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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】画像センサを備えた表示システム
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20221028BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221028BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221028BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20221028BHJP
   H04N 9/07 20060101ALI20221028BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20221028BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20221028BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221028BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G09F9/30 349Z
G02B5/20 101
G09F9/30 349B
G09F9/30 365
H01L27/32
H04N5/369
H04N9/07 A
H05B33/04
H05B33/12 E
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018149526
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2019070790
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】1757670
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513257535
【氏名又は名称】イソルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】プシュカ アガーテ
(72)【発明者】
【氏名】チャブル クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ブチノン ベンジャミン
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0220844(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107025451(CN,A)
【文献】特開2006-065305(JP,A)
【文献】特開2011-066397(JP,A)
【文献】国際公開第2005/104234(WO,A1)
【文献】特開2004-063461(JP,A)
【文献】国際公開第2017/095858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/20-5/28
G02F1/13-1/1334
1/1339-1/1341
1/1347
1/137-1/141
G06F3/03-3/047
G06T1/00
1/60
G09F9/30-9/46
H01L27/32
51/50
H04N5/30-5/378
9/04-9/11
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示・検出システムであって
1の表示サブ画素及び第2の表示サブ画素を有する表示画面を備えており、
前記第1の表示サブ画素は夫々、第1の色フィルタで覆われて第1の放射線を放射することができる第1の発光素子と第1の導電性トラックとを有しており、
前記第2の表示サブ画素は夫々、第2の色フィルタで覆われて第2の放射線を放射することができる第2の発光素子と第2の導電性トラックとを有しており、
前記第1の色フィルタは、前記第1の放射線を通過させて前記第2の放射線を遮断することができ、前記第2の色フィルタは、前記第2の放射線を通過させて前記第1の放射線を遮断することができ、
前記表示・検出システムは、前記表示画面で覆われて前記第1の放射線、前記第2の放射線又は第3の放射線を検出することができる画像センサを更に備えており、
前記第1の導電性トラックは、前記第1の放射線及び前記第2の放射線を吸収する材料で形成されているか、又は
前記第1の導電性トラックは、前記第1の放射線及び前記第2の放射線を通すか、又は
少なくとも前記第1の表示サブ画素は、前記第1の放射線を吸収するか、又は前記第1の放射線及び前記第2の放射線を吸収して前記第1の導電性トラックを覆う第1の吸収素子を有しており、
前記第1の表示サブ画素毎に、前記第1の吸収素子、前記第1の色フィルタ及び/又は前記第1の導電性トラックは、前記画像センサによる前記第1の放射線、前記第2の放射線又は前記第3の放射線の検出のために前記第1の放射線、前記第2の放射線又は前記第3の放射線の放射方向に沿って前記画像センサと対向する少なくとも1つの第1の通路を画定しており、
前記第1の導電性トラックが前記第1の放射線及び前記第2の放射線を通す場合、前記第1の導電性トラックは、前記放射方向に沿って前記画像センサと対向して配置されていることを特徴とする表示・検出システム。
【請求項2】
前記第1の表示サブ画素毎に、前記第1の表示サブ画素の表面全体が、前記第1の吸収素子及び前記第1の色フィルタで覆われていることを特徴とする請求項1に記載の表示・検出システム。
【請求項3】
前記第1の吸収素子と前記第1の導電性トラックとの間に配置された少なくとも1つの誘電体層を更に備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示・検出システム。
【請求項4】
前記第1の吸収素子は、前記第1の導電性トラックに接していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の表示・検出システム。
【請求項5】
前記画像センサは前記第2の放射線を検出することができ、前記第1の吸収素子は、前記第2の放射線を通過させて前記第1の放射線を遮断することができる第3の色フィルタを有していることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の表示・検出システム。
【請求項6】
前記画像センサは前記第3の放射線を検出することができ、前記第1の吸収素子は、前記第3の放射線を通過させて前記第1の放射線及び前記第2の放射線を遮断することができる第4の色フィルタを有していることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の表示・検出システム。
【請求項7】
前記画像センサは前記第3の放射線を検出することができ、前記第1の吸収素子は、前記第1の放射線、前記第2の放射線及び前記第3の放射線を吸収することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の表示・検出システム。
【請求項8】
前記第2の表示サブ画素は、前記第1の放射線及び前記第2の放射線を吸収して前記第2の導電性トラックを覆う第2の吸収素子を有していることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の表示・検出システム。
【請求項9】
前記第2の吸収素子及び/又は前記第2の色フィルタは前記画像センサによる前記第2の放射線の検出のために前記画像センサと対向する少なくとも1つの第2の通路を画定していることを特徴とする請求項8に記載の表示・検出システム。
【請求項10】
前記第2の通路は、前記第2の放射線を通過させることができる第5の色フィルタで覆われていることを特徴とする請求項9に記載の表示・検出システム。
【請求項11】
前記表示画面と前記画像センサとの間に配置された角度フィルタを更に備えており、前記角度フィルタは、前記角度フィルタの表面に直交する方向に対して閾値より大きい入射角を有する入射光線を遮断して、前記表面に直交する方向に対して前記閾値より小さい入射角を有する少なくとも特定の入射光線を通過させることができることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の表示・検出システム。
【請求項12】
前記第1の吸収素子は前記角度フィルタを形成していることを特徴とする請求項11に記載の表示・検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は表示・検出システムに関し、より具体的には画像センサを備えた表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある用途では、表示画面に一体化された指紋センサによってユーザの指紋を検出できることが望ましい。例として、指紋センサを備えた表示画面が携帯電話を備えてもよい。表示画面と、指紋センサの形成を可能にし得る光学式画像センサとを備えた表示・検出システムが存在する。米国特許第9570002 号明細書には、表示画面及び赤外線画像センサを備えたこのような表示・検出システムの例が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ほとんどの表示画面は部分的に反射し、起こり得る反射をユーザの快適さのために弱めることが必要である。従って、このような表示画面は一般に反射防止システムを備えている。反射防止システムの例が図1に関連して記載されている。
【0004】
図1は、反射防止システム3 で覆われて部分的に反射する表示画面1 を示す分解略図である。
【0005】
反射防止システム3 は表示画面1 の前方に配置されている。反射防止システム3 は直線偏光子5 及び1/4波長板7 を備えている。1/4波長板7 は、直線偏光子5 と表示画面1 との間に配置されている。1/4波長板7 の軸芯は、直線偏光子5 の軸芯に対して45度の方向に向けられている。
【0006】
反射防止システム3 は以下のように作動する。偏光していない入射光ビームRiがまず直線偏光子5 を横切り、直線偏光の光ビームR1になる。その後、1/4波長板7 が光ビームR1を右回り又は左回りの円偏光の光ビームR2に変える。光ビームR2は、表示画面1 によって部分的に反射して反射光ビームR3になる。反射光ビームR3は、光ビームR2の円偏光と逆の円偏光、つまり左回り又は右回りの円偏光を有する。その後、1/4波長板7 が反射光ビームR3を直線偏光の光ビームR4に変える。そのため、光ビームR4の偏光方向は光ビームR1の偏光方向と直交する。従って、直線偏光子5 は光ビームR4の通過を防止する。
【0007】
特に指紋を検出するための光学式画像センサを有する反射防止システムを備えた表示システムを形成することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、実施形態は、表示・検出システムであって、積層方向に沿った層の積層体と、第1の表示サブ画素及び第2の表示サブ画素とを有する表示画面を備えており、前記第1の表示サブ画素は夫々、第1の色フィルタで覆われて第1の放射線を放射することができる第1の発光素子と第1の導電性トラックとを有しており、前記第2の表示サブ画素は夫々、第2の色フィルタで覆われて第2の放射線を放射することができる第2の発光素子と第2の導電性トラックとを有しており、前記第1の色フィルタは、前記第1の放射線を通過させて前記第2の放射線を遮断することができ、前記第2の色フィルタは、前記第2の放射線を通過させて前記第1の放射線を遮断することができ、前記表示・検出システムは、前記表示画面で覆われて前記第1の放射線、前記第2の放射線又は第3の放射線を検出することができる画像センサを更に備えており、前記第1の導電性トラックは、前記第1の放射線及び前記第2の放射線を吸収する材料で形成されているか、若しくは前記第1の放射線及び前記第2の放射線を通すか、又は少なくとも前記第1の表示サブ画素は、前記第1の放射線及び前記第2の放射線を吸収して前記第1の導電性トラックを覆う第1の吸収素子を有しており、前記第1の表示サブ画素毎に、前記第1の吸収素子、前記第1の色フィルタ及び/又は前記第1の導電性トラックは、前記第1の放射線、前記第2の放射線又は前記第3の放射線のために前記積層方向に応じて少なくとも1つの第1の通路を画定していることを特徴とする表示・検出システムを提供する。
【0009】
実施形態によれば、前記第1の表示サブ画素毎に、前記第1の表示サブ画素の表面全体が、前記第1の吸収素子及び前記第1の色フィルタで覆われている。
【0010】
実施形態によれば、前記表示・検出システムは、前記第1の吸収素子と前記第1の導電性トラックとの間に配置された少なくとも1つの誘電体層を更に備えている。
【0011】
実施形態によれば、前記第1の吸収素子は、前記第1の導電性トラックに接している。
【0012】
実施形態によれば、前記画像センサは前記第2の放射線を検出することができ、前記第1の吸収素子は、前記第2の放射線を通過させて前記第1の放射線を遮断することができる第3の色フィルタを有している。
【0013】
実施形態によれば、前記画像センサは前記第3の放射線を検出することができ、前記第1の吸収素子は、前記第3の放射線を通過させて前記第1の放射線及び前記第2の放射線を遮断することができる第4の色フィルタを有している。
【0014】
実施形態によれば、前記第1の吸収素子は前記第3の放射線を吸収する。
【0015】
実施形態によれば、前記第2の表示サブ画素は、前記第1の放射線及び前記第2の放射線を吸収して前記第2の導電性トラックを覆う第2の吸収素子を有している。
【0016】
実施形態によれば、前記第2の吸収素子及び/又は前記第2の色フィルタは、前記第2の放射線のための少なくとも1つの第2の通路を画定している。
【0017】
実施形態によれば、前記第2の通路は、前記第2の放射線を通過させることができる第5の色フィルタで覆われている。
【0018】
実施形態によれば、前記表示・検出システムは角度フィルタを更に備えており、前記角度フィルタは、前記角度フィルタの表面に直交する方向に対して閾値より大きい入射角を有する入射光線を遮断して、前記表面に直交する方向に対して前記閾値より小さい入射角を有する少なくとも特定の入射光線を通過させることができる。
【0019】
実施形態によれば、前記第1の吸収素子は前記角度フィルタを形成している。
【0020】
前述及び他の特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】反射防止システムを示す図である。
図2】表示・検出システムを示す簡略図である。
図3】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図4】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図5】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図6】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図7】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図8】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図9】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図10】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図11】表示画面及び画像センサを備えた表示・検出システムの実施形態を示す部分的な断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
同一の要素は異なる図面で同一の参照番号で示されている。明瞭化のために、記載された実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが示され詳述されている。
【0023】
以下の記載では、「後部」、「最上部」、「底部」などの相対位置を表す用語に言及する場合、図面の向きを指す。「約」という文言は、該当する値のプラスマイナス10%、好ましくはプラスマイナス5%の許容値を示すために本明細書に使用されている。
【0024】
以下の記載では、「可視光線」は、400 nm~700 nmの範囲内の波長を有する電磁放射線を示し、「赤外線」は、700 nm~10μmの範囲内の波長を有する電磁放射線を示す。更に、「放射線を吸収する要素」又は「放射線を吸収する材料で形成された要素」は、前記放射線の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%を吸収する要素を意味する。
【0025】
画像の画素は、表示画面によって表示される画像の単位素子に相当する。表示画面がカラー画像の表示画面である場合、表示画面は、各画像画素を表示するために、実質的に単一色(例えば赤、緑又は青)の光放射線を夫々放射する表示サブ画素とも称される少なくとも3つの発光素子及び/又は光強度調整素子を一般に有している。3つの表示サブ画素によって放射される放射線を重ね合わせることにより、表示画像の画素に対応する色付けの感覚が観察者に与えられる。この場合、画像の画素を表示するために使用される3つの表示サブ画素によって形成される集合体が表示画面の表示画素と称される。
【0026】
図2は、画像を表示して、画像、例えば指紋を検出することができる表示・検出システム10の簡略図である。
【0027】
表示・検出システム10は表示画面12を備えている。表示画面12は、例えば
- 例えばポリマー又はガラスで形成された透明な、又は部分的に透明な基板14、
- 基板14に置かれて基板14に接する発光層16、及び
- 例えばポリマー、無機層(SiNx,SiOx,Al2O3)又は有機層及び無機層の多層で形成され、発光層16に置かれて発光層16に接する透明な、又は部分的に透明な封止層18
を連続的に有する積層体から形成されている。
【0028】
基板14及び封止層18は、可視光線及び赤外線を通すか、又は部分的に通す。
【0029】
発光層16は表示画素のアレイを有している。各表示画素は、発光素子とも称される、電磁放射線を放射することができる光電子素子を有している。各発光素子は、例えば発光ダイオードに相当し、特に有機発光ダイオード(OLED)に相当する。表示画素は、導電性トラックと、表示画素を選択し得る不図示のスイッチング素子、特にトランジスタとを更に有してもよい。
【0030】
表示・検出システム10は、図1に関連して記載されたタイプの反射防止システム20を更に備えている。反射防止システム20は直線偏光子5 及び1/4波長板7 を有している。反射防止システム20は、表示画面12の最上部に表示画面12に接して配置されており、すなわち、1/4波長板7 は表示画面12の封止層18の最上部に封止層18に接して置かれている。
【0031】
表示・検出システム10は画像センサ22を更に備えている。例として、画像センサ22は表示画面12の下に配置されており、すなわち、表示画面12の基板14が画像センサ22の最上部に画像センサ22に接して置かれている。画像センサ22は、光子センサ又は光検出器のアレイを有している。光検出器は、入射放射線が表示画面12を横切った後に光検出器に達するように配置されている。例として光検出器は、表示画面を通過する光放射線を受けるために発光層16の発光素子間の隙間のレベルに配置されている。光検出器は不図示の透明な保護被覆体で覆われてもよい。画像センサ22は、導電性トラックと、光検出器を選択し得る不図示のスイッチング素子、特にトランジスタとを更に有している。光検出器は有機材料で形成されてもよい。光検出器は、有機フォトダイオード(OPD )又は有機フォトレジスタに相当してもよい。表示・検出システム10は、例えばマイクロプロセッサを有して、画像センサ22によって与えられる信号を処理するための不図示の手段と、表示画面12を制御するための不図示の手段とを更に備えている。
【0032】
例として、画像センサ22はユーザの少なくとも1本の指の指紋を検出するために使用され得る。画像センサ22はユーザの複数の指の指紋を同時的に検出するために使用され得ることが好ましい。実施形態によれば、画像センサ22は、表示・検出システム10上の対象又は部材の位置を光検出器によって決定するタッチ面の機能を果たしてもよい。そのため、表示・検出システム10は、タッチ面上で指又は手を単に滑らせることにより、制御可能な対話型ユーザインターフェースとして使用されてもよい。このような対話型ユーザインターフェースは、携帯電話、コンピュータ、テレビ、自動車、自動発券機、産業機器、医療機器などを制御するために特に使用されてもよい。
【0033】
表示・検出システム10は、反射防止システム20の最上部に反射防止システム20に接して置かれた透明な保護被覆体24を更に備えている。この保護被覆体24は可視光線及び赤外線を通す。保護被覆体24は、例えばガラス板又はポリマーで形成された透明層である。
【0034】
第1の実施形態によれば、対象又は部材、例えば指が、対象又は部材を横切るか又は対象又は部材によって反射する放射線を放射する、表示・検出システムの外側の外部源によって照射されてもよい。その後、対象又は部材は、偏光していない光放射線を画像センサ22の光検出器の方に放射する。このような偏光していない放射線は直線偏光子5 を横切り、この放射線の強度の50%が失われる。
【0035】
第2の動作モードによれば、対象又は部材は外部源によって照射されない。そのため、対象又は部材は、表示画面12の発光層16によって放射される偏光していない光放射線によって照射される。光放射線は偏光して、直線偏光子5 を通して強度の一部を失う。このような光放射線は対象又は部材に反射して反射させられる。反射放射線は直線偏光子5 を横切り、強度の一部を再度失う。
【0036】
従って、このような表示・検出システム10の不利点は、反射防止システム20の直線偏光子5 が画像センサ22上の対象又は部材の画像の輝度を減少させるということである。
【0037】
本発明者らは、ユーザによって観察されるほとんどの反射が、表示・検出システム10の金属要素、特に表示画面12の発光素子を制御するための金属トラック、又は表示画面12の発光素子の活性領域が形成されている電極に対する外部放射線の反射に由来することを示した。本発明者らは、指から送り返される信号を強度に減衰させるので、反射防止層として使用される偏光子の層が指紋の検出を困難にすることを更に示した。従って、反射防止機能の保証、及び画像センサ、特に指紋検出に有用な信号の通過の両方を可能にする代替手段を見つける必要性がある。
【0038】
図3は、画像、例えば指紋を検出することができる表示・検出システム30の実施形態の部分的な断面略図である。
【0039】
表示・検出システム30は、反射防止システム20が設けられていない点を除いて、図2に示されている表示・検出システム10の全ての要素を備えている。
【0040】
図3は、
- 画像センサ22と表示画面12との間の接着層32、
- 透明層24と表示画面12との間の接着層33、及び
- 画像センサ22の側にある基板14の表面を覆う表示画面12の後部封止層34
を更に示している。
【0041】
タッチパッドとも称される不図示のタッチ面が、表示画面12と透明層24との間に設けられてもよい。
【0042】
後部封止層34は、例えば厚さが100 μm程度のポリエチレンテレフタレート層(PET )に相当してもよい。基板14は、例えば厚さが10μm程度のポリアミド層に相当してもよい。
【0043】
図3及び以下の図面では、透明層24及び接着層33は表示画面12から離れて示されているが、実際には接着層33は表示画面12に接している。
【0044】
図3は、発光ダイオードLED 及び2つの電界効果トランジスタT1, T2を備えた表示サブ画素Pix を概略的に示している。電界効果トランジスタT1, T2は有機トランジスタであってもよく、無機トランジスタであってもよく、例えばアモルファスシリコンaSi 、金属酸化物、特にインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)、又はポリシリコン、特に低温ポリシリコン(LTPS)から構成されているトランジスタであってもよい。
【0045】
表示画面12の発光層16は、表示サブ画素Pix 毎に、図3の底部から最上部に、
基板14に置かれて基板14に接し、バッファ層とも称される界面層36、
トランジスタT1, T2のゲートを形成する、例えば金属製の導電性トラック38、
導電性トラック38と、導電性トラック38で覆われていない界面層36の部分とを覆う誘電体層40、
特にアモルファスシリコンaSi 、金属酸化物、特にIGZO、又はポリシリコン、特にLTPSから構成され、トランジスタT1, T2のチャネル領域が形成されている誘電体層40に置かれている有機又は無機の半導体領域42(誘電体層40のこの部分は、導電性トラック38と、トランジスタT1, T2のゲート絶縁体を形成する半導体領域42との間に配置されている)、
誘電体層40に置かれて半導体領域42と接し、特にトランジスタT1, T2のソース接点及びドレイン接点を形成する導電性トラック44、
トランジスタT1, T2、及びトランジスタT1, T2に隣接する誘電体層40を覆っている誘電体層46、
誘電体層46上に延びて、且つ誘電体層46を通って延びて導電性トラック44の内の1つと接触する発光ダイオードLED の電極48であって、例えばアノードの機能を果たす電極48、
誘電体層46を覆って、電極48を覆わないか又は単に部分的に覆い、発光ダイオードを互いに絶縁し得る誘電体層50、
放射線を放射することができ、電極48に置かれて、誘電体層50を通して電極48に接触する発光ダイオードLED の活性領域52、及び
活性領域52によって放射される放射線を部分的に通し、例えば50%の透過性を有して、画像センサ22によって検出される放射線を部分的に通す光共振器を形成し、誘電体層50及び活性領域52を覆って活性領域52に接触する導電層54
を含む層の積層体を有している。
【0046】
封止層18は部分的に透明な導電層54に置かれている。
【0047】
本実施形態では、表示画面12は、表示画面12の層の積層方向に沿って活性領域52に対向して封止層18に置かれている色フィルタ56と、表示画面12の層の積層方向に沿って導電性トラック44のトランジスタT1, T2に対向して封止層18に置かれている、画像センサ22によって検出される放射線及び観察者によって検出可能な放射線のためのブラックマトリクスとも称される吸収素子58とを更に有している。封止層18の領域60は色フィルタ56にも吸収素子58にも覆われていない。領域60は、吸収素子58及び/又は色フィルタ56によって横方向に画定されている。領域60は、表示画面12の層の積層方向に沿って導電性トラック38, 44に面していない。色フィルタ56は着色樹脂で形成されてもよく、吸収素子58は黒色樹脂又は染色樹脂、例えばSU-8黒色樹脂で形成されてもよい。実施形態によれば、画像センサ22の光検出器は、表示画面12の積層方向に沿って領域60に対向して配置されてもよい。
【0048】
本実施形態では、色フィルタ56の透過率が、発光ダイオードLED の活性領域52の発光スペクトルに近い。これは、色フィルタ56が発光ダイオードLED の活性領域52によって放射される光を実質的に完全に通過させて、他の波長を遮断することを意味する。
【0049】
発光ダイオードLED の活性領域52によって放射される放射線RLは、発光素子LED を覆う色フィルタ56を横切る。色フィルタ56の透過率が発光ダイオードLED の発光スペクトルに近いため、活性領域52によって放射される放射線RLは、色フィルタ56によって実質的に減衰しない。
【0050】
透明層24の前方に対象が存在する場合、放射線RLは、図示されていない対象、例えばユーザの指によって少なくとも部分的に反射する。反射放射線RRは、反射放射線RRが画像センサ22に達するまで進む領域60のレベルを除いて、吸収素子58によって吸収される。偏光子及び1/4波長板を備えた反射防止システム20が設けられていないので、反射放射線RRが画像センサ22に向かって進むときに反射放射線RRの減衰は減少する。
【0051】
透明層24に達する外部放射線は、吸収素子58で覆われた導電性トラック38, 44で反射せずに吸収素子58によって吸収される。更に、領域60を通過する外部放射線は反射しないか、又はほとんど反射しない。反射防止機能はこのようにして得られる。色フィルタ56に達する外部放射線は、特に電極48で反射してもよい。しかしながら、この放射線が色フィルタ56によってフィルタリングされるとすれば、観察者に向かって反射する放射線の強度は減少する。
【0052】
図4は、表示・検出システム70の別の実施形態の図3と同様の断面図である。表示・検出システム70は、吸収素子58が封止層18に置かれる代わりに、表示画面12の積層方向に沿って導電性トラック38, 44に対向して誘電体層46に置かれている点を除いて、図3に示されている表示・検出システム30の全ての要素を備えている。
【0053】
変形例として、吸収素子58は導電性トラック38, 44に直接成膜されてもよい。一般に、吸収素子58は、透明層24と導電性トラック38, 44との間のあらゆるレベルに表示画面12の層の積層方向に沿って導電性トラック38, 44に対向して成膜されてもよい。
【0054】
図5は、表示・検出システム75の別の実施形態の図3と同様の断面図である。表示・検出システム75は、吸収素子58が封止層18に置かれる代わりに、導電性トラック44及び活性領域42に直接置かれている点を除いて、図3に示されている表示・検出システム30の全ての要素を備えている。
【0055】
図6は、表示・検出システム80の別の実施形態の図3と同様の断面図である。表示・検出システム80は、吸収素子58が設けられていない点と、導電性トラック38, 44及び場合によっては電極48が、可視域で吸収する導電材料、例えばクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、金属酸化物のような可視域で透明な材料、例えばインジウムスズ酸化物(ITO) 、又は十分薄い層、例えば100 nm未満の厚さの層に成膜されるときに可視域で透明な金属で形成されている点とを除いて、図3に示されている表示・検出システム30の全ての要素を備えている。
【0056】
図7は、表示・検出システム85の別の実施形態を示す断面図である。図7では、3つの表示サブ画素、例えば緑色の光を放射する1つの表示サブ画素PixG、赤色の光を放射する1つの表示サブ画素PixR、及び青色の光を放射する1つの表示サブ画素PixBが示されている。しかしながら、以下の記載は、画素PixBが任意の色の光、例えば赤色の光又は緑色の光を放射する場合にも適用される。
【0057】
以下の記載では、添え字G 、添え字R 又は添え字B が参照符号に追加されて、参照符号で示された要素が表示サブ画素PixG、表示サブ画素PixR又は表示サブ画素PixBに夫々属することを示す。
【0058】
本実施形態では、表示サブ画素PixG及び表示サブ画素PixRは夫々、吸収素子58G, 58Rが色フィルタ56G, 56Rの周りで封止層18を完全に覆っている点を除いて、図3に示されている構造を有している。表示サブ画素PixBは、色フィルタ56B が平面視で発光ダイオードLEDBによって占められる表面積より大きな表面積、例えば実質的に表示サブ画素PixBの表面積の80%より多く、好ましくは表示サブ画素PixBの表面積の90%より多くに亘って延びている点と、不透明な吸収素子58B が、表示サブ画素PixBの表面積の20%未満、好ましくは表示サブ画素PixBの表面積の10%未満を覆っている点とを除いて、図3に示されている構造を有している。
【0059】
表示サブ画素PixG, PixRでは、発光ダイオードLEDG, LEDRによって放射される放射線RLG, RLRは、色フィルタ56G, 56Rを通って伝搬する。表示サブ画素PixG, PixRでは、反射放射線RRG, RRRは吸収素子58G, 58Rにより遮断される。表示サブ画素PixBでは、発光ダイオードLEDBによって放射される放射線RLB は色フィルタ56B を通って伝搬する。反射放射線RRB は色フィルタ56B から画像センサ22に伝搬する。このようにして、画像センサ22に達する放射線の波長フィルタリングが行われる。本発明者らは、指紋検出の用途では、画像センサ22に達する放射線の波長領域が減少するとき、特に画像センサ22に達する放射線が青色であるとき、指紋の画像のより強いコントラストを得ることができることを示した。
【0060】
図8は、表示・検出システム90の別の実施形態を示す断面図である。表示・検出システム90の表示サブ画素PixG, PixRは、表示・検出システム85の表示サブ画素PixG, PixRと同一である。表示・検出システム90の表示サブ画素PixBは、図3に示されている表示・検出システム30の表示サブ画素Pix の全ての要素を備えており、吸収素子58B で覆われていない領域60B 上に少なくとも1つの追加の色フィルタ92B を更に備えている。追加の色フィルタ92B は色フィルタ56B と同一の組成を有していることが好ましい。表示・検出システム90の表示画面12は、導電性トラック38B, 44Bでの反射が抑制されるので、図7に示されている表示・検出システム85に対して増加したコントラストを有する。
【0061】
図9は、表示・検出システム95の別の実施形態を示す断面図である。表示・検出システム95は、吸収素子58G, 58R, 58B及び色フィルタ56B が、色フィルタ56B と同一のフィルタリング特性を有する色フィルタ96と取り替えられている点を除いて、表示・検出システム85の全ての要素を備えている。表示サブ画素PixG, PixRでは、反射放射線RRG, RRRは色フィルタ96により遮断される一方、表示サブ画素PixBでは、反射放射線RRB は色フィルタ96を通って伝搬する。変形例として、表示・検出システム95は、表示画面12の積層方向に沿って金属トラックに対向して吸収素子58G, 58R, 58B と同様の吸収素子を更に備えており、吸収素子は、透明層24と導電性トラック38, 44との間のあらゆるレベルに配置されてもよい。このため、反射防止効果が更に高められ得る。
【0062】
図10は、表示・検出システム100 の別の実施形態を示す断面図である。表示・検出システム100 は、吸収素子58G, 58R, 58B が、発光ダイオードLEDG, LEDR, LEDBによって放射される放射線の波長領域とは異なる波長領域、例えば赤外領域又は近赤外領域で放射線RIF を通過させることができる色フィルタ102 と取り替えられている点を除いて、表示・検出システム85の全ての要素を備えている。変形例として、表示・検出システム100 は、表示画面12の積層方向に沿って金属トラックに対向して吸収素子58G, 58R, 58B と同様の吸収素子を更に備えており、吸収素子は、透明層24と導電性トラック38, 44との間のあらゆるレベルに配置されてもよい。このため、反射防止効果が更に高められ得る。
【0063】
本実施形態では、表示・検出システム100 は、光放射線を透明層24に放射することができる不図示の光源を備えてもよく、そのため、透明層24は導波路の機能を果たす。光源によって放射される放射線は、可視光線及び/又は赤外線であってもよく、画像センサ22によって検出される波長領域内にある。放射線は、透明層24の外周部から、例えば透明層24の側縁部から透明層24に取り込まれる。対象、例えば指が透明層24に置かれるとき、この放射線は部分的に反射してもよく、反射放射線は画像センサ22によって検出される。
【0064】
図11は、表示・検出システム105 の別の実施形態を示す断面図である。表示・検出システム105 は、表示・検出システム95の全ての要素を備えており、各表示サブ画素PixG, PixR, PixBは、図4に示されている表示サブ画素Pix の実施形態の吸収素子58G, 58R, 58B を更に有している。
【0065】
特定の実施形態が述べられている。様々な変更及び調整が当業者に想起される。更に、表示・検出システムは、表示画面12と画像センサ22との間に配置された角度フィルタを更に備えてもよい。角度フィルタは、角度フィルタの上面に対する入射放射線の入射角に応じて入射放射線をフィルタリングすることができるため、特に画像センサ22は、角度フィルタの上面に垂直な軸芯に対して最大入射角より45°小さい入射角、好ましくは30°より小さい入射角、より好ましくは20°より小さい入射角、更により好ましくは10°より小さい入射角を有する光線のみを受ける。角度フィルタは、角度フィルタの上面に垂直な軸芯に対して最大入射角より大きい入射角を有する入射放射線の光線を遮断することができる。角度フィルタは、前記放射線に不透明な壁によって画定された孔のアレイを有してもよい。別の実施形態によれば、吸収素子58が角度フィルタの機能を果たしてもよい。この場合、通路60, 60B は角度フィルタの孔を形成している。表示画面12の積層方向に沿って測定された孔の高さhは、1μm~1mmの範囲内であってもよく、好ましくは20μm~100 μmの範囲内であってもよい。表示画面12の積層方向に沿って測定された孔の幅wは、5μm~30μmの範囲内であってもよく、例えば10μmであってもよい。比率h/wは1~10の範囲内であってもよい。ピッチpは10μm~30μmの範囲内であってもよく、例えば15μmであってもよい。
【0066】
当業者は、いかなる進歩性も示さずにこれらの様々な実施形態及び変形例を組み合わせてもよいことに留意すべきである。特に、図5及び6に関連して記載された吸収素子58は、図7に示されている表示・検出システム85、図9に示されている表示・検出システム95、図10に示されている表示・検出システム100 又は図11に示されている表示・検出システム105 で実施されてもよい。
【0067】
このような変更、調整及び改良は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の趣旨及び範囲内であることが意図されている。従って、先の記載は単なる一例であり、限定することを意図されていない。本発明は、以下の特許請求の範囲及びこの均等物に定義されているように限定されるだけである。
【0068】
本出願は、仏国特許出願第17/57670 号明細書の優先権を主張しており、その内容全体が、特許法で許容可能な最大限に至るまで参照により本明細書に組み込まれる。
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