(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】薬物送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/315
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021096342
(22)【出願日】2021-06-09
(62)【分割の表示】P 2020505196の分割
【原出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-08-20
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エドワード・カトゥイン
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・マシュー・プシェニー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-087386(JP,A)
【文献】米国特許第06277099(US,B1)
【文献】特表2011-519599(JP,A)
【文献】国際公開第2009/132777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置であって、
長手方向軸を有する装置本体と、
用量設定動作中に装置本体に対して移動可能であり、薬物を送達するための用量分注動作中に長手方向軸に沿って装置本体に対して移動可能であるアクチュエータと、
用量分注動作中に装置本体に対して回転する用量設定部材と、
用量分注動作中にアクチュエータに対する用量設定部材の回転を検出するように構成された用量検出システムと、
を備え、
用量検出システムは、
用量設定部材に連結されたラチェット指と、
アクチュエータに連結されたラチェットギヤ歯と、ここでラチェットギヤ歯は、アクチュエータに対する用量設定部材の回転中にラチェット指と接触可能であり、
圧電センサと、
を備
え、
ここで圧電センサは、アクチュエータに装着されて、アクチュエータに対する用量設定部材の回転中にラチェットギヤ歯がラチェット指と接触したときにアクチュエータの変形を検出するように構成されている、
薬物送達装置。
【請求項2】
圧電センサは、長手方向軸に実質的に平行な軸方向におけるアクチュエータの変形を検出するように構成されている、請求項
1に記載の薬物送達装置。
【請求項3】
圧電センサは、長手方向軸に実質的に垂直な半径方向外向き方向におけるアクチュエータの変形を検出するように構成されている、請求項
1に記載の薬物送達装置。
【請求項4】
ラチェット指は、用量設定部材の軸方向表面に連結された基部を有し、ここでラチェット指は、軸方向表面の上方で円周方向に延在しかつ軸方向表面から離れており、半径方向に撓むように構成されており、
ラチェットギヤ歯は、アクチュエータの用量ボタンに連結され、用量ボタンの内壁に沿って長手方向に延在し、ラチェット指を半径方向内向きに撓ませるように、相対回転中にラチェット指と接触可能である、請求項1から
3のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項5】
用量検出システムは、圧電センサと電気通信するコントローラを備え、該コントローラは、
圧電センサによって生成されたアナログ信号を受信することと、
アナログ信号をデジタル信号に変換することと、
デジタル信号から用量設定部材の回転運動の単位を判定することと、を行うように構成されており、回転運動の単位は、用量分注動作中に分注された用量の量を示す、請求項1から
4のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項6】
圧電センサから信号を受信するように構成された電圧検出器をさらに備える、請求項1から
5のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項7】
アクチュエータは、用量設定動作中に装置本体に対して回転可能であり、用量設定部材は、用量設定動作中、アクチュエータに対して非回転に連結され、圧電センサは、用量分注動作中に用量設定部材とアクチュエータとの間の回転を検出するように構成されている、請求項1から
6のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項8】
圧電センサは、用量設定動作中に非活性である、請求項
7に記載の薬物送達装置。
【請求項9】
ラチェット指は、用量設定部材から、軸方向近位方向及び半径方向外向き方向のうちの一方に延在する、請求項1から
8のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項10】
用量検出システムは、装置本体に取り外し可能に連結されるモジュール式構成要素である、請求項1から
9のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項11】
用量検出システムは、装置本体に永久的に連結される一体化した構成要素である、請求項1から
10のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【請求項12】
装置本体は、薬物を含有するリザーバを含む、請求項1から
11のいずれか1項に記載の薬物送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月31日に出願された米国仮特許出願第62/552,659号に対する優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、薬物送達装置のための電子用量検出システムに関し、例示的に、送達装置によって送達された薬物の用量を検出するための圧電検知による電子用量検出モジュールまたは一体化された用量検出システムに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な病気に苦しんでいる患者は、自分自身に薬物を注射しなければならないことが頻繁にある。人が薬を便利にかつ正確に自己投与することを可能にするために、注射器または注射ペンとして広く知られている様々な装置が開発されている。一般に、これらのペンは、ピストンを含み、かつ複数用量の液体薬物を含有するカートリッジが装備されている。駆動部材は、前方に移動可能であり、カートリッジ内のピストンを前進させて、含有された薬物を遠位カートリッジ端の出口から、典型的には針を介して、分注する。使い捨てまたは事前充填されたペンでは、ペンがカートリッジ内の薬物の供給量を使い果たすように利用された後、ユーザは、ペン全体を廃棄し、新しい代わりのペンを使用し始める。再使用可能なペンでは、ペンがカートリッジ内の薬物の供給量を使い果たすように利用された後、ペンは、分解されて、使用済みのカートリッジを新しいカートリッジに交換することが可能になり、次に、ペンは、その後の使用のために再組み立てされる。
【0004】
多くの注射器および他の薬物送達装置は、装置の動作によって送達された用量に比例した様態で、部材が互いに対して回転および/または平行移動する機械的システムを利用する。したがって、当該技術分野では、送達された用量を評価するために、薬物送達装置の部材の相対的な運動を正確に測定する信頼性の高いシステムを提供する努力がなされてきた。そのようなシステムは、薬物送達装置の第1の部材に固設され、装置の第2の部材に固設された被検知構成要素の相対的な運動を検出するセンサを含み得る。
【0005】
適切な量の薬物の投与は、薬物送達装置によって送達された用量が正確であることを必要とする。多くの注射器ペンおよび他の薬物送達装置は、注射事象中に装置によって送達された薬物の量を自動的に検出して記録するための機能を含まない。自動化システムがない場合、患者は各注射の量および時間を手動で追跡しなければならない。したがって、注射事象中に薬物送達装置のユーザに対して用量窓に表示される用量に直接対応する機械的部分を測定することによって、送達された用量を自動的に検出するように動作可能である装置が必要である。さらに、ある特定の実施形態では、そのような用量検出装置は、取り外し可能であり、かつ複数の送達装置と共に再使用可能である必要がある。他の実施形態では、そのような用量検出装置は、送達装置と一体化される必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、薬物送達装置内の相対回転の検知に基づいて薬物送達装置から送達された薬物の量を判定するように構成される用量検出システムおよび関連制御システムを有する薬物送達装置に関する。相対回転は、薬物送達装置の用量設定部材とアクチュエータおよび/またはハウジングとの間で起こり得る。回転検知は、圧電検知、より具体的には、機械的力で圧電センサを繰り返し変形させることを伴い得る。用量検出システムは、薬物送達装置のモジュール式構成要素であっても、薬物送達装置と一体化した構成要素であってもよい。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、薬物送達装置であって、長手方向軸を有する装置本体と、用量設定動作中に装置本体に対して回転し、薬物を送達するための用量分注動作中に長手方向軸に沿って装置本体に対して軸方向に移動するアクチュエータと、用量設定動作中および用量分注動作中の両方で装置本体に対して回転する用量設定部材と、用量分注動作中にアクチュエータに対する用量設定部材の回転を検出するように構成された用量検出システムと、を含み、用量検出システムが、圧電センサを含む、薬物送達装置が提供される。
【0008】
本開示の第2の態様によれば、薬物送達装置であって、長手方向軸を有する装置本体と、用量設定動作中に装置本体に対して回転し、薬物を送達するための用量分注動作中に長手方向軸に沿って装置本体に対して軸方向に移動するアクチュエータと、用量設定動作中にアクチュエータに固定的に連結され、用量分注動作中にアクチュエータに対して回転する用量設定部材と、用量分注動作中に用量設定部材とアクチュエータとの間の回転を検出するように構成された圧電センサと、を含む、薬物送達装置が提供される。
【0009】
本開示の第3の態様によれば、薬物送達装置であって、長手方向軸を有する装置本体と、装置本体に連結され、用量分注動作中に装置本体に対して回転可能な用量設定部材と、装置本体に連結され、用量分注動作中に装置本体に対して移動可能なアクチュエータと、用量分注動作中に用量設定部材の回転を検出するように構成された用量検出システムと、を含む、薬物送達装置が提供される。用量検出システムは、少なくとも1つの変形可能部材、少なくとも1つの変形可能部材に連結された圧電センサ、および少なくとも1つの変形可能部材に機械的力を加え、用量分注動作中に圧電センサを変形させるように構成された少なくとも1つの力アプリケータ、を含む。
【0010】
本明細書に記載される用量検出システムは、薬物送達装置のユーザに対して用量窓に表示される用量に直接対応する機械的部品を測定するという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の特徴および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると、当業者にさらに明らかになるであろう。
【0012】
【
図1】本開示の例示的な薬物送達装置の斜視図である。
【
図2】
図1の例示的な薬物送達装置の断面斜視図である。
【
図3】
図1の例示的な薬物送達装置の近位部分の斜視図である。
【
図4】
図3の例示的な薬物送達装置の近位部分の部分分解斜視図である。
【
図5】本開示の用量検出システムと共に使用するための例示的な圧電フィルムセンサの概略図である。
【
図6】
図1の例示的な薬物送達装置と組み合わせた例示的なモジュール式用量検出システムの斜視図である。
【
図7】
図6のモジュール式用量検出システムの部分分解斜視図である。
【
図8】
図6のモジュール式用量検出システムの圧電フィルムセンサを備えたフレームの斜視図である。
【
図9】
図8のフレームと圧電フィルムセンサの遠位平面図である。
【
図10】
図6のモジュール式用量検出システムの第1の実施形態の分解斜視図であり、ボタンの部分は、内部をよりよく例示するために省略されている。
【
図11】
図6のモジュール式用量検出システムの第1の実施形態の分解斜視図であり、ボタンの部分は、内部をよりよく例示するために省略されている。
【
図12】
図6のモジュール式用量検出システムの第2の実施形態の分解斜視図である。
【
図13】
図6のモジュール式用量検出システムの第2の実施形態の分解斜視図である。
【
図14】薬物送達装置と一体化した例示的な用量検出システムの概略軸方向図であり、用量検出システムは、中立状態で示されている。
【
図15】
図14と同様の別の概略軸方向図であり、用量検出システムは、変形された状態で示されている。
【
図16】薬物送達装置と一体化した例示的な用量検出システムの第1の実施形態の部分立面図である。
【
図17】
図16で特定されたエリアの詳細図であり、ハウジングの一部分が取り外されている。
【
図18】薬物送達装置と一体化した例示的な用量検出システムの第2の実施形態の部分立面図である。
【
図19】
図18で特定されたエリアの詳細図であり、ハウジングの一部分が取り外されている。
【
図20】本開示の用量検出システムと共に使用するための例示的な電子制御システムの概略図である。
【
図21】
図20の制御システムによって実施される信号変換プロセスを示す図である。
【
図22】
図20の制御システムによって実施される信号処理方法を示すフローチャートである。
【
図23】
図20の制御システムによって実施される電気処理回路の回路図である。
【
図24】本開示の別の例示的な薬物送達装置の斜視図である。
【
図25】薬物送達装置の近位部分に取り付けられた例示的な実施形態による用量検出システムの断面図である。
【
図26】本開示の別の例示的な薬物送達装置の破断側面図である。
【
図27】本開示の別の例示的な薬物送達装置の破断側面図である。
【
図28】本開示の1つの例示的な実施形態において、上部に圧電ひずみセンサを装着することができるフレームの代表的な図である。
【
図29】ボールばねリーダと用量ダイヤル部材のディボットまたはくぼみの相互作用の代表的な図である。
【
図30】ラチェットベースの圧電用量検出システムを含む、本開示の別の薬物送達装置の組み立てられた斜視図である。
【
図33】電位差計を備えた用量検出システムを有する、本開示の別の例示的な薬物送達装置の破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の原理の理解を促進するために、次に、図面に例示された実施形態を参照し、特定の言語を使用して、これを説明しよう。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるであろう。
【0014】
例示的な薬物送達装置10は、針24を通して患者に薬物を注射するように構成された注射器ペンとして
図1~
図4に例示されている。例示の薬物送達装置10は注射器ペンであるが、薬物送達装置10は、注入ポンプ、ボーラス注射器、または自動注射器装置などの、ある用量の薬物を設定して送達するために使用される任意の装置であり得る。薬物は、このような薬物送達装置10によって送達され得る任意のタイプのものであり得る。
【0015】
薬物送達装置10は、長手方向軸Lに沿って配置された遠位部分14および近位部分16を含む細長いペン型ハウジング12を備える本体11を含む。遠位部分14は、ペンキャップ18内に受容可能である。
図2を参照すると、遠位部分14は、分注動作中に、その遠位出口端25を通して分注されるべき薬物を保持するように構成されたリザーバまたはカートリッジ20を含む。
【0016】
装置10などの本明細書に記載される装置は、例えば、リザーバ20内などに、薬物をさらに含むことができる。別の実施形態では、システムは、例えば、装置10を含む1つ以上の装置と、薬物と、を備え得る。「薬物」という用語は、限定されないが、インスリン、インスリンリスプロまたはインスリングラルギンなどのインスリンアナログ、インスリン誘導体、ダラグルチドまたはリラグルチドなどのGLP-1受容体アゴニスト、グルカゴン、グルカゴン類似体、グルカゴン誘導体、胃抑制ポリペプチド(GIP)、GIP類似体、GIP誘導体、オキシントモジュリン類似体、オキシントモジュリン誘導体、治療用抗体および上記の装置による送達が可能な任意の治療薬を含む、1つ以上の治療薬を指す。本装置において使用されるような薬物は、1つ以上の賦形剤と共に製剤化されてもよい。装置は、人に薬物を送達するために、患者、介護者または医療専門家によって、概して上述のような様態で操作される。
【0017】
遠位部分14の出口端25には、注射針24を含む取り外し可能な針アセンブリ22が装備されている。ピストン26は、流体リザーバ20内に位置付けられている。注射機構または駆動部材28、例示的にねじは、近位部分16に位置付けられ、用量分注動作中にリザーバ20の出口端25に向かってピストン26を前進させて、含有薬物を強制的に針の付いた出口端25に通すように、長手方向軸Lに沿ってハウジング12に対して軸方向に移動可能である。
【0018】
用量設定部材30は、装置10によって分注されるべき用量を設定するためにハウジング12に連結される。例示される実施形態では、用量設定部材30は、用量設定動作中および用量分注動作中にハウジング12に対して螺旋運動する(すなわち、長手方向軸Lに沿って軸方向に、かつ長手方向軸Lを中心として回転的に同時に移動する)ように動作可能なねじ要素の形態である。
図1および
図2は、そのホームまたはゼロ位置でハウジング12内に完全にねじ込まれた用量設定部材30を例示する。用量設定部材30は、それが単一の注射で装置10によって送達可能な最大用量に対応する完全に延在した位置に到達するまで、ハウジング12から近位方向にねじ出され、かつそれが単一の注射で装置10によって送達可能な最小用量に対応するホームまたはゼロ位置に到達するまで、ハウジング12内に遠位方向にねじ込まれるように動作する。
【0019】
図2~
図4を参照すると、用量設定部材30がハウジング12に対して螺旋運動することを可能にするように、用量設定部材30は、ハウジング12の対応するねじ山付き内面13に係合する螺旋状ねじ山付き外面33を有する円筒状用量ダイヤル部材32を含む。ダイヤル部材32は、装置10のスリーブ34(
図2)のねじ山付き外面に係合する螺旋状ねじ山付き内面をさらに含む。ダイヤル部材32の外面33は、ユーザに設定用量量を示すために、投与窓36を介して視認可能な数字などの用量指標マーキングを含む。用量設定部材30は、ダイヤル部材32の開放近位端に連結され、かつダイヤル部材32の開放41内に受容される戻り止め40によってダイヤル部材32に対して軸方向にかつ回転的に係止される、管状フランジ38をさらに含む。用量設定部材30はさらに、その近位端でダイヤル部材32の外周の周りに位置付けられたスカートまたはカラー42を含む。スカート42は、スロット46に受容されるタブ44によってダイヤル部材32に対して軸方向にかつ回転的に係止される。
【0020】
したがって、ダイヤル部材32、フランジ38、およびスカート42が全て、回転的にかつ軸方向に一緒に固定されているため、用量設定部材30は、それらのいずれかまたは全てを含むと見なすことができる。ダイヤル部材32は、用量を設定すること、および薬物の送達を駆動することに直接関与する。フランジ38は、ダイヤル部材32に取り付けられており、後で記載されるように、クラッチ52と協働して、ダイヤル部材32を用量ボタン56と選択的に連結させる。スカート42は、本体11の外部に表面を提供して、ダイヤル部材32を回転させる。
【0021】
スカート42は、例示的に、スカート42の外面49上に形成された複数の表面特徴部48を含む。表面特徴部48は、例示的に、スカート42の外面の周りに円周方向に離間された長手方向に延在するリブおよび溝であり、ユーザがスカートを把持して回転させ易くする。代替的な実施形態では、スカート42は取り外されるか、またはダイヤル部材32と一体化され、ユーザは、用量設定のために、用量ボタン56および/またはダイヤル部材32を把持して回転させることができる。
【0022】
図3および
図4を参照すると、送達装置10は、ダイヤル部材32内に受容されるクラッチ52を有するアクチュエータ50を含む。
図2に示されるように、クラッチ52は、その近位端に軸方向に延在するステム54を含む。アクチュエータ50は、用量設定部材30のスカート42の近位に位置付けされた用量ボタン56をさらに含む。
図2の用量ボタン56は、用量ボタン56の遠位表面の中央に位置する装着カラー58を含む。カラー58は、用量ボタン56とクラッチ52を一緒に軸方向にかつ回転可能に固定するために、締まり嵌めまたは超音波溶接などによりクラッチ52のステム54に取り付けられる。
【0023】
用量ボタン56は、円盤状の近位端表面または面60と、遠位に延在し、かつ面60の外周縁の半径方向内向きに離間された環状壁部分62と、を含み、その間に環状リップ64を形成する(
図2)。用量ボタン56の近位面60は、アクチュエータ50を遠位方向に押すために、手動で、すなわち、ユーザによって直接的に、力が加えられ得る押圧表面として機能する。用量ボタン56は、例示的に、近位面60の中央に位置する凹状部分66を含む(
図3および
図4)が、近位面60は、代替的に平坦な表面であってもよい。付勢部材68、例示的にばねが、ボタン56の遠位表面70と管状フランジ38の近位表面72との間に配設され、アクチュエータ50および用量設定部材30を互いから軸方向に離して付勢する。用量ボタン56は、用量分注動作を開始するようにユーザによって押下可能である。
【0024】
送達装置10は、以下でさらに記載されるように、用量設定モードの動作、および用量分注または送達モードの動作の両方で動作可能である。
【0025】
用量設定モードの動作では、装置10によって送達されるべき所望の用量を設定するために、用量設定部材30をハウジング12に対してダイヤルする(すなわち、回転させる)。近位方向にダイヤルすることは、設定用量を増加させるように機能し、遠位方向にダイヤルすることは、設定用量を減少させるように機能する。用量設定部材30は、用量設定動作中に設定用量の最小増分増加または減少に対応する回転増分(例えば、クリック)で調節可能である。例えば、1回の増分または「クリック」は、1単位の薬物と等しい。設定用量量は、投与窓36を通して示されるダイヤル指標マーキングを介してユーザに視認可能である。アクチュエータ50の用量ボタン56は付勢部材68によって一緒に付勢される相補的かつ互いに面するスプライン74(
図2)によって用量設定部材30のスカート42に対して回転的に固定されるため、ボタン56およびクラッチ52を含むアクチュエータ50は、用量設定モードのダイヤル中に用量設定部材30と共に軸方向にかつ回転的に移動する。したがって、上記のように、ユーザは、用量ボタン56および/またはダイヤル部材32を把持して回転させることができる。用量設定動作の過程で、スカート42および用量ボタン56は、ハウジング12に対して「開始」位置から「終了」位置まで螺旋運動の様態で移動する。ハウジング12に対するこの回転は、薬物送達装置10の動作によって設定される用量の量に比例する。
【0026】
所望の用量が設定されてから、注射針24が、例えばユーザの皮膚を適切に貫通するように装置10を操作する。用量分注モードの動作は、長手方向軸Lに沿って用量ボタン56の近位面60に加えられる軸方向の遠位力に応答して開始される。この軸方向の遠位力は、長手方向軸Lに沿ってハウジング12に対して遠位方向にアクチュエータ50を軸方向に運動させる。以下でさらに記載されるように、ユーザによって用量ボタン56に直接または間接的に軸方向力を加えることができる。用量分注モードの動作はまた、別個のスイッチまたはトリガー機構を起動させることによっても開始され得る。
【0027】
アクチュエータ50の軸方向への移動動作は、付勢部材68を圧縮し、用量ボタン56と管状フランジ38との間の間隙を縮小するかまたは閉鎖する。この相対的な軸方向の運動は、クラッチ52およびフランジ38上の相補的スプライン74(
図2)を分離し、かつそれにより、アクチュエータ50を、用量設定部材30に回転的に固定された状態から係合解除する。具体的には、用量設定部材30をアクチュエータ50から回転的に連結解除して、アクチュエータ50に対する用量設定部材30の後方駆動回転を可能にする。
【0028】
アクチュエータ50がハウジング12に対して回転しない状態で軸方向に押し込まれ続けると、ダイヤル部材32が用量ボタン56に対して回転するにつれて、ダイヤル部材32がハウジング12内にねじ戻される。注射されるべき量がまだ残っていることを示す用量マーキングは、窓36を通して視認可能である。用量設定部材30が遠位にねじ止めされると、駆動部材28は、遠位に前進して、リザーバ20を通してピストン26を押し込み、かつ針24(
図2)を通して薬物を放出する。
【0029】
用量分注動作中に、薬物送達装置10から放出された薬物の量は、ダイヤル部材32がハウジング12内にねじ戻される際のアクチュエータ50に対する用量設定部材30の回転運動の量に比例する。注射は、ダイヤル部材32の雌ねじがスリーブ34の対応する雄ねじの遠位端に到達したときに完了する(
図2)。次に、装置10は、
図2および
図3に示されるような準備状態またはゼロ用量位置に再び配置される。
【0030】
アクチュエータ50の用量ボタン56に対する用量設定部材30の用量ダイヤル部材32の、ひいては、回転的に固定されたフランジ38およびスカート42の、上記の「開始」および「終了」角度位置は、用量分注動作中に角度位置の「絶対」変化を提供する。相対回転の程度の判定は、いくつかの方法で判定される。以下でさらに記載されるように、例として、全回転は、検知システムによって任意の数の方法で測定された用量設定部材30の増分運動も考慮に入れることによって判定することができる。
【0031】
図6および
図7ならびに
図24に例示される他の実施形態では、各用量ボダン56’のアクチュエータ50は、
図1~
図4のスカート42および用量ボタン56の両方を組み合わせる1つの部品である。これらの実施形態の各々では、フランジ38は、ダイヤル部材32に取り付けられ、クラッチ52(
図4)と協働して、ダイヤル部材32を一体的な用量ボタン56と選択的に連結させる。各一体的な用量ボタン56の半径方向外部表面は、ハウジング12の外部に表面を提供して、ダイヤル部材32を回転させる。したがって、
図6および
図7ならびに
図24の実施形態では、ユーザは、用量設定のために、複数の表面特徴部を含み得る、各用量ボタン56または56’の半径方向外部表面を把持して回転させることができる。
図6および
図7ならびに24に示される実施形態では、各一体的な用量ボタン56’は、上記の説明の
図1~
図4の用量ボタン56と実質的に同様に挙動する。一体的な構成要素ボタン56’は、スカート42および用量ボタン56の両方の特徴を組み合わせる。この実施形態では、フランジは、ダイヤル部材に取り付けられ、以下に記載されるクラッチと協働して、ダイヤル部材を一体的な用量ボタンと選択的に連結させる。一体的な用量ボタン56’の半径方向外部表面は、本体11の外部に表面を提供して、ダイヤル部材を回転させる。
【0032】
例示的な送達装置10の設計および動作のさらなる詳細は、「Medication Dispensing Apparatus with Triple Screw Threads for Mechanical Advantage」と題される米国特許第7,291,132号に見出すことができ、その全体的な開示は、参照により本明細書に組み込まれる。送達装置の別の例は、「Automatic Injection Device With Delay Mechanism Including Dual Functioning Biasing Member」と題される米国特許第8,734,394号に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのような装置は、薬物送達装置内の相対回転の検知に基づいて薬物送達装置から送達された薬物の量を判定するように、本明細書に記載される1つ以上の様々なセンサシステムを用いて修正され得る。
【0033】
様々なセンサシステムが本明細書において企図される。概して、センサシステムは、少なくとも一対の検知構成要素、検知構成要素および被検知構成要素を備える。「検知構成要素」という用語は、被検知要素の相対角度位置を検出することができる任意の構成要素を指す。検知構成要素は、センサを、センサを動作させるための関連する電気構成要素と共に含む。「被検知要素」とは、関連するセンサに対して移動し、センサがセンサに対する運動を検出することができる任意の構成要素である。被検知構成要素は、1つ以上の被検知要素を備える。したがって、センサは、被検知要素(複数可)の位置を検出し、被検知要素の相対位置(複数可)を表す出力を提供することができる。
【0034】
次に
図5を参照すると、例示的な圧電センサ100が、第1の電極102、第2の電極104、およびポリマーコア106を含むフィルムの形態で示されている。コア106での使用に好適なポリマーとしては、例えば、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン)が挙げられる。
【0035】
圧電センサ100は、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換するトランスデューサである。より具体的には、圧電センサ100は、機械的変形を比例電気信号(電荷または電圧)に変換する。したがって、圧電センサ100が機械的力に供され、
図5の1つ以上の矢印Sに沿って伸張するなどの変形、振動、またはひずみを受けると、圧電センサ100は、アナログ電圧検出器108による検出のために、第1の電極102と第2の電極104との間に比例電気信号を生成する。圧電センサ100の機械的変形は、弾性(すなわち、可逆的)であってもよく、それにより、圧電センサ100は、力が取り除かれると、元の中立形状に戻ることができる。
【0036】
例示的な圧電センサ100は、TE Connectivityから入手可能なPiezo Film Sensorであり、微小ひずみ当たり10~15mVの感度(長さのppm変化)、および28μmの厚さを有する。
【0037】
次に
図6~
図13を参照すると、本開示の薬物送達装置10または別の好適な薬物送達装置と共に使用するための用量検出システム200が開示されている。用量検出システム200は、用量分注動作中に、アクチュエータ50および/または薬物送達装置10の別の構成要素に対する用量設定部材30の回転を検知し得る。用量設定部材30の検知された回転を使用して、薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することができる。
【0038】
用量検出システム200は、例えば、
図25に示されるように、薬物送達装置10に取り外し可能に連結されるモジュール式構成要素であり得る。この取り外し可能な連結により、用量検出システム200を第1の薬物送達装置10から取り外し、その後、第2の薬物送達装置(図示せず)に取り付けることが可能になる。用量検出システム200と薬物送達装置10との間の取り外し可能な連結を以下でさらに記載する。
【0039】
図6および
図7では、用量検出システム200は、少なくとも用量分注動作中に、用量設定部材30の回転を検出するために薬物送達装置10に連結されたフレーム210を含む。例示的なフレーム210は、アクチュエータ50に対する用量設定部材30の回転を検出するために、アクチュエータ50の用量ボタン56’に連結されるが、この場所は変化し得る。フレーム210と用量ボタン56’との間の連結は、用量設定動作および用量分注動作の両方の間に軸方向にかつ回転的に固定され得る。フレーム210はまた、用量設定動作中に用量設定部材30に回転的に連結されてもよく、これにより、用量検出システム200が、用量設定動作中にフレーム210と用量設定部材30との組み合わせられた回転を認識しないか、または無視することを可能にする。しかしながら、フレーム210は、用量分注動作中に用量設定部材30から連結解除されてもよく、これにより、用量検出システム200が、用量分注動作中にフレーム210に対する用量設定部材30の回転を検出することを可能にすることができる。
【0040】
例示的なフレーム210は、ユーザに面する近位または上面214と、用量ボタン56’に面する遠位または下面216と、を有する近位壁212を含む。フレーム210の近位壁212が用量ボタン56’を被覆し得るため、オペレータは、フレーム210の上面214に、長手方向軸L(
図7)に沿って軸方向の遠位力を加えることによって用量を送達することができる。この軸方向の遠位力は、フレーム210から、用量ボタン56’の近位面60に伝達され得る。上に記載されるように、残りの用量分注動作を継続することができる。
【0041】
例示的なフレーム210はまた、取り外し可能な摩擦嵌めの様態で用量ボタン56’と係合するために壁212から遠位に延在する複数のタブ218を含む。フレーム210と用量ボタン56’との間の取り外し可能な連結は、例えば、1つ以上の締結具、ねじ山付きインターフェース、または別の好適な連結機構を使用して達成することもできる。フレーム210と用量ボタン56’との間の取り外し可能な連結により、用量検出システム200を、上でさらに記載されるように、モジュール式構成要素とすることができる。
【0042】
図8および
図9に示されるように、用量検出システム200のフレーム210は、
図5に関して上に記載されるように、少なくとも1つの圧電センサ100を含み得る。圧電センサ100は、フレーム210の下面216に接着されても、結合されても、または別様に連結されてもよいが、この場所は変化し得る。圧電センサ100は、中立(例えば、平坦)状態でフレーム210に連結され、隣接する用量ボタン56’および/またはフレーム210と共に機械的に変形するように構成され得る。用量検出システム200のフレーム210はまた、以下でさらに記載されるように、電圧検出器108(
図5)および圧電センサ100に関連付けられた他の電子構成要素を保持するように構成され得る。
【0043】
図10~
図13に示されるように、用量検出システム200は、1つ以上の剛性力アプリケータ220と、フレーム210上で力アプリケータ220、圧電センサ100(
図8)、またはその両方と機械的に連通する複数の変形可能部材222と、をさらに含む。用量設定部材30が用量分注動作中にアクチュエータ50に対して回転する際、力アプリケータ220は、変形可能部材222と係合し、変形可能部材222に機械的力を加えるように構成される。以下でさらに記載されるように、この力は、変形可能部材222から対応する圧電センサ100に伝達されて、フレーム210上の圧電センサ100(
図8)を屈曲させるか、伸張させるか、または別様に変形させることができる。一例では、力アプリケータ220は、指に似ており、用量設定部材30の回転可能なダイヤル部材32に連結されている。一例では、変形可能部材222は、隆起部または歯に似ており、アクチュエータ50の用量ボタン56’に連結されている。力アプリケータ220および変形可能部材222の数、サイズ、場所、および向きは変化し得る。例えば、力アプリケータ220と変形可能部材222の場所を逆にすることができ、それにより、力アプリケータ220は、アクチュエータ50に連結されることになり、変形可能部材222は、用量設定部材30に連結されることになる。
【0044】
図10および
図11の例示される実施形態では、力アプリケータ220は、例えば、回転可能なダイヤル部材32として示される用量部材30から近位に延在し、変形可能部材222は、アクチュエータ50の用量ボタン56’から遠位に延在する。代替的な実施形態では、一体的な用量ボタン56’は、
図3に例示される用量ボタン56およびスカート42に置き換えることができる。剛性力アプリケータ220が隣接する変形可能部材222を横切って回転するたびに、力アプリケータ220は、
図11に示されるように、隣接する変形可能部材222に対して、長手方向軸Lに実質的に平行な軸方向Aに機械的力を加える。アクチュエータ50の用量ボタン56’は可撓性であり、そのため、力アプリケータ220からの機械的力により、用量ボタン56’が軸方向Aに変形または屈曲する。用量ボタン56’のこの軸方向の変形は、フレーム210の隣接する近位壁212上の圧電センサ100(
図8)に伝達され得る。圧電センサ100の対応する軸方向の変形は、力アプリケータ220が隣接する変形可能部材222を横切って回転するたびに起こり得る。
【0045】
図12および
図13の例示される実施形態では、力アプリケータ220は、回転可能なダイヤル部材32として示される用量部材30から半径方向外向きに延在し、変形可能部材222は、アクチュエータ50の用量ボタン56’から半径方向内向きに延在する。剛性力アプリケータ220が隣接する変形可能部材222を横切って回転するたびに、力アプリケータ220は、
図13に示されるように、隣接する変形可能部材222に対して、長手方向軸Lに実質的に垂直な半径方向外向き方向Rに機械的力を加える。アクチュエータ50の用量ボタン56’は可撓性であり、そのため、力アプリケータ220からの機械的力により、用量ボタン56’が半径方向外向き方向Rに変形または屈曲する。用量ボタン56’のこの半径方向の変形は、フレーム210のタブ218に、次いで、フレーム210の近位壁212上の圧電センサ100(
図8)に伝達され得る。圧電センサ100の対応する半径方向の変形は、力アプリケータ220が隣接する変形可能部材222を横切って回転するたびに起こり得る。代替的な実施形態では、一体的な用量ボタン56’は、
図3に例示される用量ボタン56およびスカート42に置き換えることができる。
【0046】
上に記載されるように、用量設定部材30の検知された回転を使用して、薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することができる。ある特定の実施形態では、アクチュエータ50上の隣接する変形可能部材222を横切る用量設定部材30に対する力アプリケータ220の各回転は、1用量単位と相関し得る。したがって、圧電センサ100から受信した情報に基づいて、用量検出システム200は、力アプリケータ220が変形可能部材222を横切って回転する回数を増分的にカウントし、その数を薬物送達装置10から送達された薬物の量と相関させることができる。しかしながら、各変形可能部材222のサイズ、および隣接する変形可能部材222間の距離は、他の用量単位と相関するように変化し得る。用量検出システムは、2つの部材間の相対回転運動を検出することを含む。送達された用量の量と既知の関係を有する回転の程度により、センサシステムは、用量注射の開始から用量注射の終了までの角度移動量を検出するように動作する。例えば、ペン型注射器のための典型的な関係は、用量設定部材の角度変位18°が1単位用量に等しいというものであるが、例えば、9、10、15、20、24、または36度などの他の角度関係もまた好適であり、1単位または0.5単位に使用することができる。本システムは、用量送達中の用量設定部材の総角度変位を判定するように動作可能である。したがって、角度変位が90°であれば、5単位の用量が送達されたことになる。用量設定部材のそのような判定された総角度変位を、送達された用量の量と相関させることができる。
【0047】
用量検出システム200は、薬物送達装置10に取り外し可能に連結されるモジュール式構成要素ではなく、薬物送達装置10と一体化したシステムとして供給され得る。この代替的な実施形態では、圧電センサ100は、用量送達中に用量ボタン56’に対して静止している任意の場所でハウジング12または送達装置10の他の構成要素に連結されてもよく、過度のノイズなしに圧電センサ100の変形を正確に検出する。圧電センサ100に関連付けられた電子構成要素は、薬物送達装置10の任意の構成要素に同様に取り付けることができ、ひいては、送達装置10と一体化することができる。
【0048】
図25において、ここでシステム80と称される用量送達検出システムは、装置のボタン56に取り付け可能なモジュール82の形態である。実施形態は、
図1~
図4に関して共通の詳細が既に提供されているため、若干概略的に示されている。用量検出モジュール82は、円筒状の上壁90、軸方向頂壁92、および軸方向下壁98、を有する本体88を含むが、下壁98の不在を含む、これらの構成要素の変形例は開示の範囲内であることが理解されよう。本明細書におけるこれまでの説明と共通する他の部品としては、モジュール本体88のキャビティ96内に含有される電子機器アセンブリ111、用量ボタン56、用量設定部材32、および装置ハウジング12が挙げられる。電子機器アセンブリ111は、コントローラを含む、
図20および
図22に描写されるような電子構成要素を含み得る。さらに、用量検出モジュール82は、用量ボタン56の環状側壁62に取り付けられているように概略的に示されているが、取り付けの代替的な形態および場所を使用することができる。例えば、用量検出モジュール82が用量ボタン56に取り付けられてもよく、いくつかの実施形態では、スカート42に解放可能に取り付けられてもよい。また、当業者には理解され得るように、用量検出モジュール82を一体的な用量ボタン56’に取り付けることができる。モジュール82の頂壁92に指パッド110が取り付けられている。指パッド110は頂壁92に連結され、頂壁92は上側壁90に取り付けられる。指パッド110は、半径方向内向きに延在し、かつ壁構成要素92の円周方向の溝116内に受容される隆起部114を含む。溝116は、指パッド110と壁構成要素92との間のわずかな軸方向の運動を可能にする。ばね(図示せず)は通常、指パッド110を壁構成要素92から離れる方向に上向きに付勢する。指パッド110は、壁構成要素92に回転的に固定され得る。注射プロセスが開始される際のモジュール本体88に向かって遠位方向への指パッド110の軸方向の運動を使用して、選択された事象を引き起こすことができる。指パッド110の1つの用途は、用量注射が開始されるときのモジュール本体88に対する指パッド110の初期の押圧および軸方向への運動のときの薬物送達装置電子機器の起動であり得る。例えば、この初期の軸方向への運動は、装置、特に用量検出システムに関連付けられた構成要素を「目覚めさせる」ために使用されてもよい。
【0049】
指パッドが存在しない場合、システム電子機器は他の様々な方法で起動することができる。例えば、用量送達の開始のときにおけるモジュール82の初期の軸方向への運動は、接点の閉鎖またはスイッチの物理的な係合などによって直接検出され得る。また、他の様々な動作、例えば、ペンキャップの取り外し、加速度計を用いたペンの動きの検出、または用量の設定に基づいて、薬物送達装置を起動することも知られている。多くの手法において、用量検出システムは用量送達の開始前に起動される。
【0050】
用量検出モジュール本体88は、用量ボタン56または56’に取り外し可能に取り付け可能である。例として、
図25において、上側壁90は、モジュール82を用量ボタン56に取り付けるために構成された、内向きに延在するタブ94を有するように概略的に示されている。本体88の下壁101は、より遠位の場所のための取り付け特徴部を含み得る。用量検出モジュール82は、代替的に、スナップ嵌めまたは押圧嵌め、ねじ山付きインターフェースなどのような任意の好適な締結手段を介して用量ボタン56または56’に取り付けられ得るが、但し、一態様では、モジュール82を第1の薬物送達装置から取り外し、その後、第2の薬物送達装置に取り付けることができるものとする。取り付けは、用量ボタン56または56’上のいずれの場所であってもよいが、但し、本明細書で論じるように、用量ボタン56または56’が用量設定部材30に対して軸方向に任意の必要量を移動することができるものとする。
【0051】
用量送達中、用量設定部材30は、用量ボタン56または56’、およびモジュール82に対して自由に回転できる。例示的な実施形態では、モジュール82は用量ボタン56と回転的に固定されており、用量送達中は回転しない。これは、例えば、タブ94を用いて、または、用量ボタン56に対してモジュール82が軸方向に運動するときにモジュール本体88および用量ボタン56上の互いに向かい合うスプラインまたは他の表面特徴部を有することによって、構造的に提供され得る。別の実施形態では、モジュールの遠位への押圧は、モジュール82と用量ボタン56との間に十分な摩擦係合をもたらし、用量送達中にモジュール82と用量ボタン56を一緒に回転的に固定されたままにする。
図25では、下壁98の近位表面に沿ってキャビティ96内に配設された圧電センサ100が示されている。ボタン56の近位面60に沿ってセンサ100を直接検知することができるように、下壁98によって画定される1つ以上の開口部103を含めることができる。
図7をさらに参照すると、ボタン56の近位面60の反対側の遠位面は、変形可能部材222(破線)を含む。力アプリケータ220は、用量設定部材30から延在し、ここではフランジ38として示されているが、部材222に接触するように、用量ダイヤル部材32とすることができる。センサ100は、力アプリケータ220と変形可能部材222との間の相対回転運動を検出することができる。開口部(複数可)103内にあり、ボタンの近位面60と係合するセンサ100の部分によって、検出をさらに強化することができる。
【0052】
次に
図14~
図19を参照すると、本開示の薬物送達装置10または別の好適な薬物送達装置と共に使用するための、別の用量検出システム200’が開示されている。用量検出システム200’は、用量分注動作中に、ハウジング12および/または薬物送達装置10の別の構成要素に対する用量設定部材30の回転を検知し得る。用量設定部材30の検知された回転を使用して、薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することができる。
図14~
図19の第2の用量検出システム200’は、
図6~
図13の第1の用量検出システム200と同様であり、以下に記載される場合を除き、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0053】
図14~
図19の第2の用量検出システム200’は、薬物送達装置10に永久的に連結される一体化した構成要素であり得る。この一体化した連結により、用量検出システム200’を取り外し、それを第1の薬物送達装置10から第2の薬物送達装置(図示せず)まで伝達する必要がなくなる。むしろ、用量検出システム200’は、各薬物送達装置10と一体化した部分として供給されることになる。
【0054】
用量検出システム200’は、
図14および
図15に示されるように、複数の剛性力アプリケータ220’と、力アプリケータ220’および圧電センサ100と機械的に連通する1つ以上の変形可能部材222’と、を含む。力アプリケータ220’は、ボタンまたはギヤ歯に似ており、用量設定部材30の回転可能なダイヤル部材32の外面33に連結されている。変形可能部材222’は、アームまたは歯に似ており、周囲のハウジング12の内面13に連結されている。力アプリケータ220’および変形可能部材222’の数、サイズ、場所、および向きは変化し得る。例えば、力アプリケータ220’と変形可能部材222’の場所を逆にすることができ、それにより、力アプリケータ220’は、ハウジング12に連結されることになり、変形可能部材222’は、用量設定部材30に連結されることになる。用量設定部材30が用量分注動作中にハウジング12に対して回転する際、各力アプリケータ220’は、変形可能部材222’と係合し、変形可能部材222’に機械的力を加えるように構成される。以下でさらに記載されるように、この力は、変形可能部材222’から対応する圧電センサ100に伝達されて、圧電センサ100を屈曲させるか、伸張させるか、または別様に変形させることができる。
【0055】
上に記載されるように、圧電センサ100は、ハウジング12上の各変形可能部材222’と機械的に連通して配置され得る。より具体的には、圧電センサ100は、ハウジング12上の各変形可能部材222’に接着されても、結合されても、または別様に連結されてもよいが、この場所は変化し得る。圧電センサ100は、
図14に示されるように、中立(例えば、平坦)状態で変形可能部材222’に連結され、
図15に示されるように、変形可能部材222’が、隣接する力アプリケータ220’と係合するときに変形可能部材222’と共に機械的に変形するように構成され得る。ハウジング12はまた、以下でさらに記載されるように、電圧検出器108(
図5)および圧電センサ100に関連付けられた他の電子構成要素を保持するように構成され得る。
【0056】
図16および
図17の例示される実施形態では、2つの変形可能部材222A’~222B’は、各々対応する圧電センサ100(
図14)と機械的に連通するハウジング12の内面13から半径方向内向きに延在する。力アプリケータ220’は、ダイヤル部材32の外面33から半径方向外向きに延在し、ダイヤル部材32の外面33のねじ山付き経路をたどる螺旋状パターンで配置される。変形可能部材222A’~222B’のうちの1つが、隣接する力アプリケータ220’を横切って回転するたびに、力アプリケータ220’は、長手方向軸L(
図16)に実質的に垂直な半径方向外向き方向R(
図15)に機械的力を加える。変形可能部材222A’~222B’は可撓性であり得、そのため、力アプリケータ220’からの機械的力により、隣接する変形可能部材222A’~222B’およびその対応する圧電センサ100が半径方向外向き方向Rに変形または屈曲する。圧電センサ100の半径方向の変形は、薬物送達装置10から送達された薬物の量と相関し得る。
【0057】
図18および
図19の例示される実施形態では、6つの変形可能部材222A’~222F’は、各々対応する圧電センサ100(
図14)と機械的に連通するハウジング12の内面13から半径方向内向きに延在する。力アプリケータ220’は、ダイヤル部材32の外面33から半径方向外向きに延在し、ダイヤル部材32の外面33のねじ山付き経路をたどる螺旋状パターンで配置される。変形可能部材222A’~222F’のうちの1つが、隣接する力アプリケータ220’を横切って回転するたびに、力アプリケータ220’は、長手方向軸L(
図18)に実質的に垂直な半径方向外向き方向R(
図15)に機械的力を加える。変形可能部材222A’~222F’は可撓性であり得、そのため、力アプリケータ220’からの機械的力により、隣接する変形可能部材222A’~222F’およびその対応する圧電センサ100が半径方向外向き方向Rに変形または屈曲する。圧電センサ100の半径方向の変形は、薬物送達装置10から送達された薬物の量と相関し得る。
【0058】
本開示の薬物送達装置10または別の好適な薬物送達装置と共に使用するための、用量検出システム200’’の追加の実施形態が
図26に示されている。例示的な装置10は、ハウジング12、ダイヤル部材32、および用量ボタン56’を含み、これらは、上でさらに記載されている。用量検出システム200’’は、ハウジング12上の変形を測定する単一の圧電ひずみセンサ100のみを必要とする。このセンサ100は、投与中にハウジング12上のひずみを測定することができ、ひずみは、直接的な機械的変形、または間接的な機械的な波の伝送の結果である。例えば、
図10に示されるように、機械的な波は、回転可能なダイヤル部材32に対する用量ボタン56’の相対回転中に連続的に隣接する変形可能部材222と相互作用する際の力アプリケータ220のリズミカルな運動によって、生成され得る。前の実施形態と同様に、圧電センサ100からの信号を使用して、薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することができる。
【0059】
本開示の薬物送達装置10または別の好適な薬物送達装置と共に使用するための、用量検出システム200’’’のさらなる実施形態が
図27~
図29に示されている。例示的な装置は、ハウジング12、ダイヤル部材32、および用量ボタン56’を含み、これらは、上でさらに記載されている。用量ダイヤル部材32は、ディボットまたはくぼみ195の間の隆起したエリアの形態の力アプリケータ220’’’を含み、それにより、センサ100が接着される変形可能部材222’’’を通してひずみが生成される。
図27の実施形態では、圧電ひずみセンサ100は、回転する際に用量ダイヤル部材32内の力アプリケータ220’’’の間にディボットまたはくぼみ195を乗せるように、「リーダ」ボールばね180を位置付けるボールばねアーム160を備えたフレーム170(
図28)を含む変形可能部材222’’’上に装着され得る。圧電ひずみセンサ100は、ボールばねアーム160が、用量ダイヤル部材32内の力アプリケータ220’’’の間のディボットまたはくぼみ195上のボールばねリーダ180の運動により、フレームワーク170を通じてひずみ伝送190を行う際に、変形を経験する。
【0060】
図28および
図29は、ボールばねアーム160に取り付けられたボールばねリーダ180と、用量ダイヤル部材32上のディボットまたはくぼみ195との関係を示している。この実施形態は、ボールばねリーダ180によって検知された運動の滑らかな波が注射のための滑り力に対する抗力を最小限に抑えるという利点を有する。前の実施形態と同様に、圧電センサ100からの信号を使用して、薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することができる。単一の圧電センサ100を備える実施形態では、圧電センサ100からの信号は、システムが薬物送達装置10から送達された薬物の量を検出するために、用量が送達されていることを示すように第2の信号と組み合わされる必要がある場合がある。用量が送達されていることを示す信号としては、例えば、用量ボタン56’が押し下げられていること、またはピストン26、および装置10から薬物を押し出しているリードねじ28へのひずみが増加していること、を示す信号を挙げることができる。
【0061】
本開示の薬物送達装置10または別の好適な薬物送達装置と共に使用するための、用量検出システム200’’’’のさらなる実施形態が
図30~
図32に示されている。例示的な装置は、ハウジング12、ダイヤル部材32、および用量ボタン56’を含み、これらは、上でさらに記載されている。ここでフランジ120と称されるフランジは、ダイヤル部材32と用量ボタン56’との間に位置付けられる。用量ボタン56’は、センサ100の場所をよりよく例示するために、頂部プレートなしで示されている。フランジ120は、ダイヤル部材32と一緒に軸方向にかつ回転可能に固定されている。一例では、フランジ120は、フランジ120とダイヤル部材32とを一緒に軸方向にかつ回転可能に固定するように、ダイヤル部材32内に形成された凹状部または開口部に受容されるように構成された複数の突起122を含む。
【0062】
用量検出システム200’’’’’は、用量ボタン56’の内部壁から半径方向内向きに延在するラチェットギヤ歯の形態の複数の変形可能部材222’’’’と、フランジ120として示される、用量設定部材から半径方向外向きに延在するラチェット爪の形態の力アプリケータ222’’’’と、を含む。変形可能部材222’’’’のギヤ歯の各々は、用量ボタン56’の内壁127に沿って長手方向に延在し得る。ギヤ歯は、時計回り方向に力アプリケータ220””と接触する第1の横方向側面123と、反時計回り方向に力アプリケータと接触する第2の横方向側面124と、を含み、逆もまた同様である。一例では、第1の横方向側面123は、それぞれの方向への力アプリケータ220””の運動を阻止する平坦な側面構成を有し、第2の横方向側面は、反対方向への力アプリケータ220””の運動を支援する傾斜した側面構成を有する。用量検出システム200’’’’は、
図30に示されるように、用量ボタン56’によって支持される圧電センサ100をさらに含む。センサの場所は、近位の場所に示され、ボタンにより含有されているが、センサ100の場所は変化し得る。
【0063】
力アプリケータ220””は、基部130と、基部130から延在する指部分132と、を含み得る。基部130は、
図31に示されるように、フランジ120の壁120Aから近位に延在され得る。他の実施形態では、基部130は、例えば、ダイヤル部材などの別の用量設定部材構成要素に装着され得る。指132は、円周方向および半径方向外向きに延在するように示されている。一例では、指132は、離間された関係でフランジ120の軸方向表面131の上方で基部130の横方向側壁130Aから円周方向に延在して、それらの間に間隙133を画定する。この構成では、指132は、基部130への接続に沿って半径方向に撓ませることができる。
図32に示されるように、指132を半径方向外向きに付勢して、指132の先端135を、変形可能部材222””の側面123と124との間に画定された空隙137内に留置する。指の先端135は、側面123、124に沿って強化された滑りを提供するように構成され得る。変形可能部材222””は、フランジ120に取り付けるための積層造形により成形されても、機械加工されても、形成されてもよい。示される例では、単一のユニットとしてフランジ120と一体的に形成された変形可能部材222””、および何らかの機械加工を最終の形状決めのために使用することができる。
【0064】
円筒状の外壁140、近位上壁142、およびカップ形状のボタンを画定する遠位端開口部144を有するボタン56’が示されている。外壁140と離間された関係にある円筒状の内壁146は、環状空間148を画定し得る。内壁146は、上壁142から遠位に延在し得、
図32に示されるように、変形可能部材222””に対して、内壁146と外壁140との間の半径方向の場所に力アプリケータを留置するように、フランジ120内に形成された軸方向開口部139内に整列して装着するための凹状先端を有し得る。上壁142を外壁140の頂部141から凹ませて、圧電センサ100の装着場所を画定することができる。変形可能部材222””は、環状空間148内で上壁142の遠位表面147から遠位に延在するように示されている。一例では、部材222””は、力アプリケータとの接触からの変形および/または振動をよりよく伝送するために、上壁142と物理的に接触している。別の例では、部材222””と上壁142とが一体的に形成されている。
【0065】
用量設定モードの動作では、ユーザは、ハウジング12に対して用量ボタン56’を把持して回転させる。ばね68は、用量ボタン56’およびダイヤル部材32を固定された回転係合へと付勢し、それにより、用量ボタン56’の回転は、ダイヤル部材32およびフランジ120に伝送される。用量設定中に用量ボタン56’とダイヤル部材32とが一緒に回転するため、用量検出システム200’’’’のセンサ100は、非活性のままであり得る。
【0066】
用量分注モードの動作では、ユーザは、用量ボタン56’に軸方向の遠位力を加える。ユーザの力は、ばね68からの付勢力に打ち勝ち、用量ボタン56’およびハウジング12に対して回転するように、ダイヤル部材32を解放する。
図32の例示される実施形態では、ダイヤル部材32は、用量ボタン56に対して反時計回りに回転するが、この方向は変化し得る。フランジ120はダイヤル部材32に回転可能に固定されているため、フランジ120もまた、容量ボタン56’に対して反時計回りに回転する。用量ボタン56’に対するフランジ120の回転により、変形可能部材222’’’’(すなわち、ラチェット爪)が、連続する力アプリケータ220’’’’(すなわち、ギヤ歯)を横切って回転する際に、付勢された半径方向外向き構成から離れる方向に半径方向内向きに撓む。圧電センサ100が剛性力アプリケータ220’’’’に連結されている
図30の例示される実施形態では、機械的な波は、用量ボタン56’を通じて圧電センサ100に伝送され得る。圧電センサ100が、例えば、
図15に示されるように、変形可能部材222’’’’に直接連結され、それにより、変形可能部材222’’’’の運動が圧電センサ100の直接的な機械的変形を引き起こす場合も本開示の範囲内である。前の実施形態と同様に、圧電センサ100からの信号を使用して、薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することができる。
【0067】
薬物送達装置10の用量設定モードおよび用量分注モードの動作に関する追加情報は、上記および以前に組み込まれた米国特許第7,291,132号および同第8,734,394号に提供されている。
【0068】
次に
図20を参照すると、対応する用量検出システム200、200’、200’’、200’’’、200’’’’と共に使用するための電子制御システム300が提供されている。制御システム300は、用量検出システム200、200’、200’’、200’’’、200’’’’の各圧電センサ100と通信して、ハウジング12、アクチュエータ50、および/または薬物送達装置10の別の構成要素に対する用量設定部材30の検知された回転に関する情報を受信することができる。制御システム300は、各圧電センサ100からの情報を使用して、薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することができる。
【0069】
図20の例示される実施形態では、制御システム300は、第2の用量検出システム200’と組み合わせて示されている。したがって、以下の説明は、第2の用量検出システム200’に関する。しかしながら、制御システム300はまた、第1の用量検出システム200および他の好適な用量検出システムと共に使用するように適合され得ることが理解される。
【0070】
図20の例示的な制御システム300は、薬物送達装置10の基板ハウジング12上に位置するマイクロコントローラユニット(MCU)302を含む。しかしながら、MCU302の場所は変化し得る。例えば、制御システム300が
図6~
図13の第1の用量検出システム200と共に使用されるように適合されている場合、MCU302は、薬物送達装置10のアクチュエータ50上に位置し得る。他の実施形態では、MCU302の少なくとも一部分は、遠隔サーバ、ユーザのコンピュータ、またはユーザのスマートフォン上など、薬物送達装置10から遠隔に位置し得る。
【0071】
例示的なMCU302は、処理コア304、メモリ306(例えば、内部フラッシュメモリ、オンボード電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM)など)、電源308(例えば、コイン型電池)、および通信ポート310を含む。これらの構成要素は、可撓性プリント基板(FPCB)312に装着され、それを介して通信することができる。上で論じられるように、処理コア304および/またはメモリ306などのMCU302のある特定の要素が薬物送達装置10から遠隔に位置する場合もまた本開示の範囲内である。
【0072】
MCU302は、各圧電センサ100の電圧検出器108と、または1つが用いられる場合は単一の圧電センサと通信する。MCU302の処理コア304は、各圧電センサ100の電圧検出器108から受信した情報に基づいて薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することを含む、本明細書に記載される動作を実施するように動作可能である。MCU302は、検出された薬物の量をメモリ306に記憶することができる。MCU302はまた、電圧検出器108からの生データまたは検出された薬物の量を、オンボード処理コア304から通信ポート310を介して、ユーザのコンピュータまたはスマートフォンなどの対にされた遠隔装置に伝送することができる。情報は、有線、またはBluetooth低エネルギー(BLE)無線通信プロトコルなどの無線通信プロトコルを介して通信ポート310から伝送され得る。
【0073】
図20のシステムは2つの信号402と共に示されているが、本システムは1つの信号402のみを含み得ることが理解される。
図20および21に示されるように、制御システム300は、実質的にリング形状の信号であり得る、圧電センサ100の電圧検出器108からのアナログ圧電信号402を受信するように構成され得る。次に、制御システム300は、アナログ圧電信号402を、「クリック」または変形事象の時間を表す高周波数信号であり得る中間デジタル信号404に変換するようにプログラムされ得る。最後に、制御システム300は、以下でさらに記載されるように、中間デジタル信号404を、所定の時間を表す所定の幅Wを有する単一のステップ波/方形波であり得る調整済みデジタル信号406に変換するようにプログラムされ得る。
【0074】
制御システム300によって使用される信号処理ロジックまたは方法400が
図22に示され、対応する信号処理回路500が
図23に示されている。
図22のロジック400および
図23の対応する回路500は、アナログ圧電信号402を、抵抗器510を使用して直流(DC)電圧オフセットステップ410に、続いて増幅器512を使用して増幅ステップ412に、続いて中間デジタル信号404を生成するために、比較器514を使用してアナログツーデジタル変換ステップ414に供す。信号404は、入力電圧が所定の電圧(例えば、1.3V)以上であるときに生成され得る。代替的に、入力電圧が所定の電圧よりも小さい場合、ステップ416で信号404を無視することができる。中間デジタル信号404は、タイマ開始ステップ418でタイマを開始するときに信号を「オン」にし、タイマ満了ステップ420で所定の時間後にタイマが満了するときに信号を「オフ」にすることによって、調整済みデジタル信号406に変換され得る。計時ステップ418、420は、抵抗-容量(RC)計時ループ518を使用して実施され得る。計時ステップ418、420に関連付けられた所定の時間は、調整済みデジタル信号406(
図21)の幅Wを制御することができ、誤差を最小限に抑えるように、各回転および変形事象の時間と一致するように調整され得る。
図22のロジック400および
図23の対応する回路500は、ある期間にわたってカウントされたデジタル信号406の数に対応する数を出力し得る。
【0075】
ある特定の実施形態では、制御システム300は、用量設定部材30の回転の方向を区別するように構成され得る。例えば、制御システム300は、用量設定部材30が用量設定動作中に第1の方向に回転するか、用量分注動作中に第2の方向に回転するかを区別するように構成され得る。薬物送達装置10から実際に送達された薬物の量を判定するために、制御システム300は、用量設定動作中に用量設定部材30の回転を無視し、実際の用量分注動作中に用量設定部材30の回転のみを処理し得る。制御システム300は、これらの方向を、例えば、位相シフトまたはシフトレジスタ符号化を使用して区別し得る。
【0076】
最後に
図33~
図34を参照すると、本開示の薬物送達装置10または別の好適な薬物送達装置と共に使用するための、別の用量検出システム600が開示されている。例示的な装置10は、ハウジング12、ダイヤル部材32、および用量ボタン56’を含み、これらは、上でさらに記載されている。用量検出システム600は、ダイヤル部材32から螺旋状パターンで半径方向外向きに延在するギヤ歯または表面突出部の形態の被検知構成要素602と、ハウジング12から半径方向内向きに延在して、ギヤ602と噛み合うシャフト(図示せず)を有する複数回転電位差計の形態の検知構成要素604と、を含む。動作中、ダイヤル部材32がハウジング12に対して回転すると、ギヤ602が電位差計604のシャフトを回転させる。前の実施形態と同様に、電位差計604からの信号を使用して、薬物送達装置10から送達された薬物の量を判定することができる。センサ604はまた、他の種類のセンサであってもよく、検知構成要素は、触覚、光学、電気、および磁気特性などを含む、センサによって検出可能な他の特徴を備え得る。例えば、センサ604は、被検知構成要素602の表面突出部にわたって光を発する光源/センサの組み合わせであってもよく、センサ604は、反射光を受容し、回転運動を示す信号をコントローラに通信する。一例では、センサ604は、複数のフォトダイオードを含む被検知構成要素602にわたって光を発する光源であってもよく、回路に連結された被検知構成要素602は、回転運動を示す信号をコントローラに通信する。別の例では、センサ604は、被検知構成要素602の表面突出部との接触により偏向されるか、または切り替えられるように構成された装置ハウジングに連結されたマイクロスイッチを含むことができ、センサ604は、回転運動を示す信号をコントローラに通信する。一例では、表面特徴部は、用量設定部材がアクチュエータに対して回転する際の増分運動の検出を可能にする物理的特徴部である。一例では、被検知構成要素602は、螺旋状の溝内に配設され、線形電位差計または複数の別個の電位差計であり、検知構成要素604は、装置ハウジングから配設されたワイパーセンサである。
【0077】
本発明は例示の設計を有するものとして記載されてきたが、本発明は、本開示の趣旨および範囲内でさらに修正されてもよい。したがって、本出願は、本発明の一般的原理を用いた本発明の任意の変形、使用、または適応を包含することが意図される。さらに、本出願は、本発明が関係し、添付の特許請求の範囲の限定内に入る、当該技術分野で既知のまたは慣習的な実施の範囲内に入るものとして、本開示からのそのような逸脱を網羅することを意図する。
【0078】
以下の態様を含むがこれらに限定されない様々な態様が、この開示に記載されている。
【0079】
1.薬物送達装置であって、長手方向軸を有する装置本体と、用量設定動作中に装置本体に対して移動可能であり、薬物を送達するための用量分注動作中に長手方向軸に沿って装置本体に対して移動可能であるアクチュエータと、用量分注動作中に装置本体に対して回転する用量設定部材と、用量分注動作中にアクチュエータに対する用量設定部材の回転を検出するように構成された用量検出システムと、を含み、用量検出システムが、圧電センサを含む、薬物送達装置。
【0080】
2.用量検出システムが、用量設定部材に連結されたラチェット指と、アクチュエータに連結されたラチェットギヤ歯と、を含み、ラチェットギヤ歯が、相対回転中にラチェット指と接触可能である、態様1に記載の薬物送達装置。
【0081】
3.圧電センサが、アクチュエータに装着されている、先の態様のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0082】
4.用量設定部材の軸方向表面に連結された基部を有するラチェット指であって、ラチェット指が、軸方向表面の上方で円周方向にかつ軸方向表面との空間関係に延在し、ラチェット指が、半径方向に撓むように構成されている、ラチェット指と、アクチュエータの用量ボタンに連結されたラチェットギヤ歯と、を含み、ラチェットギヤ歯が、用量ボタンの内壁に沿って長手方向に延在し、ラチェットギヤ歯が、ラチェット指を半径方向内向きに撓ませるように、相対回転中にラチェット指と接触可能である、先の態様のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0083】
5.用量検出システムが、圧電センサと電気通信するコントローラを含み、コントローラが、圧電センサによって生成されたアナログ信号を受信することと、アナログ信号をデジタル信号に変換することと、デジタル信号から用量設定部材の回転運動の単位を判定することと、を行うように構成されており、回転運動の単位が、用量分注動作中に分注された用量の量を示す、態様4に記載の薬物送達装置。
【0084】
6.圧電センサから信号を受信するように構成された電圧検出器をさらに含む、先の態様のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0085】
7.電圧検出器から遠隔装置に情報を送信するように構成された通信ポートをさらに含む、態様6に記載の薬物送達装置。
【0086】
8.薬物を含有するリザーバと、アクチュエータに連結されたピストンと、をさらに含み、ピストンが、リザーバから薬物を送達するために、用量分注動作のときにリザーバを通って進む、先の態様のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0087】
9.薬物送達装置であって、長手方向軸を有する装置本体と、用量設定動作中に装置本体に対して回転し、薬物を送達するための用量分注動作中に長手方向軸に沿って装置本体に対して軸方向に移動するアクチュエータと、用量設定動作中にアクチュエータに固定的に連結され、用量分注動作中にアクチュエータに対して回転する用量設定部材と、用量分注動作中に用量設定部材とアクチュエータとの間の回転を検出するように構成された圧電センサと、を含む、薬物送達装置。
【0088】
10.圧電センサが、用量設定動作中に非活性である、態様9に記載の薬物送達装置。
【0089】
11.アクチュエータが、複数の歯を備えたラチェットギヤを含み、用量設定部材が、ラチェット爪を含み、圧電センサが、ラチェットギヤの各歯を横切るラチェット爪の回転を検出する、態様9および10のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0090】
12.薬物送達装置であって、長手方向軸を有する装置本体と、装置本体に連結され、用量分注動作中に装置本体に対して回転可能な用量設定部材と、装置本体に連結され、用量分注動作中に装置本体に対して移動可能なアクチュエータと、用量分注動作中に用量設定部材の回転を検出するように構成された用量検出システムと、を含み、用量検出システムが、少なくとも1つの変形可能部材、少なくとも1つの変形可能部材に連結された圧電センサ、および少なくとも1つの変形可能部材に機械的力を加え、用量分注動作中に圧電センサを変形させるように構成された少なくとも1つの力アプリケータ、を含む、薬物送達装置。
【0091】
13.用量検出システムと通信する制御システムをさらに含み、制御システムが、圧電センサの変形に基づいて送達された薬物の量を判定するようにプログラムされている、態様12に記載の薬物送達装置。
【0092】
14.少なくとも1つの力アプリケータが、用量分注動作中に、少なくとも1つの変形可能部材に対して回転可能である、態様12および13のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0093】
15.少なくとも1つの力アプリケータが、用量設定部材に回転的に連結され、それにより、用量分注動作中に、少なくとも1つの力アプリケータと用量設定部材とが一緒に回転する、態様12~14のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0094】
16.少なくとも1つの力アプリケータが、用量設定部材の外面上に螺旋状パターンで配置された複数の歯を含む、態様15に記載の薬物送達装置。
【0095】
17.少なくとも1つの力アプリケータが、用量設定部材から、軸方向近位方向および半径方向外向き方向のうちの一方に延在する指を含む、態様15に記載の薬物送達装置。
【0096】
18.少なくとも1つの変形可能部材が、装置本体およびアクチュエータのうちの1つに連結される、態様12~17のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0097】
19.少なくとも1つの変形可能部材が、装置本体の内面上に配置された複数の歯を含む、態様18に記載の薬物送達装置。
【0098】
20.少なくとも1つの変形可能部材が、アクチュエータの遠位表面上に配置された複数の歯を備える、態様18に記載の薬物送達装置。
【0099】
21.少なくとも1つの力アプリケータが、長手方向軸に実質的に平行な軸方向に圧電センサを変形させる、態様12~20のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0100】
22.少なくとも1つの力アプリケータが、長手方向軸に実質的に垂直な半径方向外向き方向に圧電センサを変形させる、態様12~21のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0101】
23.用量検出システムが、装置本体に取り外し可能に連結されるモジュール式構成要素である、態様12~22のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0102】
24.用量検出システムが、装置本体に永久的に連結される一体化した構成要素である、態様12~23のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0103】
25.少なくとも1つの変形可能部材が、可撓性であり、少なくとも1つの力アプリケータが、剛性である、態様12~24のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0104】
26.用量設定動作中に、用量設定部材が、アクチュエータに回転的に連結され、それにより、装置本体に対して、用量設定部材とアクチュエータとが一緒に回転し、用量分注動作中に、用量設定部材が、アクチュエータから回転的に連結解除され、それにより、用量設定部材が、アクチュエータに対して回転する、態様12~25のいずれか1つに記載の薬物送達装置。
【0105】
27.装置本体が、薬物を有するリザーバを含む、態様12~26のいずれか1つに記載の薬物送達装置。