のわずかな周期性又は繰返しが、典型的には、提案された治療装置10の治療効果を損なわないことが分かった。例えば、1組の決定された作動サイクルTC1,...,Ciが、同一休止期間の持続時間の10%を含む場合でも、提案された治療装置10は、意図された治療効果を相変わらず提供しうる。しかしながら、制御ユニット14は、1組の所定の作動サイクルTC1,...,Ciが、同一持続時間の10%、5%又は1%未満を含むように、休止期間TR1,...,Riの持続時間を決定するように構成されうる。
【0055】
あるいは、制御ユニット14は、シーケンスSで、休止期間TR1,...,Ri又は作動サイクルTC1,...,Ciが等しい持続時間を有するように、休止期間TR1,...,Riを規定又は生成するように構成されうる。
【0056】
前述されたように、幾つかの脳障害は、特定の周波数帯で特徴的な異常ニューロン振動活動と関連付けられる。例えば、パーキンソン病の患者の基底核内の深部記録から、振動に関連したシータ帯域(4Hz~7Hz)活動と動作緩慢に関連したベータ帯域(9Hz~35Hz)活動が明らかになった。詳細には、異常なニューロン振動を様々な周波数帯で見つけることができる。
【0057】
従って、制御ユニット14は、活動シーケンスSの平均周波数が、脳疾患と関連した最低周波数帯の上側帯域端(例えば、振戦のあるパーキンソン患者では7Hz)を超えないように、休止期間TR1,...,Riを決定するように構成されうる。平均周波数は、シーケンスS内の平均活動期間の持続時間と平均休止期間の持続時間の和の逆数に対応するか又はそれによって計算されうる。あるいは、制御ユニット14は、活動シーケンスSの平均周波数が、脳疾患と関連した最低優位周波数の5%の範囲内、又は脳疾患と関連した優位周波数より最大2倍あるいは最大5倍低くなるように、休止期間TR1,...,Riを決定するように構成されうる。
【0058】
図3は、シーケンスSを生成するために制御ユニット14によって使用される手順を示す流れ図を示す。手順は、生成されたシーケンスSに従って刺激ユニット12a~dを作動させる前に制御ユニット14によって行なわれうる。あるいは、この手順は、シーケンスS中、即ち刺激ユニット12a~dの作動中に連続的に行なわれうる。
【0059】
以下で、手順のステップは、
図3を参照してより詳細に述べられる。シーケンスSは、
図2に描かれたように、数iの様々な活動期間T
A1,...,Aiを含む。示された手順では、ステップS2~S10は、各活動期間T
A1,...,Aiに繰り返し連続的に実行される。
【0060】
段階S1で、制御変数xの値が1に設定される。このようにして、手順のステップS2~S7で、最初に、シーケンスSの第1の活動期間TA1が生成される。具体的には、ステップS2で、制御ユニット14は、活動期間TA1中に作動される刺激ユニット12a~dの数n1を様々に、即ち確率論的及び/又は決定論的、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで決定する。次に、ステップS4~S7で、制御ユニット14は、治療装置10の4個の刺激ユニット12a~dから所定数n1の刺激ユニットを連続して選択し、これらのステップは、活動期間TA1,...,Aiごとに複数の刺激ユニット12a~dのそれぞれを1回だけ選択できるように行われる。具体的には、選択された刺激ユニット12a~dごとに、制御ユニット14は、ステップS5によって選択された刺激ユニット12a~dに関して、所定組の動作モードから1つの動作モードを様々に、即ち確率論的及び/又は決定論的、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで選択する。
【0061】
その後、ステップS8で、制御ユニット14は、休止期間TR1の持続時間を様々に、即ち確率論的及び/又は決定論的に、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで決定する。次に、ステップS9で、制御変数xが1増分され、前述のステップS2~S9が、シーケンスSで生成される様々な活動期間TA1,...,Aiの総数iを制御変数xが超えるまで繰り返される。
【0062】
図4は、治療装置10の別の実施形態を示す。
図1に描かれた実施形態と比較して、
図4の医療機器10は、刺激ユニット12a~dによって生成された刺激を閉ループ制御するための手段を含む。従って、治療装置10は、更に、刺激効果及び/又はニューロン活動、即ち、患者の脳若しくは脊髄及び/又は筋肉活動を測定又は評価するためのセンサユニット18を含む。したがって、治療装置10は、センサユニット18を患者の身体に結合するための更に他の固定手段を備える。センサユニット18は、20による接続を介して制御ユニット14に接続され、この接続により、測定又はアクセスされた情報又はデータを制御ユニット14に導く。あるいは、センサ18は、制御ユニット14に無線で接続されうる。
【0063】
この構成で、制御ユニット14は、センサユニット18によって取得された情報により、連続した活動期間TA1,...,AiのシーケンスSを生成又は適応させるように構成される。具体的には、制御ユニット14は、センサ18によって取得された情報により、数n1,...,iを決定し、活動期間TA1,...,Aiごとに所定数n1,...,iの異なる刺激ユニット12a~dを選択し、選択された刺激ユニット12a~dごとに動作モードを選択し、かつ/又は各休止期間TR1,...,Riの持続時間を決定する。
【0064】
センサユニット18は、少なくとも1つの非侵襲的センサを含みうる。例えば、これは、脳波聴力検査(EEG)記録(脳活動の評価)、電磁式脳造影法(MEG)記録(脳活動の評価)、筋電計測法(EMG)記録(筋肉活動(例えば、振戦)の評価)を取得するためのセンサを含みうる。更に、センサユニットは、加速度計(振戦又は運動量を測定する)などの運動パラメータを登録するためのセンサを含みうる。
【0065】
代替又は追加として、センサユニット18は、少なくとも1つの侵襲性センサを含みうる。例えば、そのような侵襲性センサは、活動ニューロンによって生成された信号(詳細には局所電場ポテンシャル(LFP))を提供するために、患者の脳に埋め込まれるように構成された電極(例えば、上皮質、硬膜外、皮質内又は深さ電極)の形で提供されうる。より侵襲性でない代替は、皮下電極(即ち、頭部の皮膚の下に埋め込まれた電極)である。
【0066】
より具体的には、一実施形態で、制御ユニット14は、センサユニット18によって取得された情報又はデータにより、刺激ユニット12a~dによって生成された刺激の特徴(例えば、刺激持続時間、刺激強度、刺激周波数及び/又は刺激経時変化)に適応するように構成されうる。例えば、センサユニット18が、EEG、MEG、EMG又はLFP記録で疾病に関連した高レベルのスペクトルパワーを検出又は測定した場合、制御ユニット14は、刺激ユニット12a~dによって生成された単一刺激の振幅及び/又は持続時間を増大させることによって刺激強度をそれぞれ増大させるように構成されうる。
【0067】
更に他の発展形において、制御ユニット14は、センサユニット18によって取得された情報又はデータにより、刺激ユニット12a~dによって生成された刺激の特徴に繰り返し適応するように構成されうる。詳細には、制御ユニット14は、センサユニット18の取得データを分析して、刺激ユニット12a~dによって生成された刺激の特徴に選択的に適応するように構成されうる。例えば、制御ユニット14は、センサユニット18によって取得されたEEG、MEG、EMG及び/又はLFP記録に基づいて分光分析を行いうる。次に、治療装置10によって行なわれた1つ以上の治療の時間期間にわたって、制御ユニット14は、脳活動の変化、詳細には、刺激ユニット12a~dによって患者の身体を刺激することによって引き起こされた疾病関連の周波数帯(例えば、パーキンソン病ではシータ及び/又はベータ帯域)のスペクトルパワーの変化を登録するように構成されうる。その後、刺激ユニット12a~dによって生成された刺激の特徴が、スペクトルパワーを変化させその変化をセンサユニット18によって追跡するように段階的又は反復的に変更される。例えば、一方的又は双方向刺激を引き起こす電気パルスの振動幅又は振幅、単一の振動又は電気刺激の長さ、刺激装置の数、患者の身体における刺激ユニット12a~dの位置などのパラメータ又は特徴の少なくとも1つが変更されうる。このようにして、制御ユニット14は、疾病に関連したスペクトルパワーを最も著しく減少させる刺激の関連特徴又はパラメータを自動的に識別し適応させうる。
【0068】
更に、センサユニット18によって取得される情報又はデータは、制御ユニット14によって、活動シーケンスの平均周波数に適応するため、即ち、シーケンスS内の休止期間TR1,...,Riをそれぞれ変化させることによって使用されうる。例えば、制御ユニット14は、センサユニット18によって取得されたEEG、MEG、EMG及び/又はLFP記録に基づいて分光分析を行なって、支配的な振動周波数成分を決定できる。これに基づいて、制御ユニット14は、活動シーケンスSの平均周波数を適応させて、平均周波数が、フィードバック信号の最低優位周波数の下限の±5%の範囲になるか、フィードバック信号の最低優位周波数の下縁になるか、フィードバック信号の最低優位周波数より最大2倍更には最大5倍になるように構成されうる。
【0069】
追加又は代替として、制御ユニット14は、センサユニット18による取得データ又は情報により患者に警告信号を生成するように構成されてもよく、この警告信号は、例えば毎日の治療時間を長くすることを示す。したがって、治療装置10は、警告信号を出力するための手段(例えば、表示装置又は送信ユニット)を含みうる。具体的には、送信ユニットは、警告信号を患者に表示できる患者のモバイル装置(携帯電話など)に警告信号を出力するように構成されうる。
【0070】
図5は、センサユニット24に無線で結合されうる、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用グローブ22の形の治療装置を概略的に示す。治療用グローブ22は、患者の右手26に固定され、センサユニット24は、患者の頭部25に固定されうる。この構成では、センサユニット24は必須でない。
【0071】
治療用グローブ22は、前述のような治療装置10を構成する。したがって、治療装置10に関して前述された技術的特徴は、治療用グローブ22にも関連し適用されうる。
【0072】
治療用グローブ22は、患者の手26の異なる指(即ち、指先)に固定された5個の第1の刺激ユニット12a~eと、患者の手の甲に固定された少なくとも1個の第2の刺激ユニット12fとを含む。刺激ユニット12a~fは、質的に異なる機械的刺激器を含みうる。例えば、第1の刺激ユニット12a~eは、ピエゾバイブレータを含み、第2の刺激ユニット12fは、リニアモータ又はボイスコイルを含みうる。
【0073】
更に、治療用グローブ22は、活動期間のシーケンス内で刺激ユニット12a~fを選択的かつ断続的に作動させるための制御ユニット14を含み、制御ユニット14は、活動期間のシーケンス全体にわたって、活動期間ごとに、それぞれの活動期間に同時に作動される刺激ユニットの数nを様々に決定するように構成される。制御ユニット14は、2本の隣り合った指に固定された2個の第1の刺激ユニット12a~e及び/又は全ての第1の刺激ユニット12a~eがシーケンス中に同時に作動されるのを防ぐように構成されうる。
【0074】
治療用グローブ22は、更に、制御ユニット14に接続されて制御ユニット14とセンサユニット24間の通信を可能にするように構成された無線通信ユニット28を含む。刺激ユニット12a~f、制御ユニット14及び無線通信ユニット28のそれぞれに電気エネルギーを供給するための充電式バッテリ(図示せず)が提供される。更に、刺激ユニット12a~f、制御ユニット14、無線通信ユニット28及び充電式バッテリは、取り外し可能なマジックテープ固定手段によって治療用グローブ22に埋め込まれる。
【0075】
センサユニット24は、患者の頭部25内のニューロンの刺激効果とニューロン活動を測定するために構成される。こうして取得された情報又はデータを制御ユニット14に送信するため、センサユニット24は、治療用グローブ22の通信ユニット28と無線通信するための更に他の通信ユニット30を備える。
【0076】
より具体的には、刺激効果及びニューロン活動を測定するため、センサユニット24は、センサユニット24のコントローラ36に接続された2つの非侵襲的EEG電極34を有する。代替実施形態で、センサユニット24は、代替又は追加として、患者の頭部25に埋め込まれるか埋め込まれるように構成されかつコントローラ36に接続された侵襲性電極(図示せず)(例えば、上皮質電極)を含みうる。
【0077】
コントローラ36は、電極34によって提供された信号を増幅し分析して、こうして取得された情報を、通信ユニット28,30を介して、治療用グローブ22の制御ユニット14に無線送信する。代替実施形態で、治療用グローブ22の制御ユニット14は、接続線によってセンサユニット36のコントローラ36に接続されうる。
【0078】
更に他の発展形では、患者の左手用の更に他の治療用グローブが追加で提供されうる。この更に他の治療用グローブは、患者の右手用の治療用グローブ22の構成と同様に、患者の左手の異なる指(即ち、指先)に固定された5個の第1の刺激ユニットと、患者の左手の甲に固定された少なくとも1個の第2の刺激ユニットとを備えうる。更に、これは、左治療用グローブの制御ユニットを右治療用グローブ22の制御ユニット14と無線接続するために、刺激ユニットと無線通信ユニットに接続された制御ユニットをそれぞれ備えうる。具体的には、右治療用グローブ22の制御ユニット14は、活動期間のシーケンスに従って、右と左両方の治療用グローブの刺激ユニットを作動させるための制御信号を生成する中央制御装置として機能しうる。従って、左治療用グローブの制御ユニットは、右治療用グローブ22の制御ユニット14から制御信号を受け取るように構成されてもよく、その制御信号に従ってそれぞれの刺激ユニットを作動させる。この構成では、左及び右手用の治療用グローブは、センサユニットと共に、患者のニューロンを刺激してその病的同期活動を抑制するための治療システムを構成する。治療システムは、更に及び/又は他の治療装置を含むことができ、その動作は、治療装置のうちの1つの治療装置の制御ユニットに関連付けられた中央制御装置によって制御されるか、治療装置とは別に提供された中央制御装置(例えば、パーソナルコンピュータ)に関連付けられうる。
【0079】
図6は、センサユニット24に無線で結合されうる、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用首及び/又は肩バンド38の形の治療装置を概略的に示す。治療用首及び/又は肩バンド38は、患者の首及び/又は肩に固定され、センサユニット24は、患者の頭部25に固定されうる。この構成で、センサユニット24は必須ではない。
【0080】
治療用首及び/又は肩バンド38は、前述のような治療装置10を構成する。したがって、治療装置10及び/又は治療用グローブ22に関連して前述された技術的特徴は、治療用首及び/又は肩バンド38にも関連し適用されうる。
【0081】
医療首及び/又は肩バンド38は、患者の首に固定された複数の第1の刺激ユニット12a~c及び/又は患者の肩に固定された複数の第2の刺激ユニット12d~iを備える。第1及び第2の刺激ユニットは、10Hz~300Hz(即ち、70Hz~120Hz)の振動周波数と、最大0.8mmの頂点間振幅とを有する振動性刺激を生成するように構成されうる。
【0082】
図7は、センサユニット24に無線で接続されうる、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用喉頭バンド40の形の治療装置を概略的に示す。治療用喉頭バンド40は、首バンド又は首カフによって患者の首に固定され、センサユニット24は、患者の頭部25に固定されうる。この構成では、センサユニット24は必須ではない。治療用喉頭バンド40は、前述されたような治療装置10を構成する。したがって、前述された技術的特徴は、治療用喉頭バンド40にも関連し適用されうる。治療用喉頭バンド40は、患者の喉頭の領域内にある複数の刺激ユニットを含む。
【0083】
図8は、センサユニット24に無線で結合されうる、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用フェースマスク又はバンド42の形の治療装置を概略的に示す。治療用フェースマスク又はバンド42は、バンド又はマスクによって患者の顔に固定され、センサユニット24は、患者の頭部25に固定されうる。この構成で、センサユニット24は必須ではない。前述したように、治療用フェースマスク又はバンド42は、治療装置10を構成する。したがって、前述された技術的特徴は、治療用フェースマスク又はバンド42にも関連し適用されうる。治療用フェースマスク又はバンド42は、患者の顔の皮膚に位置された複数の刺激ユニット12を含む。
【0084】
図9は、センサユニット24に無線で結合されうる、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用シートパッド44の形の治療装置を概略的に示す。治療用シートパッド44は、患者がその上に座ることができるように提供され構成される。センサユニット24は、患者の頭部25に固定されうる。この構成で、センサユニット24は必須ではない。前述したように、治療用シートパッド44は、治療装置10を構成する。したがって、前述された技術的特徴が、治療用シートパッド44にも関連し適用されうる。治療用シートパッド44は、治療用シートパッド44内に位置された複数の刺激ユニット12を含む。
【0085】
図10は、センサユニット24に無線で結合されうる、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用腹巻46の形の治療装置を概略的に示す。治療用腹巻46は、患者の腹部の領域内で身体に固定され、センサユニット24は患者の頭部25に固定されうる。この構成で、センサユニット24は必須ではない。前述したように、治療用腹巻46は、治療装置10を構成する。したがって、前述された技術的特徴が、この治療用腹巻46にも関連し適用されうる。治療用腹巻46は、患者の腹部の領域内に位置された複数の刺激ユニット12a~hを含む。
【0086】
これらの実施形態及び項目が単に複数の可能性の例を表していることは当業者に明白である。従って、ここに示された実施形態は、そのような特徴及び構成の制限を構成するように理解されるべきでない。述べた特徴の任意の可能な組み合わせ及び構成は、本発明の範囲に従って選択されうる。
【0087】
これは、詳細には、前述された幾つか又は全ての実施形態、項目及び/又は特徴と任意の技術的に実現可能な組み合わせで組み合わされうる以下の任意選択の特徴に関して当てはまる。
【0088】
患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療装置が示唆されうる。治療装置は、患者の身体に対する刺激を生成するための少なくとも3個の非侵襲的刺激ユニットを含みうる。治療装置は、更に、活動期間のシーケンス内で刺激ユニットを選択的かつ断続的に作動させるための制御ユニットを含み、制御ユニットは、活動期間のシーケンス全体にわたって、活動期間ごとに、それぞれの活動期間に同時に作動される刺激ユニットの数nを様々に決定するように構成されうる。
【0089】
前述されたように、幾つかの脳疾患(即ち、パーキンソン病)を引き起こすニューロンの異常に強い同期活動は、異常にアップレギュレートされたシナプス結合によって引き起こされうる。異常なニューロンの同期プロセスを長期間持続的に打ち消すには、特にシナプス重量をダウンレギュレートすることが好ましい。
【0090】
異常シナプス重量の効果的ダウンレギュレーションは、様々な構成(即ち、位置と量の点で)の神経集団の相互にタイムシフトされた活動化による神経集団の活動化によって達成されうることが分かった。従って、連続活動期間のシーケンス内で同時に作動される刺激ユニットの数nを様々に決定する制御ユニットを提供することによって、提案された装置は、刺激によって引き越されるニューロン活動化の多様性を確実に改善し高める。その結果、刺激ユニットによって刺激される神経集団は、位置と量両方の点で、ある活動期間と別の活動期間で異なる。それにより、この装置は、ニューロンの病的同期活動を効果的に抑制することを、即ち、ニューロンの病的同期活動を非同期化することによって可能にする。
【0091】
その目的のため、既知の非侵襲的多チャンネル刺激治療装置では、複数の異なる刺激が、治療中に頻繁に(即ち、連続ループで)繰り返される所定の周期的刺激パターンに従って生成される。更に、そのような周期的刺激パターンは、治療中に病的同期活動と一致し繰り返し重複する生成刺激によって引き起こされるニューロンを活動化させることが分かった。これと対照的に、提案された治療装置は、様々に変化する構成の神経集団のタイムシフトされた活動化を提供する。このようにして、特定の神経集団が周期的に刺激されることが回避されうる。したがって、提案された治療装置は、既知の非侵襲的多チャンネル刺激治療装置と比べて、刺激送出レートと病的ニューロン振動の優位周波数の間の離調に対して頑強である。これは、特に、治療装置が非侵襲的に操作されるとき、即ち、上皮質電極などの埋め込み侵襲的センサからのフィードバックがないときに好ましい。
【0092】
更に他の発展形では、シーケンスの活動期間の少なくとも1つに関して、制御ユニットは、同時に作動される少なくとも3個の刺激ユニットを決定するように構成されうる。換言すると、シーケンスの活動期間の少なくとも1つに関して、制御ユニットは、nの値を3に設定する。代替又は追加として、制御ユニットは、シーケンスの活動期間の少なくとも1つに関して、それぞれの活動期間に、単一の刺激ユニットが個別又は排他的に作動されるようにnの値を1に決定又は設定するように構成されうる。代替又は追加として、制御ユニットは、シーケンスの活動期間の少なくとも1つに関して、それぞれの活動期間に、2個の刺激ユニットが同時に作動されるようにnの値を2に決定又は設定するように構成されうる。このようにして、活動シーケンスの高い多様性を保証でき、その結果、患者のニューロンが非相関式に発射又はバーストされ、それにより、患者の標的神経集団内で異常にアップレギュレートされたシナプス重量を大幅かつ確実に低減できる。
【0093】
刺激ユニットは、患者の身体の様々な部位に刺激を生成するように構成されうる。このようにして、治療装置がより大きい神経集団を刺激でき、それにより、刺激されたニューロンの空間の多様性が高まる。具体的には、刺激ユニットは、患者の体表面で刺激を生成するように構成されうる。代替又は追加として、刺激ユニットは、触覚刺激及び/又は振動刺激及び/又は電気刺激を生成するように構成されうる。
【0094】
制御ユニットは、数nの値に、1と治療装置に含まれる刺激ユニットの総数との間の整数を決定するように構成されうる。あるいは、装置が、3を超える数uの刺激ユニットを含むとき、数nの値は、1とu-1の間の整数でよい。
【0095】
数nを様々に決定するために、制御ユニットは、活動期間ごとに、それぞれの活動期間に同時に作動される刺激ユニットの数nを、確率論的及び/又は決定論的、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで決定するように構成されうる。
【0096】
更に、制御ユニットは、活動期間のシーケンス全体にわたって、装置の少なくとも3個の刺激ユニットから所定数nの異なる刺激ユニットを様々に選択するように構成される。例えば、制御ユニットは、第1の活動期間に個別に作動される単一の第1の刺激ユニットと、第2の活動期間に個別に作動される単一の第2の刺激ユニットを選択するように構成されうる。更に、制御ユニットは、第3の活動期間に同時に作動される少なくとも2個の刺激ユニットを選択するように構成されうる。具体的には、制御ユニットは、活動期間ごとに、治療装置の少なくとも3個の刺激ユニットから所定数nの刺激ユニットを確率論的及び/又は決定論的に、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで選択するように構成されうる。
【0097】
代替又は追加として、制御ユニットは、それぞれの活動期間の刺激ユニットを、シーケンス内の活動期間に個別に作動される単一刺激ユニット及び/又はシーケンス内の活動期間に同時に作動される刺激ユニットの組み合わせの所定の確率又は所定の発生頻度に従って選択するように構成されうる。例えば、確率又は所定の発生頻度は、シーケンス内で単一刺激ユニットが個別に作動されかつ/又はシーケンス内で特定の組み合わせの刺激ユニットが同時に作動されるのを防ぐように設定されうる。
【0098】
代替又は追加として、制御ユニットは、選択された刺激ユニットのそれぞれに関して、それぞれの刺激ユニットの所定組の動作モードから1つの動作モードを様々に選択するように構成されうる。それぞれの刺激ユニットの動作モードは、刺激持続時間、刺激強度、刺激周波数及び/又は刺激経時変化の点で、刺激ユニットによって生成される刺激の特徴が異なってもよい。
【0099】
例えば、生成される刺激は、刺激強度の経時変化を指す振幅曲線に基づいて指定されうる。この文脈で、刺激は、例えば機械的刺激又は振動の形で提供されるときに様々な波形で生成されうる。詳細には、制御ユニットは、一連の活動期間の間及び/又はそれぞれの活動期間の間中に異なる刺激の波形を様々に設定するように構成されうる。例えば、そうするため、制御ユニットは、指数分布プロセス及び/又はマルコフプロセス及び/又は任意の他の適切な確率論的若しくは決定論的又は確率論と決定論の組み合わせプロセスを使用しうる。具体的には、刺激は、正弦波又は台形波の形で提供されるように生成されうる。
【0100】
様々な波形が異なるパワースペクトルを有しうるので、様々な波形が固有受容性受容器を違う風に活動化しうることが分かった。実体に関して、台形波形のスペクトルは、より高い周波数成分を含みうる。したがって、前述のRA(速順応)単位と前述のPC(パチーニ小体)単位の既知の同調特性の場合、十分に小さい振幅の正弦波を有する30Hzの振動が、速順応型I(FA I)単位とも呼ばれるRAユニットの受容器を活動化し、即ち支配的に活動化しうる。更に、正弦波と比較して実質的に一致するか同一の振幅を有する台形波形を有する30Hzの振動は、速順応型II(FA II)単位とも呼ばれるPAユニットの受容器を活動化しうる。
【0101】
したがって、身体の同一部分、例えば同じ指先に送られる様々な振動性刺激によって刺激されるニューロン副次集団の範囲及び構成を変化させるために、刺激波形(詳細にはシーケンス内)が、例えばある刺激と別の刺激で変更され、詳細には決定論的又は確率論的又は決定論と確率論の組み合わせで変更されうる。
【0102】
更に他の発展形では、制御ユニットは、連続した活動期間の間の休止期間を規定するように構成されうる。従って、制御ユニットは、シーケンス全体にわたって各休止期間の持続時間を様々に決定するように構成されうる。この様にして、活動シーケンスのより高い多様性を保証でき、その結果、患者のニューロンが無相関的に発射又はバーストされ、それにより、患者の神経集団内の異常にアップレギュレートされたシナプス重量の顕著で頑強な低減が可能になる。具体的には、制御ユニットは、休止期間のそれぞれの持続時間を確率論的及び/又は決定論的に、及び/又は確率論と決定論の組み合わせで決定するように構成される。
【0103】
治療装置は、更に、ニューロンに対する刺激の影響を測定するためのセンサユニットを含むことができ、制御ユニットは、刺激ユニット及び/又は活動期間のシーケンスによって生成される刺激を、センサユニットによって測定された情報により適応させるように構成されうる。
【0104】
更に、患者の手に固定され、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用グローブが提案されうる。前述したように、治療用グローブは、治療装置を構成するか含みうる。したがって、治療装置に関して記述した技術的特徴が、この治療用グローブにも関連し適用されうる。
【0105】
更に、患者の身体に固定され、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用バンドが提案されうる。治療用バンドは、前述したように治療装置を構成するか含みうる。したがって、治療装置に関して述べた技術的特徴が、この治療用バンドにも関連し適用されうる。具体的には、この治療用バンドは、治療用首及び/又は肩バンド、治療用喉頭バンド、治療用フェースバンド及び/又は治療用腹巻でよい。
【0106】
更に、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用シートパッドが提案され、患者がこの治療用シートパッドに座ることができる。前述したように、治療用シートパッドは、治療装置を構成するか又は含みうる。したがって、治療装置に関して述べた技術的特徴がこの治療用シートパッドにも関連し適用されうる。
【0107】
更に、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療用靴底(即ち、中敷)が提供される。前述したように、治療用靴底は、治療装置を構成するか含みうる。したがって、治療装置に関して述べた技術的特徴は、この治療用靴底にも関連し適用されうる。
【0108】
更に、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療システムが提案されてもよく、この治療システムは、2つ以上の前述された治療装置を含む。具体的には、治療システムは、更に、治療装置の制御信号を生成するための中央制御装置を含みうる。例えば、中央制御装置は、治療装置のうちの1つの治療装置の制御ユニットによって構成されうる。
【0109】
更に、患者のニューロンを刺激して病的同期活動を抑制するための治療方法が提案される。この方法は、患者の身体に対する刺激を生成するための少なくとも3個の非侵襲的刺激ユニットを提供するステップと、活動期間のシーケンスに従って刺激ユニットを選択的かつ断続的に作動させるステップとを含み得て、それぞれの活動期間に同時に作動される刺激ユニットの数nは、シーケンス全体にわたって様々に変化でき、活動期間のうちの少なくとも1つの活動期間に3個の刺激ユニットが同時に作動されうる。代替又は追加として、活動期間の少なくとも1つの活動期間に、単一の刺激ユニットが排他的又は個別に作動されうる。代替又は追加として、活動期間の少なくとも1つの活動期間に、2個の刺激ユニットが同時に排他的に作動されうる。提案された方法は、前述したような治療装置に使用されうる。したがって、治療装置に関して述べた技術的特徴が、この方法にも関連し適用されうる。
【符号の説明】
【0110】
10 治療装置
12 刺激ユニット
14 制御ユニット
16 接続線
18 センサユニット
20 接続線
22 治療用グローブ
24 センサユニット
25 患者の頭部
26 患者の手
28 通信ユニット
30 更に他の通信ユニット
34 EEG電極
36 コントローラ
38 治療用首及び/又は肩バンド
40 治療用喉頭バンド
42 治療用フェースマスク又はバンド
44 治療用シートパッド
46 治療用腹巻