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特許7165995細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に結合する抗体を使用した癌治療
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  • 特許-細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に結合する抗体を使用した癌治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に結合する抗体を使用した癌治療
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20221028BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221028BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019544812
(86)(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018012545
(87)【国際公開番号】W WO2018156250
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】62/461,560
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516365493
【氏名又は名称】アールイーエムディー バイオセラピューティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REMD Biotherapeutics,Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】カルツォーネ,フランク,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ハイ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0237154(US,A1)
【文献】国際公開第2016/196237(WO,A1)
【文献】特表2002-537226(JP,A)
【文献】特表2014-512809(JP,A)
【文献】Mengnan He et al.,Remarkably similar CTLA-4 binding properties of therapeutic ipilimumab and tremelimumab antibodies,Oncotarget,2017年05月19日,Vol.8, No.40,pp.67129-67139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCTLA-4に特異的に結合し、配列番号55、56、57、58、59、60および61で示される配列からなる群から選択される重鎖可変領域配列と、配列番号62、63および64で示される配列からなる群から選択される軽鎖可変領域配列とを含む、単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
請求項に記載の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片において、配列番号60の重鎖可変領域配列、および配列番号64の軽鎖可変領域配列を含むことを特徴とする単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
請求項に記載の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片において、配列番号61の重鎖可変領域配列、および配列番号64の軽鎖可変領域配列を含むことを特徴とする単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
請求項に記載の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片において、配列番号58の重鎖可変領域配列、および配列番号63の軽鎖可変領域配列を含むことを特徴とする単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
ヒトCTLA-4に特異的に結合し、配列番号77、78、79、80、81、82、及び83で示される配列からなる群から選択される重鎖配列と、配列番号84、85、及び86で示される配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項に記載の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片において、配列番号82の重鎖配列および配列番号86の軽鎖配列を含むことを特徴とする単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
請求項に記載の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片において、配列番号83の重鎖配列および配列番号86の軽鎖配列を含むことを特徴とする単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項に記載の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片において、配列番号80の重鎖配列および配列番号85の軽鎖配列を含むことを特徴とする単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連特許出願]
本出願は、2017年2月21日に出願された米国仮出願第62/461,560号の利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)は、当初、細胞溶解性T細胞cDNAライブラリのディファレンシャルスクリーニングによって同定されたT細胞表面分子である(Brunet et al.Nature、328:267-270、1987)。CTLA-4は免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーであり、単一の細胞外Igドメインを含んでいる。細胞傷害活性を有するT細胞集団中にCTLA-4転写物が発見されており、CTLA-4が細胞溶解応答で機能する可能性が示唆されている(Brunet et al.1988、supra;Brunet et al.Immunol.Rev.,103-21-36、1988)。研究者は、CD28と同じ染色体領域(2q33-34)(Lafage-Pochitaloff et al.,Immunogenetics,31:198-201,1990)のCTLA-4のヒト対応物に関する遺伝子のクローニングとマッピングを報告している(Dariavach et al.,J.Immunol.,18:1901-1905,1988)。このヒトCTLA-4 DNAと、CD28タンパク質をコードするものとの配列比較により、膜近傍および細胞質領域で最大相同性を持つ配列の有意な相同性が明らかになる(Brunet et al.,1988、supra;Dariavach et al.,1988、supra)。
【0003】
CTLA-4は主にT細胞に発現し、そのリガンドCD80(B7.1)およびCD86(B7.2)の発現は、抗原提示細胞、T細胞、およびその他の免疫媒介細胞に大きく制限されている。CTLA-4は、CD28媒介T細胞の活性化に続くT細胞の応答を抑制する共阻害剤として作用する。CTLA-4の結合による負の調節の阻害は、適応免疫の刺激とT細胞活性化の増強を促進することが示されている。CTLA-4遮断抗体は、単独療法として投与した場合に、さまざまなマウス悪性腫瘍モデルで有効性を実証しており、さらに、ワクチン、化学療法、放射線などのその他の薬剤と併用した場合の相乗的な抗腫瘍活性を示している。
【0004】
がん患者の単剤CTLA-4遮断に関する最近の臨床データは、単剤チェックポイント遮断が客観的な腫瘍反応と全生存期間の改善に関連するため、これらの経路がヒトの腫瘍耐性の維持に重要な役割を果たすことを実証している(Hodi et al.,N Engl J Med、2010)。さらに、メラノーマ患者のPD-1とCTLA-4遮断を組み合わせたごく最近のデータは、いずれかのチェックポイントのみを遮断する場合と比較して客観的な腫瘍反応の割合が増加し、組み合わせたチェックポイントの遮断が臨床的利益の増加につながるという意見を支持している(Wolchok et al.,N Engl J Med、366:2443-54、2012)。
【0005】
CTLA-4抗体は、このクラスの米国食品医薬品局(FDA)の承認を得るための最初の「チェックポイント阻害剤」免疫療法薬であった。がんの抗腫瘍免疫を増強する新規治療戦略として、イピリムマブおよびトレメリムマブを含む抗CTLA-4抗体の臨床開発が進行中である。イピリムマブとトレメリムマブは両方ともメラノーマに広く評価されている。特に、イピリムマブは最近、進行性メラノーマ治療用の単剤療法として承認された。トレメリムマブは現在、メラノーマおよび悪性中皮腫の単剤療法としてフェーズII試験の評価を受けており、一方、イピリムマブは、メラノーマ、前立腺がん、肺がんを含むさまざまなタイプの、化学療法や放射線療法など腫瘍のフェーズIIおよびIII試験で臨床試験中である。(Grosso et al.,Cancer Immunity、Vol.13,pg 5,22 Jan 2013)。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に特異的に結合する単離された抗体およびその抗原結合断片が提供されている。これらのCTLA-4抗体またはその抗原結合断片は、CTLA-4に対して高い親和性を有し、CTLA-4を阻害する機能を有し、特定の種(例えば、ヒト)の非修飾親抗体と比較して免疫原性が低く、ヒトの行基(例、がん)、感染症、その他の疾患の治療に使用できる。
【0007】
様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、Fab’断片、Fab断片、F(ab)’断片、ドメイン抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、又はH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減するヒンジ領域に少なくとも1つの変異を有するIgG4抗体から選択される。様々な実施形態において、抗体はキメラ抗体である。様々な実施形態において、抗体はヒト化抗体である。様々な実施形態において、抗体は完全ヒト抗体である。様々な実施形態において、SEQ ID NO:1のヒトCTLA-4タンパク質に抗親和性を有する単離された抗体及びその抗原結合断片を提供する。
【0008】
様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、少なくとも約1x10-6M、少なくとも約1x10-7M、少なくとも約1x10-8M、少なくとも約1x10-9M、少なくとも約1x10-10M、少なくとも約1x10-11M、又は少なくとも約1x10-12Mの解離定数(K)でCTLA-4タンパク質に結合する。
【0009】
一態様では、本発明の単離抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し:(a)配列番号27~31から選択されたCDR3配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR3;(b)配列番号12~16から選択されたCDR3配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR3配列;(c)(a)の軽鎖CDR3配列および(b)の重鎖配列;のいずれかを含む。
【0010】
様々な実施形態において、単離された抗体または抗原結合断片は:(d)配列番号17~21から選択されたCDR1配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR1配列;(e)配列番号22-26から選択されたCDR2配列と同一、実質的に同一、または実質的に類似する軽鎖CDR2配列;(f)配列番号2~6から選択されたCDR1配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR1配列;(g)配列番号7-11から選択されたCDR2配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR2配列;(h)(d)のCDR1配列の軽鎖CDR配列および(f)の重鎖CDR1配列;または(i)(e)の軽鎖CDR2配列および(g)の重鎖CDR2配列;から選択されたアミノ酸配列をさらに含む。
【0011】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し:(a)SEQ ID NO:17-21から選択されたCDR1配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR1配列;(b)配列番号22-26から選択されたCDR2配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR2配列;(c)配列番号27~31から選択されたCDR3配列と同一、実質的に同一、または実質的に類似する軽鎖CDR3配列;(d)配列番号2-6から選択されたCDR1配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR1配列;(e)配列番号7-11から選択されたCDR2配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR2配列;(f)配列番号12~16から選択されたCDR3配列と同一、実質的に同一、または実質的に類似する重鎖CDR3配列;を含む
【0012】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し:(a)配列番号17と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR1;(b)配列番号22と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR2配列;(c)配列番号27と同一、実質的に同一、または実質的に類似する軽鎖CDR3配列;(d)配列番号2と実質的に同一または実質的に類似同一する重鎖CDR1配列;(e)配列番号7と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR2配列;(f)配列番号12と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR3配列:を含む。
【0013】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し:(a)配列番号18と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR1配列;(b)配列番号23と同一、実質的に同一、または実質的に類似する軽鎖CDR2配列;(c)配列番号28と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR3配列;(d)配列番号3と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR1配列;(e)配列番号8と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR2配列;(f)配列番号13と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR3配列:を含む。
【0014】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し:(a)配列番号19と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR1配列;(b)配列番号24と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR2配列;(c)配列番号29と同一、実質的に同一、または実質的に類似する軽鎖CDR3配列;(d)配列番号4と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR1配列;(e)配列番号9と同一、実質的に同一、または実質的に類似する重鎖CDR2配列;(f)配列番号14と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR3配列;を含む。
【0015】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し:(a)配列番号20と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR1配列;(b)配列番号25と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR2配列;(c)配列番号30と同一、実質的に同一、または実質的に類似する軽鎖CDR3配列;(d)配列番号5と同一、実質的に同一または実質的に類する重鎖CDR1配列;(e)配列番号10と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR2配列;(f)配列番号15と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR3配列;を含む。
【0016】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し:(a)配列番号21と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR1配列;(b)配列番号26と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR2配列;(c)配列番号31と同一、実質的に同一または実質的に類似する軽鎖CDR3配列;(d)配列番号6と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR1配列;(e)配列番号11と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR2配列;(f)配列番号16と同一、実質的に同一または実質的に類似する重鎖CDR3配列;を含む。
【0017】
様々な実施形態において、本発明の単離された抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し:(a)重鎖および/または軽鎖可変ドメインであって、配列番号17~21、22~26、および27~31と同一、実質的に同一または実質的に類似する3つの軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3のセット、および/または配列番号2~6、7~11、および12~16と同一、実質的に同一、または実質的に類似する3つの重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3のセット、を有する可変ドメイン;(b)ヒト免疫グロブリン(IgG)の4つの可変領域フレームワーク領域のセット;のいずれかを含む。様々な実施形態では、この抗体は、選択的にヒンジ領域を含んでいてもよい。様々な実施形態において、この抗体は完全にヒト化された抗体である。様々な実施形態において、この抗体は完全なヒト抗体である。
【0018】
様々な実施形態において、フレームワーク領域は、ヒト生殖系列エクソンX、J、VおよびJ配列から選択される。たとえば、VドメインのFRのヒト化用受容体シーケンスは、生殖細胞系VエクソンV1-18(Matsuda et al.,Nature Genetics 3:88-94、1993)またはV1-2(Shin et al.,EMBO J.10:3641-3645、1991)から、およびヒンジ領域(J)用受容体シーケンスは、エクソンJ-6(Mattila et al.,Eur.J.Immunol.25:2578-2582、1995)から選択することができる。その他の実施例では、生殖細胞系VエクソンB3(Cox et al.,Eur.J.Immunol.24:827-836、1994)およびJエクソンJ-1(Hieter et al.,J.Biol.Chem.257:1516-1522、1982)は、Vドメインヒト化の受容体シーケンスとして選択できる。
【0019】
様々な実施形態において、単離された抗体または抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合した場合:(a)参照抗体と実質的に同じまたはそれ以上のKdを有するヒトCTLA-4に結合する;(b)参照抗体を有するヒトCTLA-4への結合に競合する;または、(c)参照抗体よりもヒト被験体における免疫原性が低く、この参照抗体が、配列番号39および49に示されている重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメイン配列の組み合わせを含む。
【0020】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号55~61に記載の配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号62~64に記載の配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0021】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号77~83に記載の配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する配列を有する重鎖と、配列番号84~86に記載の配列と同一、実質的に同一、または実質的に類似する配列を有する軽鎖と、を含む。
【0022】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号82に記載の重鎖配列、および配列番号86記載の軽鎖配列を含む。
【0023】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号83に記載の重鎖配列、および配列番号86に記載の軽鎖配列を含む。
【0024】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号80に記載の重鎖配列、および配列番号85に記載の軽鎖配列を含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、本発明の薬学的に許容される担体と混合した単離された抗体又は抗原結合断片を含む医薬組成物に関する。様々な実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体と混合した単離されたヒト抗体を含む。様々な実施形態において、医薬組成物は、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、静脈内注射、動脈内注射、くも膜下腔内注射、脳室内注射、尿道内注射、頭蓋内注射、関節滑液内注射又は注入から成る群から選択される経路によって、投与するために調剤される。
【0026】
別の態様では、本発明は、対象の癌細胞に対する免疫応答を増強する方法に関するものであり、本発明の治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンとして)の単離抗体または抗原結合断片を対象に投与するステップを具える。様々な実施形態では、本発明は、対象の癌細胞を治療する方法を提供しており、本発明の治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンとして)の抗体またはその抗原結合断片を対象に投与するステップを具える。様々な実施形態では、癌性細胞は、卵巣癌、肺癌、乳癌、胃癌、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、膠芽腫、およびメラノーマからなる群から選択される。
【0027】
様々な態様において、対象は以前に抗癌療法による治療に反応したが、治療を中断すると再発(以下「再発癌」)を被っている。様々な実施形態において、対象は耐性または難治性の癌を患っている。様々な実施形態において、癌性細胞は免疫原性腫瘍(例えば、腫瘍自体を使用したワクチン接種が腫瘍攻撃に対する免疫をもたらし得る腫瘍)である。
【0028】
別の態様では、本発明は、対象の癌を治療するように設計された併用療法に関し:a)治療有効量の本発明の単離抗体または抗原結合断片を対象へ投与するステップと、b)免疫療法、化学療法、小分子キナーゼ阻害剤標的療法、手術、放射線療法、および幹細胞移植からなる群から選択された一またはそれ以上の追加療法行うステップとを具え、この併用療法が腫瘍細胞の細胞死滅を増加させる、すなわち、同時投与した場合、単離された抗体または抗原結合断片と、追加の療法との間に相乗効果がある。
【0029】
様々な態様において、本発明は、対象における病原体、毒素および自己抗原に対する免疫応答を刺激する方法に関し、治療的有効量(単剤療法または併用療法レジメンとして)の本発明の単離された抗体または抗原結合断片を対象に投与するステップを具える。様々な実施形態において、この対象は、従来のワクチンを使用した治療に耐性があるか、またはそれによる治療が効果的でない感染症を有する。
【0030】
別の態様では、エフェクタ分子に結合した、連結した(又は安定的に結合した)抗体又は結合断片を含む単離された免疫複合体又は融合タンパク質を提供する。様々な実施形態において、エフェクタ分子は、免疫毒素、サイトカイン、ケモカイン、治療薬又は化学療法薬である。
【0031】
別の態様では、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、付加的な機能的部分、例えば望ましい薬物動態特性を与える標識又は部分に共有結合し得る(又は安定的に結合し得る)。様々な実施形態において、標識は、蛍光標識、放射性標識、及び特有の核磁気共鳴サインを有する標識から成る群から選択される。
【0032】
別の態様では、本発明は、例えば、ヒトCTLA-4関連疾患を診断するために、試料のヒトCTLA-4抗原の存在をin vitro又はin vivoに検出する方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明の抗体の重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメイン、またはその両方をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸が提供されている。様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号65~71に記載の重鎖可変ドメインポリヌクレオチド配列と;配列番号72~74に記載の軽鎖可変ドメインポリヌクレオチド配列、またはその両方を含む。
【0034】
別の態様では、本発明の抗体の重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメイン、またはその両方をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸が提供されている。様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号87~93に記載の重鎖可変ドメインポリヌクレオチド配列と;配列番号94~96に記載の軽鎖可変ドメインポリヌクレオチド配列、またはその両方を含む。
【0035】
本発明の核酸を含むベクターも提供されている。一実施形態では、このベクターは発現ベクターである。また、本発明の核酸を含む単離された細胞も提供されている。一実施形態では、この細胞は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞である。別の実施形態では、細胞がハイブリドーマであり、細胞の染色体が本発明の核酸を含む。さらに、本発明の抗体または抗原結合断片を作製する方法が提供されており、これは細胞に本発明の抗原結合タンパク質を発現させる条件下で細胞を培養またはインキュベートするステップを具える。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、PBS(-●-)、10mg/kg MAb A4(13F10D 7)(-■-)または10mg/kgイピリムマブ(-▲-)のいずれかで処理したhCTLA-4K1マウスのMC38腫瘍に対するインビボ効果を示す折れ線グラフである。マウスの抗体の3週間の有効性を評価した。腫瘍体積(mm)が時間(日)に対してプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、抗体等の抗原結合タンパク質、又はヒトCTLA-4に特異的に結合するその抗原結合断片に関する。一態様において、単離された抗体及びその抗原結合断片を提供し、CTLA-4に特異的に結合し、CTLA-4に高親和性を有し、CTLA-4を阻害するように機能し、所与の種(例えばヒト)の未変性の親抗体に比べて、免疫原性が低く、ヒト疾患(例えば癌)、感染症、及びCTLA-4によって媒介されるその他の障害を治療するために使用することができる。また、核酸分子並びにその誘導体及び断片を提供し、抗CTLA-4抗体、抗体断片又は抗体誘導体の全て又は部分をコードする核酸等のCTLA-4に結合するポリペプチドの全て又は部分をコードするポリヌクレオチドの配列を含む。また、核酸を含むベクター及びプラスミド、並びに核酸及び/又はベクター及びプラスミドを含む細胞若しくは細胞株を提供する。また、抗CTLA-4抗体等のヒトCTLA-4に結合する抗原結合タンパク質を作製、識別又は単離する方法、抗原結合タンパク質がCTLA-4に結合するかどうかを確認する方法、ヒトCTLA-4に結合する抗原結合タンパク質を含む医薬組成物等の組成物を作製する方法、並びに、対象にCTLA-4に結合する抗体又はその抗原結合断片を投与する方法、例えば、CTLA-4によって媒介される病態を治療する方法を提供する。
【0038】
本明細書に他に規定のない限り、本発明に関係して使用される科学及び技術用語は、当業者によって共通して理解される意味を有する。さらに、文脈によって他に要求されない限り、単数形の用語は、複数のものを含み、複数形の用語は、単数のものを含む。概して、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションは、共通して使用されるものであり、当該技術分野で周知である。本発明の方法及び技術は、概して、当該技術分野で周知であり、他に指示されていない限り、本明細書全体で記載され、検討される様々な一般的、より詳細な参考文献に記載される通常の方法に従って実施される。例えば、Green and Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2012)を参照されたい、参照により本明細書に援用される。酵素反応及び精製技術は、当該技術分野で広く達成され、又は本明細書に記載されるように、製造者の仕様書に従って実施される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学及び医薬品化学及び製薬化学の実験的手順及び技術に関係して使用される命名法は、広く使用され、当該技術分野で周知されている。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、配合及び送達並びに対象の治療に使用される。
【0039】
ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、標準的な1又は3文字の略語を使用して示される。他に断りのない限り、ポリペプチド配列は、左側にアミノ末端及び右側にカルボキシ末端を有し、並びに単鎖核酸配列及び二重鎖核酸配列の上部の鎖は、左側に5’末端を、右側に3’末端を有する。ポリペプチドの特定のセクションは、アミノ酸80~119等のアミノ酸残基数によって示すことができ、又はSer80~Ser119等の部位の実際の残基によって示すことができる。特定のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、参照配列との差異の程度に基づいて記載することもできる。特定の軽鎖及び重鎖可変領域のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、L1(「軽鎖可変領域1」)及びH1(「重鎖可変領域1」)で示される。軽鎖及び重鎖を含む抗体は、軽鎖の名前と重鎖可変領域の名前を組み合わせることによって示される。例えば、「L4H7」は、例えば、L4の軽鎖可変領域及びH7の重鎖可変領域を含む抗体を示す。
【0040】
「抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的又は部分的にコードされた1つ以上のポリペプチドを含み、腫瘍抗原に対する特異性又は病理において過剰発現した分子に対する特異性を有するタンパク質を指す。認識される免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子並びにこれらの遺伝子のサブタイプ及び無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖(LC)は、カッパ又はラムダの何れかとして分類される。重鎖(HC)は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、順に、それぞれ、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。典型的な免疫グロブリン(例えば抗体)構造単位は、テトラボディを含む。各テトラボディは、ポリペプチド鎖の2つの同一対から構成され、それぞれ、1つの「軽」鎖(約25kD)及び1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原の認識を担う約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を規定する。
【0041】
全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHとして省略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つの領域CH1、CH2及びCH3(及びいくつかの例ではCH4)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLとして省略される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つの領域Cから構成される。VH及びVLは、さらに、超変異性の領域に細分することができ、相補性決定領域(CDR)と呼ばれ、より保存された、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域と間を置く。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、アミノ末端からカルボキシ末端まで配置される。フレームワーク領域及びCDRの範囲は規定されている。異なる軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域の配列は、比較的、ヒト等の種の中で保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成的軽鎖及び重鎖の組み合わされたフレームワーク領域であり、3次元空間で、位置決め及びCDRを整列する役割を担う。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスでもよい。
【0042】
CDRは主に、抗原のエピトープに結合する役割を有する。各鎖のCDRは、概して、CDR1、CDR2、CDR3と呼ばれ、N末端から連続して始まって番号が付けられ、また、概して特定のCDRが位置する鎖によっても識別される。したがって、VH CDR3はそれが見つけられる抗体の重鎖の可変領域に位置し、VL CDR1は、それが見つけられる抗体の軽鎖の可変領域からのCDR1である。異なる特異性(すなわち、異なる抗原について異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。CDRは抗体ごとに異なるが、CDR内の限られた数のアミノ酸の位置は、抗原結合に直接的に関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。
【0043】
Kabatの定義が抗体の残基のナンバリングの標準であり、概して、CDR領域を識別するために使用される。Kabatのデータベースは、今でもオンラインに保持され、CDR配列を決定することができ、例えば、IMGT/V-QUESTプログラムバージョン:3.2.18.、2011年3月29日、インターネットで入手可能及びBrochet,X.等、Nucl.Acids Res.36、W503-508、2008を参照のこと。Chothiaの定義は、Kabatの定義に類似するが、Chothiaの定義は、特定の構造的ループ領域の位置を考慮している。例えば、Chothia等、J.Mol.Biol.、196:901-17、1986;Chothia等、Nature、342:877-83、1989を参照のこと。AbMの定義は、抗体構造をモデル化するOxford Molecular Groupによって作製されたコンピュータプログラムの統合された一揃いを使用する。例えば、Martin等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:9268-9272、1989;“AbM(商標)、A Computer Program forModeling Variable Regions of Antibodies、”Oxford、UK;Oxford Molecular,Ltd.を参照のこと。AbMの定義は、知識データベース及びab initio法の組み合わせを使用して、一次配列から抗体の三次構造をモデル化し、例えば、Samudrala等、“Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach,”、PROTEINS、Structure、Function and Genetics Suppl.、3:194-198、1999に記載されている。接触定義は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づく。例えば、MacCallum等、J.Mol.Biol.、5:732-45、1996を参照のこと。
【0044】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用され、インタクトな抗体のパパイン消化によって生成され得る。Fc領域は、未変性配列Fc領域又は変異体Fc領域であってもよい。免疫グロブリンのFc領域は、概して、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、CH4ドメインを含んでもよい。抗体のFc部分は、いくつかの重要なエフェクタ機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)並びに抗体及び抗原-抗体複合体の半減期/クリアランス率(例えば、新生児FcR(FcRn)は、エンドソームにおいて、酸性のpHで、IgGのFc領域に結合し、IgGを分解から保護し、それによってIgGの長い血清半減期に寄与する)を媒介する。Fc部分のアミノ酸残基を置換して抗体のエフェクタ機能を変化させることは、当該技術分野で周知である(例えば、Winter等、米国特許第5,648,260号及び第5,624,821号を参照のこと)。
【0045】
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして、又は、はっきりとした特徴の断片のメンバーとして存在する。このような断片として、Fab断片、Fab’断片、Fab、F(ab)’断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)及びジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)が挙げられ、標的抗原に結合する。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び免疫グロブリンの重鎖可変領域がリンカーによって結合した融合タンパク質であり、dsFvでは、鎖が変異して、ジスルフィド結合を誘導し、鎖の結合が安定化されている。様々な抗体断片は、インタクトな抗体の消化の点から規定され、当業者は、このような断片が化学的又は組み換えDNA方法を使用することによって、デノボに合成することができることを理解する。したがって、本明細書で使用する場合、抗体という用語は、例えば、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、シングルドメイン抗体、ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、望ましい生物活性を示す抗体断片、ジスルフィド結合されたFvs(sdFv)、細胞内抗体、エピトープ結合断片又は上記の抗原結合断片を含む。
【0046】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を生成し、それぞれ1つの抗原結合部位を有する。「Fab断片」は、1つの軽鎖及びCH1並びに1つの重鎖の可変領域を含む。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fab’断片」は、VHドメイン及びCH1ドメインを含む1つの軽鎖及び1つの重鎖の部分を含み、また、CH1とCH2ドメインの間の領域も含み、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’断片の2つの重鎖の間に形成されて、F(ab’)分子を形成することができる。
【0047】
抗体のペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋結合することができるF(ab’)断片を産生する。「F(ab’)断片」は、CH1とCH2の間の定常領域の部分を含む2つの軽鎖及び2つの重鎖を含み、2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成する。F(ab’)断片は、2つの重鎖の間にジスルフィド結合によって一緒に保持される2つのFab’断片から構成される。
【0048】
「Fv領域」は、重鎖と軽鎖の両方から可変領域を含むが、定常領域を欠失している。
【0049】
「単鎖抗体」は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が可撓性のリンカーによって接続されて、1つのポリペプチド鎖を形成し、抗原結合領域を形成する。単鎖抗体は、国際特許出願第WO88/01649号、米国特許第4,946,778号及び第5,260,203号に詳細に記述され、その開示は参照により援用される。
【0050】
「抗原結合断片」及び「抗原結合タンパク質」という用語は、本明細書で使用する場合、特定の標的抗原に結合するタンパク質を意味する。「抗原結合断片」は、限定されないが、免疫学的に機能的断片等の抗体及びその結合部分を含む。抗体の抗原結合断片の例は、重鎖及び/又は軽鎖CDR、又は重鎖及び/又は軽鎖可変領域である。
【0051】
抗体又は免疫グロブリン鎖(重鎖又は軽鎖)抗原結合タンパク質の「免疫学的に機能的な断片(又は単純に断片)」は、本明細書で使用する場合、全長鎖に存在するアミノ酸の少なくともいくつかを欠失しているが、抗原に特異的に結合することができる抗体の部分(どのようにしてその部分を得る又は合成するかに関わらず)を含む抗原結合タンパク質の種である。このような断片は、標的抗原に結合し、所与のエピトープに結合するために、インタクトな抗体を含むその他の抗原結合タンパク質と競合する可能性がある点において、生物活性である。いくつかの実施形態において、断片は断片を中和している。一態様において、このような断片は、全長軽鎖又は重鎖に存在する少なくとも1つのCDRを保持し、いくつかの実施形態において、単一の重鎖及び/又は軽鎖又はその部分を含む。これらの生物活性な断片は、組み換えDNA技術によって産生することができ、又はインタクトな抗体を含む抗原結合タンパク質の酵素的若しくは化学的切断によって産生することができる。免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片として、限定されないが、Fab、ダイアボディ、Fab’、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体及び単鎖抗体が挙げられ、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ラクダ科又はウサギを含む哺乳動物源に由来し得る。本明細書に開示される抗原結合タンパク質の機能的部分、例えば1つ以上のCDRは、第2タンパク質又は小分子に共有結合して、身体の特定の標的に向けられる治療薬を作製することができ、二機能性治療特性を有し、又は長い血清半減期を有する。
【0052】
ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体であり、各ポリペプチド鎖は、リンカーによって接続されるVH及びVL領域を含み、リンカーは短すぎて、同鎖の2つの領域の間で対になることができず、したがって、各領域は別のポリペプチド鎖の相補的領域と対になることができる(例えば、Holliger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444-48、1993;及びPoljak等、Structure、2:1121-23、1994を参照のこと)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合、対になることから生じるダイアボディは、2つの同一の抗原結合部位を有する。異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用して、2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製することができる。同様に、トリアボディ及びテトラボディは、それぞれ3つ及び4つのポリペプチド鎖を含む抗体であり、それぞれ3つ及び4つの抗原結合部位を形成し、同じであっても異なっていてもよい。
【0053】
二重特異性抗体又は断片は、いくつかの構成からなり得る。例えば、二重特異性抗体は、単一の抗体(又は抗体断片)に類似しているかもしれないが、2つの異なる抗原結合部位(可変領域)を有する。様々な実施形態において、二重特異性抗体は、化学技術(Kranz等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:5807、1981;「ポリドーマ」(polydoma)技術(例えば、米国特許第4,474,893号を参照のこと)、又は組み換えDNA技術によって生成することができる。様々な実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、腫瘍関連抗原の少なくとも1つに、少なくとも2つの異なるエピトープについて結合特異性を有し得る。様々な実施形態において、抗体及び断片は異種抗体でもあり得る。異種抗体は、2つ以上の抗体、又は一緒に結合する抗原結合断片(例えば、Fab)であり、それぞれ、異なる特異性を有する抗体又は断片である。
【0054】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を含む個別の抗体は、可能性として少量存在し得る自然発生の変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的で、単一抗原に対して向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を概して含むポリクローナル抗体の調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の1つの決定基に対して向けられる。修飾因子の「モノクローナル」は、特定の方法によって抗体を産生する必要があるものとして解釈されない。
【0055】
「キメラ抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒト等の1つの種からのフレームワーク残基を有する抗体及び標的抗原に特異的に結合するマウス抗体等の別の種からの(概して、抗原結合を与える)CDRを指す。
【0056】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本開示のヒト抗体は、例えば、CDR及び特定のCDR3のヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、in vitroのランダム又は部位特異的変異原性によって導入される変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0057】
「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒト化軽鎖及びヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体を指す。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体として同抗原に結合する。ヒト化免疫グロブリン又は抗体のアクセプターフレームワークは、ドナーフレームワークから採取されたアミノ酸によって限定された数の置換を有し得る。ヒト化又はその他のモノクローナル抗体は、抗原結合又はその他の免疫グロブリン機能に実質的に影響しない付加的な保護的アミノ酸置換を有する可能性がある。様々な実施形態において、フレームワーク領域は、ヒト生殖系列エキソンX、J、Vκ及びJκ配列から選択される。例えば、VドメインのFRのヒト化についてのアクセプター配列は、本物のVエキソンV1-18(Matsuda等、Nature Genetics3:88-94、1993)又はV1-2(Shin等、EMBO J.10:3641-3645、1991)から選択することができ、ヒンジ領域(J)については、エキソンJ-6から選択することができる(Mattila等、Eur.J.Immunol.25:2578-2582、1995)。他の例では、生殖系列VκエキソンB3(Cox等、Eur.J.Immunol.24:827-836、1994)及びJκエキソンJκ-1(Hieter等、J.Biol.Chem.257:1516-1522、1982)をVドメインヒト化についてアクセプター配列として選択することができる。
【0058】
「組み換えヒト抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現された抗体;組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子導入の動物(例えばマウス)から単離された抗体;その他のDNA配列に対するヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングに関与するその他の方法によって調製、発現、作製又は単離された抗体等の組み換え方法によって調製、発現、作製又は単離された全てのヒト抗体を含むことを意図する。このような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する。様々な実施形態において、しかしながら、このような組み換えヒト抗体は、in vitroの変異原性(例えば、ヒトIg配列に遺伝子導入の動物を使用する場合は、in vivoの体細胞性変異原性)に供され、したがって、組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、関係しながら、in vivoのヒト抗体生殖系列レパートリーの内部に自然に存在し得ない配列である。このような組み換え方法の全ては、当業者に周知である。
【0059】
「エピトープ」という用語は、本明細書で使用する場合、免疫グロブリン又はT細胞受容体に特異的に結合することができる、又は分子と相互作用することができるタンパク質決定基を含む。エピトープの決定基は、概して、アミノ酸、炭水化物又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面グルーピングから成り、概して、三次元構造特徴及び特別な変化特徴を有する。エピトープは、「線形」又は「立体構造」であり得る。線形のエピトープでは、タンパク質と(抗体等の)相互作用する分子との相互作用点は全て、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に生じる。立体構造のエピトープでは、相互作用点は、互いに離れているタンパク質のアミノ残残基に沿って生じる。抗原の望ましいエピトープが決定されると、例えば、本開示に記載の技術を使用してそのエピトープに対する抗体を生成することが可能である。あるいは、発見の過程で、抗体の生成及び特徴化が望ましいエピトープについての情報を明らかにし得る。この情報から、同エピトープに結合するための抗体を競合的に選別することが可能である。この選別を達成するためのアプローチは、クロスコンペティション試験を行って、互いに競合的に結合する抗体、例えば、抗原との結合について競合する抗体を見つけることである。
【0060】
抗体を含む抗原結合タンパク質は、少なくとも1x10-6M、又は少なくとも1x10-7M、又は少なくとも1x10-8M、又は少なくとも1x10-9M、又は少なくとも1x10-10M、又は少なくとも1x10-11Mの解離定数(以下に定義するK、又は対応するKb)の値によって決定される高結合親和性を有する抗原に結合する場合、抗原と「特異的に結合する」。目的のヒト抗原と特異的に結合する抗原結合タンパク質は、同じ又は異なる親和性で、同様にその他の種からの目的の同抗原に結合し得る。「K」という用語は、本明細書で使用する場合、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。
【0061】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden及びPiscataway、N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックスの内部のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイム生体分子特異的相互作用を分析することが可能な光学的現象を指す。さらなる記述については、Jonsson U.等、Ann.Biol.Clin.,51:19-26、1993;Jonsson U.等、Biotechniques、11:620-627、1991;Jonsson B.等、J.Mol.Recognit.,8:125-131、1995;及びJohnsson B.等、Anal.Biochem、198:268-277、1991を参照されたい。
【0062】
「免疫原性」という用語は、本明細書で使用する場合、レシピエントに投与されたときに免疫反応(体液性又は細胞性)を発揮する抗体又は抗原結合断片の能力、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を指す。HAMA反応は、対象からのT細胞が投与された抗体に対して免疫反応を起こすときに開始される。T細胞は、その後B細胞をリクルートして、特異的「抗抗体」抗体を生成する。
【0063】
「免疫細胞」という用語は、本明細書で使用する場合、抗原に対する免疫反応を調節することを伴う造血系列の細胞を意味する(例えば、自己抗原)。様々な実施形態において、免疫細胞は、例えば、T細胞、B細胞、樹状細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞又はKuffer細胞である。
【0064】
「ポリペプチド、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では同じ意味で使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。様々な実施形態において、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、アルファ炭素がペプチド結合によって結合されるアミノ酸の鎖である。鎖の一端の末端アミノ酸(アミノ末端)は、したがって、遊離アミノ基を有し、鎖の他方の端の末端アミノ酸(カルボキシ末端)は、遊離カルボキシル基を有する。本明細書で使用する場合、「アミノ末端」(省略するとN末端)という用語は、ペプチドのアミノ末端のアミノ酸上の遊離α-アミノ基を指し、又はペプチド内のその他の位置のアミノ酸のα-アミノ基(ペプチド結合に属する場合、イミノ基)を指す。同様に、「カルボキシ末端」という用語は、ペプチドのカルボキシ末端の遊離カルボキシル基又はペプチド内のその他の位置のアミノ酸のカルボキシル基を指す。ペプチドは、本質的に、限定されないが、アミド結合と反対側のエーテルによって接続されるアミノ酸等のペプチド模倣物を含むポリアミノ酸も含む。
【0065】
「組み換えポリペプチド」という用語は、本明細書で使用する場合、宿主細胞にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現されるポリペプチド等の組み換え方法によって、調製、発現、作製され、そこから生じる、又は単離される融合分子を含む全てのポリペプチドを含むことを意図している。
【0066】
本開示のポリペプチドは、任意の方法及び理由で改変されたポリペプチドを含み、例えば、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させ、(2)酸化に対する感受性を減少させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させ、(4)結合親和性を変化させ、及び(5)その他の物理化学的又は機能的特性を与える又は修正する。例えば、単一又は複数のアミノ酸置換(例えば、保護的アミノ酸置換)は、自然に発生する配列に(例えば、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分に)作製され得る。「保護的アミノ酸置換」は、機能的に類似するアミノ酸で、アミノ酸のポリペプチドの置換を指す。以下の6つの基は、それぞれ、互いに保護的置換であるアミノ酸を含む。
アラニン(A)、セリン(S)及びスレオニン(T)
アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)
アスパラギン(N)及びグルタミン(Q)
アルギニン(R)及びリジン(K)
イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)及びバリン(V)
フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)
【0067】
「非保護的アミノ酸置換」は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスからのメンバーに置換することを意味する。このような変化が行われるときに、様々な実施形態において、アミノ酸のヒドロパシー指数が考えられ得る。それぞれのアミノ酸は、嫌気性及び電荷特徴に基づいて、ヒドロパシー指数を割り当てる。ヒドロパシー指数は、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)である。
【0068】
タンパク質に相互作用的な生物学的機能を与えるヒドロパシーアミノ酸指数の重要性は、技術分野で理解されている(例えば、Kyte等、1982、J.Mol.Biol.157:105~131を参照のこと)。特定のアミノ酸が同様のヒドロパシー指数又はスコアを有するその他のアミノ酸に置換され得、同様の生物活性を保持し続け得ることは周知である。ヒドロパシー指数に基づいて変化するときに、様々な実施形態において、ヒドロパシー指数が+2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。様々な実施形態において、ヒドロパシー指数が+1以内のアミノ酸が含まれ、様々な実施形態において、+0.5以内のアミノ酸が含まれる。
【0069】
また、このようなアミノ酸は親水性に基づいて効率的に置換され、特に、それにより作製された生物学的に機能的なタンパク質又はペプチドは、本明細書に開示されるように、免疫学的実施形態に使用されることを意図することが理解される。様々な実施形態において、タンパク質の最も大きい局所的平均親水性は、その隣接するアミノ酸の親水性によって管理されるように、免疫原性及び抗原性、すなわち、タンパク質の生物活性に相関する。
【0070】
以下の親水性値は、これらのアミノ酸残基に割り当てられ、アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0.+-.1);グルタミン酸(+3.0.+-.1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5.+-.1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5)及びトリプトファン(-3.4)である。同様の親水性値に基づいて変化するときに、様々な実施形態において、親水性値が+2以内のアミノ酸の置換が含まれ、様々な実施形態において、+1以内のアミノ酸の置換が含まれ、様々な実施形態において、+0.5以内のアミノ酸の置換が含まれる。例示的なアミノ酸置換を表1に記載する。
【0071】
「ポリペプチド断片」及び「短縮されたポリペプチド」という用語は、本明細書で使用する場合、対応する全長タンパク質に比べて、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを指す。様々な実施形態において、断片は、例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900又は少なくとも1000アミノ酸長であり得る。様々な実施形態において、断片は、また、例えば、最大1000、最大900、最大800、最大700、最大600、最大500、最大450、最大400、最大350、最大300、最大250、最大200、最大150、最大100、最大50、最大25、最大10又は、最大5アミノ酸長であり得る。断片はさらに、端の片側又は両側に1つ以上の付加的なアミノ酸、例えば、異なる自然発生のタンパク質(例えば、Fc又はロイシンジッパードメイン)又は人工アミノ酸配列(例えば、人工的リンカー配列)からのアミノ酸の配列を含み得る。
【0072】
「ポリペプチド変異体(polypeptide variant/mutant)」という用語は、本明細書で使用する場合、アミノ酸配列を含むポリペプチドを指し、1つ以上のアミノ酸残基が別のポリペプチド配列に対して、アミノ酸配列に挿入され、削除され、及び/又は置換される。様々な実施形態において、挿入、欠失又は置換されるアミノ酸残基の数は、例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450又は少なくとも500アミノ酸長であり得る。本開示の変異体は融合タンパク質を含む。
【0073】
ポリペプチドの「誘導体」は、化学修飾、例えば、ポリエチレングリコール、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)等の別の化学的部分との結合、リン酸化、及びグリコシル化されたポリペプチドである。
【0074】
「%配列同一性」という用語は、本明細書では、「%同一性」という用語と同義に使用され、配列整列プログラムを使用して整列するとき、2つ以上のペプチド配列間のアミノ酸配列同一性のレベル又は2つ以上のヌクレオチド配列間のヌクレオチド配列同一性のレベルを指す。例えば、本明細書で使用する場合、80%の同一性は、所定のアルゴリズムによって決定された80%の配列同一性と同じものを意味し、所与の配列が別の長さの別の配列と少なくとも80%同一であることを意味する。様々な実施形態において、%同一性は、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%以上、所与の配列と同一の配列から選択される。様々な実施形態において、%同一性は、例えば、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%又は約95%~約99%の範囲にある。
【0075】
「%配列相同性」という用語は、本明細書では、「%相同性」という用語と同義に使用され、配列整列プログラムを使用して整列するとき、2つ以上のペプチド配列間のアミノ酸配列相同性のレベル又は2つ以上のヌクレオチド配列間のヌクレオチド配列相同性のレベルを指す。例えば、本明細書で使用する場合、80%の相同性は、所定のアルゴリズムによって決定された80%の配列相同性と同じものを意味し、したがって、所与の配列の相同性が、所与の配列の長さより80%超の配列相同性を有する。様々な実施形態において、%相同性は、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%以上、所与の配列と相同の配列から選択される。様々な実施形態において、%相同性は、例えば、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%又は約95%~約99%の範囲にある。
【0076】
2つの配列間の同一性を決定するために使用することができる例示的なコンピュータプログラムとして、限定されないが、BLASTプログラムの組、例えば、BLASTN、BLASTX、及びTBLASTX、BLASTP及びTBLASTNが挙げられ、NCBIウェブサイトのインターネットで一般に利用可能である。Altschul等、J.Mol.Biol.215:403-10、1990(公開されたデフォルト設定を特別に参照して、すなわち、パラメータw=4、t=17)及びAltschul等、Nucleic Acids Res.、25:3389-3402、1997も参照されたい。配列の検索は、一般に、GenBank Protein Sequences及びその他の公開データベースのアミノ酸配列に対して、所与のアミノ酸配列を評価する場合、BLASTPプログラムを使用して実行される。GenBank Protein Sequences及びその他の公開データベースのアミノ酸配列に対する全リーディングフレームに翻訳された核酸配列を検索するには、BLASTXプログラムが好ましい。BLASTPもBLASTXも、11.0のオープンギャップペナルティ及び1.0の拡張ギャップペナルティのデフォルト値を使用して実行され、BLOSUM-62マトリックスを使用する。例えば、Idを参照されたい。
【0077】
%配列同一性を計算する他に、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、Karlin&Altschul、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、90:5873-5787、1993を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定法は、smallest sum probability(P(N))であり、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間で偶然に一致する確率の指標を提供する。例えば、参照核酸に対する試験核酸の比較において、smallest sum probabilityが約0.1未満、約0.01未満、又は約0.001未満である場合、核酸は参照配列と類似していると考えられる。
【0078】
ポリペプチド配列の文脈で「実質的な類似性」又は「実質的に類似の」という用語は、ポリペプチド領域が、参照配列に対して、少なくとも70%、一般に少なくとも80%、より一般に少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列類似性を有することを示す。例えば、ポリペプチドは、例えば、2つのペプチドが1つ以上の保護的置換によって異なる場合、第2のポリペプチドに実質的に類似する。
【0079】
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位から成るポリマーを指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(「DNA」)及びリボ核酸(「RNA」)並びに核酸類似体等の自然発生の核酸を含む。核酸類似体は、自然発生ではない塩基、自然発生のホスホジエステル結合以外の他のヌクレオチドとの結合に関与するヌクレオチドを含むもの、又はホスホジエステル結合以外の結合によって結合される塩基を含むものを含む。したがって、ヌクレオチド類似体として、例えば、限定されないが、ホスホロチオエート、ジチオリン酸(phosphorodithioate)、ホスホトリエステル、ホスホロアミド酸、ボラノリン酸、メチルホスホン酸、キラル-メチルホスホン酸、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が挙げられる。このようなポリヌクレオチドは、自動DNA合成機を使用して、合成することができる。「核酸」という用語は、概して、大きいポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」という用語は、概して、約50ヌクレオチド以下の短いポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列をDNA配列(すなわちA、T、G、C)によって示す場合、「T」を「U」に置き換えるRNA配列(すなわちA、U、G、C)も含む。
【0080】
通常の表記法を本明細書で使用して、ポリヌクレオチド配列を記載し、一本鎖ポリヌクレオチドの左端は5’-末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向は5’-方向として示される。発生期のRNA転写物にヌクレオチドの5’~3’方向の追加は、転写方向として示される。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」として示され、そのDNAから転写されるmRNAと同じ配列を有し、RNA転写物の5’~5’末端に位置するDNA鎖の配列は、「上流配列」として示され、RNAと同じ配列を有し、コードRNA転写物の3’~3’末端であるDNA鎖の配列は、「下流配列」として示される。
【0081】
「相補的」は、トポロジカルな適合性又は2つのポリヌクレオチドの相互作用する表面を一緒に適合することを指す。したがって、2つの分子は、相補的として記載することができ、さらに接触面の特徴が互いに相補的である。第1のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が第2のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド結合パートナーのヌクレオチド配列と実質的に同一である場合、又は第1のポリヌクレオチドがストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる場合、第2のポリヌクレオチドと相補的である。
【0082】
「特異的にハイブリダイズすること」又は「特異的ハイブリダイゼーション」又は「~に選択的にハイブリダイズする」は、配列が混合物(例えば、全て細胞性の)DNA又はRNAに存在する場合、ストリンジェントな条件下で、好ましくは特定のヌクレオチド配列に、核酸分子を結合、二重化する、又はハイブリダイズすることを指す。「ストリンジェントな条件」という用語は、プローブが、好ましくはその標的配列に、少ない範囲で又は全てではないがその他の配列にハイブリダイズする条件を指す。サザン及びノーザンハイブリダイゼーション等の核酸ハイブリダイゼーション実験の文脈で、「ストリンジェントハイブリダイゼーション」及び「ストリンジェントハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存的であり、環境パラメータが異なれば異なる。核酸のハイブリダイゼーションの広範囲のガイドは、Tijssen、1993、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes、part I、chapter 2、“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”、Elsevier、N.Y.;Sambrook等、2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、3.sup.rd ed.、NY;and Ausubel等、eds.、Current Edition、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、NYに見つけることができる。
【0083】
概して、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、所定のイオン強度及びpHで特定の配列について、熱融点(Tm)より低い約5℃になるように選択される。Tmは、標的配列の50%が完全に適合したプローブにハイブリダイズする(所定のイオン強度及びpH下の)温度である。極めてストリンジェントな条件は、特定のプローブについてTmと等しくなるように選択される。サザン又はノーザンブロットのフィルター上の約100超の相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションについての例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、42℃の1mgのヘパリンを有する50%のホルマリンであり、一晩ハイブリダイゼーションを実施する。高度にストリンジェントな洗浄条件の例は、0.15MのNaCl、72℃、約15分間である。ストリンジェントな洗浄条件の例は、0.2xSSC洗浄、65℃、15分間である。SSC緩衝液の記載についてはSambrook等を参照されたい。高いストリンジェンシー洗浄の前に低いストリンジェンシー洗浄を行って、バックグラウンドプローブシグナルを取り除くことができる。二重の例えば約100個超のヌクレオチドについて、中程度のストリンジェンシー洗浄の例は、15分間の45℃の1xSSCである。二重の例えば約100個超のヌクレオチドについて、低いストリンジェンシー洗浄の例は、15分間の40℃の4~6xSSCである。概して、特定のハイブリダイゼーションアッセイの関係のないプローブについて観察したものより2倍(又はそれ以上の)ノイズ比に対するシグナルは、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。
【0084】
「プライマー」は、示されたポリヌクレオチドテンプレートに特異的にハイブリダイズし、相補的ポリヌクレオチドの合成に開始点を提供することができるポリヌクレオチドを指す。このような合成は、すなわち、ヌクレオチド、相補的ポリヌクレオチドテンプレート及びDNAポリメラーゼ等の重合のための薬剤の存在下で、合成が誘導される条件下に、ポリヌクレオチドプライマーが置かれた場合に生じる。プライマーは、概して一本鎖であるが二本鎖でもよい。プライマーは、概してデオキシリボ核酸であるが、様々な合成及び自然発生のプライマーが多くの用途に有用である。プライマーは、ハイブリダイズして、合成の開始部位として提供されるように設計されたテンプレートに相補的であるが、テンプレートの厳密な配列を反映する必要はない。このような場合では、テンプレートへのプライマーの特異的ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プライマーは、例えば、色素生産性、放射性又は蛍光部分で標識することができ、検出可能な部分として使用することができる。
【0085】
「プローブ」は、ポリヌクレオチドを参照して使用する場合、別のポリヌクレオチドの示された配列に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを指す。プローブは、標的相補的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするが、テンプレートの厳密な相補的配列を反映する必要はない。このような場合では、標的へのプローブの特異的ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プローブは、例えば、色素生産性、放射性又は蛍光部分で標識することができ、検出可能な部分として使用することができる。プローブが相補的ポリヌクレオチドの合成についての開始点を提供する例では、プローブはプライマーであってもよい。
【0086】
「ベクター」は、ベクターに結合された別の核酸を細胞に導入するために使用することができるポリヌクレオチドである。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、付加的な核酸セグメントを連結することができる線形又は環状二本鎖DNA分子を指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり(例えば、複製欠損のレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムに導入することができる。特定のベクターは導入される宿主細胞に自律増殖することが可能である(例えば、複製及びエピソームの哺乳動物ベクターの細菌起源を含む細菌ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソームの哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されると、宿主細胞のゲノムに統合され、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。「発現ベクター」は、選択されたポリヌクレオチドの発現に向かうことができるベクターの種類である。
【0087】
「制御配列」は、操作可能に結合する核酸の発現(例えば、発現のレベル、タイミング又は位置)に影響する核酸である。制御配列は、例えば、直接的に又は1つ以上の他の分子(例えば、制御配列及び/又は核酸に結合するポリペプチド)の活性によって、制御された核酸に影響を及ぼす。制御配列の例として、プロモーター、エンハンサー及びその他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)が挙げられる。制御配列のさらなる例は、例えば、Goeddel、1990、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.及びBaron等、1995、Nucleic Acids Res.23:3605-06に記載されている。ヌクレオチド配列は、制御配列がヌクレオチド配列の発現(例えば、発現のレベル、タイミング又は位置)に影響する場合、制御配列に「操作可能に連結する」。
【0088】
「宿主細胞」は、本開示のポリヌクレオチドを発現させるために使用することができる細胞である。宿主細胞は、原核生物、例えばE.coliであってもよく、又は真核生物、例えば単細胞真核生物(例えば、酵母菌又はその他の真菌類)、植物細胞(例えば、タバコ又はトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞又は昆虫細胞)又はハイブリドーマであってもよい。概して、宿主細胞は、ポリペプチドコード核酸で形質転換又はトランスフェクトすることができる培養細胞であり、宿主細胞に発現することができる。「組み換え宿主細胞」というフレーズは、核酸で形質転換又はトランスフェクトされて、発現した宿主細胞を示すために使用され得る。宿主細胞は、また、核酸を含むが、宿主細胞が操作可能に核酸に結合するように制御配列を宿主細胞に導入しない限り、望ましいレベルで発現しない細胞であり得る。宿主細胞という用語は、特定の対象細胞だけでなく、その細胞の子孫又は潜在的な子孫も指すことが理解される。例えば、変異又は環境的影響によって特定の改変が次の世代に生じうるため、このような子孫は、実際には親細胞と同一でなくてもよいが、本明細書で使用する用語の範囲に含まれる。
【0089】
「単離された分子」という用語は、(分子が例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチドである場合)、起源又は由来源によって、(1)天然状態で不随する天然結合成分に結合していなく、(2)同種の他の分子を実質的に含まず、(3)異なる種からの細胞によって発現し、又は(4)自然発生しない分子である。したがって、化学合成され、又は天然起源の細胞とは異なる細胞システムに発現する分子は、天然結合成分から「単離」される。当該技術分野で周知の精製技術を使用して、単離によって、分子は天然結合成分を実質的に含まないようにすることもできる。分子の純度又は均一性は、当該技術分野で周知のいくつかの方法によって分析され得る。例えば、ポリペプチド試料の純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び当該技術分野で周知の技術を使用して、ゲルを染色してポリペプチドを可視化することで分析してもよい。特定の目的のために、HPLC又は精製について当該技術分野で周知のその他の方法を使用することによって、高分解能を提供してもよい。
【0090】
タンパク質又はポリペプチドは、試料の少なくとも約60%~75%が1つの種類のポリペプチドを示す場合、「実質的に純粋」、「実質的に均一」又は「実質的に精製」されている。ポリペプチド又はタンパク質は単量体であっても、多量体であってもよい。実質的に純粋なポリペプチド又はタンパク質は、概して、約50%、60%、70%、80%又は90%W/Wのタンパク質試料を含み、より通常は約95%、好ましくは99%以上純粋である。タンパク質の純度又は均一性は、当該技術分野で周知のいくつかの方法によって示され、次に当該技術分野で周知の染料でゲルを染色して1つのポリペプチドバンドを可視化してもよい。特定の目的のために、HPLC又は精製について当該技術分野で周知のその他の方法を使用することによって、高分解能を提供してもよい。
【0091】
「リンカー」は、例えば、5’末端の1つの相補的配列及び3’末端の別の相補的配列にハイブリダイズする核酸分子を共有結合、又はイオン又はファンデルワールス又は水素結合の何れかで2つのその他の分子を連結する分子を指し、したがって2つの非相補的配列を接続する。「開裂可能なリンカー」は、開裂可能なリンカーによって接続された2つの成分を分離するために分解又は切断することができるリンカーを指す。開裂可能なリンカーは、概して、酵素、通常は、ペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、リパーゼ等によって開裂される。開裂可能なリンカーは、また、例えば、温度、pH、塩濃度等の変化等の環境的要因によっても開裂し得る。
【0092】
「標識」又は「標識する」という用語は、本明細書で使用する場合、抗体の別の分子を組み込むことを指す。一実施形態において、標識は、検出可能なマーカーであり、例えば、放射標識されたアミノ酸を組み込む、又は印付きのアビジン(例えば、蛍光マーカーを含むストレプトアビジン又は光学的若しくは熱量測定方法によって検出することができる酵素活性)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドに付着させることである。別の実施形態において、標識又はマーカーは、治療用、例えば、薬物複合体又はトキシンであり得る。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識する様々な方法は、当該技術分野で周知であり、使用され得る。ポリペプチドの標識の例として、限定されないが、放射性同位体又は放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次的レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、ガドリニウムキレート等の磁気剤、百日咳毒素等のトキシン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにその類似体又は相同体が挙げられる。いくつかの実施形態において、ラベルは、様々な長さのスペーサーアームによって付着して、潜在的な立体障害を減少させる。
【0093】
「免疫療法」という用語は、本明細書で使用する場合、癌治療を指し、限定されないが、特定の腫瘍抗原に対して枯渇抗体を使用する治療;抗体薬物複合体を使用する治療;CTLA-4、PD-1、PD-L1、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3及びVISTA等の同時刺激若しくは共阻害分子(免疫チェックポイント)に対して、アゴニスト、アンタゴニスト又は遮断抗体を使用する治療;IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-β及びIFN-γ等の二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE(登録商標));シプロイセルT等の治療用ワクチンを使用する治療;樹状細胞ワクチン又は腫瘍抗原ペプチドワクチンを使用する治療;CAR-NK細胞を使用する治療;腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を使用する治療;養子性に導入された抗腫瘍T細胞(ex vivoに増殖及び/又はTCRトランスジェニック)を使用する治療;TALL-104細胞を使用する治療;並びにToll様受容体(TLR)アゴニストCpG及びイミキモド等の免疫刺激薬を使用する治療が挙げられる。
【0094】
「免疫複合体」又は「融合タンパク質」という用語は、本明細書で使用する場合、エフェクタ分子に直接又は間接的に結合(又は連結する)抗体又はその抗原結合断片を含む分子を指す。エフェクタ分子は、検出可能な標識、免疫毒素、サイトカイン、ケモカイン、治療薬又は化学療法薬であり得る。抗体又はその抗原結合断片は、ペプチドリンカーを介してエフェクタ分子に結合し得る。免疫複合体及び/又は融合タンパク質は、抗体又は抗原結合断片の免疫反応性を保持し、例えば、抗体又は抗原結合断片の結合後の抗原を結合する能力は、結合前とほぼ同じ、又は僅かに減少する。本明細書で使用する場合、免疫複合体は、抗体薬物複合体(ADC)としても示され得る。免疫複合体及び/又は融合タンパク質は、元々、例えば、抗体及びエフェクタ分子等の別の機能性を有する2つの分子から調製され、「キメラ分子」と呼ばれることもある。
【0095】
「医薬組成物」は、動物の医学的使用に適した組成物を指す。医薬組成物は、薬理学的有効量の活性剤及び薬学的に許容される担体を含む。「薬理学的有効量」は、意図した薬理学的結果を生み出すのに効率的な薬剤の量を指す。「薬学的に許容される担体」は、標準の薬学的担体、ビヒクル、緩衝液、賦形剤、例えば、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖の5%水溶液及び乳濁液、例えば、油/水又は水/油乳濁液並びに様々な種類の湿潤剤及び/又はアジュバントを指す。適切な薬学的担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、21版、2005、Mack Publishing Co、Eastonに記載されている。「薬学的に許容される塩」は、例えば、金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)及びアンモニアの塩又は有機アミンを含む医学的使用のために、化合物に配合することができる塩である。
【0096】
「治療する」、「治療すること」、「治療」という用語は、生物学的疾患及び/又はそれに不随する症状の少なくとも1つを緩和又は抑制する方法を指す。疾患、障害又は病態を「緩和する」ことは、本明細書で使用する場合、疾患、障害又は病態の症状の重症度及び/又は発生頻度を減少させることを意味する。「治療」は、本明細書で使用する場合、恩恵的又は望ましい臨床結果を得るための方法である。本発明の目的について、恩恵的又は望ましい臨床結果として、限定されないが、1つ以上の症状の緩和、疾患の範囲を無くすこと、疾患の拡散(転移、例えば、肺又はリンパ節への転移)を予防又は遅延させること、疾患の再発を予防又は遅らせること、疾患の進行を遅延又は緩徐すること、疾患状態を改善すること、及び緩解(部分的又は全体的にも)が挙げられる。増殖性疾患の病理学的結果の減少も「治療」に含まれる。本発明の方法は、治療のこれらの態様の1つ以上を考慮する。
【0097】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、特定の障害、病態又は疾患を治療する、例えば、症状の1つ以上を改善する、緩和する、軽減する及び/又は遅らせるために充分な量の化合物又は組成物を指す。NHL及びその他の癌又はその他の望ましくない細胞増殖について、有効量は、(i)癌細胞の数を減少させる、(ii)腫瘍サイズを小さくする、(iii)末梢臓器への癌細胞の浸潤を抑制する、遅延させる、ある程度まで緩徐する、好ましくは停止する、(iv)腫瘍転移を抑制する(すなわち、ある程度まで緩徐する、好ましくは停止する)、(vi)腫瘍の発生及び/又は再発を予防する又は遅らせる、並びに/又は(vii)癌に関連する症状の1つ以上をある程度まで軽減するのに充分な量を含む。1回以上の投与で有効量を投与することができる。
【0098】
「耐性癌又は難治性癌」は、例えば、化学療法、手術、放射線治療、幹細胞移植及び免疫療法を含む以前の抗癌治療に反応しない腫瘍細胞又は癌を指す。腫瘍細胞は、治療の開始に耐性又は難治性であり得、又は治療中に耐性又は難治性になり得る。難治性腫瘍細胞は、治療の開始時に反応しない腫瘍又は、短期間、最初は反応するが治療に反応することができない腫瘍を含む。難治性腫瘍細胞は、また、抗癌治療による治療に反応するが、次のラウンドの治療に反応することができない腫瘍を含む。本発明の目的のために、難治性腫瘍細胞は、また、抗癌治療による治療によって抑制されたように見えるが、治療を中断してから最大5年、時には、最大10年以上で再発する腫瘍を含む。抗癌治療は、化学療法薬単独、放射線治療単独、標的治療単独、手術単独又はその組み合わせを使用することができる。容易に記載し、限定しないために、難治性腫瘍細胞は耐性腫瘍と同義であることが理解される。
【0099】
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「から成る」及び/又は「から本質的に成る」ことが理解される。
【0100】
本明細書の「約」値又はパラメータの参照は、その値又はパラメータ自体に関する変形例を含む(記載する)。例えば、「約X」を示す記述は、「X」という記述を含む。
【0101】
本明細書及び添付の請求項に使用する場合、単数形「a」、「又は」及び「the」は他に明白な断りの無い限り、複数のものを含む。本明細書に記載の本発明の態様及び変形例は、態様及び変形例「から成る」及び/又は「から本質的に成る」ことが理解される。
【0102】
CTLA-4抗原
本明細書で使用されているヒトCTLA-4は、NCBI参照配列:NP_005205.2(配列番号1)に示されるアミノ酸配列を含む:
【0103】
様々な実施形態において、CTLA-4ポリペプチドは、配列番号1のヒトCTLA-4配列と、例えば少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GDF-15変異体が、配列番号1のヒトCTLA-4の、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.25倍、または少なくとも3倍の活性を有する。CTLA-4のポリペプチド変異体は、配列番号1の223アミノ酸配列の所定の位置に存在するアミノ酸残基の付加、欠失、または置換を参照することにより、ここに記載できる。したがって、例えば、用語「P21W」は、配列番号1の位置21におけるの「P」(標準単一文字コードで、プロリン)残基が、「W」(標準単一文字コードで、トリプトファン)で置換されていることを意味する。
【0104】
抗体
ヒトCTLA-4ポリペプチドに結合する新規抗体を生成する方法は、当業者に周知である。例えば、CTLA-4ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生成する方法は、検出可能な免疫反応を刺激するのに有効なCTLA-4ポリペプチドを含む免疫原性組成物をマウスに投与することを含み得、マウスの抗体産生細胞(例えば、膵臓からの細胞)を得て、抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合して、抗体産生ハイブリドーマを得て、抗体産生ハイブリドーマに試験を行って、CTLA-4ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを識別することを含み得る。一度得られると、ハイブリドーマは細胞培地、任意に、ハイブリドーマ由来細胞がCTLA-4ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件で増殖することができる。モノクローナル抗体は、細胞培地から精製され得る。特定の望ましい抗体を識別するために、様々な異なる技術を抗体:抗原相互作用の試験に使用可能である。
【0105】
必要な特異性の抗体を産生し、又は単離するその他の適切な方法を使用することができ、例えば、ライブラリから組み換え抗体を選択する方法、又はヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)の免疫化に依存する方法を含む。例えば、Jakobovits等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551-2555、1993;Jakobovits等、Nature、362:255-258、1993;Lonberg等、米国特許第5,545,806号;Surani等、米国特許第5,545,807号を参照されたい。
【0106】
抗体は多くの方法で操作することができる。抗体は、単鎖抗体(小分子免疫薬又はSMIP(商標))、Fab及びF(ab’)断片等として作製することができる。抗体は、ヒト化、キメラ化、脱免疫化(deimmunized)、完全ヒトにすることができる。多くの刊行物が多くの種類の抗体及びこのような抗体を操作する方法を記載している。例えば、米国特許第6,355,245号;第6,180,370号;第5,693,762号;第6,407,213号;第6,548,640号;第5,565,332号;第5,225,539号;第6,103,889号;及び第5,260,203号を参照されたい。
【0107】
キメラ抗体は、当該技術分野で周知の組み換えDNA技術によって産生することができる。例えば、マウス(又はその他の種)モノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子は、制限酵素で消化されて、マウスFcをコードする領域を取り除き、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の等価部分は置換される(Robinson等、国際特許公開PCT/US86/02269;Akira等、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi,M.、欧州特許出願第171,496号;Morrison等、欧州特許出願第173,494号;Neuberger等、国際特許出願WO86/01533;Cabilly等米国特許第4,816,567号;Cabilly等、欧州特許第125,023号;Better等、Science、240:1041-1043、1988;Liu等、PNAS USA、84:3439-3443、1987;Liu等、J.Immunol.139:3521-3526、1987;Sun等、PNAS USA、84:214-218、1987;Nishimura等、Canc.Res.47:999-1005、1987;Wood等、Nature 314:446-449、1985;及びShaw等、J.Natl Cancer Inst.、80:1553-1559、1988を参照されたい)。
【0108】
抗体をヒト化する方法は当該技術分野に記載されている。実際には、ヒト化抗体は、概して、いくつかの高頻度可変領域の残基及び可能性としてのいくつかのフレームワーク領域の残基は、げっ歯類の抗体の類似の部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり、非ヒト種の対応する配列によって置換されたインタクトなヒト可変領域より実質的に少ない。ある程度まで、このヒト化は、適切なライブラリを使用して、ヒト化の技術及び表示技術に関連して達成することができる。マウス抗体又はその他の種の抗体は、当該技術分野で周知の技術を使用してヒト化又は霊長類化(primatized)することができる(例えば、Immunol Today、14:43-46、1993;及びWright等、Crit.Reviews in Immunol.12125-168、1992を参照のこと)。目的の抗体は、組み換えDNA技術によって操作して、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン及び/又はフレームワークドメインを対応するヒト配列に置換してもよい(国際特許第92/02190号及び米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,792号、第5,714,350号、及び第5,777,085号を参照のこと)。また、キメラ免疫グロブリン遺伝子を構築するためにIg cDNAを使用することは、当該技術分野で周知である(Liu等、P.N.A.S.84:3439、1987;J.Immunol.139:3521、1987)。mRNAは、ハイブリドーマ又は抗体を産生するその他の細胞から単離され、cDNAを産生するために使用される。目的のcDNAは、特定のプライマーを使用してポリメラーゼ鎖反応によって増幅してもよい(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号)。あるいは、ライブラリを作製し、スクリーニングを行って、目的の配列を単離する。その後、抗体の可変領域をコードするDNA配列は、ヒト定常領域配列に融合する。遺伝子に対するヒト定常領域の配列は、Kabat等(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、N.I.H.publication no.91~3242に見つけることができる。ヒトC領域遺伝子は周知のクローンから容易に利用することができる。アイソタイプの選択は、補体結合反応、又は抗体依存性細胞傷害活性等の望ましいエフェクタ機能によって誘導される。様々な実施形態において、アイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から成る群から選択される。ヒト軽鎖定常領域、カッパ又はラムダのいずれかを使用してもよい。キメラ、ヒト化抗体は、通常の方法によって発現される。
【0109】
Queen等の米国特許第5,693,761号は、抗体をヒト化することについて、Winter等を改良したものを開示し、立体的又はその他の化学的不適合性があるために、結合活性の喪失がCDRをマウス抗体に見つけられる結合可能な構造に折りたたむことを妨げるヒト化フレームワークの構造的モチーフにおける問題に起因するという前提に基づいている。この問題に対処するために、Queenは、ヒト化されたマウス抗体のフレームワーク配列に対して直鎖ペプチド配列に密接に相同のヒトフレームワーク配列を使用することを示す。したがって、Queenの方法は、種間のフレームワーク配列を比較することに焦点を置いている。概して、全ての使用可能なヒト可変領域を特定のマウス配列と比較し、対応するフレームワーク残基間の同一性の確率を計算する。最も高い確率のヒト可変領域を選択して、ヒト化プロジェクトにフレームワーク配列を提供する。Queenはまた、結合可能な構造において、CDRを支持するのに欠かせないマウスのフレームワークから特定のアミノ残基をヒト化フレームワークに保持することが重要であることを示している。潜在的な臨界は分子モデルから評価する。保持について候補となる残基は、概して、CDRに対して直鎖配列に隣接する、又は6AのCDR残基に物理的に存在する残基である。
【0110】
その他のアプローチでは、一度、低い結合活性のヒト化構築物を得ると1つの残基をマウス配列に復帰する、及びRiechmann等、1988に記載のように抗原結合をアッセイすることによって、特定のフレームワークアミノ酸残基の重要性が実験的に決定される。フレームワーク配列の重要なアミノ酸を識別する別の例示的なアプローチは、Carter等の米国特許第5,821,337号、及びAdair等の米国特許第5,859,205号によって開示されている。これらの参考文献は、フレームワークの特定のKabat残基の位置を開示し、ヒト化抗体において、対応するマウスアミノ酸で置換して、結合活性を保持することを必要とし得る。
【0111】
「フレームワークシャッフリング」と呼ばれる抗体をヒト化する別の方法は、個別のヒト生殖系列フレームワークにフレームに融合された非ヒトCDR可変領域を有するコンビナトリアルライブラリを生成することに依存する(Dall’Acqua等、Methods、36:43、2005)。その後、ライブラリをスクリーニングして、良好な結合を保持するヒト化抗体をコードするクローンを識別する。
【0112】
望ましいヒト化抗体を作製するのに使用される軽鎖及び重鎖の両方のヒト可変領域の選択は、抗原性を減少させるために非常に重要である。いわゆる「最良適合」法に従って、げっ歯類の抗体の可変領域の配列を周知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。げっ歯類の配列にもっと近いヒト配列は、その後、ヒト化抗体について、ヒトフレームワーク領域(フレームワーク領域)として許容される(Sims等、J.Immunol.、151:2296、1993;Chothia等、J.Mol.Biol.、196:901、1987)。別の方法は、軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループの全てのヒト抗体の共通配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同フレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体に使用され得る(Carter等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285、1992;Presta等、J.Immunol.、151:2623、1993)。
【0113】
ヒト可変領域に置換するための非ヒト残基の選択は、様々な要因の影響を受ける可能性がある。これらの要因として、例えば、特定の位置のアミノ酸の希少性、CDR又は抗原の何れかとの相互作用の確率、並びに軽鎖及び重鎖可変領域間のインターフェース間のインターフェースに関与する確率が挙げられる(例えば、米国特許第5,693,761号、第6,632,927号及び第6,639,055号を参照のこと)。これらの要因を分析する1つの方法は、非ヒト及びヒト化配列の3次元モデルの使用による。3次元免疫グロブリンモデルは、使用されることが多く、当業者になじみのあるモデルである。選択された候補の免疫グロブリン配列の予想される3次元構造を示し、表示するコンピュータプログラムを使用することができる。これらの表示を検査することで、候補の免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割を分析することができ、例えば、候補の免疫グロブリンの抗原に結合する能力に影響する残基を分析することができる。このように、標的抗原の親和性の増加等の望ましい抗体の特徴を達成するために、非ヒト残基を選択し、ヒト可変領域残基に置換することができる。
【0114】
完全ヒト抗体を作製する方法は、当該技術分野に記載されている。例として、抗CTLA-4抗体又はその抗原結合断片を産生する方法は、ファージにヒト抗体のライブラリを合成し、ライブラリをCTLA-4又はその抗体結合部分でスクリーニングし、CTLA-4に結合するファージを単離し、及びファージから抗体を得るステップを含む。別の例として、ファージ表示技術に使用される抗体のライブラリを調製する1つの方法は、CTLA-4を有するヒト免疫グロブリン遺伝子座又はその抗原性部分を含む非ヒト動物を免疫化して、免疫反応を作り、免疫化した動物から抗体産生細胞を抽出し;本発明の抗体の重鎖及び軽鎖をコードするRNAを抽出した細胞から単離し、RNAを逆転写してcDNAを産生し、プライマーを使用してcDNAを増幅し、並びに抗体をファージに発現するようにcDNAをファージ表示ベクターに挿入するステップを含む。本発明の組み換え抗CTLA-4抗体は、このように得ることができる。
【0115】
本発明の組み換えヒト抗CTLA-4抗体は、組み換えコンビナトリアル抗体ライブラリをスクリーニングすることによって単離することもできる。好ましくは、ライブラリは、scFvファージ表示ライブラリであり、B細胞から単離されたmRNAから調製されるヒトVL及びVH cDNAを使用して生成される。このようなライブラリを調製し、スクリーニングする方法は、当該技術分野で周知である。ファージ表示ライブラリを生成するキットは市販されている(例えば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、catalog no.27-9400-01;及びthe Stratagene SurfZAP(商標)ファージ表示キット、catalog no.240612)。抗体表示ライブラリを生成及びスクリーニングするのに使用することができるその他の方法及び試薬もある(例えば、米国特許第5,223,409号;PCT出願WO92/18619、WO91/17271、WO92/20791、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、WO92/09690;Fuchs等、Bio/Technology 9:1370-1372(1991);Hay等、Hum.Antibod.Hybridomas 3:81-85、1992;Huse等、Science 246:1275-1281、1989;McCafferty等、Nature 348:552-554、1990;Griffiths等、EMBO J.12:725-734、1993;Hawkins等、J.Mol.Biol.226:889-896、1992;Clackson等、Nature 352:624-628、1991;Gram等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576-3580、1992;Garrad等、Bio/Technology 9:1373-1377、1991;Hoogenboom等、Nuc.Acid Res.19:4133-4137、1991;及びBarbas等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:7978-7982、1991を参照のこと、それぞれ、ファージ表示ライブラリの調製及びスクリーニングを示すために、参照により本明細書に援用される)。
【0116】
また、ヒトIgE抗原、例えば、XenoMouse(商標)動物(Abgenix、Inc./Amgen、Inc.、Fremont、Calif.)で、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子座のいくつか又は全てをそのゲノムに含む非ヒト、トランスジェニック動物を免疫化することによって、ヒト抗体が産生される。XenoMouse(商標)は、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子座の大きい断片を含む操作されたマウス株であり、マウス抗体産生が欠乏している。例えば、Green等、Nature Genetics 7:13-21、1994;米国特許第5,916,771号、第5,939,598号、第5,985,615号、第5,998,209号、第6,075,181号、第6,091,001号、第6,114,598号、第6,130,364号、第6,162,963号、及び第6,150,584号を参照されたい。また、WO91/10741、WO94/02602、WO96/34096、WO96/33735、WO98/16654、WO98/24893、WO98/50433、WO99/45031、WO99/53049、WO00/09560、及びWO00/037504も参照されたい。XenoMouse(商標)マウスは、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒト抗体を生成する。いくつかの実施形態において、XenoMouse(商標)マウスは、ヒト重鎖遺伝子座及びカッパ軽鎖遺伝子座のメガベースの大きさの生殖系列構成断片を酵母人工染色体(YAC)に導入することで、ヒト抗体V遺伝子レパートリーの約80%を含む。他の実施形態において、XenoMouse(商標)マウスは、さらに、ほぼ全てのヒトラムダ軽鎖遺伝子座を含む。Mendez等、Nature Genetics 15:146-156、1997、Green and Jakobovits、J.Exp.Med.188:483-495(1998)及びWO98/24893を参照されたい(それぞれ、完全ヒト抗体の調製を示すために、参照によりその全体が本明細書に援用される)。別の態様では、本発明は、CTLA-4抗原を有するヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒトトランスジェニック動物を免疫化することによって、非ヒト、非マウス動物から抗CTLA-4抗体を作製する方法を提供する。前述の文献に記載の方法を使用してこのような動物を作製することができる。
【0117】
抗原に対する抗体結合の特徴化
CTLA-4への結合について、例えば、標準ELISAによって本発明の抗体を試験することができる。例として、マイクロタイタープレートをPBSの精製されたCTLA-4で被覆し、その後、PBSの5%ウシ血清アルブミンで遮断する。抗体の希釈液(例えば、CTLA-4免疫化マウスの血漿の希釈液)を各ウェルに添加し、37℃で1~2時間インキュベートする。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、アルカリホスファターゼに結合した二次試薬(例えば、ヒト抗体については、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)でインキュベートする。洗浄後、プレートをpNPP基質(1Mg/ml)で発達させ、405~650のODで分析する。好ましくは、最も高い力価を発現するマウスを融合に使用する。ELISA分析を使用して、CTLA-4免疫原に陽性の反応を示すハイブリドーマをスクリーニングすることもできる。高い結合活性でCTLA-4に結合するハイブリドーマをサブクローン化し、さらに特徴付けを行う。各ハイブリドーマの1つのクローンは、親細胞の反応性を(ELISAにより)保持し、-140℃で保存した5~10バイアルの細胞バンクを作製し、抗体の精製のために選択することができる。
【0118】
選択した抗CTLA-4モノクローナル抗体がユニークなエピトープに結合したかどうかを判断するために、各抗体を市販の試薬(Pierce、Rockford、Ill.)でビオチン化することができる。非標識のモノクローナル抗体及びビオチン化モノクローナル抗体を使用した競合試験を前述のCTLA-4被覆されたELISAプレートを使用して実施することができる。ビオチン化mAbを連鎖球菌-アビジン-アルカリホスファターゼプローブで検出することができる。精製された抗体のアイソタイプを決定するために、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を使用してアイソタイプELISAを実施することができる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、microtiterプレートのウェルを1.mu.g/mlの抗ヒト免疫グロブリンで、4℃で一夜被覆することができる。1%のBSAで遮断した後、プレートを1μg/ml以下の試験モノクローナル抗体又は精製されたアイソタイプコントロールと、周囲温度で1~2時間、反応させる。ウェルは、その後、ヒトIgG1又はヒトIgM特異的アルカリホスファターゼ結合プローブの何れかと反応することができる。プレートは発達し、前述のように分析する。
【0119】
抗CTLA-4ヒトIgGのウエスタンブロットによるCTLA-4抗原との反応性についてさらに試験を行うことができる。端的には、CTLA-4は、調製し、硫酸ドデシルナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動の後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移動し、10%のウシ胎仔血清で遮断し、モノクローナル抗体でプローブして、試験を行う。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを使用して検出することができ、BCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem.Co.、St.Louis、Mo.)で発生することができる。
【0120】
抗CTLA-4抗体の識別
本発明は、CTLA-4抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体及びその抗原結合断片を提供する。
【0121】
本発明には、本発明の抗CTLA-4抗体と同じエピトープに結合する抗体がさらに含まれている。抗体が、本発明の抗CTLA-4抗体が結合するエピトープと同じエピトープへの結合に競合できるかどうかを決定するためには、クロスブロッキングアッセイ、例えば競合ELISAアッセイを実施する。例示的な競合ELISAアッセイでは、マイクロタイタープレートのウェルにコーティングされたCTLA-4が、候補競合抗体の有無にかかわらずプレインキュベートされ、その後、本発明のビオチン標識化抗CTLA-4抗体を添加する。ウェル中のCTLA-4抗原に結合した標識化抗CTLA-4抗体の量は、アビジン-ペルオキシダーゼ結合体と適切な基質を使用して測定する。この抗体は、放射性標識または蛍光標識、またはその他の検出可能かつ測定可能な標識で標識化できる。抗原に結合した標識化抗CTLA-4抗体の量は、同じエピトープへの結合に競合する候補競合抗体(試験抗体)の能力と間接的な相関関係がある。すなわち、同じエピトープに対する試験抗体の親和性が高いほど、抗原コーティングウェルに結合される標識化抗体がより少なくなる。候補競合抗体は、候補抗体がCTLA-4抗体の結合を、候補競合抗体の非存在下で並行して実施された対照と比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも20~50%、さらにより好ましくは少なくとも50%ブロックできる場合、本発明の抗CTLA-4抗体と実質的に同じエピトープに実質的に結合するか、または同じエピトープへの結合に競合する抗体であると考えられる。このアッセイの変形を実行して、同じ定量値に到達できることが理解される。
【0122】
様々な抗原結合タンパク質(抗体)A1&#12316;A5の重鎖CDRおよび軽鎖CDRのアミノ酸配列を以下の表2に示す。
【0123】
本発明の様々な実施形態において、抗体またはその抗原結合断片が、H1の重鎖可変領域の配列(配列番号33):
L1の軽鎖可変領域配列(配列番号43):
を含む、マウス抗体、A1 である。
【0124】
特定の代替実施形態では、抗体が重鎖および軽鎖を含む抗体であり、重鎖は重鎖可変領域を含み、この重鎖可変領域は、配列番号33、またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号32に記載されたアミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含み、
軽鎖は軽鎖可変領域を含み、この軽鎖可変領域は配列番号43、またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号42に記載されたアミノ酸配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含む。
【0125】
本発明の様々な実施形態において、抗体または抗原結合断片は:
H2の重鎖可変領域配列(配列番号35):
と、
L2の軽鎖可変領域配列(配列番号45):
を含むマウス抗体A2である。
【0126】
特定の代替実施形態では、抗体が重鎖および軽鎖を含む抗体であり、重鎖は重鎖可変領域を含み、この重鎖可変領域は、配列番号35または 対応するポリヌクレオチド配列である配列番号34に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含み:
軽鎖は軽鎖可変領域を含み、この軽鎖可変領域は配列番号45またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号44に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含む。
【0127】
本発明の様々な実施形態では、抗体または抗原結合断片は、H3の重鎖可変領域配列(配列番号37):
と;
L3の軽鎖可変領域配列(配列番号47):
と;
を含む マウス抗体A3である。
【0128】
特定の代替実施形態では、抗体が重鎖および軽鎖を含む抗体であり、重鎖は重鎖可変領域を含み、この重鎖可変領域は、配列番号37または 対応するポリヌクレオチド配列である配列番号36に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含み、
軽鎖は軽鎖可変領域を含み、この軽鎖可変領域は配列番号47またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号46に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含む。
【0129】
本発明の様々な実施形態では、抗体または抗原結合断片は、H4の重鎖可変領域配列(配列番号39):
と;
L4の軽鎖可変領域配列(配列番号49):
と;
を含む マウス抗体A4である。
【0130】
特定の代替実施形態では、抗体が重鎖および軽鎖を含む抗体であり、重鎖は重鎖可変領域を含み、この重鎖可変領域は、配列番号39または 対応するポリヌクレオチド配列である配列番号38に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含み;
軽鎖は軽鎖可変領域を含み、この軽鎖可変領域は配列番号49またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号48に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含む。
【0131】
本発明の様々な実施形態では、抗体または抗原結合断片は:
H5の重鎖可変領域配列(配列番号41):
と;
L5の軽鎖可変領域配列(配列番号51):
と;
を含むマウス抗体A5である:
【0132】
特定の代替実施形態では、抗体が重鎖および軽鎖を含む抗体であり、重鎖は重鎖可変領域を含み、この重鎖可変領域は、配列番号41または 対応するポリヌクレオチド配列である配列番号40に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含み;
軽鎖は軽鎖可変領域を含み、この軽鎖可変領域は配列番号51またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号50に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含む。
【0133】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号55~61に記載の配列と同一、実質的に同一または実質的に類似する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号62&#12316;64に記載の配列と同一、実質的に同一、または実質的に類似する配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0134】
様々な実施形態において、本発明の単離された抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号55~61に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインの配列と15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0残基のみが異なるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、このような各配列差は、独立して、1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換のいずれかである。様々な実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合断片は、配列番号55~61に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含む重鎖可変ドメインを具える。
【0135】
様々な実施形態において、本発明の単離された抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号62~64に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインの配列と15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0残基のみが異なるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを具え、このような各配列差は、独立して、1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換のいずれかである。様々な実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合断片は、配列番号62~64に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変ドメインを具える。
【0136】
別の実施形態では、本発明の単離された抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、中程度に厳しい条件下で、配列番号65~71の配列を有する重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体に、ハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。別の実施形態では、重鎖可変ドメインは、厳しい条件下で、配列番号65~71の配列を有する重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む。更なる実施形態では、本発明の単離された抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、中程度に厳しい条件下で、配列番号72~74の配列を有する軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。更なる実施形態では、軽鎖可変ドメインは、厳しい条件下で、配列番号72~74の配列を有する軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む。
【0137】
様々な実施形態において、抗体は、配列番号60に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号64に記載されているアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含むヒト化抗体である。様々な実施形態において、抗体は、配列番号61に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号64に記載されているアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含むヒト化抗体である。様々な実施形態において、抗体は、配列番号58に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号63に記載されているアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含むヒト化抗体である。
【0138】
様々な実施形態では、抗体は、配列番号77~83のいずれかに記載の重鎖配列を含む抗体と同じエピトープに結合する抗CTLA-4抗体であってもよい。様々な実施形態では、抗体は、配列番号77~83のいずれかに記載の重鎖配列を含む抗体と競合する抗CTLA-4抗体である。様々な実施形態では、抗体は、配列番号77&#12316;83のいずれかに記載されている重鎖配列の少なくとも1つ(2つまたは3つなど)のCDRを含む抗CTLA-4抗体であってもよい。様々な実施形態において、抗体は、配列番号77~83のいずれかと、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有するアミノ酸配列を含む。様々な実施形態において、抗体は、配列番号87&#12316;93のいずれかと例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有する核酸配列を含む。
【0139】
様々な実施形態では、抗体は、配列番号84-86のいずれかに記載されている軽鎖配列を含む抗体と同じエピトープに結合する抗CTLA-4抗体であってもよい。様々な実施形態では、抗体は、配列番号84-86のいずれかに記載されている軽鎖配列を含む抗体と競合する抗CTLA-4抗体である。様々な実施形態では、抗体は、配列番号84~86のいずれかに記載されている軽鎖配列の少なくとも1つ(2つまたは3つなど)のCDRを含む抗CTLA-4抗体であってもよい。様々な実施形態において、抗体は、配列番号84~86のいずれかと、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有するアミノ酸配列を含む。様々な実施形態において、抗体は、配列番号84&#12316;86のいずれかと例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有する核酸配列を含む。
【0140】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号82に記載されている重鎖配列、および配列番号86に記載されている軽鎖配列を含む。
【0141】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号83に記載されている重鎖配列、および配列番号86に記載されている軽鎖配列を含む。
【0142】
様々な実施形態において、本発明の単離されたヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCTLA-4に結合し、配列番号80に記載されている重鎖配列、および配列番号85に記載されている軽鎖配列を含む。
【0143】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、当該技術分野で周知の定常領域を含み得る。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ又はラムダタイプの軽鎖定常領域、例えば、ヒトカッパ又はラムダタイプの軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミュータイプの重鎖定常領域、例えば、IgA-、IgD-、IgE-、IgG-及びIgMタイプの重鎖定常領域であり得る。様々な実施形態において、軽鎖又は重鎖定常領域は、自然発生の定常領域の断片、誘導体、変異体又は変異タンパク質である。
【0144】
目的の抗体から異なるサブクラス又はアイソタイプの抗体を生じさせる技術、すなわちサブクラススイッチングは周知である。したがって、IgG抗体は、IgM抗体、例えば、その逆からも生じ得る。このような技術により、所与の抗体(親抗体)の抗原結合特性を有する新しい抗体を調製することができるが、親抗体とは異なる抗体のアイソタイプ又はサブクラスに関連する生物特性も表すことができる。組み換えDNA技術を使用してもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローンDNA、例えば、所望のアイソタイプの抗体の定常領域をコードするDNAをこのような方法に使用してもよい。Lanitto等、Methods Mol.Biol.178:303-16、2002も参照されたい。
【0145】
様々な実施形態において、本発明の抗体は、軽鎖カッパ若しくはラムダ定常領域、又はその断片をさらに含み、重鎖定常領域又はその断片をさらに含む。例示される抗体に使用される軽鎖定常領域及び重鎖定常領域、並びにそれらをコードするポリヌクレオチドの配列を以下に提供する。
軽鎖(カッパ)定常領域
軽鎖(ラムダ)定常領域
重鎖定常領域
【0146】
本発明の抗体は、交差反応性の観点で記載又は特定することもできる。ヒトCTLA-4に対して(当該技術分野で周知の及び本明細書に記載の方法を使用して計算した場合)少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、及び少なくとも50%の同一性を有するCTLA-4ポリペプチドに結合する抗体も、本発明に含まれる。
【0147】
さらに、本発明の抗CTLA-4抗体と同じエピトープに結合する抗体が本発明に含まれている。抗体が、本発明の抗CTLA-4抗体によって結合されるエピトープと同じエピトープに結合することについて競合する可能性があるかどうかを判断するために、クロスブロッキングアッセイ、例えば競合性ELISAアッセイを実施することができる。例示的な競合ELISAアッセイにおいて、マイクロタイタープレートのウェル上に被覆したCTLA-4を競合抗体候補のある場合又はない場合とでプレインキュベートし、その後、ビオチン標識化した本発明の抗CTLA-4抗体を添加する。アビジン-ペルオキシダーゼ接合体と適切な基体を使用して、ウェルのCTLA-4抗原に結合した標識化された抗CTLA-4抗体の量を測定する。放射性又は蛍光標識、又はいくつかの検出可能で測定可能な標識で抗体に標識を付けることができる。抗原に結合した標識された抗CTLA-4抗体は、競合抗体候補(試験抗体)の同エピトープとの結合に競合する能力に間接的な相関を有し、すなわち、同エピトープについて、試験抗体の親和性が大きいほど、標識された抗体は抗原を被覆したウェルに結合しにくくなる。競合抗体候補は、競合抗体候補が存在しない状態で平行して行われるコントロールと比較して、候補抗体が少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%、CTLA-4抗体の結合を遮断することができる場合、同エピトープに実質的に結合し、又は本発明CTLA-4の抗CTLA-4抗体と同じエピトープとの結合に競合する抗体として考えられる。このアッセイの変形例を行って、同じ定量的値を得ることができることが理解される。
【0148】
本発明の様々な実施形態では、抗体または抗原結合断片はマウス抗体A4に由来するマウス-ヒトキメラ抗体であり、アミノ酸1-19がリーダー配列である配列番号75の重鎖配列:
(配列番号75)と;
アミノ酸1-19がリーダー配列である配列番号76の軽鎖配列:
と;
を含む。
【0149】
本発明の様々な実施形態において、抗体または抗原結合断片は、マウス抗体A4に由来するヒト化抗体である。
ヒト化抗CTLA-4抗体の例
【0150】
本発明の様々な実施形態では、抗体が、ヒト化IgGであり、アミノ酸1-19がリーダー配列である配列番号82の重鎖配列:
と;
アミノ酸1-19がリーダー配列である配列番号86の軽鎖配列:
を含む。
【0151】
特定の代替実施形態では、抗体が重鎖および軽鎖を含む抗体であり、重鎖が、配列番号82に記載のアミノ酸配列、またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号92に、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含み:
軽鎖が、配列番号86に記載のアミノ酸配列、またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号96に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列:
を含む。
【0152】
本発明の様々な実施形態では、抗体がヒト化IgGであり、アミノ酸1&#12316;19がリーダー配列である配列番号83の重鎖配列:
と;
アミノ酸1-19がリーダー配列である配列番号86の軽鎖配列:

を含む。
【0153】
特定の代替の実施形態において、抗体が重鎖および軽鎖を含む抗体であり、重鎖は、配列番号83、またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号93に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含み:
軽鎖は、配列番号86、またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号96に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含む:
【0154】
本発明の様々な実施形態では、抗体がヒト化IgGであり、配列番号80に記載された重鎖配列であり、アミノ酸1&#12316;19がリーダー配列である重鎖配列と:
配列番号85に記載された軽鎖配列であり、アミノ酸1-19がリーダー配列である軽鎖配列と:

を含む。
【0155】
特定の代替の実施形態において、抗体が重鎖および軽鎖を含む抗体であり、重鎖は、配列番号83、またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号90に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含み:

軽鎖は、配列番号85、またはその対応するポリヌクレオチド配列である配列番号95に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の同一性を有する配列を含む:
【0156】
特定の代替実施形態では、本発明の抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、Vおよび/またはV)内の位置またはそれ以上の残基を修飾することにより、または定常領域内の残基を修飾することにより操作して、例えば、抗体のエフェクタ機能を変更することができる。様々な実施形態において、抗体の可変領域は、公開DNAデータベースまたは公開された参考文献(例:Tomlinson、IM、et al.,J.Mol.Biol.227:776-798、1992;およびCox,JPL et al.,Eur.J.Immunol.24:827-836,1994; それぞれの内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれている)から入手することができるフレームワーク配列を使用してCDR移植を実施することにより修飾される。様々な実施形態において、抗体は、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発を用いて修飾してVおよび/またはVに突然変異を導入し、結合親和性を改善し、および/または免疫原性を低下させることができる。様々な実施形態において、抗体は、抗体の血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞傷害性を変更する目的でFc領域で修飾することができる。種々の実施形態において、抗体は、抗体のグリコシル化を改変する目的で修飾することができる。本明細書に記載された各修飾および他の修飾を実行する方法は、当業者に知られている。
【0157】
医薬組成物
別の態様では、本発明は、前述の抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物、方法及び用途は、そのため、以下に詳細するその他の活性剤との併用(共投与)の実施形態も含む。
【0158】
概して、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と関連して製剤として投与するのに適している。「賦形剤」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明の化合物以外の成分を記載するために使用する。賦形剤の選択は、広い範囲で、特定の投与様式、賦形剤の可溶性及び安定性に与える影響、並びに剤形の性質に依存する。「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、生理的に適合性である全ての溶剤、分散媒、コーティング剤、抗菌薬、抗真菌薬、等張性及び吸収遅延剤等を含む。薬理学的に許容される賦形剤のいくつかの例は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール等、及びその組み合わせである。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール等のポリアルコール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物に含むことが好ましい。薬学的に許容される物質の付加的な例は、湿潤剤又は少量の補助剤、例えば、湿潤剤又は乳化剤、保存剤又は緩衝液であり、抗体の貯蔵寿命又は有効性を向上させる。本発明の医薬組成物及びその調製方法は、当業者に容易に明らかである。このような組成物及びその調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、19版(Mack Publishing Company、1995)に見つけることができる。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。
【0159】
本発明の医薬組成物は、単位用量として、又は複数の単位用量として、調製され、包装され、又は大量に販売され得る。「単位用量」は、所定量の有効成分を含む別々の量の医薬組成物である。有効成分の量は、概して、対象に投与され得る有効成分の用量、又は例えば、使いやすい少量の用量、例えば、当該用量の2分の1、3分の1に等しい。
【0160】
当該技術に許容されるペプチド、タンパク質又は抗体を投与する方法は、本発明の抗体及び部分に適切に適用され得る。
【0161】
本発明の医薬組成物は、概して、非経口投与に適している。医薬組成物の「非経口投与」は、本明細書で使用する場合、対象の組織を物理的に破ること、及び組織の破れた箇所を通って医薬組成物を投与することを特徴とする投与経路を含み、したがって、概して、血流、筋肉、又は内臓に直接投与する。非経口投与として、限定されないが、医薬組成物の注射、外科的切開による組成物の適用、組織貫通の非外科的創傷による組成物の適用等が挙げられる。特に、非経口投与は、限定されないが、皮下、腹腔内脳室内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、関節滑液嚢内注射又は注入、及び腎臓透析注入技術が挙げられることが理解される。様々な実施形態は、静脈内及び皮下経路を含む。
【0162】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、概して、薬学的に許容される担体、例えば、無菌水又は無菌等張食塩水と合わせた有効成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で、調製、包装、又は販売され得る。注入可能な製剤は、アンプル又は保存剤を含有する反復投与等の単位剤形で調製、包装、又は販売され得る。非経口投与の製剤として、限定されないが、油状又は水性ビヒクル、ペースト等の懸濁液、溶液、乳剤が挙げられる。このような製剤は、限定されないが、懸濁剤、安定剤又は分散剤を含む1つ以上の付加的な成分をさらに含み得る。非経口投与の製剤の一実施形態において、有効成分は、再構成された組成物を非経口投与する前に、適切なビヒクル(無菌の発熱物質を含まない水)で再構成された乾燥形態で提供される。非経口投与は、また、塩、炭水化物及び緩衝剤(pHは3~9が好ましい)等の賦形剤を含み得る水溶液を含むが、いくつかの適用では、非経口製剤は、無菌非水溶液として、又は乾燥形態としてより適切に調合されて、無菌の発熱物質を含まない水等の適切なビヒクルと一緒に使用され得る。例示的な非経口投与形態として、無菌水溶液の溶液又は懸濁液、例えば、水性プロピレングリコール又はブドウ糖溶液が挙げられる。このような剤形は、望まれる場合、適切に緩衝することができる。その他の有用な非経口投与可能な製剤として、微結晶性形態又はリポソーム調製物中の有効成分を含む製剤が挙げられる。非経口投与の製剤は、即時放出及び/又は徐放するように配合され得る。徐放性製剤として、遅延性、持続性、パルス性、制御性、標的型及びプログラム放出が挙げられる。
【0163】
例えば、一態様において、無菌の注入可能な溶液は、必要量の適切な溶剤に、上に挙げた成分の1つ又は組み合わせと共に抗CTLA-4抗体を組み込み、必要な場合、次にろ過殺菌を行うことによって調製することができる。概して、分散液は、塩基性分散媒及び上に挙げた物質から必要とされるその他の成分を含有する無菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌の注入可能な溶液の調製について無菌粉末の場合では、好ましい調製方法は、真空乾燥、及び有効成分の粉末、及びそれに加えて、その事前にろ過殺菌された溶液から付加的な所望の成分を産生する凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング剤を使用することによって、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって維持することができる。注入可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含ませることによってもたらすことが可能である。
【0164】
本発明の抗体は、概して乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、又は混合された成分粒子として、例えば、適切な薬学的に許容される賦形剤と混合して)、乾燥粉末吸入器から、加圧容器からのエアロゾルスプレー、ポンプ、スプレー、噴霧器(好ましくは、微細な霧を作製するために電気流体力学を使用した噴霧器)、又は適切な噴霧剤を使用する場合若しくは使用しない場合でネブライザーとして、又は点鼻液として投与することも可能である。
【0165】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器又はネブライザーは、概して、例えば、溶剤として活性の噴霧剤を分散、可溶化、又は徐放するのに適した薬剤を含む本発明の抗体の溶液又は懸濁液を含有する。
【0166】
乾燥粉末又は懸濁液製剤で使用する前に、薬剤は、概して、吸入による送達に適した大きさに微粒子化される(一般に5ミクロン未満)。これは、スパイラルジェットミリング、流動層ジェットミリング、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化、又は噴霧乾燥等の適切な粉砕方法によって達成され得る。
【0167】
吸入器又は注入器に使用されるカプセル、ブリスター及びカートリッジは、本発明の化合物の粉末混合物、適切な粉末ベース及び性能改良剤を含むように配合され得る。
【0168】
例えば、メントール及びレボメントール等の適切な香料サッカリン又はサッカリンナトリウム等の甘味料を、吸入/鼻腔内投与を意図した本発明の製剤に添加してもよい。
【0169】
吸入/鼻腔内投与の製剤は、即時放出及び/又は徐放するように配合され得る。徐放性製剤として、遅延性、持続性、パルス性、制御性、標的型及びプログラム放出が挙げられる。
【0170】
乾燥粉末吸入器及びエアロゾルの場合、単位剤形は、計量された量を送達する弁によって測定される。本発明に準じた単位剤形は、概して、配置されて、計測された量又は「ひと吹き」の本発明の抗体が投与される。全体の投与量は、概して、単一用量で、又は通常は、1日に用量を分けて投与される。
【0171】
本発明の抗体及び抗体部分は、また、経口投与のために配合され得る。経口投与は飲み込むことを伴い得、化合物は、消化器官に進入し、及び/又は化合物が口から直接的に血流に進入する頬側、舌側又は舌下に投与される。
【0172】
経口投与に適した製剤として、錠剤等の固形、半固体及び液体系;複数又はナノ複合微粒子、液体又は粉末を含有する軟質又は硬質のカプセル;(液体充填を含む)トローチ;噛むもの、ゲル、即時分散剤形;フィルム;腔坐剤;スプレー;及び頬側/粘膜付着性パッチが挙げられる。
【0173】
経口使用を意図した医薬組成物は、医薬組成物の製造について当該技術分野で周知の方法に従って調製され得、このような組成物は、薬学的にエレガントに口に合う製剤を提供するために、甘味剤から成る群から選択される1つ以上の薬剤を含有し得る。例えば、経口に送達可能な錠剤を調製するために、抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つの薬学的賦形剤と混合され、固体製剤は圧縮されて、消化器官に送達するために、周知の方法に従って錠剤を形成する。錠剤の組成物は、概して、添加物、例えば、糖類又はセルロース担体、デンプンのり又はメチルセルロース等の結合剤、充填剤、崩壊剤、又は通常、医療用調製物の製造に使用されるその他の添加物と一緒に配合される。経口送達可能なカプセルを調製するために、DHEAを少なくとも1つの薬学的賦形剤と混合し、固体製剤は、消化器官への送達に適したカプセル容器に配置される。抗体又はその抗原結合断片を含む組成物は、概して、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、1990(Mack Publishing Co.Easton Pa.18042)、89節に記載されており、参照により本明細書に援用される。
【0174】
様々な実施形態において、医薬組成物は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された抗体又はその抗原結合断片を含有する経口送達可能な錠剤として配合される。これらの賦形剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、ゼラチン又はアカシア、及び潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであってもよい。錠剤は、被覆されていなくてもよく、又は周知の技術で被覆して消化器官における崩壊及び吸収を遅延させて、それにより長時間の徐放作用を提供してもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリン単独、又はワックスと共に遅延材料を使用してもよい。
【0175】
様々な実施形態において、医薬組成物は、抗体又はその抗原結合断片を不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンと混合する硬質ゼラチンカプセルとして配合され、又は抗体又はその抗原結合断片を水性又は油媒体物、例えば、落花生油、ピーナツ油、液体パラフィン又はオリーブ油と混合する軟質ゼラチンカプセルとして配合される。
【0176】
液体製剤として、懸濁液、溶液、シロップ及びエリキシル剤が挙げられる。このような製剤は、軟質又は硬質カプセル(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから作製される)に充填剤として適用され得、通常、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は適した油、及び1つ以上の乳化剤及び/又は懸濁剤を含む。液体製剤は、また、固形物、例えば、小袋から再構成することによって調製してもよい。
【0177】
治療および診断の用途
別の態様では、本発明は、対象の癌性細胞に対する免疫応答を増強する方法に関し、治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンとして)の本発明の単離抗体または抗原結合断片を対象に投与するステップを具える。様々な実施形態で、本発明は、対象の癌性細胞を治療する方法を提供するものであり、治療有効量(単剤療法または併用療法レジメンとして)の本発明の抗体またはその抗原結合断片を対象に投与するステップを具える。様々な実施形態において、癌性細胞はCTLA-4の高い発現に関連している。
【0178】
本発明に従って治療することができる癌性細胞には:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮、リンパ管肉腫、リンパ管内、滑膜腫、中皮腫、リンパ腫、メラノーマ、カポジ肉腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、および網膜芽腫などの、肉腫および癌腫を含むが、これらに限定されない。
【0179】
様々な実施形態において、癌性細胞は、卵巣癌、肺癌、乳癌、胃癌、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、膠芽腫、およびメラノーマからなる群から選択される。
【0180】
様々な実施形態において、対象は以前に抗癌療法による治療に応答したが、治療の中止時に再発(以下「再発癌」)した。様々な実施形態において、対象は耐性癌または難治性の癌を患っている。様々な実施形態において、癌性細胞は免疫原性腫瘍(例えば、腫瘍自体を使用したワクチン接種が腫瘍攻撃に対する免疫をもたらし得る腫瘍)である。
【0181】
種々の実施形態において、本発明の抗体およびその抗原結合断片は、インビボで癌性細胞を直接死滅させるまたは切除するのに利用することができる。直接死滅させるには、そのような治療を必要とする被験者に抗体(細胞毒性薬に任意に溶解させる)を投与するステップが含まれる。様々な実施形態では、癌は、匹敵する組織の非癌性細胞よりも高レベルでCTLA-4を発現する癌細胞を含む。抗体は癌細胞上のCTLA-4を認識するため、抗体が結合したそのような細胞は破壊される。抗体を単独で使用して癌細胞を死滅させるまたは切除する場合、CDCおよび/またはADCCなどの内因性宿主免疫機能を開始することによって、このような死滅や切除が有効になる。この方法で抗体が細胞を死滅させたどうかを判定するアッセイは、当業者には自明である。
【0182】
様々な実施形態において、本発明の抗体及びその抗原結合断片を使用して、癌性腫瘍細胞の増殖の抑制及び/又は増殖を促進することができる。これらの方法は、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%対象の癌細胞の増殖を抑制又は防ぎ得る。結果として、癌が固形腫瘍である場合、調節によって、固形腫瘍の大きさを、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%減少し得る。
【0183】
癌細胞の増殖の抑制は、細胞ベースの分析、例えばブロモデオキシウリジン(BRDU)取り込み(Hoshino等、Int.J.Cancer 38、369、1986;Campana等、J.Immunol.Meth.107:79、1988;[H]-チミジン取り込み(Chen,J.、Oncogene 13:1395-403、1996;Jeoung,J.、J.Biol.Chem.270:18367-73、1995;染料アラマーブルー(Biosource Internationalから市販)(Voytik-Harbin等、In Vitro Cell Dev Biol Anim 34:239~46、1998)によって測定することができる。癌細胞の足場非依存性増殖は、軟寒天におけるコロニー形成分析、例えば、軟寒天の上部に形成される癌細胞の数を数えることによって評価する(実施例及びSambrook等、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor、1989を参照されたい)。
【0184】
対象の癌細胞の増殖の抑制は、例えば動物モデル又はヒト対象において、対象の癌の増殖をモニタリングすることによって評価され得る。1つの例示的な方法は、腫瘍形成能分析である。1つの例において、異種移植片は、既存の腫瘍又は腫瘍細胞株からのヒト細胞を含む。腫瘍異種移植片分析は、当該技術分野で周知であり、本明細書に記載される(例えば、Ogawa等、Oncogene 19:6043-6052、2000を参照されたい)。別の実施形態において、腫瘍形成能は、中空繊維アッセイを使用してモニタリングされ、米国特許第5,698,413号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0185】
抑制の割合は、癌細胞の増殖、足場非依存性増殖、又は、修飾因子処理下の癌細胞増殖を、(概して、修飾因子処理のない)ネガティブコントロール条件下の癌細胞増殖と比較することによって計算する。例えば、癌細胞又は癌細胞コロニーの数(コロニー形成分析)又はPRDU又は[H]-チミジン取り込みが(修飾因子の処理下で)Aであり、(ネガティブコントロール条件下で)Cである場合、抑制率は(C-A)/Cx100%になると思われる。
【0186】
ヒト腫瘍に由来し、in vitro及びin vivo研究に使用可能な腫瘍細胞株の例として、限定されないが、白血病細胞株(例えば、CCRF-CEM、HL-60(TB)、K-562、MOLT-4、RPM1-8226、SR、P388及びP388/ADR);非小細胞肺癌細胞株(例えば、A549/ATCC、EKVX、HOP-62、HOP-92、NCI-H226、NCI-H23、NCI-H322M、NCI-H460、NCI-H522及びLXFL529);小細胞肺癌細胞株(例えば、DMS114及びSHP-77);結腸癌細胞株(例えば、COLO205、HCC-2998、HCT-116、HCT-15、HT29、KM12、SW-620、DLD-1及びKM20L2);中枢神経系(CNS)癌細胞株(例えば、SF-268、SF-295、SF-539、SNB-19、SNB-75、U251、SNB-78及びXF498);メラノーマ細胞株(例えば、LOX I MVI、MALME-3M、M14、SK-MEL-2、SK-MEL-28、SK-MEL-5、UACC-257、UACC-62、RPMI-7951及びM19-MEL);卵巣癌細胞株(例えば、IGROV1、OVCAR-3、OVCAR-4、OVCAR-5、OVCAR-8及びSK-OV-3);腎癌細胞株(例えば、786-0、A498、ACHN、CAKI-1、RXFの393、SN12C、TK-10、UO-31、RXF-631及びSN12K1);前立腺癌細胞株(例えば、PC-3及びDU-145);乳癌細胞株(例えば、MCF7、NCI/ADR-RES、MDA-MB-231/ATCC、HS578T、MDA-MB-435、BT-549、T-47D及びMDA-MB-468);及び甲状腺癌細胞株(例えば、SK-N-SH)が挙げられる。
【0187】
様々な実施形態において、本発明は、対象における病原体、毒素および自己抗原に対する免疫応答を刺激する方法に関し、治療的有効量(単剤療法または併用療法レジメンとして)の本発明の単離された抗体または抗原結合断片を対象に投与するステップを具える。様々な実施形態において、対象は、従来のワクチンを使用する治療に耐性があるか、またはそれによって効果的に治療されない感染症を有する。
【0188】
治療を意図している病原体には、現在有効なワクチンがない病原体、または従来のワクチンが完全に有効ではない病原体が含まれる。これらには、限定するものではないが、HIV、肝炎(A、B、C)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌、緑膿菌が含まれる。本発明の方法によって治療可能な感染を引き起こす病原性ウイルスには、肝炎(A、B、またはC)ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、およびCMV、エプスタインバーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コルノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、おたふく風邪ウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟体動物ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスが含まれる。本発明の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性細菌には、クラミジア、リケッチア細菌、ミコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌およびコノコッキ、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリヌス、炭疽菌、腺ペスト、レプトスピラ症、及びライム病細菌がある。本発明の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性真菌には、カンジダ(アルビカンス、クルセイ、グラブラタ、トロピカリス等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス(フミガツス、ニゲル等)、ケカビ属(ムコール、アブシディア、クモノスカビ )、スポロトリクスシェンキィ、ブラストミセス・デルマチチジス、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス、コクシジオイデス・イミチス、およびヒストプラズマ・ カプスラーツムがある。本発明の方法により治療可能な感染を引き起こす病原性寄生虫には、赤痢アメーバ、大腸バランチジウム、フォーラーネグレリア、アカントアメーバ、ジアルジア嚢子、クリプトスポリジウム属原虫、ニューモシスチス・カリニ、三日熱マラリア原虫、バベシア・ミクロチ、ブルーストリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、リーシュマニアドノバン、トキソプラズマ、およびブラジル鉤虫、がある。
【0189】
「治療有効量」又は「治療上有効な用量」は、治療対象の疾患の症状の1つ以上をいくらか軽減する投与する治療薬の量を指す。
【0190】
治療上有効な用量は、IC50を決定することによって細胞培養アッセイから最初に推定することができる。動物モデルで用量を配合して、細胞培養で決定されるIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成することができる。このような情報を使用して、ヒトに有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、HPLCによって測定することができる。厳密な組成物、投与経路及び用量は、対象の状態の観点から個別の臨床医によって選択され得る。
【0191】
投与計画を調節して、最適な望ましい反応(例えば、治療的又は予防的反応)を提供することができる。例えば、単回のボーラス投与を行うことができ、いくつかに分けられた用量(複数、反復又は維持)を経時的に投与することができ、用量を治療的状況の緊急事態によって示されるように比例的に減少又は増加させることができる。投与の簡便性又は容量の均一性のために、単位剤形の親組成物を配合することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、治療を受ける哺乳動物対象の一体型剤形として適した物理的に別々の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体と連携して望ましい治療効果を生み出すように計算された所定量の活性化合物を含有する。本開示の単位剤形の詳述は、抗体のユニークな特徴及び達成される特定の治療的又は予防的効果によって主に規定される。
【0192】
したがって、当業者は、本明細書で提供する開示に基づいて、用量及び投与レジメンを治療技術で周知の方法に準じて調節されることを理解する。すなわち、最大耐容量を容易に確立することができ、対象に検出可能な治療的利益を提供する有効量も決定することができ、同様に、対象に検出可能な治療的利益を提供するために各薬剤の投与についての経時的な必要条件も決定することができる。したがって、特定の用量及び投与レジメンを本明細書で例示する場合、これらの例は、本開示を実施するときに対象に提供され得る用量及び投与レジメンを限定するものではない。
【0193】
用量の値は、軽減する予定の病態の種類及び重症度によって変化し得、単回用量又は複数用量を含み得る。特定の対象について、特定の投与計画は、個別の必要性及び組成物を投与する、又は投与を管理する人間の専門的判断に従って経時的に調節されるべきであり、本明細書に記載の用量範囲は例示に過ぎず、請求の組成物の範囲又は実施を限定することを意図していないことがさらに理解される。さらに、本開示の組成物による投与計画は、疾患の種類、年齢、体重、性別、対象の健康状態、病態の重症度、投与経路及び使用する特定の抗体を含む様々な要因に基づき得る。したがって、投与計画は広く変化する可能性があるが、標準的方法を使用して、ルーチン的に決定することができる。例えば、用量は、毒性効果及び/又は実験室の値等の臨床効果を含み得る薬物動態学的又は薬力学的パラメータに基づいて調節することができる。したがって、本開示は、当業者によって決定されるように、対象内用量漸増を包含する。適切な用量及び計画を決定することは、関連の技術で周知であり、本明細書に開示される指示事項を提供すれば、当業者によって包含されることが理解される。
【0194】
ヒト対象への投与について、本開示の抗体又はその抗原結合断片の全体の月単位の用量は、当然のこととして、投与様式に依存して、対象につき0.5~1200Mg、対象につき0.5~1100、対象につき0.5~1000Mg、対象につき0.5~900Mg、0.5~800Mg、対象につき0.5~700Mg、対象につき0.5~600Mg、対象につき0.5~500Mg、対象につき0.5~400Mg、対象につき0.5~300Mg、対象につき0.5~200Mg、対象につき0.5~100Mg、対象につき0.5~50Mg、対象につき1~1200Mg、対象につき1~1100Mg、対象につき1~1000Mg、対象につき1~900Mg、対象につき1~800Mg、対象につき1~700Mg、対象につき1~600Mg、対象につき1~500Mg、対象につき1~400Mg、対象につき1~300Mg、対象につき1~200Mg、対象につき1~100Mg、又は、対象につき1~50Mgの範囲であり得る。例えば、月毎の静脈内投与の用量は、約1~1000Mg/対象であり得る。様々な実施形態において、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、対象につき約1~200Mg、対象につき1~150Mg又は対象につき1~100Mgであり得る。全体の月単位の用量は、単回又は分割量で投与され得、臨床医の判断で、本明細書で与えた典型的な範囲の外にある可能性がある。
【0195】
本開示の抗体又はその抗原結合断片の治療的又は予防的有効量についての非限定的な1日あたりの用量範囲は、kg体重あたり、0.001~100Mg/kg、0.001~90Mg/kg、0.001~80Mg/kg、0.001~70Mg/kg、0.001~60Mg/kg、0.001~50Mg/kg、0.001~40Mg/kg、0.001~30Mg/kg、0.001~20Mg/kg、0.001~10Mg/kg、0.001~5Mg/kg、0.001~4Mg/kg、0.001~3Mg/kg、0.001~2Mg/kg、0.001~1Mg/kg、0.010~50Mg/kg、0.010~40Mg/kg、0.010~30Mg/kg、0.010~20Mg/kg、0.010~10Mg/kg、0.010~5Mg/kg、0.010~4Mg/kg、0.010~3Mg/kg、0.010~2Mg/kg、0.010~1Mg/kg、0.1~50Mg/kg、0.1~40Mg/kg、0.1~30Mg/kg、0.1~20Mg/kg、0.1~10Mg/kg、0.1~5Mg/kg、0.1~4Mg/kg、0.1~3Mg/kg、0.1~2Mg/kg、0.1~1Mg/kg、1~50Mg/kg、1~40Mg/kg、1~30Mg/kg、1~20Mg/kg、1~10Mg/kg、1~5Mg/kg、1~4Mg/kg、1~3Mg/kg、1~2Mg/kg、又は1~1Mg/kgであり得る。用量の値は、軽減する予定の病態の種類及び重症度によって変化し得る。特定の対象について、特定の投与計画は、個別の必要性及び組成物を投与する、又は投与を管理する人間の専門的判断に従って経時的に調節されるべきであり、本明細書に記載の用量範囲は例示に過ぎず、請求の組成物の範囲又は実施を限定することを意図していないことがさらに理解される。
【0196】
様々な実施形態において、全体の投与量は、血漿中抗体濃度を、例えば、約1~1000μg/ml、約1~750μg/ml、約1~500μg/ml、約1~250μg/ml、約10~1000μg/ml、約10~750μg/ml、約10~500μg/ml、約10~250μg/ml、約20~1000μg/ml、約20~750μg/ml、約20~500μg/ml、約20~250μg/ml、約30~1000μg/ml、約30~750μg/ml、約30~500μg/ml、約30~250μg/mlの範囲を達成する。
【0197】
本発明の医薬組成物の毒性及び治療指数は、細胞培養物又は実験用動物における標準的な医薬的手順によって決定することができ、例えば、LD50(集団の50%に対する致死的用量)及びED50(集団の50%に対する治療有効量)を決定する。毒性と治療有効量との間の用量比は治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す組成物が、概して好ましい。
【0198】
様々な実施形態において、医薬組成物の単回又は複数回投与は、対象によって必要とされ、許容される用量及び回数に依存して投与される。任意の事象において、組成物は、本明細書に開示の抗体又はその抗原結合断片の少なくとも1つを充分な量で提供して、対象を効率的に治療するべきである。1回投与することができるが、治療的結果を達成するまで、又は副作用が治療の中断の正当な理由になるまで、定期的に投与してもよい。
【0199】
医薬組成物の抗体又はその抗原結合断片の投与回数は、治療の性質及び治療対象の特定の疾患に依存する。対象は、所望の治療的結果が達成されるまで、毎週又は毎月といった規則的な間隔で治療を受けることができる。例示的な投与回数として、限定されないが、間断なく週に1回;週に1回、隔週に1回;2週間に1回;3週間に1回;間断なく毎週を2週間、その後毎月;間断なく毎週を3週間、その後毎月;毎月;隔月に1回;3か月に1回;4か月に1回;5か月に1回;又は6か月に1回、又は1年に1回が挙げられる。
【0200】
併用療法
「共投与」、「共投与される」、及び「併用して」という用語は、本明細書で使用する場合、本開示の抗体又はその抗原結合断片及び1つ以上の他の治療薬は、以下を意味し、まさに指し、含むことを意図する:本開示の抗体又はその抗原結合断片及び治療薬の組み合わせを治療を必要とする対象に同時投与し、このとき、成分は単一剤形に共に配合され、対象に実質的に同時に放出する;本開示の抗体又はその抗原結合断片及び治療薬の組み合わせを治療を必要とする対象に実質的に同時に投与し、このとき、成分は、対象によって実質的に同時に投与される別々の剤形に互いに分かれて配合され、成分は、対象に実質的に同時に放出される;本開示の抗体又はその抗原結合断片及び治療薬の組み合わせを治療を必要とする対象に連続投与し、このとき、成分は、各投与の間の重要な時間間隔で、対象によって連続して摂取される別々の剤形に互いに分かれて配合され、成分は、対象に実質的に異なる時間に放出される;本開示の抗体又はその抗原結合断片及び治療薬の組み合わせを治療を必要とする対象に連続投与し、このとき、成分は、制御されて放出される単一剤形に一緒に配合され、成分は、同時及び/又は異なる時間に同時に、連続的に、及び/又は重複的に放出され、各部分が同じ又は異なる経路によって投与され得る。
【0201】
別の態様では、本発明は、対象の癌又は感染性疾患を治療するように設計された併用療法に関し、本発明の単離された抗体又は抗原結合断片を対象に治療有効量投与し、b)免疫療法、化学療法、小分子キナーゼ阻害剤標的治療、手術、放射線治療、ワクチン接種プロトコル及び幹細胞移植から成る群から選択される1つ以上の追加の治療法を含み、併用療法によって腫瘍細胞の細胞殺傷が増加し、すなわち、共投与した場合に、単離された抗体又は抗原結合断片と追加の治療法との間に相乗作用が生じる。
【0202】
様々な実施形態において、免疫療法は、PD-1、PD-L1、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3及びVISTA等の同時刺激若しくは共阻害分子(免疫チェックポイント)に対して、アゴニスト、アンタゴニスト又は遮断抗体を使用する治療;IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-β及びIFN-γ等の二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE(登録商標));シプロイセルT等の治療用ワクチンを使用する治療;樹状細胞ワクチン又は腫瘍抗原ペプチドワクチンを使用する治療;CAR-NK細胞を使用する治療;腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を使用する治療;養子性に導入された抗腫瘍T細胞(ex vivoに増殖及び/又はTCRトランスジェニック)を使用する治療;TALL-104細胞を使用する治療;並びにToll様受容体(TLR)アゴニストCpG及びイミキモド等の免疫刺激薬を使用する治療から成る群から選択される。
【0203】
多岐にわたる通常の化合物は、抗腫瘍活性を有することが示されている。これらの化合物は、化学療法の薬剤として使用されて、固形腫瘍を収縮し、転移及び更なる増殖を防ぎ、又は白血病又は骨髄悪性腫瘍の悪性T細胞の数を減少させる。化学療法は様々な種類の悪性腫瘍に効果的であるが、多くの抗悪性腫瘍化合物は、望ましくない副作用を誘導する。2つ以上の異なる治療薬を組み合わせる場合、治療は相乗的に働き、各治療薬の用量を減らすことが可能になり得、それにより、高用量の各化合物によって生じる有害な副作用が低下する。他の例では、治療に対して難治性の悪性腫瘍は、2つ以上の異なる治療薬の併用療法に反応し得る。
【0204】
本明細書に開示の抗体又は抗原結合断片は、別の通常の抗悪性腫瘍薬と組み合わせて、同時又は連続的に投与される場合、このような抗体又は抗原結合断片は、抗悪性腫瘍薬の治療効果を高め、又はこのような抗悪性腫瘍薬に対する細胞耐性を克服し得る。これにより、抗悪性腫瘍薬の用量を減少させることができ、それにより、望ましくない副作用が減少し、又は耐性T細胞の抗悪性腫瘍薬の有効性が回復する。
【0205】
併用の抗腫瘍療法に使用され得る医薬化合物として、単なる例示であるが、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエンエストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンが挙げられる。
【0206】
これらの化学療法の抗腫瘍化合物は、例えば、以下のグループに作用機序を分類することができる:代謝拮抗薬/抗癌剤、例えば、ピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン及びシタラビン)及びプリン類似体、葉酸拮抗薬及び関連の阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));抗増殖性/抗有糸分裂薬、例えば、ビンカアルカロイド等の自然産物(ビンブラスチン、ビンクリスチン及び ビノレルビン)、タキサン等の微小管破壊剤(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン及びナベルビン、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミネオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド及びエトポシド(VP16));ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミスラマイシン)及びマイトマイシン等の抗生物質;酵素(L-アスパラギンを組織的に代謝し、それ自体のアスパラギンと相乗作用する能力を有しない細胞を欠乏させるL-アスパラギナーゼ);抗血小板薬;抗増殖性/抗有糸分裂アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン-ダカルバジニン(trazenes-dacarbazinine)(DTIC);葉酸類似体(メトトレキサート)等の抗増殖性/抗有糸分裂代謝拮抗薬;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩及びトロンビンのその他の阻害剤);血栓溶解薬(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤(antimigratory agents);分泌抑制剤(ブレベルジン(breveldin));免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP-470、ゲニステイン)及び増殖因子阻害剤(血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体拮抗薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害薬及び分化誘導薬(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン及びミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン及びプレドニゾロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤及びカスパーゼ活性剤;並びにクロマチンかく乱物質(chromatin disruptors)。
【0207】
様々な実施形態において、化学療法は、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ベンダムスチン、シタラビン(CA)、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(5-FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、テニポシド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ペントスタチン、クラドリビン、シタラビン、ゲムシタビン、プララトレキサート、ミトキサントロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、フルダラビン、イホスファミド、ヒドロキシ尿素タキサン(hydroxyureataxanes)(パクリタキセル及びドセタキセル等)及び/又は アントラサイクリン系抗生物質、並びに、限定されないが、DA-EPOCH、CHOP、CVP又はFOLFOX等の薬剤の組み合わせから成る群から選択される化学療法薬を含む。
【0208】
様々な実施形態において、小分子キナーゼ阻害剤標的治療は、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤、SYK阻害剤(例えば、エントスプレチニブ)、AKT阻害剤、mTOR阻害剤、Src阻害剤、JAK/STAT阻害剤、Ras/Raf/MEK/ERK阻害剤、及びAurora阻害剤から成る群から選択される小分子キナーゼ阻害剤を含む(D’Cruz等、Expert Opin Pharmacother、14(6):707-21、2013を参照のこと)。
【0209】
様々な実施形態において、併用療法は、抗体又はその抗原結合断片及び1つ以上の追加の治療薬を同時に投与することを含む。様々な実施形態において、抗体又はその抗原結合断片組成物及び1つ以上の追加の治療薬を連続的に投与し、すなわち、抗体又はその抗原結合断片組成物を1つ以上の追加の治療薬を投与する前又は後の何れかにに投与する。
【0210】
様々な実施形態において、抗体又はその抗原結合断片組成物及び1つ以上の追加の治療薬を同時に投与し、すなわち、抗体又はその抗原結合断片組成物及び1つ以上の追加の治療薬を互いに重なるように投与する。
【0211】
様々な実施形態において、併用療法は、抗体又はその抗原結合断片組成物及び1つ以上の追加の治療薬の投与は同時ではない。例えば、様々な実施形態において、1つ以上の追加の治療薬を投与する前に、抗体又はその抗原結合断片組成物の投与を中断する。様々な実施形態において、抗体又はその抗原結合断片組成物を投与する前に、1つ以上の追加の治療薬の投与を中断する。
【0212】
本明細書に開示の抗体又は抗原結合断片は、1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて、同時又は連続的に投与される場合、このような抗体又は抗原結合断片は、1つ以上の追加の治療薬の治療効果を高め、又は1つ以上の追加の治療薬に対する細胞耐性を克服し得る。これにより、1つ以上の追加の治療薬の用量又は投与期間が減少し、それにより望ましくない副作用が減少し、又は1つ以上の追加の治療薬の有効性が回復する。
【0213】
免疫複合体
本出願は、エフェクタ分子に直接又は間接的に結合(又は連結する)本発明の抗体又はその抗原結合断片を含む免疫複合体を提供する。これについて、「結合される」又は「連結される」という用語は、1つの隣接するポリペプチド分子に2つのポリペプチドを作製することを指す。その結合は、化学的又は組み換え手段の何れかでよい。一実施形態において、結合は化学的であり、抗体部分とエフェクタ分子との反応は、2つの分子間で形成される共有結合を生み出して、1つの分子を形成する。ペプチドリンカー(短ペプチド配列)が抗体とエフェクタ分子の間に含まれていてもよい。様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、エフェクタ分子に連結する。他の実施形態において、エフェクタ分子に連結した抗体又は抗原結合断片は、さらに、脂質、タンパク質又はペプチドに連結して、身体における半減期を増加させる。したがって、様々な実施形態において、本開示の抗体は、様々なエフェクタ分子を送達するために使用され得る。
【0214】
エフェクタ分子は、検出可能な標識、免疫毒素、サイトカイン、ケモカイン、治療薬又は化学療法薬であり得る。
【0215】
免疫毒素の特定の非限定的な例として、限定されないが、アブリン、リシン、緑膿菌外毒素(PE、例えば、PE35、PE37、PE38及びPE40)、ジフテリア毒素(DT)、ボツリヌストキシン、cholix toxin、又はその改変された毒素、又は細胞増殖を直接的若しくは間接的に抑制し、又は細胞を殺傷する毒剤が挙げられる。
【0216】
「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用する1つの細胞集団によって放出されるタンパク質又はペプチドのクラスである。サイトカインは、免疫調節剤として作用し得る。サイトカインの例として、リンホカイン、モノカイン、増殖因子及び伝統的なポリペプチドホルモンが挙げられる。したがって、実施形態では、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β及びIFN-γ);腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)メンバー;ヒト成長ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH);甲状腺刺激ホルモン(TSH);黄体ホルモン(LH);肝増殖因子;プロスタグランジン;線OBタンパク質;維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;TNF-α;TNF-β;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板増殖因子;TGF-α;TGF-β;インスリン様増殖因子I及びII;エリスロポエチン(EPO);マクロファージ-CSF(M-CSF)等のコロニー刺激因子(CSFs);顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF);顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(IL-1~IL-21)、kitリガンド若しくはFLT-3アンジオスタチン、トロンボスポンジン又はエンドスタチンを使用することができる。これらのサイトカインは、自然源又は組み換え細胞培養由来のタンパク質及び未変性配列サイトカインの生物活性等価物を含む。
【0217】
ケモカインは、また、本明細書に開示される抗体に結合し得る。ケモカインは、特定の白血病細胞サブタイプの化学誘引物質及び活性化因子として主に作用する小さく(約4~約14kDa)、誘導性及び分泌性炎症性サイトカインのスーパーファミリーである。ケモカインの生成は、炎症性サイトカイン、増殖因子、病原性刺激によって誘導される。ケモカインタンパク質は、保存アミノ酸配列モチーフに基づくサブファミリー(アルファ、ベータ、及びデルタ)に分けられ、アミノ末端に隣接する最初の2つのシステインの位置に基づいて、高度に保存された4つのグループCXC、CC、C及びCX3Cに分類される。これまで、50個超のケモカインが発見されており、少なくとも18個の7回膜通過領域(7TM)ケモカイン受容体がある。使用するケモカインとして、限定されないが、RANTES、MCAF、MCP-1、及びフラクタルカインが挙げられる。
【0218】
治療薬は、化学療法薬であり得る。当業者は、使用する化学療法薬を容易に識別することができる(例えば、Slapak and Kufe、Principles of Cancer Therapy、Harrison’s Principles of Internal Medicineの86節、14版;Perry等、Chemotherapy、Ch.17 in Abeloff、Clinical Oncology 2.sup.nd ed.、COPYRIGHT.2000 Churchill Livingstone、Inc;Baltzer L.,Berkery R.(編):Oncology Pocket Guide to Chemotherapy、2版、St.Louis、Mosby-Year Book、1995;Fischer D S、Knobf M F、Durivage H J(編):The Cancer Chemotherapy Handbook、4版、St.Louis、Mosby-Year Book、1993を参照のこと)。免疫複合体を調製するのに有用な化学療法薬として、オーリスタチン、ドラスタチン、MMAE、MMAF、AFP、DM1、AEB、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキサート、メルファラン、クロラムブシル、ビンカアルカロイド、5-フルオロウリジン、マイトマイシン-C、タキソール、L-アスパラギナーゼ、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルバジン、トポテカン、ナイトロジェンマスタード、シトキサン、エトピシド、BCNU、イリノテカン、カンプトテシン、ブレオマイシン、イダルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、及びドセタキセル並びにその塩、溶媒及び誘導体が挙げられる。様々な実施形態において、化学療法薬は、オーリスタチンE(ドラスタチン-10としても当該技術分野で周知である)、又はその誘導体並びにその薬学的塩又は溶媒である。典型的なオーリスタチン誘導体として、DM1、AEB、AEVB、AFP、MMAF及びMMAEが挙げられる。オーリスタチンE及びその誘導体並びにリンカーの合成及び構造は、例えば、米国特許第20030083263号;米国特許第20050238629号;及び米国特許第6,884,869号に記載されている(参照によりその全体が本明細書に援用される)。様々な実施形態において、治療薬は、オーリスタチン又はオーリスタチン誘導体である。様々な実施形態において、オーリスタチン誘導体は、ドバリン-バリン-ドライソロイニン-ドラプロイン-フェニルアラニン(dovaline-valine-dolaisoleunine-dolaproine-phenylalanine)(MMAF)又はモノメチルオーリスタチンE(MMAE)である。様々な実施形態において、治療薬は、マイタンシノイド又はマイタンシノール誘導体である。様々な実施形態において、マイタンシノイドはDM1である。
【0219】
エフェクタ分子は、当業者に周知のいくつかの方法を使用して、本発明の抗体又は抗原結合断片に結合し得る。共有結合又は非共有結合の両方を使用してもよい。エフェクタ分子の抗体への結合方法は、エフェクタ分子の化学構造に従って変化する。ポリペプチドは、概して、様々な官能基、例えば、カルボン酸(COOH)、遊離アミン(--NH2)又はスルフヒドリル(--SH)基を含み、抗体における適切な官能基との反応に使用可能であり、エフェクタ分子が結合する。あるいは、抗体は、誘導体化して、追加の反応性官能基を暴露又は付着させる。誘導体化は、Pierce Chemical Company、Rockford、Illから市販されているいくつかのリンカー分子の結合を伴い得る。リンカーは、抗体をエフェクタ分子に連結するために使用される分子であり得る。リンカーは、抗体とエフェクタ分子の両方に共有結合を形成することができる。適切なリンカーは当業者に周知であり、限定されないが、直鎖若しくは分岐鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー又はペプチドリンカーが挙げられる。抗体及びエフェクタ分子がポリペプチドである場合、リンカーは、その側鎖によって(ジスルフィド結合からシステインによって)構成アミノ酸に、又はアルファ炭素アミノ及び末端アミノ酸のカルボキシル基に連結し得る。
【0220】
いくつかの状況において、免疫複合体がその標的部位に到達する場合、エフェクタ分子を抗体から遊離させることが望ましい。したがって、これらの状況では、免疫複合体は、標的部位に隣接して切断可能な結合を含む。リンカーを切断して、エフェクタ分子を抗体から解放することは、酵素活性、又は免疫複合体を標的細胞の内部又は標的部位に隣接した場所の何れかに供する条件によって促すことができる。
【0221】
抗体をエフェクタ分子に結合する方法は、以前から記載されており、当業者の範囲にある。例えば、免疫毒素の酵素活性のポリペプチドを調製する方法は、WO84/03508及びWO85/03508に記載され、その特定の指示事項のために、参照により援用される。その他の技術は、Shih等、Int.J.Cancer 41:832-839(1988);Shih等Int.J.Cancer 46:1101-1106(1990);Shih等、米国特許第5,057,313号;Shih Cancer Res.51:4192、国際特許WO02/088172;米国特許第6,884,869号;国際特許WO2005/081711;米国特許出願公開第2003-0130189 A号;米国特許第20080305044号に記載され、それぞれ、このような技術を示すために、参照により援用される。
【0222】
本発明の免疫複合体は、抗体又は抗原結合断片の免疫反応性を保持し、例えば、抗体又は抗原結合断片の結合後の抗原を結合する能力は、結合前とほぼ同じ、又は僅かに減少する。本明細書で使用する場合、免疫複合体は、抗体薬物複合体(ADC)としても示される。
【0223】
診断用途
別の態様では、本発明は、例えば、ヒトCTLA-4関連疾患を診断するために、試料のヒトCTLA-4抗原の存在をin vitro又はin vivoに検出する方法を提供する。いくつかの方法において、抗体とヒトCTLA-4の間で複合体を形成することができる条件下で、試験対象の試料を、コントロール試料と共に、本発明のヒト配列抗体又はヒトモノクローナル抗体、若しくはその抗原結合部分(又は二重特異性若しくは多特異性分子)に接触させることによって達成される。両方の試料において(ELISAを使用して)複合体の形成を検出し、試料間の複合体の形成における統計学的有意差は、試験試料のヒトCTLA-4抗原の存在を示す。
【0224】
様々な実施形態において、癌を検出し、対象の癌の診断を確認する方法を提供する。方法は、対象の生体試料を本発明の単離された抗体又はその抗原結合断片に接触させ、単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合断片と試料との結合を検出することを含む。単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合断片のコントロール試料に比べて、単離されたヒトモノクローナル抗体又はその抗原結合断片の試料に対する結合が増加することは、対象の癌を検出し、対象の癌の診断を確認する。コントロールは、癌を有していないことが知られている対象の試料又は標準値である。試料は、限定されないが、生検の組織、剖検及び病理病変を含む試料であり得る。生体試料は、また、組織の部分、例えば、組織学的目的のために採取された凍結された部分を含む。生体試料は、体液、例えば、血液、血清、血漿、痰及び髄液をさらに含む。
【0225】
一実施形態において、血液試料等の生体試料においてCTLA-4を検出するためのキットを提供する。ポリペプチドを検出するキットは、概して、本明細書に開示の抗体の何れか等のCTLA-4に特異的に結合するヒト抗体を含む。いくつかの実施形態において、Fv断片等の抗体断片はキットに含まれる。in vivo用途について、抗体はscFv断片であり得る。更なる実施形態において、抗体は(例えば、蛍光、放射性、又は酵素標識で)標識される。
【0226】
一実施形態において、キットは、CTLA-4に特異的に結合する抗体の使用方法を開示する説明資料を含む。説明資料は、電子形態(コンピュータフロッピーディスク又はコンパクトディスク)で書かれていても、又は(ビデオファイル等の)視覚映像であってもよい。キットは、また、キットに示される特定の使用を促進するための付加的な要素を含む。したがって、例えば、キットは、付加的に、標識を検出する方法を含む(例えば、酵素標識の酵素基質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、二次抗体等の適切な二次標識等)。キットは、さらに、特定の方法を実施するために通常使用される緩衝液及びその他の試薬を含む。このようなキット及び適切な内容物は当業者に周知である。
【0227】
一実施形態において、診断キットは免疫アッセイを含む。免疫アッセイの詳細は、使用される特定フォーマットによって変化し得るが、生体試料においてCTLA-4を検出する方法は、概して、免疫学的に反応する条件下で、CTLA-4に特異的に反応する抗体に生体試料を接触させるステップを含む。抗体は、免疫学的に反応する条件下で、特異的に結合して免疫複合体を形成することができ、免疫複合体(結合抗体)の存在が直接的、又は間接的に検出される。
【0228】
様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片を診断目的に標識することもでき、又は標識しないこともできる。概して、診断アッセイは、抗体がCTLA-4に結合することから生じる複合体の形成を検出することを伴う。抗体は、直接的に標識することができる。限定されないが、放射性核種、蛍光体、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤及びリガンド(例えば、ビオチン、ハプテン)を含む様々な標識を使用することができる。多くの適切な免疫アッセイは当業者に周知である(例えば、米国特許第3,817,827号;第3,850,752号;第3,901,654号;及び第4,098,876号を参照のこと)。抗体は、標識しない場合、凝集アッセイ等のアッセイに使用することができる。標識されていない抗体は、例えば、第1抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体又は非標識の免疫グロブリンに特異的なその他の抗体)に反応性の標識抗体(例えば第2抗体)又は適切な試薬(標識タンパク質A)等の抗体を検出するために使用することができる別の(1つ以上の)適切な試薬と組み合わせて使用することもできる。
【0229】
本明細書で提供する抗体又は抗原結合断片は、また、哺乳動物の特定の疾患にり患している可能性を検出する方法に使用され得る。例示的に、この方法は、細胞に存在するCTLA-4の量及び/又は哺乳動物のCTLA-4陽性細胞の数に基づいて進行する哺乳動物の疾患への感受性を検出するために使用することができる。一実施形態において、その適用は、哺乳動物の腫瘍に対する感受性を検出する方法を提供する。この実施形態において、試験対象の試料を抗体に結合するのに適切な条件下で、CTLA-4又はその部分に結合する抗体に接触させ、試料は正常な個体においてCTLA-4を発現する細胞を含む。抗体の結合及び/又は結合量を検出し、そのことが個体の腫瘍に対する感受性を示し、高いレベルの受容体は個体の腫瘍に対する感受性の増加に相関する。
【0230】
様々な実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、検出することが可能な標識(例えば、放射同位体、蛍光化合物、酵素又は酵素補助因子)に付着する。活性部分は放射性剤、例えば、鉄キレート剤、ガドリニウム又はマンガンの放射性キレート剤、酸素、窒素、鉄、炭素若しくはガリウム43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、68Ga、123I、125I、131I、132I又は99Tcの陽電子放射体等の放射性重金属であってもよい。このような部分に付着した結合剤は、イメージング剤として使用し得、ヒト等の哺乳動物の診断使用に有効な量で投与され、その後、イメージング剤の局所化及び蓄積を検出する。イメージング剤の局所化及び蓄積は、放射性シンチグラフィー(radioscintigraphy)、核磁気共鳴イメージング、コンピュータ断層撮影又はポジトロン断層撮影によって検出され得る。
【0231】
CTLA-4において検出される抗体又は抗原結合断片を使用した免疫シンチグラフィーを使用して、癌及び脈管構造を検出及び/又は診断することができる。例えば、99テクネチウム、111インジウム又は125ヨウ素で標識されたCTLA-4マーカーに対するモノクローナル抗体をこのようなイメージングに効率的に使用することができる。当業者に明らかであるように、投与する放射同位体の量は、その放射同位体に依存する。当業者は、活性部分として使用される所要の放射性核種の特定の作用及びエネルギーに基づいて投与されるイメージング剤の量を容易に処方することができる。概して、イメージング剤の1用量につき0.1~100ミリキュリー、又は1~10ミリキュリー又は2~5ミリキュリーを投与する。したがって、開示される組成物は、放射性部分に結合する標的部分を含むイメージング剤として有用であり、0.1~100ミリキュリー、いくつかの実施形態では1~10ミリキュリー、いくつかの実施形態では2~5ミリキュリー、いくつかの実施形態では1~5ミリキュリーを含む。
【0232】
二重特異性分子
別の態様では、本発明は、本発明の抗CTLA-4抗体又はその抗原結合断片を含む二重特異性分子に注目する。本発明の抗体又はその抗原結合断片は、別の機能分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質(例えば、別の抗体又は受容体のリガンド)に誘導体化又は結合して、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成することができる。本発明の抗体は、実際には、1つ以上の他の機能分子に誘導体化又は結合して、2つ以上の異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多特異性分子を生成し得、このような多特異性分子は、また、本明細書で使用される「二重特異性分子」によって包含されることを意図する。本発明の二重特異性分子を作製するために、本発明の抗体は、別の抗体、別の断片、ペプチド又は結合模倣物等の1つ以上のその他の結合分子に、(例えば、化学的カップリング、遺伝子的融合、非共有結合又はその他によって)機能的に結合することができ、二重特異性分子が生じる。様々な実施形態において、本発明は、FcγR又はFcαR発現エフェクタ細胞(例えば、単球、マクロファージ又は多形核細胞(PMN))とPDを発現する標的細胞の両方に結合することができる二重特異性分子を含む。このような実施形態において、二重特異性分子はエフェクタ細胞に対してCTLA-4発現細胞を標的にし、Fc受容体媒介性エフェクタ細胞活性、例えば、CTLA-4発現細胞の食作用、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、サイトカイン放出又はスーパーオキシドアニオンの生成を駆動する。本発明の二重特異性分子を調製する方法は、当該技術分野で周知である。
【0233】
ポリヌクレオチド及び抗体発現
本出願は、抗CTLA-4抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドをさらに提供する。遺伝子的コードの縮重があるために、様々な核酸配列がそれぞれの抗体アミノ酸配列をコードする。本出願は、例えば本明細書に規定されるように、ストリンジェント又は低いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で、ヒトCTLA-4に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドをさらに提供する。
【0234】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件として、限定されないが、約45℃で6xSSCのフィルター結合DNAにハイブリダイズして、次に約50~65℃で0.2xSSC/0.1%SDSに1回以上洗浄すること、約45℃で6xSSCのフィルター結合DNAにハイブリダイズして、次に約60℃で0.1xSSC/0.2%SDSに1回以上洗浄する高いストリンジェント条件、又は当業者に周知のその他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が挙げられる(例えば、Ausubel,F.M.等、編1989 Current Protocols in Molecular Biology、vol.1、Green Publishing Associates,Inc.及びJohn Wiley and Sons,Inc.、NY、頁6.3.1~6.3.6及び2.10.3を参照こと)。
【0235】
ポリヌクレオチド、及び当該技術分野で周知の方法によって決定されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を得てもよい。例えば、抗体のヌクレオチド配列が分かっている場合、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチド(例えば、Kutmeier等、BioTechniques 17:242(1994)に記載)から構築されてもよく、端的には、抗体をコードする配列の部分を含むオーバーラップオリゴヌクレオチドを合成し、これらのオリゴヌクレオチドをアニールし、連結し、その後、連結したオリゴヌクレオチドをPCRによって増幅することを伴う。一実施形態において、使用されるコドンは、ヒト又はマウスに典型的なコドンを含む(例えば、Nakamura,Y.、Nucleic Acids Res.28:292(2000)を参照のこと)。
【0236】
抗体をコードするポリヌクレオチドは、また、適切な源からの核酸から生成してもよい。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンを使用することができないが、抗体分子の配列が分かっている場合、配列の3’及び5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用してPCR増幅することにより、又は特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用してクローン化することによって、免疫グロブリンをコードする核酸を化学合成し、又は適切な源(例えば、抗体cDNAライブラリ、又はそこから生成されるcDNAライブラリ、又は核酸、好ましくは、抗体を発現する組織若しくは細胞から単離されたポリA+RNA、例えば、抗体を発現するように選択されたハイブリドーマ細胞)から得て、抗体をコードするcDNAライブラリから例えばcDNAクローンを識別してもよい。PCRによって生成された増幅された核酸は、その後、当該技術分野で周知の方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローン化してもよい。
【0237】
本発明は、また、CTLA-4ポリペプチド及び/又は本発明の抗CTLA-4抗体を発現する宿主細胞に関する。例えば、原核生物(細菌)及び真核生物発現系(酵母菌、バキュロウイルス、植物、哺乳動物及びその他の動物細胞、トランスジェニック動物及びハイブリドーマ細胞)並びにファージ表示発現系を含む当該技術分野で周知の多様な宿主発現系を使用して、本発明の抗体を発現することができる
【0238】
本発明の抗体は、宿主細胞の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の組み換え発現によって調製することができる。組み換え的に抗体を発現するために、宿主細胞を、宿主細胞に発現する抗体の免疫グロブリン軽鎖及び/又は重鎖をコードするDNA断片を有する1つ以上の組み換え発現ベクターに形質転換、形質導入、又は感染させる。重鎖及び軽鎖は、1つのベクターに操作可能に連結される異なるプロモーターから独立して発現され得、又はあるいは重鎖及び軽鎖は、1つは重鎖を発現しもう1つは軽鎖を発現する2つのベクターに操作可能に連結する異なるプロモーターから独立して発現し得る。任意に、重鎖及び軽鎖は異なる宿主細胞に発現し得る。
【0239】
さらに、組み換え発現ベクターは、宿主細胞から抗体軽鎖及び/又は重鎖の分泌を促すシグナルペプチドをコードすることができる。抗体軽鎖及び/又は重鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームに操作可能に連結されるように、ベクターにクローン化することができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種性のシグナルペプチドであり得る。好ましくは、組み換え抗体は、宿主細胞を培養する培地に分泌され、そこから抗体が回収され、又は精製することができる。
【0240】
HCVRをコードする単離されたDNAは、HCVRコーディングDNAを重鎖定常領域をコードする別のDNA分子に操作可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト、及びその他の哺乳動物、重鎖定常領域遺伝子の配列は当該技術分野で周知である。これらの領域を包含するDNA断片は、例えば、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、任意の種類(例えば、IgG、IgA、IgE、IgM又はIgD)、クラス(例えば、IgG、IgG、IgG及びIgG)又はKabat(前述)に記載のサブクラス定常領域及びその異常型変異体であり得る。
【0241】
LCVR領域をコードする単離されたDNAは、LCVRコーディングDNAを軽鎖定常領域をコードする別のDNA分子に操作可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子に変換することができる。ヒト、及びその他の哺乳動物、軽鎖定常領域遺伝子の配列は当該技術分野で周知である。これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ定常領域であり得る。
【0242】
抗体重鎖及び/又は軽鎖遺伝子の他に、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞の抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を有する。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及びその他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図し、必要に応じて、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御する。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現レベルのような要因に依存し得る。哺乳動物宿主細胞の発現について好ましい制御配列として、高レベルの哺乳動物細胞のタンパク質発現を方向付けるウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、adenovirusMajor late promoter(AdMLP))及び/又はポリオーマウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーが挙げられる。
【0243】
さらに、本発明の組み換え発現ベクターは、追加の配列、例えば、宿主細胞のベクター及び1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子の複製を制御する配列を有し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする。例えば、通常、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞上のG418、ハイグロマイシン又はメトトレキサート等の薬に耐性を与える。好ましい選択可能なマーカー遺伝子として、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を有するdhfr-マイナス宿主細胞に使用される)、(G418の選択について)ネオ遺伝子、及び選択/増幅について、GS陰性細胞株(NSO等)のグルタミンシンテターゼ(GS)が挙げられる。
【0244】
軽鎖及び/又は重鎖の発現について、重鎖及び/軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術、例えば、電気泳動、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラン形質転換、形質導入、感染等によって、宿主細胞に導入される。原核又は真核生物の宿主細胞に本発明の抗体を発現させることは理論的には可能であるが、真核生物細胞が好ましく、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞であり、これは、このような細胞は、適切に折りたたまれた免疫学的に活性な抗体を確立及び分泌する可能性が高いためである。本発明の組み換え抗体を発現する好ましい哺乳動物宿主細胞として、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)[dhfrマイナスCHO細胞を含み、Urlaub and Chasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-20、1980、DHFR選択可能マーカーと共に使用され、例えば、Kaufman and Sharp、J.Mol.Biol.159:601-21、1982に記載]、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2/0細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、宿主細胞に抗体を発現することができ、より好ましくは、宿主細胞が当該技術分野で周知の適切な条件下で培養される培地に抗体を分泌することが可能な充分な時間、宿主細胞を培養することによって、抗体は産生する。抗体は、標準の精製方法を使用して、宿主細胞及び/又は培地から回収することができる。
【0245】
本発明は、本発明の核酸分子を含む宿主細胞を提供する。好ましくは、本発明の宿主細胞は、本発明の核酸分子を含む1つ以上のベクター又は構築物を含む。例えば、本発明の宿主細胞は、本発明のベクターが導入された細胞であり、ベクターは、本発明の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド及び/又は本発明のHCVRをコードするポリヌクレオチドを含む。本発明は、また、本発明の2つのベクターが導入された宿主細胞を提供し、1つベクターは本発明の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチドを含み、もう1つのベクターは本発明の抗体に存在するHCVRをコードするポリヌクレオチドを含み、それぞれ、エンハンサー/プロモーター制御要素(例えば、SV40、CMV)、アデノウイルス等、例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター制御要素、又はSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター制御要素)に操作可能に連結して、高レベルの遺伝子の転写レベルを駆動する。
【0246】
一度発現すると、本発明のインタクトな抗体、個々の軽鎖及び重鎖、又はその他の免疫グロブリン形態は、当該技術の標準の方法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換、親和性(例えば、タンパク質A)、逆相、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等に従って精製することができる。治療用抗体の標準の精製方法は、例えば、Feng L1、Joe X.Zhou、Xiaoming Yang、Tim Tressel、及びBrian Lee、文献名「Current Therapeutic Antibody Production and Process Optimization」(BioProcessing Journal、2005年9月/10月)(治療用抗体の精製を示すために、参照によりその全体が援用される)に記載されている。さらに、組み換え的に発現された抗体調製物からウイルスを除去する標準方法についても当該技術で周知である(例えば、Gerd Kern andMani Krishnan、“Viral Removal by Filtration:Points to Consider”(Biopharm International、2006年10月))。治療用抗体の調製物からウイルスを除去するためにろ過することの有効性は、ろ過される溶液のタンパク質及び/又は抗体の濃度に少なくとも部分的に依存することが知られている。本発明の抗体の精製方法は、ろ過をして1つ以上のクロマトグラフィー操作のメインストリームからウイルスを除去するステップを含み得る。好ましくは、医薬品グレードのナノフィルターによってろ過を行って、ウイルスを除去する前に、本発明の抗体を含むクロマトグラフィーメインストリームを希釈又は濃縮して、約1g/L~約3g/Lの全タンパク質及び/又は全抗体濃度を得る。さらに好ましくは、ナノフィルターはDV20ナノフィルターである(例えば、Pall Corporation;East Hills、N.Y.)。少なくとも約90%、約92%、約94%又は約96%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましくは、約98~約99%以上の均一性が医薬用途に最も好ましい。部分的又は望ましい均一性に精製されると、無菌の抗体は、本明細書に記載のように、治療に使用してもよい。
【0247】
前述の考察において、本発明は、さらに、限定されないが、哺乳動物、植物、細菌、トランスジェニック動物、又は核酸が発現するように、本発明の抗体をコードする核酸分子を含むポリヌクレオチド又はベクターによって形質転換されたトランスジェニック植物細胞を含む宿主細胞を培養するステップ、任意に、宿主細胞の培地から抗体を回収するステップを含む工程によって得ることができる抗体に関する。
【0248】
特定の態様において、本出願は、ハイブリドーマ細胞株、及びこれらのハイブリドーマ細胞株によって産生されたモノクローナル抗体を提供する。開示の細胞株は、モノクローナル抗体の産生以外の用途を有する。例えば、細胞株はその他の細胞(例えば、適切に薬物符号の付いたヒト骨髄腫、マウス骨髄腫、ヒト-マウス)と融合して異種骨髄腫(heteromyeloma)又はヒトリンパ芽球様細胞)に融合して、追加のハイブリドーマを産生し、したがって、モノクローナル抗体をコードする遺伝子を導入することができる。さらに、細胞株を抗CTLA-4免疫グロブリン鎖をコードする核酸の源として使用することができ、(例えば、適切な技術を使用してその他の細胞に導入すると(例えば、Cabilly等、米国特許第4,816,567号;Winter、米国特許第5,225,539号を参照のこと))単離され、発現することができる。例えば、再配置された抗CTLA-4軽鎖又は重鎖を含むクローンを(PCRによって)単離することができ、cDNAライブラリを細胞株から単離されたmRNAから調製することができ、抗CTLA-4免疫グロブリン鎖をコードするcDNAクローンを単離することができる。したがって、様々な宿主T細胞又はin vitroの翻訳系の特定の免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその変異体(例えば、ヒト免疫化グロブリン)の産生について、組み換えDNA技術に従って、抗体の重鎖及び/又は軽鎖又はその部分をコードする核酸を得て、使用することができる。例えば、ヒト免疫化グロブリン又は免疫グロブリン鎖等の変異体をコードするcDNA又はその誘導体を含む核酸を適切な原核生物又は真核生物のベクター(例えば、発現ベクター)に配置し、適切な方法(例えば、形質転換、トランスフェクション、電気泳動、感染)によって、適切なT細胞に導入することができ、核酸が1つ以上の発現制御要素に操作可能に連結する(例えば、ベクターに、又は宿主T細胞ゲノムに統合される)。産生のために、宿主T細胞を発現に適した条件下で(誘導因子、適切な塩、増殖因子、抗生物質、栄養補助等を補充した適切な培地の存在下で)維持することができ、それによってコードされたポリペプチドが産生する。望ましい場合、コードされたタンパク質は、(例えば、宿主T細胞又は培地から)回収及び/又は単離することができる。産生方法はトランスジェニック動物の宿主T細胞の発現を含むことが理解される(例えば、WO92/03918、GenPharm International、1992年3月19日に公開)(参照によりその全体が援用される)。
【0249】
宿主細胞は、また、インタクトな抗体の部分又は断片、例えば、Fab断片又はscFv分子を通常の技術によって産生するために使用することができる。例えば、本発明の抗体の軽鎖又は重鎖の何れかをコードするDNAで宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましい。組み換えDNA技術を使用して、ヒトCTLA-4への結合に重要ではない軽鎖又は重鎖の何れか又はその両方をコードするいくつかのDNA又は全てのDNAが除去され得る。このような切断されたDNA分子から発現される分子は、また、本発明の抗体によって包含される。
【0250】
E.coli等の細菌から単鎖抗体を含む単鎖抗体を発現し、及び/又は適切な活性形態にリフォールディングする方法は、記載されており、周知であり、本明細書抗体に適用することができる(例えば、Buchner等、Anal.Biochem.205:263-270、1992;Pluckthun、Biotechnology 9:545、1991;Huse等、Science 246:1275、1989及びWard等、Nature 341:544、1989を参照のこと、全て参照により本明細書に援用される)。
【0251】
しばしば、E.coli又はその他の細菌からの機能的異種性タンパク質を封入体から探知し、強力な変性剤を使用して可溶化し、次にリフォールディングする必要がある。可溶化のステップの最中、当該技術で周知のように、ジスルフィド結合を分離するために還元剤が存在しているにちがいない。還元剤を有する例示的な緩衝液は、0.1MのトリスpH8、6Mのグアニジン、2mMのEDTA、0.3MのDTE(ジチオエリトリトール)である。ジスルフィド結合の再酸化は、Saxena等、Biochemistry 9:5015-5021、1970、参照により本明細書に援用される、及びBuchner等、前述のように、還元及び酸化形態で低分子量のチオール試薬の存在下で生じ得る。
【0252】
概して、変性及び還元されたタンパク質をリフォールディング緩衝液に(例えば、100倍)希釈することによって、再生が達成される。例示的な緩衝液は、0.1Mのトリス、pH8.0、0.5MのL-アルギニン、8mMの酸化型グルタチオン(GSSG)、及び2mMのEDTAである。
【0253】
2つの鎖抗体精製プロトコルの修正として、重鎖及び軽鎖領域を分離して可溶化し、還元し、その後、リフォールディング溶液に合わせる。あるタンパク質のモル過剰量が他のタンパク質より5倍を超えないようなモル比で、これらの2つのタンパク質を混合すると、例示的な収率が得られる。酸化還元-混合の終了後に、過剰な酸化グルタチオン又はその他の酸化している低分子量の化合物をリフォールディング溶液に添加することができる。
【0254】
組み換え方法の他に、本明細書に開示される抗体、標識された抗体及びその抗原結合断片は、標準のペプチド合成を使用して全体的又は部分的に構築することもできる。約50アミノ酸長未満のポリペプチドの固相合成は、配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に付着させ、次に配列の残りのアミノ酸を連続添加することによって達成することができる。固相合成の技術は、Barany&Merrifield、The Peptides:Analysis、Synthesis、Biology.Vol.2:Special Methods in Peptide Synthesis、Part A. pp.3-284;Merrifield等、J.Am.Chem.Soc.85:2149-2156、1963、及びStewart等、Solid Phase Peptide Synthesis、2版、Pierce Chem.Co.、Rockford、III.1984に記載されている。より長いタンパク質は、短い断片のアミノ及びカルボキシル末端を縮合することによって合成され得る。(例えば、カップリング試薬N,N’-ジシルオヘキシルカルボドイミドを使用することで)カルボキシル末端の活性化によってペプチド結合を形成する方法は当該技術分野で周知である。
【0255】
以下の実施例は、より詳細に本発明を説明するために提供されるが、その範囲を限定することを意図するものではない。
【0256】
例1
ヒトCTLA-4を特異的に標的とするモノクローナル抗体の生成
雄マウス(C57BL/6、BALB/c、SJL)はそれぞれ、初日に、完全フロインドアジュバント(シグマ社、セントルイス、MO)と混合した50μgのヒトCTLA-4(NP_005205.2)(R&Dシステムズ、ミネアポリス、MN)で皮下的に免疫化した。一次免疫に続いて、14日目および28日目に腹腔内または皮下で不完全フロインドアジュバント(シグマ社、セントルイス、MO)と混合したマウスあたり25μg のヒトCTLA-4による2回の追加免疫を行った。56日目に25μgのヒトCTLA-4を単独で腹腔内に投与し、4日後に脾細胞を採取してATCC(ニュージャージー州アレンデール)社の骨髄腫細胞株NS0と融合させた。電気融合法を使用してハイブリドーマ細胞を取得し、その後、ハイブリドーマ上清を、抗原結合、リガンドブロッキング、IgG結合、参照抗体結合、およびFACS結合についてスクリーニング検査を行った。
【0257】
サブクローニング(制限希釈法)およびさらなる評価のための初期スクリーニングから最終的に15個のMAbを選択した。BD Cell MAb培地を使用して、ローラーボトルでハイブリドーマを増殖させ、抗体産生のための上清を収集した。MAbはプロテインA親和性クロマトグラフィで精製した。MAbの推定純度は、SDS-PAGEクーマシ染色に基づいて90%以上であった。15種類の精製MAbの2次スクリーニングは、ヒトCTLA-4結合アッセイ(ELISA)、カニクイザルCTLA-4結合アッセイ(ELISA)、マウスCTLA-4結合アッセイ(ELISA)、ELISAおよびForteBioによるCD80/CTLA-4リガンド遮断アッセイ、およびエピトープビニングスクリーニングを含む。精製されたMAbのいずれもマウス交差反応性を示さず、エピトープビニングにより2つのエピトープが同定された。
【0258】
MAbsA1-A5は、それぞれ配列番号33、35、37、39および41に記載の重鎖可変領域配列を、また、それぞれ配列番号43、45、47、49および51に記載の軽鎖可変領域配列を含む。MAbA1-A5の重鎖可変領域は、それぞれ配列番号32、34、36、38および40に示される核酸配列によってコードされ、MAbA1-A5の軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号42、44、46、48および50に示された核酸配列でコードされる。
【0259】
上位5つのマウスMAbの結合アッセイおよびブロッキングアッセイデータが表3に要約されている。

** CTLA-4に対するCD80またはCD86をブロッキングするIC50は精製タンパク質を用いて取得し、これらのIC50の比率を計算した(ブロッキング率)
【0260】
例2
CTLA4アッセイを実施して、ジャーカット細胞の活性化についてのMAbA1-A5の効力を評価した。CHO/CD80細胞がジャーカット細胞上のCD28に結合するとIL2が産生される。ジャーカット細胞の活性化は、ジャーカット細胞によって分泌されるインターロイキン2(IL-2)の濃度で測定した。CHO/CD80細胞を共培養細胞として使用した。ジャーカット細胞の活性化に対するヤーボイ(イピリムマブ)の効力を、アッセイ性能を監視する内部コントロールとして使用した。GraphPad Prismに適合したアゴニスト用量反応可変勾配(4つのパラメーター)を使用して、最大有効濃度(EC50)の半値を分析した。
【0261】
ジャーカット細胞およびCHO/CD80細胞を37℃/5%COの完全培地で維持し、ATCCのプロトコルに従って、10%FBSを補填した適切な培地で定期的に二次培養した。試験の前に-80℃で保存してあったモノクローナル抗体のサンプルは、RPMI1640で希釈して、試験に適用した。この手順は一般的に次のように実行した:1000rpmで3分間遠心分離を行って、ジャーカット細胞を培養し;ジャーカット細胞株を96ウェルアッセイプレートに播種し;1000rpmで3分間遠心分離を行って、CHO/CD80を回収し;CHO/CD80細胞ストックを96ウェルアッセイプレートに播種し;アッセイ緩衝液で試験サンプルを段階希釈し;試験サンプルとCTLA-4タンパク質を加えて反応を開始させ、穏やかに混合し;プレートを37℃/5%C0インキュベータで24時間インキュベートし;ヒトIL-2テストを実行し、プレートを読み取る。
【0262】
CD80を発現するCHO細胞によるジャーカット細胞同時刺激のCTLA-4-Fc遮断に関する、MAb A1、MAb A2、MAb A3、MAb A4、MAb A5及びについてのイピリムマブのIC50の値を表4に列挙した。

【0263】
例3
この実施例では、hCTLA4 K1マウスのMC38同系腫瘍の治療におけるMAb A4のインビボでの効力を評価し、イピリムマブの効力と比較した。
【0264】
MC38結腸腺癌細胞を、3×10細胞/mlの濃度のRPMI-1640培地(フェノールレッドなし)中の懸濁培養としてインビトロで維持した。18週齢の雌hCTLA-4 K1マウス(Nanjing Galaxy Biopharma Co.、Ltdから提供)(以下、南京ギャラクシーという)の右側に、腫瘍発生用の0.1mlRPMI-1640培地中の3×10細胞を皮下接種した。接種した動物の体積を週2回測定した。接種後一週間で、試験動物を3つの異なる治療群にランダム化し(n=6)たところ、平均腫瘍体積が70.8mm立方に達した。マウスの3つの群(n=6)を、PBS、10mg/kgMAbA4、または10mg/kgイピリムマブのいずれかで処置をした。マウスに、腹腔内(ip)投与により、週2回(BIW)、3週間投与した。
【0265】
6回目および最終投与の4日後に研究を終了した。研究期間を通して体重をモニタしたところ、MAb A4もイピリムマブもいずれも体重に影響を及ぼさなかった。担癌のマウスの腫瘍体積変化の結果を図1に示す。図1に示すように、MAb A4治療群とイピリムマブ治療群はいずれも、ビヒクル群との比較で統計的に有意な差を示し(P<0.05)、hCTLA4 K1マウスにおけるMC38腫瘍の、10mg/kgの投与レベルでの治療において統計的に有意な抗腫瘍効果を示した。
【0266】
例4
マウスMAb A4のHCVR配列(配列番号39)およびLCVR配列(配列番号49)と、ヒトIgG1(以下「キメラIgG」)を持つキメラ抗体を調製し、発現させ、精製した。キメラIgGの重鎖配列は配列番号75に記載されており、キメラIgGの軽鎖配列は配列番号76に記載されている。
【0267】
キメラIgGの重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を合成し、pTT5ベクタに挿入して、完全長IgGの発現プラスミドを構築した。キメラIgGの発現はHEK293細胞培地中で行われ、上清はプロテインA親和性カラムで精製した。精製した抗体は、PD-10脱塩カラムを使用してPBSに緩衝液交換した。精製したタンパク質の濃度および純度は、それぞれOD280およびSDS-PAGEによって決定した。精製キメラIgGは、非還元条件下のSDS-PAGEで~170kDaのバンドで移動した。SDS-PAGEの結果で評価すると、IgGの純度は95%以上であった。
【0268】
Ag CTLA4-Fcに対する抗体の結合確認および親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサである、Biacore T200(GE Healthcare)を使用して測定した。抗原CTLA4-Fcは、アミンカップリング法によりセンサーチップに固定化された。抗体は被験物質として使用した。解離(kd)および結合(kg)の速度定数のデータは、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して取得した。見かけの平衡解離定数(K)は、kに対するkの比率から計算した。結果は表5にまとめた。
【0269】
例5
親抗体であるマウスMAb A4の構造をコンピュータ支援ホモロジーモデリングプログラムによりモデル化し、CDR移植およびその後の移植抗体の推定逆突然変異部位を用いてヒト化IgG1抗体を設計した。親抗体のCDRをヒト受容者に移植され、各親抗体のヒト化軽鎖およびヒト化重鎖を取得した。7つのヒト化重鎖(VH1、VH2、VH3、VH4、VH5、VH6、およびVH7という)の配列は、配列番号77&#12316;83に記載されており、VH1-VH7の可変ドメインの配列はそれぞれ配列番号55~61に記載されている。3つのヒト化軽鎖の配列(VL1、VL2、VL3という)は配列番号84~86に示され、VL1-VL3の可変ドメインの配列は配列番号62~64に示されている。
【0270】
様々なヒト化IgG重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を合成し、pTT5ベクタに挿入して、完全長IgGの発現プラスミドを構築した。15個の完全長ヒト化抗体をHEK 293細胞培地で発現させた後、細胞を遠心沈降させた。上清をろ過し、ウエスタンブロットおよびSDS-PAGE分析を行った。精製キメラIgGおよびヒト化IgG は、非還元条件下でSDS-PAGE中、~70kDa バンドとして移動した。SDS-PAGEの結果で評価すると、IgGの純度は95%以上であった。
【0271】
15のヒト化抗体の親和性ランキングは、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサであるBiacore T200(GE Healthcare)を使用して決定した。アミン結合法を使用して、抗ヒトFcガンマ特異的抗体をセンサチップに固定化した。培養培地に隠した15のヒト化抗体と親抗体(マウスMAb A4)を注入し、Fc(捕捉段階)を介して抗ヒトFc抗体によって個別に捕捉した。平衡化後、Ag CTLA4-hisを300秒間注入し(結合段階)、次いで、600秒間ランニングバッファを注入した(解離段階)。各サイクル中に参照フローセル(フローセル1)の応答をヒト化抗体フローセルの応答から差し引いた。表面は、他のヒト化抗体の注入前に再生された。すべての抗体を分析するまで、このプロセスを繰り返した。ヒト化抗体のオフレートは、Biacore 8K評価ソフトウェアを使用して、1:1の相互作用モデルに実験データをローカルにフィッティングして取得した。抗体は、解離速度定数(オフレート、k)でランク付けした。結果を表6にまとめた。
【0272】
ヒト化Ab14(VH6/VL3)、ヒト化Ab15(VH7/VL3)およびヒト化Ab11(VH4/VL2)を選択して、さらに分析した。ヒト化Ab14、ヒト化Ab15、およびヒト化Ab11のHCVR、LCVR、HCおよびLCのアミノ酸配列を表7に示す:
【0273】
CTLA4-hisに結合する精製抗体の親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサである、Biacore 8kを用いて決定した。抗体は、捕捉法によりセンサーチップに固定化した。抗原CTLA4-hisを検体として使用した。Biacore 8k評価ソフトウェアを使用して、解離(kd)速度定数と結合(ka)速度定数のデータを取得した。平衡解離定数(KD)は、kaに対するkdの比率から計算した。結果を表8にまとめた。
【0274】
実施例2に記載されているジャーカット細胞の活性化を、ヒト化Ab15、ヒト化Ab14、ヒト化Ab11に行い、およびCTLA-4抗体であるイピリムマブと比較した。
結果を表9にまとめた。
【0275】
実施例1-5に記載されたデータは、本発明の種々のMAb、例えばマウスMAbA4およびヒト化Ab 14が、高親和性のヒトCTLA-4およびカニクイザルCTLA-4に結合可能であり、CTLA-4相互作用(CD80およびCD86)を両方ブロックし、ジャーカット/CD80/CTLA-4機能アッセイにおけるIL-2産生を刺激することを証明しており、イピリムマブに匹敵するhCTLA4 K1マウスにおけるMC38同系腫瘍に対する有効性を実証している。
【0276】
本明細書に開示および特許請求されるすべての物品および方法は、本開示に照らして過度の実験なしに作製および実行することができる。本発明の物品および方法を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく物品および方法に変形を適用できることは当業者には明らかであろう。現在存在するか、または後に開発されるかにかかわらず、当業者に明らかなそのような変形および等価物はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内にあるとみなされる。本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、本発明が関係する当業者のレベルを示している。すべての特許、特許出願、および出版物は、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、個々の出版物がすべての目的のために参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じである。本明細書に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素がなくても適切に実施することができる。したがって、本発明を好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示したが、本明細書に開示された概念の修正および変形は当業者に頼ることができ、そのような修正および変形は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられることを理解されたい。

配列表
添付の配列表に挙げられた核酸及びアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基については標準的な文字略語を用いて示され、アミノ酸については米国特許法施行規則(37CFR)第1.822条に規定の3文字コードで示される。

[配列表]
図1
【配列表】
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