(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20221028BHJP
F28F 3/06 20060101ALI20221028BHJP
F28F 19/04 20060101ALI20221028BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20221028BHJP
F01P 3/18 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28F3/06 A
F28F3/08 301A
F28F19/04 Z
F28D9/02
F01P3/18 V
F01P3/18 Z
(21)【出願番号】P 2018225325
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0328639(US,A1)
【文献】特開2016-145701(JP,A)
【文献】特開2000-141028(JP,A)
【文献】特許第2588356(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08
F28F 3/06
F28F 19/04
F28D 9/02
F01P 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外包材としてのケーシングを有する伝熱部材と、前記伝熱部材の外周面に接触する態様に配置されるアウターフィンとを備え、前記伝熱部材内を流通する熱交換媒体と前記アウターフィンに接触する流体との間で熱交換されるようにした熱交換器であって、
前記ケーシングが、金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成されるとともに、
前記アウターフィンが、凹凸部を有し、かつ金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成され
、
前記伝熱部材の前記ケーシング内にインナーフィンが配置され、
前記インナーフィンは、凹凸を有し、かつ金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記ケーシングと前記アウターフィンとの間で接触し合う互いの樹脂層が、同種の熱融着樹脂によって形成されている請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記インナーフィンが前記ケーシングの内周面に接触した状態に配置され、
前記ケーシングと前記インナーフィンとの間で接触し合う互いの樹脂層が、同種の熱融着樹脂によって形成されている請求項
1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
外包材としてのケーシングを有する伝熱部材と、前記伝熱部材の外周面に接触する態様に配置されるアウターフィンとを備え、前記伝熱部材内を流通する熱交換媒体と前記アウターフィンに接触する流体との間で熱交換されるようにした熱交換器であって、
前記ケーシングが、金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成されるとともに、
前記アウターフィンが、凹凸部を有し、かつ金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成され、
前記ケーシングと前記アウターフィンとの間で接触し合う互いの樹脂層が、同種の熱融着樹脂によって形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
前記伝熱部材が、所定の間隔おきに並列に複数配置され、
前記アウターフィンが、隣合う伝熱部材の各間にそれぞれ配置され、
前記ケーシングに貫通した状態に配置され、かつ隣合う伝熱部材同士を連通するジョイント部材が設けられ、
隣合う伝熱部材のうち、一方の伝熱部材から他方の伝熱部材に前記ジョイント部材を介して熱交換媒体が供給されることにより、熱交換媒体が複数の伝熱部材に順次供給されるように構成されている請求項
1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記ケーシングにおける前記ジョイント部材の取付部に対応する樹脂層と、前記ジョイント部材の少なくとも表皮部とが同種の熱融着樹脂によって形成され、
前記ジョイント部材の表皮部が、前記ケーシングの対応する樹脂層に熱融着によって封止状態に取り付けられている請求項
5に記載の熱交換器。
【請求項7】
外包材としてのケーシングを有する伝熱部材と、前記伝熱部材の外周面に接触する態様に配置されるアウターフィンとを備え、前記伝熱部材内を流通する熱交換媒体と前記アウターフィンに接触する流体との間で熱交換されるようにした熱交換器であって、
前記ケーシングが、金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成されるとともに、
前記アウターフィンが、凹凸部を有し、かつ金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成され、
前記伝熱部材が、所定の間隔おきに並列に複数配置され、
前記アウターフィンが、隣合う伝熱部材の各間にそれぞれ配置され、
前記ケーシングに貫通した状態に配置され、かつ隣合う伝熱部材同士を連通するジョイント部材が設けられ、
隣合う伝熱部材のうち、一方の伝熱部材から他方の伝熱部材に前記ジョイント部材を介して熱交換媒体が供給されることにより、熱交換媒体が複数の伝熱部材に順次供給されるように構成され、
前記ケーシングにおける前記ジョイント部材の取付部に対応する樹脂層と、前記ジョイント部材の少なくとも表皮部とが同種の熱融着樹脂によって形成され、
前記ジョイント部材の表皮部が、前記ケーシングの対応する樹脂層に熱融着によって封止状態に取り付けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項8】
前記ケーシングと前記アウターフィンとの接触部が接着されている請求項1~
7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項によって記載された熱交換器によって構成されることを特徴とする自動車用ラジエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属層に樹脂層が積層されたラミネート材を利用して製作される熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等においては、電動機を駆動するための電力を供給する電池モジュール(バッテリー装置)が搭載されている。このような自動車用の電池モジュールは、充電と放電とが繰り返されるために大きな発熱を伴うので冷却が必要となる。このため従来の電池モジュールにおいて、冷却用に水冷式や空冷式の熱交換器(冷却器)が組み込まれたものが周知である。
【0003】
また自動車に用いられるシリコンカーバイト(SiC)製等のパワーモジュールにおいても、大電流を制御するものであるため、冷却用に冷却板やヒートシンク等の冷却器(熱交換器)を組み付ける等の熱対策が施されるものも周知である。
【0004】
このような冷却器に流通される水等の冷媒(冷却媒体)を冷却するためのラジエータとしては、下記特許文献1に示すものが周知である。
【0005】
同文献に示す熱交換器は、アルミニウム等の金属製のものであって、冷媒が流通する扁平な金属製の伝熱チューブと、コルゲートフィン等の金属製のアウターフィン(放熱フィン)とが交互に積層一体化されて形成されている。このような熱交換器は、押出型材、切削加工品、プレス成形板等のアルミニウム製の金属加工部品をろう付けや拡散接合等で接合することによって製作するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の熱交換器は、アルミニウム等の金属によって構成されているため、自動車のエンジンルーム等の過酷な環境下で使用されると、早期に錆が発生してしまい、耐久性に劣るという課題があった。
【0008】
そこで熱交換器自体に防錆処理が必要となるが、熱交換器は表面積が大きいため、表面全域に防錆処理を施すことは困難であり、製造が困難になるばかりか、コストの上昇を来すという課題があった。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れるとともに、簡単に製造できてコストを削減できる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0011】
[1]外包材としてのケーシングを有する伝熱部材と、前記伝熱部材の外周面に接触する態様に配置されるアウターフィンとを備え、前記伝熱部材内を流通する熱交換媒体と前記アウターフィンに接触する流体との間で熱交換されるようにした熱交換器であって、
前記ケーシングが、金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成されるとともに、
前記アウターフィンが、凹凸部を有し、かつ金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成されていることを特徴とする熱交換器。
【0012】
[2]前記伝熱部材が、所定の間隔おきに並列に複数配置され、
前記アウターフィンが、隣合う伝熱部材の各間にそれぞれ配置され、
前記ケーシングに貫通した状態に配置され、かつ隣合う伝熱部材同士を連通するジョイント部材が設けられ、
隣合う伝熱部材のうち、一方の伝熱部材から他方の伝熱部材に前記ジョイント部材を介して熱交換媒体が供給されることにより、熱交換媒体が複数の伝熱部材に順次供給されるように構成されている前項1に記載の熱交換器。
【0013】
[3]前記伝熱部材の前記ケーシング内にインナーフィンが配置され、
前記インナーフィンは、凹凸を有し、かつ金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成されている前項1または2に記載の熱交換器。
【0014】
[4]前記ケーシングと前記アウターフィンとの接触部が接着されている前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0015】
[5]前記ケーシングと前記アウターフィンとの間で接触し合う互いの樹脂層が、同種の熱融着樹脂によって形成されている前項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0016】
[6]前記ケーシングにおける前記ジョイント部材の取付部に対応する樹脂層と、前記ジョイント部材の少なくとも表皮部とが同種の熱融着樹脂によって形成され、
前記ジョイント部材の表皮部が、前記ケーシングの対応する樹脂層に熱融着によって封止状態に取り付けられている前項2に記載の熱交換器。
【0017】
[7]前記インナーフィンが前記ケーシングの内周面に接触した状態に配置され、
前記ケーシングと前記インナーフィンとの間で接触し合う互いの樹脂層が、同種の熱融着樹脂によって形成されている前項3に記載の熱交換器。
【0018】
[8]前項1~7のいずれか1項によって記載された熱交換器によって構成されることを特徴とする自動車用ラジエータ。
【発明の効果】
【0019】
発明[1][2]の熱交換器によれば、伝熱部材のケーシングおよびアウターフィンが樹脂層で被覆されたラミネート材によって構成されているため、金属製の熱交換器と比較して錆等の発生を抑制でき、長期間安定した状態で使用でき、耐久性を向上させることができる。さらに本発明の熱交換器によれば、防錆処理も不要であるため、その分、製造を簡単に行えるとともに、コストを削減することができる。
【0020】
発明[3]の熱交換器によれば、伝熱部材の内部にインナーフィンが設けられているため、熱交換効率を一層向上させることができる。
【0021】
発明[4]~[7]の熱交換器によれば、伝熱部材のケーシングと、アウターフィン、インナーフィンおよびジョイント部材との間を十分な接着強度で接着できるため、剥がれ難くなり、一層耐久性を向上できるとともに、液漏れ等の不具合もより確実に防止することができる。
【0022】
発明[8]の自動車用ラジエータによれば、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1はこの発明の実施形態である熱交換器を示す正面図である。
【
図2】
図2は実施形態の熱交換器を分解して示す斜視図である。
【
図3】
図3は実施形態の熱交換器に適用された伝熱パネルを分解して示す斜視図である。
【
図4】
図4は実施形態の伝熱パネルの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【
図5】
図5は
図4の一点鎖線で囲まれる部分を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は実施形態の伝熱パネルに適用された雌型ジョイント部材を示す斜視図である。
【
図7】
図7は実施例の熱交換器に適用されたアウターフィンの一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1はこの発明の実施形態である熱交換器を示す正面図、
図2は実施形態の熱交換器を分解して示す斜視図、
図3は実施形態の熱交換器に適用された伝熱パネルPを分解して示す斜視図、
図4は実施形態の伝熱パネルPの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【0025】
これらの図に示すように本実施形態の熱交換器は、所定の間隔をおいて並列に配置された複数の伝熱パネルPと、複数の伝熱パネルPの各間にそれぞれ配置されるアウターフィン(外部フィン)22とを備え、伝熱パネルPとアウターフィン22とが交互に積層された積層構造を有している。
【0026】
伝熱パネルPは、伝熱部材(伝熱チューブ)を構成するものであり、外包材(外包袋)としてのケーシング1と、ケーシング1内に収容されるインナーフィン(内部フィン)21と、ケーシング1の両端部内に収容される一対のジョイント部材3a,3bとを備えている。
【0027】
ケーシング1は、平面視矩形状のケーシング本体10と、平面視矩形状のカバー15とによって構成されている。
【0028】
ケーシング本体10は、その外周縁部を除く中間領域が下方に凹陥形成されて、凹部11が形成されるとともに、凹部11の開口縁部周辺に外方に突出するように一体に形成されたフランジ部12が形成されている。
【0029】
ケーシング本体10は、柔軟性~可撓性を有するラミネートシートであるラミネート材L1によって構成されている。ラミネート材L1は、
図5に示すように金属箔製の金属層51と、その金属層51の一面(外面)に接着剤を介して積層された延伸樹脂フィルム~延伸樹脂シート製の延伸樹脂層55と、延伸樹脂層55の一面(外面)に接着剤を介して積層された樹脂フィルム~樹脂シート製の樹脂層52と、金属層51の他面(内面)に接着剤を介して積層された樹脂フィルム~樹脂シート製の樹脂層53とを備えている。なお本実施形態において、「箔」という用語は、フィルム、薄板、シートも含む意味で用いられている。
【0030】
ラミネート材L1における金属層51としては、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、メッキ加工した銅箔、ニッケル箔と銅箔とがクラッドされたニッケル・銅クラッドメタルの中から選択されたものを好適に用いることができる。なお本実施形態において、「銅」「アルミニウム」「ニッケル」という用語は、それらの合金も含む意味で用いられている。
【0031】
金属層51は、伝熱層や集熱層とも称されるものであり、厚みが8μm~300μmのものを用いるのが良く、より好ましくは100μm以下のものを用いるのが良い。
【0032】
また金属層51は、化成処理等の表面処理を施しておくことにより、金属層51の腐食防止や、樹脂との接着性の向上など、より一層耐久性を向上させることができる。
【0033】
化成処理は、例えば次のような処理を施す。即ち、脱脂処理を行った金属箔の表面に、下記の1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0034】
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0035】
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0036】
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液。
【0037】
上記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2に設定するのが好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2に設定するのがより一層好ましい。
【0038】
この表面処理に関しては、後述するフィン用のラミネート材L2の金属層61においても同様である。
【0039】
延伸樹脂層55としては、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂等によって構成されるフィルム~シートを好適に用いることができる。この延伸樹脂層55は、厚みが12μm~50μmのものを好適に用いることができる。
【0040】
本実施形態において、外面側および内面側の樹脂層52,53は、熱融着樹脂製のフィルム~シートによって構成されている。具体的に樹脂層52,53としては、ポリオレフィン(無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン)、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等によって構成されるフィルム~シートを好適に用いることができる。この樹脂層52,53は、厚みが20μm~1000μmのものを好適に用いることができる。
【0041】
本実施形態においては、このラミネート材L1からなるシート材が、プレス成形等の熱成形により所定の形状に成形されてケーシング本体10が形成されるものである。
【0042】
ケーシング本体10の凹部11を覆うように配置されるカバー15は、平面視においてケーシング本体10とほぼ同じ形状および同じ大きさに形成されている。
【0043】
本実施形態において、カバー15は、上記ケーシング本体10を構成しているラミネート材L1と、同じ構成のラミネート材L1によって構成されている。
【0044】
後に詳述するが、このカバー15がケーシング本体10の凹部開口を閉塞するように配置されて、カバー15の外周縁部がケーシング本体10のフランジ部12に接合一体化されることにより、ケーシング1が形成されている。
【0045】
またケーシング1の一端側における底壁(ケーシング本体10の凹部底壁)と、他端側における上壁(カバー15)とには出入口16,16がそれぞれ形成されている。
【0046】
図3~
図5に示すようにケーシング1の中空部(凹部11)内に収容されるインナーフィン21は、柔軟性~可撓性を有するラミネートシートであるラミネート材L2によって構成されている。ラミネート材L2は、
図5に示すように金属箔製の金属層61と、その金属層61の一面に接着剤を介して積層された樹脂フィルム~樹脂シート製の樹脂層62と、金属層61の他面に接着剤を介して積層された樹脂フィルム~樹脂シート製の樹脂層63とを備えている。
【0047】
このラミネート材L2の金属層61としては、上記と同様、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、メッキ加工した銅箔、ニッケル箔と銅箔とがクラッドされたニッケル・銅クラッドメタルの中から選択されたものを好適に用いることができる。
【0048】
金属層61の厚みも上記と同様、8μm~300μmのものを用いるのが良く、より好ましくは100μm以下のものを用いるのが良い。
【0049】
また両側の樹脂層62,63においても上記と同様、フィルム~シートによって構成されている。具体的に樹脂層62,63としては、ポリオレフィン(無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン)、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱融着樹脂製のフィルム~シートを好適に用いることができる。この樹脂層62,63の厚みも上記と同様、20μm~1000μmのものを好適に用いることができる。
【0050】
なお本実施形態において、インナーフィン21を構成するラミネート材L2の両側の樹脂層62,63は、ケーシング1を構成するラミネート材L1の内側の樹脂層53と同種の熱融着樹脂(同一の熱融着樹脂も含む、以下同じ)によって構成されている。
【0051】
このラミネート材L2からなるシート材に凹凸加工が施されて凹凸が形成されることによってインナーフィン21が形成されるものである。
【0052】
凹凸加工としては、ラミネート材L2に立体的に凹凸を付与できる加工であれば、どのような加工であっても良いが、コルゲート加工、プリーツ加工、エンボス加工等、ラミネート材L2に立体的かつ連続的に凹凸を付与できる加工方法を工程に用いることができる。
【0053】
コルゲート加工とは、例えば外周に軸方向の溝が周方向に等間隔おきに形成された一対のロール間に、ラミネート材L2等のワークを通すことで、1方向に波形の凹凸立体形状を形成する加工方法である。
【0054】
プリーツ加工とは、ラミネート材L2等のワークを表裏に交互に折り畳んでヒダ(プリーツ)を形成する加工方法である。
【0055】
エンボス加工とは、外周面に凹凸パターンが形成されたエンボスロールを用いて、ラミネート材L2等のワークに凹凸を付与する加工方法等である。なお本実施形態において、エンボスロールに形成される凹凸パターンは特に限定されるものではなく、ダイヤ柄、絹目状、布目状、梨地状、水玉状、すだれ状、筋柄状等の凹凸パターンを採用することができる。
【0056】
本実施形態においては、ラミネート材L2からなるシート材に、コルゲート加工を行って波状の凹凸形状を形成して、インナーフィン21を製作するものである。
【0057】
このインナーフィン21が、ケーシング本体10の凹部11における両端部を除いた中間部に収容される。収容されたインナーフィン21は、その山筋方向および谷筋方向(
図5の紙面に向かって垂直な方向)がケーシング本体10の長さ方向(
図1~
図3の紙面に向かって左右方向)に一致するように配置されている。これにより、インナーフィン21の山筋部および谷筋部に沿って形成されるトンネル部および溝部が、ケーシング本体10の長さ方向に沿うように配置され、そのトンネル部および溝部を通って熱交換媒体がケーシング1の長さ方向一端側から他端側に向けてスムーズに流通できるように構成されている。
【0058】
図3~
図5に示すようにケーシング1の両端部内に配置される一対のジョイント部材3a,3bは、硬質合成樹脂の成形品によって構成されている。
【0059】
ジョイント部材3a,3bは、一側面に開口部32を有する箱状の取付箱部31,31と、取付箱部31,31の上壁または下壁に設けられたパイプ部33a,33bとを備えている。パイプ部33a,33bは取付箱部31,31内に連通しており、パイプ部33a,33bの内部と取付箱部31,31の内部との間で熱交換媒体が往来できるように構成されている。
【0060】
一方のジョイント部材3aは、雄型ジョイント部材として構成されるとともに、他方のジョイント部材3bは、雌型ジョイント部材として構成されており、雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aの外径と、雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bの内径とがほぼ等しく形成されている。従って雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aを、雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bに適合状態に嵌合して連結できるように構成されている。
【0061】
本実施形態において、ジョイント部材3a,3bの素材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱融着樹脂を好適に用いることができ、特に高密度ポリエチレン(HDPE)等の熱融着樹脂を用いるのが好ましい。なお本実施形態において、ジョイント部材3a,3bは、その少なくとも外表面(外皮部)がケーシング1を構成するラミネート材L1の内側の樹脂層53と同種または同一の熱融着性樹脂によって構成されている。
【0062】
このジョイント部材3a,3bの取付箱部31,31がケーシング本体10の凹部11におけるインナーフィン21の両側に配置される。この場合、雌型ジョイント部材3b(
図3の右側のジョイント部材3b)は、パイプ部33bを下向きにして、そのパイプ部33bをケーシング本体10の底壁の出入口16に挿通配置するとともに、取付箱部31の開口部32を内側に向けて、つまりインナーフィン21側に対向させて配置する。また雄型ジョイント部材3a(
図3の左側のジョイント部材3a)は、パイプ部33aを上向きに配置するとともに、取付箱部31の開口部32を内側に向けて、つまりインナーフィン21側に対向させて配置する。なお本発明においては、雄型ジョイント部材3aと雌型ジョイント部材3bとは入れ替えて配置するようにしても良い。
【0063】
こうしてケーシング本体10内にインナーフィン21およびジョイント部材3a,3bを収容して、カバー15をケーシング本体10にその開口部を閉塞するように配置する。この場合、カバー15の出入口16内に、雄型ジョイント部材3a(
図3の左側のジョイント部材3a)の上向きのパイプ部33aを挿通配置する。
【0064】
こうして仮組された伝熱パネルPを加圧加熱することによって、接触し合う部材同士を熱融着して接合一体化する。
【0065】
すなわちケーシング本体10のフランジ部12の内側樹脂層53と、カバー15の外周縁部の内側樹脂層53とを熱接着(熱融着)により接合一体化して、液密~気密状態に封止する。ここでケーシング本体10の内側樹脂層53と、カバー15の内側樹脂層53とは同種の熱融着樹脂によって構成されているため、両者を十分な接着強度で確実に固着することができる。
【0066】
さらにインナーフィン21の山頂部および谷底部の樹脂層62,63を、ケーシング本体10の底壁およびカバー15の内側樹脂層53とを熱接着(熱融着)により接合一体化する。ここでインナーフィン21の樹脂層62,63と、ケーシング本体10およびカバー15の内側樹脂層53とは同種の熱融着樹脂によって構成されているため、両者を十分な接着強度で確実に固着することができる。
【0067】
さらにジョイント部材3a,3bの取付箱部31,31の外周面と、ケーシング本体10およびカバー15の内側樹脂層53,53とを熱接着(熱融着)により接合一体化する。ここで、ジョイント部材3a,3bと、ケーシング本体10およびカバー15の内側樹脂層53とは同種の樹脂によって構成されているため、両者を十分な接着強度で確実に固着することができる。従って、ジョイント部材3a,3bのパイプ部33a,33bの周辺部が、ケーシング本体10およびカバー15の出入口16の周縁部に液密~気密状態に接着され、出入口16の部分からの液漏れ等の不具合を確実に防止することができる。なお本実施形態においては、ケーシング本体10およびカバー15の内側樹脂層53,53におけるジョイント部材3a,3bの取付箱部31a,31bに対応する部分が、ケーシング1におけるジョイント部材3a,3bの取付箱部として構成されている。
【0068】
こうして組み付けられた伝熱パネルPは、ケーシング1における一方側端部の下壁から雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bが下方に突出するように配置されるとともに、ケーシング1における他方側端部の上壁から雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aが上方に突出するように配置されている。
【0069】
一方、
図7に示すように、アウターフィン22は、上記インナーフィン21を構成しているラミネート材L2と、同じ構成のラミネート材L2によって構成されており、金属層61と、その金属層61の両面に接着剤を介して積層された樹脂層62,63とを備えている。
【0070】
このアウターフィン22においても、インナーフィン21と同様に、コルゲート加工により波状の凹凸形状が連続して形成されている。なお、アウターフィン22においてもインナーフィン21と同様、コルゲート加工以外に、プリーツ加工やエンボス加工等の凹凸加工を用いることができる。
【0071】
ここで本実施形態において、アウターフィン22を構成するラミネート材L2の両側の樹脂層62,63は、ケーシング1を構成するラミネート材L1の外側の樹脂層52と同種の熱融着性樹脂によって構成されている。
【0072】
図1および
図2に示すようにこの構成のアウターフィン22と、上記伝熱パネルPとが交互に積層されて一体化されることによって、本実施形態のラジエータとしての熱交換器が形成されるものである。
【0073】
ここで本実施形態の熱交換器において隣合う伝熱パネルP,Pのうち、上側の伝熱パネルPにおける雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bが下方に突出した側の端部と、下側の伝熱パネルPにおける雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aが上方に突出した側の端部とを一致させるように配置し、隣合う伝熱パネルP,Pにおいて対応し合うパイプ部33a,33b同士を雄雌結合で連結する。すなわち、雄型ジョイント部材3aにおける上向きのパイプ部33aを、雌型ジョイント部材3bにおける下向きのパイプ部33b内に差し込んで熱接着(熱融着)等によって接合一体化する。
【0074】
なお本実施形態においては、連結し合うパイプ部33a,33bの管径を、必ずしも異ならせる必要はなく、同じ管径に設定しても良い。例えば同じ管径のパイプ部同士を連結する場合には、ジョイントパイプ(インサートパイプや外嵌パイプ)を用いて連結するようにすれば良い。
【0075】
また本実施形態の熱交換器では、伝熱パネルPのケーシング1と、アウターフィン22との接触部(山頂部および谷底部)も熱接着(熱融着)によって接合一体化している。ここでケーシング1とアウターフィン22との接触部である、ケーシング1の外側樹脂層52と、アウターフィン22の樹脂層62,63とは、同種の熱融着樹脂によって構成されているため、両者を十分な接着強度で確実に固着することができる。
【0076】
本実施形態においてアウターフィン22は、その山筋方向および谷筋方向(
図7の紙面に向かって垂直な方向)が熱交換器の前後方向(
図1の紙面に向かって垂直な方向)に一致するように配置されている。これによりアウターフィン22の山筋部および谷筋部に沿って形成されるトンネル部および溝部が、熱交換器の前後方向に沿うように配置され、そのトンネル部および溝部を通って、エアーが熱交換器の前面側から後面側に向けてスムーズに通過できるように構成されている。
【0077】
以上のように構成された本実施形態の熱交換器は例えば自動車用のラジエータとして用いられる。すなわち熱交換媒体(冷媒)としての冷却水(ラジエータ液、不凍液等)を流入するための流入管が熱交換器の上端において上向きに突出するように配置された雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aに連結されるとともに、冷却水を流出させるための流出管が熱交換器の下端において下向きに突出するように配置された雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bに連結される。
【0078】
そして流入管を介して最上端(1番目)の伝熱パネルPの端部(
図1の左側端部)に流入した冷却水は、その伝熱パネルPを通過して反対側の端部(
図1の右側端部)まで移動してパイプ部33a,33bを通って2番目の伝熱パネルPに流入する。2番目の伝熱パネルPに流入した冷却水はその2番目の伝熱パネルPを通過してパイプ部33a,33bを通って3番目の伝熱パネルPに流入する。こうして冷却水が複数の伝熱パネルPを順次蛇行するように通過する一方、その冷却水と、アウターフィン22を介して熱交換器を前後方向に通過するエアーとが熱交換することによって、冷却水が冷却されて最下端の伝熱パネルPの端部からパイプ部33bを通って流出管に流入する。流出管に供給された冷却水は、冷却対象部材としてのエンジン部等のジャケットに導入されて、エンジン部を冷却するとともに、冷却水自体は加熱された後、流入管を介して上記と同様に熱交換器の最上端の伝熱パネルPに流入する。このようにエンジン部の熱を熱交換器を介して放出するようにしている。
【0079】
以上の構成の本実施形態の熱交換器によれば、伝熱パネルPのケーシング1およびインナーフィン21や、アウターフィン22を樹脂層52,53,62,63で被覆されたラミネート材L1,L2によって構成しているため、従来のように金属製の熱交換器と比較して、錆等の発生を有効に防止でき、長期間安定した状態で使用でき、耐久性を向上させることができる。
【0080】
また本実施形態の熱交換器によれば、ケーシング1、フィン21,22等の主要部品をラミネート材L1,L2によって形成し、それらの部品を熱融着するだけで簡単に組み付けることができるため、効率良く簡単に製造できてコストを大幅に削減することができる。
【0081】
また本実施形態の熱交換器によれば、ケーシング1およびフィン21,22間を樹脂同士で接着するようにしているため、十分な接着強度を確保でき剥がれ難くなり、一層耐久性を向上させることができる。さらに熱融着によって、樹脂同士を接合一体化しているため、より一層接着強度を向上できて、より一層耐久性を向上させることができる。
【0082】
その上さらに、ケーシング1の出入口16の周縁部とジョイント部材3a,3bとを熱融着によって接合一体化しているため、ケーシング1の出入口周縁部をジョイント部材3a,3bに十分に密着した封止状態に取り付けることができ、ケーシング1の出入口部分からの液漏れ等の不具合を確実に防止でき、品質および装置の信頼性をより向上させることができる。
【0083】
なお上記実施形態においては、ケーシング1を製作するにあたり、立体成形されたケーシング本体10と、シート状のカバー15とを貼り合わせるようにしているが、本発明においては、ケーシング1の構成部材を必ずしも立体成形する必要はない。例えば2枚のシート状のラミネート材を互いの外周縁部を熱融着等によって接着することによって、ラミネート材製の袋状のケーシングを製作するようにしても良い。
【0084】
さらに上記実施形態においては、ケーシング1を2枚のラミネート材によって製作する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、1枚のラミネート材を2つ折りに折り重ねて、重なり合ったラミネート材のうち、折り返し部を除く外周縁部を熱融着等によって接着することにより、袋状のケーシングを製作するようにしても良い。さらに言うまでもなく、本発明においては3枚以上のラミネート材を用いてケーシングを製作するようにしても良い。
【0085】
また上記実施形態においては、ラミネート材L1,L2として3層または4層構造のものを用いているが、それだけに限られず、本発明においては、5層以上の構造のラミネート材を使用するようにしても良い。要はラミネート材のうち、最外側の層が樹脂層によって構成されてさえいれば良い。
【0086】
また上記実施形態においては、本発明の熱交換器を自動車用ラジエータに適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、ラジエータ以外の熱交換器にも適用することができる。例えば自動車用電池パックの冷却/加熱用の熱交換器、自動車の電動機、産業機械、家電、情報端末等の電力駆動機器の主電力を制御するための電力用半導体素子(パワーモジュール)の冷却用の熱交換器、パーソナルコンピュータのCPU(中央演算処理装置)の冷却用の熱交換器、家庭用または業務用蓄電池の冷却/加熱用の熱交換器、パーソナルコンピュータの電池パック(電池モジュール)の冷却用の熱交換器、液晶テレビ、有機ELテレビ、プラズマテレビのディスプレイの冷却用の熱交換器や、床暖房設備、寒冷地域での屋根、通路、道路等の融雪設備の熱交換器としても用いることもできる。
【0087】
<実施例>
図1~
図3に示す熱交換器に準拠して、以下のように実施例の熱交換器(ラジエータ)を製作した。
【0088】
1.伝熱パネルPのケーシング1用のラミネート材L1(LLDPE40/接着剤/ON25/接着剤/AL100/接着剤/ LLDPE40)の作製
(1)JIS H4160のA2021のアルミニウム箔(厚さ100μm)にポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、150℃で乾燥するクロメート処理を行い、下地層(金属層)51の両面に化成皮膜を形成する。クロム付着量は、片面当たり10g/m2である。
【0089】
(2)アルミニウム箔の一方の面(外面)に、ウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して延伸樹脂層55として6ナイロンを25μmの厚さで積層する。
【0090】
(3)6ナイロン(延伸樹脂層55)上に、ウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して樹脂層52としてLLDPE(無延伸ポリエチレン)を40μmの厚さで積層する。
【0091】
(4)アルミニウム箔の他方の面(内面)に、ウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して樹脂層53としてLLDPEを40μmの厚さで積層する。
【0092】
2.フィン21,22用のラミネート材L2(LLDPE40/接着剤/AL100/接着剤/ LLDPE40)の作製
(1)JIS H4160のA2021のアルミニウム箔(厚さ100μm)にポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、150℃で乾燥するクロメート処理を行い、下地層(金属層)61の両面に化成皮膜を形成する。クロム付着量は、片面当たり10g/m2である。
【0093】
(2)アルミニウム箔の一方の面に、ウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して樹脂層62としてLLDPE(無延伸ポリエチレン)を40μmの厚さで積層する。
【0094】
(4)アルミニウム箔の他方の面に、ウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して樹脂層63としてLLDPEを40μmの厚さで積層する。
【0095】
3.ジョイント部材3a,3b(HDPE)の作製
縦100mm×横12mm×高さ3mmの取付箱部31に、パイプ部33a,33bが一体に成形された雄型および雌型の2種類のHDPE(高密度ポリエチレン)製のジョイント部材3a,3bを準備した。雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aは、内径φ10mm、外径φ12mm、長さが3mmであり、雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bは、内径φ12.2mm、外径φ14.2mm、長さ3mmであり、雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aを雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bに嵌め込んで連結できるように構成されている。
【0096】
4.伝熱パネルPの構成部品の準備
(1)ケーシング本体10の作製
ケーシング1用のラミネート材L1を縦230mm×横160mmにカットして得られたシート材を、Al箔(金属層51)に対してナイロン(延伸樹脂層55)側が凸側(外側)となるように、縦169mm×横104mmでコーナーR4の金型を用いて深さ3mmでエンボス成形して凹部11を形成した。さらに凹部11の開口周縁部に形成されるフランジ部12を5mm幅となるように周囲をカットし、さらに凹部11の底壁における縦方向(長さ方向)の一端部に、雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bを挿通するための出入口16を形成して、ケーシング本体10を作製した。
【0097】
(2)カバー15の作製
ケーシング1用のラミネート材L1を縦180mm×横115mmにカットして得られたシート材に、その縦方向(長さ方向)の他端部(ケーシング本体10の出入口16とは反対側に相当する端部)に、雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aを挿通するための出入口16を形成して、カバー15を作製した。
【0098】
(3)インナーフィン21の作製
フィン用のラミネート材L2を縦145mm×横210mmにカットして得られたシート材を、横方向に3.5mm幅(ピッチ)で交互に折り返すように加工することによって、各山の高さが3mmのつづら折り状のインナーフィン21を作製した。
【0099】
(4)アウターフィン22の作製
フィン用のラミネート材L2を縦145mm×横210mmにカットして得られたシート材を、縦方向(長さ方向)に3.5mm幅(ピッチ)で交互に折り返すように加工することによって、各山の高さが3mmのつづら折り状のアウターフィン22を作製した。
【0100】
5.部品の組み立ておよび接合
(1)ケーシング本体10の凹部11における縦方向(長さ方向)の一端部に、雌型ジョイント部材3bを収容すると同時に、そのパイプ部33bを凹部底壁に設けられた出入口16に挿通して下向きに配置する。さらにケーシング本体10の凹部11における縦方向の他端部に、雄型ジョイント3aをそのパイプ部33aを上向きにした状態に収容した。さらにケーシング本体1の凹部11における両ジョイント部材3a,3b間にインナーフィン21を収容した。なお、ジョイント部材3a,3bの各開口部32,32は、インナーフィン21の端部に対向するように内側に向けて配置した。
【0101】
(2)ケーシング本体10の凹部11を上から覆うようにカバー15を、その内側(延伸樹脂層55としてのナイロンがない側)を下にしてケーシング本体1のフランジ部12上に配置した。このとき、カバー15の出入口16に、ケーシング本体10内の雄型ジョイント部材3aの上向きパイプ部33aを挿通させてカバー15の上方に突出するように配置した。こうして非接合状態の伝熱パネル仮組品を作製し、その伝熱パネル仮組品をチャンバー式の減圧機内で、200mmHgに減圧した状態で、ケーシング本体10のフランジ部12を200℃に設定した熱板で5秒間シールして、各部品同士を熱接着(熱融着)することにより、伝熱パネルPを作製した。なお減圧下で加熱することで、ケーシング本体10とカバー15との間、ケーシング本体10およびカバー15と、それらと接触しているインナーフィン21およびジョイント部材3a,3bとの間の熱接着を強く行うことができる。
【0102】
(3)伝熱パネルPとアウターフィン22とを交互に複数重ね合わせる。この際、上下に隣合う伝熱パネルP,Pのうち、下側の伝熱パネルPの端部に上向き突出状に配置された雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aと、上側の伝熱パネルPの端部に下向き突出状に配置された雌型ジョイント部材3bのパイプ部33bと対向させながら、雄型ジョイント部材3aのパイプ部33aを雌型ジョイントパイプ3bのパイプ部33bに嵌め込んでいく。さらにアウターフィン22が位置ずれしないようにPETフィルムを周囲に巻き付けて、非接合状態の熱交換器仮組品を作製した。この熱交換器仮組品を160℃のオーブンに1分間静置し、アウターフィン22と伝熱パネルPとの間、ジョイント部材3a,3bにおけるパイプ部33aとパイプ部33bとの間を熱接着(熱融着)した。これにより実施例の熱交換器を作製した。
【0103】
6.動作確認
上記実施例の熱交換器において、最上段の伝熱パネルPに設けられた雄型ジョイント部材3aの上向き突出状のパイプ部33aから冷却水を見立てた水を注入した。注入された水は、複数の伝熱パネルPに上から順に順次供給されていき、最下段の伝熱パネルPに設けられた雌型ジョイント部材3bの下向き突出状のパイプ部33bから流出された。この際、水は各伝熱パネルPを均等に偏りなくバランス良く流通しており、熱交換器として十分な性能を有しているのが判明した。
【0104】
また目視によって外観を詳細に検査したところ、水漏れ等の不具合は一切認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
この発明の熱交換器は、自動車用のラジエータ等として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0106】
1:ケーシング
21:インナーフィン
22:アウターフィン
3a,3b:ジョイント部材
51:金属層
52:樹脂層
53:樹脂層
61:金属層
62:樹脂層
63:樹脂層
L1:ケーシング用ラミネート材
L2:フィン用ラミネート材
P:伝熱パネル(伝熱部材)