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特許7165955連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法
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  • 特許-連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/124 20060101AFI20221028BHJP
   B22D 11/22 20060101ALI20221028BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B22D11/124 N
B22D11/124 L
B22D11/22 B
B22D46/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022007366
(22)【出願日】2022-01-20
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】202110489207.X
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516265780
【氏名又は名称】北京科技大学
(73)【特許権者】
【識別番号】522028065
【氏名又は名称】湖南華菱湘潭鋼鉄有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】劉青
(72)【発明者】
【氏名】韓延申
(72)【発明者】
【氏名】張江山
(72)【発明者】
【氏名】曾凡政
(72)【発明者】
【氏名】陳軍
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-193253(JP,A)
【文献】特開平04-220150(JP,A)
【文献】特開2008-100249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法であって、
二次冷却帯の各領域の冷却水量を取得し、連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを用いて、二次冷却帯の各領域の冷却水量に対応する二次冷却帯の各領域の温度と空冷領域の温度を得るステップS1と、
二次冷却帯の各領域の温度に基づいて二次冷却帯の各領域の温度回復速度を得るとともに、空冷領域の温度に基づいて空冷領域の温度回復速度を得るステップS2と、
最小二乗法により二次冷却帯の各領域の冷却水量と二次冷却帯の各領域の温度回復速度又は空冷領域の温度回復速度とのフィッティング関係を確立するステップS3であって、具体的には、
(式中、Ri+1は二次冷却帯の第i+1領域の温度回復速度を表し、単位は℃/mであり、
Rkは空冷領域の温度回復速度を表し、単位は℃/mであり、
Wiは二次冷却帯の第i領域の冷却水量を表し、単位はm/hであり、iは、二次冷却帯の各領域を表す正の整数であり、i=1、2、3、…、nであり、i=1は二次冷却帯の最初の領域であり、i=nは二次冷却帯の最後の領域であり、
kは空冷領域を示し、ai、bi、ciはいずれも定数係数である。)
を含むステップ3と、
二次冷却帯の各領域のターゲット温度回復速度と空冷領域のターゲット温度回復速度とに基づいて、S3で確立されたフィッティング関係を用いて、二次冷却帯の各領域のターゲット冷却水量を算出するステップS4とを含み、
前記S1は、具体的には、
二次冷却帯の各領域の冷却水量を取得し、空冷領域の運転パラメータを収集するステップS11と、
連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを作成し、二次冷却帯の各領域の冷却水量及び空冷領域の運転パラメータに基づいて連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを補正するステップS12と、
補正された連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを用いて、二次冷却帯の各領域の温度と空冷領域の温度とを算出するステップS13とを含み、前記空冷領域の運転パラメータは空冷領域の鋳造鋳片の表面温度であり、
前記S13における連続鋳造鋳片の凝固熱伝達数学モデルの作成は、具体的には、
二次冷却帯の各領域の幅方向の水量分布を測定し、水量分布結果を取得するステップS131と、
水量分布の結果に基づいて、連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを作成するステップS132とを含み、
連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルは水量分布の結果を二次冷却帯の各領域の境界条件とする、
ことを特徴とする二次冷却水量配分方法。
【請求項2】
前記二次冷却帯の各領域の冷却水量は、二次冷却帯の各領域の初期水量を基にして所定の割合で複数回調整して得られる複数組の冷却水量を含むことを特徴とする請求項に記載の二次冷却水量配分方法。
【請求項3】
毎回の調整の割合が15%~25%であることを特徴とする請求項に記載の二次冷却水量配分方法。
【請求項4】
前記二次冷却帯の各領域にのターゲット温度回復速度及び前記空冷領域のターゲット温度回復速度は全て99℃/m以上、100℃/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の二次冷却水量配分方法。
【請求項5】
前記二次冷却帯の各領域のターゲット温度回復速度及び前記空冷領域のターゲット温度回復速度は全て99.5℃/m以上、100℃/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の二次冷却水量配分方法。
【請求項6】
フットローラ領域の初期水量÷二次冷却帯の各領域の初期水量の和×前記S4における二次冷却帯の各領域により求められる冷却水量の和であるフットローラ領域の水量を設定するステップS5をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の二次冷却水量配分方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造鋳片の品質管理の技術分野に関し、特に、連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実際の連続鋳造の二次冷却過程では、二次冷却帯の各領域の水量の違いにより、鋳片表面に温度回復が発生し、この温度回復は鋳片内部の品質に重要な影響を与える。鋳片の表面温度回復速度が100℃/mを超えると、鋳片の中間割れの発生確率が大幅に増加する。したがって、鋳片の表面温度回復速度を100℃/m未満にすることは、中間割れを制御するための重要な手段である。
【0003】
従来技術で提案されている冶金連続鋳造用冷却水のインテリジェント制御方法では、生産経験データベースに基づいて与えられた前記温度場計算モデルの初期パラメータに基づいて、一次冷却鋳片の表面目標温度、二次冷却鋳片の表面目標温度から一次冷却目標水量と二次冷却の各領域の目標水量を逆算して、鋳造機による生産に用いるステップ(c)と、鋳造機により生産するに際して、鋳型の水量、入口と出口の温度、鋳型の銅板の厚さ、引き抜き速度、鋼種、ブレークアウト予測システムの熱電対によって測定された銅板の表面温度、鋳型のテーパ、鋳型の出口の鋳片の表面温度;及び二次冷却の各領域の水量、水温、環境温度、二次冷却の各領域の圧縮空気量、二次冷却の各領域に設置した温度監視装置から戻ってきた鋳片のリアルタイム表面温度を含む各データを監視し、算出された前記一次冷却鋳片の表面の算出温度が一次冷却鋳片の表面の実際温度と等しくなるように、前記温度場計算モデル中の各パラメータを前記データに基づいて調整して最適化するステップ(d)と、パラメータが調整、最適化された前記温度場計算モデルを鋳造機による生産に適用し、最適化された前記温度場計算モデル、前記一次冷却鋳片の表面目標温度、前記二次冷却鋳片の表面目標温度に基づいて、最適化された一次冷却目標水量及び最適化された二次冷却の各領域の目標水量を算出するステップ(e)と、前記一次冷却鋳片の表面実際温度が益々前記一次冷却鋳片の表面目標温度に近づき、前記二次冷却鋳片の表面実際温度が益々前記二次冷却鋳片の表面目標温度に近づくように、ステップ(d)とステップ(e)とを交互に繰り返すステップ(f)とを含む。この方法では、二次冷却帯の各領域の水量を決定する際に、主に鋳片の表面温度に注目し、鋳片の表面温度回復速度を考慮していないため、この方法を用いる場合、鋳片の表面温度回復速度が過大になり、中間割れが発生する可能性がある。また、この方法では、多くの反復算出が必要であり、人件費や時間コストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に存在する上記問題に対し、本発明は、二次冷却水量の制御精度を向上させ、連続鋳造鋳片の中間割れの発生を抑制するために、連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0006】
連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法であって、
二次冷却帯の各領域の冷却水量を取得し、連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを用いて、二次冷却帯の各領域の冷却水量に対応する二次冷却帯の各領域の温度と空冷領域の温度を得るステップS1と、
二次冷却帯の各領域の温度に基づいて二次冷却帯の各領域の温度回復速度を得るとともに、空冷領域の温度に基づいて空冷領域の温度回復速度を得るステップS2と、
二次冷却帯の各領域の冷却水量と二次冷却帯の各領域の温度回復速度又は空冷領域の温度回復速度とのフィッティング関係を確立するステップS3と、
二次冷却帯の各領域のターゲット温度回復速度と空冷領域のターゲット温度回復速度とに基づいて、S3で確立されたフィッティング関係を用いて、二次冷却帯の各領域により求められる冷却水量を算出するステップS4とを含む。
【0007】
さらに、前記S1は、具体的には、
二次冷却帯の各領域の冷却水量を取得し、空冷領域の運転パラメータを収集するステップS11と、
連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを作成し、二次冷却帯の各領域の冷却水量及び空冷領域の運転パラメータに基づいて連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを補正するステップS12と、
補正された連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを用いて、二次冷却帯の各領域の温度と空冷領域の温度とを算出するステップS13とを含む。
【0008】
さらに、前記二次冷却帯の各領域の冷却水量は、二次冷却帯の各領域の初期水量を基にして所定の割合で複数回調整して得られる複数組の冷却水量を含む。
【0009】
さらに、毎回の調整の割合が15%~25%である。
【0010】
さらに、前記S13における連続鋳造鋳片の凝固熱伝達数学モデルの作成は、具体的には、
二次冷却帯の各領域の水量分布を測定し、水量分布結果を取得するステップS131と、
水量分布の結果に基づいて、連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを作成するステップS132とを含み、
連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルは水量分布の結果を二次冷却帯の各領域の境界条件とする。
【0011】
さらに、前記二次冷却帯の各領域のターゲット温度回復速度及び前記空冷領域のターゲット温度回復速度は全て99℃/m以上、100℃/m以下である。
【0012】
さらに、前記二次冷却帯の各領域のターゲット温度回復速度及び前記空冷領域のターゲット温度回復速度は全て99.5℃/m以上、100℃/m以下である。
【0013】
さらに、前記S3におけるフィッティング関係は、最小二乗法フィッティングにより得られる。
【0014】
さらに、前記S3におけるフィッティング関係は、具体的には、以下を含む。
【0015】
【数1】
【0016】
さらに、前記方法は、
フットローラ領域の初期水量÷二次冷却帯の各領域の初期水量の和×前記S4における二次冷却帯の各領域により求められる冷却水量の和であるフットローラ領域の水量を設定するステップS5をさらに含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の連続鋳造鋳片の表面温度制御に基づく二次冷却水量の最適化方法は、従来技術と比較して、次のような利点を有する。
【0018】
たくさんの実験において、本発明の技術的解決手段に基づいて、連続鋳造中に二次冷却の各領域及び空冷領域の温度回復速度に著しい影響を与える要素は、この領域のメニスカスに近い側の隣接領域の冷却水量であることを見出し、これに基づいて、本発明は、二次冷却領域の第i領域の冷却水量が第i+1領域の温度回復速度に与える影響の「冷却水量 温度回復速度のフィッティング関係」、及び二次冷却領域の終末領域の冷却水量が空冷領域の温度回復速度に与える影響の「冷却水量 温度回復速度のフィッティング関係」を確立し、これに基づいて二次冷却領域の各領域の水量を正確に設定する。
【0019】
本発明は、二次冷却帯の各領域の水量と鋳片の表面温度回復速度との間の影響の法則を発見し、「冷却水量 温度回復速度のフィッティング関係」を確立することにより、鋳片の表面温度回復速度を正確に制御することを可能とする。
【0020】
各領域の温度回復速度を100℃以内に抑えると、温度回復速度が高くなるにつれて、連続鋳造鋳片の表面割れの発生率が大幅に低減され、本発明の「冷却水量 温度回復速度のフィッティング関係」に基づいて、二次冷却帯の各領域及び空冷却帯の鋳片の表面温度回復速度に対する制御精度は1%以内、さらに0.5%以内に達し、それにより、二次冷却帯の各領域及び空冷帯により求められる回復速度の初期獲得範囲を99℃/m以上、100℃/m以下、さらに好ましくは99.5℃/m、100℃/m以下とすることが可能となり、さらに連続鋳片の表面割れの発生率を0.5%以内とすることが可能となる。
【0021】
明細書の図面は、本発明の更なる理解を提供するために使用され、本発明の一部を構成し、本発明の概略的な実施例及びその説明は、本発明を説明するために使用され、本発明を不適切に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例における連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却最適化方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例における鋳片の表面温度の測定結果と算出結果の比較である。
図3】本発明の実施例における異なる二次冷却帯2領域の水量の場合の空冷領域での鋳片の表面温度回復速度である。
図4】本発明の実施例における異なる二次冷却帯1領域の水量の場合の二次冷却帯2領域での鋳片の表面温度回復速度である。
図5】本発明の実施例における最適化前後の鋳片の表面温度回復速度である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここでは、例示的な実施例を詳細に説明し、その一例を図面に示す。以下の説明が図面に関連する場合、異なる図面における同じ数字は、別に表示がない限り、同一又は類似の要素を表す。以下の例示的な実施例に説明される実施形態は、本発明と一致する全ての実施形態を表すものではない。むしろ、それらは、添付の特許請求の範囲に詳述されている本発明のいくつかの局面に合致する装置及び方法の一例にすぎない。
【0024】
本発明の明細書及び特許請求の範囲における用語「第1」、「第2」などは、類似の対象を区別するために使用されるものであり、特定の順序又は順番を説明するものではない。このように使用されるデータは、ここで記載された本発明の実施例が、例えば、ここで図示又は記載されたもの以外の順序で実施され得るように、適切な場合に交換されてもよいことが理解されるべきである。さらに、用語「含む」及び「有する」、ならびにそれらの変形は、排他的でない包含をカバーすることを意図しており、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品、又は機器は、明示的に記載されたステップ又はユニットに限定されるのではなく、明示的に記載されていない、又はこれらのプロセス、方法、製品、又は機器に固有の他のステップ又はユニットを含んでもよい。複数の場合は、2つ以上を含む。
【0025】
なお、及び/又はについては、本発明で使用される用語「及び/又は」は、単に関連対象を説明する関連関係であり、3つの関係が存在し得ることを意味する。例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在する場合、AとBが同時に存在する場合、Bが単独で存在する場合の3つを表す。
【0026】
連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法は、次のステップ1)~ステップ4)を含む。
【0027】
1)二次冷却帯の各領域の冷却水量Wを取得し、連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルに基づいて、二次冷却帯の各領域の各点の温度Tij及び空冷領域の各点の温度Tkjを算出し、ここで、Wは二次冷却帯の第i領域の冷却水量であり、Tijは二次冷却帯の第i領域の、鋳型のメニスカスからの距離がjである位置の温度であり、Tkjは空冷領域の、鋳型のメニスカスからの距離がjである位置の温度である。
【0028】
2)ステップ1)で取得された二次冷却帯の各領域と空冷領域の温度とに基づいて、各領域の温度回復速度R、Rを算出し、ここで、Rは二次冷却帯の第i領域の温度回復速度、Rは空冷領域の温度回復速度である。
【0029】
3)ステップ1)の二次冷却帯の各領域の冷却水量W及びステップ2)で取得された二次冷却帯の各領域の温度回復速度R、空冷領域の温度回復速度Rから、二次冷却帯の第i領域の冷却水量が第i+1領域の温度回復速度値に与える影響の「冷却水量-温度回復速度値のフィッティング関係」及び二次冷却帯の終末領域の冷却水量が空冷領域の温度回復速度値に与える影響の「冷却水量-温度回復速度値のフィッティング関係」を確立する。
【0030】
4)二次冷却領域の各領域及び空冷領域のターゲット温度回復速度値Rui、Rukを取得し、ステップ3)の「冷却水量 温度回復速度値のフィッティング関係」により、二次冷却領域の各領域により求められる冷却水量Wuiをそれぞれ算出する。
【0031】
任意選択に、ステップ1)は、二次冷却帯の各領域の冷却水量Wを取得した後、冷却水量に対応する空冷領域の温度Tsjを取得し、次にW、Tsj、及び鋳型メニスカスからの距離jの値を用いて、連続鋳片の凝固伝熱数学モデルを補正し、ここで、Tsjは、空冷領域の鋳片表面の中心の、鋳型メニスカスからの距離がjである位置の温度をセンサで測定したものである。
【0032】
任意選択に、連続鋳片の凝固伝熱数学モデルは、二次冷却帯の水量の横方向分布を考慮する。
【0033】
任意選択に、二次冷却帯の各領域の冷却水量Wを取得することは、具体的には、連続鋳造鋳片の初期二次冷却帯の各領域の推奨配水量の0.1~0.2倍を基準として取得し、増加率に従って調整した1組の水量を取得することである。
【0034】
任意選択に、増加率は、(15~25)%×推奨配水量であってもよい。
【0035】
任意選択に、二次冷却領域の各領域及び空冷領域のターゲット温度回復速度値Rui、Rukはいずれも99℃/m以上、100℃/m以下である。
【0036】
任意選択に、二次冷却領域の各領域及び空冷領域のターゲット温度回復速度値Rui、Rukはいずれも99.5℃/m以上、100℃/m以下である。
【0037】
任意選択に、冷却水量の温度回復速度のフィッティング関係は、最小二乗法を用いて確立される。
【0038】
任意選択に、方法は、ステップ4)で得られた二次冷却帯の各領域により求められる冷却水量の和(ΣWui)×(連続鋳造鋳片の初期フットロール領域の推薦水量÷二次冷却帯の各領域の推薦配水量の和)であるフットロール領域の水量を設定するステップをさらに含む。
【実施例
【0039】
連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法のフローチャートを図1に示す。
【0040】
以下、具体的な実施例を用いて、ある製鉄所で連続鋳造により生産された82B鋼を例として本特許についてさらに説明し、82B鋼の主要な化学成分は表1に示され、82B鋼の主要な連続鋳造プロセスのパラメータは表2に示される。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
二次冷却水の横方向分布を考慮して連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを作成し、鋳片の表面温度測定によりモデルを補正する。連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルをより良好に補正するために、鋳片の引抜き方向及び幅方向の表面温度を同時に測定する。その中でも、引抜き方向における温度の測定は鋳片の表面の中心で行われ、合計4つの位置を測定し、幅方向における温度の測定はメニスカスから5.20m離れた5箇所で行われる。図2に測定温度と算出温度の比較を示す。誤差の許容範囲内では、測定温度と算出温度が良好に一致していることがわかり、作成された連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルが高い精度を有していることが示されている。
【0044】
二次冷却帯2領域の水量を初期水量の0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6倍に調整し、補正した連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを用いて鋳片の表面温度を算出し、そして異なる二次冷却帯2領域の水量の場合の空冷領域での鋳片の表面温度回復速度を分析し、図3に示す。最小二乗法を用いて、二次冷却帯2領域の水量と空冷領域の鋳片の表面温度回復速度とをフィッティングし、二次冷却帯2領域の水量が空冷領域の鋳片の表面温度回復速度に与える影響の「冷却水量 温度回復速度のフィッティング関係」を得る。
【0045】
【数2】
【0046】
式中、Rは空冷領域の温度回復速度(℃/m)を表し、Wは二次冷却帯2領域の水量(m/h)を表す。
【0047】
式1に基づいて、求められる温度回復速度99℃/mを代入して二次冷却帯2領域の水量を得た結果、2.93m/hであり、これは最適化された二次冷却帯2領域の水量である。
【0048】
二次冷却帯1領域の水量を初期水量の0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6倍に調整し、補正した連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを用いて鋳片の表面温度を算出し、異なる二次冷却帯1領域の水量の場合の二次冷却帯2領域の鋳片の表面温度回復速度を分析し、図4に示す。最小二乗法を用いて、二次冷却帯1領域の水量と二次冷却帯2領域の鋳片の表面温度回復速度をフィッティングし、二次冷却帯1領域の冷却水量が二次冷却帯2領域の温度回復速度に与える影響の「冷却水量-温度回復速度のフィッティング関係」を得る。
【0049】
【数3】
【0050】
式中、Rは二次冷却帯2領域の温度回復速度(℃/m)を表し、Wは二次冷却帯1領域の水量(m/h)を表す。
【0051】
式2に基づいて、求められる温度回復速度99℃/mを代入して二次冷却帯1領域の水量を得た結果、8.22m/hであり、これは最適化された二次冷却帯1領域の水量である。
【0052】
初期プロセスでは、フィードローラ領域の水量の割合を29.0%とし、この割合を維持し、上記で決定した二次冷却帯1領域の水量と二次冷却帯2領域の水量とから、フットローラ領域の水量を4.56m/hと決定する。
【0053】
本特許に記載された方法を用いて二次冷却帯の各領域の水量を最適化した後、フットロール領域、二次冷却帯1領域及び二次冷却帯2領域の水量はそれぞれ4.56、8.22及び2.93m/hであり、連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを用いて最適化前後の鋳片の表面温度回復速度を分析すると、図5に示すようになる。最適化前の鋳片の表面温度回復速度は高く、二次冷却帯2領域と空冷領域でそれぞれ116.1℃/mと160.0℃/mであることがわかり、最適化後、二次冷却帯2領域と空冷領域の鋳片の表面温度回復速度は100℃/m以内に制御され、それぞれ99.0℃/mと99.7℃/mであり、検出の結果、連続鋳片の中間割れ率は0.5%である。
【0054】
上述した本発明の実施例の番号は単なる説明であり、実施例の優劣を表すものではない。
【0055】
本発明の実施例は、図面を参照して説明されたが、本発明は、上述した具体的な実施形態に限定されるものではなく、上記の具体的な実施形態は単なる概略的なものであり、限定的なものではなく、当業者は、本発明の示唆の下で、本発明の目的及び請求項によって保護される範囲を逸脱することなく、多くの形態を行うことができ、これらは全て本発明の保護範囲に属する。
【要約】      (修正有)
【課題】二次冷却水量の制御精度を向上させ連続鋳造鋳片の中間割れの発生を抑制するために、連続鋳造鋳片の表面温度回復制御に基づく二次冷却水量配分方法を提供する。
【解決手段】連続鋳造鋳片の凝固伝熱数学モデルを用いて、二次冷却帯の各領域の冷却水量に対応する二次冷却帯の各領域の温度と空冷領域の温度を得るステップと、二次冷却帯の各領域の温度に基づいて二次冷却帯の各領域の温度回復速度を得るとともに空冷領域の温度に基づいて空冷領域の温度回復速度を得るステップと、二次冷却帯の各領域の冷却水量と二次冷却帯の各領域の温度回復速度又は空冷領域の温度回復速度とのフィッティング関係を確立するステップと、二次冷却帯の各領域により求められる温度回復速度と空冷領域により求められる温度回復速度とに基づいて、前ステップで確立されたフィッティング関係を用いて二次冷却帯の各領域により求められる冷却水量を算出するステップとを含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5