(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】生体情報表示装置、および生体情報出力方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20221028BHJP
【FI】
A61B5/00 D
(21)【出願番号】P 2018118618
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 徳宜
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和正
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 秀輝
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-158766(JP,A)
【文献】特表2008-535540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の
経皮的動脈血酸素飽和度に対応する数値が表示されるディスプレイと、
前記ディスプレイに表示される前記数値の有効桁数を変更するプロセッサと、
を備えており、
前記数値は、第一の桁と第二の桁を含んでおり、
前記第一の桁は、前記数値の整数部分であり、
前記第二の桁は、前記数値の小数点以下の部分であり、
前記数値が99%未満である場合、前記第一の桁
のみが第一の大きさで前記ディスプレイの第一領域
に表示され、
前記数値が99%以上である場合、前記第一の桁が前記第一の大きさで前記第一領域に表示されるとともに、前記第二の桁
が前記ディスプレイの第二領域に前記第一の大きさよりも小さい第二の大きさで表示され
ることにより前記有効桁数が変更され、
前記第一領域の位置と大きさは、前記第二の桁が表示されても変化しない、
生体情報表示装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記数値に応じて前記第二の桁の色を変更する、
請求項
1に記載の生体情報表示装置。
【請求項3】
被検者の
経皮的動脈血酸素飽和度を取得するステップと、
前記
経皮的動脈血酸素飽和度に対応する数値を
ディスプレイに表示するためのデータを出力するステップと、
前記数値の有効桁数を変更するステップと、
を含んでおり、
前記数値は、第一の桁と第二の桁を含んでおり、
前記第一の桁は、前記数値の整数部分であり、
前記第二の桁は、前記数値の小数点以下の部分であり、
前記データは、
前記数値が99%未満である場合、前記第一の桁のみが前記ディスプレイの第一領域
に第一の大きさで表示され、
前記数値が99%以上である場合、前記第一の桁が前記第一の大きさで前記第一領域に表示されるとともに、前記第二の桁が前記ディスプレイの第二領域
に前記第一の大きさよりも小さい第二の大きさで表示され
ることにより前記有効桁数が変更され、
前記第二の桁が表示されても前記第一領域の位置と大きさが変わらないように、
出力される、
生体情報出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の生体情報を表示するための装置、および当該生体情報を出力する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、この種の装置を開示している。当該装置においては、様々な被検者の生体情報が、数値として表示される。一般に、表示される数値の有効桁数は、ほぼ全ての数値範囲において不変である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体情報について医療従事者などのユーザが認識したい数値の有効桁数は、被検者の容体あるいは数値範囲に応じて異なる。
【0005】
本発明は、ユーザによる生体情報の正確な把握を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための一態様は、生体情報表示装置であって、
被検者の生体情報に対応する数値が表示されるディスプレイと、
前記ディスプレイに表示される前記数値の有効桁数を変更するプロセッサと、
を備えており、
前記数値は、第一の桁と第二の桁を含んでおり、
前記第一の桁は、第一の大きさで前記ディスプレイの第一領域に常に表示され、
前記第二の桁は、前記ディスプレイの第二領域に前記第一の大きさよりも小さい第二の大きさで表示されるか非表示とされることにより前記有効桁数が変更され、
前記第一領域の位置と大きさは、前記第二の桁が表示されても変化しない。
【0007】
上記の目的を達成するための別態様は、生体情報出力方法であって、
被検者の生体情報を取得するステップと、
前記生体情報に対応する数値を表示するためのデータを出力するステップと、
前記数値の有効桁数を変更するステップと、
を含んでおり、
前記データは、
第一領域に前記数値の第一の桁が第一の大きさで常に表示され、
第二領域に前記数値の第二の桁が前記第一の大きさよりも小さい第二の大きさで表示されるか非表示とされることにより前記有効桁数が変更され、
前記第二の桁が表示されても前記第一領域の位置と大きさが変わらないように、
出力される。
【0008】
上記の構成によれば、取得された生体情報の数値の第二の桁が表示されても当該数値の第一の桁が表示される第一領域の位置と大きさが変わらないので、第二の桁の表示と非表示が頻繁に切り替わるような事態においても、第一の桁の視認性低下を抑制できる。また、第二の桁が第一の桁よりも小さく表示されるので、第二の桁が表示される第二領域を相対的に小さくできる。したがって、第一の桁の視認性の低下を抑制できるだけでなく、第二の桁が表示されていない間も、ディスプレイの表示領域を有効に活用できる。結果として、ユーザによる生体情報の正確な把握を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るパルスオキシメータの機能構成を示している。
【
図2】上記のパルスオキシメータのディスプレイにおける表示例を示している。
【
図3】上記のパルスオキシメータにより行なわれる処理例を示している。
【
図4】上記の表示例の利点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係るパルスオキシメータ1の機能構成を示している。
【0011】
パルスオキシメータ1は、入力インターフェース11、プロセッサ12、ディスプレイ13、およびバス14を備えている。バス14は、入力インターフェース11、プロセッサ12、およびディスプレイ13の間で信号やデータのやり取りを可能にするように、これらの要素を相互に接続している。
【0012】
不図示のプローブが被検者の指先や耳朶に装着される。プローブは、発光部と受光部を備えている。発光部は、赤色光と赤外光を出射する。受光部は、プローブの装着部位を透過または反射した赤色光と赤外光の光量に応じた信号を出力する。当該信号は、入力インターフェース11に入力される。入力インターフェース11は、プロセッサ12が後述する処理を実行可能なデータへ当該信号を変換しうる適宜の回路構成を備えている。
【0013】
プロセッサ12は、入力インターフェース11を通じて入力されたデータに基づいて、少なくとも被検者の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を算出するように構成されている。SpO2の算出手法自体は周知であるので、詳細な説明は省略する。SpO2は生体情報の一例であり、SpO2の算出は生体情報の取得の一例である。
【0014】
ディスプレイ13は、算出されたSpO2に対応する数値を表示する。すなわち、パルスオキシメータ1は生体情報表示装置の一例である。より具体的には、プロセッサ12は、算出されたSpO2を数値としてディスプレイ13に表示するためのデータを出力する。ディスプレイ13は、プロセッサ12から出力されたデータに基づいて数値の表示を行なう。
【0015】
プロセッサ12は、ディスプレイ13に表示される数値の有効桁数を、算出されたSpO2に応じて変更可能に構成されている。
図2の(A)は、そのような数値の表示例を示している。数値の整数部分のみが表示される状態と、整数部分に加えて数値の小数点以下部分も表示される状態との間で切り替えが可能とされている。換言すると、数値の小数点以下部分が表示または非表示されることにより表示される数値の有効桁数が変更される。数値の整数部分は、第一の桁の一例である。数値の小数点以下部分は、第二の桁の一例である。
【0016】
ディスプレイ13は、第一領域13aと第二領域13bを含んでいる。数値の整数部分は、第一領域13aに表示される。数値の小数点以下部分は、第二領域13bに表示される。数値の小数点以下部分のフォントサイズは、数値の整数部分のフォントサイズよりも小さい。数値の整数部分のフォントサイズは、第一の大きさの一例である。数値の小数点以下部分のフォントサイズは、第二の大きさの一例である。
【0017】
いずれの表示状態においても、数値の整数部分は第一領域13aに表示されている。換言すると、数値の整数部分は、常に第一領域13aに表示されている。また、数値の小数点以下部分が第二領域13bに表示されても、第一領域13aの位置と大きさは変化しない。
【0018】
このような構成の有利性を、
図2の(B)と
図2の(C)の各々に示される比較例を参照しつつ説明する。
【0019】
図2の(B)に示される第一の比較例においても、有効桁数の変更はなされている。しかしながら、数値の小数点以下部分が表示されることにより、数値の整数部分のフォントサイズと位置が変化している。この場合、数値の小数点以下部分の表示と非表示が切り替えられる度に整数部分が変位して煩わしく、ユーザによる視認性の低下が避けられない。
【0020】
図2の(C)に示される第二の比較例においても、有効桁数の変更はなされている。また、数値の小数点以下部分が表示されても、数値の整数部分の表示位置は変わらない。しかしながら、整数部分のフォントサイズと小数点以下部分のフォントサイズが一致している。この場合、小数点以下部分の表示領域を確保するために整数部分のフォントサイズを小さくする必要があり、整数部分の視認性が低下する。また、小数点以下部分の表示領域が相対的に大きくなるので、当該部分が表示されていない間、ディスプレイに大きな空白部分が生じる。したがって、表示領域を有効に活用できない。
【0021】
各比較例との比較から明らかなように、数値の小数点以下部分が表示されても数値の整数部分が表示される第一領域13aの位置と大きさが変わらないので、小数点以下部分の表示と非表示が頻繁に切り替わるような事態においても、整数部分の視認性低下を抑制できる。また、小数点以下部分のフォントサイズが整数部分のフォントサイズよりも小さくされているので、小数点以下部分が表示される第二領域13bを相対的に小さくできる。したがって、整数部分の視認性の低下を抑制できるだけでなく、小数点以下部分が表示されていない間も、ディスプレイ13の表示領域を有効に活用できる。結果として、ユーザによるSpO2の数値の正確な把握を支援できる。
【0022】
本実施形態においては、算出されたSpO2の数値が所定の数値範囲内である場合に、当該数値の小数点以下部分が第二領域13bに表示される。具体的には、算出されたSpO2が99%以上である場合に、数値の小数点以下部分が第二領域13bに表示される。
【0023】
図3は、このように構成されたパルスオキシメータ1の動作例を示している。まず、プロセッサ12は、入力インターフェース11を通じて入力されたデータに基づいて、被検者のSpO2を算出する(STEP1)。
【0024】
続いて、プロセッサ12は、算出されたSpO2の数値の整数部分をディスプレイ13の第一領域13aに表示させるためのデータを出力する。これにより、
図2の(A)に示されるように、数値の整数部分がディスプレイ13の第一領域13aに表示される(STEP2)。
【0025】
続いて、プロセッサ12は、算出されたSpO2の数値が99%以上であるかを判断する(STEP3)。数値が99%未満であると判断された場合(STEP3においてN)、処理はSTEP1に戻り、新たなデータが入力インターフェース11を通じて入力されるまで、数値の整数部分のみが第一領域13aに表示される状態が維持される。
【0026】
数値が99%以上であると判断された場合(STEP3においてY)、プロセッサ12は、算出されたSpO2の数値の小数点以下部分をディスプレイ13の第二領域13bに表示させるためのデータを出力する。これにより、
図2の(A)に示されるように、数値の整数部分に加えて、小数点以下部分がディスプレイ13の第二領域13bに表示される(STEP4)。その後、処理はSTEP1に戻り、上述の処理が繰り返される。
【0027】
図4を参照しつつ、算出されたSpO2の数値が99%以上である場合に表示される数値の有効桁数を増やすことの利点について説明する。
【0028】
図4は、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の関係を示している。被検者の容体をより正確に反映するパラメータはPaO2の方であるものの、当該パラメータの取得には侵襲的測定を伴う。したがって、医療従事者は、SpO2の数値の確認を通じてPaO2の数値を推測する。
【0029】
しかしながら、
図4から明らかなように、SpO2とPaO2の対応関係は非線形である。さらに、PaO2の値は、SpO2が99%を超えると急速に上昇する。算出されたSpO2の数値の整数部分だけしか表示されない場合(黒丸で示されるデータしか得られない場合)、99%と100%の間で大きく推移するPaO2の値を推測することは困難である。
【0030】
上記の構成によれば、算出されたSpO2の数値が99%以上になると、当該数値の小数点以下部分も表示されるので、
図4に白丸で示されるデータが表示に供される。したがって、医療従事者は、被検者のPaO2の値をより正確に推測できる。
【0031】
図3に破線で示されるように、プロセッサ12は、算出されたSpO2の数値に応じて、ディスプレイ13の第二領域13bに表示される当該数値の小数点以下部分の色を変更してもよい(STEP5)。例えばSpO2を100%に到達させないように被検者を管理する必要がある場合において、SpO2が100%に近づくにつれて小数点以下部分の色が赤色に変化するように構成されうる。
【0032】
このような構成によれば、小数点以下部分の正確な数値を認識せずとも、色の視認を通じて目標値までの裕度といった情報を把握できる。
【0033】
これまでに説明したプロセッサ12の機能は、メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されてもよいし、マイクロコントローラ、FPGA、ASICなどの専用集積回路によって実現されてもよい。
【0034】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0035】
上記の実施形態においては、算出されたSpO2の数値が所定の範囲内にあるときにディスプレイ13に表示される数値の有効桁数を増やす変更がなされる。しかしながら、ユーザによる指示の入力に応じて有効桁数を増やす変更がなされてもよい。
【0036】
上記の実施形態を参照して説明した構成は、被検者の容体や数値範囲に応じてユーザが認識したい数値の有効桁数が変わる適宜の生体情報に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:パルスオキシメータ、12:プロセッサ、13:ディスプレイ、13a:第一領域、13b:第二領域