(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】電池加熱システムの制御方法、電池管理モジュール、モータコントローラ及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20221027BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20221027BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221027BHJP
H01M 10/667 20140101ALI20221027BHJP
B60L 58/25 20190101ALI20221027BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/667
B60L58/25
(21)【出願番号】P 2021087481
(22)【出願日】2021-05-25
(62)【分割の表示】P 2019234397の分割
【原出願日】2019-12-25
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】201811640742.5
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】322005415
【氏名又は名称】寧徳時代潤智軟件科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Runzhi Software Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.2 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian 352100, China
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】左 希▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】但 志敏
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】侯 ▲貽▼真
(72)【発明者】
【氏名】李 国▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲興▼▲遠▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲艶▼茹
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-072955(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104538701(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103560304(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池加熱システムの制御方法であって、
電池管理モジュールが、電池パックの温度と、前記電池パックの残存電力量SOCを取得することと、
前記電池パックの前記温度が予め設定された温度閾値より低く、且つ前記電池パックの前記残存電力量SOCが予め設定されたSOC閾値より高い時、前記電池管理モジュールが電池加熱要求を車両用コントローラに送信し、前記車両用コントローラにより車両が静置状態にあり且つモータが作動していないと判定された場合、前記電池加熱要求に応じて電池加熱指令を
モータコントローラに送信することと、
前記モータコントローラが電池加熱指令を受信した後、通信確立要求を前記車両用コントローラに送信し、前記車両用コントローラが前記通信確立要求に応じて前記モータコントローラと前記電池管理モジュールとの間の通信権限を解放して、前記電池管理モジュールと前記モータコントローラとはハンドシェイク通信を行うことと、
前記電池管理モジュールが、第1のスイッチ及び第2のスイッチの両方が閉じられるように制御し、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの両方が閉じられた後、スイッチ閉成情報を前記モータコントローラに送信して前記電池パックを加熱すること、とを含み、
前記スイッチ閉成情報が前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの閉成情報を含み、前記第1のスイッチが電池パックの正極に接続され、前記第2のスイッチが前記電池パックの負極に接続され、スイッチアセンブリが前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの間に接続される、ことを特徴とする電池加熱システムの制御方法。
【請求項2】
前記電池管理モジュールが、前記電池パックの加熱過程において、前記電池パックの状態パラメータに基づいて、所望の周波数及び所望のデューティ比を取得して前記モータコントローラに送信し、前記モータコントローラが前記スイッチアセンブリに
前記所望の周波数及び前記所望のデューティ比を有する駆動信号を供給させる、ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項3】
前記電池パックの負極と前記第2のスイッチとの間に電流センサが配置され、前記電池管理モジュールが、前記電池パックの加熱過程において、前記電池パックの温度、前記電池パックの電圧、前記電池パックのSOC、前記電流センサによって取得された加熱電流及び前記スイッチアセンブリの温度のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電池加熱システムが正常作動モードになっているかどうかを判断することと、
前記電池加熱システムが正常作動モードになっていないと、異常状態情報を前記モータコントローラに送信すること、とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項4】
前記モータコントローラが、前記異常状態情報を受信すると、前記スイッチアセンブリをオフ状態に制御すると共に、第1のスイッチアセンブリ状態情報を前記電池管理モジュールに送信することと、
前記電池管理モジュールが、前記第1のスイッチアセンブリ状態情報を受信すると、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチをオフにすること、とを含むことを特徴とする請求項3に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項5】
前記電池管理モジュールが、前記電池パックの加熱過程において、前記電池パックの温度
が予め設定された加熱温度に達したと判定した場合、加熱停止指令を前記モータコントローラに送信することと、
前記
モータコントローラが、前記加熱停止指令に応じて前記スイッチアセンブリをオフ状態に制御すると共に、第3のスイッチアセンブリ状態情報を前記電池管理モジュールに送信することと、
前記電池管理モジュールが、前記第3のスイッチアセンブリ状態情報を受信すると、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチをオフにすることとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項6】
前記電池管理モジュールは、加熱作動モードが終了されたことを判定した後、通信機構を遮断し、通信遮断情報を前記車両用コントローラに報知する、ことを特徴とする請求項5に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項7】
電池加熱システムの制御方法であって、
モータコントローラは、車両用コントローラから送信された電池加熱指令を受信し、前記車両用コントローラが電池管理モジュールから電池加熱要求を受信すると共に車両が静置状態にあり且つモータが作動していないと判定された場合、前記電池加熱指令が送信されることと、
前記モータコントローラが通信確立要求を前記車両用コントローラに送信し、前記車両用コントローラが前記通信確立要求に応じて前記モータコントローラと前記電池管理モジュールとの間の通信権限を解放することと、
前記モータコントローラと前記電池管理モジュールとの間の通信権限が解放された後、前記電池管理モジュールと前記モータコントローラとはハンドシェイク通信を行うことと、
前記モータコントローラが前記電池管理モジュールから送信されたスイッチ閉成情報を受信した後、スイッチアセンブリを制御して電池パックを加熱し、前記スイッチ閉成情報が
第1のスイッチ及び
第2のスイッチの閉成情報を含み、前記第1のスイッチが電池パックの正極に接続され、前記第2のスイッチが前記電池パックの負極に接続され、スイッチアセンブリが前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの間に接続される、ことを特徴とする電池加熱システムの制御方法。
【請求項8】
前記モータコントローラが、前記スイッチアセンブリを制御して、前記電池パックを加熱することは、
前記モータコントローラが、前記スイッチアセンブリに駆動信号を供給することで、前記スイッチアセンブリが周期的にオン状態とオフ状態になるように制御し、前記電池パックの加熱を実現することを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項9】
前記電池パックの加熱過程において、前記モータコントローラが前記電池管理モジュールから送信された所望の周波数及び所望のデューティ比を受信することと、
前記モータコントローラが前記スイッチアセンブリに
前記所望の周波数及び前記所望のデューティ比を有する駆動信号を供給させることと、を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項10】
前記モータコントローラが、前記電池管理モジュールから送信された異常状態情報を受信することと、
前記モータコントローラが、前記異常状態情報に応じて前記スイッチアセンブリをオフ状態に制御すると共に、前記電池管理モジュールが第1のスイッチと第2のスイッチをオフさせるための第1のスイッチアセンブリ状態情報を前記電池管理モジュールに送信することと、とを更に含むことを特徴とする請求項7に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項11】
前記モータコントローラが前記スイッチアセンブリの温度に基づいて前記システムが正常作動モードになっているかを判断することと、
前記システムが正常作動モードになっていないと判定すると、前記モータコントローラにより前記スイッチアセンブリをオフ状態に制御すると共に、前記電池管理モジュールが第1のスイッチと第2のスイッチをオフさせるための第2のスイッチアセンブリ状態情報を前記電池管理モジュールに送信することと、を更に含む、ことを特徴とする請求項7に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項12】
前記モータコントローラが、前記電池管理モジュールから送信された加熱停止指令を受信することと、
前記モータコントローラが、前記加熱停止指令に応じて前記スイッチアセンブリをオフ状態に制御すると共に、前記電池管理モジュールが第1のスイッチと第2のスイッチをオフさせるための第3のスイッチアセンブリ状態情報を前記電池管理モジュールに送信することと、を更に含む、ことを特徴とする請求項7に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項13】
前記モータコントローラは、加熱作動モードが終了されたことを判定した後、通信機構を遮断し、通信遮断情報を前記車両用コントローラに報知する、ことを特徴とする請求項12に記載の電池加熱システムの制御方法。
【請求項14】
プロセッサと、前記プロセッサに接続されたメモリとを備えた電池管理モジュールであって、
前記メモリにプログラムが記憶され、前記プロセッサにより前記プログラムを実行することで請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を行うことを特徴とする電池管理モジュール。
【請求項15】
プロセッサと、前記プロセッサに接続されたメモリとを備えたモータコントローラであって、
前記メモリにプログラムが記憶され、前記プロセッサにより前記プログラムを実行することで請求項7~13のいずれか一項に記載の方法を行うことを特徴とするモータコントローラ。
【請求項16】
コンピュータに実行されることで請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を行うプログラムが記録されたことを特徴とする記録媒体。
【請求項17】
コンピュータに実行されることで請求項7~13のいずれか一項に記載の方法を行うプログラムが記録されたことを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の分野に関し、特に、電池加熱システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、エネルギー密度が高く、循環充放電が可能であり、安全で環境に優しいなどの一連の利点を有し、現在、新エネルギー自動車、消費電子とエネルギー貯蔵システムに広く応用されている。特に、新エネルギー自動車分野では、世界の各国家が電気自動車産業の発展を積極的に支援している。しかし、リチウム電池の低温環境での使用はある程度制限され、低温環境ではリチウム電池の放電容量は著しく低下し、同時に低温環境ではリチウム電池は充電できないため、動力リチウム電池を加熱する必要がある。
【0003】
現在、車載動力リチウム電池は、外部加熱によって加熱することができる。外部加熱方法は、主に空気加熱、液体加熱、相変化材料加熱、熱抵抗加熱などの加熱方法を含む。これらの外部加熱方法で使用される材料は、通常、電池パック内に封入されている。また、これらの外部加熱方法は、専用の熱循環容器を使用し、熱伝導性物質を間接的に加熱することにより、特定の構造物を介して動力リチウム電池に熱を伝導する。このような外部熱伝導による加熱方式は、加熱効率が低く、コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、コストを低減しつつ、電池パックの加熱効率を向上させる電池加熱システム及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、電池加熱システムの制御方法であって、電池管理モジュールが、電池パックの温度と、電池パックの残存電力量SOCを取得することと、電池パックの温度が予め設定された温度閾値より低く、且つ電池パックの残存電力量SOCが予め設定されたSOC閾値より高い時、電池管理モジュールが電池加熱要求を車両用コントローラに送信し、車両用コントローラにより車両が静置状態にあり且つモータが作動していないと判定された場合、電池加熱要求に応じて電池加熱指令をモータコントローラに送信することと、モータコントローラが電池加熱指令を受信した後、通信確立要求を車両用コントローラに送信し、車両用コントローラが通信確立要求に応じてモータコントローラと電池管理モジュールとの間の通信権限を解放して、電池管理モジュールとモータコントローラとはハンドシェイク通信を行うことと、電池管理モジュールが、第1のスイッチ及び第2のスイッチの両方が閉じられるように制御し、第1のスイッチ及び第2のスイッチの両方が閉じられた後、スイッチ閉成情報をモータコントローラに送信して電池パックを加熱すること、とを含み、スイッチ閉成情報が第1のスイッチ及び第2のスイッチの閉成情報を含み、第1のスイッチが電池パックの正極に接続され、第2のスイッチが電池パックの負極に接続され、スイッチアセンブリが第1のスイッチと第2のスイッチとの間に接続される、電池加熱システムの制御方法が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、電池加熱システムの制御方法であって、モータコントローラは、車両用コントローラから送信された電池加熱指令を受信し、車両用コントローラが電池管理モジュールから電池加熱要求を受信すると共に車両が静置状態にあり且つモータが作動していないと判定された場合、電池加熱指令が送信されることと、モータコントローラが通信確立要求を車両用コントローラに送信し、車両用コントローラが通信確立要求に応じてモータコントローラと電池管理モジュールとの間の通信権限を解放することと、モータコントローラと電池管理モジュールとの間の通信権限が解放された後、電池管理モジュールとモータコントローラとはハンドシェイク通信を行うことと、モータコントローラが電池管理モジュールから送信されたスイッチ閉成情報を受信した後、スイッチアセンブリを制御して電池パックを加熱し、スイッチ閉成情報が第1のスイッチ及び第2のスイッチの閉成情報を含み、第1のスイッチが電池パックの正極に接続され、第2のスイッチが電池パックの負極に接続され、スイッチアセンブリが第1のスイッチと第2のスイッチとの間に接続される、電池加熱システムの制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態に係る電池加熱システム及びその制御方法によれば、第1のスイッチ、第2のスイッチ、スイッチアセンブリ及びメインコントローラを同一の筐体内に集積することにより、構造が簡単でコストを低減することができる。コストを低減した上で、メインコントローラによる第1のスイッチ、第2のスイッチ及びスイッチアセンブリの制御により、電池パックが配置されている高電圧回路に持続的な交流励磁電流を発生させることができ、電池パックに交流励磁電流が流れ続けるため、電池パックの内部抵抗が発熱され内部から電池が加熱され、加熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下、本発明の実施形態の技術案をより明確に説明するために、本発明の実施形態で必要とされる図面を簡単に説明するが、当業者にとっては、創造的な労力を要することなく、これらの図面から他の図面も得ることができる。
【
図1】本発明の一実施形態に係る電池加熱システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る電池加熱システムの概略構成図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る電池加熱システムの概略構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電池加熱システムの制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る電池加熱システムの制御方法を示すフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各技術案の特徴及び例示的な実施形態を詳細に説明する。本発明の目的、技術案及び利点をより明確化するために、図面及び実施形態を参照して本発明を更に詳細に説明する。本明細書に記載された具体的な実施形態は、単に本発明を説明するように構成され、本発明を限定するように構成されていないことを理解されたい。当業者であれば、本発明は、これらの特定の詳細の一部を必要とせずに実施することができる。以下の実施形態の説明は、単に、本発明の実施形態を示すことによって、本発明のより良い理解を提供するためのものである。
【0010】
なお、本明細書において、第1及び第2等の関係用語は、1つの実体又は作動を他の実体又は作動と区別するために使用され、これらの実体または作動の間にどのような実際的な関係または順序が存在することを必ずしも要求したり示唆したりするものではない。さらに、用語「備える」、「含む」、またはその他の変形は、非排他的な包含を含むことを意図しており、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置がこれらの要素だけでなく、さらに、明示的に列挙されていない他の要素、またはこのようなプロセス、方法、物品または装置に固有の要素も含むことを意図している。特に制限がないかぎり、語句「……を含む」によって定義される要素は、その要素を含むプロセス、方法、物品または装置に、さらに別の同じ要素が存在することを排除するものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池加熱システムを示す。
図1に示すように、電池加熱システムは、電池パックEを加熱するものであり、電池パックEの正極に接続された第1のスイッチK1と、電池パックEの負極に接続された第2のスイッチK2と、第1のスイッチK1と第2のスイッチK2との間に接続されたスイッチアセンブリK3と、スイッチアセンブリK3に接続されたモータMと、メインコントローラPとを備えている。
第1のスイッチK1、第2のスイッチK2、スイッチアセンブリK3、及びメインコントローラPは、同一の筐体内に集積されている。
【0012】
メインコントローラPは、電池パックEの状態パラメータに基づいて、電池パックEを加熱する必要があるか否かを判定し、加熱する必要があると、電池加熱要求を車両用コントローラに送信し、車両用コントローラにより車両が静置状態であり且つモータMが作動していないと判定された場合、電池加熱要求に応じてメインコントローラPに電池加熱指令を送信する。
【0013】
メインコントローラPは、電池加熱指令に応じて、第1のスイッチK1、第2のスイッチK2、及びスイッチアセンブリK3を制御して、電池パックEを加熱する。
いくつかの例では、メインコントローラPは、電池パックEの状態パラメータを取得するために電池パックEに接続されており、この接続関係は図示されていない。メインコントローラPは、また、スイッチアセンブリK3がオフ状態にあるかオン状態にあるかを制御するために、スイッチアセンブリK3に接続されており、この接続関係は図示されていない。
【0014】
いくつかの例では、メインコントローラPは、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2の開閉を制御するために、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2にも接続されており、この接続関係は図示されていない。
【0015】
本発明の実施形態に係る電池加熱システムは、第1のスイッチK1、第2のスイッチK2、スイッチアセンブリK3及びメインコントローラPを同一の筐体内に集積することにより、構造が簡単であり、コストが低減される。コストを低減した上で、メインコントローラPによる第1のスイッチK1、第2のスイッチK2及びスイッチアセンブリK3の制御により、電池パックEが配置されている高電圧回路には持続的な交流励磁電流が発生し、電池パックEに交流励磁電流が流れ続けるため、電池パックEの内部抵抗が発熱され内部から電池が加熱され、加熱効率を向上させることができる。
【0016】
図2は、本発明の他の実施形態に係る電池加熱システムを示す。
図2は、
図1のスイッチアセンブリK3及びモータMの具体的な構成を示している。
一例として、第1のスイッチK1は、電池パックEの正極に接続されたメイン正極スイッチV+であり、第2のスイッチK2は、電池パックEの負極に接続されたメイン負極スイッチV-である。
【0017】
スイッチアセンブリK3は、並列に接続された第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム、及び第3相ブリッジアームを含む。第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームは、それぞれ上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとを有し、各上部ブリッジアームにはスイッチユニットが設けられ、各下部ブリッジアームにもスイッチユニットが設けられている。
【0018】
例えば、
図2に示すように、第1相ブリッジアームはU相ブリッジアームであり、第2相ブリッジアームはV相ブリッジアームであり、第3相ブリッジアームはW相ブリッジアームである。ここで、U相ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチユニットは第1のスイッチユニットV1であり、U相ブリッジアームの下部ブリッジアームには第2のスイッチユニットV2が設けられている。V相ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチユニットは第3スイッチユニットV3であり、V相ブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチユニットは第4スイッチユニットV4である。W相ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチユニットは第5スイッチユニットV5であり、W相ブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチユニットは第6スイッチユニットV6である。
【0019】
いくつかの例では、スイッチユニットは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)チップ、IGBTモジュール、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、MOSFET)等のパワースイッチデバイスの1種または2種以上を含むことができる。ここで、スイッチユニットにおける各IGBTデバイスとMOSFETデバイス等の組み合わせ方式及び接続方式は限定するものではない。上記パワースイッチデバイスの材料の種類も限定されず、例えば、炭化ケイ素(SiC)または他の材料から製造されたパワースイッチデバイスを使用することができる。
【0020】
ここで、各スイッチユニットは、何れも対応する寄生ダイオードを有する。ここで、第1のスイッチユニットV1、第2のスイッチユニットV2、第3のスイッチユニットV3、第4のスイッチユニットV4、第5のスイッチユニットV5及び第6のスイッチユニットV6がそれぞれ対応する寄生ダイオードは、寄生ダイオードVD1、寄生ダイオードVD2、寄生ダイオードVD3、寄生ダイオードVD4、寄生ダイオードVD5及び寄生ダイオードVD6である。
【0021】
一例として、各スイッチユニットのダイオードは、通常のパワーシリコン(Si)ダイオードであってもよく、SiCダイオードであってもよく、本発明の実施形態は、寄生ダイオードの材料タイプを限定するものではない。
【0022】
本発明の実施形態では、モータMの第1相入力端、第2相入力端及び第3相入力端は、それぞれ、第1相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点、第2相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点及び第3相ブリッジアームにおける上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続されている。
【0023】
一例として、
図2を参照すると、モータMの固定子は、3相固定子インダクタンス、即ち、固定子インダクタンスL1、固定子インダクタンスL3、及び固定子インダクタンスL5と等価である。各相固定子インダクタンスは一つの相ブリッジアームに接続されている。固定子インダクタンスは、エネルギー蓄積とエネルギー放出の機能を有する。ここで、固定子インダクタンスL1の一端と、固定子インダクタンスL3の一端と、固定子インダクタンスL5の一端とは、一方の共通端に接続されている。
【0024】
固定子インダクタンスL1の非共通端は第1相入力端であり、固定子インダクタンスL3の非共通端は第2相入力端であり、固定子インダクタンスL5の非共通端は第3相入力端である。
なお、モータMの第1相入力端、第2相入力端及び第3相入力端は、入力端として電流を入力してもよく、出力端として電流を出力してもよい。
【0025】
いくつかの例では、メイン正極スイッチV+、メイン負極スイッチV-及び第1のスイッチユニットV1、第2のスイッチユニットV2、第3のスイッチユニットV3、第4のスイッチユニットV4、第5スイッチユニットV5及び第6スイッチユニットV6は、SiまたはSiCウエハによってモジュール全体にパッケージングされ、上述した筐体内に配置されてもよい。
なお、メインコントローラPは、スイッチアセンブリK3の各スイッチユニットに接続されており、この接続関係は
図2には示されていない。
【0026】
いくつかの例では、メインコントローラPは、対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットに駆動信号を供給して、対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットの周期的なオン/オフを制御する。
駆動信号は、具体的にはパルス信号であってもよい。さらに、駆動信号は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)信号であってもよい。
【0027】
いくつかの例では、駆動信号のうちの高レベルはスイッチユニットをオンにするように駆動し、駆動信号のうちの低レベルはスイッチユニットをオフにするように駆動する。駆動信号は、対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットの周期的なオン/オフを制御することができる。
【0028】
ここで、対象上部ブリッジアームスイッチユニットは、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム、第3相ブリッジアームのいずれかの上部ブリッジアームのスイッチユニットであり、対象下部ブリッジアームスイッチユニットは、対象上部ブリッジアームスイッチユニットが位置するブリッジアームを除く少なくとも一つのブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチユニットである。
【0029】
なお、駆動信号により駆動されていないスイッチユニット(即ち、対象上部ブリッジアームスイッチユニットと対象下部ブリッジアームスイッチユニット以外のスイッチユニット)は、いずれもオフになっている。
例えば、対象上部ブリッジアームスイッチユニットが第1のスイッチユニットV1である場合、対象下部ブリッジアームスイッチユニットは、第4スイッチユニットV4及び/又は第6スイッチユニットV6である。類推により、ここでは一つ一つ列挙しない。
【0030】
なお、周期的なオンとオフの各周期における対象上部ブリッジアームスイッチユニットと、対象下部ブリッジアームスイッチユニットとは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、ここでは限定されるものではない。例えば、各周期で駆動信号は、第1のスイッチユニットV1及び第4のスイッチユニットV4がオン/オフになるように駆動される。また、例えば、第1の周期において、駆動信号は、第1のスイッチユニットV1及び第4のスイッチユニットV4がオン/オフになるように駆動する。第2の周期において、駆動信号は、第3のスイッチユニットV3及び第2のスイッチユニットV2がオン/オフになるように駆動する。第3の周期において、駆動信号は、第1のスイッチユニットV1、第4のスイッチユニットV4及び第6のスイッチユニットV6がオン/オフになるように駆動する。即ち、異なる周期において、駆動信号によって駆動される対象上部ブリッジアームスイッチユニットと、対象下部ブリッジアームスイッチユニットは異なっていてもよい。
【0031】
駆動信号は、対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットが周期的にオン/オフになるように駆動することで、電池パックE、メイン正極スイッチV+、対象上部ブリッジアームスイッチユニット、モータM、対象下部ブリッジアームスイッチユニット、メイン負極スイッチV-により形成された回路内に交流電流を発生させる。具体的には、交流正弦波電流を発生させることができる。即ち、電池パックEは、充電と放電とを交互に行う。電池パックEが充電と放電とを交互に行う過程で、電池パックEは熱を発生し、即ち電池パックEは内部から熱を発生する。これにより、電池パックEの加熱が実現される。
【0032】
なお、電池加熱システムは、電気機器に搭載可能である。例えば、電池加熱システムは、電気自動車に搭載される。車両が走行ブレーキ等の作動状態にあるとき、メインコントローラPは、3相電圧型インバータ回路におけるV1~V6のうちの6つのスイッチユニットを順次交互にオンにして負荷モータMに交流する正弦波電流を発生させ、モータMを駆動して正常に作動させる。モータM及びスイッチアセンブリK3は共に作動状態であり、メインコントローラPは、スイッチアセンブリK3内の各ブリッジアーム内のスイッチユニットを制御することができない。
【0033】
そこで、本発明の実施形態では、メインコントローラPは、モータM及びスイッチアセンブリK3の両方が非作動状態、即ち車両が静置状態にあると判定したときに、再びスイッチアセンブリK3に駆動信号を送信することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、メインコントローラPは、電池パックEの状態を決定するパラメータに基づいて電池パックEを加熱する必要があると判定すると、電池加熱要求を車両用コントローラに送信する。ここで、メインコントローラPは、電池パックEの状態パラメータを取得するために電池パックEに接続されている。
【0035】
いくつかの例では、温度センサ及び残存電力量(State of Charge、SOC)取得ユニットを電池パックE内に設けることができる。メインコントローラPは、温度センサ及びSOC取得ユニットから電池パックEの温度及び電池パックEのSOCを取得する。ここで、電池パックEの温度は、具体的には、電池パックEの筐体の温度であってもよいし、電池パックEの内部空間における空気の温度であってもよいし、電池パックE内のいずれかの電池パックEや電池ユニットの温度であってもよいし、電池パックE内の全ての電池パックEや電池ユニットの温度の平均値などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
メインコントローラPは、電池パックEの温度が第1の予め設定された条件を満たし、且つ、電池パックEのSOCが第2の予め設定された条件を満たす場合、電池加熱要求を車両用コントローラに送信する。
なお、第1の予め設定された条件は、電池パックの温度が、予め設定された電池パックEが正常に作動可能な最低温度閾値より低くてもよく、電池パックの温度が、予め設定された電池パックEが正常に作動可能な温度範囲に属さなくてもよい。第2の予め設定された条件は、電池パックのSOCの予め設定された最低SOC閾値であってもよく、電池パックの温度が予め設定されたSOCの数値範囲に属さなくてもよい。第1の予め設定された条件及び第2の予め設定された条件は、作業シーンや作業ニーズに応じて設定することができるが、ここでは限定されない。
【0037】
具体的な例として、メインコントローラPは、電池パックEの温度が第1の予め設定された温度閾値よりも低く、且つ、電池パックEのSOCが予め設定されたSOC閾値よりも高い場合、電池パックEを加熱する必要があると判定する。
【0038】
車両用コントローラは、電池加熱要求を受信すると、電池パックEが配置されている車両が静置状態にあるか否か、スイッチアセンブリK3及びモータMが作動しているか否かを判断する。車両用コントローラは、車両が静置状態にあり、且つスイッチアセンブリK3及びモータMのいずれも作動していないと判定した場合、メインコントローラPに電池加熱指令を送信する。メインコントローラPは、電池加熱指令を受信すると、メイン正極スイッチV+とメイン負極スイッチV-とがオンになるように制御し、スイッチアセンブリK3に駆動信号を供給して、スイッチアセンブリK3を周期的にオン状態/オフ状態に制御し、電池加熱システムに交流電流を発生させ、電池パックEの加熱を実現する。
【0039】
ここで、メインコントローラPは、メイン正極スイッチV+とメイン負極スイッチV-の両方が閉じられるように制御した後、スイッチアセンブリK3に駆動信号を供給する。一例として、メインコントローラPは、第2のスイッチK2を閉じてから、次にメイン正極スイッチV+が閉じるように制御してもよい。
【0040】
図2において、電池パックEとメイン正極スイッチV+との間の抵抗は、電池パックEの等価内部抵抗Rxである。電池パックEの内部抵抗は、温度が低いと抵抗値が大きくなる。例えば、-25℃での動力リチウム電池の内部抵抗は、25℃での動力リチウム電池の内部抵抗の5~15倍である。電池パックEが充電と放電を交互に行う過程では、発生する熱がより大きくなり、加熱速度がより速くなる。
【0041】
いくつかの例では、
図2を参照すると、
図2の各スイッチユニットは何れもパワースイッチデバイスを含む。第1のスイッチユニットV1は第1のパワースイッチデバイスS1を含み、第2のスイッチユニットV2は第2パワースイッチデバイスS2を含み、第3スイッチユニットV3は第3パワースイッチデバイスS3を含み、第4のスイッチユニットV4は第4のパワースイッチデバイスS4を含み、第5のスイッチユニットV5は第5のパワースイッチデバイスS5を含み、第6のスイッチユニットV6は第6のパワースイッチデバイスS6を含む。ここで、第1のパワースイッチデバイスS1の寄生ダイオードはVD1であり、第2のパワースイッチデバイスS2の寄生ダイオードはVD2であり、第3のパワースイッチデバイスS3の寄生ダイオードはVD3であり、第4のパワースイッチデバイスS4の寄生ダイオードはVD4であり、第5のパワースイッチデバイスS5の寄生ダイオードはVD5であり、第6のパワースイッチデバイスS6の寄生ダイオードはVD6である。
【0042】
上部ブリッジアームのスイッチユニットの寄生ダイオードのアノードは、上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続されており、上部ブリッジアームのスイッチユニットの寄生ダイオードのカソードは、上部ブリッジアームとメイン正極スイッチV+とが接続された一端に接続されている。下部ブリッジアームのスイッチユニットの寄生ダイオードのアノードは、下部ブリッジアームとメイン負極スイッチV-とが接続された一端に接続されており、上部ブリッジアームのスイッチユニットの寄生ダイオードのカソードは、上部ブリッジアームと下部ブリッジアームとの接続点に接続されている。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、電池加熱システムは、スイッチアセンブリK3と並列に接続された容量Cをさらに含み、容量Cは例えば直流支持(Dc-link)容量である。ここで、支持容量は、第1相ブリッジアームと並列に接続されており、同様に、支持容量は、第2相ブリッジアームと第3相ブリッジアームの両方と並列に接続されている。支持容量の一端は、第1相ブリッジアームとメイン正極スイッチV+とが接続された一端に接続されており、支持容量の他端は、第1相ブリッジアームとメイン負極スイッチV-とが接続された一端に接続されている。Dc-link容量は、スイッチアセンブリK3におけるスイッチユニットの状態切替時に発生する電圧オーバーシュートや瞬時過電圧が3相フルブリッジインバータ回路におけるスイッチユニットに与える影響を回避し、直流母線の電圧を安定させ、電圧変動を許容範囲内に保つためのものである。
【0044】
本発明の実施形態では、メイン正極スイッチV+、メイン負極スイッチV-、スイッチアセンブリK3、メインコントローラP及び容量を同一筐体に集積することで、ハーネスの数とハーネスの長さを減少させ、ハーネスの寄生パラメータをより良く最適化することができる。一例として、Dc-link容量に対する設計パラメータ要件を減らすことができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、
図2を参照すると、電池加熱システムは、電池パックEの加熱電流を取得するために、電池パックEの負極とメイン負極スイッチV-との間に配置された電流センサをさらに含む。メインコントローラPは、電流センサにより加熱された加熱電流を用いて、電池加熱システムが正常作動モードであるか否かを判断することができる。一例として、電池パックEの加熱電流が予め設定された電流閾値に達した場合、電池加熱システムは正常作動モードではなく、即ち異常作動モードであると見なすことができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、
図2を参照すると、電池加熱システムは、電池パックEの負極とメイン正極スイッチV+との間に配置されたヒューズモジュールIをさらに含む。一例として、ヒューズモジュールIは手動保守スイッチ(Manual Service Disconnect,MSD)である。具体的な一例として、電池加熱システムが異常作動モードである場合、MSDにより高電圧回路を迅速に遮断することができ、電池パックEの安全性が確保される。
【0047】
別の例として、ヒューズモジュールIはヒューズであってもよく、電池パックEの加熱電流が当該ヒューズに対応する閾値に達すると、ヒューズが速やかに溶断して回路が遮断され、電池加熱の安全性が向上される。
【0048】
図2に示すように、メインコントローラPから対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットに駆動信号を供給すると、駆動信号によって対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットがオンになるように駆動され、電池パックEの放電回路が形成される。電流方向は、電池パックE→ヒューズモジュールI→メイン正極スイッチV+→対象上部ブリッジアームスイッチユニット→対象上部ブリッジアームスイッチユニットに対応する固定子インダクタンス→対象下部ブリッジアームスイッチユニットに対応する固定子インダクタンス→対象下部ブリッジアームスイッチユニット→メイン負極スイッチV-→電流センサ→電池パックEである。
【0049】
駆動信号により対象上部ブリッジアームスイッチユニットと対象下部ブリッジアームスイッチユニットがオフになるように駆動されると、固定子インダクタンスがエネルギー蓄積機能を有しているため、固定子インダクタンスが放電し、電池パックEの充電回路が形成される。電流方向は、対象上部ブリッジアームスイッチユニットに対応する固定子インダクタンス→対象上部ブリッジアームスイッチユニットの寄生ダイオード→メイン正極スイッチV+→ヒューズモジュールI→電池パックE→電流センサ→メイン負極スイッチV-→対象下部ブリッジアームスイッチユニットの寄生ダイオード→対象下部ブリッジアームスイッチユニットに対応する固定子インダクタンスである。
【0050】
いくつかの例では、駆動信号の周波数は、100Hz~100000Hzの範囲である。駆動信号の周波数は、スイッチユニットのスイッチ周波数である。駆動信号のデューティ比の範囲は5%~50%である。駆動信号のデューティ比は、スイッチユニットのオン期間とオフ期間との合計に対するスイッチユニットのオン期間の割合である。
対象上部ブリッジアームスイッチユニットと対象下部ブリッジアームスイッチユニットの選択の違いにより、交流電流が伝送される回路も異なる。
【0051】
次に、
図2に示す電池加熱システムを例にして、電池加熱システムにおいて発生する交流電流の伝送回路及び電流方向について説明する。
第1の態様では、対象上部ブリッジアームスイッチユニットは、第1相ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチユニットを含み、対象下部ブリッジアームスイッチユニットは、第2相ブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチユニットを含む。
【0052】
第1の態様では、メインコントローラPが第1のパワースイッチデバイスS1及び第4のパワースイッチデバイスS4に送信する駆動信号により、第1のパワースイッチデバイスS1及び第4のパワースイッチデバイスS4がオンになるように駆動される。電池パックEが放電され、電池パックEの放電回路が形成される。電流方向は、電池パックE→ヒューズモジュールI→メイン正極スイッチV+→第1パワースイッチデバイスS1→固定子インダクタンスL1→固定子インダクタンスL3→第4パワースイッチデバイスS4→メイン負極スイッチV-→電流センサ→電池パックEである。
【0053】
メインコントローラPが第1パワースイッチデバイスS1及び第4パワースイッチデバイスS4に送信した駆動信号により、第1パワースイッチデバイスS1及び第4パワースイッチデバイスS4がオフになるように駆動され、固定子インダクタンスL1及び固定子インダクタンスL3が放電され、電池パックEが充電され、電池パックEの充電回路が形成される。電流方向は、固定子インダクタンスL1→固定子インダクタンスL3→第3パワースイッチデバイスS3の寄生ダイオードVD3→メイン正極スイッチV+→ヒューズモジュールI→電池パックE→電流センサ→メイン負極スイッチV-→第2パワースイッチデバイスS2の寄生ダイオードVD2である。
【0054】
第2の態様では、対象上部ブリッジアームスイッチユニットは、第1相ブリッジアームの上部ブリッジアームのスイッチユニットを含み、対象下部ブリッジアームスイッチユニットは、第2相ブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチユニットと、第3相ブリッジアームの下部ブリッジアームのスイッチユニットとを含む。
【0055】
第2の態様では、メインコントローラPが第1のパワースイッチデバイスS1、第4のパワースイッチデバイスS4及び第6のパワースイッチデバイスS6に送信した駆動信号により、第1のパワースイッチデバイスS1、第4のパワースイッチデバイスS4と第6のパワースイッチデバイスS6がオンになるように駆動される。電池パックEが放電され、電池パックEの放電回路が形成される。電流方向は、電池パックE→ヒューズモジュールI→メイン正極スイッチV+→第1パワースイッチデバイスS1→固定子インダクタンスL1→固定子インダクタンスL2及び固定子インダクタンスL3→第4パワースイッチデバイスS4及び第6パワースイッチデバイスS6→メイン負極スイッチV-→電流センサ→電池パックEである。固定子インダクタンスL2は、固定子インダクタンスL3と並列に接続された後、固定子インダクタンスL1と直列に接続されている。
【0056】
メインコントローラPが第1のパワースイッチデバイスS1、第4のパワースイッチデバイスS4及び第6のパワースイッチデバイスS6に送信する駆動信号により、第1のパワースイッチデバイスS1、第4パワースイッチデバイスS4及び第6パワースイッチデバイスS6がオフになるように駆動される。ステータインダクタンスL1、ステータインダクタL2及びステータインダクタンスL3が放電され、電池パックEが充電され、電池パックEの充電回路が形成される。電流方向は、固定子インダクタンスL1→固定子インダクタンスL2及び固定子インダクタンスL3→第3パワースイッチデバイスS3の寄生ダイオードVD3及び第5パワースイッチデバイスS5の寄生ダイオードVD5→メイン正極スイッチV+→ヒューズモジュールI→電池パックE→電流センサ→メイン負極スイッチV-→第2パワースイッチデバイスS2の寄生ダイオードVD2である。
【0057】
類推によって、異なる対象上部ブリッジアームスイッチユニットと対象下部ブリッジアームスイッチユニットを選択することによって複数の加熱方式を形成することができるが、ここでは列挙されない。パワースイッチデバイス間の制御タイミングの変更を制御することにより、電池パックEの急速な充放電を実現し、電池パックEを加熱する。なお、上記のいずれの加熱方式において、非対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び非対象下部ブリッジアームスイッチユニットはいずれもオフ状態にあることを留意されたい。
【0058】
本発明の実施形態では、駆動信号のスイッチアセンブリK3内の各スイッチユニットへの駆動により生成される交流電流の大きさは、駆動信号の周波数及びデューティ比に依存する。交流電流の大きさが大きいほど、電池パックEから発生する熱が多くなる。電池パックEの温度が上昇するにつれて、電池パックEのインピーダンスは徐に減少するため、電池パックEに流れる加熱電流は徐に増加する。メインコントローラPは、加熱電流が大きくなったことを検知すると、回路中の加熱電流が過大となって回路中のデバイスが焼損することを防止するとともに、電池パックEの加熱レートを安定させるために、電池パックを加熱する過程で、メインコントローラPは、電池パックEの状態パラメータに基づいて、所望の周波数及びデューティ比を導出し、スイッチデバイスK3に所望の周波数及び所望のデューティ比を有する駆動信号を供給することができる。
【0059】
いくつかの特定の例では、メインコントローラPは、取得された電池パックEの状態パラメータ及び比例積分微分(proportion-integral-derivative、PID)アルゴリズムに基づいて、駆動信号の所望のデューティ比及び所望の周波数を得ることができる。メインコントローラPは、駆動信号の元の周波数と元のデューティ比を上記所望の周波数と所望のデューティ比に調整した後、所望の周波数及び所望のデューティ比を有する駆動信号を利用して、対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットのオン期間及びオフ期間を制御することにより、リアルタイムで加熱電流の大きさを制御する。具体的には、メインコントローラPは、PID制御アルゴリズムを利用して、駆動信号の周波数を動的に増加させ、及び/又は駆動信号のデューティ比を減少させて、加熱電流を制御することができる。なお、電池パックEの状態パラメータは、加熱電流、温度、SOC、電圧等のパラメータのいずれであってもよい。
【0060】
いくつかの例では、メインコントローラPは、電池パックの加熱中に、予め設定された電池パックの状態パラメータとデューティ比との対応関係、予め設定された電池パックの状態パラメータと周波数との対応関係、及び取得された電池パックEの現在の状態パラメータを利用して、現在の状態パラメータに対応する所望のデューティ比と所望の周波数とを取得し、それにより、加熱中に電池パックEの状態パラメータに対応する所望の周波数と所望のデューティ比とを動的に調べることを実現する。ここで、予め設定された電池パックの状態パラメータとデューティ比との対応関係は、少なくとも1つの状態パラメータとデューティ比との対応関係であってもよく、予め設定された電池パックの状態パラメータと周波数との対応関係は、少なくとも1つの状態パラメータとデューティ比との対応関係であってもよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、電池加熱システムは、図示されていない水冷サブシステムをさらに含む。ここで、モータMは、自体により生成された熱を水冷サブシステムを介して電池パックEに伝達する。及び/または、スイッチアセンブリK3は、自体により生成された熱を水冷サブシステムを介して電池パックEに伝達する。
【0062】
一例として、モータM及びスイッチアセンブリK3が正常作動状態にあるとき、モータMの周囲及びスイッチアセンブリK3の周囲に熱が生成される。水冷サブシステムは、モータMの温度と電池パックEの温度とを取得し、モータMの温度と電池パックEの温度との差が第2の予め設定された温度閾値を超えているか否かを判断する。モータMの温度と電池パックEの温度との差が第2の予め設定された温度閾値を超えると、水冷サブシステムはバルブを開き、モータMで発生した熱を電池パックEに伝達して、外部から電池パックEを加熱する。なお、モータMの温度は、モータMの周囲の環境温度であってもよい。
【0063】
一例として、水冷サブシステムは、スイッチアセンブリK3の温度と電池パックEの温度とを取得し、スイッチアセンブリK3の温度と電池パックEの温度との差が第3の予め設定された温度閾値を超えているか否かを判断する。スイッチアセンブリK3の温度と電池パックEの温度との差が第3の予め設定された温度閾値を超えると、水冷サブシステムはバルブを開き、スイッチアセンブリK3で発生した熱を電池パックEに伝達し、外部から電池パックEを加熱する。ここで、スイッチアセンブリK3によって生成される熱は、スイッチアセンブリK3内の少なくとも1つのスイッチユニットによって生成された熱であってもよい。なお、スイッチアセンブリK3の温度は、スイッチアセンブリK3の周囲の環境温度、スイッチアセンブリK3内の全てのスイッチユニットの環境温度の平均値、又はあるスイッチユニットの環境温度等であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0064】
いくつかの例では、モータMの温度と電池パックEの温度との差が第2の予め設定された温度閾値を超え、且つスイッチアセンブリK3の温度と電池パックEの温度との差が第3の予め設定された温度閾値を超えた場合、モータM及びスイッチアセンブリK3の両方は、水冷サブシステムを介して熱を電池パックEに伝達して、外部から電池パックEを加熱することができる。
水冷サブシステムにより電池パックEの外部加熱を実現し、前記内部加熱と合わせて電池パックEを総合的に加熱することにより、電池パックEの加熱効率をさらに向上させることができる。
【0065】
引き続き
図2を参照すると、本発明のいくつかの実施形態では、メインコントローラPは、電池管理モジュールP10及びモータコントローラP20を含む。ここで、電池管理モジュールP10は、電池パックEの状態パラメータを取得するために、電池パックEに接続されている(この接続関係は図示せず)。モータコントローラP20は、各スイッチユニットに駆動信号を供給して各スイッチユニットのオン/オフを制御するために、各スイッチユニットに接続されている。
【0066】
ここで、電池管理モジュールP10は、取得した電池パックEの状態パラメータに基づいて、電池パックEを加熱する必要がある否かを判定し、加熱する必要があると、車両用コントローラに電池加熱要求を送信する。車両用コントローラは、車両が静置状態にあり、且つモータMが作動していないと判定した場合、電池加熱要求に応じてモータコントローラP20に電池加熱指令を送信する。
【0067】
なお、電池管理モジュールP10が電池パックEを加熱する必要があるか否かを判定する方法は、上述したメインコントローラPが電池パックEを加熱する必要があるか否かを判定する方法と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
モータコントローラP20は、電池加熱指令を受信すると、電池管理モジュールP10と通信を確立する。更に、電池管理モジュールP10は、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2の両方が閉じられるように制御し、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2の両方が閉じられた後、モータコントローラP20にスイッチ閉成情報を送信する。
また、モータコントローラP20は、スイッチ閉成情報を受信した後、スイッチアセンブリK3を制御して電池パックEを加熱する。ここで、スイッチ閉成情報は、第1のスイッチK1の閉成情報と、第2のスイッチK2の閉成情報を含む。
【0069】
いくつかの例では、モータコントローラP20は、スイッチアセンブリK3を周期的にオンまたはオフにするために、スイッチアセンブリK3内のスイッチユニットに駆動信号を供給する。これにより、電池パックEが配置された高電圧回路に常時交流励磁電流が発生し、交流励磁電流が電池パックEに連続的に流れることにより、電池パックEの内部抵抗が発熱して内部から電池が加熱され、加熱効率が向上する。
【0070】
図2を参照すると、モータコントローラP20は、スイッチユニットのオン/オフを制御するために各スイッチユニットに接続されており、この接続関係は図示されていない。モータコントローラP20は、対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットに駆動信号を供給して、対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットの周期的なオン/オフを制御する。
【0071】
モータMによる対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットの周期的なオン/オフの制御方法は、上述したメインコントローラPによる対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットの周期的なオン/オフの制御方法と同様であるため、その詳細は、上述した実施形態を参照することができる。
【0072】
車両が静置されている時には、電池管理モジュールP10とモータコントローラP20の協働により、高電圧回路に交流励磁電流を生成させて電池パックEに流し、電池パックEを内部から加熱することができる。
【0073】
電池管理モジュールP10及びモータコントローラP20を使用して電池パックEを加熱する過程で、同様に、電池管理モジュールP10は、電流センサにより取得された電流及びPIDアルゴリズムに基づいて、所望のデューティ比及び所望の周波数を得て、所望のデューティ比及び所望の周波数をモータコントローラP20に送信する。モータコントローラP20は、所望のデューティ比及び所望の周波数を得た後、駆動信号の元の周波数及び元のデューティ比を所望の周波数及び所望のデューティ比に調整した後、モータコントローラP20は、所望の周波数及び所望のデューティ比を有する駆動信号を利用してスイッチデバイスK3を制御することにより、リアルタイムで加熱電流の大きさを制御する。
【0074】
本発明の実施形態では、電池管理システムとモータコントローラP20は別に設計してもよいし、集中的に設計してもよく、両者間の通信方式は様々に選択することができる。たとえば、一般的に使われるコントローラエリアネットワーク(Controller Area Network、CAN)システムや車載イーサネット(登録商標)システムである。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、
図3に示すように、電池パックEと、第1のスイッチK1と、第2のスイッチK2と、スイッチアセンブリK3と、メインコントローラPとは、例えば電池パック内などの同一の筐体に集積されていてもよい。電池パックE、第1のスイッチK1、第2のスイッチK2、スイッチアセンブリK3、及びメインコントローラPを集積することにより、構造が簡単になるだけでなく、製造が容易になり、コストが低減される。
【0076】
次に、電池加熱システムの制御方法について、
図4及び
図2を参照して詳細に説明する。
図4は、本発明のいくつかの実施形態に係る電池加熱システムの制御方法を示すフローチャートである。当該方法は、以下のステップを含む。
【0077】
S410では、メインコントローラPは、電池パックEの状態パラメータに基づいて、電池パックEを加熱する必要があるか否かを判定し、加熱する必要があると、電池加熱要求を車両用コントローラに送信し、車両用コントローラPにより車両が静置状態にあり且つモータMが作動していないと判定された場合、電池加熱要求に応じて電池加熱指令をメインコントローラPに送信する。
【0078】
S420では、メインコントローラPは、電池加熱指令に応じて、第1のスイッチK1、第2のスイッチK2及びスイッチアセンブリK3を制御して、電池パックEを加熱する。
【0079】
ステップS410において、メインコントローラPは、電池パックEの温度が第1の予め設定された条件を満たし、且つ電池パックEのSOCが第2の予め設定された条件を満たすと判定した場合、電池パックEを加熱する必要があると判定する。
【0080】
ステップS420において、メインコントローラPは、電池加熱指令に応じて第1のスイッチK1と第2のスイッチK2の両方が閉じられるように制御すると共に、スイッチアセンブリK3に駆動信号を供給することで、スイッチアセンブリK3が周期的にオン状態とオフ状態になるように制御し、電池パックEの加熱を実現する。
【0081】
メインコントローラPは、第1の加熱指令を受信すると、第1のスイッチK1と第2のスイッチK2が共に閉じられるように制御した上で、予め設定された制御ポリシーに従ってスイッチアセンブリK3に駆動信号を送信し、スイッチアセンブリK3の駆動制御を行う。
なお、ステップS410及びステップS420のその他に関連する説明は、上述した実施形態の説明を参照することができるため、ここでは説明を省略する。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、メインコントローラPは、電池パックEの加熱中に、電池パックEの温度、電池パックEの電圧、電池パックEのSOCをリアルタイムで取得すると共に、電流センサによって取得された加熱電流及び温度センサによって取得されたスイッチアセンブリK3の温度を取得する。
なお、スイッチアセンブリK3の温度は、スイッチアセンブリK3近傍の指定された位置の環境温度であってもよいし、いずれかのスイッチユニット近傍の環境温度であってもよいし、6つのスイッチユニットの環境温度の平均値であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0083】
そして、メインコントローラPは、リアルタイムで取得された電池パックEの温度、電池パックEの電圧、電池パックEのSOC、電流センサによって取得された加熱電流及びスイッチアセンブリK3の温度のうちの少なくとも1つに基づいて、電池加熱システムが正常作動モードにあるかどうかをリアルタイムで判断する。
【0084】
一例として、メインコントローラPは、電池パックEの温度が予め設定された温度閾値より高い状況、電池パックEの電圧が予め設定された電圧閾値より低い状況、電池パックEのSOCが予め設定されたSOC閾値より高い状況、加熱電流が予め設定された電流閾値より高い状況、スイッチアセンブリK3の温度が予め設定された温度閾値より高い状況のうちの1つの状況又は複数の状況を満たす場合、電池加熱システムが異常作動モードになっていると判定する。
【0085】
一例として、上記5つのパラメータのうちの1つに基づいて電池加熱システムが正常作動モードになっているか否かを判断するとき、当該パラメータが対応する予め設定された閾値に達していない場合、メインコントローラPは、電池加熱システムが正常作動モードになっていると判定する。当該パラメータが対応する予め設定された閾値に達した場合、メインコントローラPは、電池加熱システムが正常作動モードになっていないと判定する。
【0086】
上記5つのパラメータのうちの2つ又は2つ以上のパラメータに基づいて電池加熱システムが正常作動モードになっている否かを判断する場合、1つ又は複数のパラメータが当該パラメータに対応する予め設定された閾値に達した場合、メインコントローラPは、電池加熱システムが正常作動モードになっていないと判定する。全てのパラメータがそれぞれ対応する閾値に達していない場合、メインコントローラPは、電池加熱システムが正常作動モードになっていると判定する。
【0087】
本発明の実施形態では、メインコントローラPは、電池加熱システムが正常作動モードになっていないと判定すると、スイッチアセンブリK3への駆動信号の送信を停止、即ち、スイッチアセンブリK3をオフ状態に制御する。そして、電池パックEの安全性を確保するために、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2をオフにし、電池加熱システムに異常が発生したことを車両用コントローラに通知する。ここで、メインコントローラPは、スイッチアセンブリK3への駆動信号の送信を停止する。即ち、メインコントローラPは、スイッチアセンブリK3内の全てのスイッチがオフになるように制御する。
【0088】
メインコントローラPは、電池加熱システムが正常作動モードになっていると判定すると、電池パックEの温度が予め設定された加熱温度に達しているか否かを判断する。
メインコントローラPは、電池パックEの温度が予め設定された加熱温度に達したと判定すると、スイッチアセンブリK3をオフ状態に制御する。同時に、メインコントローラPは、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2をオフにし、加熱回路を遮断する。メインコントローラPは、加熱完了の情報を車両用コントローラに送信する。メインコントローラPは、電池パックEの温度が予め設定された加熱温度に達していないと判定すると、電池パックEを加熱するために、駆動信号を出力し続ける。
【0089】
メインコントローラPと車両用コントローラを組み合わせることにより、電池パックEの急速加熱を実現すると共に、車両用コントローラが電池加熱プロセスを把握することができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、メインコントローラPは、電池管理モジュールP10及びモータコントローラP20(
図2参照)を含み、この場合、ステップS410において、電池管理モジュールP10は、電池パックEの状態パラメータに基づいて、電池パックEを加熱する必要があるか否かを判定し、加熱する必要があると、電池加熱要求を車両用コントローラに送信し、車両用コントローラにより車両が静置状態にあり且つモータMが作動していないと判定された場合、電池加熱要求に応じて電池加熱指令をモータコントローラP20に送信する。
【0091】
具体的には、
図5を参照すると、電池管理モジュールP10は、車両が静置状態にあるときに、現在の電池パックEの温度と残存電力量SOCとを取得し、現在の電池パックEの温度と残存電力量SOCに基づいて電池パックEの加熱が必要であるか否かを判断する。
【0092】
電池パックEの現在の温度が予め設定された温度閾値より低く、且つ電池パックEの現在のSOCが予め設定されたSOC閾値より高い場合、電池加熱要求が車両用コントローラにアップロードされる。電池管理モジュールP10は、電池パックEを加熱する必要がないと判定した場合、電池加熱要求が車両用コントローラにアップロードされない。
【0093】
車両用コントローラは、車両の現在の状態を検出し、モータMが作動しておらず、且つ車両が静置状態にあると判定すると、電池加熱指令をモータコントローラP20に送信する。
【0094】
ステップS420において、モータコントローラP20は、電池加熱指令を受信すると、電池管理モジュールP10と通信を確立する。電池管理モジュールP10は、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2の両方が閉じられるように制御し、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2の両方が閉じられた後、スイッチ閉成情報をモータコントローラP20に送信する。また、モータコントローラP20は、スイッチ閉成情報を受信した後、スイッチアセンブリK3を制御して電池パックEを加熱する。
【0095】
一例として、引き続き
図5を参照すると、モータコントローラP20は、電池加熱指令を受信すると、電池管理モジュールP10と直接通信を確立する通信確立要求を車両用コントローラに送信し、これにより、車両用コントローラが通信確立要求に応じてモータコントローラP20と電池管理モジュールP10との間の通信権限を解放する。
車両用コントローラが確認した後、モータコントローラP20と電池管理モジュールP10との間の通信チャネルを開放する。
【0096】
車両用コントローラがモータコントローラP20と電池管理モジュールP10との間の通信チャネルを開放した後、モータコントローラP20と電池管理モジュールP10とはまずハンドシェイク通信を行い、双方が正常な通信が可能であることを判定する。
【0097】
いくつかの実施形態では、
図5を参照すると、モータコントローラP20と電池管理モジュールP10との間で正常な通信が行われた後、電池管理モジュールP10は、電池パックEの状態パラメータを再取得し、再び電池パックEを加熱する必要があるか否かを判断する。具体的な判断方法は、初めて電池パックEを加熱する必要があるか否かを判断する場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0098】
電池管理モジュールP10は、再度、電池パックEを加熱する必要があることを確認したとき、モータコントローラP20に加熱指令を送信する。モータコントローラP20は加熱指令を解析した後、再びモータMとスイッチアセンブリK3の作動状態を確認する。
【0099】
モータコントローラP20は、モータM及びスイッチユニットK3が非作動状態になっていないと判定すると、モータMの作動状態を電池管理モジュールP10に送信する。その後、電池管理モジュールP10は、モータMの作動状態情報を受信すると、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2の両方が閉じされるように駆動する。
【0100】
電池管理モジュールP10は、スイッチ閉成情報をモータコントローラP20に報知し、モータコントローラP20に、電池パックEを加熱するために対象上部ブリッジアームスイッチユニット及び対象下部ブリッジアームスイッチユニットに駆動信号を送信することができることを通知する。
モータコントローラP20は、スイッチ閉成情報を受信すると、設定された制御ポリシーに従ってスイッチアセンブリK3に駆動信号を送信し、スイッチアセンブリK3の駆動動作制御を行う。
【0101】
電池パックEの加熱過程において、電池管理モジュールP10は、電池パックEの温度、電池パックEの電圧値、電池パックEのSOCをリアルタイムで取得すると共に、電池センサにより取得された電池加熱電流を取得し、これらの4つのパラメータのうちの少なくとも1つに基づいて、電池加熱システムが正常作動モードにあるか否かを判断する。電池管理モジュールP10が電池加熱システムが正常作動モードにあるか否かを判断する方法は、上述したメインコントローラPが電池加熱システムが正常作動モードにあるか否かを判断する方法と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
一例として、
図5を参照すると、電池管理モジュールP10は、電池パックEの温度、電池パックEのSOC、及び電池加熱電流に基づいて、各パラメータが正常であるか否か、即ち、各パラメータが対応する閾値に達しているか否かを判断する。電池管理モジュールP10は、電池加熱システムが正常作動モードになっていないと判定すると、異常状態情報をモータコントローラP20に送信する。電池管理モジュールP10は、最も優先順位の高い異常状態情報をモータコントローラP20に報知する。
【0103】
モータコントローラP20は、異常状態情報を受信すると、スイッチアセンブリK3がオフ状態になるように制御する。即ち、モータコントローラP20は、スイッチアセンブリK3への駆動信号の送信を停止し、第1のスイッチアセンブリ状態情報を電池管理モジュールP10に送信する。第1のスイッチアセンブリ状態情報は、スイッチアセンブリK3内の全てのスイッチユニットのオフ状態情報を含む。即ち、モータコントローラP20は、スイッチユニットの状態情報を報知する必要がある。
【0104】
電池管理モジュールP10は、第1のスイッチアセンブリ状態情報を受信すると、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2をオフにし、加熱回路を完全に遮断する。
本発明のいくつかの実施形態では、モータコントローラP20は、スイッチアセンブリK3の温度に基づいて、電池加熱システムが正常作動モードになっているかどうかを判断してもよい。具体的な判断方法は、メインコントローラPがスイッチアセンブリK3の温度に基づいて電池加熱システムが正常作動モードになっているか否かを判断する方法と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0105】
モータコントローラP20は、電池加熱システムが正常作動モードになっていないと判定すると、スイッチアセンブリK3がオフ状態になるように制御し、第2のスイッチアセンブリ状態情報を電池管理モジュールP10に送信する。
【0106】
電池管理モジュールP10は、第2のスイッチアセンブリ状態情報を受信すると、第1のスイッチK1と第2のスイッチK2をオフにし、加熱回路を完全に遮断する。ここで、第2のスイッチアセンブリ状態情報は、スイッチアセンブリK3内の全てのスイッチユニットのオフ状態情報を含む。
【0107】
本発明の実施形態では、電池パックEの加熱中に、電池管理モジュールP10は、電池パックEの現在の温度が予め設定された加熱温度に達したか否かをリアルタイムで判断する必要がある。電池管理モジュールP10は、電池パックEの温度が予め設定された加熱温度に達したと判定すると、加熱停止指令をモータコントローラP20に送信する。モータコントローラP20は、加熱停止指令に応じてスイッチアセンブリK3がオフ状態になるように制御し、第3のスイッチアセンブリ状態情報を電池管理モジュールP10に送信する。電池管理モジュールP10は、第3のスイッチアセンブリ状態情報を受信すると、第1のスイッチK1及び第2のスイッチK2をオフにする。第3のスイッチアセンブリ状態情報は、スイッチアセンブリK3内の全てのスイッチユニットのオフ状態情報を含む。
【0108】
一例として、
図5を参照すると、電池管理モジュールP10は、現在の電池パックEの温度が設定された温度閾値を満たしたと判断すると、モータコントローラP20に加熱停止指令を報知する。モータコントローラP20は、加熱停止指令を解析した後、スイッチアセンブリK3内のスイッチユニットがオフになるように駆動し、スイッチユニットの現在の状態を電池管理モジュールP10に供給する。電池管理モジュールP10は、第1のスイッチK1と第2のスイッチK2をオフにする。電池管理モジュールP10とモータコントローラP20は、加熱作動モードが終了されたことを判定した後、通信機構を遮断し、通信遮断情報をそれぞれ車両用コントローラに報知する。
【0109】
なお、本明細書において、各実施形態は、段階的に記載されており、各実施形態は、互いに同一または類似の部分を参照して記載されていればよく、他の実施形態との相違点を中心に記載されていることは言うまでもない。制御方法の実施形態については、電池加熱システムの実施形態の説明を参照されたい。本発明は、上述の文章に記載され且つ図に示した特定のステップ及び構造に限定されるものではない。当業者は、本発明の精神を理解した上で、様な変更、修正、及び追加、またはステップ間の順序の変更を行うことができる。また、簡略化のため、既知の方法技術の詳細な説明は省略する。
【0110】
当業者は、上記の実施形態はすべて例示的なものであり、限定されるものではないことを理解すべきである。異なる実施形態で現れた異なる技術的特徴を組み合わせて、有益な効果を得ることができる。当業者は、図面、明細書、及び特許請求の範囲を検討した上で、開示された実施形態の他の変形例を理解し、実施することができることを理解すべきである。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の装置又はステップを排除するものではない。不定冠詞「一つ」は複数を排除しない。用語「第1」、「第2」は、任意の特定の順序を示すためのものではなく、名称を示すために使用される。特許請求の範囲におけるいかなる符号も、保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特許請求の範囲に記載された複数の部分の機能は、単一のハードウェアまたはソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。いくつかの技術的特徴が異なる従属請求項に記載されていることは、有益な効果を得るためにこれらの技術的特徴を組み合わせることができないことを意味していない。