(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】フットコントローラ装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
G01B7/00 101H
(21)【出願番号】P 2020182322
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000120489
【氏名又は名称】栄通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 正二
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-141770(JP,A)
【文献】特開2001-075664(JP,A)
【文献】特開2012-073231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体と対向した状態で、当該筐体に近づくように回転自在に支持された平板状のペダルと、
前記ペダルの筐体側に設けられた突出部材と、
前記突出部材の先端側に形成された凹部に保持された磁石と、
前記筐体の当該筐体に近づいた前記突出部材の側面側と平行となる位置に設けられ、前記磁石の磁束の変化を検出する第1検出部と、
前記筐体の当該筐体に近づいた前記突出部材の先端側と対向する位置に設けられ、前記ペダルの
予め設定された所定回転量を検知する第2検出部と、を備える
フットコントローラ装置。
【請求項2】
前記第1検出部が、前記磁石の磁束の変化によるアナログ出力を制御するアナログ基板である
請求項1に記載のフットコントローラ装置。
【請求項3】
前記第2検出部が、
前記所定回転量の検知によるスイッチ出力を制御するスイッチ基板である
請求項1または2に記載のフットコントローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットコントローラ装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
一般的に、フットコントローラ装置(以下、単にフットコントローラとも表記する)は、足でペダルを踏み込んで操作する制御機器である。フットコントローラは、ペダルの踏み込み角度を内部機構を介してポテンショメータのシャフト回転角度に変換し、シャフト回転角度(踏み込み量)を、電気的出力(電流、電圧等)に変換する。すなわち、フットコントローラは、ペダルの踏み込み角度に応じた電気的出力を取り出すための制御機器である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、フットコントローラは、使用環境から耐振動、長寿命などが求められる。このため、フットコントローラに使用されるポテンショメータには、抵抗体と接点で構成される接触式ではなく、無接触式が広く採用されている。
従来の無接触式ポテンショメータを用いたフットコントローラは、ペダルの踏み込みをポテンショメータのシャフト回転に変換するための連結機構を有する。そして、このフットコントローラでは、意図する電気的出力を得るために、ポテンショメータを取り付ける際の調整や、連結機構部の調整が必要となる。
【0004】
また、上記の無接触式ポテンショメータを用いたフットコントローラでは、安全性機構を独立した機能として備える構成が知られている。安全性機構としては、例えば、ぺダル踏み込み最大位置(端末位置)の手前で、ペダルが端末位置に接近していることを知らせるための電気的信号を出力する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-57497号公報
【文献】特開2006-198046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無接触式ポテンショメータを用いたフットコントローラでは、コストの低減のために、上記の連結機構の部品削減や、調整作業の軽減化が求められている。
また、上記のフットコントローラの安全性機構では、この安全機構を構成する部品を追加する必要があるため、さらに安全機構の組立や、調整作業が必要となる。このため、コストの低減のために、安全機構を備える無接触式フットコントローラ装置においても、部品数の削減が求められている。
【0007】
上述した問題の解決のため、本発明においては、部品数の削減が可能なフットコントローラ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフットコントローラ装置は、筐体と、筐体に対向した状態で回転自在に支持された平板状のペダルと、ペダルの筐体側に保持された磁石と、ペダルの回転量を検出する検出部とを備える。そして、検出部は、筐体に設けられた、ペダルの回転によって移動する磁石と対向する位置に配置された磁石の磁束の変化を検出する第1検出部と、ペダルの予め設定された所定回転量を検知する第2検出部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品数の削減が可能なフットコントローラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来のフットコントローラ装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すフットコントローラ装置の上面図である。
【
図3】
図2に示すフットコントローラ装置のA-A線断面図である。
【
図4】
図1に示すフットコントローラ装置の側面図(フリー状態)である。
【
図5】
図1に示すフットコントローラ装置の側面図(角度最大位置)である。
【
図6】従来のフットコントローラ装置におけるペダル踏み込み角度と出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図7】実施形態のフットコントローラ装置の概略外観図である。
【
図8】
図7に示すフットコントローラ装置の上面図である。
【
図9】
図7に示すフットコントローラ装置の正面図である。
【
図10】
図7に示すフットコントローラ装置の底面図である。
【
図11】
図8及び
図9に示すフットコントローラ装置のB-B線断面図である。
【
図12】
図11に示すフットコントローラ装置のC部分の拡大図である。
【
図13】フットコントローラ装置の全体構成を示す分解斜視図である。
【
図14】
図13に示すフットコントローラ装置のD部分の拡大図である。
【
図15】フットコントローラ装置の全体構成を示す分解斜視図である。
【
図16】ペダルの筐体側の構成を示す分解斜視図である。
【
図17】フットコントローラ装置の底面側の構成を示す分解斜視図である。
【
図18】
図11に示すフットコントローラ装置の側面図(フリー状態)である。
【
図19】
図18に示すフットコントローラ装置のE部分の拡大図である。
【
図20】
図11に示すフットコントローラ装置の側面図(中間位置)である。
【
図21】
図20に示すフットコントローラ装置のE部分の拡大図である。
【
図22】
図11に示すフットコントローラ装置の側面図(角度最大位置)である。
【
図23】
図22に示すフットコントローラ装置のE部分の拡大図である。
【
図24】ペダル踏み込み角度(°)と電気的出力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈フットコントローラ装置の実施の形態〉
以下、本発明を実施するための具体的な実施の形態について説明する。
[従来技術の説明]
まず、本発明のフットコントローラ装置の説明に先立ち、従来技術のの無接触式フットコントローラ装置(以下、単に無接触式フットコントローラ、フットコントローラとも表記する)の概要について説明する。
図1、
図2及び
図3に、従来の無接触式フットコントローラ装置の概略構成を示す。
図1は、フットコントローラ装置の概略外観図である。
図2は、
図1に示すフットコントローラ装置の上面図である。
図3は、
図2に示すフットコントローラ装置のA-A線断面図である。
【0012】
図1~3に示す無接触式フットコントローラ装置は、筐体10、ペダル11、ケーブル12、圧縮コイルばね13、シャフト14、レバー15、レバーピン16、レバー受け17、無接触式ポテンショメータ18を主要部品として備える。なお、
図1~3において、無接触式ポテンショメータ18とケーブル12とを接続する配線は記載を省略している。
【0013】
ペダル11と筐体10とはシャフト14によって連結されている。ペダル11とシャフト14とは、ピン打ち等によって機械的に結合されている。これにより、ペダル11に結合したシャフト14は、筐体10の左右側面の貫通穴を軸受として回転可能に結合される。すなわち、ペダル11は、シャフト14を軸として回動可能である。筐体10は、ペダル11が回動する際の回動範囲を制限するストッパの役割を有する。
【0014】
また、筐体10とペダル11との間には、2つの圧縮コイルばね13が配置されている。圧縮コイルばね13は、ペダル11に対して常に外方向(開く方向)に与圧を与えている。このため、ペダル11は、踏み込みが解除されると、所定の位置(フリー状態)に戻る。
【0015】
筐体10の内部には、一方の端部がシャフト14との組み付けによって結合され、他方の端部にレバーピン16が取り付けられた、レバー15が配置されている。
また、筐体10の内部には、シャフト14から離れた位置に、取付板19を介して無接触式ポテンショメータ18が組み付けられている。無接触式ポテンショメータ18のシャフト18aにはレバー受け17が組み付けられる。レバー受け17はU字形状を有し、そのU字の先端部分に上記のレバーピン16が係合され、中央部に無接触式ポテンショメータ18のシャフト18aが接合されている。
【0016】
上記の構成により、レバー15、レバーピン16及びレバー受け17を介して、ペダル11のシャフト14と、無接触式ポテンショメータ18のシャフト18aとが連結されている。このようにペダル11のシャフト14と無接触式ポテンショメータ18のシャフト18aとを連結することにより、ペダル11の踏み込み角度(ペダル踏み込み角度)を無接触式ポテンショメータ18のシャフト18aの回転角度(シャフト回転角度)に変換することができる。これにより、無接触式ポテンショメータ18において、ペダル11の踏み込み角度(踏み込み量)を、電気的出力(電流、電圧等)に変換することができる。
【0017】
尚、この連結方式では、ペダル踏み込み角度と無接触式ポテンショメータ18のシャフト回転角度とは一致せず、シャフト回転角度の方がペダル踏み込み角度より大きく(増速)なる。ただし、ペダル踏み込み角度と電気的出力とは1対1の関係となる。
【0018】
次に、
図4、
図5、及び、
図6に、従来の無接触式フットコントローラ装置における、ペダル踏み込み角度と電気的出力との関係の一例を示す。
図4は、
図1に示す無接触式フットコントローラ装置の側面図であり、ペダル踏み込み角度が0°の状態(フリー状態)を示している。
図5は、
図1に示す無接触式フットコントローラ装置の側面図であり、ペダル踏み込み角度が20°の状態(踏み込み角度最大位置)を示している。
【0019】
図6は、ペダル踏み込み角度(°)と電気的出力との関係を示すグラフである。
図6に示すグラフは、横軸にペダル踏み込み角度(°)、縦軸に出力電圧比(%)を示している。
図6に示す例では、ペダルの回動範囲での電気的出力を10%~90%としている。尚、ペダル回動範囲である踏み込み角度最大位置20°は、説明上の一例である。
【0020】
図6に示すように、
図4に示すペダル踏み込み角度0°からペダル11を踏み始めて3°までの間に、電気的出力が変化しないあそび部分が設けられている。そして、
図6に示すように、ペダル踏み込み角度3°から17°までの間において、ペダル踏み込み角度が出力電圧比10%~90%の電気的出力に変換されている。この電気的出力の出力電圧比は、ペダル踏み込み角度に対応して、直線状に変化している。
【0021】
さらに、ペダル11が筐体10に当たる少し手前のペダル踏み込み角度17°から、
図5に示すペダル11を踏み終わり20°までの間に、電気的出力が変化しない3°のあそび部分が設けられている。このような、ペダルの踏み始めと、踏み終わりの間で、電気的出力が変化しないあそび部分を設ける構成は、フットコントローラの特徴の一つである。なお、あそび部分の角度(3°)は説明上の一例である。
【0022】
[フットコントローラ装置の構成]
次に、本実施形態のフットコントローラ装置の構成について説明する。
図7、
図8、
図9、
図10、
図11及び
図12に、本実施形態の無接触式フットコントローラ装置の概略構成を示す。
図7は、フットコントローラ装置の概略外観図である。
図8は、
図7に示すフットコントローラ装置の上面図である。
図9は、
図7に示すフットコントローラ装置の正面図である。
図10は、
図7に示すフットコントローラ装置の底面図である。
図11は、
図8及び
図9に示すフットコントローラ装置のB-B線断面図である。
図12は、
図11に示すC部分の拡大図である。
【0023】
図7~12に示すフットコントローラ装置は、筐体20、ペダル21、ケーブル22、圧縮コイルばね23、シャフト24、磁石26、アナログ基板27、及び、スイッチ基板28を主要部品として備える。なお、
図8~12において、外部と接続するためのケーブル22、並びに、筐体20の内部でのアナログ基板27、及び、スイッチ基板28とケーブル22とを配線接続するリード線は省略している。
【0024】
ペダル21は、平板状の踏板21aと、踏板21aの側面に接続された側板のシャフト貫通穴35とを有する。ペダル21は、シャフト貫通穴35に挿入されたシャフト24によって筐体20に連結されている。ペダル21とシャフト24とは、ピン打ち等によって機械的に結合されている。これにより、ペダル21と結合したシャフト24は、筐体20の左右側面の貫通穴を軸受として、筐体20に対して対抗した状態で、回転可能に結合されている。すなわち、ペダル21は、シャフト24を軸として回動可能である。筐体20は、ペダル21が回動する際の回動範囲を制限するストッパの役割を有する。
【0025】
また、
図11に示すように、筐体20とペダル21との間には、2つの圧縮コイルばね23が配置されている。圧縮コイルばね23は、ペダル21に対して常に外方向(開く方向)に与圧を与えている。このため、ペダル21は、踏み込みが解除されると、所定の位置(フリー状態)に戻る。
【0026】
また、
図11及び
図12に示すように、ペダル21の筐体20側には、突出部材25が設けられている。突出部材25は、シャフト24の接続部分と圧縮コイルばね23との間に設けられている。また、突出部材25は、ペダル21が回転移動した際に、シャフト24や筐体20のシャフト24の軸受け部分等の他の構成と干渉(接触)しない位置に配置されている。
【0027】
ペダル21の突出部材25の先端側(筐体20側)には、所定の深さに凹部30が形成されている。ペダル21の突出部材25の凹部30には、磁石26が保持されている。凹部は、磁石26の形状に合わせて形成される。また、凹部30は、保持された磁石26が筐体20側に突出しない深さに形成されている。例えば、凹部30は、突出部材25の先端部分と磁石26の端部とが一致する深さ、又は、磁石26の端部がわずかに突出部材25の先端部分よりも凹部30の内部に位置する深さに形成される。
【0028】
また、
図12に示すように、筐体20の内部には、ペダル21によって移動する磁石26の磁束の変化を検出するための検出部として、第1検出部及び2検出部を備える。
図12に示すフットコントローラ装置では、ペダル21の回転によって移動する磁石26の磁束の変化を検出する第1検出部として、アナログ基板27を備える。また、
図12に示すフットコントローラ装置では、ペダル21の予め設定された所定回転量を検知する第2検出部として、スイッチ基板28とを備える。アナログ基板27は、アナログ基板取付凹部44に取り付けられてる。スイッチ基板28は、スイッチ基板取付凹部45に取り付けられてる。
【0029】
アナログ基板27は、アナログ信号を出力(アナログ出力)とする磁気検出センサが実装されている。
図12に示すフットコントローラ装置では、アナログ出力の磁気検出センサとしてホールIC38がアナログ基板27に実装されている。また、スイッチ基板28は、Hレベル/Lレベルのスイッチ信号を出力(スイッチ出力)する磁気検出センサが実装される。
図12に示すフットコントローラ装置では、スイッチ出力の磁気検出センサとしてホールIC39がスイッチ基板28に実装されている。なお、本例では、磁気検出センサとしてホールIC38及びホールIC39を用いる構成を説明しているが、本技術の意図を逸脱しない範囲において、ホールICに限定するものではない。
アナログ基板27、及び、スイッチ基板28において、いずれの磁気検出センサも磁石26の磁束密度を感知して作動し、電気的信号を出力する。
【0030】
アナログ基板取付凹部44は、筐体20内において、突出部材25の側面側に配置されている。具体的には、アナログ基板取付凹部44は、ペダル21の回転に伴う磁石26の移動方向に沿うように形成され、ペダル21の突出部材25と略平行となる位置に設けられている。
また、アナログ基板27は、アナログ基板取付凹部44に取り付けた状態で、ホールIC38の実装面と磁石26の対向面とが、ペダル21の回転量(踏み込み角度)の中間位置で平行になるように設けられている。これにより、中間位置でのアナログ基板27からのアナログ出力値が50%になる。
【0031】
スイッチ基板取付凹部45は、筐体20内において、ペダル21が最も筐体20側に近づいた際に突出部材25の先端部分が近接する位置に設けられている。また、スイッチ基板28は、ペダル21の回転に伴う突出部材25の移動方向の延長線上に設けられている。さらに、ペダル21の回転に伴う突出部材25の移動方向の延長線上において、スイッチ基板28のホールIC39の実装面が、磁石26の先端部分(筐体20側の端部)と対向する位置に設けられている。これにより、スイッチ基板28のホールIC39によって、ペダル21に設けれた磁石26の近接を検出する。
【0032】
また、
図11に示すように、筐体20の底部は、ゴムパッキン31を介して底蓋29が取り付けられている。
また、
図10に示すように、底蓋29は、底蓋固定ねじ33によって筐体20に取り付けられている。そして、筐体20の底部側の側端部には、フットコントローラ装置を床等に固定するための筐体取付穴34が設けられている。筐体取付穴34は、筐体20の底部側の両側端部の前後方向にそれぞれ2個づつ設けられている。
筐体20の内部では、接続された電気的信号をフットコントローラ装置の外部に出力するためのケーブル(図示省略)がアナログ基板27やスイッチ基板28に接続されている。そして、筐体20のシャフト24の組付け位置と反対側の端部に、ケーブルを外部に引き出すためのケーブルクランプ32が設けられている。
【0033】
上述のように、フットコントローラ装置は、電気的出力として、ペダル踏み込み角度に応じた電圧を出力するアナログ出力と、ペダル踏み込み最大位置より少し手前の所定の位置でHレベル(又はLレベル)となる信号を出力するスイッチ出力との2系統の出力機構を有する。このアナログ出力とスイッチ出力とは互いに独立しており、一方の出力がもう一方の出力に影響を与えることはない。
【0034】
このため、上記構成のフットコントローラ装置は、ぺダル21に取り付けられた磁石26の移動を、アナログ基板27及びスイッチ基板28で検出する。すなわち、アナログ基板27のホールIC38において、ペダル21の踏み込み角度(ペダル踏み込み角度)を、磁石26の移動による磁束の変化として検出することができる。さらに、スイッチ基板28において、ペダル踏み込み角度の変化によって磁石26がスイッチ基板28に近接したことを検出することができる。これにより、アナログ基板27において、ペダル21の回転量を、電気的出力(電流、電圧等)に変換して出力することができる。そして、スイッチ基板28において、予め設定されたペダル21の所定回転量を検知して出力することができる。
【0035】
[フットコントローラ装置の組み立て順]
次に、フットコントローラ装置の構造を組み立て順に沿って説明する。
図13、
図14、
図15、
図16、及び、
図17に、フットコントローラ装置の組み立て順を説明するための分解斜視図を示す。
図13は、フットコントローラ装置の全体構成を示す分解斜視図である。
図14は、
図13に示すD部分の拡大図である。
図15は、
図13の反対側のフットコントローラ装置の構成を示す分解斜視図である。
図16は、ペダル21の筐体20側の構成を示す分解=斜視図である。
図17は、フットコントローラ装置の底面側の構成を示す分解斜視図である。なお、
図13~17に示す分解斜視図は、上述の
図7~11に示すフットコントローラ装置と同様の構成である。このため、
図7~11と共通する構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0036】
まず、ペダル21に設けられた突出部材25の凹部30内に磁石26を挿入する。そして、磁石26の長手面を凹部30の側面に密着させて接着剤で仮固定する。さらに、突出部材25の凹部30の全体に接着剤を流し込んで封止し、接着剤を硬化させる。
【0037】
接着剤の硬化後、ペダル21のシャフト貫通穴35と筐体20の軸受部37とを揃えた状態で、シャフト貫通穴35と軸受部37とにシャフト24を挿入する。これにより、シャフト24を用いてペダル21を筐体20に組み付ける。この組み付けは、
図15及び
図16に示すように、ペダル21に設けられた圧縮コイルばね用ザグリ穴42と、筐体20に設けた圧縮コイルばね用凸部41で圧縮コイルばね23を挟みながら行う。
また、
図13に示すように、シャフト24は、両端2箇所にOリング溝43を有し、このOリング溝43にそれぞれOリング36が取り付けている。Oリング36は筐体20の内部の密封性を確保するために設けられている。
【0038】
シャフト24を挿入してペダル21と筐体20を組み付けた後、ピン打ち(図示は省略)によってペダル21とシャフト24を機械的に結合する。これにより、ペダル21と結合したシャフト24は、筐体20の左右側面を軸受として回転可能であり、すなわちペダル21が回動可能となる。さらに、筐体20が、ペダル21の回動範囲を制限するストッパの役割を有する。
【0039】
また、ペダル21と筐体20の間に配置された2つの圧縮コイルばね23により、ペダル21に常に外方向(開く方向)に与圧がかかる。このため、ペダル21を踏み込んだ際に、踏み込み量に応じてペダル21の踏み込みが重くなる。また、ペダル21の踏み込みを解除すると、ペダル21が所定の位置(フリー状態)に戻る。
【0040】
次に、
図14に示すように、アナログ基板27、及び、スイッチ基板28を、それぞれ筐体20のアナログ基板取付凹部44、及び、スイッチ基板取付凹部45に取り付ける。そして、アナログ基板27、及び、スイッチ基板28を、取り付け面に密着させて接着剤で仮固定する。さらに、アナログ基板取付凹部44、及び、スイッチ基板取付凹部45に接着剤を流し込み、接着剤を硬化してアナログ基板27、及び、スイッチ基板28を封止する。この封止によって、アナログ基板27、及び、スイッチ基板28が確実に固定される。また、筐体20の材質が金属である場合は、アナログ基板27、及び、スイッチ基板28と、筐体20との電気的な絶縁性が向上する。
次に、
図13に示すように、アナログ基板27、及び、スイッチ基板28を封止した接着剤を硬化させた後、筐体20に組み付けたケーブルクランプ32にケーブルを通し、アナログ基板27、及び、スイッチ基板28のそれぞれに接続するリード線(スイッチ基板のリード線の図示は省略)とケーブル22(
図7参照)とを接続する。
【0041】
次に、ゴムパッキン31を挟む形で底蓋29を筐体20の底面に底蓋固定ねじ33で固定する。ケーブルクランプ32は、ケーブル22の根本の固定と筐体20の内部の密封性を確保するために配置されている。また、ゴムパッキン31も筐体20の内部の密封性を確保するために設けられている。
【0042】
以上の工程によってフットコントローラ装置が組み上げられて後、ペダル21の踏み込み角度に応じた電気的出力が意図したものになるように、アナログ基板27のホールIC38(アナログ出力)に書込みを行う。
また、スイッチ基板28のホールIC39は、磁石26が意図した位置でHレベル(又はLレベル)になるようにスイッチ基板28が予め設定されている。また、スイッチ基板28のホールIC39にも、アナログ出力用のホールIC38と同様のプログラムタイプのホールIC39を用いることにより、書込みで対応することも可能である。
【0043】
[ペダルの踏み込み角度と電気的出力の関係]
次に、フットコントローラ装置における、ペダル踏み込み角度と電気的出力の関係について説明する。
図18、
図19、
図20、
図21、
図22、
図23、及び、
図24に、フットコントローラ装置における、ペダル踏み込み角度と電気的出力の関係の一例を示す。
【0044】
図18は、
図11に示す無接触式フットコントローラ装置の側面図であり、ペダル踏み込み角度が0°の状態(フリー状態)を示している。
図19は、
図18に示すE部分の拡大図である。
図20は、
図11に示す無接触式フットコントローラ装置の側面図であり、ペダル踏み込み角度が10°の状態(踏み込み中間位置)を示している。
図21は、
図19に示すE部分の拡大図である。
図22は、
図11に示す無接触式フットコントローラ装置の側面図であり、ペダル踏み込み角度が20°の状態(踏み込み角度最大位置)を示している。
図23は、
図20に示すE部分の拡大図である。
図24は、ペダル踏み込み角度(°)と電気的出力との関係を示すグラフである。
図24に示すグラフは、横軸にペダル踏み込み角度(°)、縦軸に出力電圧比(%)を示している。
図24に示す例では、ペダルの回動範囲での電気的出力を10%~90%としている。尚、ペダル回動範囲である踏み込み角度最大位置20°は、説明上の一例である。
【0045】
図18及び
図19に示すペダルを踏み込んでいないフリー状態では、ペダル21に設けられた磁石26が、アナログ基板27、及び、スイッチ基板28から最も離れた位置にある。このとき、
図24に示すように、フットコントローラ装置では、ペダルを踏み込んでいないフリー状態(
図18、
図19)では、電気的出力が下限値の10%となるように、ナログ基板27のホールIC38(アナログ出力)に書込みを行う。
【0046】
また、
図24に示すグラフでは、フリー状態の0°から3°までの区間は、アナログ出力値が変化しないあそび区間である。このため、踏み込み角度0°~3°の間は、電気的出力が下限値の10%を維持する。そして、踏み込み角度が3°を超えると電気的出力が上昇し、踏み込み角度に応じた電圧がアナログ出力される。
【0047】
図20及び
図21に示すように、ペダル踏み込み角度が最大角度の半分である中間位置では、アナログ基板27を取り付けられた状態のホールIC38の実装面と、磁石26の対向面とが、中間位置で平行になるように設けられている。このとき、
図24に示すように、ペダル踏み込み角度の中間位置でのアナログ出力値が50%となるように、ナログ基板27のホールIC38(アナログ出力)に書込みを行う。
【0048】
図22及び
図23に示すぺダル踏み込み角度が最大位置(20°)では、ペダル21の突出部材25の先端が、ストッパとなる筐体20に接触した状態となる。このとき、
図24に示すように、ペダル踏み込み角度の最大位置でのアナログ出力値が上限値の90%となるように、ナログ基板27のホールIC38(アナログ出力)に書込みを行う。また、ぺダル踏み込み角度の最大位置から3°手前までの区間、すなわちぺダル踏み込み角度17°~20°は、アナログ出力値が90%を維持するあそび区間が設定されている。
【0049】
次に、アナログ基板27から出力されるアナログ出力の直線性精度に関係する、ホールIC38の内部の磁束感受素子と磁石26との位置関係について説明する。
ホールIC38の磁束感受素子の感受面と磁石26の対向面は、中間位置(
図20、
図21)では平行である。しかし、ペダル21がシャフト24を軸として回動するため、磁石26は円弧の動きとなる。このため、ペダル21が、中間位置(
図20、
図21)からフリー状態(
図18、
図19)、又は、角度最大位置(
図22、
図23)への移動に従って、磁束感受素子の感受面と磁石26の対向面には、角度が付くことになる。
【0050】
アナログ基板27からのアナログ出力の直線性に高精度を求める場合、ホールIC38の磁束感受素子の感受面と磁石26の位置関係は、常に平行となることが好ましい。しかしながら、足で操作するフットコントローラ装置では、高精度な直線性を必要としない場合がほとんどであるため、磁石26が円弧状に動くことは実用上問題はない。また、高精度な直線性を要求される場合には、ホールIC38として直線性の補正機能を有するものを使用することにより、直線性の精度を改善することが可能である。
【0051】
次に、ペダル21の踏み込み角度と、スイッチ基板28からのスイッチ出力の関係について説明する。
ペダル21を過剰に踏み込んだ際に、ペダル21(突出部材25)が筐体20に勢いよく突き当たってしまうことを防止するため、スイッチ基板28からのスイッチ出力が、安全装置として機能する。具体的には、ペダル21の踏み込み角度最大位置の手前で、スイッチ出力がLレベル→Hレベルに(又はHレベル→Lレベルに)切り替わる。
図24では、アナログ出力が90%となる17°が、スイッチ基板28からのスイッチ出が切り替わりポイントとして設定されている。これにより、ペダル21の踏み込み角度が17°となったとき、スイッチ基板28のホールIC39が、磁石26の近接を検出し、スイッチ出力がLレベル→Hレベルに(又はHレベル→Lレベルに)切り替わる。この結果、スイッチ基板28は、ペダル21が筐体20に極接近していることを、フットコントローラ装置の制御側に伝達することができる。
【0052】
上述のように、本形態のフットコントローラ装置は、ペダル21に1個以上の磁石26が取り付けられている。そして、筐体20に磁気検出センサとしてホールIC38及びホールIC39の2個を1組としたものが1組以上取り付けられている。そして、磁気検出センサが、磁石26の移動方向に沿う位置と、磁石26が保持された突出部材25の可動端に対向する位置とに取り付けられている。すなわち、本形態のフットコントローラ装置は、ペダル21に取り付けた1個の磁石26対して、アナログ出力(ホールIC38)とスイッチ出力(ホールIC39)との1組以上(2個以上)の磁気検出センサを同時に制御する機構を有する。
【0053】
上記構成のフットコントローラ装置では、従来構成のフットコントローラ装置のようなペダルの踏み込み角度を検出するポテンショメータや、シャフトの回転をポテンショメーターに伝達するための各種の連結機構が不要となる。このため、フットコントローラ装置において、部品削減が可能となる。また、ポテンショメータを備えないため、ポテンショメータを取り付ける際に要求される、意図する電気的出力を得るための調整や、連結機構部の調整が不要となる。このため、フットコントローラ装置において、調整作業の軽減化が可能となる。
【0054】
なお、上述のフットコントローラ装置では、磁石1個に対してアナログ出力の磁気検出センサ(第1検出部)とスイッチ出力の磁気検出センサ(第2検出部)との各1個を1組の検出部として制御する構成としている。しかしながら、基板にホールICを2個以上実装することで、出力系統を増やすことも可能である。例えば、アナログ基板に実装するホールIC(アナログ出力)を2重出力タイプにし、かつスイッチ基板にホールIC(スイッチ出力)を2個実装することで、磁石1個で2つのアナログ出力と、2つのスイッチ出力を同時に制御することもできる。
【0055】
上述のフットコントローラ装置では、磁石の形状は限定されない。上述の磁気検出センサの同時制御が可能な構成であれば、構成や形状を限定せずに磁石を適用することができる。また、ペダルに磁石保持部(突出部分)を2箇所以上設け、磁石を2個以上備える構成とすることもできる。この場合には、各磁石に対し、それぞれ磁気検出センサの組を対応させてもよい。
また、第1検出部及び第2検出部の構成も、上述のアナログ基板やスイッチ基板に限られず、上述の磁石の移動による磁束の変化を検出することができれば、構成を限定せずに適用することができる。
【0056】
上述の説明では、アナログ出力の出力電圧比を10%~90%としたが、出力電圧比の範囲は任意である。そして、アナログ出力の出力電圧比は、ペダルの踏み込み角度を増やすとアナログ出力が減少する逆の傾斜であってもよい。
また、上述の説明では、アナログ出力を直線変化としているが、スイッチ出力や方形波出力、放物線のように変化する関数出力であってもよい。
さらに、上述の説明においてアナログ出力に設けたあそび区間は無くてもよい。
【0057】
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10,20 筐体、11,21 ペダル、12,22 ケーブル、13,23 圧縮コイルばね、14,18a,24 シャフト、15 レバー、16 レバーピン、17 レバー受け、18 無接触式ポテンショメータ、19 取付板、21a 踏板、25 突出部材、26 磁石、27 アナログ基板、28 スイッチ基板、29 底蓋、30 凹部、31 ゴムパッキン、32 ケーブルクランプ、33 底蓋固定ねじ、34 筐体取付穴、35 シャフト貫通穴、36 Oリング、37 軸受部、38,39 ホールIC、41 圧縮コイルばね用凸部、42 圧縮コイルばね用ザグリ穴、43 Oリング溝、44 アナログ基板取付凹部、45 スイッチ基板取付凹部