(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】分散機
(51)【国際特許分類】
B01F 27/80 20220101AFI20221028BHJP
B01F 27/94 20220101ALI20221028BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20221028BHJP
B01F 23/43 20220101ALI20221028BHJP
B01F 27/116 20220101ALI20221028BHJP
B01F 27/117 20220101ALI20221028BHJP
【FI】
B01F27/80
B01F27/94
B01F23/40
B01F23/43
B01F27/116
B01F27/117
(21)【出願番号】P 2018181871
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2017187728
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】井村 元洋
(72)【発明者】
【氏名】本田 耕士
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-531375(JP,A)
【文献】国際公開第2006/109741(WO,A1)
【文献】特開2016-117030(JP,A)
【文献】特開2014-055375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/40-47、27/00-96
B01J 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面の断面形状が円形となる筒状の側壁部分を有する撹拌容器と、
該撹拌容器の前記側壁部分
内に、該側壁部分の中心軸と同軸に設けられた、外周面の断面形状が円形となる柱状のロータと、
前記撹拌容器に接続された、第1の液体供給部と、第2の液体供給部とよりなり、
前記第1の液体供給部は、前記ロータよりも上方に形成された該撹拌容器内の空間内に連通するように接続され、
前記ロータの外周面は、前記撹拌容器の側壁部分の内周面に、所望の隙間を存して形成され、該ロータの外周面と前記側壁部分の内周面との間に、前記空間内に連通する第1の流路が形成され、
前記第2の液体供給部は、前記第1の流路に連通するように前記撹拌容器に接続され、
前記撹拌容器の底部に、前記第1の流路に連通した液体排出用の開口が形成され
、
前記撹拌容器の側壁部分の内周面は、下方に向かうに従って径が徐々に広くなる円錐台状に形成され、
前記ロータは、下方に向かうに従って径が徐々に広くなる円錐台状に形成されたことを特徴とする分散機。
【請求項2】
前記撹拌容器の側壁部分の
下端に、前記ロータの底面に所望の距離離間した、前記撹拌容器の底部を塞ぐ底板を設け、
該底板に、前記液体排出用の開口を形成したことを特徴とする請求項1に記載の分散機。
【請求項3】
前記撹拌容器の
底板の内底面は、凹状の逆円錐形状に形成され、
前記ロータの底面は、前記撹拌容器の底板の内底面に、所望の隙間を存するように逆円錐形状又は逆円錐台状に形成されることを特徴とする請求項
2に記載の分散機。
【請求項4】
前記撹拌容器の
底板の内底面は、平面状に形成され、
前記ロータの底面は、前記撹拌容器の底板の内底面に、所望の隙間を存するように平面状に形成されることを特徴とする請求項
2に記載の分散機。
【請求項5】
内周面の断面形状が円形となる筒状の側壁部分を有する撹拌容器と、
該撹拌容器の前記側壁部分内に、該側壁部分の中心軸と同軸に設けられた、外周面の断面形状が円形となる柱状のロータと、
前記撹拌容器に接続された、第1の液体供給部と、第2の液体供給部とよりなり、
前記第1の液体供給部は、前記ロータよりも上方に形成された該撹拌容器内の空間内に連通するように接続され、
前記ロータの外周面は、前記撹拌容器の側壁部分の内周面に、所望の隙間を存して形成され、該ロータの外周面と前記側壁部分の内周面との間に、前記空間内に連通する第1の流路が形成され、
前記第2の液体供給部は、前記第1の流路に連通するように前記撹拌容器に接続され、
前記撹拌容器の底部に、前記第1の流路に連通した液体排出用の開口が形成され、
前記撹拌容器の側壁部分の下端に、前記ロータの底面に所望の距離離間した、前記撹拌容器の底部を塞ぐ底板を設け、
該底板に、前記液体排出用の開口を形成し、
前記撹拌容器の底板の内底面は、平面状に形成され、
前記ロータの底面は、前記撹拌容器の底板の内底面に、所望の隙間を存するように平面状に形成されることを特徴とする分散機。
【請求項6】
内周面の断面形状が円形となる筒状の側壁部分を有する撹拌容器と、
該撹拌容器の前記側壁部分内に、該側壁部分の中心軸と同軸に設けられた、外周面の断面形状が円形となる柱状のロータと、
前記撹拌容器に接続された、第1の液体供給部と、第2の液体供給部とよりなり、
前記第1の液体供給部は、前記ロータよりも上方に形成された該撹拌容器内の空間内に連通するように接続され、
前記ロータの外周面は、前記撹拌容器の側壁部分の内周面に、所望の隙間を存して形成され、該ロータの外周面と前記側壁部分の内周面との間に、前記空間内に連通する第1の流路が形成され、
前記第2の液体供給部は、前記第1の流路に連通するように前記撹拌容器に接続され、
前記撹拌容器の底部に、前記第1の流路に連通した液体排出用の開口が形成され、
前記撹拌容器の側壁部分の下端に、所望の長さの筒状の液体排出部を設け、
該筒状の液体排出部の内径は、前記側壁部分の下端により形成される開口と同径、または、それより大きい内径に形成され、
前記液体排出部の所望の長さは、ロータの外周面と前記側壁部分の内周面との間の5倍以上であることを特徴とする分散機。
【請求項7】
前記第2の液体供給部は、複数設けられることを特徴とする請求項1
乃至6のいずれか1に記載の分散機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、晶析操作や乳化重合操作や化学反応操作などにおいて、複数の液体を速やかに分散、混合をおこなうための分散機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、例えば、流通型の晶析装置に用いられる従来の分散機を示し、aは、該分散機の撹拌容器、bは、該撹拌容器a内に垂設された、回転装置cに連結された回転シャフト、dは、該回転シャフトbの下端に固定された撹拌翼、eは、溶質を溶解した良溶媒などの第1の液体を前記撹拌容器a内に供給する第1の供給管、fは、貧溶媒などの第2の液体を前記撹拌容器a内に供給する第2の供給管、gは、前記撹拌容器a内の液体を容器a外に排出する排出管を示す。
【0003】
前記流通型の晶析装置に用いられる分散機においては、前記第1の供給管eから前記撹拌容器a内に連続的に溶質が溶解された良溶媒(第1の液体)を供給し、そして、前記撹拌翼dを回転させながら、前記第2の供給管fから貧溶媒(第2の液体)を供給して、前記良溶媒に貧溶媒を分散、混合させることにより、溶媒の溶解度を低下させて、溶質を結晶として晶析させて、該結晶を前記排出管gから排出していた。
【0004】
例えば、前記晶析装置に用いられる分散機としては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、析出した結晶は、均一な粒度を得るためにも、速やかに撹拌容器外に排出されることが好ましいが、前記従来の分散機では、前記撹拌容器a内に長時間留まる結晶も多く存在し、該長時間滞留した結晶粒子は、設計以上の大きさに成長してしまい、最終的に得られる結晶群の粒度分布はシャープにならない問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決することを目的とし、特に、複数の液体を速やかに分散、混合すると共に、分散、混合した液体を速やかに容器外に排出できる分散機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成すべく、本発明の分散機は、内周面の断面形状が円形となる筒状の側壁部分を有する撹拌容器と、該撹拌容器の前記側壁部分に、該側壁部分の中心軸と同軸に設けられた、外周面の断面形状が円形となる柱状のロータと、前記撹拌容器に接続された、第1の液体供給部と、第2の液体供給部とよりなり、前記第1の液体供給部は、前記ロータよりも上方に形成された該撹拌容器内の空間内に連通するように接続され、前記ロータの外周面は、前記撹拌容器の側壁部分の内周面に、所望の隙間を存して形成され、該ロータの外周面と前記側壁部分の内周面との間に、前記空間内に連通する第1の流路が形成され、前記第2の液体供給部は、前記第1の流路に連通するように前記撹拌容器に接続され、前記撹拌容器の底部に、前記第1の流路に連通した液体排出用の開口が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記撹拌容器の側壁部分の内周面は、円筒状に形成され、前記ロータは、円柱状に形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、前記撹拌容器の側壁部分の内周面は、円錐台形状に形成され、前記ロータは、円錐台状に形成されたことを特徴とする。
【0011】
また、前記撹拌容器の側壁部分の下端に、前記ロータの底面に所望の距離離間した、前記撹拌容器の底部を塞ぐ底板を設け、該底板に、前記液体排出用の開口を形成したことを特徴とする。
【0012】
また、前記撹拌容器の底板の内底面は、凹状の逆円錐形状に形成され、前記ロータの底面は、前記撹拌容器の底板の内底面に、所望の隙間を存するように逆円錐形状又は逆円錐台状に形成されることを特徴とする。
【0013】
また、前記撹拌容器の底板の内底面は、平面状に形成され、前記ロータの底面は、前記撹拌容器の底板の内底面に、所望の隙間を存するように平面状に形成されることを特徴とする。
【0014】
また、前記撹拌容器の側壁部分の下端に、所望の長さの筒状の液体排出部を設け、該筒状の液体排出部の内径は、前記側壁部分の下端により形成される開口と同径、または、それより大きい内径に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、前記第2の液体供給部は、複数設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、速やかに複数の液体を分散、混合することができる。また、分散、混合した液体を容器外に排出することができる。これにより、撹拌装置内の滞留時間の制御が可能となり、液体反応時間の制御や、晶析形成時間などの制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1の分散機の縦断側面図である。
【
図2】本発明の実施例2の分散機の縦断側面図である。
【
図3】本発明の分散機の液体の粒子の運動の軌跡をシミュレーションした説明図である。
【
図5】本発明の分散機の液体の垂直方向の速度をシミュレーションした説明図である。
【
図6】本発明の実施例3の分散機の縦断側面図である。
【
図7】本発明の分散機の液体の粒子の運動の軌跡をシミュレーションした説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0019】
【0020】
図1において、1は、例えば、結晶操作などに用いられる本発明の分散機、2は、該分散機1の撹拌容器(ステータ)を示し、該撹拌容器2は、例えば、縦型の、内周面の横断面が円形となる円筒状の側壁2cと、前記側壁2cの下端を塞ぐ底板2aと、前記側壁2cの上端を塞ぐ天井板2bとよりなる密閉した容器よりなり、該底板2aの内底面3は、例えば、凹状の逆円錐形状に形成されている。
【0021】
また、前記撹拌容器2の、後述するロータ6より下の部分の底部には、液体排出用の開口が形成され、例えば、前記撹拌容器2の底板2aの中心部に、液体排出用の開口2dが形成されている。
【0022】
なお、前記撹拌容器2の側壁2cは、後述するロータ6の外周面が配置される側壁部分において、内周面の横断面が円形となる円筒状であればよく、すなわち、該側壁部分は、該側壁部分の下端から上端までの内周面形状が、直線状に延びる中心軸に対して軸対称で、該中心軸に対して直交する断面(横断面)が、同一の径の円状になるように形成される。
【0023】
また、前記逆円錐形状の底板2aの内底面3は、前記中心軸に対して軸対称に形成されると共に、該内周面3の傾斜面は、直線状となるように形成される。
【0024】
また、前記底板2aは、前記ロータ6の底面から若干離間して、例えば、前記撹拌容器2の側壁部分の下端17に設けられる。
【0025】
4は、モータなどの回転装置(図示せず)により回転する、前記撹拌容器2の前記側壁部分の中心軸に垂設された回転シャフトを示し、該回転シャフト4の上端は、例えば、前記撹拌容器2の天井板2bに形成された貫通孔5を、液密にシールされて貫通して上方に延び、該撹拌容器2の上方に設けられた前記回転装置に連結されている。
【0026】
6は、前記回転シャフト4の下端に固定された、前記撹拌容器2の側壁2cの側壁部分内に配置されたロータを示し、該ロータ6は、前記撹拌容器2の中心軸方向に延びる、外径が同一径の円柱状に形成され、該ロータ6の回転軸が、前記回転シャフト4の回転軸(側壁部分の中心軸)と一致するように固定されている。
【0027】
また、前記円柱状のロータ6の外周面6aは、例えば、前記撹拌容器2の側壁部分の内周面7に平行に、所望のせん断場が生ずるよう所望の一定の隙間を存するように形成され、該ロータ6の外周面6aと前記撹拌容器2の内周面7との間に第1の流路8を形成すると共に、前記ロータ6の底面6bは、前記撹拌容器2の底板2aの内底面3に平行に、所望の一定の隙間を存するように逆円錐形状又は逆円錐台形状に形成され、該ロータ6の底面6bと前記撹拌容器2の底板2aの内底面3との間に第2の流路9が形成される。
【0028】
なお、前記第1の流路8の前記撹拌容器2と前記ロータ6との間の距離は、せん断場を形成するために、例えば、0.05mm~5mmなど狭く形成され、また、第2の流路9の前記撹拌容器2と前記ロータ6との距離は、前記第1の流路8からの液体を、前記開口2dを介して、後述する液体排出管10から排出できるように、前記第1の流路8の間隔に比べて大きく形成される。
【0029】
なお、前記第1の流路の隙間は、流量や滞留時間やせん断力などを総合的に考慮して設計されるものであり、前記範囲に限定されるものではない。
【0030】
10は、該撹拌容器2の底部2aの開口2dに連通して、前記底板2aに接続された液体排出管を示し、前記撹拌容器2内の第2の流路9からの液体が、前記開口2d及び該液体排出管10を介して、前記撹拌容器2外に排出されるように形成されている。
【0031】
11は、前記撹拌容器2外から容器2内に第1の液体を供給する第1の液体供給管などの液体供給部を示し、該液体供給管11は、前記ロータ6よりも上方に形成される前記撹拌容器2内の空間13内に連通するよう、前記撹拌容器2の側壁2c又は天井板2bに接続されている。
【0032】
12は、前記撹拌容器2外から容器2内に第2の液体を供給する第2の液体供給管などの液体供給部を示し、該第2の液体供給管12は、前記第1の流路8に連通するよう、前記撹拌容器2の側壁2cに接続されている。
【0033】
なお、前記第2液体供給管12は、前記撹拌容器2の側壁2cに、上下方向に、または周方向に複数設けてもよい。
【0034】
次に本第1実施例の分散機の作用と効果を説明する。
【0035】
本発明の第1実施例においては、前記第1の液体供給管11から、前記撹拌容器2内の空間13内に、例えば、溶質を溶解した良溶媒(第1の液体)を連続的に供給し、また、前記ロータ6を回転させながら、前記第2の液体供給管12から貧溶媒(第2の液体)を前記第1の流路8内に供給する。
【0036】
そして、前記第1の液体は、前記空間13に連通した前記第1の流路8に流れ、該第1の流路8内は、ステータとして機能する前記撹拌容器2の内周面7と前記ロータ6の外周面6aとの速度差により、強いせん断作用が働き、この強いせん断作用が働く第1の流路8内に、直接第2の液体を注入するために、前記第1の液体と前記第2の液体が速やかに分散、混合するようになる。
【0037】
そして、この貧溶媒の速やかな分散、混合により、溶解度が低下し、溶質が結晶として析出し、該結晶は、前記第1の流路8に連通した前記第2の流路9を介して、該第2の流路9に連通した前記液体排出管10から撹拌容器2外に排出され、均一な粒径の結晶を得ることができるようになる。
【0038】
本発明の第1実施例によれば、複数の液体を速やかに分散、混合し、液体排出管10から撹拌容器2外に排出するので、液体の撹拌装置2内での滞留時間を少なくすることができ、これにより、結晶形成時間の制御や、液体反応時間の制御などが容易になる。
【実施例2】
【0039】
【0040】
本発明の第2実施例においては、前記第1実施例の分散機1において、該分散機1の撹拌容器2の側壁2cの中間から下端までの下方側壁14を、内周面が円錐台状となる筒状に形成し、該下方側壁14の内周面7を、下方に向かうに従って、径が徐々に直線状に若干広くなるように形成すると共に、底板2aの内底面3aを水平の平面状に形成する。
【0041】
なお、前記下方側壁14は、少なくとも、前記ロータ6の外周面が配置される側壁部分において、内周面が円錐台状となる筒状であればよく、すなわち、該側壁部分は、該側壁部分の内周面形状が、直線状に延びる中心軸に対して軸対称で、該内周面の傾斜面は、直線状となるように形成される。
【0042】
なお、前記底板2aは、前記ロータ6の底面から若干離間して、例えば、前記撹拌容器2の側壁部分の下端17に設けられる。
【0043】
また、前記第1実施例の分散機1のロータ6の外周面6aを、例えば、前記撹拌容器2の側壁2cの下方側壁14の側壁部分の内周面7に平行に、所望のせん断場が生ずるよう所望の一定の隙間を存するように、下方に向かうに従って径が徐々に直線状に若干広くなる円錐台形状に形成し、該ロータ6の外周面6aと前記撹拌容器2の内周面7との間に第1の流路8を形成すると共に、前記ロータ6の底面6bは、前記撹拌容器2の底板2aの内底面3に平行に、所望の一定の隙間を存するように水平の平面状に形成し、該ロータ6の底面6bと前記撹拌容器2の底板2aの内底面3との間に第2の流路9が形成されるようにする。
【0044】
なお、前記第1の流路8の前記撹拌容器と前記ロータ6との間の距離は、せん断場を形成するために、例えば、0.05mm~5mmなど狭く形成され、また、第2の流路9の前記撹拌容器2と前記ロータ6との距離は、前記第1の流路からの液体を、前記開口2dを介して、前記排出管10から排出できるように、前記第1の流路8の間隔に比べて大きく形成される。
【0045】
また、前記撹拌容器2の下方側壁14の内周面の傾斜面の鉛直方向に対する傾斜角度(内周面の傾斜面と中心軸を通る縦断面とが交差する傾斜線と、鉛直方向とのなす角)は、前記ロータ6の回転周速度の差による僅かな圧力差により意図した方向への流動作用を生み出すため、0度よりも大きい僅かな角度であればよく、例えば、0.1度以上45度以内、より好ましくは、例えば、0.5度以上15度以内に設計されるが、滞留時間や流量や流速に応じて、上記範囲に関わらず、任意に設計される。
【0046】
また、前記第1の流路の隙間は、流量や滞留時間やせん断力などを総合的に考慮して設計されるものであり、前記範囲に限定されるものではない。
【0047】
なお、前記第2の実施例の分散機1において、説明を省略した部分は、前記第1実施例の分散機1と同じ構成である。
【0048】
次に本第2実施例の分散機の作用と効果を説明する。
【0049】
本発明の第2実施例の分散機においても、前記第1実施例の分散機と同様に、第1の液体供給管11から、例えば、溶質を溶解した良溶媒(第1の液体)を連続的に供給し、また、前記ロータ6を回転させながら、前記第2の液体供給管12から貧溶媒(第2の液体)を前記第1の流路8内に供給する。
【0050】
そして、前記第1の液体は、前記空間13に連通した前記第1の流路8に流れ、強いせん断作用が働く第1の流路8内で、前記第1の液体と前記第2の液体が速やかに分散、混合し、析出した結晶は、前記第1の流路8に連通した前記第2の流路9を介して、該第2の流路に連通した前記液体排出管10から撹拌容器2外に排出されるようになる。
【0051】
本発明の第2実施例においても、第1実施例と同様に、液体を速やかに分散、混合させ、液体排出管から排出するので、撹拌装置内の反応場の滞留時間を少なくすることができる。
【0052】
また、前記第1実施例の分散機において、液体を所望の時間、分散、混合した時の、第2の液体供給管12から供給された第2の液体の粒子の運動の軌跡をシミュレーションしたところ、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、軌跡15のように表された。
【0053】
これに対して、第1の流路を、下方に向かうに従って径が徐々に広くなる円錐台状とした前記第2実施例の分散機においては、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、軌跡16で表され、第1実施例に比べて、液体の垂直方向の移動量が大きく、これにより、第1の流路8で分散、混合した液体を、滞りなく、スムーズに第2の流路9を通じて、排出管10から排出できるようになる。
【0054】
なお、前記シミュレーションは、前記第2の液体供給管12を前記第1の流路8の上部に連通する側壁2cに設けた場合であるが、第1の流路8の下部に連通する側壁2cに第2の液体供給管12を接続した場合でも、前記と同様に、液体の垂直方向の移動量が大きく、第2の液体供給管12の接続位置に関わらず、第2実施例においては、液体の垂直移動量を大きくすることができる。
【0055】
また、前記第1実施例の分散機において、液体を分散、混合している時の、流路内の液体の垂直方向の速度をシミュレーションしたところ、
図5(a)に示すように、第2の流路9及び排出管10内において、戻り流が生じ、液体がスムーズに排出されない場合が確認されたが、第2の流路9を平面状に形成した第2の実施例の分散機においては、
図5(b)に示すように、第2の流路9及び排出管10において、第1実施例のような戻り流が抑制され、第1の流路から排出される液体が、スムーズに第2の流路9及び液体排出管10を流れるようになる。
【0056】
従って、第1実施例に比べて、第2実施例においては、戻り流を少なくすることができるので、分散、混合した液体を、速やかに、撹拌装置2外に排出することができ、これにより、更に、液体を速やかに分散、混合させ、液体排出管から容器2外に排出するので、撹拌容器2「内の反応部の滞留時間を少なくすることができ、これにより、結晶形成時間の制御や、液体反応時間の制御などが容易になる。
【実施例3】
【0057】
本発明の第3の実施例を
図6及び
図7によって説明する。
【0058】
本発明の第3実施例においては、前記第1実施例の分散機、又は、実施例2の分散機において、前記撹拌容器2の側壁部分の下端を、底板2aにより塞ぐことなく、
図6に示すように、前記側壁部分の下端17に、軸方向に所望の長さの筒状の液体排出部18を形成し、又は、接続する。
【0059】
なお、前記筒状の液体排出部18の所望の長さは、例えば、撹拌容器2とロータ6の隙間の5倍以上が好ましい。
【0060】
また、該筒状の液体排出部18の内径を、前記側壁部分の下端17により形成される開口と同径、又は、それより大きい内径に形成する。
【0061】
そして、前記筒状の液体排出部18の下流端に、例えば、該下流端と同内径の前記液体排出管10を接続する、或いは、前記下流端を底板で塞ぐと共に、該底板に開口を形成し、該開口に連通するよう、液体排出用の前記液体排出管10を接続するようにする。
【0062】
なお、前記撹拌容器2の側壁部分より下側の側壁を、前記液体排出部18の全部、又は一部としても良い。
【0063】
また、前記液体排出管10を、前記液体排出部18の全部、又は一部としても良い。
【0064】
なお、前記液体排出部18の内径は、下流側に向かうに従って、徐々に内径が大きくなるようにしてもよい。
【0065】
本発明の第3の実施例においては、分散場となる前記第1の流路8からの液体の排出が良くなり、撹拌装置内の反応場の滞留時間を少なくすることができる。
【0066】
なお、
図7(a)、(b)は、第1の実施例における分散機と、第3の実施例における分散機の第2の液体の粒子の運動の軌跡をシミュレーションした図を示し、第1の実施例の分散機に比べ、第3の実施例の分散機の方が、液体の排出がスムーズであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の分散機は、食品工業や化学工業等あらゆる分野において利用される。
【符号の説明】
【0068】
1 分散機
2 撹拌容器
2a 底板
2b 天井板
2c 側壁
2d 開口
3 内底面
4 回転シャフト
5 貫通孔
6 ロータ
6a 外周面
6b 底面
7 内周面
8 第1の流路
9 第2の流路
10 液体排出管
11 第1の液体供給管
12 第2の液体供給管
13 空間
14 下方側壁
15 軌跡
16 軌跡
17 下端
18 液体排出部