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特許7166121中性子検出ユニット、非破壊検査システム、中性子用コリメータ
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  • 特許-中性子検出ユニット、非破壊検査システム、中性子用コリメータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】中性子検出ユニット、非破壊検査システム、中性子用コリメータ
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/00 20060101AFI20221028BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20221028BHJP
   G01N 23/05 20060101ALI20221028BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20221028BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20221028BHJP
   G21K 1/02 20060101ALI20221028BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G01T3/00 Z
G01N23/04
G01N23/05
G01N23/18
G01T7/00 B
G21K1/02 G
G21K5/02 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018182815
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051947
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】永野 繁憲
(72)【発明者】
【氏名】大竹 淑恵
(72)【発明者】
【氏名】吉村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】須長 秀行
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-118778(JP,A)
【文献】特開2010-091387(JP,A)
【文献】特開2014-081209(JP,A)
【文献】米国特許第04864142(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0046274(US,A1)
【文献】国際公開第2017/043581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 3/00
G01N 23/04
G01N 23/05
G01N 23/18
G01T 7/00
G21K 1/00
G21K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子検出ユニットと、前記中性子検出ユニットを回動可能に支持する支持部とを備える非破壊検査システムであって、
前記中性子検出ユニットは、
同一方向に延びる複数の貫通路が形成され、当該貫通路を形成する壁材が高速中性子を透過し熱中性子を吸収する素材からなるコリメータと、
被検査物からの熱中性子を検出可能な中性子検出部と、を備え、
前記コリメータは、前記貫通路が前記中性子検出部の検出面と垂直をなすように当該検出面と当接して、又は当該検出面と前記貫通路の通路長さよりも短い間隔を有して配置されており、
前記コリメータは、前記中性子検出部に取り付けられており、
前記支持部は、前記コリメータと前記中性子検出部とを一体として前記高速中性子の照射方向と異なる方向に回動可能である非破壊検査システム
【請求項2】
前記壁材の素材は少なくともカドミウム又はボロンを含む請求項1に記載の非破壊検査システム
【請求項3】
前記中性子検出部は、前記検出面の縦横に複数の検出素子が並んでおり、
前記コリメータは、前記貫通路が前記検出面と対向する面において縦横に複数形成されている請求項1又は2に記載の非破壊検査システム
【請求項4】
前記コリメータの壁材は、前記貫通路が断面円形をなすよう形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の非破壊検査システム
【請求項5】
前記コリメータの壁材は、前記貫通路がハニカム構造をなすよう形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の非破壊検査システム
【請求項6】
前記コリメータの壁材は、前記貫通路の断面形状を前記中性子検出部の検出素子の検出面と同形とし、検出素子の配列に対応した配列となるよう形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の非破壊検査システム
【請求項7】
高速中性子を照射可能な中性子源をさらに備え、
前記中性子検出ユニットは、前記中性子源と前記被検査物との間に配置され、前記検出面を前記被検査物側に指向する請求項1から6のいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【請求項8】
前記支持部は、前記検出面の向きを変更可能に回動可能である請求項1から7のいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子を用いて被検査物の非破壊検査を行うための中性子検出ユニット、非破壊検査システム、中性子用コリメータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート等の被検査物に対して高い透過性を有する中性子等の放射線を用いることで、被検査物を破壊することなく内部構造を解析する事が可能な非破壊検査が行われている。
【0003】
非破壊検査において被検査物の欠陥部分(例えば、水、空隙等)の位置等の情報を正確に知るためには高い空間分解能が必要であり、高い空間分解能を実現するには検出器に入射する中性子の平行度を確保する必要がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、空間分解能を向上させるために中性子源(体積中性子源)と検出部(画像検出装置)との間にコリメータ(マルチピンホールコリメータ)を設けた構成が示されている。当該特許文献1のコリメータは、中性子源と被検査物(観測対象物)との間に配置されることで、被検査物に照射される中性子の方向を規制して平行度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-81209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、被検査物に照射される前の中性子を規制しており、被検査物に照射される中性子の平行度は確保されるが、被検査物を通過し検出器に入射する中性子の平行度は必ずしも確保されないという問題がある。
【0007】
特に高速中性子を被検査物に照射し、当該被検査物から出てくる熱中性子を検出する非破壊検査では、熱中性子は被検査物から散乱して出てくるため、被検査物に照射される高速中性子をコリメータにより規制しても熱中性子の平行度を得ることはできない。
【0008】
このように検出器に入射される中性子の平行度が得られなければ、検出器におけるS/N比(信号雑音比)及び空間分解能は低下し検査の精度を得られない。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、中性子を用いた非破壊検査において、中性子検出のS/N比及び空間分解能を向上させることができ、より高精度な検査を実現することができる中性子検出ユニット、非破壊検査システム、中性子用コリメータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明に係る中性子検出ユニットは、同一方向に延びる複数の貫通路が形成され、当該貫通路を形成する壁材が高速中性子を透過し熱中性子を吸収する素材からなるコリメータと、被検査物からの熱中性子を検出可能な中性子検出部と、を備え、前記コリメータは、前記貫通路が前記中性子検出部の検出面と垂直をなすように当該検出面と当接して、又は当該検出面と前記貫通路の通路長さよりも短い間隔を有して配置されている。
【0011】
上述の中性子検出ユニットにおいて、前記壁材の素材は少なくともカドミウム又はボロンを含んでもよい。
【0012】
また、上述の中性子検出ユニットにおいて、前記中性子検出部は、前記検出面の縦横に複数の検出素子が並んでおり、前記コリメータは、前記貫通路が前記検出面と対向する面において縦横に複数形成されていてもよい。
【0013】
また、上述の中性子検出ユニットにおいて、前記コリメータの壁材は、前記貫通路が断面円形をなすよう形成されていてもよい。
【0014】
又は、上述の中性子検出ユニットにおいて、前記コリメータの壁材は、前記貫通路がハニカム構造をなすよう形成されていてもよい。
【0015】
又は、上述の中性子検出ユニットにおいて、前記コリメータの壁材は、前記貫通路の断面形状を前記中性子検出部の検出素子の検出面と同形とし、検出素子の配列に対応した配列となるよう形成されていてもよい。
【0016】
上記した目的を達成するために、本発明に係る非破壊検査システムでは、上述の中性子検出ユニットと、高速中性子を照射可能な中性子源と、を備え、前記中性子検出ユニットは、前記中性子源と被検査物との間に配置され、前記検出面を被検査物側に指向する。
【0017】
上記非破壊検査システムは、さらに、前記検出面の向きを変更可能に前記中性子検出ユニットを支持する支持部を備えてもよい。
【0018】
上記した目的を達成するために、本発明に係る中性子用コリメータは、同一方向に延びる複数の貫通路が形成され、当該貫通路を形成する壁材が高速中性子を透過し熱中性子を吸収する素材からなる。
【発明の効果】
【0019】
上記手段を用いる本発明によれば、中性子を用いた非破壊検査において、中性子検出のS/N比及び空間分解能を向上させることができ、より高精度な検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る非破壊検査システムの概略構成図である。
図2】本実施形態に係る中性子検出ユニットの分解斜視図である。
図3】中性子検出ユニット部分の拡大図である。
図4】(a)図1の上面図、(b)図1の状態から中性子検出ユニットを回動させた状態の上面図である。
図5】中性子検出ユニットの(a)第1変形例、(b)第2変形例、(c)第3変形例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0022】
図1には本実施形態に係る非破壊検査システムの概略構成図、図2には中性子検出ユニットの分解斜視図、図3には中性子検出ユニット部分の拡大図がそれぞれ示されており、以下同図に基づき非破壊検査システムの構成について説明する。
【0023】
本実施形態の非破壊検査システム1は、小型加速器中性子源2と、中性子検出ユニット3と、中性子検出ユニット3を支持する支持部4とを有している。また、検査対象である被検査物Oは、小型加速器中性子源2に対して中性子検出ユニット3より奥側に位置している。本実施形態における被検査物Oはコンクリートブロックとする。
【0024】
小型加速器中性子源2は、中性子を発生させて照射する中性子源であり、電源部10、線形加速器11、ターゲットステーション12、照射部13とを有している。
【0025】
詳しくは、電源部10は、加速器に電力を供給する高圧電源である。電源部10の高圧電源は、少なくとも陽子を中性子発生に必要なエネルギーまで加速可能な発電性能を備え、電圧変動が少ないものが好ましい。
【0026】
線形加速器11は、イオン源11aを有し、当該イオン源11aから円筒状の加速器11bが延びて、ターゲットステーション12に接続されている。
【0027】
ターゲットステーション12は、遮蔽体により覆われており、内部には図示しない中性子発生用ターゲットが設けられている。遮蔽体は中性子やガンマ線を遮蔽する素材からなり、例えばホウ素入りポリエチレンや鉛等を用いて形成されている。ターゲットは陽子と衝突して中性子を生じるものであり、例えばベリリウム(Be)が挙げられる。
【0028】
照射部13は、例えばポリエチレン等の遮蔽材により形成され、ターゲットから発生した高速中性子Nfを被検査物Oに向けて照射する部分である。
【0029】
中性子検出ユニット3は、中性子検出部20とコリメータ30から構成されている。
【0030】
図2に示すように、中性子検出部20は、直方体の検出部本体21の一面に正方形の検出モジュール22の4つが配置され一つの検出器アレイ23として構成されている。
【0031】
検出モジュール22は、正方形をなす検出素子が検出面上の縦横に複数隙間なく配列されて形成されている。当該検出素子は、高速中性子に対する感度は有さず、熱中性子に対する感度を有している。検出部本体21内には、電源や、検出素子の露出時間や露出タイミングを制御する制御部、各検出素子の検出信号を受信して検出面内座標や中性子強度を算出する信号処理部が設けられている。つまり、中性子検出部20は、各検出素子が検出した熱中性子の情報から被検査物の内部構造を解析可能である。なお、本実施形態における中性子検出部20は4つの検出モジュール22から検出器アレイ23を構成しているが、中性子検出部を構成する検出モジュールの数はこれに限られず、例えば一つでもよい。
【0032】
コリメータ30は、筐体31内に同一方向に延びる複数の貫通路Pが形成されている。詳しくは、筐体31は立方体をなし、貫通路Pは壁材により断面が円形の管状をなしている。図2に示す本実施形態のコリメータ30は、貫通路Pの開口が並んでいる開口面において一列8個の貫通路Pが縦横に配列されている。そして、筐体31及び貫通路Pを形成する壁材は高速中性子線を透過し、熱中性子線を吸収する素材からなることで、貫通路Pを通過する熱中性子を制限する。具体的に当該壁材の素材としては、例えばカドミウム(Cd)又はホウ素(B)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)が挙げられる。
【0033】
また、貫通路Pは、少なくとも開口径rが通路長さLよりも短く、中性子検出部20の検出面への入射角(受容角)が略垂直とするためには、開口径rと通路長さとの比(r:L)が1:50程度が好ましい。
【0034】
そして、コリメータ30は、貫通路Pが中性子検出部20の検出面に対して略垂直をなすように当該検出面に当接して中性子検出部20に取り付けられている。なお、コリメータ30は、中性子検出部20と当接していることが望ましいが、近傍に位置してもよい。その場合、コリメータ30と中性子検出部20との間は遮蔽物質で遮蔽する必要がある。また、コリメータ30と中性子検出部20との間隔は、例えば中性子検出部20の検出面から貫通路Pの通路長さLよりも短い間隔を有して配置されていればよい。
【0035】
図1に戻り、中性子検出ユニット3は支持部4に支持されている。支持部4は、ターゲットステーション12から高速中性子線Nfの照射方向に延びており、その先端には水平方向に回動する回動部4aが設けられている。中性子検出ユニット3は当該回動部4aを介して支持部4上に設けられており、当該回動部4aが回動することで中性子検出部20の検出面の向きを変更可能である。
【0036】
ここで図3、4を参照すると、図3には中性子検出ユニット部分を示す拡大図、図4には(a)図1の上面図、(b)図1の状態から中性子検出ユニットを回動させた状態の上面図が示されており、以下これらの図に基づき、本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0037】
非破壊検査システム1は、例えば、線形加速器11で生成されたエネルギー7MeV程度の陽子をターゲットステーション12にあるベリリウムに衝突させて、最高エネルギー5MeV程度の高速中性子を生成し、照射部13を通じて高速中性子線Nfを出力する。
【0038】
図3に示すように、高速中性子線Nfは中性子検出ユニット3を透過し、被検査物Oに照射される。被検査物Oの内部を高速中性子線Nfが通ると、熱中性子線Nsが散乱する。特に被検査物O内の欠陥部Dが水等のコンクリートよりも軽元素が存在する場合は、高速中性子Nfが軽元素にエネルギーを奪われて被検査物Oの他の部分よりも相対的に多くの熱中性子が生じる。一方、欠陥部Dが空隙である場合は、その部分では熱中性子Nsは生じないため相対的に散乱しないため、被検査物Oの他の部分よりも相対的に熱中性子の量(強度)が少なくなる。
【0039】
コリメータ30は、被検査物Oから高速中性子Nfの照射方向と逆方向に散乱(いわゆる後方散乱)してきた熱中性子Nsを規制し、中性子検出部20の検出面に略垂直に指向する熱中性子線Nsのみを選択的に通過させる。例えば、図3において、コリメータ30内では、欠陥部Dから後方散乱した熱中性子のうち検出面に対して略垂直に入射する熱中性子Ns1のみが貫通路Pを通過する。一方、貫通路の通路軸に対して角度を持ってコリメータ30に入射する熱中性子Ns2、Ns3は壁材により吸収される。
【0040】
このように、被検査物Oと中性子検出部20との間にてコリメータ30があることで、被検査物Oから散乱して出てくる熱中性子Nsは規制され、検出面に対して略垂直に指向した熱中性子のみが入射する。つまり、熱中性子Nsの平行度が確保され、検出面に対して正対する位置の情報を正確に検出することができる。特に、本実施形態のコリメータ30は貫通路Pの開口部が並ぶ開口面と中性子検出部20の検出面とが当接して取り付けられていることで、コリメータ30を通過した熱中性子Nsはそのまま検出面に入射することなり、熱中性子Nsの平行度をより確実に確保することができる。
【0041】
これらのことから本実施形態における中性子検出ユニット3及び当該中性子検出ユニット3を用いた非破壊検査システム1によれば、中性子検出のS/N比及び空間分解能を向上させることができ、より高精度な検査を実現することができる。
【0042】
また、コリメータ30は、壁材の素材としてカドミウム又はボロンを用いることで、高速中性子Nfを透過して熱中性子Nsを吸収する構造を容易に形成することができる。
【0043】
また、中性子検出部20の検出素子は検出面の縦横に複数並び、コリメータ30も貫通路Pが縦横に複数形成されていることで、被検査物Oの内部情報を少なくとも2次元的に解析することができる。
【0044】
また、本実施形態のコリメータ30のように貫通路を断面円形とすることで、コリメータを容易に成形することができる。
【0045】
さらに、中性子検出ユニット3は支持部4の回動部4aにより支持されていることで、検出面の向きを水平方向に変更可能であり、被検査物Oの形状や検査箇所に応じた向きで検査を行うことができる。
【0046】
例えば図4(a)に示すように、高速中性子Nfの照射軸Aと直交する姿勢で被検査物Oが配置されている場合は、コリメータ30の貫通路Pの通路軸も照射軸Aと平行をなすように中性子検出ユニット3を位置決めすればよい。
【0047】
一方、図4(b)に示すように、被検査物Oが、高速中性子Nfの照射軸Aに対して斜めの姿勢で配置されている場合は、回動部4aにより中性子検出ユニット3を右方向(図4(b)で視て時計回り方向)に回動させて位置決めする。これにより、被検査物Oの表面とコリメータ30の先端開口面及び中性子検出部20の検出面とを一定の間隔で正対させることができる。従って、被検査物の形状や姿勢に応じて最適な向きに検出面を指向させることができ、被検査物の形状によらず、高精度な検査を行うことができる。
【0048】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0049】
また、上記実施形態では、被検査物Oをコンクリートブロックとして説明したが、被検査物はこれに限られるものではない。例えば、中性子源が移動可能であれば橋脚、橋又は道路の床板、トンネルの壁、建造物の柱や床等を被検査物とすることも可能である。また被検査物Oの形状も立方体に限られず、本発明は多様な形状の被検査物に適用可能である。
【0050】
また、上記実施形態の中性子検出ユニット3は回動部4aによりは水平方向に回動可能なだけであるが、中性子検出ユニットの検出面の向きの変更はこれに限られるものではない。例えば中性子検出ユニットを鉛直方向に回動可能な構成としたり、ロボットアームで支持することで6軸方向に検出面の向きを変更可能な構成としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態におけるコリメータ30の貫通路Pは断面円形で開口面にて縦横に複数並んで配列されているが、貫通路の寸法、断面形状、貫通路の個数や配列はこれに限られない。
【0052】
図5には、中性子検出ユニットの(a)第1変形例、(b)第2変形例、(c)第3変形例の分解斜視図が示されており、以下同図に基づき中性子検出ユニットの変形例について説明する。なお、中性子検出部については上記実施形態と同じであるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図5(a)に示す第1変形例の中性子検出ユニット3aは、コリメータ40の貫通路Paが上記実施形態の貫通路Pと同様に断面円形状であるが、径が大きい。また貫通路Paは検出モジュールに対応して4つのみ形成されている。貫通路の長さLを十分に確保できれば、このような構成としても熱中性子の平行度を向上させることができる。また、コリメータ40の構造がシンプルになるため加工コストを削減することができる。
【0054】
図5(b)に示す第2変形例の中性子検出ユニット3bは、コリメータ50の壁材により貫通路Pbが断面六角形状であり、各貫通路Pbが隙間なく配列されたいわゆるハニカム構造をなしている。これにより、中性子検出ユニット3bの強度を維持しつつ、開口面積を最大化することができる。
【0055】
図5(c)に示す第3変形例の中性子検出ユニット3cは、コリメータ60の壁材により貫通路Pcの断面形状が検出素子の検出面と同形の矩形状をなしている。また、コリメータ60の開口面における貫通路Pcの配列や壁材の厚み等も、検出器アレイ23の配列に沿うように形成されており、検出素子1つに対して貫通路Pcが1つ対応している。このような構成により、コリメータ60の壁材が検出素子の検出面を遮ることがないため、より高精度な検査を実現することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 非破壊検査システム
2 小型加速器中性子源
3 中性子検出ユニット
10 電源部
11 線形加速器
12 ターゲットステーション
13 照射部
20 中性子検出部
21 検出部本体
22 検出モジュール
23 検出器アレイ
30、40、50、60 コリメータ
O 被検査物
P 貫通路
図1
図2
図3
図4
図5