(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】アクチュエータ、およびアクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20221028BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
H02K33/16 A
B06B1/04 S
(21)【出願番号】P 2018227070
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】武井 宏光
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207200547(CN,U)
【文献】特開2009-254216(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180945(WO,A1)
【文献】特開2001-121082(JP,A)
【文献】特開2004-351345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
可動体と、
前記支持体および前記可動体のうちの一方側部材に設けられたコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、
前記一方側部材の側面に沿うように前記一方側部材に保持され、前記コイルを構成するコイル線の端部が接続されたランドを有する配線基板と、
を備え、
前記一方側部材には、前記端部を前記側面に引き出す引き出し部と、前記側面から突出した係合凸部と、が形成され、
前記配線基板には、前記係合凸部が嵌った係合穴が形成されており、
前記係合凸部と前記係合穴の内縁との間には、前記配線基板が前記側面に保持された第1位置より前記ランドと前記引き出し部との位置が離間した第2位置に向けて前記配線基板を前記側面に沿って直線移動可能にして、前記配線基板が第1位置にあるときに前記コイルと前記端部との間に前記コイル線の弛みを付与する遊びが設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記係合凸部は、前記側面から突出した突出部と、前記突出部の先端部で前記突出部から前記突出部の突出方向に対して直交する方向に張り出した鍔部と、を有し、
前記配線基板が前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置にあるとき、前記鍔部が前記係合穴を通過可能であり、
前記配線基板は、前記第1位置および前記第2位置において前記突出部が前記係合穴に嵌った状態で前記鍔部の一部が前記配線基板に前記側面とは反対側から重なることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載のアクチュエータにおいて、
前記係合穴および前記係合凸部を前記側面に対して直交する方向からみたとき、
前記係合穴は、第1穴部と、前記第1穴部より小さな第2穴部とが繋がった形状を有し、
前記突出部は、前記配線基板の前記第1位置と前記第2位置との可動方向に対して直交する方向の幅が、前記第1穴部および前記第2穴部の幅より狭く、
前記鍔部は、前記第1穴部と略同一サイズの第3部分と、前記第2穴部と略同一サイズの第4部分とが繋がった形状を有し、
前記配線基板の前記第2位置に向けての可動範囲、および前記配線基板の前記第1位置に向けての可動範囲は、前記突出部の前記係合穴の内周面への当接によって制限されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載のアクチュエータにおいて、
前記係合穴および前記係合凸部を前記側面に対して直交する方向からみたとき、
前記第1穴部、前記第2穴部、および前記第4部分は各々、前記可動方向に対して直交する方向に位置する両端部が湾曲した形状を有し、
前記第3部分の前記可動方向に対して直交する方向に位置する両端部には、前記第3部分の側で前記第1穴部と略同一形状に湾曲した湾曲部分と、前記湾曲部分から前記第4部分とは反対側に直線的に延在した直線部分と、を備えていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のアクチュエータにおいて、
前記配線基板が前記第2位置に移動した際に前記突出部と前記係合穴の内周面とが当接
する部分は直線部分であり、
前記配線基板が前記第1位置に移動した際に前記突出部と前記係合穴の内周面とが当接する部分は湾曲部分であることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から5まで何れか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記係合穴および前記係合凸部は、前記配線基板の前記第1位置と前記第2位置との可動方向に対して直交する方向に沿って複数設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記配線基板は、前記係合凸部を塑性変形させることにより前記側面に保持されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記配線基板と前記側面とは、接着剤によって固定されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
請求項8に記載のアクチュエータにおいて、
前記配線基板と前記側面との間には、一方方向から他方方向に間隔が広がった隙間が設けられ、
前記隙間に前記接着剤が充填されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のアクチュエータにおいて、
前記コイルおよび前記配線基板は、前記支持体側に設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項11】
請求項10に記載のアクチュエータにおいて、
前記支持体は、前記コイルおよび前記配線基板を保持するホルダを備えていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載のアクチュエータの製造方法において、
前記配線基板が前記第2位置にあるときに前記端部と前記ランドを接続した後、前記配線基板を前記第1位置に移動させて、前記コイルと前記端部との間に前記コイル線の弛みを付与することを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータ、およびアクチュエータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報を振動によって報知するデバイスとして、支持体と、可動体と、支持体および可動体に接続された接続体と、可動体を支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路とを有するアクチュエータが提案されており、磁気駆動回路は、支持体に保持されたコイルと、可動体に保持された磁石とを備えている。このため、支持体には配線基板が保持されており、コイルを構成するコイル線の端部は、配線基板に接続されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術において、配線基板は支持体から外側に突出しているため、アクチュエータを各種機器等に搭載する際、無駄なスペースが発生しやすい。また、コイルを構成するコイル線に振動が伝わると、コイル線が断線するおそれがあるが、かかる断線に対する対策については特許文献1で開示されていない。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、コイル線が接続された配線基板の突出を回避するとともに、コイル線の断線を抑制することのできるアクチュエータ、およびアクチュエータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体と、可動体と、前記支持体および前記可動体のうちの一方側部材に設けられたコイルを備え、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、前記一方側部材の側面に沿うように前記一方側部材に保持され、前記コイルを構成するコイル線の端部が接続されたランドを有する配線基板と、を備え、前記一方側部材には、前記端部を前記側面に引き出す引き出し部と、前記側面から突出した係合凸部と、が形成され、前記配線基板には、前記係合凸部が嵌った係合穴が形成されており、前記係合凸部と前記係合穴の内縁との間には、前記配線基板が前記側面に保持された第1位置より前記ランドと前記引き出し部との位置が離間した第2位置に向けて前記配線基板を前記側面に沿って直線移動可能にして、前記配線基板が第1位置にあるときに前記コイルと前記端部との間に前記コイル線の弛みを付与する遊びが設けられていることを特徴とする。
【0007】
かかるアクチュエータの製造方法においては、前記配線基板が前記第2位置にあるときに前記端部と前記ランドを接続した後、前記配線基板を前記第1位置に移動させて、前記コイルと前記端部との間に前記コイル線の弛みを付与することを特徴とする。
本発明において、コイル線が接続された配線基板は、一方側部材の側面に沿うように設けられており、配線基板が突出していない。このため、アクチュエータを各種機器等に搭載する際、無駄なスペースが発生しにくい。また、配線基板は、係合穴に係合凸部が嵌った状態でも、第1位置と第2位置とに移動可能であるため、配線基板が第2位置にあるときに端部とランドを接続した後、配線基板を第1位置に移動させれば、コイルと端部との
間にコイル線の弛みを付与することができる。従って、コイル線の断線を抑制することができる。また、上記の操作を行う際、係合穴に係合凸部が嵌った状態にあるため、配線基板の可動範囲が制限されているとともに、係合穴と係合凸部とがガイドとして機能する。従って、コイル線とランドとの接続を行う第2位置からコイル線の弛みを付与する第1位置への配線基板の移動に容易に行うことができる。
【0008】
本発明において、前記係合凸部は、前記側面から突出した突出部と、前記突出部の先端部で前記突出部から前記突出部の突出方向に対して直交する方向に張り出した鍔部と、を有し、前記配線基板が前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置にあるとき、前記鍔部が前記係合穴を通過可能であり、前記配線基板は、前記第1位置において、前記突出部が前記係合穴に嵌った状態で前記鍔部の一部が前記配線基板に前記側面とは反対側から重なった状態で前記側面に保持されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第3位置で係合凸部を係合穴に嵌めた以降、係合凸部の鍔部が係合穴から係合凸部が抜けることを抑制するため、コイル線とランドとの接続を行う第2位置からコイル線の弛みを付与する第1位置への配線基板の移動等に容易に行うことができる。
【0009】
本発明において、前記係合穴および前記係合凸部を前記側面に対して直交する方向からみたとき、前記係合穴は、第1穴部と、前記第1穴部より小さな第2穴部とが繋がった形状を有し、前記突出部は、前記配線基板の前記第1位置と前記第2位置との可動方向に対して直交する方向の幅が、前記第1穴部および前記第2穴部の幅より狭く、前記鍔部は、前記第1穴部と略同一サイズの第3部分と、前記第2穴部と略同一サイズの第4部分とが繋がった形状を有し、前記配線基板の前記第2位置に向けての可動範囲、および前記配線基板の前記第1位置に向けての可動範囲は、前記突出部の前記係合穴の内周面への当接によって制限される態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記係合穴および前記係合凸部を前記側面に対して直交する方向からみたとき、前記第1穴部、前記第2穴部、および前記第4部分は各々、前記可動方向に対して直交する方向に位置する両端部が湾曲した形状を有し、前記第3部分の前記可動方向に対して直交する方向に位置する両端部には、前記第3部分の側で前記第1穴部と略同一形状に湾曲した湾曲部分と、前記湾曲部分から前記第4部分とは反対側に直線的に延在した直線部分と、を備え、前記配線基板が前記第1位置にあるときに、前記直線部分の少なくとも一部が前記配線基板に前記側面とは反対側から重なる態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記配線基板が前記第2位置に移動した際に前記突出部と前記係合穴の内周面とが当接する部分は直線部分であり、前記配線基板が前記第1位置に移動した際に前記突出部と前記係合穴の内周面とが当接する部分は湾曲部分である態様を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記係合穴および前記係合凸部は、前記配線基板の前記第1位置と前記第2位置との可動方向に対して直交する方向に沿って複数設けられている態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記配線基板は、前記係合凸部を塑性変形させることにより前記側面に保持されている態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記配線基板と前記側面とは、接着剤によって固定されている態様を採用することができる。
【0015】
本発明において、前記配線基板と前記側面との間には、一方方向から他方方向に間隔が
広がった隙間が設けられ、前記隙間に前記接着剤が充填されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、配線基板と側面との間に接着剤を充填しやすいので、配線基板と側面とを接着剤によって容易に固定することができる。
【0016】
本発明において、前記コイルおよび前記配線基板は、前記支持体側に設けられている態様を採用することができる。例えば、前記支持体は、前記コイルおよび前記配線基板を保持するホルダを備えている態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、コイル線が接続された配線基板は、一方側部材の側面に沿うように設けられており、配線基板が突出していない。このため、アクチュエータを各種機器等に搭載する際、無駄なスペースが発生しにくい。また、配線基板は、係合穴に係合凸部が嵌った状態でも、第1位置と第2位置とに移動可能であるため、配線基板が第2位置にあるときに端部とランドを接続した後、配線基板を第1位置に移動させれば、コイルと端部との間にコイル線の弛みを付与することができる。従って、コイル線の断線を抑制することができる。また、上記の操作を行う際、係合穴に係合凸部が嵌った状態にあるため、配線基板の可動範囲が制限されているとともに、係合穴と係合凸部とがガイドとして機能する。従って、コイル線とランドとの接続を行う第1位置からコイル線の弛みを付与する第2位置への配線基板の移動に容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図。
【
図3】
図1に示すアクチュエータを分解して第1方向の一方側からみたときの分解斜視図。
【
図4】
図1に示すアクチュエータを分解して第1方向の他方側からみたときの分解斜視図。
【
図12】
図9に示す係合凸部を第3位置で係合穴に嵌めた状態を示す説明図。
【
図13】
図9に示す配線基板を第2位置に移動させたときの係合凸部と係合穴との位置関係を示す説明図。
【
図14】
図11に示す配線基板が第1位置でホルダに保持された状態の説明図。
【
図15】
図5等に示す配線基板とホルダの第3壁部との間の隙間を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに交差する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとして説明する。また、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yは、互いに直交する方向である。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付して説明する。
【0020】
また、以下に説明するアクチュエータ1の磁気駆動回路6では、コイル7が支持体2(一方側部材)の側に設けられ、磁石8が可動体3(他方側部材)の側に設けられた態様、
および磁石8が支持体2(他方側部材)の側に設けられ、コイル7が可動体3(一方側部材)の側に設けられた態様を採用することができる。以下の説明では、コイル7が支持体2の側に設けられ、磁石8が可動体3の側に設けられた態様を中心に説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すアクチュエータ1のXZ断面図である。
図3は、
図1に示すアクチュエータ1を分解して第1方向Zの一方側Z1からみたときの分解斜視図である。
図4は、
図1に示すアクチュエータ1を分解して第1方向Zの他方側Z2からみたときの分解斜視図である。
【0022】
図1および
図2に示すように、本形態のアクチュエータ1は、全体として、第2方向Xの寸法が第3方向Yの寸法より大きい直方体形状を有している。また、
図2に示すように、アクチュエータ1は、支持体2と、支持体2に移動可能に支持された可動体3と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路6とを有しており、磁気駆動回路6は、可動体3を第2方向Xに振動させる。また、アクチュエータ1には、支持体2および可動体3に接続された接続体90が設けられている。
【0023】
図1、
図2および
図3に示すように、支持体2は、第1方向Zの一方側Z1から他方側Z2に順に重ねられた第1ケース部材16、ホルダ60、および第2ケース部材17を有しており、第1ケース部材16と第2ケース部材17との間に可動体3および磁気駆動回路6が配置される。第1ケース部材16、ホルダ60および第2ケース部材17は各々、四角形の平面形状を有している。第1ケース部材16の角部である第1角部160、ホルダ60の角部である第2角部600、および第2ケース部材17の角部である第3角部170は第1方向Zで重なっている。本形態において、第1ケース部材16、ホルダ60、および第2ケース部材17は各々、樹脂製である。
【0024】
図3および
図4に示すように、第1ケース部材16は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部161と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部162と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部163と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部164とによって囲まれた底板部165を有している。第1方向Zからみたとき、第1壁部161および第2壁部162の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部163および第4壁部164の幅(第3方向Yの寸法)より広い。
【0025】
第1ケース部材16の4つの角付近の各々には、第1方向Zの他方側Z2に向けて開口した位置決め用の穴16cが形成されている。また、第1ケース部材16の一方の対角位置には、タッピングネジからなるネジ18を止めるための有底の穴16eが形成され、他方の対角位置には貫通穴16fが形成されている。
【0026】
底板部165の第1方向Zの他方側Z2の面には、第2方向Xで並ぶ2つの凹部166、167が形成されている。凹部166の第2方向Xの一方側X1の角、および凹部167の第2方向Xの他方側X2の角には貫通穴16aが形成されている。凹部166、167の第3方向Yの両端部には貫通穴16bが形成されている。
【0027】
第3壁部163の外面では、第3方向Yの他方側Y2に凹んだ凹部168が第2方向Xに沿って延在している。第3壁部163では、第1方向Zの他方側Z2に突出した複数の凸板部163aが第2方向Xに沿って所定の間隔に形成されている。第1壁部161および第2壁部162には、第1方向Zの他方側Z2に突出した円柱状の凸部161h、162hが形成されている。また、第1壁部161および第2壁部162には、外縁から第1方向Zの他方側Z2に突出した凸板部161a、162aが第3方向Yの中央に形成されている。
【0028】
第2ケース部材17は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部171と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部172と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部173と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部174とによって囲まれた底板部175を有している。第1方向Zからみたとき、第1壁部171および第2壁部172の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部173および第4壁部174の幅(第3方向Yの寸法)より広い。
【0029】
第2ケース部材16の4つの角付近の各々には、第1方向Zの一方側Z1に向けて開口した位置決め用の凹部17dが形成されている。また、第2ケース部材17の一方の対角位置には、ネジ18を止めるための貫通穴17eが形成され、他方の対角位置には貫通穴17fが形成されている。
【0030】
底板部175の第1方向Zの一方側Z1の面には、第2方向Xで並ぶ2つの凹部176、177が形成されている。また、凹部176、177の縁には、切り欠き17bが形成されている。
【0031】
第3壁部173の外面では、第3方向Yの他方側Y2に凹んだ凹部178が第2方向Xに沿って延在している。第1壁部171および第2壁部172には、第1ケース部材16の凸部161h、162hが嵌る穴171h、172hが形成されている。第1壁部171には、第1方向Zの一方側Z1に突出した凸板部171aが第3方向Yの中央に形成されている。
【0032】
(磁気駆動回路6の構成)
図5は、
図2に示す磁気駆動回路6の分解斜視図である。
図2および
図5に示すように、磁気駆動回路6は、コイル7と、コイル7に対して第1方向Zで対向する磁石8とを有している。コイル7は、第2方向Xで並列するように配置された第1コイル71および第2コイル72からなり、コイル7は、支持体2のうち、ホルダ60に保持されている。
【0033】
(コイル7およびホルダ60の構成)
図6は、
図5に示すホルダ60およびコイル7等の説明図である。
図7は、
図6に示すホルダ60等の説明図である。
図6および
図7に示すように、コイル7は、第3方向Yに長辺701(有効部分)が延在する長円形状の空芯コイルであり、第3方向Yの一方側Y1にコイル線の端部705が引き出されている。
【0034】
ホルダ60は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部61と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部62と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部63と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部64とによって囲まれた底板部65を有している。第1方向Zからみたとき、第1壁部61および第2壁部62の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部63および第4壁部64の幅(第3方向Yの寸法)より広い。
【0035】
ホルダ60の一方の対角位置には、ネジ18を通すための貫通穴60eが形成され、他方の対角位置には貫通穴60fが形成されている。第3壁部63および第4壁部64の第2方向Xの両端には、第1方向Zの一方側Z1に突出した位置決め用の凸部60cと、第1方向Zの他方側Z2に突出した位置決め用の凸部60dとが形成されている。
【0036】
底板部65には、2つのコイル保持穴651、652が第2方向Xで並列するように形成されており、コイル保持穴651、652の各々に第1コイル71および第2コイル72が配置されている。コイル保持穴651、652は貫通穴であり、第3方向Yの両端部には、第1方向Zの他方側Z2でコイル保持穴651、652の一部に重なるように張り
出した受け部641、642が形成されている。従って、第1コイル71および第2コイル72を第1方向Zの一方側Z1からコイル保持穴651、652に装着すると、コイル7の短辺702(無効部分)が受け部641、642によって第1方向Zの他方側Z1で支持された状態となる。この状態で、ホルダ60には第1方向Zの一方側Z1からプレート26が重ねられ、プレート26は、接着剤によって第1コイル71および第2コイル72と固定されるとともに、ホルダ60に固定される。プレート26は、例えば、アルミニウムやステンレス等の非磁性の金属板である。
【0037】
ホルダ60には、コイル保持穴651と第1壁部61との間に第1開口部601が形成され、コイル保持穴652と第2壁部62との間に第2開口部602が形成されている。第1開口部601、および第2開口部602はホルダ60の底板部65を第1方向Zで貫通している。第1開口部601、および第2開口部602の内周面には切り欠き603が形成されている。
【0038】
第1壁部61において、第2角部600の間には、第1方向Zの一方側Z1に凹部611(
図2および
図4参照)が形成され、第1方向Zの他方側Z2に凹部612が形成されている。第2壁部62において、第2角部600の間には、第1方向Zの一方側Z1に凹部621(
図2および
図4参照)が形成され、第1方向Zの他方側Z2に凹部622が形成されている。従って、4つの第2角部600は、第1方向Zの両側に向けて突出した構造になっている。
【0039】
(支持体2の構成)
本形態では、第1ケース部材16、ホルダ60および第2ケース部材17を第1方向Zに重ねた状態で、第2ケース部材17の貫通穴17e、ホルダ60の貫通穴60e、および第2ケース部材17の貫通穴17eにネジ18を止め、第1ケース部材16、ホルダ60および第2ケース部材17を第1方向Zで締結する。ネジ18を止めた際、ネジ18の頭は、第2ケース部材17から第1方向Zの他方側Z2に突出しない。
【0040】
また、第1ケース部材16の第1角部160とホルダ60の第2角部600との間に接着剤が充填され、ホルダ60の第2角部600と第2ケース部材17の第3角部170との間に接着剤が充填される。
【0041】
このようにして、第1ケース部材16、ホルダ60、および第2ケース部材17によって支持体2が形成される。その際、第1ケース部材16の凸部161h、162hは各々、ホルダ60の穴61h、62hを貫通して第2ケース部材17の穴171h、172hに嵌る。また、第1ケース部材16の穴16cにホルダ60の凸部60cが嵌り、第2ケース部材17の凹部17cにホルダ60の凸部60dが嵌る。従って、第1ケース部材16、ホルダ60および第2ケース部材17は互いに位置決めされた状態で連結される。また、第1ケース部材16の凸板部163aがホルダ60の凹部630aに重なる。
【0042】
なお、第2ケース部材17の貫通穴17f、ホルダ60の貫通穴60f、および第2ケース部材17の貫通穴17fは、アクチュエータ1を各種機器に搭載する際、機器のフレームに対して止めるネジ(図示せず)が止められる。
【0043】
(可動体3の構成)
図8は、
図2に示す可動体3の説明図である。
図5および
図8に示すように、
図2等に示す可動体3は、コイル7に対して第1方向Zの一方側Z1で対向する平板部860を備えた第1ヨーク86と、コイル7に対して第1方向Zの他方側Z2で対向する平板部870を備えた第2ヨーク87と、磁石8とを有している。磁石8は、第1ヨーク86の平板部860のコイル7と対向する面、および第2ヨーク87の平板部870のコイル7と対
向する面の少なくとも一方に保持されてコイル7に第1方向Zで対向している。
【0044】
本形態において、可動体3は、磁石8として、第1ヨーク86の平板部860のコイル7と対向する面に接着等の方法で固定された第1磁石81と、第2ヨーク87の平板部870のコイル7と対向する面のうち、第1方向Zに対して交差する方向で第1磁石81と隣り合う第2磁石82とを備えている。本形態において、第1磁石81と第2磁石82は第2方向Xで隣り合っている。従って、第1磁石81は、第1コイル71の長辺701に第1方向Zの一方側Z1で対向し、第2磁石82は、第2コイル72の長辺701に第1方向Zの一方側Z1で対向している。
【0045】
また、可動体3は、磁石8として、第2ヨーク87の平板部870のコイル7と対向する面に接着等の方法で固定された第1磁石83と、第2ヨーク87の平板部870のコイル7と対向する面のうち、第1方向Zに対して交差する方向で第1磁石83と隣り合う第2磁石84とを備えている。本形態において、第1磁石83と第2磁石84は、第2方向Xで隣り合っている。従って、第1磁石83は、第1コイル71の長辺701に第1方向Zの他方側Z2で対向し、第2磁石84は、第2コイル72の長辺701に第1方向Zの他方側Z2で対向している。
【0046】
本形態において、第1磁石81、83、および第2磁石82、84は各々、厚さ方向(第1方向Z)および幅方向(X方向)で分極着磁されている。第1磁石81と第2磁石82とは、隣り合う方向(第2方向X)で同一方向に着磁され、第1磁石83と第2磁石84とは、隣り合う方向(第2方向X)で同一方向に着磁されている。従って、第1磁石81の第2磁石82側の磁極と第2磁石82の第1磁石81側の磁極とが異なっており、第1磁石83の第2磁石84側の磁極と第2磁石84の第1磁石83側の磁極とが異なっている。
【0047】
また、第1磁石81と第1磁石83とは、隣り合う方向(第2方向X)で逆方向に着磁され、第2磁石82と第2磁石84とは、隣り合う方向(第2方向X)で逆方向に着磁されている。従って、第1磁石81と第1磁石83とでは、第1コイル71に対向する面の磁極が異なっており、第2磁石82と第2磁石84とでは、第2コイル72に対向する面の磁極が異なっている。
【0048】
第1ヨーク86は、平板部860の第2方向の一方側X1の端部から第1方向Zの他方側Z2に延在して第2ヨーク87と連結された第1連結板部861と、平板部860の第2方向の他方側X2の端部から第1方向Zの他方側Z2に延在して第2ヨーク87と連結された第2連結板部862とを備えている。第1連結板部861および第2連結板部862は平板部860より第3方向Yの寸法が小さく、第1連結板部861および第2連結板部862の両側には切り欠き869が形成されている。
図3および
図4に示すように、第1連結板部861は、コイル7に対して第2方向Xの一方側X1でホルダ60の第1開口部601を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在し、第2連結板部862は、コイル7に対して第2方向Xの他方側Z2でホルダ60の第2開口部602を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在している。
【0049】
本形態では、第1連結板部861および第2連結板部862は、溶接により第2ヨーク87の端部と連結されている。より具体的には、第1連結板部861の第1方向Zの他方側Z2の端部861aは、第2ヨーク87の平板部870の第1側面871に重なって第1連結板部861と第2ヨーク87の第1側面871とが溶接されている。同様に、第2連結板部862の第1方向Zの他方側Z2の端部862aは、第2ヨーク87の平板部870の第2側面872に重なって第2連結板部862と第2ヨーク87の第2側面872とが溶接されている。
【0050】
第1連結板部861の端部861a、および第1側面871のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成され、第2連結板部862の端部862a、および第2側面872のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成されている。本形態では、平板部870に形成された凸部873が第1連結板部861の端部861aに形成された凹部863に嵌って溶接され、平板部870に形成された凸部874が第2連結板部862の端部862aに形成された凹部864に嵌って溶接されている。
【0051】
本形態では、第1ヨーク86の平板部860、および第2ヨーク87の平板部870の第3方向Yの端部には、磁石8を搭載する際に第1ヨーク86および第2ヨーク87の位置決めを行うための切り欠き860a、870aが形成されている。
【0052】
このように構成した可動体3において、第1ヨーク86および磁石8の少なくとも一方には、磁石8の着磁方向を示すマークが付されている。例えば、第1ヨーク86には、平板部860の4つの角のうち、S極が位置する側の角が切り欠かれたマーク86sが付され、他の角は角張っている。また、第2ヨーク87および磁石8の少なくとも一方にも、磁石8の着磁方向を示すマークが付されている。例えば、第2ヨーク87には、平板部870の4つの角のうち、N極が位置する側の角が切り欠かれたマーク87sが付され、他の角は角張っている。なお、磁石8に対して、マークを付す場合には、印刷等を利用すればよい。
【0053】
(位置決め凸部865、875の構成)
第1ヨーク86は、第1ヨーク86の一部が、磁石8が固定された一方面から突出して第1磁石81および第2磁石82の第1ヨーク86の平板部860の面内方向における位置決めを行う位置決め凸部865を有している。本形態において、位置決め凸部865は、第1磁石81の第2磁石82側の位置を規定する第1凸部865aと、第2磁石82の第1磁石81側の位置を規定する第2凸部865bとを含んでいる。本形態において、第1凸部865aと第2凸部865bとは、第1磁石81と第2磁石82との間に設けられた共通の凸部865cからなる。凸部865c(第1凸部865aおよび第2凸部865b)は、第3方向Yで離間する2箇所に設けられている。
【0054】
位置決め凸部865は、さらに、第1磁石81と第2磁石82とが隣り合う第2方向Xと交差する第3方向Yにおける第1磁石81の位置決め、および第2磁石82の位置決めを行う第3凸部865d、865eを含んでいる。本形態において、第3凸部865dは、第1磁石81のY方向の両側2箇所に設けられ、第3凸部865eは、第2磁石82のY方向の両側2箇所に設けられている。
【0055】
位置決め凸部865は、第1ヨーク86の平板部860の一部を、磁石8とは反対側の他方面側から磁石8が位置する一方面側に突出させた凸部である。従って、
図4に示すように、第1ヨーク86の平板部860の磁石8とは反対側の他方面には、位置決め凸部865を成した際の凹状の痕865xが残っている。
【0056】
ここで、第1ヨーク86では、第1磁石81に対して第2磁石82と反対側、および第2磁石82に対して第1磁石81と反対側には、位置決め凸部865が設けられていない。また、位置決め凸部865の平板部860からの突出寸法は、磁石8の厚さ(第1磁石81の厚さ、および第2磁石82の厚さ)より低い。このため、磁石8を第1ヨーク86の平板部860に搭載する際、カートリッジ等の内部に積層された複数の磁石8のうち、最も下方に位置する磁石8をスライドさせて、第1磁石81等として配置する際、位置決め凸部865とカートリッジとが干渉しにくい等、位置決め凸部865が邪魔にならない
。
【0057】
図示を省略するが、第2ヨーク87も、第1ヨーク86と同様、第2ヨーク87の一部が、磁石8が固定された一方面から突出して第1磁石83および第2磁石84の第2ヨーク87の平板部870の面内方向における位置決めを行う位置決め凸部を有している。従って、
図8に示すように、第2ヨーク87の平板部870の磁石8とは反対側の他方面には、位置決め凸部875を形成した際の凹状の痕875xが残っている。
【0058】
なお、位置決め凸部865は、第1ヨーク86および第2ヨーク87の一部を折り曲げた凸部であってもよい。
【0059】
(ストッパの構成)
図2に示すように、本形態では、可動体3に用いた第1ヨーク86の第1連結板部861に対して第2方向Xの一方側X1には、第1ケース部材16の第1壁部161、ホルダ60の第1壁部61、および第2ケース部材17の第1壁部171の内面が、連続した平面を構成した状態で対向している。従って、第1連結板部861は、可動体3が第2方向Xの一方側X1に移動した際に可動体3の第2方向Xの一方側X1への可動範囲を規制する第1ストッパを構成している。
【0060】
同様に、第2連結板部862に対して第2方向Xの他方側X2には、第1ケース部材16の第2壁部162、ホルダ60の第2壁部62、および第2ケース部材17の第2壁部172の内面が、連続した平面を構成した状態で対向している。従って、第2連結板部862は、可動体3が第2方向Xの他方側X2に移動した際に可動体3の第2方向Xの他方側X2への可動範囲を規制する第2ストッパを構成している。
【0061】
(基本動作)
本形態のアクチュエータ1において、コイル7に交流を印加すると、可動体3は、第2方向Xに振動するため、アクチュエータ1における重心が第2方向Xに変動する。このため、利用者は、第2方向Xの振動を体感することができる。その際、コイル7に印加する交流波形を調整して、可動体3が第2方向Xの一方側X1に移動する加速度と、可動体3が第2方向の他方側X2に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、第2方向Xにおいて方向性を有する振動を体感することができる。
【0062】
(接続体90および粘弾性部材9の構成)
図2、
図4および
図5に示すように、支持体2および可動体3に対して接続する接続体90が設けられている。接続体90は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えている。本形態において、接続体90は、支持体2と可動体3とが第1方向Zで対向する個所に設けられた粘弾性部材9であり、第1方向Z、第2方向X、および第3方向Y方向に弾性的に変形可能である。粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。従って、粘弾性部材9として、各種ゲル状部材を用いることができる。粘弾性部材9として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0063】
本形態において、接続体90として粘弾性部材9のみが支持体2および可動体3の双方に接続されている。本形態においては、粘弾性部材9として、可動体3の第1ヨーク86と支持体2の第1ケース部材16とが第1方向Zで対向する個所に第1粘弾性部材91が
配置され、可動体3の第2ヨーク87と支持体2の第2ケース部材17とが第1方向Zで対向する個所に第2粘弾性部材92が配置されている。より具体的には、第1粘弾性部材91は、第1ヨーク86の平板部860と第1ケース部材16の凹部166、167の底部との間の各々に設けられ、第2粘弾性部材92は、第2ヨーク87の平板部870と第2ケース部材17の凹部176、177の底部との間の各々に設けられている。
【0064】
ここで、第1粘弾性部材91は、第1ヨーク86の平板部860と第1ケース部材16の凹部166、167の底部との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置され、第2粘弾性部材92は、第2ヨーク87の平板部870と第2ケース部材17の凹部176、177の底部との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置されている。第1粘弾性部材91は、支持体2と接する面(第1ケース部材16の凹部166、167の底部)に接着され、可動体3と接する面(第1ヨーク86)と接着されている。第2粘弾性部材92は、支持体2と接する面(第2ケース部材17の凹部176、177の底部)に接着され、可動体3と接する面(第2ヨーク87)と接着されている。
【0065】
本形態において、粘弾性部材9(第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92)は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。粘弾性部材9は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、粘弾性部材9は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これに対して、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。一方、本形態のように、粘弾性部材9が厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。従って、粘弾性部材9では、運動方向によるバネ力が一定となる。それ故、本形態のように、粘弾性部材9のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【0066】
本形態では、第1ケース部材16の凹部166、167のうち、第1粘弾性部材91が接続される接続領域166a、167aには複数の凹部が形成されている。また、第2ケース部材17の凹部176、177のうち、第2粘弾性部材92が接続される接続領域176a、177aには複数の凹部が形成されている。
【0067】
また、接続体90は、第1方向Zに圧縮された状態にあるため、接続体90は、一部が複数の凹部の内側に位置する。このため、複数の凹部の縁は、接続体90が第1方向Zと交差する方向に移動することを抑制する。従って、接続体90を支持体2と可動体3との間に配置する際、複数の凹部の縁は、接続体90が第1方向Zと交差する方向に移動することを効果的に抑制する。また、可動体3が第2方向Xに駆動される際、複数の凹部の縁は、接続体90が第2方向Xに移動することを効果的に抑制する。それ故、支持体2と可動体3との間に配置した接続体90の位置ずれを抑制することができる。また、接続体90は、接続領域166a、167a、176a、177aに接着剤を介して固定され、接着剤の一部は、複数の凹部の内側に位置する。このため、接続体90の接着強度が高い。
【0068】
(配線基板15およびコイル7の端部の処理)
図9は、
図6等に示す係合凸部69の説明図である。
図10は、
図9に示す係合凸部69の突出部691の説明図であり、突出部691で係合凸部69を切断したときの断面図である。
図11は、
図6等に示す係合穴159の説明図である。
図12は、
図9に示す係合凸部69を第3位置P3で係合穴159に嵌めた状態を示す説明図である。
図13は、
図9に示す配線基板15を第2位置に移動させたときの係合凸部69と係合穴159との位置関係を示す説明図である。
図14は、
図11に示す配線基板15が第1位置P1でホルダ60に保持された状態の説明図である。
図15は、
図5等に示す配線基板15とホルダ60の第3壁部63との間の隙間を示す断面図である。
【0069】
図5、
図6および
図7に示すように、支持体2の側面には、配線基板15が保持される。より具体的には、ホルダ60の第3壁部63(支持体2の側面)に配線基板15が固定される。第3壁部63では、第3方向Yの他方側Y2に凹んだ凹部630が第2方向Xに沿って延在しており、凹部630の底部には、コイル線の端部705を凹部630の底面に引き出す切り欠き状の引き出し部68が第2方向Xに沿って複数、形成されている。また、凹部630のうち、引き出し部68によって挟まれた部分は、凹部630の底部からさらに第3方向Yの他方側に凹んだ凹部630aになっている。
【0070】
凹部630の底部には、凹部630aに対して第2方向Xでずれた位置で第3方向Yの一方側Y1に突出した係合凸部69が第2方向Xに沿って複数、形成されている。本形態において、係合凸部69は3か所に形成されている。
【0071】
配線基板15には、引き出し部68と重なる部分に切り欠き158が形成されている。また、配線基板15には、係合凸部69と重なる部分に複数の係合穴159が形成されている。本形態では、係合凸部69の数に対応して、複数の係合穴159として3つの係合穴159が第2方向Xに沿って形成されている。3つの係合穴159のうち、中央の係合穴159は、切り欠き158と繋がった切り欠き状に形成されている。
【0072】
配線基板15は、係合凸部69が係合穴159に嵌った状態で係合凸部69を塑性変形させることによってホルダ60の第3壁部63の外面に保持されている。また、配線基板15は、配線基板15とホルダ60の第3壁部63の外面との間に充填された接着剤により固定されている。
【0073】
配線基板15には、第1コイル71の端部705、および第2コイル72の端部705が電気的に接続される第1ランド151と、外部からの配線部材(図示せず)が電気的に接続される第2ランド152とが形成されており、第1コイル71の端部および第2コイル72の端部705は、引き出し部68を介して第1ランド151まで引き回された後、ハンダにより第1ランド151に電気的に接続される。なお、第1ランド151と第2ランド152とは配線パターン(図示せず)を介して繋がっている。
【0074】
本形態では、第1ランド151が3つ形成されており、第1コイル71の巻き終わりの端部705、および第2コイル72の巻き始めの端部705は、中央の第1ランド151に電気的に接続される。従って、第1コイル71と第2コイル72とは直列に電気的に接続される。なお、第1コイル71と第2コイル72とは、並列に電気的に接続してもよい。
【0075】
ここで、第1コイル71と、配線基板15に接続された端部705との間には弛みが設けられている。かかる弛みを設けるにあたって、本形態では、
図9~
図14を参照して以下に説明するように、係合凸部69と係合穴159の内縁との間には、配線基板15が第3壁部63に保持された第1位置P1(
図14参照)より第1ランド151と引き出し部68との位置が離間した第2位置P2(
図13参照)に向けて配線基板15を第3壁部63に沿って第1方向Z(可動方向)に直線移動可能にする遊びが設けられている。従って、配線基板15が第2位置P2(
図13参照)にあるときに、第1ランド151と端部705とをハンダにより接続した後、配線基板15を第1位置P1(
図14参照)に移動させれば、コイル7と配線基板15に接続された端部705との間に弛みが設けられる。
【0076】
まず、
図9および
図10に示すように、係合凸部69は、第3壁部63から外側に突出した突出部691と、突出部691の先端部で突出部691から突出部691の突出方向に対して直交する方向に張り出した鍔部692とを有している。
【0077】
図11に示すように、配線基板15には、鍔部692が通過可能な係合穴159が形成されている。本形態では、係合穴159を第3壁部63に対して直交する方向からみたとき、係合穴159は、第1穴部159aと、第1穴部159aより小さな第2穴部159bとが繋がった形状を有している。第1穴部159a、および第2穴部159bは各々、配線基板15の可動方向(第1方向Z)に対して直交する第2方向Xに位置する両端部に、外側に円弧状に湾曲した湾曲部分159c、159dを有する形状を有している。また、第1穴部159aの第1方向Zの一方側Z1の端部は、第2方向Xに直線的に延在する直線部分159eになっている。
【0078】
図9および
図10に示すように、突出部691は、第1穴部159aおよび第2穴部159bより配線基板15の可動方向(第1方向Z)の幅が小さい。鍔部692は、第1穴部159aと略同一サイズの第3部分692aと、第2穴部159bと略同一サイズの第4部分692bとが繋がった形状を有している。
【0079】
第4部分692bは、配線基板15の可動方向(第1方向Z)に対して直交する第2方向Xに位置する両端部に、外側に円弧状に湾曲した湾曲部分692dを有している。第3部分692aは、配線基板15の可動方向(第1方向Z)に対して直交する第2方向Xに位置する両端部に、外側に円弧状に湾曲した湾曲部分692cと、湾曲部分692cから第4部分692bとは反対側に直線的に延在した直線部分692fとを備えている。第3部分692aの第1方向Zの一方側Z1の端部は、第2方向Xに直線的に延在する直線部分692eになっている。また、第4部分692bの第1方向Zの他方側Z2の端部は、第2方向Xに直線的に延在する直線部分692gになっている。
【0080】
突出部691は、第1方向Zの他方側Z2に位置する湾曲部分691aと、湾曲部分691aから第1方向Zの一方側Z1に延在する直線部分691bとを有しており、突出部691の第1方向Zの一方側Z1の端部は、第2方向Xに直線的に延在する直線部分691eになっている。
【0081】
アクチュエータ1の製造工程のうち、コイル7の端部を処理する工程では、まず、
図12に示すように、配線基板15を鍔部692と係合穴159とが対向する第3位置P3に配置し、鍔部692を係合穴159に貫通させる。この状態で、配線基板15は、鍔部692と第3壁部63との間に位置する。また、配線基板15は、突出部591が係合穴159に嵌った状態で、第1方向Zに移動可能である。
【0082】
次に、
図13に示すように、引き出し部68と第1ランド151とが離間するように、配線基板15を第1方向Zの他方側Z2の第2位置P2に移動させ、端部705と第1ランド151とを半田により接続した後、端部705の余計な部分を切断する。ここで、配線基板15の第2位置P2に向けての可動範囲は、突出部691の係合穴159の内周面への当接によって制限される。その際、突出部691と係合穴159の内周面とが当接する部分は直線部分691e、159eである。この状態で、鍔部692は、配線基板15に第3壁部63とは反対側から重なっているため、配線基板15の姿勢が維持される。
【0083】
次に、
図14に示すように、引き出し部68と第1ランド151とが接近するように、配線基板15を第1方向Zの一方側Z1の第1位置P1に移動させる。その結果、コイル7と配線基板15に接続された端部705との間に弛みが設けられる。ここで、配線基板
15の第1位置P1に向けての可動範囲は、突出部691の係合穴159の内周面への当接によって制限される。その際、突出部691と係合穴159の内周面とが当接する部分は湾曲部分691a、159dである。この状態で、鍔部692は、配線基板15に第3壁部63とは反対側から重なっているため、配線基板15の姿勢が維持される。
【0084】
次に、係合凸部69に対する熱プレスによって係合凸部69を塑性変形させ、配線基板15を第3壁部63に保持された状態とする。また、配線基板15と第3壁部63との隙間に接着剤を充填し、配線基板15と第3壁部63とを接着剤によって固定する。その際、
図15に示すように、配線基板15と第3壁部との間には、一方方向(第1方向Zの一方側Z1)から他方方向(第1方向Zの他方側Z2)に間隔が広がった隙間Gが設けられている。従って、第1方向Zの他方側Z2では隙間Gの開口幅が広いので、配線基板15と第3壁部との間に接着剤を充填しやすい。
【0085】
(アクチュエータ1の組み立て工程)
本形態では、第1ケース部材16の貫通穴16bから差し込んだ支持ピン(図示せず)によって第1ヨーク86を支持しながら、第1ケース部材16、第1ヨーク86、ホルダ60、および第2ヨーク87を第1方向Zに重ねるとき、貫通穴16aから差し込んだ位置決めピンを基準に第1ケース部材16の貫通穴16a、第1ヨーク86の切り欠き869、ホルダ60の切り欠き603、および第2ヨーク87の切り欠き879を重ねる。従って、第1ケース部材16、第1ヨーク86、ホルダ60、および第2ヨーク87を適正に重ねることができる。
【0086】
その際、第1ヨーク86の第1連結板部861をホルダ60の第1開口部601を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて突出させ、第2連結板部862をホルダ60の第2開口部602を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて突出させる。従って、第1ヨーク86の第1連結板部861および第2連結板部862を各々、第2ヨーク87と連結することができる。
【0087】
また、第1ケース部材16および第1ヨーク86の一方に第1粘弾性部材91を予め、接着剤によって接続しておき、第1ケース部材16と第1ヨーク86とを重ねる際、第1ケース部材16および第1ヨーク86の他方に第1粘弾性部材91を接着剤によって接続する。また、第2ケース部材17および第2ヨーク87の一方に第2粘弾性部材92を予め、接着剤によって接続しておき、第2ケース部材17と第2ヨーク87とを重ねる際、第2ケース部材17および第2ヨーク87の他方に第2粘弾性部材92を接着剤によって接続する。その際、貫通穴16bから差し込んだ支持ピンを第2ケース部材17の切り欠き17bに当接させて第2ケース部材17を支持する。
【0088】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1においては、
図5に示すように、支持体2の側面(ホルダ60の第3壁部63)に沿うように配線基板15が設けられているため、配線基板15が突出していない。このため、アクチュエータ1を各種機器等に搭載する際、無駄なスペースが発生しにくい。
【0089】
また、
図9~
図14等を参照して説明したように、配線基板15は、係合穴159に係合凸部69が嵌った状態でも、第1位置P1と第2位置P2とに移動可能であるため、配線基板15が第2位置P2にあるときにコイル線の端部705と配線基板15の第1ランド151を接続した後、配線基板15を第1位置P1に移動させれば、コイル7と端部705との間にコイル線の弛みを付与することができる。従って、コイル線の断線を抑制することができる。また、上記の操作を行う際、係合穴159に係合凸部69が嵌った状態にあるため、配線基板15の可動範囲が制限されているとともに、係合穴159と係合凸
部69とがガイドとして機能する。従って、コイル線の端部705と第1ランド151との接続を行う第2位置P2からコイル線の弛みを付与する第1位置P1への配線基板15の移動に容易に行うことができる。
【0090】
また、配線基板15が第1位置P1および第2位置P2にあるとき、係合凸部69の鍔部692は、係合穴159から係合凸部69が抜けることを抑制するため、コイル線の端部705と第1ランド151との接続を行う第2位置P2からコイル線の弛みを付与する第1位置P1への配線基板15の移動等に容易に行うことができる。
【0091】
[他の実施形態]
上記実施形態では、支持体2にコイル7および配線基板15が保持されている態様を例示したが、可動体3にコイル7および配線基板15が保持されている場合に本発明を適用してもよい。
【0092】
上記実施形態では、2つの磁石8(第1磁石81および第2磁石82)を有していたが、例えば、コイル7に対して第1方向Zの一方側Z1のみに磁石8が配置され、第1方向Zの他方側Z2に第2ヨーク87のみが存在する態様の場合に本発明を適用してもよい。
【0093】
上記実施形態では、粘弾性部材9としてシリコーン系ゲル等のゲル状部材を用いたが、ゴム等を粘弾性部材として用いてもよい。また、上記実施形態では、接続体90として粘弾性部材9を用いたが、バネ等の弾性部材を用いてもよい。
【0094】
上記実施形態では、コイルおよびホルダが支持体2に設けられ、磁石およびヨークが可動体3に設けられていたが、コイルおよびホルダが可動体3に設けられ、磁石およびヨークが支持体2に設けられている場合に本発明を適用してもよい。上記実施形態では、可動体3を第2方向Xのみに駆動するアクチュエータ1に本発明を適用したが、可動体3を第2方向Xおよび第3方向Yに駆動するアクチュエータ1に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、6…磁気駆動回路、7…コイル、8…磁石、9…粘弾性部材、15…配線基板、16…第1ケース部材、17…第2ケース部材、26…プレート、60…ホルダ、63…第3壁部(支持体の側面)、68…引き出し部、69…係合凸部、71…第1コイル、72…第2コイル、81、83…第1磁石、82、84…第2磁石、86…第1ヨーク、87…第2ヨーク、90…接続体、91…第1粘弾性部材、92…第2粘弾性部材、151…第1ランド、159…係合穴、159a…第1穴部、159b…第2穴部、159c、159d、691a、692d…湾曲部分、159d、691a、692a、692c…湾曲部分、159e、691b、691e、692e、692f、692g…直線部分、651、652…コイル保持穴、701…長辺、702…短辺、705…コイル線の端部、G…隙間、P1…第1位置、P2…第2位置、P3…第3位置、X…第2方向、Y…第3方向、Z…第1方向