(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】抵抗加熱による液晶温度制御
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1343 20060101AFI20221028BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20221028BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20221028BHJP
G02F 1/1345 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G02F1/1343
G02F1/13 505
G02F1/133 520
G02F1/1345
(21)【出願番号】P 2018186300
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-09-29
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ヘギー
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-329999(JP,A)
【文献】特開2008-287090(JP,A)
【文献】特開平04-271323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0041020(US,A1)
【文献】特開2006-243063(JP,A)
【文献】特開昭62-071933(JP,A)
【文献】特開平05-127153(JP,A)
【文献】特開平11-271711(JP,A)
【文献】特開平07-036414(JP,A)
【文献】特開2016-142837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,1/137-1/141
G02F 1/133
G02F 1/1343-1/1345,1/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
第1の透明基板と、
前記第1の透明基板の表面上に配置された第1の透明電極と、
第2の基板と、
前記第1の透明電極と対向する前記第2の基板の表面上に配置された第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極との間に印加された電圧によって液晶材料の配向を制御するように、前記第1の電極と第2の電極との間に配置された液晶材料と、
前記第1及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介して電流を印加して、前記液晶材料を抵抗加熱する
とともに、前記第1及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介して電圧を印加して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧降下を制御するように構成された制御システムと、を備え、
前記電流がパルス電流であり、前記電流の電流パルスの持続時間が、前記少なくとも1つの電極、前記液晶材料、及び、前記第1の透明基板及び前記第2の基板の少なくとも一部の、熱時定数に基づいて選択される、デバイス。
【請求項2】
前記第2の基板及び前記第2の電極が、透明である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電極上に配置された第1及び第2の離間した電気接点をさらに備え、前記第1及び前記第2の電気接点が、前記少なくとも1つの電極よりも高い導電率を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の電極の一方または両方が、導電性酸化物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
ハイパースペクトル撮像システムであって、
第1の偏光子と、
第2の偏光子と、
前記第1の偏光子と前記第2の偏光子との間に配置された液晶可変遅延器であって、
第1の透明基板と、
前記第1の透明基板の表面上に配置された第1の透明電極と、
第2の透明基板と、
前記第1の透明電極と対向する前記第2の透明基板の表面上に配置された第2の透明電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された液晶材料であって、前記第1の電極及び前記第2の電極が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加された電圧によって前記液晶材料の配向を制御するように配設され、前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介して印加された電流が、前記液晶材料を抵抗加熱する
とともに、前記第1及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介して印加された電圧が、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧降下を制御する、液晶材料と、を備える、液晶可変遅延器と、
前記第2の偏光子からの光を受け取るように配設された画像センサと、を備え、
前記電流がパルス電流であり、前記電流の電流パルスの持続時間が、前記少なくとも1つの電極、前記液晶材料、及び、前記第1の透明基板及び前記第2の基板の少なくとも一部の、熱時定数に基づいて選択される、システム。
【請求項6】
前記第1の電極及び前記第2の電極に電気的に連結された制御システムをさらに備え、前記制御システムが、前記電圧を供給して、前記液晶材料の前記配向を制御するように、かつ前記少なくとも1つの電極を介して前記電流を供給して前記液晶材料を加熱するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
第1の透明電極と、第2の透明電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された液晶材料と、を備える、液晶セルの制御方法であって、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧を制御することによって前記液晶材料の配向を制御することと、
前記第1及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介して電流を制御することによって、前記液晶材料を抵抗加熱する
とともに、前記第1及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介して電圧を印加して、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電圧降下を制御することと、を含み、
前記少なくとも1つの電極を介して電流を制御することが、パルス電流を供給することを含み、
前記電流の電流パルスの持続時間が、前記少なくとも1つの電極、前記液晶材料、及び、前記第1の透明基板及び前記第2の基板の少なくとも一部の、熱時定数に基づいて選択される、方法。
【請求項8】
前記液晶材料の温度を検知することと、
前記検知された温度に応答して前記抵抗加熱を制御することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液晶材料は、いくらかの結晶性を有する液体である。これらの材料は、電界中の配向を変化させる。配向の変化は、液晶材料の光学特性を改変する。
【0002】
いくつかの実施形態は、光学デバイスに関する。光学デバイスは、第1の透明基板の表面上に配置された第1の透明電極を有する第1の透明基板と、第2の基板の表面上に配置され、第1の透明電極に対向する第2の電極とを有する第2の基板と、を含む。液晶材料は、第1及び第2の電極にわたって印加された電圧が、液晶材料の配向を制御するように、第1の電極と第2の電極との間に挟持されている。制御システムは、第1及び第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介して電流を印加して液晶材料を抵抗加熱する。いくつかの実装形態では、第2の基板及び第2の電極は透明であってもよい。
【0003】
いくつかの態様によれば、少なくとも1つの電極よりも高い導電率を有する1つ以上の電気接点が少なくとも1つの電極上に配置されてもよい。例えば、少なくとも1つの電極上に第1及び第2の離間した電気接点を配置することができ、少なくとも1つの電極は、第1及び第2の離間した電気接点を介して制御システムに電気的に接続される。第1及び第2の電気接点は、いくつかの実装形態によれば、パターン化された金属層、例えば導電性塗料を含むことができる。いくつかの実装形態によれば、第1及び第2の電極の一方または両方は、インジウムスズ酸化物のような導電性酸化物を含む。
【0004】
抵抗加熱に使用される電流は、パルス電流であってもよい。いくつかの態様によれば、電流パルスの持続時間は、液晶材料及び第1または第2の基板の熱時定数の関数である。電流パルスは、約10%未満、または約5%未満、または約1%未満のデューティサイクルを有することができる。いくつかの実施形態によれば、供給される熱エネルギー及びコントローラによって少なくとも1つの電極に供給される熱エネルギーは、LC材料の熱拡散率及び/または比熱のモデルが考慮される。
【0005】
いくつかの実装形態では、少なくとも1つの電極と、少なくとも1つの電極が周囲の構造から配置される基板とを熱的に分離することが有用であり得る。例えば、少なくとも1つの電極及びその関連基板を周囲構造から熱的に分離するために、1つ以上の熱絶縁スタンドオフを配設することができる。
【0006】
制御システムは、電極(複数可)を介する電流を制御することによって一方または両方の電極によって供給される熱を制御する。そのようないくつかの態様によれば、電極のうちの1つのみが通電されて、デバイスを抵抗加熱する。しかしながら、両方の電極を通電して抵抗加熱を行うことができる。いくつかの実装形態では、制御システムは、少なくとも1つの電極の第1及び第2の離間した場所に電気的に連結されたソースを備え得、ソースは少なくとも1つの電極を介して電流を供給し、電流は第1の場所から第2の場所に流れる。制御システムは、少なくとも1つの電極を介する電流を制御するように構成されたスイッチをさらに含むことができる。
【0007】
いくつかの態様によれば、制御システムは、液晶材料の配向を制御するために、第1及び第2の電極にわたって印加される電圧を制御するように構成することもできる。例えば、制御システムは、液晶材料の配向を制御するために第1の電極及び第2の電極にわたって印加される電圧を制御するように構成された液晶(LC)配向制御回路と、液晶材料を抵抗加熱する少なくとも1つの電極を介する電流を制御する加熱制御回路とを含むことができる。
【0008】
いくつかの実装形態では、制御システムは、第1の電極及び第2の電極にわたって印加される電圧を時間多重化して、液晶の配向、及び少なくとも1つに印加される電気信号を制御して、電極を抵抗加熱するように構成されてもよい。時間多重化は、第1の時間ウィンドウ中にLC材料の配向を制御する電圧を印加し、異なる第2の時間ウィンドウ中に少なくとも1つの電極を抵抗加熱する電流を供給することによって達成することができる。
【0009】
いくつかの構成では、制御システムは、第1の電極に電気的に接続され、第1の電極の第1及び第2の離間した場所を介して第1の電流を印加して第1の電極を抵抗加熱するように構成された第1の電流ソースを含む。制御システムはまた、第1の電流ソースとは独立した第2の電流ソースを含み、第2の電流ソースは、第2の電極に接続され、第2の電流を第2の電極の第1及び第2の離間した場所を介して印加して、第2の電極を抵抗加熱するように構成される。第1の電極の第1の離間した場所と第2の離間した場所との間の抵抗は、第2の電極の第1の離間した場所と第2の離間した場所との間の抵抗と実質的に同じであっても異なってもよい。いくつかの態様によれば、第1及び第2の電流は、異なる時間に印加することができる。いくつかの態様によれば、第1及び第2の電流を実質的に同時に印加することができる。第1の電流と第2の電流は同じ値を有することができ、または第1の電流と第2の電流は異なる値を有することができる。制御システムは、制御システムのヒータ制御回路によって制御されるスイッチを含むことができる。スイッチは、第1及び第2の電流がそれぞれ第1及び第2の電極を介して流れることを可能にするまたは防止することができる。
【0010】
いくつかの態様によれば、制御システムは、液晶材料の温度を示す検知されたパラメータに応答して温度信号を生成するように構成された温度センサをさらに含む。制御システムは、温度信号に応答して少なくとも1つの電極を介して電流を制御する回路を含む。例えば、電極材料は、温度に伴って電極材料の抵抗が変化するような抵抗の温度係数を有することができる。このシナリオでは、検知されたパラメータは、少なくとも1つの電極の抵抗とすることができ、センサは、電流が少なくとも1つの電極の第1及び第2の離間した場所を介して供給され、電圧が一対の電圧プローブを用いて少なくとも1つの電極の2つの離間した場所にわたって測定される4点抵抗測定を含む。
【0011】
いくつかの実装形態によれば、上述の光学デバイスは、LC可変遅延器として構成することができる。LC可変遅延器は、電極間に挟持されたLC材料を用いて電極にわたって電圧を印加することによって機能する。電極にわたる電圧が変化すると、LC材料の配向が改変される。LC材料配向の改変は、複屈折LC材料の遅軸を変化させ、したがって入力光ビームの2つの独立した偏光の相対的な遅延を変化させる。
【0012】
いくつかの実装形態によれば、上述の光学デバイスを使用して、LC同調可能フィルタを作製することができる。例えば、上述のような1つまたは複数のLCデバイスが、LC材料の電極にわたって印加される電圧を調整することによって選択された波長を透過する調整可能な複屈折素子として使用されるLC同調可能フィルタを形成することができる。例えば、LC同調可能フィルタは、Lyotフィルタの原理に基づくことができる。
【0013】
いくつかの実施形態は、ハイパースペクトル撮像システムに関する。ハイパースペクトル撮像システムは、第1の偏光子と第2の偏光子との間に配置された液晶(LC)可変遅延器を有する第1及び第2の交差または平行偏光子を含み、遅軸は偏光子軸の1つに対して45度に配向される。LC可変遅延器は、第1の透明基板の表面上に配置された第1の透明電極を有する第1の透明基板を含む。LC可変遅延器は、第1の透明電極と対向する第2の透明基板の表面上に配置されている第2の透明電極を有する第2の透明基板を含む。第1の電極と第2の電極との間に、LC材料が配置される。第1及び第2の電極は、第1及び第2の電極にわたって印加される電圧が液晶材料の配向を制御し、第1及び第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介する電流が液晶材料を抵抗加熱するように配設される。ハイパースペクトル撮像システムはまた、第1の電極及び第2の電極に電気的に連結された制御システムを含むことができ、制御システムは、LC材料の配向を制御するために電圧を供給し、LC材料を加熱するために少なくとも1つの電極を介して電流を供給するように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置されたLC材料と、を含む液晶デバイスを制御する方法に関する。この方法によれば、LC材料の配向は、第1の電極及び第2の電極にわたって印加される電圧によって制御される。LC材料の温度は、第1及び第2の電極のうちの少なくとも1つの電極を介して電流を供給することによって制御される。電流は、パルス電流であってもよく、例えば、ハイパースペクトル画像取得前及び/またはハイパースペクトル画像取得中にのみパルス化されてもよい。電流を供給することは、少なくとも1つの電極の離間した場所を介して電流を供給することを伴う。電流は、少なくとも1つの電極の第1及び第2の離間した場所にわたって電圧を印加することによって供給及び/または制御することができる。
【0015】
いくつかの態様によれば、電流を供給することは、第1及び第2の電極の一方のみを介して電流を供給することを含むことができる。代替的に、電流を供給することは、第1の電極を介して第1の電流を制御すること、及び/または第2の電極を介して第2の電流を制御することを含むことができる。第1及び/または第2の電流を制御することは、第1及び/または第2の電極を介して電流を流すかまたは遮断することが可能な1つ以上のスイッチを操作することを含むことができる。
【0016】
いくつかの実装形態によれば、第1の電流及び第2の電流を制御することは、第1の電流及び第2の電流を実質的に同時に第1及び第2の電極を介して供給することを含む。
【0017】
いくつかの実装形態によれば、LC材料の配向を制御し、LC材料を抵抗加熱することは、LC材料の配向を制御する電圧を、LC材料を抵抗加熱する電流で時間多重化することを含む。
【0018】
この方法は、LC材料の温度または少なくとも1つの電極の温度を検知し、検知された温度に応答して抵抗加熱を制御することをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】いくつかの実施形態による,液晶デバイスの概略図である。
【
図2】第1の電極を介してヒータ電流I
hを供給するように構成された電圧ソースを含む制御システムを備えた液晶デバイスの図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、電極の1つに配置された電気接点を含む液晶デバイスを示す図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、ジュール加熱を提供する1つの接地電極及び1つの電極を有するデバイスを示す概略図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、ヒータ電極に関連付けられる基板の熱的分離を提供する液晶デバイスの実施形態を示す図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、各々の電極の一方の端部に印加された電流ソースと、各々の電極の反対側の端部に接続された電圧ソースとを含む液晶デバイスを示す図である。
【
図7】液晶デバイスの構成要素の温度を測定するように構成されたセンサを含むフィードバック制御システムを含む液晶デバイスを示す図である。
【
図8A】いくつかの実施形態によるハイパースペクトル撮像システムを示すブロック図である。
【
図8B】
図8Aのハイパースペクトル撮像システムの液晶可変遅延器をより詳細に示す。
【0020】
温度は、液晶(LC)デバイスの性能に強く影響するパラメータである。LC材料がネマチック状態にある温度の範囲が存在する。多くのLC装置は、LC装置がネマチック温度範囲内で動作することを必要とする。一部のLCデバイスでは、LCデバイスがネマチック温度範囲内で保存されている必要がある。さらに、一定の光経路遅延を最短時間(依存パラメータとしてのセル厚さ)で切り替えることができる、液晶の性能指数(FoM)によって捕捉された最適温度が存在する。したがって、多くのLCデバイスは、適正または最適な動作のために温度制御を必要とする。
【0021】
本明細書で説明する実施形態は、抵抗加熱を介するLCデバイスの温度制御に関する。液晶デバイスは、一般に、ある種の透明電極、例えば透明導電性酸化物または薄い金属層を含む。標準的な逆平行ネマチックLCセルは、電極間にLC材料を配置した平行平板コンデンサに似せることができる。電極は、異なる電圧に駆動されて、LC材料の配向を制御し、所与の電極の全ての領域は、他の点では同じ電位にあると仮定される。本明細書で論じられるアプローチは、様々な駆動構成及び時間シーケンスを考慮して、電極を介して電流を流すことによって、LC材料用のジュールヒータとして1つ以上の電極を使用することを含む。これらの構成では、同じ電極の異なる点の電位が異なることがある。
【0022】
LCヒータ及び/またはLC温度センサとしてLCセル電極を使用することにより、LCヒータ及び/またはLC温度センサがLCセルの外部に位置する場合よりも、より低い電力消費及び/またはより高速でより正確な温度制御を達成することができる。さらに、LCセルを駆動することに加えて、加熱及び温度検出にLCセル電極を利用することは、液晶デバイスを形成するために必要な製造プロセスを単純化するのに役立つ。以下に説明される実施形態は、液晶材料の温度を制御し、及び/または配向スイッチング時間を低減させるために、液晶材料のための温度センサ及び抵抗ヒータのような多目的のためにLCセル配向制御電極を使用することを含む。
【0023】
図1は、いくつかの実施形態による液晶装置100の概略図である。装置100は、第1の基板110の表面110a上に配置された第1の電極115と、第1の電極115に対抗する第2の基板120の表面120a上に配置された第2の電極125を有する第2の基板120とを含む。基板110、120の一方または両方は、ガラスのような透明な材料で作ることができる。電極115、125の一方または両方は、インジウムスズ酸化物(ITO)または薄い金属層などの導電性酸化物のような透明導電体でできていてもよい。
【0024】
液晶材料130は、第1の電極115と第2の電極125との間に配置される。第1及び第2の電極115、125は、第1及び第2の電極115、125にわたって印加される電圧が液晶材料130の配向を制御するように配設される。第1及び第2の電極115、125にわたる電圧を変化させることにより、基板110、120の一方に通常入射する光ビームの2つの直交偏光の間の光学遅延のようなLC材料の光学特性が変化する。
【0025】
電極の抵抗は、電流が電極を介して通過するときに熱の形で電力を消散させる。電極を介する電流によって生成される抵抗熱は、液晶材料を加熱する。本明細書で開示される実施形態では、液晶材料130の配向を制御するために使用される電極115、125の少なくとも1つは、液晶材料130を抵抗加熱するためにも使用される。少なくとも1つの電極は、LC材料に隣接するセルの内部に配置される。
【0026】
図1に示すように、デバイス100は、電極115を介してヒータ電流I
hを供給するように構成された制御システム140を含む。制御システム140はまた、第1の電極115及び第2の電極125にわたって配向制御電圧V
LCを供給するように構成されてもよい。いくつかの実施形態によれば、制御回路140は、ヒータ電流の自動開ループ制御及び/または閉ループフィードバック制御を実装するように構成されたスイッチ、センサ、及び/または制御回路及び/またはプロセッサなどの電子回路を含む。
【0027】
図2のブロック図に示すLCデバイス200において、制御システム240は、この実施形態では、ヒータ電極として機能する第1の電極115を介してヒータ電流I
hを供給する電圧ソース241を備える。配向制御電圧V
LCを第1及び第2の電極115、125にわたって印加して、LC材料130の配向を制御することができる。
【0028】
図2のLCデバイス200は、制御されたバイアスが電極115に印加されることができる電極115を含み、電流が抵抗Rを有する電極115を介して流れる。例えば、LCデバイス200が1cm
2の面積及び1mm
2/sの熱拡散率Dを有し、電圧ソース241が電圧Vを電極115にわたって印加してジュール加熱V
2/Rを生成する場合、1秒の時間期間の間で、(1s)V
2/Rジュールは、約0.5gの量のガラス及び付随する量のLC材料130中に堆積され、ジュール(J)当たり約2.5℃のLC材料130の温度を上昇させる。したがって、10℃の温度上昇を達成するためには、4Jが必要であろう。第1の電極115が25オーム/平方の典型的なシート抵抗を有するインジウムスズ酸化物(ITO)である場合、10Vの電圧(及び400mAの電流)を1秒の時間期間印加することによって4Jを提供することが可能である。このシナリオは、液晶セルヒータ回路にとって妥当な範囲内である。
【0029】
電極を介する電流の分布が部分的に電極のいずれかの側への電気接続の場所によって制御することができる。電極を介して流れる実質的に均一な電流シートを得るために、高導電性材料、例えば蒸発によって堆積された薄い金属もしくは金の層、または金属ペイントもしくはインクを、ソースとの電気的接続が行われる電極の両側及び/または縁部にわたって別々に堆積させることができる。
図3に示すように、いくつかの構成では、LCデバイス300は、第1の電極115及び第2の電極125の一方または両方に配置された電気接点311、312を備えることができる。電気接点311、312は、電極115、125の一方または両方の均一なシートヒータ電流密度を容易にするために、電極115、125の材料よりも高い導電率を有する材料で形成される。接点311、312は、電極115、125の一方または両方の2つ以上の離間した場所に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、接点311、312は、液晶材料130を加熱するために使用される電流を通す電極115上にのみ配置されてもよい。接点311、312は、例えば、電極115、125上に塗装または印刷された導電性の塗料もしくはインク、またはパターン化された蒸着金属膜であってもよく、またはそれらを含んでいてもよい。
【0030】
図4は、いくつかの実施形態によるジュール加熱を提供する1つの接地電極125及び1つの電極115を有するデバイス400を示す概略図である。電圧ソース241を使用して、電極115を介して電流を供給し、及び/またはLC材料の配向を制御することができる。
【0031】
図4の概略図に描写されるように、いくつかの実施形態によれば、LCデバイス400の制御システム440は、ヒータ電流を制御するように構成された少なくとも1つのスイッチ445を含む。制御システム440の回路は、ヒータ電極115からヒータ電流I
hを印加または除去するために、スイッチ445を閉鎖または開放構成に動作させるように構成することができる。制御システム440は、電極115を介するヒータ電流を生成する電圧とLC材料の配向を制御する電圧との間の時間多重化のためにスイッチ445を動作させることができる。制御システム400は、スイッチ445が解放しているときに配向制御電圧を印加する。この構成では、第1の電極115にわたって実質的に均一な電位が存在する。スイッチ445が閉鎖されると、電圧ソース241による電圧の印加は、電極115を介して電極115にわたる電位勾配を生成する電流を生成する。
【0032】
いくつかの実装形態では、制御システム440は、スイッチ445を操作して、パルス状のヒータ電流を提供する。ヒータ電流の印加と配向制御電圧との間の潜在的な干渉を低減するために、ヒータ電流パルスの持続時間を制限することは有用であり得る。干渉の可能性が低減された最適な加熱を提供するために、電流パルスの持続時間は、電極、液晶材料の熱時定数、及び隣接する基板またはヒータ電極に近接した隣接する基板の熱時定数に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、パルスのデューティサイクルは、約10%未満、または約5%未満、または約1%未満でさえある。LCデバイスを使用するデューティサイクルまたはサイクリング時間が比較的低い場合(例えば1分毎に1秒間の熱)、LCデバイスは、用途間で冷却することができる。
【0033】
代替的に、デューティサイクルが高い場合、LCデバイスを機械的に大型システムに統合する断熱スタンドオフに取り付けることによって、LCデバイスを熱的に絶縁することは意味がある。LCデバイスを熱的に絶縁することで、周囲の構造に対する熱損失を少なくすることができる。例えば、周囲の構造は、LCデバイスのハウジング、フレーム、及び/または他の支持部材を含むことができる。
【0034】
図5は、ヒータ電極に関連付けられる基板の熱的分離を提供するLCデバイス500の実施形態を示す。 液晶デバイス500は、断熱材料からなるスタンドオフ551、552を含む。スタンドオフ551、552は、ヒータ電流I
hを運ぶ電極115に関連付けられる基板110とLCデバイス500の周囲の構造550との間に配置される。スタンドオフ551、552は、LCデバイスのクリアアパーチャを不明瞭にしないように配設することができることに留意されたい。
【0035】
次に
図4を参照すると、LCデバイス400は、ヒータ電極115を介して電圧ソース241に電気的に連結されたスイッチ445を介してヒータ電流を制御するように構成された制御システム440を含む。制御システム400は、時間多重化プロトコルを適用して、第1及び第2の電極115、125にわたる配向制御電圧を印加することと、電極115を介して電流を生成する電圧を印加することとの間の矛盾を仲介することができる。制御システム400は、スイッチ445が開放しているときに電圧ソース241に配向制御電圧を印加する。スイッチ445が閉鎖されると、電圧ソース241によって印加される電圧は、電極115を介して通過する電流を生成する。しかしながら、このシナリオでは、ヒータ電極115にわたる望ましくない電圧降下が存在し、問題となる可能性がある。
【0036】
望ましくない電圧降下を改善する方法は、
図6に概略的に示されるLCデバイス600の制御システム640によって提供される。
図6のデバイスは、各々の電極の一端部に印加される電流ソースと、各々の電極の反対側の端部に印加される電圧ソースとを含む。制御システム640は、2つの電流ソース642、643を制御する。各々の電流ソース642、643は、電流Iを供給する。電流ソース642は、第1の電極115の第1の場所、例えば第1の縁部に電気的に接続され、電流ソース643は、第2の電極125の第1の場所、例えば第1の縁部に電気的に接続される。第1及び第2の電極115、125の各々は、実質的に同じ縁部間抵抗Rを有することができる。したがって、各々の電極115、125の端部から端部までの電圧降下は、I*Rである。第1の電極115から第2の電極125までの電圧降下は、電圧Vを供給する電圧ソース641によって制御される。第1の電極115から第2の電極125へのこの電圧降下は、第1の電極115から第2の電極125までの任意の垂直線にわたって同じになる。したがって、電界は、液晶材料130内で実質的に均一であり、その配向を加熱とは独立して制御することができる。電流が電極115、125を介して流れるかどうかを制御するために、スイッチ645を使用することができる。なお、
図6に示す構成は、各々の電極にわたる望ましくない電圧降下を最小にして、加熱及び配向制御の両方を提供することができる多くの回路構成のうちの1つであることに留意されたい。これらの回路構成は、本明細書に記載されたアプローチ内に包含されると考えられる。
【0037】
図7の概略図に示されるように、いくつかの実施形態では、LCデバイス700は、加熱電極、液晶材料、または他のLCデバイス構成要素の温度を測定するように構成されたセンサ760を含むフィードバック制御システム740を備える。温度測定は、LC材料を加熱するために印加される電流を制御するためのフィードバック信号を提供するために、制御システム740によって使用され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、温度センサは、電極、LC材料、及び/またはLCデバイスの他の構成要素の抵抗を測定する4点プローブを含むことができる。測定された材料の抵抗の既知の温度係数のために、抵抗測定は、温度の代理測定を提供し、ヒータ電流を制御するために使用することができる。
図7は、電流が電流ソース642によって電極115を介して供給され、センサ760によって電圧が測定される、第1の電極115の抵抗Rの4点抵抗測定構成を示す。4点抵抗測定は、抵抗Rの正確な読み出しを提供し、したがって、所望の温度を達成するために制御システム740によってヒータ電流Iを制御するために使用され得る温度測定の代用品である。このアプローチは、少なくとも検知素子がLC材料に近いため、他の方法に比べて増強された測定精度を提供する。
【0039】
本明細書で論じられるLCデバイスは、
図8Aのブロック図に示されるようなハイパースペクトル撮像システム800用のスペクトルエンコーダにおける可変光学遅延器として特に有用である。
図8Aのハイパースペクトル撮像機800は、画像センサ830と組み合わせて、本明細書に記載の抵抗加熱を使用して温度制御される液晶(LC)スペクトルエンコーダ810に基づく。
図8Aに示され、
図8Bにさらに詳細に示されているLCスペクトルエンコーダ810は、共通経路上であるが2つの直交する偏光で進む光を干渉させることによって、スペクトル情報を画像の各々の点で干渉図にエンコードする。第1の偏光子811は、入射光をLCセル810aのラビング(配列)方向に対して名目上45度の入射偏光方向に偏光させる。
図8A及び
図8Bに示すLCセル810aは、第1の電極812と第2の電極814との間に配置された第1のLC材料813と、第2の電極814と第3の電極816との間に配置された第2のLC材料815とを含むダブルネマチック構造である。ダブルネマチック構造では、LCセル810aの第1の半分は、LCセル810aの第2の半分に対してミラーリングされ、第1の半分は、第1のLC材料813を含み、第2の半分は、第2のLC材料815を含む。いくつかの実施形態では、第1のLC材料813及び第2のLC材料815の厚さは、ほぼ等しくてもよい。ダブルネマチック配設は、異常光線と通常光線の相対的な経路遅延がLCセル810aの両半分を介して通過するにつれて増加するが、LCセル810aの第1の半分の一次角度依存性は、LCセル810aの第2の半分の1次の角度依存性により打ち消される。
【0040】
LCセルのラビング方向は、
図8Bの各々の電極812、814、816上に矢印で示され、LC材料の分子がそれに沿って配向する好ましい方向である。したがって、電極812、814、816(異常光線またはe-光線)上の方向または矢印で偏光された光は、直交偏光(通常光線またはo-光線)に対して遅延される。LCセル810aは、電気的に同調可能な複屈折素子として機能する。LCセル810aにわたる電圧を変更することによって、LC分子は、それらの配向を変化させ、e-光線とo-光線との間の可変光経路遅延を作り出すことが可能である。この経路遅延は、2つの光線間の波長依存性の位相シフトを引き起こし、それによって偏光状態の波長依存性の変化をもたらす。
【0041】
第1の偏光子に対して平行または垂直に配向された第2の偏光子817またはアナライザは、この2つの光線を干渉させることによってこの波長依存性偏光状態を波長依存性の強度パターンに変化させる。(経路遅延の関数としての)強度パターンは、マイケルソン干渉計によって生成された干渉図と同等である。したがって、強度パターンは、入射光のスペクトルの余弦変換に対応する。LCセル810a上の電圧がコントローラ819によって変化される際に一連の画像を記録することにより、画像内の全ての点における干渉図を同時にサンプリングすることができ、ハイパースペクトルデータキューブは、光経路遅延軸に沿う逆余弦変換によって回復され得る。
【0042】
コントローラ819は、電極812及び814に印加される電圧を変更することによって第1のLC材料813の配向を変更することができ、電極814及び816に印加される電圧を変更することによって第2のLC材料816の配向を変更することができる。コントローラ819は、前述したように、電極812、814、816の1つ以上を介して電流を流すことによって、抵抗加熱によってLC材料815の温度を制御することができる。