(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】重機周りの安全管理システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20221028BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221028BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20221028BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20221028BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20221028BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G08B21/00 U
G08B21/02
G08B25/04 K
G08B25/10 A
B66F9/24 L
G06K7/10 128
G06K7/10 244
(21)【出願番号】P 2018193472
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501429531
【氏名又は名称】株式会社マトリックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】川原 武
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177790(JP,A)
【文献】特開2011-163835(JP,A)
【文献】特開2012-053515(JP,A)
【文献】特開2013-142675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F9/00-11/04
G06K7/00-7/14
G08B19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機の周囲にエリア信号磁界を発生し、重機の周囲で作業する作業員に前記エリア信号磁界に反応するICタグを保持させて、重機周りで作業員の安全管理を行う、重機周りの安全管理システムであって、
前記エリア信号磁界を発生するエリア信号磁界発生ユニットを含み、
前記ICタグは、前記エリア信号磁界を検出して、自己のIDと前記エリア信号磁界のIDとを出力し、
前記ICタグは、前記重機のオペレータも保持し、
前記オペレータが位置するシートの周囲において、前記エリア信号磁界をキャンセルするキャンセル信号磁界を生成するキャンセルユニットと、を含
み、
前記キャンセル信号磁界は、一定サイクルごとに位相を一定角度ずらした磁界である、重機周りの安全管理システム。
【請求項2】
前記一定角度は45度である、請求項
1に記載の重機周りの安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重機周りの安全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、重機周りの安全管理システムが提案されている。そのような重機周りの安全管理システムの一例が、たとえば、特開2016-115038号公報に開示されている。
【0003】
同公報によれば、作業現場E内の作業員に、それぞれトリガーIDの受信に応じてそのトリガーIDと作業員IDとを組合せた応答信号を返信するICタグを所持させ,作業現場内の重機にその重機周囲の近接危険域Tcを覆う強度で重機固有IDをトリガーIDとして送出する第1のトリガー信号発信機22とその重機の運転席範囲Tdを覆う強度で運転席固有IDをトリガーIDとして送出する第2のトリガー信号発信機25とを搭載する。各ICタグからの応答信号を受信して重機固有IDを含む応答信号が検知され、かつ、その応答信号中の作業員IDと運転席固有IDとを組合せた応答信号が検知されないときに重機周囲の近接危険域への作業員の接近を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の重機周りの安全管理システムは、上記のように構成されていた。しかし、重機のオペレータがICタグを所持していた場合、重機の警報ユニットが動作し続けるという問題がある。
【0006】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、重機のオペレータがICタグを所持していても、警報ユニットが動作し続けることのない、重機周りの安全管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
重機の周囲にエリア信号磁界を発生し、重機の周囲で作業する作業員にエリア信号磁界に反応するICタグを保持させて、重機周りで作業員の安全管理を行う、重機安全管理システムであって、エリア信号磁界を発生するエリア信号磁界発生ユニットを含む。ICタグは、エリア信号磁界を検出して、自己のIDとエリア信号磁界のIDとを出力し、ICタグは、重機のオペレータも保持する。システムは、オペレータが位置するシートの周囲において、エリア信号磁界をキャンセルするキャンセル信号磁界データを生成するキャンセルユニットを含む。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る重機周りの安全管理システムは、オペレータが位置するシートの周囲において、キャンセルユニットとシート型キャンセルコイルによってキャンセル信号磁界を出力する。キャンセル信号磁界はエリア信号磁界内の一定範囲内においてデータとしてICタグが認識できない様、妨害として機能する。
【0009】
その結果、重機のオペレータがICタグを所持していても、警報ユニットが動作し続けることのない、重機周りの安全管理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の重機周りの安全管理システムがフォークリフトに適用された場合の模式図である。
【
図2】この発明の重機周りの安全管理システムを構成するキャンセルシステムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】キャンセルシステムを構成するキャンセルユニットのブロック図である。
【
図5】キャンセル信号磁界における問題点およびその解決法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明に係る重機周りの安全管理システムの一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1を参照して、この発明の一実施の形態に係る重機周りの安全管理システムの構成について説明する。
図1は、この発明に係る、重機周りの安全管理システム30を、重機の一例としてのフォークリフトに設けた場合の基本構成を説明する模式図であり、
図2は、キャンセルシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0013】
図1および
図2を参照して、フォークリフト10は、その屋根に設けられた、重機周りの安全管理システムを構成する、制御ユニット21と、同じく、フォークリフト10の屋根に設けられ、制御ユニット21に接続された送信アンテナ22および送信ユニット23と、フォークリフト10の近傍に作業者がいる場合に警報を発する警報ユニット25と、を含み、送信ユニット23から、フォークリフトの周囲にエリア信号磁界24が発信される。エリア信号磁界24内にICタグ32を有する作業者が入ると、ICタグ32は、エリア信号磁界24を検出して、自分のIDと受信したエリア信号磁界を示すIDとを出力する。ここで、送信ユニット23はエリア信号磁界発生ユニットとして作動する。
【0014】
一方、フォークリフト10には、キャンセルシステムが搭載されている。キャンセルシステムは、フォークリフト10のオペレータが保持するICタグが、フォークリフト10自身のエリア信号磁界24に反応して、自分のIDとフォークリフトのエリア信号磁界を特定するIDを出力し、それを検出したフォークリフトの制御部によって、警報の出力が継続するのを避けるために設けられる。
【0015】
すなわち、オペレータの近傍のみにおいてキャンセルシステムを作動させるキャンセル信号磁界13を出力するために、オペレータのシートにシート型キャンセルコイル12を設け、そこから、オペレータの有するICタグがエリア信号磁界に反応しないように、エリア信号磁界をキャンセルするキャンセル信号を出力する。
【0016】
具体的には、キャンセルシステムは、フォークリフト10に設けられたキャンセルユニット11と、キャンセルユニット11に接続されたシート型キャンセルコイル12と、を含み、シート型キャンセルコイル12から、その周囲にキャンセル信号磁界13が出力される。
【0017】
図3はキャンセルシステムの構成を示すブロック図である。
図3を参照して、キャンセルシステムは、キャンセルユニット11と、キャンセルユニット11に接続されたシート型キャンセルコイル12とを含み、キャンセルユニット11にはDC24V電源14が供給される。
【0018】
次に、キャンセル信号磁界について説明する。
図4はキャンセル信号磁界の具体的内容(波形)を示す図である。
図4(A)はエリア信号磁界を示す図であり、
図4(B)はエリア信号磁界の部分拡大図(
図4(A)で○で囲んだ部分の拡大図)であり、
図4(C)はキャンセル信号磁界であり、
図4(D)はキャンセル信号磁界の部分拡大図(
図4(C)で○で囲んだ部分の拡大図)であり、
図4(E)はキャンセル方式の基本的な仕組みを示す図であり、
図4(F)はキャンセル方式の基本的な仕組みの部分拡大図(
図4(E)で○で囲んだ部分の拡大図)である。
【0019】
図4(A)および
図4(B)を参照して、
図4(A)のように模式的に表示されるエリア信号磁界は具体的には、
図4(B)に示すような波形を有し、ここでは、93.75kHzである。
【0020】
図4(C)および
図4(D)を参照して、
図4(C)のように模式的に表示されるキャンセル信号磁界は具体的には、
図4(D)に示すような波形を有し、ここでは、同じく93.75kHzである。
【0021】
ここで、エリア信号磁界を検出しないようにする(キャンセル信号とする)ために、エリア信号磁界にキャンセル信号磁界を重ねる。その状態が
図4(E)と
図4(F)である。
【0022】
図4(F)に示すように、エリア信号磁界にキャンセル信号磁界を重ねると、エリア信号磁界の波形が崩れるため、エリア信号磁界がキャンセルされる。
【0023】
しかしながら、エリア信号磁界にキャンセル信号磁界を重ねても、必ずしも、
図4(F)のような波形になるとは限らない。
【0024】
上記したように、エリア信号磁界とキャンセル信号磁界とは同じ周波数を有するため、2つの信号が完全に重なると、キャンセル信号磁界によってエリア信号磁界が増幅される可能性がある。この状態を
図5(A)および
図5(B)に示す。なお、ここでは、エリア信号磁界とキャンセル信号磁界とをそれぞれ実線と点線で示している。
【0025】
図5は、キャンセル信号磁界における問題点およびその解決法を示す図である。すなわち、
図5(A)に示すように、エリア信号磁界とキャンセル信号磁界とが重なると、
図5(B)のように2つの信号の振幅の大きい部分が重なる信号が生成されるため、ICタグはエリア信号磁界として認識する。滅多に生じないが、このような現象が生じうる。
【0026】
そこで、この実施の形態では、キャンセル信号磁界として、一定サイクルごとに位相を45度ずらしたキャンセル信号磁界を出力する。この状態を
図5(C)に示す。ここでは、4サイクルごとに45度位相のずれた信号をキャンセル信号磁界とする。この信号をエリア信号磁界に加えると、
図5(D)のような信号が得られる。
【0027】
図5(D)を参照して、エリア信号磁界にこのキャンセル信号を重ねると、周期の重なるところは信号を強め合うが、45度ずらしたために完全には合致しない。その結果、ICタグはエリア信号磁界としての信号を認識できない。
【0028】
なお、上記実施の形態においては、一定サイクルごとに位相を45度ずらした場合について説明したが、これに限らず、任意の角度ずらしてもよい。
【0029】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示する実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 フォークリフト、11 キャンセルユニット、12 シート型キャンセルコイル、13 キャンセル信号磁界、21 制御ユニット、22 送信アンテナ、23 送信ユニット、24 エリア信号磁界、25 警報ユニット、30 重機周りの安全管理システム、31,32 ICタグ。