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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ノズルベーン
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20221027BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F02B37/24
F01D17/16 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021501408
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2019007144
(87)【国際公開番号】W WO2020174551
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】グプタ ビピン
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】段本 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋二
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-155640(JP,A)
【文献】国際公開第2006/032827(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012101974(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0044927(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0314808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量ターボチャージャのノズルベーンであって、
シュラウド面とハブ面との間に画定される排ガス通路に回動自在に設けられるノズルベーン本体と、
前記ノズルベーン本体のシュラウド側端面及びハブ側端面の少なくとも一方において、前記ノズルベーン本体の回動中心周りに形成されたフランジ部と、を備え、
前記フランジ部は、前記回動中心に対して、前記後縁側且つ前記ノズルベーンの負圧面側における前記フランジ部の外周縁までの最短距離をR1、前記前縁側且つ前記負圧面側における前記フランジ部の外周縁までの最短距離をR2、前記前縁側且つ前記ノズルベーンの圧力面側における前記フランジ部の外周縁までの最短距離をR3、前記後縁側且つ前記圧力面側における前記フランジ部の外周縁までの最短距離をR4とした場合に、次式(i)又は(ii)を満たすノズルベーン。
R1<R2 ・・・(i)
R4<R3 ・・・(ii)
【請求項2】
前記フランジ部は、前記排ガス通路側に面する排ガス通路側フランジ面を有し、
前記排ガス通路側フランジ面は、前記排ガス通路側に凸の円弧状に形成されたエッジ部を有する請求項1に記載のノズルベーン。
【請求項3】
前記フランジ部は、前記ノズルベーン本体の前記ハブ側端面に形成されている
請求項1又は2に記載のノズルベーン。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記ノズルベーン本体の前記シュラウド側端面に形成されている
請求項1又は2に記載のノズルベーン。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記ノズルベーン本体の前記ハブ側端面及び前記シュラウド端面に形成されている
請求項1又は2に記載のノズルベーン。
【請求項6】
前記フランジ部は、次式(iii)を満たす
R2>R3 ・・・(iii)
請求項1~5の何れか一項に記載のノズルベーン。
【請求項7】
前記フランジ部は、次式(iv)を満たす
R2<R3 ・・・(iv)
請求項1~5の何れか一項に記載のノズルベーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変容量ターボチャージャのノズルベーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費改善を目的として、ノズルの開度を調整することにより排ガスの流れ特性を変化させることのできる可変容量ターボチャージャが種々開発されている。このような可変容量ターボチャージャの構成が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2006/032827号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可変容量ターボチャージャのノズルベーンは、シュラウド面とハブ面との間に画定される排ガス通路に回動自在に設けられており、ノズルベーンの両サイドには上記シュラウド面又はハブ面との間に隙間が存在する。また、ノズルベーンは、上記シュラウド面側及びハブ面側の少なくとも一方において回動軸に支持されており、この回動軸周りに回動されることでノズルの開度を変化させるように構成される。
【0005】
ここで、可変容量ターボチャージャが低出力の際には、ノズルベーンの開度が低く、上記のようなノズルベーンの両サイドの隙間に流れ込む排ガスの流れが可変容量ターボチャージャの性能に与える影響が相対的に大きい。
【0006】
この点、特許文献1に開示されたような従来のノズルベーンは、当該ノズルベーンにおける上記回動軸側の端部にフランジ部を有し、回動軸及びフランジ部が存在する一方の上記隙間に流れ込む排ガスの流れが他方の隙間に流れ込む排ガスの流れに比べて悪い。このため、低出力時における可変容量ターボチャージャの性能が低下する虞があった。しかし、特許文献1には、ノズルベーンの両サイドの隙間のうち、回動軸周りに流入する排ガスの流れを改善するための知見については何ら開示されていない。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、可変容量ターボチャージャにおいてノズルベーン周りの排ガスの流れを改善できるノズルベーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも1つの実施形態に係るノズルベーンは、
可変容量ターボチャージャのノズルベーンであって、
シュラウド面とハブ面との間に画定される排ガス通路に回動自在に設けられるノズルベーン本体と、
前記ノズルベーン本体のシュラウド側端面及びハブ側端面の少なくとも一方において、前記ノズルベーン本体部の回動中心周りに形成されたフランジ部と、を備え、
前記フランジ部は、前記回動中心に対して、前記後縁側且つ前記ノズルベーンの負圧面側における前記フランジ部の外周縁までの最短距離をR1、前記前縁側且つ前記負圧面側における前記フランジ部の外周縁までの最短距離をR2、前記前縁側且つ前記ノズルベーンの圧力面側における前記フランジ部の外周縁までの最短距離をR3、前記後縁側且つ前記圧力面側における前記フランジ部の外周縁までの最短距離をR4とした場合に、次式(i)又は(ii)を満たす。
R1<R2 ・・・(i)
R4<R3 ・・・(ii)
【0009】
上記(1)の構成によれば、R1がR2より小さいことにより、負圧面において上流から流れて回動中心の近傍を通過した排ガスが、フランジ部50の下流側において、上記回動軸が設けられたシュラウド面又はハブ面とノズルベーンとの間の隙間に流れ込み易くなるから、回動中心周りの排ガス流れを改善することができる。また、R4がR3より小さいことにより、負圧面側から隙間に流入した排ガスを、フランジ部50の下流側において圧力面側の排ガス通路に円滑に流出させることができる。このように、ノズルベーンのフランジ部乃至回動軸周りの排ガス流れを改善することができるから、低出力時における可変容量ターボチャージャの性能を向上させることができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記フランジ部は、前記排ガス通路側に面する排ガス通路側フランジ面を有し、
前記排ガス通路側フランジ面は、前記排ガス通路側に凸の円弧状に形成されたエッジ部を有していてもよい。
【0011】
上記(2)のように、フランジ部における排ガス通路側フランジ面のエッジ部が排ガス通路側に凸の円弧状に形成された構成によれば、排ガス通路側フランジ面に沿って流れた後に、ノズルベーンの回動軸側の隙間に流入する排ガスの流れが、通路側フランジ面のエッジ部を通過する際に剥離することを効果的に抑制することができる。つまり、剥離によって生じる乱流やスワールの発生を抑制することができるから、隙間を通過する排ガスの流れを改善することができ、低出力時における可変容量ターボチャージャの性能を向上させることができる。
【0012】
(3)いくつかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記フランジ部は、前記ノズルベーン本体の前記ハブ側端面に形成されていてもよい。
【0013】
上記(3)の構成によれば、ノズルベーン本体のハブ側端面にフランジ部を有するノズルベーンにおいて、上記(1)又は(2)で述べた効果を享受することができる。
【0014】
(4)いくつかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記フランジ部は、前記ノズルベーン本体の前記シュラウド側端面に形成されていてもよい。
【0015】
上記(4)の構成によれば、ノズルベーン本体のシュラウド側端面にフランジ部を有するノズルベーンにおいて、上記(1)又は(2)で述べた効果を享受することができる。
【0016】
(5)いくつかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記フランジ部は、前記ノズルベーン本体の前記ハブ側端面及び前記シュラウド端面に形成されていてもよい。
【0017】
上記(5)の構成によれば、ノズルベーン本体のハブ側端面及びシュラウド側端面にフランジ部を有するノズルベーンにおいて、上記(1)又は(2)で述べた効果を享受することができる。
【0018】
(6)いくつかの実施形態では、上記(1)~(5)のいずれか一つの構成において、
前記フランジ部は、次式(iii)を満たしてもよい。
R2>R3 ・・・(iii)
【0019】
上記(6)の構成によれば、例えば負圧面に流入する排ガスの流量と圧力面に流入する排ガスの流量との差が大きい状態で可変容量ターボチャージャが運転される場合において、フランジ部周りの排ガスを効率的に流通させることができる。
【0020】
(7)いくつかの実施形態では、上記(1)~(5)のいずれか一つの構成において、
前記フランジ部は、次式(iv)を満たしてもよい。
R2<R3 ・・・(iv)
【0021】
上記(7)の構成によれば、例えば負圧面に流入する排ガスの流量と圧力面に流入する排ガスの流量との差が大きい状態で可変容量ターボチャージャが運転される場合において、フランジ部周りの排ガスを効率的に流通させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、可変容量ターボチャージャにおいてノズルベーン周りの排ガスの流れを改善できるノズルベーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施形態1に係るノズルベーンを含む可変容量ターボチャージャのタービンの断面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】一実施形態に係るノズルベーンの形状を示す斜視図であり、回動軸側且つ前縁側から見た負圧面を示す。
図4】一実施形態に係るノズルベーンの形状を説明するための図であり、ノズル軸側から見た状態を示す斜視図である。
図5】一実施形態に係るノズルベーンの形状を示す図であり、(A)は前縁側から見た図、(B)は負圧面側から見た図である。
図6】ノズルベーンの圧力面側におけるエントロピーの大きさを示すコンター図であり、(A)は一実施形態に係るノズルベーンの場合、(B)は比較例として示す従来のノズルベーンの場合を示す。
図7】ノズルベーン周辺の圧力を示すコンター図であり、(A)は一実施形態に係るノズルベーンの場合を示し、(B)は比較例として示す従来のノズルベーンの場合を示す。
図8】ノズルベーン周辺の流線を示す図であり、(A)は一実施形態に係るノズルベーンの場合を示し、(B)は比較例として示す従来のノズルベーンの場合を示す。
図9】他の実施形態に係るノズルベーンの形状を例示的に示す斜視図である。
図10】他の実施形態に係るノズルベーンの形状を例示的に示す斜視図である。
図11】他の実施形態に係るノズルベーンの形状を例示的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
先ず、本開示の一実施形態に係るノズルベーンが適用される可変容量ターボチャージャの概略構成について説明する。
図1は本開示の実施形態1に係るノズルベーンを含む可変容量ターボチャージャのタービンの断面図である。図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図1に示されるように、可変容量ターボチャージャ1のタービン2は、渦巻き状のタービンスクロール4が形成されたタービンハウジング3と、タービンハウジング3内においてタービンスクロール4の径方向内側に回動可能に設けられたタービンホイール5と、タービンスクロール4からタービンホイール5に流通する排ガスGの流路面積を制御する可変ノズル機構6とを備えている。
【0026】
タービンホイール5は、軸受ハウジング7に回転可能に支持されたハブ23と、ハブ23の外周に周方向に間隔を隔てて設けられた複数の動翼25(タービン動翼)とを含む。
【0027】
可変ノズル機構6は、ノズル10と、軸受ハウジング7に固定されたノズルマウント13と、ノズルマウント13に間隔を隔てて対向するように配置されたノズルプレート14とを備えている。
なお、本開示において、タービンホイール5を取り囲むタービンハウジング3及びノズルプレート14を含む隔壁部をシュラウドと称し、ノズルプレート14における上記ノズルマウント13との対向面をシュラウド面41、ノズルマウント13におけるノズルプレート14との対向面をハブ面43と称する。
ノズル10は、タービンホイール5の周囲を取り囲むように設けられた複数のノズルベーン11と、各ノズルベーン11に固定されたノズル軸12とを有している。各ノズル軸12は、ノズルマウント13に回動可能に支持されている。各ノズル軸12は、リンク機構15を介してアクチュエータ(図示せず)に連結されており、アクチュエータから与えられるトルクによって各ノズル軸12が回動し、各ノズル軸12の回動によってノズルベーン11が回動するように構成されている。
【0028】
図2に示されるように、隣り合うノズルベーン11,11間に、タービンスクロール4を流通した排ガスGが流通する排ガス通路16が形成されている。排ガス通路16を挟んで、外周側のタービンスクロール4側は排ガスGにより高圧側となり、内周側のタービンホイール5側は低圧側となっている。タービンスクロール4を通過した排ガスGは、一定の流れ角を伴って排ガス通路16に流れ込む。その際、流れに面するノズルベーン11の圧力面32(後述)側は圧力が上昇し、反対に負圧面33(後述)側は圧力が低い状態となる。
【0029】
続いて、本開示の一実施形態に係るノズルベーン11について詳しく説明する。
図3は一実施形態に係るノズルベーンの形状を示す斜視図であり、回動軸側且つ前縁側から見た負圧面を示す。図4は一実施形態に係るノズルベーンの形状を説明するための図であり、ノズル軸側から見た状態を示す斜視図である。
図3に例示するように、本発明の少なくとも1つの実施形態に係るノズルベーン11は、可変容量ターボチャージャ1のノズルベーン11であって、シュラウド面41とハブ面43との間に画定される排ガス通路16に回動自在に設けられるノズルベーン本体31と、ノズルベーン本体31のシュラウド側端面51及びハブ側端面52の少なくとも一方において、ノズルベーン本体31の回動中心C周りに形成されたフランジ部50と、を備えている。
【0030】
ノズルベーン本体31は、圧力面32、該圧力面32とは反対側に面する負圧面33、前縁34及び後縁35で画定される翼形状を有している。このノズルベーン本体31は、そのコード方向における前縁34と後縁35との間において、コード方向と垂直且つ前縁34又は後縁35と平行な方向(つまりノズルベーン本体31の幅方向)に沿う回動軸としての上記ノズル軸12を介してノズルマウント13に回動可能に支持されている。
【0031】
フランジ部50は、一般に、ノズルベーン本体31におけるハブ側端面52側又はシュラウド側端面51側のうち、上記リンク機構15乃至ノズル軸12が配置されている側に設けられており、リンク機構15が収容されている空間に排ガスGが流入することを防止する蓋の機能を有している。
そして、本開示におけるフランジ部50は、例えば図4に示すように、回動中心Cに対して、後縁35側且つノズルベーン11の負圧面33側(例えば第1象限とする)におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離をR1、前縁34側且つ負圧面33側(例えば第2象限とする)におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離をR2、前縁34側且つノズルベーン11の圧力面32側(例えば第3象限とする)におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離をR3、後縁35側且つ圧力面32側(例えば第4象限とする)におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離をR4とした場合に、次式(i)又は(ii)を満たすように構成されている。
R1<R2 ・・・(i)
R4<R3 ・・・(ii)
【0032】
すなわち、本開示におけるフランジ部50は、ノズルベーン本体31のコード方向に垂直な面であってノズル軸12の軸線を含む面(ノズルベーン本体31のコード方向に垂直且つY軸を通る面)を挟んで、前縁34側と後縁35側とが非対称に形成されており、後縁35側におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離が、前縁34側におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離に比べて小さくなるように構成されている。
【0033】
上記のように構成されたフランジ部50は、例えば後縁35側における負圧面33又は圧力面32とフランジ部50の外周縁58との接続位置乃至境界が、前縁34側における負圧面33又は圧力面32とフランジ部50の外周縁58との接続位置乃至境界に比べて、回動中心Cからの距離が小さくなるように構成され得る(例えば後述する図9におけるR1,R2、図10におけるR3,R4,図11におけるR1,R2、及びR3,R4参照)。
【0034】
一方、フランジ部50は、後縁35側における負圧面33又は圧力面32とフランジ部50の外周縁58との接続位置乃至境界が、前縁34側における負圧面33又は圧力面32とフランジ部50の外周縁58との接続位置乃至境界に比べて、回動中心Cからの距離が大きくなるように構成され得る。この場合、フランジ部50は、例えばノズル軸12の軸線方向視において、その外周縁58の前縁34側よりも外周縁58の後縁35側が、上記コード方向に対して緩やかな傾斜を有するように形成されていてもよい(例えば図3図4及び図5(B)参照)。
【0035】
かかるフランジ部50は、その外周縁58が、ノズル軸12の軸線方向視において、ノズルベーン本体31の負圧面33又は圧力面32とそれぞれ滑らかな曲線で連続するように構成されていてもよい。すなわち、負圧面33側におけるフランジ部50の外周縁58の前縁34側及び後縁35側の端部は夫々、各々が面する排ガス通路16側に向けて凹の滑らかな曲面で負圧面33に連続するように構成され得る。また、圧力面32側におけるフランジ部50の外周縁58の前縁34側及び後縁35側の端部は夫々、各々が面する排ガス通路16側に向けて凹の滑らかな曲面で圧力面32に連続するように構成され得る。
【0036】
上述した構成によれば、R1がR2より小さいことにより、負圧面33において上流から流れて回動中心Cの近傍を通過した排ガスGが、フランジ部50の下流側において、上記ノズル軸12(回動軸)が設けられたシュラウド面41又はハブ面43とノズルベーン11との間の隙間18に流れ込み易くなるから、回動中心C周りの排ガスG流れを改善することができる。また、R4がR3より小さいことにより、負圧面33側から隙間18に流入した排ガスGを、フランジ部50の下流側において圧力面32側の排ガス通路16に円滑に流出させることができる。このように、ノズルベーン11のフランジ部50乃至ノズル軸12周りの排ガスG流れを改善することができるから、可変容量ターボチャージャ1の性能(特に、低出力時における可変容量ターボチャージャ1の性能)を向上させることができる。
【0037】
続いて、図5は一実施形態に係るノズルベーンの形状を示す図であり、(A)は前縁側から見た図、(B)は負圧面側から見た図である。
幾つかの実施形態では、上記構成において、例えば図5(A)及び図5(B)に例示するように、フランジ部50は、排ガス通路16側に面する排ガス通路側フランジ面55を有している。この排ガス通路側フランジ面55は、例えば排ガス通路16側に凸の円弧状に形成されたエッジ部56を有していてもよい。
【0038】
エッジ部56は、例えば周面部と底面部とが所定の角度で交差する稜線乃至境界を有して円筒状乃至円錐台状に形成された従来のフランジ部に比べて、角がない(或いは滑らかな曲面により角が丸みを帯びた)凸形状に形成される。このようなエッジ部56は、例えば回動中心Cから離れるにつれて、ノズル軸12が設けられている側のノズルベーン本体31の端面(例えばノズル軸12がハブ面43側に設けられている場合はハブ側端面52であり、ノズル軸12がシュラウド面41に設けられている場合はシュラウド側端面51)との距離が漸次小さくなるようにして形成される。
【0039】
上記エッジ部56は、フランジ部50の外周縁58の少なくとも一部に形成されていてもよいし、フランジ部50の外周縁58の全周に亘って滑らかな曲面状に形成されていてもよい。
フランジ部50における前縁34側のエッジ部56の曲率と、同後縁35側のエッジ部56の曲率とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。また、エッジ部56の曲率は、例えば前縁34側又は後縁35側において夫々一律であってもよいし、任意の箇所において部分的に異なっていてもよく、夫々の箇所が滑らかに連続して形成され得るように任意に設定してもよい。
【0040】
ここで、図6図7及び図8を参照し、上記構成を有するフランジ部50の作用について説明する。
図6はノズルベーンの圧力面側におけるエントロピーの大きさを示すコンター図であり、(A)は一実施形態に係るノズルベーンの場合、(B)は比較例として示す従来のノズルベーンの場合を示す。図7はノズルベーン周辺の圧力を示すコンター図であり、(A)は一実施形態に係るノズルベーンの場合を示し、(B)は比較例として示す従来のノズルベーンの場合を示す。図8はノズルベーン周辺の流線を示す図であり、(A)は一実施形態に係るノズルベーンの場合を示し、(B)は比較例として示す従来のノズルベーンの場合を示す。
【0041】
まず、図6(A)及び図6(B)を参照すると、図6(A)に示す本開示のノズルベーン11の圧力面32側では、ノズル軸12よりも後縁35側に位置する領域P1のエントロピーが、図6(B)に比較例として示す従来のノズルベーンの圧力面32側におけるノズル軸12より後縁35側に位置する領域P2のエントロピーに比べて低くなっていることがわかる。上記は排ガスGの流れにどの程度の損失が生じているかを示しており、エントロピーが高いほど損失が大きいことを意味する。従って図6(A)及び図6(B)から、上記フランジ部50を備えた本開示のノズルベーン11を採用することで、排ガスGの流れの損失を大幅に低減できることがわかる。
【0042】
続いて、図7(A)及び図7(B)を参照すると、図7(A)に示す本開示のノズルベーン11の圧力面32側では、ノズル軸12よりも後縁35側に位置する領域P3の圧力が、図7(B)に比較例として示す従来のノズルベーンの圧力面32側におけるノズル軸12より後縁35側に位置する領域P4の圧力に比べて高いことがわかる。つまり図7(A)及び図7(B)から、上記フランジ部50を備えた本開示のノズルベーン11を採用することで、フランジ部50周辺を通過した排ガスGの流れの圧力損失を大幅に低減できることがわかる。
【0043】
そして、図8(A)及び図8(B)を参照すると、図8(B)に比較例として示す従来のノズルベーンの圧力面32側におけるノズル軸12より後縁35側に位置する領域P6では、当該領域P6を通過する排ガスGの流れの流線が少ない(或いは殆どない)ことから、従来のフランジ部の形状により排ガスGの流れに剥離が生じ、フランジ部周辺の流れが悪化していることがわかる。これに対して、図8(A)に示す本開示のノズルベーン11の圧力面32側では、ノズル軸12よりも後縁35側に位置する領域P5を通過する排ガスGの流れを示す流線が有効に存在している。つまり図8(A)及び図8(B)から、上記フランジ部50を備えた本開示のノズルベーン11を採用することで、フランジ部50周辺を通過する排ガスGの流れが大幅に改善されることがわかる。
【0044】
このように、フランジ部50における排ガス通路側フランジ面55のエッジ部56が排ガス通路16側に凸の円弧状に形成された構成によれば、排ガス通路側フランジ面55に沿って流れた後に、ノズルベーン11の回動軸であるノズル軸12側の隙間18に流入する排ガスGの流れが、排ガス通路側フランジ面55のエッジ部56を通過する際に剥離することを効果的に抑制することができる。つまり、剥離によって生じる乱流やスワールの発生を抑制することができるから、隙間18を通過する排ガスGの流れを改善することができ、低出力時における可変容量ターボチャージャ1の性能を向上させることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、上述したいずれか一つの構成において、例えば図5(A)及び図5(B)に例示するように、フランジ部50は、ノズルベーン本体31のハブ側端面52に形成されていてもよい。
このように構成すれば、ノズルベーン本体31のハブ側端面52にフランジ部50を有するノズルベーン11において、上記いずれかの実施形態で述べた効果を享受することができる。
【0046】
また、いくつかの実施形態では、上述したいずれか一つの構成において、フランジ部50は、ノズルベーン本体31のシュラウド側端面51に形成されていてもよい。なお、このようにシュラウド側端面51に設けられたフランジ部50による、排ガス通路16内の排ガスGの流れに対する影響については、上述したハブ側端面52側にフランジ部50を設けた場合と同様に説明されるため、説明を省略する。
このようにノズルベーン本体31のシュラウド側端面51にフランジ部50を設けた構成によれば、ノズルベーン本体31のシュラウド側端面51にフランジ部50を有するノズルベーン11において、上記いずれかの実施形態で述べた効果を享受することができる。
【0047】
続いて、図9は他の実施形態に係るノズルベーンの形状を例示的に示す斜視図である。図10は他の実施形態に係るノズルベーンの形状を例示的に示す斜視図である。
いくつかの実施形態では、上述したいずれか一つの構成において、例えば図9及び図10に例示するように、フランジ部50は、ノズルベーン本体31のハブ側端面52及びシュラウド側端面51に形成されていてもよい。
すなわち、フランジ部50は、ノズルベーン本体31の幅方向における両サイドに夫々設けられていてもよい。
このようにノズルベーン本体31の両サイドにフランジ部50を設けた構成によれば、ノズルベーン本体31のハブ側端面52及びシュラウド側端面51にフランジ部を有するノズルベーンにおいて、上記いずれかの実施形態で述べた効果を享受することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、上述したいずれか一つの構成において、例えば図9に例示するように、フランジ部50は、次式(iii)を満たしてもよい。
R2>R3 ・・・(iii)
【0049】
すなわち、幾つかの実施形態におけるフランジ部50は、前縁34側且つ負圧面33側(例えば第2象限)におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離R2が、前縁34側且つノズルベーン11の圧力面32側(例えば第3象限)におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離R3よりも大きく構成され得る。
なお、図9に示す例では、シュラウド側端面51及びハブ側端面52の両方に、夫々式(iii)を満たすフランジ部50が設けられた構成例を示しているが、シュラウド側端面51又はハブ側端面52の何れか一方のみに上記式(iii)を満たすフランジ部50が設けられていてもよい。
このように、前縁34側且つ負圧面33側におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離R2を、前縁34側且つノズルベーン11の圧力面32側におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離R3よりも大きく(R2>R3)した構成によれば、例えば負圧面33に流入する排ガスGの流量と圧力面32に流入する排ガスGの流量との差が大きい状態(例えば負圧面33側の排ガスGの流入量が圧力面32側の排ガスGの流入量より大きい場合)で可変容量ターボチャージャ1が運転される場合において、フランジ部50周りの排ガスGを効率的に流通させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、上述したいずれか一つの構成において、例えば図10及び図11に例示するように、フランジ部50は、次式(iv)を満たしてもよい。
R2<R3 ・・・(iv)
【0051】
すなわち、幾つかの実施形態におけるフランジ部50は、前縁34側且つ負圧面33側(例えば第2象限)におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離R2が、前縁34側且つノズルベーン11の圧力面32側(例えば第3象限)におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離R3よりも小さく構成され得る。
例えば図10に示す例のように、シュラウド側端面51及びハブ側端面52の両方にフランジ部50が設けられていてもよい。一方、図11に示す例のように、シュラウド側端面51又はハブ側端面52のうちいずれか一方のみにフランジ部50が設けられていてもよい。
このように、前縁34側且つ負圧面33側におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離R2を、前縁34側且つノズルベーン11の圧力面32側におけるフランジ部50の外周縁58までの最短距離R3よりも小さく(R2<R3)した構成によれば、例えば負圧面33に流入する排ガスGの流量と圧力面32に流入する排ガスGの流量との差が大きい状態(例えば圧力面32側の排ガスGの流入量が負圧面33側の排ガスGの流入量より大きい場合)で可変容量ターボチャージャ1が運転される場合において、フランジ部50周りの排ガスGを効率的に流通させることができる。
【0052】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、可変容量ターボチャージャ1においてノズルベーン11周りの排ガスGの流れを改善できるノズルベーン11を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 可変容量ターボチャージャ
2 タービン
3 タービンハウジング(シュラウド)
4 タービンスクロール
5 タービンホイール(タービンロータ)
6 可変ノズル機構
7 軸受ハウジング
10 ノズル
11 ノズルベーン
12 ノズル軸(回動軸)
13 ノズルマウント
14 ノズルプレート
15 リンク機構
16 排ガス通路
18 隙間
23 ハブ
25 タービン動翼
31 ノズルベーン本体
32 圧力面
33 負圧面
34 前縁
35 後縁
41 シュラウド面
43 ハブ面
50 フランジ部
51 シュラウド側端面
52 ハブ側端面
55 排ガス通路側フランジ面
56 エッジ部
58 外周縁
L コード長(ノズルベーン本体)
G 排ガス
C ノズルベーン本体の回動中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11