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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/14 20060101AFI20221028BHJP
   G01K 7/32 20060101ALI20221028BHJP
   G01L 1/10 20060101ALI20221028BHJP
   G01L 9/08 20060101ALI20221028BHJP
   G01P 15/09 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G01D5/14 P
G01K7/32 Z
G01L1/10 A
G01L9/08
G01P15/09 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018235201
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020099105
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果委託事業、研究成果最適展開支援プログラム「3次元圧電単結晶スプリングを用いた振動発電の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】515217498
【氏名又は名称】株式会社Piezo Studio
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 憲司
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰昭
(72)【発明者】
【氏名】工藤 哲男
(72)【発明者】
【氏名】吉川 彰
(72)【発明者】
【氏名】大橋 雄二
(72)【発明者】
【氏名】横田 有為
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 圭
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電単結晶体から構成された振動子を有する振動発電素子と、
設定されている範囲で掃引される周波数の電磁波を前記振動発電素子に放射する放射部と、
前記放射部から放射された電磁波を受けて振動する前記振動発電素子から放射される電磁波を受信する受信部と、
前記受信部が受信した電磁波の強度が最も高くなる周波数を検知する検知部と、
前記検知部が検知した周波数を元に、前記振動発電素子が置かれた環境に関する物理量を求める算出部と
を備える測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、
前記振動発電素子に電気的に接続されて、前記振動発電素子で発生した電荷を蓄積するコンデンサをさらに備えることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の測定装置において、
電荷が蓄積された前記コンデンサを電源として駆動し、前記振動発電素子が置かれた環境に関する物理量を計測する計測部と、
前記計測部が計測した物理量に対応して前記振動発電素子に接続される負荷抵抗および負荷容量の少なくとも一方を変更する負荷変更部と
をさらに備えることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の測定装置において、
前記振動子は、
前記圧電単結晶体の分極軸の-面に形成された第1電極と、
前記圧電単結晶体の分極軸の+面に形成された第2電極と
をさらに備えることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の測定装置において、
前記振動子は、コイルバネであることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の測定装置において、
前記コイルバネを構成する前記圧電単結晶体の、前記コイルバネの軸芯に平行な面の断面における前記圧電単結晶体の結晶状態は、前記コイルバネの発電領域において同一とされている
ことを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の測定装置において、
前記圧電単結晶体の分極軸と前記コイルバネの軸芯の方向とは同一とされていることを特徴とする測定装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の測定装置において、
前記圧電単結晶体は、LiTaO3またはLiNbO3から構成されていることを特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関し、より詳しくは、振動発電素子を用いた測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆるモノがインターネットを介して接続され、モノ同士あるいは人とモノが相互に情報を交換し、新たな価値を生み出すIoT(Internet to Things)技術の発展が目覚しい。IoT関連デバイスとして、温度や圧力、加速度などの物理量を測定するセンサがある。このようなセンサを駆動するには、電源が必須であり、従来、ボタン電池などの蓄電池から電源をデバイスに供給している。センサを構成する回路の低消費電力化により、電池寿命が延びているが、定期的な充電や電池交換は非常な手間となり、IoT技術の普及の妨げとなっている。
【0003】
このような中、環境に存在するエネルギーから電力を取り出すエナジーハーベスト(環境発電)が注目されている。環境に存在する振動や熱、光、電磁波などのエネルギーを電力に変換する各種技術が提案されている。例えば、環境中の振動による力学的エネルギーを利用する振動発電が提案されている。
【0004】
振動を利用した発電技術としては、圧電体を利用した方法が良く知られている(特許文献1,特許文献2参照)。圧電体は、歪むと電荷を発生する特性があり、圧電体を振動させて歪ませることで電荷を回収でき、電源として用いることができる。また、振動発電やワイヤレス給電を用いた配管検査装置が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-243821号公報
【文献】特開2012-005192号公報
【文献】特開2018-109649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、振動を利用して発電する振動発電素子では、一般に、人の動きや橋梁・建物・乗り物等の振動を利用している。これらの場合、環境から得られる振動周波数が数百Hz未満と低周波であることが多いので、従来用いられているセンサの電源として用いるために十分な量の発電をするためには、振動発電素子の固有振動数を、環境から得られる振動周波数に合わせる必要がある。
【0007】
しかしながら、振動発電素子の固有振動数を上述したような環境から得られる低い振動周波数に合わせるためには、素子形状を棒状に長くする必要があるので、振動発電素子の小型化の妨げになり、振動発電素子を、従来用いられているセンサの電源としてIoT関連デバイスに適用させることが難しい。また、圧電体を用いた振動発電では、無線通信を行うために十分な電力が得られないため、圧電体を用いた振動発電を、この点でも、従来のセンサに組み合わせてIoT関連デバイスに適用させることが難しい。
【0008】
他の環境発電と組み合わせることにより、得られる電力量を増やすことが可能であるが、デバイスのサイズが大きくなるなどの弊害がある。また、他の環境発電を用いる場合、振動以外の光・熱などの環境エネルギーが同時に得られる環境に設置場所が限定されるため、これもIoT関連デバイスに適用させることが難しい。
【0009】
上述したように、小型の振動発電素子を電源とした従来の技術による温度、圧力、振動などの物理量の測定では、IoT関連技術に適用させることが容易ではないという問題があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、小型の振動発電素子を用いた温度、圧力、加速度などの物理量の測定を、IoT関連技術に適用させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る測定装置は、圧電単結晶体から構成された振動子を有する振動発電素子と、設定されている範囲で掃引される周波数の電磁波を振動発電素子に放射する放射部と、放射部から放射された電磁波を受けて振動する振動発電素子から放射される電磁波を受信する受信部と、受信部が受信した電磁波の強度が最も高くなる周波数を検知する検知部と、検知部が検知した周波数を元に、振動発電素子が置かれた環境に関する物理量を求める算出部とを備える。
【0012】
上記測定装置の一構成例において、振動発電素子に電気的に接続されて、振動発電素子で発生した電荷を蓄積するコンデンサをさらに備える。
【0013】
上記測定装置の一構成例において、電荷が蓄積されたコンデンサを電源として駆動し、振動発電素子が置かれた環境に関する物理量を計測する計測部と、計測部が計測した物理量に対応して振動発電素子に接続される負荷抵抗および負荷容量の少なくとも一方を変更する負荷変更部とをさらに備える。
【0014】
上記測定装置の一構成例において、振動子は、圧電単結晶体の分極軸の-面に形成された第1電極と、圧電単結晶体の分極軸の+面に形成された第2電極とをさらに備える。
【0015】
上記測定装置の一構成例において、振動子は、コイルバネである。
【0016】
上記測定装置の一構成例において、コイルバネを構成する圧電単結晶体の、コイルバネの軸芯に平行な面の断面における圧電単結晶体の結晶状態は、コイルバネの発電領域において同一とされている。
【0017】
上記測定装置の一構成例において、圧電単結晶体の分極軸とコイルバネの軸芯の方向とは同一とされている。
【0018】
上記測定装置の一構成例において、圧電単結晶体は、LiTaO3またはLiNbO3から構成されている。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、振動発電素子の共振周波数の変化を、放射部から放射された電磁波を受信した振動発電素子より放射され、受信部で受信された電磁波より検知部で検知するので、小型の振動発電素子を用いた温度、圧力、加速度などの物理量の測定を、IoT関連技術に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施の形態1における測定装置の構成を示す構成図である。
図2図2は、振動発電素子101の構成を示す斜視図である。
図3図3は、振動発電素子101の一部構成を示す断面図である。
図4図4は、実施の形態2における測定装置の構成を示す構成図である。
図5図5は、実施の形態3における測定装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る測定装置について説明する。
【0022】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る測定装置について図1を参照して説明する。この測定装置は、振動発電素子101、放射部102、受信部103、検知部104、算出部105を備える。
【0023】
振動発電素子101は、圧電単結晶体から構成された振動子を有する。振動発電素子101は、例えば、図2に示すように、圧電単結晶体111のコイルバネより構成されている。圧電単結晶体111は、例えば、LiTaO3またはLiNbO3から構成されている。圧電単結晶体111の断面は、例えば、軸芯方向の厚さ0.8mm、幅2mmの概略矩形である。
【0024】
コイルバネは、固定端112より軸芯方向に螺旋状に延在している。固定端112は、台座(図示せず)に、接着剤やはんだなどを用いて固定されている。また、コイルバネの自由端113には、真鍮などなら構成された錘114が固定されている。圧電単結晶体111の分極軸とコイルバネの伸縮方向(軸芯方向)とは同一とされている。圧電単結晶体111がLiTaO3またはLiNbO3から構成されている場合、圧電単結晶体111のZ軸とコイルバネの伸縮方向とは同一とされていることになる。軸芯方向に振動が加わると、コイルバネが軸芯方向に伸縮するように振動する。
【0025】
また、振動発電素子101は、図3の断面図に示すように、圧電単結晶体111の分極軸の-面(LiTaO3の場合-Z軸面)に形成された第1電極131と、圧電単結晶体111の分極軸の+面(LiTaO3の場合+Z軸面)に形成された第2電極132とを備える。第1電極131および第2電極132は、コイルバネの軸芯方向に圧電単結晶体111を挟んで設けられている。また、第1電極131および第2電極132は、コイルバネとした圧電単結晶体111の全域に設けられている。第1電極131および第2電極132は、例えば、厚さ0.4μmに形成する。なお、LiNbO3の場合も同様である。
【0026】
各電極は、電荷回収のために設けられている。電極は、少なくとも1つ設けられている。電極は、圧電分極軸方向に概略垂直となる面に形成されていることが最もよい。また、各電極は、例えば、真空成膜装置を用いて堆積したAgやCuなどの金属から構成することができる。また、電極は、複数の金属による多層構造金属とすることもできる。また、電極は、導電ペーストなどの導電体から構成することもできる。
【0027】
また、コイルバネとしている圧電単結晶体111の、コイルバネの軸芯を通る平面に平行な面の断面における圧電単結晶体111の結晶方位,組成,物理特性などの結晶状態は、振動発電素子101の発電領域において同一(一定)とされている。発電領域は、振動発電素子101の実質的に発電に寄与する領域である。発電領域は、振動発電素子101の全域であってもよく、振動発電素子101の一部であってもよい。例えば、振動発電素子101のコイルバネの基点となる固定端112や終点となる自由端113などの両端部は、結晶の方位が、発電領域と異なっていてもよい。
【0028】
上記構成とした圧電単結晶体111による螺旋構造(コイルバネ)は、マイクロ引き下げ法により育成することで形成することができる。マイクロ引き下げ法は、坩堝の下端に設けられたダイから溶融した材料を徐々に引き下げることにより、結晶育成を行う結晶育成法である。通常は、下方に引き下げるのみであるが、引き下げ方向を3次元的に制御することで、コイルバネのような螺旋構造を得ることができる。育成した圧電単結晶体111による螺旋構造の断面は、ダイの形状を変えることで、矩形や丸あるいは楕円など任意の形状を得ることができる。螺旋構造を形成する別の方法として、棒状の単結晶体をNCマシンやレーザー加工などを用いて形成することもできる。圧電単結晶体111の分極方向は、コイルバネの軸芯方向と平行に設定するが、必要に応じて変更することも可能である。
【0029】
一般に単結晶材料は、X,Y,Zで表される結晶軸を有している。コイルバネとした圧電単結晶体111では、螺旋構造のどの部分をとっても、結晶軸がほぼ同じ方向を向いている。これは、種結晶を引き下げ方向に徐々に引き下げつつ、引き下げ方向に垂直な面内で円を描くように種結晶を移動することにより螺旋構造を形成するため、螺旋構造の任意の位置の結晶軸は、種結晶の結晶軸と一致するためである。なお、種結晶を移動する際に、自転する運動を加えることにより、螺旋構造の任意の位置における結晶軸を変化させることも可能である。
【0030】
振動発電素子101の固有振動数と近い周期の振動が加わると共振が生じ、振動発電素子101が大きく振動する。固有振動数は、コイルバネとした圧電単結晶体111の材料や断面の寸法、コイルバネの螺旋径、螺旋のピッチ、ターン数により決定される。さらに錘114を付加することにより、コイルバネに加わる力が大きくなり、振動発電素子101は、より大きな振動を得ることができる。
【0031】
振動発電素子101は圧電単結晶体111から構成されているため、逆圧電効果により振動発電素子101に生じた歪等により、圧電単結晶体111に表面電荷が発生する。発生した電荷は、第1電極131,第2電極132により回収される。発生した起電力は、交流となるため、例えば、所定の整流回路を介して接続される蓄電回路に蓄積可能である。このようにして蓄えられる電力は、所定のタイミングで、必要な回路に供給することができる。
【0032】
圧電単結晶体111のコイルバネの作製について、より具体的な数字を用いて説明する。マイクロ引き下げ法によりLiTaO3からなる圧電単結晶体111によるコイルバネを育成する。螺旋の半径は1.5cm、ターン数は8ターンで、ピッチは1cmである。コイルバネの固定端112を所定の台座上にエポキシ樹脂系の接着剤を用いて固定し、自由端113には真鍮製の重さ5gの錘114を、接着剤を用いて固定する。
【0033】
なお、圧電単結晶体は、LiTaO3に限らず、LiNbO3、KNbO3、ランガサイト系圧電体、単結晶セラミックスなどの単結晶圧電材料を用いることができる。
【0034】
放射部102は、掃引回路121,出力回路122,アンテナ123を有し、掃引回路121により設定されている範囲で周波数を掃引し、出力回路122,アンテナ123により振動発電素子101に電磁波を放射する。例えば、放射部102は、900MHz帯において、予め分かっている振動発電素子101の共振周波数の決定値を中心に周波数を、所定の周波数間隔で掃引しながら振動発電素子101に電磁波を放射する。また、放射部102は、複数の周波数の電磁波を、所定の時間間隔で放射する。放射された電磁波は、振動発電素子101で受信され、例えば、振動発電素子101の共振周波数920MHzを中心波長として受信された電磁波が再励起され、振動発電素子101から放射される。
【0035】
受信部103は、放射部102から電磁波を放射したときに、振動発電素子101から放射される電磁波を受信する。受信部103は、放射部102が上述した電磁波の放射をした後、受信動作を開始する。例えば、放射部102が、1つの周波数の電磁波を放射したあと、受信部103は受信動作を開始し、放射部102が次の周波数の電磁波を放射する前に、受信部103は受信動作を停止する。受信部103は、上述した受信動作の開始と停止とを、放射部102による電磁波の放射間隔にあわせ、放射部102が全ての周波数の電磁波の放射を終了するまで行う。
【0036】
振動発電素子101は、共振周波数の電磁波を受けると、所定の時間が経過してから電磁波を放射する。したがって、上述したように、放射部102が、所定の時間の間隔で各々異なる周波数の電磁波を放射する中で、共振周波数の電磁波が放射されると、この電磁波は、次の周波数の電磁波が放射部102より放射されるまでの間に、受信部103で受信される。
【0037】
検知部104は、受信部103が受信した電磁波のなかで最も高い強度の電磁波の周波数を検知する。算出部105は、検知部104が検知した周波数を元に、振動発電素子101が受けた物理量を求める。
【0038】
例えば、温度が変化すると、振動発電素子101の共振周波数が変化する。この変化が、検知部104で検知される周波数の変化として現れる。このようにして検知された振動発電素子101の共振周波数を元に、振動発電素子101が配置されている箇所の温度を求めることができる。したがって、この測定装置は、振動発電素子101が受けた物理量として、温度を測定することができる。
【0039】
上述した実施の形態1の測定装置は、振動発電素子101が受けた物理量を、振動発電素子101に電力を供給するとなく、かつ非接触(ワイヤレス)で求めることができ、IoT関連技術に適用することができる。このように、実施の形態1によれば、放射部から設定されている範囲で掃引される周波数の電磁波を放射して、この電磁波を受けて振動する振動発電素子から放射される電磁波の強度が最も高くなる周波数を検知して、振動発電素子の共振周波数を元に振動発電素子が置かれた環境に関する物理量を求めるようにしたので、振動発電素子の共振周波数の変化から温度、圧力、加速度などの物理量を測定することができ、IoT関連技術に適用させることができる。
【0040】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る測定装置について、図4を参照して説明する。この測定装置は、振動発電素子101、放射部102、受信部103、検知部104、および算出部105を備える。これらは、実施の形態1と同様である。実施の形態2では、振動発電素子101に電気的に接続し、振動発電素子101で発生した電荷を蓄積するコンデンサ106を備える。コンデンサ106は、振動発電素子101の第1電極131、第2電極132に接続される。
【0041】
振動発電素子101が、振動発電素子101の機械的な共振周波数の振動を受け付けると、歪が生じる、この歪による逆圧電効果により表面電荷が発生する(発電する)。発生した電荷は、第1電極131,第2電極132により回収される。なお、振動発電素子101の振動による発電の電力は、交流となるため、コンデンサ106は、整流回路107を介し、振動発電素子101の第1電極131、第2電極132に接続される。
【0042】
例えば、検知用の電磁波周波数と大きく異なる400Hz近傍の機械振動に共振するように振動発電素子101を形成する。このように形成した振動発電素子101を、モータなどの振動を発生する振動構造物に固定する。振動構造物がおよそ400Hzの周波数で振動すると、前述したように、振動発電素子101は発電し、コンデンサ106に電荷が蓄積される。振動発電素子101は、コンデンサ106に蓄積された電荷により、共振周波数が変化する。
【0043】
上述した振動発電素子101の共振周波数の変化は、前述した実施の形態1と同様に、放射部102から放射された電磁波を受信した振動発電素子101より放射され、受信部103で受信された電磁波より、検知部104で検知される。このようにして検知された共振周波数の変化を元に、算出部105が、振動発電素子101が受けた物理量である振動の大きさを求める。
【0044】
このように、実施の形態2によれば、振動構造物の振動状況を、ワイヤレスで監視することができる。例えば、算出部105が求める振動の大きさについて、予め正常と判断できる範囲を設定しておけば、算出部105が求める振動の大きさが、正常と判断できる範囲を逸脱した場合、振動構造物に異常が発生しているものと判断できる。また、この異常の判断が、振動構造物から離れた箇所で行える。なお、コンデンサ106に蓄積された電荷が一定量を超えたら放電する回路を接続することが可能である。また、コンデンサ106に蓄積された電荷が一定量に達すると、振動発電素子101に、コンデンサ106以外の負荷素子が、さらに接続される機構を設けるようにしてもよい。
【0045】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る測定装置について、図5を参照して説明する。この測定装置は、振動発電素子101、放射部102、受信部103、検知部104、算出部105、およびコンデンサ106を備える。これらは、前述した実施の形態2と同様である。実施の形態3では、電荷が蓄積されたコンデンサ106を電源として駆動し、物理量を検知する計測部108と、計測部108が検知(計測)した物理量に対応して振動発電素子101に接続される負荷抵抗および負荷容量の少なくとも一方を変更する負荷変更部109とをさらに備える。
【0046】
計測部108は、例えば、圧力を測定する。負荷変更部109は、計測部108が測定した圧力の変化に対応し、振動発電素子101に接続される負荷抵抗を変更する。振動発電素子101は、接続される負荷抵抗が変更されると、この変更に伴って共振周波数が変化する。
【0047】
上述した振動発電素子101の共振周波数の変化は、前述した実施の形態1と同様に、放射部102から放射された電磁波を受信した振動発電素子101より放射され、受信部103で受信された電磁波より、検知部104で検知される。このようにして検知された共振周波数の変化を元に、算出部105が、計測部108が測定した圧力の大きさを求める。このように、実施の形態3によれば、計測部108を用いることで、振動発電素子101が受ける物理量以外の物理量の変化を、ワイヤレスで求めることができる。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、振動発電素子の共振周波数の変化を、放射部から放射された電磁波を受信した振動発電素子より放射され、受信部で受信された電磁波より検知部で検知するので、小型の振動発電素子を用いた温度、圧力、加速度などの物理量の測定を、IoT関連技術に適用させることができる
【0049】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0050】
101…振動発電素子、102…放射部、103…受信部、104…検知部、105…算出部。
図1
図2
図3
図4
図5