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特許7166152吸着塔およびガス中の揮発性有機化合物の除去装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】吸着塔およびガス中の揮発性有機化合物の除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20221028BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20221028BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20221028BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20221028BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20221028BHJP
   C01B 39/14 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
B01D53/04
B01J20/08 A
B01J20/10 C
B01J20/10 D
B01J20/18 A
B01J20/18 D
B01J20/18 E
B01J20/20 A
B01J20/20 D
C01B39/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018223840
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020082015
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】井田 徹
(72)【発明者】
【氏名】立川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛生
(72)【発明者】
【氏名】梅田 陽子
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和紀
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-034495(JP,A)
【文献】特開2016-053488(JP,A)
【文献】特開2012-002606(JP,A)
【文献】特開平08-071368(JP,A)
【文献】特開平04-298216(JP,A)
【文献】特開2004-099826(JP,A)
【文献】特開平05-080197(JP,A)
【文献】国際公開第2015/059994(WO,A1)
【文献】特開2017-018917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
B01D 53/02-53/18
B01D 53/34-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
G21F 9/02
C01B 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物として揮発性の有機ハロゲン化合物と水蒸気と非凝縮性ガスを含む被処理ガス中の、前記揮発性有機化合物を吸着して除去するための吸着塔であって、
吸着剤と、該吸着剤を収容する吸着剤充填容器とを少なくとも備え、
前記吸着剤は、前記揮発性有機化合物を吸着する第1吸着剤として銀含有物質と、水分吸着熱を発生する第2吸着剤として活性炭、アルミナおよびゼオライトよりなる群から選択される1以上とを含むものであり、
前記第1吸着剤は、第2吸着剤に対して体積比で0.8倍以上、5.0倍以下存在する、吸着塔。
【請求項2】
前記銀含有物質は、銀ゼオライトを含むものである請求項1に記載の吸着塔。
【請求項3】
前記銀含有物質は、銀ゼオライトである請求項1に記載の吸着塔。
【請求項4】
前記銀含有物質は、銀炭、銀担持アルミナ、銀担持シリカ、銀担持酸化チタン、銀担持マグネシア、および銀担持ガリアのうちの1以上である請求項1に記載の吸着塔。
【請求項5】
前記被処理ガスを供給する供給口と、前記揮発性有機化合物を吸着後のガスの排出口とを有し、該供給口と排出口の間に前記吸着剤が配置され、かつ該吸着剤は、前記供給口から近い順に、前記第2吸着剤、前記第1吸着剤が配置されてなる請求項1~4のいずれかに記載の吸着塔。
【請求項6】
前記吸着剤は、前記第1吸着剤と前記第2吸着剤の混合物である請求項1~4のいずれかに記載の吸着塔。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の吸着塔を少なくとも備えた、ガス中の揮発性有機化合物の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着塔およびガス中の揮発性有機化合物の除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス中の揮発性有機化合物を除去する方法として、吸着剤に揮発性有機化合物を吸着させて除去する方法が挙げられる。吸着剤を充填させた吸着塔にガスを通気させて、該ガスに含まれる揮発性有機化合物を吸着除去する方法である。例えば特許文献1には、揮発性有機化合物として放射性ヨウ素を吸着させるための吸着剤と、該吸着剤を用いた揮発性有機化合物の処理方法が示されている。
【0003】
しかしこの吸着剤を使用する方法では、供給されるガスが水蒸気を含む場合、ガス中に含まれる水蒸気(水分)が吸着塔で凝縮することがある。以下、凝縮した水分を凝縮水という。凝縮水が発生すると、該吸着剤の揮発性有機化合物の除去性能、すなわち吸着率が低下することが知られている。特に、吸着塔内が供給されるガスの温度よりも低い場合、凝縮水が発生しやすくこれによる吸着率低下が避けられない。
【0004】
このような凝縮水発生による吸着率低下を防ぐ方法として、例えば排ガス中の揮発性有機化合物を除去する場合に、(A)排ガスを除湿装置に通して、排ガス中の水蒸気量を予め減らす方法、(B)吸着剤を充填した吸着塔を外部から加熱する方法、(C)排ガスを吸着塔へ供給する前に加熱する方法が挙げられる。
【0005】
上記(A)の方法として、例えば、揮発性物質の回収方法に関する特許文献2や、二酸化炭素の回収方法及び回収装置に関する特許文献3が挙げられる。上記(B)の方法として、例えば有機溶剤含有ガス処理装置に関する特許文献4が挙げられる。上記(C)の方法として、例えば可逆加熱再生式加圧ガス除湿装置に関する特許文献5が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/059994号パンフレット
【文献】特開平06-198119号公報
【文献】特開2016-040025号公報
【文献】特開2004-181348号公報
【文献】特開昭62-298426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記(A)の排ガスを除湿装置に通す方法は、装置が煩雑となる点が課題として挙げられる。上記(B)と(C)の方法は、外熱式のため加熱効果が低く、かつ加熱に大電力が必要である点が課題として挙げられる。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、除湿装置、加熱装置を吸着塔に外付けで配設せずとも、被処理ガスに含まれる揮発性有機化合物を十分に吸着除去できる吸着塔と、該吸着塔を備えたガス中の揮発性有機化合物の除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様1は、揮発性有機化合物と水蒸気と非凝縮性ガスを含む被処理ガス中の、前記揮発性有機化合物を吸着して除去するための吸着塔であって、
吸着剤と、該吸着剤を収容する吸着剤充填容器とを少なくとも備え、
前記吸着剤は、前記揮発性有機化合物を吸着する第1吸着剤と、水分吸着熱を発生する第2吸着剤とを含むものである、吸着塔である。
【0010】
本発明の態様2は、前記第1吸着剤が、銀ゼオライトを含むものである態様1に記載の吸着塔である。
【0011】
本発明の態様3は、前記第2吸着剤が、活性炭、シリカゲル、アルミナおよびゼオライトよりなる群から選択される1以上である態様1または2に記載の吸着塔である。
【0012】
本発明の態様4は、前記被処理ガスを供給する供給口と、前記揮発性有機化合物を吸着後のガスの排出口とを有し、該供給口と排出口の間に前記吸着剤が配置され、かつ該吸着剤は、前記供給口から近い順に、前記第2吸着剤、前記第1吸着剤が配置されてなる態様1~3のいずれかに記載の吸着塔である。
【0013】
本発明の態様5は、前記吸着剤が、前記第1吸着剤と前記第2吸着剤の混合物である態様1~3のいずれかに記載の吸着塔である。
【0014】
本発明の態様6は、態様1~5のいずれかに記載の吸着塔を少なくとも備えた、ガス中の揮発性有機化合物の除去装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、除湿装置、加熱装置を吸着塔に外付けで配設せずとも、第1吸着剤の温度を被処理ガス温度よりも高い状態に維持して、被処理ガスに含まれる揮発性有機化合物を十分に吸着除去できる。本発明は、該効果を発揮することのできる吸着塔、およびこの吸着塔を備えたガス中の揮発性有機化合物の除去装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、比較例1で使用した吸着塔内部の概略側面図である。
図2図2は、比較例2で使用した吸着塔内部の概略側面図である。
図3図3は、実施例1で使用した吸着塔内部の概略側面図である。
図4図4は、実施例2で使用した吸着塔内部の概略側面図である。
図5図5は、実施例3および実施例4で使用した吸着塔内部の概略側面図である。
図6図6は、比較例1の吸着剤の温度変化を示したグラフである。
図7図7は、比較例2の吸着剤の温度変化を示したグラフである。
図8図8は、実施例1の吸着剤の温度変化を示したグラフである。
図9図9は、実施例4の吸着剤の温度変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、被処理ガスに含まれる揮発性有機化合物を吸着して除去するための吸着塔であって、吸着剤と、該吸着剤を収容する吸着剤充填容器とを少なくとも備え、前記吸着剤が、前記揮発性有機化合物を吸着する第1吸着剤と、水分吸着熱を発生する第2吸着剤を含むようにすれば、第1吸着剤の温度を被処理ガス温度よりも高い状態に維持でき、吸着剤の吸着性能維持に有効であることを見出した。以下、本発明の実施形態に係る吸着剤及びガス中の揮発性有機化合物の除去装置の詳細を示す。
【0018】
1.吸着処理対象
本発明の吸着塔で処理されるガス(被処理ガス)は、揮発性有機化合物と水蒸気と非凝縮性ガスを含む。前記非凝縮性ガスとして、酸素、窒素、炭酸ガス、水素、空気等とこれらのガスのうちの2種以上の混合ガスが挙げられる。前記混合ガスとして、例えば、水素と酸素の混合ガス、または窒素と水素の混合ガスが挙げられる。以下では、被処理ガスを単に「ガス」ということがある。吸着塔に供給する被処理ガスの温度、すなわち被処理ガスの吸着塔入口での温度は、例えば-50℃以上、600℃以下、好ましくは-40℃以上、400℃以下、より好ましくは-10℃以上、300℃以下であることが挙げられる。
【0019】
前記揮発性有機化合物は、第1吸着剤に吸着されるものであればよい。前記揮発性有機化合物は、第1吸着剤で吸着されると共に、第2吸着剤でも吸着される化合物であってもよい。また前記揮発性有機化合物は、第1吸着物を構成する成分と反応し、かつ第2吸着剤の水分吸着熱(水和熱)で第1吸着剤が昇温しても該第1吸着剤から脱離し難い化合物であることが好ましい。
【0020】
前記揮発性有機化合物として、有機ハロゲン化合物、該有機ハロゲン化合物以外のVOCとして、例えば世界保健機関(WHO)の定義による超揮発性有機化合物(VVOC)、揮発性有機化合物(VOC)、半揮発性有機化合物(SVOC)が挙げられる。本発明は、前記揮発性有機化合物として、有機ハロゲン化合物の除去に有効である。第1吸着剤に例えば銀が含まれる場合、特に有機ハロゲン化合物の除去に有効である。有機ハロゲン化合物の中でも、特にヨウ化メチルの吸着除去に有効である。前記ガスには、前記揮発性有機化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分が含まれうる。
【0021】
被処理ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度は、特に限定されない。本発明では、揮発性有機化合物の濃度に応じて、該揮発性有機化合物を全て吸着できるよう、吸着効率を考慮した吸着剤の量や吸着塔の大きさを選定することができる。
【0022】
2.吸着剤
本発明では、吸着剤として、揮発性有機化合物を吸着する第1吸着剤と、水分吸着熱を発生する第2吸着剤とを併せて使用する。これにより、被処理ガスを吸着処理する間、第1吸着剤の温度(第1吸着剤と第2吸着剤の混合物の場合は、該混合物の温度)を、被処理ガスの温度よりも高く維持することができる。その結果、従来では、凝縮水が発生して吸着率の低下が避けられなかったが、本発明では、吸着剤の吸着性能を維持することができる。
【0023】
特に本発明の吸着塔は、第2吸着剤の水分吸着熱(水和熱)を利用している。第2吸着剤が存在することで、凝縮水が発生した場合に、該凝縮水と第2吸着剤との水和反応で水分吸着熱が発生する。この水分吸着熱により、被処理ガスを吸着処理する間、第1吸着剤の温度(第1吸着剤と第2吸着剤の混合物の場合は、該混合物の温度)を、被処理ガスの温度よりも高く維持でき、凝縮水発生による吸着性能低下の抑制が可能であると考えられる。本発明では、この様に第2吸着剤の水分吸着熱(水和熱)を利用して第1吸着剤の温度を高めていることから、第1吸着材の温度(第1吸着剤と第2吸着剤の混合物の場合は、該混合物の温度)が供給される被処理ガスの温度よりも低くても、第1吸着剤の吸着性能を十分維持することができる。
【0024】
(第1吸着剤)
第1吸着剤として、揮発性有機化合物を吸着する物質を用いる。好ましい第1吸着剤として、銀含有物質が挙げられる。銀含有物質として、銀ゼオライト、銀炭、銀担持アルミナ、銀担持シリカ、銀担持酸化チタン、銀担持マグネシア、銀担持ガリア等が挙げられる。これらは、揮発性有機化合物として有機ハロゲン化合物が含まれる場合、該有機ハロゲン化合物と反応しうるため好ましい。第1吸着剤として、特に銀ゼオライトが好ましい。銀ゼオライトの銀含有量に特段の制限はなく、製造コストと有機ハロゲン化合物の吸着性能から選定することができる。一例として、銀ゼオライトの銀含有量は5~50質量%であることが挙げられる。また、銀ゼオライトの結晶構造も特段の制限はなく、製造コスト、運転コスト、および含有する銀の利用効率などの点から選定可能である。一例として、X型ゼオライト、A型ゼオライトなどを選定できる。また銀ゼオライトの形状は、特に限定されないが、吸着塔のガス通過抵抗が小さくなる形状や大きさとすることが好ましい。例えば銀ゼオライトの形状として、吸着剤充填容器のガス通過孔径よりも大きな球相当直径が1mm~10mmの球形が挙げられる。
【0025】
(第2吸着剤)
第2吸着剤として、水分吸着熱を発生するものを用いる。前記第2吸着剤は、好ましくは種々の吸着サイトがあり、水分吸着熱の発生時間が長いもの、更には乾燥空気等を利用して再生可能なものがよい。また、前記第2吸着剤として、第1吸着剤のガス通過抵抗を増大させない形状・大きさであること、製造コストや運転コストが実用的であるものが好ましい。前記第2吸着剤は、上述の通り水分吸着熱を発生することを必須とし、更なる特性として、揮発性有機化合物の吸着性が備わっていてもよい。
【0026】
前記第2吸着剤として、活性炭、シリカゲル、アルミナ及びゼオライトよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。前記第2吸着剤には、上記活性炭等に、更に、銀等の金属が担持されたものも含まれる。
【0027】
例えば前記活性炭として、椰子殻、石炭または木炭を原料とした、球相当直径が0.1mm~10mmの球形または破砕炭を使用することができる。
【0028】
第1吸着剤の温度を高めると共に、十分な吸着性能を発揮させるには、第1吸着剤を、第2吸着剤に対して体積比で0.8倍以上存在させることが好ましく、1.0倍以上存在させることがより好ましい。一方、第1吸着剤が第2吸着剤に対して過剰となると、第2吸着剤による加熱効果が十分に発揮されにくいことから、第1吸着剤は、第2吸着剤に対して体積比で5.0倍以下であることが好ましく、3.0倍以下であることがより好ましい。
【0029】
後述の通り、第1吸着剤と第2吸着剤をあらかじめ混合させて混合物を得る場合、吸着塔のガス通過抵抗を抑えることと、第1吸着剤と第2吸着剤の混合が均一となるようにすることの両観点から、第1吸着剤と第2吸着剤の形状および大きさを選定することが好ましい。
【0030】
3.吸着塔
本発明の吸着塔は、前記吸着剤と、前記吸着剤を収容する吸着剤充填容器とを備える。吸着塔の一つの態様として、前記被処理ガスを供給する供給口と、前記揮発性有機化合物を吸着後のガスの排出口とを有し、該供給口と排出口の間に前記吸着剤が配置され、かつ該吸着剤は、前記ガスの供給口から近い順に、前記第2吸着剤、前記第1吸着剤が配置されていることが好ましい。この態様によれば、第1吸着剤の温度を被処理ガス温度よりも高く維持することができる。
【0031】
第1吸着剤と第2吸着剤の配置形態として、第1吸着剤と第2吸着剤を1層ずつ積層させる他、第1吸着剤と第2吸着剤の2層を1セットとした場合に、第1吸着剤と第2吸着剤が交互となるように2セット以上を積層させてもよい。これらの場合のいずれも、上述の通り第2吸着剤が、供給口側に配置されていることが好ましい。
【0032】
第1吸着剤と第2吸着剤の別の配置形態として、第1吸着剤と第2吸着剤をそれぞれ粒状等として、両者をあらかじめ混合させて得られた混合物を、吸着塔に充填させることが挙げられる。例えば吸着塔が、前記ガスの供給口と、揮発性有機化合物を吸着後のガスの排出口を有し、該供給口と排出口の間に前記混合物である吸着剤が配置された態様が挙げられる。
【0033】
前記第1吸着剤と前記第2吸着剤の混合方法は特に限定されず、公知の混合機を使用できる。混合機としては、円筒型混合機、V型混合機、回転円盤型混合機、転動式混合機などが挙げられる。
【0034】
吸着剤充填容器へ吸着剤を充填させる場合、その充填率は、ガス通過抵抗が増大しないこと及び揮発性有機化合物を効率よく吸着できることを考慮して選定すればよい。
【0035】
前記揮発性有機化合物を含む被処理ガスの流速は、吸着塔の大きさと吸着効率から選定できる。例えば0.1~10m/秒とすることができる。
【0036】
吸着剤充填容器は、例えばステンレス等の鋼製のものが挙げられる。本発明の吸着塔は、上記吸着剤を有している点に特徴があり、吸着剤以外の構成については特に問わない。よって、例えば吸着剤充填容器に吸着剤を充填する際に、吸着剤保持のために使用する金網等、吸着塔で一般的に使用されるものを採用することができる。
【0037】
4.ガス中の揮発性有機化合物の除去装置
本発明には、前記吸着塔を少なくとも備えた、ガス中の揮発性有機化合物の除去装置も含まれる。この除去装置には、前記吸着塔に、前述の被処理ガスを供給する手段と、処理後のガスを前記吸着塔から排出する手段とを含みうる。上記除去装置には、吸着剤の交換時も吸着除去処理を継続できるよう、本発明の吸着塔が2以上並設されていてもよい。また、上記吸着剤の吸着性能を回復させるための再生装置が設けられていてもよい。
【実施例
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0039】
吸着剤の配合形態を変えた種々の吸着塔を用い、下記に詳述する吸着試験を行って、揮発性有機化合物の吸着性能を評価した。以下、各例について詳細を示す。
【0040】
[比較例1]
比較例1では、吸着剤として銀ゼオライト(銀含有量:41質量%、サイズ:直径1~2mmの球状)のみを使用した。尚、吸着塔に占める吸着剤の体積(複数種類の吸着剤を使用する場合は合計体積をいう)は、全ての例で同一とした。
【0041】
吸着試験の条件は次の通りとした。図1に示す通り、ステンレス製の吸着剤充填容器2に、吸着剤として第1吸着剤3Aのみ、つまり上記銀ゼオライトのみを充填した吸着塔1を用意した。そしてこの吸着塔1に、処理対象ガスの一例を模擬し、温度102℃の蒸気中に、揮発性有機化合物としてヨウ化メチルを混合したガス、詳細には、吸着塔の供給口でのガス組成が、水蒸気99.9体積%、窒素0.01体積%、ヨウ化メチル(有機ハロゲン化合物)50体積ppmである被処理ガスを、供給口4から供給し、排出口5から排出させて、前記ヨウ化メチルの吸着を行った。前記第1吸着剤3Aを通過する被処理ガスの流速は0.5m/秒とした。尚、図1中の下向きの矢印はガスの流れを示す。また、以下に示す図2~5において、図1と同一符号の部分は同一の部分を示す。
【0042】
吸着塔入口(供給口4)と吸着塔出口(排出口5)のそれぞれで測定したヨウ化メチル濃度から、吸着されたヨウ化メチルの質量を求め、下記式から吸着率を計算した。この比較例1ではヨウ化メチル吸着率は94.8%であった。
ヨウ化メチル吸着率(%)=100×(1-吸着塔出口のヨウ化メチルの濃度/吸着塔入口のヨウ化メチルの濃度)
【0043】
[比較例2]
比較例2では、図2に示す通り吸着剤として、第2吸着剤3Bのみ、すなわち活性炭(直径0.3mm~0.5mmの粒状活性炭であって銀を0.11質量%含む)のみを使用した。上記吸着剤を変更したことと蒸気温度を103℃としたことを除き、比較例1と同じ条件で吸着試験を行った。その結果、上記式から求めたヨウ化メチル吸着率は52.8%であった。
【0044】
[実施例1]
実施例1では、比較例1で用いた銀ゼオライトを第1吸着剤3Aとし、また比較例2で用いた活性炭を第2吸着剤3Bとして使用し、図3に示す通り、これらを銀ゼオライト/活性炭=1/1(体積比)の割合で、第1吸着剤3Aと第2吸着剤3Bを層別に、かつ第2吸着剤3Bである活性炭をガス上流側、すなわち第1吸着剤3Aよりも供給口4側に位置するように吸着塔1に充填した。他の試験条件は比較例1と同じにして吸着試験を行った。その結果、上記式から求めたヨウ化メチル吸着率は96.6%であった。
【0045】
[実施例2]
実施例2では、比較例1で用いた銀ゼオライトを第1吸着剤3Aとし、また比較例2で用いた活性炭を第2吸着剤3Bとして使用し、図4に示す通り、これらを銀ゼオライト/活性炭=2/1(体積比)の割合で、第1吸着剤3Aと第2吸着剤3Bを層別に、かつ第2吸着剤3Bである活性炭をガス上流側、すなわち第1吸着剤3Aよりも供給口4側に位置するように吸着塔1に充填した。他の試験条件は比較例1と同じにして吸着試験を行った。その結果、上記式から求めたヨウ化メチル吸着率は97.3%であった。
【0046】
[実施例3]
実施例3では、比較例1で用いた銀ゼオライトを第1吸着剤とし、また比較例2で用いた活性炭を第2吸着剤として使用し、これらを銀ゼオライト/活性炭=1/1(体積比)の割合で予め混合して得た混合物3Cを、図5に示す通り吸着塔に充填した。他の試験条件は比較例1と同じにして吸着試験を行った。その結果、上記式から求めたヨウ化メチル吸着率は97.5%であった。
【0047】
[実施例4]
実施例4では、比較例1で用いた銀ゼオライトを第1吸着剤とし、また比較例2で用いた活性炭を第2吸着剤として使用し、これらを銀ゼオライト/活性炭=2/1(体積比)の割合で予め混合して得た混合物3Cを、図5に示す通り吸着塔に充填した。他の試験条件は比較例1と同じにして吸着試験を行った。その結果、上記式から求めたヨウ化メチル吸着率は98.5%であった。
【0048】
これらの結果をまとめると下記表1の通りである。
【0049】
【表1】
【0050】
上記比較例1、2および実施例1、4の試験中の吸着剤の温度変化を図6図9に示す。図6図9において、横軸はガス供給開始からの時間を示し、縦軸は実線Aで示した吸着材の温度を示す。図中の実線Aは、図6では銀ゼオライトの温度、図7では活性炭の温度、図8では第1吸着剤(銀ゼオライト)の温度、図9では第1吸着材(銀ゼオライト)と第2吸着材(活性炭)の混合物の温度を示す。また図中の破線Bは、いずれの図においても被処理ガスの温度を示す。尚、前記吸着剤の温度は熱電対で測定した。
【0051】
図6は、比較例1における第1吸着剤3A(銀ゼオライト)の温度変化を示したグラフである。
【0052】
試験直前の銀ゼオライトの温度は約25℃であるが、図6に示される通り、ガス(102℃の蒸気)を供給開始すると、約25℃から約130℃まで温度が上昇した。この温度の上昇は、102℃の蒸気と銀ゼオライトとの水和反応で生じた水分吸着熱(水和熱)によるものである。この水和反応の終了後、銀ゼオライトの温度は速やかに低下し、ガスの供給開始から約15分以後は、吸着剤の温度が被処理ガスの温度(図6の破線B)とほぼ同じになった。
【0053】
比較例1では、前述の通り、102℃の蒸気中にヨウ化メチルを混合したガスを供給したが、吸着塔の放熱により該吸着塔の温度が低下した。その結果、吸着剤のヨウ化メチル吸着性能が小さくなり、高い吸着性能が示されなかった。
【0054】
図7は、比較例2における第2吸着剤3B(活性炭)の温度変化を示したグラフである。図7に示される通り、第2吸着剤(活性炭)の水分吸着熱は、最高温度が前記図6の最高温度よりも低いものの、発生時間が長くなった。しかし第2吸着剤(活性炭)は、ヨウ化メチル吸着性能が低いため、この第2吸着剤(活性炭)のみを吸着剤に使用した比較例2は、表1に示す通りヨウ化メチル吸着率が小さかった。
【0055】
図8は、実施例1における第1吸着剤3A(銀ゼオライト)の温度変化を示したグラフである。銀ゼオライトとともに充填した活性炭が水分吸着熱を発生したため、図8に示される通り、銀ゼオライトの温度は、吸着処理中、被処理ガスの温度よりも高温に維持された。その結果、比較例1よりも吸着率が高く、吸着率96.6%の高い吸着性能を示した。
【0056】
実施例2では、上記実施例1よりも吸着剤全体に占める銀ゼオライトの割合を高めた。この場合、第1吸着剤3A(銀ゼオライト)の温度は、被処理ガスの温度よりも高温に維持されつつ、吸着性能がより高く発揮され、上記実施例1よりも高い吸着率(97.3%)を示した。
【0057】
図9は、実施例4における第1吸着剤と第2吸着剤の混合物の温度変化を示したグラフである。銀ゼオライトと混合して充填した活性炭が水分吸着熱を発生したため、図9に示される通り、第1吸着剤と第2吸着剤の混合物の温度は、吸着処理中、被処理ガスの温度よりも高温に維持された。その結果、比較例1よりも吸着率が高く、吸着率98.5%の吸着性能を示した。尚、実施例3においても、銀ゼオライトと活性炭を混合して充填させたため、第1吸着剤(銀ゼオライト)が高温維持されて、高い吸着性能を示した。
【0058】
銀ゼオライトと活性炭を併用した実施例1~4では、上記図8図9に示される通り、水分吸着熱の発生により第1吸着剤が高温状態となり、高いヨウ化メチル吸着性能が維持された。
【0059】
特に、実施例1と実施例3、実施例2と実施例4のそれぞれの比較から、第1吸着剤と第2吸着剤を混合させることによって、より高い吸着率を達成できることがわかる。また、実施例1と実施例2、実施例3と実施例4のそれぞれの比較から、第2吸着剤に対して第1吸着剤の割合を増やすことで、より高い吸着率を達成できることがわかる。
【符号の説明】
【0060】
1 吸着塔
2 吸着剤充填容器
3A 第1吸着剤
3B 第2吸着剤
3C 第1吸着剤と第2吸着剤の混合物
4 供給口
5 排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9