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特許7165842セラミック板、及びセラミック板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-26
(45)【発行日】2022-11-04
(54)【発明の名称】セラミック板、及びセラミック板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/13 20060101AFI20221027BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20221027BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20221027BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221027BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/12 D
H01L21/78 B
H05K1/03 610D
H05K3/00 X
H05K3/00 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022538170
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2022004963
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021024380
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】津川 優太
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山縣 利貴
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-198635(JP,A)
【文献】国際公開第2009/154295(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/002306(WO,A1)
【文献】特開2015-086125(JP,A)
【文献】特開2007-324301(JP,A)
【文献】特開2009-252971(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189526(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/020471(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/262198(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/062496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/13
H01L 23/12
H01L 21/301
H05K 1/03
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び第2主面と、前記第1主面に形成された複数の穴によって構成されるスクライブラインと、を有するセラミック板であって、
第1曲げ強さを、前記第1主面が2つの支点で支持され、前記第2主面のうちの前記スクライブラインに対応する位置に荷重が付与されるように前記セラミック板の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値とし、
第2曲げ強さを、2つの支点間に前記スクライブラインが存在しないように前記セラミック板の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値としたときに、
前記第1曲げ強さは、380MPa以上であり、且つ、前記第2曲げ強さの0.56倍以下である、セラミック板。
【請求項2】
前記複数の穴それぞれの、前記第1主面において前記スクライブラインに直交する方向の最大長さは、50μm~120μmであり、
前記複数の穴それぞれの深さは、前記セラミック板の厚さの1/6倍~1/3倍であり、
前記スクライブラインに沿った前記複数の穴のピッチは、50μm~120μmである、請求項1に記載のセラミック板。
【請求項3】
複数の穴によって構成されるスクライブラインを、セラミック板の一の主面に形成するための複数の加工条件の中から設定条件を選択する工程と、
前記設定条件に従って、セラミック板用の基材の表面に、レーザ光を用いて前記スクライブラインを形成する工程と、を含み、
前記複数の加工条件それぞれには、前記複数の穴それぞれの、前記主面において前記スクライブラインに直交する方向の最大長さ、前記複数の穴それぞれの深さ、及び前記スクライブラインに沿った前記複数の穴のピッチが含まれ、
前記設定条件を選択する工程は、
前記複数の加工条件に従って、複数の穴によって構成される評価用のスクライブラインが第1主面に形成された状態の複数の評価用セラミック板をそれぞれ形成することと、
前記複数の評価用セラミック板それぞれの曲げ強さを評価することで、前記複数の加工条件の中から、第1曲げ強さが、380MPa以上であり、且つ、第2曲げ強さの0.56倍以下となる条件を、前記設定条件として選択することと、を含み、
前記第1曲げ強さは、前記第1主面が2つの支点で支持され、評価用セラミック板の前記第1主面とは反対側の第2主面のうちの評価用のスクライブラインに対応する位置に荷重が付与されるように評価用セラミック板の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値であり、
前記第2曲げ強さは、評価用のスクライブラインが2つの支点間に存在しないように評価用セラミック板の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値である、セラミック板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミック板、及びセラミック板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスに搭載される回路基板には、絶縁性のセラミック板が用いられる場合がある。このような回路基板の製造方法として、例えば特許文献1に記載されるような技術が知られている。特許文献1記載の技術では、炭酸ガスレーザ又はYAGレーザ等を用い、セラミック板の表面にスクライブラインを設けた後、当該表面に金属層を接合して複合基板を形成する。そして、複合基板の表面の金属層をエッチングによって回路パターンに加工する。その後、スクライブラインに沿って複合基板を分割し複数の回路基板を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-324301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクライブラインに沿って複合基板を分割する際に、スクライブラインが形成された部分の曲げに対する強度が強すぎると、複合基板を分割した際にバリが発生し、回路基板の品質が低下してしまう場合がある。回路基板の製造工程には、スクライブラインの形成後からスクライブラインに沿った複合基板の分割が行われる間に、各種工程が含まれる。そのため、上記の曲げに対する強度が弱すぎると工程中にセラミック板又は複合基板が割れ、歩留まりが悪化してしまう場合ある。
【0005】
そこで、本開示は、回路基板の品質の安定化と、歩留まりの向上との両立に有用なセラミック板、及びセラミック板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るセラミック板は、第1主面及び第2主面と、第1主面に形成された複数の穴によって構成されるスクライブラインと、を有する。第1曲げ強さを、第1主面が2つの支点で支持され、スクライブラインが第2主面に付与される荷重点に沿うようにセラミック板の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値とし、第2曲げ強さを、2つの支点間にスクライブラインが存在しないようにセラミック板の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値としたときに、第1曲げ強さは、380MPa以上であり、且つ、第2曲げ強さの0.56倍以下である。
【0007】
スクライブラインに沿ってセラミック板を分割する際に、スクライブラインが形成された部分の曲げに対する強度が強すぎると、セラミック板を分割した際にバリが発生し、セラミック板によって形成される回路基板の品質が低下してしまうおそれがある。一方、セラミック板の形成後には、回路基板を形成するための各種工程が行われる。そのため、スクライブラインが形成された部分の曲げに対する強度が弱すぎると工程中にセラミック板が割れてしまい、歩留まりが低下してしまうおそれがある。これに対して、本セラミック板では、スクライブラインに関して、曲げ強さが上記範囲に調整されることで、セラミック板が割れ難く、且つ分割する際にバリが発生し難くなる。したがって、本セラミック板は、回路基板の品質の安定化と、歩留まりの向上との両立に有用である。
【0008】
複数の穴それぞれの、第1主面においてスクライブラインに直交する方向の最大長さは、50μm~120μmであり、複数の穴それぞれの深さは、セラミック板の厚さの1/6倍~1/3倍であり、スクライブラインに沿った複数の穴のピッチは、50μm~120μmであってもよい。スクライブラインに関して、曲げ強さの調整に加えて、穴の長さ、穴の深さ、及び穴のピッチが上記範囲に調整されることで、後工程でのセラミック板の割れと、分割する際のバリの発生とがより確実に抑制される。そのため、回路基板の品質の安定化と、歩留まりの向上との両立に更に有用である。
【0009】
本開示の一側面に係るセラミック板の製造方法は、複数の穴によって構成されるスクライブラインを、セラミック板の一の主面に形成するための複数の加工条件の中から設定条件を選択する工程と、設定条件に従って、セラミック板用の基材の表面に、レーザ光を用いてスクライブラインを形成する工程と、を含む。複数の加工条件それぞれには、複数の穴それぞれの、主面においてスクライブラインに直交する方向の最大長さ、複数の穴それぞれの深さ、及びスクライブラインに沿った複数の穴のピッチが含まれる。設定条件を選択する工程は、複数の加工条件に従って、複数の穴によって構成される評価用のスクライブラインが一の主面に形成された状態の複数の評価用セラミック板をそれぞれ形成することと、複数の評価用セラミック板それぞれの曲げ強さを評価することで、複数の加工条件の中から、第1曲げ強さが、380MPa以上であり、且つ、第2曲げ強さの0.56倍以下となる条件を、設定条件として選択することとを含む。第1曲げ強さは、評価用のスクライブラインが形成された一の主面が2つの支点で支持され、評価用のスクライブラインが形成された主面とは反対側の主面に付与される荷重点に評価用のスクライブラインが沿うように評価用セラミック板の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値である。第2曲げ強さは、評価用のスクライブラインが2つの支点間に存在しないように評価用セラミック板の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値である。
【0010】
この製造方法では、第1曲げ強さが、380MPa以上であり、且つ第2曲げ強さの0.56倍以下となる条件が選択される。そのため、選択された条件に従ってスクライブラインが形成されたセラミック板についても、第1曲げ強さを上記範囲に調整することができる。第1曲げ強さが380MPa以上であると、スクライブライン形成後の各種工程においてセラミック板が割れ難く、第1曲げ強さが第2曲げ強さの0.56倍以下であると、分割後にバリが発生し難い。したがって、本製造方法は、セラミック板によって形成される回路基板の品質の安定化と、歩留まりの向上との両立に有用である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、回路基板の品質の安定化と、歩留まりの向上との両立に有用なセラミック板、及びセラミック板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係るセラミック板の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、セラミック板の断面の一例を示す模式図である。
図3図3は、セラミック板の断面の一例を示す模式図である。
図4図4は、スクライブラインの一例を示す模式図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、スクライブラインの一例を示す模式図である。
図6図6は、スクライブラインの一例を模式的に示す断面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、3点曲げ試験を説明するための模式図である。
図8図8は、回路基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、ろう材が塗布されたセラミック板の一例を模式的に示す斜視図である。
図10図10は、複合基板の一例を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、表面にレジストパターンが形成された状態の複合基板の一例を模式的に示す斜視図である。
図12図12は、回路基板の一例を模式的に示す斜視図である。
図13図13は、条件の選択方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
[セラミック板]
図1には、一実施形態に係るセラミック板の一例が模式的に示されている。図1に示されるセラミック板100は、例えば、窒化ケイ素板又は窒化アルミニウム板である。セラミック板100は、平板形状を有する。セラミック板100は、互いに逆向きの(互いに対向する)主面100A及び主面100Bを有する。主面100Aは、スクライブラインによって複数に区画されている。図1に示される例では、主面100Aには、複数のスクライブラインL1と、複数のスクライブラインL2とが設けられる。例えば、主面100Aが第1主面を構成する場合、主面100Bが第2主面を構成する。
【0015】
複数のスクライブラインL1それぞれは、主面100Aの一辺が延びる方向(以下、「方向D1」という。)に沿って延在している。複数のスクライブラインL1は、主面100Aに沿い、且つ方向D1に直交する方向(以下、「方向D2」という。)に沿って等間隔に並んでいる。複数のスクライブラインL2それぞれは、主面100Aに沿うと共に方向D2に沿って延在している。複数のスクライブラインL2は、方向D1に沿って等間隔に並んでいる。スクライブラインL1とスクライブラインL2とは互いに直交している。
【0016】
複数のスクライブラインL1及び複数のスクライブラインL2によって、セラミック板100は、複数(図1では9個)の区画部10に区画される。換言すると、セラミック板100は、スクライブラインL1及びスクライブラインL2によって画定される複数の区画部10を有する。図2には、図1に示されるII-II線に沿った断面図が示されており、図3には、図1に示されるIII-III線に沿った断面図が示されている。図1図2及び図3に示されるように、複数の区画部10のそれぞれは、スクライブラインL1,L2で囲まれる主面100Aの領域と、当該領域に対応する他方の主面100Bの領域と、スクライブラインL1,L2からセラミック板100の厚さ方向に平行に描かれる仮想線VL1,VL2と、で囲まれる3次元の領域で構成される。
【0017】
図1図2及び図3に例示するセラミック板100では、スクライブラインL1,L2が主面100Bに形成されずに、主面100Aに形成されているが、スクライブラインの形成箇所は、これに限定されない。スクライブラインL1,L2の少なくとも一方は、主面100Aと、当該主面100Aとは反対側の主面100Bとの両方に形成されてもよい。
【0018】
図4及び図5には、主面100Aの一部分に設けられたスクライブラインL1(L2)が拡大して示されている。スクライブラインL1は、その長手方向(方向D1)に沿って一列に並ぶ複数の穴20によって構成される。スクライブラインL2も同様に、その長手方向(方向D2)に沿って一列に並ぶ複数の穴20によって構成される。互いに隣り合う穴20同士は繋がっていてもよいし、離れていてもよい。主面100Aにおける穴20の開口縁20E(穴20の主面100Aにおける外縁)は、主面100Aに直交する方向から見て、円形であってもよい。
【0019】
図4には、スクライブラインL1の長手方向に沿って並ぶ複数の穴20のピッチ(以下、「配列ピッチp」という。)が、穴20の直径に略一致する場合が例示されている。図5(a)には、互いに隣り合う穴20同士が繋がった状態で、穴20の一部が隣り合う他の穴20に重なる場合が例示されている。この場合、一つの穴20の開口縁20Eの一部は、他の穴20によって切り欠かれる。そのため、一つの穴20の開口縁20Eは、完全な円形とならずに円弧状となる。図5(b)には、互いに隣り合う穴20同士が離れている場合が例示されている。
【0020】
スクライブラインL1,L2に沿った分割を円滑にする観点から、複数の穴20それぞれの主面100Aにおける開口径rは、50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。セラミック板100の機械的強度を維持する観点から、各穴20の開口径rは、120μm以下であってもよく、110μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。複数の穴20それぞれの主面100Aにおける開口径rは、50μm~120μmであってもよく、60μm~110μmであってもよい。
【0021】
スクライブラインL1の穴20の開口径rは、主面100AにおいてスクライブラインL1に直交する方向の穴20の最大長さ(主面100Aにおける種々の開口幅のうち、スクライブラインL1に直交し、且つ最大の幅)に相当する。スクライブラインL2の穴20の開口径rは、主面100AにおいてスクライブラインL2に直交する方向の穴20の最大長さに相当する。穴20の開口縁20Eが円形である場合、穴20の開口径rは、開口縁20Eの直径に相当する。隣り合う穴20同士が繋がっている場合には円弧状となることから、開口径rは、スクライブラインの長手方向に対して直交する方向に沿った開口縁20Eの径(直径)に相当する。複数の穴20それぞれの開口径r(開口縁20Eの直径)は、互いに略一致していてもよく、異なっていてもよい。
【0022】
図6には、図4に示されるVI-VI線に沿った断面図が示されている。すなわち、図6は、セラミック板100を、スクライブラインL1(L2)の各穴20の中心を通り、且つ主面100Aに垂直な面で切断したときの断面図である。穴20は、主面100A(開口縁20E)からセラミック板100の内部に向かって先細りとなるように、すり鉢形状を呈している。スクライブラインL1,L2に沿った分割を円滑にする観点から、複数の穴20それぞれの深さdは、セラミック板100の厚さTの1/6倍以上であってもよく、厚さTの1/5倍以上であってもよく、厚さTの1/4倍以上であってもよい。
【0023】
セラミック板100の機械的強度を維持する観点から、各穴20の深さdは、セラミック板100の厚さTの1/3倍以下であってもよく、厚さTの3/10倍以下であってもよく、厚さTの4/15倍以下であってもよい。例えば、深さdは、セラミック板100の厚さTの1/6倍~1/3倍であってもよく、厚さTの1/5倍~3/10倍であってもよい。一例では、セラミック板100の厚さTが0.15mm~1mmである場合に、深さdは、25μm~330μmであってもよく、50μm~200μmであってもよく、60μm~100μmであってもよい。図6に示されるように、深さdは、主面100A(開口縁20E)から穴20の底部20B(最下点)までの、セラミック板100の厚さ方向における距離で定義される。複数の穴20のそれぞれの深さdは、互いに略一致していてもよく、異なっていてもよい。
【0024】
セラミック板100の機械的強度を維持する観点から、複数の穴20の配列ピッチp(図4参照)は、50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。スクライブラインに沿った分割を円滑にする観点から、配列ピッチpは、120μm以下であってもよく、110μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。例えば、配列ピッチpは、50μm~120μmであってもよく、60μm~110μmであってもよい。配列ピッチpは、開口径rの0.42倍以上、0.5倍以上、又は0.6倍以上であってもよい。配列ピッチpは、開口径rの2.4倍以下、2.0倍以下、又は1.8倍以下であってもよい。複数の穴20のスクライブラインに沿った配列ピッチpは、当該スクライブラインに沿って互いに隣り合う穴20の中心同士の間の距離で定義される。複数の穴20は、配列ピッチpが略一定となるようにスクライブラインに沿って並んでいてもよく、一部において配列ピッチpが異なるようにスクライブラインに沿って並んでいてもよい。
【0025】
スクライブラインL1又はスクライブラインL2が形成された部分の曲げに対する物理強度は、セラミック板100の曲げ強さを3点曲げ試験によって測定することで評価できる。本開示において、セラミック板の曲げ強さは、JIS R 1601-2008に準拠した3点曲げ試験によって測定される値である。
【0026】
より詳細には、図7(a)に示されるように、セラミック板100の一部を切り出して得られる試験片の一方の主面を2つの支持体50A,50Bで支持した状態で、アンビル60によって他方の主面に荷重を作用させつつ、試験片(セラミック板)の曲げ強さの測定が行われる。アンビル60によって試験片に作用する荷重点LP(荷重ライン)は、支持体50A,50Bが並ぶ方向に直交する方向に沿って延びるように設定される。当該荷重点LPが、2つの支持体50A,50Bによる2つの支点SP1,SP2(2つの支持ライン)の間に位置するように、支持体50A,50B及びアンビル60が配置される。そして、アンビル60からの荷重を増加させながら試験片に荷重を作用させていき、試験片が折れた(破断した)際の荷重の値が、曲げ強さとして測定される。
【0027】
本開示に係るセラミック板100において、第1曲げ強さN1を以下で定義される測定値としたときに、第1曲げ強さN1は、380MPa以上である。第1曲げ強さN1を380MPa以上とすることで、セラミック板100の機械的強度が維持される。
第1曲げ強さN1:スクライブラインL1(L2)が形成された主面100Aが2つの支点SP1,SP2で支持され、スクライブラインL1(L2)が主面100Bに付与される荷重点LPに沿うようにセラミック板100の試験片が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値
【0028】
図7(b)には、第1曲げ強さN1を測定する際のセラミック板100の試験片(以下、「試験片110」という。)の配置の一例が示されている。図7(b)に示されるように、主面100Bのうち、主面100AにおけるスクライブラインL1(L2)に対応する位置にアンビル60によって荷重が加えられる。試験片110において、主面100A,100Bにそれぞれ対応する主面も「主面100A,100B」と表記する。試験片110は、例えば、その一辺が40mmとなり、且つスクライブラインL1(L2)が略中央に位置するように、セラミック板100から切り出される。第1曲げ強さN1は、385MPa以上、390MPa以上、395MPa以上、又は400MPa以上であってもよい。
【0029】
また、セラミック板100において、第2曲げ強さN2を以下で定義される測定値としたときに、第1曲げ強さN1は、第2曲げ強さN2の0.56倍以下である。第1曲げ強さN1を第2曲げ強さN2の0.56倍以下とすることで、スクライブラインに沿った分割が円滑になる。
第2曲げ強さN2:2つの支点SP1,SP2間にスクライブラインL1(L2)が存在しないようにセラミック板100の試験片が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値
【0030】
第2曲げ強さN2を測定する際のセラミック板100の試験片(以下、「試験片120」という。)は、上記試験片110と異なり、スクライブラインを有しない。例えば、セラミック板100において、スクライブラインL1,L2がいずれも形成されていない領域が切り出されて、試験片120が形成される。または、スクライブラインL1,L2が形成される前の状態のセラミック板100から試験片120が形成される。すなわち、試験片120を用いて測定される第2曲げ強さN2は、セラミック板100を構成する基材自体の曲げ強さを示している。
【0031】
第2曲げ強さN2が700MPa~1000MPaである場合、第1曲げ強さN1は、392MPa~560MPaであってもよい。一例では、第2曲げ強さN2が750MPaである場合、第1曲げ強さN1は、380MPa~420MPaであってもよく、385MPa~415MPaであってもよい。第1曲げ強さN1は、第2曲げ強さN2の0.54倍以下、0.52倍以下、又は0.50倍以下であってもよい。
【0032】
以上のセラミック板100では、第1曲げ強さN1が、380MPa以上であり、且つ第2曲げ強さN2の0.56倍以下となるように、複数の穴20それぞれの開口径r、複数の穴20それぞれの深さd、及び複数の穴20の配列ピッチpが調整されている。これらの寸法の調整方法の具体例については後述する。一例では、第1曲げ強さN1、開口径r、深さd、及び配列ピッチpのいずれもが、上述したそれぞれの数値範囲となるように、セラミック板100(スクライブラインL1,L2)が形成される。このようなセラミック板100では、機械的強度の維持と、スクライブラインL1,L2に沿った分割の円滑化との両立が図られる。
【0033】
深さdが大きいほど第1曲げ強さN1は小さくなり、第2曲げ強さN2との強度の差が大きくなる傾向にある。開口径rが大きいほど第1曲げ強さN1は小さくなり、第2曲げ強さN2との強度の差が大きくなる傾向にある。配列ピッチpが小さいほど第1曲げ強さN1は小さくなり、第2曲げ強さN2との強度の差が大きくなる傾向にある。なお、上記では、深さd、配列ピッチp、及び開口径rでの調整を一例として説明したが、穴の形状を円ではなく、楕円又は長方形等の多角形などの他の形状に変更して開口面積、深さ、及びピッチ等を調整する方法で第1曲げ強さN1の値(第2曲げ強さN2との関係)を調整してもよい。
【0034】
セラミック板100の主面100A,100Bが長方形である場合、セラミック板100の短辺の長さは、例えば、100mm以上である。セラミック板100の短辺の長さは、110mm以上であってもよく、130mm以上であってもよく、150mm以上であってもよい。セラミック板100の長辺の長さは、例えば、150mm以上である。セラミック板100の長辺の長さは、170mm以上であってもよく、190mm以上であってもよく、220mm以上であってもよい。主面100A,100Bは、一辺の長さが100mm~220mmである正方形であってもよい。
【0035】
セラミック板100では、その短辺の長さが100mm~150mmであり、且つ、その長辺の長さが150mm~220mmであってもよい。この場合、セラミック板100の機械的強度を維持するために、第1曲げ強さN1が380MPa以上に調整される。セラミック板100では、その短辺の長さが150mmを超え、且つ、その長辺の長さが220mmを超えていてもよい。この場合、セラミック板100の機械的強度を維持するために、第1曲げ強さN1が400MPa以上に調整されてもよい。
【0036】
[製造方法]
続いて、一実施形態に係る回路基板の製造方法を説明する。この回路基板の製造過程には、セラミック板100の製造工程(製造方法)が含まれる。図8は、回路基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。この製造方法では、最初に、スクライブラインをセラミック板100の主面100Aに形成するための複数の加工条件の中から条件の選択(決定)が行われる(S01)。言い換えると、以降の工程において、選択された条件(以下、「設定条件」という。)に従って、スクライブラインL1,L2が主面100Aに形成される。スクライブラインを形成するための加工条件には、複数の穴20それぞれの主面100Aにおける開口径r、複数の穴20それぞれの深さd、及びスクライブラインL1(L2)に沿った複数の穴20の配列ピッチpが含まれる。設定条件の選択方法の詳細については後述する。
【0037】
次に、セラミック材料(例えば、窒化ケイ素粉末、又は窒化アルミニウム粉末)を含む基材が作製される(S02)。当該基材は、例えば、以下の手順で製造することができる。まず、窒化ケイ素粉末又は窒化アルミニウム粉末、バインダ樹脂、焼結助剤、可塑剤、分散剤、及び溶媒等を含むスラリーを成形してグリーンシートを得る。焼結助剤としては、希土類金属、アルカリ土類金属、金属酸化物、フッ化物、塩化物、硝酸塩、及び硫酸塩等が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよいし二種以上を併用してもよい。焼結助剤を用いることにより、無機化合物粉末の焼結を促進させることができる。バインダ樹脂の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及び(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0038】
可塑剤の例としては、精製グリセリン、グリセリントリオレート、ジエチレングリコール、ジ-n-ブチルフタレート等のフタル酸系可塑剤、及びセバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等の二塩基酸系可塑剤等が挙げられる。分散剤の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、及び(メタ)アクリル酸-マレイン酸塩コポリマー等が挙げられる。溶媒としては、エタノール及びトルエン等の有機溶媒が挙げられる。
【0039】
スラリーの成形方法の例としては、ドクターブレード法及び押出成形法が挙げられる。このような方法によってグリーンシートが作製される。その後、グリーンシートの脱脂及び焼結が行われ、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含む基材が得られる。脱脂は、例えば、400℃~800℃で、0.5~20時間、グリーンシートを加熱して行ってよい。これによって、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムの酸化及び劣化を抑制しつつ、有機物(炭素)の残留量を低減することができる。焼結は、窒素、アルゴン、アンモニア又は水素等の非酸化性ガス雰囲気下、1700℃~1900℃でグリーンシートを加熱して行ってよい。
【0040】
上述の脱脂及び焼結は、複数のグリーンシートを積層した状態で行ってもよい。積層して脱脂及び焼結を行う場合、焼成後のシートの分離を円滑にするため、グリーンシート間に離型剤による離型層を設けてよい。離型剤としては、例えば、窒化ホウ素(BN)を用いることができる。離型層は、例えば、窒化ホウ素の粉末のスラリーを、スプレー、ブラシ、ロールコート、又はスクリーン印刷等の方法により塗布して形成してよい。積層するグリーンシートの枚数は、基材の量産を効率的に行いつつ、脱脂を十分に進行させる観点から、例えば10~100枚であってもよく、20~80枚であってもよい。
【0041】
次に、上記工程(S02)で得られた基材の表面に、工程(S01)で設定された条件に従って、レーザ光を用いてスクライブラインを形成する工程(S03)が行われる。具体的には、工程(S02)で得られた基材の表面に、レーザ光を照射して複数の穴を形成することで、図1図3に示されるような、主面100AにスクライブラインL1,L2を有するセラミック板100が形成される。レーザ光としては、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ及びファイバーレーザ等が挙げられる。図4及び図5に示される複数の穴20のそれぞれは、レーザ光を複数回に分けて照射することによって形成される。これによって、一回のみの照射で穴を形成する場合に比べて、一回当たりに照射されるレーザ光のエネルギーを小さくすることができる。したがって、穴20の形成にレーザ光を効率的に利用することが可能となり、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムの焦げ付きによる変質を抑制することができる。
【0042】
穴20は、バーストパルスモードによって形成してもよいし、サイクルパルスモードによって形成してもよい。バーストパルスモードは、以下の手順で行う。レーザ光を複数回に分けて同じ位置に照射して、一つ目の穴20を形成する。続いて、一つ目の穴20に隣り合うように、レーザ光を複数回に分けて照射して二つ目の穴20を形成する。これによって、互いに隣り合う2つの穴20を形成する。このような手順を複数回繰り返して行いn個の穴20を形成する(nは2以上の正の整数)。このようにしてn個の穴20で構成されるスクライブラインL1(L2)を形成することができる。1個の穴20を形成するためにレーザ光を2回照射する場合、n個の穴20を形成するためにはレーザ光を(2×n)回に分けて照射することになる。
【0043】
サイクルパルスモードは、例えば以下の手順で行う。1番目からn番目までの穴20を、それぞれ1回ずつのレーザ光の照射で形成する。その後、1番目からn番目までの穴20に、再びレーザ光を1回ずつ照射する。この場合も、n個の穴20を形成するためにレーザ光を(2×n)回に分けて照射することになる。なお、各穴20の形成のためにレーザ光を3回以上照射してもよい。作業効率の観点から、各穴20の形成のためにレーザ光を照射する回数は10回以下であってよい。穴20の形成方法は上述の2つの方法に限定されない。例えば、バーストパルスモードとサイクルパルスモードとを組み合わせてもよい。
【0044】
一つの穴20を形成するために照射される複数回のレーザ光の照射間隔は、レーザ光の照射によって加熱されるセラミック板100の冷却時間を確保するため、1200μ秒間以上(850Hz以下)であってよく、1500μ秒間以上(670Hz以下)であってよい。
【0045】
1回当たりに照射されるレーザ光のエネルギーは、70mJ未満であってよく、50mJ以下であってよく、30mJ以下であってもよい。このように1回当たりに照射されるエネルギーを小さくすることによって、セラミック板の焦げ付き(異物である酸素リッチ層の生成)を抑制できる。なお、穴20を効率よく形成する観点から、1回当たりに照射されるレーザ光のエネルギーは5mJ以上であってよく、10mJ以上であってもよい。
【0046】
レーザ光のパルス幅は、セラミック板100の主面100Aに十分な大きさの穴20を形成しつつ、セラミック板100へのダメージを低減する観点から、30μ秒~200μ秒であってよく、50μ秒~150μ秒であってもよい。
【0047】
このようにして、スクライブラインL1,L2を設けることによって、セラミック板100を得ることができる。スクライブラインL1,L2は、後工程において、セラミック板100(回路基板)を分割する際の切断線となる。以上のように、セラミック板100の製造方法は、上述した工程(S01~S03)を含む。
【0048】
次に、セラミック板100の一対の主面100A,100Bに、ペースト状のろう材を塗布する工程(S04)が行われる。例えば、セラミック板100の主面100A,100Bに、ロールコーター法、スクリーン印刷法、又は転写法等の方法によってペースト状のろう材が塗布される。ろう材は、例えば、銀及びチタン等の金属成分、有機溶媒、並びにバインダ等を含有する。ろう材の粘度は、例えば5Pa・s~20Pa・sであってよい。ろう材における有機溶媒の含有量は、例えば、5質量%~25質量%、バインダ量の含有量は、例えば、2質量%~15質量%であってよい。
【0049】
図9は、ろう材140が塗布されたセラミック板100の一例を示す斜視図である。図9に示されるように、ろう材140は、区画部10ごとに独立して塗布されてよい。図9には、主面100A側のみを示しているが、主面100B側にも同様にろう材140が塗布されてもよい。主面100Aと主面100Bの全面にろう材が塗布されてもよい。
【0050】
次に、ろう材140が塗布されたセラミック板100に一対の金属板を接合させることで、複合基板を形成する工程(S05)が行われる。例えば、工程(S05)では、最初に、ろう材140が塗布されたセラミック板100の主面100A及び主面100Bに、金属板を貼り合わせることで、接合体が得られる。その後、加熱炉でその接合体を加熱してセラミック板100と一対の金属板とを十分に接合させることで、複合基板が得られる。
【0051】
図10は、一実施形態に係る複合基板の一例を示す斜視図である。複合基板200は、互いに対向するように配置された一対の金属板210と、一対の金属板210の間に位置するセラミック板100とを備える。一対の金属板210は、セラミック板100の主面100A及び主面100Bを覆うようにセラミック板100に接合されている。金属板210としては、銅板が挙げられる。セラミック板100と金属板210との間で、これらの形状及びサイズが互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。以上のように、複合基板200の製造方法は、上述の工程(S01~S05)を含む。
【0052】
次に、レジストパターンを形成する工程(S06)が行われる。例えば、工程(S06)では、フォトリソグラフィによってレジストパターンが形成される。具体的には、まず、複合基板の表面に感光性を有するレジストが印刷される。そして、露光装置を用いて、所定形状を有するレジストパターンが形成される。レジストはネガ型であってもよいしポジ型であってもよい。未硬化のレジストは、例えば洗浄によって除去される。
【0053】
図11は、表面200Aにレジストパターン230が形成された複合基板200の一例を示す斜視図である。図11は、表面200A側のみを示しているが、表面200B側にも同様のレジストパターンが形成されてよい。レジストパターン230は、表面200A及び表面200Bにおいて、セラミック板100の各区画部10に対応する領域に形成される。
【0054】
次に、金属板210のうちレジストパターン230に覆われていない部分を除去するエッチング工程(S07)が行われる。エッチングが行われることによって、当該部分にはセラミック板100の主面100A及び主面100Bが露出する。その後、レジストパターン230を除去して、区画部10ごとに独立した導体部が形成される。以上の工程(S01~S07)によって、回路基板が得られる。
【0055】
図12は、一実施形態に係る回路基板300の一例を示す斜視図である。回路基板300は、セラミック板100と、セラミック板100を挟んで対向配置された導体部250と、を備える。導体部250は、区画部10ごとに独立して、主面100A及び主面100B上に設けられている。すなわち、区画部10ごとに、互いに対向するように配置された一対の導体部250が設けられている。
【0056】
回路基板300は、スクライブラインL1,L2に沿って分割(切断)され、複数の分割基板に分割される。各分割基板(分割された状態の各回路基板)は例えばパワーモジュール等の部品として用いられる。分割基板における導体部250には、例えば電子部品が実装される。
【0057】
(条件の設定)
図13は、上述の工程(S01)での条件の設定方法の一例を示すフローチャートである。この条件の設定方法では、加工条件に含まれる各種条件(開口径r、深さd、及び配列ピッチpそれぞれの設定値)の少なくとも1つを複数段階に変更させて、変更させる段階ごとに、評価サンプルとして、複数の評価用セラミック板が作製される。複数の評価用セラミック板が作製される複数の加工条件では、各種条件の少なくとも1つが互いに異なる値に設定されている。以下では、開口径r及び深さdは一定値に固定したまま、配列ピッチpを段階的に変更する場合を例示する。なお、いずれの条件を変更させるか、及び変更させる幅は、作業員等によって予め設定されていてもよい。
【0058】
最初に、加工条件が初期値に設定されたうえで、当該加工条件に従って、複数の穴で構成される評価用のスクライブラインが形成されることで、評価用セラミック板が作製される(S11)。そして、一の加工条件において、評価用セラミック板が所定枚数(例えば、2枚~10枚)だけ作製されるまで、同じ加工条件で、評価用セラミック板が繰り返し作製される(S11,S12)。これにより、同じ加工条件で形成された複数の評価用セラミック板が作製され、例えば、後述する評価項目を平均値によって評価することができる。
【0059】
一の加工条件において、所定枚数の評価用セラミック板が作製された後、且つ、配列ピッチpを複数段階に変更させるパターン(加工条件の組合せ)が全て終了していない場合には、加工条件の変更が行われる(S13,S14)。そして、変更後の加工条件に従って、複数の評価用セラミック板が作製される。以上の工程が、配列ピッチpを複数段階に変更させるパターン全てが終了するまで繰り返される。
【0060】
次に、複数の評価用セラミック板の曲げ強さの評価が行われる(S15)。具体的には、最初に、上述した第2曲げ強さN2(スクライブラインに影響を受けない基材自体の曲げに対する強度)が、評価用セラミック板について、3点曲げ試験によって測定される。第2曲げ強さN2を測定する際に、いずれの評価用セラミック板が用いられてもよい。なお、第2曲げ強さN2は、工程(S11)の前に測定されていてもよい。次に、配列ピッチpを変更させた段階ごと(加工条件ごと)に、第1曲げ強さN1(スクライブラインの形成部分の曲げに対する強度)が、3点曲げ試験によって測定される。評価用セラミック板での曲げ強さの測定方法は、上述したセラミック板100での測定方法と同様である。例えば、配列ピッチpを変更させた段階ごとに、複数の評価用セラミック板それぞれから得られる試験片を用いて、3点曲げ試験により第1曲げ強さN1が測定される。そして、複数の評価用セラミック板から得られる試験片それぞれの測定値の平均値が、当該段階(加工条件)についての第1曲げ強さN1として算出される。
【0061】
次に、変更させた加工条件の中から(複数の加工条件の中から)、第1曲げ強さN1が所定の数値範囲に含まれる条件が設定条件として選択される(S16)。より詳細には、配列ピッチpについて変更させた複数の段階(値)の中から、第1曲げ強さN1が、380MPa以上、且つ第2曲げ強さN2の0.56倍以下となる値が選択される。なお、上記数値範囲に含まれる条件が複数ある場合に、作業員によっていずれか1つの値に選択されてもよい。以上の工程(S11~S16)によって、第1曲げ強さN1が、380MPa以上、且つ第2曲げ強さN2の0.56倍以下となる各種条件の組合せが選択される。そして、上述したように、選択された条件(設定条件)に従って、スクライブラインL1,L2が主面100Aに形成される。
【0062】
(条件の設定例1)
続いて、スクライブラインを形成するための各種条件の設定例について説明する。設定例1では、炭酸ガスレーザ方式の加工機を用いて、穴20の開口径rを60μmに固定し、穴20の深さdを70μmに固定したうえで、配列ピッチpを5段階に変更して評価用セラミック板を作製した。配列ピッチpを変更させる段階(加工条件)ごとに、5個の評価用セラミック板を作製した。各評価用セラミック板の板厚は0.32mmとした。下記の表1は、5段階に変更した配列ピッチpの値、第1曲げ強さN1の評価結果、及び第1曲げ強さN1と第2曲げ強さN2との比を示す。
【表1】
【0063】
表1において、第1曲げ強さN1の評価結果は、5個の評価用セラミック板それぞれについて測定される第1曲げ強さN1の平均値である。評価用セラミック板の基材自体の曲げ強さを示す第2曲げ強さN2は、750MPaであった。以上の評価結果から、条件2及び条件3では、第1曲げ強さN1が、380MPa~420MPa(第2曲げ強さN2の0.56倍)の範囲に含まれている。したがって、この場合には、配列ピッチpの設定値として60μm又は70μmが選択される。
【0064】
条件1で作製した評価用セラミック板では、スクライブライン形成後の後工程において、工程中に一部のセラミック板に割れが発生した。また、条件4及び条件5で作製した評価用セラミック板の一部では、分割後にバリ(数百μm程度のバリ)が発生した。条件2,3で作製した評価用セラミック板では、スクライブライン形成後の後工程においてセラミック板に割れが発生せずに、分割後にバリが発生しなかった。
【0065】
(条件の設定例2)
設定例2では、ファイバーレーザ方式の加工機を用いて、穴20の開口径rを100μmに固定し、穴20の深さdを70μmに固定し、配列ピッチpを5段階に変更して評価用セラミック板を作製した。配列ピッチpを変更させる段階(加工条件)ごとに、5個の評価用セラミック板を作製した。下記の表2は、5段階に変更した配列ピッチpの値、第1曲げ強さN1の評価結果、及び第1曲げ強さN1と第2曲げ強さN2との比を示す。
【表2】
【0066】
表2において、第1曲げ強さN1の評価結果は、5個の評価用セラミック板それぞれについて測定される第1曲げ強さN1の平均値である。評価用セラミック板の第2曲げ強さN2は、750MPaであった。以上の評価結果から、条件2、条件3、及び条件4では、第1曲げ強さN1が、380MPa~420MPaの範囲に含まれている。したがって、この場合には、配列ピッチpの設定値として85μm、100μm又は115μmが選択される。
【0067】
条件1で作製した評価用セラミック板では、スクライブライン形成後の後工程において、工程中に一部のセラミック板に割れが発生した。また、条件5で作製した評価用セラミック板の一部では、分割後にバリ(数百μm程度のバリ)が発生した。条件2~条件4で作製した評価用セラミック板では、スクライブライン形成後の後工程においてセラミック板に割れが発生せずに、分割後にバリが発生しなかった。
【0068】
[実施形態の効果]
以上の実施形態に係るセラミック板100は、主面100A及び主面100Bと、主面100Aに形成された複数の穴20によって構成されるスクライブラインL1,L2と、を有するセラミック板である。第1曲げ強さN1を、主面100Aが2つの支点SP1,SP2で支持され、スクライブラインL1,L2が主面100Bに付与される荷重点LPに沿うようにセラミック板100の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値とし、第2曲げ強さN2を、2つの支点SP1,SP2間にスクライブラインが存在しないようにセラミック板100の少なくとも一部が配置された状態で、3点曲げ試験によって測定される値としたときに、第1曲げ強さN1は、380MPa以上であり、且つ、第2曲げ強さN2の0.56倍以下である。
【0069】
スクライブラインに沿ってセラミック板を分割する際に、スクライブラインが形成された部分の曲げに対する強度が強すぎると、セラミック板を分割した際にバリが発生し、セラミック板によって形成される回路基板の品質が低下してしまうおそれがある。一方、セラミック板の形成後には、回路基板を形成するために各種工程(例えば、上述のS04~S07)が含まれる。そのため、上記曲げに対する強度が弱すぎると、これらの工程中にセラミック板が割れてしまい、歩留まりが悪化してしまうおそれがある。これに対して、上述のセラミック板100では、スクライブラインL1,L2に関して、第1曲げ強さN1の下限値が上記の値に調整されることで、スクライブライン形成後の各種工程において、セラミック板100が割れ難い。また、スクライブラインL1,L2に関して、第1曲げ強さN1の上限値が上記の値に調整されることで、セラミック板100を分割する際にバリが発生し難い。したがって、上述のセラミック板100は、回路基板の品質の安定化と、歩留まりの向上との両立に有用である。
【0070】
複数の穴20それぞれの、主面100AにおいてスクライブラインL1,L2に直交する方向の最大長さ(開口径r)は、50μm~120μmであり、複数の穴20それぞれの深さdは、セラミック板100の厚さTの1/6倍~1/3倍であり、スクライブラインL1,L2に沿った複数の穴20の配列ピッチpは、50μm~120μmであってもよい。スクライブラインL1,L2に関して、曲げ強さの調整に加えて、穴の開口径r、穴の深さd、及び穴20の配列ピッチpが上記範囲に調整されることで、後工程でのセラミック板100の割れと、分割する際のバリの発生とがより確実に抑制される。そのため、回路基板の品質の安定化と、歩留まりの向上との両立に更に有用である。
【0071】
以上の実施形態に係るセラミック板100の製造方法は、複数の穴20によって構成されるスクライブラインL1,L2を、セラミック板100の主面100Aに形成するための加工条件の中から設定条件を選択する工程と、設定条件に従って、セラミック板100用の基材の表面に、レーザ光を用いてスクライブラインL1,L2を形成する工程と、を含む。加工条件には、複数の穴20それぞれの、主面100AにおいてスクライブラインL1,L2に直交する方向の最大長さ(開口径r)、複数の穴20それぞれの深さd、及びスクライブラインL1,L2に沿った複数の穴20の配列ピッチpが含まれる。設定条件を選択する工程は、加工条件を変更させながら、複数の穴20によって構成される評価用のスクライブラインが一の主面に形成された状態の複数の評価用セラミック板を形成することと、複数の評価用セラミック板それぞれの曲げ強さを評価することで、変更させた加工条件の中から、第1曲げ強さN1が、380MPa以上であり、且つ第2曲げ強さN2の0.56倍以下となる条件を上記設定条件として選択することとを含む。
【0072】
この製造方法では、第1曲げ強さN1が、380MPa以上であり、且つ第2曲げ強さN2の0.56倍以下となる加工条件が選択される。そのため、選択された加工条件に従ってスクライブラインL1,L2が形成されたセラミック板100についても、第1曲げ強さN1を上記範囲に調整することができる。第1曲げ強さN1が380MPa以上であると、スクライブライン形成後の各種工程においてセラミック板が割れ難く、第1曲げ強さN1が第2曲げ強さN2の0.56倍以下であると、分割後にバリが発生し難い。したがって、本製造方法は、セラミック板によって形成される回路基板の品質の安定化と、歩留まりの向上との両立に有用である。
【0073】
以上、本開示のいくつかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、各区画部10に設けられる導体部250の形状は同一である必要はなく、区画部10ごとに異なる形状を有していてもよい。また、セラミック板100及び複合基板は、四角柱形状以外の形状を有していてもよい。
【0074】
回路基板300における導体部250には任意の表面処理を施してもよい。例えば、ソルダーレジスト等の保護層で導体部250の表面の一部を被覆し、導体部250の表面の他部にめっき処理を施してもよい。
【0075】
上述の例では、設定条件を選択する際に、一の加工条件ごとに複数の評価用サンプルを作製しているが、一の加工条件ごとに1個の評価用サンプルを作製してもよい。
【符号の説明】
【0076】
100…セラミック板、100A,100B…主面、20…穴、L1,L2…スクライブライン、r…穴の開口径、d…穴の深さ、T…セラミック板の厚さ、p…複数の穴の配列ピッチ。

【要約】
本開示の一側面に係るセラミック板は、第1主面及び第2主面と、第1主面に形成された複数の穴によって構成されるスクライブラインとを有する。第1曲げ強さを、第1主面が2つの支点で支持され、スクライブラインが第2主面に付与される荷重点に沿った状態で、3点曲げ試験によって測定される値とし、第2曲げ強さを、2つの支点間にスクライブラインが存在しない状態で、3点曲げ試験によって測定される値としたときに、第1曲げ強さは、380MPa以上であり、且つ、第2曲げ強さの0.56倍以下である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13