(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】マイクロ波耐性成形品の製造のためのコポリアミド系成形材料の使用
(51)【国際特許分類】
C08G 69/26 20060101AFI20221028BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20221028BHJP
C08K 13/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
C08G69/26
C08L77/06
C08K13/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018036228
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2021-01-06
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518071372
【氏名又は名称】エムス-パテント アクツィエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ アエプリ
(72)【発明者】
【氏名】ボート ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ウィーデマン
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-253727(JP,A)
【文献】特開2016-020490(JP,A)
【文献】特開2012-184372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0135720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00 - 69/50
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波耐性成形品の製造のための非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料
の使用であって、
前記非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料は少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)を含み、前記コポリアミド(A)は
前記コポリアミド(A)を構成する単量体として少なくとも以下の単量体を含有し:
(a)少なくとも1種の脂環式ジアミン;
(b)少なくとも1種の二量体脂肪酸0.25~30モル%;及び
(c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸;
ここで全ての単量体の割合は合計で100モル%であり、
前記コポリアミド(A)は155℃以上のガラス転移温度及び8.30×10
-3以下の誘電損失係数tanδを有
し、
前記マイクロ波耐性成形品が、食器類、容器、入れ物、大皿、鍋、カップ、ビーカー、小皿、蓋、舟形ソース入れ、フラスコ、又はトレイカバー、盛り付け用トレイ若しく配膳用トレイの物品群から選択される、電子レンジ内で使用されるものである、
使用。
【請求項2】
請求項1に記載の
使用であって、
90重量%を超える範囲
の少なくとも1種の
前記非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料で構成されている、
ことを特徴とする
使用。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
使用であって、
前記少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)のガラス転移温度は、170℃以
上である、
ことを特徴とする
使用。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の
使用であって、
前記少なくとも1種の非晶性又は熱可塑性コポリアミド(A)の前記誘電損失係数tanδは、8.0×10
-3以
下である、
ことを特徴とする
使用。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の
使用であって、前記少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)が、少なくとも以下の単量体を含み:
40~50モル
%の脂環式ジアミン(a);及び
0.5~25モル
%の二量体脂肪酸(b);並びに
0.1~49.75モル
%の芳香族ジカルボン酸(c);並びに選択的に含まれるところの
0~30モル
%の脂肪族ジカルボン酸(d);
ここで、すべての単量体の割合が合計で100モル%になる、
ことを特徴とする
使用。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の
使用であって、
少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)は、少なくとも以下の単量体を含有する:
(a)ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルナン-2,6-ジアミン又は2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2-(4,4'-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン及びそれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環式ジアミン成分;並びに
(b)36又は44個の炭素原子を有する二量体脂肪酸及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の二量体脂肪酸;並びに
(c)イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸;並びに選択的に含有されるところの
(d)ヘキサン-1,6-二酸、ノナン-1,9-二酸、デカン-1,10-二酸、ウンデカン-1,11-二酸、ドデカン-1,12-二酸、トリデカン-1,13-二酸、テトラデカン-1,14-二酸、オクタデカン-1,18-二酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸:
ことを特徴とする
使用。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の
使用であって、
少なくとも1種の非晶質又は微晶質コポリアミド(A)は、少なくとも以下のモノマーを含有する:
(a)ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、及びそれらの混合物からなる群から選択され
る少なくとも1種の脂環式ジアミン成分;並びに
(b)36個の炭素原子を有する少なくとも1つの二量体脂肪酸;並びに
(c)イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸;並びに選択的に含有されるところの
(d)ドデカン-1,12-二酸、テトラデカン-1,14-二酸、オクタデカン-1,18-ジオン酸及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸:
ことを特徴とする
使用。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の
使用であって、
前記コポリアミド(A)は、PA TMDCI/TMDCT/TMDC12/TMDC36、PA TMDCI/TMDCT/TMDC9/TMDC36、PA TMDCI/TMDC12/TMDC36、PA TMDCI/TMDC13/TMDC36、PA TMDCI/TMDC11/TMDC36 、PA TMDCI/TMDC12/TMDCCHD/TMDC36、PA TMDCI/TMDC36、PA TMDCI/TMDC44、及びそれらの混合物からなる群から選ばれ、ここでTMDCは全体的に又は部分的にMACMによって置換されている、
ことを特徴とする
使用。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の
使用であって、
前記少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)は、さらに他の単量体(d)として少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸を含む、
ことを特徴とする
使用。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の
使用であって、
前記コポリアミド系成形
材料は添加剤(B)を含有する、
ことを特徴とする
使用。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の
使用であって、
前記コポリアミド系成形材料は以下の組成を有する:
90~100重量
%のコポリアミド(A)、及び
0~10重量
%の添加剤(B)、
ここで成分(A)及び(B)の合計が100重量%になる:
ことを特徴とする
使用。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の
使用であって、
少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)に関してASTM D 1003-13 (2013)に従って厚さ2mmのプラークにより測定した光透過率は75%以
上である、
ことを特徴とする
使用。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の使用であって、
前記マイクロ波耐性成形品が、0.05~5.0mmの範囲の壁厚を有する、
ことを特徴とする
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の非晶性ポリアミド系成形材料又は微結晶性ポリアミド系成形材料を含むマイクロ波耐性成形品、及びマイクロ波耐性成形品の製造のための非晶性ポリアミド系成形材料又は微結晶性ポリアミド系成形材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、従前よりマイクロ波耐性高分子成形品又は成形材料がいくつか記載されている。
【0003】
独国特許出願公開第19910948号明細書は、合成樹脂製断熱容器及び合成樹脂製断熱蓋に関する。合成樹脂製断熱容器では断熱層が内部容器と外部容器との間の空間に形成されており、ポリエステル系、芳香族ポリアミド系、ポリケトン系、ポリフッ化ビニリデン系、アクリロニトリル系及び環状オレフィン系の樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の合成樹脂からなり、空気よりも熱伝導率の低いガスが封入されている。合成樹脂製断熱蓋では、同様に下部合成樹脂製蓋体と上部合成樹脂製蓋体との間の空間に断熱層が形成されている。合成樹脂製断熱容器と合成樹脂製断熱蓋とは1種類の樹脂のみで構成されていてもよい。
【0004】
独国特許出願公開第3913114号明細書には、特定のジヒドロキシジフェニルシクロアルカンとシリコーンゴムをベースとするポリカーボネートとからなる加熱ひずみ耐性熱可塑性成形材料、その製造方法及び成形品の製造のためのその使用が記載されている。本発明は、a)1重量%~99重量%、好ましくは10重量%~90重量%のジヒドロキシジフェニルシクロアルカンをベースとする特定のポリカーボネート、b)1重量%~99重量%、好ましくは10重量%~90重量%他のポリカーボネート、特にビスフェノールAに基づくもの、及びc)1~95重量%、好ましくは2~60重量%、特に3~40重量%のシリコーンゴム、特にシリコーングラフトゴムの混合物を提供する。
【0005】
独国特許出願公開第4401058号明細書は成形材料に関連し、当該成形材料は必須成分として、A)全末端基の少なくとも0.03重量%がヒドロキシル末端基であるポリアリーレンエーテル1~50重量%、B)全末端基の0.03重量%未満がヒドロキシル末端基であるポリアリーレンエーテル5~94重量%、C)ポリカーボネート5~94重量%、D)繊維状又は粒状の充填剤0~50重量%及びE)0~40重量%の耐衝撃性改良ゴム(impact-modifying rubbers)を含み、F)さらに添加剤0~40重量%を含み、ここで、成分A~Fは合計100重量%である。
【0006】
今日まで、非晶性ポリアミド系成形材料又は微結晶性ポリアミド系成形材料をベースとするマイクロ波耐性成形品の記述はなかった。しかしながら、他の用途、例えば薄い壁を有する射出成形品、剛性チューブ、光ファイバー用シース、電気部材又は電子部材の部品、ハウジング又はハウジングの構成要素のためのポリアミド系成形材料が知られている。
【0007】
欧州特許出願公開第0469435号明細書は以下からなる非晶性コポリアミドに関連している、a)少なくとも1種の式Iの脂環式ジアミン50モル%
【0008】
【0009】
式中、Rは1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R’は水素又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、xは0~4である、b)二量体脂肪酸5~25モル%、c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸25~45モル%、ここで成分a)~c)のモル総和が100%以下である、必要に応じてd)ポリアミド形成性単量体、a)、b)及びc)の合計を基準として0~50モル%。これらのコポリアミドは使用が容易であり、好ましくは射出成形法で用いられ、高い剛性及び高い耐衝撃性、高いガラス転移温度及び低い吸湿性を特徴とする成形品の製造に向き、特に薄い壁を有する成形品に向き;例えば押出加工によって加工することで剛性チューブや光ファイバー用シースを得ることができる。フィルムの分野では、それらを他のポリマーと組み合わせて加工することができ、例えば同時押出法によって加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国特許出願公開第19910948号明細書
【文献】独国特許出願公開第3913114号明細書
【文献】独国特許出願公開第4401058号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0469435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここからさらに進めて、本発明が取り組む課題は非晶性ポリアミド系成形材料又は微結晶性ポリアミド系成形材料をベースとするマイクロ波耐性成形品を提供することであり、特にこれがマイクロ波照射下で熱を持ちにくく、これにより電子レンジ内で使用された場合に寸法が安定したままとなることであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は独立請求項1の特徴を有する成形品によって解決され、これは少なくとも1種の非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料を含み、前記コポリアミド系成形材料は、少なくとも以下の単量体を含有する少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)を含有し:
【0013】
(a)少なくとも1種の脂環式ジアミン、
【0014】
(b)少なくとも1種の二量体脂肪酸0.25モル%~30モル%及び
【0015】
(c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、
【0016】
ここで、コポリアミド(A)中に存在する全ての単量体の割合は合計で100モル%であるところ、ガラス転移温度は155℃以上であり、誘電損失係数(dielectric loss factor)tanδが8.30×10-3以下であることから、マイクロ波耐性成形品の製造に使用される。
【0017】
従属請求項2~13は、これらの成形品の好ましい態様に関する。
【0018】
他の課題も本発明によって解決されるが、その課題は非晶性ポリアミド系成形材料又は微結晶性ポリアミド系成形材料であって、マイクロ波耐性成形品の製造に使用されるものを提供することである。
【0019】
この課題は非晶性ポリアミド系成形材料又は微結晶性ポリアミド系成形材料の使用を通じて独立請求項14に沿って解決されるところ、かかる成形材料は少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)からなり、これが少なくとも以下の単量体を含む:
【0020】
(a)少なくとも1種の脂環式ジアミン、
【0021】
(b)少なくとも1種の二量体脂肪酸0.25モル%~30モル%及び
【0022】
(c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、
【0023】
ここで、コポリアミド(A)中に存在する全ての単量体の割合が合計で100モル%であるところ、ガラス転移温度は155℃以上であり、誘電損失係数tanδが8.30×10-3以下であることから、マイクロ波耐性成形品の製造に使用される。
【0024】
従属請求項15~17は、本発明に係る使用の好ましい態様に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【発明を実施するための形態】
【0026】
_用語の定義_
【0027】
_誘電損失係数_
【0028】
本発明の説明において、複素比誘電率(=εr)の「誘電損失係数」(=tanδ)は、交番電界内にある材料中で熱に変換されることで当該電界から失われるエネルギーの尺度を意味するものする。
【0029】
複素比誘電率(εr)の「誘電損失係数」(=tanδ)は、IEC60250-1(1969)に従って以下の通り定義され、
【0030】
tanδ=εr’’/εr’
【0031】
複素比誘電率(εr)は以下の通り定義され
【0032】
εr=εr’-jεr’’
【0033】
ここでεr’’は複素比誘電率εrの虚数部であり、
【0034】
εr’は複素比誘電率εrの実数部であり、jは虚数単位である。
【0035】
_ポリアミド及びその単量体の表記及び略語_
【0036】
本発明の文脈において、用語「ポリアミド」(略語:PA)は包括的な用語(umbrella term)であり;ホモポリアミド及びコポリアミドを包含する。ポリアミド及びその単量体に対して選択した表記法及び略語はISO規格1874-1(2011年、(D))に規定されたものに対応する。本明細書で使用される略語は単量体のIUPAC名に対する同義語として使用される。より具体的には、単量体に対する以下の略語が本出願中に表されている:ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン (3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンとも呼ばれる、CAS番号6864-37-5)に対するMACM、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン (3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンとも呼ばれる、CAS番号65962-45-0)に対するTMDC、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン (4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンとも呼ばれる、CAS番号1761-71-3)に対するPACM、テレフタル酸(CAS番号100-21-0)に対するT、イソフタル酸(CAS番号121-95-5)に対するI、炭素原子数36の二量体脂肪酸(CAS番号68783-41-5又は61788-89-4)に対する36、ドデカン二酸 (デカン-1,10-ジカルボン酸とも呼ばれる、CAS番号693-23-2)に対する12、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸(CAS番号1076-97-7)に対するCHD及びラウロラクタム(CAS番号947-04-6)に対する12。
【0037】
_非晶性又は微結晶性ポリアミド_
【0038】
非晶性又は微結晶性ポリアミドは、ISO 11357(2013)に沿った示差走査熱量測定(DSC)において、20K/分の昇温速度の条件で、融解熱が好ましくは50J/g以下、より好ましくはそれ以上25J/g以下、最も好ましくは0~22J/gである。
【0039】
微結晶性ポリアミドは半結晶性ポリアミドであるため融点を有する。しかしながら、それらは形態を有しており、そこでは微結晶の寸法は小さいため、これより製造された2mmの厚さを有するプラーク(薄板、plaque)はまだ透明であり、したがってASTM D1003-13(2013年)に従って測定したその光透過率は少なくとも75%である。
【0040】
本発明に係るポリアミド系成形材料に使用される微結晶性ポリアミドにおいて、ISO 11357(2013)に従って測定される融点は、好ましくは255℃以下である。
【0041】
非晶性ポリアミドは、微結晶性ポリアミドに比べて融解熱が小さい。非晶性ポリアミドは、ISO 11357(2013)に沿った示差走査熱量測定(DSC)において、20K/分の昇温速度で、融解熱が好ましくは5J/g以下、より好ましくは3J/g、最も好ましくは0~1J/gである。
【0042】
非晶性ポリアミドは、それらの非晶性のため融点を持たない。
【0043】
ASTM D1003-13(2013)に沿って厚さ2mmのプラーク上で測定した非晶性又は微結晶性ポリアミドの光透過率は、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%である。
【0044】
_コポリアミド系成形材料_
【0045】
本発明に係るコポリアミド系成形材料はコポリアミドAをベースとしており、好ましくはこれを少なくとも90重量%程度は含有する。「コポリアミド系成形材料」という用語は成形材料中にホモポリアミドが存在しないと解釈されるものではないが、成形材料はコポリアミドのみを含むものが好ましい。
【0046】
_二量体脂肪酸_
【0047】
本発明の説明において、二量体脂肪酸(b)は少なくとも28個の炭素原子を有する。これらは不飽和モノカルボン酸を二量体化してジカルボン酸を生じることにより得られるものであり、二量体化は触媒手段によって行われることが好ましい。本発明に係る二量体脂肪酸はジカルボン酸である。
【0048】
_脂肪族ジカルボン酸_
【0049】
本発明の説明において、脂肪族ジカルボン酸(d)は、6~22個の炭素原子を有するジカルボン酸を意味するものとする。これらは、直鎖状、分枝状又は脂環式であり、化学構造上水素原子で飽和していてもよい。
【0050】
_単量体量の数値_
【0051】
本発明に係るコポリアミドはジカルボン酸及びジアミンのみを含有する。これらのモル量は、全てのジアミンの合計が50モル%、全てのジカルボン酸の合計が50モル%であり、ジアミンとジカルボン酸の合計量はコポリアミドの100%である。
【0052】
ポリアミド、すなわちジカルボン酸及びジアミンが、またラクタム又はアミノ酸をXモル%の割合で含有する場合、全ジアミンの合計は(50~0.5X)モル%であるとともに全ジカルボン酸の合計は(50~0.5X)モル%であり、またジアミンとジカルボン酸の合計量はコポリアミドに対して100モル%である。
【0053】
コポリアミド中のジカルボン酸及びジアミンの量の数値に関して、全てのジアミンのモル量の合計は、全てのジカルボン酸のモル量の合計と本質的に("essentially")等しい。「本質的に等しい("Essentially equal")」とは、ジカルボン酸又はジアミンの過剰分の最大が3%であり、ジアミンに対するジカルボン酸のモル比が1.03:1~1:1.03であることを意味する。好ましくはジカルボン酸又はジアミンの過剰分の最大は2%であり、これはジカルボン酸とジアミンのモル比が1.02:1~1:1.02であることを意味する。過剰分は、単量体の減少を補償する目的で導入され、及び/又はポリアミドの相対粘度を調整する目的で導入されることでモル質量を調整することになる。
【0054】
単量体に関する量の数値は、重縮合において使用されるこれらの単量体の対応するモル比がまた、このように重縮合によって調製されたコポリアミドに反映されると考えられる。
【0055】
_量の数値に関する一般的な詳細_
【0056】
本発明に係るコポリアミド系成形材料は成分(A)及び成分(B)を単独で含有することが好ましく、このため成分(A)及び(B)の合計が100重量%でなければならない。個々の成分(A)及び(B)の量の数値の固定範囲は、その特定の範囲内で個々の成分のそれぞれを任意の量で選択されることを表しているが、ただし全成分(A)~(B)の合計100重量%であるという限定条件も満たされる。
【0057】
コポリアミド(A)中に存在するジアミン及びジカルボン酸の量の数値は、いずれの場合も合計50モル%である。コポリアミド(A)中に存在する全ての単量体は合計100モル%である。個々の単量体の量の数値の固定範囲は、その特定の範囲内で個々の成分のそれぞれを任意の量で選択できることを表しているが、ただしコポリアミド(A)中の全ての単量体の合計量が100重量%であるという限定条件も満たされる。
【0058】
_マイクロ波耐性成形品_
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、マイクロ波耐性成形品は90重量%超、好ましくは95重量%超、より好ましくは98重量%超の程度の少なくとも1種の非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料を含む。
【0060】
成形品の残部は総じて所望のマイクロ波耐性材料であってもよい。これらの材料はナイロン-10,10、ナイロン-11、ナイロン-12、耐衝撃性改良剤、シクロオレフィン共重合体又はそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。あるいは、成形品は非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料のみからなるものであってもよい。
【0061】
本発明の他の実施形態において、マイクロ波耐性成形品の壁の厚さは0.05~5.0mm、好ましくは0.1~4.5mm、より好ましくは1.0~4.0mmである。
【0062】
マイクロ波耐性成形品は特に、食器類、容器(vessels)、入れ物(containers)、大皿(dishes)、鍋、カップ、ビーカー、小皿(plates)、蓋、舟形ソース入れ(sauce boats)、フラスコ、又はトレイカバー(covering trays)、盛り付け用トレイ(undertrays)若しく配膳用トレイ(serving trays)などの物品からなる群から選択される。
【0063】
これらの物品は家庭にて、外食産業(gastronomy)にて、実験室にて及び/又は工場にて使用することができる。
【0064】
_コポリアミド系成形材料_
【0065】
以下に述べる本発明の好ましい実施形態において、非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料を詳細に特定する。これらの実施形態は本発明に係る成形にも、本発明に係る使用にも好ましい。
【0066】
少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)は、少なくとも以下の単量体を含有する:
【0067】
(a)少なくとも1種の脂環式ジアミン;
【0068】
(b)少なくとも1種の二量体脂肪酸0.25~30モル%;そして
【0069】
(c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸;さらに必要に応じて
【0070】
(d)少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸。
【0071】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の脂環式ジアミン成分(a)は、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルナン-2,6-ジアミン又は2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2-(4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、脂環式ジアミン(a)は少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)中において40~50モル%、好ましくは48~50モル%、特に好ましくはちょうど50モル%存在している。
【0073】
50モル%未満の脂環式ジアミンがコポリアミド(A)中に存在する場合、ジアミン成分は、分枝を持たない又は分岐状の直鎖脂肪族ジアミンe)の少なくとも1種を0~10モル%、好ましくは0~2モル%と合計して50モル%となる。
【0074】
コポリアミド系成形材料に対して非晶性コポリアミド(A)を使用することが好ましい。
【0075】
本発明の実施形態において、二量体脂肪酸(b)は36個又は44個の炭素原子を有する二量体脂肪酸であることが好ましく、二量体脂肪酸(b)は36個の炭素原子を有することがより好ましい。
【0076】
本発明の好ましい実施態様において、二量体脂肪酸(b)は、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)中に、0.5~25モル%、好ましくは1~20モル%、特に好ましくは8~12モル%又は1.5~4.4モル%含まれる。
【0077】
本発明に係るコポリアミド(A)中の二量体脂肪酸(b)は、145~210 mg KOH/gの範囲、特に好ましくは192~200 mg KOH/gの範囲の酸価を有することが好ましい。単官能酸の含有量は5%以下、二官能酸の含有率は88%以上、三官能酸の含有量は4%以下である。種々の酸の酸価又は含量は、AOCS Te 1a-64又はAOCS Tf 5-91に従って測定される。有用な製品であって36個の炭素原子を有するもの例には、Crodaのブランド名Pripol、特にPripol 1013,1012,1009,1006、又はCognisのブランド名Empol、特にEmpol 1012,1016又は1062として入手可能なものが含まれ、44個の炭素原子を有する製品としては例えばOleonのブランド名Radiacid 0975、又はCrodaのPripol 1004が含まれる。
【0078】
好ましくは、本発明に係るコポリアミド(A)の二量体脂肪酸(b)は、部分的に飽和しており、より好ましくは完全に飽和している。
【0079】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸群(c)は、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0080】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸(c)は、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)中に0.1~49.75モル%、好ましくは0.5~49.5モル%、より好ましくは10~49モル%、特に好ましくは18~42モル%又は38~42モル%又は23.6~36.5モル%含まれる。
【0081】
本発明の他の好ましい態様において、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸(d)は、ヘキサン-1,6-二酸、ノナン-1,9-二酸、デカン-1,10-二酸、ウンデカン-1,11-二酸、ドデカン-1,12-二酸、トリデカン-1,13-二酸、テトラデカン-1,14-二酸、オクタデカン-1,18-二酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0082】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸(d)は、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)中に0~30モル%、好ましくは0~25モル%、特に好ましくは0~20モル%又は12~22モル%存在する。
【0083】
本発明のさらに好ましい実施態様において、コポリアミド(A)はPA TMDCI/TMDCT/TMDC12/TMDC36、PA TMDCI/TMDCT/TMDC9/TMDC36、PA TMDCI/TMDC12/TMDC36、PA TMDCI/TMDC13/TMDC36、PA TMDCI/TMDC11/TMDC36、PA TMDCI/TMDC12/TMDCCHD/TMDC36、PA TMDCI/TMDC36、PA TMDCI/TMDC44及びそれらの混合物からなる群から選択され、TMDCは全体が又は部分的にMACMに置換されていてもよい。
【0084】
本発明の特に好ましい実施形態において、コポリアミド(A)は
【0085】
PA TMDCI/TMDCT/TMDC12/TMDC36、PA TMDCI/TMDC12/TMDC36、PA MACMI/MACMT/MACM12/MACM36、PA MACMI/MACM12/MACM36及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0086】
本発明のさらに特に好ましい実施形態において、コポリアミド(A)は、PA MACMI/MACM36、PA TMDCI/TMDC36及びそれらの混合物からなる群から選択され、ここで、MACMI及びMACM36の単位、又はTMDCI及びTMD36の単位は好ましくは70:30~95:5、より好ましくは75:25~90:10、特に好ましくは80:20~85:15である。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)のガラス転移温度は、少なくとも170℃、特に好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であるが、なお0.1重量%未満の含水量を有するペレットに対するISO 11357-2及び-3(2013)に従って測定したところによるものである。
【0088】
本発明のさらに好ましい実施形態において、少なくとも1種の非晶性又は熱可塑性コポリアミド(A)の誘電損失係数tanδは、8.0×10-3以下、好ましくは7.0×10-3以下、より好ましくは6.5×10-3以下である。
【0089】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料のガラス転移温度は、155℃以上、好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃であるが、なお0.1重量%未満の含水量を有するペレットに対するISO 11357-2及び-3(2013)に従って測定したところによるものである。
【0090】
本発明のさらに好ましい実施形態において、少なくとも1種の非晶性又は熱可塑性コポリアミド系成形材料(A)の誘電損失係数tanδは、8.3×10-3以下、好ましくは8.0×10-3以下、特に好ましくは7.0×10-3以下、より好ましくは6.5×10-3以下である。
【0091】
本発明の別の好ましい実施形態において、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)は、少なくとも以下の単量体を含む:
【0092】
(a)ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルナン-2,6-ジアミン又は2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルネン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2-(4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン及びそれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂環式ジアミン成分;並びに
【0093】
(b)36個又は44個の炭素原子を有する二量体脂肪酸及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の二量体脂肪酸;並びに
【0094】
(c)イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸;さらに必要に応じて
【0095】
(d)ヘキサン-1,6-二酸、ノナン-1,9-二酸、デカン-1,10-二酸、ウンデカン-1,11-二酸、ドデカン-1,12-二酸、トリデカン-1,13-二酸、テトラデカン-1,14-二酸、オクタデカン-1,18-二酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸。
【0096】
本発明の別の好ましい実施形態において、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)は、少なくとも以下の単量体を含む:
【0097】
(a)ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン及びそれらの混合物からなる群から選択される、中でも好ましくはビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の脂環式ジアミン成分;並びに
【0098】
(b)36個の炭素原子を有する少なくとも1つの二量体脂肪酸;並びに
【0099】
(c)イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸;さらに必要に応じて
【0100】
(d)ドデカン-1,12-二酸、テトラデカン-1,14-二酸、オクタデカン-1,18-二酸及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸。
【0101】
本発明の特に好ましい実施形態において、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)は、少なくとも以下の単量体を含む:
【0102】
(a)少なくとも1種の脂環式ジアミン40~50モル%、好ましくは48~50モル%、特に好ましくは正確に50モル%;
【0103】
(b)少なくとも1種の二量体脂肪酸8~12モル%;及び
【0104】
(c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸18~42モル%;
【0105】
(d)少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸0~20モル%;ここで
【0106】
コポリアミド(A)中に存在する全ての単量体の割合は100モル%になる。
【0107】
本発明の別の特に好ましい実施形態において、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)は、少なくとも以下の単量体を含む:
【0108】
(a)少なくとも1種の脂環式ジアミン40~50モル%、好ましくは48~50モル%、特に好ましくはちょうど50モル%
【0109】
(b)少なくとも1種の二量体脂肪酸1.5~4.4モル%;及び
【0110】
(c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸23.6~36.5モル%;
【0111】
(d)少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸12~22モル%;ここで
【0112】
コポリアミド(A)中に存在する全ての単量体の割合は100モル%になる。
【0113】
本発明の特に好ましい実施態様において、少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)は、少なくとも以下の単量体を含む:
【0114】
(a)少なくとも1種の脂環式ジアミン40~50モル%、好ましくは48~50モル%、特に好ましくはちょうど50モル%
【0115】
(b)少なくとも1種の二量体脂肪酸8~12モル%;並びに
【0116】
(c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸38~42モル%;ここで
【0117】
コポリアミド(A)中に存在する全ての単量体の割合は100モル%になる。
【0118】
一実施形態において、コポリアミドは、単量体(a)~(e)以外の単量体を含まない。
【0119】
本発明のさらに好ましい実施態様において、コポリアミド系成形用組成物(B)は添加物、好ましくは無機及び有機安定剤、特に酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤及び光安定剤、縮合触媒、鎖調節剤(chain regulators)、潤滑剤、離型剤、分離剤、鎖延長用添加剤(chain-extending additives)、染料、マーカー、無機顔料、有機顔料、蛍光増白剤、天然層状珪酸塩、合成層状珪酸塩、最大粒径100nmのナノスケールのフィラーからなる群から選ばれるものを含む。
【0120】
本発明の好ましいコポリアミド系成形材料は、以下の組成を有する:
【0121】
コポリアミド(A)を90~100重量%、好ましくは95~99.99重量%、より好ましくは98.0~99.9重量%、及び
【0122】
添加剤(B)を0~10重量%、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.1~2.0重量%、
【0123】
ここで成分(A)及び(B)が合計で100重量%になる。
【0124】
本発明の別の好ましい実施形態において、ASTM D 1003-13(2013)に従って測定した少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)の光線透過率は、それから製造された厚さ2mmのプラークににおいて75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以である。
【0125】
本発明の別の好ましい実施形態において、ASTM D 1003-13(2013)に従って測定した少なくとも1種の非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料の光透過率は、それから製造された厚さ2mmのプラーク上で75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0126】
本発明の好ましい実施形態における非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)の相対粘度は1.34~2.00、好ましくは1.35~1.80、より好ましくは1.36~1.65又は1.45~1.80であるが、なおポリアミド0.5gを100mlのm-クレゾールに溶解した溶液中で20℃にて測定した値である。
【0127】
本発明の別の好ましい実施形態において、非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)から形成された成形品は、非常に良好な機械的特性、特に高い耐衝撃性を有する。ISO179/2に従って23℃で測定したノッチ付き耐衝撃性は、好ましくは>4kJ/m2、より好ましくは>8kJ/m2、特に好ましくは>10kJ/m2である。ISO179/2に従って23℃で測定した耐衝撃性は、好ましくは>100kJ/m2、より好ましくは>250kJ/m2、特に好ましくは>300kJ/m2である。
【0128】
_非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料の使用_
【0129】
本発明は、さらに非晶性又は微結晶性コポリアミドからなるコポリアミド系成形材料の使用に関するものであり、ここで少なくとも1つの非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)が、少なくとも以下の単量体を含む:
【0130】
(a)脂環式ジアミン、
【0131】
(b)少なくとも1種の二量体脂肪酸0.25~30モル%及び
【0132】
(c)少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、ここで
【0133】
コポリアミド(A)中に存在する全単量体の割合が100モル%であり、ガラス転移温度が155℃以上、誘電損失係数tanδが8.0×10-3以下であり、マイクロ波耐性成形品の製造に供するものである。
【0134】
本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1種の非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料の使用に関するものであり、それは少なくとも1種の非晶性又は微結晶性コポリアミドが90質量%を超える程度、好ましくは95重量%を超える程度、より好ましくは98重量%を超える程度含まれるマイクロ波耐性成形品の製造のためのものである。
【0135】
成形品の他の部分は、ほぼ全体として所望のマイクロ波耐性材料であってもよい。これらの材料は、好ましくは、ナイロン-10,10、ナイロン11、ナイロン12、耐衝撃性改良剤、シクロオレフィン共重合体又はそれらの混合物からなる群から選択される。あるいは、成形品は、もっぱら非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料からなるものであってもよい。
【0136】
コポリアミド系成形材料は、上記の特徴を有する。
【0137】
本発明の別の好ましい実施形態は、非晶性コポリアミド系成形材料又は微結晶性コポリアミド系成形材料を、食器類(dishware)、円型容器(vessels)、可搬容器(containers)、ポット、カップ、ビーカー、皿、蓋、ソースボート、フラスコ又はトレイをカバーするもの(covering trays)、受け皿(undertrays)若しくは配膳トレイといった物品からなる群から選択されるマイクロ波耐性成形品の製造に用いることに関する。これらの物品は、家庭内で、外食産業(gastronomy)で、実験室及び/又は工場で使用することができる。
【0138】
_非晶性又は微結晶性コポリアミドの全般的な製造方法_
【0139】
非晶性又は微結晶性コポリアミドは、それ自体公知の調製手段、例えば標準的な市販の撹拌可能な圧力オートクレーブであって貯蔵容器及び反応容器を有するものの中で調製される。
【0140】
貯蔵容器に最初に脱イオン水を充填し、単量体及び任意の添加剤を添加する。これに続いて、窒素ガスによる不活性化が繰り返し行われる。均質な溶液を得るために定められた圧力下で混合物を撹拌しながら180~230℃まで加熱する。この溶液をポンプで濾し器を通して反応容器に送り込むが、ここで30バール以下の圧力で260~340℃の所望の反応温度まで加熱する。混合物を、加圧段階で反応温度を2~4時間保持する。その後の膨張段階では、圧力を1~2時間かけて大気圧まで低下させるが、その間に温度もわずかに下げることができる。その後の脱気段階では、大気圧で270~340℃の温度で0.5~2.5時間保持する。ポリマー溶融物を撚糸状に排出し、15~80℃の水浴中で冷却し、さらにペレット化する。ペレット化した材料を窒素下又は減圧下で80~120℃にて、含水量が0.1重量%未満になるまで乾燥させる。
【0141】
重縮合反応の促進のための適切な触媒となるのは、亜リン酸、例えばH3PO2、H3PO3、H3PO4、それらの塩又は有機誘導体である。触媒は、ポリアミドに対して0.01重量%~0.5重量%、好ましくは0.03重量%~0.1重量%の範囲で添加される。
【0142】
脱気中の泡形成を回避するのに適した消泡剤は、シリコーン又はシリコーン誘導体を含有する水性10%エマルジョンであり、ポリアミドに対して0.01~1.0重量%、好ましくは0.01~0.10重量%の分量で使用される。
【0143】
相対粘度、つまる所モル質量は公知の方法で調整することができ、例えば、単官能性アミン若しくはカルボン酸並びに/又は二官能性ジアミン及びジカルボン酸を連鎖移動剤として行う。本発明に係るコポリアミドに好適な単官能性連鎖移動剤は、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3-(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、アニリン、トリアセトンジアミンである。連鎖移動剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。アミノ基又は酸基と反応することで連鎖移動剤、例えば、無水物、イソシアネート、酸ハロゲン化物、アミド又はエステルとして働く他の単官能性化合物を使用することもできる。単官能性連鎖移動剤の通常の使用量は、コポリアミド1kgあたり8~200mmolである。
【0144】
非晶性又は微結晶性コポリアミド(A)のガラス転移温度(Tg)は、少なくとも155℃、好ましくは170~235℃、特に好ましくは180~230℃、より好ましくは190~225℃、最も好ましくは200~220℃であるが、これは水分含量が0.1重量%未満であるペレットに対して、ISO 11357-2及び-3(2013)に従って測定されるものであるとする。
【0145】
_マイクロ波耐性成形品の製造_
【0146】
マイクロ波耐性成形品は、ポリアミド系成形材料に対する標準的な加工技術を通じて製造することができる。中でも射出成形技術による加工が特に好ましい。
【0147】
射出成形による非晶性又は微結晶性コポリアミドの処理は、標準的な3ゾーンスクリューを備える通常の射出成形機において250~340℃のバレル温度で効率的に行うことができ、取入口に対しては100℃未満の温度を選択してもよく、また取入口から立ち上がりノズルに向かって上昇する温度プロファイルを用いてもよい。金型温度は120~180℃、好ましくは140~170℃に設定する。
【0148】
以下の実施例は、本発明の主題を詳細に説明することを意図したものであり、ここで示される特定の実施形態に限定することを希望するものではない。
【0149】
1 試験方法
【0150】
本願明細書において以下の試験方法を使用した:
【0151】
_相対粘度_
【0152】
相対粘度はISO 307 (2007)に従って20℃で測定した。このために0.5gのポリマーペレットを100mlのm-クレゾール中に秤量し、相対粘度(RV)を当該標準の第11章に沿ってRV=t/t0として計算した。
【0153】
_ガラス転移温度(Tg)_
【0154】
ガラス転移温度は、0.1重量%未満の含水量を有するペレットに対して、ISO 11357-2及び-3 (2013)に従って測定した。
【0155】
示差走査熱量測定(DSC)は、2回の加熱操作のそれぞれにおいて20K/分の昇温速度で行った。最初の加熱運転の後、サンプルをドライアイスでクエンチした。ガラス転移温度(Tg)は2回目の加熱操作にて測定した。ガラス転移領域の中点は「ハーフハイト(half-height)」法によって決定し、これをガラス転移温度(Tg)として示すこととした。
【0156】
_光透過率_
【0157】
光透過率はASTM D 1003-13(2013)に従って23℃で測定したが、厚さ2mmの60×60mmプラーク(長さ×幅)上にて、フィルムゲートを用いて、Byk Gardnerの「ヘイズガードプラス」中で、CIEイルミナントCにて行った。光透過率の値は、入射光量に対する百分率(%)で示した。
【0158】
_誘電損失係数_
【0159】
誘電損失係数tanδは、IEC 61189-2-721 (2015)に従って測定したが、80×80×3mmのプラーク上で、ポーランドのQWEDのスプリットポスト誘電体共振器(split post dielectric resonator, SPDR)と、ドライバーソフトウェアQ-Meter 1.5.11(測定に関する情報を含むパンフレットはwww.qwed.euで入手可能)とを用いたフィルムゲートにて行った。測定周波数は2.45GHz、測定温度は23℃である。
【0160】
_電子レンジ試験_
【0161】
マイクロ波オーブン試験はライスボウル(rice dishes)について行ったが、その製法は3.2に記載されている。これらのライスボウルを95℃の水中に14日間保存し、試験直前に取り出し、綿布で乾燥させ、電子レンジの調理スペースの底部の中央に空の状態で(unfilled)置いた。使用した電子レンジは商業用のサムスンCM1919A電子レンジで、ターンテーブルを必要としないものである。電子レンジの最大出力は1850ワットである。動作周波数は2.45 GHzである。調理スペースは、370×370×190 mm(幅×奥行き×高さ)の寸法を有する。ドアを閉めた後、電子レンジは1850ワットの最大出力をもって直ちに作動開始した。
【0162】
120秒が経過した後、ライスボウルを取り出し、反り、部分的に溶融した部位又はブリスター形成といったダメージを視覚的に検査した。それぞれ5つのライスボウルを試験し;いずれかのライスボウルの一つにでも損傷が生じた場合、テスト不合格とした。
【0163】
120秒のマイクロ波試験に合格した材料から作られたライスボウルのうち、さらに5個のライスボウルを何件かについてテストしたが、反り、部分的に溶融した部位又はブリスター形成といった最初のダメージが電子レンジの窓を通して見られるようになるまでの時間を測定した。測定された5回の算術平均を示した。
【0164】
_引張り弾性率_
【0165】
引き上げ速度1mm/分のISO 527
【0166】
ISO引張試験片、規格:ISO/CD 3167、A1タイプ、170×20/10×4 mm、温度:23℃
【0167】
_破断強度及び破断伸び_
【0168】
引張速度5mm/分で23℃でISO 527に従って破断強度及び破断伸びを測定したが、ISO引張試験片(質量170×20/10×4mm)を用いた強化材料に対するものであり、標準ISO/CD 3167に従って製造される。
【0169】
_シャルピー耐衝撃性_
【0170】
シャルピー耐衝撃性の測定は、ISO 179/2*eU(*2=装備済み)に沿って、23℃でISO試験片で、標準ISO/CD 3167に従って製造されたB1タイプ(質量80×10×4mm)を用いて行った。
【0171】
_シャルピーノッチ付き耐衝撃性_
【0172】
標準ISO/CD 3167に従って製造されたISO試験片B1型(質量80×10×4mm)を用いて、23℃でISO 179/2*eA(*2=装備済み)に従ってシャルピーノッチ付き耐衝撃性を評価した。
【0173】
2 出発材料
【0174】
表1:実施例及び比較例で使用した単量体
【0175】
【0176】
* ASTM D1015-55による凍結範囲。
【0177】
3 実施例及び比較例
【0178】
3.1実施例1及び9によるコポリアミドの製造
【0179】
実施例1で使用したPA TMDCI/TMDCT/TMDC12/TMDC36を用いた本発明に係るコポリアミドの説明を以下に述べる:
【0180】
300Lの圧力オートクレーブの充填容器に対して最初に脱イオン水30kgを仕込み、イソフタル酸6.82kgと、テレフタル酸6.82kgと、ドデカン-1,12-ジカルボン酸13.51kgと、二量体脂肪酸(36個の炭素原子を含むRadiacid 0975)3.30kgとをその中で撹拌した。その後、39.54kgのビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMDC)、消泡剤として10重量%の乳化剤であるAntifoam RDを20g、そして最後に連鎖移動剤としての安息香酸80gを添加した。その後の手順は以下の通りであった:
【0181】
● 不活性化後10回、混合物を210℃まで加熱した。均質な溶液を210℃で濾し器を通して反応容器にポンプで送り込んだ。
【0182】
● 攪拌しながら、混合物を305℃まで加熱し、加圧段階で20バールを5時間保持した。1.5時間かけて(within 1.5 hours)混合物を大気圧まで膨張させ、次に305℃で1時間脱気した。
【0183】
●ポリマー溶融物を排出し、水浴(20℃)で冷却し、ペレット化した。ペレット化した材料を含水量0.1重量%未満になるまで100℃の減圧下(30ミリバール(mbar))で乾燥させた。
【0184】
生成物の相対粘度は1.53であり、ガラス転移温度は212℃であり、2mmでの光線透過率は92.9%であった。
【0185】
実施例9で使用したPA TMDCI/TMDC36を使用する本発明に係るコポリアミドの説明を以下に述べる:
【0186】
300Lの加圧オートクレーブの充填容器に対して最初に脱イオン水30kgを仕込み、イソフタル酸18.52kgと、二量体脂肪酸(炭素数36のRadiacid 0975)14.49kgとをその中で攪拌した。その後、36.99kgのビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMDC)、消泡剤として10重量%の乳化剤であるAntifoam RDを20g、そして最後に連鎖移動剤としての安息香酸140gを加えた。その後の手順は以下の通りであった。
【0187】
●不活性化後10回、混合物を210℃まで加熱した。均質な溶液を210℃で濾し器を通して反応容器にポンプで送り込んだ。
【0188】
●攪拌しながら、混合物を305℃まで加熱し、加圧段階で20バールを5時間保持した。1.5時間かけて(within 1.5 hours)混合物を大気圧まで膨張させ、次に305℃で1時間脱気した。
【0189】
●ポリマー溶融物を排出し、水浴(20℃)で冷却し、ペレット化した。ペレット化した材料を含水量0.1重量%未満になるまで100℃の減圧下(30ミリバール(mbar))で乾燥させた。
【0190】
生成物の相対粘度は1.39であり、ガラス転移温度は206℃であり、2mmでの光線透過率は92.8%であった。
【0191】
3.2 試験片の製造
【0192】
_ライスボウル_
【0193】
ライスボウルはFerromatik Milacronのモデル:K85D-S/2Fの射出成形機にて40mmの標準3ゾーンスクリューを用いて製造した。280~325℃の昇温バレル温度と40℃の取入口温度(intake temperature)を設定した。金型温度は160℃に設定した。
【0194】
回転対称のライスボウル(dish、
図1参照)の寸法は次のとおりである:
【0195】
上部の内径: 113.2 mm
【0196】
底部の内径: 50mm
【0197】
動径(Radius): 125 mm
【0198】
高さ: 60 mm
【0199】
壁の厚さ: 3.4 mm
【0200】
_プラーク_
【0201】
フィルムゲートを有する80×80×3mmのプラークを、Arburgの射出成形機、モデル:Allrounder 420 C 1000-250(25mm標準3ゾーンスクリュー)で製造した。取入口からノズルまでのバレル温度の上昇及び下降は310/320/325/325/315/305℃として使用した。金型温度は160℃に設定した。
【0202】
フィルムゲートを有する60×60×2mmのプラークを、光透過率を測定するために上述のように製造したが、研磨された金型を使用した点が異なる。
【0203】
プラークは乾燥状態で使用したが:このために、乾燥環境、すなわちシリカゲルにて覆った上で射出成形後少なくとも48時間室温で保存した。
【0204】
3.3 結果
【0205】
以下の表2は、実施例1~10を示す。
【0206】
表2:実施例
【0207】
【0208】
* RV相対粘度、0.5gのポリアミドを含むm-クレゾール100mlの溶液に対して20℃で測定したもの、+=合格、n.a.=使用不可(120秒以上)、n.d.=未測定
【0209】
下記の表3は比較例11~15を示す。
【0210】
表3:比較例
【0211】
【0212】
* RV相対粘度、0.5gのポリアミドを含むm-クレゾール100mlの溶液に対して20℃で測定したもの
【0213】
**コンディショニングの段階(95℃の水中で14日間)ですでに変形する
【0214】
以下の表4は、実施例3,9及び10のコポリアミドの機械的特性を示す。
【0215】
表4:実施例3,9及び10のコポリアミドの機械的特性。
【0216】
【0217】
* RV相対粘度、0.5gのポリアミドを含むm-クレゾール100mlの溶液に対して20℃で測定したもの
【0218】
4 結果の考察
【0219】
表2から、実施例1~10の成形体は電子レンジ試験に合格していることが分かる。対照的に、比較例11~15の成形品は、表3に示すように、マイクロ波の下での使用には適していないことが分かった。
【0220】
全く予測し得なかったこととして、同様に200℃を超えるガラス転移温度を有する非晶質ポリアミド系成形材料をベースとする成形品(比較例11及び13、表3参照)、すなわち本発明の実施例4,7,8,10のガラス転移温度を超える成形品であってもマイクロ波試験に合格できませんでした。比較例13の成形品を製造するのに用いた成形材料は、8.30×10-3より大きい誘電損失係数を有する。しかしながら、低い誘電損失係数を有していても、マイクロ波試験に合格するには十分とは言えない(比較例14、誘電損失係数4.50×10-3を参照)。請求項1の特徴の特定の組み合わせを有する成形材料だけが、すなわち>155℃のガラス転移温度を有し、8.30×10-3未満の誘電損失係数tanδを有するものだけが電子レンジ試験に合格する成形品の製造を可能にする。