(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】細胞外核酸の滅菌のための滅菌組成物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20221028BHJP
C12N 9/99 20060101ALI20221028BHJP
C12N 9/48 20060101ALI20221028BHJP
C07K 5/062 20060101ALI20221028BHJP
C07K 5/083 20060101ALI20221028BHJP
C07K 5/093 20060101ALI20221028BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20221028BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20221028BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALN20221028BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20221028BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12N9/99 ZNA
C12N9/48
C07K5/062
C07K5/083
C07K5/093
C12M1/26
C12N5/078
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
(21)【出願番号】P 2018525690
(86)(22)【出願日】2016-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2016078330
(87)【国際公開番号】W WO2017085321
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-21
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214038
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】グレルツ, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウリウス, アンドレア
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531902(JP,A)
【文献】国際公開第2014/146782(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0064000(US,A1)
【文献】日本ベクトン・ディッキンソンはすべての真空採血管を滅菌しています。,日本BD[online],2015年06月11日,https://web.archive.org/web/20150611101224/https://www.bdj.co.jp/pas/articles/1f3pro000000pyeu.html,[retrieved on 12.16.2020]
【文献】真空採血管,ニプロ株式会社,2015年05月
【文献】菊地 勝恵 ほか,真空採血管を用いたより安全な採血法を目指して(最終版),Clinical Test News,2006年,No. 7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料の細胞外核酸集団を安定化することができる滅菌された組成物を生成するための方法であって、
a)
i.改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミン、および水溶性ビタミンE誘導体より選択される少なくとも1つの化合物であって、前記水溶性ビタミンがアスコルビン酸または水溶性ビタミンB6であり、前記水溶性ビタミンE誘導体がトロロックスである、少なくとも1つの化合物
を含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために前記組成物を照射するステップであって、前記照射がイオン化照射によるものである、ステップ
を含み、前記安定化が、ゲノムDNAによる前記生体試料の細胞外核酸集団の汚染を低減させることを含む方法。
【請求項2】
滅菌のために前記組成物を照射するステップが、以下:
a)前記組成物が、ガンマ線照射、電子ビーム照射、もしくはX線により照射される;
b)前記組成物が、ガンマ線照射もしくはX線により照射される;
c)前記組成物が、ガンマ線照射により照射される;
d)前記組成物が、5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、もしくは約8kGyから約15kGyの照射線量で照射され
、「約」という表現は、所与の値±10%を示す;
e)前記組成物か、5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、もしくは約8kGyから約15kGyの照射線量でガンマ線照射により照射され
、「約」という表現は、所与の値±10%を示す;
f)前記組成物が、8kGyから25kGy、もしくは8kGyから15kGyの照射線量でガンマ線照射により照射される;および/または
g)照射による滅菌の結果、前記組成物の無菌性保証水準(SAL)が10
-6以下になる
の特徴の1つ以上を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、固体形態で調製される;
b)前記組成物が、固体形態で調製され、照射前に溶解されて、液体組成物が提供される;
c)前記組成物が、固体形態で調整され、照射前に溶解されて水性組成物が提供される;
d)前記組成物が、液体形態で調製され照射される;
e)前記組成物が、水性である;
f)前記組成物が、酸性pHを有する;
g)前記組成物が、pH4.0から7.0、pH4.1から6.9、pH4.2から6.8、pH4.3から6.6、pH4.4から6.3、pH4.5から6.0、またはpH4.5から5.5を有する
;
h)前記組成物が緩衝されている
;および/または
i)前記組成物が照射を伴う滅菌に好適な試料採集デバイス中に提供されるか、または、前記組成物は、照射を実施する前に照射を伴う滅菌に好適な試料採集デバイス中に充填される、
の特徴の1つ以上を有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、液体形態、または水性形態で照射される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミン、および水溶性ビタミンE誘導体より選択される前記少なくとも1つの化合物を、20mg/ml未満、15mg/ml以下、10mg/ml以下、7mg/ml以下、3mg/ml以下、または1.5mg/ml以下の濃度で含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、
i.N-アセチル-システイン、グルタチオン、ビタミンB6、アスコルビン酸、およびトロロックスより選択される化合物;
ii.N-アセチル-システイン、グルタチオン、アスコルビン酸、およびトロロックスより選択される化合物;
iii.N-アセチル-システイン、グルタチオン、ビタミンB6、およびアスコルビン酸より選択される化合物;
iv.N-アセチル-システイン、グルタチオン、およびアスコルビン酸より選択される化合物;または
v.N-アセチル-システイン
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
a)
i.改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.
aa)0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン;
ab)0.03mg/mlから10mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/mlまたは0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度のグルタチオン;
ac)20mg/ml未満
、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/m
lの濃度のアスコルビン酸;
ad)0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度のビタミンB6;
ae)0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度のトロロックス
の少なくとも1つを含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために前記組成物を照射するステップ
を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、N-アセチル-システインを含む;
b)前記組成物が、N-アセチル-システインを、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度で含む;
c)前記組成物が、N-アセチル-システインを含み、液体形態、または水性形態で照射により滅菌される;および/または
d)前記組成物が、N-アセチル-システインを、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度で含み、水性液体形態で滅菌される
の特徴の1つ以上を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、グルタチオンを含む;
b)前記組成物が、グルタチオンを還元型として含む;
c)前記組成物が、グルタチオンを、0.03mg/mlから10mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度で含む;
d)前記組成物が、グルタチオンを含み、液体形態、または水性形態で滅菌される;および/または
e)前記組成物が、グルタチオンを、0.03mg/mlから10mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度で含み、水性液体形態で滅菌される
の特徴の1つ以上を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、アスコルビン酸を含む;
b)前記組成物が、ビタミンB6を含む;
c)前記組成物が、アスコルビン酸を、20mg/ml未満
、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/m
lの濃度で含む;
d)前記組成物が、ビタミンB6を、20mg/ml未満
、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/m
lの濃度で含む;
e)前記組成物が、ビタミンB6を含み、液体形態、または水性形態で滅菌される;
f)前記組成物が、アスコルビン酸を含み、液体形態、または水性形態で滅菌される;
g)前記組成物が、アスコルビン酸を20mg/ml未満の濃度で含み、前記濃度が、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlより選択されてもよく、また、前記組成物が、液体形態、または水性形態で照射により滅菌される;
h)前記組成物が、ビタミンB6を0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度で含む;ならびに/または
i)前記組成物が、ビタミンB6を0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度で含み、前記組成物が、液体形態、または水性形態で照射により滅菌される
の特徴の1つ以上を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、トロロックスを含む;
b)前記組成物が、トロロックスを、0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度で含む;
c)前記組成物が、トロロックスを含み、液体形態、または水性形態で滅菌される;
d)前記組成物が、トロロックスを、0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度で含み、液体形態、または水性形態で滅菌される
の特徴の1つ以上を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記カスパーゼ阻害剤が、以下:
a)前記カスパーゼ阻害剤が、汎カスパーゼ阻害剤である;
b)前記カスパーゼ阻害剤が、O-フェノキシ(OPh)基で改変されている改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
c)前記カスパーゼ阻害剤が、カルボキシル末端においてO-フェノキシ(OPh)基で改変されている改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
d)前記カスパーゼ阻害剤が、グルタミン(Q)基で改変されている改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
e)前記カスパーゼ阻害剤が、N末端においてグルタミン(Q)基で改変されている改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
f)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-Val-Ala-Asp(OMe)-FMKから成る群より選択される;
g)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPhおよびZ-Val-Ala-Asp(OMe)-FMKから成る群より選択される;ならびに/または
h)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPhである
の特徴の1つ以上を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、
a)抗凝固薬および/またはキレート剤;
b)安定化剤としてポリ(オキシエチレン)ポリマー;および/または
c)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
a)前記抗凝固薬および/またはキレート剤がEDTAである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、以下:
a)前記ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、ポリエチレングリコールである;
b)前記ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、非置換ポリエチレングリコールである;
c)前記組成物が、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;
d)前記組成物が、1000以下の分子量を有するか、または、100から800、150から700、200から600および200から500より選択される範囲に存する分子量を有する、少なくとも1つの低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;
e)前記組成物が、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマー、および、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量より少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;ならびに/または
f)前記組成物が、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーおよび低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含み、前記高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、1500から50000、1500から40000、2000から30000、2500から25000、3000から20000、3500から15000および4000から12500より選択される範囲に存する分子量を有し、かつ/または、前記低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、1000以下の分子量を有する
の特徴の1つ以上を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミドをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、式1
【化6】
(式中、R1は、水素残基またはアルキル残基であり、R2およびR3は同一であり、もしくは異なり、水素残基、および線状もしくは分岐した様式に配列された1~20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基から選択され、R4は、酸素、硫黄もしくはセレン残基である)
に従う少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミドを含む;ならびに/または
b)前記組成物が、N,N-ジアルキルプロパンアミドおよび/もしくはブタンアミドを含む、
c)前記組成物が、N,N-ジメチルプロパンアミドを含む
の特徴の1つ以上を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、式1
【化7】
(式中、R1は、水素残基またはアルキル残基であり、R2およびR3は同一であり、または異なり、水素残基、および線状または分岐した様式に配列された1~20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基から選択され、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基である)に従う少なくとも1つの化合物を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
式1に従う前記少なくとも1つの化合物が、
a)第一級、第二級または第三級カルボン酸アミドである、
b)R1はC1-C5アルキル残基、C1-C4アルキル残基、C1-C3アルキル残基またはC1-C2アルキル残基である、
c)R2およびR3は同一であり、または異なり、水素残基、および線状または分岐した様式に配列された1~20原子の炭素鎖長を有するアルキル残基から選択され、および/または
d)R4は酸素である
の特徴の1つ以上を有する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記滅菌された組成物が、以下:
a)細胞含有試料に含まれている細胞内核酸を安定化することができる;
b)細胞含有試料に含まれている細胞内核酸を安定化することができ、細胞内RNAおよび/または細胞内DNAを安定化する;
c)細胞含有試料中に存在する核酸の分解を、安定化に起因して低減させる;
d)試料に含有されている細胞におけるトランスクリプトームおよび/または転写レベルを安定化することができる;
e)c-fos、IL-1ベータ、IL-8およびp53より選択される1つ以上のマーカー遺伝子の転写レベルを、安定化されると少なくとも12時間にわたって、少なくとも24時間にわたって、または少なくとも48時間にわたって安定化するすることができる
の特徴の1つ以上を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記滅菌された組成物により有核細胞または一般の細胞の溶解が誘導されない、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記滅菌された組成物が、核酸-核酸架橋、タンパク質-核酸架橋および/またはタンパク質-タンパク質架橋を誘導する架橋剤を含まず、また、ホルムアルデヒド放出剤の使用を含まない、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記滅菌された組成物が、以下:
a)安定化により、安定化された細胞含有試料から細胞を単離することが可能になる;
b)前記細胞含有試料が血液試料であり、血液試料に含有されている細胞が安定化される;
c)前記細胞含有試料が血液試料であり、白血球が安定化される;
d)細胞の形態が保存される;
e)有核細胞の形態が保存される;
f)前記試料が血液試料であり、含有されるリンパ球および/もしくは単球が安定化される;
g)細胞表面エピトープが保存される;ならびに/または
h)細胞表面タンパク質が保存される
の安定化特性を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
滅菌可能な組成物であって、滅菌された形態の前記組成物が、生体試料の細胞外核酸集団を安定化することができ、前記組成物が、請求項1から24のいずれか一項に記載されているものである、滅菌可能な組成物。
【請求項26】
前記組成物が滅菌されている、請求項25に記載の滅菌可能な組成物。
【請求項27】
細胞含有生体試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するための方法であって、
a)請求項1から24のいずれか一項に記載の方法に従って生体試料の細胞外核酸集団を安定化することができる滅菌された組成物を得る、または滅菌された形態の請求項25に記載の組成物を得るステップ;および
b)前記細胞含有生体試料を、安定化のために前記滅菌された組成物と接触させるステップ
を含む方法。
【請求項28】
安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を単離するための方法であって、
a)請求項27に記載の方法に従って細胞含有生体試料を安定化するステップ;および
b)細胞外核酸を単離するステップ
を含む方法。
【請求項29】
改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤を含む組成物またはその
改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤をイオン化照射による滅菌中に防護するための、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミン、および水溶性ビタミンE誘導体から成る群より選択される少なくとも1つの化合物の使用であって、
前記水溶性ビタミンがアスコルビン酸または水溶性ビタミンB6であり、
前記水溶性ビタミンE誘導体がトロロックスであり、
前記組成物が、生体試料の細胞外核酸集団を安定化するのに好適であり、
前記安定化が、ゲノムDNAによる前記生体試料の細胞外核酸集団の汚染を低減させることを含む、使用。
【請求項30】
安定化された細胞含有生体試料から核酸を単離するための方法であって、
a)細胞含有生体試料を安定化するステップであり、安定化が、
i)請求項1から24のいずれか一項に記載の方法に従って滅菌された組成物を得ること;または
ii)滅菌されている、請求項25に記載の組成物を得ること;および
前記細胞含有生体試料を前記滅菌された組成物と接触させること
を含む、ステップ;ならびに
b)前記安定化された試料から核酸を単離するステップ
を含む方法。
【請求項31】
aa)ステップb)が、細胞内核酸を単離することを含む;
bb)ステップb)が、細胞内RNAおよび/または細胞内DNAを単離することを含む;
cc)ステップb)が、細胞外核酸を単離することを含む;
dd)前記方法が、前記安定化された試料から細胞を取り出し、取り出された細胞から核酸を単離するステップを含む
の特徴の1つ以上を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
安定化された細胞含有生体試料から細胞を単離するための方法であって、
a)細胞含有生体試料を安定化するステップであり、安定化が、
i)請求項1から24のいずれか一項に記載の方法に従って滅菌された組成物を得ること;または
ii)滅菌されている、請求項25に記載の組成物を得ること;および
前記細胞含有生体試料を前記滅菌された組成物と接触させること
を含むステップ;ならびに
b)前記安定化された試料から細胞を単離するステップを含む方法。
【請求項33】
請求項25または26に記載の組成物を含む試料採集デバイス。
【請求項34】
前記採集デバイスは滅菌されている、かつ/または、前記試料採集デバイスが容器または試料採集チューブである、請求項33に記載の試料採集デバイス。
【請求項35】
前記組成物が、
i.改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.
aa)0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン;
ab)0.03mg/mlから10mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/mlまたは0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度のグルタチオン;
ac)20mg/ml未満
、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/m
lの濃度のアスコルビン酸;
ad)0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度のビタミンB6;
ae)0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度のトロロックス
の少なくとも1つを含む、請求項33または34に記載の試料採集デバイス。
【請求項36】
前記採集デバイスが滅菌されている、請求項33~35のいずれか一項に記載の採集デバイス。
【請求項37】
前記組成物が、前記採集デバイスに採集する試料
の量の安定化をもたらすのに有効な量で前記採集デバイスに含まれる、請求項33から36のいずれか一項に記載の採集デバイス。
【請求項38】
前
記組成物は、液体であり、前記生体試料と、10:1から1:20、5:1から1:15、1:1から1:10、1:4から1:10、および1:5から1:9より選択される体積比、
または約1:6から1:8の体積比で接触させられ
、「約」という表現は、所与の値±10%を示す、請求項37に記載の採集デバイス。
【請求項39】
排気されている、請求項33から38のいずれか一項に記載の採集デバイス。
【請求項40】
固体または液体いずれかの形態の定義された量の前
記組成物が予め充填されており、定義された真空度が与えられ、セプタムで封止されている、請求項33から39のいずれか一項に記載の採集デバイス。
【請求項41】
前記採集デバイスが、開口上部と、底部と、チャンバーを規定するそれらの間に広がる側壁とを有し、ここで、前記組成物は前記チャンバーに含まれており、ここで、前記採集デバイスはチューブであり、前記底部は閉鎖底部であり、前記採集デバイスは前記開口上部にクロージャーをさらに備え、前記チャンバーは減圧下にある、請求項33から40のいずれか一項に記載の採集デバイス。
【請求項42】
a)前記組成物は水性液体である、および/または
b)前記クロージャーは針またはカニューレでの貫入が可能であり、指定体積の液体試料を前記チャンバーに引き込むように前記減圧が選択される、
請求項41に記載の採集デバイス。
【請求項43】
前記採集デバイスが、滅菌されており、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、かつ/または得られた滅菌された組成物を含
む、請求項33から42のいずれか一項に記載の採集デバイス。
【請求項44】
i) 前記採集デバイスが、滅菌された形態の前記組成物および細胞含有生体試料を含む、
ii) 前記採集デバイスが、滅菌された形態の前記組成物を含み、ここで、前記組成物は液体であり、細胞含有生体試料と混合されている、かつ/または
iii)前記細胞含有生体試料は、全血である、かつ/または細胞外核酸を含む、
請求項33から43のいずれか一項に記載の採集デバイス。
【請求項45】
前記採集デバイスのチャンバーに患者由来の生体試料が直接採集されることを特徴とする、請求項33から44のいずれか一項に記載の採集デバイス。
【請求項46】
前記生体試料が血液であり、かつ、前記採集デバイスのチャンバーに直接引き込まれる、請求項45に記載の採集デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を調製するための方法を提供する。滅菌可能な組成物であって、滅菌された形態の組成物が、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適である、滅菌可能な組成物も提供される。さらなる有用な方法、デバイス、キットおよび使用も提供される。特に、例えば血液試料などの細胞含有試料の安定化に好適な滅菌可能な組成物および滅菌された組成物が提供される。複数の実施形態では、これらの組成物は、細胞内核酸(例えば、細胞内DNAおよび/もしくは細胞内RNA)、細胞表面特性ならびに/または細胞形態の安定化に好適である。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞外核酸は、血液、血漿、血清および他の体液中で同定されている。それぞれの試料中に見出される細胞外核酸は、それらがヌクレアーゼから保護されることに起因して(例えば、それらが、プロテオリピド複合体の形態で分泌されるため、タンパク質と会合している、または小胞内に含有される)、ある程度は分解耐性である。多くの医学的状態、悪性疾患および感染プロセスにおける上昇したレベルの細胞外核酸、例えばDNAおよび/またはRNAの存在は、とりわけ、疾患進行についてのスクリーニング、診断、予後予測、監視のために、潜在的な治療標的の同定のために、および処理応答のモニタリングのために関心をもたれている。加えて、母体血中の上昇した胎児DNA/RNAは、例えば性同一性を決定するために、染色体異常を評価するために、および妊娠関連合併症をモニターするために用いられている。したがって、細胞外核酸は、非侵襲的診断および予後予測に特に有用であり、例えば、多くの応用分野、例えば非侵襲性出生前遺伝子検査、腫瘍学、移植医療または多くの他の疾患においてそれらを診断マーカーとして使用することができ、それ故、診断に適している(例えば、胎児由来または腫瘍由来核酸)。しかし、細胞外核酸は、健常な人間においても見出される。例えば腫瘍細胞または胎児に由来する哺乳動物細胞外核酸に加えて、細胞含有試料は、細胞に含まれていない目的の他の核酸も含むことがある。重要な、非限定的な例は、病原体核酸、例えばウイルス核酸である。細胞含有試料、例えば特に配送および取り扱い中の血液検体中の、ウイルス核酸の完全性の保存も、後の分析およびウイルス量モニタリングに非常に重要である。細胞外核酸の一般的応用例および分析方法は、例えば、国際公開第97/035589号、国際公開第97/34015号、Swarupら、FEBS Letters 581(2007)795-799、Fleischhacker Ann.N.Y.Acad.Sci.1075:40-49(2006)、FleischhackerおよびSchmidt、Biochmica et Biophysica Acta 1775(2007)191-232、Hromadnikovaら(2006)DNA and Cell biology、25、11、635-640;Fanら(2010)Clinical Chemistry 56:8に記載されている。
【0003】
細胞外核酸の分析はとても興味深いものであるが、それらの分析はいくつかの理由で難しいことが判明した。細胞外核酸は、通常、試料中に低濃度でしか含まれない。さらに、細胞外核酸は、多くの場合、500nt、300nt(サイズおよびしたがって鎖長を示すとき、用語「nt」は、DNAの場合の「bp」も包含する)またはさらに小さい(循環ヌクレオソーム)サイズの断片として循環する。血漿中の循環無細胞DNA(ccfDNA)については、平均長は、多くの場合、わずかおよそ140から170bpである。加えて、診断のために同定すべきであると考えられる実際の標的細胞外核酸もまた、通常、全細胞外核酸の中のほんの一部にしか相当しない。ccfDNAに関しては、通常、例えば妊娠の状態または腫瘍悪性度に依存し、血液1ml当たりに存在する増幅可能なコピーはわずか数千である。特に、腫瘍特異的DNA断片は非常に希少であり、多くの場合、「正常」細胞外核酸バックグラウンドより1000倍低い濃度で含まれる。この低濃度により、試料の安定化およびその後の安定化された試料からの細胞外核酸の単離に関する難題が提起される。循環する無細胞核酸(cfNA)の分析に関する大きな問題は、-血清中でおよびことによると血漿中でも発生する分解に加えて-試料採集後の、損傷したかまたは崩壊している細胞からの遺伝物質による細胞外DNA(およびRNA)の起こり得る希釈である。試料を採集した後、生体外でのインキュベーション中、一般には試料採集後、比較的短い期間内に、細胞破壊に起因して、試料に含有されている細胞から細胞核酸が放出される。細胞溶解が始まると、溶解された細胞が大量のさらなる核酸を放出し、それらが細胞外核酸と混合され、試験のために細胞外核酸を回収することがますます難しくなる。
【0004】
例えば、全血試料を用いる場合のように試料が大量の細胞を含む場合、試料採集後の細胞内核酸の放出が特に問題である。血液試料については、特に、白血球はRNAに加えて大量のゲノムDNAを放出するので、白血球の溶解は問題である。赤血球はゲノムDNAを含有しない。したがって、全血中の循環核酸の安定化は、安定化の間の細胞ゲノムDNAおよびまたRNAによる細胞外核酸集団の汚染を防止するために血球を安定化する機序を含まなければならない。特に、細胞外核酸、特に、希少な標的細胞外核酸の希釈が問題であり、防止すべきである。これらの問題は、先行技術分野で論じられている(例えば、Chiuら(2001)、Clinical Chemistry 47:9 1607-1613;Fanら(2010)および米国特許出願公開第2010/0184069号明細書を参照されたい)。さらに、利用可能な細胞外核酸の量および回収可能性は、時間が経つにつれて分解に起因して実質的に減少し得る。
【0005】
これらの問題および細胞外核酸の効率的な安定化の必要性に取り組むために、細胞外核酸集団を安定化するためのいくつもの方法、組成物およびデバイスが開発されてきた。
【0006】
安定化のためのホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出剤の使用は、US7,332,277、US7,442,506およびUS2011/0111410に記載されている。血液試料を安定化するための方法は、例えば、US2010/0184069およびUS2010/0209930にも記載されている。しかし、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出物質の使用には欠点がある。ホルムアルデヒドは、毒性である。さらに、これらの安定剤により、タンパク質および核酸のような生体分子が化学的に改変される可能性がある。したがって、これらの安定剤により、核酸分子間の架橋またはタンパク質と核酸の間の架橋が誘導されることによって細胞外核酸単離の有効性が損なわれる可能性がある。これにより、特に診断のために増幅可能または利用可能な核酸分子の数が減少する可能性がある。血漿中のccfDNAの数は血液1ミリリットル当たりほんの数千コピーに限られるので、これは莫大な短所である。
【0007】
診断分野では、細胞外核酸に加えて他の核酸も重要なバイオマーカーである。例えば、ゲノムの転写物(特に、mRNAおよびmiRNA)のプロファイルが分子インビトロ診断におけるバイオマーカーとして広く使用されており、疾患転帰の予測および療法の個別化された経過の指示を目的として通常の生物学的プロセスおよび病理学的プロセスの内部に提供されている。したがって、核酸、特に、RNAのプロファイリングは、疾患の診断、予後判定において、およびバイオマーカーを発見するための臨床試験において重要である。しかし、分析される試料の安定性に注意を払わなければ、試料は、輸送および保管の間に変化し、これにより、標的とされた分子の発現プロファイルが重度に変化する(例えば、Rainenら、2002年;Baechlerら、2004年を参照されたい)。したがって、遺伝子発現、特に、血液細胞の遺伝子発現は、エクスビボにおける試料の取り扱いに注意を要する。試料の取り扱いに起因して発現プロファイルが変化した場合、その後の分析には試料、したがって患者の元の状況が反映されるのではなく、試料の取り扱い、輸送および保管の間に生じた人工的なプロファイルが測定される。したがって、発現プロファイルを安定化し、それにより、信頼できる分析を可能にする最適化された安定化プロセスが必要である。特に、血液細胞の遺伝子発現プロファイルの分析を可能にするために血液試料を安定化する必要がある。
【0008】
発現プロファイルを安定化するための多くの公知の技術は、細胞溶解に基づく(例えば、PAXgene Blood RNA Tubes、US6,617,170、US7,270,953、Kruhofferら、2007年)。それぞれの方法の短所は、安定化の結果、細胞が完全に溶解されることである。細胞の破壊の結果、細胞内核酸が細胞外核酸と混合され、それにより、これらの2つの核酸集団を別々に分析することが妨げられる。さらに、細胞の破壊により、それぞれ任意の細胞選別または細胞富化による細胞分析が不可能になる。したがって、ある特定の適用に関しては、細胞の形態を保存すると同時に核酸を安定化する試料採集および安定化系が必要である。同時の細胞安定化および核酸安定化の必要性に取り組むために、ホルムアルデヒド放出剤の使用に基づく安定化系が開発された(例えば、無細胞RNA BCT(採血チューブ)、US2011/0111410)。しかし、使用されたホルムアルデヒド放出剤がその後の核酸単離プロセスに干渉するので、それぞれ安定化された試料からの核酸単離は非常に難しい。したがって、細胞外核酸に関して上記と同様の問題が生じる。
【0009】
上記の短所を克服するために、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出剤などの架橋剤の使用を必要としない安定化技術が開発された。これらの安定化技術は、例えば、WO2013/045457A1、WO2014/146780A1、WO2014/146782A1、PCT/EP2015/055699(WO2015/140218)、WO2014/049022A1、WO2013/045458A1、WO2013/045432A1、およびWO2014/146781A1に開示されている。記載の技術では、細胞外核酸集団を安定化するために、とりわけカスパーゼ阻害剤を単独で、または第一級、第二級もしくは第三級アミドなどの他の安定化化合物と組み合わせてのいずれかで使用する。これらの安定化技術により、試料採集および安定化後の細胞内核酸、特にゲノムDNAによる細胞外核酸集団の汚染が低減する。WO2014/049022、WO2014/146780、WO2014/146782およびWO2014/146781にも、細胞内核酸(特に、遺伝子発現プロファイル)の安定化に好適な、対応する安定化組成物が教示されている。さらに、これらの適用には、細胞表面特性および/または細胞形態などの、安定化された細胞のその後の分析を可能にする安定化組成物が開示されている。さらに、WO2008/145710には、例えば、細胞、トランスクリプトーム、ゲノムおよびプロテオームを安定化する、血液または組織試料などの細胞含有試料を安定化するための方法が記載されている。これらの適用は、例えば細胞外核酸の安定化を確実にする効率的な安定化技術をもたらすものであるが、開示する安定化組成物およびデバイスの滅菌および無菌性の側面に特異的に対処するものではない。
【0010】
しかし、これらの安定化組成物を滅菌された形態で使用することにより、いくつかの利点がもたらされる。例えば、組成物の貯蔵寿命を増大させることができる。また、ある特定の適用では、試料を安定化のために滅菌された組成物と接触させた場合、安定化された試料の保管時間をさらに延長することができる。細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物は、生体試料を、例えば、ヒトまたは動物から採集し、安定化組成物と直接接触させる場合に特に有用である。これは、例えば、安定化組成物が採血デバイスまたはチューブなどの試料採集デバイスに含まれる場合であり、これもまた規制要件の対象となり得る。細胞内核酸も安定化する安定化組成物を使用する場合にも同じことが当てはまる。
【0011】
したがって、無菌安定化組成物を提供することにより、多数の適用における安全性および/または規制の見解から有意な利点がもたらされる。それにもかかわらず、たとえ細胞外核酸および/または細胞内核酸を安定化するための組成物およびかかる組成物を含むデバイスの滅菌が望ましくとも、滅菌プロセスによりいくつかの問題が提起される。一方では、滅菌は、得られる組成物またはデバイスの無菌性を確実にするために十分にストリンジェントな条件下で実施されるべきである。他方では、かかる滅菌条件の適用は、安定化組成物の関連する性質に干渉する可能性がある。例えば、一般的な滅菌プロセスでは生体試料中の細胞外核酸集団の安定化における組成物の安定化性能が有意に低下する可能性があることが判明した。さらに、滅菌のために実行される措置は、理想的には、安定化された細胞外核酸の単離および単離された核酸の処理または分析などのさらなる下流の適用に干渉すべきでない。細胞内核酸も安定化する安定化組成物を使用する場合にも同じことが当てはまる。
【0012】
利用可能な滅菌方法の中で、照射による滅菌は利点をもたらすものである。照射は過剰な熱を伴わずに作用し、また、滅菌される製品が毒性の化学物質に曝露することもない。滅菌のために一般に適用される照射の形態としては、一般に、ガンマ線照射、X線および電子ビーム照射などのイオン化照射形態が挙げられる。例えば、ISO標準(特に、ISO11137-1:2006、ISO11137-2:2012、ISO11137-3:2006)に従ったガンマ線照射による滅菌を、採血チューブのような試料採集デバイスの生産プロセスなどの使い捨て医療デバイスの生産プロセスの一部として実施することができる。電子ビーム照射による使い捨て医療デバイスの滅菌も同様にISO標準1137および13409により支配される。
【0013】
照射、例えばガンマ線照射による滅菌に関して、所望の無菌性のレベルが確実になるように十分に高い照射線量を選択するべきである。また、組成物および特に採血デバイスまたはチューブなどの試料採集用のデバイスの生産では、関連するISO標準に詳述されている無菌性および照射線量に関する最低限の要件が満たされるべきである。一般には、医学的適用のための滅菌は、単一の単位が滅菌に供された後に非無菌性である確率が10-6以下であることを確実にするものでなければならない。微生物が生存する確率が10-6であることにより、1,000,000分の1の「無菌性保証水準(Sterility Assurance Level)」(SAL) - 滅菌後に物品に単一の生存可能な微生物が1つ存在する見込みが導かれる。ガンマ線照射の実行および10-6のSALを確実にする最小線量の決定は、いくつかのISO標準(ISO11137-1:2006、ISO11137-2:2012、ISO11137-3:2006)によって標準化されている。最小線量は、製品の最初のバイオバーデンに応じて10-6のSALに達することが必要とされる。
【0014】
多くの場合、最小滅菌線量を超える照射線量で滅菌を行うことも望ましい。例えば、多くの場合、照射設備におけるワークフローの実用的な観点から、所与の高線量での照射がより都合がよい。また、適用される線量に応じて簡易微生物検査を実施して製品の無菌性を確認することができるので、最小滅菌線量を超える照射線量を選択することにより、重要な利点がもたらされ得る。適用される照射線量に応じて、微生物検査を低減して、またはさらには微生物検査を伴わずに、製品に無菌とラベルすることができる。例えば、採血チューブなどの試料採集デバイスの滅菌に関する関連する下限の1つは、約7.8kGyまたは8kGyの線量での照射である。一般に、8kGy以上の線量が低バイオバーデンレベルの排除に好適である。バイオバーデンレベルが高い場合には、無菌性を達成するために高線量が必要になり得る。チューブが15kGyの線量で照射される場合には、多くの場合、簡易微生物検査を適用して無菌性を決定および確認することができる。一般に、25kGyにより、10-6の無菌性保証水準(SAL)で無菌性を達成することができる。バイオバーデンレベルが高くても、低い無菌性確率(例えば、10-5または10-4のSAL)をもってバイオバーデンの低下を達成することができる。したがって、(同程度に高い)線量である25kGyで照射を行った採血チューブに無菌とラベル可能にするために微生物検査は必要とされなくなる可能性があり、これは有意な利点である。
【0015】
それにもかかわらず、例えば、ガンマ線照射、X線または電子ビーム照射などの照射により、フリーラジカルの形成がもたらされる。適用される照射線量が最大照射線量よりも高くなると、照射中のラジカルの形成により、滅菌される製品の活性成分の効力の分解または消失が導かれる可能性がある。最大照射線量は、製品の完全性に影響を及ぼさない滅菌線量、すなわち、分解効果を導かない最大線量と定義することができる。例えば、公知の分解問題が原因で、ガンマ線照射は、タンパク質成分を有する水性の薬品および医薬品に対して広範には使用されない(STERIS(登録商標)Isomedix Services、TechTip 01:09/07、Rev 1)。
【0016】
製品の最初のバイオバーデンにより、最大耐量よりも高い最小滅菌線量が決定される場合の措置がいくつか提唱されてきた。これらの措置は、例えば、清潔な滅菌された成分および設備、濾過の使用などの生産プロセスの改善を含む。しかし、これらの措置の実行は高価であり、また、滅菌された成分の使用が常に実行可能であるとは限らない。たとえこれらの措置がより低い最小滅菌線量の達成に役立つ可能性があるとしても、最終製品の滅菌はなお必要である。分解効果の緩和に関して記載されている他の戦略としては、温度を低下させたまたは制御した照射、線量率の調整、水分の最小化または乾燥したまたは固体形態での照射、および放射線防護剤としての機能を果たす添加剤の使用が挙げられる。しかし、これらの戦略は、全身的に適用できないことが多く、また、適切な戦略の実行は滅菌される製品または組成物にも依存する。
【0017】
したがって、滅菌を達成するために必要な条件、特に、照射による滅菌により、安定化組成物の活性成分の分解がもたらされる可能性があり、したがって、安定化組成物の細胞外核酸集団を安定化する能力が、滅菌されると低下するまたはさらには消滅することが周知の問題である。細胞内核酸および/または細胞特性も安定化する安定化組成物を使用する場合にも同じことが当てはまる;安定化性は、滅菌後も維持されなければならない。
【0018】
本発明者らにより、試料中の細胞外核酸集団を安定化するためのカスパーゼ阻害剤含有組成物が、照射による滅菌後に性能の有意な低下を示すことが判明した。当然、安定化組成物の安定化性に対する滅菌プロセスのかかる負の影響は望ましくない。たとえ所与の製品に対して必要な最小滅菌線量を低下させる措置をとることができたとしても、これらの措置は、一般には、それ自体で最終製品の無菌性を確実にするために十分なものではなく、最小滅菌線量の低下は、例えば上記の理由で最大滅菌線量を超える照射線量の適用が望ましい状況に対する対処とはならない。上記の分解効果を緩和するための戦略の多くは、医薬製品に対して開発されたものであり、異なる考慮事項が適用されるので核酸に関連する適用に容易には変換可能でない。
【0019】
生体試料中の核酸集団の安定化に好適な組成物を滅菌するための適切な戦略では、滅菌後の適切な安定化機能を確実にし、理想的には、核酸単離および/または分析などのさらなる下流のプロセスに干渉しない必要がある。滅菌後の適切な安定化性能は、特に、生体試料中に低濃度で含まれることが多い細胞外核酸集団に関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際公開第97/035589号
【文献】国際公開第97/34015号
【文献】米国特許出願公開第2010/0184069号明細書
【文献】米国特許第7,332,277号明細書
【文献】米国特許第7,442,506号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0111410号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0184069号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0209930号明細書
【文献】米国特許第6,617,170号明細書
【文献】米国特許第7,270,953号明細書
【非特許文献】
【0021】
【文献】Swarupら、FEBS Letters 581(2007)795-799、Fleischhacker Ann.N.Y.Acad.Sci.1075:40-49(2006)
【文献】FleischhackerおよびSchmidt、Biochmica et Biophysica Acta 1775(2007)191-232
【文献】Hromadnikovaら(2006)DNA and Cell biology、25、11、635-640;Fanら(2010)Clinical Chemistry 56:8
【文献】Chiuら(2001)、Clinical Chemistry 47:9 1607-1613;Fanら(2010)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、上記の先行技術の欠点の少なくとも1つを克服することが本発明の目的である。特に、カスパーゼ阻害剤を含み、また、滅菌後にも細胞含有生体試料などの生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適である、滅菌された組成物を調製する方法を提供することが本発明の目的である。滅菌された形態の組成物がかかる生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適である、対応する滅菌可能な組成物を提供することは本発明のさらなる目的である。滅菌された組成物の安定化特性を維持するために、照射による滅菌中の、カスパーゼ阻害剤などの安定化組成物中に含有される1つ以上の活性成分の分解を防止することは本発明のさらなる目的である。したがって、滅菌された組成物中の滅菌可能な組成物の1つ以上の安定化特性を維持することが望ましく、したがって、本発明の目的である。例えば、i)生体試料に含まれている細胞、ii)含まれている細胞内核酸(例えば、DNAおよび/もしくはRNA、特に、含有されている細胞の遺伝子発現プロファイルの安定化のため)ならびに/またはiii)細胞表面タンパク質などの細胞関連タンパク質を安定化する、カスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物のための対応する滅菌技術を提供することがさらなる目的である。
【0023】
本発明は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適であるカスパーゼ阻害剤含有組成物(本明細書では「安定化組成物(stabilization composition)」または「安定化組成物(stabilizing composition)」とも称される)を、チオアルコール(例えば、好ましくはN-アセチル-システインまたはグルタチオンなど)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物を安定化組成物中に含めた場合に、照射による滅菌中の分解効果から効率的に防護することができるという驚くべき所見に基づく。驚くべきことに、これらの化合物のうちの1つ以上を、分解からの防護のために、細胞外核酸の安定化性に負の影響を及ぼすことなく安定化組成物中に含めることができる。また、有利なことに、これらの化合物の少なくとも1つを安定化組成物中に含めることは、安定化された細胞外核酸集団の単離および/または分析などの下流の適用に干渉しない。したがって、これらの化合物により、組成物が、それぞれ少なくとも1つのその活性成分、例えば、特にカスパーゼ阻害剤などが照射による滅菌中に分解されることから防護され、また、安定化組成物の安定化特性が滅菌時に効率的に保存される。
【0024】
本発明の方法は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な組成物の、ガンマ線照射、電子ビーム照射またはX線などの照射による滅菌を有意に容易にするものである。本発明の方法により、1つ以上のカスパーゼ阻害剤および必要に応じて参照により本明細書に組み込まれるWO2013/045457A1、WO2014/146780A1、WO2014/146782A1、PCT/EP2015/055699、WO2014/049022A1、WO2013/045458A1およびWO2014/146781A1に開示されている1つ以上の他の安定化剤を含む安定化組成物に基づく滅菌された安定化組成物を調製することが可能になる。論じたように、これらの出願には、含有されている細胞の細胞内DNA(例えば、ゲノムDNA)および/または細胞内RNAなどの細胞内核酸(特に、遺伝子発現プロファイル)の安定化に好適な安定化組成物も開示されている。本方法により、特に、参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2015/055699に開示されている1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む高度に効率的かつ有利な安定化組成物に基づく滅菌された安定化組成物を調製することが可能になる。安定化組成物は、試料採集デバイス中で直接、都合よく調製および/または滅菌することができる。
【0025】
チオアルコール、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される化合物を使用することによって、照射によって滅菌することができる液体組成物を調製することがさらに可能になる。液体、特に水性の形態の滅菌された組成物が高度に有利である。例えば血液試料の安定化では、滅菌された液体または水性の安定化組成物の使用により、例えば、溶血を低減し、したがって、安定化効果を改善することが可能になる。本方法を用いて、穏やかなpH、特に、弱酸性pHを有するものを含めた液体安定化組成物を調製し、滅菌することが可能である。滅菌は、強塩基性pHまたは強酸性pH条件に戻す必要なく実施することができる。弱酸性pHは、滅菌中の安定化組成物における沈殿物の出現の回避または低減に寄与する。
【0026】
本発明はまた、滅菌されていない安定化組成物および上述の化合物を用いずに滅菌された滅菌組成物と比較して貯蔵寿命が延長された、滅菌された安定化組成物を調製することも可能にするものである。
【0027】
第一の態様に従って、本発明は、したがって、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成するための方法であって、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインまたはグルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物
を含む組成物を提供するステップ;および
b)滅菌のために組成物を照射するステップ
を含む方法を提供する。
【0028】
第二の態様に従って、本発明は、細胞含有生体試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するための方法であって、
a)i)本発明の第一の態様の方法による生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物、またはii)滅菌された形態の、本発明の第六の態様による組成物を得るステップ;および
b)安定化のために、細胞含有生体試料を滅菌された組成物と接触させるステップ
を含む方法を提供する。
【0029】
第三の態様に従って、本発明は、安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を単離するための方法であって、
a)本発明の第二の態様の方法に従って細胞含有生体試料を安定化するステップ;および
b)細胞外核酸を単離するステップ
を含む方法を提供する。
【0030】
第四の態様に従って、本発明は、細胞外核酸を処理および/または分析するための方法であって、
a)安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を本発明の第三の態様の方法に従って単離するステップ;ならびに
b)単離された細胞外核酸を処理および/または分析するステップ
を含む方法を提供する。
【0031】
第五の態様に従って、本発明は、滅菌可能な組成物を生成するための方法であって、滅菌された形態の組成物が、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適であり、方法が、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインまたはグルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物
を含む組成物を調製するステップ、ならびに、必要に応じて、
b)組成物を滅菌するステップ
を含む方法を提供する。
【0032】
この方法を使用して、第六の態様による組成物を調製することができる。
【0033】
第六の態様に従って、本発明は、滅菌可能な組成物であって、滅菌された形態の組成物が、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適であり、組成物が、本発明の第一の態様による方法のステップa)において提供される組成物である、滅菌可能な組成物を提供する。滅菌可能な組成物は、i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、ならびにii.チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインまたはグルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物を含む。本発明の第一の態様による方法のステップa)において提供される組成物であり得る第六の態様による滅菌可能な組成物は、複数の実施形態では、滅菌して、滅菌された組成物をもたらすことができる。
【0034】
第七の態様に従って、本発明は、本発明の第六の態様による滅菌可能な組成物を含む試料採集デバイス、例えば、容器、好ましくは試料採集チューブなどを提供する。
【0035】
第八の態様に従って、本発明は、本発明の第六の態様による組成物、または本発明の第七の態様による試料採集デバイスを含むキットを提供する。
【0036】
第九の態様に従って、本発明は、照射による滅菌中に生体試料の細胞外核酸集団またはその成分の安定化に好適な組成物を防護するための、チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインまたはグルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体から成る群より選択される少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0037】
本発明のさらなる態様を以下の詳細な説明において提示する。
【0038】
本技術は、生体試料中の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌可能な組成物および滅菌された組成物を、都合がよく、信頼でき、安全であり、かつ費用効率が高い様式で調製することを可能にするものである。かかる安定化組成物は、特に、生体試料がヒトまたは動物から採集される、例えば血液試料などである適用に有利である。これらの適用では、安全性の観点から、安定化組成物およびデバイスが無菌状態であることが高度に好ましい。さらに、本発明に従って、同様に安全性に寄与する無毒性化合物を照射防護剤として使用することができる。複数の実施形態では、提供される滅菌可能な組成物および滅菌された組成物は、含有されている細胞の細胞内核酸(例えば、ゲノムDNAなどの細胞内DNAおよび/または細胞内RNA)、特に、遺伝子発現プロファイルの安定化にも好適である。さらなる実施形態では、提供される滅菌可能な組成物および滅菌された組成物は、細胞含有試料の安定化に好適であり、したがって、安定化された試料に含有されている細胞を、例えば、細胞表面特性および/または細胞形態に基づいて分析することができる。
【0039】
特に、本発明は、照射により滅菌された、カスパーゼ阻害剤を含む液体安定化組成物を調製することを可能にするものである。照射による液体の滅菌は、滅菌される製品の活性に頻繁に干渉する。本発明者らにより、チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインおよび/またはグルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物を、カスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物に組み入れることにより、安定化組成物が照射により誘導される分解から防護される一方で、安定化組成物の安定化性は干渉されないことが判明した。これにより、安定化特性を維持する滅菌された組成物が提供される。これらの有利な効果は、ラジカルスカベンジャーとして使用される他の化合物では見られなかった。N-アセチル-システイン、アスコルビン酸および還元型グルタチオンが特に有効であることが判明した。
【0040】
液体無菌組成物をもたらすことが特に有用である。例えば、それにより、安定化組成物と全血または血漿もしくは血清のような血液由来試料などの液体生体試料の迅速かつ均一な混和が可能になる。さらに、液体、好ましくは水性の組成物の使用により、溶血が低減される。
【0041】
さらに、本発明の方法に従って安定化組成物を滅菌することにより、安定化組成物の保管性をさらに改善することができ、また、滅菌されていない組成物およびチオアルコール(好ましくはN-アセチル-システイン、グルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体の少なくとも1つを用いずに滅菌された組成物と比較して貯蔵寿命の延長が可能になる。これは別の利点である。
【0042】
本出願の他の目的、特徴、利点および態様は、以下の記載および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかになる。しかし、以下の記載、添付の特許請求の範囲および特定の実施例は、本出願の好ましい実施形態を示すものであるが、単に実例として与えるものに過ぎないことを理解されたい。開示されている発明の主旨および範囲内の種々の変化および改変は、以下を読むことにより当業者には容易に明らかになろう。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成するための方法であって、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミン、および水溶性ビタミンE誘導体より選択される少なくとも1つの化合物
を含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために前記組成物を照射するステップ
を含む方法。
(項目2)
滅菌のために前記組成物を照射するステップが、以下:
a)前記組成物が、イオン化照射により照射される;
b)前記組成物が、ガンマ線照射、電子ビーム照射、もしくはX線により照射される;
c)前記組成物が、ガンマ線照射もしくはX線により照射される;
d)前記組成物が、ガンマ線照射により照射される;
e)前記組成物が、5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、もしくは約8kGyから約15kGyの照射線量で照射される;
f)前記組成物か、5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、もしくは約8kGyから約15kGyの照射線量でガンマ線照射により照射される;
g)前記組成物が、8kGyから25kGy、もしくは8kGyから15kGyの照射線量でガンマ線照射により照射される;および/または
h)照射による滅菌の結果、前記組成物の無菌性保証水準(SAL)が10
-6
以下になる
の特徴の1つ以上を有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、固体形態で調製される;
b)前記組成物が、固体形態で調製され、照射前に溶解されて、水性であることが好ましい液体組成物が提供される;
d)前記組成物が、液体形態で調製され照射される;
e)前記組成物が、水性である;
f)前記組成物が、酸性pHを有する;
g)前記組成物が、pH4.0から7.0、pH4.1から6.9、pH4.2から6.8、pH4.3から6.6、pH4.4から6.3、pH4.5から6.0、またはpH4.5から5.5を有する、および/または
h)前記組成物が緩衝されている
の特徴の1つ以上を有する、項目1から2のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
前記組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記組成物が、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミン、および水溶性ビタミンE誘導体より選択される前記少なくとも1つの化合物を、20mg/ml未満、15mg/ml以下、10mg/ml以下、7mg/ml以下、3mg/ml以下、または1.5mg/ml以下の濃度で含む、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記組成物が、
i.N-アセチル-システイン、還元型であることが好ましいグルタチオン、ビタミンB、好ましくはビタミンB6、アスコルビン酸、およびトロロックスより選択される化合物;
ii.N-アセチル-システイン、還元型であることが好ましいグルタチオン、アスコルビン酸、およびトロロックスより選択される化合物;
iii.N-アセチル-システイン、還元型であることが好ましいグルタチオン、ビタミンB、好ましくはビタミンB6、およびアスコルビン酸より選択される化合物;
iv.N-アセチル-システイン、還元型であることが好ましいグルタチオン、およびアスコルビン酸より選択される化合物;または
v.N-アセチル-システイン
を含む、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
a)
i.好ましくは項目13に記載の少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.
aa)0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン;
ab)還元型であることが好ましい、0.03mg/mlから10mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/mlまたは0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度のグルタチオン;
ac)20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlなどの濃度のアスコルビン酸;
ad)0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度のビタミンB、好ましくはビタミンB6;
ae)0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度のトロロックス
の少なくとも1つを含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために前記組成物を照射するステップ
を含み、
前記組成物が、N-アセチル-システインをaa)に記載の濃度で含むことが好ましい、
項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射される、および/または、前記組成物が、滅菌のためにガンマ線照射により照射される、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、N-アセチル-システインを含む;
b)前記組成物が、N-アセチル-システインを、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度で含む;
c)前記組成物が、N-アセチル-システインを含み、液体形態、好ましくは水性形態で照射により滅菌される;および/または
d)前記組成物が、N-アセチル-システインを、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度で含み、水性液体形態で滅菌される
の特徴の1つ以上を有する、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、グルタチオンを含む;
b)前記組成物が、グルタチオンを還元型として含む;
c)前記組成物が、グルタチオンを、0.03mg/mlから10mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度で含み、前記グルタチオンは、還元型であることが好ましい;
d)前記組成物が、グルタチオンを含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌され、前記グルタチオンは、還元型であることが好ましい;および/または
e)前記組成物が、グルタチオンを、0.03mg/mlから10mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度で含み、水性液体形態で滅菌され、前記グルタチオンは、還元型であることが好ましい
の特徴の1つ以上を有する、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、少なくとも1つの水溶性ビタミンを含み、前記水溶性ビタミンが、アスコルビン酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、葉酸塩または葉酸、ビタミンB12、ビオチンおよびパントテン酸より選択されることが好ましく、前記組成物が、アスコルビン酸を含むことがさらに好ましい;
b)前記組成物が、アスコルビン酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、葉酸塩または葉酸、ビタミンB12、ビオチンおよびパントテン酸より選択されることが好ましく、アスコルビン酸であることがさらに好ましい少なくとも1つの水溶性ビタミンを、20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlなどの濃度で含む;
c)前記組成物が、少なくとも1つの水溶性ビタミンを含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;
d)前記組成物が、アスコルビン酸を含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;
e)前記組成物が、少なくとも1つの水溶性ビタミンを20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlなどの濃度で含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;
f)前記組成物が、アスコルビン酸を20mg/ml未満の濃度で含み、前記濃度が、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlより選択されてもよく、また、前記組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射により滅菌される;
g)前記組成物が、ビタミンB、好ましくはビタミンB6を0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度で含む;ならびに/または
h)前記組成物が、ビタミンB、好ましくはビタミンB6を0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度で含み、前記組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射により滅菌される
の特徴の1つ以上を含む、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、水溶性ビタミンE誘導体を含み、前記水溶性ビタミンE誘導体は、トロロックスであることが好ましい;
b)前記組成物が、トロロックスを含む;
c)前記組成物が、水溶性ビタミンE誘導体、さらに好ましくはトロロックスを、0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度で含む;
d)前記組成物が、水溶性ビタミンE誘導体、好ましくはトロロックスを含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;
e)前記組成物が、水溶性ビタミンE誘導体、必要に応じてトロロックスを、0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度で含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される
の特徴の1つ以上を有する、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記カスパーゼ阻害剤が、以下:
a)前記カスパーゼ阻害剤が、汎カスパーゼ阻害剤である;
b)前記カスパーゼ阻害剤が、改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
c)前記カスパーゼ阻害剤が、好ましくはカルボキシル末端においてO-フェノキシ(OPh)基で改変されている改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
d)前記カスパーゼ阻害剤が、好ましくはN末端においてグルタミン(Q)基で改変されている改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
e)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-Val-Ala-Asp(OMe)-FMKから成る群より選択される;
f)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPhおよびZ-Val-Ala-Asp(OMe)-FMKから成る群より選択される;ならびに/または
g)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPhである
の特徴の1つ以上を有する、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記組成物が、
a)抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA;
b)安定化剤としてポリ(オキシエチレン)ポリマー;および/または
c)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド
のうちの1つ以上をさらに含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記組成物が、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーをさらに含み、必要に応じて、前記組成物が、以下:
a)前記ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、ポリエチレングリコール、好ましくは非置換ポリエチレングリコールである;
b)前記組成物が、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;
c)前記組成物が、1500未満の分子量を有する少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーを含み、さらに好ましくは、前記分子量は、100から800、150から700、200から600および200から500より選択される範囲に存する;
d)前記組成物が、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマー、および、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量より少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;ならびに/または
e)前記組成物が、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーおよび低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含み、前記高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、1500から50000、1500から40000、2000から30000、2500から25000、3000から20000、3500から15000および4000から12500より選択される範囲に存する分子量を有し、かつ/または、前記低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、1000以下の分子量を有し、好ましくは、前記分子量は、100から1000、150から800、150から700、200から600および200から500より選択される範囲に存する
の特徴の1つ以上を有する、項目1から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記組成物が、少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミドをさらに含み、必要に応じて、前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、式1
【化6】
(式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1-C5アルキル残基、C1-C4アルキル残基またはC1-C3アルキル残基、さらに好ましいC1-C2アルキル残基であり、R2およびR3は同一であり、もしくは異なり、水素残基、および線状もしくは分岐した様式に配列された1~20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基、好ましくはアルキル残基から選択され、R4は、酸素、硫黄もしくはセレン残基であり、好ましくは、R4は酸素である)
に従う少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミドを含む;ならびに/または
b)前記組成物が、N,N-ジアルキルプロパンアミド、好ましくはN,N-ジメチルプロパンアミド、および/もしくはブタンアミド
の特徴の1つ以上を有する、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記組成物が、式1
【化7】
(式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1-C5アルキル残基、C1-C4アルキル残基またはC1-C3アルキル残基、さらに好ましいC1-C2アルキル残基であり、R2およびR3は同一であり、または異なり、水素残基、および線状または分岐した様式に配列された1~20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基、好ましくはアルキル残基から選択され、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基であり、好ましくは、R4は酸素である)
に従う少なくとも1つの化合物を含む、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
式1に従う前記少なくとも1つの化合物が、第一級、第二級または第三級カルボン酸アミドである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記滅菌された組成物が、以下:
i)細胞含有試料に含まれている細胞内核酸の安定化に好適であり、好ましくは、細胞内RNAおよび/または細胞内DNAを安定化する;
ii)細胞含有試料中に存在する核酸の分解を、安定化に起因して低減させる;
iii)試料に含有されている細胞におけるトランスクリプトームおよび/または転写レベルの安定化に好適であり、好ましくは、c-fos、IL-1ベータ、IL-8およびp53より選択される1つ以上のマーカー遺伝子の転写レベルを、安定化すると少なくとも12時間にわたって、少なくとも24時間にわたっておよび好ましくは少なくとも48時間にわたって安定化するのに好適である
の特徴の1つ以上を有する、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記滅菌された組成物により有核細胞または一般の細胞の溶解が誘導されない、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記滅菌された組成物が、核酸-核酸架橋、タンパク質-核酸架橋および/またはタンパク質-タンパク質架橋を誘導する架橋剤を含まず、また、ホルムアルデヒド放出剤の使用を含まない、項目1から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記滅菌された組成物が、以下:
a)安定化により、安定化された細胞含有試料から細胞を単離することが可能になる;
b)前記細胞含有試料が血液試料であり、血液試料に含有されている細胞が安定化される;
c)前記細胞含有試料が血液試料であり、白血球が安定化される;
d)細胞の形態が保存される;
e)有核細胞の形態が保存される;
f)前記試料が血液試料であり、含有されるリンパ球および/もしくは単球が安定化される;
g)細胞表面エピトープが保存される;ならびに/または
h)細胞表面タンパク質が保存される
の安定化特性を有する、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
滅菌可能な組成物であって、滅菌された形態の前記組成物が、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適であり、前記組成物が、項目1から16のいずれか一項または項目17から22のいずれか一項に記載されているものであり、好ましくは前記組成物が滅菌されている、滅菌可能な組成物。
(項目24)
細胞含有生体試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するための方法であって、
a)項目1から16のいずれか一項もしくは項目17から22のいずれか一項に記載の方法に従って生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を得る、または滅菌された形態の項目23に記載の組成物を得るステップ;および
b)前記細胞含有生体試料を、安定化のために前記滅菌された組成物と接触させるステップ
を含む方法。
(項目25)
安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を単離するための方法であって、
a)項目24に記載の方法に従って細胞含有生体試料を安定化するステップ;および
b)細胞外核酸を単離するステップ
を含む方法。
(項目26)
生体試料の細胞外核酸集団またはその成分の安定化に好適な組成物を照射による滅菌中に防護するための、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミン、および水溶性ビタミンE誘導体から成る群より選択される少なくとも1つの化合物の使用。
(項目27)
安定化された細胞含有生体試料から核酸を単離するための方法であって、
a)細胞含有生体試料を安定化するステップであり、安定化が、
i)項目1から22のいずれか一項に記載の方法に従って滅菌された組成物を得ること;または
ii)滅菌されている、項目23に記載の組成物を得ること;および
前記細胞含有生体試料を前記滅菌された組成物と接触させること
を含む、ステップ;ならびに
b)前記安定化された試料から核酸を単離するステップ
を含む方法。
(項目28)
aa)ステップb)が、細胞内核酸、好ましくは細胞内RNAおよび/またはゲノムDNAなどの細胞内DNAを単離することを含む;
bb)ステップb)が、細胞外核酸を単離することを含む;
cc)前記方法が、前記安定化された試料から細胞を取り出し、取り出された細胞から核酸を単離するステップを含む
の特徴の1つ以上を有する、項目27に記載の方法。
(項目29)
安定化された細胞含有生体試料から細胞を単離するための方法であって、
a)細胞含有生体試料を安定化するステップであり、安定化が、
i)項目1から22のいずれか一項に記載の方法に従って滅菌された組成物を得ること;または
ii)滅菌されている、項目23に記載の組成物を得ること;および
前記細胞含有生体試料を前記滅菌された組成物と接触させること
を含むステップ;ならびに
b)前記安定化された試料から細胞を単離するステップを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、ガンマ線照射のカスパーゼ阻害剤含有組成物の安定化性に対する効果を示すグラフである。効果を血漿中のccfDNAレベルに基づいて分析する。図は、保管後の、非安定化EDTA血液中(左)、および、カスパーゼ阻害剤(非無菌性のものまたは異なる線量のガンマ線照射で滅菌されたもの)を含む安定化組成物を含むチューブ中に引き込んだ安定化血液試料中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化および標準偏差を示す。
【0044】
【
図2】
図2は、DMSOに溶解させた異なる濃度の純粋なカスパーゼ阻害剤を用いて調製したHPLC標準曲線である。
【0045】
【
図3】
図3は、N-アセチル-システイン、アスコルビン酸、没食子酸およびタンニン酸の、カスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物への添加を示すグラフである。保管後の、安定化血液中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化。
【0046】
【
図4】
図4は、異なる濃度のアスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオン(還元型)の、カスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物への添加を示すグラフである。保管後の、安定化血液中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化。
【0047】
【
図5】
図5は、異なる濃度のアスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオンの、カスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物への添加を示すグラフである。保管後の、安定化血液中の18S rDNA遺伝子の500bp断片の平均全コピー数。
【0048】
【
図6】
図6は、アスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオンの種々の組み合わせのカスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物への添加を示すグラフである。保管後の、安定化血液中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化。
【0049】
【
図7】
図7は、スカベンジャー添加を伴う安定化血液中のccfDNAレベルに対するガンマ線照射の効果を示すグラフである。保管後の、照射を行った安定化試薬を用いて安定化された血液試料中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化。
【0050】
【
図8A】
図8A、
図8Bは、N-アセチル-システインの安定化試薬への添加および漸増線量のガンマ線照射の、血漿中のccfDNAレベルに対する効果を示すグラフである。非安定化EDTA血液中(左)、ならびに、0.5、1.0、2.0および4.0mg/mlのN-アセチル-システインをチューブに引き込んだ安定化血液試料中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化および標準偏差;非無菌性のものまたは異なる線量のガンマ線照射で滅菌されたもの;ccfDNAレベルは安定化された試料を保管した後に決定した。
【
図8B】
図8A、
図8Bは、N-アセチル-システインの安定化試薬への添加および漸増線量のガンマ線照射の、血漿中のccfDNAレベルに対する効果を示すグラフである。非安定化EDTA血液中(左)、ならびに、0.5、1.0、2.0および4.0mg/mlのN-アセチル-システインをチューブに引き込んだ安定化血液試料中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化および標準偏差;非無菌性のものまたは異なる線量のガンマ線照射で滅菌されたもの;ccfDNAレベルは安定化された試料を保管した後に決定した。
【0051】
【
図9】
図9は、室温で5日間保管した8名のドナーからの血液試料中の18S rDNA遺伝子の500bp断片の平均全コピー数を示すグラフである。血液試料を、スカベンジャーとしてビタミンB6を伴う安定化試薬(左のバー)または伴わない安定化試薬(左から3番目のバー)を用いて安定化した。これらの安定化試薬は滅菌されたものであった。対照として、ビタミンB6を伴うが滅菌されていない安定化試薬(左から2番目のバー)および非安定化EDTA血液(左から4番目のバー)を含めた。
【0052】
【
図10】
図10は、室温で5日間保管した6名のドナーからの血液試料中の18S rDNA遺伝子の500bp断片の平均全コピー数を示すグラフである。血液試料を、異なるカスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬を用いて安定化した。左のバー:カスパーゼ阻害剤Boc-D-(OMe)-FMK(滅菌されていないもの)を含む安定化試薬;左から2番目のバー:カスパーゼ阻害剤Boc-D-(OMe)-FMKおよびスカベンジャーとしてN-アセチル-システイン(滅菌されたもの)を含む安定化試薬;左から3番目のバー:カスパーゼ阻害剤Z-VAD(OMe)-FMK(滅菌されていないもの)を含む安定化試薬;左から4番目のバー:カスパーゼ阻害剤Z-VAD(OMe)-FMKおよびスカベンジャーとしてN-アセチル-システイン(滅菌されたもの)を含む安定化試薬;左から5番目のバー:PAXgene Blood ccfDNA Tube;左から6番目のバー:非安定化EDTA血液。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
上記のいくつもの理由から、生体試料の細胞外核酸集団、特にccfDNA集団の安定化に好適な滅菌された組成物を提供することが望ましい。さらに細胞内DNA(例えば、ゲノムDNA)および/または細胞内RNAなどの細胞内核酸の安定化に好適であり、特に、遺伝子発現プロファイルの安定化に好適である安定化組成物に関して同じことが当てはまる。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らにより、照射による滅菌、特に、ガンマ線照射により、安定化試薬、カスパーゼ阻害剤の主要な成分の分解が導かれる可能性があることが判明した。照射エネルギーおよび時間に応じて、カスパーゼ阻害剤の95%に至るまでが滅菌プロセス中に分解される可能性がある。滅菌中のカスパーゼ阻害剤の分解により、安定化組成物の性能の低下が導かれる。この効果は、血液試料を安定化するためにかかる滅菌された安定化組成物を使用した場合の血液細胞からのゲノムDNAの放出の増加による例において見ることができる。したがって、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物中の1つ以上の活性成分、例えば、特に、カスパーゼ阻害剤などが、照射を伴う滅菌プロセス中、特にガンマ線照射による滅菌中に実質的に分解されるのを防止するために、方法が必要とされていた。
【0054】
本発明者らにより、ある特定の化合物のみが、ガンマ線照射による滅菌などの照射を伴う滅菌中に安定化組成物を防護することができることが判明した。これらの化合物としては、特にN-アセチル-システインおよびグルタチオン(特に、還元型)などのチオアルコール、アスコルビン酸、およびビタミンEまたはトロロックスなどのその誘導体などの水溶性ビタミンが挙げられる。試験した多数の化合物候補のうち、これらの化合物のみが、安定化組成物の安定化性能に負の影響を及ぼすことなく、安定化組成物に含まれているカスパーゼ阻害剤(および必要に応じて他の分解感受性成分)を照射による滅菌中の実質的な分解から防護することが判明した。この有利な効果の組み合わせは、血液試料中のccfDNA集団の安定化に関する実施例において示す。参照しやすさのために、特にN-アセチル-システインおよびグルタチオン(特に、還元型)などのチオアルコール、アスコルビン酸、およびビタミンEまたはトロロックスなどのその誘導体などの水溶性ビタミンは、本明細書では、時には、集合的に「本発明の化合物」と称される。
【0055】
例えば医薬組成物中でラジカルスカベンジャーとしての機能を果たすことが公知であるタンニン酸および没食子酸などの他の化合物は、滅菌後に、細胞外核酸集団の安定化に好適なカスパーゼ阻害剤含有組成物の安定化性能に干渉することが判明した。したがって、得られる、これらの化合物を含む滅菌された組成物は、試料中の細胞外核酸集団を安定化するためには不適当であった。また、ラジカルスカベンジャーとしての機能を果たすことが当技術分野において記載されている他の化合物、例えば、マンニトール、イソプロパノールまたはTween-80などは、生体試料に含まれている細胞外核酸集団の安定化に好適なカスパーゼ阻害剤含有組成物に対する適切な放射線防護を媒介すると判明することはなかった。
【0056】
実施例によって実証されるように、本発明の化合物によって媒介される防護効果は、広範囲の滅菌条件および広範囲の照射線量にわたって達成される。有利なことに、化合物は、弱酸性pHにおいて有効であり、また、有利なことに、滅菌中に強酸性または強塩基性pH条件に戻す必要はない。
【0057】
したがって、本発明者らにより、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適なカスパーゼ阻害剤含有組成物を、滅菌前に本発明の化合物の少なくとも1つを組成物中に含めることによって滅菌中の分解から効率的に防護できることが判明した。驚くべきことに、これらの防護用化合物は、基本的に細胞外核酸集団の安定化における組成物の性能に悪影響を及ぼすことなく添加することが可能である。得られる滅菌された組成物により、含有される安定化された細胞外核酸集団の単離および/または分析などの下流の適用も可能になる。さらに細胞内DNAおよび/または細胞内RNAなどの細胞内核酸の安定化に好適であり、特に、遺伝子発現プロファイルの安定化に好適であるカスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物に関しても同じことが当てはまる。それにより、本発明は、当技術分野に重要な貢献をする。
【0058】
本発明において使用するための最も好ましい化合物は、N-アセチル-システインである。N-アセチル-システインは、照射、特にガンマ線照射による滅菌などの滅菌中に優れた防護をもたらす。同時に、実施例において実証するように、N-アセチル-システインは、安定化性、特に、ccfDNA安定化に対する安定化組成物の性能に干渉しない。
【0059】
A.滅菌された組成物を生成するための方法
上記の所見は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む滅菌された組成物を生成するための方法に有利に適用することができる。
【0060】
したがって、第一の態様に従って、本発明は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法であって、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.チオアルコール(N-アセチル-システインまたはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物
を含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために組成物を照射するステップ
を含む方法を提供する。
【0061】
本明細書において用いる場合の用語「細胞外核酸」(複数)または「細胞外核酸」(単数)は、特に、細胞に含有されない核酸を指す。それぞれの細胞外核酸は、多くの場合、無細胞核酸とも呼ばれる。これらの用語は、本明細書では同義語として用いている。したがって、細胞外核酸は、通常、試料中の1細胞の外部または複数の細胞の外部に存在する。用語「細胞外核酸」は、例えば、細胞外DNAならびに細胞外RNAも指す。例えば体液などの生体試料の無細胞画分(それぞれ部分)において見出される典型的な細胞外核酸の例としては、哺乳動物細胞外核酸、例えば、細胞外腫瘍関連または腫瘍由来DNAおよび/またはRNA、他の細胞外疾患関連DNAおよび/またはRNA、エピジェネティック修飾DNA、胎児DNAおよび/またはRNA、低分子干渉RNA(例えばmiRNAおよびsiRNAなど)など、ならびに非哺乳動物細胞外核酸、例えば、ウイルス核酸、細胞外核酸集団へと例えば原核生物(例えば細菌)、ウイルス、真核寄生虫または真菌から放出される病原体核酸などが挙げられるが、これらに限定されない。細胞外核酸集団は、損傷細胞または死細胞から放出されたある一定の量の細胞内核酸を通常含む。例えば、血液中に存在する細胞外核酸集団は、損傷細胞または死細胞から放出された細胞内グロビンmRNAを通常含む。これは、インビボで発生する自然プロセスである。細胞外核酸集団中に存在するかかる細胞内核酸は、後の核酸検出方法における対照という目的に役立つこともできる。上述の適用において記載する安定化方法は、特に、細胞外核酸集団に含まれている細胞内核酸、例えばゲノムDNAの量が、細胞含有試料を採集した後、その試料のエクスビボでの取り扱いに起因して有意に増加するリスクを低減させる。したがって、エクスビボでの取り扱いのための細胞外核酸集団の変更を低減させ、さらに防止することができる。本明細書において、循環体液、例えば血液またはリンパ液から得られる細胞外核酸は循環細胞外核酸または循環無細胞核酸と呼ばれる。本明細書において使用される場合、用語細胞外核酸は、特に、哺乳動物細胞外核酸を指し得る。例としては、疾患関連または疾患由来細胞外核酸、例えば、腫瘍関連または腫瘍由来細胞外核酸、炎症、壊死もしくは傷害、特に外傷に起因して放出される細胞外核酸、他の疾患に関係したおよび/もしくは他の疾患に起因して放出される細胞外核酸、または胎児に由来する細胞外核酸などが挙げられるが、これらに限定されない。ccfDNA、およびしたがってccfDNA集団の安定化は特に好ましい。本明細書に記載される場合の用語「細胞外核酸」(複数)または「細胞外核酸」(単数)は、他の細胞含有生体試料、特に、体液以外の生体試料から得られる細胞外核酸も指す。通常、試料は、1つより多くの種類またはタイプの細胞外核酸を含む。
【0062】
本明細書において用いる場合の用語「細胞外核酸集団」は、特に、細胞含有試料に含まれている様々な細胞外核酸の集合体(collective)を指す。細胞含有試料は、通常、特徴的なおよびしたがってユニークな細胞外核酸集団を含む。したがって、特定試料の細胞外核酸集団に含まれる1つ以上の細胞外核酸のタイプ、種類、比および/または量は、重要な試料特性であり得る。1つの実施形態によると、細胞外核酸集団は、細胞外DNA、特に無細胞循環DNAを指す。上で論じたように、前記細胞外核酸集団を安定化することおよびしたがって試料を採集した状態で前記細胞外核酸集団を実質的に保存することは重要である。試料の細胞外核酸集団に含まれる1つ以上の細胞外核酸のその組成および/または量は、価値のある医学、予後予測または診断情報を提供することができるからである。したがって、細胞外核酸集団のプロファイルが、意図される安定化期間にわたって効率的に安定化されると有利である。本明細書に記載する安定化技術は、試料採集および安定化後、細胞内核酸による、特にゲノムDNAによる、細胞外核酸集団の汚染およびしたがって希釈を低減させる。かくして、細胞外核酸集団の実質的保存が達成される。実施例によって証明するように、細胞外核酸集団(ここでは細胞外DNA集団について証明される)の、含まれている細胞外核酸の量、質および/または組成に関する変化、特に、放出されたゲノムDNAの増加に起因する変化は、安定化期間にわたって、本明細書に記載されるようなカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物を使用する場合、非安定化試料に比べてまたは血液試料もしくは血液由来試料の場合は例えばEDTAによって安定化されている対応する試料に比べて、相当低減される。1つの実施形態によると、T0(安定化時点)から安定化期間の終わり(好ましくは、T0の48時間、72時間または96時間後)までのゲノムDNAの増加は、非安定化試料に比べて、または血液試料もしくは血液に由来する試料の場合は例えばEDTAによって安定化されている対応する試料(例えば、1.5mgEDTA/ml安定化血液試料)に比べて、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%低減される。
【0063】
複数の実施形態では、提供される滅菌された組成物は、さらに、細胞内DNA(例えば、ゲノムDNA)および/または細胞内RNAなどの細胞内核酸の安定化に好適である。特に、提供される滅菌された組成物は、含有されている細胞の遺伝子発現プロファイルを安定化し、それにより、遺伝子発現の信頼できるプロファイリングを可能にするのに好適であり得る。含有されている細胞の遺伝子転写プロファイルが安定化され、したがって保存されることにより、安定化期間中、遺伝子発現プロファイルの変化が低減する、またはさらには防止される。したがって、所望であれば、安定化された試料中の細胞外核酸集団と細胞内核酸集団を別々に分析することを可能にする滅菌された安定化組成物が提供される。
【0064】
複数の実施形態では、滅菌された安定化組成物により、生体試料に含まれている細胞を安定化し、したがって実質的にインタクトなままにすることにより、安定化された試料に含有されている細胞を分析することも可能になる。例えば、細胞表面特性および/または細胞形態などの細胞の性質を安定化することが有利である。これにより、安定化された試料に含有される特定の細胞、例えば、血液試料に含有される血液細胞または循環する腫瘍細胞などを分析することおよび分離することも可能になる。
【0065】
生体試料は、細胞含有生体試料または細胞を含有することが疑われる生体試料であり得る。生体試料は、体液、および体液に由来する細胞含有試料より成る群から選択され得る。例として、全血、血液に由来する試料、例えば血漿もしくは血清、バフィコート、尿、痰、涙液、リンパ液、羊水、汗、髄液、脳脊髄液、腹水、乳、糞便、気管支洗浄液、唾液、羊水、鼻分泌物、膣分泌物、精液/精漿、創傷分泌物、細胞培養物およびスワブ試料が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態によると、細胞含有生体試料は、体液、身体の分泌物または身体の排泄物、好ましくは、体液、最も好ましくは、尿、リンパ液、血液、バフィコート、血漿または血清である。特に、細胞含有生体試料は、循環体液、例えば、血液またはリンパ液であり得る。好ましくは、細胞含有生体試料は、ときには全血と呼ばれる、血液試料である。血液試料は、好ましくは、安定化の前に希釈または分画されていない。1つの実施形態によると、血液試料は末梢血である。また好ましくは、生体試料は血漿または血清であり得る。1つの実施形態によると、細胞含有生体試料をヒトから得た。細胞含有生体試料は、試料の細胞外部分の中の細胞外核酸を含むか、またはこれを含むことが疑われる。
【0066】
本発明の第一の態様による方法において、ステップa)において提供され、ステップb)において照射される組成物は、まだ安定化すべき生体試料と接触していないことが理解されるべきである。組成物は、滅菌のために照射する、生体試料を伴わない安定化組成物自体、すなわち試薬である。したがって、ステップa)において提供され、ステップb)において照射される組成物は、まだ生体試料と接触しておらず、したがって、ステップa)およびb)において生体試料を含んでいない。したがって、ステップa)において提供され、ステップb)において照射される組成物は、細胞および/または細胞断片を含んでいない。したがって、ステップa)において提供され、ステップb)において照射される組成物は、体液および/または体液に由来する細胞含有試料を含んでいない。
【0067】
この方法をここでより詳細に記載する。その際、方法のステップa)およびb)を最初に記載する。ステップa)を論じる際、ステップa)の特徴ii.に従って有利な化合物をさらに記載することに重きを置く。次いで、ステップa)において提供、例えば調製される例示的な組成物をさらに記載する。
【0068】
ステップa)、組成物の提供
ステップa)は、少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、ならびにチオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインおよび/もしくはグルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEもしくはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を提供することを包含する。かかる組成物は、第五の態様による方法を使用して生成し、したがって調製することができる。
【0069】
提供されるカスパーゼ阻害剤含有組成物は、生体試料の細胞外核酸集団、特にccfDNAの安定化に好適である。安定化効果を増強するために組成物にさらに含めることができるさらなる添加剤は、当業者に公知であり、本明細書にも記載している。
【0070】
ステップa)において提供される組成物の形態は、特に限定されない。例えば、組成物は、固体形態で提供することができる。所望であれば、組成物は、凍結乾燥形態で提供することができる。組成物を固体形態で提供、例えば調製する場合には、方法ステップb)を実施する前に改変して液体組成物を提供することができる。例えば、固体組成物を照射前に液体に溶解させて、照射ステップb)のために水性組成物であることが好ましい液体組成物を提供することができる。
【0071】
ステップa)において提供される組成物は液体形態であることが好ましい。組成物を水性形態で調製することが好ましい。例えば、組成物の成分を適切な溶媒と接触させる、好ましくは混合して、液体組成物を得ることができる。液体組成物は、水性組成物であることが好ましい。水を溶媒として使用することができる。
【0072】
「液体形態」で提供または調製される、とは、本明細書で使用する場合、特に、液体組成物を提供または調製されることを意味し得る。液体組成物は、1つの相のみの均一の混合物であってよいが、例えば沈殿物などの固体成分を含む液体組成物も本発明の範囲内に入る。「水性形態」で提供または調製される、とは、本明細書で使用する場合、特に、水溶液組成物を提供または調製されることを意味し得る。「水性」組成物は、水を含む。1つの実施形態によると、「水性」組成物は、主要な成分として水を含む(%v/v)。
【0073】
理論に束縛されることを望むものではないが、液体、特に、水性の組成物を調製すると、生体試料中の細胞外核酸集団を安定化するために使用する際にいくつかの利点がもたらされる。液体組成物では、例えば、安定化すべき細胞外核酸を含むまたは含む疑いがある液体試料と迅速に都合よく混和することが可能になる。液体試料の例は、血液試料、血漿試料および血清試料である。また、血液試料を安定化する場合には、水を含有する安定化組成物を調製することが、この実施形態により溶血が有意に低減するので、特に好ましい。したがって、水を含有する安定化組成物を調製することにより、前記安定化組成物をその後、血液試料を安定化するために使用する際に利点が生じる。
【0074】
ステップa)において調製される組成物の成分は、溶媒、例えば、水、または、例えば、例えばMOPS、TRIS、PBSなどの生物学的緩衝液を含む緩衝液体中に含めることができ、それぞれ、溶解させることができる。さらに、安定化組成物の成分をジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性非プロトン溶媒に溶解させることもでき、安定化組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性非プロトン溶媒を含んでもよい。DMSOは、特に、ビタミンEまたはトロロックスなどのその誘導体と組み合わせて使用する場合に、本発明の化合物によって付与される、滅菌中の安定化組成物の防護を支持することも判明した。
【0075】
本方法を用いて、照射を伴う滅菌プロセス中、安定化組成物中に含有されるカスパーゼ阻害剤を防護することが可能である。これは、穏やかなpH条件においても有利である。強酸性または強塩基性pH条件に戻す必要はない。チオアルコール(N-アセチル-システインおよび/またはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物は、穏やかなpH条件下で活性である。これは、防護のためのアスコルビン酸の使用を含む。弱酸性条件などの穏やかなpH条件を使用することは、低温で安定化試薬の単一成分が沈殿するのが特によく防止されるので、有利である。それにより、液体試料とのいっそう迅速な混和も可能になり、これが溶血の低減に寄与し、したがって、安定化効果が改善される。組成物は弱酸性pHを有することが好ましい。
【0076】
一つの実施形態に従って、ステップa)で提供される安定化組成物は、4.0から7.0のpH、4.1から6.9のpH、4.2から6.8のpH、4.3から6.6のpH、4.4から6.3のpH、4.5から6.0のpH、または4.5から5.5のpHから選択されるpHを有する。
【0077】
1つの実施形態によると、照射ステップb)を実施する前に組成物を試料採集デバイス中に提供する、または組成物を試料採集デバイス中に充填する。試料採集デバイスは、本発明の第七の態様によるデバイスであってよい。試料採集デバイスは、照射を伴う滅菌に好適なものである。
【0078】
特徴i、少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤
ステップa)において提供される安定化組成物は、少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤を含む。
【0079】
カスパーゼ阻害剤は、WO2013/045457A1またはWO2013/045458A1に記載されているカスパーゼ阻害剤であってよい。そこで開示されているカスパーゼ阻害剤は、参照により本明細書に組み込まれる。これらの先行技術文書に記載されているように、カスパーゼ阻害剤は、単独でおよび他の安定化剤との組み合わせでも、生体試料、例えば血液試料などの細胞外核酸集団(例えば、細胞外DNA)の安定化において高度に有効である。
【0080】
好ましくは、カスパーゼ阻害剤は細胞透過性である。カスパーゼ遺伝子ファミリーのメンバーは、アポトーシスに重要な役割を果たす。個々のカスパーゼの基質選好または特異性は、カスパーゼと結合についてうまく競合するペプチドの開発に活用されている。カスパーゼ特異的ペプチドを例えばアルデヒド化合物、ニトリル化合物またはケトン化合物にカップリングさせることによりカスパーゼ活性化の可逆的または不可逆的阻害剤を生成することができる。例えば、Z-VAD-FMKなどのフルオロメチルケトン(FMK)誘導体化ペプチドは、追加の細胞毒性効果のない有効な不可逆的阻害剤として作用する。N末端およびOメチル側鎖にベンジルオキシカルボニル基(BOC)を有する、合成された阻害剤は、細胞透過性増強を呈示する。C末端にフェノキシ基を有する、さらなる好適なカスパーゼ阻害剤が合成される。例はQ-VD-OPhであり、これは、カスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMKよりアポトーシスの防止およびしたがって安定化の支援にさらにいっそう有効である、細胞透過性の不可逆的広域カスパーゼ阻害剤である。
【0081】
1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、汎カスパーゼ阻害剤、したがって、広域カスパーゼ阻害剤である。1つの実施形態によると、1つの実施形態によると、前記カスパーゼ阻害剤は、ペプチドまたはタンパク質を含むか、またはこれからなる。1つの実施形態によると、前記カスパーゼ阻害剤は、改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む。好ましくは、前記カスパーゼ特異的ペプチドは、アルデヒド化合物、ニトリル化合物またはケトン化合物によって改変されている。1つの実施形態によると、前記カスパーゼ特異的ペプチドは、O-フェノキシ(OPh)基またはフルオロメチルケトン(FMK)基で好ましくはカルボキシル末端が修飾されている。タンパク質またはペプチドを含む、またはそれから成る好適なカスパーゼ阻害剤、および改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤は、WO2013/045457の表1に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。この表には、好適なカスパーゼ阻害剤の例が提示されている。
【0082】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の化合物は、とりわけ、ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、および特に官能基により改変されたペプチドであるカスパーゼ阻害剤を防護するために活性であると考えられる。本発明の化合物は、特に、好ましくはカルボキシル末端においてO-フェノキシ(OPh)基で改変されており、かつ/または、好ましくはN末端においてグルタミン(Q)基で改変されているペプチド性カスパーゼ阻害剤を防護するのに好適である。かかるカスパーゼ阻害剤の例は、Q-VD-OPhである。
【0083】
1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPh、Z-VAD(OMe)-FMKおよびBoc-D-(OMe)-FMKから成る群より選択される。1つの実施形態によると、前記カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPhおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択される。好ましい実施形態では、カスパーゼの広域阻害剤であるQ-VD-OPhを安定化のために使用する。Q-VD-OPhは、細胞透過性であり、アポトーシスによる細胞死を阻害する。Q-VD-OPhは、極めて高濃度でも細胞に対して毒性でなく、アミノ酸バリンおよびアスパラギン酸にコンジュゲートされたカルボキシ末端フェノキシ基を含む。それは、カスパーゼ-9とカスパーゼ-3、カスパーゼ-8とカスパーゼ-10、およびカスパーゼ-12という3つの主要アポトーシス経路によって媒介されるアポトーシスの防止に等しく有効である(Casertaら、2003)。
【0084】
実施例において示すように、本発明の化合物は、広い濃度範囲で有効であり、照射中、安定化組成物中に含有されるカスパーゼ阻害剤を防護する。本発明の防護用化合物について試験した濃度範囲内で、防護は、安定化組成物に含まれている広範囲のカスパーゼ阻害剤濃度にわたって達成され、付与される防護の程度は、試験したカスパーゼ阻害剤濃度にほとんど依存しなかった。
【0085】
安定化組成物は、1つ以上のカスパーゼ阻害剤、特に、Q-VD-OPhなどの改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤を、生体試料に含有されている細胞外核酸集団に対する安定化効果がもたらされるのに十分な量で含む。1つの実施形態によると、安定化組成物は、カスパーゼ阻害剤を、安定化組成物を意図された体積の安定化すべき試料と接触させた後に、0.1μMから25μM、0.5μMから20μM、1μMから17μM、2μMから16μM、さらに好ましい3μMから15μMの最終濃度のカスパーゼ阻害剤がもたらされる濃度で含む。実施例から分かるように、約5μM、約10μMおよび約15μMの最終濃度が十分に好適であることが判明した。上でも説明したように、安定化組成物を意図された体積の安定化すべき試料と接触させた後にある最終濃度のカスパーゼ阻害剤がもたらされる濃度に言及されていたとしても、本発明の第一の態様による方法において、ステップa)において提供され、ステップb)において照射される組成物は、まだ安定化すべき生体試料と接触していないことが理解されるべきである。
【0086】
一つの実施形態に従えば、安定化組成物およびしたがって安定化試薬は、0.35μg/mlから70μg/ml、0.7μg/mlから63μg/ml、1.74μg/mlから59μg/ml、10.5μg/mlから56μg/ml、または15μg/mlから50μg/ml、20μg/mlから45μg/ml、25μg/mlから40μg/mlおよび30μg/mlから38μg/mlから選択される濃度のカスパーゼ阻害剤を含む。濃度は、0.7μg/mlから45μg/mlおよび1.74μg/mlから40μg/mlから選択され得る。
【0087】
一つの実施形態に従えば、安定化組成物およびしたがって安定化試薬は、0.68μMから136μM、1.36μMから122.5μM、3.38μMから114.72μM、20.4μMから109μM、または29.2μMから97.2μM、38.9μMから87.5μM、48.6μMから77.8μMおよび58.3μMから74μMから選択される濃度のカスパーゼ阻害剤を含む。濃度は、20.4μMから97.2μMおよび29.2μMから87.5μMから選択され得る。
【0088】
安定化組成物(試薬)と安定化すべき生体試料の混合物および安定化組成物(試薬)自体中の上記の濃度のカスパーゼ阻害剤は、単一のカスパーゼ阻害剤の使用ならびにカスパーゼ阻害剤の組み合わせの使用に適用される。上述の濃度は、特に、汎カスパーゼ阻害剤、特に、改変カスパーゼ特異的ペプチド、例えば、Q-VD-OPhおよび/またはZ-VAD(OMe)-FMKを使用する場合に好適である。改変カスパーゼ特異的ペプチドのさらなる例は、Boc-D-(OMe)-FMKである。上述の濃度は、例えば、血液試料の安定化に好適である。個々のカスパーゼ阻害剤および/または他の細胞含有生体試料の好適な濃度範囲は、当業者が、例えば、実施例に記載する試験アッセイで異なる濃度のそれぞれのカスパーゼ阻害剤を試験することにより決定することができる。
【0089】
特徴ii、チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインおよび/またはグルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物
ステップa)において提供される組成物は、チオアルコール(N-アセチル-システインまたはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む。したがって、組成物は、照射によって(例えば、ガンマ線照射によってなど)滅菌することができ、ここで、滅菌された組成物は、その安定化性、したがって、性能を本質的に維持する。理論に束縛されることを望むものではないが、これらの化合物は、照射される安定化組成物、特に、その中に含まれているカスパーゼ阻害剤(単数または複数)を防護するのに役立つ。同時に、これらの化合物は、安定化効果には干渉せず、それにより、特にccfDNAなどの細胞外核酸集団の安定化における組成物の機能性が保証される。驚くべきことに、本発明の化合物により、これらのバランスの取れた効果が達成された。実施例において示すように、いくつもの他のラジカルスカベンジャーは、照射からの防護を付与せず、かつ/または組成物の安定化性能を干渉し、したがって、不適当であった。
【0090】
安定化組成物に含まれる少なくとも1つの化合物は、N-アセチル-システイン、グルタチオン、好ましくは、還元形態のグルタチオン、アスコルビン酸、ビタミンB、および/または水溶性ビタミンE誘導体から選択され得る。安定化組成物に含まれる少なくとも1つの化合物は、N-アセチル-システイン、グルタチオン、好ましくは、還元形態のグルタチオン、アスコルビン酸、および/または水溶性ビタミンE誘導体から選択され得る。好ましくは、少なくとも1つの化合物は、N-アセチル-システイン、グルタチオン、好ましくは、還元形態のグルタチオン、アスコルビン酸、および/またはトロロックスから選択される。より好ましくは、少なくとも1つの化合物は、N-アセチル-システイン、グルタチオン、好ましくは、還元形態のグルタチオン、ビタミンB6および/またはアスコルビン酸から選択される。より好ましくは、少なくとも1つの化合物は、N-アセチル-システイン、グルタチオン、好ましくは、還元形態のグルタチオン、および/またはアスコルビン酸から選択される。N-アセチル-システインおよびアスコルビン酸は、グルタチオン、特に還元形態のものと同様に、特に有効であることが見出された。ビタミンB6は、同様に、有用であることが見出されたN-アセチル-システインは、本発明に従って最も好ましい。
【0091】
実施例において示すように、本発明の化合物は、組成物中に含めることができ、また、広範な濃度範囲において有効である。
【0092】
一つの実施形態に従えば、安定化組成物は、20mg/ml未満、好ましくは、15mg/ml以下、10mg/ml以下、12mg/ml以下、7mg/ml以下、3mg/ml以下、1.5mg/ml以下または0.75mg/ml以下の濃度のチオアルコール(好ましくは、N-アセチル-システインおよび/またはグルタチオン(好ましくは、還元型の)である)、水溶性ビタミンおよびビタミンEもしくはその誘導体から選択される少なくとも1つの化合物を含む。好ましくは、組成物は、少なくとも0.05mg/ml、少なくとも0.1mg/ml、少なくとも0.2mg/mlまたは少なくとも0.3mg/mlの少なくとも1つの化合物を含む。一つの実施形態に従えば、組成物は、N-アセチル-システイン、グルタチオン(好ましくは、還元型の)、アスコルビン酸、ビタミンB、例えば、ビタミンB6、およびトロロックスから選択される少なくとも1つの化合をこれらの濃度で含む。一つの実施形態に従えば、組成物は、N-アセチル-システイン、グルタチオン(好ましくは、還元型の)、アスコルビン酸およびトロロックスから選択される少なくとも1つの化合物をこれらの濃度で含む。
【0093】
本発明の少なくとも1つの化合物は、照射による滅菌前の安定化組成物に含まれているカスパーゼ阻害剤の少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも35%、または少なくとも50%が滅菌後の安定化組成物に存在するようになる濃度で含めることができる。本発明の少なくとも1つの化合物は、照射による滅菌前の安定化組成物に含まれているカスパーゼ阻害剤の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも80%が滅菌後の安定化組成物に存在するようになる濃度で含まれることが好ましい。これは、例えば、実施例において行ったように、HPLC分析を使用して決定することができる。実施例により示されるように、照射後のカスパーゼ阻害剤の分解の程度および分解されていない形態でなお存在するカスパーゼ阻害剤の百分率は、照射線量に依存する。所与の照射線量で照射後に残存する所望のカスパーゼ阻害剤の百分率を達成するための例示的な化合物濃度も実施例に示す。
【0094】
本発明の少なくとも1つの化合物は、上で定義したように滅菌中にカスパーゼ阻害剤に対する防護効果を発揮できる一方で、同時に、安定化組成物の安定化性には実質的に干渉しない濃度で含めることができる。1つの実施形態によると、本発明の防護用化合物を含む安定化組成物の安定化効果は、防護用化合物を含まず他は同一の組成物の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または100%である。防護用化合物を添加することによって安定化効果を増大させることさえできる。例えば、本発明の防護用化合物を含む安定化組成物の安定化効果は、防護用化合物を含まず他は同一の組成物の120%、115%、110%または105%であり得る。本発明の防護用化合物を含む安定化組成物および防護用化合物を含まず他は同一の組成物を滅菌されていないまたは照射を行っていない形態で互いと比較することが好ましい。目的の化合物を伴うまたは伴わない安定化組成物の安定化性を決定するための試験は実施例において提示し、その中の実験手順の節に記載する。試料中の細胞外核酸は、リアルタイムPCRアッセイを使用して定量化することができ、記載の経時的なコピー数の増加を使用して所与の安定化組成物の安定化効果を決定することができる。したがって、所与の安定化組成物の安定化効果は、1つの実施形態では、実施例に記載のように、0日目の採血直後の総ccfDNAと、例えば室温で6日間保管した後の総ccfDNAの比を決定することによって決定することができる。
【0095】
1つの実施形態によると、本発明の少なくとも1つの化合物は、上で定義したように滅菌中にカスパーゼ阻害剤に対する防護効果を発揮することが可能である一方、同時に、安定化された試料中の検出可能な目的の細胞外核酸の量は実質的に減少させない濃度で含める。1つの実施形態では、防護用化合物を含む組成物を用いて試料を安定化した場合に、他は同一であるが防護用化合物を含まない組成物を用いて安定化した試料中で検出される目的の細胞外核酸の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%が検出される。細胞外核酸の量は、例えば、実施例において示すように、リアルタイムPCRを使用し、絶対的なコピー数を決定して決定することができる。
【0096】
本発明の化合物の2つ以上を含む組成物の調製も提供され、包含される。この場合、組成物は、含有される化合物それぞれを上に示した濃度で含んでよい。あるいは、上に示した濃度は、組成物中に含まれる全ての本発明の化合物の全体の濃度を指す。個々の化合物および化合物の組み合わせについての好適な濃度は、当業者が本明細書に提示する技術的な情報に従って決定することができる。実施例において示すように、本発明の化合物を組み合わせることにより、滅菌中の安定化組成物の防護を個々の化合物の使用と比較してさらに改善することができる。この有利な効果は、高い照射線量においてより明白になる傾向があり、比較的低い濃度の個々の化合物をそれぞれ使用した場合に既に達成された。
図6および実施例の表7に示す例示的な組み合わせおよび濃度が、本明細書における使用に関して特に意図されている。
【0097】
組成物を最初に固体形態で提供する場合、照射前に組成物を液体形態にすることができる。液体組成物は、少なくとも1つの化合物を上述の濃度で含んでよい。この実施形態に従って、固体組成物は、1つ以上の本発明の化合物を、溶媒和の際に前記1つ以上の化合物を上記および下記の濃度で含む液体組成物をもたらすのに十分な量で含む。
【0098】
防護のために組成物中に含有させることができる本発明の個々の成分をここでさらに詳細に説明する。
【0099】
1つの実施形態によると、ステップa)において提供、例えば調製される組成物は、少なくとも1つのチオアルコールを含む。「チオアルコール」または「チオール」とは、本明細書で使用する場合、特に、Rompp Lexikon Chemie、第10版、1999年、Georg Thieme Verlag Stuttgart、New Yorkにおいて定義されているチオールまたはチオアルコールであってよい。
【0100】
特に好ましいチオアルコールは、N-アセチル-システインおよびグルタチオンである。本発明の目的に関して高度に好適であり、非常に好ましい成分は、N-アセチル-システインである。「N-アセチル-システイン」とは、本明細書で使用する場合、「N-アセチル-L-システイン」であることが好ましい。したがって、「N-アセチル-システイン」とは、本明細書で使用する場合、化合物「N-アセチル-L-システイン」を指すことが好ましい。したがって、本明細書において「N-アセチル-システイン」に言及する場合、文脈により明確に別段の規定がなされない限り、それぞれの開示にも「N-アセチル-L-システイン」が適用される。「N-アセチル-システイン」に言及するときはいつも、N-アセチル-L-システインが好ましい。N-アセチル-D-システインも使用することができる。N-アセチル-システインは、グルタチオンと同様に、チオアルコールである。本明細書で使用する場合、「N-アセチル-システイン」は、特に、Pschyrembel Klinisches Worterbuch(258. Auflage、Walter de Gruyter、Berlin、New York、1998年)において定義されているN-アセチル-システインであってよい。
【0101】
N-アセチル-システインは、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物、特に、Q-VD-OPhなどの改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物を、ガンマ線照射などの照射による滅菌中、効率的に防護することが判明した。同時に、N-アセチル-システインは、有利なことに、ccfDNAなどの細胞外核酸集団の安定化には実質的に干渉しない。したがって、好ましい実施形態では、安定化組成物は、N-アセチル-システインを含む。N-アセチル-システインにより、さらに、弱酸性pHなどの穏やかなpHの安定化組成物が可能になる。好適なpH値は上に記載している。有利なことに、N-アセチル-システインを含む安定化組成物は、水性形態を含めた液体形態で照射および滅菌することができる。有利なことに、カスパーゼ阻害剤含有組成物の安定化性能を維持するために組成物が固体または凍結形態として照射される必要はなかった。
【0102】
安定化組成物は、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、または0.1mg/mlから2mg/mlの濃度のN-アセチル-システインを含むことができる。好ましくは、組成物は、少なくとも0.2mg/ml、または少なくとも0.3mg/mlのN-アセチル-システインを含む。0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlを含む組成物が特に好ましい。
【0103】
安定化組成物は、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システインを含むことができ、液体、好ましくは水性の形態で滅菌のために照射され得る。
【0104】
N-アセチル-システインは、特に、安定化組成物に含まれている1つ以上のカスパーゼ阻害剤の良好な防護をもたらす一方、同時に、下流の適用における安定化組成物の良好な性能を確実にすることが判明した。上述のN-アセチル-システイン濃度は良好に作用し、特に良好な結果がもたらされる。実施例において示すように、試験した全ての濃度(0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、4mg/mlおよび10mg/ml)のN-アセチル-システインにより、照射中の安定化組成物の優れた防護が付与された。同時に、N-アセチル-システインは、高い濃度であってさえ、その後の適用における安定化組成物の性能には干渉しなかった。
【0105】
カスパーゼ阻害剤含有組成物中0.2mg/mlから1mg/mlまたは0.3mg/mlから0.8mg/mlのN-アセチル-システイン濃度が特に好ましい。かかる組成物により、滅菌の際に、照射/滅菌された安定化組成物に特に良好な保管性がもたらされることが判明した。特に、貯蔵寿命の最後に優れた安定性が観察された。これらの濃度を使用して、滅菌された安定化組成物の貯蔵寿命を有利に延長することができる。
【0106】
1つの実施形態によると、安定化組成物は、N-アセチル-システイン、ならびに必要に応じて、グルタチオン、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される1つ以上の化合物を含む。1つの実施形態によると、安定化組成物は、N-アセチル-システインを含み、グルタチオン、好ましくは還元型グルタチオン、アスコルビン酸、ビタミンB、好ましくはビタミンB6、および水溶性ビタミンE誘導体、好ましくはトロロックスのうちの1つ以上をさらに含んでよい。特に、組成物は、N-アセチル-システインを含んでよく、グルタチオン、好ましくは還元型グルタチオン、アスコルビン酸、および水溶性ビタミンE誘導体、好ましくはトロロックスのうちの1つ以上をさらに含んでよい。したがって、ステップa)の安定化組成物が、N-アセチル-システインを含み、グルタチオン、好ましくは還元型グルタチオン、および/またはアスコルビン酸をさらに含むことも意図されている。1つの実施形態によると、組成物は、N-アセチル-システインおよびアスコルビン酸を含む。1つの実施形態によると、組成物は、N-アセチル-システインおよびグルタチオン、好ましくは還元型グルタチオンを含む。上述の組み合わせの全てが、照射によって滅菌される1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物の防護に非常に有用であることが判明したが、N-アセチル-システイン単独でも優れた結果がもたらされることが判明した。N-アセチル-システインと、特にビタミンB6などのビタミンBの組み合わせも意図されている。
【0107】
1つの実施形態によると、ステップa)において提供される安定化組成物は、グルタチオンを含む。チオアルコールであるグルタチオン、特に還元型グルタチオンもまた、実施例において示すように、組成物を、照射による滅菌中、基本的にカスパーゼ阻害剤含有組成物の安定化性に負の効果を及ぼすことなく防護するのに好適である。グルタチオンは、還元型および酸化型の両方で存在する。還元型では、化合物に含まれるシステインのチオール基が還元当量を供与することができる。「グルタチオン」とは、本明細書で使用する場合、特に、Pschyrembel Klinisches Worterbuch(258. Auflage、Walter de Gruyter、Berlin、New York、1998年)において定義されているグルタチオンであってよい。
【0108】
組成物は、0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg、0.4mg/mlから2mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度のグルタチオン、好ましくは、還元形態のグルタチオンを含むことができる。
【0109】
組成物は、0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg、0.4mg/mlから2mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度のグルタチオン、好ましくは、還元形態のグルタチオンを含むことができ、液体、好ましくは水性の形態で照射され得る。
【0110】
安定化組成物中の還元型グルタチオンの量は、照射および/または滅菌中にグルタチオンの一部または全部が酸化される可能性があるので、このプロセス後に減少する可能性があることが当業者には理解されよう。したがって、上記の還元型グルタチオンの濃度は、特に、滅菌のために照射する前の組成物中の濃度を指す。
【0111】
実施例において示すように、グルタチオン、特に還元型グルタチオンは、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物の防護において非常に有効である。還元型のグルタチオンは安定化組成物に対して特に良好な防護効果を伝える。比較的低い濃度および穏やかなpH条件、特に、弱酸性条件をこの実施形態において使用することができる。有利なことに、組成物を液体形態として照射を行い、滅菌することが可能であった。組成物の安定化性能を維持するために組成物が固体または凍結形態として照射される必要はなかった。実施例において示すように、0.05mg/mlという低いグルタチオン濃度でカスパーゼ阻害剤に対する防護効果が観察された。わずかに高い濃度、例えば、少なくとも0.1mg/mlまたは少なくとも0.2mg/mlなどでより明白な効果が観察された。0.5mg/mlおよび1mg/mlの濃度により、特に良好な結果がもたらされた。
【0112】
実施例において示すように、アスコルビン酸などの水溶性ビタミンも、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物の防護において活性である。実施例により、水溶性ビタミンB6が1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物の防護において活性であることがさらに示される。したがって、ステップa)において、防護のために少なくとも1つの水溶性ビタミンを含む安定化組成物を提供することができる。水溶性ビタミンの誘導体も同様に本明細書において意図されており、使用することができる。「水溶性ビタミンの誘導体」とは、本明細書で使用する場合、特に、それぞれのビタミンと同様にラジカルスカベンジャーとしての活性を有する誘導体であってよい。水溶性ビタミンは、1つの実施形態では、ビタミンCおよびビタミンBより選択される。水溶性ビタミンは、1つの実施形態では、アスコルビン酸およびビタミンBより選択される。複数の実施形態では、ビタミンBは、ビタミンB6である。ビタミンB6は、本明細書で使用する場合、特にピリドキシンを指す。したがって、本明細書に提示する「ビタミンB6」についての開示はいずれも、一般に、実施形態ピリドキシンに特に適用され、それを指す。したがって、本出願に記載するビタミンB6についての開示は全て、一般に、明記されていなくとも、好ましい実施形態ピリドキシンに特に適用され、特にそれを指す。複数の実施形態では、ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンおよび/またはピリドキサールリン酸より選択することができる。
【0113】
水溶性ビタミンは、アスコルビン酸、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、ピリドキシン(ビタミンB6)、葉酸塩または葉酸、ビタミンB12(コバラミン)、ビオチンおよびパントテン酸より選択することができる。
水溶性ビタミンとしてアスコルビン酸を使用することが好ましい。アスコルビン酸は、次式:
【化1】
によって表すことができる。
【0114】
「アスコルビン酸」は、本明細書で使用する場合、L-アスコルビン酸、D-アスコルビン酸、L-イソアスコルビン酸、D-イソアスコルビン酸などの立体異性体を包含し得る。「アスコルビン酸」は、本明細書で使用する場合、特に、Pschyrembel Klinisches Worterbuch(258. Auflage、Walter de Gruyter、Berlin、New York、1998年)において定義されているアスコルビン酸であってよい。アスコルビン酸の誘導体も本発明において同様に意図されており、使用することができることが理解されよう。「アスコルビン酸の誘導体」とは、本明細書で使用する場合、特に、アスコルビン酸と同様にラジカルスカベンジャーとしての活性を有する誘導体であってよい。
【0115】
解釈しやすいように、以下、その誘導体にも明確に言及することはせずに「水溶性ビタミン」と言及する。また、アスコルビン酸の誘導体に明確に言及することはせず、「アスコルビン酸」と言及する。しかし、全体を通して、水溶性ビタミンに関連する(例えば濃度範囲に関する)開示は、文脈により他の指示がなければ水溶性ビタミンの誘導体にも適用され、また、全体を通して、アスコルビン酸についての(例えば濃度範囲に関する)開示は、文脈により他の指示がなければ、アスコルビン酸の誘導体にも適用される。
【0116】
安定化組成物は、アスコルビン酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、葉酸塩または葉酸、ビタミンB12、ビオチンおよびパントテン酸より選択されることが好ましく、アスコルビン酸であることがさらに好ましい少なくとも1つの水溶性ビタミンを、20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、0.2mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlなどの濃度で含んでよい。複数の実施形態では、安定化組成物は、ビタミンB6などのビタミンBを上述の濃度のうちの1つで含む。特に、ビタミンB6であることが好ましいビタミンBは、例えば、0.1mg/mlから15mg/mlまたは0.1mg/mlから14mg/mlの濃度で含まれてよい。ビタミンB6は既に約2mg/mlの濃度などの比較的低い濃度で、少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物を滅菌中に防護することが判明した。したがって、ビタミンB、特にビタミンB6を例えば、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/mlまたはさらには0.2mg/mlから2mg/mlの比較的低い濃度で使用することもできる。ビタミンB6などのビタミンBを応じた低濃度で使用することはまた、より経済的でもある。
【0117】
組成物は、アスコルビン酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、葉酸塩または葉酸、ビタミンB12、ビオチンおよびパントテン酸より選択されることが好ましく、アスコルビン酸であることがさらに好ましい少なくとも1つの水溶性ビタミンを、20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、0.2mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlなどの濃度で含んでよく、また、液体形態、好ましくは水性形態で照射されることができる。複数の実施形態では、安定化組成物は、ビタミンB6などのビタミンBを上述の濃度のうちの1つで含む。特に、ビタミンB6であることが好ましいビタミンBは、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/mlまたは0.2mg/mlから2mg/mlの濃度で含まれてよい。
【0118】
安定化組成物は、20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、0.2mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlの濃度のアスコルビン酸を含むことができる。
【0119】
組成物は、20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、0.2mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlの濃度のアスコルビン酸を含むことができ、液体、好ましくは水性の形態で滅菌のために照射され得る。
【0120】
実施例において示すように、例えば、1mg/ml、2mg/ml、5mg/mlおよび10mg/mlの多数の濃度のアスコルビン酸が、少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物を、滅菌中、適用される広範囲の照射線量にわたって防護することが判明した。試験した濃度範囲内で、防護効果は、アスコルビン酸濃度が上昇するとともに上昇する傾向がある。これは、約5mg/mlから約10mg/mlの濃度で最も明白であった。アスコルビン酸が、広い濃度範囲にわたって使用した場合に安定化組成物を滅菌中に防護することが判明したが、20mg/ml未満の濃度のアスコルビン酸を使用することが好ましい。特に好適なアスコルビン酸の濃度は、上記のように、0.5mg/mlから15mg/ml、例えば、2mg/mlから11mg/mlなどにわたる濃度(例えば、2、4または5mg/ml)である。驚くべきことに、アスコルビン酸は、これらの比較的低い濃度において防護的であり、有利なことに、これにより、アスコルビン酸を弱酸性pHなどの穏やかなpHで用いることが可能になることが判明した。有利なことに、組成物を液体形態として照射を行い、滅菌することが可能であった。驚くべきことに、組成物の安定化性能を維持するために、組成物が固体または凍結形態として照射される必要はなかった。さらに、アスコルビン酸を20mg/ml未満、好ましくは15mg/ml以下の濃度で使用することにより、血漿中のccfDNAの安定化に対するアスコルビン酸の阻害効果が有利に防止される。
【0121】
組成物は、アスコルビン酸を1つ以上の本発明のさらなる化合物と組み合わせて含んでよい。N-アセチル-システインについて論じた際に説明したように、カスパーゼ阻害剤を含む組成物は、防護のために、例えばアスコルビン酸およびN-アセチル-システインを含んでよい。同様に組成物は、アスコルビン酸およびグルタチオン、好ましくは還元型グルタチオンを含んでよい。例示的な組み合わせを
図6および表7の例に示し、また、これは本発明において具体的に意図されている。
【0122】
実施例において示すように、ビタミンEおよびその誘導体によっても、照射による滅菌中の1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物に対する防護効果がもたらされる。ビタミンEおよびその誘導体、特に、トロロックスなどの水溶性誘導体も、例えばトロロックスによって媒介される防護の程度がN-アセチル-システイン、アスコルビン酸またはグルタチオンについて観察されるものよりも低いとはいえ、同様に防護活性を示す。ビタミンD、ビタミンKおよびビタミンAの水溶性誘導体などの、他の脂溶性ビタミンの水溶性誘導体も、本明細書において意図されている;誘導体は、特に、それぞれの脂溶性ビタミンと同様にラジカルスカベンジャーとしての活性を有し得る。
【0123】
「ビタミンE」は、本明細書で使用する場合、特に、Pschyrembel Klinisches Worterbuch(258. Auflage、Walter de Gruyter、Berlin、New York、1998年)において定義されているビタミンEであってよい。「ビタミンEの誘導体」は、本明細書で使用する場合、特に、ビタミンEと同様にラジカルスカベンジャーとしての活性を有する誘導体であってよい。「ビタミンEの誘導体」とは、本明細書で使用する場合、特に、ラジカルスカベンジャーとしての活性を有する水溶性ビタミンEの誘導体であってよい。水溶性ビタミンE誘導体の特に好ましい1つの例は、トロロックスである。トロロックスは、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸と表すことができる。
【0124】
したがって、ビタミンEまたはその誘導体を含む組成物を調製することができる。組成物は、水溶性ビタミンE誘導体を含んでよい。水溶性ビタミンE誘導体はトロロックスであることが好ましい。本出願全体を通して、「ビタミンEまたはその誘導体」に関する開示は、文脈により他の指示がなければ、特に、トロロックスを含めた水溶性ビタミンE誘導体に適用される。「ビタミンEまたはその誘導体」に言及するときはいつも、特にトロロックスなどの水溶性ビタミンE誘導体が好ましい。
【0125】
ビタミンEもしくはその誘導体、例えば、好ましくは水溶性ビタミンE誘導体、より好ましくはトロロックスは、特に、0.5mg/mlから5mg/ml、0.6mg/mlから4mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度で安定化組成物中で利用され得る。したがって、組成物は、例えば、0.5mg/mlから5mg/ml、0.6mg/mlから4mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度のトロロックスを含むことができる。
【0126】
少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤を含む組成物は、0.5mg/mlから5mg/ml、0.6mg/mlから4mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度のビタミンEもしくはその誘導体、好ましくは、水溶性ビタミンE誘導体、より好ましくはトロロックスを含むことができ、液体、好ましくは水性の形態で滅菌のために照射され得る。
【0127】
組成物は、0.5mg/mlから5mg/ml、0.6mg/mlから4mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度の水溶性ビタミンE誘導体、好ましくは、トロロックスを含むことができ、液体、好ましくは水性の形態で滅菌のために照射され得る。実施例において示すように、約1.25mg/mlの濃度のビタミンE誘導体により、照射中に安定化組成物の防護が付与されることが判明した。そこでは、ビタミンE誘導体であるトロロックスが試験された。
【0128】
それぞれの化合物について本明細書に開示されている濃度および濃度範囲は、2つ以上の化合物を組み合わせる場合にも使用することができる。例えば、2つ以上の化合物を組み合わせる場合、以下の表Aによる範囲を使用することができる。N-アセチル-システイン、グルタチオンおよびアスコルビン酸についての例示的な組み合わせおよび濃度範囲を
図6および実施例の表7に示し、これらは本発明において具体的に意図されている。
【0129】
実施例から分かるように、組み合わせて使用される場合、既に比較的低い濃度の個々の化合物が、照射による滅菌中、防護的である。したがってこれらの化合物のうちの1つ以上を組み合わせる場合、例えば、N-アセチル-システインおよびアスコルビン酸のそれぞれについては約0.3mg/mlから4mg/mlの濃度を使用することができ、グルタチオンについては例えば約0.1mg/mlから1.3mg/mlの濃度範囲を使用することができる。
【0130】
ステップa)において提供される安定化組成物中に含まれる本発明の例示的な好ましい化合物および有利な濃度範囲を以下の表に開示する。
【表A】
【0131】
ステップa)において提供される安定化組成物中に含まれる本発明の例示的な好ましい化合物および有利な濃度範囲を以下の表にも開示する。
【表B】
【0132】
ステップa)において調製または提供される組成物のさらなる特徴
ステップa)において提供される安定化組成物は、上記の少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤およびチオアルコール(N-アセチル-システインまたはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物に加えて、さらなる成分を含んでよい。これらのさらなる成分は、特に、細胞外核酸集団に対する安定化効果を支持するために含めることができる。
【0133】
ステップa)において提供、例えば調製することができる組成物に含めることができ、有利である、さらなる成分を下に記載する。当然、特に特徴i.およびii.に関連する上記の好ましい実施形態が適用され、本明細書で提示する見出しおよびサブセクションは、単に解釈を容易にするのに役立つものである。
【0134】
1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む、細胞外核酸集団の安定化に好適な有利な組成物は、WO2013/045457A1、WO2014/146780A1、WO2014/146782A1、PCT/EP2015/055699、WO2014/049022A1、WO2013/045458A1およびWO2014/146781A1に開示されている。参照されるこれらの参考文献には、細胞外核酸集団を安定化するための安定化組成物がいくつか記載されている。記載されている安定化組成物の細胞外核酸安定化効果は、カスパーゼ阻害剤または安定化のためにカスパーゼ阻害剤と併せて使用することができる1つ以上のさらなる化合物のいずれかの使用に基づく。WO2014/049022およびWO2014/146781にも、細胞内核酸の安定化に好適な(例えば、細胞内DNAおよび/または細胞内RNAなど、特に、遺伝子発現プロファイルの安定化に好適な)、カスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物が教示されている。さらに、これらの出願には、細胞形態および/または細胞表面特性などの、安定化された細胞のその後の分析を可能にする安定化組成物が開示されている。これらの参考文献に記載されている、そこで開示されている1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物は、参照により本明細書に組み込まれ、PCT/EP2015/055699に記載されている安定化組成物が特に好ましい。これらのカスパーゼ阻害剤含有組成物は、本発明の方法を用いて滅菌することができる。したがって、ステップa)において、上述の参考文献のうちの1つに開示されている、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む組成物を提供することが好ましく、ここで、組成物は、チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインまたはグルタチオン、グルタチオンは還元型であることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物をさらに含み、N-アセチル-システインが非常に好ましい。WO2008/145710に開示されている安定化組成物(例えば、ゲノム、トランスクリプトームおよびプロテオームの安定化を可能にする)とカスパーゼ阻害剤を組み合わせてカスパーゼ阻害剤含有組成物を提供する場合にも同じことが当てはまり、ここで、組成物は、記載のように、チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインまたはグルタチオン、グルタチオンは還元型であることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物をさらに含み、N-アセチル-システインが非常に好ましい。
【0135】
したがって、ステップa)において提供、例えば調製される安定化組成物は、以下:
a)抗凝固薬および/またはキレート剤;
b)ポリ(オキシエチレン)ポリマー;および/または
c)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド
のうちの1つ以上をさらに含んでよい。
【0136】
抗凝固薬、キレート剤、ポリ(オキシエチレン)ポリマーおよび第一級、第二級または第三級アミドの好適な濃度は、PCT/EP2015/055699に開示されている。
【0137】
その後に、安定化組成物中に存在する場合の個々の薬剤の例示的な好適な濃度が示されている。
【0138】
安定化組成物は、液体であり得る。示される濃度は、血液試料の安定化に特に好ましい。例えば、0.5mlから2.5ml、0.5mlから2ml、好ましくは1mlから2mlまたは1mlから1.5mlの液体の安定化組成物を使用することができる。下に示す濃度の安定化剤を含むかかる安定化組成物を、例えば10ml血液を安定化するために使用することができる。
【0139】
例えば、組成物は、抗凝固薬、好ましくはキレート剤、さらに好ましくはK2EDTAなどのEDTAをさらに含んでよい。この実施形態は、安定化すべき試料が血液である場合に特に有用である。1つの実施形態によると、前記組成物は、抗凝固薬またはキレート剤、好ましくはEDTAを、9.5mMから1100mM、20mMから750mM、50mMから600mM、75mMから550mM、100mMから500mM、125mMから450mM、130mMから300mMおよび140mMから250mMより選択される濃度で含む。1つの実施形態によると、濃度は100mMから250mMまでである。
【0140】
1つの実施形態では、ステップa)において提供される組成物は、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む。参照されるPCT/EP2015/055699に詳細に記載されているように、ポリ(オキシエチレン)ポリマーは、細胞外核酸の安定化が意図されている場合に有利な安定化性を示す。これらは、特に、カスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用する場合に有効であり、安定化効果を改善することができる。したがって、滅菌されるべき安定化組成物がポリ(オキシエチレン)ポリマーをさらに含むことが有利である。組成物は、以下:
a)前記ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、ポリエチレングリコール、好ましくは非置換ポリエチレングリコールである;
b)前記組成物が、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;
c)前記組成物が、1500未満の分子量を有する少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーを含み、さらに好ましくは、前記分子量は、100から800、150から700、200から600および200から500より選択される範囲に存する;
d)前記組成物が、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマー、および、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量より少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;ならびに/または
e)前記組成物が、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーおよび低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含み、前記高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、1500から50000、1500から40000、2000から30000、2500から25000、3000から20000、3500から15000および4000から12500より選択される範囲に存する分子量を有し、かつ/または、前記低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、1000以下の分子量を有し、好ましくは、前記分子量は、100から1000、150から800、150から700、200から600、200から500および200から400より選択される範囲に存する
の特徴の1つ以上を有し得る。
【0141】
1つの実施形態によると、安定化組成物は、好ましくはポリエチレングリコールである高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーを0.4%から35%(w/v)、0.8%から25%(w/v)、1.5%から20%(w/v)、2.5%から17.5%(w/v)、3%から15%(w/v)、4%から10%(w/v)および3%から5%(w/v)より選択される濃度で含む。好適な濃度は、当業者が決定することができ、とりわけ、高分子量ポリ(オキシエチレン)グリコールを、単独で使用するかさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー、例えば低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーと併用するか、およびある特定の量の細胞含有試料を安定化するために使用する安定化組成物の量、例えば、体積に依存し得る。高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーを単独で使用する場合に好適な濃度範囲の例としては、2.2%から33.0%(w/v)、4.4%から22.0(w/v)%、6.6%から16.5%(w/v)および8.8%から13.2%(w/v)より選択される濃度が挙げられるが、これらに限定されない。高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーを低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーと併用する場合に好適な濃度範囲の例としては、0.4%から30.7%、0.8%から15.3%、1%から10%、1.5%から7.7%、2.5%から6%、3.1%から5.4%および3%から4%より選択される濃度が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
1つの実施形態によると、前記安定化組成物は、ポリエチレングリコールであることが好ましい低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーを、0.8%から92.0%、3.8%から76.7%、11.5%から53.7%、19.2%から38.3%、20%から30%および20%から27.5%より選択される濃度で含む。1つの実施形態によると、濃度は、11.5%から30%までである。上述の濃度は、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが液体であるかそうでないかに応じて(w/v)または(v/v)を指す。PCT/EP2015/055699の実施例において実証されているように、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーは、特に、そこに記載されている1つ以上のさらなる安定化剤と組み合わせて使用した場合に、細胞含有試料の安定化を効率的に支持することができる。
【0143】
1つの実施形態によると、ステップa)において調製または提供される安定化組成物は、少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミドを含む。参照される出願WO2013/045457A1、WO2014/146780A1、WO2014/146782A1、PCT/EP2015/055699、WO2014/049022A1、WO2013/045458A1またはWO2014/146781A1において実証されているように、これらのアミドのうちの1つ以上を使用することにより、細胞外核酸集団の安定化が支持される。WO2014/049022およびWO2014/146781にも、かかるアミドが細胞内核酸(特に、遺伝子発現プロファイル)の安定化に好適であることが教示されている。これらのアミドのうちの1つ以上を、安定化のために、カスパーゼ阻害剤に加えて、好ましくは、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーに加えて使用することができる。
【0144】
1つの実施形態によると、したがって、組成物は、式1
【化2】
(式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1-C5アルキル残基、C1-C4アルキル残基またはC1-C3アルキル残基、さらに好ましいC1-C2アルキル残基であり、R2およびR3は同一であり、または異なり、水素残基、および線状または分岐した様式に配列された1~20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基、好ましくはアルキル残基から選択され、ならびにR4は、酸素、硫黄またはセレン残基であり、好ましくは、R4は酸素である)
に従う1つ以上の化合物を含む。
【0145】
安定化のために、式1に従う1つ以上の化合物の組み合わせも使用することができる。R1が、アルキル残基である複数の実施形態では、R1については1または2の鎖長が好ましい。式1に従う化合物のR2および/またはR3は同一であり、または異なり、水素残基および炭化水素残基より選択され、好ましくは、アルキル残基である。1つの実施形態によると、R2およびR3は両方とも水素である。1つの実施形態によると、R2およびR3のうちの一方は水素であり、他方は炭化水素残基である。1つの実施形態によると、R2およびR3は、同一のまたは異なる炭化水素残基である。炭化水素残基R2および/またはR3は、互いに独立して、アルキル(短鎖アルキルおよび長鎖アルキルを含む)、アルケニル、アルコキシ、長鎖アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ハロアルキル、アルキルシリル、アルキルシリルオキシ、アルキレン、アルケンジイル、アリーレン、カルボキシレートおよびカルボニルを含む群より選択することができる(これらの残基に関しては、例えば、本明細書に参考として援用されるWO2013/045457、20~21頁を参照)。R2および/またはR3の鎖長nは、特に、値1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20を有することができる。1つの実施形態によると、R2およびR3は、1~10、好ましくは1~5、さらに好ましい1~2の炭素鎖長を有する。1つの実施形態によると、R2および/またはR3は、アルキル残基、好ましくはC1-C5アルキル残基である。好ましくは、式1に従う化合物は、カルボン酸アミドであり、したがって、R4は酸素である。それは、第一級、第二級または第三級カルボン酸アミドであることができる。
【0146】
一つの実施形態において、式1に従う化合物は、N,N-ジアルキル-カルボン酸アミドである。好ましいR1、R2、R3およびR4基は、上に記載してある。式1に従うそれぞれの化合物の使用には、さらに、細胞含有試料中の細胞内核酸、例えば、特にRNA、例えばmRNAおよび/またはmiRNA転写産物を安定化することができるという利点がある。細胞内核酸、特に、遺伝子転写産物レベルのこのさらなる安定化は、例えば、含有される細胞における標的転写産物または転写産物プロファイルの後の分析を可能にするので、有利である。1つの実施形態によると、式1に従う化合物は、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジエチルホルムアミドから成る群より選択される。R4として酸素ではなく硫黄を含むそれぞれのチオ類似体も好適である。好ましくは、GHS分類に従って毒性物質ではない少なくとも1つの式1に従う化合物が使用される。1つの実施形態によると、式1に従う化合物は、N,N-ジアルキルプロパンアミド、例えば、N,N-ジメチルプロパンアミドである。
【0147】
また、例えば、組成物は、式1’
【化3】
(式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1-C5アルキル残基、さらに好ましいメチル残基であり、R2およびR3は、線状または分岐した様式で配列された1~20原子の炭素鎖長を有する同一のまたは異なる炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基である)
に従う1つ以上の化合物を含んでよい。
【0148】
式1’は、上記の式1に包含され、それと比較するとR2およびR3が同一のまたは異なる炭化水素残基である(水素ではない)という点で限定される。他の点では、残基R1からR4は、式1について上記したものに対応し、それについては上記の開示を参照し、その開示はここにも適用される。
【0149】
好ましくは、組成物は、ブタンアミドおよび/またはN,N-ジアルキルプロパンアミド、さらに好ましくはN,N-ジメチルプロパンアミドを含む。
【0150】
1つの実施形態によると、安定化組成物は、1つ以上の第一級、第二級または第三級アミドを、0.4%から38.3%、0.8%から23.0%、2.3%から11.5%、3.8%から9.2%、5%から15%および7.5%から12.5%より選択される濃度で含む。上述の濃度は、第一級、第二級または第三級アミドが液体であるかそうでないかに応じて(w/v)または(v/v)を指す。論じたように、第一級、第二級または第三級カルボン酸アミドが好ましい。
【0151】
組成物は、DMSOをさらに含んでよい。例えば、組成物は、0.05%から2.5%(v/v)DMSO、0.1%から1.8%、または0.2%から1.4%DMSOを含んでよい。DMSOは、好適な溶媒であり、照射、より具体的にはガンマ線照射中の安定化組成物の防護を支持することが判明した。この効果は、特に、DMSOをトロロックスと組み合わせて使用した場合に観察されたが、それに限定されるものではなかった。
【0152】
上で説明した通り、組成物は、最初に固体形態で提供することができる。その後、照射前に液体形態にすることができる。固体組成物は、溶媒和した際に、前記カスパーゼ阻害剤、前記1つ以上の化合物および必要に応じてさらなる成分を上記および下記の濃度で含む液体組成物をもたらすために十分な量で、カスパーゼ阻害剤、1つ以上の本発明の化合物および必要に応じて本明細書で論じたさらなる成分を含んでよい。
【0153】
非限定的な例示的な実施形態に従って、0.001%から0.01%(w/w)カスパーゼ阻害剤、例えば、0.005%から0.009%(w/w)カスパーゼ阻害剤などを含む固体組成物を調製することができる。この例示的な実施形態による組成物は、約0.05から約0.5%(w/w)、例えば、0.1%から0.4%(w/w)などの本発明の化合物、例えば、チオアルコール、特にN-アセチル-システインを含んでよい。さらなる成分を上記および下記の例示的な固体組成物に含めることができる。存在する場合、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの例示的な濃度は、例えば、3.25%から10%(w/w)、例えば、5%から8.5%(w/w)などである。存在する場合、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの例示的な濃度は、例えば、20%から70%(w/w)、例えば、40%から65%(w/w)などである。存在する場合、第一級、第二級または第三級アミドの例示的な濃度は、例えば、15%から30%(w/w)、例えば、18%から25%(w/w)などである。存在する場合、抗凝固薬および/またはキレート剤の例示的な濃度は、例えば、6%から24%(w/w)、例えば、8%から15%(w/w)などである。
【0154】
好ましい滅菌すべき組成物は、
a)1つ以上のカスパーゼ阻害剤、
b)チオアルコール(N-アセチル-システインまたはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたは上記のその誘導体より選択される1つ以上の化合物(組成物はN-アセチル-システインを含むことが好ましい)
c)安定化剤として、好ましくは、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー;
を含み、ならびに必要に応じて、
d)第1のポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量よりも少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する、好ましくは高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー;
e)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド;
f)抗凝固薬および/またはキレート剤
から成る群より選択される1つ以上、好ましくは2つ以上のさらなる添加剤
を含む。
【0155】
安定化組成物は、本発明による化合物のうちの1つ以上を、特徴iiを論じる際には上に開示した濃度で、さらに好ましくは上の表Aに開示した濃度で含むことが好ましい。安定化組成物は、上で表Bに開示した化合物のうちの1つ以上を含んでよい。N-アセチル-システインの使用が特に好ましい。
【0156】
それぞれの安定化組成物は、細胞含有生体試料、例えば血液、血漿および/または血清の、前記試料中に含まれている細胞および細胞外核酸集団を安定化することによる安定化に特に有効である。細胞含有生体試料に含有されている細胞外核酸集団は、安定化期間にわたって、生体試料を前記安定化組成物と接触させた時点でそれが示した状態に実質的に保存される。例えば、本実施例およびPCT/EP2015/055699の実施例によって証明するように、ゲノムDNAおよび他の細胞内核酸の放出が有意に低減される。それぞれに安定化された試料から単離される細胞外核酸は、非安定化試料から単離される細胞外核酸と比較して、細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAでの有意に少ない汚染を含む。それぞれの安定化組成物は、安定化された試料、例えば血液の、室温での数日間の保管および/または取り扱い、例えば配送を、その試料(それぞれその試料に含有されている細胞外核酸集団)の質を実質的に損なわせることなく、可能にする。
【0157】
さらに好ましい滅菌すべき組成物は、
a)1つ以上のカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましい改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、さらに好ましいQ-VD-OPh、Z-VAD(OMe)-FMKおよびBoc-D-(OMe)-FMKから成る群より選択されるカスパーゼ阻害剤、最も好ましくはQ-VD-OPh;
b)チオアルコール(N-アセチル-システインまたはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン(ビタミンB6またはアスコルビン酸であることが好ましい)、およびビタミンEまたは上記のその誘導体より選択される1つ以上の化合物(組成物は、N-アセチル-システインを含むことが好ましい)、
c)安定化剤として、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコールであり、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー;
ならびに、必要に応じて、1つ以上、好ましくは2つの、
d)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド;
e)抗凝固薬および/またはキレート剤
から成る群より選択されるさらなる添加剤
を含む。
【0158】
安定化組成物は、本発明による化合物のうちの1つ以上を、特徴iiを論じる際には上に開示した濃度で、さらに好ましくは上の表Aまたは表Bに開示した濃度で含むことが好ましい。N-アセチル-システインの使用が特に好ましい。
【0159】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0160】
優れた安定化性および滅菌性を有する好ましい安定化組成物の別の例は、
a)少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、最も好ましくはQ-VD-OPh;
b)N-アセチル-システイン、グルタチオン(好ましくは、還元形態)および/またはアスコルビン酸、好ましくはN-アセチル-システイン、より好ましくは0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン;
c)少なくとも1500、好ましくは2000から40000、さらに好ましい2500から30000、2500から25000または3000から20000の範囲の分子量を有する少なくとも1つの高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー;
d)式1に従う1つ以上の化合物(組成物は、ブタンアミドおよび/またはN,N-ジアルキルプロパンアミド、さらに好ましくはN,N-ジメチルプロパンアミドを含むことが好ましい);
e)使用される高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量より少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する、好ましくは200から800または200から600の範囲の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー;
f)必要に応じて、抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
を含む。
【0161】
優れた安定化性および滅菌性を有する好ましい安定化組成物の別の例は、
a)少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、さらに最も好ましくはQ-VD-OPh;
b)N-アセチル-システイン、グルタチオン(好ましくは、還元形態)および/またはアスコルビン酸、好ましくはN-アセチル-システイン、より好ましくは0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン;
c)安定化剤として、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコールであり、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー;
d)式1に従う1つ以上の化合物(組成物は、ブタンアミドおよび/またはN,N-ジアルキルプロパンアミド、さらに好ましくはN,N-ジメチルプロパンアミドを含むことが好ましい);
e)必要に応じて、抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
を含む。
【0162】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0163】
ステップa)において提供される安定化組成物は、以下:
a)細胞を安定化することおよび細胞含有生体試料に含有されている細胞から試料の無細胞部分へのゲノムDNAの放出を低減させることが可能である;
b)安定化された試料中に存在する核酸、特にゲノムDNA、の分解を低減させることが可能である;
c)安定化された生体試料に含有されている細胞に由来するゲノムDNAでの試料に含まれている細胞外DNA集団の汚染を低減させるもしくは防止することが可能である;
d)安定化された生体試料に含有されている細胞に由来する細胞内核酸での試料に含まれている細胞外核酸集団の汚染を低減させるもしくは防止することが可能である;
e)安定化組成物が、添加剤を、前記添加剤が細胞溶解を誘導もしくは促進する濃度で含まない;
f)安定化組成物が、タンパク質-DNA架橋および/またはタンパク質-タンパク質架橋を誘導する架橋剤、例えばホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出剤を含まない;
g)安定化組成物が、毒性物質を含まない;
h)細胞含有生体試料に含まれている細胞外核酸集団を冷蔵せずに、好ましくは室温で、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日もしくは少なくとも6日より選択される期間、安定化することが可能である;ならびに/または
i)組成物が、好ましくは血液である安定化すべき細胞含有試料を含まない;
の特徴の1つ以上を有し得る。
【0164】
特に、組成物は、タンパク質-DNA架橋および/またはタンパク質-タンパク質架橋を誘導する架橋剤を含まないことが好ましい。タンパク質-DNA架橋および/またはタンパク質-タンパク質架橋を誘導する架橋剤は、例えば、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出剤である。これにより、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド放出剤などの架橋試薬の使用を伴う公知の現行技術の安定化試薬および方法に勝る重要な利点がもたらされる。架橋試薬は、核酸分子間のまたは核酸とタンパク質の間の分子間共有結合または分子内共有結合を引き起こす。この効果により、複雑な生体試料からの精製または抽出後のかかる安定化され部分的に架橋した核酸の回収率の低下が導かれる。例えば、全血試料中の循環核酸の濃度は既に比較的低いので、かかる核酸の収率をさらに低下させるあらゆる措置を回避すべきである。これは、悪性腫瘍に由来するまたは妊娠第一三半期の発育中の胎児からの非常に希少な核酸分子を検出および分析する場合に特に重要であり得る。したがって、滅菌された安定化組成物にホルムアルデヒド放出剤が含まれず、それぞれさらに安定化に使用されないことが好ましい。したがって、1つの実施形態によると、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出剤などの架橋剤は安定化組成物に含まれず、それぞれさらに安定化に使用されない。さらに、記載したように、安定化組成物は、例えばカオトロピック塩などの、有核細胞または一般の細胞の溶解を誘導するいかなる添加剤も含まないことが好ましい。
【0165】
カスパーゼ阻害剤Q-VD-OPh、ジメチルプロピオンアミド、PEG、K2EDTAなどのEDTAおよび上記の表Aによる1つ以上の化合物を含む組成物は、非常に好適であり、優れた滅菌性ならびに安定化性を有する。カスパーゼ阻害剤Q-VD-OPh、ジメチルプロピオンアミド、PEG、K2EDTAなどのEDTAおよび上記の表Bによる1つ以上の化合物を含む組成物についても同じことが当てはまる。組成物は、N-アセチル-システインを含むことが最も好ましい。アスコルビン酸を含む組成物およびグルタチオン(好ましくは還元型)を含む組成物も好ましい。トロロックスも、滅菌中の防護を付与することが判明した。しかし、他の化合物がさらに好ましい。
【0166】
論じたように、複数の実施形態では、カスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物は、細胞内核酸、特に、細胞内DNA(例えば、ゲノムDNA)および/または細胞内RNAの安定化にも好適である。カスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物は、特に、細胞内RNAの安定化に好適であり得、好ましくは、含有されている細胞の遺伝子転写プロファイルの安定化に好適である。したがって、それぞれ安定化された試料から単離された細胞内核酸は、例えば、遺伝子発現プロファイリングおよび安定化された試料中のインビボ転写レベルの正確な表示を必要とする他の分析方法も非常に好適である。さらに、有利なことに、かかる安定化により、所望であれば、同じ安定化された試料から、安定化された細胞外核酸と安定化された細胞内核酸を別々に単離することが可能になる。それぞれの組成物は、例えば、少なくとも1つの第一級または第二級カルボン酸アミドおよび/または少なくとも1つの第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド、さらに好ましくはN,N-ジメチルプロパンアミド(例えば、WO2014/049022およびWO2014/146781を参照されたい)を含んでよい。試料の安定化後、細胞内RNAを分解から防護し、さらに、含有されている細胞の遺伝子転写プロファイルの変化を阻害する。したがって、安定化により、特に、インビトロにおける分解が低減され、遺伝子誘導が最小限になる。含有されている細胞の遺伝子転写レベルの安定化は、新しい転写物の生成および安定化された試料中に存在する転写物の分解が非安定化試料と比較して阻害され、それにより、安定化されると、含有されている細胞の遺伝子転写プロファイルが実質的に「凍結」されるので、有利である。したがって、安定化は、トランスクリプトームを、転写レベルをそれらが試料採集および安定化時に示していた状態に維持することによって安定化するのにも好適である。トランスクリプトームという用語は、特に、1つの細胞または細胞の集団において産生されるmRNA、rRNA、tRNA、および、miRNAなどの他の非コードRNAを含めた、全てのRNA分子のセットを指す。複数の実施形態では、血液試料などの細胞含有生体試料を、少なくとも3日間、転写レベルの実質的な変化を伴わずに安定化することができる。遺伝子転写プロファイルは、特に、RNAの分解を低減させること、および、特に遺伝子誘導または下方制御などの遺伝子発現の変化を最小限にすることによって安定化される。それにより、採集時に存在していたインビボ遺伝子発現プロファイル、それぞれ安定化が保存される。さらに、試料採集、それぞれ試料安定化時に、RNAの品質および完全性を維持し、それにより、インビボ転写レベルの正確な表示をもたらすことができる。安定化の際のインビボ遺伝子転写プロファイルの保存により、例えば、それぞれ安定化された試料を使用して、遺伝子発現プロファイリングまたは転写レベルの正確な表示を必要とする他の分析方法を実施することが可能になる。しかし、望ましくはあるが、多くの場合、全ての転写レベルが安定化されるまたは同等に良好に安定化される必要はない。遺伝子転写プロファイルを安定化する先行技術でも通例であるように、特定のまたは新しい標的転写物についての安定化特性、したがって性能特性を検証すべきである。遺伝子転写プロファイルまたは特定の転写レベルの安定化が達成されたことは、例えば、遺伝子転写プロファイルの安定化を分析するために確立されたマーカー遺伝子に基づいて決定することができる。1つの実施形態によると、含有されている細胞の遺伝子転写プロファイルまたは転写レベルの安定化により、c-fos、IL-1ベータ、IL-8およびp53より選択される1つ以上、好ましくは2つ以上のマーカー遺伝子が、安定化されたら少なくとも12時間にわたって、少なくとも24時間にわたってまたは少なくとも48時間にわたって安定化されている。これらのマーカー遺伝子は、保管中、非常に不安定な転写物をもたらすと識別され、したがって、適切な安定化の不在下では、試料採集後に上方制御または下方制御される。したがって、これらの遺伝子の転写レベルは、遺伝子転写レベルの安定化が達成されたかどうかを分析するためのマーカーとして好適である。安定化効果は、実施例に記載のリアルタイムRT-PCRアッセイを使用して分析することができる。1つの実施形態によると、これらのマーカー遺伝子のうちの1つ以上の転写レベルは、T0(安定化点)と安定化期間の最後との間で1.5 CT値より大きくは変化しない、好ましくは1.25 CT値より大きく変化しない、さらに好ましい1 CT値より大きく変化しない。それぞれの安定化効果は、少なくとも12時間にわたって、少なくとも24時間にわたって、少なくとも48時間にわたって、少なくとも72時間にわたって、または少なくとも96時間にわたって達成されることが好ましい。それぞれの安定化特性は、少なくともマーカー遺伝子c-fos、IL8およびIL-1ベータで、好ましくは上述のマーカー遺伝子の全てで達成されることが好ましい。W2014/049022およびW2014/146781において実証されているように、第一級および/または第二級カルボン酸アミドなどの種々のアミドはそれぞれの安定化性能を達成する。
【0167】
複数の実施形態では、滅菌された安定化組成物は、安定化すべき試料に含有されている細胞の特徴を保存することができ、例えば、含有されている細胞の細胞表面特性および/または細胞形態などが保存される。細胞は、安定化に起因してインタクトなままになる。これにより、例えば、安定化期間後に、安定化された試料から細胞を分離することが可能になり、安定化された試料から単離された細胞は、分析に好適である。例えば、DNAおよび/またはRNAなどの細胞内核酸を、含まれている細胞から単離し、分析することができる。さらに、安定化された試料中の細胞の保存により、細胞を選別または捕捉する可能性、さらには、例えば、そのあと特異的に分析することができる腫瘍細胞などの特定の細胞を富化する可能性が開かれる。例えば、循環する腫瘍細胞を単離することができ、それらの遺伝子発現プロファイルを分析することができる。さらに、得られる細胞を特徴付けるために、細胞形態および/または細胞マーカー、特に、細胞表面マーカーを分析することができる。さらに、細胞内核酸を前記富化された特定の細胞から単離することができる。例えば、RNAを前記細胞から単離することができる。本明細書に記載の安定化組成物の転写レベル安定化性により、単離されたRNAを遺伝子発現プロファイリングおよび他の重要な分析に使用することが有利に可能になる。したがって、かかる安定化は、細胞を富化した後に富化された細胞から核酸を抽出することを可能にし、それにより、例えば、細胞含有試料中、例えば血液試料中の循環する腫瘍細胞の希少な事象が検出される機会が増大するので、例えば、がんまたは他の疾患の分子診断に有利である。これにより、試料中の特定のバイオマーカー、特に、希少なバイオマーカーが識別される機会も増大する。1つの実施形態によると、細胞の形態は、少なくとも12時間、少なくとも24時間およびさらに好ましい少なくとも48時間であることが好ましい安定化期間中、保存される。これにより、含有されている細胞をそれらの形態に基づいて分析し、必要に応じて、特徴付けることが可能になる。1つの実施形態によると、有核細胞の形態が保存される。1つの実施形態によると、滅菌された安定化組成物を使用した場合、血液試料に含有されているリンパ球の形態が安定化中、保存される。1つの実施形態によると、細胞の細胞表面エピトープが保存される。1つの実施形態によると、CDタンパク質などの細胞表面タンパク質が保存される。細胞表面エピトープおよび細胞表面タンパク質の保存は、含有されている細胞をこれらの細胞表面特性に基づいて特徴付けることおよび/または単離することが可能になるので、利点である。特に、細胞表面上に存在する腫瘍マーカーの分析または前記マーカーに基づいて特定の細胞を単離することが可能になる。その目的のための好適な安定化組成物は、例えば、参照されるWO2014/049022およびWO2014/146781に記載されている。
【0168】
複数の実施形態では、使用される安定化組成物は、プロテオームの安定化に好適である。
【0169】
ステップb)滅菌のために組成物を照射するステップ
方法は、ステップb)において、滅菌のために安定化組成物を照射することをさらに含む。上で説明した通り、組成物を生体試料と接触させる前に、組成物を照射する。目的は、例えば試料を滅菌された組成物と接触させることによって生体試料中の細胞外核酸集団を安定化するために使用することができる、滅菌された、カスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物を提供することである。
【0170】
いくつかの照射形態が好適であり、適用することができる。組成物およびデバイスの滅菌に好適な照射形態は当業者に公知である。例えば、イオン化照射を使用することができ、組成物およびデバイスの滅菌に好適なイオン化形態の照射も同様に当業者に公知である。イオン化照射の例は、ガンマ線照射、電子ビーム照射、X線およびイオン化紫外線放射である。本発明を実施するために、ガンマ線照射、電子ビーム照射およびX線が好ましい;ガンマ線照射およびX線がさらに好ましい。ガンマ線照射による照射が最も好ましい。
【0171】
ガンマ線照射線量は、キログレイ(kGy)単位で測定され、これは、吸収された放射線のエネルギーを定量化するものである。1グレイは、1キログラムの物質による1ジュールの放射線エネルギーの吸収(1kGy=1ジュール/グラム)である。
【0172】
組成物は、5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、または約8kGyから約25kGy、例えば、約8kGyから約15kGyまたは約15kGyから約25kGyなどの照射線量で照射されることができる。約8kGyから約15kGyの照射線量での照射により、照射を受けた組成物の安定化性の維持をさらに支持する、比較的穏やかな照射条件の利点がもたらされる。約15kGyから約25kGyの照射線量での照射も同様に良好に実行可能であり、特に、費用効率が高く、これは大規模生産に関して重要な利点である。組成物を、ガンマ線照射を約8kGyから約25kGy、約8kGyから約15kGyまたは約15kGyから約25kGyの照射線量で照射することができる。組成物を、ガンマ線照射を5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、または約8kGyから約25kGy、例えば、約8kGyから約15kGyまたは約15kGyから約25kGyなどの照射線量で照射することができる。
【0173】
照射線量を広範囲の照射時間にわたって適用することができる。照射時間は安定化溶液の照射に関して重大なパラメータではないことが判明したが、実用的観点および経済的観点から、比較的短い照射時間を選択することが好ましい場合がある。当業者は、適切な照射時間の選択に詳しい。例示的な範囲は、1秒から1時間、1秒から30分、2秒から10分、または5秒から1分を含む。
【0174】
一般には、組成物は、組成物が確実に滅菌されるのに十分に高い照射線量で照射される。
【0175】
「無菌性」または「滅菌された」とは、本明細書で使用する場合、特に、滅菌後の製品において生存可能な微生物の確率によって定義することができる。この確率は、無菌性保証水準(SAL)と称することができる。例として、医療デバイスの滅菌に関しては10-6のSALが頻繁に使用される。10-6のSALとは、本明細書で使用する場合、特に、滅菌後に、非無菌性の単位、例えば、非無菌性の組成物またはデバイスなどが判明する確率が1,000,000分の1であることを意味し得る。「無菌性」または「滅菌された」とは、本明細書で使用する場合、特に、SALが10-4以下、さらに好ましくは10-5以下、最も好ましくは10-6以下であることを指す。1つの実施形態によると、「無菌性」または「滅菌された」とは、「生存可能な微生物を含まない」ことを示す。
【0176】
滅菌プロセスにより、選択されたSALが慣用的に送達されることを実証するための適切な検証方法は当業者に公知であり、照射に関しては、例えば、ANSI/AAMI/ISO 11137:2006に詳述されている。
【0177】
したがって、照射による滅菌の結果、組成物またはデバイスの無菌性保証水準(SAL)を10-4以下、さらに好ましくは10-5以下、最も好ましくは10-6以下にすることができる。照射は、ISO標準ISO11137-1:2006、ISO11137-2:2012、および/またはISO11137-3:2006の要件を満たすことができる。
【0178】
好ましい実施形態に従って、無菌性は、5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、または約8kGyから約25kGy、例えば、約8kGyから約15kGyまたは約15kGyから約25kGなどの照射線量での照射によって達成され、約8kGyから約15kGyが特に好ましく、照射は、ガンマ線照射によるものであることが好ましい。
【0179】
照射される組成物の形態は限定されない。したがって、組成物は、例えば、固体または液体形態として照射されることができる。しかし、本明細書に記載の実施形態の全てについて、滅菌のために照射する組成物は、液体形態、好ましくは水性形態であることが好ましい。
【0180】
N-アセチル-システイン、グルタチオン、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物は、液体、特に、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含み、特に、1つ以上のペプチド性カスパーゼ阻害剤を含む水性安定化組成物防護において特に活性であることが判明した。先行技術において(例えば、医薬分野で)液体組成物は組成物の機能を損なわずに滅菌するのが難しいことが頻繁に判明しているので、これは驚くべきことである。生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む組成物は、液体、特に水性の形態として照射されることが望ましい。これにより、都合よく取り扱い、生体試料、特に、血液、血漿または血清などの液体生体試料と混合することができる滅菌された安定化組成物を提供することが可能になる。
【0181】
組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射される場合、最初に、ステップa)において、組成物を固体形態で提供、例えば、調製し、その後、それを好適な溶媒に溶解させて液体、好ましくは水性組成物を提供し、その後、滅菌のため照射することが可能である。これは、例えば、ステップb)の前またはステップb)中に組成物を溶解させることによって行うことができる。
【0182】
1つの実施形態によると、安定化組成物は、固体ではない状態で照射される。1つの実施形態によると、安定化組成物は、凍結していない状態で照射される。
【0183】
少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物は、容器などの試料採集デバイス中で滅菌することができる。容器は、チューブ、さらに好ましくは採血チューブであってよい。容器は、一般には、照射に好適な材料から成る。例えば、採血チューブなどの容器は、ポリエチレンテレフタレートを含んでよいか、またはそれから成ってよい。採集デバイスは、本発明の第七の態様によるデバイスであってよい。
【0184】
滅菌のために組成物を照射することにより、滅菌された組成物を提供することができる。したがって、本発明の第一の態様の方法は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法であって、
a)上記の安定化組成物を提供するステップ;および
b)組成物を照射によって滅菌するステップ
を含む方法であることが好ましい。
【0185】
安定化組成物のさらなる詳細および実施形態は、上に記載しており、それについてはそれぞれの開示を参照する。複数の実施形態では、滅菌された組成物は、さらに細胞内核酸(特に、細胞内RNAおよび/または例えばゲノムDNAなどの細胞内DNA)を安定化するのに好適である。複数の実施形態では、滅菌された組成物は、さらに例えば細胞表面特性および/または細胞形態などの細胞特性を安定化するのに好適である。それについては上記の開示を参照し、その開示はここにも適用される。組成物は、液体、さらに好ましくは水性の形態で滅菌されることが好ましい。それについては上記の開示を参照する。
【0186】
本発明の第一の態様による特定の実施形態
本発明の第一の態様による方法の好適なおよび好ましい実施形態を以下に記載する。
【0187】
本発明の第一の態様の一実施形態に従って、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法が提供され、この方法は、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤。前記カスパーゼ特異的ペプチドは、アルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物によって改変されたものであってよい。1つの実施形態によると、カスパーゼ特異的ペプチドは、好ましくはカルボキシル末端においてO-フェノキシ(OPh)またはフルオロメチルケトン(FMK)基で改変されている。1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択される。1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPhおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択され、Q-VD-OPhが最も好ましい。
ii.以下:
- 0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン、
- 0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg、0.4mg/mlから2mg/mlまたは0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度の還元形態のグルタチオン、および/または
- 20mg/ml未満、例えば、1mg/mlから15mg/ml、0.2mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/mlまたは2mg/mlから11mg/mlの濃度のアスコルビン酸、
- 0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/mlまたは0.2mg/mlから2mg/mlの濃度のビタミンB、好ましくはビタミンB6
の化合物のうちの1つ以上
を含む液体、好ましくは水性の組成物を提供するステップであって、組成物は、必要に応じて、
iii.安定化剤として、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコール、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
iv.少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、
v.抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、水性組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために、組成物が、好ましくはガンマ線照射によって照射されるステップ
を含む。
【0188】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0189】
組成物は、組成物を照射することによって滅菌することができる。
【0190】
本発明の第一の態様のさらなる実施形態に従って、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法が提供され、この方法は、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤。前記カスパーゼ特異的ペプチドは、アルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物によって改変されたものであってよい。1つの実施形態によると、カスパーゼ特異的ペプチドは、好ましくはカルボキシル末端においてO-フェノキシ(OPh)またはフルオロメチルケトン(FMK)基で改変されている。1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択される。1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPhおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択され、Q-VD-OPhが最も好ましい。
ii.以下:
- 0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン、
- 0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg、0.4mg/mlから2mg/mlまたは0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度の還元形態のグルタチオン、および/または
- 20mg/ml未満、例えば、1mg/mlから15mg/ml、0.2mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/mlまたは2mg/mlから11mg/mlの濃度のアスコルビン酸、
の化合物のうちの1つ以上
を含む液体、好ましくは水性の組成物を提供するステップであって、組成物は、必要に応じて、
iii.少なくとも1500、好ましくは2000から40000、さらに好ましい2500から30000、2500から25000または3000から20000の範囲の分子量を有する少なくとも1つの高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
iv.少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、
v.使用される高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量よりも少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する、好ましくは200から800または200から600の範囲の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)である、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー、ならびに
vi.抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、水性組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために、組成物が、好ましくはガンマ線照射によって照射されるステップ
を含む。
【0191】
組成物は、組成物を照射することによって滅菌することができる。
【0192】
本発明の第一の態様のさらなる実施形態に従って、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法が提供され、この方法は、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは上で記載のとおりの改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、最も好ましくはQ-VD-OPh、
ii.上記の表Aまたは表Bに記載される通りの少なくとも1つの化合物(好ましくは、組成物はN-アセチル-システインを含む)、
の化合物のうちの1つ以上
を含む、好ましくは水性である液体組成物を提供するステップであって、組成物は、必要に応じて、
iii.少なくとも1500、好ましくは2000から40000、さらに好ましい2500から30000、2500から25000または3000から20000の範囲の分子量を有する少なくとも1つの高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
iv.少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、
v.使用される高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量よりも少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する、好ましくは200から800または200から600の範囲の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)である、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー、ならびに
vi.抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために、組成物が、好ましくはガンマ線照射によって照射されるステップ
を含む。
【0193】
安定化組成物は、組成物を照射することによって滅菌することができる。
【0194】
好ましい実施形態に従って、本発明は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法であって、
a)
i.少なくとも1つの汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは上記の改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、最も好ましいQ-VD-OPh、
ii.0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン
を含み、必要に応じて、
iii.安定化剤として、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコール、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
iv.少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、および
v.必要に応じて、抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
をさらに含む、水性組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために、組成物が、好ましくはガンマ線照射によって、さらに好ましくは5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、または約8kGyから約15kGyの線量で照射されるステップ
を含む方法を提供する。
【0195】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0196】
安定化組成物は、組成物を照射することによって滅菌することができる。
【0197】
さらなる好ましい実施形態に従って、本発明は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法を提供し、この方法は、
a)
i.少なくとも汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは上で記載される通りの改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、最も好ましくはQ-VD-OPh、
ii.0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン、
を含み、必要に応じて、
iii.少なくとも1500、好ましくは2000から40000、さらに好ましい2500から30000、2500から25000または3000から20000の範囲の分子量を有する少なくとも1つの高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
iv.少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、
v.使用される高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量よりも少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する、好ましくは200から800または200から600の範囲の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)である、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー、ならびに
vi.必要に応じて、抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
をさらに含む水性の組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために、組成物が、好ましくはガンマ線照射によって、好ましくは5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、または約8kGyから約15kGyの線量で照射されるステップ
を含む。
【0198】
安定化組成物は、組成物を照射することによって滅菌することができる。
【0199】
上記の好ましい実施形態における一つの実施形態に従って、ステップa)で提供される水性の組成物は、0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg、0.4mg/mlから2mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度の還元形態のグルタチオンを含み、および/または20mg/ml未満、例えば、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlの濃度のアスコルビン酸を含む。
【0200】
N-アセチル-システインに加えて、またはN-アセチル-システインの代わりとして、還元型グルタチオンおよびアスコルビン酸を組成物に含めることができる。しかし、前に説明したように、組成物がN-アセチル-システインを含むことが有利である。
【0201】
さらなる好ましい実施形態に従って、本発明は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法であって、
a)
i.カスパーゼ阻害剤Q-VD-OPh、
ii.0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン
を含み、組成物は必要に応じて、
iii.安定化剤として、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコール、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
iv.少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、および
v.必要に応じて、抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
をさらに含む、水性組成物を提供するステップ;ならびに
b)組成物をガンマ線照射によって、好ましくは5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、または約8kGyから約15kGyの線量で滅菌するステップ
を含む方法を提供する。
【0202】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0203】
さらなる好ましい実施形態に従って、本発明は、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成する方法を提供し、この方法は、
a)
i.カスパーゼ阻害剤Q-VD-OPh、
ii.0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン、
を含む水性の組成物を提供するステップであって、組成物は、必要に応じて、
iii.少なくとも1500、好ましくは2000から40000、さらに好ましい2500から30000、2500から25000または3000から20000の範囲の分子量を有する少なくとも1つの高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
iv.少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、
v.使用される高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量よりも少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する、好ましくは200から800または200から600の範囲の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)である、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー、ならびに
vi.抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
をさらに含む、組成物を提供するステップ;ならびに
b)組成物をガンマ線照によって、好ましくは5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、または約8kGyから約15kGyの線量で滅菌するステップ
を含む。
【0204】
1つの実施形態によると、ステップa)において提供され、ステップb)において照射される組成物は、タンニン酸を含まず、没食子酸も含まない。1つの実施形態によると、組成物は、さらに、マンニトール、イソプロパノールおよび/またはTween-80または安定化効果に干渉する可能性がある他の化合物を含まない。1つの実施形態によると、組成物は弱酸性pHを有する。
【0205】
一つの実施形態に従えば、安定化組成物は、0.35μg/mlから70μg/ml、0.7μg/mlから63μg/ml、1.74μg/mlから59μg/ml、10.5μg/mlから56μg/ml、または15μg/mlから50μg/ml、20μg/mlから45μg/ml、25μg/mlから40μg/mlおよび30μg/mlから38μg/mlから選択される濃度のカスパーゼ阻害剤Q-VD-OPhを含む。
【0206】
B.細胞外核酸集団を安定化するための方法
第二の態様に従って、本発明は、細胞含有生体試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するための方法であって、
a)本発明の第一の態様の方法に従って生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成するステップ;および
b)細胞含有生体試料を滅菌された組成物と接触させるステップ
を含む方法を提供する。
【0207】
細胞含有生体試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するための方法であって、
a)本発明の第六の態様による組成物であり、滅菌されている組成物を得る、または、本発明の第七の態様による試料採集デバイスであり、その中に含まれる組成物が滅菌されている、試料採集デバイスを得るステップ;および
b)細胞含有生体試料を滅菌された組成物と接触させるステップ
を含む方法も意図されている。
【0208】
滅菌防護のために使用される安定化組成物および化合物の好適なおよび好ましい実施形態は上に記載しており、それについては上記の開示を参照し、その開示はここにも適用される。好ましい実施形態に従って、安定化された細胞外核酸集団は、ccfDNAである。
【0209】
細胞含有生体試料を組成物と接触させた後、得られる混合物は、例えば、
a)好ましくは0.1μMから20μM、0.2μMから18μM、0.5μMから17μM、3μMから16μM、さらに好ましい3μMから12μMの範囲に存する濃度の、少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましいQ-VD-OPh;
および、
b)0.05mMから13.4mM、0.09mMから8.9mM、0.09mMから6.7mM、0.09mMから4.5mM、0.09mMから1.8mM、0.18mMから0.9mM、または0.27mMから0.71mMから選択される濃度範囲のN-アセチル-システイン;
c)0.01mMから4.2mM、0.02mMから3.15mM、0.03mMから2.1mM、0.06mMから1.68mM、0.13mMから1.26mM、0.17mMから0.95mMまたは0.17mMから0.61mMから選択される濃度範囲のグルタチオン、好ましくは還元形態のもの;
d)16.5mM未満、例えば、0.08mMから12.4mM、0.83mMから10.72mM、1.24mMから9.9mM、または1.65mMから9.1mMから選択される濃度範囲の水溶性ビタミン、好ましくは、アスコルビン酸;
e)0.29mMから2.9mM、0.44mMから1.74mM、0.52mMから1.16mM、または0.58mMから0.81mMから選択される濃度範囲のビタミンEもしくはその誘導体、好ましくは、水溶性ビタミンE誘導体、より好ましくはトロロックス
のうちの1つ以上を含み得る。
【0210】
得られる混合物は、ビタミンB、好ましくはビタミンB6を、0.08mMから12.9mM、0.08mMから12mM、0.1mMから9.4mM、0.17mMから6.4mM、または0.17mMから1.7mMより選択される濃度範囲で含み得ることも意図されている。
【0211】
N-アセチル-システインの使用が好ましい。
細胞含有生体試料を滅菌された安定化組成物と接触させた後、得られる混合物は、
a)0.25%から5%、0.3%から4%、0.4%から3%、0.5%から2.5%または0.75%から2%の範囲に存する濃度の、式1に従う1つ以上の化合物;
b)少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコール、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー;
c)キレート剤、さらに好ましくはEDTA
のうちの1つ以上を含み得る。
【0212】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0213】
したがって、細胞含有生体試料を滅菌された安定化組成物と接触させた後、得られる混合物は、
a)0.25%から5%、0.3%から4%、0.4%から3%、0.5%から2.5%または0.75%から2%の範囲における濃度の式1に従う1つ以上の化合物;
b)0.1%から3%(w/v)、0.2%から2.5%(w/v)、0.25%から2%(w/v)、0.3%から1.75%(w/v)および0.35%から1.5%(w/v)から選択される、または0.25%から1.5%(w/v)、0.3%から1.25%(w/v)、0.35%から1%(w/v)および0.4%から0.75%(w/v)から選択される濃度範囲の高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー;
c)0.5%から10%、1.5%から9%、1.75%から8%、2%から7%および2.5%から6%から選択される濃度範囲の低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー;
d)キレート剤、さらに好ましくはEDTA
のうちの1つ以上を含み得る。
【0214】
1つの実施形態によると、細胞含有試料は、血液試料である。この実施形態では、安定化は、EDTAなどのキレート剤であってよい抗凝固薬の使用を伴うことが好ましい。
【0215】
本明細書に記載のように、複数の実施形態では、滅菌された組成物は、さらに細胞内DNA(例えば、ゲノムDNA)および/またはRNAなどの細胞内核酸を安定化するのに好適である。1つの実施形態によると、細胞含有試料中に存在する核酸の分解は、安定化に起因して低減される。特に、細胞内RNAが安定化される。試料に含有されている細胞におけるトランスクリプトームおよび/または転写レベルが安定化されることが好ましい。詳細は上に記載している。1つの実施形態によると、c-fos、IL-1ベータ、IL-8およびp53より選択される1つ以上のマーカー遺伝子の転写レベルは、安定化されると少なくとも12時間にわたって、少なくとも24時間にわたって、好ましくは少なくとも48時間にわたって安定化されている。1つの実施形態によると、安定化組成物を血液試料と接触させると、c-fos、IL-1ベータ、IL-8およびp53より選択される1つ以上のマーカー遺伝子の転写レベルが、安定化されると少なくとも12時間にわたって、少なくとも24時間にわたって、好ましくは少なくとも48時間にわたって安定化され、1つの実施形態では、安定化組成物と細胞含有試料の体積比は、10:1から1:20、5:1から1:15、1:1から1:10および1:2から1:5より選択される。
【0216】
複数の実施形態では、滅菌された組成物は、さらに例えば細胞表面特性および/または細胞形態などの細胞特性を安定化するのに好適である。重要なことに、安定化された細胞はインタクトなままであり、したがって、安定化された試料から単離することができる。それについては上記の開示を参照する。1つの実施形態では、安定化する方法は、以下の特性:
a)安定化により、安定化された試料から細胞を単離することが可能になる;
b)前記細胞含有試料が血液試料であり、血液試料に含有されている細胞が安定化される;
c)前記細胞含有試料が血液試料であり、白血球が安定化される;
d)細胞の形態が保存される;
e)有核細胞の形態が保存される;
f)前記試料が血液試料であり、含有されるリンパ球および/もしくは単球が安定化される;
g)細胞表面エピトープが保存される;ならびに/または
h)細胞表面タンパク質が保存される
のうちの1つ以上を有する。
【0217】
1つの実施形態によると、試料は、血液試料であり、白血球、好ましくはリンパ球の形態および/または細胞表面エピトープは保存される。上記のように、血液試料に含まれている他の細胞、例えば、存在する場合、循環する腫瘍細胞の特徴も保存することができる。
【0218】
安定化期間後、方法は、以下
a)安定化された試料を核酸分析および/もしくは検出方法に供する;
b)細胞外核酸を安定化された試料から単離する;
c)細胞外核酸を安定化された試料から単離し、単離された核酸を分析および/もしくは検出する;
d)安定化された試料に含まれている細胞を取り出す;
e)安定化された試料に含まれている細胞を、核酸の単離、分析および/もしくは検出ステップを実施する前に取り出す;
f)安定化された試料から細胞を取り出し、安定化された試料の無細胞部分もしくは細胞枯渇部分から細胞外核酸を単離する;
g)(i)安定化された試料、(ii)細胞が取り出された、安定化された試料および/もしくは(iii)試料から取り出された細胞を保管する;
h)安定化された試料から細胞を取り出し、廃棄する;ならびに/または
i)安定化された試料から細胞を取り出し、安定化された試料から取り出された細胞から核酸を単離する;
j)安定化された試料から細胞を取り出し、安定化された試料から取り出された細胞からタンパク質および/もしくは代謝産物などの生体分子、核酸を単離する;
k)安定化された試料から細胞を取り出し、安定化された試料から取り出された細胞から核酸およびタンパク質および/もしくは代謝産物などの生体分子を単離する
l)安定化された試料から細胞を取り出し、安定化された試料の無細胞部分または細胞枯渇部分から細胞外核酸をサイズ選択核酸単離法を使用して単離する
のうちの1つ以上を含んでよい。
【0219】
したがって、本発明の方法を用いて安定化された細胞含有生体試料を、核酸分析方法および/もしくは核酸検出方法で分析することができ、ならびに/またはさらに処理してもよい。生体試料の安定化の直ぐ後に核酸の分析が続くこともあり、またはその安定化された試料から先ずは核酸を単離することもある。核酸単離および分析に関する詳細は、本発明の第三の態様に関連して下にも記載し、それについては前記開示を参照する。
【0220】
さらに、記載したように、細胞を、安定化された試料から取り出し、分析することができ、かつ/または、核酸を、得られる細胞から単離することができる。これにより、例えば、腫瘍細胞を識別することが可能になる。1つの実施形態によると、細胞内RNAを、安定化された試料に含有されている細胞から単離し、および分析することができる。1つの実施形態によると、方法は、1つ以上の遺伝子転写物の定性分析または定量分析を実施することを含む。さらに、複数の実施形態では、細胞を、それらの形態または細胞表面特性に関して分析することができる。
【0221】
1つの実施形態によると、細胞含有試料は血液試料であり、滅菌された安定化組成物により、白血球の安定化が達成される。これにより、白血球を安定化された試料から分離することが可能になる。含有されている血液細胞の少なくとも1つの型が、少なくとも12時間、さらに好ましくは少なくとも24時間、さらに好ましくは少なくとも48時間であることが好ましい安定化期間中安定化されれば、白血球が安定化される。1つの実施形態によると、血液試料に含有されているリンパ球および/または単球が安定化される。1つの実施形態では、滅菌された組成物は、細胞含有試料に含有される有核細胞の溶解を誘導または促進しない。したがって、安定化は、細胞溶解に基づくものではない。好ましくは、細胞含有試料が血液であり、目的の核酸が細胞外核酸、特に細胞外RNAである場合、滅菌された安定化組成物により溶血が防止される。インビトロ溶血の大半の原因は、検体採集に関係づけられる。しかし、インビトロ溶血は、通常、エクスビボ保管中の血液試料でも適正な安定化方法を用いないと発生する。目的の細胞外核酸によっては、溶血は相当な問題であり得る。目的の細胞外核酸がDNAである場合、赤血球が核を含有しない、したがって、ゲノムDNAを含有しないので、溶血はあまり問題にならない。それ故、溶血中に赤血球から細胞内DNAは放出されない。目的の細胞外核酸がDNAである場合、特に、白血球の溶解または崩壊は問題である。この場合は細胞内RNAに加えてゲノムDNAが放出されるからである。したがって、目的の細胞外核酸が細胞外DNAである場合、特に、白血球の溶解は防止されなければならない。白血球は、それらの安定特性が互いに異なり得る。したがって、一部のタイプの白血球は他のものより安定している。しかし、一般に、白血球は赤血球より有意に安定している。それ故、赤血球の溶解は、白血球が溶解されたことを必ずしも示すとは限らない。溶解に対する白血球および赤血球のこの異なる感受性をまた、当該技術分野において用いて、例えば、赤血球を特異的に溶解する一方で白血球を保存して例えば白血球の収集を可能にした。しかし、目的の細胞外核酸がRNAである場合、溶血およびしたがって赤血球の溶解は問題となる。成熟赤血球もRNAを含有しないが、それらの前駆体(網状赤血球)は含有する。網状赤血球は、赤血球のおおよそ0.5%から1%を構成し、大量のグロビンRNAを含有する。したがって、特に、目的の細胞外核酸がRNAである場合、細胞外核酸集団、特に細胞外RNA集団のグロビンmRNAでの希釈を低減させるために、保管中の赤血球およびしたがって網状赤血球の溶解は防止/低減されるべきである。1つの実施形態では、滅菌された安定化組成物によって溶血を効率的に防止/低減することができる(例えば、本発明の教示を使用して滅菌することができる、好適な、カスパーゼ阻害剤を含有する安定化組成物に関してはWO2014/146781を参照されたい)。それによって、細胞外核酸集団は実質的に保存され、さらに、安定化された血液試料、特に、その安定化された血液試料から得られる血漿または血清は、溶血および一般に細胞溶解の防止に起因して、他の標準的実験室分析にも好適である。さらに、白血球の溶解の防止により、それぞれの細胞を単離し、分析することが可能になる。特に、白血球の溶解の防止により、細胞内RNAなどの細胞内核酸を、安定化された試料に含有されている白血球または他の保存されている細胞から単離することが可能になる。さらに、無核細胞(例えば、網状赤血球)および細胞内核酸を含む細胞を安定化する場合、例えば、かかる無核細胞のトランスクリプトームを分析することもできる。
【0222】
C.細胞外核酸を単離する方法
第三の態様に従って、本発明は、安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を単離するための方法であって、
a)本発明の第二の態様の方法に従って細胞含有生体試料を安定化するステップ;および
b)細胞外核酸を単離するステップ
を含む方法を提供する。
【0223】
ステップa)において、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を本発明の第二の態様に記載されている方法に従って安定化し、ここで、上記の滅菌された安定化組成物を使用する。それについては上記の開示を参照し、その開示はここにも適用される。
【0224】
例えば全血での場合のように、細胞含有生体試料が大量の細胞を含む場合、細胞を残りの試料から好ましくは分離して、安定化された試料の無細胞の、それぞれに細胞低減または細胞枯渇画分を得、次いで、ステップb)においてそれらから細胞外核酸を単離する。したがって、1つの実施形態によると、ステップa)およびステップb)の間に細胞含有試料から細胞を除去する。この中間ステップは、血漿もしくは血清などの少量の残留細胞しか含まない試料を処理する場合、および/または目的の細胞外核酸がDNAである場合、もう用いられないこともある。本発明の安定化のために、含有細胞からの安定化期間中のゲノムDNAの放出が低減されるか、またはさらには防止され、およびさらに、ゲノムDNAの断片化がカスパーゼ阻害剤のために低減される。その相当大きいサイズのために、非断片化ゲノムDNAをより小さい細胞外DNAと区別することができる。これにより、例えば、サイズ選択的単離プロトコルを使用することによって非断片化ゲノムDNAの存在下でさえ細胞外DNAを選択的に単離することが可能になる。しかし、結果を改善するためには、ステップb)で細胞外核酸を単離する前にその安定化された試料から細胞(または潜在的に残存細胞)を除去して、そうしなければ核酸単離中に細胞から放出される細胞内核酸での細胞外核酸集団の汚染を低減させることが好ましい。含有細胞の除去もまた、目的の細胞外核酸がRNAである場合、細胞内RNAと細胞外RNAを区別することが困難であり得るため、およびさらに細胞外RNAの希釈をそれによって防止することができるので、特に有利である。目的の細胞外核酸がDNAである場合もステップb)の前の細胞枯渇ステップが一般に有利であり、したがって好ましい。なぜなら、これによりステップb)での標準的核酸単離手順の使用が可能になるからである。
【0225】
細胞含有生体試料のタイプに依存して、細胞(残留細胞を含む)を、例えば、遠心分離、例えば、温和な速度の遠心分離によって、または遠心分離ステップを避けるべき場合には遠心分離以外の手段、例えば濾過、沈降もしくは表面への結合、例えば(必要に応じて磁性)粒子上への結合によって、分離および除去することができる。それぞれの細胞分離方法は先行技術分野において周知であり、したがって、それらを詳細に記載する必要なはい。それぞれの細胞枯渇ステップを自動試料分離プロトコルに容易に含めることもできる。それぞれに除去された細胞を、所望される場合には、さらに処理してもよい。細胞を、例えば、保管することができ、分析することができ、および/または除去された細胞から生体分子、例えば核酸もしくはタンパク質などを単離することができる。さらに、細胞内核酸(例えば、細胞内DNAおよび/またはRNA)を、含有されている細胞から、例えば、細胞を残存試料から分離した後に、単離することができる。例えば、細胞内RNAを単離し、遺伝子発現分析に使用することができる。これらの実施形態に関しては、滅菌された組成物により、特にRNAなどの細胞内核酸および/または上記の細胞特性も安定化されることが好ましい。それぞれの開示が参照される。
【0226】
さらに、安定化された試料を処理するためのさらなる中間ステップを含めることも本発明の範囲内である。
【0227】
ステップb)で、好ましくは、安定化された試料の無細胞の、それぞれに細胞枯渇画分から、例えば、安定化された細胞含有試料が血液試料である場合には上清からまたは血漿および/または血清から、細胞外核酸を単離する。細胞外核酸を単離するために、安定化された試料、それぞれに得られた細胞枯渇試料から核酸を単離するのに好適である任意の公知核酸単離方法を使用することができる。それぞれの精製方法の例としては、抽出、固相抽出、シリカベースの精製方法、磁性粒子ベースの精製、フェノール-クロロホルム抽出、クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー(アニオン交換表面を使用)、電気泳動、濾過、沈殿およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、配列特異的結合を可能にする固体支持体にカップリングされた適切なプローブを使用することによって、特異的標的細胞外核酸を特異的に単離することも本発明の範囲内である。当業者に公知の任意の他の核酸単離技術も使用することができる。細胞外核酸を単離するための典型的な方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO2013/045432A1に記載されている。WO2013/045432A1の細胞外核酸を単離するための方法は、本発明の第三の態様による方法に適用することができる。
【0228】
D.細胞外核酸を処理および/または分析するための方法
第四の態様に従って、本発明は、細胞外核酸を処理および/または分析するための方法であって、
a)安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を本発明の第三の態様の方法に従って単離するステップ;ならびに
b)単離された細胞外核酸を処理および/または分析するステップ
を含む方法を提供する。
【0229】
ステップa)において細胞外核酸を単離するために使用される第三の態様による方法は上に記載しており、それについてはそれぞれの開示を参照し、そのそれぞれの開示はここにも適用される。ステップb)において、単離された細胞外核酸をその後、分析および/またはさらに処理する。これは、好適なアッセイおよび/または分析方法を使用して行うことができる。例えば、それらを同定することができ、改変することができ、少なくとも1つの酵素と接触させることができ、増幅することができ、逆転写することができ、クローニングすることができ、配列決定することができ、プローブと接触させることができ、(それらの存在または不在を)検出することができ、および/または定量することができる。それぞれの方法が先行技術分野において周知であり、一般に、医療、診断および/または予後予測分野において細胞外核酸を分析するために応用されている(本発明の背景技術における詳細な記載も参照されたい)。したがって、細胞外核酸をステップa)においてした後、それを分析して、例えば、多数の新生物疾患、特に、前悪性疾患および悪性疾患、例えば、様々な形態の腫瘍またはがんをはじめとする(しかしこれらに限定されない)疾患状態の存在、不在または重症度を同定することができる。例えば、単離された細胞外核酸を分析して、非侵襲性出生前遺伝子検査、それぞれにスクリーニング、疾患スクリーニング、染色体異常、トリソミー、点突然変異についてのスクリーニング、病原体スクリーニング、腫瘍学、がんスクリーニング、早期がんスクリーニング、がん治療モニタリング、遺伝子検査(遺伝子型判定)、感染症検査、傷害診断、外傷診断、移植医療もしくは多くの他の疾患を含む(しかしこれらに限定されない)、多くの応用分野において診断および/または予後予測マーカー(例えば、胎児由来または腫瘍由来細胞外核酸)を検出することができ、したがって、単離された細胞外核酸は、診断および/または予後予測に適切なものである。1つの実施形態によると、単離された細胞外核酸を分析して、疾患または胎児の特性を同定および/または特性評価する。したがって、上で論じたように、本明細書に記載する単離方法は、核酸分析および/または処理のステップc)をさらに含むことがある。
【0230】
したがって、1つの実施形態によると、疾患および/または少なくとも1つの胎児の特徴を識別、検出、スクリーニング、モニタリングまたは排除するために、単離された細胞外核酸をステップb)において分析する。
【0231】
E.滅菌可能な組成物を生成するための方法
第五の態様に従って、本発明は、滅菌可能な組成物を生成するための方法であって、滅菌された形態の組成物が、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適であり、方法が、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.チオアルコール(N-アセチル-システインまたはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物
を含む組成物を調製するステップ
を含む方法を提供する。
【0232】
方法は、
b)組成物を滅菌するステップ
をさらに含んでよい。
【0233】
方法は、本発明の第一の態様のステップa)において提供されるような滅菌可能な組成物または本発明の第六の態様による滅菌可能な組成物を生成するために使用することができる。組成物の成分を互いと接触させる順序は限定されない。例えば、限定するものではないが、ステップa)の組成物は、まず、1つ以上のカスパーゼ阻害剤を含む組成物を調製し、次いで、チオアルコール(N-アセチル-システインおよび/またはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物を組成物に添加することによって調製することができる。所望であれば、チオアルコール(N-アセチル-システインおよび/またはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物を、1つ以上のカスパーゼ阻害剤の添加前に添加することもできる。液体組成物(例えば水性組成物など)を調製する場合、便宜上、液体(例えば、水)を最初に提供することができるが、そうする必要はない。同様に、ステップa)の組成物は、例えば、調製される組成物の個々の成分を同時にまたは逐次的に任意の順序で互いと接触させることによって調製することができる。したがって、組成物の成分を互いと接触させることができる。組成物の成分を混合して液体組成物、好ましくは水性組成物をもたらすことが好ましい。液体組成物は、1つの相のみの均一の混合物であってよいが、例えば沈殿物などの固体成分を含む液体組成物も本発明の範囲内に入り得る。本発明の第五の態様による方法のステップa)は、本発明の第一の態様による方法のステップa)に対応し得る。それについては上記の開示を参照する。そこには、安定化組成物の好適なおよび好ましい実施形態ならびに達成可能な安定化特性も記載されている。
【0234】
必要に応じてステップb)に従って、組成物をその後、滅菌する。滅菌は、照射または他の好適な手段によって達成することができる。特に、滅菌は、上記のように、本発明の第一の態様の方法と併せて達成することができる。それについては上記の開示を参照する。
【0235】
F.滅菌可能な組成物
第六の態様に従って、本発明は、滅菌可能な組成物であって、滅菌された形態の組成物が、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適である、滅菌可能な組成物を提供する。組成物は、本発明の第一の態様のステップa)の方法において提供される組成物である。本発明による好適な滅菌可能な組成物は、上で第一の態様による方法を論じる際に記載しており、それについてはそれぞれの開示を参照する。それについては特に、その組成物、特に含まれている成分、それについての好適なおよび好ましい実施形態、ならびに好適なおよび好ましい濃度および上記の他の特徴の詳細に関する上記の開示を参照する。複数の実施形態では、滅菌可能な組成物は、さらに細胞内核酸(特に、細胞内RNAおよび/または細胞内DNA(例えば、ゲノムDNA))を安定化するのに好適である。複数の実施形態では、滅菌可能な組成物は、さらに例えば細胞表面特性および/または細胞形態などの細胞特性を安定化するのに好適である。詳細は上に記載し、それについては上記の開示を参照する。
【0236】
組成物は滅菌されていることが好ましい。論じたように、ガンマ線照射などの照射による滅菌が好ましい。1つの実施形態によると、組成物は、本発明の第一の態様による方法によって得ることができるおよび/または得られた、滅菌された組成物である。したがって、本発明の第一の態様による方法を用いて調製された、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物が意図されており、好ましい。
【0237】
組成物は液体であることが好ましく、組成物は水性であることがさらに好ましい。
【0238】
本発明の第六の態様の滅菌可能な組成物は、細胞含有生体試料、好ましくは血液試料中の細胞外核酸集団を安定化するために使用することができる。複数の実施形態では、滅菌可能な組成物は、さらに細胞内核酸(特に、細胞内RNAおよび/または細胞内DNA)、好ましい遺伝子発現プロファイルを安定化するために使用することができる。複数の実施形態では、滅菌可能な組成物は、さらに例えば細胞表面特性および/または細胞形態などの細胞特性を安定化するために使用することができる。それについては上記の開示を参照する。
【0239】
組成物は、滅菌された形態で使用することが有利である。
【0240】
G.採集デバイス
本発明の第七の態様に従って、細胞含有生体試料、好ましくは血液試料を採集するための採集デバイスも提供される。続いて、採集デバイスは、容器とも称される。
【0241】
デバイスは、本発明の第六の態様による組成物を含む。したがって、デバイスに含まれている組成物は、本発明の第一の態様による方法のステップa)において提供される組成物であってよい。それについては上記の詳細についての開示を参照する。
【0242】
一つの実施形態に従って、採集デバイスは、好ましくは液体であり、より好ましくは水性である組成物を含み、この組成物は、
a)1つ以上のカスパーゼ阻害剤、
b)チオアルコール(N-アセチル-システインまたはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたは上記のその誘導体より選択される1つ以上の化合物(組成物はN-アセチル-システインを含むことが好ましい)
c)安定化剤として、好ましくは、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー;
を含み、ならびに必要に応じて、
d)第1のポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量よりも少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する、好ましくは高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー;
e)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド;
f)抗凝固薬および/またはキレート剤
から成る群より選択される1つ以上、好ましくは2つ以上のさらなる添加剤
を含む。
【0243】
安定化組成物は、本発明による化合物のうちの1つ以上を、特徴iiを論じる際には、本開示の第1の態様において上に開示した濃度で、さらに好ましくは上の表Aに開示した濃度で含むことが好ましい。適切な化合物および濃度はまた、表Bに示されている。N-アセチル-システインの使用が特に好ましい。
【0244】
一つの実施形態に従って、採集デバイスは、好ましくは液体であり、より好ましくは水性である組成物を含み、この組成物は、
a)1つ以上のカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましい改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、さらに好ましいQ-VD-OPh、Z-VAD(OMe)-FMKおよびBoc-D-(OMe)-FMKから成る群より選択されるカスパーゼ阻害剤、最も好ましくはQ-VD-OPh;
b)チオアルコール(N-アセチル-システインまたはグルタチオンであることが好ましい)、水溶性ビタミン(ビタミンB6またはアスコルビン酸であることが好ましい)、およびビタミンEまたは上記のその誘導体より選択される1つ以上の化合物(組成物は、N-アセチル-システインを含むことが好ましい)、
c)安定化剤として、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコールであり、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー;
ならびに、必要に応じて、1つ以上、好ましくは2つの、
d)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド;
e)抗凝固薬および/またはキレート剤
から成る群より選択されるさらなる添加剤
を含む。
【0245】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0246】
安定化組成物は、本発明による化合物のうちの1つ以上を、特徴iiを論じる際には上に開示した濃度で、さらに好ましくは上の表Aまたは表Bに開示した濃度で含むことが好ましい。N-アセチル-システインの使用が特に好ましい。
【0247】
さらなる実施形態では、採集デバイスは、好ましくは液体であり、より好ましくは水性である安定化組成物を含み、この組成物は、
a)少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤。前記カスパーゼ特異的ペプチドは、アルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物によって改変されたものであってよい。1つの実施形態によると、カスパーゼ特異的ペプチドは、好ましくはカルボキシル末端においてO-フェノキシ(OPh)またはフルオロメチルケトン(FMK)基で改変されている。1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択される。1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPhおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択され、Q-VD-OPhが最も好ましい。
b)以下:
- 0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン、
- 0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg、0.4mg/mlから2mg/mlまたは0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度の還元形態のグルタチオン、および/または
- 20mg/ml未満、例えば、1mg/mlから15mg/ml、0.2mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/mlまたは2mg/mlから11mg/mlの濃度のアスコルビン酸、
- 0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/mlまたは0.2mg/mlから2mg/mlの濃度のビタミンB、好ましくはビタミンB6
の化合物のうちの1つ以上を含み、
組成物は、必要に応じて、
c)安定化剤として、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコール、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
d)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、および
e)抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
から選択される1つ以上の化合物をさらに含む。
【0248】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0249】
さらなる実施形態では、採集デバイスは、好ましくは液体であり、より好ましくは水性である安定化組成物を含み、この組成物は、
a)少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤。前記カスパーゼ特異的ペプチドは、アルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物によって改変されたものであってよい。1つの実施形態によると、カスパーゼ特異的ペプチドは、好ましくはカルボキシル末端においてO-フェノキシ(OPh)またはフルオロメチルケトン(FMK)基で改変されている。1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択される。1つの実施形態によると、カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPhおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択され、Q-VD-OPhが最も好ましい。
b)以下:
- 0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン、
- 0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg、0.4mg/mlから2mg/mlまたは0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度の還元形態のグルタチオン、および/または
- 20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、0.2mg/mlから14mg/ml、0.5mg/mlから13.5mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/mlまたは2mg/mlから11mg/mlの濃度のアスコルビン酸、
の化合物のうちの1つ以上を含み、
組成物は、必要に応じて、
c)少なくとも1500、好ましくは2000から40000、さらに好ましい2500から30000、2500から25000または3000から20000の範囲の分子量を有する少なくとも1つの高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
d)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、
e)使用される高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量より少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する、好ましくは200から800または200から600の範囲の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー、および
f)抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
から選択される1つ以上の化合物をさらに含む。
【0250】
さらなる実施形態では、採集デバイスは、好ましくは液体であり、より好ましくは水性である安定化組成物を含み、この組成物は、
a)少なくとも汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは上で記載される通りの改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、最も好ましくはQ-VD-OPh、
b)0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン、
を含み、組成物は、必要に応じて、
c)安定化剤として、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくはポリエチレングリコール、さらに好ましくは非置換ポリエチレングリコールである、ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
d)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、および
e)抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
をさらに含む。
【0251】
複数の実施形態では、ポリエチレングリコールであることが好ましい少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、および/または少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーより選択される。
【0252】
さらなる実施形態では、採集デバイスは、好ましくは液体であり、より好ましくは水性である安定化組成物を含み、この組成物は、
a)少なくとも1つの汎カスパーゼ阻害剤、さらに好ましくは上で記載される通りの改変カスパーゼ特異的ペプチドを含むカスパーゼ阻害剤、最も好ましくはQ-VD-OPh、
b)0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン、
を含み、組成物は、必要に応じて、
c)少なくとも1500、好ましくは2000から40000、さらに好ましい2500から30000、2500から25000または3000から20000の範囲の分子量を有する少なくとも1つの高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマー、
d)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド、好ましくはN,N-ジアルキルプロパンアミド(例えば、N,N-ジメチルプロパンアミド)および/またはブタンアミド、
e)使用される高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量よりも少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い分子量を有する少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは、1000以下の分子量を有する、好ましくは200から800または200から600の範囲の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)である、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマー、ならびに
f)必要に応じて、抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA
をさらに含む。
【0253】
採集デバイスに含まれている組成物は、本発明の第一の態様による方法のステップa)に記載のように、採集デバイス中に直接、提供、および例えば調製することもでき、調製後に採集デバイスに充填することもできる。
【0254】
本発明の第六の態様による組成物を含むそれぞれの採集デバイス、例えば、試料採集チューブ、好ましくは採血チューブなどの容器を提供することには、細胞含有生体試料が、試料がそれぞれのデバイスに採集されると直ちに安定化されるという利点がある。
【0255】
採集容器に含まれている安定化のために使用される安定化組成物および/または個々の化合物を、液体;半液体、または乾燥形態で提供することができる。安定化のために使用される化合物を前記容器に別々の実体として提供してもよく、および異なる形態で前記容器に提供してもよい。例えば、1つの成分を乾燥形態で提供してもよく、その一方で他の化合物を液体として提供してもよい。他の組み合わせも実施可能である。好適な処方および製造選択肢は当業者に公知である。
固体の安定化組成物を使用する利点は、固体が、通常、化学的に液体より安定していることである。1つの実施形態によると、前記容器の内壁を本発明による安定化組成物で、またはその個々の成分、例えば抗凝固物質などで処理/被覆する。例えば噴霧乾燥法を用いて、前記組成物または成分を前記内壁に塗布することができる。液体除去技術を安定化組成物に対して実施して、実質的に固体状態の保護組成物を得ることができる。かかる液体除去条件および技法は、PCT/EP2015/055699に記載されており、この開示を参照する。
【0256】
しかし、上で説明したように安定化組成物は液体形態、好ましくは水性形態で提供されることが好ましい。これには、照射による滅菌に関して利点があり、また、例えば血液試料などの特定の試料に関しても利点がある。液体組成物には、安定化すべき細胞含有生体試料との混合を迅速に達成することができ、それによって基本的に、その試料を液体の安定化組成物と接触させるやいなや即時安定化効果をもたらすという利点が、多くの場合ある。さらに、液体組成物は、より大量の安定化組成物を使用する、したがって噴霧乾燥できないか噴霧乾燥が難しい場合、または前記組成物が乾燥組成物をもたらすことを妨げる場合に有利である。
【0257】
安定化組成物は、容器に、前記容器に採集する試料量の安定化をもたらすのに有効な量で含まれる。1つの実施形態によると、液体の安定化組成物を生体試料と、10:1から1:20、5:1から1:15、1:1から1:10、1:4から1:10、および1:5から1:9より選択される体積比、特に約1:6から1:8で接触させる。
【0258】
採集デバイスは、滅菌可能であることが好ましく、本発明の第一の態様による方法を使用して滅菌可能であることがさらに好ましい。重ねて、それについては詳細に関して本発明の第一の態様における上記の開示を参照し、上記の開示はここにも適用される。したがって、液体形態、好ましくは水性形態の組成物を含む採集デバイスを照射することが非常に好ましい。採集デバイスが最初に組成物を固体形態で含む場合、照射前に組成物を液体形態にすることができる。
【0259】
その中に含まれているデバイスおよび組成物は、例えば本発明の第一の態様による方法において、一緒に滅菌することができる。これにより、試料採集の用意ができた、滅菌された最終製品を提供することが有利に可能になる。
【0260】
したがって、デバイスは滅菌されていることが好ましい。本発明の第一の態様による方法によって得ることができるおよび/または得られたデバイスは、滅菌されたデバイスであることがさらに好ましい。したがって、本発明の第一の態様による方法を用いて調製された、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を含むデバイスが意図されており、好ましい。
【0261】
採集デバイスは排気することができる。排気は、好ましくは、特定の体積の流体の細胞含有生体試料を内部に引き込むのに有効である。それにより、正確な量の試料を、前記容器に含まれている予め充填された量の安定化組成物と確実に接触させ、およびしたがって、安定化を確実に効率的にする。1つの実施形態によると、前記容器は、セプタムによって封止された開口端を有するチューブを含む。例えば、前記容器は、固体または液体いずれかの形態の定義された量の安定化組成物が予め充填され、定義された真空度を与えられ、セプタムで封止されている。前記セプタムは、標準的な試料採取用付属品(例えば、カニューレなど)に適合可能であるように構成される。例えばカニューレと接触したとき、前記真空度によって予め決められる試料量が前記容器内に採集される。それぞれの実施形態は、採血に特に有利である。適する容器は、例えば、米国特許第6,776,959号明細書に開示されている。
【0262】
容器は、ガラス製、プラスチック製、または他の好適な材料製であることができる。プラスチック材料は、酸素不透過性材料であることができ、または酸素不透過層を含有することができる。あるいは、前記容器は、通気性プラスチック材料製であることができる。本発明による容器は、好ましくは、透明材料製である。適する透明熱可塑性材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリエチレンテレフタレートが挙げられる。前記容器は、採集する生体試料の必要とされる体積に従って選択される好適な寸法を有し得る。上に記載したように、好ましくは、前記容器を大気圧より低い内部圧力に排気する。かかる実施形態は、全血などの体液の採集に特に好適である。前記圧力は、好ましくは、前記容器に所定体積の生体試料を引き込むように選択される。かかる真空チューブに加えて、非真空チューブ、機械式分離チューブ(mechanical separator tube)またはゲル―バリアチューブも、特に血液試料採集用の、試料容器として使用することができる。適する容器およびキャッピングデバイスは、米国特許第5,860,397号明細書および米国特許出願公開第2004/0043505号明細書に開示されている。細胞含有試料を採集するための容器として、さらなる採集デバイス、例えば注射器、尿採集デバイスまたは他の採集デバイスも使用することができる。容器のタイプは、採集すべき試料タイプにも依存することがあり、好適な容器も当業者に利用可能である。
【0263】
1つの実施形態によると、容器は、開口上部と、底部と、チャンバーを規定するそれらとの間に広がる側壁とを有し、本発明の第六の態様による組成物または本発明の第一の態様による方法のステップa)において提供される組成物がチャンバーに含まれている。組成物は、チャンバー内に液体または固体形態で含まれている。1つの実施形態によると、それは液体、好ましくは水性液体である。1つの実施形態によると、前記容器はチューブであり、その底部は、閉鎖底部であり、前記容器は、開口上部にクロージャーを備えており、前記チャンバーは、減圧下にある。前記チャンバーにおける減圧の利点は上に記載した。好ましくは、前記クロージャーは、針またはカニューレでの貫入が可能であり、指定体積の液体試料を前記チャンバーに引き込むように減圧を選択する。1つの実施形態によると、前記チャンバーは、指定体積の液体試料を前記チャンバーに引き込むように選択された減圧下にあり、前記安定化組成物は液体であり、該安定化組成物の前記指定体積の細胞含有試料に対する体積比が10:1から1:20、5:1から1:15、および1:1から1:10より選択され、好ましくは1:5から1:10であり、より好ましくは1:6から1:8であるように前記チャンバーの中に配置される。付随する利点は上に記載し、またPCT/EP2015/055699においても議論されている。
【0264】
好ましくは、前記容器は、患者からの採血用である。1つの実施形態によると、前記容器は、患者からの10ml血液の採血用である。1つの実施形態によると、安定化組成物は、液体であり、体積は2ml以下であり、0.5mlから2ml、0.75mlから1.75mlおよび1mlから1.5mlの範囲に存してよい。
【0265】
生体試料、好ましくは血液を患者から本発明の第七の態様によるデバイスまたは容器のチャンバー内に直接採集する、好ましくは引き込むステップを含む方法も提供される。
【0266】
H.キット
第八の態様に従って、本発明は、本発明の第六の態様による組成物または本発明の第七の態様による採集デバイスを含むキットを提供する。キットは、細胞外核酸を単離するための試薬などのさらなる構成要素をさらに含んでよい。
【0267】
I.使用
第九の態様に従って、本発明は、生体試料の細胞外核酸集団またはその成分の安定化に好適な組成物を滅菌、特に照射による滅菌中防護するための、チオアルコール(好ましくはN-アセチル-システインまたはグルタチオン)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたはその誘導体から成る群より選択される少なくとも1つの化合物の使用に関する。これらの化合物は、特に、上記のように、含有されているカスパーゼ阻害剤を照射中に分解から防護するのに好適である。これらの化合物のうちの1つ以上を使用した場合、分解の程度は有意に低減される。照射は、好ましくはイオン化照射、さらに好ましくはガンマ線照射、電子ビーム照射、またはX線であってよく、ガンマ線照射が最も好ましい。適用される照射および/または滅菌条件は、本発明の第一の態様に関連して上記の通りであってよい。
【0268】
本発明の好適な化合物および化合物の組み合わせならびに好適な濃度に関する本発明の第一の態様による方法の開示は、本態様にも適用される。化合物は、例えば、N-アセチル-システイン、グルタチオン(好ましくは還元型)、アスコルビン酸、および/またはトロロックスであってよい。N-アセチル-システインが非常に好ましい。好適な濃度も上記しており、化合物は、例えば、これだけに限定することなく、上の表Aに示されている濃度に適用される。好適な濃度は上の表Bにも示している。
【0269】
カスパーゼ阻害剤は、特に、Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-VAD(OMe)-FMKから成る群より選択することができる。カスパーゼ阻害剤は、Q-VD-OPhおよびZ-VAD(OMe)-FMKより選択することができ、カスパーゼ阻害剤はQ-VD-OPhであることが最も好ましい。
【0270】
J.さらなる態様
第十の態様に従って、本発明は、少なくとも1つのラジカルスカベンジャーの、試料採集デバイス、特に採血チューブに含まれている水性組成物を照射中に防護することにおける、使用を提供する。
【0271】
第十一の態様に従って、試料採集デバイスに含まれている水性組成物を滅菌するための方法であって、
a)試料採集デバイスに含まれている、少なくとも1つのラジカルスカベンジャーを含む水性組成物を調製するステップ、および
b)組成物を照射によって滅菌するステップ
を含む方法が提供される。
【0272】
本発明の第十の態様および第十一の態様の水性組成物は、細胞を含有する生体試料、好ましくは血液などの生体試料に含まれている成分を安定化するための組成物であってよい。目的の生体試料の例は、本発明の第一の態様に記載しており、水性組成物によって安定化される試料は、かかる試料であってよい。防護すべき水性組成物は、カスパーゼ阻害剤を含むことが好ましい。カスパーゼ阻害剤は、WO2013/045457A1またはWO2013/045458A1に開示されている阻害剤であってよい。好適なカスパーゼ阻害剤および濃度は、上で本発明の第一の態様において開示している。この開示を参照し、この開示はここにも適用される。また、好適なおよび好ましい水性組成物は、上で本発明の第一の態様において開示している。この開示もここにも適用される、つまり、第一の態様による水性組成物は、本発明の第十の態様および第十一の態様において使用することができる水性組成物の例である。水性組成物は、特に、循環する腫瘍細胞、循環する無細胞RNA、循環する無細胞miRNA、ウイルスおよび/またはエキソソームを安定化するための組成物であってよい。安定化により、その後の単離、分析および/または診断を容易にすることができる。循環する腫瘍細胞は、がんに罹患している哺乳動物およびヒトにおいて特に関心がもたれる。循環する腫瘍細胞の分析により、例えば、腫瘍量、腫瘍のステージおよび/または遠隔転移の形成に関する情報を提供することができる。循環する無細胞RNAおよび循環する無細胞miRNAは、細胞外核酸集団の例である。ウイルスは、例えば、ウイルスに感染した哺乳動物またはヒトからの生体試料に含有されている。エキソソームは、血液および尿を含めた多くの生体液中に存在する細胞由来小胞である。エキソソームは、例えば、凝固および細胞間シグナル伝達に関与する。無細胞RNAおよびmiRNAの分析は、循環するバイオマーカーの識別、体細胞突然変異および癌遺伝子発現の検出に使用することができる。複数の実施形態では、滅菌された水性組成物は、細胞内核酸(特に、細胞内RNAおよび/または細胞内DNA)の安定化に好適である。複数の実施形態では、滅菌された水性組成物は、さらに例えば細胞表面特性および/または細胞形態などの細胞特性を安定化するのに好適である。かかる組成物および安定化特性の詳細は上に記載し、それについては上記の開示を参照し、その開示はここにも適用される。
【0273】
第十の態様および第十一の態様による少なくとも1つのラジカルスカベンジャーは、生物系においてフリーラジカルと反応することが可能な化合物であってよい。ラジカルスカベンジャーは、特に、チオール(例えば、N-アセチル-システインまたはグルタチオンなど)、水溶性ビタミン、およびビタミンEまたは本発明の第一の態様に記載のその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物であってよい。好適な化合物および濃度は、本発明の第一の態様に記載の通りであってよく、それが適用される。好ましくは、少なくとも1つのラジカルスカベンジャーは、水性組成物を照射中に防護して、照射に起因する水性組成物の安定化機能の低下を低減させるまたは排除するために活性である。安定化機能の低下を低減または排除することにおける活性は、少なくとも1つのラジカルスカベンジャーを含む滅菌された水性組成物の安定化機能と、同一の組成物の下で滅菌され、少なくとも1つのラジカルスカベンジャーが含まれないことのみが試験される組成物と異なることが好ましい水性組成物の安定化機能を比較することによって決定することができる。
【0274】
本発明の第十の態様および第十一の態様において使用することができる好適な試料採集デバイスは上で本発明の第七の態様において記載しており、この記載はここにも適用される。したがって、採集デバイスは排気することができる。採集デバイスは、ガラス、プラスチックまたは他の好適な材料製であってよい。1つの実施形態によると、採集デバイスまたは容器は、開口上部と、底部と、チャンバーを規定するそれらとの間に広がる側壁とを有してもよく、水性組成物が含まれる。
【0275】
例えば血液試料などの安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を単離するための方法は、上に第三の態様と併せて記載している。さらなる態様に従えば、安定化された細胞含有生体試料から核酸を単離するための方法が提供され、方法は、
a)細胞含有生体試料を安定化するステップであり、安定化が、
i)本発明の第1の態様の方法に従って滅菌された組成物を得ること;または
ii)滅菌されている、本発明の第6の態様に記載の組成物を得ること;または
iii)その中に含まれる組成物が滅菌されている本発明の第7の態様に記載の試料採集デバイスを得ること;および
前記細胞含有生体試料を前記滅菌された組成物と接触させること
を含む、ステップ;ならびに
b)前記安定化された試料から核酸を単離するステップ
を含む。
【0276】
滅菌された安定化組成物およびそれらの安定化性に関する詳細は、上で詳細に記載しており、それについては上記の開示を参照し、その開示はここにも適用される。ステップb)において、細胞内核酸および/または細胞外核酸を安定化された試料から単離することができる。好適な単離方法は上に本発明の第三の態様と併せて記載しており、それについてはそれぞれの開示を参照し、そのそれぞれの開示はここにも適用される。複数の実施形態では、核酸を単離する前に、細胞を含有する安定化された試料から細胞を取り出す。複数の実施形態では、細胞内核酸(例えば、DNAおよび/またはRNA)を、含有されている細胞から、例えば、細胞を残存試料から分離した後に単離する。例えば、RNAを単離し、遺伝子発現分析のために使用することができる。詳細は上に記載し、それについてはそれぞれの開示を参照する。
【0277】
次いで、単離された核酸を、ステップc)において、好適なアッセイおよび/または分析方法を使用して分析し、かつ/またはさらに処理することができる。
【0278】
さらなる態様に従えば、安定化された細胞含有生体試料から細胞を単離するための方法が提供され、方法は、
a)細胞含有生体試料を安定化するステップであり、安定化が、
i)本発明の第1の態様の方法に従って滅菌された組成物を得ること;または
ii)滅菌されている、本発明の第6の態様に記載の組成物を得ること;または
iii)その中に含まれる組成物が滅菌されている本発明の第7の態様に記載の試料採集デバイスを得ること;および
前記細胞含有生体試料を前記滅菌された組成物と接触させること
を含む、ステップ;ならびに
b)前記安定化された試料から細胞を単離するステップ
を含む。
【0279】
単離された細胞は、例えば、さらに分析することができる。上記のように、複数の実施形態では、滅菌された安定化組成物は、細胞表面特性(例えば、細胞表面エピトープまたはタンパク質)および/または細胞形態も保存する。詳細は上に記載し、それについては上記の開示を参照し、その開示はここにも適用される。
【0280】
さらなる態様によると、試料を患者から本発明の第七の態様による採集デバイスのチャンバー内に直接採集するステップを含む方法が提供される。採集デバイスおよび試料に関する詳細は上に記載している。それぞれの開示が参照される。1つの実施形態によると、血液試料を採集する、好ましくは、患者から抜き取る。
【0281】
本発明は、本明細書に開示する例示的方法および材料により限定されず、本明細書に記載するものと同様または等価のあらゆる方法および材料を本発明の実施形態の実施および試験に使用することができる。数値範囲は、範囲を規定する数を含む。本明細書において提供する表題は、本明細書を全体として参照することにより読み取ることができる本発明の様々な態様または実施形態に対する限定ではない。
【0282】
主題の明細書および特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈により明確に別段の規定がなされない限り、複数の態様を包含する。したがって、例えば、「1つの(a)カスパーゼ阻害剤」への言及は、単一のタイプのカスパーゼ阻害剤、ならびに2つ以上のカスパーゼ阻害剤を包含する。「本開示」および「本発明」などへの言及は、本明細書において教示される単一または複数の態様を包含する、などである。本明細書において教示される態様は、「発明」という用語に包含される。
【0283】
本明細書で使用する場合、「約」という表現は、所与の値±10%を示すものとする。
【0284】
1つの実施形態によると、方法の場合に、ある一定のステップを含むとしてまたは組成物、溶液および/もしくは緩衝液の場合に、ある一定の成分を含むとして本明細書に記載する主題は、それぞれのステップまたは成分から成る主題を指す。本明細書に記載する好ましい実施形態を選択および組み合わせることは好ましく、好ましい実施形態のそれぞれの組み合わせから生ずる特定の主題も本開示に属する。
【0285】
以下の項目もまた開示される:
1.生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を生成するための方法であって、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.チオアルコールおよびビタミンまたはそのビタミン誘導体より選択される少なくとも1つの化合物
を含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために前記組成物を照射するステップ
を含む方法。
【0286】
2.
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.チオアルコール、水溶性ビタミンまたはその誘導体、および脂溶性ビタミンより選択される少なくとも1つの化合物
を含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために前記組成物を照射するステップ
を含む、項目1に記載の方法。
【0287】
3.
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミンまたはその誘導体、および脂溶性ビタミンの水溶性誘導体より選択される少なくとも1つの化合物であって、必要に応じて、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミン、および水溶性ビタミンE誘導体より選択される、少なくとも1つの化合物
を含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために組成物を照射するステップ
を含む、項目1または2に記載の方法。
【0288】
4.滅菌のために前記組成物を照射するステップが、以下:
a)前記組成物が、イオン化照射により照射される;
b)前記組成物が、ガンマ線照射、電子ビーム照射、もしくはX線により照射される;
c)前記組成物が、ガンマ線照射もしくはX線により照射される;
d)前記組成物が、ガンマ線照射により照射される;
e)前記組成物が、5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、もしくは約8kGyから約15kGyの照射線量で照射される;
f)前記組成物か、5kGyから35kGy、6kGyから30kGy、7kGyから26kGy、約8kGyから約25kGy、もしくは約8kGyから約15kGyの照射線量でガンマ線照射により照射される;
g)前記組成物が、8kGyから25kGy、もしくは8kGyから15kGyの照射線量でガンマ線照射により照射される;および/または
h)照射による滅菌の結果、前記組成物の無菌性保証水準(SAL)が10-6以下になる
の特徴の1つ以上を有する、項目1から3のいずれかの項目に記載の方法。
【0289】
5.前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、固体形態で調製される;
b)前記組成物が、固体形態で調製され、照射前に溶解されて、水性であることが好ましい液体組成物が提供される;
d)前記組成物が、液体形態で調製され照射される;
e)前記組成物が、水性である;
f)前記組成物が、酸性pHを有する;
g)前記組成物が、pH4.0から7.0、pH4.1から6.9、pH4.2から6.8、pH4.3から6.6、pH4.4から6.3、pH4.5から6.0、またはpH4.5から5.5を有する、および/または
h)前記組成物が緩衝されている
の特徴の1つ以上を有する、項目1から4のいずれかの項目に記載の方法。
【0290】
6.前記組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射される、項目1から5のいずれかの項目に記載の方法。
【0291】
7.前記組成物が、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミンまたはその誘導体、および脂溶性ビタミンの水溶性誘導体より選択される前記少なくとも1つの化合物を、20mg/ml未満、15mg/ml以下、10mg/ml以下、7mg/ml以下、3mg/ml以下、または1.5mg/ml以下の濃度で含む、項目1から6のいずれかの項目に記載の方法。
【0292】
8.前記組成物が、
i.N-アセチル-システイン、還元型であることが好ましいグルタチオン、ビタミンB、好ましくはビタミンB6、アスコルビン酸またはその誘導体、およびトロロックスより選択される化合物;
ii.N-アセチル-システイン、還元型であることが好ましいグルタチオン、アスコルビン酸またはその誘導体、およびトロロックスより選択される化合物;
iii.N-アセチル-システイン、還元型であることが好ましいグルタチオン、ビタミンB、好ましくはビタミンB6、およびアスコルビン酸より選択される化合物;
iv.N-アセチル-システイン、還元型であることが好ましいグルタチオン、およびアスコルビン酸またはその誘導体より選択される化合物;または
v.N-アセチル-システイン
を含む、項目1から7のいずれかの項目に記載の方法。
【0293】
9.a)
i.好ましくは項目15に記載の少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.
aa)0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度のN-アセチル-システイン;
ab)還元型であることが好ましい、0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg/ml、0.4mg/mlから2mg/mlまたは0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度のグルタチオン;
ac)20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlなどの濃度のアスコルビン酸またはその誘導体;
ad)0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度のビタミンB、好ましくはビタミンB6;
ae)0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度のトロロックス
の少なくとも1つを含む組成物を提供するステップ;ならびに
b)滅菌のために前記組成物を照射するステップ
を含み、
前記組成物が、N-アセチル-システインをaa)に記載の濃度で含むことが好ましい、
項目1から8のいずれかの項目に記載の方法。
【0294】
10.前記組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射される、および/または、前記組成物が、滅菌のためにガンマ線照射により照射される、項目9に記載の方法。
【0295】
11.前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、N-アセチル-システインを含む;
b)前記組成物が、N-アセチル-システインを、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度で含む;
c)前記組成物が、N-アセチル-システインを含み、液体形態、好ましくは水性形態で照射により滅菌される;および/または
d)前記組成物が、N-アセチル-システインを、0.05mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから10mg/ml、0.1mg/mlから7.5mg/ml、0.1mg/mlから5mg/ml、0.1mg/mlから2mg/ml、0.2mg/mlから1mg/ml、または0.3mg/mlから0.8mg/mlの濃度で含み、水性液体形態で滅菌される
の特徴の1つ以上を有する、項目1から10のいずれかの項目に記載の方法。
【0296】
12.前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、グルタチオンを含む;
b)前記組成物が、グルタチオンを還元型として含む;
c)前記組成物が、グルタチオンを、0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg/ml、0.4mg/mlから2mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度で含み、前記グルタチオンは、還元型であることが好ましい;
d)前記組成物が、グルタチオンを含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌され、前記グルタチオンは、還元型であることが好ましい;および/または
e)前記組成物が、グルタチオンを、0.03mg/mlから10mg/ml、0.04mg/mlから7.5mg/ml、0.075mg/mlから5mg/ml、0.15mg/mlから4mg/ml、0.3mg/mlから3mg/ml、0.4mg/mlから2mg/ml、または0.4mg/mlから1.3mg/mlの濃度で含み、水性液体形態で滅菌され、前記グルタチオンは、還元型であることが好ましい
の特徴の1つ以上を有する、項目1から11のいずれかの項目に記載の方法。
【0297】
13.前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、少なくとも1つの水溶性ビタミンまたはその誘導体を含み、前記水溶性ビタミンが、アスコルビン酸またはその誘導体、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、葉酸塩または葉酸、ビタミンB12、ビオチンおよびパントテン酸より選択されることが好ましく、前記組成物が、アスコルビン酸を含むことがさらに好ましい;
b)前記組成物が、アスコルビン酸またはその誘導体、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、葉酸塩または葉酸、ビタミンB12、ビオチンおよびパントテン酸より選択されることが好ましく、アスコルビン酸であることがさらに好ましい少なくとも1つの水溶性ビタミンまたはその誘導体を、20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlなどの濃度で含む;
c)前記組成物が、少なくとも1つの水溶性ビタミンまたはその誘導体を含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;
d)前記組成物が、アスコルビン酸を含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;
e)前記組成物が、少なくとも1つの水溶性ビタミンまたはその誘導体を20mg/ml未満、例えば、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlなどの濃度で含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;
f)前記組成物が、アスコルビン酸またはその誘導体を20mg/ml未満の濃度で含み、前記濃度が、0.1mg/mlから15mg/ml、1mg/mlから13mg/ml、1.5mg/mlから12mg/ml、または2mg/mlから11mg/mlより選択されてもよく、また、前記組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射により滅菌される;
g)前記組成物が、ビタミンB、好ましくはビタミンB6を0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度で含む;ならびに/または
h)前記組成物が、ビタミンB、好ましくはビタミンB6を0.1mg/mlから15mg/ml、0.1mg/mlから14mg/ml、0.1mg/mlから11mg/ml、0.2mg/mlから7.5mg/ml、または0.2mg/mlから2mg/mlの濃度で含み、前記組成物が、液体形態、好ましくは水性形態で照射により滅菌される
の特徴の1つ以上を含む、項目1から12のいずれかの項目に記載の方法。
【0298】
14.組成物が、以下:
a)組成物が、脂溶性ビタミンの水溶性誘導体を含み、必要に応じて、脂溶性ビタミンが、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンAおよびビタミンKより選択される;
b)組成物が、水溶性ビタミンE誘導体を含み、水溶性ビタミンE誘導体は、トロロックスであることが好ましい;
c)組成物が、トロロックスを含む;
d)組成物が、脂溶性ビタミンの水溶性誘導体、好ましくは水溶性ビタミンE誘導体、さらに好ましくはトロロックスを、0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/mlもしくは1mg/mlから1.4mg/mlの濃度で含む;
e)組成物が、脂溶性ビタミンの水溶性誘導体を含み、液体形態、好ましくは水性形態で照射により滅菌される;
f)組成物が、水溶性ビタミンE誘導体、好ましくはトロロックスを含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;
g)組成物が、脂溶性ビタミンの水溶性誘導体を、0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/mlもしくは1mg/mlから1.4mg/mlの濃度で含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される;ならびに/または
h)組成物が、水溶性ビタミンE誘導体、必要に応じてトロロックスを、0.5mg/mlから5mg/ml、0.75mg/mlから3mg/ml、0.9mg/mlから2mg/ml、または1mg/mlから1.4mg/mlの濃度で含み、液体形態、好ましくは水性形態で滅菌される
の特徴の1つ以上を有する、項目1から13のいずれかの項目に記載の方法。
【0299】
15.前記カスパーゼ阻害剤が、以下:
a)前記カスパーゼ阻害剤が、汎カスパーゼ阻害剤である;
b)前記カスパーゼ阻害剤が、改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
c)前記カスパーゼ阻害剤が、好ましくはカルボキシル末端においてO-フェノキシ(OPh)基で改変されている改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
d)前記カスパーゼ阻害剤が、好ましくはN末端においてグルタミン(Q)基で改変されている改変カスパーゼ特異的ペプチドを含む;
e)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-Val-Ala-Asp(OMe)-FMKから成る群より選択される;
f)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPhおよびZ-Val-Ala-Asp(OMe)-FMKから成る群より選択される;ならびに/または
g)前記カスパーゼ阻害剤が、Q-VD-OPhである
の特徴の1つ以上を有する、項目1から14のいずれかの項目に記載の方法。
【0300】
16.前記組成物が、
a)抗凝固薬および/またはキレート剤、好ましくはEDTA;
b)安定化剤としてポリ(オキシエチレン)ポリマー;および/または
c)少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミド
のうちの1つ以上をさらに含む、項目1から15いずれかの項目に記載の方法。
【0301】
17.前記組成物が、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーをさらに含み、必要に応じて、前記組成物が、以下:
a)前記ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、ポリエチレングリコール、好ましくは非置換ポリエチレングリコールである;
b)前記組成物が、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;
c)前記組成物が、1500未満の分子量を有する少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーを含み、さらに好ましくは、前記分子量は、100から800、150から700、200から600および200から500より選択される範囲に存する;
d)前記組成物が、少なくとも1500の分子量を有する高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマー、および、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーの分子量より少なくとも100、好ましくは少なくとも200、少なくとも300または少なくとも400低い少なくとも1つのさらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーであって、好ましくは1000以下の分子量を有する低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーである、さらなるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む;ならびに/または
e)前記組成物が、高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーおよび低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーであるポリ(オキシエチレン)ポリマーを含み、前記高分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、1500から50000、1500から40000、2000から30000、2500から25000、3000から20000、3500から15000および4000から12500より選択される範囲に存する分子量を有し、かつ/または、前記低分子量ポリ(オキシエチレン)ポリマーが、1000以下の分子量を有し、好ましくは、前記分子量は、100から1000、150から800、150から700、200から600および200から500より選択される範囲に存する
の特徴の1つ以上を有する、項目1から16のいずれかの項目に記載の方法。
【0302】
18.前記組成物が、少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミドをさらに含み、必要に応じて、前記組成物が、以下:
a)前記組成物が、式1
【化4】
(式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1-C5アルキル残基、C1-C4アルキル残基またはC1-C3アルキル残基、さらに好ましいC1-C2アルキル残基であり、R2およびR3は同一であり、もしくは異なり、水素残基、および線状もしくは分岐した様式に配列された1~20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基、好ましくはアルキル残基から選択され、R4は、酸素、硫黄もしくはセレン残基であり、好ましくは、R4は酸素である)
に従う少なくとも1つの第一級、第二級または第三級アミドを含む;ならびに/または
b)前記組成物が、N,N-ジアルキルプロパンアミド、好ましくはN,N-ジメチルプロパンアミド、および/もしくはブタンアミド
の特徴の1つ以上を有する、項目1から17のいずれかの項目に記載の方法。
【0303】
19.前記組成物が、式1
【化5】
(式中、R1は、水素残基またはアルキル残基、好ましくはC1-C5アルキル残基、C1-C4アルキル残基またはC1-C3アルキル残基、さらに好ましいC1-C2アルキル残基であり、R2およびR3は同一であり、または異なり、水素残基、および線状または分岐した様式に配列された1~20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基、好ましくはアルキル残基から選択され、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基であり、好ましくは、R4は酸素である)
に従う少なくとも1つの化合物を含む、項目1から18のいずれかの項目に記載の方法。
【0304】
20.式1に従う前記少なくとも1つの化合物が、第一級、第二級または第三級カルボン酸アミドである、項目19に記載の方法。
【0305】
21.前記滅菌された組成物が、以下:
i)細胞含有試料に含まれている細胞内核酸の安定化に好適であり、好ましくは、細胞内RNAおよび/または細胞内DNAを安定化する;
ii)細胞含有試料中に存在する核酸の分解を、安定化に起因して低減させる;
iii)試料に含有されている細胞におけるトランスクリプトームおよび/または転写レベルの安定化に好適であり、好ましくは、c-fos、IL-1ベータ、IL-8およびp53より選択される1つ以上のマーカー遺伝子の転写レベルを、安定化すると少なくとも12時間、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも48時間にわたって安定化するのに好適である
の特徴の1つ以上を有する、項目1から20のいずれかの項目に記載の方法。
【0306】
22.前記滅菌された組成物により有核細胞または一般の細胞の溶解が誘導されない、項目1から21のいずれかの項目に記載の方法。
【0307】
23.前記滅菌された組成物が、核酸-核酸架橋、タンパク質-核酸架橋および/またはタンパク質-タンパク質架橋を誘導する架橋剤を含まず、また、ホルムアルデヒド放出剤の使用を含まない、項目1から22のいずれかの項目に記載の方法。
【0308】
24.前記滅菌された組成物が、以下:
a)安定化により、安定化された細胞含有試料から細胞を単離することが可能になる;
b)前記細胞含有試料が血液試料であり、血液試料に含有されている細胞が安定化される;
c)前記細胞含有試料が血液試料であり、白血球が安定化される;
d)細胞の形態が保存される;
e)有核細胞の形態が保存される;
f)前記試料が血液試料であり、含有されるリンパ球および/もしくは単球が安定化される;
g)細胞表面エピトープが保存される;ならびに/または
h)細胞表面タンパク質が保存される
の安定化特性を有する、項目1から23のいずれかの項目に記載の方法。
【0309】
25.滅菌可能な組成物であって、滅菌された形態の前記組成物が、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適であり、前記組成物が、項目1から18のいずれかの項目または項目19から24のいずれかの項目のステップa)において提供される通りの組成物であり、好ましくは前記組成物が滅菌されている、滅菌可能な組成物。
【0310】
26.細胞含有生体試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するための方法であって、
a)項目1から18のいずれかの項目もしくは項目19から24のいずれかの項目に記載の方法に従って生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適な滅菌された組成物を得る、または滅菌された形態の項目25に記載の組成物を得るステップ;および
b)前記細胞含有生体試料を、安定化のために前記滅菌された組成物と接触させるステップ
を含む方法。
【0311】
27.安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を単離するための方法であって、
a)項目26に記載の方法に従って細胞含有生体試料を安定化するステップ;および
b)細胞外核酸を単離するステップ
を含む方法。
【0312】
28.細胞外核酸を処理および/または分析するための方法であって、
a)安定化された細胞含有生体試料から細胞外核酸を項目27の方法に従って単離するステップ;ならびに
b)単離された細胞外核酸を処理および/または分析するステップ
を含む方法。
【0313】
29.生体試料の細胞外核酸集団またはその成分の安定化に好適な組成物を照射による滅菌中に防護するための、チオアルコールおよびビタミンまたはその誘導体から成る群より選択される少なくとも1つの化合物の使用。
【0314】
30.少なくとも1つの化合物が、チオアルコール、水溶性ビタミンまたはその誘導体、および脂溶性ビタミンの水溶性誘導体から成る群より選択される;または
少なくとも1つの化合物が、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミンまたはその誘導体、および脂溶性ビタミンの水溶性誘導体より選択される;または
少なくとも1つの化合物が、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、水溶性ビタミン、および水溶性ビタミンE誘導体より選択される;または
少なくとも1つの化合物が、N-アセチル-システインまたはグルタチオンであるチオアルコール、アスコルビン酸またはその誘導体、および水溶性ビタミンE誘導体より選択される、
項目29の使用。
【0315】
31.滅菌可能な組成物を生成するための方法であって、滅菌された形態の組成物が、生体試料の細胞外核酸集団の安定化に好適であり、方法が、
a)
i.少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、および
ii.チオアルコールおよびビタミンまたはその誘導体より選択される少なくとも1つの化合物
を含む組成物を調製するステップ、ならびに、必要に応じて
b)組成物を滅菌するステップ
を含む方法。
【0316】
32.項目31のステップa)において調製される組成物が、項目1から18のいずれかの項目または項目19から24のいずれかの項目のステップa)において調製される通りの組成物である、項目31の方法。
【0317】
33.項目25に記載の滅菌可能な組成物を含む試料採集デバイス、例えば、容器、好ましくは試料採集チューブなど。
【0318】
34.項目25に記載の滅菌可能な組成物または項目33に記載の試料採集デバイスを含むキット。
【0319】
35.安定化された細胞含有生体試料から核酸を単離するための方法であって、
a)細胞含有生体試料を安定化するステップであり、安定化が、
i)項目1から24のいずれかの項目に記載の方法に従って滅菌された組成物を得ること;または
ii)滅菌されている、項目25に記載の組成物を得ること;または
iii)その中に含まれる組成物が滅菌されている項目33に記載の試料採集デバイスを得ること;および
前記細胞含有生体試料を前記滅菌された組成物と接触させること
を含む、ステップ;ならびに
b)前記安定化された試料から核酸を単離するステップ
を含む方法。
【0320】
36.ステップb)が、細胞内核酸、好ましくは細胞内RNAおよび/または細胞内DNAを単離することを含む、項目35に記載の方法。
【0321】
37.前記安定化された試料から細胞を取り出し、取り出された細胞から核酸を単離するステップを含む、項目35または36に記載の方法。
【0322】
38.安定化された細胞含有生体試料から細胞を単離するための方法であって、
a)細胞含有生体試料を安定化するステップであり、安定化が、
i)項目1から24のいずれかの項目に記載の方法に従って滅菌された組成物を得ること;または
ii)滅菌されている、項目25に記載の組成物を得ること;
iii)その中に含まれる組成物が滅菌されている項目33に記載の試料採集デバイスを得ること;および
前記細胞含有生体試料を前記滅菌された組成物と接触させること
を含むステップ;ならびに
b)前記安定化された試料から細胞を単離するステップ
を含む方法。
【0323】
39.項目1から24のいずれかの項目に記載の方法によって得ることができるおよび/または得られた、滅菌された組成物。
【0324】
40.項目39に記載の滅菌された組成物を含む滅菌された試料採集デバイス、例えば、容器、好ましくは試料採集チューブなどであって、項目1から24のいずれかの項目に記載の方法によって得ることができるか、そして/または得られた、滅菌された試料採集デバイス。
【0325】
本出願は、2015年11月20日出願のEP 15 195 656.2および2016年4月5日出願のEP 16 163 863.0の優先権を主張するものである。EP15 195 656.2およびEP 16 163 863.0の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0326】
実施例は、単に例示目的のものであり、本発明をいかなる様式でも限定するものとは解釈されるべきではない。
使用する略語:
ccfDNA:循環する無細胞DNA
PEG:ポリエチレングリコール
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
DMPA:ジメチルプロピオンアミド
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
BCT:採血チューブ
kGy:キログレイ
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0327】
I.実験手順
特にガンマ線照射による滅菌の、細胞外核酸集団を安定化するための組成物(以下、「安定化試薬」または「安定化組成物」とも称する)に対する効果を2つの異なる手段によって決定した。安定化組成物の化学的分解プロファイルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって評価した。機能アッセイを実施して、細胞外核酸に対する組成物の安定化活性に対する滅菌の影響を決定した。このアッセイでは、細胞外核酸集団の好ましい実施形態としてccfDNAを分析した。
【0328】
本発明者らは、驚くべきことに滅菌中に安定化組成物において生じる化学的分解を緩和するまたはさらには消滅させることが可能な化合物を識別することができた。重要なことに、これらの化合物により、同時に、滅菌された安定化組成物の最適な機能が可能になる。
【0329】
1.安定化試薬のHPLC試験:
標準曲線を作成するために、カスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh)をDMSO中に溶解させ、希釈した。7.5、15、30および60μg/mlの濃度を使用して標準曲線を作成した。
【0330】
カスパーゼ阻害剤、EDTA、DMPAおよびPEGの混合物を含有する安定化試薬をガンマ線照射の前後に試験した。カスパーゼ阻害剤についての独特のピークを識別し、カスパーゼ阻害剤の総定量化のために標準曲線と比較した。照射の前後のカスパーゼ阻害剤の濃度を決定し、相対的な定量化のためにこれらの濃度を比較した。
【0331】
2.PAXgene Blood ccfDNA Alphaチューブの作製:
PAXgene Blood ccfDNA Alpha採血チューブ(Alpha BCT)を作製するために、10ml採血用のBD標準チューブにccfDNA安定化試薬1.3から1.7mlを充填した。試験した例示的な安定化試薬は、PCT/EP2015/055699に従って、カスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh)、K2EDTA、DMPA、PEG300およびPEG10000の混合物を含むものであった。チューブに真空を適用して10.25mlを採血した。チューブを、エネルギーガンマ線供給源としてコバルト-60を使用した5から35kGyの範囲のガンマ線照射によって滅菌した。
【0332】
3.全血の安定化:
ccfDNAレベルの安定化のために、血液をAlpha BCT中に抜き取った。1ml全血当たり1.8mgのK2EDTAを伴う10mlの噴霧乾燥EDTAチューブ(BD)が非安定化陰性対照として供した。チューブを10回反転させることによって血液と試薬を混合した。安定化されたおよび非安定化血液試料を直立に立てて室温で保管した。
【0333】
4.血漿の調製:
全血試料を周囲温度、1.900×gで15分間遠心分離した。透明な血漿画分を新しい遠心管に移した。第二ラウンドにおいて、血漿試料を、非安定化EDTA-血液の場合には16.000×gで10分間遠心分離し、安定化されたAlpha BCT血液の場合には1.900×gで10分間遠心分離した。上清を新たなチューブに移し、ccfDNAの精製に直接使用するか、または使用するまで-20℃で保管した。
【0334】
5.QIAamp circulating nucleic acid kitを用いたccfDNAの手動での精製:
1ml、2mlまたは3ml血清または血漿からの循環核酸の精製についてのプロトコルを用いて、QIAamp循環核酸キット(QIAGEN GmbH)で血漿からDNAを単離した。別段の明記がない限り、2mlの血漿をプロテイナーゼKおよび溶解緩衝液ACLと混合し、30分間、60℃でインキュベートし、緩衝液ACBと混合し、製造業者の推奨に従って、QIAvac 24 Plus真空マニホールドを使用してQIAamp Miniカラムに結合させ、洗浄し、60μl溶離緩衝液AVEで溶離した。
【0335】
6.QIAsymphonyでのccfDNAの自動精製:
QIAsymphony Circulating DNA protocol and kit(QIAGEN)の予備バージョンを用いて2ml血漿からccfDNAを単離した。別段の規定がなされなければ、QIAsymphonyロボットにより2ml血漿をプロテイナーゼK、結合緩衝液および磁気ビーズと混合した。DNAが結合したビーズを3回洗浄し、溶出緩衝液60μlを使用したDNAを溶出させた。
【0336】
7.定量的、リアルタイムPCRアッセイおよびccfDNAコピーの算出:
ccfDNAの量を測定するために、Abi Prism HT7900(Life Technologies)でのリアルタイムPCRアッセイを、溶出液3μlを用いて実施した。QuantiTect Multiplex PCR Kit試薬(QIAGEN GmbH)を使用した20μlアッセイ体積で、ヒト18S rDNA遺伝子の2つの断片を多重PCRで増幅した。3000から0.3ゲノム当量に希釈したヒトゲノムDNA(1ゲノム当量は、約6.6pgのヒトゲノムDNAに等しい)を用いて作成した標準曲線との比較により完全定量を達成した。
【表1】
【0337】
66bp断片の定量を用いて、血漿中の18S rDNAコピーの総量を反映させた。500bpの定量を用いて、アポトーシスに由来するまたは全血から機械的に溶解された白血球に由来する18S rDNAコピーの量を決定した。無細胞DNAは、140~170bpの典型的長さ(Forshewら(2012) Cancer Genomics 4(136) 136ra68)を有する。それ故、500bp断片は、アポトーシス血球、溶解血球または別様に破壊された血球に由来すると考えられる。0日目と3または6日保管の間の500bp断片からのコピー数の増加を安定性効率の測定値として使用した。
【0338】
II.実施例
1.実施例1:ccfDNA安定化に対するガンマ線照射の効果
PAXgene Blood ccfDNA Alphaチューブを作製し、異なるエネルギーレベルのガンマ線照射によって滅菌した。8名のドナーからの10ml全血の試料を10ml噴霧乾燥K2EDTAチューブ(非安定化対照)およびPAXgene Blood ccfDNA Alphaチューブに採集した。血漿を採血直後に5mlの安定化血液試料または非安定化血液試料から生成した。残りの血液は、さらに6日間、室温で保管した後、血漿を生成した。ccfDNAを2ml血漿から手動で精製し、18S rDNA遺伝子のコピー数を三連反復でリアルタイムPCRによって決定した。
【0339】
PCT/EP2015/055699による安定化試薬混合物(1つのAlphaチューブについて)は、11.45μlカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh;1mgを388μl DMSOに溶解させたもの)であった。試薬は、PEG10.000、PEG300、EDTAおよびDMPAをさらに含み、水で全量1.7mlとした。全血の添加後、Alphaチューブは、Q-VD-OPhをおよそ5μMの最終濃度で含んだ。
【0340】
非安定化対照は、K2EDTAを全血中1.8mg/mlの最終濃度で含んだ。
【0341】
血漿中のccfDNAレベルに対するガンマ線照射の効果を
図1に示す。図は、非安定化EDTA血液中(左)、および、Alphaチューブ(非無菌性のものまたは異なる線量のガンマ線照射で滅菌されたもの)中に引き込んだ安定化血液試料中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化および標準偏差を示す。試料は8名のドナーからのものであり、6日間、室温で保管した。
【0342】
分かるように、コピー数の比(6日目/0日目)は、安定化された試料(Alphaチューブ)において、非安定化対照(EDTA血液、左)と比較して低く、これにより、安定化された試料では細胞外核酸の安定化が起こったことが実証される。しかし、安定化された試料と比較すると分かるように、ccfDNA安定化の効率は、安定化試薬を、安定化すべき血液試料に添加する前に滅菌するために使用したガンマ線照射の線量が増大するとともに低下する。ガンマ線照射の線量の増大に伴う安定化効率の低下は、線量の増大について得られるコピー数の比(6日目/0日目)が増大することによって可視化される。
【0343】
結論:
カスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬に適用する場合、滅菌のために使用されるガンマ線照射には、その後の安定化試薬によるccfDNA安定化に対して線量依存的効果がある。滅菌のために適用される照射線量が高いほど、その後の適用における安定化が低くなる。
【0344】
2.実施例2:ガンマ線照射によるカスパーゼ阻害剤の分解
PAXgene Blood ccfDNA Alphaチューブを作製し、異なるエネルギーレベルを用いてガンマ線照射によって滅菌した。HPLCによる定量化のために、DMSOのみに溶解させたカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh)について標準曲線を作成した。作成された標準曲線を
図2に示す。表2(以下)に、カスパーゼ阻害剤の濃度ならびに異なる濃度のカスパーゼ阻害剤についてのピーク面積および保持時間を示す。
【表2】
【0345】
次のステップとして、カスパーゼ阻害剤の濃度を決定するために、Alphaチューブからの安定化試薬を照射の前後に測定した。総定量化のために、カスパーゼ阻害剤についての独特のピークを標準曲線と比較した。滅菌後に分解されていないカスパーゼ阻害剤の百分率を、滅菌されていないAlphaチューブと比較することによって算出した。
【0346】
結果を表3(以下)に示す。この表には、HPLCによって決定された、試験した異なる試料についてのピーク面積および保持時間、ならびに標準曲線に基づいて算出した阻害剤の濃度を示す。
【表3】
【0347】
PCT/EP2015/055699による安定化試薬中の他の成分によって引き起こされるピークは、プロセス中にカスパーゼ阻害剤についてのピークよりも前に生じる。カスパーゼ阻害剤は26分の時点で生じるが、さらなる成分は、16から22分の範囲に近い。したがって、安定化試薬に関するHPLC結果とカスパーゼ阻害剤のみ(標準曲線の作成のために使用した)に関するHPLC結果を比較することにより、安定化試薬中のカスパーゼ阻害剤の検出に関して他の構成物(EDTA、PEGおよびDMPA)によって引き起こされる干渉は存在しないことが実証される。
【0348】
結論:
結論として、HPLCは、ガンマ線照射によって引き起こされるカスパーゼ阻害剤分解の程度を定量化するための有用な技法である。カスパーゼ阻害剤の分解は、照射中に起こり、滅菌後のccDNAレベルの安定化の低減(
図1を参照されたい)は、インタクトな分解されていないカスパーゼ阻害剤の濃度の低下に関連する。
【0349】
異なる線量のガンマ線照射のカスパーゼ阻害剤に対する影響をさらに調査するために、異なる線量のガンマ線照射で滅菌された安定化試薬の異なるバッチからのPAXgene Blood ccfDNA Alphaチューブにおいてカスパーゼ阻害剤を定量化した。Alphaチューブには、上の表3に記載した安定化試薬を含めた。
【0350】
結果を表4(以下)に示す。分かるように、ガンマ線照射には、カスパーゼ阻害剤分解に対する線量依存的効果がある。
【表4】
【0351】
結論:
ガンマ線照射には、安定化試薬中のカスパーゼ阻害剤分解に対する線量依存的効果がある。照射線量が高いほど、より多くの分解が起こる。カスパーゼ阻害剤に対するガンマ線照射によって引き起こされる分解効果を定量化するためにHPLCを使用することができる。
【0352】
3.実施例3:スカベンジャー添加のccfDNA安定化に対する効果
ガンマ線照射による滅菌中のカスパーゼ阻害剤の分解を防止するために、成分を、カスパーゼ阻害剤を照射中の分解から防護するそれらの能力について試験した。さらなる成分自体が細胞外核酸のレベルに対して負の影響を有することを排除するために、これらの化合物を、カスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh)を含み、PEG、EDTAおよびDMPAをさらに含む安定化試薬に添加し、機能アッセイにおいて試験した。
【0353】
8名のドナーからの10ml全血の試料を10ml噴霧乾燥K2EDTAチューブ中に採集した。採血直後に、細胞外核酸安定化に対するそれらの影響について試験した異なる化合物の添加を伴ってまたは伴わずに、PCT/EP2015/055699によるccfDNA安定化試薬1.7mlを添加することにより、非安定化血液試料を安定化した。
【0354】
安定化試薬は以下を含むものであった(10ml K2EDTA全血について):
11.45μlカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh;1mgを388μl DMSOに溶解させたもの)、試薬は、PEG10.000、PEG300、EDTAおよびDMPAをさらに含み、水で全量1.7mlとした。スカベンジャーを以下にさらに詳述する通り添加した。
全血の添加後、Alphaチューブには、Q-VD-OPhが5μMの最終濃度で含まれた。
【0355】
血漿を採血直後(0日目)に5mlの安定化血液試料から生成した。残りの血液は、さらに6日間、室温で保管した後、血漿を生成した(6日目)。ccfDNAを2ml血漿から精製し、18S rDNA遺伝子のコピー数を三連反復でリアルタイムPCRによって決定した。
【0356】
a)N-アセチル-システイン、アスコルビン酸、没食子酸およびタンニン酸の添加
N-アセチル-システイン、アスコルビン酸、没食子酸またはタンニン酸を安定化試薬に
図3に示す濃度で添加した:N-アセチル-システイン、2mg/ml;アスコルビン酸、5mg/ml;没食子酸、2mg/ml;タンニン酸、1mg/ml。
【0357】
全血中の最終濃度は、1.7mM N-アセチル-システインまたは4.0mM アスコルビン酸または1.7mM 没食子酸または0.09mM タンニン酸であった。
【0358】
結果を
図3に示す。この図は、安定化試薬のみについての保管後(左)およびN-アセチル-システイン、アスコルビン酸、没食子酸またはタンニン酸の添加した時の、安定化血液中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化を示す。結果は、6日間、室温で保管した、8名のドナーからの血液からのものである。
【0359】
結論:
アスコルビン酸およびN-アセチル-システインなどのある特定のラジカルスカベンジャーの、カスパーゼ阻害剤を含有する安定化試薬への添加は、ccfDNA安定化特性に影響を及ぼすことなく可能である。
【0360】
しかし、驚くべきことに、
図3において6日目と0日目の間の500bpコピー数の比の増大および66bp断片および500bp断片の両方について標準偏差が高いことから分かるように、先行技術においてガンマ線により誘導されるフリーラジカルに対して有効であることが報告されたタンニン酸または没食子酸などのある特定のラジカルスカベンジャーの添加により、ccfDNA安定化試薬を用いて安定化された血液中のDNAの放出の増加が導かれることが判明した。したがって、これらの化合物は、細胞外核酸集団を安定化するための組成物における使用には不適当である。
【0361】
b)異なる濃度のアスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオン(還元型)の添加
さらなる実験において、アスコルビン酸、N-アセチル-システインまたはグルタチオン(還元型)を安定化試薬に
図4に示す濃度で添加した:アスコルビン酸、5mg/ml、10mg/mlまたは20mg/ml;N-アセチル-システイン、2mg/ml、4mg/mlまたは10mg/ml;グルタチオン(還元型)、0.1mg/ml、0.5mg/mlまたは1mg/ml。
【0362】
全血中の最終濃度は:4.0mMまたは8.0mMまたは16.0mMのアスコルビン酸;1.7mMまたは3.5mMまたは8.7mMのN-アセチル-システイン;または0.05mMまたは0.23mMまたは0.47mMのグルタチオン(還元型)であった。
【0363】
結果を
図4に示す。この図は、安定化試薬のみについての保管後(左)およびアスコルビン酸、N-アセチル-システインまたはグルタチオン(還元型)を異なる濃度で添加した時の安定化血液中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化を示す。血液は、8名のドナーからのものであり、6日間、室温で保管した。
【0364】
図5は、採血直後に決定した安定化血液中の全18S rDNA遺伝子の500bp断片のコピー数の平均を示す。
【0365】
結論:
アスコルビン酸、N-アセチル-システインまたはグルタチオン(還元型)を含む安定化試薬は、試験した濃度で良好な安定化性を示した(
図4)。
図5から分かるように、アスコルビン酸を、当技術分野においてガンマ線に誘導されるフリーラジカルに対して(放射線)防護的であることが報告されている濃度である20mg/mlの濃度で添加することにより、ccfDNAの絶対的なコピー数の減少が導かれた。
【0366】
c)アスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオンの種々の組み合わせの添加
別の実験において、アスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオンの種々の組み合わせの、安定化試薬のccfDNA安定化特性に対する影響を試験した。
【0367】
この目的で、アスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオン(還元型)を、
図6に示される通りの組み合わせおよび濃度で:アスコルビン酸(2mg/ml)およびグルタチオン(0.2mg/ml);N-アセチル-システイン(1mg/ml)およびグルタチオン(0.2mg/ml);アスコルビン酸(2mg/ml)およびN-アセチル-システイン(1mg/ml);アスコルビン酸(2mg/ml)、N-アセチル-システイン(1mg/ml)およびグルタチオン(0.2mg/ml)、安定化試薬に添加した。
【0368】
全血中の最終濃度は:1.65mMのアスコルビン酸および0.1mMのグルタチオン(還元型);0.9mMのN-アセチル-システインおよび0.1mMのグルタチオン(還元型);1.65mMのアスコルビン酸および0.9mMのN-アセチル-システイン;1.65mMのアスコルビン酸および0.9mMのN-アセチル-システインおよび0.1mMのグルタチオン(還元型)であった。
【0369】
結果を
図6に示す。この図は、6日間、室温で保管した、8名のドナーからの安定化血液中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化を示す。
【0370】
図6から分かるように、試験したスカベンジャーの組み合わせを用いて、良好なccfDNA安定化特性を得ることができた。
【0371】
結論:
カスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬にアスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオン(還元型)などの本発明によるラジカルスカベンジャーの組み合わせを好適な濃度で添加することが、ccfDNA安定化特性に影響を及ぼすことなく可能である。
【0372】
4.実施例4:スカベンジャー添加のガンマ線照射後のカスパーゼ阻害剤濃度およびccfDNA安定化に対する効果
スカベンジャー添加の、ガンマ線照射による滅菌中のカスパーゼ阻害剤分解に対する効果を分析した。また、スカベンジャー添加(滅菌前、カスパーゼ阻害剤を防護するために)の、(滅菌された)安定化試薬のccfDNA安定化特性に対する効果を評価した。
【0373】
安定化試薬を、ラジカルスカベンジャーの添加を伴ってまたは伴わずに生成し、バルクでガンマ線照射によって滅菌した。カスパーゼ阻害剤濃度を照射の前後にHPLCによって測定して、スカベンジャー添加の、ガンマ線照射による滅菌中のカスパーゼ阻害剤分解に対する効果を決定した。
安定化試薬は以下を含むものであった(10ml K2EDTA全血について):
11.45μlカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh;1mgを388μl DMSOに溶解させたもの)、試薬は、PEG10.000、PEG300、EDTAおよびDMPAをさらに含み、水で全量1.7mlとした。スカベンジャーを以下にさらに詳述する通り添加した。全血の添加後、Alphaチューブには、Q-VD-OPhが5μMの最終濃度で含まれた。
【0374】
スカベンジャーを表5(以下)に示す濃度で安定化試薬に添加した。
【表5】
【0375】
滅菌前のスカベンジャー添加の、滅菌された安定化試薬のccfDNA安定化特性に対する効果を分析するために、8名のドナーからの10ml全血の試料を10ml噴霧乾燥K2EDTAチューブ中に採集し、スカベンジャーを伴うまたは伴わないccfDNA安定化試薬のそれぞれを1.7mlで用いて安定化した。血漿を採血直後に5mlの安定化血液試料から生成した。残りの血液は、さらに6日間、室温で保管した後、血漿を生成した。ccfDNAを2ml血漿から精製し、18S rDNA遺伝子のコピー数を三重反復でリアルタイムPCRによって決定した。
【0376】
添加したスカベンジャーおよび使用した濃度を
図7に示す。全血中の最終濃度は、0.42mM 没食子酸、4.0mM アスコルビン酸、12mM N-アセチル-システイン、0.05mM グルタチオンまたは0.73mM トロロックスであった。
【0377】
結果を
図7に示す。照射を行った、カスパーゼ阻害剤を含み、異なるスカベンジャーを含有する安定化試薬を用いて安定化された血液試料中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数の平均変化(×倍変化)。6日間、室温で保管した、8名のドナーからの平均値。
【0378】
採血後6日目と0日目の採血直後の間の66bp断片および500bp断片の全コピー数の比が高いこと、ならびに標準偏差が大きいことから認識できるように、没食子酸では、ガンマ線照射によって誘導されるccfDNA安定化の低下が防止されなかった。これは、HPLCによって測定された高分解率と一致する(表5)。それとは対照的に、アスコルビン酸、N-アセチル-システイン、グルタチオンなどのスカベンジャーでは、6日目と0日目の間のコピーの比によって測定されるccfDNAのレベルが安定化された。トロロックスも安定化効果を示した。
【0379】
結論:
驚くべきことに、選択されたアスコルビン酸、N-アセチル-システイン、グルタチオンおよびトロロックスなどのスカベンジャーの添加によってのみ、カスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬、例えば、PCT/EP2015/055699による安定化試薬などのガンマ線照射によって引き起こされるカスパーゼ阻害剤の分解が防止される。
【0380】
同様に驚くべきことに、ある特定のアスコルビン酸、N-アセチル-システイン、グルタチオンおよびトロロックスなどのスカベンジャーの添加により、ガンマ線照射の、カスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬を用いて安定化された血液におけるccfDNAの安定性レベルに対する負の効果が防止される。
【0381】
対照的に、フリーラジカルを取り除くことが公開されているいくつものスカベンジャーでは、照射によって引き起こされるカスパーゼ阻害剤分解は防止されず、かつ/または、血液保管後のccfDNAのレベルの上昇が引き起こされ、したがって、安定化に干渉した。これは、特に、没食子酸に当てはまる。
【0382】
5.実施例5:スカベンジャー活性の概要
一方でガンマ線照射からの防護を示し、他方でccfDNA安定性に対する効果を示す、試験したスカベンジャーの概要を表6に示す。
【表6】
【0383】
結論:
アスコルビン酸、N-アセチル-システイン、グルタチオンおよびトロロックスなどの特定のラジカルスカベンジャー、特に、アスコルビン酸、N-アセチル-システインおよびグルタチオンを添加するだけで、ガンマ線照射による滅菌の結果としてのカスパーゼ阻害剤の分解が防止されるまたは効率的に低減する。驚くべきことに、これらのラジカルスカベンジャーの添加により、カスパーゼ阻害剤を含む安定化組成物を用いて達成されるccfDNA安定化の質は保存される。
【0384】
有効なスカベンジング化合物およびそれらの有効濃度は、以前公開された放射線防護賦形剤とは有意に異なる。例えば、没食子酸およびタンニン酸だけでなくマンニトール、イソプロパノールおよびTween-80もスカベンジャーとして以前に記載されている。しかしこれらは、ガンマ線照射に対するカスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬の防護をなさない。また、タンニン酸および没食子酸などの以前に記載されたスカベンジャーは、安定化試薬の安定化効果に干渉した。
【0385】
6.実施例6:ガンマ線照射中のカスパーゼ阻害剤防護に対するスカベンジャーの効果およびカスパーゼ阻害剤濃度
PCT/EP2015/055699による安定化試薬を、異なる濃度のラジカルスカベンジャーの添加を伴ってまたは伴わずに、および異なる濃度のカスパーゼ阻害剤を用いて生成した。PAXgene Blood ccfDNA Alphaチューブを、それぞれの安定化試薬1.7mlを標準のVacutainerに充填することによって生成した。チューブを異なるエネルギーレベルのガンマ線照射によって滅菌した。カスパーゼ阻害剤濃度を照射の前後にHPLCによって測定した(以下の表7参照)。
【0386】
安定化試薬は、チューブ当たり以下を含むものであった:
3.3μlまたは6.6μlまたは9.8μlカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh;18mgを2ml DMSOに溶解させたもの;血中最終濃度それぞれ5、10または15μM)、試薬は、PEG10.000、PEG300、EDTAおよびDMPAをさらに含み、水で全量1.7mlとした。
【0387】
スカベンジャーを表7に示す異なる濃度および組み合わせで安定化試薬に添加した。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【0388】
結論:
本発明と併せて有用なラジカルスカベンジャーは、広い濃度範囲にわたって有効である。試験した濃度範囲(スカベンジャーおよびカスパーゼ阻害剤)について、スカベンジャーによって付与された防護のレベルは、使用したカスパーゼ阻害剤濃度にほとんど依存しない。ラジカルスカベンジャーを組み合わせて防護をさらに改善することができる。
【0389】
7.実施例7:滅菌されたAlphaチューブ中のスカベンジャー濃度のccfDNA安定化に対する効果
実施例6からのPAXgene Blood ccfDNA Alphaチューブの選択を機能的試験に使用してccfDNA安定化特性を決定した。N-アセチル-システインを異なる濃度で安定化試薬に添加した。0.5、1.0、2.0および4.0mg/ml N-アセチル-システインを伴うAlphaチューブを
図8に示す通り調製した。チューブを非無菌で使用したまたは使用前に異なる線量のガンマ線照射で滅菌した。4名のドナーからの10ml全血の試料をそれぞれ10ml噴霧乾燥K2EDTAチューブ(非安定化対照)およびAlphaチューブ(滅菌対照および非滅菌対照として)中に採集した。全血中のN-アセチル-システインの最終濃度は、0.44、0.88、1.75および3.5mMとした。非安定化対照チューブには、1.8mg/ml K2EDTA(全血中の最終濃度)を含めた。血漿を採血直後に5mlの安定化血液試料または非安定化血液試料から生成した。残りの血液は、さらに6日間、室温で保管した後、血漿を生成した。ccfDNAを2ml血漿からQIAsymphonyで精製し、18S rDNA遺伝子のコピー数を三連反復でリアルタイムPCRによって決定した。
【0390】
安定化試薬は、チューブ当たり以下を含むものであった:
3.3μlカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh;18mgを2ml DMSOに溶解させたもの;血中最終濃度5μM)、試薬は、PEG10.000、PEG300、EDTAおよびDMPAをさらに含み、水で全量1.7mlとした。
【0391】
ccfDNAの安定化を定量的リアルタイムPCRによって分析した。結果を
図8A、Bに示す。非安定化EDTA血液中、ならびに、0.5、1.0、2.0および4.0mg/mlのN-アセチル-システインをAlphaチューブに引き込んだ安定化血液試料中の18S rDNA遺伝子の66bpおよび500bp断片のコピー数(×倍変化)の平均変化および標準偏差(非無菌性のものまたは異なる線量のガンマ線照射で滅菌されたもの)を比較した。
【0392】
図8A、Bから分かるように、N-アセチル-システインにより、試験した全ての濃度で、広範囲の照射線量、およびさらには30kGyという高線量においても優れた防護がもたらされた。さらに、N-アセチル-L-システインを含む非照射(0Gy)安定化試薬から分かるように、N-アセチル-システインの添加は、安定化試薬による細胞外核酸の安定化には干渉しない。
【0393】
結論:
N-アセチル-システインは、広範囲の濃度でガンマ線照射からの防護に役立つ。ラジカルスカベンジャーを安定化試薬に添加することで、ガンマ線照射のccfDNA安定性に対する線量依存的効果が排除される。N-アセチル-システインは、安定化試薬による細胞外核酸の安定化には干渉せず、照射中のカスパーゼ阻害剤の分解を防止するための防護剤として使用されることが好ましい。
【0394】
8.実施例8:水溶性ビタミンB6をスカベンジャーとして添加することの、ガンマ線照射後のccfDNAレベル安定化に対する効果
ガンマ線照射による滅菌中のカスパーゼ阻害剤分解を防止するためにビタミンB6をスカベンジャーとして添加することの効果を分析した。安定化試薬を、ビタミンB6の添加を伴ってまたは伴わずに生成し、30kGyのガンマ線照射によってバルクで滅菌した。
【0395】
8名のドナーからの10ml全血の試料を10ml噴霧乾燥K2EDTAチューブ中に採集し、採血直後に、滅菌された、スカベンジャーを伴うまたは伴わないccfDNA安定化試薬1.7mlを添加することによって安定化した。血液試料を室温で5日間保管した後、血漿を生成した。安定化血液試料を用いたQIAsymphonyでのccfDNAの自動精製を、2.4ml血漿からQIAsymphony PAXgene Blood ccfDNAキットおよびプロトコルPAXcircDNA_2400_LAF(PreAnalytiX)を用いて実施した。対照として、非安定化血液試料からのccfDNA精製を、2.0ml血漿からQIAsymphony Circulating DNA protocol and kit(QIAGEN)を用いて実施した。ビタミンB6の添加を伴って生成されたが滅菌されていない安定化試薬も実験に含めた。全18S rDNA遺伝子のコピー数(500bp断片)を三連反復でリアルタイムPCRによって決定した。
【0396】
安定化試薬は、以下を含むものであった(10ml K2EDTA全血について):
3.28μlカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh;1mgを111μl DMSOに溶解させたもの)、試薬は、PEG、EDTAおよびDMPAをさらに含み、水で全量1.7mlとした。PEG300およびPEG10.000などの好適なポリエチレングリコールは上に記載している。スカベンジャーであるビタミンB6(ピリドキシン)を含む安定化試薬については、ビタミンB6(ピリドキシン)を2mg/mlの濃度で安定化試薬に添加した。安定化された血液中の最終的なカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh)濃度はおよそ5μMであった。全血中のビタミンB6(ピリドキシン)の最終濃度はおよそ1.7mMであった。
【0397】
室温で5日間保管した8名のドナーからの血液試料中の18S rDNA遺伝子の500bp断片の平均全コピー数が
図9に示される。血液試料を、スカベンジャーとしてビタミンB6を伴う安定化試薬(左のバー)または伴わない安定化試薬(左から3番目のバー)を用いて安定化した。これらの安定化試薬は滅菌されたものであった(30kGy)。対照として、ビタミンB6を伴うが滅菌されていない安定化試薬(左から2番目のバー)および非安定化EDTA血液(左から4番目のバー)を含めた。
【0398】
スカベンジャーとしてビタミンB6を含有する安定化試薬(照射を行ったものならびに照射を行っていないもの)を用いて安定化した血液試料では、18S rDNA遺伝子の500bp断片の数は、スカベンジャーを伴わない安定化試薬(照射を行ったもの)と比較してたった半分であった。天然に存在するccfDNAのサイズはおよそ150bpであるので、それよりも長い断片は、溶解されたまたはアポトーシス性の白血球に由来するものである。したがって、スカベンジャーとしてビタミンB6を含む安定化試薬を用いて安定化した血液試料中で観察された18S rDNA遺伝子の500bp断片の数が少ないことは、血液が効率的に安定化されたことを示す。特に、照射を行った、ビタミンB6を含む安定化試薬を用いた安定化は、照射を行った、スカベンジャーを伴わない安定化試薬を用いて観察された安定化よりも優れたものであった。これにより、照射中、安定化試薬の安定化性がビタミンB6によって効率的に防護されたことが示される。非安定化血液を用いた陰性対照では、500bp断片コピー数は、安定化された血液試料と比較して25から50倍も多かった。
【0399】
結論:
スカベンジャーのアスコルビン酸、N-アセチル-L-システイン、グルタチオンおよびトロロックスと同様に、水溶性ビタミンB6によっても、カスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬を用いて安定化された血液中のccfDNAの安定性レベルに対するガンマ線照射の負の効果が防止された。したがって、ビタミンB6の添加により、照射中に安定化組成物が防護され、滅菌された安定化組成物を良好な安定化性で調製することが可能になる。
【0400】
9.実施例9:異なるカスパーゼ阻害剤のccfDNAレベル安定化に対する効果および滅菌中の異なるカスパーゼ阻害剤の効率的な防護
異なるカスパーゼ阻害剤(Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-VAD(OMe)-FMK)の添加の、全血中のccfDNAレベルの安定化に対する効果を試験した。また、これらの異なるカスパーゼ阻害剤の滅菌中の照射による分解からの防護を分析した。
【0401】
安定化試薬を、カスパーゼ阻害剤としてBoc-D-(OMe)-FMKまたはZ-VAD(OMe)-FMKの添加を伴って、滅菌に対する防護薬としてスカベンジャーであるN-アセチル-L-システイン(NAC)を伴ってまたは伴わずに生成した。NACを添加した場合には、試薬を30kGyのガンマ線照射によってバルクで滅菌した。ccfDNAレベルの安定化をPAXgene blood ccfDNAチューブ(PreAnalytiX)および非安定化EDTA血液と比較した。
【0402】
6名のドナーからの10ml全血の試料を10ml噴霧乾燥K2EDTAチューブ中に採集し、1.7ml安定化試薬を添加することによって安定化した。それに加えて、PAXgene Blood ccfDNAチューブ中に採集したまたは不安定なまま維持した。血液試料を室温で5日間保管した後、血漿を生成した。安定化血液試料を用いたQIAsymphonyでのccfDNAの自動精製を、2.4ml血漿からQIAsymphony PAXgene Blood ccfDNA kitおよびプロトコルPAXcircDNA_2400_LAF(PreAnalytiX)を用いて実施した。対照として、非安定化血液試料からのccfDNA精製を、2.0ml血漿からQIAsymphony Circulating DNA protocol and kit(QIAGEN)を用いて実施した。全18S rDNA遺伝子のコピー数(500bp断片)を三連反復でリアルタイムPCRによって決定した。
【0403】
安定化試薬は、以下を含むものであった(10ml K2EDTA全血について):
3.28μlカスパーゼ阻害剤(Boc-D-(OMe)-FMK、1mgを217μl DMSOに溶解させたものまたはZ-VAD(OMe)-FMK、1mgを122μl DMSOに溶解させたもの)。試薬は、PEG、EDTAおよびDMPAをさらに含み、水で全量1.7mlとした。PEG300およびPEG10.000などの好適なポリエチレングリコールは上に記載している。スカベンジャーとしてN-アセチル-L-システイン(NAC)を含む安定化試薬については、N-アセチル-L-システインを0.5mg/mlの濃度で安定化試薬に添加した。安定化された血液中の最終的なカスパーゼ阻害剤濃度はおよそ5μMであった。全血中のスカベンジャーの最終濃度はおよそ0.44mMであった。
【0404】
室温で5日間保管した6名のドナーからの血液試料中の18S rDNA遺伝子の500bp断片の平均全コピー数が
図10に示される。血液試料を、異なるカスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬を用いて安定化した。左のバー:カスパーゼ阻害剤Boc-D-(OMe)-FMK(滅菌されていないもの)を含む安定化試薬;左から2番目のバー:カスパーゼ阻害剤Boc-D-(OMe)-FMKおよびスカベンジャーとしてN-アセチル-システイン(滅菌されたもの)を含む安定化試薬;左から3番目のバー:カスパーゼ阻害剤Z-VAD(OMe)-FMK(滅菌されていないもの)を含む安定化試薬;左から4番目のバー:カスパーゼ阻害剤Z-VAD(OMe)-FMKおよびスカベンジャーとしてN-アセチル-システイン(滅菌されたもの)を含む安定化試薬;左から5番目のバー:PAXgene Blood ccfDNA Tube;左から6番目のバー:非安定化EDTA血液。
【0405】
図10から分かるように、カスパーゼ阻害剤Boc-D-(OMe)-FMKまたはZ-VAD(OMe)-FMKを用いて安定化された血液試料では、アポトーシス細胞に由来するとみなすことができる500bp断片のコピー数は、PAXgene Blood ccfDNAチューブを用いて安定化された血液中の断片数と同等であった。したがって、カスパーゼ阻害剤Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-VAD(OMe)-FMKを含む安定化試薬により、良好な安定化特性が達成される。スカベンジャーであるN-アセチル-L-システイン(NAC)を添加することにより、カスパーゼ阻害剤Boc-D-(OMe)-FMKおよびZ-VAD(OMe)-FMKがガンマ線照射から効率的に防護された。非安定化血液を用いた陰性対照では、500bp断片コピー数は安定化された血液試料と比較して50から100倍多かった。
【0406】
結論:
カスパーゼ阻害剤Q-VD-OPhを含む安定化試薬と同様に(例えば、
図9を参照されたい)、Boc-D-(OMe)-FMKまたはZ-VAD(OMe)-FMKなどの他のカスパーゼ阻害剤を含む安定化試薬により、ゲノムDNAの血漿中への放出が防止され、それにより、ccfDNAレベルが安定化する。特にN-アセチル-システインなどの、本発明に従って使用される化合物により、異なるカスパーゼ阻害剤(Q-VD-OPh、Boc-D-(OMe)-FMKまたはZ-VAD(OMe)-FMKなど)を含む安定化試薬がガンマ線照射中に防護され、ガンマ線照射の負の効果は、N-アセチル-L-システインなどのラジカルスカベンジャーを添加することによって防止することができる。
【配列表】