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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】加熱生成物の捕集装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/12 20060101AFI20221028BHJP
   B08B 9/032 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G01N31/12 B
B08B9/032 321
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018166811
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020041805
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】392017303
【氏名又は名称】システム・インスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 道雄
(72)【発明者】
【氏名】鵜嶋 善久
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 潜
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-095288(JP,A)
【文献】特開2012-200712(JP,A)
【文献】特開平08-297120(JP,A)
【文献】米国特許第09233404(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/12
B08B 9/032
G01N 31/00-31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃焼空間を有し、分析対象となる試料を加熱して加熱生成物を作る燃焼管と、
この加熱生成物を取り出すための取出体と、
この取出体に連通し、負圧を用いて前記加熱生成物を搬送する搬送手段と、
搬送された加熱生成物を分析のために吸収する吸収手段と、
を有し、
前記取出体には、前記燃焼管に連通して前記加熱生成物を受容する受容空間と、この受容空間と前記搬送手段とに連通し、前記搬送手段に前記加熱生成物を搬出するための取出し空間と、前記受容空間に連通し、洗浄液を前記受容空間と、洗浄液を前記取出し空間および前記搬送手段に送り出す洗浄液注入空間とで形成され、
前記取出し空間が前記受容空間に連通する部分は、前記受容空間の底部であり、
前記洗浄液注入空間が前記受容空間に連通する部分は、前記取出し空間が前記受容空間に連通する位置より高い位置に設けられており、
前記洗浄液注入空間から注入される洗浄液が前記受容空間の底部に溜まり前記取出し空間と前記受容空間とが連通する部分を塞ぐと、前記搬送手段に加えられた負圧により前記洗浄液を液の塊として間欠的に搬出手段に送り出す加熱生成物の捕集装置。
【請求項2】
前記受容空間の底部に溝状の凹部を形成し、前記取出し空間が前記受容空間に連通する位置は、前記凹部と同じ位置に設けられ相互に連通している請求項1に記載の加熱生成物の捕集装置。
【請求項3】
前記洗浄液注入空間は直線状であり、前記取出し空間は直線状であり、これら注入空間および取出し空間は相互に平行状態に形成されている請求項1または請求項2に記載の加熱生成物の捕集装置。
【請求項4】
前記燃焼管の端部において、凸となる半球形状であって粗面を有する外面を形成し、耐熱素材で形成される凸部が設けられ、
前記取出体において、前記燃焼管の凸部と擦り合わされる粗面をもつ半球形状の凹面を有し、前記燃焼管の燃焼空間からの加熱生成物を取出す空間に連通し、前記凸部が当該凹面に擦り合わさることで気密状態を構成するとともに前記凸部に対し相互に摺り合わされる凹部が設けられ、
前記凸部と凹部との粗面同士が接合し気密状態を維持した状態で、相対的に近接および離反する方向に摺動可能に付勢する弾性体、
を備えた請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加熱生成物の捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分析すべき対象である試料を高温加熱することにより生成される加熱生成物を捕集する捕集装置に関する。特に、捕集装置の内部において加熱生成物を取り出すこと、搬送する搬送手段の内部を洗浄することに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ハロゲンおよび硫黄を分析する分析装置を開示する。当該分析装置において、サンプルは、燃焼炉ユニットの燃焼管の内部で1100度前後の温度で燃焼される。その結果、燃焼ガスが発生する。燃焼ガスは、加湿されたキャリアガスと共に吸収装置に流通する。また、試料の燃焼、吸収が終了した後に管の内部が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-95288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加熱生成物の一部が流通経路の壁部に付着して、当該壁部に残渣として残る。当該残渣は、次回以降の分析に影響を与える。従って、次の加熱生成物のトラッピング操作を行う前に、当該流通経路を効率よく洗浄する必要がある。しかしながら、特許文献1において洗浄に関する開示はあるものの、加熱生成物のトラッピングによる流通経路の残渣に対する洗浄を如何に効率よく行うかということに関しては示唆されていない。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、加熱生成物を搬送する経路の洗浄を、簡単な構成で効率よく行うことのできる加熱生成物の捕集装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る加熱生成物の捕集装置は、内部に燃焼空間を有し、分析対象となる試料を加熱して加熱生成物を作る燃焼管と、この加熱生成物を取り出すための取出体と、この取出体に連通し、負圧を用いて前記加熱生成物を搬送する搬送手段と、搬送された加熱生成物を分析のために吸収する吸収手段と、を有し、前記取出体には、前記燃焼管に連通して前記加熱生成物を受容する受容空間と、この受容空間と前記搬送手段とに連通し、前記搬送手段に前記加熱生成物を搬出するための取出し空間と、前記受容空間に連通し、洗浄液を前記受容空間と、洗浄液を前記取出し空間および前記搬送手段に送り出す洗浄液注入空間とで形成され、前記取出し空間が前記受容空間に連通する部分は、前記受容空間の底部であり、前記洗浄液注入空間が前記受容空間に連通する部分は、前記取出し空間が前記受容空間に連通する位置より高い位置に設けられており、前記洗浄液注入空間から注入される洗浄液が前記受容空間の底部に溜まり前記取出し空間と前記受容空間とが連通する部分を塞ぐと、前記搬送手段に加えられた負圧により前記洗浄液を液の塊として間欠的に搬出手段に送り出す。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、洗浄液を液体の塊(液塊)として間欠的に送り出すようにし、間欠的に液塊が流れてくることにより効率的に洗浄を行うことができる。従って、ある分析作業が終了し、次のサンプルを燃焼させて分析する際に、残留物の影響を可能な限り低減することができ、信頼性の高い分析を行うことができる。このような間欠的な液塊の流れをつくることにより、洗浄液を連続的に流す場合に比べて、少ない流量で洗浄効果を高めることができる。その結果、ランニングコストを抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置の全体構成をイメージとして示す概要図である。
図2】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼手段の構成図である。
図3】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼管の要部の縦断面図である。
図4】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼管の下部の縦断面図である。
図5】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられるガス取出し装置の分解斜視図である。
図6】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる取出体の平面図である。
図7】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる取出体の縦断面図である。
図8】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼管と取出体との接続状態を示す縦断面図である。
図9】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼管と取出体との接続状態を拡大して示す縦断面図である。
図10】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる取出体の下方部分の拡大図である。
図11】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に洗浄液を間欠的に送り出す工程を説明するための拡大図である。
図12】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に洗浄液を間欠的に送り出す工程を説明するための拡大図である。
図13】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に洗浄液を間欠的に送り出す工程を説明するための拡大図である。
図14】実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に洗浄液を間欠的に送り出す工程を説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置の全体構成をイメージとして示す概要図である。図1において、燃焼手段20は、サンプルS1、S2を高温加熱して加熱生成物を生成する。取出手段21は、加熱生成物を取り出す。搬送手段22は、負圧をかけることにより取出手段21により取り出された加熱生成物を搬送する。吸収手段23は、搬送手段22を通じて送られてきた加熱生成物を所定の液体に溶解し、分析に供する。
【0011】
図2は加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼手段の構成図である。例えば、燃焼手段20は、縦型の燃焼装置である。燃焼装置は、サンプル投入装置1と燃焼管2と燃焼炉4とを備える。この燃焼装置の下方には、加熱生成物であるガスを取り出すためのガス取出し装置3が設けられる。ガス取出し装置3は、図1の取出手段21に相当する。
【0012】
サンプル投入装置1は、筒状に形成され、分析の対象物であるサンプルの投入を受け入れ得るように設けられる。サンプルS1、S2、S3、S4、S5などが、所定の手順に従って順次投入される。
【0013】
燃焼管2は、筒状に形成され、その上端は、サンプル投入装置1の下端に連結される。
【0014】
ガス取出し装置3の上端は、燃焼管2の下端に連結される。
【0015】
燃焼炉4は、燃焼管2を覆うように設けられる。
【0016】
所定のサンプルがサンプル投入装置1に投入されると、当該サンプルは、燃焼管2に移動する。この際、当該サンプルは、燃焼炉4の熱により1100度前後まで加熱される。その結果、高温のガス状加熱生成物(以下、燃焼ガスという。)が発生する。当該燃焼ガスは、ガス取出し装置3から取り出される。
【0017】
次に、図3を用いて、燃焼管2を説明する。
図3は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼管の要部の縦断面図である。
【0018】
図3の燃焼管2において、本体部2aは、ガラス、セラミックなどの耐熱素材で形成される。例えば、本体部2aは、石英ガラスで形成される。本体部2aにおいて、下部の外径は、他の部分の外径よりも小さい。
【0019】
本体部2aは、燃焼空間2bを有する。燃焼空間2bは、本体部2aを鉛直方向に貫通する。
【0020】
次に、図4を用いて、燃焼管2の下部を説明する。
図4は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼管の下部の縦断面図である。
【0021】
図4の燃焼管2において、凸部2cは、ガラス、セラミックなどの耐熱素材で形成される。例えば、凸部2cは、石英ガラスで形成される。凸部2cは、本体部2aの下端に設けられる。凸部2cの外面は、下側に凸となるように形成される。凸部2cの外面は、半球状に形成されるとともに微細なすりガラス状の粗面となっている。凸部2cは、内側において本体部2aの下端に固定される。例えば、凸部2cは、内側において本体部2aの下端に溶接される。
【0022】
次に、図5を用いて、ガス取出し装置3を説明する。
図5は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられるガス取出し装置の分解斜視図である。
【0023】
図5に示されるように、ガス取出し装置3は、取出体5とベース体6とカバー体7と複数の弾性体8と複数の締結体9とを備える。
【0024】
取出体5は、四角注状に形成され、例えば、石英ガラスで形成される。
【0025】
ベース体6は、板状に形成され、取出体5の下方に設けられる。
【0026】
カバー体7は、取出体5の上面の中央が露出するように取出体5を覆うように設けられる。
【0027】
複数の弾性体8の各々は、コイルばねである。複数の弾性体8は、取出体5とベース体6との間に設けられる。複数の弾性体8の各々は、取出体5の四隅のうちのいずれかの隅の付近に設けられる。これらの弾性体8は、必ずしも四隅に設けられる必要はない。これらの弾性体8は、凹部5aの周辺の三か所に設けられるようにしても良い。いずれにしても、これらの弾性体8は、凸部2cと凹部5aとが常に摺り合わさった状態で接合し、かつ相対的に近接および離反する方向に摺動可能に付勢する、即ち、これらの弾性体8は、熱変形による大きさの変化を、相互に摺動することで吸収できるとともに気密接合を維持できるような力で付勢できればよい。
【0028】
複数の締結体9の各々は、ねじであり、カバー体7が取出体5を覆った状態においてベース体6とカバー体7とを締結するように設けられる。複数の締結体9の各々は、カバー体7の外側からねじ込まれるように設けられる。
【0029】
次に、図6図7とを用いて、取出体5を説明する。
図6は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる取出体の平面図である。図7は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる取出体の縦断面図である。図8は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼管と取出体との接続状態を示す縦断面図である。図9は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる燃焼管と取出体との接続状態を拡大して示す縦断面図である。
【0030】
図6図7とに示されるように、取出体5は、凹部5aとガイド部5bと取出し空間5cと取出し口5dと洗浄液注入空間5eと注入口5fとを備える。
【0031】
凹部5aは、取出体5の上面に形成される。凹部5aは、図5図6には図示されない燃焼管2の凸部2cと擦り合わされるように形成される。凹部5aの内面は、半球状に形成されるとともに凸部2cと同様に微細なすりガラス状の粗面となっており、好ましくは同じ面粗さで形成され、凸部2cの粗面と擦り合わさって気密状態を形成する。
【0032】
凸部2cと凹部5aの粗面は、同じ面粗さであることが好ましいが、使用目的に合わせて面粗さを相互に異なるように選択することも可能である。
【0033】
ガイド部5bは、凹部5aの上方に連結される。ガイド部5bは、半球形ではなく円錐状に形成され、上側に行くにつれて開くように形成される。ガイド部5bは、図9に示されるように、凹部5aの下半部(図中のA領域)ですりガラス状の微細な粗面により気密構造を構成しており、一方、凹部5aの半球の高さ方向の中心よりも15度だけ下方の位置で接線方向に開くように円錐形状に形成される。
【0034】
この角度15度は実用的には好ましい角度であるが、凹部5aの半球形面の下半部の2分の1程度あるいはそれより大きな領域において半球形のすりガラス状粗面であり、その残余の2分の1程度あるいはそれより小さな領域である上部が円錐状の内面となっていてもよい。すりガラス状の微細な粗面により気密構造が実現できれば、前記角度は特に重要な問題ではなく、求められる設計仕様に合わせて半球面と円錐面との長さの組み合わせを変更することができる。
【0035】
また、凸部2cと凹部5aとの気密接合については、微細なすりガラス状の粗面が相互に擦り合わさっていれば気密状態を実現できるので、凸部2cと凹部5aとの半球形の軸心が若干ズレていても、実用的に問題ない状態で組み立てることができ、組み立て作業効率を高めることが可能となる。
【0036】
このような構成とすることにより、組み立て作業の容易さ、メンテナンス時の分解、再組み立て作業の容易さを実現でき、総合的に低コスト化を図ることができる。
【0037】
取出し空間5cは、取出体5の一側の内部に設けられる。取出し空間5cは、一直線状に形成され、長手方向が水平方向となるように形成される。
【0038】
取出し口5dは、円筒状に形成される。取出し口5dは、取出し空間5cに連通し、取出体5の側部において画定されて外部に露出する。
【0039】
洗浄液注入空間5eは、取出体5の他側の内部に設けられる。洗浄液注入空間5eは、取出し空間5cにつながる。洗浄液注入空間5eは、直線状に形成される。洗浄液注入空間5eは、取出体5の外側から内側に向けて傾斜するように形成される。また、洗浄液注入空間5eは、取出し空間5cより所定距離だけ上方に位置させて形成される。取出し空間5cと取出し口5dは、ガスを取り出すための流路として使用されるが、残渣物を洗浄する際には、洗浄液を流すための流路としても使用される。取出し空間5cと洗浄液注入空間5eとの間に位置して更に受容空間5gが設けられ、凹部5aの下方に連通するとともに取出し空間5c及び5eにも連通している。この受容空間5gは、燃焼管2から送られてくる燃焼ガスを受けとめる役割と、洗浄液注入空間5eから送られてくる洗浄液を受け止める役割を果たす。
【0040】
注入口5fは、円筒状に形成される。注入口5fは、取出体5の他側において外部に露出する。注入口5fは、取出体5の他側に固定される。注入口5fの内部空間は、洗浄液注入空間5eにつながり、また、取出体5の側面において外部に露出し、洗浄液を注入するための管路が接続固定される。
【0041】
図8および図9に示されるように、燃焼管2の凸部2cと取出体5の凹部5aとは、同じ粗さの微細なすりガラス状の粗面にて相互に摺り合わされることにより気密状態を維持して接触する。この際、燃焼管2の燃焼空間2bと取出体5の取出し空間5cとは、シールされた状態でつながる。
【0042】
燃焼ガスが反応生成される際には、1000度程度の高温に加熱される。この際、凸部2cおよび凹部5aが膨張したり、冷却時には収縮したりして、それぞれ変形し、相互にズレて、位置が移動することになり、このように凸部2cと凹部5aとはすりガラス状の微細な粗面で相互に擦り合わされた状態を保ちつつ相互に微小に移動することができる。このため、図9のA領域、B領域方向に熱変形応力を開放することができる。それにより、各部品の変形による気密状態の破綻や物理的に破損することを抑制できる。
【0043】
また、図8あるいは図9に示されるように、凹部5aの下端部(底面部)は、開口されて取出し空間5cに連通する。この開口部は、燃焼管2の端部(下端部)の外形より大きく、相互の間には、空間的な余裕がある。このように、燃焼管2端部と、凹部5aの開口部との位置関係には、余裕がある。このため、高熱による膨張変形および冷却時点の収縮変形が発生しても、燃焼管2の端部と凹部5aの開口部とが接触して破損することを抑制できるとともに組み立て作業の精度はそれほど高める必要はなくなり作業効率を高めることができる。このことは、メンテナンス時の分解、再組立て作業の効率向上にも寄与する。
【0044】
この状態において、複数の弾性体8は、復元力により取出体5を燃焼管2に常時押し付ける。その結果、燃焼管2と取出体5との熱変形を吸収することができ、接触力(気密状態)は維持される。
【0045】
以上で説明した実施の形態1によれば、燃焼管2の凸部2cと取出体5の凹部5aとが摺り合わされた際に、燃焼空間2bと取出し空間5cとがつながる。このため、簡単な構成で燃焼空間2bの出口と取出し空間5cとを接続することができる。また、気密構造を実現するためにOリングのような消耗部品を用いることがないため、特別な保守作業を不要あるいは必要最小限とすることができ維持管理のコストを低減できることとなる。このように構造が簡素なため、燃焼管2を容易に交換することも可能となり、この点からも維持管理の負担軽減、費用低減が可能となる。
【0046】
一方、気密構造が簡素であるため、組み立ての際の精度についても、高い精度ではなく許容範囲を緩やかに設定することができ、短時間で効率的な組み立てを実現できるとともにメンテナンスの際の分解、再組立ても短時間で行うことができ維持管理も容易に行うことが可能となる。
【0047】
また、取出体5において、ガイド部5bは、上側に行くにつれて円錐状に開く。このため、燃焼管2の凸部2cが熱により膨張しても、凸部2cが凹部5aに対して相対的に移動しやすくなり熱変形応力が解放されるので、当該凸部2cまたは凹部5aが破損することを抑制できる。
【0048】
また、複数の弾性体8は、燃焼管2と取出体5と相互に近接あるいは離反する方向に付勢し、相互に移動できるように構成して、接触力を維持させるとともに応力の働き方によっては相互に離反する方向への移動を許すように構成される。このため、燃焼管2が熱により縦方向あるいは横方向に伸縮しても、高温に耐え得る特殊な材料のOリングを用いることなく、燃焼空間2bと取出し空間5cとの接続の機密性を維持することができる。その結果、燃焼管2が熱により縦方向あるいは横方向に膨張しても、燃焼管2が破損することを抑制できる。
【0049】
熱変形および熱応力の量が大きく、すりガラス状の微細な粗面でのズレによる応力開放の限界を超える状態が発生したとしても、弾性体8により凸部2cと凹部5aとが相互に接近したり離反したりする方向に移動可能とし、異常な応力が加わっても応力を開放できる。このため、気密状態の破綻およびや物理的な破損を抑制することができる。即ち、すりガラス状の微細な粗面での擦り合わせ部分での相互移動による応力開放という手段と、それを超える状態が発生したときには弾性体による応力開放手段という2段階で対応するようにしているので、効果的に気密状態の維持と損傷との抑制を実現することができる。
【0050】
一方、洗浄液注入空間5eが直線状で、かつ傾斜していることで、注入された洗浄液は取出し空間5cに向けて円滑に流れ落ちることとなり無駄なく洗浄液を使用することができる。
【0051】
図10は実施の形態1における加熱生成物の捕集装置に用いられる取出体の下方部分の拡大図である。
【0052】
図10においては、洗浄液注入空間5eは、傾斜しておらず、取出体5の外壁に設けられた注入口5fから内側に向けて、取出し空間5cと並行となるように水平に形成される。この洗浄液注入空間5eは、燃焼ガス、洗浄液を受け入れる受容空間5gを介して取出し空間5cに連通する。
【0053】
受容空間5gの底部には、溝状の凹部5hが形成される。取出し空間5cが受容空間5gに連通する位置は、凹部5hと同じ位置に設けられ、相互に連通する。更に、凹部5hは、受容空間5gのほぼ中央位置まで延伸する。
【0054】
なお、洗浄液注入空間5eは、上記のとおり水平に形成されることが、製作の際の加工が容易になるという利点があり好ましい。しかしながら、場合によっては、図7図8で示したように、傾斜するほうが良いこともあり、その場合には、傾斜させて形成しても良い。
【0055】
燃焼管2での燃焼ガスの生成と吸収手段23での補足が行われ、一連の分析作業が終了すると、燃焼ガスの流通経路の残渣物を除去する洗浄が行われる。この洗浄の工程を次に説明する。図11において、洗浄液注入空間5eから所定量の洗浄液(水または適宜選定された洗浄液)が送り出されると、洗浄液は、受容空間5gの底部の隅角部と凹部5hに滞留するとともに、図12のように溜まり続ける。
【0056】
次に、図13の左側に示されるように、取出し空間5cの入口部5iを塞ぐまで溜まり続けると、取出し空間5cには負圧がかかる。このため、図13の右側のように、溜まった量の洗浄液を一つの塊(液塊)として送り出す。次いで、図14に示されるように、流れ込む洗浄液が受容空間5gの底部の隅角部と凹部5hに滞留する。
【0057】
このように、洗浄液が溜まるごとに清浄な状態の液塊が間欠的に送り込まれる。受容空間5gの底部に凹部5hが設けられているが、凹部5hは、受容空間5gの底部より低い位置になっており、流れ込んだ洗浄液が集まりやすく、入口部5iを企図したとおりに塞いで、間欠的に液塊を形成することに役立つ。図1の搬送手段22において、濃淡が断続的に示されているのは、液塊が間欠的に送られるイメージを示している。
【0058】
このように洗浄液を、間欠的な液塊として送るほうが効率的に洗浄できることを次に説明する。液塊には、取出し空間5cの壁面に付着し残留している燃焼ガスが溶け込むことにより洗浄がなされる。次に流れてくる液塊は、当初は残留物が含まれていない清浄な状況であり、最初の液塊には溶解できなかった残余の残留物に対する溶解許容量は高く、受容空間5g、取出し空間5cの壁面に残った付着物をより高い溶解度にて吸収することとなる。
【0059】
すなわち、先に流れる液塊の残留物の溶解濃度は、進むにつれて高くなっていくものの、次に流れてくる液塊の残留物溶解濃度は低く、残留物の溶解許容量が相対的に高い状態で流れてくるので、壁面の残留物を多く溶かしこむことができる。このように、先に流れる液塊より後から流れてくる液塊のほうが低い濃度で流れてきて、相対的に多くの残留物を溶解吸収することとなり、間欠的な液塊により残渣物をより効率的に洗浄できる。
【0060】
従って、ある分析作業が終了し、次のサンプルを燃焼させて分析する際に、残留物の影響を可能な限り低減することができ、信頼性の高い分析が行えることとなる。このような間欠的な液塊の流れをつくることにより、洗浄液を連続的に流す場合に比べて、少ない流量で洗浄効果を高めることができる。
【0061】
洗浄液が水であるとしても使用水量を減らすことができるのでランニングコストが高くなることを抑制できる。特に、洗浄液が単なる水ではなく、水より高価な特殊な液体である場合には、使用量を抑制でき、より一層ランニングコストを抑制できる効果がある。受容空間5gに対し、洗浄液注入空間5eと取出し空間5cとは、相互に並行する関係で形成されているため、お互いに異なる角度で穴あけするようなケースに比べて、加工が容易になり、安価な製造に寄与する。
【0062】
受容空間5gの底部には凹部5hが設けられているため、洗浄液はこの凹部5hに集中的に流れ込んで入口部5iを塞ぎ易くなり、取出し空間5c内の負圧により液塊を効率的に形成し、間欠的に送り出すことに寄与する。従って、洗浄液の使用量を減らすことができ洗浄液を除去する作業も短時間で行うことができる。
【0063】
また、凹部5aの内面は、半球状に形成されるとともに凸部2cと同様に微細なすりガラス状の粗面となっており、双方とも同じ面粗さで形成され、凸部2cの粗面と擦り合わさって気密状態を形成する。従って、燃焼管2などのシール構造を構成する各部品が熱膨張あるいは熱収縮により変形しても、気密状態は維持される。それにより、上述のとおり液塊を作り、間欠的に洗浄液を送り出すときに有利に働く。すなわち、仮に、シール構造が一部でも破れて燃焼管2などから異常な状態で燃焼ガスが流れてきたり、洗浄工程中に異常な状態で空気が流れてきたりすると、液塊の形成も異常となり間欠的な洗浄液の供給も実現できなくなり、洗浄が効率良く行われにくくなる。しかしながら、熱収縮、熱膨張による影響を受けにくい気密構造をとっているため、液塊の形成に悪影響が及ぶことを抑制できる。
【0064】
また、上記実施例は一つの例であり、本発明の趣旨を生かした状態で必要に応じて適宜変形、置換することは可能である。例えば、燃焼管2については縦型を横型に変えたり、ガラスやセラミック以外の耐熱素材に置き換えたり、種々の変形を加えたり置換したりすることは可能である。例えば、取出体5の側ではなく、燃焼管2の側に弾性体8を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 サンプル投入装置、 2 燃焼管、 2a 本体部、 2b 燃焼空間、 2c 凸部、 3 ガス取出し装置、 4 燃焼炉、 5 取出体、 5a 凹部、 5b ガイド部、 5c 取出し空間、 5d 取出し口、 5e 洗浄液注入空間、 5f 注入口、 5g 受容空間、 5h 凹部、 5i 入口部、 6 ベース体、 7 カバー体、 8 弾性体、 9 締結体、 21 取出手段、 22 搬送手段、 23 吸収手段
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