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特許7166044砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20221028BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
E02D3/08
E02D1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020022919
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127614
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】矢部 浩史
(72)【発明者】
【氏名】新川 直利
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-109179(JP,A)
【文献】特開2001-303540(JP,A)
【文献】特開2001-172955(JP,A)
【文献】特開2001-172954(JP,A)
【文献】特開2019-031791(JP,A)
【文献】特開2015-183466(JP,A)
【文献】特開2019-206814(JP,A)
【文献】特開2010-013885(JP,A)
【文献】特開2007-032038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/08
E02D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削工事や地盤改良に伴う建設発生土を含むあらゆる粒状材料について、砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法であって、
投入用上開口及び排出用下開口の間を形成している周囲側壁が上から下へ行くに従って次第に水平断面積を減じる下窄みの収容空間を区画しているロートと、前記ロートに連結されて前記下開口を開閉する蓋とを備え、
前記下開口を前記蓋で塞いだ閉状態で前記ロート内に前記上開口より投入して堆積させた前記粒状材料が前記蓋を開状態に切り換えたときに前記下開口を通過して排出されるか否かを調べ、排出された場合に杭材料としてそのまま使用可能と判断し、排出されない場合に含水比や細粒分含有率を調整又は改質しなければ使用不能と判断することを特徴とする砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法。
【請求項2】
前記ロートは、前記周囲側壁が左右側壁及び前後側壁からなる水平断面略矩形状からなり、前記左右側壁又は前記前後側壁を構成している2側面を上から下に向かって互いに近づく傾斜面に形成していることを特徴とする請求項1に記載の砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法。
【請求項3】
前記排出用下開口は水平断面で前記矩形状の各辺が75~85mmに設けられていると共に、前記傾斜面の角度は55~65度に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに用いられる砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価装置であって、
投入用上開口及び排出用下開口の間を形成している周囲側壁が上から下へ行くに従って次第に水平断面積を減じる下窄みの収容空間を区画しているロートと、
前記ロートに連結されて前記下開口を開閉する蓋と、
前記ロートを所定高さで水平状態に保持して、前記下開口を通過して排出される粒状材料を収容する容器を配置可能な台座とを備えていることを特徴とする砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価装置。
【請求項5】
前記ロートは、前記周囲側壁が左右側壁及び前後側壁からなる水平断面略矩形状からなり、前記左右側壁又は前記前後側壁を構成している2側面を上から下に向かって互いに近づく傾斜面に形成していることを特徴とする請求項4に記載の砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設発生土等を砂杭系地盤改良工法の杭材料として用いる場合、従来のごとくに複雑な室内試験など行うことなく砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良のうち、サンドコンパクションパイル(SCP)工法は、図12に模式的に示したごとくSCP施工機により砂杭を地盤中に造成する工法であり、軟弱地盤の沈下・安定対策、液状化対策として採用されることが多い。この工法では、主材料である中詰め材料が通常は自然由来の砂や砕石であり、施工実績に基づいた粒度範囲(地盤工学会発行の「地盤改良の調査・設計と施工」、頁101、2013)であることが望まれる。具体例としては、液状化対策用としては細粒分含有率(Fc)として10~15%程度のものものが好適とされる。
【0003】
ところで、近年はFcがこの範囲を満足する良質な自然材料を確保することが困難になってきており、安価な再生砕石やスラグを使う機会が増えている。このような背景から、本発明者らは、図12に示したごとくSCP工法の施工過程で発生する盛り上がり土等を中詰め材料に再利用する上で使用可否の評価、特に含水比と細粒分含有率を因子として施工機械であるホッパーやケーシング等の付着性やハンドリング性といった観点より、試験結果を基に図13に示す含水比と細粒分含有率による改質方法の目安をまとめた簡易選定図表を提案した(非特許文献1)。この図表には実際に行った試験工事の結果も記入されている。
【0004】
すなわち、図13において、建設現場発生土等の物性のうち、含水比を横軸にとり細粒分含有率を縦軸にとると共に、利用可能とする上で行う操作は以下の通りである。
(ア)、細粒分含有率が15%以下、含水比が25%以下のものはそのまま使用する。
(イ)、細粒分含有率が15%より多く、含水比が25%以下のものは粒状の粒度調整材を添加して粒度調整した後に使用する。
(ウ)、細粒分含有率が15%以下、含水比が25%より高いものはばっ気により乾燥して含水比を調整した後に使用する。
(エ)、細粒分含有率が約15~25%、含水比が25%より高いものは脱水用無機材を添加して含水比を調整した後に使用する。
(オ)、細粒分含有率が25%より多い建設発生土等で、(オ)-1:含水比が25%より高くかつ45%以下の場合は無機材を重量比で5~10%加えて調整した後に使用する。(オ)-2:含水比が45%より高い場合は高分子を重量比で0.1%程度と無機材を重量比で10~15%程度加えて調整した後に使用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】矢部浩史、竹内秀克、今井優輝、「発生土の有効利用による締固め砂杭工法」、地盤工学会誌,65-9(716) September,2017、頁16-17。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記図13の簡易選定図表は、例えば、建設発生土を再利用する上で含水比と細粒分含有率を計測することでそのままで使用可能か否か、更に使用可能にする具体的な調整操作も一目瞭然となる。しかしながら、この図表を利用するには、通常、現場の建設発生土等を持ち帰って含水比と細粒分含有率を計測しなければならないため時間がかかっていた。換言すると、従来は建設発生土等を砂杭系の砂材料として利用できるか否かを判断する上で、施工現場にて短時間かつ簡単な操作で評価してSCP工法等の中詰め材料として再使用できないため自ずと材料費の低減に限界があり、環境に配慮した地盤改良工法の普及も制約されていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、建設発生土等の簡易評価方法として、特に複雑な室内試験を行うことなく工事現場において迅速かつ的確に含水比や細粒分含有率を調整操作することなくそのまま使用可能か否かを判断できるようにする。それにより、材料費の低減と共により環境に配慮した地盤改良工法の普及に貢献できるようにする。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、掘削工事や地盤改良に伴う建設発生土を含むあらゆる粒状材料について、砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法であって、投入用上開口及び排出用下開口の間を形成している周囲側壁が上から下へ行くに従って次第に水平断面積を減じる下窄みの収容空間を区画しているロートと、前記ロートに連結されて前記下開口を開閉する蓋とを備え、前記下開口を前記蓋で塞いだ閉状態で前記ロート内に前記上開口より投入して堆積させた前記粒状材料が前記蓋を開状態に切り換えたときに前記下開口を通過して排出されるか否かを調べ、排出された場合に杭材料としてそのまま使用可能と判断し、排出されない場合に含水比や細粒分含有率を調整又は改質しなければ使用不能と判断することを特徴としている。
【0009】
以上の各発明において、『砂杭系地盤改良』としては、SCP工法、静的締固め砂杭(SAVE)工法、それらに類似の改良工法を含む。
【0010】
以上の本発明は、以下のように具体化されることがより好ましい。すなわち、
(1)、請求項1において、前記ロートは、前記周囲側壁が左右側壁及び前後側壁からなる水平断面略矩形状からなり、前記左右側壁又は前記前後側壁を構成している2側面を上から下に向かって互いに近づく傾斜面に形成している構成である(請求項2)。
(2)、請求項2において、前記排出用下開口は水平断面で前記矩形状の各辺が75~85mmに設けられていると共に、前記傾斜面の角度(水平面からの立ち上がり角度)は55~65度に設けられている構成である(請求項3)。
【0011】
(3)、これに対し、請求項4の発明は、請求項1から3の何れかに用いられる簡易評価装置であって、投入用上開口及び排出用下開口の間を形成している周囲側壁が上から下へ行くに従って次第に水平断面積を減じる下窄み形状の収容空間を区画しているロートと、前記ロートに連結されて前記下開口を開閉する蓋と、前記ロートを所定高さで水平状態に保持して、前記下開口を通過して排出される粒状材料を収容する容器を配置可能な台座とを備えていることを特徴としている。
【0012】
(4)、請求項4において、前記ロートは、前記周囲側壁が左右側壁及び前後側壁からなる水平断面略矩形状からなり、前記左右側壁又は前記前後側壁を構成している2側面を上から下に向かって互いに近づく傾斜面に形成している構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、例えば、建設発生土がSCP工法実施に伴う現地発生土であると、当該実施域において現地発生土をロートに投入して下開口を通過するか否かで、そのまま使用可能か否かを簡単に即断できる。ここで、「そのまま使用可能」とは、図13の簡易選定図表中の左下側の無配合の箇所、つまり含水比Wが25%以下、細粒分含有率Fc15%以下の土に相当する。そして、本発明の簡易評価方法は、現地発生土のうち、例えば施工途中で評価してそのまま使用可能と判断されたものを当該施工域で再利用する機会を増やし、より環境に配慮した施工を実現し経費も低減できる。
【0014】
請求項2の発明では、ロートが水平断面略矩形状であること、左右側壁又は前後側壁を構成している2側面を上から下に向かって互いに近づく傾斜面に形成しているため、ロート形状がシンプルであり作成経費を抑えて実施できる。
【0015】
請求項3の発明では、ロートの排出用下開口として水平断面で矩形状の各辺の寸法と、傾斜面の角度を所定の範囲に設定すると、後述の実施例より分かるごとく最適な判断結果を確実に得ることができる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1から3の何れかに記載の簡易評価方法に用いられる簡易評価装置として、例えば、蓋付きのロートが台座に対し水平状態に保持されることで傾きに起因した誤差やブレをなくして評価ないしは判断精度を向上できる。
【0017】
請求項5の発明では、ロートの左右側壁又は前後側壁を構成している2側面を傾斜面としているため簡明であり、作製容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は第1形態の簡易評価装置の使用例としてロートの収容空間が2つの傾斜面を有した構成を示す外観図、(b)は前記収容空間に建設発生土を投入した状態を示す外観図、(c)はロートの蓋を開に切り換えた状態を示す部分断面図である。
図2】(a)は第1形態の他の使用例としてロートの収容空間が1つの傾斜面を有した構成を示す外観図、(b)は前記収容空間に建設発生土を投入した状態を示す外観図、(c)は仕切り板を示す概略外観図である。
図3】(a)は第2形態の簡易評価装置の使用例としてロートの収容空間が4つの傾斜面を有した構成を示す外観図、(b)は前記収容空間に建設発生土を投入した状態を示す外観図、(c)はロートの蓋を開に切り換えた状態を示す部分断面図である。
図4】(a)は第2形態の他の使用例としてロートの収容空間が3つの傾斜面を有した構成を示す外観図、(b)は前記収容空間に建設発生土を投入した状態を示す外観図、(c)は仕切り板を示す概略外観図である。
図5図1図2の装置を構成しているロートのうち、(a)及び(b)は排出口が大で傾斜面が2つの構成を示す模式断面図、(c)及び(d)は排出口が大で傾斜面が1つの構成を示す模式断面図である。
図6図1図2の装置を構成しているロートのうち、(a)及び(b)は排出口が小で傾斜面が2つの構成を示す模式断面図、(c)及び(d)は排出口が小で傾斜面が1つの構成を示す模式断面図である。
図7図3図4の装置を構成しているロートのうち、(a)及び(b)は排出口が大で傾斜面が4つの構成を示す模式断面図、(c)及び(d)は排出口が大で傾斜面が3つの構成を示す模式断面図である。
図8図3図4の装置を構成しているロートのうち、(a)及び(b)は排出口が小で傾斜面が4つの構成を示す模式断面図、(c)及び(d)は排出口が小で傾斜面が3つの構成を示す模式断面図である。
図9図13の簡易選定図表に第1実施例で使用したNo1とNo2(実施例1と2)の行方砂と、No3~6(実施例3~6)の赤土の図表中の対応部を○印で示した参考図である。
図10図13の簡易選定図表に第2実施例の表2の判定結果のうち、○印の7号珪砂の図表中の対応部を○印で示した参考図である。
図11図13の簡易選定図表に第3実施例のNo18~21(実施例18~21)で用いた各土砂の性状(FcとW)について図表中の対応部を○印で示した参考図である。
図12】SCP工法において現状の盛り上り土の再使用例を示す模式図である。
図13】本発明者らが先に提案した簡易選定図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定する簡易評価方法及び装置の最適な形態を添付した図面を参照して説明する。この説明では、第1実施例から第3実施例で用いた簡易評価装置を図1から図8により詳述した後、その装置を使用した簡易評価方法について明らかにする。
【0020】
(第1形態の装置)図1及び図2図5及び図6において、建設発生土等の簡易評価装置は、掘削工事や地盤改良に伴う建設発生土を含むあらゆる粒状材料について、砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定するため用いられるもので持ち運び容易な大きさとなっており、投入用上開口14及び排出用下開口24,29の間を形成している周囲側壁が上から下へ行くに従って次第に水平断面積を減じる下窄み形状の収容空間を区画しているロート5A,5B,5C,5Dと、当該ロート5B,5D内に組み込まれる仕切り板6と、各ロート5A~5Dの排出用下開口24,29を開閉する蓋8A ,8Bと、蓋付きロート5A~5Dを所定高さに保持する台座9Aとを備えている。
【0021】
ここで、ロート5A~5Dは、共通の上部1Aに対し排出用下開口24,29の大きさを変えた下部2A又は2Bがアングル16,17を介して不図示のボルト等により着脱可能に連結されている。上部1Aは、周囲側壁が前後側壁10,11及び左右側壁12,13で水平断面略矩形状に形成されている。下部2Aは、周囲側壁が前後側壁20,21及び左右側壁22,23で水平断面略矩形状に形成されている。左右側壁22,23は、上側が上部1Aの傾斜面12a,13aとほぼ平行となる傾斜面22a,23aになっている。下部2Bは、下部2Aに比べて排出用下開口29を一回り小さく設けており、周囲側壁が前後側壁25,26及び左右側壁27,28で水平断面略矩形状に形成されている。左右側壁27,28は、上側が上部1Aの傾斜面12a,13aとほぼ平行となる傾斜面27a,28aとなっている。
【0022】
また、下部2A,2Bは、ヒンジHを支点として回動されて各下部の下開口24,29を開閉する蓋8A ,8Bを有している。蓋8A ,8Bは、下部2A,2Bに対しヒンジHを支点として下開口24,29を塞いだ閉位置と、下開口24,29を全開した開位置とに切り換えられる。閉位置では、図1(c)に例示されるごとく蓋側に設けられた係合部8aが下部側に設けられた係止部2aに係合される。この係合は、係合部8a側を矢印方向へ押圧することで解除される。なお、ヒンジH、係合部8a、係止部2aはこの例に限られず、必要に応じて任意に設計可能である。
【0023】
また、上部1Aは、前後側壁10,11が垂直壁に設けられると共に、左右側壁12,13が上から下に向かって互いに近づく傾斜面12a,13aに設けられている。傾斜面12a,13aは、角度が55度~65度(この例では約60度)に設定されている。前後側壁10,11は、最上部分が垂直壁であり、その垂直壁の内面に対向して設けられた一対のガイド片15,15を有している。各ガイド片15は、傾斜面12a,13aの下端にほぼ対応した真上に位置している。
【0024】
ガイド片15同士の間には仕切り板6が位置決め配置される。仕切り板6は、図2(c)に示されるごとく頭部6a及び胴部6bからなる。頭部6aは、ロート5B,5Dから上に突出する箇所であり、胴部6bの両端面から延びる溝部6d,6dを有している。胴部6bは、図5及び図6の各(c),(d)に示されるごとく傾斜面12aと対向する側面に突設された当て板6c,6cを有している。各当て板6cは、先端が傾斜面12aの傾きに対応した傾きに形成されている。
【0025】
そして、仕切り板6は、ロートを構成している各上部1A内に対し、胴部6bが両端をガイド片15同士の間の隙間を通って挿入され、各当て板6cが前後壁面10,11の内面に接した状態に組み込まれる。ロート5B,5Dは、仕切り板6の組込状態において、下部2A内に通じている収容空間、つまり1つの傾斜面13aを有した収容空間S1,S3を区画している。このため、図5及び図6において、ロート5A,5Cの収容空間S,S2は、ロート5B,5Dの収容空間S1,S3に比べ仕切り板6を組み込まない分だけ大きくなっている。ロート5Aの収容空間Sは、ロート5Cの収容空間S2に比べ下開口24を下開口29より拡張した分だけ大きくなっている。ロート5Bの収容空間S1は、ロート5Dの収容空間S3に比べ下開口24を下開口29より拡張した分だけ大きくなっている。
【0026】
以上の上部1Aにおいて、前後側壁10,11の外面に支持板18,18が設けられていると共に、前後側壁10,11及び左右側壁12,13の外面下側にL形のアングル16が設けられている。アングル16は、下部2A,2Bの外面上側に設けられたL形のアングル17に重ねられる。そして、各ロート5A~5Dは、上部1Aと大形の下部2A、上部1Aと小形の下部2Bがアングル16,17同士をボルト等により連結操作することで一体化される。また、各ロート5A~5Dは、台座9Aに対し各支持板18により安定保持される。台座9Aは、パイプや骨材により所定大の立体に形成したもので、各ロート5A~5Dを所定高さで水平状態に保持できると共に、各ロートの下開口24,29を通過して排出される粒状材料を入れる容器Cを配置可能となっている。
【0027】
なお、以上のロート5A~5Dは、上部の前後側壁10,11の最上部分(d=20mm)、つまり傾斜面12a,13aから垂直壁に達する箇所まで粒状材料である建設発生土を投入する設定となっている。各部の寸法として、図5のロート5Bにおいて、aは195mm、bは134mm、cが118mm、dが20mm、eが42mm、fが80mm、gが79mmである。図6のロート5Dでは、a1が195mm、b1が134mm、c1が148mm、d1が20mm、e1が32mm、f1が50mm、g1が80mmである。また、各種試験からは、各ロート5A~5Dの収容容積ないしは建設発生土等の投入容積として、約1500~1900cm が取扱性及び安定した再現性などから好ましい。
【0028】
(第2形態の装置)図3及び図4図7及び図8において、建設発生土等の簡易評価装置は、第1形態に対し傾斜面を4つの態様と3つの態様にした点で異なっている。具体的には、掘削工事や地盤改良に伴う建設発生土等について、砂杭系地盤改良の杭材料として再利用の可否を判定するため用いられるもので持ち運び容易な大きさとなっており、投入用上開口34及び排出用下開口44,49の間を形成している周囲側壁が上から下へ行くに従って次第に水平断面積を減じる下窄み形状の収容空間を区画しているロート50A,50B,50C,50Dと、当該ロート50B,50D内に組み込まれる仕切り板7と、各ロート50A~50Dの下開口44,49を開閉する蓋8C ,8Cと、蓋付きロート50A~50Dを所定高さに保持する台座9Bとを備えている。
【0029】
ここで、ロート50A~50Dは、共通の上部3Aに対し排出用下開口の大きさを変えた下部4A又は4Bがアングル36,37を介して不図示のボルト等により着脱可能に連結されている。上部3Aは、周囲側壁が前後側壁30,31及び左右側壁32,33で水平断面略矩形状、特に正方形に形成されている。下部4Aは、周囲側壁が前後側壁40,41及び左右側壁42,43で水平断面略矩形状、特に正方形に形成されている。左右側壁42,43は、上側が上部3Aの傾斜面32a,33aとほぼ連続する傾斜面42a,43aとなっている。下部4Bは、下部4Aに比べて排出用下開口49を一回り小さく設けており、周囲側壁が前後側壁45,46及び左右側壁47,48で水平断面略矩形状、特に正方形に形成されている。下部4Bは、左右側壁47,48の上側が上部の傾斜面32a,33aとほぼ平行となる傾斜面47a,48aとなっている。
【0030】
また、下部4A,4Bは、ヒンジHを支点として回動されて各下部の下開口44,49を開閉する蓋8C ,8Dを有している。蓋8C ,8Dは、下部4A,4Bに対しヒンジHを支点として下開口44,49を塞いだ閉位置と、下開口44,49を全開した開位置とに切り換えられる。閉位置では、図3(c)に例示されるごとく蓋側に設けられた係合部8aが下部側に設けられた係止部2aに係合される。この係合は、係合部8a側を矢印方向へ押圧することで解除される。これらは第1形態と同じ。
【0031】
また、上部3Aは、前後側壁30,31が上から下に向かって互いに近づく傾斜面30a,31aに設けられると共に、左右側壁32,33も上から下に向かって互いに近づく傾斜面32a,33aに設けられている。傾斜面30a,31a及び傾斜面32a,33aは、立ち上がり角度が55度~65度(この例では約60度)に設定されていると共に、最上部分が垂直壁に形成されている。傾斜面30a,31a側の垂直壁は、内面に対向して設けられた一対のガイド片35,35を有している。各ガイド片35は、傾斜面32a,33aの下端にほぼ対応した真上に設けられている。
【0032】
ガイド片35同士の間には仕切り板7が位置決め配置される。仕切り板7は、図4(c)に示されるごとく略矩形の頭部7a及び略逆台形の胴部7bからなる。頭部7aは、ロート50B,50Dから上に突出する箇所であり、胴部7bの両端面から延びる溝部7d,7dを有している。胴部7bは、図7及び図8の各(c),(d)に示されるごとく傾斜面32aと対向する側面に突設された当て板7c,7cを有している。各当て板7cは、先端が傾斜面32aの傾きに対応した傾きに形成されている。
【0033】
そして、仕切り板7は、ロートを構成している各上部3A内に対し、胴部7bが両端をガイド片35同士の間の隙間を通って挿入され、各当て板7cが傾斜面30a,31aに接した状態に組み込まれる。ロート50B,50Dは、仕切り板7の組込状態において、下部4A内に通じている収容空間、つまり3つの傾斜面30a,31a,33aを有した収容空間S5,S7を区画している。このため、図7及び図8において、ロート50A,50Cの収容空間S4,S6は、ロート50B,50Dの収容空間S5,S7に比べ仕切り板7を組み込まない分だけ大きくなっている。ロート50Aの収容空間S4は、ロート50Cの収容空間S6に比べ下開口44を下開口49より拡張した分だけ大きくなっている。ロート50Bの収容空間S5は、ロート50Dの収容空間S7に比べ下開口44を下開口49より拡張した分だけ大きくなっている。
【0034】
以上の上部3Aにおいて、前後側壁30,31の外面に支持板38,38が設けられていると共に、前後側壁30,31及び左右側壁32,33の外面下側にL形のアングル36が設けられている。アングル36は、下部4A,4Bの外面上側に設けられたL形のアングル37に重ねられる。そして、各ロート50A~50Dは、上部3Aと大形の下部4A、上部3Aと小形の下部4Bがアングル36,37同士をボルト等により連結操作することで一体化される。また、各ロート50A~50Dは、台座9Bに対し各支持板38により安定保持される。台座9Bは、パイプや骨材により所定大の立体に形成したものであり、各ロート50A~50Dを所定高さで水平状態に保持できると共に、各ロートの下開口44,49を通過して排出される建設発生土等を受け入れる容器Cを配置可能となっている。
【0035】
なお、以上のロート50A~50Dは、上部の前後側壁30,31及び左右側壁32,33の各最上部分、つまり各傾斜面30a~33aから垂直壁に達する箇所まで建設発生土等を投入する目安ないしは設定となっている。各部の寸法として、図7のロート50Bにおいて、a2は195mm、b2は134mm、c2が118mm、d2が20mm、e2が42mm、f2が80mm、g2が80mmである。図8のロート50Dでは、a3が195mm、b3が134mm、c3が148mm、d3が20mm、e3が32mm、f3が50mm、g3が50mmである。また、各種試験からは、各ロート50A~50Dの収容容積ないしは建設発生土等の投入容積として、約2500~3400cm が取扱性及び安定した再現性などから好ましい。
【0036】
(簡易評価方法)この簡易評価方法は、本発明者らが建設発生土等を再利用する際に便利な図13の簡易選定図表を完成させた後、更に図表中の無配合(そのまま適用)の箇所、つまり対象の建設発生土等について含水比Wが25%以下、細粒分含有率Fc15%以下の土に該当するか否かを、従来のように含水比と細粒分含有率を計測することなく、即断できる構成がないか検討を重ねてきた結果、以下に挙げる第1から第3実施例の通過試験などにより妥当なものと確証に至った次のような構成である。
【0037】
すなわち、この簡易評価方法では、上記した簡易評価装置を用いて、ロートの下開口を蓋により塞いだ閉状態で、当該ロート内に上開口より投入して堆積させた建設発生土等が蓋を開状態に切り換えたときに下開口を通過して排出されるか否かを目視により調べる。その評価は、排出された場合に杭材料としてそのまま使用可能と判断し、排出されない場合に含水比や細粒分含有率を調整又は改質しなければ使用不能と判断するものである。次に、このような構成に至った背景を含め、形態の異なるロートを用いた第1実施例から第3実施例の通過試験例により本発明の簡易評価方法を明らかにする。
【0038】
(第1実施例)この実施例では、ロートを用いたときの現象として、表1に一覧したごとくロート内を区画している傾斜面の数と排出用下開口(排出口)の大きさによって砂や土がロートを通過するかしないか、要は砂や土の通過性を調べた試験例である。ここで、材料条件として、実施例1と2は茨城県の行方砂であり、細粒分含有率Fcが2.4、含水率Wが20%である。実施例3-6は赤土であり、細粒分含有率Fcを測定しなかったが、経験的におおよそ40%程度、含水率が41%である。ロート条件として、表1において、実施例1-5の通過試験で使用した簡易評価装置は、図1図8に示された何れから装置である。具体的には、実施例1と3は図2及び図6(c),(d)の構成、実施例2は図2及び図5(c),(d)の構成、実施例4は図1及び図6(a),(b)の構成、実施例5は図4及び図8(c),(d)の構成、実施例6は図3及び図8(a),(b)の構成である。
【0039】
通過性の評価は、実施例1-5の各ロートを蓋で塞いだ閉状態で、各ロート内に行方砂又は赤土をシャベルにて上開口よりほぼ同じ容量を投入して堆積させ、数秒後、蓋を開状態に切り換える。そして、評価は、蓋を開にしたときに行方砂又は赤土が下開口を通過して排出されるか否かを目視により判定した。符号○は良好に排出されたことを示し、符号×は排出されないことを示している。
【0040】
表1:通過試験の条件と判定結果






排出口:小は50×80mmの長方形、大は80×80mmの正方形
判定 :○印は良好に通過、×印は通過不能
【0041】
以上の判定結果により、ロートの排出用下開口(排出口)の形状と傾斜面の数によって土砂の通過性が変化することが分かった。一般的には、ロートの排出口が大きく、傾斜面積ないしは傾斜面の数が少ないほど土砂は通過し易いものとなる。また、本発明者らは、土砂の含水比と照らし合わせて、ロートの適切な傾斜面の数を調べた結果、傾斜面が2つのときに材料砂がそのまま使用できるか、否かの評価に適切であるとの結論に至った。なお、図9図13の簡易選定図表に第1実施例で使用した実施例1と2(No1と2)の行方砂と、実施例3~6(No3~6)の赤土の対応部を○印で示した参考図である。
【0042】
(第2実施例)この実施例は、図13のSPC中詰め材料である簡易選定図表との整合がとれる最適なロート形状を特定するため表2に一覧したごとくロート形状を変えて通過性を確認したときの通過確認試験例である。材料条件として使用土砂が7号珪砂、その細粒分含有率Fcが10.3%の場合で、含水比が5%、10%、25%、30%に調整した材料である。ロート条件として、実施例7~17の通過試験で使用した簡易評価装置として、実施例7と9は図2及び図6(c),(d)の構成、実施例8と10は図1及び図6(a),(b)の構成、実施例11と12及び15は図2及び図5(c),(d)の構成、実施例13と16及び17は図1及び図5(a),(b)の構成、実施例14は図4及び図7(c),(d)の構成である。
【0043】
通過性の評価は、実施例7-17の各ロートを蓋で塞いだ閉状態で、各ロート内に含水比を調整した7号珪砂をシャベルにて上開口よりほぼ同じ容量を投入して堆積させ、数秒後、蓋を開状態に切り換える。そして、評価は、蓋を開にしたときにロート内の7号珪砂が下開口を通過して排出されるか否かを目視により判定した。符号○は良好に排出されたことを示し、符号×は排出されないことを示し、符号△は7号珪砂が下開口からほぼ排出されたが、極微量の珪砂がロート内の傾斜面等に付着した場合であり、この場合も通過試験上は問題なく排出されるものとする。
【0044】
表2:通過確認試験1の条件と判定結果


排出口:小は50×80mmの長方形、大は80×80mmの正方形
判定 :○印は良好に通過、×印は通過不能、△印はほぼ通過
【0045】
以上の判定結果により、ロートの排出用下開口(排出口)の形状が小さいと含水比によらず土砂がロートから排出されないことが分かる。また、ロートの傾斜面積ないしは傾斜面の数が少なくなるほど土砂が排出されやすくなる。この場合、傾斜面が1つの構成では土砂の含水比が大きくなっても容易に排出されてしまう。逆に、傾斜面が3つの構成では土砂の含水比が10%程度でも土砂が排出されなくなってしまう。以上のことから、ロート条件としては傾斜面が2つの構成であり、また、排出口である排出用下開口が大きいロートが材料砂の判定、つまり本発明の簡易評価方法に適していると言える。なお、図10図13の簡易選定図表に第2実施例で判定結果が実施例11~13と15(No11~13と15)の○と実施例16(No16)の△の土砂の対応部を○印で示した参考図である。
【0046】
(第3実施例)この実施例は、実際の工事現場において、任意に選んだ4箇所(実施例18~21)の土砂を採取して、該土砂をロート条件として図1及び図5(a),(b)の構成、つまり傾斜面が2つの構成で排土用下開口である排出口が大の構成により上記各実施例と同様に通過試験を確認した通過確認試験例である。また、この実施例では、試験後に使用した各土砂について細粒分含有率Fcと含水比を計測した。
【0047】
通過性の評価は、実施例18-21の各土砂について、ロートを蓋で塞いだ閉状態で、各ロート内に土砂をシャベルにて上開口よりほぼ同じ容量を投入して堆積させ、数秒後、蓋を開状態に切り換える。そして、評価は、蓋を開にしたときにロート内の土砂が下開口を通過して排出されるか否かを目視により判定した。符号○は良好に排出されたことを示し、符号×は排出されないことを示している。
【0048】
表3:掘削孔造成により排土された土砂を用いた通過確認試験の条件と結果
排出口:大は80×80mmの正方形
判定 :○印は良好に通過、×印は通過不能
【0049】
以上の判定結果により、第2実施例で確証に至った本発明の簡易評価方法、すなわちロート条件としては傾斜面が2つの構成であり、また、排出口である排出用下開口が大きいロートが土砂の判定に最適なことが実証された。なお、図11図13の簡易選定図表に実施例18~21(No18~21)で使用した土砂の箇所を○印で示した参考図である。
【0050】
なお、本発明の簡易評価方法及び装置は、各請求項で特定される要件を除いて種々変更可能なものである。一例としては、ロートを水平状態に支持する台座の形状等については色々変形可能である。また、以上の各実施例は、特に請求項1~3の有用性を明らかにする代表的なものを挙げたが、本発明を制約するものではない。
【符号の説明】
【0051】
1A,3A・・・・・ロートの上部
2A,2B・・・・・ロートの下部
4A,4B・・・・・ロートの下部
5A~5D・・・・・ロート
50A~50D・・・ロート
6,7・・・・・・・仕切り板
8A~8D・・・・・蓋
9A,9B・・・・・台座
10,11・・・・・前後側壁
12,13・・・・・左右側壁(12a,13aは傾斜面)
14,34・・・・・上開口
16,17・・・・・アングル
18,38・・・・・支持板
20,21・・・・・前後側壁
22,23・・・・・左右側壁(22a,23aは傾斜面)
24,29・・・・・下開口
25,26・・・・・前後側壁
27,28・・・・・左右側壁(27a,28aは傾斜面)
30,31・・・・・前後側壁(30a,31aは傾斜面)
32,33・・・・・左右側壁(32a,33aは傾斜面)
36,37・・・・・アングル
40,41・・・・・前後側壁(40a,41aは傾斜面)
44,49・・・・・下開口
42,43・・・・・左右側壁(42a,43aは傾斜面)
45,46・・・・・前後側壁(45a,46aは傾斜面)
47,48・・・・・左右側壁(47a,48aは傾斜面)
C・・・・・・・・・容器
H・・・・・・・・・ヒンジ
S1~S4・・・・・収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13