(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】ねじ締結部材の着脱用工具及びソケット用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
B25B 23/08 20060101AFI20221028BHJP
B25B 23/02 20060101ALI20221028BHJP
B25B 23/12 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B25B23/08
B25B23/02 B
B25B23/12
(21)【出願番号】P 2022540349
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007414
【審査請求日】2022-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517033296
【氏名又は名称】ヒューマニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302062894
【氏名又は名称】株式会社ペック協会
(73)【特許権者】
【識別番号】522257816
【氏名又は名称】株式会社ファミリー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀江 耕太
(72)【発明者】
【氏名】山田 日登志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-006429(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0211411(US,A1)
【文献】実開昭55-107967(JP,U)
【文献】実公昭49-015359(JP,Y1)
【文献】特開2012-006120(JP,A)
【文献】特開2002-144250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B23/00-23/18
B23P19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部材に対して螺合されるねじ締結部材の着脱を行うように構成される、ねじ締結部材の着脱用工具であって、
筒状のソケットと、
前記ソケットに挿入され、前記ソケットに対してトルクを伝達する軸部を有するアタッチメントと、を備えており、
前記ソケットは、先端面と、基端面と、前記先端面に開口する収容孔と、前記基端面に開口するとともに前記収容孔に連通する連通孔と、を有しており、
前記軸部は、前記連通孔に挿通され、前記連通孔の内周面に対して前記トルクを伝達する第1伝達面が設けられた外周面を有しており、
前記収容孔は、前記ねじ締結部材に対して前記トルクを伝達するように構成される第2伝達面が設けられた内周面を有しており、
前記収容孔は、前記
ソケットの軸線方向において複数の前記ねじ締結部材を一列にて収容可能な収容空間を構成しており、
前記軸部の先端には、前記収容空間に収容されている前記ねじ締結部材に当接するように構成される当接部が設けられている、
ねじ締結部材の着脱用工具。
【請求項2】
前記アタッチメントの基端には、レンチの出力部が着脱自在に連結されるように構成される連結部が設けられている、
請求項1に記載のねじ締結部材の着脱用工具。
【請求項3】
前記軸部の外周面には、複数の目印が前記軸部の軸線方向において互いに間隔をあけて設けられている、
請求項1または請求項2に記載のねじ締結部材の着脱用工具。
【請求項4】
前記ソケット及び前記当接部の少なくとも一方には、前記ねじ締結部材を磁気吸着するように構成される磁気吸着部が設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のねじ締結部材の着脱用工具。
【請求項5】
筒状のソケットとレンチの出力部との間に介在して使用されることで、前記レンチのトルクを前記ソケットに伝達する、ソケット用アタッチメントであって、前記ソケットは、ねじ部材に対するナットの着脱を行うように構成され、前記ソケットは、先端面と、基端面と、前記先端面に開口するとともに複数の前記ナットを一列にて収容可能に構成された収容孔と、前記基端面に開口するとともに前記収容孔に連通する連通孔と、を有し、前記ソケット用アタッチメントは、
前記出力部が着脱自在に連結されるように構成される連結部と、
前記
ソケットの軸線方向に沿って前記連結部から延設され、前記連通孔に挿通されることで前記連通孔の内周面に対して前記トルクを伝達するように構成される軸部と、
前記軸部の先端に設けられ、前記ソケットの内部に収容されている前記ナットに当接可能な当接部と、を有している、
ソケット用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ねじ締結部材の着脱用工具及びソケット用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のタイヤを交換する際には、ソケットが装着されたインパクトレンチあるいはボックスレンチなどの工具を用いて、ナットの取り外し作業及び取り付け作業が行われる。
【0003】
ソケットは、1つのナットのみが収容可能である。このため、ナットの取り外し作業において、作業者は、取り外されたナットをソケットから取り出した後に、次のナットの取り外しを行う。また、ナットの取り付け作業において、作業者は、ソケットに1つのナットを装填した状態で当該ナットを取り付けた後に、ソケットに次のナットを装填する。このため、ナットの取り外し作業及び取り付け作業が煩雑である。
【0004】
特許文献1には、筒状本体とソケットとを備える自動車のホイルナット用レンチが開示されている。
筒状本体は、複数のホイルナットを収容可能な長さを有している。筒状本体の先端には、ホイルナットが嵌合される嵌合部が設けられている。筒状本体の内部において嵌合部よりも基端側には、ホイルナットが遊動可能な径を有するホイルナット収容部が設けられている。
【0005】
ソケットは、筒状本体の基端部に対して着脱自在に嵌合される。ソケットは、筒状本体の基端部に嵌合されている状態においてホイルナット収容部を閉塞するとともに筒状本体と一体に回動する。また、ソケットの基端部には、電動工具の出力部が接続される接続部が設けられている。
【0006】
特許文献1に開示のホイルナット用レンチによれば、作業者は、取り外されたナットがホイルナット収容部内に収容された状態のまま、次のナットの取り外しを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示のホイルナット用レンチの場合、ナットの取り外し作業を効率的に行うことができるものの、ナットの取り付け作業については効率的に行うことが難しい。
【0009】
なお、こうした問題は、ナットの着脱を行う工具に限定されるものではなく、ボルトの着脱を行う工具においても同様にして生じる。
本開示の目的は、ねじ締結部材の着脱を効率的に行うことができるねじ締結部材の着脱用工具及びソケット用アタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためのねじ締結部材の着脱用工具は、ねじ部材に対して螺合されるねじ締結部材の着脱を行うように構成される、ねじ締結部材の着脱用工具であって、筒状のソケットと、前記ソケットに挿入され、前記ソケットに対してトルクを伝達する軸部を有するアタッチメントと、を備えており、前記ソケットは、先端面と、基端面と、前記先端面に開口する収容孔と、前記基端面に開口するとともに前記収容孔に連通する連通孔と、を有しており、前記軸部は、前記連通孔に挿通され、前記連通孔の内周面に対して前記トルクを伝達する第1伝達面が設けられた外周面を有しており、前記収容孔は、前記ねじ締結部材に対して前記トルクを伝達するように構成される第2伝達面が設けられた内周面を有しており、前記収容孔は、前記ソケットの軸線方向において複数の前記ねじ締結部材を一列にて収容可能な収容空間を構成しており、前記軸部の先端には、前記収容空間に収容されている前記ねじ締結部材に当接するように構成される当接部が設けられている。
【0011】
同構成によれば、軸部の軸線を中心にアタッチメントを回転させると、アタッチメントを回転させるトルクが、軸部を介してソケットの連通孔の内周面に対して伝達される。そして、ソケットを回転させるトルクが、ナットやボルトなどのねじ締結部材に対して伝達される。
【0012】
これにより、ねじ部材に螺合されているねじ締結部材を反時計回りに回転させることでねじ締結部材を取り外すことができる。
ここで、1つ目のねじ締結部材を取り外す際には、使用者は、ソケットの先端面とアタッチメントの当接部との間の間隔が当該ねじ締結部材の1つ分の長さと略等しくなるようにソケットに対するアタッチメントの位置を調節しておく。
【0013】
2つ目のねじ締結部材を取り外す際には、使用者は、ソケットの先端面とアタッチメントの当接部との間の間隔が当該ねじ締結部材の2つ分の長さと略等しくなるようにソケットに対するアタッチメントの位置を調節しておく。
【0014】
このように、使用者は、ねじ締結部材の取り外しに先立ち、ソケット内部の収容空間に収容されるねじ締結部材の数に応じてソケットに対するアタッチメントの位置を調節しておく。
【0015】
上記構成によれば、ソケット内部の収容空間に複数のねじ締結部材を一列にて収容可能である。このため、取り外されたねじ締結部材をソケットから取り出すことなく、ソケットに収容した状態のまま2つ目以降のねじ締結部材の取り外しを行うことができる。
【0016】
一方、ねじ締結部材を時計回りに回転させることで、ねじ部材に対してねじ締結部材を取り付けることができる。
上述したように、ソケット内部の収容空間に複数のねじ締結部材を一列にて収容可能であるため、複数のねじ締結部材を収容空間に収容しておくことで、ねじ締結部材をソケットに都度装填する手間を省くことができる。
【0017】
このとき、使用者は、ねじ締結部材の取り付けに先立ち、ソケット内部の収容空間に収容されるねじ締結部材の数に応じてソケットに対するアタッチメントの位置を調節しておく。
【0018】
このように、上記構成によれば、複数のねじ締結部材を連続して着脱することができるので、ねじ締結部材の着脱を効率的に行うことができる。
上記ねじ締結部材の着脱用工具において、前記アタッチメントの基端には、レンチの出力部が着脱自在に連結されるように構成される連結部が設けられていることが好ましい。
【0019】
同構成によれば、レンチの出力部からアタッチメントに対してトルクが伝達される。これにより、アタッチメント及びソケットを大きなトルクで容易に回転させることができる。したがって、ねじ締結部材の着脱を一層効率的に行うことができる。
【0020】
上記ねじ締結部材の着脱用工具において、前記軸部の外周面には、複数の目印が前記軸部の軸線方向において互いに間隔をあけて設けられていることが好ましい。
同構成によれば、使用者は、軸部の外周面に設けられた目印を目視することでソケットの基端面からの軸部の突出長さ、すなわちソケット内部に収容されているねじ締結部材の数を容易に把握することができる。
【0021】
上記ねじ締結部材の着脱用工具において、前記ソケット及び前記当接部の少なくとも一方には、前記ねじ締結部材を磁気吸着するように構成される磁気吸着部が設けられていることが好ましい。
【0022】
同構成によれば、磁気吸着部の磁力によってソケット内部に収容されているねじ締結部材が磁気吸着される。このため、例えばソケットの先端面を下に向けたときなどにねじ締結部材がソケットから落下することを抑制できる。
【0023】
また、上記課題を解決するためのソケット用アタッチメントは、筒状のソケットとレンチの出力部との間に介在して使用されることで、前記レンチのトルクを前記ソケットに伝達する、ソケット用アタッチメントであって、前記ソケットは、ねじ部材に対するナットの着脱を行うように構成され、前記ソケットは、先端面と、基端面と、前記先端面に開口するとともに複数の前記ナットを一列にて収容可能に構成された収容孔と、前記基端面に開口するとともに前記収容孔に連通する連通孔と、を有し、前記ソケット用アタッチメントは、前記出力部が着脱自在に連結されるように構成される連結部と、前記ソケットの軸線方向に沿って前記連結部から延設され、前記連通孔に挿通されることで前記連通孔の内周面に対して前記トルクを伝達するように構成される軸部と、前記軸部の先端に設けられ、前記ソケットの内部に収容されている前記ナットに当接可能な当接部と、を有している。
【0024】
同構成によれば、レンチの出力軸からのトルクが連結部を介してアタッチメントに伝達されることで、アタッチメントが回転する。そして、アタッチメントを回転させるトルクが、軸部を介してソケットの連通孔の内周面に対して伝達される。そして、ソケットを回転させるトルクが、ナットに対して伝達される。
【0025】
これにより、ねじ部材に螺合されているナットを反時計回りに回転させることで、ナットを取り外すことができる。
ここで、1つ目のナットを取り外す際には、使用者は、ソケットの先端面とアタッチメントの当接部との間の間隔が当該ナットの1つ分の長さと略等しくなるようにソケットに対するアタッチメントの位置を調節しておく。
【0026】
2つ目のナットを取り外す際には、使用者は、ソケットの先端面とアタッチメントの当接部との間の間隔が当該ナットの2つ分の長さと略等しくなるようにソケットに対するアタッチメントの位置を調節しておく。
【0027】
上記構成によれば、ソケット内部の収容空間に複数のナットを一列にて収容可能である。このため、取り外されたナットをソケットから都度取り出すことなく、ソケットに収容した状態のまま2つ目以降のナットの取り外しを行うことができる。
【0028】
このように、使用者は、ナットの取り外しに先立ち、ソケット内部の収容空間に収容されるナットの数に応じてソケットに対するアタッチメントの位置を調節しておく。
一方、ナットを時計回りに回転させることで、ねじ部材に対してナットを取り付けることができる。
【0029】
上述したように、上記構成によれば、ソケット内部の収容空間に複数のナットを一列にて収容可能である。このため、複数のナットを収容空間に収容しておくことで、ナットをソケットに都度装填する手間を省くことができる。
【0030】
このとき、使用者は、ナットの取り付けに先立ち、ソケット内部の収容空間に収容されるナットの数に応じてソケットに対するアタッチメントの位置を調節しておく。
このように、上記構成によれば、複数のナットを連続して着脱することができるので、ナットの着脱を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ねじ締結部材の着脱を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、一実施形態の着脱用工具を構成するソケット及びアタッチメントの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1のアタッチメント本体の基端面の正面図である。
【
図9】
図9は、変形例の着脱用工具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、
図1~
図8を参照して、ねじ締結部材の着脱用工具及びソケット用アタッチメントの一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、ねじ締結部材の着脱用工具(以下、工具10と称する)は、ねじ部材に対して螺合されるねじ締結部材(いずれも図示略)の着脱を行う。本実施形態のねじ締結部材は、金属製のナット80である。ナット80の外周面の断面形状は、略正六角形である(
図7A~
図8B参照)。
【0034】
工具10は、筒状のソケット20と、ソケット20に挿入され、ソケット20に対してトルクを伝達する軸部32を有するアタッチメント30とを備えている。
次に、工具10の各構成について詳細に説明する。
【0035】
<ソケット20>
図1及び
図2に示すように、ソケット20は、例えば円形の断面形状を有する。ソケット20は、先端面21及び基端面22を有している。ソケット20は、先端面21に開口する収容孔23と、基端面22に開口するとともに収容孔23に連通する連通孔24を有している。
【0036】
図1~
図3に示すように、収容孔23の断面形状は、ソケット20の軸線を中心とする正六角形である。収容孔23の内周面には、ナット80に対してトルクを伝達する第2伝達面23aが設けられている。
【0037】
収容孔23は、上記ソケット20の軸線方向において複数のナット80を一列にて収容可能な収容空間Sを構成している。収容空間Sは、例えば5つのナット80が一列にて収容可能な長さを有している。
【0038】
図2~
図4に示すように、連通孔24の断面形状は、ソケット20の軸線を中心とする正方形である。
ソケット20は、例えば金属製である。
【0039】
<アタッチメント30>
図1、
図2、
図7A、及び
図7Bに示すように、アタッチメント30は、ソケット20とレンチ90の出力部91との間に介在して使用されることで、レンチ90のトルクをソケット20に伝達する。なお、レンチ90は、例えば電動式のインパクトレンチである。出力部91は、例えば四角柱状である。出力部91の断面形状は、出力部91の軸線を中心とする略正方形である。出力部91は、出力部91の軸線を中心に回転駆動される。
【0040】
図1、
図2に示すように、アタッチメント本体30Aと、当接部材33とを備えている。アタッチメント本体30A及び当接部材30は、例えば金属製である。
アタッチメント本体30Aは、連結部31と軸部32とを有している。
【0041】
連結部31は、アタッチメント本体30Aの基端に位置している。連結部31は、例えば円筒状である。連結部31は、例えばソケット20と同一の外径を有している。なお、連結部31の外径は、ソケット20の外径と異なっていてもよい。
【0042】
連結部31の基端面には、レンチ90の出力部91が着脱自在に連結される凹部31aが開口している。
図6に示すように、凹部31aの断面形状は、軸部32の軸線を中心とする正方形である。
【0043】
図1及び
図2に示すように、軸部32は、連結部31の先端面から延設されている。軸部32は、連結部31と同一軸線上に設けられている。
軸部32は、ソケット20の連通孔24に挿通されている。軸部32の外周面には、連通孔24の内周面に対してトルクを伝達する第1伝達面32aが設けられている。
【0044】
軸部32は、例えば四角柱状である。軸部32の断面形状は、例えばソケット20の軸線を中心とする正方形である。この場合、軸部32の外周面は、4つの面により構成されている。第1伝達面32aは、上記4つの面により構成されている。軸部32の断面の一辺の長さは、連通孔24の断面の一辺の長さよりも僅かに小さい。
【0045】
図2に示すように、軸部32は、軸部32の軸線方向において軸部32を貫通する中心孔32bを有している。中心孔32bは、凹部31aの底面に開口している。中心孔32bの先端部には、雌ねじ部32cが設けられている。
【0046】
図1及び
図5Aに示すように、軸部32の外周面には、複数の目印40が軸部32の軸線方向において互いに間隔をあけて設けられている。
複数の目印40は、例えばアラビア数字「2」,「3」,「4」,「5」を表示する数字部41と、互いに隣り合う数字部41同士の間に位置し、軸部32の周方向に沿って延在する線部42とにより構成されている。
【0047】
数字部41を構成する「2」,「3」,「4」,「5」は、軸部32の基端側から順に設けられている。数字部41は、例えば軸部32の外周面を構成する1つの面に設けられている。
【0048】
線部42は、例えば軸部32の外周面の全周にわたって延在している。
目印40は、軸部32の外周面に凹設されていることが好ましい。
図1及び
図2に示すように、当接部材33は、当接部33aとねじ軸33bとを有している。
【0049】
当接部33aは、例えば円板状である。当接部33aの外径は、ソケット20の収容孔23の内周面に干渉しない大きさである。
ねじ軸33bは、当接部33aの基端面の中心から突出している。ねじ軸33bは、当接部33aと一体に形成されている。
【0050】
当接部33aの先端面には、ナット80を磁気吸着する磁気吸着部34が設けられている。磁気吸着部34は、当接部33aの先端面を磁化することにより構成されている。
図2に示すように、軸部32の雌ねじ部32cに対してねじ軸33bが螺入されることで、軸部32の先端に当接部33aが設けられている。当接部33aの先端面は、収容空間Sに収容されているナット80に当接可能である。
【0051】
図5Bに示すように、軸部32の外周面には、複数の突起32dが軸部32の軸線方向において互いに間隔をあけて設けられている。突起32dは、互いに隣り合う線部42同士の間に位置している。突起32dは、軸部32の外周面を構成する1つの面に設けられている。突起32dは、外周面のうち数字部41が設けられている面とは異なる面に設けられている。
【0052】
複数の突起32dの1つがソケット20の連通孔24の内周面に対して押し付けられている。このことにより、アタッチメント30からソケット20が自重によって抜け落ちることが規制されている。
【0053】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図7Aに示すように、レンチ90の出力部91からのトルクが連結部31を介してアタッチメント30に伝達されることでアタッチメント30が回転する。そして、アタッチメント30を回転させるトルクが、軸部32を介してソケット20の連通孔24の内周面に対して伝達される。そして、ソケット20を回転させるトルクが、ナット80に対して伝達される。
【0054】
これにより、ねじ部材に螺合されているナット80を反時計回りに回転させることで、ナット80を取り外すことができる。
ここで、1つ目のナット80を取り外す際には、使用者は、ソケット20の先端面21とアタッチメント30の当接部33aとの間の間隔が当該ナット80の1つ分の長さと略等しくなるようにソケット20に対するアタッチメント30の位置を調節しておく。
【0055】
図7Bに示すように、2つ目のナット80を取り外す際には、使用者は、ソケット20の先端面21とアタッチメント30の当接部33aとの間の間隔が当該ナット80の2つ分の長さと略等しくなるようにソケット20に対するアタッチメント30の位置を調節しておく。
【0056】
このとき、
図8Aに示すように、使用者は、軸部32の外周面に設けられた目印40を目視することでソケット20の基端面22からの軸部32の突出長さ、すなわちソケット20内部に収容されているナット80の数を容易に把握することができる。詳しくは、使用者は、数字部41の「2」を目視することでナット80の数が2つであることを把握できる。また、使用者は、「2」に対して先端側に隣り合う線部42がソケット20の基端面22と一致するように軸部32の突出長さを調節する。
【0057】
図8Bに示すように、3つ目のナット80を取り外す際には、使用者は、ソケット20の先端面21とアタッチメント30の当接部33aとの間の間隔が当該ナット80の3つ分の長さと略等しくなるようにソケット20に対するアタッチメント30の位置を調節しておく。
【0058】
このとき、使用者は、軸部32の外周面に設けられた目印40を目視することでソケット20の基端面22からの軸部32の突出長さ、すなわちソケット20内部に収容されているナット80の数を容易に把握することができる。詳しくは、使用者は、数字部41の「3」を目視することでナット80の数が3つであることを把握できる。また、使用者は、「3」に対して先端側に隣り合う線部42がソケット20の基端面22と一致するように軸部32の突出長さを調節する。
【0059】
このように、使用者は、ナット80の取り外しに先立ち、ソケット20内部の収容空間Sに収容されるナット80の数に応じてソケット20に対するアタッチメント30の位置を調節しておく。
【0060】
本実施形態の工具10によれば、ソケット20内部の収容空間Sに複数のナット80を一列にて収容可能である。このため、取り外されたナット80をソケット20から取り出すことなく、ソケット20に収容した状態のまま2つ目以降のナット80の取り外しを行うことができる。
【0061】
一方、ナット80を時計回りに回転させることで、ねじ部材に対してナット80を取り付けることができる。なお、ねじ部材に対してナット80を取り付ける際、ねじ部材に対してナット80が斜めに噛むことでねじ山が切れるおそれがある。このため、こうした不都合を回避するために、ねじ部材に対してナット80が正規の姿勢で噛み合うまでは、工具10単体を手動で回転させるようにすることが好ましい。
【0062】
上述したように、本実施形態の工具10によれば、ソケット20内部の収容空間Sに複数のナット80を一列にて収容可能である。このため、複数のナット80を収容空間Sに収容しておくことで、ナット80をソケット20に都度装填する手間を省くことができる。
【0063】
このとき、使用者は、ナット80の取り付けに先立ち、ソケット20内部の収容空間Sに収容されるナット80の数に応じてソケット20に対するアタッチメント30の位置を調節しておく。
【0064】
このように、本実施形態の工具10によれば、複数のナット80を連続して着脱することができるので、ナット80の着脱を効率的に行うことができる。
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0065】
(1)工具10は、ソケット20とアタッチメント30とを備えている。ソケット20は、先端面21及び基端面22と、収容孔23と、連通孔24とを有している。軸部32は、連通孔24に挿通され、連通孔24の内周面に対してトルクを伝達する第1伝達面32aが設けられた外周面を有している。収容孔23は、ナット80に対してトルクを伝達する第2伝達面23aが設けられた内周面を有している。収容孔23は、ソケット20の軸線方向において複数のナット80を一列にて収容可能な収容空間Sを構成している。軸部32の先端には、収容空間Sに収容されているナット80に当接する当接部33aが設けられている。
【0066】
こうした構成によれば、上述した作用を奏するため、ナット80の着脱を効率的に行うことができる。
(2)アタッチメント30の基端には、レンチ90の出力部91が着脱自在に連結される連結部31が設けられている。
【0067】
こうした構成によれば、レンチ90の出力部91からアタッチメント30に対してトルクが伝達される。これにより、アタッチメント30及びソケット20を大きなトルクで容易に回転させることができる。したがって、ナット80の着脱を一層効率的に行うことができる。
【0068】
(3)軸部32の外周面には、複数の目印40が軸部32の軸線方向において互いに間隔をあけて設けられている。
こうした構成によれば、使用者は、軸部32の外周面に設けられた目印40を目視することでソケット20の基端面22からの軸部32の突出長さ、すなわちソケット20内部に収容されているナット80の数を容易に把握することができる。
【0069】
(4)当接部33aには、磁石34が設けられている。
こうした構成によれば、磁石34の磁力によってソケット20内部に収容されているナット80が磁気吸着される。このため、例えばソケット20の先端面21を下に向けたときなどにナット80がソケット20から落下することを抑制できる。
【0070】
(5)アタッチメント30は、出力部91が着脱自在に連結される連結部31と、連結部31から延設され、連通孔24に挿通されることで連通孔24の内周面に対してトルクを伝達する軸部32とを有している。また、アタッチメント30は、軸部32の先端に設けられ、ソケット20の内部に収容されているナット80に当接可能な当接部33aを有している。
【0071】
(6)軸部32は、連通孔24に挿通され、連通孔24の内周面に対してトルクを伝達する第1伝達面32aを有している。このため、軸部32のトルクをソケット20に伝達する上で、ソケット20の外周面の形状が制約を受けない。したがって、ソケット20の外周面の形状の自由度を高めることができる。
【0072】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0073】
・当接部33aに代えて、あるいは加えて、ソケット20に磁気吸着部34を設けるようにしてもよい。また、磁気吸着部34は、当接部33aなどを磁化することにより構成されるものに限定されない。当接部33aの先端面及びソケット20の収容孔23の内周面の少なくとも一方に磁気吸着部34として磁石を設けるようにしてもよい。
【0074】
・磁気吸着部34を省略することもできる。この場合、収容孔23の先端部の内周面に、ナット80を係止する係止球を設けるようにしてもよい。この場合、係止球は、ソケット20の周方向において互いに間隔をあけて複数配置されることが好ましい。
【0075】
・数字部41及び線部42のいずれか一方を省略することもできる。
・目印40を省略することもできる。
・レンチ90として、エア駆動式のインパクトレンチを用いることもできる。また、ラチェットレンチなどの手動のレンチを用いることもできる。レンチ90を用いない場合には、連結部31の凹部31aを省略することもできる。
【0076】
・連通孔24の断面形状は、ソケット20の軸線を中心とする正方形に限定されず、正六角形など他の多角形であってもよい。この場合、軸部32の断面形状は、連通孔24の断面形状に合わせて変更すればよい。
【0077】
・
図9に示すように、連結部31の外周面に細かな凹凸形状が設けられていてもよい。この場合、使用者が連結部31を把持して工具10単体を手動で回転させる際に、手の滑り止めができる。
【0078】
・アタッチメント本体30A及び当接部材30は、硬質樹脂製であってもよい。
・ソケット20は、硬質樹脂製であってもよい。
・ねじ締結部材は、ナット80に限定されず、ボルトであってもよい。
【0079】
・本明細書において使用される「筒状」という用語は、周壁を有する任意の構造を指しうる。「筒状」という用語は、例えば、円形、楕円形、及び鋭い又は丸い角を持つ多角形、の断面形状を有する任意の構造を指しうるが、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0080】
10…工具
20…ソケット
21…先端面
22…基端面
23…収容孔
23a…第2伝達面
24…連通孔
30…アタッチメント
30A…アタッチメント本体
31…連結部
31a…凹部
32…軸部
32a…第2伝達面
32b…中心孔
32c…雌ねじ部
32d…突起
33…当接部材
33a…当接部
33b…ねじ軸
34…磁気吸着部
40…目印
41…数字部
42…線部
80…ナット(ねじ締結部材)
90…レンチ
91…出力軸
【要約】
工具(10)は、ソケット(20)と、ソケット(20)に対してトルクを伝達する軸部(32)を有するアタッチメント(30)とを備えている。ソケット(20)は、先端面(21)と、基端面(22)と、先端面(21)に開口する収容孔(23)と、基端面(22)に開口するとともに収容孔(23)に連通する連通孔(24)とを有している。軸部(32)は、連通孔(24)の内周面に対してトルクを伝達する第1伝達面(32a)が設けられた外周面を有している。収容孔(23)は、ねじ締結部材に対してトルクを伝達する第2伝達面(23a)が設けられた内周面を有している。収容孔(23)は、軸線方向において複数のねじ締結部材を一列にて収容可能な収容空間(S)を構成している。軸部(32)の先端には、収容空間(S)に収容されているねじ締結部材に当接する当接部(33a)が設けられている。