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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】車両間情報共有方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20221028BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/123 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018158554
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020035012
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】中内 清秀
(72)【発明者】
【氏名】荘司 洋三
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-112426(JP,A)
【文献】特開2016-218895(JP,A)
【文献】特開2015-103047(JP,A)
【文献】特開2016-218894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客を載せて目的地へ移送する道路走行用の車両に搭載される情報共有装置を介して、乗車する蓋然性が高いと考えられる見込み乗客の情報を他の車両との間で共有する車両間情報共有方法であって、
前記見込み乗客を発見することに伴って、乗客発見車両の前記情報共有装置から乗客発見情報を送信する乗客発見情報送信ステップと、
前記乗客発見情報を乗客情報として受信した車両の前記情報共有装置が、前記見込み乗客の発見場所への対応が可能と考えられる車両の条件として予め定めた乗客情報提示条件を満たすとき、前記乗客情報に基づき、前記見込み乗客がいる可能性の高い推定ピックアップエリアを提示する乗客情報提示ステップと、
を含み、
前記乗客発見情報には、少なくとも、乗客発見時刻における車両の位置である第1位置情報と、乗客発見時刻から任意の時刻Δt経過後における車両の位置である第2位置情報と、乗客発見車両の進行方向に対して前記見込み乗客を発見した方向である乗客発見方向情報を含ませておき、
前記乗客情報提示ステップでは、少なくとも前記第1位置情報と前記第2位置情報と前記乗客発見方向情報を用いて前記推定ピックアップエリアを特定し、可視表示することを特徴とする車両間情報共有方法。
【請求項2】
前記乗客発見情報送信ステップでは、車両に乗車する者が前記情報共有装置を操作したときに、前記見込み乗客の発見と判断することを特徴とする請求項1に記載の車両間情報共有方法。
【請求項3】
前記乗客発見情報送信ステップでは、前記情報共有装置内に設けられた人工知能が、少なくとも車両進行方向の左右片側を含む車外映像に対する映像処理を行うことで、前記見込み乗客を発見するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車両間情報共有方法。
【請求項4】
前記乗客発見情報送信ステップにおいて、1回目の前記乗客発見情報を送信した後、予め定めたインターバルタイムが経過する毎に、前記乗客発見情報を改めて送信することを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両間情報共有方法。
【請求項5】
前記乗客発見情報送信ステップでは、前記情報共有装置が備える通信ネットワークを介して、各種情報の収集管理を行う管理サーバへ前記乗客発見情報を送信し、
前記管理サーバの通信ネットワークを介して、少なくとも前記乗客情報提示条件を満たす可能性の高い位置に居る車両の前記情報共有装置へ前記乗客発見情報を送信し、
前記管理サーバからの前記乗客発見情報を前記乗客情報として受信した車両の前記情報共有装置は、自車両が前記乗客情報提示条件を満たす場合にのみ、該乗客情報に基づき、前記乗客情報提示ステップを行うことを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両間情報共有方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客を載せて目的地へ移送する道路走行用の車両に搭載される情報共有装置を介して、乗車する蓋然性が高いと考えられる見込み乗客の情報を他の車両との間で共有する車両間情報共有方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客を乗せて、客が望む目的地まで移送する車両(タクシー等)においては、利用場所や時間等に応じたタクシーと乗客とのマッチングが重要である。タクシーと乗客のマッチングは、主に、(1)配車センターや配車アプリ等による配車、(2)タクシー乗り場での順番待ちによる乗車、(3)空車走行中の偶然的な乗客発見による乗車、の3種類に区分される。
【0003】
タクシー配車を効率化するため、顧客からの連絡を受けた配車センターにおいて、複数の配車エリアを管理する配車サーバにより適当な車両を抽出し、オペレータが選定した車両を待機場所へ向かわせる配車システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。そのほか、利用客の利便性が良くなるように、スマートフォン向けの配車アプリも提供されている。このように、配車の需要側と供給側の両面で効率化を図り、配車効率を向上させる取り組みが進んでいる。
【0004】
また、タクシー乗り場での順番待ちによる乗車を効率化するため、駅に隣接するタクシー乗り場での待ち時間を所定の演算式により推定し、この推定値を待ち時間指標として電車内装置に表示するタクシー待ち表示方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。このように、電車を降りる前にタクシー待ちの指標時間を乗客に知らせれば、乗客が降りる駅を変えるなどして、タクシー乗り場の分散化を図れることとなり、タクシー待ち時間を効率的に短縮化できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6313608号公報
【文献】特開2004-347863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、配車センターからの指示による配車やタクシー乗り場での乗客待ちは、確実な実車につながる一方で、実車までの待ち時間が読めないという欠点がある。実車までの待ち時間が長いと、タクシーの収益性が損なわれてしまう。このため、タクシーの乗務員は、依然としてタクシー乗り場以外の場所での偶然的な乗客発見にも頼らざるを得ない状況である。にもかかわらず、空車走行中の偶発的な乗客発見による乗車については、好適なマッチング方法などが提案されていない。
【0007】
よって、タクシーの乗務員は、勘と経験から乗客の発見可能性が高いと思われる幹線道路や独自のルートを通って乗客を探すこととなるが、空車のまま延々と走り続けるような時もあり、到底、効率的とはいえない。加えて、迎車中や実車中のタクシーの乗務員が、タクシー乗り場以外の場所で見込み乗客(タクシーの利用を期待してタクシーを探していると思われる者)を発見しても、その見込み乗客を実車につなげることができない。このような利益機会損失は、少なからず生じていると考えられるので、見込み乗客を実車につなげることができれば、タクシー会社等のグループ全体としての利益拡大に貢献できる可能性が高い。
【0008】
そこで、本発明は、迎車中や実車中のタクシーといった乗客を乗せることができない車両が走行中に見込み乗客を発見したとき、この情報を他の車両と直接共有することで、見込み乗客を実車につなげる可能性を高めることができる車両間情報共有方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、乗客を載せて目的地へ移送する道路走行用の車両に搭載される情報共有装置を介して、乗車する蓋然性が高いと考えられる見込み乗客の情報を他の車両との間で共有する車両間情報共有方法であって、見込み乗客を発見することに伴って、乗客発見車両の情報共有装置から乗客発見情報を送信する乗客発見情報送信ステップと、前記乗客発見情報を乗客情報として受信した車両の情報共有装置が、前記見込み乗客の発見場所への対応が可能と考えられる車両の条件として予め定めた乗客情報提示条件を満たすとき、前記乗客情報に基づき、見込み乗客がいる可能性の高い推定ピックアップエリアを提示する乗客情報提示ステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の車両間情報共有方法において、前記乗客発見情報送信ステップでは、車両に乗車する者が情報共有装置を操作したときに、見込み乗客の発見と判断することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載の車両間情報共有方法において、前記乗客発見情報送信ステップでは、情報共有装置内に設けられた人工知能が、少なくとも車両進行方向の左右片側を含む車外映像に対する映像処理を行うことで、見込み乗客を発見するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両間情報共有方法において、前記乗客発見情報には、少なくとも、乗客発見時刻における車両の位置である第1位置情報と、乗客発見時刻から任意の時刻Δt経過後における車両の位置である第2位置情報と、乗客発見車両の進行方向に対して見込み乗客を発見した方向である乗客発見方向情報を含ませておき、前記乗客情報提示ステップでは、少なくとも第1位置情報と第2位置情報と乗客発見方向情報を用いて推定ピックアップエリアを特定し、可視表示することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、前記請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両間情報共有方法において、前記乗客発見情報送信ステップににおいて、1回目の乗客発見情報を送信した後、予め定めたインターバルタイムが経過する毎に、乗客発見情報を改めて送信することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、前記請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両間情報共有方法において、前記乗客発見情報送信ステップでは、前記情報共有装置が備える通信ネットワークを介して、各種情報の収集管理を行う管理サーバへ乗客発見情報を送信し、前記管理サーバの通信ネットワークを介して、少なくとも前記乗客情報提示条件を満たす可能性の高い位置に居る車両の情報共有装置へ乗客発見情報を送信し、前記管理サーバからの乗客発見情報を乗客情報として受信した車両の情報共有装置は、自車両が乗客情報提示条件を満たす場合にのみ、該乗客情報に基づき、見込み乗客がいる可能性の高い推定ピックアップエリアを提示する乗客情報提示ステップを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車両間情報共有方法によれば、見込み乗客を実車につなげる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車両間情報共有方法を適用した車両間情報共有システムの実施形態を示す概略構成図である。
図2図2Aは、見込み乗客を発見した車両に搭載された車載端末装置のタッチパネルにおける表示画面のイメージ図である。図2Bは、乗客情報を受信した車両に搭載された車載端末装置のタッチパネルにおける表示画面のイメージ図である。
図3】各車両に搭載する斜視端末装置の概略構成図である。
図4】乗客発見情報発信側の車載端末装置と乗客発見情報受信側の車載端末装置との間で行われる動作状態の遷移を示した状態遷移図である。
図5】乗客発見情報発信側の車載端末装置で行う乗客発見情報の登録処理を示すフローチャートである。
図6図6Aは、進行方向左側に見込み乗客を発見したときに描画される推定ピックアップエリアのイメージ図である。図6Bは、進行方向右側に見込み乗客を発見したときに描画される推定ピックアップエリアのイメージ図である。
図7】乗客発見情報発信側の車載端末装置で行う乗客発見情報の送信処理を示すフローチャートである。
図8】乗客発見ビーコンの送信タイミング説明図である。
図9】乗客発見情報受信側の車載端末装置で行う乗客発見情報の受信処理を示すフローチャートである。
図10】乗客発見情報受信側の車載端末装置で行う乗客情報登録データベースの更新処理を示すフローチャートである。
図11】時間経過に伴う推定ピックアップエリアの表示更新説明図である。
図12】乗客発見ビーコンの送信可能範囲よりも共有サービスエリアが広い場合にも対応可能な車両間情報共有システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面に基づいて、車両間情報共有方法をタクシー間における乗客情報の共有サービスに適用した実施形態につき説明する。
【0018】
図1において、タクシー1A~1Dは、乗客を載せて目的地へ移送する道路走行用の業務車両であり、各タクシー1A~1Dには、情報共有装置としての車載端末装置2A~2Dがそれぞれ搭載されており、乗務員によって表示情報を視認したり指先で操作したりできる。なお、車載端末装置2(以下、搭載車両を特に区別する必要が無いときは、単に車載端末装置2という。タクシー1も同様。)は、乗客情報共有サービスにだけ使用する専用装置として構成する必要は無い。例えば、市販されているタブレット端末等に専用のアプリを導入し、アプリ内で適切な設定を行うことにより、車載端末装置2として機能するようにしても良い。或いは、タクシー1に標準で搭載されているナビゲーション装置に、車載端末装置2の機能を組み込むことで、ナビゲーション装置と一体の構成としても良い。
【0019】
ここで、タクシー1Aの乗務員が見込み乗客P(手を上げる等の挙動からタクシー1に乗車する蓋然性が高いと考えられる者)を発見したとき、空車であれば、そのまま見込み乗客Pを乗せて、収益につなげることができる。一方、タクシー1Aが実車、配車、回送等の実車につなげられない状態では、見込み乗客Pを乗せることができない。しかしながら、タクシー1Aの乗務員が車載端末装置2Aを操作して、乗客発見情報を送信することにより、他のタクシー1B~1Dと乗客情報(乗客発見情報に基づいて特定できる見込み乗客Pに関する情報)を共有するのである。斯くすれば、見込み乗客Pの発見場所から遠くない道路を走っている空車のタクシー1の乗務員が、乗客情報に反応して速やかに対処できるので、見込み乗客Pのピックアップへつなげることができる。
【0020】
乗客発見情報の送信元であるタクシー1Aの車載端末装置2Aは、例えば、タッチパネル式の表示器を備え、図2Aに示すような表示画面21が表示されている。表示画面21には、少なくとも、自車の走行位置・走行方向が分かるように周辺エリアを表示するマップ表示部211が表示される。この表示画面21には、見込み乗客Pを進行方向左側で見つけたときに操作する左発見ボタン212、および見込み乗客Pを進行方向右側で見つけたときに操作する右発見ボタン213が表示され、画面タッチによる迅速な操作が可能である。
【0021】
そのほか、表示画面21には、周辺車両へボタン214、乗客ピックアップボタン215、実績確認ボタン216も設けてある。周辺車両へボタン214は、任意のタイミングで乗客発見情報を送信し、見込み乗客Pのピックアップに適していると思われる車両へ乗客情報を明示したい場合等に用いる。乗客ピックアップボタン215は、乗客発見情報の受信側で、乗客情報に該当する見込み乗客Pを乗せたときに操作する。見込み乗客Pの発見が実車につながった実績等を確認するときに操作する。なお、ボタン群は表示画面21内に表示せず、表示装置のベゼル等に設けた物理的なスイッチで構成しても良い。
【0022】
図1において、乗客発見車両であるタクシー1Aの乗務員は、進行方向左側に見込み乗客Pを発見したので、車載端末装置2Aで左発見ボタン212を操作する。この操作を契機として、車載端末装置2では、乗客発見情報の登録と乗客情報の送信を行う。乗客発見情報としては、少なくとも、当該乗客発見情報を他の乗客発見情報と識別するための情報IDと、見込み乗客Pがいる可能性の高い推定ピックアップエリアを特定できる推定ピックアップエリア特定情報を含ませておく。また、乗客情報の送信タイミングは、特に限定されず、左発見ボタン212あるいは右発見ボタン213が操作されたタイミングで、推定ピックアップエリア特定情報が揃っていれば、左発見ボタン212あるいは右発見ボタン213の操作と同時に送信しても良い。本実施形態では、後述するように、推定ピックアップエリア特定情報の取得に時間経過を要するので、推定ピックアップエリア特定情報を取得できたタイミングで、乗客発見情報を不特定多数の車載端末装置2に向けて送信(フラッディング)することとした。
【0023】
乗客発見車両の車載端末装置2Aは、乗客情報共有サービスで使う通信方式(例えば、マルチホップが可能なWi-SUN(登録商標)方式)で送信される。その通信可能範囲CR内に存在しているタクシー1B~1Dは、タクシー1Aからの乗客発見情報を受信することができる。しかしながら、見込み乗客Pが発見された場所まで向かうことが到底現実的ではない車両(例えば、最も遠距離にいるタクシー1D)に乗客情報を共有させても、有効に活用できる可能性は低い。そこで、見込み乗客Pの発見場所への対応が可能と考えられる車両の条件として予め定めた乗客情報提示条件を満たす空間的範囲として共有サービスエリアSSを設定し、共有サービスエリアSS外にいるタクシー1Dには乗客情報を共有させないものとする。斯くすれば、共有サービスエリアSS内にいるタクシー1B,1Cの車載端末装置2B、2Cのみ乗客情報を乗務員に提示し、見込み乗客Pに関する情報を共有させることが可能になると共に、共有サービスエリアSS外にいるタクシー1Dの車載端末装置2Dには乗客情報が提示されず、乗客情報提示条件を満たさない車両の乗務員にまで乗客情報を共有させることを防げる。乗客情報提示条件は、見込み乗客を発見したタクシー1Aの位置を基準とした一定の空間的範囲に限定されるものではなく、見込み乗客Pの発見時からの経過時間を乗客情報提示条件とし、一定時間を経過した乗客発見情報に基づく乗客情報の提示を行わせないようにしても良い。また、見込み乗客Pの発見時からの時間経過に伴って、空間的な範囲を動的に変化(例えば、発見時から長時間経過した場合には、対応可能な車両の範囲を絞り込むように変化)させても良い。あるいは、時間経過に伴って移動して行くタクシー1Aの位置を基準とせずに、見込み乗客Pの発見位置(乗客発見情報から推定可能な位置)を基準とする空間的範囲を乗客情報提示条件としても良いし、これら複数の乗客情報提示条件を組み合わせて、乗客情報の共有対象となる車両を絞り込むようにしても良い。
【0024】
なお、車載端末装置2の通信可能範囲CRを、乗客情報提示条件を満たす共有サービスエリアSSと一致させることは、到底現実的では無い。そこで、乗客発見情報を受信した車載端末装置2が、自車両の位置から共有サービスエリアSS内か共有サービスエリアSS外かを判断し、乗客発見情報に基づく乗客情報を表示するか表示しないかの制御を行う。このとき、共有サービスエリアSSを特定するための情報は、乗客発見車両の車載端末装置2が送信する乗客発見情報に含ませて送信しても良いし、全ての車載端末装置2に予め記憶させておいても良い。いずれにしても、共有サービスエリアSS内にいる車両の車載端末装置2(図1では、車載端末装置2B,2C)にだけ乗客情報を表示させ、共有サービスエリアSS外にいる車両の車載端末装置2(図1では、車載端末装置2D)には乗客情報を表示させない制御を実現できれば良い。
【0025】
共有サービスエリアSS内にいるタクシー2B、2Cの車載端末装置2B,2Cには、図2Bに示すような表示画面21が表示されている。車載端末装置2自体は共通であるから、表示画面21には、マップ表示部211、左発見ボタン212、右発見ボタン213、周辺車両へボタン214、乗客ピックアップボタン215、実績確認ボタン216が表示される。さらに、マップ表示部211には、受信した乗客発見情報に基づき特定した推定ピックアップエリアEPが表示されており、見込み乗客Pのピックアップに向かうかどうか、乗務員が判断し易いようになっている。
【0026】
推定ピックアップエリアEPの表示方法は特に限定されず、見込み乗客Pがタクシーを探しながら移動していることを加味して可視化した存在可能性の範囲を表示できれば、円形でも四角形でも多角形でも良い。しかしながら、本実施形態のように、乗客発見車両の乗務員が左右どちら側で発見したか(左発見ボタン212を押したか、右発見ボタン213を押したか)に応じて、進行方向に対して左側もしくは右側だけを推定ピックアップエリアEPとする表示手法は非常に有用である。すなわち、見込み乗客Pが道路のどちら側にいるかを知ることができれば、どちら向きに走って推定ピックアップエリアEPへ向かえば、見込み乗客Pをピックアップできるかを瞬時に判断できるからである。たとえ、現在の位置から推定ピックアップエリアEPまで近距離であっても、走行方向を変えるために回り道をしなければならないようなら、ほかの車両に任せた方が良い場合もあるので、見込み乗客Pが道路のどちら側にいるかは、乗務員の判断に資する有用な情報となる。
【0027】
次に、乗客発見情報の送信側としても受信側としても機能する車載端末装置2の概略構成を、図3に基づき説明する。本実施形態では、車載端末装置2を既存のタブレット端末等で構成し、通信キャリアの無線通信網や無線LAN等でインターネットに接続する機能を備えているので、タクシー会社等が運営・管理する管理サーバ3にインターネット経由で接続することができる。
【0028】
車載端末装置2には、タブレット端末のOS上で動作するアプリとして構成した車両間情報共有制御部22を備える。車両間情報共有制御部22が乗客発見情報を送受信する通信方式として、通信キャリアの無線通信網や無線LAN等を用いても良いが、本実施形態では、低電力で効率よい通信が可能なWi-SUNを用いる。なお、Wi-SUNの通信機能を、車載端末装置2のベースとするタブレット端末が標準的に備えていない場合には、Wi-SUN対応の通信デバイスを接続する。これにより、通信関連のAPI23aを介してWi-SUNの通信コンポーネント23bによる通信制御を可能とし、通信周波数(例えば、900MHz)に対応した電波の送受信を無線通信部24で行えるようになる。
【0029】
車両間情報共有制御部22には、発見ボタン221(上述した左発見ボタン212および右発見ボタン213に相当)から操作信号が入力される乗客発見情報登録手段222を備える。この乗客発見情報登録手段222では、発見ボタン221の操作に基づいて乗客発見情報の生成に必要な処理(後に詳述)を行い、生成した乗客発見情報を乗客発見情報データベース222aに登録する。また、乗客発見情報登録手段222には、GPS等の位置情報取得手段223が取得した位置情報が供給されており、発見ボタン221が操作(タップ)されたときの位置情報などを乗客発見情報に含ませる記憶情報の一要素として用いる。操作信号の入力方法は、乗務員の指によるボタン操作でなくても良く、音声入力や人工知能等を備えた他のソフトウェアプログラムからの入力であっても良い。
【0030】
乗客発見情報のデータ構成は特に限定されるものではないが、例えば、情報ID、左右種別、発見時刻(t=0)、発見位置(t=0における緯度経度)、Δt秒後の車両位置の差分(t=0における緯度経度とt=Δtにおける緯度経度の差分)から構成する。情報IDは、時刻(2Bytes)と車両ID(2Bytes)から構成することで、総計65535台以下の車両に対して一意性を担保できる。左右種別は、発見ボタン221の左右どちらがタップされたかを示すフラグで、例えば、左発見ボタン212がタップされた場合は「direction=1」、右発見ボタン213がタップされた場合は「direction=0」として記憶される。発見時刻は、発見ボタン221がタップされた時に端末内蔵の時計から取得した時刻である。発見位置は、発見ボタン221がタップされた時に位置情報取得手段223から取得した第1位置情報Pt1である。Δt秒後の車両位置の差分は、発見ボタン221がタップされてから所定のΔt秒が経過した時に位置情報取得手段223から取得した第2位置情報Pt2と前記第1位置情報Pt1との差分情報である。
【0031】
このように、本実施形態では、乗客発見情報の構成要素として、発見時刻からΔt秒経過時の第2位置情報Pt2が必要なので、発見ボタン221がタップされてからΔt秒が経過し、乗客発見情報の構成要素が揃ったタイミングで、乗客情報を生成する。生成した乗客情報は、乗客発見情報データベース222aに登録すると同時に、乗客発見情報送信・受信手段224へ供給し、共有サービスエリアSS内にいるタクシー1に向けて送信するのである。
【0032】
更に、乗客発見情報データベース222aに登録した乗客発見情報は、初回送信後にも定期的に再送信する。斯くすれば、たまたま電波状況が悪くて乗客発見情報の初回送信時に受信できなかった車両にも、乗客情報を共有できる機会が増える。また、乗客発見情報の初回送信時には共有サービスエリアSS外にいたが、その後に共有サービスエリアSS内に入って来た車両にも、乗客情報を共有できる機会を与えることができる。ただし、乗客発見情報データベース222aに登録する乗客発見情報は、発見からの時間経過に伴って情報としての鮮度が低下し、車両間で共有する情報としての価値が無くなるので、乗客発見情報の再送信には、送信回数や送信期間等の制限を課すことが望ましい。本実施形態では、乗客発見情報の鮮度を考慮して定めた所定の登録情報忘却期間が経過すると、その乗客発見情報を乗客発見情報データベース222aから削除し、以降は乗客発見情報の再送信が行われないようにした。
【0033】
なお、各タクシー1で乗客発見情報データベース222aに登録される乗客発見情報は、どの車両がどのぐらいの頻度で見込み乗客を発見しているか等の統計情報として意味がある。そこで、各車載端末装置2の乗客発見情報データベース222aに登録された乗客発見情報は、登録情報忘却期間の経過に伴って削除する前に、管理サーバ3へ送信し、管理サーバ3にて収集・管理すると共に、統計結果を各車載端末装置2へ提供するようにしても良い。斯くするために、管理サーバ3には、ピックアップ集計・統計可視化手段31と乗客情報データベース32を設けておく。統計データ閲覧のために管理サーバ3とアクセスする機能は、必ずしも車両間情報共有制御部22に持たせる必要はない。例えば、車載端末装置2に標準で用意されているWEBブラウザ25からインターネット経由で管理サーバ3にアクセスし、所要の認証情報(例えば、乗務員IDとパスワード)に基づいてログインした後、統計データを閲覧できるようにしても良い。
【0034】
一方、他の車両から送信された乗客発見情報を受信すると、乗客発見情報送信・受信手段224は、送信元に対して応答ビーコンを送信する。そして、他の車両から送信された乗客発見情報は受信情報登録手段225に供給され、これが新たな乗客発見情報であれば、受信情報登録手段225により新規の乗客情報として乗客情報登録データベース225aに登録される。乗客情報登録データベース225aに登録された乗客情報は乗務員向け通知・表示手段226に供給され、推定ピックアップエリアEPを特定し、タッチパネル式の表示画面21にて可視表示する。このとき、乗務員の注意を促すために、乗務員向け通知・表示手段226は、スピーカ等の音声出力機器の動作を制御して、所定の警告音(アラート)を出力させることが望ましい。
【0035】
受信情報登録手段225によって乗客情報登録データベース225aに登録するのは、乗客情報登録データベース225aに登録されていない乗客発見情報を受信した場合とする。乗客発見情報に含まれる情報IDから既に登録済と確認されれば、初回送信後に再送信された乗客発見情報と考えられるので、登録の対象とはしない。なお、同じ乗客発見情報の再送信を受けた回数が増えるということは、それだけ情報の鮮度が落ちていることを意味するので、再送信の受信回数を乗客情報登録データベース225aにて更新するようにしても良い。そして、再送信の受信回数が更新されると、乗務員向け通知・表示手段226による推定ピックアップエリアEPの表示も更新させて、情報の鮮度が落ちていることを乗務員に知らせるのである。例えば、マップ表示部211に表示した推定ピックアップエリアEPの表示濃度を時間経過に伴って薄くしたり、表示色を変えたりすれば、運転中の乗務員でも、経過時間の長短を瞬時に認識できる。
【0036】
このように、乗客情報登録データベース225aに登録された乗客情報は、登録からの時間経過に伴って情報としての鮮度が低下し、車両間で共有する情報としての価値が無くなるので、推定ピックアップエリアEPの表示には、表示期間等の制限を課すことが望ましい。本実施形態では、乗客情報の鮮度を考慮して定めた所定の受信情報忘却期間が経過すると、その乗客情報を乗客情報登録データベース225aから削除し、併せて、推定ピックアップエリアEPの表示を消すようにした。
【0037】
また、新規の乗客発見情報が共有サービスエリアSS外であっても、車載端末装置2によって受信する場合がある。共有サービスエリアSS外となる乗客発見情報は、見込み乗客の発見場所と自車両の位置から受信情報登録手段225で判定できるので、共有サービスエリアSS外となる乗客発見情報を受信情報登録手段225が登録対象外としてもよい。なお、このような乗客情報提示条件を満たすか否かに基づくフィルタリング機能は、受信情報登録手段225等に持たせる構成に限定されない。例えば、通知車両フィルタ227を設けておき(図3中、破線で示す)、乗客発見情報送信・受信手段224が受信した乗客発見情報に基づく乗客情報提示条件を通知車両フィルタ227にてより細かく選別し、乗客情報提示条件を満たす乗客発見情報のみを受信情報登録手段225へ供給するようにしても良い。例えば、乗客発見情報の送信元であるタクシー1Aの位置を基準とした共有サービスエリアSS内に自車両が存在するという第1の乗客情報提示条件に加えて、自車両が特定区域内を走行しているという第2の乗客情報提示条件を満たす場合に、その乗客発見情報を受信情報登録手段225へ供給するといった、一層細かいフィルタリングが可能となる。
【0038】
マップ表示部211に表示された推定ピックアップエリアEPを目標にして、空車のタクシー1が現地へ向かい、乗客発見情報に該当するを思われる見込み乗客Pを見つけると、乗車につなげることができる。この場合、当該タクシー1の乗務員は、乗客ピックアップ登録手段228(表示画面21に表示した乗客ピックアップボタン215に相当)を操作することで、受信情報登録手段225により乗客情報登録データベース225aにピックアップ完了が書き込まれる。ピックアップ成功の情報は、上述したように、管理サーバ3へ送信され、乗客情報データベース32に登録されると共に、ピックアップ集計・統計可視化手段31により集計されて、車載端末装置2等での実績確認を可能とする。
【0039】
なお、推定ピックアップエリアEPと乗客のピックアップ場所(乗客ピックアップ登録手段228が操作されたときの位置)が対応していれば、どの乗客発見情報に基づく乗客情報かを受信情報登録手段225によって特定できる。また、推定ピックアップエリアEPとピックアップ場所が多少離れている場合には、予め定めた近在範囲(例えば、ピックアップ地点から所定半径のエリア)と重なる推定ピックアップエリアEPと対応付けるようにしても良い。このとき、ピックアップ場所の近在範囲に複数の推定ピックアップエリアEPが重なっていた場合には、それぞれの乗客発見情報に対するピックアップ実績として登録するようにしても良い。あるいは、近在範囲と最も重なる面積の大きい推定ピックアップエリアEPを選定して、これに該当する乗客発見情報に対するピックアップ実績として登録するようにしても良い。しかしながら、どの乗客発見情報に基づく乗客情報かを受信情報登録手段225が特定できない場合も想定される。そもそも、乗客発見情報の元となった見込み乗客Pがピックアップした乗客と同一か、確実な判定ができないのであるから、乗客発見情報が乗客のピックアップに繋がった実績結果は、必ずしも正確な統計情報とは言えない。乗客発見情報が乗客のピックアップに繋がったかどうかは、乗客ピックアップ登録手段228を操作した乗務員の勘や思い込みに依るところが大きいと考えられる。そこで、乗客ピックアップ登録手段228を操作するときには、乗客発見情報との対応を乗務員に選択させる(例えば、対応する推定ピックアップエリアEPをタップさせる)ようにしても良い。なお、推定ピックアップエリアEPと乗客のピックアップ場所とのマッチングは、車載端末装置2で行わず、各車両の車載端末装置2から諸情報が送信されてくる管理サーバ3で行うようにしても良い。
【0040】
上述した車両間情報共有制御部22は、乗務員が見込み乗客Pを発見して発見ボタン221を操作することで、乗客発見情報を送信するものとしたが、見込み乗客の発見を自動化することも可能である。例えば、見込み乗客Pの挙動に関する特徴を学習させた人工知能(Artificial Intelligence)によって乗客自動発見手段229を構成し、車載端末装置2に設けておく。この乗客自動発見手段229には、撮像手段26から車外の画像(動画像を含む)が供給され、連続する画像を解析することにより、見込み乗客Pの存否を判断して行く。そして、見込み乗客Pを発見したときには、自車進行方向の右か左かを乗客発見情報登録手段222へ送信することで、乗客発見情報が乗客発見情報データベース222aに登録されると共に、他の車両に向けて乗客発見情報の送信が行われる。なお、乗客発見情報を送信するのは、自車が配車中や実車中等でピックアップできない場合であり、自車が空車中であれば、他の車両へ向けて乗客発見情報を送信する必要はない。そこで、空車中は乗客自動発見手段229を機能させないようにしても良い。あるいは、空車中は乗客自動発見手段229をピックアップ支援機能として用い、見込み乗客の発見時には乗客発見を知らせるメッセージを自機の表示画面21に表示すると共にアラートを鳴らし、乗務員の注意を喚起するようにしても良い。
【0041】
また、車載端末装置が乗客発見情報の送信に用いる通信方式は、Wi-SUNとしたが、必ずしもWi-SUNで車両間通信を良好に行える環境ばかりとは限らない。そこで、所定条件(例えば、最初の乗客発見ビーコンの送信時もしくは所定回数目のビーコン再送信時までに、リプライビーコンを全く受信できない、あるいは所定数以下のリプライビーコンしか受信できない、といった通信悪化条件)を満たした場合には、車載端末装置2から管理サーバ3へ乗客発見情報を送信し、この管理サーバ3の通信ネットワークを介して、少なくとも乗客情報提示条件を満たす可能性の高い共有サービスエリアSS内に居る車両の車載端末装置2へ乗客発見情報を送信するようにしても良い。この場合、受信側となる車両の車載端末装置2は、Wi-SUN通信では無く、通信ネットワークを介して管理サーバ3からの乗客発見情報を受信するので、受信ビーコンの送信等は行わない。また、管理サーバ3が送信先として指定した車載端末装置2においても、その乗客発見情報が所定の乗客情報提示条件を満たすか否かのフィルタリングを行い、乗客情報提示条件を満たす場合にのみ、推定ピックアップエリアEPを表示するようにすることが望ましい。
【0042】
次に、図4に基づいて、乗客情報発信側の車載端末装置2で行われる動作処理と、受信側の車載端末装置で行われる動作処理を時系列に説明する。
【0043】
乗務員が目視で見込み乗客Pを発見、あるいは人工知能が画像解析により見込み乗客を発見することが契機となり、乗客発見情報の生成に必要な情報が得られたとき、この乗客発見情報を乗客発見情報データベースに登録する(T1を参照)。なお、新たに登録した乗客発見情報は、管理サーバ3へ適宜なタイミングで送信する。乗客発見情報を登録すると、速やかに乗客発見情報を他の車両へ伝送する(T2を参照)。この乗客発見情報の伝送には、Wi-SUNに準拠したフレームフォーマットをもつビーコンフレームを用いるので、乗客発見ビーコンと呼ぶ。
【0044】
乗客発見ビーコンが自動送信されると、通信可能範囲CR内にいる車両の車載端末装置2で受信し、リプライビーコンが自動送信される。また、乗客発見ビーコンは、所定の再送信期間が経過する毎に再発信され、再発信された乗客発見ビーコンも通信可能範囲CR内にいる車両の車載端末装置2で受信される(R1を参照)。ただし、乗客発見情報に基づく乗客情報を乗客情報登録データベースに登録して、乗客情報表示(例えば、推定ピックアップエリアEPの表示)を行うのは、乗客情報提示条件を満たす車両(例えば、共有サービスエリアSS内で乗客発見ビーコンを受信した車両)の車載端末装置2のみである(R2を参照)。
【0045】
なお、乗客発見ビーコンの初回発信および定期的な再発信は自動で行われるが、乗務員の発意に基づいて乗客発見ビーコンを手動で発信することも可能である(T2′を参照)。例えば、乗客発見ビーコンの発信元である車両の乗務員が、見込み乗客発見場所へ向かっている空車を見つけたとき、周辺車両へボタン214を操作することで、その空車を含む周辺車両に向けて明示的な乗客発見ビーコンを送信するのである。手動で発信した明示的ビーコンを受信した車載端末装置2では、明示的ビーコンを受信したことを連想可能なアラートを発し、自身に向けられたアラートとして乗務員の注意を喚起する。これと共に、明示的ビーコンに対応するピックアップエリアEPを印象づける表示に更新しても良い。これにより、乗客発見情報によるピックアップの達成率を向上させることができる。なお、明示的ビーコンを受信した車両の車載端末装置2では、そのリプライビーコンを自動応答で送信しても良いが、表示画面21に「ありがとうボタン」をポップアップ表示し、これを乗務員が押下することでリプライビーコンが送信されるようにしても良い。かくすれば、明示的ビーコンを送信した相手が、この情報を確実に認識していることを送信元で知ることができるので、乗客発見情報が有効に活用されるものと安心できる。
【0046】
上記のように乗客発見ビーコンの再送信を定期的に行いながら、所定の登録情報忘却期間が経過すると、乗客発見情報が乗客発見情報データベースから削除され、乗客情報発見ビーコンの発信が終了となる(T3を参照)。なお、本実施形態では、登録情報忘却期間の計時開始基準を、乗客発見情報を乗客発見情報データベースに登録した時としたが、これに限定されるものではない。後述するように、見込み乗客の発見から実際に乗客発見情報を生成するまでの期間が一定(所定の期間Δt経過時)とは限らない。そこで、情報の鮮度低下の基準としては、見込み乗客の発見時(乗務員が発見ボタン221を操作したとき、あるいは乗客自動発見手段229が見込み乗客の発見と判定したとき)を登録情報忘却期間の計時開始基準としても良い。
【0047】
一方、乗客発見ビーコンを受信した車両の車載端末装置2では、乗客情報の表示を行いながら、所定の受信情報忘却期間が経過すると、乗客情報が乗客情報登録データベースから削除され、乗客情報の表示が終了となる(R3を参照)。なお、受信情報忘却期間の経過前か経過後かを問わず、乗客発見ビーコン受信側の車両が乗客発見場所へ赴き、乗客をピックアップして実車に繋がった場合、乗務員が乗客ピックアップボタン215を操作することで、乗客発見情報に基づく乗客実績の入力を行う(R4を参照)。この乗客実績は、管理サーバ3へ適宜なタイミングで送信され、集計・管理される。管理サーバ3により集計された統計データは、乗客発見ビーコン送信側の車載端末装置2から管理サーバ3へ閲覧要求することで受信でき、自車から送信した乗客発見情報に基づく乗車実績を表示できる(T4を参照)。
【0048】
次に、乗客情報発見ビーコンの送信契機となる乗客発見情報の登録処理について、図5および図6に基づき詳述する。乗客発見情報の登録処理は、比較的短い期間毎に繰り返す割り込み処理等である。
【0049】
乗客発見情報の登録処理では、発見ボタン221(左発見ボタン212あるいは右発見ボタン213)が押下されたか否かを判定し(ステップS101)、ボタン押下が検出されなければ、そのまま処理を終了する。一方、左発見ボタン212あるいは右発見ボタン213が操作された場合、このときの自車両の位置を位置情報取得手段223より取得し、これを第1位置情報Pt1とする(ステップS102)。第1位置情報Pt1の取得から進行方向確定期間Δt秒だけスリープし(ステップS103)、進行方向確定期間Δt秒が経過したタイミングで自車両の位置を位置情報取得手段223より取得し、これを第2位置情報Pt2とする(ステップS104)。
【0050】
第1位置情報Pt1と第2位置情報Pt2による乗客発見情報の可視化イメージを、図6A図6Bに示す。Pt1はタクシー1の乗務員が発見ボタン221を操作したときの車両位置であり、進行方向確定期間Δt秒後のタクシー1の位置がPt2である。第1位置Pt1と第2位置Pt2を結ぶ直線状の中点Oを中心とし、第1位置Pt1と第2位置Pt2の離隔距離(distance(Pt1,Pt2))の1/2を半径rとする半円を、左右フラグに対応させて描く。図6Aでは、direction=1(左フラグ)であるから、第1位置Pt1から第2位置Pt2へ向かう進行方向に対して左側の半円を乗客発見情報の可視化イメージEP1とする。図6Bでは、direction=0(右フラグ)であるから、第1位置Pt1から第2位置Pt2へ向かう進行方向に対して右側の半円を乗客発見情報の可視化イメージEP0とする。この乗客発見情報の可視化イメージは、見込み乗客Pをピックアップできる可能性の高いエリアと考えられるので、乗客発見ビーコン受信側の車載端末装置2で乗客発見情報の可視化イメージを再現すれば、推定ピックアップエリアEPとして表示できるのである。
【0051】
また、第1位置Pt1と第2位置Pt2を結ぶ直線上の中点の位置が、見込み乗客のいる位置と重なったとき、推定ピックアップエリアEPの信頼度が最も高くなるので、進行方向確定期間Δt秒は、車両速度に応じて動的に適用できるようにしても良い。例えば、乗務員が前方に見込み乗客Pを見つけて発見ボタン221を操作したとき、見込み乗客Pまでどのぐらいの距離に近づいているかは、車両速度に応じた距離を実証実験等で求まるので、その平均距離が半径rとなるように、第2位置Pt2を仮定する。すなわち、第1位置Pt1の車両速度で距離2rを進む時間を進行方向確定期間Δt秒に設定しておけば、第1位置Pt1と第2位置Pt2を結ぶ直線上の中点Oを、見込み乗客のいる位置に近づけることができるのである。
【0052】
しかしながら、推定ピックアップエリアEPは、あくまでも見込み乗客Pをピックアップできそうな範囲として提示できれば良いので、見込み乗客Pの居た場所を正確に中心として示す可視化イメージに制限されるものではない。よって、第1位置Pt1を中心として描いた所定半径の半円を推定ピックアップエリアとしても良いし、第2位置Pt2を中心として描いた所定半径の半円を推定ピックアップエリアとしても良い。
【0053】
また、第1位置Pt1と第2位置Pt2は、必ずしも直線路の2点とは限らない。例えば、第1位置Pt1と第2位置Pt2との間にある交差点で車両が左折あるいは右折した場合、第1位置Pt1と第2位置Pt2を結ぶ直線を直径とする半円が推定ピックアップエリアとしてふさわしいとは言えない。そこで、第1位置Pt1と第2位置Pt2の間で進行方向が一定角度以上変化した場合(例えば、方位センサの変移検出量が所定の閾値を超えた場合)には、左右方向のフラグは無視して、全円を推定ピックアップエリアとして表示するようにしても良い。
【0054】
あるいは、予め車両が方向を変えることを前提として、3つの計測点を用いるようにしても良い。例えば、見込み乗客発見によりボタン操作されたときの第1計測点P1と、それからΔt秒後の第2計測点P2と、更にΔt秒後の第3計測点P3の位置情報をそれぞれ取得する。これら3地点がほぼ一直線上にあれば、当該車両が直線路を進んでいるとみなせるので、上述した半円の推定ピックアップエリアの表示手法で対応できる。一方、3地点が一直線上にないと考えられる場合(例えば、3点の成す角度が所定の閾値以上である場合)、線分(P1,P2)≒線分(P2,P3)であれば、第2計測点P2を中心として第1計測点および第3計測点を通る円を描ける。すなわち、見込み乗客の発見方向に対応する角P1-P2-P3を中心角とする扇形を推定ピックアップエリアとして表示できるのである。このとき、見込み乗客発見方向と車両が曲がった方向が同じであれば、扇形の中心角は180゜より小さくなる。逆に、見込み乗客発見方向と車両が曲がった方向が反対であれば、扇形の中心角は180゜より大きくなる。
【0055】
また、見込み乗客Pを発見した車両が信号待ちなどで停止したままだった場合には、進行方向確定期間Δt秒経過後の第2位置Pt2が第1位置Pt1と同じとなってしまう。このようなときには、予め定めたリトライ期間(例えば、進行方向確定期間Δtと同じ期間)が経過したとき、改めて第2位置Pt2′を取得するようにしても良い。なお、情報の鮮度低下を考慮すると、リトライ回数には上限を設けてくことが望ましい。しかしながら、第2位置Pt2取得のリトライが上限回数に達しても、第2位置Pt2=第1位置Pt1のままだった場合には、進行方向を特定できない乗客情報となってしまう。このような場合には、第1位置Pt1を中心とする所定半径rの全円を推定ピックアップエリアとして表示するような乗客発見情報を生成する対応としても良い。
【0056】
すなわち、乗客発見車両の情報共有装置が行う乗客発見情報送信ステップでは、乗客発見時刻からΔt経過後に取得した車両の第2位置が、車両の第1位置から予め定めた距離閾値を越える有効第2位置取得条件を満たしていない場合(例えば、静止していた場合)、距離閾値を超える第2位置情報が得られるまで、Δt間隔で第2位置情報の取得を繰り返し行い、予め定めた上限回数まで第2位置情報の取得を実施しても、前記有効第2位置取得条件を満たす第2位置情報が得られない場合は、少なくとも第1位置情報と乗客発見方向情報を含めた乗客発見情報を送信し、該乗客発見情報を受信した車両の情報共有装置が行う乗客情報提示ステップでは、第1位置を中心として予め定めた半径rの全円表示を推定ピックアップエリアとして提示するのである。
【0057】
上述したように、乗客発見ビーコンの受信側で推定ピックアップエリアEPを再現するために必要な情報は、第1位置Pt1と第2位置Pt2と左右フラグであり、これらを乗客発見情報として含ませておけば良い。しかしながら、本実施形態では、乗客発見情報の一要素として第2位置Pt2を用いずに、第1位置Pt1と第2位置Pt2との差分を用いるものとした。その方が、乗客発見ビーコンの受信側で半径rと中点Oの位置を演算し易いからである。よって、新たな乗客発見情報として、少なくとも、情報IDと、推定ピックアップエリア特定情報(左右種別、発見時刻、第1位置Pt1、第1位置Pt1と第2位置Pt2との差分)を乗客発見情報データベースに登録する(ステップS105)。次いで、新規に登録した乗客発見情報を乗客発見ビーコンとして最初の送信を行い(ステップS106)、乗客発見情報の登録処理を一旦終了する。
【0058】
次に、乗客発見情報の再送信処理を図7に基づき説明する。この処理も、比較的短い期間毎に繰り返す割り込み処理等である。
【0059】
先ず、自機がテストモードか否かを判定し(ステップS201)、テストモードであれば、この車両間情報共有サービスの提供地域ではあり得ない乗客発見位置(例えば、緯度0,経度0)を含むダミービーコンを発信して(ステップS202)、乗客発見情報の再送信処理を終了する。上記ステップS201でテストモードではないと判定された場合には、乗客発見情報データベースに登録されている乗客発見情報があるか否かを判定する(ステップS203)。乗客発見情報データベースに乗客発見情報が登録されていなければ、再送信するべき乗客発見情報が無いので、乗客発見情報の再送信処理を終了する。
【0060】
上記ステップS203で乗客発見情報があると判定された場合には、乗客発見情報データベースより順に(例えば、登録順に)乗客発見情報を取得し(ステップS204)、取得した乗客発見情報が登録情報忘却期間を経過したか否かを判定する(ステップS205)。取得した乗客発見情報が登録情報忘却期間を経過していれば、その乗客発見情報を乗客発見情報データベースから削除する(ステップS206)。これにより、この乗客発見情報の再送信が行われることは無くなる。一方、上記ステップS205で、取得した乗客発見情報が登録情報忘却期間を経過していないと判定されれば、再送信期間Tが経過したか否かを判定する(ステップS207)。取得した乗客発見情報が再送信期間を経過していれば、この乗客発見情報に基づく乗客発見ビーコンを再発信する(ステップS208)。
【0061】
上記ステップS207で乗客発見情報の再送信期間が経過していないと判定された場合、あるいは、ステップS208で乗客発見ビーコンの再送信を行った後、あるいは、ステップS206で乗客発見情報を乗客発見情報データベースから削除した後には、次に処理する乗客発見情報が残っているか否かを判定する(ステップS209)。処理順待ちの乗客発見情報が残っていれば、残っている乗客発見情報に対して、上記ステップS204~S208の処理を行う。そして、乗客発見情報データベースに登録されている全ての乗客発見情報に対する上記ステップS204~S208の処理が終わり、次に処理する乗客発見情報が無くなると、ステップS203に戻って乗客発見情報データベースに乗客発見情報があるか否かを確認する。すなわち、乗客発見情報データベースに乗客発見情報が1件でも登録されていれば、登録情報忘却期間が経過するまで、再送信期間が経過する毎に乗客発見ビーコンの的的な再発信を継続するのである。
【0062】
なお、乗客発見情報データベースに複数件の乗客発見情報が登録されることもあるが、説明を簡単にするため、1件の乗客発見情報を登録して乗客発見ビーコンの再送信を終了するまでの流れを図8にて説明する。
【0063】
タクシー1の乗務員が見込み乗客Pを発見した時t0の発見位置Pt0から、車載端末装置2の発見ボタン221を操作し終えるまでの時間経過により、発見ボタン221の操作時t1のタクシー1は第1位置Pt1まで進んでいる。なお、人工知能で構成した乗客自動発見手段229により見込み乗客Pの自動検知を行う場合、t0=t1とみなすことができるので、発見位置Pt0=第1位置Pt1となる。
【0064】
発見ボタン221の操作時t1から走行方向確定期間Δt(例えば、30秒)が経過した初回ビーコン発信時t2で、タクシー1は第2位置Pt2まで進んでおり、タクシー1の走行方向を確定できるので、乗客発見情報を乗客発見情報データベース222aに登録する。と同時に、推定ピックアップエリアEPを特定可能な情報を含む乗客発見情報に基づく乗客発見ビーコンの初回発信が行われる。
【0065】
乗客発見ビーコンの初回送信を行った時(初回ビーコン発信時t2)から所定の再送信期間(例えば、5秒)が経過した第1再送信時t3では、推定ピックアップエリアEPから遠ざかった第3位置Pt3にタクシー1がおり、ここで乗客発見ビーコンの1回目の再送信を行う。第1再送信時t3から所定の再送信期間が経過した第2再送信時t4では、推定ピックアップエリアEPから更に遠ざかった第4位置Pt4にタクシー1がおり、ここで乗客発見ビーコンの2回目の再送信を行う。
【0066】
以下同様に、タクシー1は推定ピックアップエリアEPから遠ざかりつつ、同じ乗客発見ビーコンを定期的に発信し続けるのであるが、発見ボタン221の操作時t1を起点とする所定の登録情報忘却期間(例えば、300秒)が経過すると、乗客発見ビーコンの定期発信が終了する。すなわち、乗客発見情報としての鮮度が失われていると考えられる登録情報忘却期間が経過することで、その乗客発見情報が乗客発見情報データベース222aから削除し、鮮度が失われた乗客発見ビーコンの再送信を止めるのである。
【0067】
このように、同じ乗客発見情報を含む乗客発見ビーコンを送信しつつも、乗客発見ビーコンの送信元である車両は移動を続けることから、その乗客発見情報に基づく乗客情報提示条件を満たす共有サービスエリアSSと共に、車両の通信可能範囲CRも変化して行くこととなる。そのため、初回の乗客発見ビーコンが発信されたときに、これを共有サービスエリアSS内で受信した他の車両が、そのまま共有サービスエリアSSから外れたり、通信可能範囲CRから外れたりした場合、その後の再送信ビーコンを受信できなくなったり、乗客情報提示条件を満たす乗客発見情報として受信できなくなる可能性がある。そこで、受信側の車載端末装置2で乗客発見ビーコンを1度でも受信できれば、その後の再送信ビーコンを受信できなくても、乗客発見情報の提示に支障が無いように考慮した。
【0068】
図9に示すのは、乗客発見ビーコンの受信元で行う乗客発見情報の受信処理である。この処理も、比較的短い期間毎に繰り返す割り込み処理等である。
【0069】
先ず、他の車両から送信された乗客発見ビーコンを受信したか否かを判定し(ステップS301)、乗客発見ビーコンを受信していなければ、そのまま処理を終了する。一方、乗客発見ビーコンを受信していた場合には、そのビーコンの情報IDから判別できる情報発信元の車載端末装置2に向けてリプライビーコンを発信する(ステップS302)。そして、この乗客発見ビーコンにより特定される乗客の発見距離がサービスエリア内か否かを判定し(ステップS303)、サービスエリア内でなければ、そのまま処理を終了する。このように、あり得ない発見距離の乗客発見ビーコンを受信した場合、それはテストモードで発信されたダミービーコンと考えられるからである。
【0070】
上記ステップS303で発見距離がサービスエリア内と判定された場合、乗客発見ビーコンに含まれる乗客発見情報に基づいて、新規の乗客情報か登録済の乗客情報かに応じて、乗客情報登録データベース225aを更新する(ステップS304)。受信した乗客発見情報が新規であれば、新たな乗客情報として乗客情報登録データベース225aに登録する。既に登録している乗客情報と同じ情報IDの乗客発見情報を受信した場合、それは再発信された乗客発見ビーコンと考えられるので、そのまま無視しても良いし、再発信の受信回数をインクリメントする更新を行っても良い。
【0071】
次いで、受信した乗客発見ビーコンの乗客発見情報における発見場所と、現在地との距離が通知閾値以内(共有サービスエリアSSの範囲内)か否かを判定し(ステップS305)、通知閾値を超えていた場合には、そのまま処理を終了する。受信した乗客発見情報の共有サービスエリアSS内に自車両がいなければ、乗務員に提示する必要はないからである。
【0072】
上記ステップS305で発見場所との距離が通知閾値以内であると判定された場合には、その乗客情報が新たに乗客情報登録データベース225aに登録されたものか否かを判定する(ステップS306)。乗客情報登録データベース225aに新規登録した乗客情報であれば、この乗客情報に応じた推定ピックアップエリアEPを表示するようにマップを更新すると共に、乗務員の注意を引くためのアラートを発し(ステップS307)、処理を終了する。一方、上記ステップS306で新規登録の乗客情報ではないと判定された場合、その乗客発見ビーコンが定期的な再発信とは異なるビーコン、すなわち、周辺車両へボタン214を操作することで送信される明示的ビーコンか否かを判定する(ステップS308)。明示的ビーコンであった場合には、該当する推定ピックアップエリアEPを強調する表示を行ったり、「ありがとう」ボタンをポップアップ表示したりすると共に、乗務員の注意を引くためのアラートを発する(ステップS307)。
【0073】
上記のようにして乗客情報登録データベース225aに登録された乗客情報の更新を行う乗客情報登録データベースの更新処理を図10に基づき説明する。この処理も、比較的短い期間毎に繰り返す割り込み処理等である。
【0074】
先ず、乗客情報登録データベース225aに登録されている乗客情報があるか否かを判定し(ステップS401)、乗客情報が登録されていなければ、更新するべき乗客情報が無いので、乗客情報登録データベースの更新処理を終了する。一方、上記ステップS401で乗客情報があると判定された場合には、乗客情報登録データベース225aより順に(例えば、登録順に)乗客情報を取得し(ステップS402)、取得した乗客情報が登録情報忘却期間を経過したか否かを判定する(ステップS403)。
【0075】
取得した乗客情報が受信情報忘却期間を経過していれば、その乗客情報を乗客情報登録データベース225aから削除し(ステップS404)、この乗客情報に基づく推定ピックアップエリアEPをマップ上から消すようにマップを更新する(ステップS405)。これにより、鮮度が落ちて情報として価値が無くなった推定ピックアップエリアEPがマップ上に表示されなくなるので、より鮮度の高い推定ピックアップエリアEPに乗務員の注意を向けさせることができる。
【0076】
一方、上記ステップS403で、取得した乗客情報が受信情報忘却期間を経過していないと判定されれば、所定の表示更新タイミングになったか否かを判定する(ステップS406)。この表示更新タイミングは、受信情報忘却期間であれば、1回に限らず、複数回発生するように設定しても良い。例えば、乗客発見ビーコンの送信元である車載端末装置2で発見ボタン221が操作されたとき(発見ボタン221の操作時t1)から一定時間(例えば、30秒)が経過する毎に、表示更新タイミングとなるようにしても良い。あるいは、情報としての鮮度が高い内は頻繁に表示更新し、情報としての鮮度が低くなると更新頻度を少なくするようにしても良い。
【0077】
また、表示更新タイミングで行う表示更新の手法は特に限定されるものではなく、発見位置と情報の鮮度を乗務員に知らせることができれば、如何様な表示更新でも良く、単に、情報表示からの経過時間を表示するだけでも構わない。しかしながら、運転中の乗務員に対して一見性の高い情報提示が望ましいので、その一例を図11に示す。新規の乗客情報として登録されたときのマップ表示では、図11Aに示すように推定ピックアップエリアEPの表示濃度を高くする。その後の時間経過に伴って、図11B図11Cに示すように推定ピックアップエリアEPの表示濃度を順次薄くして行く。最終的に、受信情報忘却期間が経過すると、図11Dに示すように推定ピックアップエリアEPをマップ上から消す。斯くすれば、鮮度の落ちた推定ピックアップエリアEPはマップ上で目立たなくなって行くので、鮮度の高い推定ピックアップエリアEPへ乗務員の注意を喚起でき、一見性の高い情報表示とすることができる。
【0078】
更に、推定ピックアップエリアEPの表示濃度により情報鮮度を表示することと併せて、推定ピックアップエリアEPの領域を時間経過に伴って拡大してゆくようにしても良い。例えば、図11Aに示す推定ピックアップエリアEPの領域は最小で、その後の時間経過で見込み乗客Pが移動している可能性のある範囲が広がっていることを、乗務員が直感的に分かるように、図11Bに示すように推定ピックアップエリアEPの領域を広げる。さらに時間が経過すると、図11Cに示すように推定ピックアップエリアEPの領域を更に広げるのである。このように、時間経過に伴って推定ピックアップエリアEPの領域を拡大させる表示更新を行うと、ピックアップ率の向上にも効果が期待できる。例えば、ある推定ピックアップエリアEPへ向かっている車両が、信号待ちなどで想定以上に時間をロスしてしまった場合、その車両の乗務員は、広がった推定ピックアップエリアEPに基づいて、注意深く見込み乗客Pを探すようになるからである。また、時間経過に伴って推定ピックアップエリアEPの領域を拡大させる表示更新を行うと、乗客ピックアップボタン215が操作されたときに、その対象となる推定ピックアップエリアEPを特定し易くなるという利点もある。
【0079】
上記ステップS406で表示更新タイミングでないと判定された場合、あるいは、ステップS405でマップの表示を更新した後には、次に処理する乗客情報が残っているか否かを判定する(ステップS407)。処理順待ちの乗客情報が残っていれば、残っている乗客情報に対して、上記ステップS402~S406の処理を行う。そして、乗客情報登録データベース225aに登録されている全ての乗客情報に対する上記ステップS204~S208の処理が終わり、次に処理する乗客情報が無くなると、再びステップS401に戻って乗客情報登録データベース225aに乗客情報があるか否かを確認する。すなわち、乗客情報登録データベース225aに乗客情報が1件でも登録されていれば、受信情報忘却期間が経過するまで、マップ上に表示する推定ピックアップエリアEPの更新を継続するのである。
【0080】
上述した実施形態では、乗客発見ビーコンを受信した車載端末装置2が、その乗客発見情報を共有する条件である共有サービスエリアSS内に自車両が居るか居ないかを判断し、共有サービスエリアSSから外れていれば、乗客情報の提示を行わないものとした。このように、車載端末装置2から発信される乗客発見ビーコンの通信可能範囲CRが、その乗客発見情報の共有サービスエリアSSよりも広ければ、範囲外の車載端末装置2が乗客情報の表示を行わない制御により、共有サービスエリアSSの設定が可能である。
【0081】
しかしながら、車載端末装置2から発信される乗客発見ビーコンの通信可能範囲CRが、その乗客発見情報の共有サービスエリアSSよりも狭かった場合は問題である。共有サービスエリアを十分にカバーできる高出力の無線通信装置を使うと、消費電力が高くなる上に、本システムの導入コストを押し上げてしまう。逆に、本来の共有サービスエリアSSよりも縮小し、通信可能範囲CRで対応できるようにした場合、乗客発見ビーコンを受信できる車両の数が極端に減り、折角の乗客情報を有効に利用できない可能性もある。
【0082】
そもそも、乗客情報提示条件の一つとして設定した共有サービスエリアSSとは、見込み乗客Pの発見場所への対応が可能と考えられる車両の存在範囲であるから、見込み乗客Pの発見頻度や対応可能な車両数の多い少ないといった地理的・時間的要因で変化するものである。例えば、都市部の繁華街や朝夕の通勤ラッシュ時にはタクシーの需要が増える傾向があるので、見込み乗客Pの発見頻度が高く、近辺を走行している車両の密度も高いので、比較的狭い共有サービスエリアSSを設定しても対応可能である。逆に、郊外の住宅地等では、見込み乗客Pの発見頻度が低く、走行している車両の密度も低いので、比較的広い共有サービスエリアSSを設定する必要がある。タクシーは、その営業区域が法令で定められているが、その営業区域内でも場所や時間によってタクシー需要は変化する。よって、共有サービスエリアSSは、一定の距離範囲として固定的に設定するのではなく、車両が走行している場所や時間帯に応じて、適切な範囲となるよう動的に設定することが望ましい。
【0083】
共有サービスエリアSSを動的に設定するには、場所や時間帯に応じた共有サービスエリア設定情報を各車載端末装置2に記憶させておき、乗客発見ビーコンの受信側で、乗客発見場所と時間に応じた設定情報を参照し、共有サービスエリア内か否かを判断すれば良い。このように、共有サービスエリアSSを動的に設定する場合、最大範囲の共有サービスエリアSSに対応できるように、乗客発見ビーコンの到達距離を実現できなければならない。しかして、本実施形態では、マルチホップが可能なWi-SUNを用いるので、消費電力が小さく、比較的長距離な通信とマルチホップによる更なる通信距離の延伸が可能である。
【0084】
例えば、図12に示すように、乗客発見車両であるタクシー1Aの乗務員が、進行方向左側に見込み乗客Pを発見し、車載端末装置2Aで左発見ボタン212を操作する。この後、走行方向確定期間Δtが経過すると乗客発見情報の登録と乗客発見ビーコンの発信を行う。車載端末装置2Aより発信された乗客発見ビーコンは、車載端末装置2の通信可能範囲CRに居るタクシー1B,1Cの車載端末装置2B,2Cでしか受信できない。車載端末装置2B,2Cは、これを乗客情報として登録し、乗務員に可視表示する。加えて、タクシー1B,1Cの車載端末装置2B,2Cは、乗客発見場所から共有サービスエリアSSの範囲が通信可能範囲CRを越えていることを判断し、自ら中継器となって乗客発見ビーコンを他の車載端末装置2に向けて送信(フラッディング)する。なお、エリア内の飲料自販機や店舗等に、Wi-SUNによるマルチホップ通信機能またはフラッディングによる中継機能を有するルータが設置されている場合は、これらのルータを経由して乗客発見ビーコンをより遠方まで伝搬させることができる。このように、ルータを経由して乗客発見ビーコンを中継する場合、経由したフィルタの数が所定数以下であることを乗客情報提示条件の一つとしても良い。
【0085】
このようなマルチホップ通信により、乗客発見ビーコン発信時における車載端末装置2Aの通信可能範囲CRよりも遠距離にいたタクシー1Dでも、車載端末装置2Dが乗客発見ビーコンを受信可能となるので、これを新たな乗客情報として登録し、乗務員に可視表示できる。なお、共有サービスエリアSSの範囲外に居るタクシー1Eでも、車載端末装置2Eが乗客発見ビーコンを受信できる場合もある。しかしながら、車載端末装置2Eは、自車両の位置が、受信した乗客発見ビーコンに対応する共有サービスエリアSSの範囲外と判定するので、この乗客情報を乗務員に可視表示することはない。
【0086】
このように、車両間情報共有システムの通信方式としてWi-SUNを用いれば、乗客発見ビーコンの送信元である車載端末装置2Aの通信可能範囲CRに制限されること無く、共有サービスエリアSSを広範に設定できる。したがって車両が走行している場所や時間帯に応じて、適切な範囲となるよう動的に設定することが可能となり、乗客発見情報によるピックアップ率の向上にも寄与できる。
【0087】
以上、本発明に係る車両間情報共有方法を実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての車両間情報共有方法を権利範囲として包摂するものである。
【符号の説明】
【0088】
1A~1D タクシー
2A~2D 車載端末装置
P 見込み乗客
SS 共有サービスエリア
CR 通信可能範囲
図1
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