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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】冷却器、そのベース板および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20221028BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20221028BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20221028BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/12 J
H01L25/04 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018215681
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020088010
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-270742(JP,A)
【文献】特開2005-302882(JP,A)
【文献】特開2005-302886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0280162(US,A1)
【文献】国際公開第2014/148026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12、23/36
H01L 25/07、25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口を有する箱形の容器本体と、内周部の上面側に冷却対象部材が配置可能なベース板とを備え、前記ベース板の外周部の下面側が前記容器本体の上面開口周縁部に固定されることによって、前記ベース板が前記容器本体にその上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器であって、
前記ベース板における前記内周部の外側に、前記外周部が隙間を介して別体に形成されるとともに、前記内周部および前記外周部が、前記隙間に配置され、かつ前記内周部および前記外周部よりも強度が低い緩衝部を介して連結されていることを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記緩衝部に、断面V字状の折曲部が形成されている請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記ベース板における前記外周部が、前記内周部に対し強度が高い材質によって形成されている請求項1または2に記載の冷却器。
【請求項4】
前記ベース板における前記内周部が、前記外周部に対し熱伝導率が高い材質によって形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却器。
【請求項5】
前記ベース板における前記外周部および前記内周部がアルミニウムよって構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却器。
【請求項6】
上面に開口を有する箱形の容器本体に、その上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器のベース板であって、
上面側に冷却対象部材が配置可能な内周部と、
前記内周部の外側に設けられ、かつ下面側が容器本体の上面開口縁部に固定可能な外周部とを備え、
前記内周部の外側に、前記外周部が隙間を介して別体に形成されるとともに、前記内周部および前記外周部が、前記隙間に配置され、かつ前記内周部および前記外周部よりも強度が低い緩衝部を介して連結されていることを特徴とする冷却器のベース板。
【請求項7】
上面に開口を有する箱形の容器本体と、外周部の下面側が前記容器本体の上面開口部周縁部に固定されて前記容器本体の上面開口部を閉塞するベース板と、前記ベース板の内周部上面側に配置され、かつ半導体素子を含む実装基板とを備えた半導体装置であって、
前記ベース板における前記内周部の外側に、前記外周部が隙間を介して別体に形成されるとともに、前記内周部および前記外周部が、前記隙間に配置され、かつ前記内周部および前記外周部よりも強度が低い緩衝部を介して連結されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記実装基板は、絶縁板を含み、その絶縁板の上側に前記半導体素子が配置されている請求項7に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力用半導体素子等の冷却用に用いられる冷却器およびそのベース板に関し、さらに当該冷却器を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の電動機、産業機械、家電、情報端末等の電力駆動機器の主電力を制御するのに用いられる電力用半導体素子は、大電力を取り扱うために大きな発熱を伴う。このため高熱による悪影響を回避して高性能を維持するために、電力用半導体素子が実装された実装基板には、冷却器を接合または接着して、その冷却器によって発生した熱を放出するようにしている。
【0003】
定置設備等のように、実装基板の周辺に放熱用に大きなスペースを確保できるような場合には、空冷式冷却器を採用することが可能であるが、自動車等の限られたスペース内に多数の機器が密集して配置されるような場合には、液冷式(水冷式)の冷却器を採用するのが通例である。
【0004】
下記特許文献1,2には、実装基板を冷却するための液冷式冷却器が開示されている。この冷却器は、上面に開口を有する水冷ジャケット等の箱形の容器本体と、その容器本体の上面開口を閉塞するように取り付けられるベース板とを備えている。ベース板は、その内周部の下面側に多数の放熱フィンが一体に形成されるとともに、上面側に実装基板が搭載されている。このベース板の多数の放熱フィンを容器本体内に上面開口を介して収容した状態で、ベース板の外周部が容器本体の上面開口周縁部に固定される。これにより容器本体およびベース板によって冷却水等の冷媒が流通する冷媒流路が形成され、冷却器の外部から冷媒流路の一端に供給される冷媒が、冷媒流路を通って他端から外部に流出されるように構成されている。こうして冷却器の冷媒流路内に循環される冷媒と、半導体素子とがベース板および放熱フィン等を介して熱交換して、半導体素子から発生する熱が冷媒を介して外部に放出され、それによって半導体素子が冷却されるようになっている。
【0005】
このような半導体装置に採用される実装基板は、セラミック板等の絶縁板と、その絶縁板の上下両面に積層されたはんだ等の配線層と、上側の配線層に積層された半導体素子とを備え、これらの各層部材がろう材等を介して積層一体化されて構成されている。そしてこの実装基板における下側の配線層が、上記冷却器のベース板にろう材を介して積層一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-92209号公報
【文献】特開2018-67691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2に示す従来の冷却器においては、ベース板の熱伸縮による実装基板等への悪影響が懸念されるところである。例えば冷却器の作動中には、ベース板や実装基板が冷却されて、ベース板や実装基板が内側方向(内径方向)に向かうように熱収縮する。一方、ベース板は、アルミニウムや銅(それらの合金も含む、以下同じ)等によって構成されるとともに、実装基板の絶縁板はセラミック等によって構成されるため、両者の熱膨張係数が大きく異なっている。このため熱収縮時にベース板の収縮率は、絶縁板に比べて大きくなり、ベース板の収縮動作に絶縁板が追従できず、その収縮時の応力によって絶縁板を含む実装基板全体が撓んで、実装基板にその中央部が上方に盛り上がるような、いわゆる山反りが発生する。このように実装基板に反りが発生すると、半導体素子や絶縁板が配線層に対して接触不良が生じて、動作不良の要因となったり、放熱性能の低下を来すおそれがある。そればかりか場合によっては、絶縁板が割れて破損してしまい、絶縁性能も損なわれてしまうという課題があった。
【0008】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ベース板の熱伸縮による実装基板等の冷却対象部材への悪影響を回避することができる冷却器、そのベース板および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0010】
[1]上面に開口を有する箱形の容器本体と、内周部の上面側に冷却対象部材が配置可能なベース板とを備え、前記ベース板の外周部の下面側が前記容器本体の上面開口周縁部に固定されることによって、前記ベース板が前記容器本体にその上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器であって、
前記ベース板における前記内周部が前記外周部に対し隙間を介して別体に形成されるとともに、前記内周部および前記外周部が、前記内周部および前記外周部よりも強度が低い緩衝部を介して連結されていることを特徴とする冷却器。
【0011】
[2]前記緩衝部に、断面V字状の折曲部が形成されている前項1に記載の冷却器。
【0012】
[3]前記ベース板における前記外周部が、前記内周部に対し強度が高い材質によって形成されている前項1または2に記載の冷却器。
【0013】
[4]前記ベース板における前記内周部が、前記外周部に対し熱伝導率が高い材質によって形成されている前項1~3のいずれか1項に記載の冷却器。
【0014】
[5]前記ベース板における前記外周部および前記内周部がアルミニウムよって構成されている前項1~3のいずれか1項に記載の冷却器。
【0015】
[6]上面に開口を有する箱形の容器本体に、その上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器のベース板であって、
上面側に冷却対象部材が配置可能な内周部と、
前記内周部の外側に設けられ、かつ下面側が容器本体の上面開口縁部に固定可能な外周部とを備え、
前記内周部が前記外周部に対し隙間を介して別体に形成されるとともに、前記内周部および前記外周部が、前記内周部および前記外周部よりも強度が低い緩衝部を介して連結されていることを特徴とする冷却器のベース板。
【0016】
[7]上面に開口を有する箱形の容器本体と、外周部の下面側が前記容器本体の上面開口部周縁部に固定されて前記容器本体の上面開口部を閉塞するベース板と、前記ベース板の内周部上面側に配置され、かつ半導体素子を含む実装基板とを備えた半導体装置であって、
前記ベース板における前記内周部が前記外周部に対し隙間を介して別体に形成されるとともに、前記内周部および前記外周部が、前記内周部および前記外周部よりも強度が低い緩衝部を介して連結されていることを特徴とする半導体装置。
【0017】
[8]前記実装基板は、絶縁板を含み、その絶縁板の上側に前記半導体素子が配置されている前項7に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0018】
発明[1]の冷却器によれば、ベース板における内周部を外周部に対し隙間を介して別体に形成し、両者間を強度が低い緩衝部によって連結するようにしているため、例えば冷却時にベース板の外周部が熱収縮してその外周部に内側に向かう応力が発生したとしても、その応力は緩衝部が変形することによって吸収される。従ってベース板の熱伸縮による悪影響を確実に回避することができる。
【0019】
発明[2]の冷却器によれば、熱収縮等によって発生する応力によって緩衝部が変形する際に、V字状の折曲部が変形起点となって変形が開始されるため、発生する応力が小さくともその応力を確実に吸収できて、ベース板の熱伸縮よる悪影響をより一層確実に回避することができる。
【0020】
発明[3]の冷却器によれば、ベース板外周部を内周部よりも強度が高い材質によって形成しているため、外周部および容器本体間に介在されるシール部材の弾性反発力に対しても、外周部が変形することがない。従ってベース板をシール部材を十分に圧縮した状態で容器本体に確実に取り付けることができる。
【0021】
発明[4]の冷却器によれば、ベース内周部を熱伝導率が高い材質によって形成しているため、内周部に設けられる冷却対象部材と容器本体内の冷媒との間で効率良く熱交換することができ、十分な冷却性能を確実に得ることができる。
【0022】
発明[5]の冷却器によれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0023】
発明[6]の冷却器のベース板によれば、上記と同様の主要部を備えているため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0024】
発明[7]の半導体装置によれば、上記と同様の主要部を備えているため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0025】
発明[8]の半導体装置によれば、熱収縮による絶縁板の割れ等も確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1はこの発明の第1実施形態である冷却器が適用された電力用半導体装置を示す断面図である。
図2図2はこの発明の第2実施形態である冷却器が適用された電力用半導体装置を示す断面図である。
図3図3は第2実施形態の半導体装置における緩衝部周辺を拡大して示す断面図であって、図(a)は通常状態での断面図、図(b)はベース板外周部が熱収縮している状態での断面図である。
図4図4は参考例である従来相当の電力用半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である冷却器が適用された電力用半導体装置を示す断面図である。同図に示すようにこの半導体装置は、冷却ジャケット等の容器本体1と、ベース板5と、実装基板2とを基本的な構成要素として備えている。
【0028】
なお本明細書および特許請求の範囲において、アルミニウムという用語は、特に明示した場合を除き、純アルミニウムはもちろん、アルミニウム合金も含む意味で用いられる。さらに本明細書および特許請求の範囲において、方向を示す「上方(上側)」や「下方(下側)」等の用語は、重力方向を基準とするものではなく、便宜的に図1に示す状態を基準にしたものである。つまり、本発明の冷却器や半導体装置は実使用状態において、図1に示す状態の他に、例えば図1の状態に対し、上下を反転させた状態、上下を左右方向に向けて配置した状態、上下を斜め方向に向けて配置した状態で使用するようにしても良い。
【0029】
本第1実施形態の半導体装置において容器本体1は、平面視が矩形状に形成されており、全体として箱形(ボックス型)の形状に形成されている。この容器本体1には、上面に開口11を有し、その上面開口11によって容器本体1の内部が上方に開放されている。
【0030】
ベース板5は、平面視において外周形状が、容器本体1の外周形状に対応する矩形状に形成されている。このベース板5は、ベース板5の内側の領域を構成する矩形状の内周部6と、ベース板5の外側の領域を構成し、かつ内周部6の外側に隙間Sを介して配置される矩形リング状の外周部7と、内周部6および外周部7間の隙間Sにその隙間Sを閉塞するように配置される矩形リング状の緩衝部8とを備えている。
【0031】
内周部6は、その外周縁部の上側に外周凹段部65が形成されている。さらに外周部7は、その内周縁部の上側に内周凹段部75が形成されている。そして緩衝部8の内側部が内周部6の外周凹段部65上に載置されるようにして液密状態に接合一体化されるとともに、緩衝部8の外側部が外周部7の内周凹段部75上に載置されるようにして液密状態に接合一体化されている。これにより、隙間Sを介して別体に形成された内周部6および外周部7が緩衝部8を介して連結一体化されてベース板5が構成されている。なおベース板5における緩衝部8は、内周部6および外周部7間の隙間Sにその全周にわたって充填されるように配置されている。
【0032】
本第1実施形態において、内周部6および緩衝部8間の接着(接合)方法や、外周部7および緩衝部8間の接着(接合)方法は、特に限定されるものではなく、ろう付け処理、溶接処理、節着材塗布処理等の適宜の方法によってそれぞれ適宜接合一体化されている。
【0033】
内周部6にはその下面側に多数の放熱フィン61が下方に突出するようにして一体に形成されている。本実施形態において、放熱フィン61の構成は特に限定されるものではなく、プレートフィンであっても、ピンフィンであっても良い。さらにピンフィンを採用する場合には、その断面形状が限定されるものではなく、円形状、楕円形状、長円形状、多角形状、異形状等、どのような断面形状に形成されていても良い。
【0034】
本第1実施形態においてベース板5の内周部6は、外周部7に比べて熱伝導率が高い材質によって構成されている。さらに外周部7は、内周部6に比べて強度が高い材質によって構成されている。
【0035】
具体的に内周部6の素材としては、合金番号がA1050(熱伝導率230W/mK、耐力30MPa)、A1100(熱伝導率220W/mK、耐力35MPa)等の純アルミニウムを好適に用いることができる。また外周部7の素材としては、合金番号がA6063(熱伝導率210W/mK、耐力145MPa)等のAl-Mg-Si系合金、A3003(熱伝導率170W/mK、耐力125MPa)等のAl-Mn系合金を好適に用いることができる。
【0036】
また本実施形態においてベース板5の緩衝部8は、内周部6および外周部7に比べて強度が低い材質によって構成されている。具体的に緩衝部8の素材としては、合金番号がA1050(熱伝導率230W/mK、耐力30MPa)、A1100(熱伝導率220W/mK、耐力35MPa)等の純アルミニウムを好適に用いることができる。
【0037】
以上の構成のベース板5が容器本体1に組み付けられて冷却器が形成される。すなわちベース板5の放熱フィン61が容器本体1の上面開口11を介して容器本体1内に収容され、さらにベース板5の外周部7の下面が容器本体1の上面開口周縁部に、Oリングやメタルガスケット等のシール部材3を介して載置される。その状態で、外周部7にその上方側から貫通されたボルト4が容器本体1の上面開口周縁部に締結されて固定される。これによりベース板5が容器本体1に組み付けられる。この組付状態においては、容器本体1とベース板5とによって密閉された冷媒流路が形成されるとともに、その冷媒流路内に放熱フィン6が配置されている。
【0038】
なおこの組付状態において、放熱フィン61の下端は、容器本体1の内部底面に接触させておいても良い。
【0039】
また、ベース板5の内周部6の上側には冷却対象部材としての実装基板2が設けられている。実装基板2は、セラミック板等によって構成される絶縁板21を備え、その絶縁板21の上下両面にろう材等を介してアルミニウム製の配線層22,22が積層されるとともに、上側の配線層22の上面にはんだ層23を介して電力用半導体素子24が固定されている。
【0040】
この実装基板2における下側の配線層22が、ベース板5の内周部6の上面にろう付け処理、溶接処理、接着剤塗布処理等によって結合される。これにより本実施形態の半導体装置が形成される。
【0041】
本実施形態において半導体装置の組付手順は、特に限定されるものではない。例えばベース板5に実装基板2を組み付けて半導体モジュールを形成し、その半導体モジュールを容器本体1に組み付けるようにしても良いし、容器本体1にベース板5を組み付けた後、容器本体1のベース板5に実装基板2を取り付けるようにしても良い。
【0042】
以上の構成の本実施形態の半導体装置においては、容器本体1に図示しない冷媒入口および冷媒出口が設けられており、冷媒入口を介して容器本体1(冷媒流路)内に冷媒が流入されて、冷媒流路における多数の放熱フィン61の各間を流通した後、冷媒出口から外部に流出される。こうして容器本体1(冷媒流路)内を流通する冷媒と、半導体素子24との間で熱交換されることにより、半導体素子24から発生する熱が、冷媒を介して外部に放出されて、半導体素子24が冷却されるようになっている。なお本実施形態において冷媒としては、冷却水等の冷却用流体が用いられている。
【0043】
以上の構成の本第1実施形態の半導体装置によれば、ベース板5を、内周部6および外周部7に分割して、その間を強度が低い緩衝部8によって連結しているため、冷却器1の作動によってベース板5や実装基板2等の半導体モジュールが冷却されて、ベース板5の外周部7が熱収縮して外周部7に内側に向かう応力Fが発生したとしても、その応力Fは緩衝部8が変形することによって吸収される。従って外周部7の熱収縮による悪影響を回避することができる。例えば外周部7の熱収縮時の応力Fによって、実装基板2の絶縁板21に山反りが発生するような不具合を防止でき、その反りによる半導体素子24や絶縁板21の配線層22等への接触不良を防止できて、動作不良の発生や放熱性能の低下を防止できるとともに、絶縁板が割れて破損してしまうような不具合も確実に防止できて、良好な絶縁性能を維持することができる。
【0044】
詳細に説明すると、図4に示す従来相当の参考例の半導体装置のようにベース板105が一体成品によって形成されている場合には、ベース板105に熱収縮による内側に向かう応力Fが発生すると、実装基板2の絶縁板21はベース板105よりも熱収縮率が小さいため、絶縁板21はその応力Fを吸収できず、同図の想像線Lに示すように絶縁板21を含む実装基板21全体にその中央部が上方に盛り上がるような山反りが発生する。そうすると、半導体素子24や絶縁板21が配線層22等に対し接触不良が生じて、動作不良が発生したり、放熱性能が低下してしまい、場合によっては絶縁板21が破損して、絶縁性能も損なわれてしまうおそれがある。なお図4の参考例の半導体装置の構成において、図1に示す第1実施形態の半導体装置の構成に相当する部分には、同一の符号を付している。
【0045】
これに対し本実施形態においては既述した通り、ベース板5の熱収縮による応力Fが、緩衝部8の変形によって吸収されるため、その応力Fによる実装基板2への悪影響を回避することができる。
【0046】
また本実施形態の半導体装置のベース板5においては、放熱フィン61が形成される内周部6を熱伝導率が高い素材によって構成しているため、半導体素子24から発生する熱は内周部6を介して容器本体1内の冷媒にスムーズに吸収され、効率良く熱交換することができ、十分な冷却性能を得ることができる。
【0047】
さらに本実施形態においては、容器本体1に固定されるベース板5の外周部7を強度が高い素材によって構成しているため、外周部7はシール部材3の弾性反発力に対しても変形することがなく、外周部7をシール部材3を圧縮した状態で容器本体1に確実に取り付けることができる。従って密封性を十分に確保しつつ、ベース板5としての外周部7を容器本体1に位置精度良く安定した状態に取り付けることができ、製品価値を格段に向上させることができる。
【0048】
なお本実施形態において例えば、ベース板5における内周部6の板厚を外周部7の板厚に比べて薄く形成した場合には、内周部6の熱伝達率をさらに向上できて、冷却性能をより一層向上させることができるとともに、外周部7の強度をさらに向上できて、ベース板5を容器本体1により一層安定した状態に取り付けることができる。
【0049】
<第2実施形態>
図2はこの発明の第2実施形態である冷却器が適用された電力用半導体装置を示す断面図、図3はその半導体装置における緩衝部周辺を拡大して示す断面図である。
【0050】
両図に示すようにこの半導体装置においては、ベース板5における内周部6および外周部7を連結する緩衝部8にその中間部が断面V字状に折曲されて折曲部81が形成されている。そしてこの折曲部81の先端部(谷底部)が変形起点として構成されている。
【0051】
本第2実施形態の半導体装置において他の構成は、上記第1実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0052】
この第2実施形態の半導体装置においても上記と同様の作用効果を得ることができる。その上さらに、この第2実施形態の半導体装置において、熱収縮によってベース板5の外周部7に発生する応力Fは上記と同様、緩衝部8の変形によって吸収されるが、その変形時には緩衝部8のV字状折曲部81が変形起点となって、図3(a)の状態から折曲部81がその折曲角度が小さくなるように変形することによって同図(b)の状態となる。このように本第2実施形態では、緩衝部8の折曲部81において円滑かつ確実に変形が開始されるため、外周部7に発生する応力Fが小さくともその応力Fを確実に吸収することができ、ベース板5の熱伸縮による悪影響をより確実に回避することができ、信頼性をより一層向上させることができる。
【0053】
<変形例>
上記実施形態においては、半導体素子24(実装基板2)を冷却する冷却器を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、冷却対象とする部材(冷却対象部材)は、実装基板に限られず、実装基板(半導体素子)以外の冷却対象部材(発熱体等)を冷却する冷却器にも適用することができる。
【0054】
また上記実施形態においては、ベース板を容器本体にボルトによって固定する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ベース板の容器本体に対する固定手段は限定されるものではない。例えばボルト以外に、ねじやクランプ等の固定手段を用いて固定するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明の冷却器は、電力用半導体素子が搭載された実装基板等の冷却対象部材を冷却するための冷却装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1:容器本体(ジャケット)
11:上面開口
2:実装基板(冷却対象部材)
21:絶縁板
24:半導体素子
5:ベース板
6:内周部
7:外周部
8:緩衝部
81:折曲部
S:隙間
図1
図2
図3
図4