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特許7166175積層造形のための位置検出技術ならびに関連するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】積層造形のための位置検出技術ならびに関連するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20221028BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221028BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221028BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20221028BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20221028BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221028BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/245
B29C64/124
B33Y10/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018568279
(86)(22)【出願日】2017-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 US2017039443
(87)【国際公開番号】W WO2018005452
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】62/354,955
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516373915
【氏名又は名称】フォームラブス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】FORMLABS,INC.
【住所又は居所原語表記】35 Medford Street, Suite No.1, Somerville, Massachusetts 02143 U. S. A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ノレット,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フランツデール,ベン
(72)【発明者】
【氏名】メグレツキ,ドミトリー
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/031227(WO,A1)
【文献】特開2009-137048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0196946(US,A1)
【文献】特表2011-504819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0020901(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101918198(CN,A)
【文献】特開平02-024120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築プラットフォームの表面上に材料の層を形成するように構成された、積層造形装置であって:
内面を有する容器;
容器の内面に対向する構築面を有する、構築プラットフォーム;
構築プラットフォームを容器に対して移動させるように構成された、1以上のアクチュエータ;および
少なくとも1つのコントローラであって:
構築プラットフォームを容器に向かって移動させることによって構築プラットフォームの容器に対する位置を決定し、前記容器に向かった移動の少なくとも一部の間、構築面は容器の内面と接触しており;
構築プラットフォームを容器から離れるように移動させ、該移動の当初においては構築面は容器の内面と接触しており、そして該移動の完了時には構築面は容器の内面と接触しておらず;
構築プラットフォームを容器から離れるように移動させる前記離れる移動の間に、構築プラットフォームに加えられる力を測定し;および
測定された力に少なくとも部分的に基づいて、容器に対する構築プラットフォームの位置を決定するように構成された前記コントローラ;
を含む、前記積層造形装置。
【請求項2】
少なくとも1つのコントローラが、1以上のアクチュエータのうちの少なくとも1つにかかる逆起電力を測定することによって、構築プラットフォームを容器から離れるように移動させる前記容器から離れる移動の間に、構築プラットフォームに加えられる力を測定するように構成される、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
構築プラットフォームに加えられる力を測定するように構成された少なくとも1つの力センサをさらに含み、少なくとも1つのコントローラが、少なくとも1つの力センサによる測定出力に基づいて、構築プラットフォームを容器から離れるように移動させる前記容器から離れる移動の間に、構築プラットフォームに加えられる力を測定するように構成される、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項4】
少なくとも1つのコントローラが、測定された力の不連続が発生する構築プラットフォームの位置を識別することによって少なくとも部分的に容器に対する構築プラットフォームの位置を特定するように構成される、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項5】
少なくとも1つのコントローラが、構築プラットフォームを容器から離れるように移動させる前記容器から離れる移動の間に、構築プラットフォームの複数の異なる位置で構築プラットフォームに加えられる力を測定するように構成される、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項6】
少なくとも1つのコントローラが、容器からの構築プラットフォームの距離の変化に対する測定された力の変化率を計算することによって、少なくとも部分的に容器に対する構築プラットフォームの位置を決定するように構成される、請求項5に記載の積層造形装置。
【請求項7】
容器が、少なくとも1つの圧縮装置に取り付けられている、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項8】
少なくとも1つのコントローラが、構築面が容器の内面と接触するまで構築プラットフォームを容器に向かって移動させることと、構築面が容器の内面と接触しなくなるまで構築プラットフォームを容器から離れるように移動させることとの間に、所定の時間待機するようにさらに構成される、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項9】
積層造形装置の構築プラットフォームの位置を決定する方法であって、
構築プラットフォームを構築プラットフォームの構築面に対向する表面に向かって移動させ、前記構築面に対向する表面に向かった移動の少なくとも一部の間、構築面は対向する表面と接触しており;
構築プラットフォームを対向する表面から離れるように移動させ、該移動の当初においては構築面は容器の内面と接触しており、そして該移動の完了時には、構築面は対向する表面と接触しておらず;
構築プラットフォームを対向する表面から離れるように移動させる前記離れる移動の間に、構築プラットフォームに加えられる力を測定し;および
測定された力に基づいて、対向する表面に対する構築プラットフォームの位置を決定することを含む、
前記方法。
【請求項10】
積層造形装置が、液体フォトポリマーを含む容器を含み、
構築面が対向する表面と接触すると、構築プラットフォームの少なくとも一部が液体フォトポリマー内に浸漬され、
測定された力が、構築面と対向する表面との分離に抵抗する流体力を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
構築プラットフォームの位置を決定することが、測定された力の不連続性が観察される構築プラットフォームの位置を特定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
積層造形装置が、構築プラットフォームを動かすように構成された1以上の電動アクチュエータを含み、構築プラットフォームに加えられた力を測定することが、1以上のアクチュエータの内の少なくとも1つに逆起電力を記録することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
構築プラットフォームを構築面に対向する表面から離れるように移動させる前記移動の間に、構築プラットフォームの複数の位置のそれぞれにおいて構築プラットフォームに加えられる力を測定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
容器からの構築プラットフォームの距離の変化に対する測定された力の変化率を計算することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年6月27日に出願された、“Position Detection Techniques For Additive Fabrication And Related Systems And Methods”と題する米国仮特許出願第62/354,955号の35米国特許法§119(e)に基づく利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般に、積層造形(例えば、3次元印刷)装置内の構築プラットフォームの位置を検出するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
積層造形、例えば3次元(3D)印刷は、典型的には構築材料の一部を特定の位置で固化させることによって、物体を造形するための技術を提供する。積層造形技術としては、ステレオリソグラフィ、選択的または溶融堆積モデリング、直接複合体製造、積層物体製造、選択相領域堆積、多相ジェット凝固、弾道粒子製造、粒子堆積、レーザ焼結またはそれらの組み合わせが挙げられる。多くの積層造形技術は、典型的には所望の物体の断面である連続層を形成することによって部品を製造する。典型的には、各層は、それが先に形成された層またはその上に物体が造形される基板のいずれかに付着するように形成される。
【0004】
ステレオリソグラフィとして知られている積層造形への1つのアプローチでは、典型的には最初に基板上にそして次にその上に1つずつ、硬化性ポリマー樹脂の薄層を連続的に形成することによって固体物体が作られる。化学線への露光は液体樹脂の薄層を固化させ、それによって薄層の強化と以前に硬化された層または基板の表面への付着がおきる。
【発明の概要】
【0005】
積層造形装置の構築プラットフォームの位置を検出するためのシステムおよび方法が提供される。
【0006】
いくつかの態様によれば、構築プラットフォームの表面上に材料の層を形成するように構成された、積層造形装置が提供され、積層造形装置は、内面を有する容器、容器の内面に対向する構築面を有する、構築プラットフォーム、構築プラットフォームを容器に対して移動させるように構成された、1以上のアクチュエータ、ならびに、少なくとも1つのコントローラであって、構築プラットフォームを容器に向かって移動させ、前記移動の少なくとも一部の間、構築面は容器の内面と接触しており、構築プラットフォームを容器から離れるように移動させ、前記移動の少なくとも一部の間、構築面は容器の内面と接触しておらず、構築プラットフォームを容器から離れるように移動させる前記ステップの間に、構築プラットフォームに加えられる力を測定し、および測定された力に少なくとも部分的に基づいて、容器に対する構築プラットフォームの位置を決定するように構成された、前記コントローラを含む。
【0007】
いくつかの態様によれば、積層造形装置の構築プラットフォームの位置を決定するための方法が提供され、この方法は、構築プラットフォームを構築プラットフォームの構築面に対向する表面に向かって移動させ、前記移動の少なくとも一部の間、構築面は対向する表面と接触しており;構築プラットフォームを対向する表面から離れるように移動させ、前記移動の少なくとも一部の間、構築面は対向する表面と接触しておらず;構築プラットフォームを対向する表面から離れるように移動させる前記ステップの間に、構築プラットフォームに加えられる力を測定し;および、測定された力に基づいて、対向する表面に対する構築プラットフォームの位置を決定することを含む。
【0008】
前述の概要は例示として提供されており、限定的であることを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面は、一定の縮尺で描かれることを意図していない。明確にするために、すべての構成要素がすべての図面でラベル付けされているとは限らない。図面において:
【0010】
図1A図1Aは、いくつかの実施形態による、例示的な積層造形装置を示す図である。
図1B図1Bは、いくつかの実施形態による、例示的な積層造形装置を示す図である。
【0011】
図2図2は、いくつかの実施形態による、積層造形装置の概略図である。
【0012】
図3A図3Aは、いくつかの実施形態による、加えられる荷重とz軸の高さとの間の例示的な関係のグラフを示す。
図3B図3Bは、いくつかの実施形態による、加えられる荷重とz軸の高さとの間の例示的な関係のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
構築プラットフォームの位置を検出するためのシステムおよび方法が提供される。上述したように、積層造形においては、複数の材料層を構築プラットフォーム上に形成することができる。1つの例示的な積層造形システムを説明するために、逆さのステレオリソグラフィプリンタを図1A、1Bに示す。例示的なステレオリソグラフィプリンタ100は、支持ベース101、ディスプレイおよびコントロールパネル108、および液体フォトポリマー(例えば、フォトポリマー樹脂)を容器102内に貯蔵および分配するためのリザーバおよび分配システム104を含む。支持ベース101は、システムを使用して物体を製造するように動作可能であり得る様々な機械的、光学的、電気的、および電子的構成要素を含み得る。
【0014】
動作中、液体フォトポリマーは分配システム104から容器102に分配されてもよい。構築プラットフォーム105は、構築プラットフォーム105は、製造される物体の底面層(最下部のz軸位置)が形成されるように、(図1A、1Bに示すようにz軸方向に沿って配向された)垂直軸103に沿って移動可能、または、構築プラットフォーム105自体の底面層が、容器102の内面111からz軸に沿って所望の距離で移動可能であり得る。所望の距離は、構築プラットフォーム上または製造中の物体の予め形成された層上に製造されるべき固体材料の層の所望の厚さに基づいて選択することができる。
【0015】
図1A、1Bの例では、容器102の内面111は、容器102の内面111と構築プラットフォーム105の底部に面している部分またはその上に製造されている物体との間に位置する液体フォトポリマーが放射線に露光され得るように、支持ベース101内に配置された放射源(図示せず)によって生成された化学線に対して(少なくとも部分的に)透明であり得る。かかる化学線に露光されると、液体フォトポリマーは、時には「硬化」と呼ばれる化学反応を受けて、露光されたポリマーを実質的に凝固させて構築プラットフォーム105の底面部分またはその上に製造される物体に付着させる。図1は、構築プラットフォーム105上に物体の任意の層を形成する前のステレオリソグラフィプリンタ101の構成を表しており、明確にするために、描写された容器102内には液体フォトポリマーは示されていない。
【0016】
材料の層の硬化に続いて、硬化された材料と容器102の内面111との間に生じた可能性があるあらゆる結合(例えば、接着剤結合)を剥がすすために、分離プロセスが通常行われる。例えば、新たな層を形成するために構築プラットフォーム105を再配置するために、および/または容器102の内面111との任意の接合部に分離力を加えるために、構築プラットフォーム105を垂直運動軸103に沿って移動させることができる。さらに、容器102は、ステレオリソグラフィプリンタ101が容器を水平運動軸110に沿って移動させることができるように支持ベース上に取り付けられ、分離力によって少なくともいくつかの場合において有利には追加の分離力を導入する。水平運動軸110に沿って動くことができ、109で支持ベース上に取り外し可能にまたは他の方法で取り付けることができるワイパー106がさらに設けられる。ワイパーアームは、容器102の周りに液体フォトポリマーを再分配するために、および/またはフォトポリマーの部分的に硬化された部分を追加の材料を硬化させるために使用される容器の領域から遠ざけるために操作され得る。
【0017】
上述した積層造形法の態様をさらに説明するために、図2は逆さのステレオリソグラフィプリンタ200の概略図を示す。図2の例では、ステレオリソグラフィプリンタ200は、構築プラットフォーム205、容器202、レベリング(leveling)機構201、および液体フォトポリマー(例えば、フォトポリマー樹脂)212を含む。下向きの構築プラットフォーム205は、液体フォトポリマー212を保持する容器202の内面211に対向する。
【0018】
図2は、構築プラットフォーム205上に部品の任意の層を形成する前のステレオリソグラフィプリンタ200の構成を表す。部品の任意の層を形成する前に、図2において表面211としてラベル付けされた、構築プラットフォーム205と容器202の内面との間の距離を決定することが有利であり得る。この距離は、本明細書では「z軸ギャップ」またはより簡単にはZheightと呼ばれ、図2に距離203として示される。構築プラットフォームをZheightに位置決めした後、構築プラットフォームと容器の底部との間に位置する液体フォトポリマーの一部または全部を硬化させる(例えば、上述のように化学線を容器の基部を通して樹脂に向けることによって)ことができる。
【0019】
上述のように、図1A、1Bおよび2にそれぞれ示すステレオリソグラフィプリンタ100および200は、所望の構築面(例えば、構築プラットフォーム105または205および/または以前に形成された材料の層)および対向する表面111または211の両方と接触している液体フォトポリマーの領域を硬化して、固体ポリマーの層を形成することができる。かかる手法は、化学線が容器の底部の光学窓を通して導入される、「反転」ステレオリソグラフィ機械としても知られるシステムにおいて採用され得る。
【0020】
かかる機械や他の機械などでは、Zheightを高い精度で調整することができるが、Zheightの現在値を正確に決定することは困難であり得る。Zheightを知ることは、構築面と対向する表面(例えば、図2の例では容器202の底部211)との間に位置する硬化フォトポリマーの厚さを実質的に制御するので重要であり得る。すなわち、液体フォトポリマーの層を硬化させるとき、Zheightは所望の層の厚さに等しくなるように調整され、それはサイズがわずか数ミクロンであり得る。しかしながら、機械のコストおよび複雑さを増すことなく必要な程度の精度を達成することは、これまで重大な課題を提示してきた。
【0021】
いくつかの積層造形システムでは、構築プラットフォームの移動は、反復可能な移動を提供するがモータの絶対位置に関するフィードバックを提供しない、1つまたは複数のステッピングモータなどの開ループ移動制御システムを介してもたらされ得る。そのため、モータを使用して構築プラットフォームを移動する場合、システムはモータの動作に基づいてプラットフォームの位置を直接知ることができない可能性がある。いくつかの実装形態では、構築プラットフォームがその方向で最大または最小範囲に達したときを検出し、したがって構築プラットフォームがZ軸に沿って固定位置にあるときを判断するために、光学または機械センサをz軸経路の一端に構成することができる。この位置は、構築プラットフォームが配置され得る最大または最小のz軸位置のいずれかを表すので、時にはZmaxまたはZminと呼ばれる。構築プラットフォームがZmaxまたはZmin位置に移動されると、システムは、それがZmaxまたはZminにあったときから構築プラットフォームを制御システムがどのように移動させたかに基づいて構築プラットフォームの次の位置を推定することができる。しかしながら、そのような推定値は、推定値のドリフトおよびモータまたは他のアクチュエータの実際の運動のために、経時的に不正確さが増す可能性がある。
【0022】
これらの困難にもかかわらず、構築プラットフォームの底面が対向する表面に対して平らになる位置、すなわち前記表面に対して望ましくない力を加えることがないz軸に沿った構築プラットフォームの位置を、直接に決定することが望ましいであろう。この位置は、しばしばZと呼ばれ、適切に選択された座標系でZheight=0となる点である。
【0023】
しかしながら、Zheightを決定するために使用することができるような、Zまたはその近くに配置された機械的または光学的検知手段を使用することはしばしば望ましくない。例えば、かかるセンサを追加すると、システムの複雑さおよびコストが増大する可能性がある。さらに、いくつかの実装形態では、容器はシステムの取り外し可能な構成要素であり得、これは、センサが挿入および容器の取り外しを過度に妨げないように配置される場合、ZでのまたはZ付近のセンサの取り付けおよび較正を複雑にし得る。代替として、手動のユーザ較正が実行されてもよいが、これは必然的にシステムのユーザに迷惑をかけることを必要とし、したがって望ましくない。
【0024】
またはその近くに配置された機械的手段または検知手段を用いても、Zheightの値を正確に決定することはさらに複雑になる可能性がある。例えば、容器を異なる容器に交換することによる(幾何学的には同一であるが製造上の差異が小さい場合がある)装置の幾何学的形状の変化は、Zおよび/またはZheightの推定値にさらなる不正確さを生じさせる。場合によっては、負荷のかかるデバイスの歪みにより、Zの正しい値がデバイスの動作サイクル内で変化することがある。
【0025】
より正確にZheighを決定するために、1つの技術は、構築プラットフォームの底面が対向する表面(容器の内面)に向かって動くときにその底面がいつ対向する表面と接触するかを検出するために構築プラットフォームの運動における機械的負荷の測定を行うことである。かかる技術の1つの非限定的かつ単純化された例として、構築プラットフォームは対向する表面に向かって直接下げられてもよい。前記運動中、構築プラットフォーム用の運動システムにかかる負荷は、適切な技術を用いて繰り返し測定することができる。例えば、いくつかのステッピングモータシステムは、モータ内の逆起電力(「逆起電力」)を測定するセンサを含む(例えば、TRINAMIC Motion Control GmbH&Co.KGによって販売されているステッパ動作制御システムにあるstallGuard2機能)。したがって、構築プラットフォームのために運動システムにかかる負荷を測定するための1つの技術は、運動システムの逆起電力を測定することを含み得る。代替的にまたは追加的に、構築プラットフォーム上の荷重を測定するためのいくつかの手法は、トルクおよび/または力センサを使用して前記荷重を測定することができる。前記機械的負荷を測定するために使用される特定のセンサに関係なく、機械的にある程度の動きに抵抗する対向する表面のために、測定された荷重は通常、対向する表面と接触する前に運動システムにかかる荷重と比較して、対向する表面と接触すると増加する。理論的には、この増加の開始は、構築プラットフォームが最初に対向する表面(すなわちZ)に接触する位置を識別するために使用され得る。
【0026】
しかしながら、そのような技術は多くの欠点を抱えている。例えば、対向する表面に対して構築プラットフォームによって加えられる力は、前記プラットフォームおよび表面を支持する装置の機械的変形を引き起こし得、そしてこれらの変形は、測定プロセスに著しい誤差をもたらし得る。さらに、そして特に液体フォトポリマー構築材料を利用するシステムに関して、構築プラットフォームの運動によって生じる負荷は、構築材料の粘性のために、対向する表面に物理的に接触する前ではあるが対向する表面に近づくにつれて増大する可能性がある。このように徐々に変化する荷重測定値は、荷重測定値の変化に基づいて構築プラットフォームがいつZ位置に到達したかを判断することの難しさを増加させ、決定の精度を低下させる。
【0027】
本発明者らは、Zを測定する際の上記の困難さが、対向する表面に対する構築プラットフォームの位置を決定し、それによってZを決定するために、対向する表面に向かってではなく、対向する表面から離れるように構築プラットフォームの動きからのフィードバックを利用することによって軽減され得ることを認識した。特に、本発明者らは、vatベース(vat-based)の液体フォトポリマーシステムなどの多くのシステムの動作中に、いったんそれらがZで同一平面上に位置すると、構築プラットフォームと対向する表面(例えば樹脂製容器の底部)との分離に抵抗することを認識した。これらの分離抵抗力は、構築プラットフォームが対向する表面に比較的接近している間にのみ加えられ、それが対向する表面から離れるにつれて急速に減衰する。z軸の高さの関数としてこれらの力の発生および消散を測定することによって、Zの値を決定することができる。
【0028】
図3A、3Bは、様々なz軸高さ(例えば、図2に示す例示的システム200の場合の高さ203)で測定された力の例を示す。図2に示すもののようなvatベースのフォトポリマーシステムでは、かなりの力が構築プラットフォームと対向する表面との分離に抵抗する可能性があり、これは、液体フォトポリマーの流体の流れと、分離構築プラットフォームと対向する表面との間に生じる真空圧力によるものである。別のシステムでは、近接して配置されたときに構築プラットフォームと対向する表面とを互いに引き付ける磁界を使用することなどによって、構築プラットフォームの対向する表面からの分離に抵抗する力を人為的に導入することができる(例えば、1以上の磁石を構築プラットフォームおよび対向する表面の構造に設置することによって)。どのメカニズムが構築プラットフォームの対向する表面からの分離に抵抗する力を生み出すかに関わらず、以下で論じるように、構築プラットフォームの様々な位置でそのような力を測定し、抵抗パターンを分析することによって信頼性のある一貫したZの測定を提供するためにそのような力の測定が使用され得るということを本発明の発明者は理解した。
【0029】
本発明の態様は、図2に示す例示的な実施形態の文脈において理解することができ、そこでは、構築プラットフォームの表面に対向する表面は、液体フォトポリマー容器の内面211によって表される。例示のシステム200では、容器は、バネ201のような圧縮装置によってハードストップに対して面一に保持されるように取り付けられるが、圧縮装置が圧縮または伸張されるように容器はまた、ハードストップから離れていくことができる。かかる圧縮のための例示的な技術は、米国特許出願公開第2014/0085620A1に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。動作中、容器201は、(図2に示されるように)構築プラットフォーム205の下面が前記容積内に下降できるように、ある容積の液体フォトポリマー212を収容する。いくつかの実施形態では、構築プラットフォームは、運動(負荷)に対する抵抗、加速度、および/または運動システムを通して及ぼされる力のうちの1つまたは複数に対する相対的変化を測定することができる運動システムに取り付けることができる。上述のように、例えば、負荷は、いくつかの実施形態では、ステッパドライバの「ストールガード」機能などを使用して逆起電力電流の大きさを検出および測定することによって決定され得る。
【0030】
この例示的な実施形態では、構築プラットフォーム205は、機械的または光学的リミットスイッチに達するまで対向する表面から離れる方向に移動して、Zmax点の位置を確定することができる。次のステップとして、構築プラットフォーム205は、次に、構築プラットフォーム205を表面に接触させ、圧縮装置201を介してその静止位置から離れるように表面を圧縮すると予想される距離だけ対向する表面211に向かって移動する。この圧縮に続いて、構築プラットフォーム205の運動は逆転し、それは対向する表面から離れる方向に移動する。
【0031】
図3Aおよび図3Bは、構築プラットフォームがZ軸に沿って移動する間のシステムの負荷力を示すグラフである。この動きの間に、構築プラットフォームが対向する表面からいつ離れるかをより正確に評価するために、構築プラットフォームに対して及ぼされる力を測定することができる。
【0032】
図3Aおよび図3Bの例は、構築プラットフォームが対向する表面から離れる方向に移動するときに構築プラットフォームに加えられる荷重を記録することによってZheightを決定するための異なる技法を示す。複数の力が構築プラットフォームの動きに抵抗するように作用し得るが、本発明者らは、プラットフォームがZに対応する位置を通って動かされるときに特有の抵抗パターンが存在し得ることを観察した。このパターンの例示的な例が図3Aおよび図3Bとして提供されており、これらは荷重測定値対構築プラットフォームの位置をプロットしている。図3Aおよび図3Bの両方において、z軸の高さは図の左から右に向かって増加し、各グラフの左側は構築プラットフォームが対向する表面に接触している位置を表す。
【0033】
線300によって示されるように、動作の初期段階中に、対向する表面から離れる構築プラットフォームの動きは、比較的小さな抵抗に阻まれる。この部分は、各グラフの左側の線300の水平方向の平坦部分として図3Aおよび図3Bに示されている。
【0034】
図2の例の文脈では、線300の水平位相は、圧縮装置201の機械的性質に応じて、関数として線形または非線形であり得る。対向する表面は、圧縮装置201の圧縮が徐々に解除されるときに構築プラットフォームの動きが対向する表面の動きと一致するように、通常、依然として互いに同一平面上にある。次の段階で、対向する表面211は、(例えば、圧縮装置の完全解放に起因して)その動作範囲内で「ハードストップ」に達し、もはや構築プラットフォーム205と共に動くことはない。この段階では、構築プラットフォーム205は、対向する表面から離れることによってのみ動き続けることができる。しかしながら、構築プラットフォームは対向する表面またはその近傍で液体フォトポリマー212に浸漬されるので、構築プラットフォーム205と対向する表面211との分離に抵抗する大きな流体力がそれに加えられる。
【0035】
したがって、分離プロセスの開始は、図3Aおよび図3Bに見られるように、動きに対する抵抗の急激で実質的な増加と関連しており、z軸の高さの特定の値を超えると徐々に負荷が増加することを示す。構築プラットフォームの荷重、力、または動きを監視することによって、この大幅な増加の開始を確実に検出することができる。本発明者らは、増加した荷重の開始が、時間とともに構築プラットフォームの底部がZに位置すること、すなわち、前記面に対して望ましくない力を加えることなく、構築プラットフォームの底面が対向する表面と同一平面上にあるz軸に沿った構築プラットフォームに位置することと密接に関連することを観察した。
【0036】
本発明者らは、上述の負荷の増加を識別し、この識別を利用してZの値を決定するために使用できる少なくとも2つの技法があることを認識している。これらの技術は図3Aおよび3Bにそれぞれ示されている。
【0037】
図3Aの例では、分離中の曲線部分の勾配301を測定することができる。分離に対応するこの部分の曲線の形状は線形でも非線形でもよく、力(例えば、流体力)は、それらが構築プラットフォームに適用される負荷において、Hookeの法則に近似するかもしれないが、分離中にシステムの構成要素が曲がると、z軸方向の高さの関数として加えられる荷重に非線形性が導入される。例えば、構築プラットフォームおよび/または構築プラットフォームが接触している対向する表面は、荷重を受けて撓むことがある。図3Aに示される手法では、曲線は実質的に線形であると仮定され、勾配301が測定される。次に、図3Aの設定点302に示すように、荷重を分離が起こると想定される値に外挿して対応するz軸値を決定することによってZの値を決定することができる。
【0038】
図3Bの例は、プラットフォームが対向する表面から離脱して分離し自由になるのを抑制する力を克服する構築プラットフォームに対応して、徐々に増加する負荷が突然減少する点を決定するためにステッピングモータ制御システムが使用される技術を示す。この点は、z軸の高さ303を有するものとして図3Bに示されている。この点はさまざまな方法で測定できる。例えば、Zは、図3Bにプロットされた関数の導関数を計算することによって決定することができる。動きに対する抵抗の急激で実質的な増加は線300の導関数を実質的に変化させる。例として、図3Bは、正の導関数から負の導関数への変化として点303を示す。不連続性は図3Bでは関数の導関数の急激な変化として示されているが、線300の変化率は、すべての場合においてそれほど劇的である必要はなく、代わりに勾配はより緩やかに変化することができる。それにもかかわらず、Zに対するz軸の高さの値は、いかなる場合でも、例えば、勾配が閾値よりも早く変化し始めるz軸の高さを識別することによって識別され得る。
【0039】
図3Bの技法では、線300の関数は既知の関数である必要はなく、または図3Aの技法の場合のように線形であると仮定されることに留意されたい。むしろ、Zの値は、z軸方向の高さを有する荷重の変化率の導関数(および/または高次の導関数)を計算し、構築プラットフォームと対向する表面との間の分離の瞬間に対応する導関数の変化を識別することによって決定される。
【0040】
の決定に続いて、構築プラットフォームは対向する表面から離れるように移動され、移動された距離はZheight203である。これらの測定に基づいて、ZおよびZmaxの両方に関して正確な再位置決めが可能である。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、いくつかの追加の技法が、任意の適切な組み合わせで、上記で論じられた技法のいずれかと共にさらに含まれ得る。1つのさらなる技術では、分離プロセスを開始する前に、構築プラットフォームを対向する表面に対して平らに位置決めする間に、スキッシュ待機(squish wait)として知られる期間待機することが有利であり得る。この期間は、構築プラットフォームの運動によって変位した液体フォトポリマーの運動を含むシステムが平衡状態に戻ることを可能にする。別の追加の技術では、液体フォトポリマーベースのシステムでは、Zを決定するための上記手順をフォトポリマー材料の初期層の露光および硬化と組み合わせることが有利であり得る。これは、構築プラットフォームを対向する表面からおよその距離だけ離して位置決めすることによって達成することができ、前記距離は、Zと化学線の硬化深さとの間のどこかにあると予測され、次に、対向する表面と構築プラットフォームの底部との間に、フォトポリマー材料の初期の「ラフト」層を大きく硬化させる。かかる組み合わせには、構築プロセスの開始前にキャリブレーションに費やされる時間を減らすなど、いくつかの利点がある。加えて、構築プラットフォームと対向する表面との間の硬化材料は、上記の手順で利用される力の差を増大させることがあり、したがって決定プロセスのためのよりきれいな信号を確実にすることができる。
【0042】
上記の特定の実施形態に関して技術を説明したが、当業者であれば、本明細書の説明は特許請求の範囲内のすべての修正形態および均等物を網羅することを意図しており、上に提示した特定の実施形態は限定を意図するものではない。例えば、上記の技術は積層造形装置の構築プラットフォームに関して説明されてきたが、少なくともある状況においては、部品の製造中にZの値を決定することが便利であり得ることが認識されるであろう。これは、構築プラットフォームの表面を使用して製造する前にZを決定することに加えて、またはその代わりとして実行することができる。製造中にZを決定するために、Zを測定するための上述の技術は、接触するために構築プラットフォームの表面の代わりに部品の最も最近製造された層の表面を使用しながら適用することができ、そして容器の底のような対向する表面に力を加える。場合によってはこれが部品の損傷をもたらす可能性があるが、最近製造された層が大きな表面積を有する場合(例:いかだの一部など)など、少なくともいくつかの例では、そのような損傷は最小限であるかまたは生じないことがある。
【0043】
さらに、液体フォトポリマー積層造形システムに関して例を挙げたが、上記の技術は他の液体積層造形システムまたは液体を利用しない積層造形システムにも適用することができる。例えば、溶融堆積モデリング(FDM)装置の構築面を対向する表面と接触させることができ、2つの面の分離に抵抗する磁力および/または他の適切な力を導入することができる。したがって、本明細書に記載の技法は、ステレオリソグラフィ内での使用に限定されず、Zで2つの表面の分離に抵抗する力がある任意の適切な積層造形装置においてZを決定するために適用できる。
【0044】
積層造形装置の同じモデルの異なる事例間の製造上のばらつきにより、上述の分離プロセス中に各デバイス事例が異なる挙動をすることがあることに留意されたい。しかしながら、上述の技法を使用してZ較正を実行することによって、操作されている特定の装置に特有のZの値を決定することができる。
【0045】
の値または他のZheight値が機械的力の測定を通じて決定される上記の議論において、かかる値は、製造中、製造前、またはその両方(すなわち、所与の計算の少なくともいくつかの態様は、製造前に行われる他のものと共に製造前に行われてもよい)で少なくとも1つのプロセッサによって計算することができる。上記の説明では、「積層造形システム」が計算を実行すること(例えば、勾配を計算してZを決定すること)として参照される場合、この説明は、計算が実行される特定の場所は製造プロセスを実行する装置だけに限定されないため、1つまたは複数のプロセッサを含む積層造形装置と、外部計算装置に結合された積層造形装置との両方を包含することを意図している。
【0046】
したがって、Zの値または他のZheight値を計算する少なくとも1つのプロセッサは、積層造形装置自体の一部であってもよく、および/または有線および/または無線接続を介して積層造形装置に接続される計算装置内に配置されてもよい。この結合は、本質的に一時的なものであり得、例えば、計算装置のプロセッサは、1以上のZ/Zheight値を計算し、その値を記憶して後の製造中にそれらにアクセスする加法製造装置にその値を無線送信し得る。
【0047】
以上、本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明してきたが、当業者には様々な変更、修正、および改良が容易に思い浮かぶであろうことを理解されたい。
【0048】
かかる変更、修正、および改良は、この開示の一部であることを意図しており、本発明の精神および範囲内にあることを意図している。さらに、本発明の利点が示されているが、本明細書に記載の技術のすべての実施形態がすべての記載された利点を含むわけではないことを理解されたい。いくつかの実施形態は、本明細書で有利であると説明されたいかなる特徴も実装しなくてもよく、いくつかの事例によっては、説明された特徴のうちの1以上がさらなる実施形態を達成するために実装されてもよい。したがって、前述の説明および図面は例示にすぎない。
【0049】
本発明の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述の実施形態で具体的に説明されていないさまざまな構成で使用することができ、したがってその用途において、説明または図面に示す前述の構成要素の詳細および構成に限定されない。例えば、一実施形態に記載の態様は、他の実施形態に記載の態様と任意の方法で組み合わせることができる。
【0050】
また、本発明は方法として具現化されてもよく、その例が提供されている。方法の一部として実行される行為は、任意の適切な方法で順序付けられてもよい。したがって、例示的な実施形態では順次動作として示されていても、動作が図示された順序とは異なる順序で実行される実施形態を構成することができ、それはいくつかの動作を同時に実行することを含み得る。
【0051】
クレーム要素を変更するためのクレーム内の「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、あるクレーム要素の優先度、優先順位、順序、または方法の動作が実行される時間的順序を暗示しないが、クレーム要素を区別するために、特定の名前を持つ1つのクレーム要素と同じ名前を持つ別の要素を区別するためのラベルとして使用される(ただし序数用語を使用するため)。
【0052】
また、本明細書で使用されている表現および用語は説明を目的としており、限定と見なされるべきではない。本明細書における「含む」、「含む」、または「有する」、「含有する」、「包含する」、およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその均等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B