(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-27
(45)【発行日】2022-11-07
(54)【発明の名称】予圧検知可能なねじ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20221028BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
F16H25/22 K
F16H25/22 C
F16H25/24 B
(21)【出願番号】P 2019019349
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】久保田 祐次
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩史
(72)【発明者】
【氏名】冨山 貴光
(72)【発明者】
【氏名】辻澤 優太
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-141498(JP,A)
【文献】特開2017-150502(JP,A)
【文献】特開2007-333195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の外面溝を有するねじ軸と、
前記ねじ軸が嵌められ、螺旋状の内面溝及び戻し路を有し、前記外面溝と前記内面溝との間に形成される通路が前記戻し路に繋がるナットと、
前記通路と前記戻し路に配置される複数の転動体と、
前記ナットの外面に貼り付けられるひずみセンサと、を備え、
前記ひずみセンサが貼り付けられる前記ナットの貼付け面及び/又はその近傍と前記ナットの内面との間に少なくとも1つの穴を設ける予圧検知可能なねじ装置。
【請求項2】
前記ねじ装置の予圧が、前記通路よりも大きい前記転動体を使用するオーバーサイズボール予圧であり、
前記ひずみセンサが前記ナットの少なくとも円周方向のひずみを検出することを特徴とする請求項1に記載の予圧検知可能なねじ装置。
【請求項3】
前記ねじ装置の予圧が、前記ナットの前記内面溝の一部を前記ナットの前記内面溝の他の一部に対して前記ナットの軸方向にオフセットさせるオフセット予圧であり、
前記ひずみセンサが前記ナットの軸方向のひずみを検出することを特徴とする請求項1に記載の予圧検知可能なねじ装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの穴が互いに平行で隣接する少なくとも2つの穴であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の予圧検知可能なねじ装置。
【請求項5】
前記ひずみセンサが前記ナットの前記外面の平取り部に貼り付けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の予圧検知可能なねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予圧検知可能なねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ装置は、ねじ軸と、ナットと、ねじ軸とナットとの間に介在する複数の転動体と、を備える。モータ等によってねじ軸を回転させると、ナットが直線運動する。ねじ装置は、回転運動と直線運動との間で運動を変換する機械要素として使用される。ねじ軸が回転する間、転動体が転がり運動するので、摩擦抵抗を減らすことができるという特徴がある。
【0003】
ねじ装置の剛性を向上させ、位置決め精度を向上させるために、ねじ装置には予圧が与えられる。ねじ装置の予圧方式として、ダブルナット予圧、オフセット予圧、オーバーサイズボール予圧が知られている。ダブルナット予圧においては、ナットを2つ使用し、2つのナットの間にスペーサを入れて、各ナットのねじ軸、ナット及びボール間に生ずる軸方向隙間をゼロにする。オフセット予圧は、シングルナットで予圧を与える方式であり、ナットの螺旋状の内面溝の一部を内面溝の他の一部に対してナットの軸方向にオフセットさせることで、軸方向隙間をゼロにする。オーバーサイズボール予圧は、シングルナットで予圧を与える方式であり、ナットの螺旋状の内面溝とねじ軸の螺旋状の外面溝との間の通路よりも大きい転動体を挿入することで、軸方向隙間をゼロにする。
【0004】
ねじ装置を長期間使用すると、転動体、ねじ軸、ナットが摩耗する。これらが摩耗すると、ねじ装置の予圧が低下し、ねじ装置の剛性、位置決め精度が低下する。予圧を検知するために、特許文献1には、ダブルナット予圧方式のボールねじにおいて、2つのナットの間にスペーサとしてひずみセンサを介在させるものが開示されている。ひずみセンサによって2つのナットの対向面に働く軸方向力を検出することによって、経年変化に起因する予圧の低下を監視することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シングルナットで予圧を与えるねじ装置には、ダブルナットで予圧を与えるねじ装置よりも予圧を検知しにくいという課題がある。なぜならば、たとえナットの外面にひずみセンサを貼り付けても、予圧荷重に起因するナットの外面のひずみ量が小さいからである。
【0007】
そこで本発明は、シングルナットで予圧を与えるねじ装置において、予圧を容易に検知できるねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、螺旋状の外面溝を有するねじ軸と、前記ねじ軸が嵌められ、螺旋状の内面溝及び戻し路を有し、前記外面溝と前記内面溝との間に形成される通路が前記戻し路に繋がるナットと、前記通路と前記戻し路に配置される複数の転動体と、前記ナットの外面に貼り付けられるひずみセンサと、を備え、前記ひずみセンサが貼り付けられる前記ナットの貼付け面及び/又はその近傍と前記ナットの内面との間に少なくとも1つの穴を設ける予圧検知可能なねじ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ひずみセンサが貼り付けられるナットの貼付け面及び/又はその近傍とナットの内面との間に少なくとも1つの穴を設けるので、少なくとも1つの穴を設けた部分において、ナットの外面に予圧荷重が伝わりにくくなる。ナットの外面の変形する部分と変形しにくい部分との境目に応力集中が発生し、ひずみ量が拡大されるので、ひずみセンサによる予圧の検知が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態の予圧検知可能なねじ装置の外観斜視図である。
【
図2】本実施形態のねじ装置の軸線に沿った断面図である。
【
図4】オーバーサイズボール予圧の原理を示す模式図(
図4(a)はねじ装置の部分断面図、
図4(b)は
図4(a)のb部拡大図)である。
【
図5】オーバーサイズボール予圧によるナットの変形を示す模式図(
図5(a)はナットの側面図、
図5(b)はナットの正面図)である。
【
図6】ナットの外面のひずみ量の大きさを示す模式図(
図6(a)はねじ装置の軸線に直角な断面図、
図6(b)は
図6(a)のb部拡大図)である。
【
図7】ねじ装置の軸線に直角な断面図(
図7(a)はナットに1つの穴を設けた本発明例1、
図7(b)はナットに2つの穴を設けた本発明例2)である。
【
図8】実験により求めた予圧量とみかけひずみ量との関係を示すグラフである。
【
図9】経年変化に伴う予圧量の推移を示すグラフである。
【
図10】本発明の第2の実施形態のねじ装置の外観斜視図である。
【
図11】本実施形態のねじ装置の軸線に沿った断面図である。
【
図12】オフセット予圧の原理を示す模式図(
図12(a)はねじ装置の部分断面図、
図12(b)は
図12(a)のb部拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の予圧検知可能なねじ装置(以下、単にねじ装置という)を詳細に説明する。ただし、本発明のねじ装置は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態のねじ装置1の外観斜視図を示し、
図2は、ねじ装置1の軸線に沿った断面図を示す。本実施形態のねじ装置1は、ねじ軸2と、ナット3と、ねじ軸2の外面溝2aとナット3の内面溝3aとの間に介在する転動体としてのボール4と、を備える。
【0013】
ねじ軸2の外面には、ボール4が転がる螺旋状の外面溝2aが形成される。外面溝2aの長さ方向に直交する断面形状は、ボール4の半径よりも僅かに大きな半径を持つ2つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ状である(
図4(b)参照)。ボール4は、外面溝2aに2点で接触する。
【0014】
ナット3には、ねじ軸2が嵌められる。ナット3の軸方向の一端部には、相手部品に取りつけるためのフランジ3bが設けられる。ナット3の外面は、フランジ3bを除いて略円筒状である。ナット3の外面には、平坦な平取り部3cが形成される。ナット3の内面には、ねじ軸2の外面溝2aに対向する螺旋状の内面溝3aが形成される。内面溝3aの長さ方向に直交する断面形状は、ボール4の半径よりも僅かに大きな半径を持つ2つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ状である(
図4(b)参照)。ボール4は、内面溝3aに2点で接触する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、ナット3の外面の平取り部3cには、接着剤等の接着手段によってひずみセンサ5が貼り付けられる。ひずみセンサ5は、金属又は半導体が伸び縮みすると、抵抗値が変化するという原理を利用して、ナット3の外面のひずみを検出する。この実施形態のひずみセンサ5は、ナット3の外面の少なくとも円周方向(
図1のねじ軸2の軸線と直角なY方向)のひずみを検出する。
【0016】
ひずみセンサ5の種類は、特に限定されるものではなく、例えば絶縁体上に金属の抵抗体を取り付けた金属ひずみゲージ、絶縁体上に半導体を取り付けた半導体ひずみゲージ、半導体加工技術を使って作成されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ひずみセンサ等を使用することができる。
【0017】
図2に示すように、ねじ軸2の外面溝2aとナット3の内面溝3aとの間に螺旋状の通路8が形成される。この通路8には、複数のボール4が配置される。
【0018】
図3は、ねじ装置1の側面図を示す。
図3には、通路8の中心線と通路8に繋がる戻し路9の中心線を一点鎖線で示す。
図3に示すように、ナット3には、ボール4が循環できるように、この通路8の一端と他端に繋がる戻し路9が設けられる。戻し路9は、ナット3に設けた軸方向の貫通穴9aと、貫通穴9aの両端部に設けられる循環部品9b,9cによって構成される。循環部品9b、9cは、ナット3の軸方向の端面の凹部に装着される。循環部品9b,9cには、通路8を転がるボール4をナット3の貫通穴9aに導く方向転換路が形成される。なお、戻し路9をナット3の外面に取り付けられるリターンパイプによって構成してもよい。
【0019】
図1及び
図2に示すように、ひずみセンサ5が貼り付けられるナット3の貼付け面3eとナット3の内面3dとの間には、穴11が設けられる。穴11をナット3の貼付け面3eの近傍とナット3の内面3dとの間に設けることもできる。穴11は、軸方向に延びる。穴11は、ナット3の端面から空けられ、貼付け面3eの下方を通過する。
【0020】
本実施形態のねじ装置1の予圧方式は、オーバーサイズボール予圧である。
図4(a)(b)は、オーバーサイズボール予圧の原理を示す模式図である。ボール4には、ねじ軸2の外面溝2aとナット3の内面溝3aとの間の通路8よりも直径が大きいオーバーサイズのボール4が使用される。ボール4は、外面溝2aと内面溝3aとの間で圧縮される。符号7は、接触角線である。ねじ軸2の外面溝2aのピッチPは、外面溝2aの全長にわたって一定である。ナット3の内面溝3aのピッチPも、内面溝3aの全長にわたって一定である。
【0021】
図5(a)(b)は、オーバーサイズボール予圧によるナット3の変形を示す模式図である。
図5(a)(b)の実線が予圧をかける前のナット3を示し、
図5(a)(b)の破線が予圧をかけた後のナット3を示す。オーバーサイズボール予圧をかけた場合、ナット3は、その外径部が膨らむように変形する。
図5(a)(b)には、ナット3の変形を誇大に示すが、ナット3の実際の変形は僅かである。オーバーサイズボール予圧の場合、ボール4からナット3に働く予圧荷重がナット3の全体に分散するからである。
【0022】
図6(a)(b)は、ナット3の外面のひずみ量の大きさを示す模式図である。
図6(a)(b)において、ナット3の外面のひずみ量の大きさを2点鎖線で示す。
図6(b)に示すように、ナット3の内部に穴11を設けることで、予圧荷重Fが穴11を伝わらず、穴11を設けた部分の半径方向外側のナット3の外面の膨らみが抑えられる。このため、ナット3の外面の変形する部分と変形しにくい部分との境目に応力集中が発生し、ひずみ量が拡大される。ひずみ量が拡大された部分にひずみセンサ5を配置すれば、ひずみセンサ5の出力を大きくすることができる。例えば、ノイズの影響を抑えたり、ひずみセンサ5の分解能を上げたり、ひずみセンサ5用のアンプ基板を簡素化できたりする。
【0023】
図7(a)は、1つの穴11を空けたナット3の断面図を示し、
図7(b)は2つの穴11を空けたナット3の断面図を示す。ナット3には、1つの穴11を空けてもよいし、互いに平行で隣接する2つの穴11を空けてもよい。上記のように、ひずみ量は、ナット3の外面の変形する部分と変形しにくい部分との境目において拡大する。2つの穴11を空けることで、拡大させたひずみ量を重畳させることができる。
【0024】
図7(a)に示すように、1つの穴11を空ける場合、穴11を戻し路9の貫通穴9aと円周方向に180度離れた位置に配置するのが望ましい。また、
図7(b)に示すように、2つの穴11を空ける場合、2つの穴11の中心を 戻し路9の貫通穴9aと円周方向に180度離れた位置に配置するのが望ましい。ナット3の重心をナット3の中心に近づけられるからである。
【0025】
図8は、実験により求めた予圧量とみかけひずみ量との関係を示すグラフである。みかけひずみ量は、ナット3の外面の円周方向のひずみ量である。
図8の▲がナット3に穴11を設けない比較例を表し、
図8の◆がナット3に1つの穴11を設けた本発明例1を表し、
図8の■がナット3に2つの穴11を設けた本発明例2を表す。ナット3に1つの穴11を設けることで、穴11を設けない場合に比べて、みかけひずみ量、言い換えればひずみセンサ5の感度を約2倍に向上させることができる。また、ナット3に2つの穴11を設けることで、穴11を設けない場合に比べて、みかけひずみ量、言い換えればひずみセンサ5の感度を約3.5倍に向上させることができる。
【0026】
ねじ装置1を長期間使用すると、ボール4、ねじ軸2、ナット3が摩耗し、ねじ装置1の予圧が低下する。予圧が低下すると、ナット3の外面のひずみが小さくなり、ひずみセンサ5の抵抗値が低下する。ひずみセンサ5は、図示しないアンプ基板に接続される。アンプ基板は、ひずみセンサ5の抵抗値に基づいた電圧信号を出力する。アンプ基板の電圧信号によって、予圧の低下を監視することができる。
図9は、アンプ基板が出力する電圧の推移を示すグラフである。横軸はねじ装置1の使用期間であり、縦軸はアンプ基板が出力する電圧(すなわち予圧残存レベル)である。
図9に示すように、経年変化に伴う予圧残存レベルの低下を知ることができる。
【0027】
なお、IoTを導入し、アンプ基板が出力する電圧信号を送信機によってインターネット回線を通じてクラウドに送信してもよい。そして、クラウド上の故障診断システムが、アンプ基板が出力する電圧信号を人口知能を用いた深層学習(ディープラーニング)し、ねじ装置1の故障を診断してもよい。
【0028】
以上に本実施形態のねじ装置の構成を説明した。本実施形態のねじ装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0029】
ひずみセンサ5が貼り付けられるナット3の貼付け面3e及び/又はその近傍とナット3の内面3dとの間に穴11を設けるので、穴11を設けた部分において、ナット3の外面に予圧荷重が伝わりにくくなる。ナット3の外面の変形する部分と変形しにくい部分との境目に応力集中が発生し、ひずみ量が拡大されるので、ひずみセンサ5による予圧の検知が容易になる。
【0030】
オーバーサイズボール予圧の場合、ナット3の円周方向のひずみを検出することにより、ひずみセンサ5による予圧の検知が容易になる。
【0031】
1つの穴11を設けることで、穴11を設けない場合に比べて、ひずみセンサ5の感度を例えば約2倍に向上させることができる。
【0032】
平行な2つの穴11を設けることで、穴11を設けない場合に比べて、ひずみセンサ5の感度を例えば約3.5倍に向上させることができる。
【0033】
ひずみセンサ5をナット3の平取り部3cに取り付けることで、ナット3にひずみセンサ5を取り付けるのが容易である。
(第2の実施形態)
【0034】
図10は、本発明の第2の実施形態のねじ装置21の外観斜視図を示し、
図11は、ねじ装置21の軸線に沿った断面図を示す。第2の実施形態のねじ装置21も、ねじ軸2、ナット3、ねじ軸2の外面溝2aとナット3の内面溝3aとの間に介在する転動体としてのボール4を備える。
【0035】
第1の実施形態のねじ装置1は、オーバーサイズボール予圧のねじ装置1であるのに対し、第2の実施形態のねじ装置21は、オフセット予圧のねじ装置21である。すなわち、
図12(a)(b)に示すように、ナット3の内面溝3aの一部3a1をナット3の内面溝3aの他の一部3a2に対してナット3の軸方向にオフセットさせている。内面溝3aの一部3a1が使用される循環回路と、内面溝3aの他の一部3a2が使用される循環回路とは、互いに異なる。内面溝3aの一部3a1のリードはLであり、内面溝3aの他の一部3a2のリードはLであり、一部3a1と他の一部3a2との間のオフセット部18のリードはL+αである。なお、1条の内面溝3a内でオフセット予圧をかけてもよいし、2条の内面溝3aの条間でオフセット予圧をかけてもよい。
【0036】
図12(b)に示すように、ねじ軸2の外面溝2aの断面形状は、ボール4の半径よりも僅かに大きな半径を持つ単一の円弧からなるサーキュラーアーク状である。ボール4は、外面溝2aに1点で接触する。ナット3の内面溝3aの断面形状は、ボール4の半径よりも僅かに大きな半径を持つ単一の円弧からなるサーキュラーアーク状である。ボール4は、内面溝3aに1点で接触する。符号7は、接触角線である。
【0037】
図10及び
図11に示すように、ナット3の外面の平取り部3cには、接着剤等の接着手段によってひずみセンサ5が貼り付けられる。ひずみセンサ5が取り付けられるナット3の貼付け面3eとナット3の内面3dとの間には、穴11が設けられる。穴11をナット3の貼付け面3eの近傍とナット3の内面3dとの間に設けてもよい。穴11は、軸方向に直角な方向に延びる。隣接する平行な2つの穴11を設けてもよい。穴11はナット3の側面から空けられ、貼付け面3eの下方を通過する。
【0038】
第2の実施形態のねじ装置21によれば、ひずみセンサ5が貼り付けられるナット3の貼付け面3e及び/又はその近傍とナット3の内面3dとの間に穴11を設けるので、穴11を設けた部分において、ナット3の外面に予圧荷重が伝わりにくくなる。ナット3の外面の変形する部分と変形しにくい部分との境目に応力集中が発生し、ひずみ量が拡大されるので、ひずみセンサ5による予圧の検知が容易になる。
【0039】
オフセット予圧の場合、ナット3の外面の軸方向のひずみ量を検知することにより、予圧の検知が容易になる。オフセット予圧によってナット3は軸方向(
図10のX方向)に延びるように変形するからである。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化可能である。例えば、転動体にはボールの替わりにローラを使用してもよい。
【0041】
上記実施形態では、穴の延びる方向と直交する穴の断面形状が円形であるが、円形に限られることはなく、四角形等であってもよい。また、穴は、直線状もしくは円弧状の長穴、及び/又はスリット状であってもよい。
【0042】
上記実施形態では、穴の内部が空間になっているが、穴の内部を充填材によって充填することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1,21…ねじ装置、2…ねじ軸、2a…外面溝、3…ナット、3a…内面溝、3a1…ナットの内面溝の一部、3a2…ナットの内面溝の他の一部、3c…平取り部、3d…ナットの内面、3e…貼付け面、4…ボール(転動体)、5…ひずみセンサ、8…通路、9…戻し路、11…穴