(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】目皿部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/262 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
E03C1/262 A
(21)【出願番号】P 2018222103
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 慶太
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-156263(JP,U)
【文献】特開2002-302979(JP,A)
【文献】特開2010-90690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水流路に取付けられる目皿部材の取付構造であって、
内側面に周縁に沿って設けられた載置部、
載置部の上方に備えられた排水流路の内周方向に突出する突起部、
からなる排水流路と、
円環状にして載置部に載置される環状部、
環状部の内周側に設けられた捕集部、
環状部に縦方向に設けられた、突起部が挿通可能な縦溝部、
環状部の上面に設けられた、排水流路の突起部と係合する係合部、
からなる排水流路内を回転可能な目皿部材と、
から構成されたことを特徴とする目皿部材の取付構造。
【請求項2】
上記目皿部材の取付構造において、
突起部と係合部の係合の構造が、
目皿部材を載置部上で正回転させて突起部を越えることで意図しない目皿部材の逆回転を防ぐ、目皿部材上面に設けた凸部からなる係合部と、
目皿部材の必要以上の正回転を防止する回り止め機構と、
からなる請求項1に記載の目皿部材の取付構造。
【請求項3】
排水流路に取付けられる目皿部材の取付構造であって、
内側面に周縁に沿って設けられた内周方向に沿って突出した複数の突状からなる載置部、
載置部の上方に備えられた排水流路の内周方向に突出する突起部、
からなる排水流路と、
円環状にして載置部に載置される環状部、
環状部の内周側に設けられた捕集部、
環状部に縦方向に設けられた、突起部が挿通可能な縦溝部、
環状部の下面に設けられた、排水流路の載置部と係合する係合部、
からなる排水口内を回転可能な目皿部材と、
から構成されたことを特徴とする目皿部材の取付構造。
【請求項4】
上記目皿部材の取付構造において、
突起部と係合部の係合の構造が、
目皿部材を載置部上内で正回転させて載置部を越えることで意図しない目皿部材の逆回転を防ぐ、目皿部材下面に設けた凸部からなる係合部と、
目皿部材の必要以上の正回転を防止する回り止め機構と、
からなる請求項3に記載の目皿部材の取付構造。
【請求項5】
上記目皿部材の取付構造において、
目皿部材が取り付けられる排水流路の内側面と、目皿部材の環状部外側面との間に、下方ほど幅広となる隙間空間を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の目皿部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面台や流し台、浴槽・浴室などの排水機器の排水を処理する排水配管において、排水口など排水流路に取り付けられ、排水の中から毛髪や塵芥などを分離・捕集する目皿部材の、取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗面台や流し台、浴槽・浴室など、使用によって排水を生じる機器が知られている。これら排水機器において、生じた排水を処理するため、排水機器に排水口を設け、この排水口から下水側へ配管を行い、排水流路を形成することで排水を処理する配管構造が知られている。
ここで、排水は洗浄等によって使用した水であり、毛髪や塵芥などを含んでいるため、そのまま配管に流すと、配管内部に塵芥や毛髪が付着し、悪臭や配管の汚れ、管詰まり等の原因になる場合がある。このため、塵芥や毛髪等を排水から分離することを目的として、排水口等、排水流路上に目皿部材が取り付けられることが多い。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、排水機器である浴室に施工される排水トラップの、排水流路である排水口に取り付けられる目皿部材に関するものであって、排水口を備えたトラップ本体と、目皿部材と、から構成される。
トラップ本体の排水口は円筒形状であって、その内部に内側方向に突出した突起部を平面視90度毎に4か所、備えてなる。
目皿部材は、略円筒形状の側面部分と、円筒形状の上面部分を覆う略円盤部分とから成る部材であって、円盤部分には排水を通水させるための複数の孔を備えた捕集部分を設けてなり、またその側面部分には、以下に詳述する嵌合構造を排水口の突起部に合わせて90度毎に4か所備えられてなる。
嵌合構造は、目皿部材側面の下端から中間部分まで設けられた縦溝部、縦溝部の上端から円周方向に沿って設けられた、端部側ほど幅が狭くなるような傾斜面を備えた横溝部、からなり、更に横溝部の端部に、側面部分の内外を貫通する切欠部を備えてなる。該切欠部によって、横溝部中の切欠部下方は樹脂による弾性を有してなる。
上記した目皿部材を排水口に取り付ける場合、まず排水口の上方に目皿部材を配置し、更に平面視において排水口の突起部に目皿部材の縦溝部を合致させる。次に、目皿部材を排水口に挿入し、縦溝部の上端に突起部が達した所で、目皿部材を嵌合が行われる方向に回転させ、突起部が横溝部側に移動するようにする。以下、この嵌合が行われる方向への回転を「正回転」、正回転とは反対の方向への回転(嵌合を解除する方向への回転)を「逆回転」と記載する。横溝部には上面及び下面の幅が端部側ほど狭くなる傾斜面が形成されているため、目皿部材を正回転させると、突起部が横溝部に対し上下方向に挟まれて嵌合固定される。
上記のようにして目皿部材を備えられた排水口に、排水機器に使用された排水が流入した場合、排水は、目皿部材の複数の孔を備えた捕集部分を通過してトラップ本体内部に流入し、排水配管を介して最終的には下水側に排出される。目皿部材は排水口に嵌合するようにして取り付けられているため、排水口に大量の排水が発生した場合でも、目皿部材が排水口から外れて浮かび上がる、ということが無く、全ての排水は、目皿部材の捕集部を通過した後にトラップ本体内や排水配管に流入する。
また、排水が排水口を通過した際に、排水中の毛髪や塵芥は捕集部分にて捕集され、排水口から下流の配管に流れることが無いように構成されている。
【0004】
ある程度排水機器を使用し、排水を処理することで、目皿部材の捕集部に塵芥等が溜まった場合、目皿部材を排水口から取り外し、清掃を行う。具体的には、突起部に縦溝部が合致するまで目皿部材を逆回転させ、その後目皿部材を引き上げることで、排水口から目皿部材を取り出すことができる。排水口から取り出した目皿部材から、捕集部分に溜まった塵芥等を回収し、目皿部材を清掃した上で、再び排水口に取り付けることで、目皿部材を繰り返し使用することができる。
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に記載の排水機器において、使用後に生じる排水には細かい砂や塵が混じる場合や、短い毛髪が混じる場合が多い。これら細かい砂や塵、毛髪は、目皿部材の捕集部ではなく、排水口内側面と目皿部材外側面の間に流入する場合がある。排水口内側面と目皿部材外側面は本来通水が行われる部分ではないため、その隙間は狭く、上記した細かい砂や塵、毛髪等が通過せずにそのまま狭隘な隙間部分や縦溝部・横溝部に付着し残り続けることがある。すると、目皿部材を清掃などの目的で排水口から取り出そうとする際に、これらにより排水口内側面と目皿部材外側面の間の回転の為の隙間が埋められてしまったり、突起部が縦溝部・横溝部を通過できなくなる、といった問題が発生する。特許文献1に記載の発明では、横溝部に切欠部を設けることで、ある程度細かい砂や塵、毛髪を該切欠部から排水口内に通過できる構成とし、また切欠部に由来する弾性により横溝部の上下方向の幅を一時的に広げることができる構成としている。しかし、横溝部には切欠部を有さない部分もあり、また排水口内側面と目皿部材外側面の間に入り込んだ全ての塵芥等を該切欠部から排出することは困難である。即ち、上記した砂がみの問題は、事実上切欠部近傍で砂がみが発生した場合のみ対応でき、それ以外の箇所で発生した場合には対応できなかった。
【0007】
また、上記した特許文献1に記載の排水口の目皿部材は、通常樹脂によるインジェクション成型と呼ばれる方法と呼ばれる、成型品の形状を彫り込んだ金属板の間に溶融した樹脂材を注入し、冷却後に金型を展開して成型品を取り出する方法で成型される。ここで、上記した特許文献1に記載の目皿部材の場合、上下方向に捕集部の為の複数の孔を、側面方向に嵌合構造としての横溝部また切欠部を設ける必要がある。このため、特許文献1の目皿部材の場合、上方向に1面、下方向に1面の金型が必要になると共に、側面方向については、切欠部毎に金型を用意する必要があり、側面方向だけで4面の金型が必要になり、全体では6面の金型が必要となる。金型の面数が多くなることは当然金型自体の価格が上がるとともに、成型時の金型構造も複雑になり、成形時間の増加や故障が生じる可能性も増す等様々な不具合があった。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、排水機器の排水口等、排水流路に取り付けられる目皿部材の取付構造であって、砂がみが生じにくく、且つ簡単な構造の金型で製造が可能な目皿部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、排水流路に取付けられる目皿部材の取付構造であって、
内側面に周縁に沿って設けられた載置部、
載置部の上方に備えられた排水流路の内周方向に突出する突起部、
からなる排水流路と、
円環状にして載置部に載置される環状部、
環状部の内周側に設けられた捕集部、
環状部に縦方向に設けられた、突起部が挿通可能な縦溝部、
環状部の上面に設けられた、排水流路の突起部と係合する係合部、
からなる排水流路内を回転可能な目皿部材と、
から構成されたことを特徴とする目皿部材の取付構造である。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、上記目皿部材の取付構造において、
突起部と係合部の係合の構造が、
目皿部材を載置部上で正回転させて突起部を越えることで意図しない目皿部材の逆回転を防ぐ、目皿部材上面に設けた凸部からなる係合部と、
目皿部材の必要以上の正回転を防止する回り止め機構と、
からなる請求項1に記載の目皿部材の取付構造である。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、排水流路に取付けられる目皿部材の取付構造であって、
内側面に周縁に沿って設けられた内周方向に沿って突出した複数の突状からなる載置部、
載置部の上方に備えられた排水流路の内周方向に突出する突起部、
からなる排水流路と、
円環状にして載置部に載置される環状部、
環状部の内周側に設けられた捕集部、
環状部に縦方向に設けられた、突起部が挿通可能な縦溝部、
環状部の下面に設けられた、排水流路の載置部と係合する係合部、
からなる排水口内を回転可能な目皿部材と、
から構成されたことを特徴とする目皿部材の取付構造である。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、上記目皿部材の取付構造において、
突起部と係合部の係合の構造が、
目皿部材を載置部上内で正回転させて載置部を越えることで意図しない目皿部材の逆回転を防ぐ、目皿部材下面に設けた凸部からなる係合部と、
目皿部材の必要以上の正回転を防止する回り止め機構と、
からなる請求項3に記載の目皿部材の取付構造である。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、上記目皿部材の取付構造において、
目皿部材が取り付けられる排水流路の内側面と、目皿部材の環状部外側面との間に、下方ほど幅広となる隙間空間を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の目皿部材の取付構造である。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、目皿部材の外側面には上下に貫通した縦溝部を設けるだけで良く、外側面の周縁に沿って横溝部を設ける必要が無い。このため、横溝部と突起部との砂がみの問題が生じない。また、目皿部材の側面周縁を傾斜面にしたり、一枚板のように薄くすることで、排水流路内側面と目皿部材の外側面の近接する面積が大幅に減少するため、排水口内側面と目皿部材外側面の間の回転の為の隙間に砂がみが生じることもほとんどなくなる。
また、側面方向に溝部や切欠部を設けるための金型を用意する必要が無く、その分金型を安価且つ単純な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】第一実施例の目皿部材の、(a)平面図、(b)正面図、(c)底面図である。
【
図3】第一実施例の目皿部材の、(a)上方からの斜視図、(b)下方からの斜視図である。
【
図4】第一実施例のフランジ部材の、(a)平面図、(b)断面図である。
【
図6】第一実施例の目皿部材をフランジ部材の載置部上に配置した状態の断面図である。
【
図7】第一実施例の目皿部材をフランジ部材の載置部上に配置した状態の平面図である。
【
図8】第一実施例の目皿部材を排水口に嵌合させた状態の平面図である。
【
図9】第二実施例の目皿部材の、(a)平面図、(b)正面図、(c)底面図である。
【
図10】第二実施例の目皿部材の、(a)上方からの斜視図、(b)下方からの斜視図である。
【
図11】第二実施例のフランジ部材の、(a)平面図、(b)断面図である。
【
図12】第二実施例のフランジ部材の斜視図である。
【
図13】第二実施例の目皿部材をフランジ部材の載置部上に配置した状態の断面図である。
【
図14】第二実施例の目皿部材をフランジ部材の載置部上に配置した状態の平面図である。
【
図15】第二実施例の目皿部材を排水口に嵌合させた状態の平面図である。
【0015】
以下に、本発明の第一実施例について、
図1乃至
図8を参照しつつ説明する。尚、
図7、
図8においては、説明を容易にするため、他の部材の下方にあって目視できない載置部4b及びリブ部1eの位置を破線にて図示してなる。
本発明の第一実施例は、排水機器である浴室に施工される排水トラップの、排水流路である排水口4に取り付けられる目皿部材1に関するものであって、トラップ本体2と、排水口4を形成するフランジ部材3と、目皿部材1と、から構成される。
トラップ本体2は、
図1に示すように、側面に排出口2aを備えた略有底円筒形状を成す部材であって、上方に後述するフランジ部材3が取り付けられるように構成されてなると共に、その内部に図示しない封水部と呼ばれる下水側からの臭気や害虫類の逆流を防止する機能部を備える。
フランジ部材3は、
図4、
図5に示すように、略円筒形状の部材であって、その外側面上端にフランジ部3aを、その内部に取り付けられた浴室内の排水が流入する排水口4を、それぞれ備えてなる。
フランジ部材3の内部に設けられた排水口4の内側面は、ほぼ垂直な円筒形状を成し、以下に記載する突起部4a及び載置部4bを備えてなる。
突起部4aは、排水口4の内側方向に突出した突出部分であって、平面視90度毎に4か所備えられてなる。
載置部4bは、排水口4の内側方向且つ突起部4aよりも下方にて排水口4の内側方向に突出した突出部分であって、平面視90度毎に4か所備えられてなる。また、載置部4bは平面視において突起部4a及び後述する目皿部材1の縦溝部1cよりも幅広に形成されてなる。
目皿部材1は、
図2、
図3に示すように、略円筒形状の側面部分を成す環状部1aと、該環状部1aの内径側に設けた、排水を通水させるための複数の孔を備えた捕集部1bと、捕集部1b上面に備えた、垂立する板状の取っ手部1fから構成されてなる。
また、断面視において、目皿部材1の環状部1aの高さ幅は、突起部4a下端から載置部4b上端までの高さ幅とほぼ同じ幅であって、若干だけ環状部1aの幅が狭いような構成を有してなる。
また、環状部1aの外側面は、下方ほどその外径が小径になるようなテーパーを備えると共に、以下に詳述する嵌合構造を排水口4の突起部4aに合わせて90度毎に4か所備えられてなる。
嵌合構造は、目皿部材1外側面の上端から下端まで貫通するように設けられた縦溝部1cと、環状部1aの上方に設けられた突起からなる係合部1dと、環状部1aの下方に設けられた板状のリブ部1eと、から構成される。また、本実施例の目皿部材1は、樹脂素材によるインジェクション成型によって一体に成型されてなり、係合部1dと係合部1d近傍の環状部1aは樹脂に由来する若干の弾性を有し、目皿部材1が載置部4b上に載置された状態において目皿部材1を回転させた時、係合部1dやその周辺は若干の弾性変形を生じ、係合部1d上面が突起部4a下面に当接しながら突起部4a下方を通過することができる。
また、平面視において、
図7、
図8に示したように、排水口4と目皿部材1を同心円状に配置し、突起部4aを縦溝部1cに挿通させた後、目皿部材1を正回転、即ち目皿部材1が排水口4に取り付けられる方向への回転を行った場合(この実施例では平面視において目皿部材1を右回転させた時)に、係合部1dが突起部4aを越えた位置で、リブ部1e端部が載置部4b端部に当接するように係合部1dとリブ部1eの位置関係を構成してなる。
また、平面視における縦溝部1cの幅は、排水口4の突起部4aとほぼ同じ幅であって、若干だけ突起部4aの幅が狭いように構成されてなる。
【0016】
上記のように構成した目皿部材1を排水口4に取り付ける場合、まず排水口4の上方に目皿部材1を配置し、更に
図7に示すように、平面視において排水口4の突起部4aに目皿部材1の縦溝部1cを合致させる。次に、
図6に示すように、目皿部材1を排水口4に挿入し、環状部1aの下端が載置部4bの上面に載置されるようにする。次に、取っ手部1fを把持して、
図8に示すように、目皿部材1が排水口4に取り付けられる正回転方向(本実施例では平面視において目皿部材1を右回転する方向)に回転させる。
この際には、縦溝部1cの横幅より載置部4bの横幅の方が幅広であるため、載置部4b上で目皿部材1を回転させても、縦溝部1cから載置部4bを通過して目皿部材1が排水口4の載置部4bより下方に落下する、ということはない。
目皿部材1を正回転方向に回転させると、係合部1dが若干弾性変形しつつ、排水口4の突起部4aの下面に当接しながら突起部4a下方を移動し、係合部1dが突起部4aを超えた位置でリブ部1eが載置部4bの端部に当接してそれ以上回転が進まなくなる。
即ち、リブ部1eは必要以上な正回転を防止する回り止め機構として機能する。また、係合部1dは突起部4aを越えているため、意図的な応力を加えて再び係合部1dが突起部4a下方を通過するような正回転とは逆の、取り付けを解除する逆回転を行わない限り、目皿部材1が逆回転を行うこともない。このようにして、目皿部材1は、逆回転を行うための意図的な応力を加えない限り回転不可能な状態となって排水口4内に位置固定される。
【0017】
上記のようにして目皿部材1が備えられた排水口4に、排水機器に使用された排水が流入した場合、段落0003に記載した従来例と同様に流れると共に、排水中の塵芥や毛髪などを捕集部1bにて捕集することができる。
【0018】
また、清掃などのため目皿部材1を排水口4から取り外す場合、取っ手部1fを把持して、目皿部材1を逆回転方向に回転させる。そして、再び係合部1dが突起部4aを超え、平面視縦溝部1cに突起部4aが達する位置まで回転させた上で、目皿部材1を上方に移動させることで排水口4から目皿部材1を取り外すことができる。
この場合に、本実施例の目皿部材1は、側面に縦溝部1cを設けているが、円周方向に沿って横溝部等を設けてはいない。このため、排水口4内側面と目皿部材1外側面の間の回転の為の隙間に細かい塵芥等が入り込んでも、従来例のように横溝部に入り込むことはなく、そのまま下方に通り抜けて落下するようになり、従来例に比べて砂がみによって回転しにくくなる、という不具合が生じにくくなる。
特に本実施例の目皿部材1は、環状部1aの側面に下方ほど小径となるテーパーを備えてなる。排水口4の内側面は垂直な壁面を形成しており、このため排水口4内側面と目皿部材1外側面の間には、下方ほど幅広になる隙間空間部分が形成され、目皿部材1の上縁外側面を細かい塵芥等が通過したとしても、そのまま下方ほど幅広になる隙間空間部分を落下してゆき、砂がみ等がより発生しにくくなる。
また、目皿部材1の外側面はテーパーを有する円筒に縦溝部1cを設けただけの構造のため、側面方向をインジェクション成型によって成型する場合に、側面方向を成型する為だけの金型を用意する必要が無く、目皿部材1の上面と下面の2面の金型だけで目皿部材1を成型できる。このため、金型自体の価格を安くすることができ、また成型時の金型構造も簡単なものとなり、成形時間が短く、故障しにくい構造とすることができる。
【0019】
次に、本発明の第二実施例について、
図9乃至
図15を参照しつつ説明する。尚、
図14、
図15においては、説明を容易にするため、他の部材の下方にあって目視できない係合部1dの位置を破線にて図示してなる。
本発明の第二実施例は、排水機器である浴室に施工される排水トラップの、排水流路である排水口4に取り付けられる目皿部材1に関するものであって、トラップ本体2と、排水口4を形成するフランジ部材3と、目皿部材1と、から構成される。
トラップ本体2は、第一実施例と同様の、側面に排出口2aを備えた略有底円筒形状を成す部材であって、上方に後述するフランジ部材3が取り付けられるように構成されてなると共に、その内部に図示しない封水部と呼ばれる下水側からの臭気や害虫類の逆流を防止する機能部を備える。
フランジ部材3は、
図11、
図12に示すように、略円筒形状の部材であって、その外側面上端にフランジ部3aを、その内部に取り付けられた浴室内の排水が流入する排水口4を、それぞれ備えてなる。
フランジ部材3の内部に設けられた排水口4の内側面は、ほぼ垂直な円筒形状を成し、以下に記載する突起部4a及び載置部4bを備えてなる。
突起部4aは、排水口4周縁部分の上面から内側方向に突出した突出部分であって、平面視90度毎に4か所備えられてなる。
載置部4bは、排水口4の内側方向且つ突起部4aよりも下方にて排水口4の内側方向に突出した突出部分であって、平面視90度毎に4か所備えられてなる。また、載置部4bは平面視において突起部4a及び後述する目皿部材1の縦溝部1cよりも幅広に形成されてなる。
目皿部材1は、
図9、
図10に示すように、板状にして略円盤状を成す部材であって、板状の外縁部分からなる環状部1aと、環状部1aの内径側に設けた、排水を通水させるための複数の孔を備えた捕集部1bと、捕集部1b上面に備えた、垂立する板状の取っ手部1fから構成されてなる。
尚、本実施例では、環状部1aと捕集部1bを区画するような筒状部分や段、溝、傾斜面などは有さず、機能に基づいて環状部1aまた捕集部1bとしている。
また、断面視において、目皿部材1の環状部1aの高さ幅は、突起部4a下端から載置部4b上端までの高さ幅とほぼ同じ幅であって、若干だけ環状部1aの幅が狭いような構成を有してなる。
また、環状部1aの外側面は、環状部1aの外側面は、下方ほどその外径が小径になるようなテーパーを備えると共に、以下に詳述する嵌合構造を排水口4の突起部4aに合わせて90度毎に4か所備えられてなる。
嵌合構造は、目皿部材1外側面の上端から下端まで貫通するように設けられた縦溝部1cと、環状部1aの下方に設けられた突起からなる係合部1dと、環状部1aの上方に設けられた板状のリブ部1eと、から構成される。また、本実施例の目皿部材1は、樹脂素材によるインジェクション成型によって一体に成型されてなり、係合部1dと係合部1d近傍の環状部1aは樹脂に由来する若干の弾性を有し、目皿部材1が載置部4b上に載置された状態において、目皿部材1を回転させた時、係合部1dやその周辺は若干の弾性変形を生じ、係合部1d下面が載置部4b上面に当接しながら載置部4b上方を通過することができる。
また、平面視において、
図14、
図15に示したように、排水口4と目皿部材1を同心円状に配置し、突起部4aを縦溝部1cに挿通させた後、目皿部材1を正回転、即ち目皿部材1が排水口4に取り付けられる方向への回転を行った場合(この実施例では平面視において目皿部材1を右回転させた時)に、係合部1dが載置部4bを越えた位置で、リブ部1e端部が突起部4a端部に当接するように係合部1dとリブ部1eの位置関係を構成してなる。
また、平面視における縦溝部1cの幅は、排水口4の突起部4aとほぼ同じ幅であって、若干だけ突起部4aの幅が狭いように構成されてなる。
【0020】
上記のように構成した目皿部材1を排水口4に取り付ける場合、まず排水口4の上方に目皿部材1を配置し、更に
図14に示すように、平面視において排水口4の突起部4aに目皿部材1の縦溝部1cを合致させる。次に、
図13に示すように、目皿部材1を排水口4に挿入し、環状部1aの下端が載置部4bの上面に載置されるようにする。前述のように、排水口4周縁の上面部分から載置部4bまでの高さ幅が目皿部材1の環状部1aの高さ幅とほぼ同じであるため、環状部1aの下端が載置部4bの上面に載置されると、排水口4周縁と目皿部材1の上面とはほぼ連続した面一となる。次に、取っ手部1fを把持して、
図15に示すように、目皿部材1が排水口4に取り付けられる正回転方向(本実施例では平面視において目皿部材1を右回転する方向)に回転させる。
この際には、縦溝部1cの横幅より載置部4bの横幅の方が幅広であるため、載置部4b上で目皿部材1を回転させても、縦溝部1cから載置部4bを通過して目皿部材1が排水口4の載置部4bより下方に落下する、ということはない。
目皿部材1を正回転方向に回転させると、係合部1dが若干弾性変形しつつ、排水口4の載置部4bの上面に当接しながら載置部4b上方を移動し、係合部1dが載置部4bを超えた位置でリブ部1eが突起部4aの端部に当接してそれ以上回転が進まなくなる。
即ち、リブ部1eは必要以上な正回転を防止する回り止め機構として機能する。また、係合部1dは載置部4bを越えているため、意図的な応力を加えて再び係合部1dが載置部4b上方を通過するような正回転とは逆の、取り付けを解除する逆回転を行わない限り、目皿部材1が逆回転を行うこともない。このようにして、目皿部材1は、逆回転を行うための意図的な応力を加えない限り回転不可能な状態となって排水口4内に位置固定される。
【0021】
上記のようにして目皿部材1が備えられた排水口4に、排水機器に使用された排水が流入した場合、段落0003に記載した従来例と同様に流れると共に、排水中の塵芥や毛髪などを捕集部1bにて捕集することができる。
【0022】
また、清掃などのため目皿部材1を排水口4から取り外す場合、取っ手部1fを把持して、目皿部材1を逆回転方向に回転させ、再び係合部1dが載置部4bを超え、平面視縦溝部1cに突起部4aが達する位置まで回転させた上で、目皿部材1を上方に移動させることで排水口4から目皿部材1を取り外すことができる。
この場合に、第二実施例の目皿部材1は環状部1aが板状で、第一実施例の目皿部材1の環状部1aと比べても充分に薄いため、第一実施例以上に細かい塵芥等が通過しやすく、且つ平坦な板状であるため弾性変形が容易であり、砂がみが生じても弾性変形により移動が可能になるなど、砂がみの問題が生じにくい構造にできる。
また、環状部1aの側面に縦溝部1cを設けているが、環状部1a自体は薄い板状であって円周方向に沿って横溝部等を設けてはいない。このため、排水口4内側面と目皿部材1外側面の間の回転の為の隙間に細かい塵芥等が入り込んでも、従来例のように横溝部に入り込むことはなく、そのまま下方に通り抜けて落下するようになり、従来例に比べて砂がみによって回転しにくくなる、という不具合が生じにくくなる。
特に本実施例の目皿部材1は、環状部1aの側面の高さ幅が極めて狭く、目皿部材1の環状部1a外側面を細かい塵芥等が簡単に下方に通過するため、砂がみ等がより発生しにくくなる。
更に、本実施例の目皿部材1は、環状部1aの側面に下方ほど小径となるテーパーを備えてなる。排水口4の内側面は垂直な壁面を形成しており、このため排水口4内側面と目皿部材1外側面の間には、下方ほど幅広になる隙間空間部分が形成され、目皿部材1の上縁外側面を細かい塵芥等が通過したとしても、そのまま下方ほど幅広になる隙間空間部分を落下してゆき、砂がみ等がより発生しにくくなる。
また、目皿部材1の外側面は、板状の部分にテーパーと縦溝部1cを設けただけの構造のため、側面方向をインジェクション成型によって成型する場合に、側面方向を成型する為だけの金型を用意する必要が無く、目皿部材1の上面と下面の2面の金型だけで目皿部材1を成型できる。このため、金型自体の価格を安くすることができ、また成型時の金型構造も簡単なものとなり、成形時間が短く、故障しにくい構造とすることができる。
【0023】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、発明の主旨を変更しない範囲で自由に変更が可能である。例えば、上記実施例では、排水口4は浴室の排水口4として構成されてなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、洗濯機用防水パンや流し台、浴槽、洗面台などの排水口4に備えられる目皿として利用しても構わない。
また、上記実施例では、捕集部1bを全て板状に複数の孔を設けて構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、捕集を確実に行うために、捕集部1bを椀状とした上で椀部分に複数の孔を設けて構成してもよい。このようにすると、椀部分内に塵芥等が捕集され、他の部分に流出することがなくなる。
また、上記第一実施例では係合部1dを目皿部材1の上面に配置して突起部4aと係合し、回り止め機構としてのリブ部1eは目皿部材1の下面に配置して載置部4bと当接する構造としており、また、第二実施例では係合部1dを目皿部材1の下面に配置して載置部4bと係合し、回り止め機構としてのリブ部1eは目皿部材1の上面に配置して突起部4aと当接する構造としているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、係合部1dとリブ部1eを共に目皿部材1の上面に配置して係合部1dを突起部4aと係合すると共に、リブ部1eが突起部4aと当接して回り止め機構となるように構成したり、係合部1dとリブ部1eを共に目皿部材1の下面に配置して係合部1dを載置部4bと係合すると共に、リブ部1eが載置部4bと当接して回り止め機構となるように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0024】
1 目皿部材
1a 環状部
1b 捕集部
1c 縦溝部
1d 係合部
1e リブ部
1f 取っ手部
2 トラップ本体
2a 排出口
3 フランジ部材
3a フランジ部
4 排水口
4a 突起部
4b 載置部