(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】治療用変異体アルファ2-マクログロブリン組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/55 20060101AFI20221028BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221028BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221028BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20221028BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221028BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221028BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
A61K38/55 ZNA
A61P29/00
A61P19/02
A61P19/04
A61P19/08
A61P43/00 105
A61K9/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021030179
(22)【出願日】2021-02-26
(62)【分割の表示】P 2017527277の分割
【原出願日】2015-11-20
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2014-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511092332
【氏名又は名称】サイトニックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン デイビッド ラフリン
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ロバート ブローニング
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/126587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性の疾患または状態を有する哺乳動物対象を処置する方法において使用するための医薬組成物であって、前記方法は、前記医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記医薬組成物は、
(a)非天然ベイト領域を含む組換えα-2-マクログロブリン(A2M)ポリペプチドと、
(b)薬学的に許容される担体と
を含み、前記非天然ベイト領域が、配列番号20に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、前記非天然ベイト領域が、配列番号34、36および80
の配列
の各々を含み、前記組換えA2Mポリペプチドが、配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、前記非天然ベイト領域が、配列番号84~143からなる群より選択される配列を含まない配列を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記組換えA2Mポリペプチドが、配列番号3の配列を含む野生型A2Mタンパク質によるプロテアーゼの阻害と比較して増強された、前記プロテアーゼの阻害を特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記方法が、前記炎症性の疾患または状態の解剖学的部位に前記医薬組成物を投与することを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
投与することが注射することを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記方法が、手術手順中に前記医薬組成物を投与することを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記炎症性の疾患または状態が、関節変性、骨変性、軟骨変性、腱変性、靭帯変性、および、脊椎変性からなる群より選択される変性疾患である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記炎症性の疾患または状態が、自己免疫疾患、関節炎、骨関節炎、炎症性関節炎、軟骨形成、筋腱付着部症、および、腱障害からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記炎症性の疾患または状態が骨関節炎である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記炎症性の疾患または状態が、手術により引き起こされる関節炎症、手術により引き起こされる椎間板炎症、関節置換術により引き起こされる関節炎症、椎間板置換術により引き起こされる椎間板炎症、および、これらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記炎症性の疾患または状態が、靭帯傷害、腱傷害、骨傷害、脊椎傷害、および、軟骨傷害からなる群より選択される傷害である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記非天然ベイト領域が、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)認識配列、および、トロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ(ADAMTS)認識配列からなる群より選択されるプロテアーゼ認識配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記非天然ベイト領域が、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、および、これらの組合せからなる群より選択されるプロテアーゼについてのコンセンサス配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記非天然ベイト領域が、自殺型阻害因子
を含むプロテアーゼ認識配列を含み、前記自殺型阻害因子が、プロテアーゼを前記組換えA2Mポリペプチドに共有結合によって接合させるように作動可能である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記非天然ベイト領域が、配列番号80を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記非天然ベイト領域が、配列番号20に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記非天然ベイト領域が、配列番号20を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が液体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2014年11月20日に出願された米国仮出願第62/082,304号の優先権を主張し、当該出願はその全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
脊椎痛および関節痛を引き起こす炎症は、処置が困難でありうる。炎症の程度および関節にかかる力の増大は、関節傷害を結果としてもたらす。関節解剖学的特徴の異常は、老化の顕徴でありうるが、関節傷害はまた、スポーツ選手において見られることが多い軟骨病変など、外傷の結果でもありうる。外傷から生じる関節傷害は、急性炎症と関連することが典型的でありうるが、老化から生じる、関節解剖学的特徴の異常(例えば、骨関節炎)は、慢性状態でありうる。医師は現在のところ、外傷に起因する急性傷害と、加齢関連の関節の劣化とを鑑別するのに利用可能なシステムまたは方法を有さない。
【0003】
現在、患者が患う特定の状態が、急性であるのか、慢性であるのか、または関節内の病態が、疼痛の原因であるのかどうかは、しばしば不明確であるので、所与の患者に適切な処置コースを決定することは、困難でありうる。
【0004】
脊椎関連疼痛は、椎間板性疼痛、椎間関節性疼痛、または神経根障害性疼痛として分類されることが典型的でありうる。神経根障害性疼痛の症状は従来、椎間板ヘルニア、狭窄、脊椎すべり症、坐骨神経痛、梨状筋症候群、閉鎖筋症候群、嚢胞性病変(例えば、神経節および滑膜)、腫瘍、および化学的に媒介される原因などの他の病態などの状態と関連する、神経根の圧迫または機械的刺激など、多様な物理的異常および/または機械的異常に帰せられてきた。
【0005】
脊椎関連疼痛の病態生理を解明するように、多数の研究が試みられており、いくつかの分子経路が、暫定的に示唆されている。しかし、傷害または変性から、有痛状態に至る、明確な因果的経路は、確認されていない。分子マーカーは、臨床症候と連関している可能性があり、診断法および治療用ツールを開発するための、潜在的な標的として用いられうる。一部の研究は、硬膜外腔が、椎間板ヘルニアの影響を受けている可能性があるという証拠をもたらしているが、罹患した人と罹患していない人との差違を検出しようとする試みでは、硬膜外腔内の生体分子の濃度が測定されていない。
【0006】
筋肉を骨に接続する腱、および骨を他の骨に接続する靭帯はいずれも、線維性結合組織の帯からなる。線維性結合組織の細胞は大部分が、強力な線維性タンパク質(コラーゲン、網膜線維および弾性線維、ならびに糖タンパク質など)を、細胞外マトリックスとして分泌する、不規則で、分枝状の細胞である、線維芽細胞から構成されている。細胞外マトリックスは部分的に、組織のうちの、任意の素材部分であって、任意の細胞の部分ではない素材部分として規定することができる。このように規定される細胞外マトリックス(ECM)は、線維性結合組織の著明な特色でありうる。
【0007】
ECMの主要な成分は、多様な糖タンパク質でありうる。大半の動物では、ECM中で最も夥多な糖タンパク質は、コラーゲンでありうる。コラーゲンは、頑健かつ可撓性であることが可能であり、結合組織に強度を与える。実際、線維性結合組織の主要な要素は、コラーゲン(またはコラーゲン性)線維である。ECMはまた、他の多くの成分:フィブリンおよびエラスチンなどのタンパク質、ヒドロキシアパタイトなどのミネラル、または分泌された遊離流動抗原を伴う、血漿もしくは血清などの流体も含有する。この多様性を踏まえると、ECMは、細胞のための支持およびアンカレッジをもたらす機能(接着斑を介して接合させる機能)、組織を分離する方途をもたらす機能、および細胞間コミュニケーションを調節する機能など、任意の数の機能を果たしうる。したがって、ECMは、細胞の力動的挙動において機能しうる。
【0008】
腱および靭帯への傷害は、結合組織への損傷のみでなく、細胞外マトリックスへの損傷もまた引き起こす。ECMへの損傷は、結合組織内の細胞挙動を妨げる可能性があり、治癒を減殺および/または制限しうる。傷害の後も、身体によるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の産生により、持続的損傷が引き起こされうる。MMPとは、ECMの全ての成分を分解する酵素である。身体が、自身を治癒させようと試みても、この酵素は、ECMをリモデリングするので、MMPは、ECMの合成と分解との間の不均衡をもたらしうる。MMPによるリモデリングの過夥多は、既に結合した組織への損傷を引き起こし、これは、結果として、瘢痕組織の形成をもたらす。加えて、瘢痕組織の、周囲の組織への接着は、腱または靭帯の、さらなる引っ張りおよび/または引き伸ばし、ならびに結果として生じる疼痛を引き起こしうる。
【0009】
今日、腱および靭帯への傷害の処置は、問題を悪化させる活動の回避;傷害領域の休息;傷害日における領域のアイシング;および市販の抗炎症薬の服用など、いくつかの簡単な手段を含む。しかし、これらの簡単な加療で、損傷が常に治るわけではなく、より進んだ処置が必要とされることが多い。これらの処置は、コルチコステロイド注射、血小板リッチ血漿(PRP)、ヒアルロン酸(HA)注射、理学療法、なおかつ手術も含む。コルチコステロイドは、炎症および疼痛を減殺するのに迅速に作用しうるため、使用されることが多い。理学療法は、ある範囲の運動訓練および副木固定(手指、手掌、および前腕など)を含みうる。手術は、他の処置に応答しない重度の問題に、まれに必要とされるに過ぎない。腱および靭帯の、より迅速で改善された治癒のために、細胞外マトリックスの分解を処置および防止するのに、さらなる処置手段が必要とされていることが察知されうる。
アルファ2-マクログロブリン(A2M)とは、血漿中に比較的高濃度(0.1~6mg/ml)で存在する、高度に保存的なプロテアーゼ阻害剤である。A2Mは、全ての主要なクラスのプロテアーゼを阻害するその能力において固有である(Bhattacharjeeら(2000年)、J. Biol. Chem.、275巻、26806~26811頁)。A2Mは、肝細胞、肺線維芽細胞、マクロファージ、星状細胞、および腫瘍細胞など、いくつかの細胞型により産生されうる(Borth W、「Alpha 2-macroglobulin, A multifunctional binding and targeting protein with possible roles in immunity and autoimmunity」、Ann. N.Y. Acad. Sci.、737巻:267~272頁(1994年))。A2Mは、中空円筒様構造を形成する、180kDaの、4つの同一なサブユニットによる四量体として存在することが多い。A2Mは、その中央の「ベイト」ドメイン内に、攻撃するプロテアーゼに対する、複数の標的ペプチド結合を提示しうる。A2Mは、ヘビ毒など、外来のプロテアーゼに作用する、主要なプロテアーゼ阻害剤でありうる。しかし、循環中には、他の多くのプロテアーゼ阻害剤が存在し、A2Mは、サイトカインおよび増殖因子への結合ならびにこれらの活性の調節、マクロファージの殺腫瘍能の促進、および抗原提示の増強を含む、他の機能を有しうることも提起されている。A2Mはまた、サイトカインまたは増殖因子に対するターゲティング担体でもありうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Bhattacharjeeら(2000年)、J. Biol. Chem.、275巻、26806~26811頁
【文献】Borth W、「Alpha 2-macroglobulin, A multifunctional binding and targeting protein with possible roles in immunity and autoimmunity」、Ann. N.Y. Acad. Sci.、737巻:267~272頁(1994年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の目的は、脊椎内または関節内の炎症、疼痛、細胞外マトリックスの分解の、検出、診断、および処置、ならびにフィブロネクチン-アグリカン複合体(FAC)(
図1)の阻害のための、組成物、システム、方法、およびキットを提供することである。本発明の別の目的は、疼痛を処置するために、脊椎内または関節内の部位を同定するための、バイオマーカーおよび方法を提供することである。本発明の別の目的は、脊椎関連疼痛または関節関連疼痛の原因となる病態の存在を診断するか、またはこれについての診断の一助とするのに使用しうるバイオマーカーを提供することである。本発明の別の目的は、脊椎関連疼痛または関節関連疼痛の原因となる病態の存在を診断するか、またはこれについての診断の一助とするための方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、脊椎関連疼痛または関節関連疼痛を受ける対象に適切な治療を決定する、バイオマーカーおよび方法を提供することである。本発明の別の目的は、脊椎関連疼痛または関節関連疼痛のための処置の有効性をモニタリングし、評価する、バイオマーカーおよび方法を提供することである。本発明の別の目的は、脊椎痛または関節痛を処置し、疼痛を阻害または低減する処置のための、脊椎内または関節内の処置部位を選択するための組成物および方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、検出、診断、および炎症の処置、細胞外マトリックスの分解、および創傷のための、組成物、システム、方法、およびキットを提供することである。本発明の別の目的は、炎症、細胞外マトリックスの分解、および慢性創傷の処置のための組成物を作製するシステムおよび方法を提供することである。本発明の別の目的は、慢性創傷の部位を同定するためのバイオマーカーおよび方法を提供することである。本発明の別の目的は、慢性創傷の原因となる病態の存在を診断するか、またはこれについての診断の一助とするための方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、慢性創傷を受ける対象に適切な治療を決定する、バイオマーカーおよび方法を提供することである。本発明の別の目的は、慢性創傷のための処置の有効性をモニタリングし、評価する、バイオマーカーおよび方法を提供することである。本発明の別の目的は、慢性創傷を処置し、慢性創傷の処置のための処置部位および方法を選択するための組成物および方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、慢性創傷を処置するための変異体ポリペプチドを提供することである。本発明の別の目的は、野生型A2Mポリペプチドよりプロテアーゼ阻害活性が大きな、変異体A2Mポリペプチドを提供することである。本発明の別の目的は、慢性創傷の処置のための変異体ポリペプチドを製作する方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、炎症および疼痛を処置するための変異体ポリペプチドを提供することである。本発明の別の目的は、フィブロネクチン-アグリカン複合体(FAC)の形成を阻害する変異体A2Mポリペプチドを提供することである。本発明の別の目的は、野生型A2Mポリペプチドよりプロテアーゼ阻害活性が大きな、変異体A2Mポリペプチドを提供することである。本発明の別の目的は、炎症および疼痛の処置のための変異体ポリペプチドを製作する方法を提供することである。
【0015】
一部の態様では、ベイト領域を含む変異体A2Mポリペプチドを含む組成物であって、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域が、一連に配置された、複数のプロテアーゼ認識部位を含む組成物が提供される。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、組換えタンパク質である。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、もしくは哺乳動物細胞、または無細胞系を含む宿主内で産生される。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せの、非特異的阻害の増強を特徴とする。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、PEGを伴う非正常グリコシル化部位をさらに含む。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、対象の関節または脊椎椎間板内に位置すると、野生型A2Mタンパク質の半減期より長い半減期を有する。一部の実施形態では、複数のプロテアーゼ認識部位は、A2M以外の、1もしくは複数のタンパク質に由来する、1もしくは複数のプロテアーゼ基質ベイト領域、A2Mに由来する、1もしくは複数のさらなるプロテアーゼベイト領域、1もしくは複数の非天然タンパク質配列、またはこれらの任意の組合せを含み、修飾A2Mタンパク質は、野生型A2Mタンパク質のプロテアーゼ阻害有効性と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、または30%増大したプロテアーゼ阻害有効性を特徴とする。一部の実施形態では、非天然タンパク質配列は、プロテアーゼに対するベイトとして機能しうる、1または複数のプロテアーゼ認識部位を含む。一部の実施形態では、1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域は、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテイナーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せについてのコンセンサス配列を含む。一部の実施形態では、プロテアーゼ基質ベイト領域は、1または複数の生物に由来する1または複数のプロテアーゼについての1または複数のコンセンサス配列を含む。一部の実施形態では、1または複数の生物は、動物、植物、細菌、酵母、魚類、爬虫類、両生類、または真菌を含む。一部の実施形態では、A2M以外の、1または複数のタンパク質に由来する1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域のうちの1または複数は、同じである。一部の実施形態では、A2Mに由来する1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域のうちの1または複数は、同じである。一部の実施形態では、1または複数の非天然タンパク質配列に由来する1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域のうちの1または複数は、同じである。一部の実施形態では、A2M以外の、1もしくは複数のタンパク質、または1もしくは複数の非天然タンパク質配列に由来する1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域のうちの1または複数は、自殺型阻害因子を含み、自殺型阻害因子は、プロテアーゼを、A2Mに共有結合によって接合させるように作動可能である。一部の実施形態では、1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域のうちの1または複数は、異なる種に由来する。
【0016】
一部の態様では、本明細書では、単離変異体A2Mポリペプチドを含む組成物であって、変異体A2Mポリペプチドが、1または複数の非天然ベイト領域を含み、1または複数の非天然ベイト領域が、野生型A2Mポリペプチド内に存在しない、1または複数のプロテアーゼ認識部位を含む組成物が提供される。一部の実施形態では、修飾A2Mポリペプチドは、野生型A2Mによる1または複数のプロテアーゼの阻害と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、または30%増強された1または複数のプロテアーゼの阻害を特徴とする。一部の実施形態では、阻害の増強は、非特異的阻害の増強を含む。一部の実施形態では、阻害の増強は、特異的阻害の増強を含む。一部の実施形態では、プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、プロテアーゼは、MMP1(間質コラゲナーゼ)、MMP2(ゼラチナーゼA)、MMP3(ストロメリシン1)、MMP7(マトリリシン、PUMP1)、MMP8(好中球コラゲナーゼ)、MMP9(ゼラチナーゼB)、MMP10(ストロメリシン2)、MMP11(ストロメリシン3)、MMP12(マクロファージメタロエラスターゼ)、MMP13(コラゲナーゼ3)、MMP14(MT1-MMP)、MMP15(MT2-MMP)、MMP16(MT3-MMP)、MMP17(MT4-MMP)、MMP18(コラゲナーゼ4、xcol4、Xenopus属コラゲナーゼ)、MMP19(RASI-1、ストロメリシン4)、MMP20(エナメリシン)、MMP21(X-MMP)、MMP23A(CA-MMP)、MMP23B、MMP24(MT5-MMP)、MMP25(MT6-MMP)、MMP26(マトリリシン2、エンドメターゼ)、MMP27(MMP-22、C-MMP)、MMP28(エピリシン);ADAMTS1、ADAMTS2、ADAMTS3、ADAMTS4、ADAMTS5(ADAMTS11)、ADAMTS6、ADAMTS7、ADAMTS8(METH-2)、ADAMTS9、ADAMTS10、ADAMTS12、ADAMTS13、ADAMTS14、ADAMTS15、ADAMTS16、ADAMTS17、ADAMTS18、ADAMTS19、ADAMTS20などのADAMTS(A Disintegrin and Metalloproteinase with Thrombospondin Motifs)プロテアーゼ;キモトリプシン;トリプシン;エラスターゼ;補体因子;凝固因子;トロンビン;プラスミン;スブチリシン;ネプリリシン;プロコラーゲンペプチダーゼ;テルモリシン;妊娠関連血漿タンパク質A;骨形成タンパク質1;リソスタフィン;インスリン分解酵素;ZMPSTE2;ZMPSTE4;ZMPSTE24;アセチルコリンエステラーゼ;またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、プロテアーゼは、ADAMTS4、ADAMTS5、MMP13、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、修飾A2Mポリペプチドは、野生型A2MによるFACの形成の阻害と比較して、少なくとも10%の増強されたFACの形成の阻害を特徴とする。一部の実施形態では、1または複数の非天然ベイト領域は、A2M以外の、1または複数のタンパク質に由来する。一部の実施形態では、A2M以外の、1または複数のタンパク質は、非ヒト生物に由来する。一部の実施形態では、非ヒト生物は、動物、植物、細菌、酵母、魚類、爬虫類、両生類、または真菌を含む。一部の実施形態では、1または複数の非天然ベイト領域は、配列番号6~83またはこれらの断片のうちの、1または複数の配列を含む。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、配列番号4またはその断片を含む。一部の実施形態では、1または複数の非天然ベイト領域は、配列番号6~30を含む。一部の実施形態では、1または複数のプロテアーゼ認識配列は、配列番号31~83またはこれらの断片を含む。一部の実施形態では、野生型A2Mポリペプチドは、配列番号3またはその断片を含む。野生型A2Mベイト領域は、配列番号5からなる。一部の実施形態では、1または複数の非天然ベイト領域のうちの1または複数は、自殺型阻害因子を含み、自殺型阻害因子は、プロテアーゼを、変異体A2Mポリペプチドに共有結合によって接合させるように作動可能である。一部の実施形態では、1または複数のプロテアーゼ認識部位は、1または複数のプロテアーゼ認識配列の2つまたはそれ超のコピーを含む。一部の実施形態では、1または複数の非天然ベイト領域は、1または複数の非天然ベイト領域の2つまたはそれ超のコピーを含む。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、野生型A2Mベイト領域の配列を含む。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、組換えポリペプチドである。一部の実施形態では、1または複数のプロテアーゼ認識部位は、プロテアーゼについてのコンセンサス配列を含む。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、1または複数の修飾グリコシル化部位を含む。一部の実施形態では、1または複数の修飾グリコシル化部位を、PEGで機能化する。一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、対象内に位置すると、野生型A2Mポリペプチドの半減期より、少なくとも10%長い半減期を有する。
【0017】
一部の態様では、本明細書では、1または複数の状態を有する対象を処置する方法であって、対象に、有効量の、本明細書で提供される任意の組成物であり、A2M変異体を含む組成物を投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、対象における、1または複数のプロテアーゼの非特異的阻害、アグリカンG3断片の形成の阻害、FACの形成の阻害、またはこれらの組合せを増大させる。一部の実施形態では、対象における、組織、軟骨、および椎間板の変性、滑膜炎症、またはこれらの組合せの速度を減少させる。一部の実施形態では、処置は、1または複数の状態の重症度、発生、進行速度、またはこれらの組合せの低減を結果としてもたらす。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法のうちのいずれかは、1または複数のさらなる担体または薬物を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、1または複数のさらなる担体または薬物は、ハイドロゲル、ヒアルロン酸調製物、ポリマーマイクロスフェア、コルチコステロイド、マイクロ粒子、キトサン、局所麻酔剤、増殖因子、サイトカイン、プロテアーゼ阻害剤、ステロイド、ヒアルロン酸(HA)、または他の生物学的に活性な自原性もしくは内因性のメディエーターを含む。一部の実施形態では、1または複数の状態は、本明細書で提供される任意の組成物で処置可能である。一部の実施形態では、1または複数の状態は、その発症機序がプロテアーゼの活性を含む、がん、変性疾患、外傷性疾患、および/または炎症性疾患を含む。一部の実施形態では、その発症機序がプロテアーゼの活性を含む、がん、変性疾患、外傷性疾患、および/または炎症性疾患は、骨関節炎、炎症性関節炎、軟骨形成、軟骨傷害、筋腱付着部症、腱障害、靭帯傷害、骨の変性疾患、軟骨の変性疾患、腱の変性疾患、および靭帯の変性疾患、術後状態および創傷の治癒、ならびに他の筋骨格疾患を含む。一部の実施形態では、1または複数の状態は、がん、関節炎、炎症、靭帯傷害、腱傷害、骨傷害、軟骨変性、軟骨傷害、自己免疫疾患、背部痛、関節痛、関節変性、椎間板変性、脊椎変性、骨変性、またはこれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、炎症は、手術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、関節置換術もしくは椎間板置換術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、対象は、ヒト、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、カエル、ウマまたはヤギである。一部の実施形態では、対象は、1または複数の状態を有すると既に診断されている。一部の実施形態では、組成物を、宿主病態に関係する解剖学的部位に投与する。一部の実施形態では、投与は、中空管デバイスまたは可撓性カテーテルの組合せによる注射を含む。一部の実施形態では、中空管デバイスは、注射針、シリンジ、またはこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、投与を、手術手順中に行う。
【0018】
一部の態様では、本明細書では、単離変異体A2Mポリヌクレオチドを含む組成物であって、変異体A2Mポリヌクレオチドが、1または複数の非天然ベイト領域をコードし、1または複数の非天然ベイト領域が、野生型A2Mポリペプチド内に存在しない、1または複数のプロテアーゼ認識部位を含む組成物が提供される。一部の実施形態では、非天然ベイト領域は、配列番号6~83またはこれらの断片のうちのいずれか1つに対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、非天然ベイト領域は、配列番号31~83のうちのいずれか1つに対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%の同一性を有する1または複数のプロテアーゼ認識配列を含む。一部の実施形態では、変異体A2Mポリヌクレオチドは、配列番号2またはその断片に対して少なくとも90%の同一性を含む。一部の実施形態では、野生型A2Mポリヌクレオチドは、配列番号1またはその断片を含む。一部の実施形態では、変異体A2Mポリヌクレオチドは、発現ベクター内にある。
【0019】
一態様では、本明細書では、変異体A2Mポリペプチドによるプロテアーゼの阻害の増強を決定するための方法であって、(a)配列番号6~83のうちの、1または複数の配列を含む変異体A2Mポリペプチドを用意するステップと;(b)変異体A2Mポリペプチドを、プロテアーゼおよびプロテアーゼにより切断される基質と接触させるステップと;(c)野生型A2Mポリペプチドを、プロテアーゼおよびプロテアーゼにより切断される基質と接触させるステップと;(d)ステップ(b)による基質の切断量を、ステップ(c)による基質の切断量と比較し、これにより、変異体A2Mポリペプチドによるプロテアーゼの阻害の増強を決定するステップとを含む方法が提供される。
【0020】
一部の態様では、本明細書では、変異体A2Mポリヌクレオチドを製作するための方法であって、(a)配列番号2の配列を含む変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを用意するステップと;(b)変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを制限エンドヌクレアーゼで消化して、直鎖状ベクターを形成するステップと;(c)配列番号6~83の非天然ベイト領域のうちの1または複数をコードする1または複数のポリヌクレオチドの一方の端部を、直鎖状ベクターの一方の端部にライゲーションするステップと;(d)配列番号6~83の非天然ベイト領域のうちの1または複数をコードする1または複数のポリヌクレオチドの他方の端部を、直鎖状ベクターの他方の端部にライゲーションし、これにより、配列番号6~83の非天然ベイト領域を含む、変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを形成するステップとを含む方法が提供される。
【0021】
一部の態様では、本明細書では、変異体A2Mポリヌクレオチドを製作するための方法であって、(a)配列番号2の配列を含む、変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを用意するステップと;(b)変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを制限エンドヌクレアーゼで消化して、直鎖状ベクターを形成するステップと;(c)配列番号6~30の非天然ベイト領域のうちの1もしくは複数、または配列番号31~83の1もしくは複数のプロテアーゼ認識部位をコードする1または複数のポリヌクレオチドの一方の端部を直鎖状ベクターの一方の端部にライゲーションするステップと;(d)配列番号6~30の非天然ベイト領域のうちの1もしくは複数、または配列番号31~83の1もしくは複数のプロテアーゼ認識部位をコードする、1または複数のポリヌクレオチドの他方の端部を、直鎖状ベクターの他方の端部にライゲーションし、これにより、配列番号6~30の非天然ベイト領域、または配列番号31~83の、1もしくは複数のプロテアーゼ認識部位を含む、変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを形成するステップとを含む方法が提供される。
【0022】
一部の態様では、変異体A2Mポリペプチドまたは変異体A2Mポリヌクレオチドを含む組成物であって、本明細書で提供される任意の方法により得られる組成物が提供される。
【0023】
一態様では、本明細書では、治療における使用のための、A2Mを含む組成物であって、本明細書で提供される任意の方法により得られる組成物、または本明細書で提供される、任意の変異体A2M組成物である組成物が提供される。一部の実施形態では、組成物は、がん、関節炎、炎症、靭帯傷害、腱傷害、骨傷害、軟骨変性、軟骨傷害、自己免疫疾患、背部痛、関節痛、関節変性、椎間板変性、脊椎変性、骨変性、またはこれらの任意の組合せの処置における使用のための組成物であり、炎症は、手術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、関節置換術もしくは椎間板置換術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、またはこれらの組合せを含む。
【0024】
一態様では、本明細書では、治療における使用のための医薬を製造するための、本明細書で提供される任意の方法により得られる組成物、または本明細書で提供される、任意の変異体A2M組成物の使用が提供される。一部の実施形態では、医薬は、がん、関節炎、炎症、靭帯傷害、腱傷害、骨傷害、軟骨変性、軟骨傷害、自己免疫疾患、背部痛、関節痛、関節変性、椎間板変性、脊椎変性、骨変性、またはこれらの任意の組合せの処置における使用のための医薬であり、炎症は、手術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、関節置換術もしくは椎間板置換術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、またはこれらの組合せを含む。
【0025】
参照による組込み
本明細書で言及される、全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み込まれることが、具体的かつ個別に指し示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。万一、本明細書の用語と、参照により組み込まれる用語との間の利益相反の場合は、本明細書の用語が優先される。
【0026】
特定された新規の特色は、付属の特許請求の範囲に明示される。特色および利点についてのよりよい理解は、デバイス、方法、および組成物についての原理が活用される、例証的な実施形態を明示する、以下の詳細な記載、ならびに付属の図面を参照することにより得られるであろう。
本発明の実施形態の一部の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
複数のプロテアーゼ認識配列を含む非天然ベイト領域を含む変異体A2Mポリペプチドを含む組成物であって、前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも60%の同一性を有する配列を含む組成物。
(項目2)
前記非天然ベイト領域が、配列番号84~143からなる群から選択される配列を含まない配列を有する、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも65%の同一性を有する配列を含む、項目1または2に記載の組成物。
(項目4)
前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも70%の同一性を有する配列を含む、項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも75%の同一性を有する配列を含む、項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、項目1から5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列を含む、項目1から6のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目1から7のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、項目1から8のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列を含む、項目1から9のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
前記非天然ベイト領域が、配列番号31~81からなる群から選択されるプロテアーゼ認識配列を含む、項目1から10のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
前記非天然ベイト領域が、配列番号82および83からなる群から選択されるプロテアーゼ認識配列を含む、項目1から10のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
前記変異体A2Mポリペプチドが、組換えである、項目1から12のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14)
前記変異体A2Mポリペプチドが、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、もしくは哺乳動物細胞、または無細胞系からなる群から選択される宿主内で産生される、項目1から13のいずれか一項に記載の組成物。
(項目15)
前記変異体A2Mポリペプチドが、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、およびこれらの組合せからなる群から選択されるプロテアーゼの、野生型A2Mタンパク質による前記プロテアーゼの阻害と比較して増強された阻害を特徴とする、項目1から14のいずれか一項に記載の組成物。
(項目16)
前記阻害の増強が、前記プロテアーゼに対して非特異的である、項目16に記載の組成物。
(項目17)
前記阻害の増強が、前記プロテアーゼに対して特異的である、項目16に記載の組成物。
(項目18)
前記変異体A2Mポリペプチドが、非正常グリコシル化部位をさらに含む、項目1から17のいずれか一項に記載の組成物。
(項目19)
前記変異体A2Mポリペプチドが、PEGを含む非正常グリコシル化部位をさらに含む、項目1から18のいずれか一項に記載の組成物。
(項目20)
前記変異体A2Mポリペプチドが、対象内に位置すると、野生型A2Mタンパク質の半減期より長い半減期を有する、項目1から19のいずれか一項に記載の組成物。
(項目21)
前記変異体A2Mポリペプチドが、対象内に位置すると、野生型A2Mポリペプチドの半減期より、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1090%、120%、140%、150%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、350%、400%、450%、または500%長い半減期を有する、項目1から20のいずれか一項に記載の組成物。
(項目22)
前記変異体A2Mポリペプチドが、野生型A2Mタンパク質のプロテアーゼ阻害有効性と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1090%、120%、140%、150%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、350%、400%、450%、または500%増大したプロテアーゼ阻害有効性を特徴とする、項目1から21のいずれか一項に記載の組成物。
(項目23)
前記変異体A2Mポリペプチドが、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、およびこれらの組合せからなる群から選択されるプロテアーゼについてのコンセンサス配列を含む、項目1から22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目24)
前記変異体A2Mポリペプチドが、MMP1(間質コラゲナーゼ)、MMP2(ゼラチナーゼA)、MMP3(ストロメリシン1)、MMP7(マトリリシン、PUMP1)、MMP8(好中球コラゲナーゼ)、MMP9(ゼラチナーゼB)、MMP10(ストロメリシン2)、MMP11(ストロメリシン3)、MMP12(マクロファージメタロエラスターゼ)、MMP13(コラゲナーゼ3)、MMP14(MT1-MMP)、MMP15(MT2-MMP)、MMP16(MT3-MMP)、MMP17(MT4-MMP)、MMP18(コラゲナーゼ4、xcol4、Xenopus属コラゲナーゼ)、MMP19(RASI-1、ストロメリシン4)、MMP20(エナメリシン)、MMP21(X-MMP)、MMP23A(CA-MMP)、MMP23B、MMP24(MT5-MMP)、MMP25(MT6-MMP)、MMP26(マトリリシン2、エンドメターゼ)、MMP27(MMP-22、C-MMP)、MMP28(エピリシン);ADAMTS1、ADAMTS2、ADAMTS3、ADAMTS4、ADAMTS5(ADAMTS11)、ADAMTS6、ADAMTS7、ADAMTS8(METH-2)、ADAMTS9、ADAMTS10、ADAMTS12、ADAMTS13、ADAMTS14、ADAMTS15、ADAMTS16、ADAMTS17、ADAMTS18、ADAMTS19、ADAMTS20などのADAMTS(A Disintegrin and Metalloproteinase with Thrombospondin Motifs)プロテアーゼ;キモトリプシン;トリプシン;エラスターゼ;補体因子;凝固因子;トロンビン;プラスミン;スブチリシン;ネプリリシン;プロコラーゲンペプチダーゼ;テルモリシン;妊娠関連血漿タンパク質A;骨形成タンパク質1;リソスタフィン;インスリン分解酵素;ZMPSTE2;ZMPSTE4;ZMPSTE24;アセチルコリンエステラーゼ;およびこれらの組合せからなる群から選択されるプロテアーゼについてのコンセンサス配列を含む、項目1から23のいずれか一項に記載の組成物。
(項目25)
前記変異体A2Mポリペプチドが、ADAMTS4、ADAMTS5、MMP13、およびこれらの組合せからなる群から選択されるプロテアーゼについてのコンセンサス配列を含む、項目24に記載の組成物。
(項目26)
前記変異体A2Mポリペプチドが、1または複数の生物に由来するプロテアーゼ認識コンセンサス配列を含む、項目1から25のいずれか一項に記載の組成物。
(項目27)
前記1または複数の生物が、哺乳動物、動物、植物、細菌、酵母、魚類、爬虫類、両生類、ウイルス、または真菌からなる群から選択される、項目26に記載の組成物。
(項目28)
前記変異体A2Mポリペプチドが、A2M以外のタンパク質に由来するプロテアーゼ認識配列を含む、項目1から27のいずれか一項に記載の組成物。
(項目29)
A2M以外のタンパク質に由来する前記プロテアーゼ認識配列のうちの2つまたはそれ超が、同じである、項目28に記載の組成物。
(項目30)
A2M以外のタンパク質に由来する前記プロテアーゼ認識配列のうちの2つまたはそれ超が、異なる種に由来する、項目28または29に記載の組成物。
(項目31)
前記変異体A2Mポリペプチドが、野生型A2Mに由来するプロテアーゼ認識配列を含む、項目1から30のいずれか一項に記載の組成物。
(項目32)
野生型A2Mに由来する前記プロテアーゼ認識配列のうちの2つまたはそれ超が、同じである、項目31に記載の組成物。
(項目33)
前記変異体A2Mポリペプチドが、非天然プロテアーゼ認識配列を含む、項目1から32のいずれか一項に記載の組成物。
(項目34)
前記非天然プロテアーゼ認識配列のうちの2つまたはそれ超が、同じである、項目33に記載の組成物。
(項目35)
前記変異体A2Mポリペプチドが、自殺型阻害因子を含むプロテアーゼ認識配列を含み、前記自殺型阻害因子が、プロテアーゼを、前記変異体A2Mポリペプチドに共有結合によって接合させるように作動可能である、項目1から34のいずれか一項に記載の組成物。
(項目36)
前記変異体A2Mポリペプチドが、単離されている、項目1から35のいずれか一項に記載の組成物。
(項目37)
前記変異体A2Mポリペプチドが、精製されている、項目1から36のいずれか一項に記載の組成物。
(項目38)
前記変異体A2Mポリペプチドが、野生型A2MによるFACの形成の阻害と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、140%、150%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、350%、400%、450%、または500%増強されたFACの形成の阻害を特徴とする、項目1から37のいずれか一項に記載の組成物。
(項目39)
前記変異体A2Mポリペプチドが、配列番号4に対して少なくとも80%、90%、または100%の同一性を有する配列を含む、項目1から38のいずれか一項に記載の組成物。
(項目40)
前記野生型A2Mポリペプチドが、配列番号3に対して少なくとも80%、90%、または100%の同一性を有する配列を含む、項目1から39のいずれか一項に記載の組成物。
(項目41)
前記変異体A2Mポリペプチドが、野生型A2Mのベイト領域以外の配列を含む、項目1から40のいずれか一項に記載の組成物。
(項目42)
1または複数の状態を有する対象を処置する方法であって、前記対象に、有効量の、項目1から41のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
(項目43)
前記対象における1または複数のプロテアーゼの非特異的阻害を増大させる、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記対象におけるアグリカンG3断片の形成の阻害を増大させる、項目42または43に記載の方法。
(項目45)
前記対象におけるFACの形成の阻害を増大させる、項目42から44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記対象における、組織、軟骨、および椎間板の変性、滑膜炎症、またはこれらの組合せの速度を減少させる、項目42から45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記1または複数の状態の重症度、発生、進行速度、またはこれらの組合せを低減する、項目42から46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
1または複数のさらなる担体または薬物を投与するステップをさらに含む、項目42から47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記1または複数のさらなる担体または薬物が、ハイドロゲル、ヒアルロン酸調製物、ポリマーマイクロスフェア、コルチコステロイド、マイクロ粒子、キトサン、局所麻酔剤、増殖因子、サイトカイン、プロテアーゼ阻害剤、ステロイド、ヒアルロン酸(HA)、または他の生物学的に活性な自原性もしくは内因性のメディエーターを含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記1または複数の状態が、その発症機序がプロテアーゼの活性を含む、変性疾患、慢性創傷、創傷、外傷性疾患、炎症性疾患、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、項目42から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記1または複数の状態が、骨関節炎、炎症性関節炎、軟骨形成、軟骨傷害、筋腱付着部症、腱障害、靭帯傷害、骨の変性疾患、軟骨の変性疾患、腱の変性疾患、靭帯の変性疾患、術後状態、創傷の治癒、筋骨格疾患、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、項目42から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記1または複数の状態が、関節炎、炎症、靭帯傷害、腱傷害、骨傷害、軟骨変性、軟骨傷害、自己免疫疾患、背部痛、関節痛、関節変性、椎間板変性、脊椎変性、骨変性、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、項目42から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記1または複数の状態が、手術により引き起こされる関節炎症、手術により引き起こされる椎間板炎症、関節置換術により引き起こされる関節炎症、椎間板置換術により引き起こされる椎間板炎症、またはこれらの組合せからなる群から選択される、項目42から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記1または複数の状態が、がんである、項目42から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記対象が、ヒトである、項目42から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記対象が、哺乳動物である、項目42から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記対象が、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、カエル、ウマまたはヤギである、項目42から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記対象が、前記1または複数の状態を有すると既に診断されている、項目42から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記組成物を、前記1または複数の状態の病態に関係する解剖学的部位に投与する、項目42から58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記投与が、中空管デバイスまたは可撓性カテーテルによる注射を含む、項目42から59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記中空管デバイスが、注射針、シリンジ、またはこれらの組合せを含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記投与を、手術手順中に行う、項目42から61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
単離変異体A2Mポリヌクレオチドを含む組成物であって、前記変異体A2Mポリヌクレオチドが、複数のプロテアーゼ認識配列を含む非天然ベイト領域をコードし、前記非天然ベイト領域が、配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を有する組成物。
(項目64)
前記非天然ベイト領域が、アミノ酸配列番号6~30のうちのいずれか1つからなる群から選択される配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.98%、99.99%、または100%の同一性を有する配列をコードする配列を有する、項目63に記載の組成物。
(項目65)
前記非天然ベイト領域が、配列番号31~83からなる群から選択されるプロテアーゼ認識アミノ酸配列をコードする、項目63または64に記載の組成物。
(項目66)
前記非天然ベイト領域が、野生型A2M内に存在しないプロテアーゼ認識アミノ酸配列をコードする、項目63から65のいずれか一項に記載の組成物。
(項目67)
前記変異体A2Mポリヌクレオチドが、配列番号2に対して少なくとも90%、95%、または100%の同一性を含む、項目63から66のいずれか一項に記載の組成物。
(項目68)
野生型A2Mポリヌクレオチドが、配列番号1に対して少なくとも90%、95%、または100%の同一性を含む、項目63から67のいずれか一項に記載の組成物。
(項目69)
前記変異体A2Mポリヌクレオチドが、発現ベクター内にある、項目63から68のいずれか一項に記載の組成物。
(項目70)
変異体A2Mポリペプチドによるプロテアーゼの阻害の増強を決定する方法であって、
(a)配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.98%、99.99%、または100%の同一性を有する配列を含む変異体A2Mポリペプチドを用意するステップと;
(b)前記変異体A2Mポリペプチドを、前記プロテアーゼおよび前記プロテアーゼにより切断される基質と接触させるステップと;
(c)野生型A2Mポリペプチドを、前記プロテアーゼおよび前記プロテアーゼにより切断される前記基質と接触させるステップと;
(d)(b)による前記基質の切断量を、(c)による前記基質の切断量と比較し、これにより、前記変異体A2Mポリペプチドによる前記プロテアーゼの阻害の前記増強を決定するステップと
を含む方法。
(項目71)
変異体A2Mポリヌクレオチドを製作する方法であって、
(a)配列番号2に対して少なくとも90%、95%、または100%の同一性を有する配列を含む変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを用意するステップと;
(b)前記ベクターを制限酵素で消化して、直鎖状ベクターを形成するステップと;
(c)配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.98%、99.99%、または100%の同一性を有する非天然ベイト配列をコードする配列を含むポリヌクレオチドの一方の端部を前記直鎖状ベクターの一方の端部にライゲーションするステップと;
(d)配列番号6~30からなる群から選択される配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.98%、99.99%、または100%の同一性を有する非天然ベイト配列をコードする配列を含む前記ポリヌクレオチドの他方の端部を前記直鎖状ベクターの他方の端部にライゲーションし、これにより、前記変異体A2Mポリヌクレオチドを形成するステップと
を含む方法。
(項目72)
治療における使用のための、項目1から41または63から69のいずれか一項に記載の組成物。
(項目73)
非自家療法における使用のための、項目72に記載の組成物。
(項目74)
慢性創傷、がん、関節炎、炎症、靭帯傷害、腱傷害、骨傷害、軟骨変性、軟骨傷害、自己免疫疾患、背部痛、関節痛、関節変性、椎間板変性、脊椎変性、骨変性、またはこれらの任意の組合せの処置における使用のための組成物であり、炎症が、手術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、関節置換術もしくは椎間板置換術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、またはこれらの組合せを含む、項目72または73に記載の組成物。
(項目75)
治療における使用のための医薬を製造するための、項目1から41または63から69に記載の組成物の使用。
(項目76)
前記医薬が、非自家療法における使用のための医薬である、項目75に記載の使用。
(項目77)
前記医薬が、慢性創傷、がん、関節炎、炎症、靭帯傷害、腱傷害、骨傷害、軟骨変性、軟骨傷害、自己免疫疾患、背部痛、関節痛、関節変性、椎間板変性、脊椎変性、骨変性、手術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、関節置換術もしくは椎間板置換術により引き起こされる関節炎症もしくは椎間板炎症、またはこれらの任意の組合せの処置における使用のための医薬である、項目75または76に記載の使用。
(項目78)
医薬を製造する方法であって、創傷の治癒を促進するのに有効な量の、項目1から41または63から69に記載の変異体A2Mポリペプチド組成物と、薬学的に許容される担体とを一体にするステップを含む方法。
(項目79)
治療有効量の、項目1から41または63から69に記載の変異体A2Mポリペプチド組成物と、対象の創傷の処置における使用のための指示書とを含むパッケージ材料を含む製品。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、フィブロネクチン-アグリカン複合体(FAC)の形成、および細胞内の、損傷関連分子パターン(DAMP)受容体シグナル伝達の、FACにより誘導される活性化と関連する、ステップおよびシグナル伝達経路についての概略を描示する図である。2つの過程の組合せは、軟骨を持続的に分解する、周期的過程を創出する。
【0028】
【
図2】
図2は、フィブロネクチンを使用して、精製全長アグリカンまたは組換えG3アグリカンとの複合体を形成する、FACの形成を描示する図である。アグリカンおよびG3ドメインのいずれも、フィブロネクチンに結合して、FACを形成する。
【0029】
【
図3】
図3は、構築物またはタンパク質を発現させるためのステップについてのフローチャートを描示する図である。
【0030】
【
図4】
図4は、A2Mの構造およびA2Mの多様なドメインを描示する図である。
【0031】
【
図5】
図5Aは、ウシ軟骨外植片(BCE)の、白血球リッチ血小板リッチ血漿(LR-PRP)による処理が、軟骨の異化を誘導し、精製A2Mによる処置は、軟骨の分解を阻害することを裏付けるグラフを描示する図である。
【0032】
図5Bは、ウシ軟骨外植片(BCE)の、同じ患者に由来する、APIC-PRP、血液、または白血球リッチ血小板リッチ血漿(LR-PRP)による処置を裏付けるグラフを描示する図である。LR-PRPは、軟骨の異化を誘導するが、血液は、これを誘導しない。BCEの、APIC-PRPによる処置は、軟骨の分解を、内因性レベルを下回るように阻害する。
【0033】
図5Cは、白血球リッチ血小板リッチ血漿(LR-PRP)が、ウシ軟骨外植片(BCE)モデルにおける、軟骨の異化を誘導することを裏付けるグラフを描示する図である。APIC-PRPによる処置は、LR-PRPによる処理が誘導した軟骨の分解を阻害する。
【0034】
【
図6】
図6Aは、炎症促進性サイトカインである、TNF-αおよびIL-1βで処理された、ウシ軟骨外植片(BCE)が、軟骨の異化を誘導することを示すグラフを描示する図である。各サイトカインによる軟骨の異化は、硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)の、培養培地への放出により、個別に裏付けられる。APIC-PRPによる処置は、各炎症促進性サイトカインによる軟骨の異化を、個別に、効果的に阻害する。
【0035】
図6Bは、炎症促進性サイトカインである、TNF-αおよびIL-1βの組合せで処理された、ウシ軟骨外植片(BCE)が、軟骨の異化を誘導することを示すグラフを描示する図である。APIC-PRPによる処置は、炎症促進性サイトカインの組合せによる軟骨の異化を、用量依存的に、効果的に阻害した。
【0036】
【
図7】
図7Aは、ADAMTS-5による処理であり、精製A2Mの系列希釈液を伴うかまたは伴わない処理を伴うBCEモデル、およびこれを伴わないBCEモデルにおいて、軟骨の異化時に放出される硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)(上)を描示する図である。試料についてのウェスタンブロット(下)は、ADAMTS-5による軟骨の分解が、アグリカンG3断片および高分子量のアグリカン断片をもたらしたが、A2Mによる処置が、これを用量依存的に阻害したことを裏付ける。柱状グラフの上方の値は、ADATMS-5を阻害するのに必要とされる、A2Mの濃度(μg/ml)を指し示す。85kDaの非特異的バンドもまた、目視可能であるが、これは、培地のみの対照におけるバンドであることが明らかであった(データは示さない)。
【0037】
図7Bは、ADAMTS-4による処理であり、精製A2Mの系列希釈液を伴うかまたは伴わない処理を伴うBCEモデル、およびこれを伴わないBCEモデルにおいて、軟骨の異化時に放出される硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)(上)を描示する図である。試料についての、α-アグリカンG3抗体によるウェスタンブロット解析(下)は、ADAMTS-4による軟骨の分解が、G3ドメインを含有する、高分子量のアグリカンC末端断片をもたらしたことを裏付ける。A2Mは、軟骨の異化を、用量依存的に阻害し、軟骨アグリカン断片の放出を低減する。85kDaの非特異的バンドもまた、目視可能であるが、これは、培地のみの対照におけるバンドであることが明らかであった(データは示さない)。
【0038】
【
図8】
図8Aは、MMP-7およびMMP-12による処理を伴うBCEモデル、およびこれを伴わないBCEモデルにおいて、軟骨の異化時に放出される硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)を裏付けるグラフを描示する図である。精製A2Mによる処置は、MMPにより誘導される軟骨の異化を阻害した。
【0039】
図8Bは、
図9Aにおいて作製される試料についての、染色SDS-PAGEゲルを描示する図である。MMP-7またはMMP-12により誘導される軟骨の分解、およびゲル内で目視可能な、軟骨タンパク質断片の産生は、精製A2Mの添加により阻害された。
【0040】
図8Cは、
図8Bによるゲル、および
図8Aによる試料を使用する、α-アグリカンG3抗体によるウェスタンブロットを描示する図である。MMP-7またはMMP-12による軟骨の分解は、約30kDaにおいて、アグリカンG3断片をもたらすが、これは、精製A2Mの添加により阻害することができる。
【0041】
【
図9】
図9は、フィブロネクチンと、アグリカンG3との複合体を認識するELISA試験の結果(FACT:フィブロネクチン-アグリカン複合体試験)を描示する図である。列挙されたプロテアーゼを伴うかまたは伴わずに、A2Mの存在下または非存在下で処置されたBCEに由来する培養培地を、遊離フィブロネクチンでスパイクされた滑液(SF)と共にインキュベートし、FACTアッセイで調べた。軟骨の分解が、アグリカン断片をもたらした各場合において、結果は、SFバックグラウンド対照を上回る、さらなるフィブロネクチン-アグリカン複合体の形成であった。A2Mによる処置は、軟骨の異化を防止したが、その後、FACの形成も防止した。
【0042】
【
図10】
図10は、APIC(500kDaのフィルターに由来する保持液)および濾液が、軟骨の分解を防止する能力を裏付ける、2つの棒グラフを描示する図である。軟骨の異化は、BCEモデルにおいて、ADAMTS-5により誘導され、APICの系列希釈液は、これを阻害しえた(左、保持液)が、A2Mを欠く濾液は、これを阻害しえなかった(右、濾液)。柱状グラフの上方の数は、培養培地中の、APIC(v/v)または濾液の百分率を表す。濾液のうちの5%中の阻害潜在力は、APICのうちの0.01%中の阻害潜在力と同等であるので、APICの作製工程は、血液の軟骨保護効果のうちの>99%を濃縮する。
【0043】
【
図11】
図11は、培養物中で2日間にわたる、変異体A2Mによる、THP-1単球の処置の効果を描示する棒グラフである。サイトカイン、ケモカイン、および増殖因子のパネル(左から右へ:IL-1β、IL-1受容体アゴニスト(IL-1ra)、IL-6、IFN-γ、IP-10、MCP-10、MIP-1β、PDGF-ββ、RANTES、TNF-α、およびVEGF)によるモニタリングを介して、単球の活性化は観察されなかった。
【0044】
【
図12】
図12は、ACL-T術および生理食塩液またはAPIC cell freeによる処置の6週間の後における、ウサギ膝の顕微鏡画像を描示する図である。ACL-Tを伴わない偽手術を、対照として実施した。
【0045】
【
図13】
図13Aは、
図12で示した実験のための、巨視的査定についてのグラフを描示する図である。示される値は、6匹のウサギについての巨視的査定の平均である。
【0046】
図13Bは、
図12で示した実験について、APIC cell free処置におけるA2Mと、軟骨の分解との逆相関を示す、巨視的査定についてのグラフを描示する図である。
【0047】
【
図14】
図14は、
図12および13で描示される実験による、ウサギ膝についての組織病理学査定であって、構造、軟骨細胞密度、Safarin-O染色、およびクラスター形成の査定を含む査定についてのグラフを描示する図であり、各ウサギのAPIC中のA2M濃度と、評定基準との間の逆相関を示す。異常値を示す1匹のウサギ直線上の計算からは除外するが、図に含まれる。
【0048】
【
図15】
図15は、タグ付けされた、野生型A2Mタンパク質と、4つの選択された可変ベイト領域A2Mタンパク質との代表的精製についての、擬似カラーによる、色素非含有SDS-PAGEゲルの描示である。野生型A2Mの単量体の理論的分子量は、163KDaであり、グリコシル化を含まない。250KDaを上回る、不明瞭なバンドは、試料調製時に完全に還元されていないか、またはアミノ酸修飾機構を介して、共有結合によって結合した二量体である、二量体のA2Mから構成される。
【0049】
【
図16】
図16は、ADAMTS-5による、アグリカンIGDドメイン(IGD断片)の切断の、野生型(WT)A2Mおよびベイト領域を置換したA2Mによる阻害についての、代表的スクリーニングアッセイの、擬似カラーによる、色素非含有SDS-PAGEゲル(上)およびウェスタンブロット(下)の描示である。陰性対照は、IGD断片タンパク質単独であり、陽性対照は、IGD断片に加えたADAMTS-5である。ADAMTS-5、野生型A2M、および変異体A2Mは各々、50nMで保ち、A2MとADAMTS-5とは、IGD断片を添加する前に、10分間にわたり、あらかじめ混合した。ウェスタンブロットのための一次抗体は、抗アグリカンG1-IGD-G2ポリクローナル抗体(R&D)であった。
【0050】
【
図17】
図17は、2つのIGDスクリーニング実験により決定される、多様なMMPならびにADAMTS-4およびADAMTS-5に対する、4つの選び出された変異体の相対的な阻害特徴についての比較を描示するグラフである。各場合に、y軸の単位は、野生型による、各プロテアーゼの阻害の倍数である。
【0051】
【
図18】
図18Aは、タグ付けされた、野生型A2M(WT)、または4つの選び出されたA2M変異体の存在下における、ウシトリプシンによる、FTC-カゼインの消化についての、生データ(左)および計算された傾き(右)を描示する図である。「-D」を伴わない試料は、A2M:プロテアーゼのモル比を1:1として調製されている。「-D」を伴う試料は、A2M:プロテアーゼの比を0.5:1として調製されている。
【0052】
図18Bは、タグ付けされた、野生型A2M(WT)、または4つの選び出されたA2M変異体の存在下における、キモトリプシンによる、FTC-カゼインの消化についての、生データ(左)および計算された傾き(右)を描示する図である。「-D」を伴わない試料は、A2M:プロテアーゼのモル比を1:1として調製されている。「-D」を伴う試料は、A2M:プロテアーゼの比を0.5:1として調製されている。
【0053】
【
図19】
図19は、MMP3の存在下で、IGD断片を、基質として使用する切断アッセイについてのウェスタンブロット解析を描示する図である。
【0054】
【
図20】
図20は、表示の変異体による、IGD断片のタンパク質分解の阻害であって、野生型A2Mに対する百分率としての阻害についての図表(上)と、表示のA2M変異体に対応するベイト配列の配列(下)とを描示する図である。
【0055】
【
図21】
図21は、表示のタンパク質の既知量の関数としての、A2Mの分解形態および非分解形態(上)と、プロテアーゼの存在下で、ある時間経過にわたる、多様なA2Mポリペプチドの切断(下)とについての対照ブロットを示す、ウェスタンブロットを描示する図である。対照ブロットを使用して、切断されたA2Mの量であって、プロテアーゼ阻害の速度と正比例する量を定量することができる。
【0056】
【
図22】
図22は、プロテアーゼの混合物による、IGDドメインの消化に対する、A2M野生型の、変異体の一部と対比した保護効果を描示する図である。各々10nMの、MMP1、MMP3、MMP7、MMP13、ADAMTS4、およびADAMTS5を、混合し、野生型A2MおよびA2M変異体の存在下または非存在下で、IGDを消化するのに使用した。
【0057】
【
図23】
図23は、哺乳動物発現ベクターである、pJ608についてのベクターマップを描示する図である。野生型A2Mおよび変異体A2MをコードするORF配列は、Kpn1制限部位と、BamH1制限部位との間にクローニングされる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書では、脊椎内または関節内の炎症、疼痛、および細胞外マトリックスの分解の、検出、診断、および処置のための、組成物、方法、キット、およびシステムが提供される。
【0059】
本発明の1または複数の実施形態の詳細を、付属の図面、特許請求の範囲、および本明細書における記載に明示する。本明細書で開示および企図される、本発明の実施形態の、他の特色、目的、および利点は、記載および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で使用される冠詞である「a(ある)」とは、そうでないことが明示的に仮定されない限りにおいて、「1または複数」を意味する。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で使用される、「~を含有する」、「~を含有すること」、「~を含む(include)」、「~を含むこと(including)」などの用語は、「~を含むこと(comprising)」を意味する。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で使用される「または」という用語は、統合的な場合もあり、選言的な場合もある。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で使用される、任意の実施形態は、他の任意の実施形態と組み合わせることができる。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で使用される、本明細書における、本発明の一部の実施形態は、数値範囲を企図する。範囲が存在する場合、範囲は、範囲の端点を含む。加えて、範囲内のあらゆる部分範囲および値も、明記された場合と同様に存在する。
【0060】
定義
「非免疫原性」または「非抗原性」という用語は、対象に投与される組成物が、免疫応答を誘発しないことを意味する。
【0061】
「対象」とは、本発明の組成物の、ドナー、レシピエント、または宿主を指す。一部の実施形態では、ドナーとレシピエントとは、同じである。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。
【0062】
「プロテオグリカン」とは、タンパク質の特殊なクラスであって、グリコシル化の度合いが大きいクラスを指す。プロテオグリカンは、多数の高硫酸化グリコサミノグリカン鎖を、共有結合によって接合させたコアタンパク質から構成されている。細胞外マトリックスプロテオグリカンの非限定的な例は、アグリカンと、コラーゲンIXなど、ある特定のコラーゲンとを含む。
【0063】
本明細書で使用される「グリコサミノグリカン」または「GAG」とは、細胞表面上または細胞外マトリックス内に見出される、長鎖の非分枝状多糖分子を指す。グリコサミノグリカンの非限定的な例は、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン硫酸、ケラチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘキスロニルヘキソサミノグリカン硫酸、およびイノシトールヘキサ硫酸を含む。
【0064】
「非自家」という用語は、レシピエント以外のドナーに由来する、組織または細胞を指す。非自家とは、例えば、同種を指す場合もあり、異種を指す場合もある。自家組成物中などの場合における「自家」という用語は、ドナーとレシピエントとが、同じ個体である組成物を指す。同様に、「同種」とは、同じ種のドナーおよびレシピエントを指し;「同系」とは、遺伝子構成が同一なドナーおよびレシピエント(例えば、一卵性双生児のドナーおよびレシピエントまたは遺伝子型が同一なドナーおよびレシピエント)を指し、「異種」とは、異なる種のドナーおよびレシピエントを指す。
【0065】
「変異体」(または「類似体」)とは、野生型分子と異なる分子を指す。
【0066】
「変異体ポリヌクレオチド」(または「類似体」)という用語は、自然発生のポリヌクレオチドと異なる、任意のポリヌクレオチドを指す。例えば、「変異体A2Mポリヌクレオチド」とは、自然発生のA2Mポリヌクレオチドと異なる、任意のA2Mポリヌクレオチドを指す。変異体A2Mポリヌクレオチドは、野生型A2Mポリヌクレオチド配列(配列番号1)と異なるポリヌクレオチド配列を含む。変異体ポリヌクレオチドは、例えば、組換えDNA法を使用して創出される、核酸の挿入、欠失、および置換を特徴としうる。変異体A2Mポリヌクレオチドは、野生型A2Mポリヌクレオチド配列のベイト領域内に、突然変異、挿入、欠失、またはこれらの組合せを含むことが好ましい。ポリペプチドに言及する場合に、本明細書で使用される「ベイト領域」は、A2Mポリペプチドの領域であって、プロテアーゼに結合する領域、例えば、プロテアーゼ認識部位を含有する領域をコードする、A2Mポリヌクレオチドの領域を含む。変異体A2Mポリヌクレオチドは、組換えDNA法により、例えば、変異体ベイト領域をコードする、多様なポリヌクレオチド配列を挿入する一助となるように、制限酵素クローニング部位を創出することにより、変異体A2Mポリヌクレオチドを創出する一助となりうる点突然変異を伴う、A2Mのポリヌクレオチド配列を含む、「A2Mアクセプター配列」(配列番号2)を含む。変異体ベイト領域は、配列番号6~83のうちの、1または複数の配列、および配列番号6~83と実質的に類似する配列を含みうる。例えば、変異体ベイト領域は、配列番号6~30の、1または複数の非天然ベイト領域、配列番号31~83の、1または複数のプロテアーゼ認識部位、またはこれらの任意の組合せを含みうる。
【0067】
「変異体ポリペプチド」という用語は、自然発生のポリペプチドと異なる、任意のポリペプチドを指す。例えば、「変異体A2Mポリペプチド」とは、自然発生のA2Mポリペプチドと異なる、任意のA2Mポリペプチドを指す。変異体ポリペプチドは、例えば、組換えDNA法を使用して創出される、アミノ酸の、挿入、欠失、および置換を特徴としうる。変異体A2Mポリペプチドは、野生型A2Mポリペプチド配列と異なるポリペプチド配列を含む。変異体A2Mポリペプチドは、野生型A2Mタンパク質のベイト領域内に、突然変異、挿入、欠失、またはこれらの組合せを含むことが好ましい。ポリペプチドに言及する場合の「ベイト領域」は、プロテアーゼに結合する、A2Mポリペプチドの領域、例えば、1または複数のプロテアーゼ認識部位を含有する、アミノ酸の連なりを含む。変異体A2Mポリペプチドは、A2Mアクセプター配列(配列番号2)によりコードされるポリペプチド(配列番号3)を含む。「変異体A2Mポリペプチド」は、ベイト領域内の、対応する野生型ポリペプチドのアミノ酸配列と比較した、少なくとも1つのアミノ酸配列変更を有しうる。アミノ酸配列の変更は、1または複数のアミノ酸の置換、欠失、または挿入でありうる。変異体A2Mポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、または挿入の、任意の組合せを有しうる。
【0068】
目的の活性を失効化させずに、どのアミノ酸残基を、置きかえるか、付加するか、または欠失させうるのかの決定における指針は、特定のポリペプチドの配列を、相同なペプチドの配列と比較し、相同性の大きな領域(保存的領域)内で施されるアミノ酸配列の変化の数を最小化することにより見出すこともでき、アミノ酸を、コンセンサス配列で置きかえることによりにより見出すこともできる。代替的に、これらの同じポリペプチドまたは類似するポリペプチドをコードする組換え変異体は、遺伝子コード内の「冗長性」を使用することにより、合成または選択することができる。多様な制限部位をもたらすサイレント変化など、多様なコドン置換を導入して、プラスミドベクターもしくはウイルスベクターへのクローニング、または特定の原核系もしくは真核系における発現を最適化することができる。ポリヌクレオチド配列内の突然変異は、ポリペプチド内、またはポリペプチドの任意の部分の特性を修飾し、プロテアーゼの阻害、リガンドへの結合アフィニティー、鎖間のアフィニティー、または分解/代謝回転速度などの特徴を変化させるように、ポリペプチドに付加される、他のペプチドのドメイン内に反映されうる。変異体ヌクレオチドはまた、発現のために選び出される宿主細胞内の発現、スケールアップなどにより良好に適するポリペプチドを作出するのにも使用することができる。例えば、ジスルフィド架橋を消失させるために、システイン残基を、欠失させるか、または別のアミノ酸残基で置換することができる。
【0069】
アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を、類似する構造的特性および/または化学的特性を有する、別のアミノ酸で置きかえること、例えば、保存的アミノ酸による置きかえを含む。「保存的」アミノ酸置換は、関与する残基の、極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、両親媒性、またはこれらの組合せの類似性に基づき施すことができる。非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正に帯電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンを含む。負に帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。「挿入」または「欠失」は、好ましくは、約1~50アミノ酸の範囲であり、より好ましくは、1~30アミノ酸の範囲である。許容される変異は、実験において、組換えDNA法を使用して、アミノ酸を、ポリペプチド内に挿入するか、ポリペプチド内で欠失させるか、または置換し、結果として得られる組換え変異体を、活性、例えば、プロテアーゼ阻害活性についてアッセイすることにより決定することができる。
【0070】
本明細書で使用される「精製された」または「実質的に精製された」という用語は、指し示された核酸またはポリペプチドが、他の生体高分子、例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質などの実質的な非存在下で存在することを表す。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、存在する、指し示された生体高分子のうちの、重量で少なくとも95%、例えば、重量で少なくとも99%を構成するように、精製することができる。水、緩衝液、および分子量が1000ドルトン未満である、他の低分子は、任意の量で存在しうる。本明細書で使用される「単離された」という用語は、その天然の供給源中のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと共に存在する、少なくとも1つの他の成分から分離された、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの溶液中に通常存在する、溶媒、緩衝液、イオン、または他の成分のみの存在下で見出すことができる。「単離された」および「精製された」という用語は、それらの天然の供給源中に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを包摂しない。
【0071】
本明細書で使用される、「組換えポリペプチド」は、組換え発現系、例えば、微生物発現系、昆虫発現系、または哺乳動物発現系に由来する、ポリペプチドまたはタンパク質を含む。大半の細菌培養物中で発現させたポリペプチドまたはタンパク質は、グリコシル化修飾を含まず、酵母内で発現させたポリペプチドまたはタンパク質は、哺乳動物細胞内で発現させたポリペプチドまたはタンパク質とは一般に異なるグリコシル化パターンを有しうる。
【0072】
「発現ベクター」という用語は、DNA配列またはRNA配列からポリペプチドを発現させるための、プラスミドまたはファージまたはウイルスまたはベクターを指す。発現ベクターは、遺伝子発現において調節的役割を有する、1または複数の遺伝子エレメント、例えば、プロモーターまたはエンハンサー、mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される、構造配列またはコード配列、ならびに適切な転写開始配列および転写終結配列のアセンブリーを含む転写単位を含みうる。酵母発現系または真核発現系における使用が意図される構造単位は、宿主細胞により翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能とするリーダー配列を含みうる。代替的に、組換えタンパク質を、リーダー配列または輸送配列を伴わずに発現させる場合、組換えタンパク質は、アミノ末端のメチオニン残基を含みうる。この残基は、発現した組換えタンパク質からその後切断されて、最終産物をもたらしうる。
【0073】
「組換え発現系」という用語は、組換え転写単位を、染色体DNAに安定的に組み入れているか、または組換え転写単位を染色体外に保有する宿主細胞を意味する。組換え発現系を使用して、発現させるDNAセグメントまたは合成遺伝子に連結された調節エレメントが誘導されると、異種ポリペプチドまたは異種タンパク質を発現させることができる。この用語は、遺伝子発現において調節的役割を有する、1または複数の組換え遺伝子エレメント、例えば、プロモーターまたはエンハンサーを安定的に組み入れた宿主細胞を含む。組換え発現系を使用して、発現させる内因性DNAセグメントまたは遺伝子に連結された調節エレメントが誘導されると、細胞に対して内因性であるポリペプチドまたはタンパク質を発現させることができる。細胞は、原核細胞の場合もあり、真核細胞の場合もある。
【0074】
「分泌された」という用語は、膜を隔てて、または膜を介して輸送されるタンパク質であって、適切な宿主細胞内で発現すると、そのアミノ酸配列内のシグナル配列の結果として生じる輸送を含むタンパク質を含む。「分泌」タンパク質は、限定なしに述べると、それらが発現する細胞から完全に分泌されたタンパク質、例えば、可溶性タンパク質、または部分的に分泌されたタンパク質、例えば、受容体を含む。「分泌」タンパク質はまた、小胞体の膜を隔てて輸送されるタンパク質も含む。「分泌」タンパク質はまた、非典型的シグナル配列も含む。
【0075】
所望の場合、発現ベクターは、細胞膜を介してポリペプチドを方向付ける「シグナル配列」を含有するように設計することができる。シグナル配列は、ポリペプチド上に天然で存在する場合もあり、異種タンパク質供給源から施される場合もある。
【0076】
本明細書で使用される「実質的に同等」および「実質的に同様」はいずれも、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、例えば、その正味の効果が、基準配列と対象配列との間の、有害な、機能的相違を結果としてもたらさない、1または複数の、置換、欠失、または付加により、基準配列から変動する変異体配列を指す場合がある。このような実質的に同等な配列は、本明細書で列挙される配列のうちの1つから、約35%を超えて変動しないことが典型的である。例えば、実質的に同等な配列内の個別の残基の、対応する基準配列と比較した、置換、付加、および/または欠失の数を、実質的に同等な配列内の残基の総数で除した商は、約0.35またはそれ未満である。実質的に同等な配列は、基準配列に対して65%の配列同一性を有する配列を含む。本発明の、実質的に同等な配列は、基準配列から、30%を超えて変動しない(70%の配列同一性)、25%を超えて変動しない(75%の配列同一性)、20%を超えて変動しない(80%の配列同一性)、10%を超えて変動しない(90%の配列同一性)、または5%を超えて変動しない(95%の配列同一性)。本発明に従う、実質的に同等なアミノ酸配列は、基準アミノ酸配列との、少なくとも80%の配列同一性を有することが好ましく、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を有することが好ましい。本発明の、実質的に同等なポリヌクレオチド配列は、例えば、遺伝子コードの冗長性または縮重を考慮に入れると、配列同一性パーセントが小さい。ポリヌクレオチド配列は、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有することが好ましい。実質的に同等な生物活性および実質的に同等な発現特徴を有する配列は、実質的に同等であると考えられる。配列間の同一性は、配列のアライメントまたはハイブリダイゼーション条件を変動させることなど、当技術分野で公知の方法により決定することができる。
【0077】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、それを必要とする対象における脊椎痛を処置、阻害、または緩和するのに十分な投与量を意味する。
【0078】
「縮重変異体」とは、本発明の核酸断片(例えば、ORF)と、ヌクレオチド配列が異なるが、遺伝子コードの縮重に起因して、同一なポリペプチド配列をコードする、ヌクレオチド断片を意図しうる。
【0079】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、互換的に使用することができ、アミノ酸残基またはその変異体のポリマーを指す場合がある。アミノ酸ポリマーは、1または複数のアミノ酸残基を有することが可能であり、対応する自然発生のアミノ酸の、人工的な化学的模倣体のほか、修飾残基を含有する自然発生のアミノ酸ポリマーである、自然発生のアミノ酸ポリマー、および非自然発生のアミノ酸ポリマーでもありうる。変異体ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドのアミノ酸配列と比較した、少なくとも1つのアミノ酸配列変更を有しうる。アミノ酸配列の変更は、例えば、1または複数のアミノ酸の置換、欠失、または挿入でありうる。変異体ポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、または挿入の、任意の組合せを有しうる。突然変異、例えば、フレームシフト突然変異、ナンセンス 突然変異、ミスセンス突然変異、中性突然変異、またはサイレント突然変異など、アミノ酸配列の変更は、それが由来するヌクレオチド配列を変更することにより形成することができる。例えば、野生型ヌクレオチド配列と比較した場合の配列の差違は、フレームシフトを結果としてもたらす、単一のヌクレオチドまたは1つを超えるヌクレオチドの挿入または欠失;コードされるアミノ酸の変化を結果としてもたらす、少なくとも1つのヌクレオチドの変化;未成熟終止コドンの発生を結果としてもたらす、少なくとも1つのヌクレオチドの変化;ヌクレオチドによりコードされる、1または複数のアミノ酸の欠失を結果としてもたらす、いくつかのヌクレオチドの欠失;不等組換えもしくは遺伝子転換などによる、1つまたはいくつかのヌクレオチドの挿入であって、リーディングフレームのコード配列の中断を結果としてもたらす挿入;配列の全部または一部の複製;転座;またはヌクレオチド配列の再配列を含みうる。このような配列変化は、核酸によりコードされるポリペプチドを変更することが可能であり、例えば、核酸配列の変化が、フレームシフトを引き起こす場合、フレームシフトは、コードされるアミノ酸の変化を結果としてもたらすことが可能であり、かつ/または切断型ポリペプチドの発生を引き起こす、未成熟終止コドンの発生を結果としてもたらしうる。
【0080】
「断片」という用語は、全長タンパク質のうちの短いポリペプチドでありうる、ポリペプチドの任意のサブセットを指す場合がある。A2Mの断片は、A2Mに由来する、20、30、40、50またはそれ超のアミノ酸であって、抗A2M抗体により検出されうるアミノ酸を含みうる。他のA2Mの断片は、A2Mの多様なドメインおよびこれらの組合せを含む。
【0081】
「血小板リッチ血漿」(「PRP」)とは、血小板について濃縮された血漿を指す。
【0082】
治療のための変異体A2Mポリペプチド組成物
A2Mとは、ADAMTS 4およびADAMTS5など、メタロプロテアーゼおよび他のプロテアーゼの一般的な阻害剤である。変性および炎症の結果として、またはこれらに先行して産生される、これらのプロテアーゼおよび他のプロテアーゼは、軟骨および椎間板変性、ならびに滑膜関節、脊椎、腱および靭帯、ならびに他の関節、筋腱付着部、および一般的組織における疼痛の一因でありうる。本明細書で記載される組換え組成物のうちのいずれかを、本明細書で記載される方法のうちのいずれかに従い、状態、疾患、疼痛、または炎症を有する対象の処置のために使用することができる。
【0083】
A2Mは、多種多様なプロテアーゼ(セリンメタロプロテアーゼ、システインメタロプロテアーゼ、およびアスパラギン酸メタロプロテアーゼを含む)を不活化させることが可能である。A2Mは、プラスミンおよびカリクレインを阻害することにより、線維素溶解阻害剤として機能しうる。A2Mは、トロンビンを阻害することにより、凝固の阻害剤として機能しうる。ヒトA2Mは、その構造内に、38アミノ酸の「ベイト」領域を有する。ベイト領域は、動物種間で、アミノ酸数(27~52アミノ酸)および配列が広範に変動する。ベイト領域に結合し、これを切断するプロテアーゼは、A2Mに結合しうる。プロテアーゼ-A2M複合体は、マクロファージ受容体により認識され、生物の系から取り除かれうる。A2Mは、固有の「トラッピング」機構により、プロテアーゼの4つクラス全てを阻害することが可能である。プロテアーゼが、ベイト領域を切断すると、タンパク質内のコンフォメーション変化の誘導が可能となり、これにより、プロテアーゼが捕獲されうる。捕捉された酵素は、低分子量の基質に対しては、依然として活性でありうる(高分子量の基質に対する活性は、大幅に低減されうる)。ベイト領域内の切断に続き、チオエステル結合の加水分解が可能となり、これに媒介されて、タンパク質は、プロテアーゼに共有結合する。
【0084】
一態様では、本明細書では、変異体A2Mポリペプチドでありうる組成物が提供される。変異体A2Mポリペプチドは、組換えタンパク質またはその断片であることが可能であり、宿主細胞内で産生させることができ、疼痛および炎症状態および疾患の処置における使用のために精製することができる。変異体A2M組成物は、野生型A2Mと比較して、プロテアーゼの阻害においてより効果的であるか、半減期が長いか、緩徐なクリアランス係数を有するか、またはこれらの任意の組合せを示しうる。変異体A2Mは、組換えタンパク質またはその断片であることが可能であり、宿主細胞内で産生させることができ、精製することができる。例えば、変異体A2M組換えタンパク質は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、もしくは哺乳動物細胞、または無細胞系を含む宿主内で産生させることができる。
【0085】
変異体A2Mポリペプチドまたはこれらの断片はまた、A2Mの変異体の場合もあり、A2Mの、翻訳後修飾された変異体の場合もある。A2M変異体ポリペプチドは、それらのアミノ酸配列が、野生型A2Mポリペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を共有するように、整数カ所のアミノ酸変更を有しうる。一部の実施形態では、A2M変異体ポリペプチドは、野生型A2Mポリペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を共有するアミノ酸配列を有しうる。
【0086】
配列同一性パーセントは、コンピュータプログラムまたは直接的な配列比較を使用して計算することができる。2つの配列の間の同一性を決定する、好ましいコンピュータプログラム法は、GCGプログラムパッケージである、FASTA、BLASTP、およびTBLASTN(例えば、D. W. Mount、2001年、「Bioinformatics: Sequence and Genome Analysis」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。BLASTPプログラムおよびTBLASTNプログラムは、NCBIおよび他の情報源から公開されている。また、スミス-ウォーターマンアルゴリズムも、同一性パーセントを決定するのに使用することができる。アミノ酸配列比較のための例示的なパラメータは、以下:1)NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol.、48巻:443~453頁(1970年))によるアルゴリズム;2)HentikoffおよびHentikoff(Proc. Nat. Acad. Sci. USA.、89巻:10915~10919頁(1992年))によるBLOSSUM62比較行列;3)ギャップペナルティー=12;ならびに4)ギャップ長ペナルティー=4を含む。これらのパラメータと共に有用なプログラムは、「ギャップ」プログラム(Genetics Computer Group、Madison、Wis.)として公開されているものを利用することができる。前述のパラメータは、ポリペプチド比較のためのデフォルトのパラメータ(末端ギャップについてのペナルティーを伴わない)である。代替的に、ポリペプチド配列の同一性は、以下の式:同一性%-(同一な残基の数)/(アミノ酸残基内のアライメント長)×100を使用して計算することができる。この計算では、アライメント長は、内部のギャップは含むが、末端のギャップは含まない。
【0087】
変異体A2Mポリペプチドまたはこれらの断片は、一次アミノ酸配列として、配列番号6~83によりコードされるアミノ酸配列のうちの1または複数の全部または一部、およびこれらのタンパク質の断片であって、機能的に同等なアミノ酸残基で、配列内の残基を置換する結果として、サイレント変化をもたらす、配列の変更を含む断片を含有する、変異体A2Mポリペプチドまたはこれらの断片を含むがこれらに限定されない。変異体A2Mポリペプチドは、配列番号3によりコードされるアミノ酸配列の全部または一部を含みうる。変異体A2Mポリペプチドは、例えば、配列番号6~83の1または複数のアミノ酸配列を含有する、4~20、20~50、50~100、100~300、300~600、600~1000、1000~1450の間の任意の数の連続アミノ酸でありうる。変異体A2Mポリペプチドは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、1000、および1450アミノ酸未満であるか、またはこれと等しい長さであることが可能であり、配列の一部として、配列番号6~83のうちの、1または複数の配列を含有しうる。変異体A2Mポリペプチドは、配列番号6~83のうちの、1または複数の配列を含有する、任意の変異体A2Mポリペプチドに対して少なくとも95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、または60%の配列同一性または配列類似性を有するポリペプチド配列を含む。
【0088】
本明細書で提供される変異体A2Mポリペプチドはまた、精製タンパク質のアミノ酸配列と同様であるが、修飾が天然でもたらされているか、意図的に操作されているアミノ酸配列を特徴とするタンパク質も含む。例えば、当業者は、公知の技法を使用して、変異体A2Mペプチド内または変異体A2M DNA配列内の修飾を施すことができる。タンパク質配列内の目的の修飾は、コード配列内の、選択されたアミノ酸残基の、変更、置換、置きかえ、挿入、または欠失を含みうる。例えば、システイン残基のうちの1または複数を欠失させるか、または別のアミノ酸で置きかえて、分子のコンフォメーションを変更することができる。当業者には、このような変更、置換、置きかえ、挿入、または欠失のための技法が周知である(例えば、米国特許第4,518,584号を参照されたい)。このような変更、置換、置きかえ、挿入、または欠失は、タンパク質の所望の活性を保持することが好ましい。タンパク質の機能に重要な、タンパク質の領域は、当技術分野で公知の多様な方法であって、単一または複数のアミノ酸の、アラニンによる系統的な置換に続き、結果として得られるアラニン含有変異体を、生物活性について調べるステップを伴うアラニン走査法を含む方法により決定することができる。この種の解析を使用して、置換されたアミノ酸の、生物活性における重要性を決定することができる。
【0089】
A2Mのベイト領域とは、タンパク質分解性切断を受けやすく、切断されると、プロテアーゼ近傍の構造の崩壊を結果としてもたらす、A2M分子内のコンフォメーション変化を誘発するセグメントである。配列番号3で明示された、例示的なA2M配列では、ベイト領域は、アミノ酸690~728に対応する。配列番号1および2で明示された、例示的なA2M配列では、ベイト領域は、アミノ酸690~728(配列番号5)をコードするヌクレオチドに対応する。
【0090】
変異体A2Mポリペプチドは、野生型A2Mのベイト領域の変異体である、ベイト領域を含みうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、突然変異体ベイト領域、ベイト領域の断片、別の種に由来するベイト領域、ベイト領域のアイソフォーム、または本明細書で記載される、1または複数のプロテアーゼ認識部位および/もしくはベイト領域、またはこれらの任意の組合せの、複数のコピーを含有するベイト領域でありうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、一連に配置された、複数のプロテアーゼ認識部位を含むことが可能であり、任意の順序で配置することができる。
【0091】
場合によって、変異体A2Mポリペプチドは、ベイト領域以外の領域に関して、野生型A2Mと実質的に同じ配列を含みうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、ベイト領域以外の配列であって、野生型A2Mの、対応するベイト領域以外の配列に対して少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、または100%の同一性を有する配列を含みうる。
【0092】
変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、配列番号6~30のうちのいずれか1つに対して少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、または100%の同一性を有する配列を含む、1または複数の変異体ベイト領域を有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数のコンセンサスプロテアーゼ認識部位を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超のプロテアーゼ認識部位を有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数のプロテアーゼ認識部位を有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、配列番号31~81のうちのいずれか1つに対して少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%、または100%の同一性を有する配列を含む、1または複数のプロテアーゼ認識部位を有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、配列番号82または配列番号83の配列を含む、1または複数のプロテアーゼ認識部位を有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数のコンセンサスプロテアーゼ認識部位を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超のプロテアーゼ認識部位を有しうる。例示的なプロテアーゼ認識部位を、表2に明示する。
【0093】
プロテアーゼ認識部位またはプロテアーゼ基質ベイト領域は、野生型A2Mタンパク質と比較した、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せについてのコンセンサス配列でありうる。変異体A2Mポリペプチドは、1または複数のプロテアーゼ(例えば、複数種のプロテアーゼ)の阻害の、少なくとも10%の増大を特徴としうる。例えば、変異体A2Mは、1または複数のセリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せの阻害の、野生型A2Mタンパク質と比較した、少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1090%、120%、140%、150%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、350%、400%、450%、または500%、またはそれ超の増強を特徴としうる。変異体A2Mポリペプチドは、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せの、特異的阻害の増強を特徴としうる。例えば、変異体A2Mは、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せの特異的阻害の、野生型A2Mタンパク質と比較した、少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1090%、120%、140%、150%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、350%、400%、450%、または500%、またはそれ超の増強を特徴としうる。変異体A2Mポリペプチドは、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せの非特異的阻害の、野生型A2Mタンパク質と比較した増強を特徴としうる。例えば、変異体A2Mは、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはこれらの任意の組合せの非特異的阻害の、野生型A2Mタンパク質と比較した、少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1090%、120%、140%、150%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、350%、400%、450%、または500%、またはそれ超の増強を特徴としうる。例示的な変異体A2Mポリペプチドによる、プロテアーゼ活性の阻害は、表3で見ることができる。他の例示的な変異体A2Mポリペプチドによる、プロテアーゼ活性の阻害は、表4aおよび4bで見ることができる。
【0094】
変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数の突然変異体ベースの領域を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超の突然変異体ベースの領域を有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数のベイト領域断片を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超のベイト領域断片を有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域の断片は、配列番号6~83のうちの、1または複数の配列の断片でありうる。
【0095】
変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、野生型A2Mポリペプチド内のアミノ酸と異なる、1または複数の突然変異体アミノ酸を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、野生型A2Mポリペプチド内のアミノ酸と異なる、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超の突然変異体アミノ酸を有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、野生型A2Mポリペプチド内の領域と異なる、1または複数の突然変異体アミノ酸領域を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、野生型A2Mポリペプチド内の領域と異なる、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超の突然変異体アミノ酸領域を有しうる。変異体A2Mポリペプチドの突然変異体ベイト領域で、野生型A2Mポリペプチド内のベイト領域を置きかえるか、または置換することができる。突然変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、配列番号6~83のいずれかのうちの、1または複数の配列を含みうる。
【0096】
本明細書で提供される、A2M変異体ポリペプチドはまた、保存的アミノ酸配列を特徴とするA2M変異体タンパク質も含む。単離変異体A2Mポリペプチドまたは精製変異体A2Mポリペプチドは、機能的同等物として作用することによりサイレント変更をもたらす、極性が同様である別のアミノ酸により置換された、ポリペプチド内の1または複数のアミノ酸残基を有しうる。配列内のアミノ酸に対する置換基は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。極性の中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正に帯電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンを含む。負に帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸、およびグルタミン酸を含む。芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンを含む。
【0097】
変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数のベイト領域のアイソフォームを有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超のベイト領域のアイソフォームを有しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数の突然変異体ベイト領域または操作ベイト領域を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超の突然変異体ベイト領域または操作ベイト領域を有しうる。
【0098】
変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数のベイト領域の、1または複数のコピーを有しうる。1または複数のベイト領域は、同じベイト領域(リピート)の場合もあり、異なるベイト領域の場合もあり、これらの任意の組合せの場合もある。例えば、変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、1または複数のベイト領域の、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超のコピーを有することが可能であり、1または複数のベイト領域は、同じベイト領域(リピート)の場合もあり、異なるベイト領域の場合もあり、これらの任意の組合せの場合もある。
【0099】
変異体A2Mポリペプチドは、異なる生物、生物の異なる種、またはこれらの組合せに由来する、1または複数のベイト領域を含みうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、異なる生物、生物の異なる種、またはこれらの組合せに由来する、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超のベイト領域を有しうる。異なる生物に由来する、1または複数のベイト領域は、1または複数の異なる生物に由来しうるが、生物の異なる種には由来しえない。例えば、1または複数の修飾ベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超の異なる生物に由来しうるが、生物の異なる種に由来する2つまたはそれ超のベイト領域は含有しえない。生物の異なる種に由来する、1または複数のベイト領域は、1または複数の生物の異なる種に由来しうるが、異なる生物には由来しえない。例えば、1または複数の修飾ベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超の生物の異なる種に由来しうるが、異なる生物に由来する2つまたはそれ超のベイト領域は含有しえない。修飾ベイト領域は、任意の動物、昆虫、植物、細菌、ウイルス、酵母、魚類、爬虫類、両生類、または真菌に由来しうる。修飾ベイト領域は、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、カエル、サル、ウマまたはヤギなど、A2Mまたは相同なタンパク質を伴う任意の動物に由来しうる。
【0100】
変異体A2Mポリペプチドは、変異体A2Mポリペプチドの、1または複数のベイト領域を含みうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、変異体A2Mポリペプチドの2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超のベイト領域を有しうる。変異体A2Mポリペプチドの、1または複数のベイト領域は、1または複数の異なる種に由来しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドの、1または複数のベイト領域は、2つまたはそれ超の、あるいは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはそれ超の異なる種に由来しうる。変異体A2Mポリペプチドのベイト領域は、任意の動物種、昆虫種、植物種、細菌種、ウイルス種、酵母種、魚類種、爬虫類種、両生類種、または真菌種に由来しうる。
【0101】
変異体A2Mポリペプチドは、A2M以外の、1または複数のタンパク質に由来する、1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域でありうる、複数のプロテアーゼ認識部位を有しうる。
【0102】
変異体A2Mポリペプチドは、A2Mに由来する、1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域でありうる、複数のプロテアーゼ認識部位を有しうる。変異体A2Mポリペプチドは、1または複数の非天然タンパク質配列に由来する、1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域でありうる、複数のプロテアーゼ認識部位を有しうる。非天然タンパク質配列は、1または複数のプロテアーゼ認識部位を、一連に含むことが可能であり、プロテアーゼに対するベイトとして機能しうる。変異体A2Mポリペプチドは、本明細書で記載されるベイト領域の組合せに由来する、1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域の場合もあり、本明細書で記載されるベイト領域の組合せのうちのいずれかの場合もある、複数のプロテアーゼ認識部位を有しうる。変異体A2Mポリペプチドは、一連に配置された、任意の数のプロテアーゼベイト領域を有しうる。変異体A2Mポリペプチドは、任意の種に由来する任意の数のプロテアーゼベイト領域を有することが可能であり、一連に配置することができる。A2M以外の、1もしくは複数のタンパク質、または1もしくは複数の非天然タンパク質配列に由来する、1または複数のプロテアーゼ基質ベイト領域は、自殺型阻害因子でありうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、またはそれ超の自殺型阻害因子のベイト領域を有しうる。自殺型阻害因子は、プロテアーゼを、A2Mに共有結合によって接合させるように作動可能でありうる。ヒトアグリカン内の、例示的なADAMTSおよびMMPについて公知の認識配列の例を、表1に指し示す。破線は、タンパク質分解の場所を示す。
【表1】
【0103】
変異体A2Mポリペプチドは、プロテアーゼ阻害有効性の、野生型A2Mタンパク質のプロテアーゼ阻害有効性と比較した、少なくとも約10%の増大を特徴としうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、野生型A2Mタンパク質のプロテアーゼ阻害有効性と比較した場合、プロテアーゼ阻害有効性の、少なくとも約20、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の増大を特徴としうる。変異体A2Mポリペプチドは、プロテアーゼ阻害有効性の、野生型A2Mタンパク質のプロテアーゼ阻害有効性と比較した増大を特徴としうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、プロテアーゼ阻害有効性の、野生型A2Mタンパク質のプロテアーゼ阻害有効性と比較した、1.2、1.2、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000倍の増大を特徴としうる。
【0104】
変異体A2Mポリペプチドは、1または複数のプロテアーゼを阻害する能力を、野生型A2Mポリペプチドと比較して増大させていることとして特徴付けることができる。変異体A2Mポリペプチドは、1または複数のプロテアーゼを阻害する能力であって、1または複数のプロテアーゼを阻害する、野生型A2Mポリペプチドの能力の、少なくとも1.5倍である能力を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、1または複数のプロテアーゼを阻害する能力であって、1または複数のプロテアーゼを阻害する、野生型A2Mポリペプチドの能力の、少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100倍である能力を有しうる。変異体A2Mポリペプチドは、1または複数のプロテアーゼを阻害する能力であって、1または複数のプロテアーゼを阻害する、野生型A2Mポリペプチドの能力の、1.5~100倍である能力を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、1または複数のプロテアーゼを阻害する能力であって、1または複数のプロテアーゼを阻害する、野生型A2Mポリペプチドの能力の、1.6~100、1.7~100、1.8~100、1.9~100、2~100、2.1~100、2.2~100、2.3~100、2.4~100、2.5~100、2.6~100、2.7~100、2.8~100、2.9~100、3.0~100、3.1~100、3.2~100、3.3~100、3.4~100、3.5~100、3.6~100、3.7~100、3.8~100、3.9~100、4~100、5~100、6~100、7~100、8~100、9~100、10~100、11~100、12~100、13~100、14~100、15~100、16~100、17~100、18~100、19~100、20~100、25~100、30~100、35~100、40~100、45~100、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、1.5~90、1.6~90、1.7~90、1.8~90、1.9~90、2~90、2.1~90、2.2~90、2.3~90、2.4~90、2.5~90、2.6~90、2.7~90、2.8~90、2.9~90、3.0~90、3.1~90、3.2~90、3.3~90、3.4~90、3.5~90、3.6~90、3.7~90、3.8~90、3.9~90、4~90、5~90、6~90、7~90、8~90、9~90、10~90、11~90、12~90、13~90、14~90、15~90、16~90、17~90、18~90、19~90、20~90、25~90、30~90、35~90、40~90、45~90、50~90、60~90、70~90、80~90、1.5~80、1.6~80、1.7~80、1.8~80、1.9~80、2~80、2.1~80、2.2~80、2.3~80、2.4~80、2.5~80、2.6~80、2.7~80、2.8~80、2.9~80、3.0~80、3.1~80、3.2~80、3.3~80、3.4~80、3.5~80、3.6~80、3.7~80、3.8~80、3.9~80、4~80、5~80、6~80、7~80、8~80、9~80、10~80、11~80、12~80、13~80、14~80、15~80、16~80、17~80、18~80、19~80、20~80、25~80、30~80、35~80、40~80、45~80、50~80、60~80、70~80、1.5~70、1.6~70、1.7~70、1.8~70、1.9~70、2~70、2.1~70、2.2~70、2.3~70、2.4~70、2.5~70、2.6~70、2.7~70、2.8~70、2.9~70、3.0~70、3.1~70、3.2~70、3.3~70、3.4~70、3.5~70、3.6~70、3.7~70、3.8~70、3.9~70、4~70、5~70、6~70、7~70、8~70、9~70、10~70、11~70、12~70、13~70、14~70、15~70、16~70、17~70、18~70、19~70、20~70、25~70、30~70、35~70、40~70、45~70、50~70、60~70、1.5~60、1.6~60、1.7~60、1.8~60、1.9~60、2~60、2.1~60、2.2~60、2.3~60、2.4~60、2.5~60、2.6~60、2.7~60、2.8~60、2.9~60、3.0~60、3.1~60、3.2~60、3.3~60、3.4~60、3.5~60、3.6~60、3.7~60、3.8~60、3.9~60、4~60、5~60、6~60、7~60、8~60、9~60、10~60、11~60、12~60、13~60、14~60、15~60、16~60、17~60、18~60、19~60、20~60、25~60、30~60、35~60、40~60、45~60、50~60、1.5~50、1.6~50、1.7~50、1.8~50、1.9~50、2~50、2.1~50、2.2~50、2.3~50、2.4~50、2.5~50、2.6~50、2.7~50、2.8~50、2.9~50、3.0~50、
3.1~50、3.2~50、3.3~50、3.4~50、3.5~50、3.6~50、3.7~50、3.8~50、3.9~50、4~50、5~50、6~50、7~50、8~50、9~50、10~50、11~50、12~50、13~50、14~50、15~50、16~50、17~50、18~50、19~50、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、1.5~40、1.6~40、1.7~40、1.8~40、1.9~40、2~40、2.1~40、2.2~40、2.3~40、2.4~40、2.5~40、2.6~40、2.7~40、2.8~40、2.9~40、3.0~40、3.1~40、3.2~40、3.3~40、3.4~40、3.5~40、3.6~40、3.7~40、3.8~40、3.9~40、4~40、5~40、6~40、7~40、8~40、9~40、10~40、11~40、12~40、13~40、14~40、15~40、16~40、17~40、18~40、19~40、20~40、25~40、30~40、1.5~30、1.6~30、1.7~30、1.8~30、1.9~30、2~30、2.1~30、2.2~30、2.3~30、2.4~30、2.5~30、2.6~30、2.7~30、2.8~30、2.9~30、3.0~30、3.1~30、3.2~30、3.3~30、3.4~30、3.5~30、3.6~30、3.7~30、3.8~30、3.9~30、4~30、5~30、6~30、7~30、8~30、9~30、10~30、11~30、12~30、13~30、14~30、15~30、16~30、17~30、18~30、19~30、20~30、1.5~20、1.6~20、1.7~20、1.8~20、1.9~20、2~20、2.1~20、2.2~20、2.3~20、2.4~20、2.5~20、2.6~20、2.7~20、2.8~20、2.9~20、3.0~20、3.1~20、3.2~20、3.3~20、3.4~20、3.5~20、3.6~20、3.7~20、3.8~20、3.9~20、4~20、5~20、6~20、7~20、8~20、9~20、10~20、11~20、12~20、13~20、14~20、15~20、1.5~15、1.6~15、1.7~15、1.8~15、1.9~15、2~15、2.1~15、2.2~15、2.3~15、2.4~15、2.5~15、2.6~15、2.7~15、2.8~15、2.9~15、3.0~15、3.1~15、3.2~15、3.3~15、3.4~15、3.5~15、3.6~15、3.7~15、3.8~15、3.9~15、4~15、5~15、6~15、7~15、8~15、9~15、10~15、11~15、12~15、13~15、14~15、1.5~10、1.6~10、1.7~10、1.8~10、1.9~10、2~10、2.1~10、2.2~10、2.3~10、2.4~10、2.5~10、2.6~10、2.7~10、2.8~10、2.9~10、3.0~10、3.1~10、3.2~10、3.3~10、3.4~10、3.5~10、3.6~10、3.7~10、3.8~10、3.9~10、4~10、5~10、6~10、7~10、8~10、9~10、1.5~9、1.6~9、1.7~9、1.8~9、1.9~9、2~9、2.1~9、2.2~9、2.3~9、2.4~9、2.5~9、2.6~9、2.7~9、2.8~9、2.9~9、3.0~9、3.1~9、3.2~9、3.3~9、3.4~9、3.5~9、3.6~9、3.7~9、3.8~9、3.9~9、4~9、5~9、6~9、7~9、8~9、1.5~8、1.6~8、1.7~8、1.8~8、1.9~8、2~8、2.1~8、2.2~8、2.3~8、2.4~8、2.5~8、2.6~8、2.7~8、2.8~8、2.9~8、3.0~8、3.1~8、3.2~8、3.3~8、3.4~8、3.5~8、3.6~8、3.7~8、3.8~8、3.9~8、4~8、5~8、6~8、7~8、1.5~7、1.6~7、1.7~7、1.8~7、1.9~7、2~7、2.1~7、2.2~7、2.3~7、2.4~7、2.5~7、2.6~7、2.7~7、2.8~7、2.9~7、3.0~7、3.1~7、3.2~7、3.3~7、3.4~7、3.5~7、3.6~7、3.7~7、3.8~7、3.9~7、4~7、5~7、6~7、1.5~6、1.6~6、1.7~6、1.8~6、1.9~6、2~6、2.1~6、2.2~6、2.3~6、2.4~6、2.5~6、2.6~6、2.7~6、2.8~6、2.9~6、3.0~6、3.1~6、3.2~6、3.3~6、3.4~6、3.5~6、3.6~6、3.7~6、3.8~6、3.9~6、4~6、5~6、1.5~5、1.6~5、1.7~5、1.8~5、1.9~5、2~5、2.1~5、2.2~5、2.3~5、2.4~5、2.5~5、2.6~5、2.7~5、2.8~5、2.9~5、3.0~5、3.1~5、3.2~5、3.3~5、3.4~5、3.5~5、3.6~5、3.7~5、3.8~5、3.9~5、4~5、1.5~4、1.6~4、1.7~4、1.8~4、1.9~4、2~4、2.1~4、2.2~4、2.3~4、2.4~4、2.5~4、2.6~4、2.7~4、2.8~4、2.9~4、3.0~4、3.1~4、3.2~4、3.3~4、3.4~4、3.5~4、3.6~4、3.7~4、3.8~4、3.9~4、1.5~3、1.6~3、1.7~3、1.8~3、1.9~3、2~3、2.1~3、2.2~3、2.3~3、2.4~3、2.5~3、2.6~3、2.7~3、2.8~3、2.9~3、1.5~2、1.6~2、1.7~2、1.8~2、または1.9~2倍である能力を有しうる。
【0105】
1または複数のプロテアーゼは、MMP1(間質コラゲナーゼ)、MMP2(ゼラチナーゼA)、MMP3(ストロメリシン1)、MMP7(マトリリシン、PUMP1)、MMP8(好中球コラゲナーゼ)、MMP9(ゼラチナーゼB)、MMP10(ストロメリシン2)、MMP11(ストロメリシン3)、MMP12(マクロファージメタロエラスターゼ)、MMP13(コラゲナーゼ3)、MMP14(MT1-MMP)、MMP15(MT2-MMP)、MMP16(MT3-MMP)、MMP17(MT4-MMP)、MMP18(コラゲナーゼ4、xcol4、Xenopus属コラゲナーゼ)、MMP19(RASI-1、ストロメリシン4)、MMP20(エナメリシン)、MMP21(X-MMP)、MMP23A(CA-MMP)、MMP23B、MMP24(MT5-MMP)、MMP25(MT6-MMP)、MMP26(マトリリシン2、エンドメターゼ)、MMP27(MMP-22、C-MMP)、MMP28(エピリシン)などのマトリックスメタロプロテアーゼ;ADAMTS1、ADAMTS2、ADAMTS3、ADAMTS4、ADAMTS5(ADAMTS11)、ADAMTS6、ADAMTS7、ADAMTS8(METH-2)、ADAMTS9、ADAMTS10、ADAMTS12、ADAMTS13、ADAMTS14、ADAMTS15、ADAMTS16、ADAMTS17、ADAMTS18、ADAMTS19、ADAMTS20などのADAMTS(A Disintegrin and Metalloproteinase with Thrombospondin Motifs)プロテアーゼ;キモトリプシン;トリプシン;エラスターゼ;補体因子;凝固因子;トロンビン;プラスミン;スブチリシン;ネプリリシン;プロコラーゲンペプチダーゼ;テルモリシン;妊娠関連血漿タンパク質A;骨形成タンパク質1;リソスタフィン;インスリン分解酵素;ZMPSTE2;ZMPSTE4;ZMPSTE24;;およびアセチルコリンエステラーゼを含みうる。
【0106】
変異体A2Mポリペプチドは、FACの形成を防止する能力を、野生型A2Mポリペプチドと比較して増大させていることとして特徴付けることができる。変異体A2Mポリペプチドは、FACの形成を防止する能力であって、FACの形成を防止する、野生型A2Mポリペプチドの能力の、少なくとも1.5倍である能力を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、FACの形成を防止する能力であって、FACの形成を防止する、野生型A2Mポリペプチドの能力の、少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100倍である能力を有しうる。変異体A2Mポリペプチドは、FACの形成を防止する能力であって、FACの形成を防止する、野生型A2Mポリペプチドの能力の、1.5~100倍である能力を有しうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、FACの形成を防止する能力であって、FACの形成を防止する、野生型A2Mポリペプチドの能力の、1.6~100、1.7~100、1.8~100、1.9~100、2~100、2.1~100、2.2~100、2.3~100、2.4~100、2.5~100、2.6~100、2.7~100、2.8~100、2.9~100、3.0~100、3.1~100、3.2~100、3.3~100、3.4~100、3.5~100、3.6~100、3.7~100、3.8~100、3.9~100、4~100、5~100、6~100、7~100、8~100、9~100、10~100、11~100、12~100、13~100、14~100、15~100、16~100、17~100、18~100、19~100、20~100、25~100、30~100、35~100、40~100、45~100、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、1.5~90、1.6~90、1.7~90、1.8~90、1.9~90、2~90、2.1~90、2.2~90、2.3~90、2.4~90、2.5~90、2.6~90、2.7~90、2.8~90、2.9~90、3.0~90、3.1~90、3.2~90、3.3~90、3.4~90、3.5~90、3.6~90、3.7~90、3.8~90、3.9~90、4~90、5~90、6~90、7~90、8~90、9~90、10~90、11~90、12~90、13~90、14~90、15~90、16~90、17~90、18~90、19~90、20~90、25~90、30~90、35~90、40~90、45~90、50~90、60~90、70~90、80~90、1.5~80、1.6~80、1.7~80、1.8~80、1.9~80、2~80、2.1~80、2.2~80、2.3~80、2.4~80、2.5~80、2.6~80、2.7~80、2.8~80、2.9~80、3.0~80、3.1~80、3.2~80、3.3~80、3.4~80、3.5~80、3.6~80、3.7~80、3.8~80、3.9~80、4~80、5~80、6~80、7~80、8~80、9~80、10~80、11~80、12~80、13~80、14~80、15~80、16~80、17~80、18~80、19~80、20~80、25~80、30~80、35~80、40~80、45~80、50~80、60~80、70~80、1.5~70、1.6~70、1.7~70、1.8~70、1.9~70、2~70、2.1~70、2.2~70、2.3~70、2.4~70、2.5~70、2.6~70、2.7~70、2.8~70、2.9~70、3.0~70、3.1~70、3.2~70、3.3~70、3.4~70、3.5~70、3.6~70、3.7~70、3.8~70、3.9~70、4~70、5~70、6~70、7~70、8~70、9~70、10~70、11~70、12~70、13~70、14~70、15~70、16~70、17~70、18~70、19~70、20~70、
25~70、30~70、35~70、40~70、45~70、50~70、60~70、1.5~60、1.6~60、1.7~60、1.8~60、1.9~60、2~60、2.1~60、2.2~60、2.3~60、2.4~60、2.5~60、2.6~60、2.7~60、2.8~60、2.9~60、3.0~60、3.1~60、3.2~60、3.3~60、3.4~60、3.5~60、3.6~60、3.7~60、3.8~60、3.9~60、4~60、5~60、6~60、7~60、8~60、9~60、10~60、11~60、12~60、13~60、14~60、15~60、16~60、17~60、18~60、19~60、20~60、25~60、30~60、35~60、40~60、45~60、50~60、1.5~50、1.6~50、1.7~50、1.8~50、1.9~50、2~50、2.1~50、2.2~50、2.3~50、2.4~50、2.5~50、2.6~50、2.7~50、2.8~50、2.9~50、3.0~50、3.1~50、3.2~50、3.3~50、3.4~50、3.5~50、3.6~50、3.7~50、3.8~50、3.9~50、4~50、5~50、6~50、7~50、8~50、9~50、10~50、11~50、12~50、13~50、14~50、15~50、16~50、17~50、18~50、19~50、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、1.5~40、1.6~40、1.7~40、1.8~40、1.9~40、2~40、2.1~40、2.2~40、2.3~40、2.4~40、2.5~40、2.6~40、2.7~40、2.8~40、2.9~40、3.0~40、3.1~40、3.2~40、3.3~40、3.4~40、3.5~40、3.6~40、3.7~40、3.8~40、3.9~40、4~40、5~40、6~40、7~40、8~40、9~40、10~40、11~40、12~40、13~40、14~40、15~40、16~40、17~40、18~40、19~40、20~40、25~40、30~40、1.5~30、1.6~30、1.7~30、1.8~30、1.9~30、2~30、2.1~30、2.2~30、2.3~30、2.4~30、2.5~30、2.6~30、2.7~30、2.8~30、2.9~30、3.0~30、3.1~30、3.2~30、3.3~30、3.4~30、3.5~30、3.6~30、3.7~30、3.8~30、3.9~30、4~30、5~30、6~30、7~30、8~30、9~30、10~30、11~30、12~30、13~30、14~30、15~30、16~30、17~30、18~30、19~30、20~30、1.5~20、1.6~20、1.7~20、1.8~20、1.9~20、2~20、2.1~20、2.2~20、2.3~20、2.4~20、2.5~20、2.6~20、2.7~20、2.8~20、2.9~20、3.0~20、3.1~20、3.2~20、3.3~20、3.4~20、3.5~20、3.6~20、3.7~20、3.8~20、3.9~20、4~20、5~20、6~20、7~20、8~20、9~20、10~20、11~20、12~20、13~20、14~20、15~20、1.5~15、1.6~15、1.7~15、1.8~15、1.9~15、2~15、2.1~15、2.2~15、2.3~15、2.4~15、2.5~15、2.6~15、2.7~15、2.8~15、2.9~15、3.0~15、3.1~15、3.2~15、3.3~15、3.4~15、3.5~15、3.6~15、3.7~15、3.8~15、3.9~15、4~15、5~15、6~15、7~15、8~15、9~15、10~15、11~15、12~15、13~15、14~15、1.5~10、1.6~10、1.7~10、1.8~10、1.9~10、2~10、2.1~10、2.2~10、2.3~10、2.4~10、2.5~10、2.6~10、2.7~10、2.8~10、2.9~10、3.0~10、3.1~10、3.2~10、3.3~10、3.4~10、3.5~10、3.6~10、3.7~10、3.8~10、3.9~10、4~10、5~10、6~10、7~10、8~10、9~10、1.5~9、1.6~9、1.7~9、1.8~9、1.9~9、2~9、2.1~9、2.2~9、2.3~9、2.4~9、2.5~9、2.6~9、2.7~9、2.8~9、2.9~9、3.0~9、3.1~9、3.2~9、3.3~9、3.4~9、3.5~9、3.6~9、3.7~9、3.8~9、3.9~9、4~9、5~9、6~9、7~9、8~9、1.5~8、1.6~8、1.7~8、1.8~8、1.9~8、2~8、2.1~8、2.2~8、2.3~8、2.4~8、2.5~8、2.6~8、2.7~8、2.8~8、2.9~8、3.0~8、3.1~8、3.2~8、3.3~8、3.4~8、3.5~8、3.6~8、3.7~8、3.8~8、3.9~8、4~8、5~8、6~8、7~8、1.5~7、1.6~7、1.7~7、1.8~7、1.9~7、2~7、2.1~7、2.2~7、2.3~7、2.4~7、2.5~7、2.6~7、2.7~7、2.8~7、2.9~7、3.0~7、3.1~7、3.2~7、3.3~7、3.4~7、3.5~7、3.6~7、3.7~7、3.8~7、3.9~7、4~7、5~7、6~7、1.5~6、1.6~6、1.7~6、1.8~6、1.9~6、2~6、2.1~6、2.2~6、2.3~6、2.4~6、2.5~6、2.6~6、2.7~6、2.8~6、2.9~6、3.0~6、3.1~6、3.2~6、3.3~6、3.4~6、3.5~6、3.6~6、3.7~6、3.8~6、3.9~6、4~6、5~6、1.5~5、1.6~5、1.7~5、1.8~5、1.9~5、2~5、2.1~5、2.2~5、2.3~5、2.4~5、2.5~5、2.6~5、2.7~5、2.8~5、2.9~5、3.0~5、3.1~5、3.2~5、3.3~5、3.4~5、3.5~5、3.6~5、3.7~5、3.8~5、3.9~5、4~5、1.5~4、1.6~4、1.7~4、1.8~4、1.9~4、2~4、2.1~4、2.2~4、2.3~4、2.4~4、2.5~4、2.6~4、2.7~4、2.8~4、2.9~4、3.0~4、3.1~4、3.2~4、3.3~4、3.4~4、3.5~4、3.6~4、3.7~4、3.8~4、3.9~4、1.5~3、1.6~3、1.7~3、1.8~3、1.9~3、2~3、2.1~3、2.2~3、2.3~3、2.4~3、2.5~3、2.6~3、2.7~3、2.8~3、2.9~3、1.5~2、1.6~2、1.7~2、1.8~2、または1.9~2倍である能力を有しうる。
【0107】
本発明の一態様は、変異体A2Mポリペプチドによるプロテアーゼの阻害の増強を決定するための方法であって、a)配列番号6~83のうちの、1または複数の配列を含む、変異体A2Mポリペプチドを用意するステップと;b)変異体A2Mポリペプチドを、プロテアーゼおよびプロテアーゼにより切断される基質と接触させるステップと;c)野生型A2Mポリペプチドを、プロテアーゼおよびプロテアーゼにより切断される基質と接触させるステップと;d)ステップb)による基質の切断量を、ステップc)による基質の切断量と比較し、これにより、変異体A2Mポリペプチドによるプロテアーゼの阻害の増強を決定するステップとを含む方法である。
【0108】
酵素による糖コンジュゲーション反応を、グリコシル化部位およびグリコシル化部位に接合させる残基にターゲティングすることができる。標的グリコシル化部位は、野生型A2Mタンパク質に対して天然の部位の場合もあり、変異体A2Mポリペプチドに対して天然の部位の場合もあり、代替的に、突然変異により、野生型A2Mまたは変異体A2Mポリペプチドに導入することもできる。こうして、本発明の方法により、in vivoにおける、変異体A2Mポリペプチドの半減期を増大するための方法が提供される。
【0109】
変異体A2Mポリペプチドは、タンパク質内の、1または複数のグリコシル化部位を挿入するか、除去するか、または再配置するように突然変異させたアミノ酸配列を含みうる。部位を、付加または再配置する場合、部位は、野生型A2Mペプチド内に存在しないか、または野生型A2Mペプチド内の、選択された場所に存在しない。突然変異体グリコシル化部位は、グリコシル化部位に酵素的にコンジュゲートさせうる、修飾グリコシル残基のための接合点でありうる。本発明の方法を使用して、グリコシル化部位を、ペプチド上の、任意の効果的な位置にシフトさせることができる。例えば、コンジュゲーションが、プロテアーゼに結合する能力、プロテアーゼを阻害する能力、またはこれらの組合せに干渉する程度に十分に、天然グリコシル化部位が、変異体A2Mポリペプチドペプチドのベイト領域と近位であるか、またはこのベイト領域内にある場合、生物学的に活性な変異体A2Mポリペプチドをもたらす必要に応じて、修飾グリコシル化部位、またはベイトから除去されたグリコシル化部位を含む、変異体A2Mポリペプチドを操作することは、本発明の範囲内にある。
【0110】
任意のグリコシルトランスフェラーゼ、または当技術分野で公知のそれらの使用法を、カスタムで設計されたグリコシル化パターン、多様なグリコシル構造、またはこれらの可能な組合せを伴う、変異体A2Mポリペプチドの、in vitroにおける、酵素による合成のために使用することができる。例えば、米国特許第5,876,980号;同第6,030,815号;同第5,728,554号;同第5,922,577号;ならびにWO/9831826;US2003180835;およびWO03/031464を参照されたい。
【0111】
変異体A2Mポリペプチドは、1または複数のプロテアーゼについてのコンセンサス配列を含みうる。変異体A2Mポリペプチドは、表2における、1または複数のプロテアーゼ認識部位/プロテアーゼ認識配列を含みうる。
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【表4A-1】
【表4A-2】
【表4B-1】
【表4B-2】
【0112】
本発明は、完全なグリコシル連結基を介して、水溶性のポリマーを、変異体A2Mポリペプチドにコンジュゲートさせることにより、in vivoにおける変異体A2Mポリペプチドの半減期を改善または延長する方法を提供する。例示的な実施形態では、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーの、このような変異体A2Mポリペプチドへの共有結合的接合は、in vivoにおける滞留時間、ならびに薬物動態特性および薬力学特性が、コンジュゲートさせていない変異体A2Mポリペプチドと比べて増強された、変異体A2Mポリペプチドをもたらす。
【0113】
水溶性ポリマーのポリマー主鎖は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)でありうる。しかし、他の類縁のポリマーもまた、本発明の実施における使用に適し、PEGまたはポリ(エチレングリコール)という用語の使用は、この点で、包含的であることを意図するものであり、除外的であることを意図するものではないことを理解されたい。PEGという用語は、その形態のうちのいずれかの中のポリ(エチレングリコール)であって、アルコキシPEG、二官能性PEG、マルチアーム型PEG、フォーク型PEG、分枝状PEG、ペンダント型PEG(すなわち、ポリマー主鎖に懸垂する1または複数の官能基を有する、PEGまたは類縁のポリマー)、またはその中に分解性連結を伴うPEGを含むポリ(エチレングリコール)を含む。ポリマー主鎖は、直鎖状の場合もあり、分枝状の場合もある。当技術分野では一般に、分枝状ポリマー主鎖が公知である。分枝状ポリマーは、中央の分枝コア部分と、中央の分枝コアに連結された、複数の直鎖状ポリマー鎖とを有することが典型的である。PEGは一般に、エチレンオキシドの、グリセロール、ペンタエリトリトール、およびソルビトールなどの多様なポリオールへの付加により調製されうる分枝状形態で使用する。中央の分枝部分はまた、リシンなど、いくつかのアミノ酸にも由来しうる。分枝状ポリ(エチレングリコール)は、一般的形態では、R(-PEG-OH)n[式中、Rは、グリセロールまたはペンタエリトリトールなどのコア部分を表し、nは、アームの数を表す]として表すことができる。他の多くのポリマーもまた、本発明に適する。適するポリマーの例は、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)など、他のポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)など、エチレングリコールと、プロピレングリコールとのコポリマー、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、ならびにこれらのコポリマー、テルポリマー、および混合物を含むがこれらに限定されない。ポリマー主鎖の各鎖の分子量は、変動しうるが、約100Da~約100,000Daの範囲であることが典型的であり、約6,000Da~約80,000Daであることが多い。
【0114】
変異体A2Mポリペプチドは、PEGをさらに含みうる。変異体A2Mポリペプチドは、1または複数の突然変異体グリコシル化部位または修飾グリコシル化部位を有しうる。修飾グリコシル化部位は、PEGを含みうる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、またはそれ超の突然変異体グリコシル化部位または修飾グリコシル化部位を有しうる。PEGの、1または複数の修飾グリコシル化部位または非正常グリコシル化部位を伴う、変異体A2Mポリペプチドへの、コンジュゲーションまたは付加は、対象の関節または脊椎椎間板など、対象内に位置すると、PEGを伴わない、野生型A2Mタンパク質の半減期より半減期が長い、変異体A2Mポリペプチドを結果としてもたらしうる。PEGの、1または複数の修飾グリコシル化部位または非正常グリコシル化部位を伴う、変異体A2Mポリペプチドへの、コンジュゲーションまたは付加は、対象の関節または脊椎椎間板など、対象内に位置すると、1または複数の修飾グリコシル化部位を伴わず、PEGを伴わない、変異体A2Mポリペプチドの半減期より半減期が長い、変異体A2Mポリペプチドを結果としてもたらしうる。PEGの、1または複数の修飾グリコシル化部位または非正常グリコシル化部位を伴う、変異体A2Mポリペプチドへの、コンジュゲーションまたは付加は、対象の関節または脊椎椎間板など、対象内に位置すると、1または複数の修飾グリコシル化部位を伴うが、PEGを伴わない、変異体A2Mポリペプチドの半減期より半減期が長い、変異体A2Mポリペプチドを結果としてもたらしうる。例えば、PEGを伴う、1または複数の修飾グリコシル化部位または非正常グリコシル化部位を伴う変異体A2Mポリペプチドは、PEGを伴わない野生型A2Mタンパク質、1もしくは複数の修飾グリコシル化部位を伴うが、PEGを伴わない、変異体A2Mポリペプチド、または1もしくは複数の修飾グリコシル化部位を伴わず、PEGを伴わない、変異体A2Mポリペプチドの半減期の、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000倍である半減期を有しうる。例えば、PEGを伴う、1または複数の修飾グリコシル化部位または非正常グリコシル化部位を伴う変異体A2Mポリペプチドは、対象の関節または脊椎椎間板内に位置すると、1または複数の修飾グリコシル化部位または非正常グリコシル化部位を伴わず、PEGを伴わない、野生型A2Mタンパク質組成物の半減期の2倍である半減期を有しうる。
【0115】
本発明はさらに、本発明の核酸断片または本発明の核酸断片の縮重変異体によりコードされる単離ポリペプチドも提供する。「縮重変異体」とは、本発明の核酸断片(例えば、ORF)と、ヌクレオチド配列が異なるが、遺伝子コードの縮重に起因して、同一なポリペプチド配列をコードするヌクレオチド断片を意図しうる。本発明の好ましい核酸断片は、タンパク質をコードするORFである。
【0116】
本発明はまた、生物活性を呈示することが可能な、本発明のA2M変異体の断片も包摂する。A2M変異体の断片は、例えば、それらのいずれもが参照により本明細書に組み込まれる、H. U. Saragoviら、Bio/Technology、10巻、773~778頁(1992年);およびR. S. McDowellら、J. Amer. Chem. Soc.、114巻、9245~9253頁(1992年)において記載されている、公知の方法を使用して、直鎖状形態の場合もあり、環状形態の場合もある。このような断片は、タンパク質結合性部位の価数を増大させることを含む、多くの目的で、免疫グロブリンなどの担体分子に融合させることができる。本発明はまた、開示されるA2M変異体の、全長形態および成熟形態(例えば、シグナル配列または前駆体配列を伴わない)のいずれも提供する。タンパク質コード配列は、開示されるヌクレオチド配列の翻訳により、配列表内で同定することができる。このようなA2M変異体の成熟形態は、適切な哺乳動物細胞または他の宿主細胞内の全長ポリヌクレオチドの発現により得ることができる。A2M変異体の成熟形態の配列はまた、全長形態のアミノ酸配列からも決定可能である。本発明のA2M変異体は、膜結合型であるが、A2M変異体の可溶性形態もまた提供される。このような形態では、A2M変異体が、それを発現させる細胞から、完全に分泌されるように、A2M変異体を膜結合させる領域の一部または全部を欠失させている。本発明のA2M変異体組成物は、親水性の担体、例えば、薬学的に許容される担体など、許容可能な担体をさらに含みうる。
【0117】
変異体A2Mポリヌクレオチド組成物
配列番号1または2に言及して、本明細書で使用される場合の「A2Mポリヌクレオチド」とは、配列番号1もしくは2のポリヌクレオチド配列、またはこれらの断片のほか、1もしくは複数の挿入、欠失、突然変異、またはこれらの組合せを含む、任意の核酸変異体を意味する。挿入、欠失、および突然変異は、A2Mタンパク質のベイト領域をコードするポリヌクレオチド配列内にあることが好ましい。同様に、配列番号1または2に言及して使用される場合の「A2M cDNA」、「A2Mコード配列」、または「A2Mコード核酸」も、配列番号1もしくは2の核酸配列、またはこれらの断片のほか、1もしくは複数の挿入、欠失、突然変異、またはこれらの組合せを含む核酸変異体を意味する。A2Mポリヌクレオチドまたはこれらの断片は、変異体A2Mポリペプチドをコードする、変異体A2M組換えポリヌクレオチド構築物であって、変異体A2Mポリペプチドを発現させる変異体A2M組換えポリヌクレオチド構築物を創出するように、分子生物学における従来の技法を使用して操作することができる。変異体A2Mポリヌクレオチドは、配列番号1および2に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、または85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。A2Mコード配列は、配列番号1および2のうちのいずれか1つに対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、または85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0118】
一態様では、本明細書では、変異体A2Mポリヌクレオチド組成物が提供される。多様な生物に由来する野生型A2Mタンパク質をコードする、多数のポリヌクレオチド配列が決定されている。同定された、任意のA2M DNA配列はその後、化学合成および/またはオーバーラップエクステンション法などのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により得ることができる。短い配列には、完全にデノボの合成が十分でありうるが、大型の遺伝子を得るには、合成プローブを使用する、ヒトcDNAライブラリーまたはヒトゲノムDNAライブラリーからの全長コード配列のさらなる単離が必要でありうる。代替的に、A2Mポリペプチドをコードする核酸配列は、相同性ベースのプライマーが、公知のA2Mポリペプチドをコードする核酸配列に由来しうることが多い、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)など、標準的なクローニング法を使用して、ヒトcDNAライブラリーまたはヒトゲノムDNAライブラリーから単離することもできる。
【0119】
野生型A2Mポリペプチドのコード配列を得るのに適するcDNAライブラリーは、市販品を得ることもでき、構築することもできる。mRNAを単離し、逆転写によりcDNAを製作し、cDNAを、組換えベクターにライゲーションし、増殖、スクリーニング、およびクローニングのために、組換え宿主にトランスフェクトする一般的方法は、周知である。PCRにより、ヌクレオチド配列の増幅セグメントを得たら、野生型A2Mタンパク質をコードする全長ポリヌクレオチド配列を、cDNAライブラリーから単離するように、セグメントを、プローブとしてさらに使用することができる。同様の手順に従って、野生型A2Mタンパク質をコードする全長配列を、ヒトゲノムライブラリーから得ることができる。ヒトゲノムライブラリーは、市販されているか、または当技術分野で認識されている多様な方法に従い構築することができる。一般に、ゲノムライブラリーを構築するには、まず、DNAを、ペプチドが見出される可能性が高い組織から抽出する。次いで、DNAを、機械的にせん断処理するか、または酵素的に消化して、約12~20kbの長さの断片をもたらす。その後、断片を、勾配遠心分離により、所望されないサイズのポリヌクレオチド断片から分離し、バクテリオファージλベクター内に挿入する。これらのベクターおよびファージを、in vitroにおいてパッケージングする。組換えファージを、プラークハイブリダイゼーションにより解析する。
【0120】
配列相同性に基づき、縮重オリゴヌクレオチドを、プライマーセットとして設計することができ、PCRを、ヌクレオチド配列のセグメントを、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーから増幅するのに適する状態下で実施することができる。増幅されたセグメントを、プローブとして使用して、野生型A2Mタンパク質をコードする全長核酸を得ることができる。
【0121】
野生型A2Mタンパク質をコードする核酸配列を得たら、組換え野生型A2Mタンパク質を、結果として得られる構築物から産生される、本発明の変異体A2Mポリペプチドに、突然変異させて発現させうるように、コード配列を、ベクター、例えば、発現ベクターにサブクローニングすることができる。その後、野生型A2Mタンパク質コード配列へのさらなる修飾、例えば、ヌクレオチド置換を施して、A2Mタンパク質のベイト領域を変更することができる。
【0122】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドもしくはこれらの断片、または本発明のポリヌクレオチドもしくはこれらの断片の縮重変異体によりコードされる、単離ポリペプチドも提供する。本発明の、好ましいポリヌクレオチドまたはこれらの断片は、A2M変異体をコードするORFである。
【0123】
変異体A2Mポリヌクレオチドは、野生型A2Mタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を突然変異させることにより製作することができる。これは、任意の公知の突然変異誘発法を使用することにより達成することができる。本明細書で記載される変異体ベイト領域を受容するための、野生型A2Mポリヌクレオチドに対する例示的な修飾は、配列番号2における修飾を含む。A2Mヌクレオチドに対する例示的な修飾は、配列番号6~30の変異体ベイト領域、または配列番号31~83の1もしくは複数のプロテアーゼ認識配列を含む変異体ベイト領域をコードするヌクレオチド配列を、配列番号1の野生型A2Mポリヌクレオチド配列、および配列番号2の変異体A2Mアクセプターポリヌクレオチド配列に挿入するか、または前者のヌクレオチド配列で後者のポリヌクレオチド配列を置換することを含む。突然変異誘発手順を、個別に、または組み合わせて使用して、核酸のセットの変異体を作製することができ、よって、コードされるポリペプチドの変異体を作製することができる。突然変異誘発のためのキットは、市販されている。
【0124】
一態様では、本明細書では、変異体A2Mポリヌクレオチドのうちのいずれかを製作する方法が提供される。変異体A2Mポリヌクレオチドを製作する方法は、変異体ベイト領域を、野生型A2Mポリヌクレオチド配列または実質的に類似する配列に挿入するか、または前者で後者を置換するステップを含みうる。実質的に類似する配列は、配列番号2でありうる。本発明の一態様は、変異体A2Mポリヌクレオチドを製作するための方法であって、a)配列番号2の配列を含む、変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを用意するステップと;b)変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを、制限エンドヌクレアーゼで消化して、直鎖状ベクターを形成するステップと;c)配列番号6~30の変異体ベイト領域、または配列番号31~83の1もしくは複数のプロテアーゼ認識配列を含む変異体ベイト領域のうちの1または複数をコードする1または複数のポリヌクレオチドの一方の端部を直鎖状ベクターの一方の端部にライゲーションするステップと;およびd)配列番号6~30の変異体ベイト領域、または配列番号31~83の1もしくは複数のプロテアーゼ認識配列を含む変異体ベイト領域のうちの1または複数をコードする1または複数のポリヌクレオチドの他方の端部を、直鎖状ベクターの他方の端部にライゲーションし、これにより、配列番号6~30の変異体ベイト領域、または配列番号31~83の1もしくは複数のプロテアーゼ認識配列を含む変異体ベイト領域を含む変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するベクターを形成するステップとを含む方法である。
【0125】
タンパク質の産生
当技術分野で公知の様々な方法を活用して、本発明の単離A2M変異体タンパク質のうちのいずれか1つを得ることができる。最も簡素なレベルでは、アミノ酸配列は、市販のペプチド合成装置を使用して、合成することができる。このようなポリペプチドは、アミノ末端上にメチオニンを伴って合成することもでき、メチオニンを伴わずに合成することもできる。化学合成されたポリペプチドは、これらの参考文献において明示されている方法を使用して、ジスルフィド架橋を形成するように、酸化することができる。合成により構築されたA2M変異体配列は、一次構造特徴、二次構造特徴、もしくは三次構造特徴、および/またはコンフォメーション特徴を、A2M変異体と共有しているために、A2M変異体と共通の生物学的特性であって、プロテアーゼ阻害活性を含む生物学的特性を有しうる。この技法は、小型のペプチドおよび大型のポリペプチドの断片の作製において、特に有用である。断片は、例えば、A2M変異体に対する抗体を作出するのに有用である。こうして、断片を、治療用化合物のスクリーニング、および抗体を開発するための免疫学的工程において、天然の精製A2M変異体の、生物学的に活性の代替物、または免疫学的代替物として援用することができる。
【0126】
本発明のA2M変異体ポリペプチドは代替的に、所望のA2M変異体を発現させるように変更された細胞から精製することもできる。本明細書で使用される、細胞が、遺伝子操作を介して、それが通常産生しないか、または通常低レベルで産生する、A2M変異体ポリペプチドを産生するように製作されている場合、細胞は、所望のA2M変異体ポリペプチドまたはA2M変異体タンパク質を発現させるように変更されているという。当業者は、本発明のA2M変異体ポリペプチドのうちの1つを産生する細胞を作出するために、組換え配列または合成配列を、真核細胞または原核細胞に導入し、発現させるための手順を、たやすく適応させることができる。
【0127】
変異体A2Mポリペプチドは、組換えタンパク質またはその断片であることが可能であり、宿主細胞内で産生させることもでき、in vitro系により作製することもできる。組換えポリペプチドおよびタンパク質プロモーターは、宿主細胞、例えば、細菌培養物、または酵母細胞もしくは昆虫細胞などの下等真核細胞、または原核細胞、あるいは当技術分野で公知の任意の宿主内で、作動的に産生されうるように、挿入することができる。変異体A2M組換えタンパク質は、細菌細胞内、酵母細胞内、真菌細胞内、昆虫細胞内、もしくは哺乳動物細胞内、または無細胞系内で産生させることができる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、Corynebacterium、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces strains、Candida、Pichia pastoris、バキュロウイルス感染性昆虫細胞、またはCOS細胞、BHK細胞、293細胞、3T3細胞、NS0ハイブリドーマ細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、PER.C6(商標)ヒト細胞、HEK293細胞、もしくはCricetulus griseus(CHO)細胞などの哺乳動物細胞内で産生させることができる。変異体A2Mポリペプチドは、一過性発現、安定的細胞系、BacMam媒介型一過性形質導入、または無細胞タンパク質産生により作製することができる。
【0128】
変異体A2Mポリペプチドはまた、単離変異体A2Mポリヌクレオチドを、1または複数の昆虫発現ベクター内の適切な制御配列に、作動可能に連結し、昆虫発現系を援用することによって作製することもできる。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための、材料および方法は、例えば、Invitrogen、San Diego、Calif.、U.S.A.(MaxBat(商標)キット)から、キット形態で市販されており、このような方法は、参照により本明細書に組み込まれる、SummersおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin、1555号(1987年)において記載されている通り、当技術分野で周知である。
【0129】
哺乳動物宿主細胞内では、いくつかのウイルスベースの発現系を活用することができる。アデノウイルスを、発現ベクターとして使用する場合、目的の変異体A2Mヌクレオチド配列を、アデノウイルス転写/翻訳転写複合体、例えば、後期プロモーター配列および三部分リーダー配列にライゲーションすることができる。次いで、このキメラ遺伝子を、in vitroまたはin vivoにおける組換えにより、アデノウイルスゲノム内に挿入することができる。ウイルスゲノムの、非必須領域内の挿入は、生存可能であり、感染性宿主内で変異体A2M遺伝子産物を発現させることが可能な、組換えウイルスを結果としてもたらしうる。挿入されたヌクレオチド配列の効果的な翻訳のためにはまた、特異的な開始シグナルも要請されうる。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。それ自体の開始コドンおよび隣接する配列を含む、変異体A2M遺伝子またはcDNAの全体を、適切な発現ベクター、例えば、pJ608哺乳動物発現ベクター(
図23)内に挿入する場合、さらなる翻訳制御シグナルは必要とされない。ATG開始コドンなどの、外因性翻訳制御シグナルを用意することができる。
【0130】
宿主細胞は、本発明の変異体A2Mポリヌクレオチドを含有するように、遺伝子操作することができる。例えば、このような宿主細胞は、公知の形質転換法、トランスフェクション法、または感染法を使用して、宿主細胞に導入される、変異体A2Mポリヌクレオチドを含有しうる。本明細書で使用される、変異体A2Mポリヌクレオチドを発現させることが可能な細胞は、「形質転換」することができる。本発明の変異体A2Mポリペプチドは、形質転換された宿主細胞を、組換えタンパク質を発現させるのに適する培養条件下で培養することにより調製することができる。外来ヌクレオチド配列を、宿主細胞に導入するための、任意の手順を使用することができる。非限定的な例は、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、トランスフェクション、DEAE、デキストラン媒介型トランスフェクション、マイクロインジェクション、リポフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔(Davis, L.ら、「Basic Methods in Molecular Biology」(1986年))、リポソーム、マイクロインジェクション、プラスミドベクター、ウイルスベクター、およびクローニングされた、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、または他の外来遺伝子材料を、宿主細胞に導入するための、他の任意の周知の方法の使用を含む。少なくとも1つの遺伝子を、変異体A2Mポリヌクレオチドを発現させることが可能な、宿主細胞への導入に成功することが可能な遺伝子操作手順を使用することができる。
【0131】
本発明はなおさらに、本発明の変異体A2Mポリヌクレオチドを発現させるように操作された宿主細胞であって、変異体A2Mポリヌクレオチドが、細胞内の変異体A2Mポリヌクレオチドの発現を駆動する宿主細胞と異種の調節配列により作動性である宿主細胞を提供する。A2M様DNAについての知見は、A2M様ポリペプチドの発現を許容するか、または増大させる細胞の改変を可能とする。細胞は、例えば、SV40ウイルスゲノムに由来する、自然発生のA2Mを、全部または一部において置きかえること、例えば、細胞の変異体A2M部位を、要請される非転写ポリペプチドをもたらすのに使用し、高レベルで発現させうるよう、SV40マクログロブリン様プロモーターを、異種プロモーターの全部または一部で置きかえることにより、相同組換えを介して、変異体A2Mポリペプチド発現の増大をもたらすように改変することができる。
【0132】
組換え変異体A2Mポリペプチドの、長期にわたる高収率の産生のためには、安定的な発現が好ましい。例えば、本明細書で記載される変異体A2M配列を安定的に発現させる細胞系を操作することができる。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、および選択マーカーにより制御されるDNAで形質転換することができる。外来DNAの導入に続き、操作された細胞を、濃縮された培地中で、1~2日間にわたり増殖させ、次いで、選択培地に切り替える。組換えプラスミド内の選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞が、プラスミドを、それらの染色体に安定的に組み入れ、増殖して、増殖巣を形成することを可能とするが、これを、細胞系に、クローニングおよび拡大する。この方法は、変異体A2M遺伝子産物を発現させる細胞系を操作するのに使用すると有利である。このような操作された細胞系は、変異体A2M遺伝子産物の内因性活性に影響を及ぼす化合物のスクリーニングおよび査定において、特に有用である。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含むがこれらに限定されないいくつかの選択系をそれぞれtk-、hgprt-、aprt-細胞において使用することもできる。また、代謝拮抗剤耐性も、以下の遺伝子:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr;ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt;アミノ糖側鎖であるG-418に対する耐性を付与するneo;およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygroについての選択のベースとして使用することができる。
【0133】
変異体A2Mポリヌクレオチド配列は、タンパク質のプロセシングまたは発現を修飾するように、操作することができる。限定を目的とするものではないが、例えば、変異体A2Mポリヌクレオチドを、プロモーター配列および/またはリボソーム結合性部位と組み合わせることもでき、シグナル配列を、変異体A2Mポリヌクレオチド配列の上流に挿入して、変異体A2Mポリペプチドの分泌を可能とし、これにより、採取を容易とするか、またはバイオアベイラビリティーを促進することもできる。加えて、変異体A2Mポリヌクレオチドを、in vitroまたはin vivoにおいて突然変異させて、翻訳配列、開始配列、および/または終結配列を、創出および/または破壊するか、あるいはコード領域内の変異を創出し、かつ/または新たな制限部位を形成するか、もしくは既存の部位を破壊するか、あるいはin vitroにおけるさらなる修飾を容易とすることもできる。突然変異誘発のための、当技術分野で公知の任意の技法であって、in vitroにおける部位指向突然変異誘発を含むがこれらに限定されない、任意の技法を使用することができる。
【0134】
さらに、融合タンパク質を創出するように、他のタンパク質または他のタンパク質のドメインをコードする核酸を、変異体A2Mポリペプチドまたはその断片をコードする核酸に接続することもできる。融合タンパク質をコードするヌクレオチドは、全長変異体A2Mタンパク質もしくは全長野生型A2Mタンパク質、切断型変異体A2Mタンパク質もしくは切断型野生型A2Mタンパク質、または例えば、A2Mペプチド断片を、細胞膜にアンカリングする膜貫通配列;結果として得られる融合タンパク質の安定性および半減期を増大させ、Ig Fcドメイン;マルトース結合性タンパク質(MBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、またはチオレドキシン(TRX)、Hisタグ、酵素、マーカーとして使用しうる、蛍光タンパク質、発光タンパク質、例えば、A2M-緑色蛍光タンパク質融合タンパク質などの非類縁タンパク質もしくは非類縁ペプチドに融合させた、変異体A2Mタンパク質もしくは野生型A2Mタンパク質のペプチド断片を含みうるがこれらに限定されない。融合タンパク質は、アフィニティー精製に使用することができる。
【0135】
変異体A2M核酸および変異体A2Mポリペプチドはまた、トランスジェニック生物を創出するように、生物内で発現させることもできる。これらの配列のうちの1または複数を有する、所望のトランスジェニック植物系は、Arabidopsis属、トウモロコシ、およびChlamydomonas属を含む。変異体A2Mポリヌクレオチドおよび/または変異体A2Mポリペプチドのうちの1または複数を有する、所望の昆虫系は、例えば、D.melanogasterおよびC.elegansを含む。両生類、爬虫類、鳥類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、マイクロブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、および非ヒト霊長動物、例えば、ヒヒ、サル、およびチンパンジーを含むがこれらに限定されない、任意の種の動物を使用して、変異体A2Mを含有するトランスジェニック動物を作出することができる。トランスジェニック生物は、本明細書で記載される、変異体A2M核酸および変異体A2Mポリペプチドの、生殖細胞系列への導入を呈示することが所望される。
【0136】
当技術分野で公知の様々な方法を活用して、本発明の単離ポリペプチドまたは単離タンパク質のうちのいずれか1つを得ることができる。最も簡素なレベルでは、アミノ酸配列は、市販のペプチド合成器を使用して、合成することができる。合成により構築されたタンパク質配列は、一次構造特徴、二次構造特徴、もしくは三次構造特徴、および/またはコンフォメーション特徴を、タンパク質と共有しているために、タンパク質と共通の生物学的特性であって、タンパク質活性を含む生物学的特性を有しうる。この技法は、小型のペプチドおよび大型のポリペプチドの断片の作製において、特に有用である。断片は、例えば、天然ポリペプチドに対する抗体を作出するのに有用である。こうして、断片を、治療用化合物のスクリーニング、および抗体を開発するための免疫学的工程において、天然の精製タンパク質の、生物学的に活性の代替物、または免疫学的代替物として援用することができる。本発明のポリペプチドおよびタンパク質は代替的に、所望のポリペプチドまたはタンパク質を発現させるように変更された細胞から精製することもできる。本明細書で使用される、細胞が、遺伝子操作を介して、それが通常産生しないか、または通常低レベルで産生する、ポリペプチドまたはタンパク質を産生するように製作されうる場合、細胞は、所望のポリペプチドまたはタンパク質を発現させるように変更されているということができる。当業者は、本発明のポリペプチドまたはタンパク質のうちの1つを産生する細胞を作出するために、組換え配列または合成配列を、真核細胞または原核細胞に導入し、発現させるための手順を、たやすく適応させることができる。
【0137】
本発明はまた、ポリペプチドを作製するための方法であって、適切な培養培地中の、宿主細胞の培養物を増殖させるステップと、タンパク質を、細胞または細胞を増殖させる培養物から精製するステップとを含む方法にも関する。例えば、方法は、ポリペプチドを作製するための工程であって、本発明のポリヌクレオチドを含む、適切な発現ベクターを含有する宿主細胞を、コードされるポリペプチドの発現を可能とする条件下で培養しうる工程を含みうる。ポリペプチドは、培養物から、好都合には、培養培地から回収することもでき、宿主細胞から調製された溶解物から回収し、さらに精製することもできる。好ましい実施形態は、このような工程により作製されるタンパク質が、A2Mなど、タンパク質の全長形態の場合もあり、成熟形態の場合もある実施形態を含む。代替的な方法では、ポリペプチドまたはタンパク質を、ポリペプチドまたはタンパク質を天然で産生する、細菌細胞から精製することもできる。当業者は、本発明の単離ポリペプチドまたは単離タンパク質のうちの1つを得るために、ポリペプチドおよびタンパク質を単離するための公知の方法にたやすく従うことができる。これらは、免疫組織化学、HPLC、サイズ除外クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および免疫アフィニティークロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない。例えば、Scopes、「Protein Purification: Principles and Practice」、Springer-Verlag(1994年);Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」;Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」を参照されたい。生物学的活性または免疫学的活性を保持するポリペプチド断片は、約100を超えるアミノ酸を含む断片、または約200を超えるアミノ酸を含む断片、および特異的タンパク質ドメインをコードする断片を含む。精製ポリペプチドを、当技術分野で周知のin vitro結合アッセイにおいて使用して、ポリペプチドに結合する分子を同定することができる。これらの分子は、低分子、コンビナトリアルライブラリーに由来する分子、抗体、または他のタンパク質を含むがこれらに限定されない。次いで、結合アッセイにおいて同定された分子を、アンタゴニスト活性またはアゴニスト活性について、当技術分野で周知の、ex vivo組織培養物モデルまたはin vivo動物モデルにおいて調べることができる。略述すると、分子を、複数の細胞培養物中または動物内で滴定し、次いで、細胞もしくは動物の死、または動物もしくは細胞の生存の延長について調べる。
【0138】
次いで、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、およびイオン交換クロマトグラフィーなど、公知の精製過程を使用して、結果として得られる、発現させた変異体A2Mポリペプチドを、培養物、例えば、培養培地、または細胞抽出物から精製することができる。変異体A2Mポリペプチドの精製はまた、タンパク質に結合する薬剤を含有するアフィニティーカラム;コンカナバリンA-アガロース、ヘパリン-Toyopearl(商標)、もしくはCibacron blue 3GA Sepharose(商標)などのアフィニティー樹脂上の、1または複数のカラムステップ;フェニルエーテル、ブチルエーテル、もしくはプロピルエーテルなどの樹脂を使用する、疎水性相互作用クロマトグラフィーを伴う、1または複数のステップ;またはイムノアフィニティークロマトグラフィーも含みうる。代替的に、本発明のタンパク質はまた、精製を容易とする形態でも、発現させることができる。例えば、タンパク質は、マルトース結合性タンパク質(MBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、またはチオレドキシン(TRX)の融合タンパク質などの融合タンパク質として発現させることもでき、Hisタグとの融合タンパク質として発現させることもできる。このような融合タンパク質の発現および精製のためのキットは、それぞれ、New England BioLab(Beverly、Mass.)、Pharmacia(Piscataway、N.J.)およびInvitrogenから市販されている。タンパク質はまた、エピトープでタグ付けし、その後、このようなエピトープを指向する特異的抗体を使用することにより精製することもできる。このような1つのエピトープ(「FLAG(登録商標)」)は、Kodak(New Haven、Conn.)から市販されている。最後に、疎水性RP-HPLC媒質、例えば、ペンダントメチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲルを援用する、1または複数の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)ステップを援用して、タンパク質をさらに精製することができる。前出の精製手順の任意の組合せはまた、実質的に同種の、単離または精製組換え変異体A2Mポリペプチドをもたらすのにも援用することができる。精製された変異体A2Mポリペプチドは、他の哺乳動物タンパク質を実質的に含まないことが可能であり、本発明に従い、「単離タンパク質」として規定することができる。
【0139】
治療法
当技術分野で公知の任意の方法を使用して、慢性創傷を処置することもでき、慢性創傷を引き起こしうる病態を処置することもできる。方法は、神経障害性潰瘍、褥瘡性潰瘍、静脈性潰瘍、もしくは糖尿病性潰瘍、または感染性創傷など、哺乳動物における慢性創傷の処置を含みうる。方法は、A2M組成物の、創傷への適用を含みうる。A2M組成物およびA2M製剤を、プロテアーゼを阻害するために使用することができる。A2M組成物を使用して、FACの形成を防止するか、遅延させるか、または変更することができる。変異体A2Mは、プロテアーゼの阻害において、野生型A2Mポリペプチドより効果的であることが可能であり、半減期が長いか、クリアランス係数が緩徐であるか、またはこれらの任意の組合せを示す。
【0140】
一部の実施形態では、創傷は、褥瘡性潰瘍、床ずれ、下肢潰瘍、深部胸骨創傷、術後創傷、体幹領域の不応性術後創傷、大伏在静脈採取後における、大伏在静脈への創傷、静脈性潰瘍、または裂肛である。下肢潰瘍を伴う実施形態では、潰瘍は、糖尿病性患者において存在しうる。他の実施形態では、創傷は、静脈性潰瘍、床ずれ、または術後潰瘍である。
【0141】
A2M組成物は、創傷包帯上に含むことができる。乾性創傷包帯および含水創傷包帯、すなわち、湿性創傷包帯、ならびにこれらの送達系を使用することができるが、また、有効成分、創傷および皮膚疾患、好ましくは、慢性創傷の処置のためのそれらの使用にも適しうる。創傷包帯は、慢性創傷に、少なくとも1時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、または少なくとも72時間にわたり適用することができる。処置は、数日間、数週間、または数カ月間にわたり延長することができ、慢性創傷に必要な場合、適切であれば、包帯を交換することができる。
【0142】
本発明の別の態様は、本発明の組成物および包帯を含む製品に関する。一部の実施形態では、包帯は、乾性包帯、保湿バリア包帯、または生物活性包帯である。乾性包帯を伴う実施形態では、包帯は、ガーゼ、絆創膏、非接着性メッシュ、膜、フォイル、フォーム、または組織接着性でありうる。保湿バリア包帯を伴う実施形態では、包帯は、ペースト、クリーム、軟膏、不透膜もしくは半透膜もしくはフォイル、ハイドロコロイド、ハイドロゲル、またはこれらの組合せでありうる。生物活性包帯を伴う実施形態では、包帯は、抗微生物性包帯でありうる。例えば、創傷包帯は、その上にA2M組成物をコーティングした、織布、不織布、または編布の場合もあり、潰瘍部位における持続放出のために、A2M組成物を分散させた、生体吸収性ポリマーフィルムまたはスポンジの場合もある。
【0143】
疼痛が由来しうる部位を、A2Mの存在により同定できたら、当技術分野で公知の、任意の方法を、疼痛を処置するか、または疼痛を引き起こしうる病態を処置するのに使用することができる。例えば、神経根障害または椎間板原性疼痛または椎間関節痛を診断した場合は、脊椎痛を処置するための、任意の数の、当技術分野で公知の方法を適用して、患者を処置することができる。適切な方法は、椎弓切開術、椎弓切除術、椎間板切除術、顕微鏡下椎間板切除術、経皮椎間板切除術、内視鏡下椎間板切除術、レーザー椎間板切除術、椎間孔拡大術(foramenotomy)、固定、増殖療法、他の減圧術、装具を伴うかまたは伴わない、固定を伴う減圧を含むがこれらに限定されない。
【0144】
脊椎内の疼痛はまた、手術以外の標準的な方法であって、ステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬の投与を含む方法により処置することもできる。当技術分野では、非ステロイド性抗炎症(NSAID)薬が周知である。イブプロフェン、アスピリン、またはパラセタモールなどのNSAIDを含む、非ステロイド性薬剤を使用することができる。コルチゾール受容体に結合することにより炎症を低減する、グルココルチコイドなどのステロイドもまた、処置のために使用することができる。
【0145】
関節関連疼痛を処置するための、任意の数の、当技術分野で公知の方法を適用して、患者を処置することができる。適切な方法は、手術法を含み、手術以外の方法は、関節鏡下デブリドマン、またはステロイド性抗炎症薬もしくは非ステロイド性抗炎症薬の投与を含むがこれらに限定されない。
【0146】
本明細書で記載される組成物のうちのいずれかを、関節炎、炎症、靭帯傷害、腱傷害、骨傷害、軟骨変性、軟骨傷害、自己免疫疾患、背部痛、関節痛、関節変性、椎間板変性、脊椎変性、骨変性、またはこれらの任意の組合せの群から選択される、1または複数の状態を受けつつあるか、またはこれらの影響を受けやすい、ヒトまたは非ヒト動物における、1または複数のプロテアーゼの非特異的阻害を増強するために使用することができる。変異体A2Mポリペプチドを、動物に投与して、動物における、1または複数のプロテアーゼ活性を低減することができる。
【0147】
変異体A2Mポリペプチドを、プロテアーゼを阻害するために使用することができる。変異体A2Mポリペプチドを、疼痛および炎症状態および疾患の処置のために使用することができる。変異体A2Mポリペプチドを使用して、FACの形成を防止するか、遅延させるか、または変更することができる。変異体A2Mは、プロテアーゼの阻害において、野生型A2Mポリペプチドより効果的であることが可能であり、半減期が長いか、クリアランス係数が緩徐であるか、またはこれらの任意の組合せを示す。
【0148】
変異体A2Mポリペプチドは、非経口(筋内注射、腹腔内注射、静脈内(IV)注射、または皮下注射)、経皮(受動、またはイオントフォレーシスもしくは電気穿孔を使用する)、または経粘膜(経鼻、膣内、直腸内、または舌下)、経口、関節内、または吸入の投与経路による投与のための変異体A2Mポリペプチドでありうる。変異体A2Mポリペプチドはまた、生体内分解性インサート、従来型ステント(BMS)、または薬物溶出型ステント(DESもしくはコーティング型ステント、または薬物含有ステント)を使用して投与することもでき、椎間板、硬膜外腔、および椎間関節など、脊椎の構造に直接送達することもでき、可動(diarthroidal)関節に直接送達することもできる。変異体A2Mポリペプチドは、各投与経路に適切な剤形で製剤化することができる。加えて、変異体A2Mポリペプチドは、腸内投与のために製剤化することもできる。
【0149】
変異体A2Mポリペプチドは、対象に、治療有効量で投与することができる。精密な投与量は、年齢、処置される傷害または病態、および実施されている処置などの対象依存的変数など、様々な因子に従い変動するであろう。個別の医師は、処置される患者を念頭に置いて、正確な投与量を選び出すことができる。投与量および投与は、十分なレベルの活性部分をもたらすか、または所望の効果を維持するように調整する。考慮に入れうる、さらなる因子は、疾患の重症度、生体の年齢、および生体の体重またはサイズ;食餌、投与時間および投与頻度、薬物の組合せ、反応感受性、および治療に対する忍容性/応答を含む。短期作用型医薬組成物が、毎日投与されるのに対し、長期作用型医薬組成物は、2、3~4日ごと、隔週、または2週間に1回投与される。特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、本発明の医薬組成物は、毎日1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ超の回数投与される。
【0150】
本明細書で開示される変異体A2Mポリペプチドなど、一部の組成物については、さらなる研究が行われるにつれて、多様な対象における多様な状態の処置に適切な投与量レベルに関する情報が現れ、当業者は、レシピエントの治療的コンテキスト、年齢、および全般的健康を考慮して、適正な用量を確認することが可能となろう。選択される投与量は、所望される処置の投与経路および持続期間に依存する。一般に、投与量レベルは、毎日体重1kg当たり0.1~40mgを含みうる。一般に、局所注射または局所注入では、用量は、組成物および投与部位に応じて、低量であることが可能である。投与量レベルは、約0.1~10mLの間の容量中、約1~500,000mgの間でありうる。例えば、投与量レベルは、約0.1~9mL、0.1~8mL、0.1~7mL、0.1~6mL、0.1~5mL、0.1~4mL、0.1~3mL、0.1~2mL、0.1~1mL、0.1~0.9mL、0.1~0.7mL、0.1~0.6mL、0.1~0.5mL、0.1~0.4mL、0.1~0.3mL、0.1~0.2mL、1~9mL、1~8mL、1~7mL、1~6mL、1~5mL、1~4mL、1~3mL、または1~2mLの間の容量中、約5~450mg、5~400mg、5~350mg、5~300mg、5~250mg、5~200mg、5~150mg、5~100mg、5~500mg、5~25mg、100~150mg、100~200mg、100~250mg、100~300mg、100~350mg、100~400mg、100~450mg、または100~500mgの間でありうる。多様な変異体A2Mポリペプチドもしくは変異体A2M核酸またはこれらの断片の通常の投与量は、投与経路に応じて、約1~500,000マイクログラムの間の任意の数から、約50グラムの総用量まで変動させることができる。所望の用量は、例えば、250μg、500μg、1mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2g、3g、4g、5、6g、7g、8g、9g、10g、20g、30g、40g、および50gを含む。
【0151】
変異体A2Mポリペプチドまたはその断片の用量を投与して、0.1μM~500mMの間の任意の数である、組織濃度もしくは血中濃度またはこれらの両方をもたらすことができる。所望の用量は、1~800μMの間の任意の数である、組織濃度もしくは血中濃度またはこれらの両方をもたらす。好ましい用量は、10μM~約500μMの間の任意の数を超える、組織濃度または血中濃度をもたらす。好ましい用量は、例えば、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μM、100μM、110μM、120μM、130μM、140μM、145μM、150μM、160μM、170μM、180μM、190μM、200μM、220μM、240μM、250μM、260μM、280μM、300μM、320μM、340μM、360μM、380μM、400μM、420μM、440μM、460μM、480μM、および500μMである、組織濃度もしくは血中濃度またはこれらの両方を達成するのに要請される有効成分の量である。800μMを超える組織濃度をもたらす用量は、好ましくないが、本発明の一部の実施形態と共に使用することができる。血中レベルにより測定される、組織内の安定濃度を維持するように、変異体A2Mポリペプチドまたはその断片の持続注入もまた、提供することができる。
【0152】
変異体A2Mポリペプチドは、水溶液中の、非経口注射、椎間板内注射、椎間関節内注射、髄腔内注射、硬膜外注射、または関節注射により投与することができる。本明細書の変異体A2Mポリペプチドは、対象における疼痛源でありうる、脊椎領域または関節領域に、直接投与することができる。例えば、フィブロネクチン-アグリカン複合体が、硬膜外腔内で検出される場合、プロテアーゼを阻害するか、またはFACの形成を防止する、変異体A2Mポリペプチドを、直接的な注射により、硬膜外腔に投与することができる。代替的に、プロテアーゼを阻害するか、またはFACの形成を防止する、変異体A2Mポリペプチドを、フィブロネクチン-アグリカン複合体が、これらの腔内で検出される場合も、直接的な注射により、椎間板腔、椎間関節、または可動(diarthroidial)関節に投与することができる。一部の実施形態では、アグリカンは、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、およびニューロカンの、任意の自然発生の変異体およびスプライス変異体、ならびに異なる細胞型によるスプライシングに起因する、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、およびニューロカンの、任意の変異体を含みうる。一部の実施形態では、フィブロネクチンは、疾患または障害と関連する、約20の公知のスプライス変異体を含む、任意の自然発生のフィブロネクチン変異体、および異なる細胞型による異なるスプライシングに起因する、フィブロネクチン変異体を含みうる。
【0153】
組成物または製剤または薬剤はまた、懸濁液またはエマルジョンの形態でもありうる。一般に、有効量のペプチドまたはポリペプチドを含む医薬組成物が提供されるが、医薬組成物は任意選択で、薬学的に許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤(solubilizer)、乳化剤、アジュバント、および/または担体を含む。このような組成物は、希釈剤である滅菌水、多様な緩衝液内容物(例えば、トリス-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、およびイオン強度の、緩衝生理食塩液を含み、任意選択で、洗浄剤および可溶化剤(solubilizing agent)(例えば、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム)、および保存剤(例えば、チメロサール(Thimersol)、ベンジルアルコール)、およびバルキング物質(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含む。非水性溶媒または非水性媒体の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびトウモロコシ油などの植物油、ゼラチン、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。製剤は、凍結乾燥させ、使用直前に、再溶存または再懸濁させることができる。製剤は、例えば、細菌保持フィルターを介する濾過により滅菌処理することもでき、滅菌剤を、組成物に組み込むことにより滅菌処理することもでき、組成物を照射することにより滅菌処理することもでき、組成物を加熱することにより滅菌処理することもできる。
【0154】
変異体A2Mポリペプチドはまた、制御放出製剤によっても投与することができる。制御放出型ポリマー性デバイスは、ポリマー性デバイス(ロッド、シリンダー、フィルム、またはディスク)または注射(マイクロ粒子)の植込みに続く、長期全身放出のために施すことができる。マトリックスは、ペプチドを、固体ポリマーマトリックス内に分散させた、マイクロスフェア、またはコアが、ポリマーシェルとは異なる材料であることが可能であり、ペプチドを、液体の性質の場合もあり、固体の性質の場合もあるコア内に分散または懸濁させうる、マイクロカプセルなど、マイクロ粒子の形態でありうる。本明細書で具体的に規定されない限りにおいて、マイクロ粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルは、互換的に使用される。代替的に、ポリマーは、ナノメートル~4センチメートルの範囲の、薄層スラブまたは薄膜として成形される場合もあり、粉砕または他の標準的な技法により作製される粉末の場合もあり、なおまたはハイドロゲルなどのゲルの場合もある。
【0155】
本明細書で記載される任意の組成物の送達には、非生体分解性マトリックスを、使用することもでき、生体分解性マトリックスを、使用することもできるが、生体分解性マトリックスが好ましい。これらは、天然ポリマーの場合もあり、合成ポリマーの場合もあるが、分解プロファイルおよび放出プロファイルの良好な特徴付けのために、合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、放出が所望されうる期間に基づき選択することができる。ある場合には、直線的放出が最も有用でありうるが、他の場合には、パルス放出または「バルク放出」が、より有効な結果をもたらしうる。ポリマーは、ハイドロゲル(重量で、水の、最大で約90%を吸収することが典型的である)の形態であることが可能であり、任意選択で、多価イオンまたはポリマーにより架橋することができる。
【0156】
マトリックスは、溶媒の蒸発、スプレー乾燥、溶媒による抽出、および当業者に公知の他の方法を介して形成することができる。生体分解性マイクロスフェアは、例えば、MathiowitzおよびLanger, J.、Controlled Release、5巻:13~22頁(1987年);Mathiowitzら、Reactive Polymers、6巻:275~283頁(1987年);ならびにMathiowitzら、J. Appl. Polymer Sci.、35巻:755~774頁(1988年)により記載されている通り、薬物送達のためのマイクロスフェアを製作するために開発された方法のうちのいずれかを使用して調製することができる。
【0157】
デバイスを、植込み領域または注射領域を処置する局所放出であって、全身の処置または全身送達のための投与量よりはるかに少量でありうる投与量を送達することが典型的である局所放出のために製剤化することができる。これらは、皮下、筋肉、脂肪に植え込むか、または注射することもでき、嚥下することもできる。
【0158】
変異体A2Mポリペプチドは、慢性創傷などの状態または疾患の処置において使用することができる。例えば、状態または疾患は、腱状態、靭帯状態、関節傷害、脊椎傷害、または炎症、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、多発性硬化症、先天性アンチトロンビン欠損症、関節リウマチ、多様な腫瘍の増殖、冠動脈虚血症または虚血肢、網膜症、ならびに腫瘍およびウイルス感染に対する免疫応答の調節でありうる。他の状態または疾患は、尋常性座瘡、アルツハイマー病、関節炎、喘息、座瘡、アレルギーおよび過敏症(sensitivity)、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化、気管支炎、がん、心臓炎、クローン病、大腸炎、慢性疼痛、肝硬変、セリアック病、慢性前立腺炎、皮膚炎、憩室炎、認知症、皮膚炎、糖尿病、ドライアイ、浮腫、気腫、湿疹、線維筋痛症、胃腸炎、歯肉炎、糸球体腎炎、過敏症(hypersensitivity)、肝炎、全身性エリテマトーデス、胃酸の逆流/胸やけ、心疾患、肝炎、高血圧、インスリン抵抗性、間質性膀胱炎、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群(IBS)、関節痛/関節炎/関節リウマチ、メタボリック症候群(症候群X)、筋炎、腎炎、肥満、骨減少症、骨粗鬆症、骨盤炎症性疾患、パーキンソン病、歯周病、多発動脈炎、多発性軟骨炎、乾癬、再灌流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、副鼻腔炎、シェーグレン症候群、痙攣性結腸、全身性カンジダ症、腱炎、移植片拒絶、潰瘍性結腸炎(ulcerative colitcis)、尿路感染症、血管炎、および膣炎を含む。
【0159】
一部の実施形態では、変異体A2Mポリペプチドは、がんの処置において使用することができる。例えば、変異体A2Mポリペプチドは、注射または別の適切な手段により、固形腫瘍など、腫瘍に、直接投与することができる。
【0160】
自己免疫疾患は、個体自身の組織もしくは臓器から生じ、これらを指向する疾患もしくは障害、またはこれらの共分離もしくは症状、またはこれらから結果として生じる状態でありうる。これらの自己免疫障害および炎症性障害の多くでは、高ガンマグロブリン血症、自己抗体レベルの上昇、組織内の抗原-抗体複合体の沈着、コルチコステロイド処置または免疫抑制処置による利益、および罹患組織内のリンパ球凝集物を含むがこれらに限定されない、いくつかの臨床マーカーおよび検査室マーカーが存在しうる。B細胞介在型自己免疫疾患に関する、いかなる1つの理論にも限定されずに述べると、B細胞は、自己抗体の産生、免疫複合体の形成、樹状細胞およびT細胞の活性化、サイトカインの合成、直接的なケモカインの放出、および異所性リンパ新生の病巣の供給を含む、膨大な機構経路を介して、ヒト自己免疫疾患における病理作用を裏付けると考えられている。
【0161】
これらの経路の各々は、異なる程度で、自己免疫疾患の病態に参与しうる。「自己免疫疾患」は、臓器特異的疾患(すなわち、免疫応答は、内分泌系、造血系、皮膚、心肺系、消化器および肝臓系、腎臓系、甲状腺、耳、神経筋系、中枢神経系などの臓器系を特異的に指向しうる)の場合もあり、複数の臓器系に影響を及ぼしうる、全身疾患(例えば、SLE、RA、多発筋炎など)の場合もある。好ましいこのような疾患は、自己免疫性リウマチ性障害(例えば、RA、シェーグレン症候群、強皮症、SLEおよびループス腎炎などのループス、多発筋炎、皮膚筋炎、寒冷グロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、および乾癬性関節炎など)、自己免疫性消化器/肝臓障害(例えば、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病)、自己免疫性胃炎および悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、およびセリアック病など)、血管炎(例えば、ANCA陰性血管炎、ならびにチャーグ-シュトラウス血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、および顕微鏡的多発血管炎を含む、ANCA関連血管炎など)、自己免疫性神経障害(例えば、MS、眼球クローヌスミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、および自己免疫性多発ニューロパチーなど)、腎臓障害(例えば、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、およびバージャー病など)、自己免疫性皮膚障害(例えば、乾癬、蕁麻疹、蕁麻疹、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、および皮膚性エリテマトーデスなど)、血液障害(例えば、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後紫斑病、および自己免疫性溶血性貧血など)、アテローム性動脈硬化、ブドウ膜炎、自己免疫性難聴(例えば、内耳疾患および聴覚喪失など)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植、および自己免疫性内分泌障害(例えば、インスリン依存性糖尿病(IDDM)などの糖尿病性関連自己免疫疾患、アジソン病、および自己免疫性甲状腺疾患(例えば、グレーブス病および甲状腺炎)など)を含む。より好ましくは、このような疾患は、例えば、RA、潰瘍性大腸炎、ANCA関連血管炎、ループス、MS、シェーグレン症候群、グレーブス病患、IDDM、悪性貧血、甲状腺炎、および糸球体腎炎を含む。
【0162】
変異体A2Mポリペプチドは、1もしくは複数の関節または脊椎への送達に適しうる。1または複数の関節は、1または複数の滑膜関節、可動関節、半関節、不動関節、恥骨結合関節、または軟骨関節でありうる。関節は、手首関節、脊椎関節、脊柱関節、頸部関節、肩関節、肘関節、手根骨関節、中手骨関節、指関節、肩鎖関節、胸鎖関節、肩甲骨関節、肋骨関節、仙腸関節、股関節、膝関節、足関節/足根骨関節、手足の関節、腋窩関節、または中足骨関節でありうる。
【0163】
関節とは、任意の可動関節(また滑膜関節とも呼ばれる)を指す場合がある。関節は、骨、関節軟骨、関節包、滑膜組織表層、または関節包内の潤滑性滑液を含有する任意の関節でありうる。関節の軟骨成分(cartilage component)は、軟骨成分(chondral component)でありうる。膝の成分は、半月板成分でありうる。一部の実施形態では、滑膜関節は、肩関節もしくは手首関節もしくは足首関節もしくは股関節もしくは肘関節、または手指もしくは足指の小型の関節でありうる。関節は、正常関節または対照関節でありうる。正常関節または対照関節は、対象に対する疼痛の供給源として重要でない関節でありうる。正常関節内に存在しうる、疼痛のレベルは、患者が医療ケアを求める程度には、機能または患者の生活の質に影響を及ぼしえないことが典型的である。関節試料または関節に由来する試料は、関節に由来する組織試料または流体試料であって、ex vivoおよびin vivoにおける滑液試料ならびに関節洗浄液または組織洗浄液を含むがこれらに限定されない試料でありうる。関節試料または関節に由来する試料は、生物学的試料でありうる。
【0164】
変異体A2Mポリペプチドは、本開示の状態または疾患と関連する疼痛などの疼痛の処置において使用することができる。
【0165】
疼痛は、神経根痛、神経根障害、神経根障害性疼痛、および坐骨神経痛であることが可能であり、1または複数の刺激された腰椎神経根の経路に沿った、脊椎神経根レベルまたは「ラディック」から発する、四肢の放散痛でありうる。坐骨神経痛の場合、疼痛は、L4、L5、および/またはL6に由来する場合もあり、存在する場合、移行椎に由来する場合もあり、かつ/または坐骨神経を構成する、仙腸部の脊椎神経根に由来する場合もある。放散痛はまた、l3領域内、l2領域内、またはl1領域内の、上部腰椎椎間板ヘルニアに由来する可能性もあり、頸部椎間板ヘルニア、頸部神経根刺激、または頸部椎間板変性の場合、任意の頸部神経根に由来する可能性もある。放散痛は、椎間関節または他の脊椎の構造から生じる疼痛であって、「関連」痛として分類されうる疼痛とは異なりうる。放散痛はまた、L3領域内、L2領域内、またはL1領域内の、上部腰椎椎間板ヘルニアに由来する可能性もあり、頸椎領域に由来する可能性もある。
【0166】
疼痛は、椎間板原性疼痛であることが可能であり、椎間板から発生する脊椎関連疼痛でありうる。椎間板は、髄核からの水分補給の喪失と関連して、機能性の低減を被る。機能性の低減は、線維輪内の損傷と符合する。この脆弱化は、椎間板の膨隆、突出、脱出、遊離などの解剖学的病変をもたらしうる。この脆弱化は、椎間板内容物の漏出から生じる、可能な生化学的病変ももたらす場合があり、これは、背部痛または前述の化学的神経根障害において顕在化しうる。
【0167】
疼痛は、椎間関節痛または椎間関節性疼痛であることが可能であり、軟骨、関節包、半月体、および滑膜を伴い、対合した、真性滑膜性関節である、1つの椎間関節(a facet joint)、複数の椎間関節(facet jointsまたはzygapophysial joints)から発生する疼痛でありうる。脊椎痛または脊椎関連疼痛は、椎間板性疼痛、椎間関節性疼痛、および神経根障害性疼痛を含むがこれらに限定されない。
【0168】
疼痛は、急性疼痛であることが可能であり、最大で6カ月間、例えば、5カ月間、4カ月間、3カ月間、2カ月間、4週間、3週間、2週間、1週間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、もしくは1日間、またはそれ未満にわたり持続する疼痛でありうる。慢性疼痛は、持続期間が6カ月間より長い疼痛でありうる。
【0169】
本明細書で記載される任意の対象を、本明細書で記載される組成物のうちのいずれかで処置することができる。一部の実施形態では、対象は、状態または疾患を有すると診断される前に、またはこの後で、米国特許第7,709,215号および米国公開第2010/0098684A1号において記載された方法などにより、状態または疾患を有すると診断することができる。一部の実施形態では、対象は、状態または疾患を有すると診断される前に、またはこの後で、任意の本明細書で記載される組成物により、処置することができる。
【0170】
対象
対象は、脊椎内または関節内の疼痛を提示する、任意の対象を含みうる。一部の実施形態では、対象を、A2Mの検出について選択することができる。好ましくは、対象は、ヒトでありうる。対象は、椎間板性疼痛、椎間関節性疼痛、または神経根障害性疼痛を含むがこれらに限定されない、脊椎と関連する疼痛など、任意の疼痛を受けている可能性がある。
【0171】
対象は、骨、関節軟骨、または滑膜組織表層を含むがこれらに限定されない、関節の、任意の解剖学的構造と関連する疼痛を受けていることが疑われる可能性がある。関節は、大型可動(滑膜)関節(例えば、膝、股関節、肩)、小型可動(滑膜)関節(例えば、肘関節、手首関節、足首関節、脊椎の椎間関節(zygapophysial jointsまたはfacet joints))、および半関節(例えば、仙腸関節、胸鎖関節、顎関節(「TMJ」))を含みうるがこれらに限定されない。対象は、急性関節関連疼痛を受けている場合もあり、慢性関節関連疼痛を患う場合もある。これらは、変性疾患(例えば、骨関節炎)、筋膜性疼痛症候群、炎症性関節炎もしくは結晶性関節炎、または他の筋腱付着部症、腱/靭帯傷害もしくは腱/靭帯変性、または筋骨格系の外部の軟組織病態と関連しうる。
【0172】
一部の実施形態では、対象は、30もしくは25週間またはそれ未満にわたり、関節関連疼痛または脊椎関連疼痛を受けてきた可能性がある。一部の実施形態では、対象は、20、15、10、8、もしくは6週間、またはそれ未満にわたり、関節関連疼痛または脊椎関連疼痛を受けてきた可能性がある。対象は、いずれの性別の場合もあり、いずれの年齢の場合もある。対象は、急性疼痛を受けている場合もあり、慢性疼痛を受けている場合もある。
【0173】
対象は、ヒトの場合もあり、非ヒト動物の場合もある。例えば、動物は、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウマまたはヤギなどの哺乳動物でありうる。対象は、ウイルス、細菌、マイコプラズマ、寄生虫、真菌、もしくは植物、または哺乳動物、例えば、ヒトなどの動物でありうる。
【0174】
一部の実施形態では、対象を、本明細書で記載される組成物のうちのいずれかによる処置を必要とすると診断することができる。例えば、対象を、A2Mが濃縮された試料またはFACの形成を防止しうる薬剤による処置を必要とすると診断することができる。
【0175】
試料
本明細書で記載される組成物のうちのいずれかは、生物学的試料に由来しうる。生物学的試料はまた、組織学を目的として採取された生検試料、凍結切片などの組織切片試料、および洗浄液試料も含みうる。生物学的試料は、ウイルス、細菌、マイコプラズマ、寄生虫、真菌、または植物に由来しうる。生物学的試料は、哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、齧歯動物、ヤギ科動物、ウシ科動物、ヒツジ科動物、ウマ科動物、イヌ科動物、ネコ科動物、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、またはヤギなどの動物に由来しうる。
【0176】
生物学的試料は、組織試料またはヒト体液などの体液でありうる。例えば、体液は、血液、血清、血漿、洗浄液、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー腺液、尿道球腺液、スキーン腺液、汗、涙液、嚢胞液、胸水、腹水、心膜液、リンパ、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、経血、膿、皮脂、膣分泌物、粘膜分泌物、便水分、膵液、副鼻腔洗浄液、気管支肺吸引物、卵割腔液、または臍帯血でありうる。生物学的試料のうちの1または複数は、幹細胞、未分化細胞、分化細胞、または罹患対象もしくは特異的状態を有する対象に由来する細胞などの細胞を含みうる。生物学的試料は、対象の関節に由来する血液、細胞、細胞の集団、多量の組織、流体、または洗浄物でありうる。生物学的試料は、軟骨組織に由来する細胞を含む場合もあり、細胞を含まない場合もある。生物学的試料は、アルブミンまたはIgGなどであるがこれらに限定されない、一般的な血清タンパク質を実質的に枯渇させている可能性がある。枯渇は、濾過、分画、またはアフィニティー精製を含みうる。
【0177】
生物学的試料は、例えば、対象から採血することにより、または細針吸引もしくは針生検を使用するなど、任意の非侵襲的手段により収集することができる。代替的に、生物学的試料は、例えば、手術時の生検を含む、侵襲的方法により収集することもできる。
【0178】
生物学的試料は、疾患特異的タンパク質または状態特異的タンパク質を含みうる。生物学的試料は、疾患または状態を有する対象に由来する場合もあり、疾患または状態を伴わない対象に由来する場合もある。一部の実施形態では、生物学的試料は、疾患または状態を有すると診断された対象に由来する場合もあり、疾患または状態を有するかまたは伴わないと診断されていない対象に由来する場合もある。診断は、本明細書で記載される方法のうちのいずれかにより下すことができる。生物学的試料は、一時点における対象に由来することが可能であり、別の生物学的試料は、後の時点または先の時点における対象に由来しうるが、この場合、対象は、同じ対象の場合もあり、異なる対象の場合もある。例えば、対象は、疾患または状態を有する場合もあり、疾患または状態を有すると診断されている場合もあり、試料は、疾患または状態が進行するにつれて採取することができる。生物学的試料は、処置前の対象に由来することが可能であり、別の生物学的試料は、処置後の対象に由来しうるが、この場合、対象は、同じ対象の場合もあり、異なる対象の場合もある。生物学的試料は、処置に対して非応答性の対象に由来することが可能であり、別の生物学的試料は、処置に対して応答性の対象に由来しうる。生物学的試料は、同じ種に由来する場合もあり、異なる種に由来する場合もある。1または複数の生物学的試料は、同じ対象に由来する場合もあり、1または複数の他の生物学的試料を得た、異なる対象に由来する場合もある。
【0179】
脊椎試料または脊椎に由来する試料は、脊椎に由来する組織もしくは流体、または脊椎に添加された組織もしくは流体(洗浄液)の試料であって、脊椎椎間板試料、硬膜外試料、および椎間関節試料を含むがこれらに限定されない試料でありうる。脊椎試料または脊椎に由来する試料は、生物学的試料でありうる。任意の数の、当技術分野で公知の方法を使用して、炎症バイオマーカーを検出するために、試料を脊椎から取り出すことができる。これらの方法は、硬膜外腔、椎間板腔、および椎間関節腔から試料を得るための方法を含むがこれらに限定されない。任意の数の、当技術分野で公知の方法を使用して、炎症バイオマーカーを検出するために、関節試料を得ることができる。適切な方法は、経皮吸引もしくは切開吸引、生検、または洗浄を含むがこれらに限定されない。
【0180】
本発明の方法は、1または複数のバイオマーカーのアッセイを可能とする、任意の種類の生物学的試料についての研究に適用することができる。生物学的試料は、対象から収集された、新鮮な試料または凍結試料の場合もあり、診断、処置、および/または転帰歴が公知のアーカイブ試料の場合もある。
【0181】
本発明の方法は、試料の加工を伴わないか、または試料の加工を限定的とする、生物学的試料自体に対して実施することができる。本発明の方法は、単一細胞レベルで(例えば、生物学的試料からの細胞の単離)実施することができる。組織についての代表的サンプリングを得るために、複数の生物学的試料を、同じ組織/身体部分から採取することができる。
【0182】
本明細書で記載される方法のうちのいずれかは、生物学的試料から調製されたタンパク質抽出物に対して実施することができる。方法はまた、膜タンパク質、核タンパク質、および細胞質ゾルタンパク質のうちの1または複数を含有する抽出物に対しても実施することができる。当技術分野では、タンパク質抽出法が周知である(例えば、「Protein Methods」、D. M. Bollagら、2版、1996年、Wiley-Liss;「Protein Purification Methods: A Practical Approach」、E. L. HarrisおよびS. Angal(編)、1989年;「Protein Purification Techniques: A Practical Approach」、S. Roe、2版、2001年、Oxford University Press;「Principles and Reactions o/Protein Extraction, Purification, and Characterization」、H. Ahmed、2005年、CRC Press: Boca Raton、Fla.を参照されたい)。多数の異なる多目的のキットを使用して、タンパク質を、体液および組織から抽出することができ、これらは、例えば、BioRad Laboratories(Hercules、Calif)、BD Biosciences Clontech(Mountain View、Calif.)、Chemicon International,Inc.(Temecula、Calif)、Calbiochem(San Diego、Calif.)、Pierce Biotechnology(Rockford、Ill.)、およびInvitrogen Corp.(Carlsbad、Calif.)から市販されている。タンパク質抽出物を得た後で、タンパク質マーカーのシグナルの定量化を可能とするために、抽出物のタンパク質濃度を、対照試料の値と同じである値に照らして、標準化することができる。このような標準化は、光度法もしくは分光法またはゲル電気泳動を使用して行うことができる。
【0183】
本明細書で記載される方法のうちのいずれかは、生物学的試料から抽出された核酸分子に対して実施することができる。例えば、RNAを、解析の前に試料から抽出することができる。当技術分野では、RNA抽出法が周知である(例えば、J. Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、1989年、2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor、N.Y.を参照されたい)。体液または組織からRNAを単離する大半の方法は、RNAアーゼを、迅速かつ効果的に不活化させるタンパク質変性剤の存在下における、組織の破壊に基づく。次いで、単離された全RNAは、タンパク質夾雑物からさらに精製し、選択的エタノール沈殿、フェノール/クロロホルム抽出に続く、イソプロパノール沈殿または塩化セシウム、塩化リチウム、もしくはセシウムトリフルオロ酢酸塩による勾配遠心分離を介して濃縮することができる。キットもまた、RNA(すなわち、全RNAまたはmRNA)を、体液または組織から抽出するのに利用可能であり、これらは、例えば、Ambion,Inc.(Austin、Tex.)、Amersham Biosciences(Piscataway、N.J.)、BD Biosciences Clontech(Palo Alto、Calif.)、BioRad Laboratories(Hercules、Calif.)、GIBCO BRL(Gaithersburg、Md.)、およびQiagen,Inc.(Valencia、Calif)から市販されている。
【0184】
抽出の後で、mRNAを、増幅し、cDNAに転写することができ、次いで、cDNAは、適切なRNAポリメラーゼによる、複数ラウンドにわたる転写のための鋳型として用いられうる。当技術分野では、増幅法が周知である(例えば、A. R. KimmelおよびS. L. Berger、「Methods Enzymol.」、1987年、152巻:307~316頁;J. Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、1989年、2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press: New York;「Short Protocols in Molecular Biology」、F. M. Ausubel(編)、2002年、5版、John Wiley & Sons;米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;および同第4,800,159号を参照されたい)。逆転写反応は、アンカリングされたオリゴ-dTプライマー、またはランダム配列プライマーなどの非特異的プライマーを使用して実行することもでき、モニタリングされる各プローブのRNAと相補的な標的特異的プライマーを使用して実行することもでき、熱安定性DNAポリメラーゼ(トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素またはモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素など)を使用して実行することもできる。
【0185】
他の実施形態
上記の明細書で言及された、全ての刊行物、特許、および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱しない限りにおいて、記載された本発明の方法およびシステムの、多様な改変および変形が明らかであろう。具体的実施形態との関係で、本発明について記載してきたが、特許請求される本発明は、このような具体的実施形態に、不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、本発明を実行するための、記載された方式の、多様な改変であって、当業者に明らかな改変は、本発明の範囲内にあることを意図する。他の実施形態も、特許請求の範囲内にある。
【0186】
そうでないことが説明されない限りにおいて、本明細書で使用される、全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。以下の参考文献:「The Merck Manual of Diagnosis and Therapy」、18版、Merck Research Laboratories刊、2006年(ISBN0-911910-18-2);Benjamin Lewin、「Genes IX」、Jones & Bartlett Publishing刊、2007年(ISBN-13:9780763740634);Kendrewら(編)、「Encyclopedia of Mol. Biology」、Blackwell Science Ltd.刊、1994年(ISBN0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編)、「Mol. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference」、VCH Publishers, Inc.刊、1995年(ISBN1-56081-569-8)は、本明細書で使用されうる方法および組成物についての実施形態を含有する。
【0187】
本開示の標準的手順は、例えば、それらの全てが、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Maniatisら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、USA(1982年);Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(2版)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、USA(1989年);Davisら、「Basic Methods in Molecular Biology」、Elsevier Science Publishing, Inc.、New York、USA(1986年);または「Methods in Enzymology: Guide to Molecular Cloning Techniques」、152巻、S. L. BergerおよびA. R. Kimmerl(編)、Academic Press Inc.、San Diego、USA(1987年));「Current Protocols in Molecular Biology」(CPMB)(Fred M. Ausubelら編、John Wiley and Sons, Inc.)、「Current Protocols in Protein Science」(CPPS)(John E. Coliganら編、John Wiley and Sons, Inc.)、「Current Protocols in Immunology」(CPI)(John E. Coliganら編、John Wiley and Sons, Inc.)、「Current Protocols in Cell Biology」(CPCB)(Juan S. Bonifacinoら編、John Wiley and Sons, Inc.)、「Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique」、R. Ian Freshney、Wiley-Liss刊、5版(2005年)、ならびに「Animal Cell Culture Methods」(「Methods in Cell Biology」57巻、Jennie P. MatherおよびDavid Barnes編、Academic Press、1版、1998年)において記載されている。
【0188】
以下の例は、本明細書で記載される、特定の方法、プロトコール、および組成物などに限定的であるものとみなされるべきではなく、それ自体、変動しうることを理解されたい。本明細書で使用される以下の用語は、特定の実施形態について記載することのみを目的とするものであり、本明細書で開示される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
【0189】
本明細書では、本明細書で開示される方法および組成物のために使用しうるか、これらと共に使用しうるか、これらを調製するために使用しうるか、またはこれらの生成物である、分子、材料、組成物、および成分が開示される。これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などを開示する一方で、これらの分子および化合物の、各多様な個別で総体的な組合せおよび順列についての具体的基準を、明示的に開示しえない場合、本明細書では、各組合せおよび各順列を具体的に企図し、これについて記載することが理解される。例えば、ヌクレオチドまたは核酸について開示し、論じ、ヌクレオチドまたは核酸を含むいくつかの分子に施しうる、いくつかの修飾について論じる場合、逆のことが具体的に指し示されない限りにおいて、ヌクレオチドまたは核酸および可能な修飾の、各組合せおよび各順列ならびにあらゆる組合せおよびあらゆる順列が、具体的に企図される。この概念は、開示される分子および組成物を製作し、使用する方法におけるステップを含むがこれらに限定されない、本出願の全ての態様に当てはまる。こうして、様々なさらなるステップを実施しうる場合、これらのさらなるステップの各々を、開示される方法の、任意の具体的実施形態または実施形態の組合せと共に実施することができ、このような組合せの各々が、具体的に企図され、開示されると考えるべきであることが理解される。
【0190】
当業者は、本明細書で記載される方法および組成物の具体的実施形態の多くの同等物を認識することもでき、ルーチンの実験のみを使用して、これらを確認することも可能である。このような同等物は、以下の特許請求の範囲により包摂されることを意図する。
【0191】
開示される方法および組成物は、変動しうるので、記載される、特定の方法、プロトコール、および試薬に限定されないことが理解される。また、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態について記載することのみを目的とするものであり、付属の特許請求の範囲のみにより限定されうる、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことも理解される。
【0192】
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される、全ての科学技術用語は、本明細書の文脈において、当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0193】
本明細書および付属の特許請求の範囲で使用される、単数形の「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、文脈により、そうでないことが明確に指示されない限りにおいて、複数形を含むことに注目されたい。こうして、例えば、「あるヌクレオチド」に対する言及は、複数のこのようなヌクレオチドを含み、「そのヌクレオチド」に対する言及とは、1または複数のヌクレオチド、および当業者に公知のそれらの同等物に対する言及である、などである。
【0194】
本明細書の文脈における「および/または」という用語は、それにより接続される項目の一方または両方が関与することを指し示すように理解されうるものとする。本明細書では、本開示の好ましい実施形態について示し、記載してきたが、当業者には、このような実施形態は、例のみを目的として提供されることが明らかでありうる。本開示から逸脱しない限りにおいて、当業者は今や、多数の変形、変化、および代用に想到しうる。本明細書で記載される、本開示の実施形態に対する、多様な代替物を、本開示の実施において援用しうることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は、本開示の範囲を規定するものであり、これらの特許請求の範囲の範囲内にある方法および構造、ならびにそれらの同等物は、その対象となることが意図される。
配列:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【実施例】
【0195】
(実施例1)
組換えA2Mを発現させる、HEK293クローンの作出および選択
組換えA2M野生型配列を、HEK293F細胞内で発現させた。Hek293F細胞を接着播種し、一晩にわたり付着させた。細胞に、XTreme Gene HP(Roche)およびDNAを、6uLの試薬:2ugのDNA比でトランスフェクトする。細胞を、5%のCO2および摂氏37度で、48時間にわたり増殖させる。トランスフェクションの48時間後、A2Mタンパク質を定量するELISAアッセイを介して、トランスフェクションの成功を確認するのに、培地試料を採取する。対数増殖期を経るように、細胞を分配し、選択用抗生剤(ブラストサイジン)を、10μg/mL(実験により決定された選択濃度)で添加する。全ての陰性対照細胞が死滅する(通常、約4~5日間)まで、細胞を、抗生剤中で選択する。この時点で、別の培地試料を採取して、この新たに確立されたプールが、やはりタンパク質を産生することを確認する。タンパク質の産生を確認したら、細胞を、7.5μg/mLのブラストサイジン(実験により決定された維持濃度)を伴う10cmのディッシュ1枚当たりの細胞約100個の密度で播種する。この播種密度は、各細胞が、個別のコロニーに増殖することを可能とするのに十分な間隔をあけて、細胞が配置されるように、十分に疎である。これらのコロニーを、クローニングシリンダー(Sigma)を使用して収集し、24ウェルプレート内に播種して、さらなる細胞増殖を可能とする。細胞が24ウェルプレート内でコンフルエントになったら、ELISAを、培地試料上で再度実施して、産生が最高度のクローンについてスクリーニングする。高発現クローンを選択し、A2Mの作製のために使用する。選び出されたクローンを拡大し、懸濁液に適応させた(
図3)。細胞をシェーカーフラスコ内に置く間に、培地を、無血清培地にゆっくり交換することにより、懸濁液への適応を完了した。培養物を懸濁させたら、細胞を培地から単純にスピンすることにより、タンパク質を収集することができる。A2Mを含有する上清を、A2Mについての精製にかけた。培地の単位容量当たりの高細胞数は、培地1ミリリットル当たりの高タンパク質濃度を結果としてもたらす。2回にわたるクロマトグラフィー法の後で、高純度試料を得た。約12mg/L(接着性プール)の収量が、典型的であった(
図15)。
【0196】
(実施例2)
ADAMTS-5およびADAMTS-4により誘導される軟骨の損傷の、A2Mによる阻害
ウシ軟骨外植片(BCE)を、500ng/mlのADAMTS-5またはADAMTS-4で、2日間にわたり、精製A2Mの3倍の系列希釈液と共に処理した(
図7Aおよび7B)。被験A2Mの濃度は、100、33.3、11.1、3.7、1.2、0.4μg/mLであった。変異体A2Mは、軟骨の異化を、濃度依存的に阻害した。500ng/mlのADAMTS-5の阻害についてのIC
50は、約7μg/mlのA2Mであると計算された(モル比を1:1とする)。最大阻害は、100μg/mlのA2Mにより、約90%と観察された(モル比を14:1とする)。A2Mは、アグリカンG3断片の形成(
図7Aおよび7B)およびFACの形成(
図9)を遮断することが示された。
【0197】
(実施例3)
APICの保持液と濾液との比較
新鮮な軟骨を、約7mg/mlのA2Mを含有するAPICで処置した。軟骨の異化は、APIC作製工程の1%v/vの保持液(>500kDaのサイズのタンパク質の濃度)により、効果的に遮断されたが、濾液(<500kDaのタンパク質を含有する)では、5%v/vであってもなお、遮断されなかった(
図10)。APICの軟骨保護効果は、用量依存的であった。濾液が、軟骨を、ADAMTS-5による異化から保護できなかったことは、APICが、自家血液の保護因子のうちの>99%を濃縮することを裏付ける。
【0198】
(実施例4)
骨関節炎モデルにおける、A2Mによる、軟骨の異化の阻害
新鮮な軟骨を、TNF-αまたはIL-1βで処理して、骨関節炎の病態と同様に、軟骨細胞が、プロテアーゼを分泌するように誘導した。軟骨の異化は、培養培地中の、硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)の増大として検出する。炎症促進性サイトカインによる処理は、軟骨の異化を誘導するが、変異体A2Mポリペプチドによる処置が、これを用量依存的に遮断する。
【0199】
(実施例5)
変異体A2Mで処置された単球の、サイトカインプロファイル
THP-1単球細胞を、変異体A2Mを伴うかまたは伴わずに、2日間にわたり処置し、細胞の活性化を、サイトカインおよび増殖因子の、培地への分泌によりモニタリングした。THP-1は、被験サイトカインプロファイルの変化を示さなかった(
図11)。同様の結果は、E6-1T細胞およびSW982線維芽細胞においても見られた。
【0200】
(実施例6)
タグ付けされた野生型A2M発現構築物の、設計および合成
野生型A2M前駆体タンパク質をコードするDNA配列(配列番号1)を、ヒトA2M前駆体タンパク質のRefSeqアミノ酸配列(RefSeq番号:NP_000005.2)(配列番号3)に基づき、GenScriptにより合成した。構築物内で使用されるコドンを、GenScriptにより、哺乳動物のコドン使用のバイアス、GC含量、CpGジヌクレオチド含量、mRNAの二次構造、クリプティックスプライシング部位、未成熟ポリアデニル化部位、内部のカイ部位およびリボソーム結合性部位、CpGアイランド陰性、RNA不安定性モチーフ、リピート配列、および制限エンドヌクレアーゼ部位について最適化した。融合タグ(DYKDDDDKGASHHHHHH)をコードする配列を、タンパク質配列の天然の末端に付加するのに続き、終止コドンを付加した。発現構築物の5’末端に、Kpn1制限部位を施し、3’末端に、BamH1制限部位を施した。この構築物を、pUC57ベクターにクローニングした。発現構築物をコードするインサートを、pUC57ベクターから、Kpn1およびBamH1による二重消化に続く、アガロースゲル電気泳動、および断片のゲル抽出を介して抽出した。このインサートを、pJ608哺乳動物発現ベクター(DNA 2.0)の、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの後にライゲーションし(
図23)、E.coliのGC10株(Genessee Scientific)に形質転換した。このステップを実施して、ベクターを維持し、繁殖させる。発現構築物の配列は、DNAシークェンシング(Genewiz)により検証した。
【0201】
(実施例7)
可変ベイト領域のための、アクセプター構築物の設計
ベイト領域をコードする配列を挟む、Xho1制限部位およびHindIII制限部位を、まず導入することにより、ベイト領域の配列のスイッチングを可能とするように、野生型発現構築物を突然変異させた。これは、野生型発現構築物を、鋳型として使用する、2回にわたる、逐次的な部位指向突然変異誘発反応を介して行った。突然変異体「アクセプター」構築物の配列は、ベイト領域の、Genewizによる、DNAシークェンシングにより検証した(配列番号2)。対応するアミノ酸配列は、配列番号4である。DNA配列内の突然変異は必然的に、タンパク質内の3つのアミノ酸置換である、ベイト領域のN末端側のQ693E、ならびにベイト領域のC末端のT730KおよびV731Lを結果としてもたらす。天然のDNA配列は、ベイト配列を取り出すのに使用されうる、制限エンドヌクレアーゼ部位を有さないため、これらの突然変異は、回避できなかった。これらの突然変異は、新たなベイト領域設計に含まれる。アクセプター突然変異体の機能の保存は、トリプシンを阻害するその能力により検証し(下記を参照されたい)、設計されたベイト領域の査定の一部として、他のプロテアーゼと対比して調べた。
【0202】
(実施例8)
可変ベイト領域の発現構築物の、設計および創出
新規の変異体ベイト領域の配列(配列番号6~30)、および1または複数のプロテアーゼ認識配列(配列番号31~83)を含む変異体ベイト領域を、ADAMTS-4、ADAMTS-5、多様なMMP、および他のプロテアーゼによる、ヒトアグリカンの公知の切断部位(Fosangら、Eur. Cells and Mat.、15巻、2008年、11~26頁)(表1)に基づき設計した。一部の構築物は、野生型A2Mベイト配列の部分または全体を保持したが、非天然アミノ酸配列のインサートは、配列番号6~30の変異体ベイト領域と、配列番号31~83の1または複数のプロテアーゼ認識配列を含む変異体ベイト領域とを含んだ。各々が、1つ~6つの間のベイト領域の配列をコードするDNAインサート配列を含有する、いくつかのpUC57プラスミドは、GenScriptにより合成され、凍結乾燥粉末として、本発明者らに送付された。各インサート配列は、アクセプター構築物へのライゲーションのために、5’末端のXho1部位および3’末端のHindIII部位を含有する。各インサートプラスミドを、アクセプタープラスミドと共に、水中で再構成し、20UのXho1およびHindIIIにより、一晩にわたり二重消化して、インサート配列を放離し、消化されたプラスミドを、1%のアガロースゲル上の電気泳動により分離し、UV光下で可視化した。インサート長およびアクセプター長に対応するバンドは、キットの指示書の通りに、Qiagen Qiaquick Gel Extractionキットを介して、ゲルから抽出した。各抽出から得られるDNAの濃度は、Qubit 蛍光光度計(Invitrogen)を使用して決定した。インサートの、ベイト領域をコードするアクセプターの領域へのライゲーションは、各インサートベクターの消化から抽出されるインサート断片を、50ngの、消化されたアクセプタープラスミドと、インサート:プラスミドのモル比を3:1として混合することにより、セミランダム方式で行った。ライゲーションは、キットの指示書に従い、Quick Ligationキット(New England Biolabs)を使用して達成した。次いで、ライゲーションされたプラスミドの混合物を、E.coliのGC10株(Genessee Scientific)に形質転換し、100μg/mLのアンピシリンを含有するLuria培養液/寒天プレート上に塗り広げ、形質転換細胞の単一のコロニーを発生させた。各ライゲーション反応物に由来する、個々のコロニーの、5mLずつのLuria培養液による培養物を増殖させ、各培養物中に含有されたプラスミドDNAを、キットの指示書に従い、Qiagen QiaPrep miniprepキットを介して抽出した。これらのプラスミドは、ベイト領域のすぐ上流の、A2M構築物の配列にアニールするプライマーを使用する、配列の確認のために、Genewizに送付した。個々のクロマトグラムトレースを、配列内の異質性の存在について解析し、個々のインサートの配列を確認した。
【0203】
(実施例9)
A2M変異体の発現
A2M変異体は、HEK293F細胞(Gibco)内で、懸濁細胞内の、各構築物の一過性トランスフェクションにより発現させた。細胞は、8%のCO2/空気混合物を含有する、37℃のインキュベーター内の、速度を125rpmとするローテーター上、1×GlutaMax(Gibco)を含有する、20mLのFreeStyle F17培地(Invitrogen)を含有する、Erlenmeyer製の細胞培養フラスコ内の、1mL当たりの細胞550,000個の密度まで増殖させた。細胞は、各構築物(野生型または変異体)20μgずつのプラスミドDNAを、10μLのTransIT Boost(Mirus)を加えたTransIT Proと、1:2(w/v)の比で、培地への添加の前に15分間にわたり混合することによりトランスフェクトした。細胞は、トランスフェクション後3日間にわたり、同じ状態で維持してから、分泌された組換えタンパク質を含有する培地を、タンパク質精製のために取り出した(
図3)。
【0204】
(実施例10)
A2M変異体の精製
A2M発現構築物は、前駆体A2Mタンパク質をコードするので、発現し、プロセシングされた組換えタンパク質は、天然のA2M分泌シグナルを介して、細胞培養培地に分泌される。分泌された、組換え野生型A2MおよびA2Mベイト領域変異体は、各構築物のC末端における6×Hisタグを使用して、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより、トランスフェクト細胞の培養培地から精製した。トランスフェクト細胞から取り出された培地は、17,500Gで、15分間にわたり遠心分離して、全ての細胞を除去した。イミダゾールを、清明化された培地に、10mMの最終濃度まで添加した。1mLのHisPur Cobalt樹脂スラリー(Pierce)を、試料に添加し、4℃で1時間にわたる、ロッカー上の振とうにより平衡化させた。ビーズを、700Gで2分間にわたる遠心分離により収集し、上清を廃棄した。ビーズを、50mMのトリス-HCl、150mMのNaCl、10mMのイミダゾール、pH7.4による緩衝液10mL中で3回にわたり洗浄し、各回において、ビーズを、700Gの遠心分離により収集し、上清を、除去および廃棄した。タンパク質は、2mLの溶出緩衝液(200mMのイミダゾールを含有する洗浄緩衝液)を、ビーズと混合し、700Gで2分間にわたり遠心分離することにより溶出させた。上清を収集および保持し、溶出を合計3回にわたり反復した。次いで、試料中に含有された精製タンパク質を、100KDaのNMCOを伴う、Amiconスピンフィルターを使用して、100μLの容量(典型的には、100μg/mL~600μg/mLの間)まで濃縮した。濃縮時において、イミダゾールを含有する緩衝液は、50mMのHEPES、150mMのNaCl、10mMのCaCl
2、100μMのZnCl
2、0.05%(w/v)のBrij-35、pH7.4(HNZCB緩衝液)と完全に交換した。タンパク質の濃度は、BCA(Pierce)アッセイおよび660nm(Pierce)アッセイを使用して決定した。1μgずつの各精製タンパク質を、還元SDS-PAGEローディング緩衝液と混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、7.5%のトリス-グリシンSDS-PAGE色素非含有ゲル(Bio-rad)にロードした。UV光に、5分間にわたり露出することにより、ゲルを現像し、全タンパク質バンドの写真を撮影した。組換えA2Mの純度は、全ての変異体タンパク質および野生型タンパク質にわたり、一貫して90%を超えると推定された(
図15)。
【0205】
(実施例11)
A2M変異体によるプロテアーゼ阻害の増大についてのスクリーニング
野生型A2Mタンパク質と、配列番号31~83の、1または複数のプロテアーゼ認識部位を含有する、配列番号6~30のベイト領域を含有する、A2M変異体を含む、A2M変異体ポリペプチドとを、G1ドメイン、G2ドメイン、および球間ドメイン(R&D)からなる、ヒトアグリカンの組換えIGD断片の、ADAMTS-4、ADAMTS-5、およびMMP13によるタンパク質分解を阻害するそれらの能力の比較についてスクリーニングした。これらの酵素の各々の阻害に対する、変異体の有効性についてのスクリーニングは、表3、4a、および4bのプロテアーゼなどの各プロテアーゼのタンパク質分解活性の速度を考慮に入れて、同じ方式で行った。各試料中のIGD断片の量を、0.1μgで一定に保つ一方、プロテアーゼの量は、IGD断片に対するプロテアーゼの活性に応じて変動させた。変異体A2Mおよび野生型A2Mの各々は、各プロテアーゼへの結合の反応速度を大幅に変動させるので、あるものは、A2Mの、プロテアーゼとのプレインキュベーションを伴わずに、完全な阻害を示す一方、他のものは、プロテアーゼと10分間にわたりインキュベートした場合に、ある程度の阻害を示し、他のものは、A2Mの、プロテアーゼとのプレインキュベーションの後であってもなお、阻害を示さなかった。各A2M変異体について、プロテアーゼ、IGD断片、およびA2Mの全てを、同時に添加する1つのアッセイ(プレインキュベーションを伴わない)と、阻害剤の、プロテアーゼへの、緩徐な結合を検出するために、IGD断片を添加する前に、室温で10分間にわたり、プロテアーゼとA2Mとをプレインキュベートする1つのアッセイとの、2つの独立のアッセイを実施した。プロテアーゼの、A2Mとのプレインキュベーションを伴わない実験では、HNZCB緩衝液中の、150nMの、タグ付けされた野生型A2MまたはA2M変異体5μLずつを、マイクロ遠心管に添加した。次いで、40μg/mLのIGD断片5μLを、同じ遠心管に添加し、混合した。最後に、150nM(ADAMTS-4およびADAMTS-5、A2M:プロテアーゼのモル比を1:1とする)または75nM(MMP13-A2M:プロテアーゼのモル比を2:1とする)のプロテアーゼ5μLずつを、遠心管に添加した。10分間にわたるプレインキュベーションを伴う実験では、各A2Mの5μLずつを、5μLのプロテアーゼと、10分間にわたり混合してから、5μLのIGD断片を添加した。全ての試料を、37℃で1時間にわたりインキュベートしてから、2×還元SDS-PAGEローディング緩衝液(Bio-rad)を添加し、95℃で5分間にわたり加熱することにより、停止させた。各試料15μLずつを、7.5%のTris-Glycine Stain Free Gel(Bio-Rad)にロードし、150Vで1時間にわたり泳動させた。全タンパク質を、ゲルの指示書の通り、UV光下で可視化し、イメージングした。次いで、タンパク質を、7分間の転写時間を使用する、iBlot(Invitrogen)乾式ブロッティングシステムを介して、ニトロセルロース膜にブロッティングし、TBSカゼインブロッキング溶液(Bio-rad)を使用して、1時間にわたりブロッキングし、抗IGD断片ヤギポリクローナル抗体(R&D Biosystems型番:AF1220)を、TBS-T中0.1μg/mLの濃度で使用して、プロービングした。ブロットを、TBS-Tで、3回にわたり洗浄し、カゼインブロッキング溶液中0.1μg/mLのHRPコンジュゲート抗ヤギIgGポリクローナル抗体(Sigma型番:A5420)で、プロービングした。ブロットは、製造元の指示書に従い、ECL Plus化学発光キット(Pierce)を使用して現像した。ウェスタンブロットは、ChemiDoc imagerシステム(Bio-rad)によりイメージングした。ウェスタンブロット上の各IGD断片バンド(完全IGD断片および分解IGD断片)は、ImageLabソフトウェアを使用して定量した。各A2M変異体の存在下におけるIGD断片の分解量は、分解IGD断片バンドの強度と、完全IGD断片バンドの強度と(
図16~20)を比較することにより定量し、各変異体の阻害能を、各バッチの変異体と共に調製された、野生型A2M試料と比較した。スクリーニングの、この初期ラウンドから、8つの変異体を、MMP1、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP12、およびカテプシンK(全ての酵素は、組換えヒト構築物であり、R&Dから購入した)、ならびに表4aおよび4bの酵素など、他の酵素に対するさらなるスクリーニングのために選択した。各変異体の阻害能の比較は、切断された断片が、ウェスタンブロット上に現れないような形で、IGD断片を分解させた、MMP9およびMMP13を例外として、分解バンドの強度の、完全バンドの強度に対する比をとることにより行った。MMP9およびMMP13の場合、比較は、残りの完全IGD断片バンドの強度のみに基づいて行った。加えて、IGD断片を感知可能に切断するのは、ADAMTS-1およびMMP7のみであったので、精密な阻害の測定を定量することはできなかった。これらの場合、変異体の全ては、これらの2つのプロテアーゼに関して、野生型と本質的に同等であると判定された。全ての阻害データを査定した後で、全ての被験プロテアーゼ(
図17~21)または軟骨を分解することが公知であるプロテアーゼの混合物(
図22)に対する、改善された阻害特徴または少なくとも同等な阻害特徴に基づき、4つの変異体を選択した。
【0206】
(実施例12)
プロテアーゼに対する、A2M変異体についてのスクリーニング
4つの、選択されたA2M変異体が、一般的なプロテアーゼである、トリプシンおよびキモトリプシンを、野生型タンパク質と同様の程度に阻害することがやはり可能であることを検証するため、変異体を、蛍光タンパク質分解アッセイにおいて調べた(Twining, S.S.、Anal. Biochem.、143巻、1984年、30~34頁)。このアッセイでは、蛍光色素のタンパク質分解依存的放出により引き起こされる、FITC標識タンパク質基質からの蛍光発光の増大をモニタリングする。各変異体について、2つの実験:A2M:プロテアーゼのモル比を1:1に保つ、1つの実験と、A2Mを、0.5:1に低減する別の実験とを行った。HNZCB緩衝液中の濃度を100nM(比を1:1とする場合)または50nM(比を0.5:1とする場合)とする、野生型A2Mまたは変異体A2Mの40μLを、40nMのウシトリプシン(Sigma)100μLと混合し、室温で5分間にわたりインキュベートする。この混合物に、40μg/mLのFTC-カゼイン基質(Pierce)70μLを添加し、混合し、384ウェルプレートの3つのウェルに速やかにピペッティングした(ウェル1当たり65μL)。プレートを、Cary Eclipse蛍光光度計に入れ、励起波長を485nmとし、発光波長を519nmとする反応速度モード(単一の波長)で、15分間にわたり読み取ったが、この間、プロテアーゼによるカゼインの分解速度は、ほぼ直線状を維持した。発光強度を、3つの試料ウェルについて平均し、時間と対比してプロットし、各試料および対照によるデータへの直線当てはめを行った(
図18、左)。当てはめた直線の傾きを、溶液中に残存するプロテアーゼ活性の尺度とした。4つの選び出されたA2M変異体の、野生型タンパク質との比較は、変異体が全て、トリプシンおよびキモトリプシンを含む多様なプロテアーゼを、野生型A2Mとほぼ同等に阻害することが可能であることを示す(
図18、右)。
【0207】
(実施例13)
自家療法のための血液の調製
120mLの全ヒト血液を、静脈穿刺により、対象から得た。38mLずつの血液アリコートを、各収集ボトル内に、適切な容量のクエン酸デキストロース溶液A(「ACD-A」)を伴う、2本またはそれ超の血液収集ボトルに収集した。血液/ACD-Aを伴う収集ボトルを、一定の角度のローター遠心分離機に取り付け、周囲温度条件下、所定の速度および時間で遠心分離した。沈殿した細胞を撹乱しないように、バフィーコートの水準の上方の血漿約1mLを残して、約15mLずつの血漿を、血清用ピペットで、各チューブからアリコート分割した。この過程を、1または複数の遠心分離機スピン周期における収集ボトルについて反復して、120mLの総採血量から、45mLの総血漿容量をもたらした。血漿は、個別の滅菌血液収集バッグにプールした。本明細書で記載される組成物は、対象への投与の前に、骨などの組織の自家移植片または同種移植片と混合することができる。
【0208】
(実施例14)
in vitroにおける軟骨分解アッセイ
炎症促進性サイトカインおよび軟骨分解性メタロプロテイナーゼ(ADAMTS)により引き起こされた軟骨の異化を、白血球リッチPRP(LR-PRP)またはAPIC-PRP(Autologous Platelet Integrated Concentrate)の調製物により阻害しうるという仮説を検証するため、in vitro軟骨分解対照アッセイを実施した。BCEを、LR-PRPまたはAPIC-PRPの存在下または非存在において、ADAMTS-5、TNF-α、またはIL-1βで処理した。軟骨の異化は、培養物中、2または3日後において、培地中の硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)の存在を介する、プロテオグリカンの放出により測定した。ウシ関節軟骨外植片(BCE、200mg)を、1~1.5歳の未出産の雌牛から単離し、培養物中で3日間にわたり平衡化させた。BCE培養物を、3日間にわたり、同じ患者から調製された、33%(v/v)の白血球リッチ血小板リッチ血漿(LR-PRP)、血液、またはAPIC-PRPを伴うかまたは伴わずに処置した。500ng/mlのADAMTS-5による、2日間にわたる、軟骨のプロテアーゼ消化を、APIC-PRPの2倍の系列希釈液で阻害した[ED50=0.1%v/v]。サイトカインにより誘導される軟骨の異化のために、BCEを、SFM中で、80ng/mlのヒトTNF-αまたは8ng/mlのヒトIL-1βを伴うかまたは伴わずに、3日間にわたりインキュベートした。軟骨の分解は、5mg/mlのA2Mまたは30%(v/v)のAPIC-PRPを添加することにより阻害した。APIC-PRPについての用量反応曲線を裏付けるため、APIC-PRPの3倍の系列希釈液[ED50=3%v/v]を使用して、TNF-α/IL-1βにより誘導される軟骨の分解を阻害した。軟骨の異化は、培養物上清中で、硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)の存在を介する、プロテオグリカンの放出により、コンドロイチン硫酸の検量線を伴うDMMBアッセイを使用して測定した。200mgのBCE中の軟骨の分解が、LR-PRP(33%v/v)の添加により誘導されたことから、LR-PRPは、軟骨の異化の発生源であることが裏付けられる。炎症促進性サイトカイン(80ng/mlのTNF-αまたは8ng/mlのIL-1β)、ADAMTS-5(500ng/ml)による処理もまた、培地中のsGAGの増大を結果としてもたらした。APIC-PRPの添加は、サイトカイン、メタロプロテイナーゼ、またはLR-PRPにより誘導される軟骨の異化を、用量依存的に阻害した。APIC-PRP研究において使用された、最高の濃度のLR-PRPの添加は、サイトカインまたはMMPにより誘導される軟骨の異化であって、培地中のsGAGの放出により測定される軟骨の異化を低減したが、これを阻害しなかった(データは示さない)。骨関節炎(OA)は、関節軟骨の進行性変性を特徴とする。BCEモデルは、OAにおける推定治療剤についての研究を代表する。この研究は、白血球リッチPRP(LR-PRP)が、軟骨の異化に寄与するのに対し、APIC-PRPは、軟骨を、公知のOAメディエーターによる分解から保護することを裏付ける。この活性は、APIC-PRP中のA2Mの濃度の、血中のその濃度に対する5~10倍の増大により説明することができる。この結論は、A2Mの、軟骨に対する保護効果を裏付ける実験と合致する。軟骨の生物学および代謝についての、この理解の改善は、ヒトにおけるAPIC-PRPについての臨床試験をもたらすはずである。
【0209】
(実施例15)
ウサギモデルにおける軟骨保護効果
骨関節炎の病態は、炎症性メディエーターおよびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などのプロテアーゼの上方調節を伴う。A2Mとは、強力なプロテアーゼ阻害剤である、自然発生の血漿糖タンパク質である。A2Mは、MMPに結合し、これを捕獲し、取り除くその能力により、軟骨の異化をモジュレートするように挙動する。A2Mは、複数の組織および細胞外腔全体で機能するが、通常、関節の関節内腔内で高レベルに達することはない。血液からA2Mを濃縮するAPIC-Cell Free(Autologous Protease Inhibitor Concentrate)が、軟骨の異化を阻害し、これにより、ACL-Tウサギモデルにおける骨関節炎の発生を緩和する能力について調べた。ウサギモデルは、骨関節炎を査定するための、耐荷重についての、機能的な、in vivo解剖モデルであって、ヒト組織と同様の、機械的特性、形状的構造、および治癒能を呈示する解剖モデルを表す。この研究では、8~12カ月齢の雌ニュージーランドホワイトウサギを使用した。このウサギモデルは、骨関節炎を査定するための、耐荷重についての、機能的な、in vivo解剖モデルであって、ヒト組織と同様の、機械的特性、形状的構造、および治癒能を呈示する解剖モデルを表す。複数回注射コホート(群1):6匹のウサギの、右膝にACL-T術を施し、左膝に偽手術を施した。0.3mLずつ4回分のAPIC-Cell Free(Autologous Protease Inhibitor Concentrate)注射液を、ウサギ血液から調製し、ACL膝傷害後1、4、14、および28日目に投与した。ウサギの対側対照膝には、同等容量の滅菌等張性生理食塩液を施した。ウサギを、6週間にわたりモニタリングし、次いで、軟骨変性評価のために屠殺した。対照群(群2):6匹のウサギの、右膝に、左膝の偽手術を伴わずに、ACL-T術を施した。これらのウサギは、対照群であり、したがって、いかなる処置も施されなかった。
【0210】
変異体A2Mの調製
ACL傷害の前に、変異体A2Mポリペプチドを調製した。全てのウサギに、プロテアーゼ阻害剤濃縮液を施した。ACL-T施術の6週間後、動物を、巨視的なおよび顕微鏡による膝関節の軟骨査定のために屠殺して、OAの進行を決定した。
【0211】
巨視的解析および組織学的解析
巨視的査定のために、遠位大腿顆および脛骨プラトー表面を解析し、既に記載されている、バリデーション済みの、0~8のスケールを使用して、病変を分類した。関節内の病変の場所は、巨視的検査の後で、The International Cartilage Repair Society(OARSI)による分類であって、Lindhorstらが、ウサギ膝に適応させた分類に従い、各関節表面についての、特殊な9領域の格子により記録した。単離された大腿骨および脛骨試料にフィードし、組織学的査定(顕微鏡による査定)のために脱灰させた。大腿骨および脛骨についての巨視的査定は、OAと符合する軟骨(cartage)の異化と符合する特色を裏付けた。APIC Cell Freeによる処置は、軟骨の外見を大幅に改善し、偽手術対照と同様の外見をもたらした(
図12~14)。APICの適用は、軟骨の分解を、非処置対照と比較して、53±20%軽減した(平均値±SEM;p=0.0086)(
図13Aおよび13B)。変異体A2Mの濃度を決定した。A2Mの高濃度と、巨視的査定時における、OARSI総膝スコアの減少との間には、用量依存的相関が見られた(
図13Aおよび13B)。Safarin-O染色(r
2=0.73)、構造(r
2=0.76)、軟骨細胞密度(r
2=0.50)、およびクラスター形成(r
2=0.97)についてのOARSI組織病理学査定(
図14)の合計ではまた、処置の用量依存的治療利益も観察された。データは、血中のA2Mの濃度の9~10倍を含有する、APIC-Cell Free(Autologous Protease Inhibitor Concentrate)が、骨関節炎ウサギモデルに対して、軟骨保護効果を及ぼすことを示唆する。
【0212】
(実施例16)
A2Mの、BCEに対する効果
炎症促進性サイトカインまたは軟骨分解性メタロプロテイナーゼ(ADAMTSおよびMMP)の添加は、軟骨の分解を刺激するが、これは、A2Mにより阻害されるという仮説を検証するため、in vitro軟骨分解対照アッセイを実施した。ウシ軟骨外植片(BCE)を、精製A2Mの存在下または非存在下で、炎症促進性サイトカイン(TNF-αまたはIL-1β)または軟骨分解性メタロプロテイナーゼ(ADAMTS-5、ADAMTS-4、MMP-7、またはMMP-12)を伴うかまたは伴わずに、処置した。
【0213】
ウシ関節軟骨外植片(BCE;100±4mg)を、1~1.5歳の未出産の雌牛から単離し、培養物中で、3日間にわたり平衡化させた。プロテアーゼ消化により軟骨を分解するために、BCEを、無血清培地(SFM)中で、500ng/mLのADAMTS-4またはADAMTS-5、および3~5μg/mLのMMP-3、MMP-7、MMP-12、またはMMP-13を伴うかまたは伴わずに、2日間にわたりインキュベートした。MMP-3は、キモトリプシンで活性化させてから、BCEに適用した。サイトカインにより誘導される軟骨の異化のために、BCE(200±4mg)を、SFM中で、80ng/mlのヒトTNF-αおよび8ng/mLのヒトIL-1βを伴うかまたは伴わずに、3日間にわたりインキュベートした。軟骨の分解は、プロテアーゼ消化に対する、100μg/mLの精製ヒトA2M、またはサイトカインにより誘導される分解に対する、5mg/mLのA2Mを添加することにより阻害した。
【0214】
軟骨の異化は、培養物上清中で、1)硫酸化グリコサミノグリカン(sGAG)の存在を介する、プロテオグリカンの放出、ならびに2)Bio-Rad Stainless SDS-PAGEによる、軟骨プロテオグリカン断片の存在、およびウェスタンブロット法による、アグリカンG3断片の存在により測定した。
【0215】
フィブロネクチン-アグリカン複合体(FAC)は、BCE実験による、分解された軟骨マトリックスであるプロテオグリカンを、フィブロネクチンおよび滑液と組み合わせ、4時間にわたりインキュベートすることにより形成した。新たに形成されたFACは、ウシアグリカンを認識するのに必要とされるα-アグリカンG3抗体を使用する変更を伴う、FACT ELISAにより測定した。
【0216】
500mg/mLのプロテアーゼによる軟骨の異化を阻害するのに必要とされるIC
50は、ADAMTS-5についての、7μg/mLのA2M、およびADAMTS-4についての、3μg/mLであった。5mg/mLのA2Mの添加はまた、TNF-αまたはIL-1βにより誘導される軟骨の異化も阻害した。さらに、A2Mは、フィブロネクチンとの複合体を形成し、疼痛および関節の分解についてのマーカーである、アグリカンG3断片の産生も遮断した(
図7~10)。
【0217】
(実施例17)
in vitroにおける、A2Mの、創傷の治癒に対する効果
炎症促進性サイトカインまたは軟骨分解性メタロプロテイナーゼ(ADAMTSおよびMMP)の添加は、創傷の治癒を遅延させるが、これは、組換えA2Mにより阻害されるという仮説を検証するため、in vitro創傷治癒対照アッセイを実施する。動物の創傷に由来する細胞を、組換えA2M組成物の存在下または非存在下で、炎症促進性サイトカイン(TNF-αまたはIL-1β)または軟骨分解性メタロプロテイナーゼ(ADAMTS-5、ADAMTS-4、MMP-7、またはMMP-12)を伴うかまたは伴わずに、処置する。創傷細胞を、無血清培地(SFM)中で、500ng/mLのADAMTS-4またはADAMTS-5、および3~5μg/mLのMMP-3、MMP-7、MMP-12、またはMMP-13を伴うかまたは伴わずに、2日間にわたりインキュベートする。MMP-3は、キモトリプシンで活性化させてから、創傷細胞に適用する。サイトカインにより誘導される創傷の治癒の遅延のために、創傷細胞を、SFM中で、80ng/mlのヒトTNF-αおよび8ng/mLのヒトIL-1βを伴うかまたは伴わずに、3日間にわたりインキュベートする。創傷の治癒は、プロテアーゼ消化について、100μg/mLの精製ヒト組換えA2Mの添加により増強されるか、またはサイトカインにより誘導される分解について、5mg/mLの組換えA2Mの添加により増強される。
【0218】
(実施例18)
創傷液の収集法
いくつかの技法が、創傷液を収集するのに活用された。1つの技法は、シリンジを活用して、湿性創傷から、創傷液を吸引するステップを伴った。別の技法は、創傷液を吸収する濾紙の使用に続く、緩衝液で洗浄することなどによる、吸収された創傷液の、濾紙からの抽出を伴う。別の技法は、縁辺が直線状の舌圧子を、創傷にわたり走らせ、流体を収集するステップを伴い、濾紙などにより、直線状の縁辺の前方で流体が集められる。
【0219】
例えば、ヒト慢性創傷の創傷液は、単一の包帯を、5mlのリン酸塩緩衝生理食塩液pH4.0~6.0、氷冷酢酸緩衝液pH7.0~8.0により、該当するpHに調整された、50mMの酢酸ナトリウム、0.2Mの塩酸を使用して、該当するpHを緩衝するように補正された、0.2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)中に、一晩にわたり浸漬することにより、一次創傷液包帯から抽出する。
【0220】
(実施例19)
糖尿病性ラットにおける、A2M組成物の、創傷の治癒に対する効果
概要
糖尿病性潰瘍など、慢性創傷の治癒は、重大な臨床問題である。本研究では、in vivoにおける、本発明に従う、治療用組換えA2M組成物に対する応答について検討する。創傷の治癒に障害を来した、糖尿病性ラットモデルについての、予備的動物研究は、本明細書で記載される組換えA2M組成物を、蒸留水と比較して行う。結果として、A2M処置群では、創傷の完全閉止までの時間が短い。創傷の治癒の差違が、処置の9日目から明らかとなる。A2M処置動物は、瘢痕組織が小さく、体毛の増殖も完全である。水処置動物では、体毛の増殖に障害を来した瘢痕が明らかである。本研究の結果は、これらのA2M組成物の皮膚への使用が、創傷の治癒をモジュレートし、体毛の増殖を刺激する潜在的可能性を有することを示唆する。
【0221】
方法
組換えA2M組成物についてのin vivo試験のための動物モデルは、糖尿病性ラットの背部皮膚における全層創傷である。体重200~250gのWistarラットを使用する。動物は、個別のケージ内で飼育する。糖尿病は、ストレプトゾトシン(Sigma-Aldrich、UK)の投与により誘導する。ストレプトゾトシンは、55mg/kgの用量で、腹腔内投与する。ストレプトゾトシンの投与の前に、ラットの、ベースラインにおける血中グルコースを決定する。48時間後、血中グルコースを再度測定して、ラットが糖尿病性であることを確認する。血中グルコースレベルが倍増していれば、糖尿病の誘導が確認される。グルコースは、Glucometer(Infopia Co.、Korea)により決定する。血中グルコースの決定を、5日ごとに継続して、糖尿病の遷延を確認する。ストレプトゾトシンにより誘導される糖尿病の実体に関して、体重が大幅に減少し、虚弱となる動物、血中グルコースレベルが不安定な動物は、研究から除外する。対照群と被験群とを同数とする、合計14匹のラットを使用する。被験群には、組換えA2M組成物を含む、ある容量の溶液を適用し、対照群には、蒸留水を施す。0日後の時点で、円形で直径15mmの全層創傷を創出する(例えば、Wound Rep. Reg.、2002年、10巻:286~294頁に従って)。腹腔内ペントバルビタール(55mg/kg)により、ラットに麻酔をかけ、Betadineを使用して、背部皮膚を、手術のために調製する。創傷は、手術用鋏を使用して創出する。0日後の時点で、調製された包帯を、創傷に直接貼付する。創傷は、滅菌ガーゼで覆い、注意深く包み込む。手術後2~3日ごとに、ラットを麻酔下に置いて、創傷の包帯を、未使用の対照包帯または被験包帯に交換する。創傷は、滅菌生理食塩液でフラッシュ洗浄して、膿苔を除去し、創傷領域を清浄化する。ディジタルカメラを使用して、創傷の写真を撮影する。写真を、創傷のサイズおよび新鮮な新生上皮の外見の点から、創傷の治癒について検討する。撮影したら、未使用の包帯を創傷に貼付し、創傷を再度覆う。バイアスのコントロールは、実験群の各々に暗号を割り当てることにより達成する。試験責任医師を、群の各々の識別に対して盲検化し、被験群と対照群とが同様の外見を呈するようにする。最終的な4週間にわたる解析が完了した後で、暗号を解除する。
【0222】
治療の15日目の被験群において、創傷は、完全に閉止され、新たな、短い体毛が、瘢痕領域を覆う。治療の22日目において、創傷は、完全に治癒し、新たな、長い体毛が、瘢痕領域の全体を覆う。かつての創傷の形跡は、見ることができない。対照群では、治療の15日目において、創傷は、閉止しない。試験の22日目において、創傷は、閉止されたが、瘢痕はやはり重度であり、完全に無毛である。
【0223】
創傷領域および周囲領域は、被験群と対照群とで同様であるが、被験群では、特に、創傷領域と周囲領域との差違が最も顕著となる15日目において、より迅速な閉止の傾向が見られる。A2M処置動物では、創傷の完全な閉止までの時間が短い。対照群および被験群のいずれにおいても、創傷領域は、9日目に小さくなりはじめ、15日目までに、ほぼ完全な創傷の閉止がまず生じる(7匹中1匹のラット)。22日目までに、両方の群においても、創傷は、本質的に閉止されるが、A2M処置群における体毛の増殖は、水処置群と比較して、とりわけ完全である。
【0224】
本研究の結果は、本発明に従う組換えA2M組成物を含む皮膚用調製物が、創傷の治癒を増強する潜在的可能性を有することを示唆する。創傷の閉止を加速化することに加えて、本研究におけるA2M処置は、体毛が、対照群におけるより効率的に増殖したので、治癒しつつある創傷における組織の質を改善すると考えられる。慢性創傷は、長期間治癒しないことを特徴とするのみでなく、治癒後において、依然として閉止できないことも特徴とする。こうして、閉止までの時間は、唯一の関係する評価項目でも、処置の有効性についてのただ1つのベースでもない。組換えA2M組成物で処置された被験群動物において、より健全な瘢痕組織を得たことから、再発率の低下を期待することが可能となる。
【0225】
(実施例20)
創傷のデブリドマン
in vivoにおけるデブリドマンの有効性研究のために、組換えA2M組成物を、ブタの壊死組織に適用する。組換えA2M組成物を、デブリドマン装置と併せて、発生させた創傷(直径約2cm)の各々に使用する。24時間後、A2M組成物で処置された創傷において、創傷の著明なデブリドマンが観察される。5日後、組換えA2M組成物を伴う創傷は、壊死組織を伴わない清浄化表面および完全な治癒を示す。デブリドマン装置で処置された創傷もまた、48時間後に、著明なデブリドマンを示す。しかし、創傷は、組換えA2M組成物で処置されたほど清浄化されず、5日後においても、完全な治癒を示さ
なかった。
【配列表】