(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20221028BHJP
F24C 3/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F24C3/12 N
F24C3/02 H
(21)【出願番号】P 2018122959
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 廣太郎
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-045460(JP,A)
【文献】特開平06-058535(JP,A)
【文献】特開2005-106338(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0029734(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを燃焼させるバーナを複数搭載したガスコンロにおいて、
前記燃料ガスを供給するガス通路を開閉可能な元弁と、
前記元弁の下流で前記ガス通路から前記バーナ毎に分岐したガス分岐路の各々に設けられて、該ガス分岐路を開閉可能な先弁と、
前記先弁の下流で前記ガス分岐路毎に前記燃料ガスの流量を調節して前記バーナの火力を変更可能な流量調節弁と、
前記元弁、前記先弁、および前記流量調節弁を制御する制御部と、
前記バーナ毎に火炎を検知可能な火炎検知部と
を備え、
前記制御部は、
消火のために前記バーナへの前記燃料ガスの供給を停止したことに基づいて、該バーナに対応する前記流量調節弁を次回の点火に備えて
所定の開度に設定する初期化処理を行うこととして、
2つ以上の前記バーナで燃焼中に何れかを消火する場合は、該消火するバーナに対応する前記先弁を閉弁することで前記燃料ガスの供給を停止
したのに続いて直ちに、該バーナに対応する前記流量調節弁の前記初期化処理を開始するのに対して、
単独で燃焼中の前記バーナを消火する場合は、前記先弁を開弁状態にしたまま前記元弁を閉弁することで前記燃料ガスの供給を停止した後、該バーナに対応する前記流量調節弁の動作を停止しておく所定の停止期間を設定
し、該停止期間中に前記火炎検知部で消火が検知されると、該停止期間を解除して該流量調節弁の前記初期化処理を開始する一方で、該停止期間が経過しても前記火炎検知部で消火が検知されないことに基づき前記元弁の閉弁不良と判断する
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスコンロにおいて、
前記制御部は、単独で燃焼中の前記バーナの消火時に該バーナの火力が所定の基準火力よりも大きい場合は、前記元弁を閉弁した後、前記基準火力以下となる状態まで前記流量調節弁を動作させてから前記停止期間を設定する
ことを特徴とするガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバーナを搭載したガスコンロに関し、特に、バーナの消火に際して個別の先弁よりも前に元弁を閉弁することで元弁の動作点検を行うガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスを燃焼させるバーナを複数搭載したガスコンロでは、燃料ガスを供給するガス通路に1つの元弁が設けられると共に、元弁の下流でバーナ毎に分岐したガス分岐路の各々に先弁や流量調節弁を備えたものが普及している。元弁を開いた状態で先弁の開閉によって、燃焼させるバーナの選択が可能であり、開弁した先弁に対応するバーナには、流量調節弁の開度に応じた流量の燃料ガスが供給されることから、流量調節弁を制御することでバーナの火力を調節することが可能である。また、消火のためにバーナへの燃料ガスの供給を停止したら、次回の点火に備えて流量調節弁を予め初期状態に戻しておく初期化処理を実行することで、点火時間の短縮を図ることが知られている。この初期化処理では、例えば点火に適した火力となるように、火力を大きくする方向(燃料ガスの流量を増やす方向)に流量調節弁を制御することがある。
【0003】
こうしたガスコンロでは、2つ以上のバーナで燃焼中に何れかを消火する場合は、消火するバーナに対応する先弁を閉弁して燃料ガスの供給を停止する。これに対して、単独で燃焼中のバーナを消火する場合は、先弁よりも前に元弁を閉弁することによって元弁の動作点検を行うことが提案されており(特許文献1)、元弁の閉弁で燃料ガスの供給を停止したにもかかわらず、熱電対などの火炎検知センサーでバーナの消火が検知されなければ、元弁に異物が挟まるなどの閉弁不良が生じていると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のように単独で燃焼中のバーナの消火時に元弁の動作点検を行うガスコンロでは、元弁の閉弁によって燃料ガスの供給を停止したことに基づいて流量調節弁の初期化処理が開始されることがあり、実際に元弁の閉弁不良が生じていた場合には、初期化処理に伴って流量調節弁が火力を大きくする方向に制御されると、消火するはずのバーナの火炎が逆に大きくなるので使用者を驚かせてしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、バーナの消火に際して先弁よりも前に元弁を閉弁することで行われる元弁の動作点検中にバーナの火炎が大きくなることを回避可能なガスコンロの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスを燃焼させるバーナを複数搭載したガスコンロにおいて、
前記燃料ガスを供給するガス通路を開閉可能な元弁と、
前記元弁の下流で前記ガス通路から前記バーナ毎に分岐したガス分岐路の各々に設けられて、該ガス分岐路を開閉可能な先弁と、
前記先弁の下流で前記ガス分岐路毎に前記燃料ガスの流量を調節して前記バーナの火力を変更可能な流量調節弁と、
前記元弁、前記先弁、および前記流量調節弁を制御する制御部と、
前記バーナ毎に火炎を検知可能な火炎検知部と
を備え、
前記制御部は、
消火のために前記バーナへの前記燃料ガスの供給を停止したことに基づいて、該バーナに対応する前記流量調節弁を次回の点火に備えて所定の開度に設定する初期化処理を行うこととして、
2つ以上の前記バーナで燃焼中に何れかを消火する場合は、該消火するバーナに対応する前記先弁を閉弁することで前記燃料ガスの供給を停止したのに続いて直ちに、該バーナに対応する前記流量調節弁の前記初期化処理を開始するのに対して、
単独で燃焼中の前記バーナを消火する場合は、前記先弁を開弁状態にしたまま前記元弁を閉弁することで前記燃料ガスの供給を停止した後、該バーナに対応する前記流量調節弁の動作を停止しておく所定の停止期間を設定し、該停止期間中に前記火炎検知部で消火が検知されると、該停止期間を解除して該流量調節弁の前記初期化処理を開始する一方で、該停止期間が経過しても前記火炎検知部で消火が検知されないことに基づき前記元弁の閉弁不良と判断する
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明のガスコンロでは、単独で燃焼中のバーナの消火時に先弁よりも前に元弁を閉弁することによって元弁の動作点検を行うことが可能であり、実際に元弁の閉弁不良が生じていたとしても、元弁の動作点検中(停止期間中)は、流量調節弁の初期化処理を開始することがないので、初期化処理で流量調節弁を所定の開度に設定するのに伴って火力を大きくする方向に制御するか否かにかかわらず、元弁の動作点検中にバーナの火炎が大きくなることを回避することができる。
【0010】
そして、元弁の動作点検を行う場合でも、停止期間中に火炎検知部で消火が検知されて元弁の正常な動作(閉弁)を確認できたら、停止期間を解除して流量調節弁の初期化処理を開始することにより、再点火に備えて速やかに流量調節弁を所定の開度に戻しておくことが可能となる。
【0011】
こうした本発明のガスコンロでは、単独で燃焼中のバーナの消火時に、そのバーナの火力が基準火力よりも大きい場合は、元弁を閉弁した後、基準火力以下となる状態まで流量調節弁を動作させてから停止期間を設定するようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、実際に元弁の閉弁不良が生じていたとしても、元弁の動作点検中(停止期間中)は、バーナの火力が基準火力以下に抑えられているので、基準火力よりも大きい火力のまま維持される場合に比べて、元弁の動作点検中における安全性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ガスコンロ1内における燃料ガスの供給経路を模式的に示した説明図である。
【
図3】流量調節弁24の構造の一例を示した説明図である。
【
図4】3つのコンロバーナ5a,5b,5cおよびグリルバーナ7aの燃焼を制御するためのブロック図である。
【
図5】本実施例のコントローラ40がコンロバーナ5a,5b,5cやグリルバーナ7aを消火する際に実行する消火制御処理のフローチャートである。
【
図6】変形例の消火制御処理の中で実行される火力低減処理のフローチャートである。
【
図7】ディスクバルブを採用した流量調節弁24のシャフト50の回転を利用して先弁23を開弁させる構成を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、ガスコンロ1の外観を示した斜視図である。本実施例のガスコンロ1は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに開口する収容空間に嵌め込んで設置されるビルトインタイプであり、収容空間に収容される箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2上に載置されてコンロ本体2の上面を覆う天板3とを備えている。
【0015】
本実施例のコンロ本体2には、燃料ガスを燃焼させるコンロバーナ5が3つ設置されており、天板3に形成された挿通孔からコンロバーナ5の上部が突出している。3つのコンロバーナ5のうち、手前側の左右に配置された左コンロバーナ5aおよび右コンロバーナ5bは、共に強火力バーナであり、形状や大きさ(外径)が同一になっている。一方、奥側に配置された後コンロバーナ5cは、左右のコンロバーナ5a,5bに比べて小さい小バーナとなっている。また、天板3上には、各コンロバーナ5の上方に鍋などの調理容器を置くための五徳6がコンロバーナ5を囲んで設置されている。
【0016】
また、コンロ本体2には、グリル7が内蔵されており(図示省略)、ガスコンロ1の前面に設けられたグリル扉7dによって、グリル7の前側を開閉可能になっている。グリル扉7dの右方には、3つのコンロバーナ5a,5b,5cの各々に対応して、使用者が点火時や消火時、あるいは火力調節時などに操作するコンロ操作ボタン8a,8b,8cが設けられている。一方、グリル扉7dの左方には、グリル7の熱源として燃料ガスを燃焼させるグリルバーナ7aの点火時や消火時、あるいは火力調節時などに使用者が操作するグリル操作ボタン9が設けられている。
【0017】
本実施例のガスコンロ1では、使用者がコンロ操作ボタン8a,8b,8cやグリル操作ボタン9を後方に押すことによって、対応するコンロバーナ5a,5b,5cやグリルバーナ7aに点火することができ、各操作ボタン8a,8b,8c,9をもう一度押すと、消火することが可能である。また、使用者が各操作ボタン8a,8b,8c,9を回転させることによって、対応するバーナ5a,5b,5c,7aの火力を調節することが可能である。本実施例のガスコンロ1では、操作ボタン8a,8b,8c,9の回転量に応じて火力1~火力9の9段階の中から設定され、例えば、時計回りに回転させると強火に(火力が大きく)なり、反時計回りに回転させると弱火に(火力が小さく)なる。
【0018】
図2は、ガスコンロ1内における燃料ガスの供給経路を模式的に示した説明図である。まず、燃料ガスを供給するガス通路20には、ガス通路20を開閉する元弁21が設けられている。また、本実施例のガスコンロ1は、上述した3つのコンロバーナ5a,5b,5cおよびグリルバーナ7aを搭載しており、このことと対応して、ガス通路20が4つに分岐している。すなわち、左コンロバーナ5aに対応する左ガス分岐路22aと、右コンロバーナ5bに対応する右ガス分岐路22bと、後コンロバーナ5cに対応する後ガス分岐路22cと、グリルバーナ7aに対応するグリルガス分岐路22gとに分かれ、それぞれに燃料ガスが供給される。
【0019】
左ガス分岐路22aには、左ガス分岐路22aを開閉する先弁23aと、先弁23aよりも下流側で左ガス分岐路22aを通過する燃料ガスの流量を調節する流量調節弁24aと、左ガス分岐路22aの末端から燃料ガスを噴射するノズル25aとが設けられている。元弁21を開いた状態で先弁23aを開くと、流量調節弁24aの開度に応じた流量の燃料ガスがノズル25aから噴射され、燃焼用の一次空気と混合された混合ガスが左コンロバーナ5aに供給される。この混合ガスは左コンロバーナ5aの外周に開口した複数の炎口から噴出し、点火プラグ27aで火花を飛ばすことによって混合ガスの燃焼が開始され、左コンロバーナ5aの周囲に火炎が形成される。そして、左コンロバーナ5aの火炎を検知する火炎検知部として、熱電対28aが設けられており、熱電対28aの起電力に基づいて着火や消火を検知することが可能である。尚、火炎検知部としては、着火や消火を検知可能であれば、熱電対に限られない。
【0020】
同様に、右ガス分岐路22bには、先弁23bと、流量調節弁24bと、ノズル25bとが設けられ、後ガス分岐路22cには、先弁23cと、流量調節弁24cと、ノズル25cとが設けられており、グリルガス分岐路22gにも、先弁23gと、流量調節弁24gと、ノズル25gとが設けられている。また、右コンロバーナ5bに対応する点火プラグ27bおよび熱電対28bと、後コンロバーナ5cに対応する点火プラグ27cおよび熱電対28cと、グリルバーナ7aに対応する点火プラグ27gおよび熱電対28gとがそれぞれ設けられている。
【0021】
実施例のガスコンロ1では、3つのコンロバーナ5a,5b,5cおよびグリルバーナ7aのうち、何れか1つを単独で燃焼させることも、複数を同時に燃焼させることも可能となっている。また、各バーナ5a,5b,5c,7aは、それぞれ対応する流量調節弁24a,24b,24c,24gの開度(燃料ガスの流量)を制御することによって、燃焼中の火力を調節することが可能である。
【0022】
図3は、流量調節弁24の構造の一例を示した説明図である。まず、
図3(a)には、流量調節弁24の断面図が示されている。流量調節弁24の内部には、円筒形状の弁室30が形成されており、この弁室30の一端面に、燃料ガスが流入する流入路31が接続され、弁室30の周面に、燃料ガスが流出する流出路32が接続されている。
【0023】
弁室30内には、円柱形状の弁体33が収容されており、弁室30の中心軸に沿った進退方向(図中に白抜きの矢印で示す方向)に移動可能になっている。図示した流量調節弁24は、弁体33における流入路31側の先端部33aがテーパー状に形成されており、いわゆるニードルバルブである。そして、弁体33の移動に伴い、弁室30の流入路31との接続部分に形成された弁座30aの開口面積(弁座30aと弁体33の先端部33aとの隙間)が変動することで、弁室30に流入してノズル25へと供給される燃料ガスの流量が変化する。
【0024】
すなわち、弁体33を流入路31側(図中の左側)に移動させると、弁座30aの開口面積が小さくなることで、弁室30に流入する燃料ガスの流量が減少する。
図3(a)では、弁体33の先端部33aが弁座30aに当接した状態を破線で表している。本実施例の弁体33には、先端部33a側の端面に連通するオリフィス33bが、周面に開口しており、弁体33の先端部33aが弁座30aに当接した状態でも、オリフィス33bを通じて燃料ガスが弁室30に流入する。このようなオリフィス33bを設けておくことによって、最小火力時の燃料ガスの流量(最小流量)を安定させることができる。
【0025】
一方、弁体33を流入路31とは反対側(図中の右側)に移動させると、弁座30aの開口面積が大きくなることで、弁室30に流入する燃料ガスの流量が増加する。本実施例の弁体33は、図示しないストッパーによって移動量が制限されており、その制限に達した状態で最大火力時の燃料ガスの流量(最大流量)が定まる。尚、弁室30と弁体33とは、間にOリング34を介在させることで、流出路32よりも流入路31から離れた位置でシールされている。
【0026】
図示した流量調節弁24は、弁体33の先端部33aとは反対側の端部に、弁体33の進退方向と直交してピン35が挿通されている。また、このピン35が挿通された弁体33の端部を内部に収容する円筒形状の円筒カム36が設けられており、円筒カム36の周面には、ピン35を通すスリット36aが形成されている。さらに、円筒カム36は、バルブモータ37の回転軸に取り付けられている。本実施例のバルブモータ37には、ステッピングモータを採用しており、バルブモータ37の駆動によって、円筒カム36が弁体33の軸回りに回転する。尚、弁体33は、図示しないガイド機構によって軸回りに回転不能に進退方向の移動が案内されている。
【0027】
図3(b)には、弁体33および円筒カム36が斜視図で示されている。図示されるように円筒カム36のスリット36aは、円筒カム36の周面に沿って螺旋状に形成されている。そのため、図示した例では、円筒カム36を図中の時計回りに回転させると、ピン35がスリット36aに沿ってバルブモータ37とは反対側(図中の奥側)に移動することにより、弁体33の先端部33aが弁座30aに近付く。一方、円筒カム36を図中の反時計回りに回転させると、ピン35がスリット36aに沿ってバルブモータ37側(図中の手前側)に移動することにより、弁体33の先端部33aが弁座30aから離れる。このようにバルブモータ37の駆動による円筒カム36の回転運動が弁体33の進退方向の直線運動に変換される。尚、流量調節弁24は、ニードルバルブの作動機構として上述のように円筒カム36を用いたものに限られず、回転運動を直線運動に変換可能であれば、他の機構を採用してもよい。
【0028】
図4は、3つのコンロバーナ5a,5b,5cおよびグリルバーナ7aの燃焼を制御するためのブロック図である。前述したように3つのコンロバーナ5a,5b,5cおよびグリルバーナ7aは、それぞれ対応するコンロ操作ボタン8a,8b,8cやグリル操作ボタン9を使用者が操作することによって、点火や消火、あるいは火力調節を行うことが可能であり、各操作ボタン8a,8b,8c,9がコントローラ40と電気的に接続されている。
【0029】
また、コントローラ40には、前述した元弁21や、3つのコンロバーナ5a,5b,5cおよびグリルバーナ7aの各々に対応する先弁23a,23b,23c,23g、流量調節弁24a,24b,24c,24g(流量調節弁24a,24b,24c,24gを個別に駆動するバルブモータ37a,37b,37c,37g)、点火プラグ27a,27b,27c,27g、熱電対28a,28b,28c,28gが接続されている。尚、本実施例の元弁21および先弁23a,23b,23c,23gは、電磁弁が用いられており、通電によって開弁し、通電を停止すると閉弁する。また、本実施例のコントローラ40は、本発明の「制御部」に相当している。
【0030】
コントローラ40は、操作ボタン8a,8b,8c,9の何れかで使用者による点火操作が行われると、元弁21を開弁し、点火プラグ27a,27b,27c,27gで火花を飛ばしながら、対応する先弁23a,23b,23c,23gを開弁する。その後、対応する熱電対28a,28b,28c,28gの起電力を確認し、所定の着火閾値よりも大きければ、正常に着火したと判断する。尚、バーナ5a,5b,5c,7aの何れかが既に燃焼中であって、別のバーナに新たに点火する場合は、元弁21は開いた状態にあるので、点火プラグ27で火花を飛ばすと共に、対応する先弁23を開弁すればよい。
【0031】
また、コントローラ40は、バーナ5a,5b,5c,7aの何れかの燃焼中に、火力調節のために使用者によって操作ボタン8a,8b,8c,9の回転操作が行われると、その回転量に応じた設定火力(火力1~火力9)に従って、対応するバルブモータ37a,37b,37c,37gの駆動で流量調節弁24a,24b,24c,24gを制御し、バーナ5a,5b,5c,7aの火力を変更する。
【0032】
また、コントローラ40は、バーナ5a,5b,5c,7aの2つ以上で燃焼中に、何れかを消火するために操作ボタン8a,8b,8c,9で使用者による消火操作が行われると、対応する先弁23a,23b,23c,23gを閉弁することで、消火するバーナ5a,5b,5c,7aへの燃料ガスの供給を停止する。これに対して、バーナ5a,5b,5c,7aの何れか1つで単独燃焼中に、操作ボタン8a,8b,8c,9で使用者による消火操作が行われると、対応する先弁23a,23b,23c,23gよりも前に元弁21を閉弁することで元弁21の動作点検を行うようになっており、元弁21の閉弁で燃料ガスの供給を停止したにもかかわらず、対応する熱電対28a,28b,28c,28gの起電力が所定の消火閾値よりも小さくならなければ、元弁21に異物が挟まるなどの閉弁不良が生じていると判断する。
【0033】
さらに、コントローラ40は、消火するバーナ5a,5b,5c,7aへの燃料ガスの供給を停止したら、対応する流量調節弁24a,24b,24c,24gを次回の点火に備えて初期状態に戻しておく初期化処理を実行する。初期化処理を行うことによって、次回の点火時に必要となる流量調節弁24a,24b,24c,24gの動作量を予め減らしておけるので、点火時間の短縮を図ることが可能となる。本実施例の初期化処理では、点火に適した火力となるように初期状態が設定されており、強火力バーナである左右のコンロバーナ5a,5bについては中程度の火力6の状態まで流量調節弁24a,24bを動作させ、小バーナである後コンロバーナ5cおよびグリルバーナ7aについては最大の火力9の状態まで流量調節弁24c,24gを動作させる。従って、初期化処理において、バーナ5a,5b,5c,7aの火力を大きくする方向(燃料ガスの流量を増やす方向)に流量調節弁24a,24b,24c,24gを制御することがある。
【0034】
図5は、本実施例のコントローラ40がコンロバーナ5a,5b,5cやグリルバーナ7aを消火する際に実行する消火制御処理のフローチャートである。この消火制御処理は、バーナ5a,5b,5c,7aの何れかの燃焼中に、消火のために対応する操作ボタン8a,8b,8c,9を使用者が操作すると開始される処理である。消火制御処理では、まず、バーナ5a,5b,5c,7aの2つ以上で燃焼中であるか否かを判断する(STEP100)。2つ以上で燃焼中である場合は(STEP100:yes)、何れか消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aに対応する先弁23を閉弁する(STEP102)。本実施例の先弁23は、前述したように電磁弁が用いられており、通電を停止すると閉弁する。
【0035】
こうして消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aへの燃料ガスの供給を停止したら、続いて、対応する流量調節弁24の初期化処理を行う(STEP104)。例えば、左コンロバーナ5aの消火であれば(
図2参照)、対応する先弁23aを閉弁して左コンロバーナ5aへの燃料ガスの供給を停止した後、次回の点火に備えて流量調節弁24aを左コンロバーナ5aの火力6の状態(初期状態)まで動作させる。このように消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aへの燃料ガスの供給を停止したことに基づいて、対応する流量調節弁24の初期化処理を行っておけば、次回の点火時間を短縮して再点火にも直ちに対処することが可能となるため、ガスコンロ1の利便性を高めることができる。そして、流量調節弁24の初期化処理が完了すると、
図5の消火制御処理を終了する。
【0036】
一方、STEP100の判断において、バーナ5a,5b,5c,7aの何れか1つで単独燃焼中である場合は(STEP100:no)、対応する先弁23を開弁したまま、元弁21を閉弁する(STEP106)。本実施例のガスコンロ1では、前述したように単独燃焼の消火に際して、先弁23よりも前に元弁21を閉弁することで元弁21の動作点検を行うようになっている。そして、元弁21を閉弁したら、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aに対応する流量調節弁24の動作を停止しておく所定の停止期間(例えば、30秒間)を設定する(STEP108)。
【0037】
ここで、本実施例とは異なり、流量調節弁24の停止期間を設定することなく、元弁21の閉弁によって燃料ガスの供給を停止したことに基づいて、直ちに流量調節弁24の初期化処理を開始したとする。そして、実際に元弁21の閉弁不良が生じていた場合に、初期化処理に伴って火力を大きくする方向に流量調節弁24を制御することにより、消火するはずのバーナ5a,5b,5c,7aの火炎が逆に大きくなるので、使用者を驚かせてしまうことになる。そこで、本実施例のガスコンロ1では、元弁21を閉弁すると、停止期間を設定して、流量調節弁24の初期化処理を直ぐには開始しないようになっている。
【0038】
流量調節弁24の停止期間を設定すると、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの消火を検知したか否かを判断する(STEP110)。消火の検知は、対応する熱電対28の起電力に基づいて行われ、起電力が所定の消火閾値よりも小さければ消火したと判断し、起電力が消火閾値以上であれば消火していないと判断する。そして、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの消火を検知していない場合は(STEP110:no)、続いて、STEP108で設定した流量調節弁24の停止期間が経過したか否かを判断し(STEP112)、未だ停止期間が経過していない場合は(STEP112:no)、STEP110の処理に戻って、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの消火を検知したか否かを再び判断する。
【0039】
こうして判断を繰り返し、流量調節弁24の停止期間が経過する前に、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの消火を検知した場合は(STEP110:yes)、元弁21が正常に動作(閉弁)していると判断し、STEP108で設定した停止期間を解除することによって流量調節弁24の動作を可能とする(STEP114)。そして、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aに対応する先弁23を閉弁した後(STEP116)、対応する流量調節弁24の初期化処理を行い(STEP118)、初期化処理が完了すると、
図5の消火制御処理を終了する。尚、本実施例の消火制御処理では、STEP114で流量調節弁24の停止期間を解除すると、先弁23の通電を停止して閉弁してから、流量調節弁24の初期化処理を開始しているが、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの消火を既に確認済みであるので、流量調節弁24の初期化処理は、先弁23の閉弁と同時、あるいは先弁23の閉弁よりも前に開始してもよい。
【0040】
一方、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの消火を検知することなく(STEP110:no)、流量調節弁24の停止期間が経過した場合は(STEP112:yes)、元弁21に異物が挟まるなどの閉弁不良が生じていると判断し、閉弁不良の報知を行う(STEP120)。本実施例のガスコンロ1では、図示しないエラーランプを点灯することで元弁21の閉弁不良を報知するようになっている。尚、報知方法は、これに限られず、液晶画面に表示してもよいし、音声で報知してもよい。
【0041】
こうして元弁21の閉弁不良を報知すると、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aに対応する先弁23を閉弁した後(STEP122)、対応する流量調節弁24の初期化処理を行い(STEP124)、初期化処理が完了すると、
図5の消火制御処理を終了する。尚、本実施例の消火制御処理では、元弁21の閉弁不良と判断した場合に、先弁23を閉弁することで燃料ガスの供給を停止し、その後、流量調節弁24の初期化処理を行うこととしているが、安全性の確保を優先し、流量調節弁24の初期化処理を行うことなく、ガスコンロ1を強制的に使用不能にしてもよい。
【0042】
以上に説明したように本実施例のガスコンロ1では、バーナ5a,5b,5c,7aの何れかの単独燃焼を消火する際に、先弁23よりも前に元弁21を閉弁することで元弁21の動作点検を行うこととして、元弁21の閉弁によって燃料ガスの供給を停止すると、流量調節弁24の停止期間を設定すると共に、その停止期間が経過しても熱電対28で消火が検知されないことに基づいて元弁21の閉弁不良と判断するようになっている。これにより、実際に元弁21の閉弁不良が生じていたとしても、元弁21の動作点検中(流量調節弁24の停止期間中)は、流量調節弁24の初期化処理を開始することがないので、初期化処理に伴って火力を大きくする方向に流量調節弁24を制御するか否かにかかわらず、元弁21の動作点検中に消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの火炎が大きくなることを回避することができる。
【0043】
また、本実施例のガスコンロ1では、流量調節弁24の停止期間中に熱電対28で消火が検知されると、流量調節弁24の停止期間を経過前に解除して流量調節弁24の初期化処理を可能としている。これにより、元弁21の動作点検を行う場合でも、元弁21の正常な動作を確認できたら、再点火に備えて速やかに流量調節弁24を初期状態に戻しておくことが可能となる。
【0044】
上述した本実施例のガスコンロ1には、次のような変形例も存在する。以下では、上述の実施例とは異なる点を中心に変形例について説明する。尚、変形例の説明では、上述の実施例と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
上述した実施例のガスコンロ1では、バーナ5a,5b,5c,7aの何れかの単独燃焼を消火する際に、元弁21を閉弁した時点の流量調節弁24の状態を維持したまま、流量調節弁24の停止期間を設定するようになっていた。これに対して、変形例のガスコンロ1では、元弁21を閉弁した後、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの火力が所定の基準火力以下となる状態まで一旦流量調節弁24を動作させる火力低減処理を行ってから、流量調節弁24の停止期間を設定するようになっている。
【0046】
図6は、変形例の消火制御処理の中で実行される火力低減処理のフローチャートである。この火力低減処理(STEP107)は、
図5に示した消火制御処理のSTEP106とSTEP108との間に挿入される処理である。火力低減処理では、まず、STEP106で元弁21を閉弁した時点における消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの設定火力を確認する(STEP200)。バーナ5a,5b,5c,7aの火力(火力1~火力9)は、対応する操作ボタン8a,8b,8c,9の回転位置に応じて設定されるが、対応する流量調節弁24の開度(バルブモータ37の回転量)で確認してもよい。
【0047】
続いて、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの設定火力が所定の基準火力よりも大きいか否かを判断する(STEP202)。この基準火力は、熱電対28で確実に火炎を検知できる(熱電対28の起電力が消火閾値以上となる)火力でありつつ、できるだけ小さい火力に設定されており、本変形例では基準火力が火力2になっている。
【0048】
そして、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの設定火力が基準火力よりも大きい場合は(STEP202:yes)、対応する流量調節弁24を基準火力以下となる状態まで動作させる(STEP204)。例えば、設定火力が火力5であった場合は、基準火力の火力2となる状態まで流量調節弁24を開度が小さくなる方向(燃料ガスの流量を減らす方向)に動作させる。
【0049】
一方、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの設定火力が基準火力以下である場合は(STEP202:no)、STEP204の処理を省略して
図6の火力低減処理を終了し、
図5の消火制御処理に復帰する。そして、消火制御処理では、火力低減処理(STEP107)に続いて、前述したように流量調節弁24の停止期間を設定する(STEP108)。
【0050】
以上のように変形例のガスコンロ1では、バーナ5a,5b,5c,7aの何れかの単独燃焼を消火する際に、先弁23よりも前に元弁21を閉弁した後、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの火力が基準火力以下となる状態まで一旦流量調節弁24を動作させてから、流量調節弁24の停止期間を設定するようになっている。これにより、実際に元弁21の閉弁不良が生じていたとしても、元弁21の動作点検中(流量調節弁24の停止期間中)は、消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの火力が基準火力以下に抑えられているので、基準火力よりも大きい火力のまま維持される場合に比べて、元弁21の動作点検中における安全性を高めることが可能となる。
【0051】
以上、本実施例および変形例のガスコンロ1について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0052】
例えば、前述した実施例では、流量調節弁24としてニードルバルブを用いていたが、流量調節弁24はニードルバルブに限られず、ディスクバルブを採用してもよい。周知のようにディスクバルブは、流入孔を有する回転ディスクと、大きさが異なる複数の通気孔を有する固定ディスクとを備えており、回転ディスクの回転を制御して流入孔と通気孔との重複面積(燃料ガスの通過面積)を切り換えることで、ノズル25へと供給される燃料ガスの流量を変更することができる。
【0053】
また、流量調節弁24にディスクバルブを採用する場合、
図7に例示したように、回転ディスクを回転させるシャフト50にカム51を取り付けておくこととして、シャフト50の回転を利用して先弁23を開弁させる構成としてもよい。
図7(a)には、点火前の状態が示されており、流量調節弁24のシャフト50は初期状態にあって、このときカム51はロッド52を押し込む前の回転位置にある。そして、点火に際してシャフト50を図中の時計回りに回転させることにより、
図7(b)に示されるように連動して回転するカム51がロッド52を押し込む。すると、そのロッド52が先弁23を押して開弁させるので、燃料ガスが流量調節弁24に供給される。また、点火すると、ソレノイド53に通電することで発生する電磁力によって先弁23の開弁状態が保持されるため、シャフト50をさらに時計回りに回転させて、カム51がロッド52を押し込まなくなっても、先弁23が閉弁することはない。こうして燃焼中は、カム51がロッド52を押し込まない範囲でシャフト50を回転させることで、上述した回転ディスクの流入孔と固定ディスクの通気孔との重複面積が変化し、シャフト50を時計回りに回転させると強火(火力が大きく)なり、反時計回りに回転させると弱火(火力が小さく)なる。
【0054】
そして、消火する際には、ソレノイド53への通電を停止することで先弁23を閉弁させることができる。また、流量調節弁24の初期化処理では、シャフト50を反時計回りに回転させて
図7(a)の初期状態に戻すと、カム51がロッド52を押し込んで再び先弁23を開弁させる段階を経ることになるので、これを避けるためにシャフト50を時計回り(火力を大きくする方向)に一回転させて初期状態に戻すようになっている。このような構成を採用したガスコンロ1においても、前述した実施例と同様に、単独燃焼の消火時に元弁21の動作点検を行うに際して、先弁23よりも前に元弁21を閉弁して燃料ガスの供給を停止したら、流量調節弁24の停止期間を設定することにより、元弁21の動作点検中に消火対象のバーナ5a,5b,5c,7aの火炎が大きくなることを回避することができる。
【0055】
また、前述した実施例では、流量調節弁24の停止期間中に熱電対28で消火が検知されると、停止期間を経過前に解除して流量調節弁24の初期化処理を可能としていたが、熱電対28で消火が検知されても、停止期間が経過するのを待って、流量調節弁24の初期化処理を行うようにしてもよい。ただし、前述した実施例のように、元弁21の正常な動作(閉弁)を確認できたら、停止期間を解除すれば、再点火に備えて速やかに流量調節弁24を初期状態に戻しておくことが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、
5…コンロバーナ、 6…五徳、 7…グリル、
7a…グリルバーナ、 7d…グリル扉、 8…コンロ操作ボタン、
9…グリル操作ボタン、 20…ガス通路、 21…元弁、
22…ガス分岐路、 23…先弁、 24…流量調節弁、
25…ノズル、 27…点火プラグ、 28…熱電対、
30…弁室、 30a…弁座、 31…流入路、
32…流出路、 33…弁体、 33a…先端部、
33b…オリフィス、 34…Oリング、 35…ピン、
36…円筒カム、 36a…スリット、 37…バルブモータ、
40…コントローラ、 50…シャフト、 51…カム、
52…ロッド、 53…ソレノイド。