(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】可食カップ蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20221028BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B65D47/06 110
B65D65/46
(21)【出願番号】P 2021018856
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2021-02-09
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519177895
【氏名又は名称】振頤軒食品企業有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEN YI XUAN FOOD ENTERPRISES CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.28, Ln. 67, Hecuo St., Xitun Dist., Taichung City 407 Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】莊益民
(72)【発明者】
【氏名】張志清
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】台湾特許公告第000676446(TW,B)
【文献】実開平03-048483(JP,U)
【文献】特開2011-045348(JP,A)
【文献】実公昭33-015483(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0029824(US,A1)
【文献】特開2018-122888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B65D 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ蓋(10)は、カップ(12)の飲み口(14)に選択的に蓋設され、前記飲み口(14)を塞ぎ、容易に分離されることを防ぐとともに、食べることが可能な本体(28)と、少なくとも1つの食べることが可能な蝋層(25),(27)と、少なくとも1つの食べることが可能な包装膜(21),(23)と、を備えた、可食カップ蓋であって、
前記本体(28)は、カップ蓋機能を有する形状であり、前記本体(28)は、1つの中実体(20)であり、前記中実体(20)は、1つの頂部(22)の周りに立設された壁(24)を有し、前記壁(24)により囲まれて一容積が形成され、前記頂部(22)は、一定の直径を有し、前記壁(24)の1つの開口(26)を介して前記カップ(12)の前記飲み口(14)を受け、
前記蝋層(25),(27)は、前記本体(28)の表面に付着され、
前記包装膜(21),(23)は、前記蝋層(25),(27)の前記本体(28)が設けられていない側の表面に付着されるとともに、前記本体(28)を覆い、除去可能であ
り、
前記包装膜(21),(23)は、ゼラチン及び/又はレシチンで作られた食べることが可能な薄膜であるオブラートであるか、動物又は植物により作った食べることが可能な薄膜であるか、或いは、カゼインにペクチンを混合して作った食べることが可能な薄膜であり、
前記蝋層(25),(27)は、前記包装膜(21),(23)と前記本体(28)との接着剤として作用することを特徴とする、可食カップ蓋。
【請求項2】
前記本体(28)は、食べることが可能な澱粉構造体(29)を含むことを特徴とする請求項
1に記載の可食カップ蓋。
【請求項3】
前記蝋層(25),(27)は、動物又は植物により作られた食用蝋であるか、食用蝋に脂肪酸を混合して作った食用蝋層であることを特徴とする請求項
2に記載の可食カップ蓋。
【請求項4】
前記蝋層(25),(27)には、堅果により作られた顆粒(40)が混合されることを特徴とする請求項
3に記載の可食カップ蓋。
【請求項5】
前記澱粉構造体(29)の内部には、直径が30μm~1000μmである複数のマイクロカプセル(30)が設けられることを特徴とする請求項
2に記載の可食カップ蓋。
【請求項6】
前記マイクロカプセル(30)は、1つの殻(32)により囲まれて形成された気室(34)で構成された中空袋(31)であることを特徴とする請求項
5に記載の可食カップ蓋。
【請求項7】
前記マイクロカプセル(30)は、1つの殻(32)により包まれた液体又は固体の心材(35)で構成された中実袋(33)であることを特徴とする請求項
5に記載の可食カップ蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ蓋に関し、特に、食べることが可能であるとともに、カップの飲み口を覆う又は塞ぐことが可能な可食カップ蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカップは、ポリプロピレン(Polypropylene:PP)などの合成樹脂により製造されることが一般的であった。合成樹脂は、プラスチック材料の一つに属し、形状が自在に成形できる特性を有するが、自然界で分解されにくいなどの欠点があり、環境を汚染し、地球の生態系に悪影響を与えるなどの問題点があった。そのため、台湾を含む世界の多くの国・地域は、法律によりプラスチック製品の使用を禁止したり制限したりしていた。
【0003】
プラスチックの使用量を減らすために、カップの大部分は紙により製造されている。しかし、紙カップに一定量の液体を入れて揺らすと、液体が飲み口から溢れ出ることがあった。このような液体が溢れ出てしまう問題を改善するために、紙カップの飲み口を1つのカップ蓋により覆って液体をカップ内に閉じ込めることが一般的であった。
【0004】
上述したカップ蓋の大部分はポリプロピレンにより製作されて耐熱性を有し、様々な高温液体に利用することができる。しかし、プラスチックにより製造されたカップ蓋は、同様に分解しにくく、環境を汚染して地球の生態系に悪影響を与えてしまうなどの弊害があった。
【0005】
そのため、カップ蓋の既有の機能形状を保持しながら、材質及び構造を改善する可食カップ蓋が求められていた。
【0006】
プラスチックの使用を控える世界的な要求に応えるために、本発明者は「軽量食用ストロー」を発明し、既に多くの国に特許出願しており、当該発明は、台湾において特許権(特許文献1)を既に取得している。
【0007】
その後、本発明者は新たなカップ蓋を発明したが、その主な目的は、食べることが可能な包装構造により、食べることが可能な本体を保護することにより、カップ蓋を輸送又は搬送する過程で汚染されることを防ぎ、必要に応じて包装構造を除去し、カップ蓋及び本体を美味しく食べることができる上、衛生的で環境を汚染させない効果を兼ね備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうした現状に鑑み、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、上述した従来技術の問題点を改善し、食べることが可能であるとともに、カップの飲み口を覆う又は塞ぐことが可能な可食カップ蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、カップ蓋(10)は、カップ(12)の飲み口(14)に選択的に蓋設され、前記飲み口(14)を塞ぎ、容易に分離されることを防ぐとともに、食べることが可能な本体(28)と、少なくとも1つの食べることが可能な蝋層(25),(27)と、少なくとも1つの食べることが可能な包装膜(21),(23)と、を備えた、可食カップ蓋であって、前記本体(28)は、カップ蓋機能を有する形状であり、前記本体(28)は、1つの中実体(20)であり、前記中実体(20)は、1つの頂部(22)の周りに立設された壁(24)を有し、前記壁(24)により囲まれて一容積が形成され、前記頂部(22)は、一定の直径を有し、前記壁(24)の1つの開口(26)を介して前記カップ(12)の前記飲み口(14)を受け、前記蝋層(25),(27)は、前記本体(28)の表面に付着され、前記包装膜(21),(23)は、前記蝋層(25),(27)の前記本体(28)が設けられていない側の表面に付着されるとともに、前記本体(28)を覆い、除去可能であることを特徴とする、可食カップ蓋が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可食カップ蓋は、食べることが可能であるとともに、カップの飲み口を覆う又は塞ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカップ蓋とカップとの組合せを示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るカップ蓋を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るマイクロカプセルを示す拡大図である。
【
図5】本発明のマイクロカプセルの他の実施形態を示す拡大図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るカップ蓋を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の可食カップ蓋は、カップ蓋機能の形状を有する食べることが可能な1つの本体と、本体を覆って除去することが可能な少なくとも1つの包装膜と、を含む。上述した包装膜は、以下(A)~(E)のうちの一つから選ばれる。
(A)食べることが可能なオブラート;
(C)動物から作られた食べることが可能な薄膜;
(D)植物から作られた食べることが可能な薄膜;
(E)カゼインにペクチンを混合して作られた食べることが可能な薄膜。
【0014】
そのため、本発明は、食べることが可能な包装膜により、食べることが可能な本体を保護し、カップ蓋が輸送又は搬送の過程で汚染されることを防ぐことができる。カップ蓋は、カップの飲み口を塞ぐことができる。包装膜は、本体が液体により濡れて軟化するか解体してしまうことを防ぐことができるとともに、液体がカップ内に封止され、液体が溢れ出てしまうことを防ぐことができる。そのため、プラスチック製品が生態系に悪影響を与えることを防ぐとともに、環境を保護する効果を兼ね備える。
【0015】
包装膜を除去した後、サクサクした食感の本体だけを食べたり、カップ内の液体と共に食べたりすることができ、美味しく、且つ衛生的に食べることができる。
【0016】
本発明の技術手段及びそれにより達成可能な効果を、より完全かつ明白に開示するために、開示した添付の図面及び符号と併せて本発明を以下に詳説する。もっとも本発明は、かかる図面により制限されるものではない。
【0017】
図1を参照する。
図1は、本発明の一実施形態に係る1つのカップ蓋10と1つのカップ12との組合せを示す分解斜視図である。カップ12は、1つの開口端及び1つの閉鎖端を有し、開口端は飲み口14に形成される。飲み口14を介してカップ12内に一定体積の液体(例えば、白湯、コーヒー、茶飲料その他液体飲料)を収容する。
【0018】
図2を参照する。
図2は、カップ蓋の構造を示す断面図である。
図2に示すように、カップ蓋10は1つの中実体20である。
図2の断面図から分かるように、中実体20は、1つの頂部22の周りに立設された壁24を有し、壁24により囲まれて一容積が形成される。上述した頂部22は、一定の直径を有し、壁24の1つの開口26によりカップの飲み口14を受ける。
【0019】
しかしながら、壁24を飲み口14の縁部に結合させてカップ蓋10が飲み口14から容易に分離しないようにする構造に関しては、本願にとって重要な点ではないため、ここでは詳しく述べない。
【0020】
(第1実施形態)
図3は、本発明の第1実施形態に係るカップ蓋を示す断面図である。
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係るカップ蓋の中実体20の頂部22を拡大すると分かるように、2つの包装膜21,23は、1つの本体28の両側を覆う。勿論、これら包装膜21,23は、壁の内側及び外側を覆うことができる。そのため、本体28は、カップ蓋の機能形状を有し、カップ蓋の主な構造体に属する。包装膜21又は包装膜23は、本体28に付着されて保護機能を得てもよい。
【0021】
第1実施形態において、包装膜21はオブラートであり、包装膜23もオブラートである。
【0022】
ここで述べるオブラートとは、ゼラチン、レシチンなどの原料で作られた食べることが可能な薄膜を広く指す。そのため、これら包装膜21,23は、食べることが可能である。また、これら包装膜21,23は、1枚のオブラートの2つの領域により本体28の両側を覆う点も本発明の範囲に含まれる。
【0023】
上述した薄膜は、可食材料で作られてもよい。勿論、動物又は植物により食べることが可能な薄膜を作り、カゼインにペクチンを混合して食べることが可能な薄膜を作り、包装膜21又は包装膜23として使用してもよい。
【0024】
ここで述べるカゼイン(Casein)とは、牛乳から作り、スプレー方式で液体状のカゼインを本体28の外表面に付着させて固体膜を凝結し、空気中の酸素を効果的に遮り、食べ物が変質することを防ぐことができるが、これは従来のプラスチック包装材料よりも約500倍優れている。特に、カゼインは生物により分解され、人が食べたときに吸収され易い。
【0025】
上述したペクチン(Pectin)は、天然の高分子化合物(例えば、シトラスペクチン)である。上述したペクチンをカゼインに加えると、包装膜21又は包装膜23の強靭性、耐湿性及び耐高温を有効に高め、カゼインが水に溶解されることを防ぐことができる。
【0026】
上述した本体28は、1つの澱粉構造体29の頂面及び底面にそれぞれ付着した2つの蝋層25,27を有する。澱粉構造体29は、頂部22として使用することもできるし、中実体20の壁として使用することもできる中実体20のコア層である。
【0027】
澱粉構造体29は、澱粉(Starch又はAmylum)の構造体である。上述した澱粉は、一般に植物を研磨して粉末状又は顆粒状(例えば、小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、サツマイモ、キャッサバ、蓮根、米及びコンニャク又は修飾澱粉(加工澱粉とも称する))に形成される。そのため、澱粉構造体29は食べたときに体に吸収され易い。
【0028】
上述した蝋層25,27には、動物性食用蝋(例えば、蜜蝋)、植物性食用蝋(例えば、果実蝋)、又は上述した食用蝋調合脂肪酸により構成された食用蝋層が採用されてもよい。そのため、蝋層25,27は食べることができ、一定の粘性を有する。
【0029】
蝋層25,27は、澱粉構造体29の表面に付着される。蝋層25,27は、包装膜21,23と澱粉構造体29との接着剤として用い、包装膜21,23は本体28を覆って除去することができる。これ以外に、澱粉構造体29の内部には、複数のマイクロカプセル30が設けられてもよい。マイクロカプセル30は、30μm~1000μmの直径を有する。
【0030】
図4を参照する。
図4は、本発明の第1実施形態に係るマイクロカプセルを示す拡大図である。
図4に示すように、マイクロカプセルは、食べることが可能な殻32により囲まれて形成された気室34で構成された中空袋31からなる。気室34内の気体は一般に空気である。
【0031】
図5を参照する。
図5は、本発明のマイクロカプセルの他の実施形態を示す拡大図である。
図5に示すように、他のマイクロカプセルは中実袋33からなる。中実袋33は、殻32により液体又は固体の心材35を包む。
【0032】
ここで述べる心材35とは、バター、チョコレートスプレッド、イチゴジャム、牛乳及びその他の風味の乳製品、甘味料及び調味料のうちの一つを指す。そのため、マイクロカプセルは食べることができ、体に吸収され易い。
【0033】
図1を再び参照する。実際に輸送又は搬送する際、上述した包装膜21,23は、本体28を保護し、カップ蓋10が汚染されることを防ぐことができる。
【0034】
カップ蓋10は、カップ12の飲み口14を塞ぐことができる。包装膜21,23は、本体28が液体により濡れて軟化するか解体してしまうことを防ぐことができるとともに、液体がカップ12内に封止されているため、液体が溢れ出てしまうことを防ぐことができる。そのため、プラスチック製品が生態系に悪影響を与えることを防ぐとともに、環境を保護する効果を兼ね備える。
【0035】
上述したことから想像できるように、これら包装膜21,23は本体28と共に食べることができるため、とても美味しく感じる。包装膜21,23を除去した後、サクサクした食感の本体28だけを食べたり、カップ12内の液体と共に食べたりすることができ、美味しく、且つ衛生的に食べることができる。
【0036】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係るカップ蓋を示す部分拡大図である。
図6に示すように、第2実施形態は、第1実施形態とほぼ同じ構造であるが、以下の点で異なる。
【0037】
まず、中実体20の頂部22(又は壁)を拡大して見ると分かるように、単層の包装膜21により本体28の外側が覆われている。
【0038】
続いて、上述した蝋層25に顆粒40を混合する。勿論、蝋層27にも所望の顆粒40を混合してもよい。
【0039】
ここで述べる顆粒40とは、堅果類の植物を研磨した粉末(例えば、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンド、カシューナッツ、松の実、シナグリ、銀杏、ピスタチオ、マカダミアナッツ、落花生、ヒマワリの種、カボチャの種、西瓜の種など)を広く指す。
【0040】
当該分野の当業者にとって理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0041】
10 カップ蓋
12 カップ
14 飲み口
20 中実体
21 包装膜
22 頂部
23 包装膜
24 壁
25 蝋層
26 開口
27 蝋層
28 本体
29 澱粉構造体
30 マイクロカプセル
31 中空袋
32 殻
33 中実袋
34 気室
35 心材
40 顆粒