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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】屈曲プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20221028BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
H02G3/04 037
B60R16/02 623T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018108322
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019213363
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】並木 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】植松 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 照也
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-290596(JP,A)
【文献】特開2012-253877(JP,A)
【文献】特開2009-100563(JP,A)
【文献】特開2009-67137(JP,A)
【文献】特開2002-67828(JP,A)
【文献】実公平7-15306(JP,Y2)
【文献】特開平11-136831(JP,A)
【文献】特開2001-287602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 11/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を屈曲状態で保持する屈曲プロテクタであって、
一側に設けられ電線の入口側となる電線入口部と、
前記電線入口部と同側に設けられ、前記電線入口部から導入された電線を引き出す電線の出口側となる電線出口部と、
前記一側の反対側となる他側に設けられ、前記電線入口部から導入され前記電線出口部から導出される電線を屈曲状態で保持する屈曲保持部と、を備え、
前記屈曲保持部は、前記電線入口部に沿って形成される第1壁と、前記電線出口部に沿って形成される第2壁と、前記第1壁と前記第2壁とが前記一側から他側に向かう方向と交差する方向に延出されることで形成されるポケット部と、を有し、
前記ポケット部は、前記第1壁と前記第2壁との間の距離よりも長い距離を有した部位を内部空間に備えている
ことを特徴とする屈曲プロテクタ。
【請求項2】
前記ポケット部は、平面視して略U字形状となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の屈曲プロテクタ。
【請求項3】
前記第2壁は、前記電線入口部の高さ位置に対して屈曲保持される対象となる電線の直径を加算した高さ以下に切り欠かれた切欠部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の屈曲プロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線はその配索方向が限定される場面が多々あり、例えば180度近く屈曲させなければならないこともある。このような要求に応えるために、電線を屈曲状態で保持することを可能とした屈曲プロテクタが提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-209732号公報
【文献】特開2005-295607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、屈曲状態で電線を保持する場合において保持する対象の電線の太さによっては屈曲させることが極めて困難な場合もあり、このような場合には、電線を屈曲状態で屈曲プロテクタ内に収納させることについて作業性の低下を招いていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電線を屈曲状態で収納させることについて作業性の低下を抑制することが可能な屈曲プロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る屈曲プロテクタは、電線を屈曲状態で保持するものである。屈曲プロテクタは、電線入口部と電線出口部と屈曲保持部とを備えている。電線入口部と電線出口部とは同側に設けられており、電線入口部から導入された電線は電線出口部から引き出される。屈曲保持部は、これらと反対側の他側に設けられている。屈曲保持部は、電線入口部に沿って形成される第1壁と、電線出口部に沿って形成される第2壁と、第1壁と第2壁とが一側から他側に向かう方向と交差する方向に延出されることで形成されるポケット部と、を有し、ポケット部は、第1壁と第2壁との間の距離よりも長い距離を有した部位を内部空間に備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポケット部は内部空間に第1壁と第2壁との間の距離よりも長い距離を有した部位を備えているため、電線入口部から導入された電線は第1壁と第2壁との間の狭い空間で屈曲させる必要がなく、ポケット部における内部空間において緩やかに屈曲させることが可能となる。よって、過度な屈曲を行う必要がなく電線の屈曲収納を比較的容易に行えることから、電線を屈曲状態で収納させることについて作業性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る屈曲プロテクタを示す第1斜視図である。
図2】本実施形態に係る屈曲プロテクタを示す第2斜視図である。
図3】本実施形態に係る屈曲プロテクタを示す第1側面図である。
図4】本実施形態に係る屈曲プロテクタを示す第2側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る屈曲プロテクタを示す第1斜視図であり、図2は、本実施形態に係る屈曲プロテクタを示す第2斜視図である。図3は、本実施形態に係る屈曲プロテクタを示す第1側面図であり、図4は、本実施形態に係る屈曲プロテクタを示す第2側面図である。
【0011】
図1図4に示す屈曲プロテクタ1は、電線を収納した状態で例えば車両の車体から突出したブラケットに対して取り付けられるものである。本実施形態において屈曲プロテクタ1は、バッテリのマイナス端子に接続される第1電線W1(屈曲保持される対象となる電線:図1図3及び図4参照)と、プラス端子に接続される第2電線W2(図3及び図4参照)とを収納するものとなっている。このような屈曲プロテクタ1は、図1に示すように第1電線W1を屈曲状態で保持し、図3及び図4に示すように第2電線W2を略直線状態で保持する電線収納構造をなす。
【0012】
屈曲プロテクタ1は、電線入口部10と、電線出口部20と、屈曲保持部30とを備えている。
【0013】
電線入口部10は、屈曲プロテクタ1の一側に設けられ、第1電線W1及び第2電線W2の入口側となる部位である。この電線入口部10は、第1電線W1が載置される平板部11と、平板部11から略垂直方向に延びる立面部12とを備え、概略L字形状の板材となっている。なお、本実施形態において第2電線W2は、平板部11のスペースの関係上、第1電線W1上に載置されることを想定している(図3及び図4参照)。しかし、これに限らず、平板部11は、第1電線W1のみならず第2電線W2についても載置可能なスペースを有していてもよい。
【0014】
図1及び図2に示すように、平板部11には2つの開口部11aが形成されている。2つの開口部11aには結束バンド(図示せず)が挿通されるようになっており、平板部11に載置された第1電線W1及び第1電線W1上の第2電線W2を結束バンドによって電線入口部10に固定できる構造となっている。
【0015】
電線出口部20は、電線入口部10と同側(すなわち一側)に設けられ、第1電線W1の出口側となる部位である。この電線出口部20についても電線入口部10と同様に、第1電線W1が載置される平板部21と、平板部21から略垂直方向に延びる立面部22とを備え、概略L字形状となっている。
【0016】
また、図2に示すように、平板部21には結束バンドを通すための2つの開口部21aが形成されており、平板部21に載置された第1電線W1を結束バンドによって電線出口部20に固定できるようになっている。
【0017】
さらに、本実施形態において立面部22は、ロック部22aを備えている。ロック部22aは高さ方向に延びる略四角筒状の筒部22bと、筒部22b内に設けられるロックアーム22cとを備えている。ここで、車体等から延びるブラケットは、開口を有しており筒部22bに挿入されると共に、挿入後にロックアーム22cが開口に嵌まり込むことでロックされた状態となる。これにより、屈曲プロテクタ1は、車体側に固定状態で取り付けられることとなる。なお、ロック部22aは電線出口部20に設けられる場合に限らず、電線入口部10や屈曲保持部30等の他の箇所に設けられていてもよい。
【0018】
さらに、図3に示すように、電線出口部20は、電線入口部10に対して高さ方向における位置が異なっており段差を形成している。この段差距離SDは、例えば屈曲保持される対象となる第1電線W1の直径D以下となっており、電線出口部20は電線入口部10に対して略同一高さとなっている。なお、段差距離SDは第1電線W1の直径D以下に限らず、直径Dを超えるものであってもよい。
【0019】
屈曲保持部30は、電線入口部10や電線出口部20が設けられる一側と反対側となる他側に設けられ、図1に示すように電線入口部10から導入され電線出口部20から導出される第1電線W1を屈曲状態で保持するものである。この屈曲保持部30は、第1壁31と、第2壁32とを備えている。第1壁31は、電線入口部10に沿って形成されており、より詳細には電線入口部10の立面部12から他側に延出されるようにして形成されている。第2壁32は、電線出口部20に沿って形成されており、第1壁31と同様に電線出口部20の立面部22から他側に延出されるようにして形成されている。
【0020】
また、屈曲保持部30は、屈曲最奥壁33を備えている。屈曲最奥壁33は、第1壁31と第2壁32とを他側において接続する壁である。本実施形態において屈曲最奥壁33は、図2に示すように略階段状に形成されており、他側端部に設けられる第1屈曲最奥壁33aと、第1屈曲最奥壁33aよりも一側且つ下側に設けられる第2屈曲最奥壁33bと、第1屈曲最奥壁33aと第2屈曲最奥壁33bとを接続する段部33cとを備えている。本実施形態において第2屈曲最奥壁33bは、その長さL3が屈曲対象となる第1電線W1の直径D以上とされている。なお、長さL3は、第2屈曲最奥壁33b上の第1壁31から第2壁32に至るまでの最短距離である。
【0021】
さらに、屈曲保持部30は、ポケット部34を備えている。ポケット部34は、図1図3及び図4に示すように、第1壁31と第2壁32とが下方向(一側から他側に向かう方向と交差する方向の一例)に延出されることで形成された部位である。このポケット部34は、図2に示すように、第1壁31と第2壁32との間の距離(例えば図2に示す符号L1)よりも長い距離L2を有した部位を内部空間ISに備えている。本実施形態において第1壁31と第2壁32との間の距離L1とは、一側から他側に向かう方向及び高さ方向を含む平面に直交する方向の距離である。また、距離L2を有した部位とは、電線入口部10又は電線出口部20の他側端部から第2屈曲最奥壁33bまでの部位であって、本実施形態では一側から他側へ向かう方向に延びるものとなっている。
【0022】
また、ポケット部34は、図4に示すように、平面視した場合に略U字形状となっている。ここでいう平面視とは、一側から他側に向かう方向と、後述する屈曲凸方向(本実施形態では高さ方向)とを含む平面を正面視した場合をいう。
【0023】
加えて、屈曲保持部30の第2壁32は切欠部35を有している。切欠部35は、第1壁31の上端位置よりも低くなるように、下方向に向けて切り欠かれて形成された部位である。この切欠部35は電線入口部10に対して第1電線W1の直径Dを加算した高さ以下(符号L4参照)となるように切り欠かれて形成されている。
【0024】
次に、図1図4を参照して、本実施形態に係る屈曲プロテクタ1における電線W1,W2の収納の様子を説明する。
【0025】
まず、作業者は、第1電線W1を電線入口部10に載置する。次いで、作業者は、第1電線W1をポケット部34に向けて押し込むように屈曲させる。この結果、第1電線W1は、図1に示すように下に凸となる屈曲状態とさせられる。
【0026】
ここで、ポケット部34は、第1壁31と第2壁32との間の距離L1よりも長い距離L2を有した部位を内部空間ISに備えている。このため、作業者は、第1壁31と第2壁32との間の距離L1で第1電線W1を180度近く屈曲させる場合よりも、ポケット部34の距離L2を有した部位を利用して、比較的緩やかに第1電線W1を屈曲させることができる。屈曲後、作業者は、第1電線W1を電線出口部20に載置する。
【0027】
なお、ポケット部34は平面視して略U字形状とされていることから、第1電線W1の屈曲に沿う形状となっており、ポケット部34を矩形状に形成した場合と比較すると図4に示すデッドスペースDS1,DS2を無くすことができる。
【0028】
さらに、屈曲最奥壁33(特に第2屈曲最奥壁33b)の長さL3は、第1電線W1の直径D以上とされているため、第1壁31と第2壁32との狭い隙間(第2屈曲最奥壁33bの近傍部分の隙間)に第1電線W1が引っ掛かってしまい、ポケット部34に第1電線W1を挿入し難くなってしまうことを防止することとなる。
【0029】
次に、作業者は、第2電線W2を第1電線W1上に載置すると共に、切欠部35上にも載置する。ここで、切欠部35は、電線入口部10の高さ位置に対して第1電線W1の直径Dを加算した高さ以下に切り欠かれているため、第2電線W2について高さ方向に直線状に配置した場合に第2壁32が障害とならず、第2電線W2を2次元的に配索することができる。詳細に説明すると、第2壁32が第1壁31程度の高さを有する場合、第2電線W2の配索方向は上方向に限定され、例えば一側から他側に向かう方向に第2電線W2を配索したい場合には、一度上方向に屈曲させた第2電線W2を再度他側に向けて折り曲げる必要があり、配索作業性が悪化してしまう。しかし、第2壁32が上記切欠部35を有するため、配索作業性の向上を図ることができる。
【0030】
このようにして、本実施形態に係る屈曲プロテクタ1によれば、ポケット部34は内部空間ISに第1壁31と第2壁32との間の距離L1よりも長い距離L2を有した部位を有しているため、電線入口部10から導入された第1電線W1は第1壁31と第2壁32との間の狭い空間で屈曲させる必要がなく、ポケット部34における内部空間ISにおいて緩やかに屈曲させることが可能となる。よって、過度な屈曲を行う必要がなく第1電線W1の屈曲収納を比較的容易に行えることから、第1電線W1を屈曲状態で収納させることについて作業性の低下を抑制することができる。
【0031】
また、ポケット部34は、平面視して略U字形状となっているため、平面視して矩形状となっている場合と比較すると、第1電線W1を緩やかに屈曲させたときのデッドスペースDS1,DS2をなくし、より小型且つ軽量化を図った屈曲プロテクタ1を提供することができる。
【0032】
また、第2壁32は電線入口部10の高さ位置に対して屈曲保持される対象となる第1電線W1の直径Dを加算した高さ以下に切り欠かれた切欠部35を有するため、屈曲保持される第1電線W1の上に載置した状態で第2電線W2を屈曲プロテクタ1に保持する場合において、電線入口部10から切欠部35まで2次元的(平面的であって高さ方向の変位が少ないこと)に配索することができ、第2電線W2を保持する場合における配索性を向上させることができる。
【0033】
また、屈曲最奥壁33(特に第2屈曲最奥壁33b)の長さL3は屈曲保持される対象となる第1電線W1の直径D以上とされているため、例えば、第2屈曲最奥壁33bの長さL2が第1電線W1の直径D未満とされて、第1壁31と第2壁32との狭い隙間に第1電線W1が引っ掛かってしまい、ポケット部34に挿入し難くなってしまう事態を防止することができる。
【0034】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、周知及び公知の技術を組み合わせてもよい。
【0035】
例えば、本実施形態において屈曲プロテクタ1は、第1壁31及び第2壁32が下方向に延出してポケット部34を形成しているが、これに限らず、延出方向は上方向であってもよいし、上記した平面視の方向であってもよい。すなわち、延出方向は、一側から他側に向かう方向に交差する方向であれば、特にその方向を問うものではない。
【0036】
また、本実施形態においてポケット部34の距離L2は一側から他側に向かう方向に延びたものであるが、これに限らず、ポケット部34は他の方向に長い距離L2を有した部位を内部空間ISに備えていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 :屈曲プロテクタ
10 :電線入口部
20 :電線出口部
30 :屈曲保持部
31 :第1壁
32 :第2壁
34 :ポケット部
35 :切欠部
IS :内部空間
図1
図2
図3
図4